以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。
<1.非水系電解液>
<1−1.一般式(1)の化合物>
本発明の非水系電解液は、下記一般式(1)で表される化合物を含有することを第一の特徴としている。
式(1)中、R1〜R3は、それぞれ水素原子あるいは、炭素数1〜10の鎖状炭化水素基を示す。式中、a、b、cは0から5の整数を示し、a+b+cは1〜9の整数を示す。a、b、c或いはR1〜R3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
鎖状炭化水素基の具体例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられ、好ましくはアルキル基、アルケニル基、より好ましくはアルキル基が挙げられる。上述の鎖状炭化水素基であると、一般式(1)で表される化合物と、後述の鎖状エーテルや
、カルボン酸エステルとの複合被膜が形成しやすく、非水系電解液中で非水溶媒、鎖状エーテル、カルボン酸エステル等が分解され、非水電解液の抵抗が増加することを抑えられる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、電解液粘度の上昇(出力の低下)が抑えられることから好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、ヘキシル基、さらに好ましくはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、特に好ましくはメチル基、エチル基である。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、2‐ブテニル基、3‐メチル2‐ブテニル基、3‐ブテニル基、4‐ペンテニル基等が挙げられ、解液粘度の上昇(出力の低下)が抑えられる観点から、好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、2‐ブテニル基、より好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基、さらに好ましくはアリル基である。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、2‐プロピニル基、2‐ブチニル基、3‐ブチニル基、4‐ペンチニル基、5‐ヘキシニル基等が挙げられ、解液粘度の上昇(出力の低下)が抑えられる観点から好ましくは、エチニル基、2‐プロピニル基、2‐ブチニル基、3‐ブチニル基、より好ましくは、2‐プロピニル基、3‐ブチニル基、さらに好ましくは、2‐プロピニル基が挙げられる。
一般式(1)で表される化合物の電極での被膜形成の観点から、一般式(1)中、R1〜R3は水素原子あるいは、メチル基であることが好ましい。中でも、R1〜R3の1つがメチル基であることがより好ましく、R1〜R3すべてメチル基であることがさらに好ましい。
一般式(1)で表される化合物の電極での被膜形成の観点から、一般式(1)中、a、b、cがそれぞれ1或いは2であることが好ましい。また、同様の理由で、a=b=c=1または2であることがより好ましく、a=b=c=1であることがさらに好ましい。
本発明に用いる化合物は、一般式(1)で表される化合物の具体的な構造の例としては以下の構造が挙げられる。
下記構造式中、Et、Buはそれぞれエチル基、ブチル基を示す。
好ましくは、以下の構造の化合物が挙げられる。芳香族環上にアルキル基を有することにより、正極上で被膜が形成しやすくなるためである。
より好ましくは、以下の構造の化合物が挙げられる。以下の構造の化合物により、生成した正極被膜はリチウムイオン透過性が高いためである。そして、特に好ましくは、以下の構造の化合物2種を非水系電解液に含むことが、低温出力特性の観点から好ましい。
本発明の非水系電解液全量に対する一般式(1)で表される化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液の全量に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、また、通常10.0質量%以下、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以下の濃度で電解液に配合させる。上記の濃度であれば、非水系電解液の粘度が適切な範囲となり、優れた低温出力特
性を有する傾向にある。
一般式(A)で表される化合物は、単独で用いても、2種以上を含んで用いてもよく、2種以上を含んで用いることが好ましい。
本発明において、一般式(A)で表される化合物を2種以上含む場合、トリ(p-トリル)ホスフィンと、トリ(m-トリル)ホスフィン、トリ(o-トリル)ホスフィンを併用し用い
ることや、複数の異性体を含むクレゾールを原料に製造されたトリクレジルホスフェートを用いることが挙げられ、複数の異性体を含むクレゾールを原料に製造されたトリクレジルホスフェートを用いることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物を2種以上含む場合、低温出力特性の観点から、R1〜R3の置換位置の比率が、オルト位、メタ位、パラ位の総和に対してパラ位置置換体換体が通常10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上であり、上限は特に限定されないが、通常5%以下、好ましくは40%以下、より好ましくは350%以下である。
一般式(1)で表される化合物を2種以上含む場合、低温出力特性の観点から、R1〜R3の置換位置の比率が、オルト位、メタ位、パラ位の総和に対してメタ位置置換体が通常50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上であり、上限は特に限定されないが、通常90%以下、好ましくは80%以下である。
一般式(1)で表される化合物を2種以上含む場合、立体障害によって、被膜の形成速度が低下する観点から、R1〜R3の置換位置の比率が、オルト位、メタ位、パラ位の総和に対して、オルト位置置換体が通常40%以下、好ましくは30%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは1%以下、特に好ましくはオルト位置置換体を含まないことである。
上記一般式(1)で表される化合物のR1〜R3の置換位置は1H−NMRを用いて、分析することが出来る。例えば、トリ(o-トリル)ホスフィンと、トリ(p-トリル)ホスフィンの等モル混合物を用いた場合のオルト位置置換体は50%、(p-トリル) (m-トリル) (o-トリル)ホスフィンのみを用いた場合のオルト位置置換体は33%と計算される。
また、一般式(1)のR1〜R3がパラ位置及びオルト位置に鎖状アルキル基を有する場合や、メタ位置及びオルト位置に鎖状アルキル基を有する構造もオルト位置置換体とし、パラ位置及びメタ位置に鎖状アルキル基を有する構造はメタ位置置換体とする。
なお、本発明の電解液に、一般式(1)で表される化合物を含有する方法は、特に制限されない。上記化合物を直接電解液に添加する方法の他に、電池内又は電解液中において上記化合物を発生させる方法が挙げられる。上記化合物を発生させる方法としては、非水電解液にオキシ三塩化リンとクレゾールを添加し、酸化、還元、又は加水分解等して発生させる方法が挙げられる。更には、電池を作製して、充放電等の電気的な負荷をかけることによって、発生させる方法も挙げられる。
上記クレゾールが、パラ位置置換体、メタ位置置換体、オルト位置置換体の混合物であった場合、電池内ではクレゾールの置換体比率に応じた一般式(1)で表される化合物が生成される。
一般式(1)で表される化合物は、非水系電解液に含有させ実際に非水系電解液二次電池の作製に供すると、充放電後には正極被膜として消費されていることから、その電池を解体して再び非水系電解液を抜き出しても、その中の含有量が著しく低下している場合がある。そのため、本発明において一般式(1)で表される化合物が含まれているとは、電解液中又は正極表面に一般式(1)由来の化合物が検出されることも含む。
例えば、正極表面から一般式(1)由来の化合物を検出するためには、熱分解ガスクロ
マトグラフィー等を用いることが出来る。
また、本発明における一般式(1)で表される化合物の含有量とは、非水系電解液製造時、非水系電解液の電池への注液時点又は電池として出荷された何れかの時点での含有量を意味する。
<1−2.鎖状エーテル、カルボン酸エステル>
本発明の非水系電解液は、下記一般式(1)の化合物に加えて、更に鎖状エーテル及び/又はカルボン酸エステルを含有することを第二の特徴としている。
鎖状エーテル及び/又はカルボン酸エステル鎖状エーテルの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、鎖状エーテル及び/又はカルボン酸エステルが非水系電解液の溶媒全量に対して、通常0.5体積%以上、好ましくは1体積%以上、より好ましくは2体積%以上、また、通常80体積%以下、好ましくは45体積%以下、より好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下、特に好ましくは10体積%以下である。鎖状エーテル及びカルボン酸エステルが含まれる場合は、鎖状エーテル及びカルボン酸エステルの含有量の和が上記範囲であることで、低温出力特性が向上する傾向にある。
尚、本発明における体積%、体積比とは、25℃、1気圧の状態で測定した値を意味し、以下の記載も同様に扱う。
また、本発明において、非水系電解液の溶媒全量とは、<1−2.鎖状エーテル、カルボン酸エステル>及び<1−4.非水溶媒>に記載された化合物の和を意味する。
一般式(1)の化合物を含有し、更に、鎖状エーテル及び/又はカルボン酸エステルが含まれることで、本発明の課題を解決出来たのか詳細は明らかではないが、以下の様に推測する。
一般式(1)で表される化合物は、分子内に易酸化性部位である鎖状炭化水素基が置換した芳香環を有する。そのため、正極上で上述部位が酸化反応を受けることによりカチオン種を生成し、被膜が形成することが知られている。
しかし、一般式(1)の化合物を添加すると非水系電解液の粘度が上昇し、イオン導電率が低下することで、出力特性が低下してしまうという欠点があった。また、一般式(1)の化合物からなる被膜が正極に形成されると、正極表面でのリチウムイオンの挿入・脱離の速度が遅くなるため、かえって出力特性が低下するという欠点があった。
また、鎖状エーテルやカルボン酸エステルを溶媒とする非水系電解液は、電気化学的な酸化電位が低いために、正極表面で副反応が生起しやすい傾向にある。このため、例えば高温保存後やサイクル後といった耐久後には、電荷移動反応抵抗が増加し、出力特性が低下したり、電池容量が低下したり、正極での分解によってガスが発生し、電池膨れが増加するといった傾向があった。
すなわち、一般式(1)で表される化合物と、鎖状エーテルやカルボン酸エステルはどちらも単独で用いた場合には出力特性が低下するという問題があった。
しかし、本発明の様に、一般式(1)で表される化合物と、鎖状エーテルやカルボン酸エステルを併用した場合、一般式(1)で表される化合物がカチオン種を生成し、鎖状エーテルやカルボン酸エステルが分子内に有する極性基(例えば、エーテル基、エステル基)とが化学的に反応し、複合的な被膜を正極上に形成することで、出力特性の低下を抑制することが出来たと考えられる。これらの複合的な被膜は電子絶縁性を有するため、鎖状エーテルやカルボン酸エステルの後続酸化反応による出力低下を抑制すると共に、鎖状エーテルやカルボン酸エステルに由来する被膜部分は高いリチウムイオン透過性を有するため、優れた出力特性を得られたと推定される。
<1−2−1.鎖状エーテル>
鎖状エーテルとしては、一分子中のエーテル酸素が通常炭素数3〜10の鎖状エーテルが挙げられ、電池出力の観点から炭素数3〜7の鎖状エーテルが好ましく、炭素数3〜5の鎖状エーテルがより好ましい。
尚、鎖状エーテルは1種類であっても、2種類以上を混合して用いても良い。
鎖状エーテルとしては、ジエチルエーテル、ジ(2−フルオロエチル)エーテル、ジ(2,2−ジフルオロエチル)エーテル、ジ(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(2−フルオロエチル)エーテル、エチル(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、エチル(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,2−トリフルオロエチル)エーテル、(2−フルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)エーテル、エチル−n−プロピルエーテル、エチル(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、エチル(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2−フルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2−フルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2−フルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、2,2,2−トリフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,2−トリフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル−n−プロピルエーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(1,1,2,2−テトラフルオロエチル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−プロピルエーテル、(n−プロピル)(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3−フルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3−フルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(3,3,3−トリフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)エーテル、(2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル)(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ(2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル)エーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジメトキシメタン、メトキシエトキシメタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタンメトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジエトキシメタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)メタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ
)メタン、ジ(2−フルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタンジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)メタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)メタン、ジメトキシエタン、メトキシエトキシエタン、メトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、メトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、メトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジエトキシエタン、エトキシ(2−フルオロエトキシ)エタン、エトキシ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、エトキシ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2−フルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2−フルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、(2,2,2−トリフルオロエトキシ)(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、ジ(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)エタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタン、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルが、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点でより好ましい。
これらの中でも、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシメタン、エトキシメトキシメタンが、粘度が低く、高いイオン伝導度を与えることから、更に好ましい。
鎖状エーテルの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常0.5体積%以上、好ましくは1体積%以上、より好ましくは2体積%以上、また、通常80体積%以下、好ましくは45体積%以下、より好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下、特に好ましくは10体積%以下である鎖状エーテルの含有量が前記好ましい範囲内であれば、鎖状エーテルのリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすい。また、負極活物質が炭素質材料の場合、鎖状エーテルがリチウムイオンと共に共挿入される現象を抑制できることから、より低温出力特性に優れた非水系電解液が得られる傾向にある。
<1−2−2.カルボン酸エステル>
カルボン酸エステルは、鎖状カルボン酸エステルと、環状カルボン酸エステルに分類され、電池出力の関係から鎖状カルボン酸エステルが好ましく用いられる。
