JP2018087297A - 塗液組成物、銀ナノ粒子積層体及び銀ナノ粒子積層体の製造方法 - Google Patents

塗液組成物、銀ナノ粒子積層体及び銀ナノ粒子積層体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】膜強度や基材との密着性を向上させた銀ナノ粒子積層体、その銀ナノ粒子積層体を構成する銀ナノ粒子膜を形成するための塗液組成物及びその塗液組成物を用いた銀ナノ粒子積層体の製造方法を提供する。【解決手段】本実施形態の銀ナノ粒子積層体10は、基材1と、基材1上に形成され、銀ナノ粒子と、分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び電離放射線照射により得られる三次元架橋構造を有する樹脂と、を含む銀ナノ粒子膜層2と、を備えている。【選択図】図1

Description

本発明は、塗液組成物、銀ナノ粒子積層体及び銀ナノ粒子積層体の製造方法に関する。
銀ナノ粒子は他の物質には見られない電気的、熱的、光学的特性を有し、太陽電池からセンサーに至る幅広い製品で利用されている。さらに、銀ナノ粒子は他の多くの色素や顔料と異なり、光の吸収や散乱が極めて効果的であり、粒子の大きさや形状に応じて色を有する。光と銀ナノ粒子との強い関係は、表面プラズモン共鳴と呼ばれ、特定の波長の光で励起された際に金属表面の伝導電子が集団的な振動を起こすためで、通常にはない散乱や吸収特性の原因となる。
一般に金属銀が分散した塗液は、金属配線の用途に用いられることが多い。例えば、金属銀が分散した塗液で配線基板上にパターンを形成し、その塗液中に含まれる金属銀を焼結させて配線を形成する。金属銀を導電性材料として使用する場合、分散した金属銀の微細化による融点降下を利用して低温で焼結する必要があることが知られている。現在では、微細化したナノサイズの金属ナノ粒子が低温焼結可能な材料として期待されている。
しかし、融点降下を示すほどの微小な金属銀の粒子は、互いに接触し凝集しやすい。この凝集を防止するためには、上述した塗液に分散剤を添加する必要があるが、分散剤を添加することによって、金属ナノ粒子特有の表面プラズモン共鳴が阻害され、特有の発色に悪影響を及ぼす可能性がある。また、銀ナノ粒子特有の光学的特性を有する機能膜を作製するためには、分散性がよい塗液であって、低温では焼結しない銀膜となる必要がある。また、金属光沢を有する塗膜を作製したい場合は、塗布後に比較的低温で金属光沢をだす必要があり、用途に応じて焼結温度を変えることができなければならない。さらに、銀ナノ粒子、分散剤の他に膜強度や基材との密着性を上げるための樹脂成分を加えても凝集しない塗液組成であることが必要となる。
従来、銀ナノ粒子を得ようとする場合、一般には硝酸銀や塩化銀などの銀塩を溶解させた水溶液などを用いて、存在する銀イオンを何らかの還元剤により還元して所望の形態の金属塩として析出させることが通常であった(特許文献1〜特許文献3)。また、特に微細な銀粒子の製造においては、真空中において原子状銀を凝集させて銀ナノ粒子とする方法等も知られている(特許文献4)。
また、シュウ酸銀とアミンを混合して、熱分解することによりシュウ酸銀アミン錯体を経て銀ナノ粒子を製造する方法等も知られている(特許文献5、特許文献6)。この手法によれば、原料となる化合物から解離して生じる銀原子が、銀ナノ粒子を構成する過程で銀イオンの状態を経ることがない。このため、上記手法であれば、銀イオンを還元するための還元剤を混合する必要がなく、単純な手法で平均粒径が均一な銀微粒子を製造することが可能である。さらに、アミン錯体の分解の際、アミン分子のアミノ基が銀粒子表面に配位することから、分散剤を添加しなくてもある種の有機溶剤に分散可能な銀ナノ粒子が得られる。
特表2012−509396号公報 特開2012−180589号公報 特開2012−140701号公報 特開2002−121437号公報 特開2012−162767号公報 特許第5574761号公報
しかしながら、この銀ナノ粒子分散液のみを塗布し銀ナノ粒子膜を形成した場合、その銀ナノ粒子膜の強度や基材との密着性が十分でないために、銀ナノ粒子膜が基材から剥離しやすいという課題があった。
本発明においては、上記の事情を鑑みてなされたものであり、膜強度や基材との密着性を向上させた銀ナノ粒子積層体、その銀ナノ粒子積層体を構成する銀ナノ粒子膜を形成するための塗液組成物及びその塗液組成物を用いた銀ナノ粒子積層体の製造方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る塗液組成物は、銀ナノ粒子と、分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び1個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物と、電離放射線照射により重合開始種を発生する化合物とを含んでいる。
また、本発明の一態様に係る銀ナノ粒子積層体は、基材と、前記基材上に形成され、銀ナノ粒子と、分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び電離放射線照射により得られる三次元架橋構造を有する樹脂と、を含む銀ナノ粒子膜と、を備えている。
また、本発明の一態様に係る銀ナノ粒子積層体の製造方法は、上述した塗液組成物を、基材上に塗布し乾燥させた後、前記塗液組成物に対して電離放射線を照射して硬化膜を形成する。
本発明の一態様によれば、膜強度及び基材密着性を向上させた銀ナノ粒子積層体、その銀ナノ粒子積層体を構成する銀ナノ粒子膜を形成するための塗液組成物及びその塗液組成物を用いた銀ナノ粒子積層体の製造方法を提供することが可能となる。
