JP2018109095A - インクジェット記録用水性顔料分散液 - Google Patents

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Abstract

【課題】黄色アゾ系顔料を用いても、顔料分散液中の粒子の粒径が小さく、かつ保存安定性に優れるインクジェット記録用水性顔料分散液、該水性顔料分散液を含む、吐出性に優れ、かつ光沢性に優れた記録物を得ることができるインクジェット記録用水性インク、及び水性インクの製造方法を提供する。【解決手段】黄色アゾ系顔料(A)、芳香族基含有ポリマー(B)、及びアルカリ金属水酸化物(C)を含有する水性顔料分散液であって、芳香族基含有ポリマー(B)が、酸価が200〜320mgKOH/gである芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)を水不溶性多官能エポキシ化合物(b)で架橋してなり、該水不溶性ポリマー(a)の酸価と中和度と架橋度とが、下記条件1を満たすインクジェット記録用水性顔料分散液である。条件1:〔(100−中和度−架橋度)/100〕×(水不溶性ポリマー(a)の酸価)の値が−30〜130mgKOH/gである。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用水性顔料分散液、インクジェット記録用水性インク、及び水性インクの製造方法に関する。
インクジェット記録用水性インクとして顔料を使用したインクが知られている。顔料を使用したインクは、優れた耐水性、耐光性を期待できるものの、顔料の凝集、沈降に伴う吐出ノズルの目詰まりが問題となっている。これを解決するため、ポリマー分散剤を用いて顔料を水性媒体中に分散させる方法が行われているが、ポリマー分散剤のみで長期間にわたって顔料を安定に分散させることは困難であり、より長期保存安定性を有する顔料分散系インクジェット記録用水性インクが望まれている。
特に、黄色顔料を色材とする水性顔料分散液及び水性インクでは、フルカラー印刷時の色域の広さや他色との混合時の色相等の面から、色相と透明性に対する要求が高い。
無機黄色顔料では、これらの要求への対応が困難であるため、有機黄色顔料を用いた水性インクであって、吐出性に影響を与える物性の変動が少なく、高い印刷品質を充足できるインクジェット記録用水性インクの開発が期待されている。
例えば、特許文献1には、分散安定性に優れるインクジェット記録用インクに適した黄色水性顔料分散液として、黄色アゾ系顔料、スチレン系樹脂、及びアルカリ金属水酸化物を含有し、スチレン系樹脂が、60質量%以上のスチレン系モノマー単位と10〜40質量%の不飽和脂肪族カルボン酸モノマー単位を有し、特定の重量平均分子量を有するインクジェット記録用水性顔料分散液が開示されている。
特許文献2には、極めて微小な粒径に分散可能で、分散安定性に優れ、低粘度でも沈降が少ないインクジェット記録用インクに適した黄色の水性顔料分散液として、ビスアセトアセトアリリド顔料、特定の酸価を有するスチレン−アクリル酸系共重合体、塩基性化合物、湿潤剤及び特定の混練助剤を含有する混合物を混練して得られる顔料組成物が開示されている。
特開2005−60419号公報 国際公開第2011/34043号
しかしながら、特許文献1の技術では、顔料粒子の粒子径が150nm以上と大きく、良好な印字品質を得るためには更なる微粒化が求められていた。また、特許文献2の技術では、混練という高いエネルギーを投下する工程が必須となっている。
このように、有機黄色顔料を色材とするインクジェット記録用の水性顔料分散液及び水性インクでは、簡便な方法で要求性能を満たす技術は確立されていない。
ポリマー分散剤を用いて分散したピグメント・イエロー74を用いたインクジェット記録用水性顔料分散液では、顔料分散液中の粒子の粒径、インクジェット吐出性、得られる画像の光沢度には問題がないにも関わらず、その他の黄色アゾ系顔料を用いると、同じポリマー分散剤で分散しても、得られる顔料分散液中の粒子の粒径が大きくなり、インクジェット吐出性や得られる画像の光沢度が劣る場合があった。
本発明は、黄色アゾ系顔料を用いても、顔料分散液中の粒子の粒径が小さく、かつ保存安定性に優れるインクジェット記録用水性顔料分散液、該水性顔料分散液を含む、吐出性に優れ、かつ光沢性に優れた記録物を得ることができるインクジェット記録用水性インク、及び水性インクの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、黄色アゾ系顔料、芳香族基含有ポリマー、及びアルカリ金属水酸化物を含有する水性顔料分散液であって、芳香族基含有ポリマーが、特定の酸価を有する水不溶性ポリマーを特定の多官能エポキシ化合物で架橋され、該水不溶性ポリマーの酸価と中和度と架橋度とが、特定の条件を満たすインクジェット記録用水性顔料分散液が、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、次の[1]〜[3]を提供する。
[1]黄色アゾ系顔料(A)、芳香族基含有ポリマー(B)、及びアルカリ金属水酸化物(C)を含有するインクジェット記録用水性顔料分散液であって、
芳香族基含有ポリマー(B)が、酸価が200mgKOH/g以上320mgKOH/g以下である芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)を水不溶性多官能エポキシ化合物(b)で架橋してなり、
該水不溶性ポリマー(a)の酸価と中和度と架橋度とが、下記条件1を満たすインクジェット記録用水性顔料分散液。
条件1:〔(100−中和度−架橋度)/100〕×(水不溶性ポリマー(a)の酸価)の値が−30mgKOH/g以上130mgKOH/g以下である。
ここで、中和度は「アルカリ金属水酸化物(C)のモル当量数/水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)、架橋度は「水不溶性多官能エポキシ化合物(b)のエポキシ基のモル当量数/水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)である。
[2]上記[1]に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液を主成分として含む、インクジェット記録用水性インク。
[3]下記工程1〜4を有し、かつ工程1における芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)が下記条件1を満たす、インクジェット記録用水性インクの製造方法。
工程1:黄色アゾ系顔料(A)、酸価が200mgKOH/g以上320mgKOH/g以下である芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)、アルカリ金属水酸化物(C)、有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理して、顔料分散液を得る工程
工程2:工程1で得られた顔料分散液から有機溶媒を除去して、顔料水分散液Aを得る工程
工程3:工程2で得られた顔料水分散液Aを、水不溶性多官能エポキシ化合物(b)で架橋処理し、架橋された芳香族基含有ポリマー(B)に黄色アゾ系顔料(A)が含有された顔料水分散液Bを得る工程
工程4:工程3で得られた顔料水分散液Bと有機溶媒とを混合し、水性インクを得る工程
条件1:〔(100−中和度−架橋度)/100〕×(水不溶性ポリマー(a)の酸価)の値が−30mgKOH/g以上130mgKOH/g以下である。
ここで、中和度及び架橋度は前記のとおりである。
本発明によれば、黄色アゾ系顔料を用いても、顔料分散液中の粒子の粒径が小さく、かつ保存安定性に優れるインクジェット記録用水性顔料分散液、該水性顔料分散液を含む、吐出性に優れ、かつ光沢性に優れた記録物を得ることができるインクジェット記録用水性インク、及び水性インクの製造方法を提供することができる。
[インクジェット記録用水性顔料分散液]
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液は、黄色アゾ系顔料(A)、芳香族基含有ポリマー(B)、及びアルカリ金属水酸化物(C)を含有するインクジェット記録用水性顔料分散液であって、
芳香族基含有ポリマー(B)が、酸価が200mgKOH/g以上320mgKOH/g以下である芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)を水不溶性多官能エポキシ化合物(b)で架橋してなり、
該水不溶性ポリマー(a)の酸価と中和度と架橋度とが、下記条件1を満たすインクジェット記録用水性顔料分散液である。
条件1:〔(100−中和度−架橋度)/100〕×(水不溶性ポリマー(a)の酸価)の値が−30mgKOH/g以上130mgKOH/g以下である。
ここで、中和度及び架橋度は前記のとおりである。
なお、「記録」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「記録物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。
また、「水性」とは、顔料を分散させる媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液は、黄色アゾ系顔料を用いても、顔料分散液中の粒子の粒径が小さく、かつ保存安定性に優れ、該水性顔料分散液を含むインクジェット記録用水性インクは、吐出性に優れ、かつ光沢性に優れた記録物を与えることができる。その理由は定かではないが、以下のように考えられる。
本発明で用いられる芳香族基含有ポリマー(B)は、芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)を水不溶性多官能エポキシ化合物(b)で架橋してなるポリマー分散剤であることから、ポリマー分散剤が芳香族基によってアゾ系顔料表面に吸着し、そしてポリマー分散剤が架橋されているため、ポリマー分散剤が黄色アゾ系顔料(A)に一度吸着すると脱離しにくく、顔料粒子の分散性が向上し、顔料粒子の粒径が小さくなり、得られる水性顔料分散液及びこれを用いた水性インクの保存安定性が高まると考えられる。また、水不溶性多官能エポキシ化合物(b)は、黄色アゾ系顔料(A)の表面近傍に存在して架橋反応が進行し、ポリマー分散剤の水溶性を低下させるため、水溶性の架橋剤を用いる場合よりも得られる芳香族基含有ポリマー(B)が顔料(C)から脱離しにくくなり、有機溶媒等のインクビヒクルを含む水性インクを保存する場合においても保存安定性に優れると考えられる。