尚、カルボン酸エステルは、1種類を用いても良く、2種類以上を混合して用いても良い。2種類以上を混合する場合、鎖状カルボン酸エステル同士や環状カルボン酸エステル同士を混合しても良く、また鎖状カルボン酸エステルと環状カルボン酸エステルを混合しても良い。
<1−2−2−1.鎖状カルボン酸エステル>
鎖状カルボン酸エステルとしては、通常炭素数3〜10のものが挙げられ、電池出力の観点から炭素数3〜6の鎖状カルボン酸エステルが好ましく、炭素数3〜5の鎖状カルボン酸エステルがより好ましい。
具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−t−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸
エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸イソブチル、プロピオン酸−t−ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸−n−プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸−n−プロピル、イソ酪酸イソプロピル、ピバル酸メチル、ピバル酸エチル等が挙げられる。
これらの中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸−n−ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、プロピオン酸イソプロピル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、ピバル酸メチル等が、粘度低下によるイオン伝導度の向上、及び正極での分解反応が抑制され、低温出力特性が向上する観点から、好ましい。
これらの中でも、特に低温出力の向上効果が大きい観点で、酢酸メチル、酢酸−n−プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、イソ酪酸メチル、ピバル酸メチルが、より好ましい。
またこれらの中でも、特に高温保存時の安定性の観点で、酢酸メチル、酢酸−n−プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−プロピル、イソ酪酸メチル、ピバル酸メチルが、イソ酪酸メチル、ピバル酸メチルが、より好ましい。
鎖状カルボン酸エステルの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常0.5体積%以上、好ましくは1体積%以上、より好ましくは2体積%以上、また、通常80体積%以下、好ましくは45体積%以下、より好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下、特に好ましくは10体積%以下である。鎖状カルボン酸エステルの含有量を前記範囲とすると、非水系電解液の電気伝導率を改善し、低温出力特性を向上させやすくなる。
<1−2−2−2.環状カルボン酸エステル>
環状カルボン酸エステルとしては、通常炭素数3〜12の環状カルボン酸エステルが挙げられ、電池出力の観点から炭素数3〜10の環状カルボン酸エステルが好ましく、炭素数3〜8の環状カルボン酸エステルがより好ましい。
具体的には、ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン、ガンマカプロラクトン、イプシロンカプロラクトン等が挙げられる。中でも、ガンマブチロラクトンがリチウムイオン解離度の向上に由来する低温出力特性向上の点から特に好ましい。
環状カルボン酸エステルの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常0.5体積%以上、好ましくは1体積%以上、より好ましくは2体積%以上、また、通常80体積%以下、好ましくは45体積%以下、より好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下、特に好ましくは10体積%以下である。環状カルボン酸エステルの含有量を前記範囲とすると、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避し、負極抵抗の増大を抑制することで、非水系電解液二次電池の出低温力特性良好な範囲としやすくなる。
<1−3.電解質>
<リチウム塩>
本発明の非水系電解液における電解質としては、通常、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、この用途に用いることが知られているものであれば特に制限がなく、任意のものを用いることができ、具体的には以下のものが挙げられる。
例えば、LiBF4、LiClO4、LiAlF4、LiSbF6、LiTaF6、LiWF7等の無機リチウム塩;
LiPF6、LiPO3F、LiPO2F2等のLiPF6以外のフルオロリン酸リチウム塩類;
LiWOF5等のタングステン酸リチウム塩類;
HCO2Li、CH3CO2Li、CH2FCO2Li、CHF2CO2Li、CF3CO2Li、CF3CH2CO2Li、CF3CF2CO2Li、CF3CF2CF2CO2Li、CF3CF2CF2CF2CO2Li等のカルボン酸リチウム塩類;
FSO3Li、CH3SO3Li、CH2FSO3Li、CHF2SO3Li、CF3SO3Li、CF3CF2SO3Li、CF3CF2CF2SO3Li、CF3CF2CF2CF2SO3Li等のスルホン酸リチウム塩類;
LiN(FCO2)2、LiN(FCO)(FSO2)、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiN(CF3SO2)(C4F9SO2)等のリチウムイミド塩類;
LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3等のリチウムメチド塩類;
リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等のリチウムオキサラート塩類;
その他、LiPF4(CF3)2、LiPF4(C2F5)2、LiPF4(CF3SO2)2、LiPF4(C2F5SO2)2、LiBF3CF3、LiBF3C2F5、LiBF3C3F7、LiBF2(CF3)2、LiBF2(C2F5)2、LiBF2(CF3SO2)2、LiBF2(C2F5SO2)2等の含フッ素有機リチウム塩類;等が挙げられる。
本発明で得られる低温出力特性に加え、充放電レート充放電特性、インピーダンス特性の向上効果を更に高める点から、無機リチウム塩類、フルオロリン酸リチウム塩類、スルホン酸リチウム塩類、リチウムイミド塩類、リチウムオキサラート塩類、の中から選ばれるものが好ましい。
中でも、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiTaF6、LiPO3F、LiPO2F2、FSO3Li、CF3SO3Li、LiN(FSO2)2、LiN(FSO2)(CF3SO2)、LiN(CF3SO2)2、LiN(C2F5SO2)2、リチウム環状1,2−パーフルオロエタンジスルホニルイミド、リチウム環状1,3−パーフルオロプロパンジスルホニルイミド、LiC(FSO2)3、LiC(CF3SO2)3、LiC(C2F5SO2)3、リチウムジフルオロオキサラトボレート、リチウムビス(オキサラト)ボレート、リチウムテトラフルオロオキサラトフォスフェート、リチウムジフルオロビス(オキサラト)フォスフェート、リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート等が低温出力特性やハイレート充放電特性、インピーダンス特性、高温保存特性、サイクル特性等を向上させる効果がある点から特に好ましい。また、上記電解質塩は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
非水系電解液中のこれらの電解質の総濃度は、特に制限はないが、非水系電解液の全量に対して、通常8質量%以上、好ましくは8.5質量%以上、より好ましくは9質量%以上である。また、その上限は、通常18質量%以下、好ましくは17質量%以下、より好ましくは16質量%以下である。電解質の総濃度が上記範囲内であると、電気伝導率
が電池動作に適正となるため、十分な低温出力特性が得られる傾向にある。
<1−4.非水溶媒>
本発明の非水系電解液は、一般的な非水系電解液と同様、通常はその主成分として、上述した電解質を溶解する非水溶媒を含有する。ここで用いる非水溶媒について特に制限はなく、公知の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、飽和環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、環状エーテル、スルホン類等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
<1−4−1.飽和環状カーボネート>
飽和環状カーボネートとしては、通常炭素数2〜4のアルキレン基を有するものが挙げられ、リチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から炭素数2〜3の飽和環状カーボネートが好ましく用いられる。
飽和環状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。中でも、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートがリチウムイオン解離度の向上に由来する電池特性向上の点から好ましい。飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。
飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、1種を単独で用いる場合の含有量の下限は、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常3体積%以上、好ましくは5体積%以上である。この範囲とすることで、非水系電解液の誘電率の低下に由来する電気伝導率の低下を回避し、非水系電解液二次電池の大電流放電特性、負極に対する安定性、サイクル特性を良好な範囲としやすくなる。また上限は、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。この範囲とすることで、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池の低温出力特性を更に向上させたることが出来る傾向にある。
<1−4−2.鎖状カーボネート>
鎖状カーボネートとしては、通常炭素数3〜7のものが用いられ、サイクル特性と電池出力の点から、炭素数3〜5の鎖状カーボネートが好ましく用いられる。
具体的には、鎖状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルメチルカーボネート、イソブチルメチルカーボネート、t−ブチルメチルカーボネート、エチル−n−プロピルカーボネート、n−ブチルエチルカーボネート、イソブチルエチルカーボネート、t−ブチルエチルカーボネート等が挙げられる。
中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、n−プロピルイソプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチル−n−プロピルカーボネートが好ましく、特に好ましくはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートである。
また、フッ素原子を有する鎖状カーボネート類(以下、「フッ素化鎖状カーボネート」と略記する場合がある。)も好適に用いることができる。フッ素化鎖状カーボネートが有するフッ素原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常6以下であり、好ましくは4以下である。フッ素化鎖状カーボネートが複数のフッ素原子を有する場合、それらは互いに同一の炭素に結合していてもよく、異なる炭素に結合していてもよい。フッ素化
鎖状カーボネートとしては、フッ素化ジメチルカーボネート誘導体、フッ素化エチルメチルカーボネート誘導体、フッ素化ジエチルカーボネート誘導体等が挙げられる。
フッ素化ジメチルカーボネート誘導体としては、フルオロメチルメチルカーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、トリフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、ビス(トリフルオロメチル)カーボネート等が挙げられる。
フッ素化エチルメチルカーボネート誘導体としては、2−フルオロエチルメチルカーボネート、エチルフルオロメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、2−フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、エチルジフルオロメチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、2−フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、エチルトリフルオロメチルカーボネート等が挙げられる。
フッ素化ジエチルカーボネート誘導体としては、エチル−(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2−フルオロエチル)カーボネート、エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、2,2−ジフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、ビス(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、2,2,2−トリフルオロエチル−2’,2’−ジフルオロエチルカーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート等が挙げられる。
鎖状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
鎖状カーボネートの含有量は特に限定されないが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常15体積%以上であり、好ましくは20体積%以上、より好ましくは25体積%以上である。また、通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。鎖状カーボネートの含有量を上記範囲とすることによって、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、イオン伝導度の低下を抑制し、ひいては非水系電解液二次電池の低温出力特性を良好な範囲としやすくなる。
さらに、特定の鎖状カーボネートに対して、エチレンカーボネートを特定の含有量で組み合わせることにより、電池性能を著しく向上させることができる。
例えば、特定の鎖状カーボネートとしてジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネートを選択した場合、エチレンカーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常15体積%以上、好ましくは20体積%、また通常45体積%以下、好ましくは40体積%以下であり、ジメチルカーボネートの含有量は、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下であり、エチルメチルカーボネートの含有量は通常20体積%以上、好ましくは30体積%以上、また通常50体積%以下、好ましくは45体積%以下である。含有量を上記範囲内とすることで、電解質の低温析出温度を低下させながら、非水系電解液の粘度も低下させてイオン伝導度を向上させ、低温でも高い出力特性を得ることができる。
<1−4−3.環状エーテル>
環状エーテルとしては、通常炭素数3〜6の環状エーテルが用いられ、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点で炭素数3〜5の環状エーテルが好
ましく用いられる。
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、2−メチル−1,3−ジオキサン、4−メチル−1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等、及びこれらのフッ素化化合物が挙げられる。
これらの中でも、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン等が、リチウムイオンへの溶媒和能力が高く、イオン解離性を向上させる点で好ましい。
環状エーテルの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常1体積%以上、好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上、また、通常30体積%以下、好ましくは25体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。エーテル系化合物の含有量が前記好ましい範囲内であれば、鎖状エーテルのリチウムイオン解離度の向上と粘度低下に由来するイオン伝導度の向上効果を確保しやすい。
<1−4−4.スルホン系化合物>
スルホン系化合物としては、環状スルホン、鎖状スルホンであっても特に制限されないが、環状スルホンの場合、通常炭素数が3〜6、好ましくは炭素数が3〜5であり、鎖状スルホンの場合、通常炭素数が2〜6、好ましくは炭素数が2〜5である化合物が好ましい。また、スルホン系化合物1分子中のスルホニル基の数は、特に制限されないが、通常1又は2である。
環状スルホンとしては、モノスルホン化合物であるトリメチレンスルホン類、テトラメチレンスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類;ジスルホン化合物であるトリメチレンジスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類等が挙げられる。中でも誘電率と粘性の観点から、テトラメチレンスルホン類、テトラメチレンジスルホン類、ヘキサメチレンスルホン類、ヘキサメチレンジスルホン類がより好ましく、テトラメチレンスルホン類(スルホラン類)が特に好ましい。