本発明の実施形態に係る銀ナノ粒子積層体の構成を模式的に示す断面図である。 本発明の実施形態に係る銀ナノ粒子積層体の製造工程を模式的に示す図である。 本発明の実施例1で得られた銀ナノ粒子のトルエン溶媒分散液を基板に塗布し乾燥させた後、観察した銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像を示す図である。 本発明の実施例1で得られた銀ナノ粒子の粒度分布及び累積度数(%)を示す図である。 本発明の実施例1で得られた銀ナノ粒子膜層の反射スペクトルを示す図である。 本発明の実施例1で得られた銀ナノ粒子積層体の断面の走査型電子顕微鏡像を示す図である。 本発明の実施例2で得られた銀ナノ粒子膜層の反射スペクトルを示す図である。
以下に、図面を参照して、本発明の実施形態に係る塗液組成物、銀ナノ粒子膜、銀ナノ粒子積層体及び銀ナノ粒子膜の製造方法について説明する。ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(銀ナノ粒子積層体10の構成)
図1は、本発明の実施形態に係る銀ナノ粒子積層体10の構成を模式的に示す断面図である。
図1に示す銀ナノ粒子積層体10は、基材1と、基材1上に形成され、銀ナノ粒子と、分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び電離放射線照射により得られる三次元架橋構造を有する樹脂と、を含む銀ナノ粒子膜層2と、を少なくとも備えている。なお、上記三次元架橋構造を有する樹脂は、分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び1個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物(以下、単に「重合性化合物」とも称する)を電離放射線照射により重合させて得たものである。
以下、上述した各層の詳細について説明する。
[基材1]
基材1は、銀ナノ粒子膜層2を支持する部材である。このため、銀ナノ粒子膜層2を支持し形成することが可能であれば、基材の種類を問わない。本実施形態では、基材1としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを使用することができる。
[銀ナノ粒子膜層2]
銀ナノ粒子膜層2は、基材1上に形成され、且つ銀ナノ粒子(図示せず)と、重合性化合物が重合し三次元架橋構造を有する樹脂、特にウレタン結合を有する三次元架橋構造を有する樹脂を含んだ層である。ここで、上述の重合性化合物に備わるカルボキシ基は、例えば、琥珀酸またはフタル酸またはヘキサヒドロフタル酸である。
銀ナノ粒子膜層2に含まれる銀ナノ粒子の表面は、例えば、1級アミノ基と3級アミノ基とを有するアルキルジアミンを主成分として含む保護分子により覆われている。また、この銀ナノ粒子は、有機溶剤(分散溶媒)に分散可能であり、その平均粒径は、例えば30nm以下である。
銀ナノ粒子膜層2に含まれる銀ナノ粒子の添加量は、基材とも密着性や表面の強度に悪影響を及ぼさない範囲で設定され、銀ナノ粒子が少ない場合は、表面に銀ナノ粒子が集まることにより特有の反射光がみられ、多いと硬化層全体に分散することにより金属光沢がみられる。
(銀ナノ粒子積層体10の製造方法)
[銀ナノ粒子の合成]
銀ナノ粒子を構成する銀の原料としては、含銀化合物のうちで、加熱により容易に分解して金属銀を生成する銀化合物が好ましく使用される。このような銀化合物としては、例えば、蟻酸、酢酸、シュウ酸、マロン酸、安息香酸、フタル酸などのカルボン酸と銀が化合したカルボン酸銀の他、塩化銀、硝酸銀、炭酸銀等を用いることができる。そして、それらの銀化合物の中でも、分解により容易に金属を生成し、かつ、銀以外の不純物を生じにくい観点からシュウ酸銀が好ましく用いられる。シュウ酸銀は、銀含有率が高いとともに、加熱によりシュウ酸イオンが二酸化炭素として分解除去される。このために、還元剤を必要とせず熱分解により金属銀がそのまま得られ、不純物が残留しにくい点で有利といえる。
本実施形態では、上記銀化合物に所定のアルキルジアミンを加えて、銀化合物と当該アミンとの錯化合物を生成させる。この錯化合物には、銀、アルキルジアミン及びシュウ酸イオンが含まれる。この錯化合物においては、銀化合物に含まれる各銀原子に対してアミンに含まれる窒素原子がその非共有電子対を介して配位結合することにより、錯化合物を生成しているものと推察される。この時、アミノ基は1級であるRNH(Rは炭化水素基)であることが好ましく、3級アミノ基となった場合は空間的に銀原子への配位が困難となる。このため、アルキルジアミンが1級と3級のアミノ基であれば、1級アミノ基が選択的に銀原子に配位し、3級アミノ基は分子鎖に応じて外側を向くことになる。なお、2級アミノ基は、配位可能であるが、合成上の問題と、反応性が落ちるため、1級アミノ基と3級アミノ基を備えたアルキルジアミンの使用が好ましい。
このように生成するジアミンが配位した金属銀原子は、その生成後に速やかに凝集し、相互に金属結合を生成して結合して銀ナノ粒子を形成する。この際に、各銀原子に配位したジアミンが銀ナノ粒子の表面に保護膜を形成するため、一定の銀原子が集合して銀ナノ粒子を形成した後は、当該ジアミンの保護膜によってそれ以上の銀原子が結合することが困難と考えられる。このため、錯化合物に含まれる銀化合物の分解と銀ナノ粒子の生成を、溶媒が存在せず銀原子が極めて高密度に存在する状態で行った場合でも、典型的には、粒径が30nm以下で粒径の揃った銀ナノ粒子が安定して得られるものと考えられる。