また、芳香族基含有ポリマー(B)を構成する酸価が比較的高い不溶性ポリマー(a)の少なくとも一部が、アルカリ金属水酸化物(C)で特定量の範囲で中和されているため、強い電荷反発が得られ、吐出性に優れると考えられる。
さらに、この強い電荷反発により紙面上で凝集しにくくなるため、光沢性に優れた記録物を得ることができると考えられる。
<黄色アゾ系顔料(A)>
本発明に用いられる黄色アゾ系顔料(A)(以下、「顔料(A)」ともいう)は、分子中にアゾ構造(N=N)及びその互変異性体であるヒドラゾン構造(=N−NH−)のいずれか又は両方を含有する黄色顔料の総称である。
黄色アゾ系顔料(A)としては、(a)アゾレーキ系顔料、(b)不溶性アゾ系顔料等が挙げられる。
(a)アゾレーキ系顔料としては、アセト酢酸アリリド系顔料等が挙げられ、より具体的には、C.I.ピグメント・イエロー133,168,169等が挙げられる。
(b)不溶性アゾ系顔料としては、(i)アセト酢酸アリリド系モノアゾ顔料、(ii)アセト酢酸アリリド系ジスアゾ顔料、(iii)ピラゾロン系顔料、(iv)縮合ジスアゾ系顔料、(v)金属錯体顔料等が挙げられる。
(i)アセト酢酸アリリド系モノアゾ顔料としては、ハンザ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料等が挙げられる。具体的には、ハンザ系顔料としては、C.I.ピグメント・イエロー1,2,3,5,6,49,63,65,73,74,75,87,90,97,98,106,111,114,116,121,124,126,127,130,136,152,165,167,170,174,176,188等が挙げられ、ベンズイミダゾロン系顔料としては、C.I.ピグメント・イエロー120,151,154,156,175,180,181,194等が挙げられる。
(ii)アセト酢酸アリリド系ジスアゾ顔料としては、C.I.ピグメント・イエロー12,13,14,17,55,81,83,113,171,172,214等が挙げられる。
(iii)ピラゾロン系顔料等としては、C.I.ピグメント・イエロー10,60等が挙げられる。
(iv)縮合ジスアゾ系顔料としては、C.I.ピグメント・イエロー93,94,95,128,155,166等が挙げられる。
(v)金属錯体顔料としては、C.I.ピグメント・イエロー117,129,150,153等が挙げられる。
上記の黄色アゾ系顔料は、単独で又は2種以上の混合物若しくは固溶体として用いることができる。顔料は粉末状、顆粒状又は塊状の乾燥顔料でもよく、ウエットケーキやスラリーでもよい。
上記黄色アゾ系顔料の中では、本発明の効果を十分に発揮させる観点から、好ましくは(b)不溶性アゾ系顔料であり、より好ましくは(i)アセト酢酸アリリド系モノアゾ顔料、(iv)縮合ジスアゾ系顔料、及び(v)金属錯体顔料から選ばれる1種以上、更に好ましくは、C.I.ピグメント・イエロー128、C.I.ピグメント・イエロー155、C.I.ピグメント・イエロー150、及びC.I.ピグメント・イエロー180から選ばれる1種以上である。これらの中でも、記録物の光沢性の観点から、C.I.ピグメント・イエロー128、C.I.ピグメント・イエロー150、及びC.I.ピグメント・イエロー155から選ばれる1種以上が好ましい。また、これらの中でも、インクの吐出性の観点から、C.I.ピグメント・イエロー150、C.I.ピグメント・イエロー155、及びC.I.ピグメント・イエロー180から選ばれる1種以上が好ましい。さらに、保存安定性、記録物の光沢性、水性インクの吐出性の観点から、C.I.ピグメント・イエロー150及びC.I.ピグメント・イエロー155から選ばれる1種以上がより好ましく、C.I.ピグメント・イエロー150が更に好ましい。
また、本発明の目的を阻害しない範囲内で、必要に応じて、インクジェット記録用途で公知又は慣用の黄色顔料を使用することができる。
本発明において、顔料(A)は、水性顔料分散液及び水性インク中に、芳香族基含有ポリマー(B)で分散された顔料、又は顔料を含有する芳香族基含有ポリマー(B)、即ち、顔料を含有する芳香族基含有ポリマー(B)粒子の形態で含有される。
顔料(A)は、耐水性を維持しつつ、インク吐出ノズルにおける顔料やポリマーの固化を抑制し、保存安定性及び光沢性を更に向上させる観点から、顔料(A)を含有する芳香族基含有ポリマー(B)粒子(以下、単に「顔料含有ポリマー粒子」ともいう)として含有されることが好ましい。
この好適態様においては、水性顔料分散液及び水性インクは、顔料含有ポリマー粒子と有機溶媒と水を含有する。
<芳香族基含有ポリマー(B)>
本発明のインクジェット記録用水性顔料分散液は、ポリマー分散剤として、芳香族基含有ポリマー(B)を含有する。
芳香族基含有ポリマー(B)は、酸価が200mgKOH/g以上320mgKOH/g以下である芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)(以下、単に「水不溶性ポリマー(a)」ともいう)を水不溶性多官能エポキシ化合物(b)で架橋してなる。
芳香族基含有ポリマー(B)を構成する水不溶性ポリマー(a)は、カルボキシ基を有し、そのカルボキシ基の少なくとも一部はアルカリ金属水酸化物(C)で中和されており、さらに水不溶性多官能エポキシ化合物(b)で架橋されている。そして、水不溶性ポリマー(a)の酸価と中和度と架橋度が、前記条件1を満たす。
本発明で用いられる芳香族基含有ポリマー(B)は、好ましくは水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基の少なくとも一部をアルカリ金属水酸化物(C)で中和した状態で黄色アゾ系顔料(A)を水系媒体に分散した後、水不溶性多官能エポキシ化合物(b)で架橋処理することによって、水系媒体中で形成される。こうすると芳香族基含有ポリマー(B)は単離されないが、水不溶性ポリマー(a)のモノマー構成、分子量、アルカリ金属水酸化物(C)の種類と使用量、水不溶性多官能エポキシ化合物(b)の種類と使用量から条件1が決まり、その条件1を満たすものとして、水不溶性ポリマー(a)の状態を規定できる。
本発明においては、水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基の中和剤としてアルカリ金属水酸化物(C)を使用することで、中和後に発現する電荷反発力が大きくなり、水性顔料分散液や水性インクを長期間保存する場合の増粘や凝集の発生が抑制され、保存安定性が向上すると考えられる。
(芳香族基含有水不溶性ポリマー(a))
水不溶性ポリマー(a)は、黄色アゾ系顔料(A)の分散作用を発現する顔料分散剤としての機能と、記録媒体への定着剤としての機能を有する。
水不溶性ポリマー(a)は、未中和の状態では勿論、そのカルボキシ基の一部を中和した後でも水不溶性である。本発明においては、未中和又は中和した水不溶性ポリマー(a)の水分散体に対して、レーザー光や通常光による観察でチンダル現象が認められる場合、又は、以下の測定条件にて平均粒径が観測される場合、のいずれかの場合を満たせば、「水不溶性」と判断する。
測定条件:レーザー粒子解析システム「ELSZ−1000」(大塚電子株式会社製)を用いてキュムラント解析を行う。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度165°、積算回数32回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力する。測定濃度が0.18質量%(固形分濃度換算)になるように水で希釈して行う。
水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基の量は酸価で表すことができる。その酸価は、200mgKOH/g以上であり、好ましくは220mgKOH/g以上であり、そして、320mgKOH/g以下であり、好ましくは300mgKOH/g以下、より好ましくは270mgKOH/g以下である。酸価が前記の範囲であれば、カルボキシ基及びその中和されたカルボキシ基の量は十分であり、黄色アゾ系顔料(A)の分散安定性が確保される。また芳香族基含有ポリマー(B)と水系媒体の親和性と、芳香族基含有ポリマー(B)と黄色アゾ系顔料(A)との相互作用とのバランスの点からも好ましい。
水不溶性ポリマー(a)の酸価は、構成するモノマーの質量比から算出することができる。また、適当な有機溶剤(例えば、MEK)にポリマーを溶解又は膨潤させて滴定する方法でも求めることができる。
水性顔料分散液及び水性インク中における、水不溶性ポリマー(a)を水不溶性多官能エポキシ化合物(b)で架橋させて得られる芳香族基含有ポリマー(B)の存在形態としては、(i)顔料に吸着している状態、(ii)顔料を含有している顔料内包(カプセル)状態、及び(iii)顔料を吸着していない形態がある。顔料の分散安定性の観点から、本発明においては(i)又は(ii)の状態が好ましく、(ii)顔料を含有している顔料内包状態がより好ましい。
水不溶性ポリマー(a)としては、(i)芳香族基含有モノマー(以下、「(i)成分」ともいう)と、(ii)カルボキシ基含有ビニルモノマー(以下、「(ii)成分」ともいう)とを含む芳香族基含有モノマー混合物(以下、単に「モノマー混合物」ともいう)を共重合させてなるポリマーが好ましい。このポリマーは、(i)成分由来の構成単位と(ii)成分由来の構成単位を有する。
〔(i)芳香族基含有モノマー〕
(i)芳香族基含有モノマーは、顔料含有ポリマー粒子の水性顔料分散液及び水性インク中における分散安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマー(a)のモノマー成分として用いられる。
芳香族基含有モノマーは、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい炭素数6〜22の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリレートがより好ましい。