スルホラン類としては、スルホラン及び/又はスルホラン誘導体(以下、スルホランも含めて「スルホラン類」と略記する場合がある。)が好ましい。スルホラン誘導体としては、スルホラン環を構成する炭素原子上に結合した水素原子の1以上がフッ素原子やアルキル基で置換されたものが好ましい。
中でも、2−メチルスルホラン、3−メチルスルホラン、2−フルオロスルホラン、3−フルオロスルホラン、2,2−ジフルオロスルホラン、2,3−ジフルオロスルホラン、2,4−ジフルオロスルホラン、2,5−ジフルオロスルホラン、3,4−ジフルオロスルホラン、2−フルオロ−3−メチルスルホラン、2−フルオロ−2−メチルスルホラン、3−フルオロ−3−メチルスルホラン、3−フルオロ−2−メチルスルホラン、4−フルオロ−3−メチルスルホラン、4−フルオロ−2−メチルスルホラン、5−フルオロ−3−メチルスルホラン、5−フルオロ−2−メチルスルホラン、2−フルオロメチルスルホラン、3−フルオロメチルスルホラン、2−ジフルオロメチルスルホラン、3−ジフルオロメチルスルホラン、2−トリフルオロメチルスルホラン、3−トリフルオロメチルスルホラン、2−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、3−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、4−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン、5−フルオロ−3−(トリフルオロメチル)スルホラン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
また、鎖状スルホンとしては、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、n−プロピルエチルスルホン、ジ−n−プロピルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、n−ブチルエチルスルホン、t−ブチルメチルスルホン、t−ブチルエチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、パーフルオロエチルメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、ジ(トリフルオロエチル)スルホン、パーフルオロジエチルスルホン、フルオロメチル−n−プロピルスルホン、ジフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、フルオロメチルイソプロピルスルホン、ジフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロエチルイソプロピルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−プロピルスルホン、ペンタフルオロエチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−n−ブチルスルホン、ペンタフルオロエチル−t−ブチルスルホン等が挙げられる。
中でも、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、n−プロピルメチルスルホン、イソプロピルメチルスルホン、n−ブチルメチルスルホン、t−ブチルメチルスルホン、モノフルオロメチルメチルスルホン、ジフルオロメチルメチルスルホン、トリフルオロメチルメチルスルホン、モノフルオロエチルメチルスルホン、ジフルオロエチルメチルスルホン、トリフルオロエチルメチルスルホン、ペンタフルオロエチルメチルスルホン、エチルモノフルオロメチルスルホン、エチルジフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロメチルスルホン、エチルトリフルオロエチルスルホン、エチルペンタフルオロエチルスルホン、トリフルオロメチル−n−プロピルスルホン、トリフルオロメチルイソプロピルスルホン、トリフルオロエチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロエチル−t−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−n−ブチルスルホン、トリフルオロメチル−t−ブチルスルホン等がイオン伝導度が高く入出力が高い点で好ましい。
スルホン系化合物の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の溶媒全量に対して、通常0.3体積%以上、好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは1体積%以上であり、また、通常40体積%以下、好ましくは35体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。スルホン系化合物の含有量が前記範囲内であれば、非水系電解液の粘度を適切な範囲とし、電気伝導率の低下を回避することができる。
<1−5.助剤>
<1−5−1.炭素−炭素不飽和結合及びフッ素原子のうち少なくとも一方を含有するカーボネート>
本発明の非水系電解液は、さらに、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネート(以下、「不飽和環状カーボネート」と略記する場合がある。)、及びフッ素原子を含有する環状カーボネートのうち少なくとも一方を含有していてもよい。また、本発明の非水系電解液は、フッ素化不飽和環状カーボネート、環状スルホン酸エステル化合物、シアノ基を有する化合物、ジイソシアナト化合物、カルボン酸無水物、過充電防止剤、これら以外の助剤等を含んでいてもよい。
炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、炭素−炭素不飽和結合を有
する環状カーボネートであれば、特に制限はなく、任意の炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネートを用いることができる。なお、芳香環を有する置換基を有する環状カーボネートも、炭素−炭素不飽和結合を有する環状カーボネートに包含されることとする。不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート類、芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類等が挙げられる。
ビニレンカーボネート類としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルビニレンカーボネート、アリルビニレンカーボネート等が挙げられる。
芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネート、4,5−ジエチニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
中でも、ビニレンカーボネート類、芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネートが好ましく、特に、ビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、エチニルエチレンカーボネートが、安定な界面保護皮膜を形成するので、より好適に用いられる。
不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。不飽和環状カーボネートの分子量は、通常50以上、好ましくは80以上であり、また通常250以下、好ましくは150以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する不飽和環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が十分に発現されやすい。
不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。また、不飽和環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。不飽和環状カーボネートの含有量は、非水系電解液の全量に対して、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常10質量%以下であり、好ましくは8質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。上記範囲内であれば、非水系電解液二次電池が低温保存特性に加え、十分な高温保存特性やサイクル特性向上効果を発現しやすい。
本発明において、一般式(1)で表される化合物は、正極被膜形成材として作用することが、不飽和環状カーボネートは負極皮膜形成材として作用することが知られている。そのため、一般式(1)で表される化合物と不飽和環状カーボネートを併用することで、正極及び負極に被膜が形成され、鎖状エーテルやカルボン酸エステルの分解を抑制し、非水系電解液の抵抗増加を抑制していると考えられる。
フッ素原子を有する環状カーボネート(以下、「フッ素化環状カーボネート」と略記する場合がある。)としては、フッ素原子を有する環状カーボネートであれば、特に制限はない。
フッ素化環状カーボネートとしては、炭素原子数2〜6のアルキレン基を有する環状カーボネートの誘導体が挙げられ、例えばエチレンカーボネート誘導体である。エチレンカーボネート誘導体としては、例えば、エチレンカーボネート又はアルキル基(例えば、炭素原子数1〜4個のアルキル基)で置換されたエチレンカーボネートのフッ素化物が挙げられ、中でもフッ素原子が1〜8個のものが好ましい。
具体的には、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(ジフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−5−フルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
中でも、モノフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート及び4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が、高イオン伝導性を与え、かつ好適に負極に皮膜を形成する点でより好ましい。
フッ素化環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。フッ素化環状カーボネートの含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液の全量に対して、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常85質量%以下であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。
尚、フッ素化環状カーボネートは、該非水系電解液の主たる溶媒として用いても、副たる溶媒として用いても良い。主たる溶媒として用いる場合のフッ素化環状カーボネートの含有量は、非水系電解液の全量に対して、通常8質量%以上であり、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上であり、また、通常85質量%以下であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは75質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性向上効果を発現しやすく、放電容量維持率が低下することを回避しやすい。また、副たる溶媒として用いる場合のフッ素化環状カーボネートの含有量は、非水系電解液の全量に対して、通常0.001質量%以上であり、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、また、通常8質量%以下であり、好ましくは6質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液二次電池が低温出力特性に加え、十分なサイクル特性や高温保存特性を発現しやすい。
<1−5−2.フッ素化不飽和環状カーボネート>
フッ素化環状カーボネートとして、不飽和結合とフッ素原子とを有する環状カーボネート(以下、「フッ素化不飽和環状カーボネート」と略記する場合がある。)を用いることができる。フッ素化不飽和環状カーボネートは、特に制限されない。中でもフッ素原子が1個又は2個のものが好ましい。フッ素化不飽和環状カーボネートの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
フッ素化不飽和環状カーボネートとしては、ビニレンカーボネート誘導体、芳香環又は
炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体等が挙げられる。
ビニレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。
芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体としては、4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
フッ素化不飽和環状カーボネートの分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。フッ素化不飽和環状カーボネートの分子量は、通常50以上、好ましくは80以上であり、また、通常250以下、好ましくは150以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するフッ素化環状カーボネートの溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。
フッ素化不飽和環状カーボネートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。また、フッ素化不飽和環状カーボネートの配合量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。フッ素化不飽和環状カーボネートの含有量は、非水系電解液の全量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。この範囲であれば、非水系電解液二次電池が低温出力特性の向上効果を発現しやすい。
<1−5−3.環状スルホン酸エステル化合物>
本発明の非水系電解液において、用いることができる環状スルホン酸エステル化合物としては、特にその種類は限定されないが、下記一般式(5)で表される化合物が好ましい。環状スルホン酸エステル化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
(一般式(5)中、R5およびR6は各々独立して、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子およびハロゲン原子からなる群から選ばれる原子で構成された有機基を表し、R5とR6は互いに−O−SO2−とともに不飽和結合を含んでいてもよい。)
ここで、R5およびR6は、好ましくは炭素原子、水素原子、酸素原子、硫黄原子からなる原子で構成された有機基であることが好ましく、中でも炭素数1〜3の炭化水素基、−O−SO2−を有する有機基であることが好ましい。
環状スルホン酸エステル化合物の分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。環状スルホン酸エステル化合物の分子量は、通常100以上、好ましくは110以上であり、また、通常250以下、好ましくは220以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対する環状スルホン酸エステル化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。
一般式(5)で表される化合物の具体例としては、例えば、
1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−メチル−1,3−プロパンスルトン、2−メチル−1,3−プロパンスルトン、3−メチル−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、2−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−2−プロペン−1,3−スルトン、1−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、2−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、3−メチル−1−プロペン−1,3−スルトン、1−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、2−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、3−メチル−2−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン、1−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、2−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、3−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、4−フルオロ−1,4−ブタンスルトン、1−メチル−1,4−ブタンスルトン、2−メチル−1,4−ブタンスルトン、3−メチル−1,4−ブタンスルトン、4−メチル−1,4−ブタンスルトン、1−ブテン−1,4−スルトン、2−ブテン−1,4−スルトン、3−ブテン−1,4−スルトン、1−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、2−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、3−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、4−フルオロ−1−ブテン−1,4−スルトン、1−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、2−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、3−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、4−フルオロ−2−ブテン−1,4−スルトン、1−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、2−