以下、添付図面を参照しながら本発明のインプリント装置およびその動作方法をその例示的な実施形態を通して説明する。
図1には、本発明の1つの実施形態のインプリント装置IMPの構成が例示されている。インプリント装置IMPは、基板101の上のインプリント材に型100を接触させて該インプリント材を硬化させることによって基板101の上にパターンを形成する。別の表現をすると、インプリント装置IMPは、型100のパターンを基板101の上のインプリント材にインプリントによって転写する。この明細書では、インプリントとは、インプリント材に型を接触させ、該インプリント材を硬化させ、その後、該インプリント材から型を引き離すことを意味する。型100は、凹部で構成されたパターンを有する。基板101の上のインプリント材(未硬化状態の樹脂)に型100を接触させることによってパターンの凹部にインプリント材が充填される。この状態で、インプリント材に対してそれを硬化させるエネルギーを与えることによって、インプリント材が硬化する。これによって型100のパターンがインプリント材に転写され、硬化したインプリント材からなるパターンが基板101の上に形成される。
インプリント材は、それを硬化させるエネルギーが与えられることによって硬化する硬化性組成物である。インプリント材は、硬化した状態を意味する場合もあるし、未硬化の状態を意味する場合もある。硬化用のエネルギーとしては、例えば、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光(例えば、赤外線、可視光線、紫外線)でありうる。
硬化性組成物は、典型的には、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物である。これらのうち光により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物および光重合開始剤を含有しうる。また、光硬化性組成物は、付加的に非重合性化合物または溶剤を含有しうる。非重合性化合物は、例えば、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種でありうる。
本明細書および添付図面では、基板101の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸に対する相対的な回転で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。なお、本明細書において、「Aおよび/またはB」のような表現は、「AおよびBの少なくとも一方」を意味する。
インプリント装置IMPは、基板101を位置決めする基板駆動機構SDMを備え、基板駆動機構SDMは、例えば、基板保持部160、微動機構114、粗動機構115およびベース構造体116を含みうる。基板保持部160は、基板101を吸着する基板吸着部(基板吸着部)102と、基板吸着部102の周辺に配置された基板周辺部材113(基板周辺部)とを含む。基板吸着部102は、例えば、真空吸着、静電吸着等の方法によって基板101を吸着する。基板吸着部102と基板周辺部材113とは、導通していて、互いに同一の電圧(電位)に維持されうる。基板周辺部材113は、基板101が配置される領域の周辺に配置されている。
基板周辺部材113は、基板101の上面とほぼ等しい高さの上面を有しうる。例えば、基板周辺部材113は、基板101の上面と等しいか、基板101の上面よりやや低い上面(例えば、基板101の上面との高低差が1mm以下の上面)を有しうる。基板周辺部材113は、導体で構成された導電板162と、導電板162の表面を被覆する絶縁膜163とを含む、導電板162は、例えば、銅等の金属で構成されうる。絶縁膜163は、例えば、ポリイミド等で構成されうる。絶縁膜163は、導電板162を保護する機能、電圧が印加されたときの放電を防ぐ機能、発塵を防ぐ機能を有しうる。また、導電板162を被覆する絶縁膜163を設けることにより、基板周辺部材113に吸着されたパーティクルから電荷が奪われない。したがって、基板周辺部材113に吸着したパーティクルは、それを基板周辺部材113から引き離す方向の電界が与えられることによって、容易に基板周辺部材113から除去されうる。
微動機構114は、基板保持部160を微駆動することによって基板101を微駆動する機構である。粗動機構115は、微動機構114を粗駆動することによって基板101を粗駆動する機構である。ベース構造体116は、粗動機構115、微動機構114、基板保持部160を支持する。基板駆動機構SDMは、例えば、基板101を複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸)について駆動するように構成されうる。微動機構114における基板保持部160と一体化された部分(微動ステージ)の位置は、干渉計などの計測器117によってモニタされる。