スチレン系モノマーとしてはスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−エチルスチレン、α−ブチルスチレン、α−ヘキシルスチレン等のアルキルスチレン、4−フロロスチレン、3−クロロスチレン、3−ブロモスチレン等のハロゲン化スチレン、3−ニトロスチレン、4−メトキシスチレン、ビニルトルエン、及びジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの中では、スチレン、α−メチルスチレンがより好ましい。
また、芳香族基含有(メタ)アクリレートとしては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等が好ましく、ベンジル(メタ)アクリレートがより好ましい。
芳香族基含有モノマーは、前記のモノマーを2種以上使用してもよく、スチレン系モノマーと芳香族基含有(メタ)アクリレートを併用してもよい。
〔(ii)カルボキシ基含有ビニルモノマー〕
(ii)カルボキシ基含有ビニルモノマーは、顔料含有ポリマー粒子の水性顔料分散液及び水性インク中における分散安定性を向上させる観点から、水不溶性ポリマー(a)のモノマー成分として用いられる。
カルボキシ基含有ビニルモノマーとしては、カルボン酸モノマーが用いられ、カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、クロトン酸、α−メチルクロトン酸、α−エチルクロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。これらの中では、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上が好ましい。
〔(iii)その他のモノマー〕
水不溶性ポリマー(a)には、(i)芳香族基含有モノマー及び(ii)カルボキシ基含有ビニルモノマー以外に、分散安定性を向上させる観点から、アルキル(メタ)アクリレート、マクロモノマー、ノニオン性モノマー等の公知のモノマーをモノマー成分として用いることができる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22、好ましくは炭素数6〜18のアルキル基を有するものが好ましく、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソドデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる1種以上を意味する。以下における「(メタ)」も同義である。
マクロモノマーは、片末端に重合性官能基を有する数平均分子量500以上100,000以下の化合物であり、片末端に存在する重合性官能基としては、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイルオキシ基が好ましく、メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
マクロモノマーとしては、芳香族基含有モノマー系マクロモノマー及びシリコーン系マクロモノマーが挙げられ、芳香族基含有モノマー系マクロモノマーが好ましい。
芳香族基含有モノマー系マクロモノマーを構成する芳香族基含有モノマーとしては、前記の芳香族基含有モノマーが挙げられ、スチレン系モノマーがより好ましい。
スチレン系マクロモノマーの具体例としては、AS−6(S)、AN−6(S)、HS−6(S)(東亞合成株式会社の商品名)等が挙げられる。
ノニオン性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(n=2〜30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(n=1〜30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(n=1〜30、その中のエチレングリコール:n=1〜29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中では、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレート、フェノキシ(エチレングリコール・プロピレングリコール共重合)(メタ)アクリレートが好ましく、ポリプロピレングリコール(n=2〜30)(メタ)アクリレートがより好ましい。
商業的に入手しうるノニオン性モノマーとしては、新中村化学工業株式会社のNKエステルM−20G、同40G、同90G、同230G等、日油株式会社のブレンマーPE−90、同200、同350等、PME−100、同200、同400等、PP−500、同800、同1000等、AP−150、同400、同550等、50PEP−300、50POEP−800B、43PAPE−600B等が挙げられる。
上記モノマー成分は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(モノマー混合物中又はポリマー中における各成分又は構成単位の含有量)
水不溶性ポリマー(a)製造時における、(i)芳香族基含有モノマー、(ii)カルボキシ基含有ビニルモノマーのモノマー混合物中における含有量(未中和量としての含有量。以下同じ)、すなわち水不溶性ポリマー(a)中における(i)及び(ii)成分由来の構成単位の含有量は、水不溶性ポリマー(a)の黄色アゾ系顔料(A)への水不溶性ポリマー(a)の親和性を向上させ、水性顔料分散液及び水性インクの保存安定性を向上させる観点、及び耐水性、普通紙記録特性、画像記録濃度を維持する観点から、次のとおりである。
(i)芳香族基含有モノマーの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、そして、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
(ii)カルボキシ基含有ビニルモノマーの含有量は、好ましくは10質量%超、より好ましくは20質量%超、更に好ましくは25質量%超であり、そして、好ましくは50質量%未満、より好ましくは45質量%未満、更に好ましくは40質量%未満である。
[(ii)成分/(i)成分]の質量比は、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.35以上、更に好ましくは0.40以上であり、そして、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.0以下である。
(水不溶性ポリマー(a)の製造)
水不溶性ポリマー(a)は、前記モノマー混合物を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることによって製造される。これらの重合法の中では、溶液重合法が好ましい。
溶液重合法で用いる溶媒に特に制限はないが、極性有機溶媒が好ましい。極性有機溶媒が水混和性を有する場合には、水と混合して用いることもできる。極性有機溶媒としては、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、炭素数3〜5のケトン類、エーテル類、酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。これらの中では、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、又はこれらの1種以上と水との混合溶媒が好ましく、メチルエチルケトン又はそれと水との混合溶媒が好ましい。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができる。
重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物や、t−ブチルペルオキシオクトエート、ベンゾイルパーオキシド等の有機過酸化物等の公知のラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤の量は、モノマー混合物1モルあたり、好ましくは0.001〜5モル、より好ましくは0.01〜2モルである。
重合連鎖移動剤としては、オクチルメルカプタン、2−メルカプトエタノール等のメルカプタン類、チウラムジスルフィド類等の公知の連鎖移動剤を用いることができる。
また、重合モノマーの連鎖の様式に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト等のいずれの重合様式でもよいが、ランダム、グラフトが好ましく、ランダムがより好ましい。
好ましい重合条件は、使用する重合開始剤、モノマー、溶媒の種類等によって異なるが、通常、重合温度は、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より80℃以下である。重合時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、そして、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。また、重合雰囲気は、好ましくは窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気である。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマーを単離することができる。また、得られたポリマーは、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去して精製することができる。
本発明において、ポリマー分散剤を用いて顔料を分散する方法としては、任意の公知の方法を用いることができるが、後述する顔料含有ポリマー粒子の水分散体とすることが好ましい。顔料含有ポリマー粒子の水分散体の生産性を向上させる観点から、重合反応に用いた溶媒を除去せずに、含有する有機溶媒を後述する工程1に用いる有機溶媒として用いるために、そのまま水不溶性ポリマー(a)溶液として用いることが好ましい。