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、3−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、4−フルオロ−3−ブテン−1,4−スルトン、1−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、2−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、3−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、4−メチル−1−ブテン−1,4−スルトン、1−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、2−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、3−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、4−メチル−2−ブテン−1,4−スルトン、1−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、2−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、3−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、4−メチル−3−ブテン−1,4−スルトン、1,5−ペンタンスルトン、1−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、2−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、3−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、4−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、5−フルオロ−1,5−ペンタンスルトン、1−メチル−1,5−ペンタンスルトン、2−メチル−1,5−ペンタンスルトン、3−メチル−1,5−ペンタンスルトン、4−メチル−1,5−ペンタンスルトン、5−メチル−1,5−ペンタンスルトン、1−ペンテン−1,5−スルトン、2−ペンテン−1,5−スルトン、3−ペンテン−1,5−スルトン、4−ペンテン−1,5−スルトン、1−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、2−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、3−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、4−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、5−フルオロ−1−ペンテン−1,5−スルトン、1−フルオロ−2−ペンテン−1,5−ス
ルトン、2−フルオロ−2−ペンテン−1,5−スルトン、3−フルオロ−2−ペンテン−1,5−スルトン、4−フルオロ−2−ペンテン−1,5−スルトン、5−フルオロ−2−ペンテン−1,5−スルトン、1−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、2−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、3−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、4−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、5−フルオロ−3−ペンテン−1,5−スルトン、1−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、2−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、3−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、4−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、5−フルオロ−4−ペンテン−1,5−スルトン、1−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、2−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、3−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、4−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、5−メチル−1−ペンテン−1,5−スルトン、1−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、2−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、3−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、4−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、5−メチル−2−ペンテン−1,5−スルトン、1−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、2−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、3−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、4−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、5−メチル−3−ペンテン−1,5−スルトン、1−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトン、2−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトン、3−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトン、4−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトン、5−メチル−4−ペンテン−1,5−スルトン、1,2−オキサチオラン−2,2−ジオキシド−4−イル−アセテート、1,2−オキサチオラン−2,2−ジオキシド−4−イル−プロピオネート、5−メチル−1,2−オキサチオラン−2,2−ジオキシド−4−オン−2,2−ジオキシド、5,5−ジメチル−1,2−オキサチオラン−2,2−ジオキシド−4−オン−2,2−ジオキシドなどのスルトン化合物;
メチレンスルフェート、エチレンスルフェート、プロピレンスルフェートなどのスルフェート化合物;
メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネートなどのジスルホネート化合物;
1,2,3−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3H−1,2,3−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、5H−1,2,3−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、1,2,4−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3H−1,2,4−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、5H−1,2,4−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、1,2,5−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアゾリジン−2,2−ジオキシド、3H−1,2,5−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、5H−1,2,5−オキサチアゾール−2,2−ジオキシド、1,2,3−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,3−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、1,2,4−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,4−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,6−ジヒドロ−1,2,4−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,4−ジヒドロ−1,2,4−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、1,2,5−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,5−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,6−ジヒドロ−1,2,5−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,4−ジヒドロ−1,2,5−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、1,2,6−オキサチアジナン−2,2
−ジオキシド、6−メチル−1,2,6−オキサチアジナン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,6−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、3,4−ジヒドロ−1,2,6−オキサチアジン−2,2−ジオキシド、5,6−ジヒドロ−1,2,6−オキサチアジン−2,2−ジオキシドなどの含窒素化合物;
1,2,3−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスラン−2,2,3−トリオキシド、3−メトキシ−1,2,3−オキサチアホスラン−2,2,3−トリオキシド、1,2,4−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアホスラン−2,2,4−トリオキシド、4−メトキシ−1,2,4−オキサチアホスラン−2,2,4−トリオキシド、1,2,5−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアホスラン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアホスラン−2,2,5−トリオキシド、5−メトキシ−1,2,5−オキサチアホスラン−2,2,5−トリオキシド、1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、3−メチル−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、3−メトキシ−1,2,3−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、1,2,4−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、4−メチル−1,2,4−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、4−メチル−1,5,2,4−ジオキサチアホスフィナン−2,4−ジオキシド、4−メトキシ−1,5,2,4−ジオキサチアホスフィナン−2,4−ジオキシド、3−メトキシ−1,2,4−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、1,2,5−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、5−メチル−1,2,5−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、5−メトキシ−1,2,5−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、1,2,6−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、6−メチル−1,2,6−オキサチアホスフィナン−2,2−ジオキシド、6−メチル−1,2,6−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシド、6−メトキシ−1,2,6−オキサチアホスフィナン−2,2,3−トリオキシドどの含リン化合物;
等が挙げられる。
これらのうち、
1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトン、1−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、2−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、3−フルオロ−1−プロペン−1,3−スルトン、1,4−ブタンスルトン、メチレンメタンジスルホネート、エチレンメタンジスルホネートが保存特性向上の点から好ましく、1,3−プロパンスルトン、1−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、2−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、3−フルオロ−1,3−プロパンスルトン、1−プロペン−1,3−スルトンがより好ましい。
環状スルホン酸エステル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。本発明の非水系電解液全体に対する環状スルホン酸エステル化合物の配合量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下の濃度で含有させる。上記範囲を満たした場合は、正極での鎖状エーテル、カルボン酸エステルの分
解を抑制し、非水電解液内の抵抗増加が抑制出来る観点で好ましい。
<1−5−4.シアノ基を有する化合物>
本発明の非水系電解液において、用いることができるシアノ基を有する化合物としては、分子内にシアノ基を有している化合物であれば特にその種類は限定されないが、下記一般式(6)で表される化合物がより好ましい。シアノ基を有する化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
(一般式(6)中、Tは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子およびハロゲン原子からなる群から選ばれる原子で構成された有機基を表し、Uは置換基を有してもよい炭素数1から10のV価の有機基である。Vは1以上の整数であり、Vが2以上の場合は、Tは互いに同一であっても異なっていてもよい。)
シアノ基を有する化合物の分子量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。シアノ基を有する化合物の分子量は、通常40以上であり、好ましくは45以上、より好ましくは50以上であり、また、通常200以下、好ましくは180以下、より好ましくは170以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するシアノ基を有する化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。
一般式(6)で表される化合物の具体例としては、例えば、
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル2−メチルブチロニトリル、トリメチルアセトニトリル、ヘキサンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトノニトリル、3−メチルクロトノニトリル、2−メチル−2−ブテン二トリル、2−ペンテンニトリル、2−メチル−2−ペンテンニトリル、3−メチル−2−ペンテンニトリル、2−ヘキセンニトリル、フルオロアセトニトリル、ジフルオロアセトニトリル、トリフルオロアセトニトリル、2−フルオロプロピオニトリル、3−フルオロプロピオニトリル、2,2−ジフルオロプロピオニトリル、2,3−ジフルオロプロピオニトリル、3,3−ジフルオロプロピオニトリル、2,2,3−トリフルオロプロピオニトリル、3,3,3−トリフルオロプロピオニトリル、3,3’−オキシジプロピオニトリル、3,3’−チオジプロピオニトリル、1,2,3−プロパントリカルボニトリル、1,3,5−ペンタントリカルボニトリル、ペンタフルオロプロピオニトリル等のシアノ基を1つ有する化合物;
マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル、メチルマロノニトリル、エチルマロノニトリル、イソプロピルマロノニトリル、tert−ブチルマロノニトリル、メチルスクシノニトリル、2,2−ジメチルスクシノニトリル、2,3−ジメチルスクシノニトリル、トリメチルスクシノニトリル、テトラメチルスクシノニトリル、3,3’−(エチレンジオキシ)ジプロピオニトリル、3,3’−(エチレンジチオ)ジプロピオニトリル等のシアノ基を2つ有する化合物;
1,2,3−トリス(2−シアノエトキシ)プロパン、トリス(2−シアノエチル)ア
ミン等のシアノ基を3つ有する化合物;
メチルシアネート、エチルシアネート、プロピルシアネート、ブチルシアネート、ペンチルシアネート、ヘキシルシアネート、ヘプチルシアネートなどのシアネート化合物;
メチルチオシアネート、エチルチオシアネート、プロピルチオシアネート、ブチルチオシアネート、ペンチルチオシアネート、ヘキシルチオシアネート、ヘプチルチオシアネート、メタンスルホニルシアニド、エタンスルホニルシアニド、プロパンスルホニルシアニド、ブタンスルホニルシアニド、ペンタンスルホニルシアニド、ヘキサンスルホニルシアニド、ヘプタンスルホニルシアニド、メチルスルフロシアニダート、エチルスルフロシアニダート、プロピルスルフロシアニダート、ブチルスルフロシアニダート、ペンチルスルフロシアニダート、ヘキシルスルフロシアニダート、ヘプチルスルフロシアニダートなどの含硫黄化合物;