インプリント装置IMPは、型100を位置決めする型動機構MDMを備え、型駆動機構MDMは、型保持部110、駆動機構109および型周辺部材161を含みうる。型周辺部材161は、型100が配置される領域の周辺に配置されている。型駆動機構MDMおよび型周辺部材161は、支持構造体108によって支持されうる。型保持部110は、型100を吸着(例えば、真空吸着、静電吸着)あるいは機械的手段によって保持しうる。駆動機構109は、型保持部110を駆動することによって型100を駆動する。原版駆動機構MDMは、例えば、型100を複数の軸(例えば、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。
基板駆動機構SDMおよび型駆動機構MDMは、基板101と型100との相対的な位置決めを行う駆動部を構成する。駆動部は、X軸、Y軸、θX軸、θY軸およびθZ軸に関して基板101と型100との相対位置を調整するほか、Z軸に関しても基板101と型100との相対位置を調整する。Z軸に関する基板101と型100との相対位置の調整は、基板101の上のインプリント材と型100との接触および分離の動作を含む。
インプリント装置IMPは、基板101の上に未硬化のインプリント材を塗布、配置あるいは供給するディスペンサ(供給部)111を備えうる。ディスペンサ111は、例えば、基板101の上にインプリント材を複数のドロップレットの形態で配置するように構成されうる。ディスペンサ111は、支持構造体108によって支持されうる。
インプリント装置IMPは、基板101の上のインプリント材にUV光などの光を照射することによって該インプリント材を硬化させる硬化部104を備えうる。インプリント装置IMPはまた、インプリントの様子を観察するためのカメラ103を備えうる。硬化部104から射出された光は、ミラー105で反射され、型100を透過してインプリント材に照射されうる。カメラ103は、型100およびミラー105を介してインプリントの様子、例えば、インプリント材と型100との接触状態などを観察するように構成されうる。
インプリント装置IMPは、基板101のマークと型100のマークとの相対位置を検出するためのアライメントスコープ107a、107bを備えうる。アライメントスコープ107a、107bは、支持構造体108によって支持された上部構造体106に配置されうる。インプリント装置IMPは、基板101の複数のマークの位置を検出するためのオフアクシススコープ112を備えうる。オフアクシススコープ112は、支持構造体108によって支持されうる。
インプリント装置IMPは、1又は複数のエア供給部118を備えうる。エア供給部118は、型保持部110を取り囲むように型保持部110の周囲に配置されうる。エア供給部118は、基板101と型100との間の空間にエアを供給することによってエアカーテンを形成する。エアカーテンは、基板101と型100との間の空間に対するパーティクルの侵入を抑制する。エア供給部118は、例えば、支持構造体108によって支持されうる。インプリント装置IMPは、基板101と型100との間の空間に基板101に沿った気体131の流れが形成されるように、該空間に向けて気体131を供給する気体供給部130を備えうる。
インプリント装置IMPは、基板周辺部材113を有する基板保持部160と型周辺部材161との間に電圧Vを供給する電源PSを備えている。図1に示された例では、基板保持部160が接地され、型周辺部材161に対して電源PSから電圧Vが供給される。ただし、基板保持部160には、接地電位とは異なる電圧が供給されてもよい。インプリント装置IMPは、基板保持部160をクリーニングする第1モード(クリーニングモード)と、型周辺部材161をクリーニングする第2モード(メンテナンスモード)とを有する。第1モードにおいて電源PSが型周辺部材161と基板保持部160との間に供給する電圧Vの極性と、第2モードにおいて電源PSが型周辺部材161と基板保持部160との間に供給する電圧Vの極性とは反対である。この詳細については、後述する。
インプリント装置IMPは、チャンバ190を備え、上記の各構成要素はチャンバ190の中に配置されうる。インプリント装置IMPは、その他、主制御部(制御部)126、インプリント制御部120、照射制御部121、スコープ制御部122、ディスペンサ制御部123、カーテン制御部124、基板制御部125を備えうる。主制御部126は、インプリント制御部120、照射制御部121、スコープ制御部122、ディスペンサ制御部123、カーテン制御部124、基板制御部125および電源PSを制御する。インプリント制御部120は、型駆動機構MDMを制御する。照射制御部121は、硬化部104を制御する。スコープ制御部122、アライメントスコープ107a、107bおよびオフアクシススコープ112を制御する。ディスペンサ制御部123は、ディスペンサ111を制御する。カーテン制御部124は、エア供給部118を制御する。基板制御部125は、基板駆動機構SDMを制御する。
チャンバ190の内部空間には、パーティクル150が侵入しうる。また、チャンバ190の中では、機械要素の相互の摩擦、機械要素と基板101または型100との摩擦などによってパーティクル150が発生しうる。あるいは、ディスペンサ111が基板101の上に未硬化のインプリント材を配置するために吐出口からインプリント材を吐出した際にインプリント材のミストが発生し、このインプリント材が固化することによってパーティクル150が発生しうる。