水不溶性ポリマー(a)溶液の固形分濃度は、顔料含有ポリマー粒子の水分散体の生産性を向上させる観点から、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、そして、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。
本発明で用いられる水不溶性ポリマー(a)の数平均分子量は、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上、更に好ましくは7,000以上であり、そして、好ましくは20,000以下、より好ましくは18,000以下、更に好ましくは16,000以下である。ポリマーの数平均分子量が前記の範囲であれば、顔料への吸着力が十分であり保存安定性を発現することができる。
なお、数平均分子量の測定は、実施例に記載の方法により行うことができる。
〔顔料含有ポリマー粒子の製造〕
黄色アゾ系顔料(A)を含有する芳香族基含有ポリマー(B)粒子(顔料含有ポリマー粒子)は、水分散液として下記の工程1〜3を有する方法により、効率的に製造することができる。
工程1:黄色アゾ系顔料(A)、酸価が200mgKOH/g以上320mgKOH/g以下である芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)、アルカリ金属水酸化物(C)、有機溶媒、及び水を含有する混合物(以下、「顔料混合物」ともいう)を分散処理して、顔料分散液を得る工程
工程2:工程1で得られた顔料分散液から有機溶媒を除去して、顔料水分散液Aを得る工程
工程3:工程2で得られた顔料水分散液Aを、水不溶性多官能エポキシ化合物(b)で架橋処理し、架橋された芳香族基含有ポリマー(B)に黄色アゾ系顔料(A)が含有された顔料水分散液Bを得る工程
(工程1)
工程1は、黄色アゾ系顔料(A)、酸価が200mgKOH/g以上320mgKOH/g以下である芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)、アルカリ金属水酸化物(C)、有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理して、顔料分散液を得る工程である。
水不溶性ポリマー(a)の製造方法は前記のとおりである。
工程1では、まず、水不溶性ポリマー(A)を有機溶媒に溶解させ、アルカリ金属水酸化物(C)で中和することが好ましい。
水不溶性ポリマー(a)を溶解させる有機溶媒に制限はないが、大気圧において150℃以下の沸点を有する揮発性有機溶媒が好ましく、例えば、炭素数1〜3の脂肪族アルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エステル類等が挙げられる。これらの中では、顔料への濡れ性、水不溶性ポリマー(a)の溶解性、及び水不溶性ポリマー(a)の顔料への吸着性を向上させる観点から、炭素数4以上8以下のケトンがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが更に好ましく、メチルエチルケトンがより更に好ましい。
水不溶性ポリマー(a)を溶液重合法で製造した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
<アルカリ金属水酸化物(C)>
水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基の少なくとも一部は、得られる水性顔料分散液及び水性インクの耐水性、保存安定性等の観点から、アルカリ金属水酸化物(C)で中和される。この時のpHが7以上11以下になるように中和することが好ましい。
アルカリ金属水酸化物(C)としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムが挙げられるが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。また、該水不溶性ポリマーを予め中和しておいてもよい。
なお、有機アミンや有機リン化合物等の中和剤は、特有の臭気や毒性があるため、安全性の観点から好ましくなく、また保存安定性を高めるためには多量に使用する必要があり、水性インクの粘度が高くなり過ぎる等の悪影響が生じる。
アルカリ金属水酸化物(C)は、十分かつ均一に中和を促進させる観点から、水溶液として用いることが好ましい。該水溶液の濃度は、上記の観点から、3質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、そして、50質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。
アルカリ金属水酸化物(C)の添加量は、水不溶性ポリマー(a)が有する全カルボキシル基を中和するために必要な量の0.2〜1.0倍に相当する量であることが好ましい。
水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基の中和度は、得られる水性顔料分散液及び水性インクの耐水性、保存安定性の観点から、好ましくは20モル%以上、より好ましくは25モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
ここで中和度とは、アルカリ金属水酸化物(C)のモル当量数を水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基のモル当量数で除した値、即ち「アルカリ金属水酸化物(C)のモル当量数/水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)である。本発明では、中和度はアルカリ金属水酸化物(C)のモル当量数から計算するため、アルカリ金属水酸化物(C)を過剰に用いた場合は100モル%を超える。
工程1において、アルカリ金属水酸化物(C)に加えて、揮発性塩基性化合物を併用することもできる。本発明において揮発性塩基性化合物とは、大気圧における沸点が100℃以下の有機アミンを意味し、揮発性塩基性化合物の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。この中では揮発性の高さの観点からアンモニアが好ましい。
揮発性塩基性化合物の使用量については特に制限はないが、全く用いないか、又は用いる場合は10モル%以上、好ましくは20モル%以上、更に好ましくは25モル%以上、より更に好ましくは30モル%以上、そして、好ましくは100モル%以下、より好ましくは90モル%以下、更に好ましくは80モル%以下、より更に好ましくは75モル%以下である。
本発明の中和度の算出には、アルカリ金属水酸化物(C)の使用量のみを算入し、揮発性塩基性化合物の使用量は用いない。
(顔料混合物中の各成分の含有量)
工程1における顔料混合物中の各成分の含有量は、得られる水性顔料分散液の耐水性、保存安定性、及び生産性の観点から、以下のとおりである。
工程2における顔料(A)の顔料混合物中の含有量は、好ましくは2質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。
水不溶性ポリマー(a)の顔料混合物中の含有量は、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上であり、そして、好ましくは8.0質量%以下、より好ましくは7.0質量%以下、更に好ましくは6.0質量%以下である。
有機溶媒の顔料混合物中の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
水の顔料混合物中の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。
水不溶性ポリマー(a)に対する顔料(A)の顔料混合物中の質量比〔顔料(A)/水不溶性ポリマー(a)〕は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくは2.0以上であり、そして、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.8以下、更に好ましくは3.5以下である。
(顔料混合物の分散処理)
工程1において、顔料分散液を得る分散方法に特に制限はない。本分散だけで顔料粒子の平均粒径を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは顔料混合物を予備分散させた後、更に剪断応力を加えて本分散を行い、顔料粒子の平均粒径を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
工程1における温度、とりわけ予備分散における温度は、好ましくは0℃以上であり、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下であり、分散時間は好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.8時間以上であり、そして、好ましくは30時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
顔料混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができるが、中でも高速撹拌混合装置が好ましい。
本分散の剪断応力を与える手段としては、例えば、ロールミル、ニーダー等の混練機、マイクロフルイダイザー(Microfluidic社製)等の高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ビーズミル等のメディア式分散機が挙げられる。市販のメディア式分散機としては、ウルトラ・アペックス・ミル(寿工業株式会社製)、ピコミル(浅田鉄工株式会社製)等が挙げられる。これらの装置は複数を組み合わせることもできる。これらの中では、顔料を小粒子径化する観点から、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いて本分散を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは130MPa以上であり、そして、好ましくは200MPa以下、より好ましくは180MPa以下である。