シアノジメチルホスフィン、シアノジメチルホスフィンオキシド、シアノメチルホスフィン酸メチル、シアノメチル亜ホスフィン酸メチル、ジメチルホスフィン酸シアニド、ジメチル亜ホスフィン酸シアニド、シアノホスホン酸ジメチル、シアノ亜ホスホン酸ジメチル、メチルホスホン酸シアノメチル、メチル亜ホスホン酸シアノメチル、リン酸シアノジメチル亜リン酸シアノジメチルなどの含リン化合物;
等が挙げられる。
これらのうち、
アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、イソバレロニトリル、ラウロニトリル、クロトノニトリル、3‐メチルクロトノニトリル、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリルが保存特性向上の点から好ましく、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、ピメロニトリル、スベロニトリル、アゼラニトリル、セバコニトリル、ウンデカンジニトリル、ドデカンジニトリル等のシアノ基を2つ有する化合物がより好ましい。
シアノ基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有してもよい。本発明の非水系電解液全体に対するシアノ基を有する化合物の含有量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下の濃度で含有させる。上記範囲を満たした場合は、低温出力特性や充放電レート特性、サイクル特性、高温保存特性等の効果がより向上する。
<1−5−5.ジイソシアナト化合物>
本発明の非水系電解液において、用いることができるジイソシアネート化合物としては、分子内に、窒素原子をイソシアナト基にのみ有し、また、イソシアナト基を2つ有していて、下記一般式(7)で表される化合物が好ましい。
上記一般式(7)において、Xは環状構造を含み、かつ炭素数1以上15以下の有機基である。Xの炭素数は、通常2以上、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、また通常14以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。
上記一般式(7)中、Xは、炭素数4〜6のシクロアルキレン基あるいは芳香族炭化水素基を1つ以上有する、炭素数4〜15の有機基であることが特に好ましい。このとき、シクロアルキレン基上の水素原子はメチル基またはエチル基で置換されていてもよい。上記環状構造を有するジイソシアネート化合物は、立体的に嵩高いため分子であるため、正極上での副反応が起こりにくく、その結果サイクル特性ならびに高温保存特性が向上する。ここで、シクロアルキレン基あるいは芳香族炭化水素基に結合する基の結合部位は特段限定されず、メタ位、パラ位、オルト位のいずれであってもよいが、メタ位又はパラ位が、皮膜間架橋距離が適切となることでリチウムイオン伝導性に有利となり、抵抗を低下させやすいために好ましい。また、シクロアルキレン基はシクロペンチレン基又はシクロへキシレン基であることが、ジイソシアネート化合物自体が副反応を起こしにくい観点で好ましく、シクロへキシレン基であることが、分子運動性の影響により抵抗を低下させやすいことからより好ましい。
また、シクロアルキレン基あるいは芳香族炭化水素基とイソシアネート基との間には炭素数1〜3のアルキレン基を有していることが好ましい。アルキレン基を有することで立体的に嵩高くなるため、正極上での副反応が起こりにくくなる。さらにアルキレン基が炭素数1〜3であれば全分子量に対するイソシアネート基の占める割合が大きく変化しないため、本発明の効果が顕著に発現しやすくなる。
上記一般式(7)で表されるジイソシアネート化合物の分子量は特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。分子量は、通常80以上であり、好ましくは115以上、より好ましくは170以上であり、また、通常300以下であり、好ましくは230以下である。この範囲であれば、非水系電解液に対するジイソシアネート化合物の溶解性を確保しやすく、本発明の効果が発現されやすい。
ジイソシアネート化合物の具体例としては、例えば、
1,2−ジイソシアナトシクロペンタン、1,3−ジイソシアナトシクロペンタン、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−3,3’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、等のシクロアルカン環含有ジイソシアネート類;
1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレン−2,3−ジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネート、トリレン−2,5−ジイソシアネート、トリレン−2,6−ジイソシアネート、トリレン−3,4−ジイソシアネート、トリレン−3,5−ジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、2,4−ジイソシアナトビフェニル、2,6−ジイソシアナトビフェニル、2,2’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジイソシアナトビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−2−メチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3−メチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−2−メチルジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−3−メチ
ルジフェニルメタン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジフェニルメタン、1,5−ジイソシアナトナフタレン、1,8−ジイソシアナトナフタレン、2,3−ジイソシアナトナフタレン、1,5−ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、1,8−ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン、2,3−ビス(イソシアナトメチル)ナフタレン等の芳香環含有ジイソシアネート類;
などが挙げられる。
これらの中でも、
1,2−ジイソシアナトシクロペンタン、1,3−ジイソシアナトシクロペンタン、1,2−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、1,2−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,2−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、2,4−ジイソシアナトビフェニル、2,6−ジイソシアナトビフェニルが、負極上により緻密な複合的な皮膜が形成され、その結果、電池耐久性が向上するため、好ましい。
これらの中でも、
1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼンが、その分子の対称性から負極上にリチウムイオン伝導性に有利な皮膜が形成され、その結果、低温出力特性及びサイクル特性等の電池特性がさらに向上するため、より好ましい。
また上述したジイソシアネート化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の非水系電解液において、用いることができるジイソシアネート化合物の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.3質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。含有量が上記範囲内であると、低温出力及びサイクル特性等の電池特性がさらに向上する傾向にある。
尚、ジイソシアネート化合物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。また、市販品を用いてもよい。
<1−5−6.カルボン酸無水物>
本発明の非水系電解液において、用いることができるカルボン酸無水物としては、下記一般式(8)で表される化合物が好ましい。カルボン酸無水物の製造方法は、特に制限されず、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
(一般式(5)中、R1,R2はそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい、炭素数1以上15以下の炭化水素基を表す。R1,R2が互いに結合して、環状構造を形成していてもよい。)
R1,R2は、一価の炭化水素基であれば、その種類は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合したものであってもよい。脂肪族炭化水素基は、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和結合(炭素−炭素二重結合又は炭素−炭素三重結合)を含んでいてもよい。また、脂肪族炭化水素基は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状の場合は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。さらには、鎖状と環状とが結合したものであってもよい。なお、R1及びR2は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
また、R1,R2が互いに結合して環状構造を形成する場合、R1及びR2が互いに結合して構成された炭化水素基は二価である。二価の炭化水素基の種類は特に制限されない。即ち、脂肪族基でも芳香族基でもよく、脂肪族基と芳香族基とが結合したものでもよい。脂肪族基の場合、飽和基でも不飽和基でもよい。また、鎖状基でも環状基でもよく、鎖状基の場合は直鎖状基でも分岐鎖状基でもよい。さらには鎖状基と環状基とが結合したものでもよい。
また、R1,R2の炭化水素基が置換基を有する場合、その置換基の種類は、本発明の趣旨に反するものでない限り特に制限されないが、例としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。また、ハロゲン原子以外の置換基として、エステル基、シアノ基、カルボニル基、エーテル基等の官能基を有する置換基なども挙げられ、好ましくはシアノ基、カルボニル基である。R1,R2の炭化水素基は、これらの置換基を一つのみ有していてもよく、二つ以上有していてもよい。二つ以上の置換基を有する場合、それらの置換基は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
R1,R2の各々の炭化水素基の炭素数は、通常1以上であり、また通常15以下、好ましくは12以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは9以下である。R1とR2とが互いに結合して二価の炭化水素基を形成している場合は、その二価の炭化水素基の炭素数が、通常1以上であり、また通常15以下、好ましくは13以下、より好ましくは10以下、さらに好ましくは8以下である。尚、R1,R2の炭化水素基が炭素原子を含有する置換基を有する場合は、その置換基も含めたR1,R2全体の炭素数が上記範囲を満たしていることが好ましい。
次いで、上記一般式(5)で表わされる酸無水物の具体例について説明する。なお、以下の例示において「類縁体」とは、例示される酸無水物の構造の一部を、本発明の趣旨に反しない範囲で、別の構造に置き換えることにより得られる酸無水物を指すもので、例えば複数の酸無水物からなる二量体、三量体及び四量体など、または、置換基の炭素数が同じではあるが分岐鎖を有するなど構造異性のもの、置換基が酸無水物に結合する部位が異なるものなどが挙げられる。
まず、R1,R2が同一である酸無水物の具体例を以下に挙げる。
R1,R2が鎖状アルキル基である酸無水物の具体例としては、無水酢酸、プロピオン酸無水物、ブタン酸無水物、2−メチルプロピオン酸無水物、2,2−ジメチルプロピオン酸無水物、2−メチルブタン酸無水物、3−メチルブタン酸無水物、2,2−ジメチルブタン酸無水物、2,3−ジメチルブタン酸無水物、3,3−ジメチルブタン酸無水物、2,2,3−トリメチルブタン酸無水物、2,3,3−トリメチルブタン酸無水物、2,2,3,3−テトラメチルブタン酸無水物、2−エチルブタン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R1,R2が環状アルキル基である酸無水物の具体例としては、シクロプロパンカルボン酸無水物、シクロペンタンカルボン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R1,R2がアルケニル基である酸無水物の具体例としては、アクリル酸無水物、2−メチルアクリル酸無水物、3−メチルアクリル酸無水物、2,3−ジメチルアクリル酸無水物、3,3−ジメチルアクリル酸無水物、2,3,3−トリメチルアクリル酸無水物、2−フェニルアクリル酸無水物、3−フェニルアクリル酸無水物、2,3−ジフェニルアクリル酸無水物、3,3−ジフェニルアクリル酸無水物、3−ブテン酸無水物、2−メチル−3−ブテン酸無水物、2,2−ジメチル−3−ブテン酸無水物、3−メチル−3−ブテン酸無水物、2−メチル−3−メチル−3−ブテン酸無水物、2,2−ジメチル−3−メチル−3−ブテン酸無水物、3−ペンテン酸無水物、4−ペンテン酸無水物、2−シクロペンテンカルボン酸無水物、3−シクロペンテンカルボン酸無水物、4−シクロペンテンカルボン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R1,R2がアルキニル基である酸無水物の具体例としては、プロピン酸無水物、3−フェニルプロピン酸無水物、2−ブチン酸無水物、2−ペンチン酸無水物、3−ブチン酸無水物、3−ペンチン酸無水物、4−ペンチン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R1,R2がアリール基である酸無水物の具体例としては、安息香酸無水物、4−メチル安息香酸無水物、4−エチル安息香酸無水物、4−tert−ブチル安息香酸無水物、2−メチル安息香酸無水物、2,4,6−トリメチル安息香酸無水物、1−ナフタレンカルボン酸無水物、2−ナフタレンカルボン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
また、R1,R2がハロゲン原子で置換された酸無水物の例として、主にフッ素原子で置換された酸無水物の例を以下に挙げるが、これらのフッ素原子の一部又は全部を塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子に置換して得られる酸無水物も、例示化合物に含まれるものとする。
R1,R2がハロゲン原子で置換された鎖状アルキル基である酸無水物の例としては、フルオロ酢酸無水物、ジフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、2−フルオロプロピオン酸無水物、2,2−ジフルオロプロピオン酸無水物、2,3−ジフルオロプロピオン酸無水物、2,2,3−トリフルオロプロピオン酸無水物、2,3,3−トリフルオロプロピオン酸無水物、2,2,3,3−テトラプロピオン酸無水物、2,3,3,3−テトラプロピオン酸無水物、3−フルオロプロピオン酸無水物、3,3−ジフルオロプロピオン酸無水物、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸無水物、パーフルオロプロピオン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R1,R2がハロゲン原子で置換された環状アルキル基である酸無水物の例としては、2−フルオロシクロペンタンカルボン酸無水物、3−フルオロシクロペンタンカルボン酸無水物、4−フルオロシクロペンタンカルボン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる
R1,R2がハロゲン原子で置換されたアルケニル基である酸無水物の例としては、2−フルオロアクリル酸無水物、3−フルオロアクリル酸無水物、2,3−ジフルオロアクリル酸無水物、3,3−ジフルオロアクリル酸無水物、2,3,3−トリフルオロアクリル酸無水物、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、3−( トリフルオロメチ
ル)アクリル酸無水物、2,3−ビス(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、2,3,3−トリス(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、2−(4−フルオロフェニル)アクリル酸無水物、3−(4−フルオロフェニル)アクリル酸無水物、2,3−ビス(4−フルオロフェニル)アクリル酸無水物、3,3−ビス(4−フルオロフェニル)アクリル酸無水物、2−フルオロ−3−ブテン酸無水物、2,2−ジフルオロ−3−ブテン酸無水物、3−フルオロ−2−ブテン酸無水物、4−フルオロ−3−ブテン酸無水物、3,4−ジフルオロ−3−ブテン酸無水物、3,3,4−トリフルオロ−3−ブテン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R1,R2がハロゲン原子で置換されたアルキニル基である酸無水物の例としては、
3−フルオロ−2−プロピン酸無水物、3−(4−フルオロフェニル)−2−プロピン酸無水物、3−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)−2−プロピン酸無水物、4−フルオロ−2−ブチン酸無水物、4,4−ジフルオロ−2−ブチン酸無水物、4,4,4−トリフルオロ−2−ブチン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R1,R2がハロゲン原子で置換されたアリール基である酸無水物の例としては、4−フルオロ安息香酸無水物、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ安息香酸無水物、4−トリフルオロメチル安息香酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R1,R2がエステル、ニトリル、ケトン、エーテルなどの官能基を有する置換基を有している酸無水物の例としては、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水物、メチルシュウ酸無水物、エチルシュウ酸無水物、2−シアノ酢酸無水物、2−オキソプロピオン酸無水物、3−オキソブタン酸無水物、4−アセチル安息香酸無水物、メトキシ酢酸無水物、4−メトキシ安息香酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