銀化合物とジアミンとの錯化合物の生成において、銀原子とジアミンとのモル比を1:1〜1:4とすることが好ましく、1:2〜1:4とすることがより好ましい。銀化合物とジアミンとの錯化合物の生成においてジアミンの量が上記の範囲を超えて少なくなると、ジアミンが配位していない銀原子の割合が増加し、得られる銀ナノ粒子が肥大するようになる。また、銀原子の2倍量以上のジアミンが存在することにより、平均粒径がほぼ30nm以下の銀ナノ粒子が安定して得られるようになることから、この程度のジアミン量により確実にすべての銀原子がジアミンにより配位可能になるものと考える。また、ジアミンが銀原子の4倍量以上になると、反応系における銀原子の密度が低下して、最終的な銀の回収歩留まりが低下するため、ジアミンの使用量は、銀原子の4倍量以下とすることが好ましい。また、銀原子とジアミンのモル比を1:1程度とする場合には、全てのアミンが銀原子に配位して錯化合物を形成して反応系を保持する分散溶媒が存在しないこととなるため、必要に応じてメタノール等の反応溶媒を混合することも好ましい。
銀化合物とジアミンとの錯化合物を攪拌しながら加熱すると、青色光沢を呈する懸濁液が得られる。この懸濁液から過剰のジアミン等を除去することによって、本実施形態に係る保護分子で表面が被覆された銀ナノ粒子(以下、単に「被覆銀ナノ粒子」とも称する)が得られる。銀化合物とジアミンとの錯化合物を加熱して被覆銀ナノ粒子を得る際の条件は、使用する銀化合物やジアミンの種類に応じて、熱分解を行う際の温度、圧力、雰囲気などの条件を適宜選択できる。この際に、生成する被覆銀ナノ粒子が、熱分解を行う雰囲気との反応により汚染されたり、銀ナノ粒子の表面を覆う保護膜が分解されたりすることを防止する観点から、アルゴン雰囲気などの不活性雰囲気内で銀化合物の熱分解を行うことが好ましい。一方、銀化合物としてシュウ酸銀を用いる場合には、シュウ酸イオンの分解によって発生する二酸化炭素により反応空間が保護されるため、大気中においてシュウ酸銀とジアミンとの錯化合物を加熱することでシュウ酸銀の熱分解が可能である。
銀化合物の熱分解のために銀化合物とジアミンとの錯化合物を加熱する温度は、ジアミンの脱離を防止する観点から概ね使用するジアミンの沸点以下が好ましい。本実施形態では、一般的に80〜130℃程度に加熱することで、ジアミンで形成された保護膜を有する被覆銀ナノ粒子を得ることができる。
上記の通り、一般に、銀に対して過剰量のアルキルアミンを必要とする他の被覆銀ナノ粒子の合成法に比べて、本実施形態では、銀原子:ジアミンの総量が1:1(モル比)でも被覆銀ナノ粒子が高収率で合成できるため、アルキルジアミンの使用量を削減できる。また、シュウ酸イオンの熱分解で生じる二酸化炭素は、反応系外に容易に除去されるため、還元剤に由来する副生成物がなく、反応系から被覆銀ナノ粒子の分離も簡単にでき、被覆銀ナノ粒子の純度も高い。
銀ナノ粒子は黄色の鮮明な色材として期待されているが、一般に、その表面プラズモンバンドの極大吸収波長が400nmよりも長波長側に現れるため、鮮明な黄色の色材として課題がある。これに対して、本実施形態のシュウ酸イオン・アルキルジアミン・銀錯化合物の熱分解では、表面プラズモンバンドの極大吸収波長が400nmよりも短波長側にある被覆銀ナノ粒子を得ることが容易であり、装飾品等の色材としても有用である。
本実施形態に係る被覆銀ナノ粒子が400nmよりも短波長側に表面プラズモンバンドの極大吸収波長を有することは、当該銀ナノ粒子を構成する銀原子が電気的に中性な金属塩からなることを示しており、被覆を構成するジアミンが配位結合により金属銀に結合していることを示すものである。
本実施形態に係る被覆銀ナノ粒子を分散溶媒として用いられる溶剤等に分散させる際には、銀ナノ粒子の保護膜を脱離させないような条件で、保護膜を形成する際に用いた過剰のアルキルジアミン等を除去すると共に使用する溶剤で置換することで、被覆銀ナノ粒子が分散した分散液を得ることが好ましい。特に、本実施形態に係る被覆銀ナノ粒子を大気等に晒した場合には、低温でもその保護膜が脱離して銀ナノ粒子の凝集焼結が開始される。このため、被覆銀ナノ粒子をアルキルジアミン等から適宜の溶剤に置換する際には、被覆銀ナノ粒子が大気等に晒されない条件を選択して置換を行うことが好ましい。
なお、本実施形態に係る被覆銀ナノ粒子を適宜の揮発性の分散溶媒に分散させた分散液を用いて、スピンコート法やインクジェット法によって所望の基材1上に塗布し塗膜を形成して、色材や光機能性膜として適応する場合、銀のみからなる成分だけでは、膜強度や基材1との密着性が弱く、触れただけで取れてしまう。そこで、銀ナノ粒子膜層2の強度や銀ナノ粒子膜層2と基材1との密着性を上げる成分を加える必要がある。膜特性の向上には、幾つかの手法があるが、熱重合や光重合を利用することが簡便である。このため、不飽和二重結合やオキソラン環を有した化合物を塗工液に添加する手法が好ましい。本実施形態に係る被覆銀ナノ粒子は、3級のアミノ基が保護膜の外側にある確率が高いため、添加する化合物にカルボキシ基があるときれい(均一に)に分散できることがわかった。なお、熱重合では、銀の焼結も同時に起きてしまうため、光重合が好ましい。光重合の場合は、ラジカル重合、カチオン重合が一般的であり、適宜、カルボキシ基を有するモノマー、光重合開始剤を添加して塗工液とすることができる。
以下、本実施形態について更に詳細に説明する。
<シュウ酸銀>