また、パス回数は、好ましくは3以上、より好ましくは10以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
(工程2)
工程2は、工程1で得られた顔料分散液から有機溶媒を除去して、顔料水分散液Aを得る工程である。
有機溶媒の除去は、公知の方法で行うことができる。得られた顔料水分散液A中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。また必要に応じて、有機溶媒を留去する前に顔料分散液を加熱撹拌処理することもできる。
得られる顔料水分散液Aは、顔料含有ポリマー粒子が水を主媒体とする媒体中に分散しているものである。ここで、顔料含有ポリマー粒子の形態は特に制限はなく、少なくとも顔料(A)と水不溶性ポリマー(a)により粒子が形成されていればよいが、前述のように、水不溶性ポリマー(a)に顔料(A)が内包された粒子形態であることが好ましい。
得られた顔料水分散液Aの不揮発成分濃度(固形分濃度)は、顔料水分散液の分散安定性を向上させる観点及び水性インクの調製を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
なお、顔料水分散液Aの固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
顔料水分散液A中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、水性インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは70nm以上であり、そして、好ましくは180nm以下、より好ましくは160nm以下、更に好ましくは140nm以下である。
なお、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
(工程3)
工程3は、工程2で得られた顔料水分散液Aを、水不溶性多官能エポキシ化合物(b)で架橋処理し、架橋された芳香族基含有ポリマー(B)に黄色アゾ系顔料(A)が含有された顔料水分散液Bを得る工程である。
この工程で、顔料含有ポリマー粒子を構成する水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基の一部を架橋し、顔料含有ポリマー粒子の表層部に架橋構造を形成させる。すなわち本発明に係る芳香族基含有ポリマー(B)は、顔料表面上で水不溶性ポリマー(a)と水不溶性多官能エポキシ化合物(b)から調製される。
<水不溶性多官能エポキシ化合物(b)>
本発明で用いられる水不溶性多官能エポキシ化合物(b)は、水を主体とする媒体中で効率よく水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基と反応させる観点から、20℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が好ましくは50g以下、より好ましくは40g以下、更に好ましくは35g以下である。
また、水不溶性多官能エポキシ化合物は、得られる水性顔料分散液及び水性インクの耐水性、保存安定性、吐出性の観点から、水溶率(質量比)は好ましくは50%以下、より好ましくは40%以下、更に好ましくは35%以下である。ここで、水溶率%(質量比)とは、室温25℃にて水90質量部にエポキシ化合物10質量部を溶解したときの溶解率(%)をいい、より具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
水不溶性多官能エポキシ化合物(b)としては、分子中に2以上のエポキシ基、好ましくはグリシジルエーテル基を有する化合物が好ましく、炭素数3以上8以下の炭化水素基を有する多価アルコールのグリシジルエーテル化合物がより好ましい。
水不溶性多官能エポキシ化合物(b)の分子量は、反応のし易さ、及び得られる架橋ポリマーの保存安定性の観点から、好ましくは120以上、より好ましくは150以上、更に好ましくは200以上であり、そして、好ましくは1500以下、より好ましくは1000以下、更に好ましくは800以下である。
水不溶性多官能エポキシ化合物(b)のエポキシ基の数は、効率よくカルボキシ基と反応させて顔料含有ポリマー粒子の保存安定性等を高める観点から、1分子あたり2〜6が好ましく、1分子あたり3〜6がより好ましい。また1分子内に5以上のエポキシ基を有するものは市場入手性が乏しいので、反応性と経済性の両立という観点から、1分子内に3又は4のエポキシ基を有するものがより好ましい。
水不溶性多官能エポキシ化合物(b)のエポキシ当量は、上記と同様の観点から、好ましくは100以上、より好ましくは110以上、更に好ましくは120以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは270以下、更に好ましくは250以下である。
水不溶性多官能エポキシ化合物(b)の具体例としては、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(水溶率31%)、グリセリンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(水溶率27%)、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中では、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(水溶率27%)、及びペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(水不溶性)から選ばれる1種又は2種が好ましい。
(架橋反応)
本発明においては、水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基の一部をアルカリ金属水酸化物(C)で中和して顔料(A)を分散させ、顔料水分散体Aを得た後、更に該水不溶性ポリマー(a)が有するカルボキシ基の一部を水不溶性多官能エポキシ化合物(b)と反応させて架橋構造を形成させて、系内で得られた芳香族基含有ポリマー(B)で顔料(A)を水系媒体に分散させた水性顔料分散液Bとする。その際、得られる水性顔料分散液及び水性インクの保存安定性、吐出性を向上させる観点から、下記の条件1を満たす量で、アルカリ金属水酸化物(C)及び水不溶性多官能エポキシ化合物(b)を用いる。
〔条件1〕
条件1は、〔(100−中和度−架橋度)/100〕×〔水不溶性ポリマー(A)の酸価〕の値が−30mgKOH/g以上130mgKOH/g以下である。
ここで、中和度は「アルカリ金属水酸化物(C)のモル当量数/水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)、架橋度は「水不溶性多官能エポキシ化合物(b)のエポキシ基のモル当量数/水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)である。
条件1は、保存安定性や吐出性を高めるために必要な顔料水分散液におけるポリマー分散剤の未中和のカルボキシ基量を示すものであり、水不溶性ポリマー(a)の酸価、中和度、架橋度で決定される。換言すれば、条件1は、中和及び架橋後の水不溶性ポリマー(a)の酸価を表す。
条件1の値が−30mgKOH/gを超え、130mgKOH/g以下であれば、該ポリマーを用いて顔料水分散液を調製したときに顔料表面の電荷量が十分であり、また該ポリマー分散剤の水不溶性も十分となり、高い吐出安定性と保存安定性を発現できる。
条件1の値は、好ましくは−20mgKOH/g以上、より好ましくは−10mgKOH/g以上、更に好ましくは−5mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは120mgKOH/g以下、より好ましくは110mgKOH/g以下、更に好ましくは100mgKOH/g以下である。
水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基と水不溶性多官能エポキシ化合物(b)との架橋反応は、水不溶性ポリマー(a)で顔料(A)を分散した後に行うことが好ましい。
その反応温度は、上記と同様の観点から、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、更に好ましくは55℃以上、より更に好ましくは60℃以上、より更に好ましくは65℃以上であり、そして、好ましくは95℃以下、より好ましくは90℃以下である。
また、その反応時間は、反応の完結と経済性の観点から、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上、更に好ましくは1.5時間以上、より更に好ましくは3.0時間以上であり、そして、好ましくは12時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは8.0時間以下、より更に好ましくは6時間以下である。
架橋された水不溶性ポリマー(a)の架橋度は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上、更に好ましくは15モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは70モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。架橋度は「水不溶性多官能エポキシ化合物(b)のエポキシ基のモル当量数/水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)で算出される見かけの架橋度である。
顔料水分散液B中の顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、粗大粒子を低減し、水性インクの吐出安定性を向上させる観点から、好ましくは50nm以上、より好ましくは60nm以上、更に好ましくは70nm以上であり、そして、好ましくは180nm以下、より好ましくは160nm以下、更に好ましくは140nm以下である。