続いて、R1,R2が互いに異なる酸無水物の具体例を以下に挙げる。
R1,R2としては上に挙げた例、及びそれらの類縁体の全ての組み合わせが考えられるが、以下に代表的な例を挙げる。
鎖状アルキル基同士の組み合わせの例としては、酢酸プロピオン酸無水物、酢酸ブタン酸無水物、ブタン酸プロピオン酸無水物、酢酸2−メチルプロピオン酸無水物、
などが挙げられる。
鎖状アルキル基と環状アルキル基の組み合わせの例としては、酢酸シクロペンタン酸無水物、酢酸シクロヘキサン酸無水物、シクロペンタン酸プロピオン酸無水物、などが挙げられる。
鎖状アルキル基とアルケニル基の組み合わせの例としては、酢酸アクリル酸無水物、酢酸3−メチルアクリル酸無水物、酢酸3−ブテン酸無水物、アクリル酸プロピオン酸無水物、などが挙げられる。
鎖状アルキル基とアルキニル基の組み合わせの例としては、酢酸プロピン酸無水物、酢酸2−ブチン酸無水物、酢酸3−ブチン酸無水物、酢酸3−フェニルプロピン酸無水物、プロピオン酸プロピン酸無水物、などが挙げられる。
鎖状アルキル基とアリール基の組み合わせの例としては、酢酸安息香酸無水物、酢酸4−メチル安息香酸無水物、酢酸1−ナフタレンカルボン酸無水物、安息香酸プロピオン酸無水物、などが挙げられる。
鎖状アルキル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、酢酸フルオロ酢酸無水物、酢酸トリフルオロ酢酸無水物、酢酸4−フルオロ安息香酸無水物、フルオロ酢酸プロピオン酸無水物、酢酸アルキルシュウ酸無水物、酢酸2−シアノ酢酸無水物、酢酸2−オキソプロピオン酸無水物、酢酸メトキシ酢酸無水物、メトキシ酢酸プロピオン酸無水物、などが挙げられる。
環状アルキル基同士の組み合わせの例としては、シクロペンタン酸シクロヘキサン酸無水物、などが挙げられる。
環状アルキル基とアルケニル基の組み合わせの例としては、アクリル酸シクロペンタン酸無水物、3−メチルアクリル酸シクロペンタン酸無水物、3−ブテン酸シクロペンタン酸無水物、アクリル酸シクロヘキサン酸無水物、などが挙げられる。
環状アルキル基とアルキニル基の組み合わせの例としては、プロピン酸シクロペンタン酸無水物、2−ブチン酸シクロペンタン酸無水物、プロピン酸シクロヘキサン酸無水物、などが挙げられる。
環状アルキル基とアリール基の組み合わせの例としては、安息香酸シクロペンタン酸無水物、4−メチル安息香酸シクロペンタン酸無水物、安息香酸シクロヘキサン酸無水物、などが挙げられる。
環状アルキル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、フルオロ酢酸シクロペンタン酸無水物、シクロペンタン酸トリフルオロ酢酸無水物、シクロペンタン酸2−シアノ酢酸無水物、シクロペンタン酸メトキシ酢酸無水物、シクロヘキサン酸フルオロ酢酸無水物、などが挙げられる。
アルケニル基同士の組み合わせの例としては、アクリル酸2−メチルアクリル酸無水物、アクリル酸3−メチルアクリル酸無水物、アクリル酸3−ブテン酸無水物、2−メチルアクリル酸3−メチルアクリル酸無水物、などが挙げられる。
アルケニル基とアルキニル基の組み合わせの例としては、アクリル酸プロピン酸無水物、アクリル酸2−ブチン酸無水物、2−メチルアクリル酸プロピン酸無水物、などが挙げられる。
アルケニル基とアリール基の組み合わせの例としては、アクリル酸安息香酸無水物、アクリル酸4−メチル安息香酸無水物、2−メチルアクリル酸安息香酸無水物、などが挙げられる。
アルケニル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、アクリル酸フルオロ酢酸無水物、アクリル酸トリフルオロ酢酸無水物、アクリル酸2−シアノ酢酸無水物、アクリル酸メトキシ酢酸無水物、2−メチルアクリル酸フルオロ酢酸無水物、などが挙
げられる。
アルキニル基同士の組み合わせの例としては、プロピン酸2−ブチン酸無水物、プロピン酸3−ブチン酸無水物、2−ブチン酸3−ブチン酸無水物、などが挙げられる。
アルキニル基とアリール基の組み合わせの例としては、安息香酸プロピン酸無水物、4−メチル安息香酸プロピン酸無水物、安息香酸2−ブチン酸無水物、などが挙げられる。
アルキニル基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、プロピン酸フルオロ酢酸無水物、プロピン酸トリフルオロ酢酸無水物、プロピン酸2−シアノ酢酸無水物、プロピン酸メトキシ酢酸無水物、2−ブチン酸フルオロ酢酸無水物、などが挙げられる。
アリール基同士の組み合わせの例としては、安息香酸4−メチル安息香酸無水物、安息香酸1−ナフタレンカルボン酸無水物、4−メチル安息香酸1−ナフタレンカルボン酸無水物、などが挙げられる。
アリール基と官能基を有する炭化水素基の組み合わせの例としては、安息香酸フルオロ酢酸無水物、安息香酸トリフルオロ酢酸無水物、安息香酸2−シアノ酢酸無水物、安息香酸メトキシ酢酸無水物、4−メチル安息香酸フルオロ酢酸無水物、などが挙げられる。
官能基を有する炭化水素基同士の組み合わせの例としては、フルオロ酢酸トリフルオロ酢酸無水物、フルオロ酢酸2−シアノ酢酸無水物、フルオロ酢酸メトキシ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸2−シアノ酢酸無水物、などが挙げられる。
上記の鎖状構造を形成している酸無水物のうち好ましくは、
無水酢酸、プロピオン酸無水物、2−メチルプロピオン酸無水物、シクロペンタンカルボン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物等、アクリル酸無水物、2−メチルアクリル酸無水物、3−メチルアクリル酸無水物、2,3−ジメチルアクリル酸無水物、3,3−ジメチルアクリル酸無水物、3−ブテン酸無水物、2−メチル−3−ブテン酸無水物、プロピン酸無水物、2−ブチン酸無水物、安息香酸無水物、2−メチル安息香酸無水物、4−メチル安息香酸無水物、4−tert−ブチル安息香酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸無水物、2−(トリフルオロメチル)アクリル酸無水物、2−(4−フルオロフェニル)アクリル酸無水物、4−フルオロ安息香酸無水物、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ安息香酸無水物、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水物、であり、より好ましくは、
アクリル酸無水物、2−メチルアクリル酸無水物、3−メチルアクリル酸無水物、安息香酸無水物、2−メチル安息香酸無水物、4−メチル安息香酸無水物、4−tert−ブチル安息香酸無水物、4−フルオロ安息香酸無水物、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ安息香酸無水物、メトキシギ酸無水物、エトキシギ酸無水物である。
これらの化合物は、適切にリチウムオキサラート塩との結合を形成して耐久性に優れる皮膜を形成することで、特に耐久試験後の充放電レート特性、低温出力特性、インピーダンス特性を向上させることができる観点で好ましい。
続いて、R1とR2とが互いに結合して環状構造を形成している酸無水物の具体例を以下に挙げる。
まず、R1とR2とが互いに結合して5員環構造を形成している酸無水物の具体例としては、無水コハク酸、4−メチルコハク酸無水物、4,4−ジメチルコハク酸無水物、4
,5−ジメチルコハク酸無水物、4,4,5−トリメチルコハク酸無水物、4,4,5,5−テトラメチルコハク酸無水物、4−ビニルコハク酸無水物、4,5−ジビニルコハク酸無水物、4−フェニルコハク酸無水物、4,5−ジフェニルコハク酸無水物、4,4−ジフェニルコハク酸無水物、シトラコン酸無水物、無水マレイン酸、4−メチルマレイン酸無水物、4,5−ジメチルマレイン酸無水物、4−フェニルマレイン酸無水物、4,5−ジフェニルマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、5−メチルイタコン酸無水物、5,5−ジメチルイタコン酸無水物、無水フタル酸、3,4,5,6−テトラヒドロフタル酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R1とR2とが互いに結合して6員環構造を形成している酸無水物の具体例としては、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R1とR2とが互いに結合してその他の環状構造を形成している酸無水物の具体例としては、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、ジグリコール酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
R1とR2とが互いに結合して環状構造を形成するとともに、ハロゲン原子で置換された酸無水物の具体例としては、4−フルオロコハク酸無水物、4,4−ジフルオロコハク酸無水物、4,5−ジフルオロコハク酸無水物、4,4,5−トリフルオロコハク酸無水物、4,4,5,5−テトラフルオロコハク酸無水物、4−フルオロマレイン酸無水物、4,5−ジフルオロマレイン酸無水物、5−フルオロイタコン酸無水物、5,5−ジフルオロイタコン酸無水物等、及びそれらの類縁体などが挙げられる。
上記のR1とR2とが結合している酸無水物のうち好ましくは、
無水コハク酸、4−メチルコハク酸無水物、4−ビニルコハク酸無水物、4−フェニルコハク酸無水物、シトラコン酸無水物、無水マレイン酸、4−メチルマレイン酸無水物、4−フェニルマレイン酸無水物、イタコン酸無水物、5−メチルイタコン酸無水物、グルタル酸無水物、無水フタル酸、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、4−フルオロコハク酸無水物、4−フルオロマレイン酸無水物、5−フルオロイタコン酸無水物、
であり、より好ましくは、
無水コハク酸、4−メチルコハク酸無水物、4−ビニルコハク酸無水物、シトラコン酸無水物、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、4−フルオロコハク酸無水物である。これらの化合物は、適切にリチウムオキサラート塩との結合を形成して耐久性に優れる皮膜を形成することで、特に耐久試験後の容量維持率が向上するために好ましい。
なお、カルボン酸無水物の分子量に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常90以上、好ましくは95以上であり、一方、通常300以下、好ましくは200以下である。カルボン酸無水物の分子量が上記範囲内であると、電解液の粘度上昇を抑制でき、かつ皮膜密度が適正化されるために低温出力を低下させずに、耐久性を適切に向上することができる。
また、前記カルボン酸無水物の製造方法にも特に制限は無く、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。以上説明したカルボン酸無水物は、本発明の非水系電解液中に、何れか1種を単独で含有させてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で
併有させてもよい。
また、本発明の非水系電解液に対するカルボン酸無水物の含有量に特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下の濃度で含有させることが望ましい。カルボン酸無水物の含有量が上記範囲内であると、サイクル特性向上効果が発現しやすくなり、また反応性が好適であるため電池特性が向上しやすくなる。
<1−5−7.過充電防止剤>
本発明の非水系電解液において、非水系電解液二次電池が過充電等の状態になった際に電池の破裂・発火を効果的に抑制するために、過充電防止剤を用いることができる。
過充電防止剤としては、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、ジフェニルシクロヘキサン、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダン等の芳香族化合物;2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の上記芳香族化合物の部分フッ素化物;2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、2,6−ジフルオロアニソール、3,5−ジフルオロアニソール等の含フッ素アニソール化合物等;3−プロピルフェニルアセテート、2−エチルフェニルアセテート、ベンジルフェニルアセテート、メチルフェニルアセテート、ベンジルアセテート、フェネチルフェニルアセテート等の芳香族アセテート類;ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート等の芳香族カーボネート類が挙げられる。中でも、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン、ジフェニルシクロヘキサン、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインダン、3−プロピルフェニルアセテート、2−エチルフェニルアセテート、ベンジルフェニルアセテート、メチルフェニルアセテート、ベンジルアセテート、フェネチルフェニルアセテート、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネートが好ましい。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上併用する場合は、特に、シクロヘキシルベンゼンとt−ブチルベンゼン又はt−アミルベンゼンとの組み合わせ、ビフェニル、アルキルビフェニル、ターフェニル、ターフェニルの部分水素化体、シクロヘキシルベンゼン、t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン等の酸素を含有しない芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種と、ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の含酸素芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種を併用するのが、過充電防止特性と高温保存特性のバランスの点から好ましい。
過充電防止剤の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。過充電防止剤の含有量は、非水系電解液の全量に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは4.8質量%以下、より好ましくは4.5質量%以下である。この範囲であれば、過充電防止剤の効果を十分に発現させやすく、また、高温保存特性等の電池の特性が向上する。
<1−5−8.その他の助剤>
本発明の非水系電解液には、公知のその他の助剤を用いることができる。その他の助剤としては、
エリスリタンカーボネート、スピロ−ビス−ジメチレンカーボネート、メトキシエチル−メチルカーボネート等のカーボネート化合物;
メチル−2−プロピニルオギザレート、エチル−2−プロピニルオギザレート、ビス(2−プロピニル)オギザレート、2−プロピニルアセテート、2−プロピニルホルメート、2−プロピニルメタクリレート、ジ(2−プロピニル)グルタレート、メチル−2−プロピニルカーボネート、エチル−2−プロピニルカーボネート、ビス(2−プロピニル)カーボネート、2−ブチン−1,4−ジイル−ジメタンスルホネート、2−ブチン−1,4−ジイル−ジエタンスルホネート、2−ブチン−1,4−ジイル−ジホルメート、2−ブチン−1,4−ジイル−ジアセテート、2−ブチン−1,4−ジイル−ジプロピオネート、4−ヘキサジイン−1,6−ジイル−ジメタンスルホネート、2−プロピニル−メタンスルホネート、1−メチル−2−プロピニル−メタンスルホネート、1,1−ジメチル−2−プロピニル−メタンスルホネート、2−プロピニル−エタンスルホネート、2−プロピニル−ビニルスルホネート、2−プロピニル−2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、1−メチル−2−プロピニル−2−(ジエトキシホスホリル)アセテート、1,1−ジメチル−2−プロピニル−2−(ジエトキシホスホリル)アセテート等の三重結合含有化合物;
2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等のスピロ化合物;
エチレンサルファイト、フルオロスルホン酸メチル、フルオロスルホン酸エチル、メタンスルホン酸メチル、メタンスルホン酸エチル、ブスルファン、スルホレン、硫酸エチレン、硫酸ビニレン、ジフェニルスルホン、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド、メチル硫酸トリメチルシリル、エチル硫酸トリメチルシリル、2−プロピニル−トリメチルシリルスルフェート等の含硫黄化合物;
2−イソシアナトエチルアクリレート、2−イソシアナトエチルメタクリレート、2−イソシアナトエチルクロトネート、2−(2−イソシアナトエトキシ)エチルアクリレート、2−(2−イソシアナトエトキシ)エチルメタクリレート、2−(2−イソシアナトエトキシ)エチルクロトネート等のイソシアネート化合物;
1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及びN−メチルスクシンイミド等の含窒素化合物;
ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物;
フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド、オルトフルオロトルエン、メタフルオロトルエン、パラフルオロトルエン、1,2−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−2−ジフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−3−ジフルオロメチルベンゼン、1,4−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1−トリフルオロメチル−4−ジフルオロメチルベンゼン、1,3,5−トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ペンタフルオロフェニルメタンスルホネート、ペンタフルオロフェニルトリフルオロメタンスルホネート、酢酸ペンタフルオロフェニル、トリフルオロ酢酸ペンタフルオロフェニル、メチルペンタフルオロフェニルカーボネート等の含フッ素芳香族化合物;