パーティクル150は、基板周辺部材113および型周辺部材161などの部材の表面に付着しうる。基板周辺部材113および型周辺部材161のうち、特に、下方に位置する基板周辺部材113に対してパーティクル150が付着する可能性が高い。パーティクル150は、粒径、形状、材質などが様々である。したがって、基板周辺部材113の上面に対するパーティクル150の付着力も様々である。基板周辺部材113の上面に対する付着力が弱いパーティクル150は、外的刺激(振動、気流、静電気)などによって容易に基板周辺部材113の上面から離脱しうる。
型100は、インプリントを通して帯電するので、基板周辺部材113と型100との間に強い電界が形成されうる。この電界によって、基板周辺部材113の上のパーティクル150に対して静電気力が作用する。よって、基板周辺部材113の上面に弱い付着力で付着しているパーティクル150は、基板周辺部材113の上面から容易に離脱しうる。基板周辺部材113の上面から離脱したパーティクル150は、型100に引き寄せられて型100に付着したり、基板101に付着したりしうる。よって、型と基板との間にパーティクル150が挟み込まれることが有りうる。このために、欠陥を有するパターンが形成されたり、基板および/または型が破損したりしうる。
そこで、基板周辺部材113に弱い付着力で付着しているパーティクル150が意図しないタイミングで基板周辺部材113から離脱しないように、パーティクル150を基板周辺部材113から予め強制的に除去することが望まれる。これを実現するために、インプリント装置IMPは、基板周辺部材113を有する基板保持部160と型周辺部材161との間に電圧Vを供給する電源PSを備えている。
図2には、基板保持部160をクリーニングする第1モード(クリーニングモード)におけるインプリント装置IMPの動作が模式的に示されている。第1モード(クリーニングモード)において、電源PSは、基板周辺部材113を有する基板保持部160と型周辺部材161との間に第1極性の電圧Vを供給する。基板周辺部材113を有する基板保持部160と型周辺部材161との間に供給された第1極性の電圧Vによって基板周辺部材113と型周辺部材161との間に電界が発生する。この電界によって、第1極性とは反対の第2極性を有するパーティクル150に対して静電気力が作用する。基板周辺部材113の上面に付着しているパーティクル150は、この静電気力によって基板周辺部材113の上面から離脱し、型周辺部材161に吸着されうる。第1極性は、基板101の上の硬化したインプリント材から型100を引き離すことによって型100が帯電する電位(接地電位を基準とする電位)と同一の極性である。
ここで、一例として、基板101の上の硬化したインプリント材から型100を引き離すことによって、型100が負電位−V0(Vは正の値)に帯電する場合を考える。基板周辺部材113を有する基板保持部160は、接地されていて、その電位が接地電位であるものとする。例えば、型100の電位が−3kVで、基板周辺部材113と型100との間隙が1mmである場合、電界Eの方向は上向き(Z軸の正の方向)で、電界Eの強度(絶対値)は3kV/mmである。第1モードでは、図4に例示されるように、型周辺部材161の電圧Vが−V0より低い電位−V1(−V1<−V0)になるように、電源PSによって基板周辺部材113を有する基板保持部160と型周辺部材161との間に第1極性の電圧Vが供給されうる。これにより、基板周辺部材113の上面に付着していた第2極性の電荷を有するパーティクル150は、基板周辺部材113と型周辺部材161との間の電界Eによる静電気力によって基板周辺部材113の上面から離脱し、型周辺部材161に吸着されうる。
第1モード(クリーニングモード)の動作は、基板101に対するインプリント処理と並行して実施されてもよいし、インプリント処理とは異なるタイミングで実施されてもよい。図7には、基板周辺部材113をクリーニングする第1モードのクリーニングをインプリントと並行して行うインプリント装置IMPの動作方法が例示的に示されている。この動作方法は、主制御部(制御部)216によって制御される。
工程S201では、主制御部126は、基板101上のインプリント対象のショット領域がディスペンサ111の下に移動するように基板駆動機構SDMを制御する。工程S202では、主制御部126は、基板101上のインプリント対象のショット領域にインプリント材が配置されるように基板駆動機構SDMおよびディスペンサ111を制御する。ここで、ショット領域へのインプリント材の配置は、例えば、基板駆動機構SDMによって基板101を移動させながらディスペンサ111からインプリント材を吐出することによってなされうる。ショット領域へのインプリント材の配置の形式は、任意であるが、例えば、複数のドロップレットの配列の形式でショット領域にインプリント材が配置されうる。