シュウ酸銀は、銀含有率が高く、通常200℃で熱分解する。熱分解すると、シュウ酸イオンが二酸化炭素とし除去されて金属塩がそのまま得られる。このため、還元剤を必要とせず、不純物が残留しにくい点で有利である。このような理由から、本実施形態において被覆銀ナノ粒子を得るための銀の原料となる銀化合物としてはシュウ酸銀を好ましく用いられる。以下、銀化合物としてシュウ酸銀を用いた場合について説明する。但し、上記のように、銀化合物と所定のジアミンとの間で生成する錯化合物において、当該ジアミンが銀原子に配位した状態であればシュウ酸銀に限定されずに用いられることは言うまでもない。
本実施形態で用いられるシュウ酸銀として制限はなく、例えば、市販のシュウ酸銀を用いることができる。また、シュウ酸銀のシュウ酸イオンの20モル%以下を、例えば炭酸イオン、硝酸イオン及び酸化物イオンの少なくとも1種以上で置換しても良い。特に、シュウ酸イオンの20モル%以下を炭酸イオンで置換した場合、シュウ酸銀の熱的安定性を高める効果がある。置換量が20モル%を超えると前記錯化合物が熱分解しにくくなる場合がある。特に、沸点が250℃以下のアルキルジアミンを含んだシュウ酸イオン・アルキルジアミン・銀錯化合物では、100℃以下の低い温度での熱分解で被覆銀ナノ粒子を高効率で得ることができる。
<アルキルジアミン>
本実施形態で用いられるアルキルジアミンは、特に、その構造に制限はない。アルキルジアミンは、シュウ酸銀と反応して、上述の錯化合物を形成するため、少なくともひとつのアミノ基が1級アミノ基または2級アミノ基であることが必要であり、1級アミノ基であることが好ましい。さらに、非極性の分散溶媒との親和性を高めるため、もう一方のアミノ基は3級アミノ基であることが望ましい。アルキルジアミンとしては、例えば、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、N,N−ジメチル−1,6−ヘキサンジアミン等が挙げられるが、この限りではない。また、複数の異なるアルキルジアミンを同時にシュウ酸銀と反応させても良い。
<その他の化合物>
本実施形態における、分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び1個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物(重合性化合物)としては、例えば、アクリロイル基及びメタクリロイル基を有したアクリル樹脂、ウレタン樹脂等のオリゴマー、プレポリマー、モノマー等のラジカル重合性化合物等が例示できる。これらの樹脂は、例えば、熱、紫外線、電子線等のエネルギーを加えることで架橋するものである。これらの化合物を、膜強度、基材との密着性、カール量を考慮しながら適宜選択する。
また、本実施形態における銀ナノ粒子膜層2は、電離放射線照射により重合開始種を発生する化合物を含んでいてもよい。
本実施形態の重合性化合物に使用する成分として好ましいものは、以下のコハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸の片側をアクリルエステル、メタクリルエスルに置換したものが挙げられる。具体的には、新中村化学社のA−SA(2−アクリロイルオキシエチルコハク酸)、SA(2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸)、共栄社化学社のライトアクリレートHOA−MPL(N)(2−アクリロイルオキシエチルフタル酸)、ライトアクリレートHOA−HH(N)(2−アクリロイルオキシヘキサヒドロフタル酸)、多塩基酸変性アクリレートであるDPE6A−MS(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸変性物)、PE3A−MS(ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸変性物)、DPE6A−MP(ジペンタエリスリトールペンタアクリレートフタル酸変性物)、PE3A−MS(ペンタエリスリトールトリアクリレートフタル酸変性物)等を挙げることができるが、この限りではない。
また、A−SA等単官能モノマーの場合は、光架橋させるために、多官能モノマーを添加しても良い。添加する多官能モノマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等を挙げることができるが、この限りではない。これら多官能モノマーは、被覆銀ナノ粒子が分散しないため、前記カルボキシ基を有するモノマーの重量に対して30%以下でなければ分散性に悪影響を及ぼす。
紫外線照射により重合する化合物を使用する場合は、上述の電離放射線照射により重合開始種を発生する化合物として光ラジカル重合開始剤を用いることができる。光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、α−ヒドロキシケトン、ベンジルメチルケタール、α―アミノケトン、モノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイド等を単独または混合して用いることができる。具体的には、BASF社のIrgacure 184、Irgacure 651、Irgacure 1173、Irgacure 907、Irgacure 369、Irgacure 819、Irgacure TPO、ランバルティ社のEsacure KIP−150、Esacure ONE等を挙げることができるが、この限りではない。
[銀ナノ粒子積層体10の製造工程]
銀ナノ粒子積層体10を製造するための第1〜第3の工程について、以下説明する。
第1の工程は、上述した被覆銀ナノ粒子と重合性化合物と重合開始剤とを溶剤等に分散・溶解し、粘度を調整した塗液組成物20を作成する工程である。