ホウ酸トリス(トリメチルシリル)、ホウ酸トリス(トリメトキシシリル)、リン酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメトキシシリル)、ジメトキシアルミノキシトリメトキシシラン、ジエトキシアルミノキシトリエトキシシラン、ジプロポキシアルミノキシトリエトキシシラン、ジブトキシアルミノキシトリメトキシシラン、ジブトキシアルミノキシトリエトキシシラン、チタンテトラキス(トリメチルシロキシド)、チタンテトラキス(トリエチルシロキシド)、
等のシラン化合物;
2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2−プロピニル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2−メチル、2−(メタンスルホニルオキシ)プロピオン酸2−エチル、メタンスルホニルオキシ酢酸2−プロピニル、メタンスルホニルオキシ酢酸2−メチル、メタンスルホニルオキシ酢酸2−エチル等のエステル化合物;
リチウムエチルメチルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチルエチルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチル−2−プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウムエチル−1−メチル−2−プロピニルオキシカルボニルホスホネート、リチウム
エチル−1,1−ジメチル−2−プロピニルオキシカルボニルホスホネート等のリチウム塩;
等が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの助剤を添加することにより、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を向上させることができる。
その他の助剤の含有量は、特に制限されず、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その他の助剤の含有量は、非水系電解液の全量に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。この範囲であれば、その他助剤の効果が十分に発現させやすく、低温出力特性等の電池の特性が向上する。
<2.非水系電解液二次電池>
本発明の非水系電解液二次電池は、集電体及び該集電体上に設けられた正極活物質層を有する正極と、集電体及び該集電体上に設けられた負極活物質層を有しかつイオンを吸蔵及び放出し得る負極と、上述した本発明の非水系電解液とを備えるものである。
<2−1.電池構成>
本発明の非水系電解液二次電池は、上述した本発明の非水系電解液以外の構成については、従来公知の非水系電解液二次電池と同様である。通常は、本発明の非水系電解液が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。従って、本発明の非水系電解液二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
<2−2.非水系電解液>
非水系電解液としては、上述の本発明の非水系電解液を用いる。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を配合して用いることも可能である。
<2−3.負極>
負極は、集電体上に負極活物質層を有するものであり、負極活物質層は負極活物質を含有する。以下、負極活物質について述べる。
負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。その具体例としては、炭素質材料、金属合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意に組み合わせて併用してもよい。
<2−3−1.炭素質材料>
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、
(1)天然黒鉛、
(2)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400から3200℃の範囲で一回以上熱処理した炭素質材料、
(3)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる結晶性を有する炭素質から成り立ちかつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
(4)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる配向性を有する炭素質から成り立ち
かつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
から選ばれるものが初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスが良く好ましい。また、(1)〜(4)の炭素質材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい
上記(2)の人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質の具体的な例としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、あるいはこれらピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物、及びこれらの炭化物、又は炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれらの炭化物等が挙げられる。
<2−3−2.炭素質負極の構成、物性、調製方法>
炭素質材料についての性質や炭素質材料を含有する負極電極及び電極化手法、集電体、非水系電解液二次電池については、次に示す(1)〜(13)の何れか1項又は複数項を同時に満たしていることが望ましい。
(1)X線パラメータ
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、通常0.335〜0.340nmであり、特に0.335〜0.338nm、とりわけ0.335〜0.337nmであるものが好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)は、通常1.0nm以上、好ましくは1.5nm以上、特に好ましくは2nm以上である。
(2)体積基準平均粒径
炭素質材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)が、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がさらに好ましく、7μm以上が特に好ましく、また、通常100μm以下であり、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましく、25μm以下が特に好ましい。
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、本発明の炭素質材料の体積基準平均粒径と定義する。
(3)ラマンR値、ラマン半値幅
炭素質材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値が、通常0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.1以上がさらに好ましく、また、通常1.5以下であり、1.2以下が好ましく、1以下がさらに好ましく、0.5以下が特に好ましい。
ラマンR値が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する場合がある。また、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
また、炭素質材料の1580cm−1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常10cm−1以上であり、15cm−1以上が好ましく、また、通常100cm−1以下であり、80cm−1以下が好ましく、60cm−1以下がさらに好ましく、40cm−1以下が特に好ましい。
ラマン半値幅が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する場合がある。また、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(日本分光社製ラマン分光器)を用いて、試料を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させることにより行なう。得られるラマンスペクトルについて、1580cm−1付近のピークPAの強度IAと、1360cm−1付近のピークPBの強度IBとを測定し、その強度比R(R=IB/IA)を算出する。該測定で算出されるラマンR値を、本発明における炭素質材料のラマンR値と定義する。また、得られるラマンスペクトルの1580cm−1付近のピークPAの半値幅を測定し、これを本発明における炭素質材料のラマン半値幅と定義する。
また、上記のラマン測定条件は、次の通りである。
・アルゴンイオンレーザー波長 :514.5nm
・試料上のレーザーパワー :15〜25mW
・分解能 :10〜20cm−1
・測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
・ラマンR値、ラマン半値幅解析:バックグラウンド処理
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
(4)BET比表面積
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、通常0.1m2・g−1以上であり、0.7m2・g−1以上が好ましく、1.0m2・g−1以上がさらに好ましく、1.5m2・g−1以上が特に好ましく、また、通常100m2・g−1以下であり、25m2・g−1以下が好ましく、15m2・g−1以下がさらに好ましく、10m2・g−1以下が特に好ましい。
BET比表面積の値がこの範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなりやすく、リチウムが電極表面で析出しやすくなり、安定性が低下する可能性がある。一方、この範囲を上回ると、負極材料として用いた時に非水系電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなりやすく、好ましい電池が得られにくい場合がある。
BET法による比表面積の測定は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。該測定で求められる比表面積を、本発明における炭素質材料のBET比表面積と定義する。
(5)円形度
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ま
しい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
炭素質材料の粒径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は1に近いほど望ましく、また、0.1以上が好ましく、中でも0.5以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましく、0.85以上が特に好ましく、0.9以上が最も好ましい。
高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製FPIA)を用いて行う。試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が3〜40μmの範囲の粒子について測定する。該測定で求められる円形度を、本発明における炭素質材料の円形度と定義する。
円形度を向上させる方法は、特に限定されないが、球形化処理を施して球形にしたものが、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので好ましい。球形化処理の例としては、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子をバインダー若しくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法等が挙げられる。
(6)タップ密度
炭素質材料のタップ密度は、通常0.1g・cm−3以上であり、0.5g・cm−3以上が好ましく、0.7g・cm−3以上がさらに好ましく、1g・cm−3以上が特に好ましく、また、2g・cm−3以下が好ましく、1.8g・cm−3以下がさらに好ましく、1.6g・cm−3以下が特に好ましい。
タップ密度が、上記範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cm3のタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量からタップ密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本発明における炭素質材料のタップ密度として定義する。
(7)配向比
炭素質材料の配向比は、通常0.005以上であり、0.01以上が好ましく、0.015以上がより好ましく、また、通常0.67以下である。配向比が、上記範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
配向比は、試料を加圧成型してからX線回折により測定する。試料0.47gを直径17mmの成型機に充填し58.8MN・m−2で圧縮して得た成型体を、粘土を用いて測定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットしてX線回折を測定する。得られた炭
素の(110)回折と(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(004)回折ピーク強度で表わされる比を算出する。該測定で算出される配向比を、本発明における炭素質材料の配向比と定義する。
X線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
(8)アスペクト比(粉)
炭素質材料のアスペクト比は、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ましく、5以下がより好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
アスペクト比の測定は、炭素質材料の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行う。厚さ50ミクロン以下の金属の端面に固定した任意の50個の黒鉛粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の炭素質材料粒子の最長となる径Pと、それと直交する最短となる径Qを測定し、P/Qの平均値を求める。該測定で求められるアスペクト比(P/Q)を、本発明における炭素質材料のアスペクト比と定義する。
(9)電極作製
負極の製造は、本発明の効果を著しく制限しない限り、公知の何れの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
電池の非水系電解液注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは、通常15μm以上であり、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、また、通常150μm以下であり、120μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。負極活物質の厚さが、この範囲を上回ると、非水系電解液が集電体界面付近まで浸透しにくいため、高電流密度充放電特性が低下する場合があるためである。またこの範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合があるためである。また、負極活物質をロール成形してシート電極としてもよく、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
(10)集電体
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、さらに好ましくは圧延
法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。
また、銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。
集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。金属皮膜の厚さが、1μmより薄くなると、強度が低下するため塗布が困難となる場合がある。また、1mmより厚くなると、捲回等の電極の形を変形させる場合がある。なお、集電体は、メッシュ状でもよい。
(11)集電体と負極活物質層の厚さの比
集電体と負極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、「(非水系電解液注液直前の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値は、通常150以下、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、また、通常0.1以上、0.4以上が好ましく、1以上がより好ましい。
集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
(12)電極密度
負極活物質を電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上がより好ましく、1.3g・cm−3以上がさらに好ましく、また、2.2g・cm−3以下が好ましく、2.1g・cm−3以下がより好ましく、2.0g・cm−3以下がさらに好ましく、1.9g・cm−3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
(13)バインダー
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及
び比率で併用してもよい。
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