工程S203では、主制御部126は、基板101上のインプリント対象のショット領域が型100の下に移動するように、より詳しくは、該ショット領域と型100とが位置合わせされるように基板駆動機構SDMおよび型駆動機構MDMを制御する。
工程S204では、主制御部126は、基板周辺部材113を有する基板保持部160をクリーニングするために第1モードのクリーニング機能を有効(ON)にする。具体的には、主制御部126は、基板周辺部材113と型周辺部材161との間への第1極性の電圧Vの供給が開始されるように電源PSを制御する。基板周辺部材113を有する基板保持部160と型周辺部材161との間に第1極性の電圧Vが供給されると、基板周辺部材113と型周辺部材161との間には、基板周辺部材113に付着したパーティクル150を型周辺部材161に吸引する電界Eが形成される。この電界Eによって基板周辺部材113の上面に付着している第2極性を有するパーティクルが基板周辺部材113から離脱し、型周辺部材161に吸着されうる。つまり、基板周辺部材113がクリーニングされる。第1モードのクリーニング機能が有効(ON)にされることによって、例えば、工程S201〜S203において基板周辺部材113に付着したパーティクル(通常は、付着力がまだ弱いと考えられる)が直ちに除去されうる。ここで、工程S204(電圧Vの供給の開始)は、工程S203が終了する前に実行されてもよい。ただし、ディスペンサ(供給部)111が基板101(のショット領域)にインプリント材を供給している間は、電源PSによる基板周辺部材113と型周辺部材161との間への電圧Vの供給がなされないことが望ましい。これは、電圧Vによって形成される電界がディスペンサ111による基板101上の適正位置へのインプリント材の供給を妨げうるからである。
工程S205では、主制御部126は、インプリント対象のショット領域にインプリントがなされるように、関連する構成要素、例えば、基板駆動機構SDM、型駆動機構MDM、硬化部104、アライメントスコープ107a、107bなどを制御する。具体的には、工程S205では、基板101上のインプリント対象のショット領域の上のインプリント材に型100を接触させ、該インプリント材を硬化させ、その後、該インプリント材から型100を引き離すインプリント処理がなされる。図7に示された例では、工程S205は、クリーニング機能がONした状態でなされる。つまり、基板周辺部材113と型周辺部材161との間に電圧Vが供給された状態で、基板101の上のインプリント材に型100を接触させ、該インプリント材を硬化させ、該インプリント材から型100を引き離す動作がなされる。
工程S206では、主制御部126は、基板周辺部材113と型周辺部材161との間への第1極性の電圧Vの供給が停止されるように電源PSを制御する。つまり、主制御部126は、工程S206において、第1モードのクリーニング機能を停止(OFF)させる。
工程S207では、主制御部126は、基板101の全てのショット領域に対するインプリントが終了したかどうかを判断し、未処理のショット領域が残っている場合には、当該未処理のショット領域に対するインプリントがなされように工程S201に戻る。一方、全てのショット領域に対するインプリントが終了した場合は、工程S208に進む。工程S208では、主制御部126は、処理すべき全ての基板101に対するインプリントが終了したかどうかを判断し、未処理の基板101が残っている場合には、当該未処理の基板101に対するインプリントがなされように工程S201に戻る。一方、全ての基板101に対するインプリントが終了した場合は、図7に示された一連の処理が終了する。
第1モードのクリーニング機能が長時間にわたって有効されると(インプリント装置IMPが長時間にわたって第1モードで動作すると)、型周辺部材161の表面(絶縁膜163の表面)に多量のパーティクル150が付着しうる。型周辺部材161の表面に付着しているパーティクル150は、インプリント装置IMPの振動や気流等によって型周辺部材161から離脱し、基板101の表面および/または型100の表面に付着しうる。
そこで、インプリント装置IMPは、型周辺部材161をクリーニングする第2モード(メンテナンスモード)を有する。図3には、型周辺部材161をクリーニングする第2モード(メンテナンスモード)におけるインプリント装置IMPの動作が模式的に示されている。第2モード(メンテナンスモード)において、電源PSは、基板周辺部材113を有する基板保持部160と型周辺部材161との間に、第1極性とは反対の第2極性の電圧Vを供給する。
インプリント装置IMPは、単一の型周辺部材161を有してもよいし、複数の型周辺部材161を有してよい。インプリント装置IMPが単一の型周辺部材161を有する場合には、第2モードは、単一の型周辺部材161を複数の領域に分けて、個々の領域に対して実施されうる。インプリント装置IMPが複数の型周辺部材161を有する場合には、第2モードは、少なくとも1つの型周辺部材161を単位として実施されうる。これらは、基本的な動作において共通しているので、以下では、代表的に、インプリント装置IMPが複数の型周辺部材161を有し、個々の型周辺部材161に対して第2モードを実施する例を説明する。