なお、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径は、実施例に記載の方法により測定される。
また、本発明の水性インクの平均粒径は、顔料水分散液Bの平均粒径と実質的に同じである。
顔料水分散液BのpHは、好ましくは8.0以上、より好ましくは8.5以上である。pHが8.0以上であれば、アニオン性基の解離が促進され、顔料分散体の電荷量が十分であり、これは顔料分散体の保存安定性を高めることができる。pHの上限に特に制限はないが、プリンタや印刷機の部材に悪影響を与えることを避けるため、水性顔料分散液BのpHは、好ましくは11以下、より好ましくは10.5以下である。
pHの測定法に特に制限はないが、ガラス電極を用いたpH測定法がJIS Z8802に規定されており、簡便かつ正確な点から、この方法が好ましい。
芳香族基含有ポリマー(B)に対する顔料(A)の質量比(顔料(A)/芳香族基含有ポリマー(B))は、水性顔料分散液及び水性インクの保存安定性を向上させる観点、及び耐水性、普通紙記録特性、画像記録濃度を維持する観点から、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上、更に好ましくはい1.8以上であり、そして、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.8以下である。
得られた水性顔料分散液Bには、乾燥防止のために湿潤剤や防黴剤等の添加剤を配合することもできる。
[水性インクの製造方法]
本発明の水性インクの製造方法は、下記工程1〜4を有し、かつ工程1における芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)が下記条件1を満たす。
工程1:黄色アゾ系顔料(A)、酸価が200mgKOH/g以上320mgKOH/g以下である芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)、アルカリ金属水酸化物(C)、有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理して、顔料分散液を得る工程
工程2:工程1で得られた顔料分散液から有機溶媒を除去して、顔料水分散液Aを得る工程
工程3:工程2で得られた顔料水分散液Aを、水不溶性多官能エポキシ化合物(b)で架橋処理し、架橋された芳香族基含有ポリマー(B)に黄色アゾ系顔料(A)が含有された顔料水分散液Bを得る工程
工程4:工程3で得られた顔料水分散液Bと有機溶媒とを混合し、水性インクを得る工程
条件1:〔(100−中和度−架橋度)/100〕×(水不溶性ポリマー(a)の酸価)の値が−30mgKOH/g以上130mgKOH/g以下である。
ここで、中和度及び架橋度は前記のとおりである。
工程1〜3の詳細は、前述した〔顔料含有ポリマー粒子の製造〕における工程1〜3に記載したとおりである。
工程4は、工程3で得られた水性顔料分散液Bと有機溶媒とを混合し、水性インクを得る工程であるが、その混合方法に特に制限はない。
工程4における有機溶媒は、水性インクの保存安定性等を更に向上させる観点から用いられる。ここで用いられる有機溶媒は、沸点90℃以上の1種又は2種以上の有機溶媒を含むことが好ましく、沸点の加重平均値が250℃以下である有機溶媒が好ましい。有機溶媒の沸点の加重平均値は、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは240℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
当該有機溶媒の具体例としては、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物等が挙げられる。これらの中では、多価アルコール及び多価アルコールアルキルエーテルから選ばれる1種以上が好ましく、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールから選ばれる1種以上がより好ましく、トリエチレングリコール、プロピレングリコールから選ばれる1種以上が更に好ましい。
本発明の水性インクの製造方法においては、更に必要に応じて、水性インクに通常用いられる湿潤剤、浸透剤、界面活性剤、保湿剤、分散剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤等の各種添加剤を添加し、更にフィルター等によるろ過処理を行うことができる。
(湿潤剤)
湿潤剤は、インクの乾燥防止を目的として添加するもので、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の三価以上のアルコール類、グリセリンエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類等が挙げられる。
湿潤剤の含有量は特に制限はないが、水性インク中、1〜50質量%、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは3〜30質量%で用いることができる。
(浸透剤)
浸透剤は、記録媒体への浸透性改良や記録媒体上でのドット径調整を目的として添加するもので、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコールヘキシルエーテルやジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。
浸透剤の含有量は特に制限はないが、水性インク中、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜8質量%で用いることができる。
上記の湿潤剤、浸透剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(界面活性剤)
界面活性剤は、表面張力等のインク特性を調整するために添加するもので、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられるが、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー等が挙げられる。
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等も使用することができる。
これらの界面活性剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
界面活性剤の含有量は特に制限はないが、水性インク中、0.001〜3質量%、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.1〜1.0質量%で用いることができる。
本発明の製造方法により得られる水性インクの各成分の含有量、インク物性は以下のとおりである。
(黄色アゾ系顔料(A)の含有量)
水性インク中の顔料(A)の含有量は、水性インクの印刷濃度を向上させる観点から、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは2.0質量%以上、更に好ましくは2.5質量%以上である。また、溶媒揮発時のインク粘度を低くし、高温下における保存安定性を更に向上させる観点から、好ましくは15.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以下、更に好ましく7.0質量%以下である。
(黄色アゾ系顔料(A)と水不溶性ポリマー(a)との合計含有量)
水性インク中の顔料(A)と水不溶性ポリマー(a)との合計含有量は、好ましくは2.0質量%以上、より好ましくは2.5質量%以上、更に好ましくは3.0質量%以上、より更に好ましくは3.5質量%以上であり、そして、好ましくは17.0質量%以下、より好ましくは12.0質量%以下、更に好ましくは10.0質量%以下、より更に好ましくは8.0質量%以下、より更に好ましくは6.0質量%以下である。
(水性インク物性)
水性インクの32℃の粘度は、インクの保存安定性を向上させる観点から、好ましくは2.0mPa・s以上であり、より好ましくは3.0mPa・s以上であり、更に好ましくは5.0mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下であり、より好ましくは9.0mPa・s以下であり、更に好ましくは7.0mPa・s以下である。
水性インクのpHは、インクの保存安定性を更に向上させる観点から、好ましくは7.0以上であり、より好ましくは7.2以上であり、更に好ましくは7.5以上である。また、部材耐性、皮膚刺激性の観点から、pHは、好ましくは11.0以下であり、より好ましくは10.0以下であり、更に好ましくは9.5以下である。
本発明の水性インクは、公知のインクジェット記録装置に装填し、記録媒体にインク液滴として吐出させて画像等を記録することができる。
インクジェット記録装置としては、連続噴射型(荷電制御型、スプレー型等)、オンデマンド型(ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等)等があるが、ピエゾ式のインクジェット記録用水性インクとして用いることがより好ましい。
用いることができる記録媒体としては、高吸水性の普通紙、低吸水性のコート紙及びフィルムが挙げられる。コート紙としては、汎用光沢紙、多色フォームグロス紙等が挙げられ、フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が挙げられる。
以下の調製例、製造例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は特記しない限り「質量部」及び「質量%」である。
(1)水不溶性ポリマーの数平均分子量の測定
N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬工業株式会社製、高速液体クロマトグラフィー用)に、リン酸(和光純薬工業株式会社製、試薬特級)及びリチウムブロマイド(東京化成工業株式会社製、試薬)をそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲルクロマトグラフィー法〔東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)、東ソー株式会社製カラム(TSK−GEL、α−M×2本)、流速:1mL/min〕により、標準物質として分子量が既知の単分散ポリスチレンを用いて測定した。