第2の工程は、第1の工程で作成した塗液組成物20をフィルム基材やガラス基材に塗工し、図2(a)に示すように、塗液組成物20からなる層2aを形成する工程である。なお、図2(a)は、バーコーター30を用いて塗液組成物20から層2aを形成している様子を示している。
第3の工程は、層2aに対して紫外線照射等の電離放射線照射処理を行い、図2(b)に示すように、層2aを硬化させて銀ナノ粒子膜層2を形成する工程である。
上記第1〜第3の工程を経て、本実施形態に係る銀ナノ粒子積層体10が得られる。
上記第1の工程で用いる適当な溶剤としては、例えば、トルエン、日本テルペン化学社製のターピネオールC、ジヒドロターピネオール、テルソルブTHA−90等を挙げることができる。また、これらの溶剤のうち、数種類を混合して用いても良い。上述の溶剤は、塗液組成物20中に、塗液組成物20全体の95重量%までの量で存在できる。また、該溶剤は、第1の工程で作成した塗液組成物20を基材1に塗布し乾燥させる際に実質的に除去される。
本実施形態において、上述した成分以外に、必要に応じて相溶性のある添加物、例えば、可塑剤、安定剤、界面活性剤、レベリング剤、カップリング剤などを、本実施形態の目的を損なわない範囲で添加することができる。但し、カールを抑制するため、または硬度を上げるためのフィラー類は、透過率の低下や分散性に不具合を生じるため加えないことが好ましい。
このように各成分を適宜選択し、任意の割合で混合して得た塗液を、例えばロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、バーコーター、ダイコーター、ディップコーター等の公知の塗工手段を用いて基材1に塗布し乾燥させた後、UV(ultraviolet)を照射する。
以上のように、従来の問題点を鑑みて、鋭意研究した結果、膜強度や密着性を上げるために加える成分が銀ナノ粒子の分散に悪影響を及ぼし凝集してしまうが、銀の原料となる銀化合物を分解して銀ナノ粒子を製造する際に、1級アミンと3級アミンを有するアルキルジアミンを介在させて用い、さらに、膜強度や密着性を上げるために加える成分中にカルボキシ基を有する重合性化合物を用いると、分散性を維持したまま膜強度や密着性を向上さえることのできる塗液組成物20ができる。より詳しくは、銀の原料となる銀化合物として、例えば、シュウ酸銀を用いると共に、N,N−ジアルキルアミノアルキルアミンを介在させることによってシュウ酸銀に含まれる銀原子に当該アルキルジアミンの1級アミノ基部分が配位した錯化合物を調製し、この状態でシュウ酸銀を構成するシュウ酸イオンの部分を熱分解することにより、被覆銀ナノ粒子を高収率で調製することができる。当該被覆銀ナノ粒子は、錯形成しない3級アミノ基が粒子の最外面を向くため、カルボキシ基を有する例えばアクリレート化合物、メタクリレート化合物とイオン結合により引き寄せあうことで分散系を崩すことなく分散液として調製することができる。さらに得られた塗液は、有機溶剤等で容易に希釈可能で、さらに、光重合開始剤等も添加可能である。この分散液を用いてプラスチック基材上で作製した被覆銀ナノ粒子の塗布膜を高圧水銀灯等でUV照射すると、膜強度が高く基材密着性の強い硬化膜(銀ナノ粒子膜層)2を得ることができる。
(本実施形態の効果)
(1)本実施形態に係る塗液組成物20は、銀ナノ粒子と、分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び1個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物と、電離放射線照射により重合開始種を発生する化合物とを含んでいる。
このような構成であれば、銀ナノ粒子膜層2の膜強度及び基材密着性が向上する。
(2)また、本実施形態に係る塗液組成物20を構成する銀ナノ粒子の表面は、保護分子により覆われ、前記保護分子は、1級アミノ基と3級アミノ基とを有するアルキルジアミンを主成分として含んでもよい。
このような構成であれば、銀ナノ粒子をトルエン等の非極性溶媒に分散させた場合、その分散性が良好となる。
(3)また、本実施形態に係る塗液組成物20を構成する分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び1個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物に備わるカルボキシ基は、琥珀酸またはフタル酸またはヘキサヒドロフタル酸であってもよい。
このような構成であれば、銀ナノ粒子膜層2の膜強度及び基材密着性が確実に向上する。
(4)また、本実施形態に係る塗液組成物20を構成する銀ナノ粒子は、分散溶媒に分散していてもよい。
このような構成であれば、銀ナノ粒子を分散溶媒に分散させた場合、その分散性が良好となる。
(5)また、本実施形態に係る塗液組成物20を構成する銀ナノ粒子は、有機溶剤に分散していてもよい。
このような構成であれば、銀ナノ粒子を有機溶剤に分散させた場合、その分散性が良好となる。
(6)また、本実施形態に係る塗液組成物20を構成する銀ナノ粒子の平均粒径は、30nm以下であってもよい。
このような構成であれば、銀ナノ粒子を溶媒中に分散させた場合には、その分散性が良好となる。
(7)本実施形態に係る銀ナノ粒子積層体10の製造方法は、上述の塗液組成物20を、基材1上に塗布し乾燥させた後、塗液組成物20に対して電離放射線を照射し、銀ナノ粒子膜層2を形成する。
このような構成であれば、銀ナノ粒子膜層2の膜強度及び基材密着性が向上する。
(8)本実施形態に係る銀ナノ粒子積層体10は、基材1と、基材1上に形成され、銀ナノ粒子と、分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び電離放射線照射により得られる三次元架橋構造を有する樹脂と、を含む銀ナノ粒子膜層2と、を備えている。