第2モードの動作は、基板保持部160(基板吸着部102)がクリーニング用の基板101’を保持し、メンテナンス対象(クリーニング対象)の型周辺部材161の下に基板101’が配置されるように基板保持部160が位置決めされた状態で実施されうる。ここで、クリーニング用の基板101’は、半導体デバイス等の物品の製造用の基板101と同様の仕様を有する基板であってもよいし、メンテナンス用の特別な仕様を有する基板であってもよい。
第2モードでは、前述のように、電源PSは、第1モードにおける第1極性の電圧Vとは反対の第2極性を有する電圧Vを基板保持部160と型周辺部材161との間に供給する。つまり、第1モードにおいて基板保持部160と型周辺部材161との間に形成される電界Eと第2モードにおいて基板保持部160と型周辺部材161との間に形成される電界Eとは反対方向である。これにより、第2モードでは、型周辺部材161に付着しているパーティクル150には、該パーティクル150を基板保持部160に引き付ける静電力が作用する。したがって、型周辺部材161に付着していたパーティクル150は、型周辺部材161から引き離され、クリーニング用の基板101’に吸着されうる。
図5には、第2モードにおいて型周辺部材161に供給される電圧が例示されている。図5に例示されるように、型周辺部材161の電圧Vが+V0より高い電位+V1(+V1>+V0)になるように、電源PSによって基板周辺部材113と型周辺部材161との間に第2極性の電圧Vが供給されうる。第2モードの動作の終了後、クリーニング用の基板101’は、インプリント装置IMPから搬出される。
第2モードにおいて、基板保持部160と型周辺部材161との間に供給される第2極性の電圧Vは、交流成分を含む直流電圧であってもよい。第2モードにおいて、電源PSは、基板保持部160と型周辺部材161との間に供給する第2極性の電圧Vの波形は、例えば、矩形波、三角波、正弦波、台形波および階段波の少なくとも1つを含みうる。
図6(a)〜(c)には、第2モードにおいて電源PSが基板保持部160と型周辺部材161との間に供給する第2極性の電圧V(交流成分を含む直流電圧)が例示されている。図6(a)に示された第2極性を有する電圧V[V]は、最小電圧が0[V]で最大電圧が+V1[V]の矩形波である。この矩形波は、例えば、最大電圧の期間がΔT[秒]で、最小電圧の期間がΔT[秒]であり、デューティー比が50%であるが、他のデューティー比を有してもよい。図6(b)に示された第2極性を有する電圧V[V]は、最小電圧が0[V]で最大電圧が+V[V]の正弦波であり、周期が2ΔT[秒]である。図6(c)に示された第2極性を有する電圧V[V]は、最小電圧が0[V]で最大電圧が+V[V]の三角波であり、周期がΔT[秒]である。
図8には、型周辺部材161をクリーニング(メンテナンス)する第2モード(メンテナンスモード)のクリーニングに関するインプリント装置IMPの動作方法が例示的に示されている。この動作方法は、主制御部(制御部)216によって制御される。工程S301では、主制御部126は、クリーニング用の基板101’を基板保持部160の基板吸着部102上に搬送されるように不図示の搬送機構を制御する。工程S302では、主制御部126は、基板101’がクリーニング対象(メンテナンス対象)の型周辺部材161の下に移動するように基板駆動機構SDMを制御する。換言すると、工程S302では、主制御部126は、基板101’を吸着する基板吸着部102(基板保持領域)が(基板101’を介して)クリーニング対象の型周辺部材161に対向する位置に位置決めされるように基板駆動機構SDMを制御する。
工程S303では、主制御部126は、型周辺部材161をクリーニングする第2モードのクリーニング機能を有効(ON)にする。具体的には、主制御部126は、基板周辺部材113を有する基板保持部160と型周辺部材161との間への第2極性の電圧Vの供給が開始されるように電源PSを制御する。基板保持部160と型周辺部材161との間に第2極性の電圧Vが供給されると、基板周辺部材113と型周辺部材161との間には、型周辺部材161に付着している第2極性を有するパーティクル150を基板101’に吸引する電界Eが形成される。所定時間の経過後、工程S304において、主制御部126は、第2モードのクリーニング機能を停止(OFF)させる。
工程S305では、主制御部126は、インプリント装置IMPが備える複数の型周辺部材161のうちクリーニング対象の全ての型周辺部材161のクリーニングが終了したかどうかを判断する。そして、主制御部126は、クリーニングすべき型周辺部材161が残っている場合には、工程S301に戻る。一方、クリーニング対象の全ての型周辺部材161のクリーニングが終了した場合には、主制御部126は、工程S306に進み、クリーニング用の基板101’が基板保持部160の基板吸着部102の上から搬出されるように不図示の搬送機構を制御する。