(2)水不溶性ポリマー粒子、顔料含有ポリマー粒子の平均粒径の測定
レーザー粒子解析システム「ELSZ−1000」(大塚電子株式会社製)を用いてキュムラント解析を行い測定した。測定条件は、温度25℃、入射光と検出器との角度165°、積算回数100回であり、分散溶媒の屈折率として水の屈折率(1.333)を入力した。測定濃度が5×10−3質量%(固形分濃度換算)になるように水で希釈して行った。
(3)顔料水分散体の固形分濃度の測定
30mlのポリプロピレン製容器(φ=40mm、高さ=30mm)にデシケーター中で恒量化した硫酸ナトリウム10.0gを量り取り、そこへサンプル約1.0gを添加して、混合させた後、正確に秤量し、105℃で2時間維持して、揮発分を除去し、更にデシケーター内で更に15分間放置し、質量を測定した。揮発分除去後のサンプルの質量を固形分として、添加したサンプルの質量で除して固形分濃度とした。
(4)多官能エポキシ化合物の水溶率の測定
室温25℃にてイオン交換水90質量部及び架橋剤10質量部をガラス管(25mmφ×250mmh)に添加し、該ガラス管を水温25℃に調整した恒温槽中で1時間静置した。次いで、該ガラス管を1分間激しく振とうした後、再び恒温槽中で10分間静置した。次いで、未溶解物を秤量し、水溶率(質量%)を算出した。
<ポリマー分散剤の調製>
調製例1(芳香族基含有水不溶性ポリマーa1の調製)
スチレン(和光純薬工業株式会社製 試薬)150部、α−メチルスチレン(和光純薬工業株式会社製、試薬)9部、アクリル酸(和光純薬工業株式会社製、試薬)38部を混合しモノマー混合液を調製した。反応容器内に、MEK20部、2−メルカプトエタノール(重合連鎖移動剤)0.3部、及び前記モノマー混合液の10%を入れて混合し、窒素ガス置換を十分に行った。
一方、滴下ロートに、モノマー混合液の残りの90%、前記重合連鎖移動剤0.27部、MEK60部及びアゾ系ラジカル重合開始剤(V−65)2.2部の混合液を入れ、窒素雰囲気下、反応容器内の前記モノマー混合液を攪拌しながら65℃まで昇温し、滴下ロート中の混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了から65℃で2時間経過後、前記重合開始剤0.3部をMEK5部に溶解した溶液を加え、更に65℃で2時間、70℃で2時間熟成させ、芳香族基含有水不溶性ポリマーa1(数平均分子量:11000)のポリマー溶液を得た。
調製例2〜5(芳香族基含有水不溶性ポリマーa2〜a5の調製)
調製例1において、表1に示すように、スチレン、α−メチルスチレン、ベンジルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸の混合量を変更した以外は、調製例1と同様にしてポリマー溶液a2〜a5を得た。結果を表1に示す。
<顔料水分散液Aの製造>
製造例1(顔料水分散液A1の製造)
調製例2で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られた水不溶性ポリマーa2の25部をMEK78.6部と混合し、更に5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分16.9%、和光純薬工業株式会社製、容量滴定用)8.1部を加え、ポリマーのカルボキシ基のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の割合が32%になるように中和した(中和度32%)。更にイオン交換水400部を加え、その中に黄色アゾ顔料IRGAPHOR Yellow 8GCF(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製:C.I.ピグメント・イエロー128)75部を加え、ディスパー(浅田鉄工株式会社製、ウルトラディスパー:商品名)を用いて、20℃でディスパー翼を7000rpmで回転させる条件で60分間攪拌した。
得られた混合物をマイクロフルイダイザー(Microfluidics社製、商品名)で200MPaの圧力で10パス分散処理した。得られた分散液にイオン交換水250部を加え、攪拌した後、減圧下で60℃でMEKを完全に除去し、更に一部の水を除去し、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過し、粗大粒子を除去することにより、固形分濃度が20%の顔料水分散液A1を得た。結果を表2に示す。
製造例2〜4(顔料水分散液A2〜A4の製造)
製造例1において、黄色アゾ顔料を表2に示すものに変更した以外は、製造例1と同様にして、固形分濃度が20%の顔料水分散液A2〜A4を得た。結果を表2に示す。
製造例5(顔料水分散液A5の製造)
製造例1において、黄色アゾ顔料を表2に示すものに変更し、5N水酸化ナトリウム水溶液8.1部に代えて5N水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウム固形分21.9%、和光純薬工業株式会社製、容量滴定用)8.8部とした以外は、製造例1と同様にして、固形分濃度が20%の顔料水分散液A5を得た。結果を表2に示す。
製造例6〜7(顔料水分散液A6〜A7の製造)
製造例3において、調製例2で得られた水不溶性ポリマーa2の代りに、調製例3で得られた水不溶性ポリマーa3、又は調製例4で得られた水不溶性ポリマーa4を用いた以外は、製造例3と同様にして、固形分濃度が20%の顔料水分散液A6〜A7を得た。結果を表2に示す。
製造例8〜11(顔料水分散液A8〜A11の製造)
調製例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られた水不溶性ポリマーa1を減圧乾燥させて得られたポリマー25部をMEK78.6部と混合し、更に5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分16.9%、和光純薬工業株式会社製、容量滴定用)5.1部を加え、水不溶性ポリマーa1のカルボキシ基のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の割合が32%になるように中和した(中和度32%)。その後、表2に示す黄色アゾ顔料を用いて、製造例1と同様にして、固形分濃度が20%の顔料水分散液A8〜A11を得た。結果を表2に示す。
製造例12〜13(顔料水分散液A12〜A13の製造)
製造例3において、5N水酸化ナトリウム水溶液の量を表2に示すとおりにした以外は、製造例3と同様にして、顔料水分散液A12〜A13を得た。結果を表2に示す。
製造例14(顔料水分散液A14の製造)
調製例5で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られた水不溶性ポリマーa5を減圧乾燥させて得られたポリマー25部をMEK78.6部と混合し、更に5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分16.9%、和光純薬工業株式会社製、容量滴定用)9.8部を加え、水不溶性ポリマーa5のカルボキシ基のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の割合が25%になるように中和した(中和度25%)。その後、表2に示す黄色アゾ顔料を用いて、製造例1と同様にして、固形分濃度が20%の顔料水分散液A14を得た。結果を表2に示す。
製造例15(顔料水分散液A15の製造)
調製例1で得られたポリマー溶液を減圧乾燥させて得られた水不溶性ポリマーa1を減圧乾燥させて得られたポリマー25部をMEK78.6部と混合し、更に5N水酸化ナトリウム水溶液(水酸化ナトリウム固形分16.9%、和光純薬工業株式会社製、容量滴定用)5.1部を加え、水不溶性ポリマーa1のカルボキシ基のモル数に対する水酸化ナトリウムのモル数の割合が32%になるように中和した(中和度32%)。その後、黄色アゾ顔料としてC.I.ピグメント・イエロー74を用いて、製造例1と同様にして、固形分濃度が20%の顔料水分散液A15を得た。結果を表2に示す。
表1中の黄色アゾ顔料の詳細は、以下のとおりである。
・PY128:IRGAPHOR Yellow 8GCF(チバスペシャルティケミカルズ株式会社製:C.I.ピグメント・イエロー128)
・PY150:Hostaperm Yellow HN4G(クラリアントジャパン株式会社:C.I.ピグメント・イエロー150)
・PY155:InkJet Yellow 4GV P2532(クラリアントジャパン株式会社:C.I.ピグメント・イエロー155)
・PY180:PV Fast Yellow HG(クラリアントジャパン株式会社:C.I.ピグメント・イエロー180)
・PY74:Toner Yellow 5GXT(クラリアント株式会社:C.I.ピグメント・イエロー74)
<顔料水分散液Bの製造>
実施例1
製造例1で得られた顔料水分散液A1の100部(固形分20%)をねじ口付きガラス瓶に取り、1分子内に3個のエポキシ基を有する架橋剤としてトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX−321、分子量302、エポキシ当量140、水溶率27%)0.96部(架橋度40%)を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。5時間経過後、室温まで降温し、5μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジ(テルモ株式会社製)で濾過して、顔料水分散液B1を得た。
実施例2〜5、7〜8
実施例1において、顔料水分散液A1に代えて、表3に示す顔料水分散液A2〜A7を用いて、表3に示す条件で、実施例1と同様にして、顔料水分散液B2〜5、B7〜8を得た。
実施例6
製造例3で得られた顔料水分散液A3の100部(固形分20%)をねじ口付きガラス瓶に取り、前記デナコールEX−321の1.9部(架橋度80%)を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。その後、実施例1と同様にして、顔料水分散液B6を得た。