このような構成であれば、銀ナノ粒子膜層2の膜強度及び基材密着性がより向上する。
(9)また、本実施形態に係る銀ナノ粒子膜層2を構成する三次元架橋構造を有する樹脂は、ウレタン結合を有してもよい。
このような構成であれば、銀ナノ粒子膜層2の膜強度及び基材密着性がさらに向上する。
(10)また、本実施形態に係る銀ナノ粒子膜層2を構成する銀ナノ粒子は、保護分子により覆われ、前記保護分子は、1級アミノ基と3級アミノ基とを有するアルキルジアミンを主成分として含んでもよい。
このような構成であれば、銀ナノ粒子をトルエン等の非極性溶媒に分散させた場合、その分散性が良好となる。
(11)また、本実施形態に係る銀ナノ粒子膜層2を構成する分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び電離放射線照射により得られる三次元架橋構造を有する樹脂に備わるカルボキシ基は、琥珀酸またはフタル酸またはヘキサヒドロフタル酸であってもよい。
このような構成であれば、銀ナノ粒子膜層2の膜強度及び基材密着性が確実に向上する。
(12)また、本実施形態に係る銀ナノ粒子膜層2を構成する銀ナノ粒子は、分散溶媒に分散可能であってもよい。
このような構成であれば、銀ナノ粒子を分散溶媒に分散させた場合、その分散性が良好となる。
(13)また、本実施形態に係る銀ナノ粒子膜層2を構成する銀ナノ粒子は、有機溶剤に分散可能であってもよい。
このような構成であれば、銀ナノ粒子を有機溶剤に分散させた場合、その分散性が良好となる。
(14)また、本実施形態に係る銀ナノ粒子膜層2を構成する銀ナノ粒子の平均粒径は、30nm以下であってもよい。
このような構成であれば、銀ナノ粒子を溶媒中に分散させた場合には、その分散性が良好となる。
(15)また、本実施形態に係る銀ナノ粒子膜層2を構成する銀ナノ粒子膜は、電離放射線照射により重合開始種を発生する化合物を含んでもよい。
このような構成であっても、銀ナノ粒子膜層2の膜強度及び基材密着性は向上する。
(16)本実施形態に係る銀ナノ粒子積層体10は、基材1と、基材1上に形成され、分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び電離放射線照射により得られる三次元架橋構造を有する樹脂と、を含む硬化層と、前記硬化層上に形成され、銀ナノ粒子を含む銀ナノ粒子凝集層と、を備えている。
このような構成であれば、銀ナノ粒子膜層2の膜強度及び基材密着性が向上する。
(17)また、本実施形態に係る銀ナノ粒子積層体10を構成する硬化層は、電離放射線照射により重合開始種を発生する化合物を含んでもよい。
このような構成であっても、銀ナノ粒子膜層2の膜強度及び基材密着性は向上する。
以上のように、本実施形態であれば、上述した従来技術の問題点を解決して、その製造過程や保存中においては十分に銀ナノ粒子が分散状態にあり、その凝集が防止される。また、その銀ナノ粒子を用いて製膜した場合には、膜強度や基材との密着性が良好で、目的に応じて、焼結させない、または焼結温度を可変できる銀ナノ粒子を含む塗液組成物20、塗液組成物20を用いて形成した銀ナノ粒子膜層2、銀ナノ粒子膜層2を備えた銀ナノ粒子積層体10及び銀ナノ粒子膜層2の製造方法を提供することができる。
(変形例)
本実施形態では、表面を保護分子で被覆した銀ナノ粒子である被覆銀ナノ粒子を用いた場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。保護分子で被覆しない銀ナノ粒子であっても、分散性は被覆銀ナノ粒子に比べて劣るものの、上述した銀ナノ粒子膜層2と同様の効果を奏する。
以下に、実施例として、銀ナノ粒子の製造方法及び溶媒への分散性、塗膜形成用塗液の調液、塗膜の物性などの評価を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例]
(実施例1)
〔シュウ酸銀の合成〕
シュウ酸二水和物(関東化学社)9.92gに蒸留水60mLを加え加温しながら溶解させ、110℃のオイルバス中で攪拌しながら、硝酸銀(関東化学社)26.7gに20mLの蒸留水を加え加温しながら溶解させたものを加え、1時間過熱攪拌を続けた。析出したシュウ酸銀を自然ろ過で回収し、さらに熱水200mL、メタノール(関東化学社)50mLでろ過洗浄した後、遮光デシケーター内で減圧しながら室温乾燥した。こうして得たシュウ酸銀の収量は、21.6g(収率90.4%)であった。
〔被覆銀ナノ粒子の合成〕
N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン(東京化成社)3.26gにオレイン酸0.13gを加えたところに、上述の工程で得たシュウ酸銀1.90gを加え、110℃のオイルバスで加熱攪拌した。1分以内で二酸化炭素の発泡が起こり、数分後に褐色の懸濁液に変化した。5分間加熱後、冷却したところにメタノール30mLを加え、遠心分離により得られた沈殿物を自然乾燥すると青色固形物1.48g(銀基準収率97.0)を得た。
得られた被覆銀ナノ粒子を、走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社、SEM S−4800)を用いてS−TEMモード(加速電圧30kV)で観察したところ、粒径が5〜20nm程度の球状粒子が観察された。その結果を図3に示す。より詳しくは、図3は、実施例1で得た被覆銀ナノ粒子のトルエン溶媒分散液を基板(銅メッシュ・マイクログリッド)に垂らし乾燥させた後に観察した銀ナノ粒子の走査型電子顕微鏡像である。