工程S301に戻る場合には、クリーニング用の基板101’が新しいクリーニング用の基板101’に変更されてよいし、既に基板保持部160の基板吸着部102の上にある基板101’が継続して使用されてもよい。
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
以下、型周辺部材161の構成例を説明する。型周辺部材161は、図9(a)に例示されるように、型100の側面を全方位にわたって取り囲む形状を有しうる。基板周辺部材131は、図9(b)に例示されるように、基板101の側面を全方位にわたって取り囲む形状を有しうる。図7のフローチャートに示された処理において、基板101の複数のショット領域に対するインプリントと並行して、基板周辺部113の含む領域320がクリーニングされうる。
型周辺部材161は、図10に例示されるように、型100が配置される領域の周辺に分割して配置された型周辺部材330a、330b、330cによって構成されてもよい。このような構成を採用することにより、型100の周辺に機構を配置するための自由度を向上させることができる。型100の周辺に配置されうる機構としては、例えば、型100の側面に力を加えて型100を目標形状に変形させる機構、インプリント材と型100との接触および引き離しのために型100をZ方向に移動させる駆動機構、型100の傾きを調整する駆動機構などを挙げることができる。また、分割された型周辺部材330a、330b、330cを採用し、第1モードにおいて、型周辺部材330a、330b、330cに対して電源PSから電圧Vを供給することにより、基板周辺部材113の全体ではなく局所領域に電界を生じさせることができる。基板周辺部材113の上には、基板101や微動ステージの位置のキャリブレーションに使用する基準マークや、インプリント材を硬化させるための露光光の照度を計測する照度センサ等が配置されうる。分割された型周辺部材330a、330b、330cを採用することによって、第1モードのクリーニングが基準マークを用いた計測や照度センサの計測結果に影響を及ぼすことを防ぐことができる。
型周辺部材330a、330b、330cのそれぞれの配置および役割について説明する。型周辺部材330aは、型100に対して−X方向に配置されうる。すなわち、型周辺部材330aは、平面視(+Z方向から見たときの図)において、型100からディスペンサ111に向かう方向とは反対方向に配置されうる。型周辺部材330aの長手方向の長さは、型100のパターンが形成されている部分100aの長手方向よりも長いことが好ましい。
型周辺部材330aは、図7に示されたフローチャートの処理(第1モードのクリーニング)を実行する際に用いられうる。図11に例示されるように、型周辺部材330aは、インプリント処理において型100が基板101および基板周辺部材113と対向する領域を含む領域320と対向する。型周辺部材330aに電圧Vを供給することにより、基板周辺部材113上に付着しているパーティクルを基板周辺部材113の上面から離脱させ型周辺部材330aに吸着させることができる。
型周辺部材330b、330cは、型100に対して+X方向側、かつ型周辺部材330aよりも±Y方向側に配置されうる。型周辺部材330b、330cは、典型的には、図7に示されたフローチャートの処理の際には利用されない。型周辺部材330b、330cは、付加的なクリーニング工程において利用されうる。付加的なクリーニング工程において、周辺部材330bを用いて、図12に示された領域340に付着しているパーティクルを基板周辺部材113の上面から離脱させ型周辺部材330bに吸着させることができる。また、他の付加的なクリーニング工程において、型周辺部材330cを用いて、図13に示された領域350に付着しているパーティクルを基板周辺部材113の上面から離脱させ型周辺部材330cに吸着させることができる。
次に、インプリント装置IMPを用いて半導体デバイス等の物品を製造する物品製造方法について説明する。図14(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
図14(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図14(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1と型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを透して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
図14(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凹部が硬化物の凸部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
図14(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図14(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。