比較例1
製造例8で得られた顔料水分散液A8の100部(固形分20%)をねじ口付きガラス瓶に取り、前記デナコールEX−321の0.60部(架橋度40%)を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。その後、実施例1と同様にして、顔料水分散液B9を得た。
比較例2〜6、8
比較例1において、顔料水分散液A8に代えて、顔料水分散液A9〜14を用い、前記デナコールEX−321の添加量を表3に示すとおりとした以外は、比較例1と同様にして、顔料水分散液B10〜14、B16を得た。
比較例7
製造例3で得られた顔料水分散液A3の100部(固形分20%)をねじ口付きガラス瓶に取り、1分子内に2個のエポキシ基を有する水溶性架橋剤としてポリグリセリンポリグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社製、デナコールEX−521、エポキシ当量183)1.3部(架橋度40%)を加えて密栓し、スターラーで撹拌しながら70℃で5時間加熱した。その後、実施例1と同様にして、顔料水分散液B15を得た。
参考例1
製造例15で得られた顔料水分散液A15を用いて、比較例1と同様にして、顔料水分散液B17を得た。
<水性インクの調製と評価試験>
(水性インクの調製)
実施例、比較例で得られた各顔料水分散液Bを用いて、水性インク全体に対する顔料濃度5%、グリセリン(花王株式会社製、湿潤剤)5%、トリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、有機溶媒)7%、アセチレノールE100(川研ファインケミカル株式会社製、ノニオン性界面活性剤)0.5%とし、イオン交換水を加えて、全量が100%になるよう計量し、マグネチックスターラーで撹拌してよく混合し、1.2μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:2.5cm、富士フイルム株式会社製)を取り付けた容量25mLの針なしシリンジで濾過して、水性インクを得た。
得られた水性インクを用いて、下記の試験1〜3を行い、評価した。結果を表3に示す。
試験1(保存安定性評価)
各水性インクを、株式会社マルエム社製のスクリュー管に密栓して20℃及び60℃に設定した恒温室内にそれぞれ1週間静置した後、平均粒径を測定して、下記式から平均粒径増大率を算出した。
平均粒径増大率(%)=〔(保存後のインクの平均粒径−インク調製に用いた水分散体の平均粒径)/インク調製に用いた水分散体の平均粒径〕×100
粒径増大率が小さいほど凝集が抑制され、保存安定性が優れている。
(評価基準)
◎:平均粒径増大率 0〜5%以下
○:平均粒径増大率 5%超〜7%以下
△:平均粒径増大率 7%超〜10%以下
×:平均粒径増大率 10%超
試験2(吐出性評価)
インクジェットプリンター(セイコーエプソン株式会社製、型番:EM−930C、ピエゾ方式)に上記で得られた水性インクを装填し、XEROX社製の普通紙4200 100枚に全面ベタ印刷(ファインモード)し、100枚目の印刷物を観察し、白線(吐出されていないノズル数に相当)の数を計測した。次にノズルクリーニング操作を実施した後、更に100枚の全面ベタ印刷を実施して再度100枚目(合計200枚目)の印刷物を観察し、白線の発生本数を吐出ノズル幅当たりで計測して、以下の基準で吐出性を評価した。
(評価基準)
◎:100枚目の印字物及び200枚目の印刷物で白線発生なし。
○:100枚目の印字物で白線なし且つ200枚目の印刷物で白線発生2本以下。
△:100枚目又は200枚目の印刷物で白線発生3本以上。
◎及び〇評価であれば通常のインクジェット記録用水性インクとして実用可能である。
試験3(光沢性評価)
試験1(吐出性評価)で用いた印刷パターンと印刷モードを使用して、普通紙の代わりにコート紙(王子製紙株式会社製、OKトップコート)に印刷して、ハンディ光沢計(日本電色工業株式会社製、PG−II)で60°光沢度を測定した。
(評価基準)
◎:光沢度 40以上
○:光沢度 40未満〜20以上
△:光沢度 20未満
60°光沢度が高いほど光沢性に優れ、印字物がきれいに見え、好ましい。
◎及び〇評価であればインクジェット記録用水性インクに好適である。
表3から、実施例の水性インクは、比較例の水性インクに比べて、平均粒径が相対的に小さく、また保存安定性、吐出性に優れ、かつ光沢性に優れた記録物を得ることができることが分かる。
また、酸価が150mgKOH/gである芳香族基含有水不溶性ポリマーからなるポリマー分散剤を用いた参考例1と比較例1〜4を対比すると、黄色アゾ系顔料としてピグメント・イエロー74を用いた参考例1は、保存安定性、インクジェット吐出性、得られる記録物の画像の光沢性には問題がないにも関わらず、ピグメント・イエロー128、ピグメント・イエロー150、ピグメント・イエロー155及びピグメント・イエロー180を用いた比較例1〜4では、インクジェット吐出性、得られる画像の光沢性が劣ることが分かる。しかし、これらの顔料を用いても、酸価が200〜320mgKOH/gの範囲にある芳香族基含有水不溶性ポリマーを用いた実施例1〜8の水性インクでは、ピグメント・イエロー74を用いた参考例1の水性インクと比べても、保存安定性、吐出性、光沢性が同等以上であることが分かる。

Claims (8)

  1. 黄色アゾ系顔料(A)、芳香族基含有ポリマー(B)、及びアルカリ金属水酸化物(C)を含有するインクジェット記録用水性顔料分散液であって、
    芳香族基含有ポリマー(B)が、酸価が200mgKOH/g以上320mgKOH/g以下である芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)を水不溶性多官能エポキシ化合物(b)で架橋してなり、
    該水不溶性ポリマー(a)の酸価と中和度と架橋度とが、下記条件1を満たすインクジェット記録用水性顔料分散液。
    条件1:〔(100−中和度−架橋度)/100〕×(水不溶性ポリマー(a)の酸価)の値が−30mgKOH/g以上130mgKOH/g以下である。
    ここで、中和度は「アルカリ金属水酸化物(C)のモル当量数/水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)、架橋度は「水不溶性多官能エポキシ化合物(b)のエポキシ基のモル当量数/水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)である。
  2. 芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)中の芳香族基含有モノマー由来の構成単位の含有量が50質量%以上90質量%以下である、請求項1に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液。
  3. 芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)の数平均分子量が3,000〜20,000である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水性顔料分散液。
  4. 黄色アゾ系顔料(A)が、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー155、及びC.I.ピグメントイエロー180からなる群の中から選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のインクジェット記録用水性顔料分散液。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のインクジェット記録用水性顔料分散液を主成分として含む、インクジェット記録用水性インク。
  6. 下記工程1〜4を有し、かつ工程1における芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)が下記条件1を満たす、インクジェット記録用水性インクの製造方法。
    工程1:黄色アゾ系顔料(A)、酸価が200mgKOH/g以上320mgKOH/g以下である芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)、アルカリ金属水酸化物(C)、有機溶媒、及び水を含有する混合物を分散処理して、顔料分散液を得る工程
    工程2:工程1で得られた顔料分散液から有機溶媒を除去して、顔料水分散液Aを得る工程
    工程3:工程2で得られた顔料水分散液Aを、水不溶性多官能エポキシ化合物(b)で架橋処理し、架橋された芳香族基含有ポリマー(B)に黄色アゾ系顔料(A)が含有された顔料水分散液Bを得る工程
    工程4:工程3で得られた顔料水分散液Bと有機溶媒とを混合し、水性インクを得る工程
    条件1:〔(100−中和度−架橋度)/100〕×(水不溶性ポリマー(a)の酸価)の値が−30mgKOH/g以上130mgKOH/g以下である。
    ここで、中和度は「アルカリ金属水酸化物(C)のモル当量数/水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)、架橋度は「水不溶性多官能エポキシ化合物(b)のエポキシ基のモル当量数/芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)のカルボキシ基のモル当量数」の百分比(モル%)である。
  7. 芳香族基含有水不溶性ポリマー(a)の数平均分子量が3,000〜20,000である、請求項6に記載のインクジェット記録用水性インクの製造方法。
  8. 黄色アゾ系顔料(A)が、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー155、及びC.I.ピグメントイエロー180から選ばれる1種以上である、請求項6又は7に記載のインクジェット記録用水性インクの製造方法。
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