次に、得られた被覆銀ナノ粒子の溶媒への分散性を評価した。その結果、トルエン、ターピネオールC(日本テルペン化学社)、ジヒドロターピネオール(日本テルペン化学社)、及び、これらを主剤としたヘキサン等との混合溶媒に良好に分散した。そのトルエン分散溶液の動的光散乱粒度測定(日機装社、Nanotrac UPA−EX150)により、得られた被覆銀ナノ粒子は平均粒径15nmで良好に分散していることがわかった。その結果を図4に示す。また、図4に示した実線は、累積度数(%)を示している。
〔銀ナノ粒子膜層2の形成〕
上述の工程で得た青色固形物1.0gをトルエン(関東化学社)10.0gに分散させたところに、メタクリロイルオキシエチルコハク酸(SA、新中村化学社)6.0gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(ライトアクリレートDPE−6A、共栄社化学社)3.0gを添加しよく攪拌したものに、光重合開始剤としてIrgacure184(BASF社)を450mg添加し溶解させた。こうして得たものを塗液とした。
上述の工程で得た被覆銀ナノ粒子を含む塗液を、25μmギャップのドクターブレードを用い、2mm厚の青板ガラス板に塗布後、90℃1分間オーブンにて溶剤を揮発させた。この塗布板をパージボックスに入れ窒素ガスを封入してから、UVコンベアー(ヘリウス社、CV−110Q−G型、光源:ライトハンマー10MerkII、Hバルブ)にて240mJ/cmで露光し、硬化させて銀ナノ粒子膜層2を形成した。こうして得た銀ナノ粒子膜層(以下、単に「硬化膜」とも称する)2は黄色に着色し、緑色の反射光がみえた。なお、図5は、実施例1で得られた銀ナノ粒子、カルボキシ基含有のアクリルモノマー及び光重合開始剤を主剤(塗液組成物)とする塗液を青板ガラス板に塗布し乾燥させた後、UV照射して形成した硬化膜2の反射スペクトル(島津製作所社、紫外可視分光光度計 UV−2600、反射モード)を示す図である。この硬化膜2は200℃で加熱しても金属光沢は発現せず、銀の焼結は起こらなかった。
実施例1に係る硬化膜2の断面を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジー社、SEM S−4800)で観察したところ、図6に示すように、硬化層の表面には被覆銀ナノ粒子が数層に並んでいた。また、硬化膜2は、セロテープ(登録商標)を貼って剥がしてもガラス基材から剥がれなかった。実施例1に係る硬化膜2の評価結果を表1に示した。なお、図6は、実施例1で得られた銀ナノ粒子、カルボキシ基含有のアクリルモノマー及び光重合開始剤を主剤(塗液組成物)とする塗液を青板ガラス板に塗布し乾燥させた後、UV照射して形成した銀ナノ粒子積層体10の断面の走査型電子顕微鏡像を示す図である。また、図6は、硬化膜2を包埋樹脂で覆い、超ミクロトームとダイヤモンドナイフとを用いて断面出し、撮像したものである。なお、図6には、硬化層の表面に被覆銀ナノ粒子が数層に並んでいる状態(銀ナノ粒子凝集層)が示されているが、本実施形態では、被覆銀ナノ粒子を硬化層の内部に分散させた状態で固定することも可能である。
(実施例2)
実施例1で得られた青色固形物1.0gをトルエン10.0gに分散させたところに、メタクリロイルオキシエチルフタル酸多塩基酸変性アクリレートであるジペンタエリスリトールペンタアクリレートフタル酸変性物(DPE6A−MP、開発品、共栄社化学社)9.0gを添加し、光重合開始剤としてIrgacure184(BASF社)450mgを添加し溶解させたものを塗液として使用した以外は実施例1と同等に操作し硬化膜2を得た。
硬化膜2は黄色に着色し、青緑色の反射光がみえた。図7は、実施例2で得られた銀ナノ粒子、カルボキシ基含有のアクリルモノマー及び光重合開始剤を主剤(塗液組成物)とする塗液を青板ガラス板に塗布し乾燥させた後、UV照射して形成した硬化膜2の反射スペクトルを示す図である。この硬化膜2は、200℃で加熱しても金属光沢は発現せず、銀の焼結は起こらなかった。実施例2に係る硬化膜2の評価結果を表1に示した。
(実施例3)
実施例2のDPE6A−MPを5gに変え添加した塗液とし、基材としてPETフィルム(東レ社、ルミラー75T60、75μm厚、表面未処置)にバーコート(#16)にて塗布後、実施例1と同様に操作し、硬化膜2を得た。硬化膜2は、透過すると薄褐色を呈しているが表面は金属光沢が見られた。硬化膜2は、PET基材からのセロテープ(登録商標)剥離では剥がれず、また、表面を指で擦っても傷がつかなかった。120℃/30分加熱によって若干金属光沢味が増したが、PET基材への密着性と硬化膜2表面の耐擦傷性とは加熱前と変わらなかった。実施例3に係る硬化膜2の評価結果を表1に示した。
(実施例4)
実施例3の青色固形物1.0gを2.0gにした以外は実施例3と同様に操作して硬化膜2を得た。硬化膜2表面は、実施例3で得られた硬化膜2よりも金属光沢が強く見られ、実施例1、2で得られた硬化膜のような反射光は見られなかった。これは、被覆銀ナノ粒子の添加量が増えたため、被覆銀ナノ粒子が硬化層の内部に分散させた状態で固定されたものと考えられる。硬化膜2は、PET基材からのセロテープ(登録商標)剥離では剥がれず、また、表面を指で擦っても傷がつかなかった。120℃/30分加熱によって若干金属光沢味、密着性と硬化膜2表面の耐擦傷性とは加熱前と変わらなかった。実施例4に係る硬化膜2の評価結果を表1に示した。
(比較例1)
上述の青色固形物1.0gをトルエン10.0gに分散したものを塗液とし、実施例3と同様にPET基材上に塗布乾燥した。塗布膜は、540nm付近の透過率が85%で金属光沢が見られたが指で触ると簡単に剥離してしまった。得られた塗布膜フィルムをオーブンにて120℃/30分加熱したところ、金属光沢度が増し540nm付近の透過率が0.6%となり、銀の焼結が見られた。また、指で触ると簡単に剥離してしまった。比較例1に係る塗布膜の評価結果を表1に示した。
以下、実施例1〜実施例4及び比較例で得られた銀ナノ粒子膜層のそれぞれの評価結果(外観、基材密着性、スチールウール試験、加熱焼結性)を示す。
表1に示した結果から、実施例1〜実施例4の銀ナノ粒子膜層2は、密着性及び耐擦傷性を備えていることがわかる。特に、実施例1及び実施例2の銀ナノ粒子膜層2は、優れた耐擦傷性を備えていることがわかる。
また、実施例1〜実施例4の銀ナノ粒子膜層2は、焼結しないことがわかる。
さらに、銀ナノ粒子の濃度を変える(上げる)ことによって金属光沢を有する塗膜が得られることがわかる。
以上説明したように、本発明における被覆銀ナノ粒子を含むUV硬化樹脂組成物は、銀ナノ粒子特有の光学特性を有する機能膜や金属光沢を有する塗膜を作製可能であり、用途に応じて焼結温度を変えることができる。さらに、銀ナノ粒子、分散剤の他に膜強度や基材との密着性を上げるための樹脂成分を加えても凝集しない組成物である。
1…基材
2…銀ナノ粒子膜層(硬化膜)
2a…塗液組成物からなる層
10…銀ナノ粒子積層体
20…塗液組成物
30…バーコーター

Claims (17)

  1. 銀ナノ粒子と、分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び1個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物と、電離放射線照射により重合開始種を発生する化合物と、を含むことを特徴とする塗液組成物。
  2. 前記銀ナノ粒子の表面は、保護分子により覆われ、
    前記保護分子は、1級アミノ基と3級アミノ基とを有するアルキルジアミンを主成分として含むことを特徴とする請求項1に記載の塗液組成物。
  3. 前記分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び1個以上の重合性不飽和二重結合を有する化合物に備わる前記カルボキシ基は、琥珀酸またはフタル酸またはヘキサヒドロフタル酸であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塗液組成物。
  4. 前記銀ナノ粒子は、分散溶媒に分散していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の塗液組成物。
  5. 前記銀ナノ粒子は、有機溶剤に分散している請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の塗液組成物。
  6. 前記銀ナノ粒子の平均粒径は、30nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の塗液組成物。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の塗液組成物を、基材上に塗布し乾燥させた後、前記塗液組成物に対して電離放射線を照射して硬化膜を形成することを特徴とする銀ナノ粒子積層体の製造方法。
  8. 基材と、
    前記基材上に形成され、銀ナノ粒子と、分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び電離放射線照射により得られる三次元架橋構造を有する樹脂と、を含む銀ナノ粒子膜と、を備えたことを特徴とする銀ナノ粒子積層体。
  9. 前記三次元架橋構造を有する樹脂は、ウレタン結合を有することを特徴とする請求項8に記載の銀ナノ粒子積層体。
  10. 前記銀ナノ粒子は、保護分子により覆われ、
    前記保護分子は、1級アミノ基と3級アミノ基とを有するアルキルジアミンを主成分として含むことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の銀ナノ粒子積層体。
  11. 前記分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び電離放射線照射により得られる三次元架橋構造を有する樹脂に備わる前記カルボキシ基は、琥珀酸またはフタル酸またはヘキサヒドロフタル酸であることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の銀ナノ粒子積層体。
  12. 前記銀ナノ粒子は、分散溶媒に分散可能であることを特徴とする請求項8から請求項11のいずれか1項に記載の銀ナノ粒子積層体。
  13. 前記銀ナノ粒子は、有機溶剤に分散可能であることを特徴とする請求項8から請求項12のいずれか1項に記載の銀ナノ粒子積層体。
  14. 前記銀ナノ粒子の平均粒径は、30nm以下であることを特徴とする請求項8から請求項13のいずれか1項に記載の銀ナノ粒子積層体。
  15. 前記銀ナノ粒子膜は、電離放射線照射により重合開始種を発生する化合物をさらに含むことを特徴とする請求項8から請求項14のいずれか1項に記載の銀ナノ粒子積層体。
  16. 基材と、
    前記基材上に形成され、分子内に少なくとも1個以上のカルボキシ基及び電離放射線照射により得られる三次元架橋構造を有する樹脂と、を含む硬化層と、
    前記硬化層上に形成され、銀ナノ粒子を含む銀ナノ粒子凝集層と、を備えたことを特徴とする銀ナノ粒子積層体。
  17. 前記硬化層は、電離放射線照射により重合開始種を発生する化合物をさらに含むことを特徴とする請求項16に記載の銀ナノ粒子積層体。
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