負極活物質に対するバインダーの割合は、特に限定されないが、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましく、8質量%以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲を上回ると、バインダー量が電池容量に寄与しないバインダー割合が増加して、電池容量の低下を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極電極の強度低下を招く場合がある。
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分として含有する場合、負極活物質に対する割合は、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、また、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、特に限定されないが、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がさらに好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、負極活物質層に占める負極活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
<2−3−3.金属化合物系材料、及び金属化合物系材料を用いた負極の構成、物性、調製方法>
負極活物質として用いられる金属化合物系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物、燐化物等の化合物の何れであっても特に限定はされない。このような金属化合物としては、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn等の金属を含有する化合物が挙げられる。なかでも、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金であることが好ましく、13族又は14族の金属・半金属元素(すなわち炭素を除く)を含む材料あることがより好ましく、さらには、ケイ素(Si)、スズ(Sn)又は鉛(Pb)(以下、これら3種の元素を「特定金属元素」という場合がある。)の単体金属若しくはこれら原子を含む合金、又は、それらの金属(特定金属元素)の化合物であることが好ましく、ケイ素の単体金属、合金及び化合物、並びにスズの単体金属、合金及び化合物が特に好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
特定金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子を有する負極活物質の例としては、何れか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素からなる合金、1種又は2種以上の特定金属元素とその他の1種又は2種以上の金属元素とからなる合金、並びに、1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物、又は、その化合物の酸化物・炭化物・窒化物・珪化物・硫化物・燐化物等の複合化合物が挙げられる。負極活物質としてこれらの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、電池の高容量化が可能である。
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金、又は非金属元素等の数種の元素と複雑に結合した化合物も例として挙げることができる。より具体的には、例えばケイ素やスズでは、これらの元素と負極として動作しない金属との合金を用いることができる。また例えばスズでは、スズとケイ素以外で負極として作用する金属と、さらに負極として動作しない金属と、非金属元素との組み合わせで5〜6種の元素を含むような複雑な化合物も用いることができる。
これらの負極活物質の中でも、電池にしたときに単位質量当りの容量が大きいことから、何れか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素の合金、特定金属元素の酸化物や炭化物、窒化物等が好ましく、特に、ケイ素及び/又はスズの金属単体、合金、酸化物や炭化物、窒化物等が、単位質量当りの容量及び環境負荷の観点から好ましい。
また、金属単体又は合金を用いるよりは単位質量当りの容量には劣るものの、サイクル特性に優れることから、ケイ素及び/又はスズを含有する以下の化合物も好ましい。
・ケイ素及び/又はスズと酸素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.1以下の「ケイ素及び/又はスズの酸化物」。
・ケイ素及び/又はスズと窒素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.1以下の「ケイ素及び/又はスズの窒化物」。
・ケイ素及び/又はスズと炭素との元素比が通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.1以下の「ケイ素及び/又はスズの炭化物」。
なお、上述の負極活物質は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
本発明の非水系電解液二次電池における負極は、公知の何れの方法を用いて製造するこ
とが可能である。具体的に、負極の製造方法としては、例えば、上述の負極活物質に結着剤や導電材等を加えたものをそのままロール成型してシート電極とする方法や、圧縮成形してペレット電極とする方法も挙げられるが、通常は負極用の集電体(以下「負極集電体」という場合がある。)上に塗布法、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法が用いられる。この場合、上述の負極活物質に結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを負極集電体に塗布、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、負極集電体上に負極活物質層を形成する。
負極集電体の材質としては、鋼、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス等が挙げられる。これらのうち、薄膜に加工し易いという点及びコストの点から、銅箔が好ましい。
負極集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがあるためである。
なお、表面に形成される負極活物質層との結着効果を向上させるため、これら負極集電体の表面は、予め粗面化処理しておくことが好ましい。表面の粗面化方法としては、ブラスト処理、粗面ロールによる圧延、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線等を備えたワイヤーブラシ等で集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法等が挙げられる。
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常は負極材に対して結着剤、増粘剤等を加えて作製される。なお、本明細書における「負極材」とは、負極活物質と導電材とを合わせた材料を指すものとする。
負極材中における負極活物質の含有量は、通常70質量%以上、特に75質量%以上が好ましく、また、通常97質量%以下、特に95質量%以下が好ましい。負極活物質の含有量が少な過ぎると、得られる負極を用いた二次電池の容量が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に結着剤等の含有量が不足することにより、得られる負極の強度が不足する傾向にあるためである。なお、2以上の負極活物質を併用する場合には、負極活物質の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる導電材としては、銅やニッケル等の金属材料;黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に、導電材として炭素材料を用いると、炭素材料が活物質としても作用するため好ましい。負極材中における導電材の含有量は、通常3質量%以上、特に5質量%以上が好ましく、また、通常30質量%以下、特に25質量%以下が好ましい。導電材の含有量が少な過ぎると導電性が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や強度が低下する傾向となるためである。なお、2以上の導電材を併用する場合には、導電材の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム・イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の
組み合わせ及び比率で併用してもよい。結着剤の含有量は、負極材100質量部に対して通常0.5質量部以上、特に1質量部以上が好ましく、また、通常10質量部以下、特に8質量部以下が好ましい。結着剤の含有量が少な過ぎると得られる負極の強度が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や導電性が不足する傾向となるためである。なお、2以上の結着剤を併用する場合には、結着剤の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
負極に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。増粘剤は必要に応じて使用すればよいが、使用する場合には、負極活物質層中における増粘剤の含有量が通常0.5質量%以上、5質量%以下の範囲で用いることが好ましい。
負極活物質層を形成するためのスラリーは、上記負極活物質に、必要に応じて導電材や結着剤、増粘剤を混合し、水系溶媒又は有機溶媒を分散媒として用いて調製される。水系溶媒としては、通常は水が用いられるが、エタノール等のアルコール類やN−メチルピロリドン等の環状アミド類等の水以外の溶媒を、水に対して30質量%以下程度の割合で併用することもできる。また、有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。なお、これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
スラリーの粘度は、集電体上に塗布することが可能な粘度であれば、特に制限されない。塗布が可能な粘度となるように、スラリーの調製時に溶媒の使用量等を変えて、適宜調製すればよい。
得られたスラリーを上述の負極集電体上に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより、負極活物質層が形成される。塗布の手法は特に制限されず、それ自体既知の方法を用いることができる。乾燥の手法も特に制限されず、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の手法を用いることができる。
上記手法により負極活物質を電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上がさらに好ましく、1.3g・cm−3以上が特に好ましく、また、2.2g・cm−3以下が好ましく、2.1g・cm−3以下がより好ましく、2.0g・cm−3以下がさらに好ましく、1.9g・cm−3以下が特に好ましい。
集電体上に存在している活物質の密度が、上記範囲を上回ると、活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
<2−3−4.炭素質材料と金属化合物系材料を用いた負極の構成、物性、調製方法>
負極活物質として、金属化合物系材料と前記炭素質材料を含有してもよい。ここで、金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質とは、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物等の化合物の何
れかと、炭素質材料が互いに独立した粒子の状態で混合されている混合物でもよいし、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物等の化合物が炭素質材料の表面又は内部に存在している複合体でもよい。本明細書において、複合体とは、特に、金属化合物系材料および炭素質材料が含まれていれば特に制限はないが、好ましくは、金属化合物系材料および炭素質材料が物理的及び/又は化学的な結合によって一体化している。より好ましい形態としては、金属化合物系材料および炭素質材料が、少なくとも複合体表面及びバルク内部の何れにも存在する程度に各々の固体成分が分散して存在している状態にあり、それらを物理的及び/又は化学的な結合によって一体化させるために、炭素質材料が存在しているような形態である。
このような形態は、走査電子顕微鏡による粒子表面観察、粒子を樹脂に包埋させて樹脂の薄片を作製し粒子断面を切り出す、あるいは粒子からなる塗布膜をクロスセクションポリッシャーによる塗布膜断面を作製し粒子断面を切り出した後、走査電子顕微鏡による粒子断面観察等々の観察方法にて、観察が可能である。
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系材料の含有割合は、特に限定されないが、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは1.5質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、また、通常99質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、よりさらに好ましくは25質量%以下、特に好ましくは15質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。この範囲であると、十分な容量を得ることが可能となる点で好ましい。
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる炭素質材料については、前記<2−3−2>に記載の要件を満たすことが好ましい。また、金属化合物系材料については、下記を満たすことが望ましい。
リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金としては、従来公知のいずれのものも使用可能であるが、容量とサイクル寿命の点から、リチウム合金を形成する単体金属は、例えば、Fe、Co、Sb、Bi、Pb、Ni、Ag、Si、Sn、Al、Zr、Cr、P、S、V、Mn、Nb、Mo、Cu、Zn、Ge、In、Ti等からなる群から選ばれる金属又はその化合物が好ましい。また、リチウム合金を形成する合金としては、Si、Sn、As、Sb、Al、Zn及びWからなる群から選ばれる金属又はその化合物が好ましい。
リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物等の化合物とは、金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属珪化物、金属硫化物等が挙げられる。また、2種以上の金属からなる合金を使用しても良い。この中でも、Si又はSi化合物が高容量化の点で、好ましい。本明細書では、Si又はSi化合物を総称してSi化合物と呼ぶ。Si化合物としては、具体的には、一般式で表すと、SiOx,SiNx,SiCx、SiZxOy(Zは、C又はNである。)などが挙げられ、好ましくはSiOxである。なお、上記一般式中のxの値は特に限定されないが、通常、0≦x<2である。上記一般式SiOxは、二酸化Si(SiO2)と金属Si(Si)とを原料として得られる。SiOxは、黒鉛と比較して理論容量が大きく、さらに非晶質SiあるいはナノサイズのSi結晶は、リチウムイオン等のアルカリイオンの出入りがしやすく、高容量を得ることが可能となる。
SiOx中のxの値は特に限定されないが、通常、xは0≦x<2であり、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.6以上であり、また好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.4以下である。こ
の範囲であれば、高容量であると同時に、Liと酸素との結合による不可逆容量を低減させることが可能となる。
尚、金属化合物系材料が、リチウムと合金化可能な金属材料であることを確認するための手法としては、X線回折による金属粒子相の同定、電子顕微鏡による粒子構造の観察および元素分析、蛍光X線による元素分析などが挙げられる。
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系材料の平均粒子径(d50)は、特に限定されないが、サイクル寿命の観点から、通常0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上であり、通常10μm以下、好ましくは9μm以下、より好ましくは8μm以下である。平均粒子径(d50)が前記範囲内であると、充放電に伴う体積膨張が低減され、充放電容量を維持しつつ、良好なサイクル特性の得ることができる。
尚、平均粒子径(d50)は、レーザー回折・散乱式粒度分布測定方法等で求められる。
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系材料のBET法により比表面積は、特に限定されないが、通常0.5m2/g以上、好ましくは1m2/g以上、また、通常、60m2/g以下、好ましくは40m2/gである。Liと合金化可能な金属粒子のBET法による比表面積が前記範囲内であると、電池の充放電効率および放電容量が高く、高速充放電においてリチウムの出し入れが速く、レート特性に優れるので好ましい。
金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系材料の含有酸素量は、特に制限はないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.05質量%以上、また、通常8質量%以下、好ましくは5質量%以下である。粒子内の酸素分布状態は、表面近傍に存在、粒子内部に存在、粒子内一様に存在していてもかまわないが、特に表面近傍に存在していることが好ましい。金属化合物系材料の含有酸素量が前記範囲内であると、SiとOの強い結合により、充放電に伴う体積膨張が抑制され、サイクル特性に優れるので好ましい。
また、金属化合物系材料と炭素質材料を含有する負極活物質に用いられる金属化合物系材料の負極作成については、前記<2−3−1>炭素質材料に記載のものを用いることができる。
<2−3−5.リチウム含有金属複合酸化物材料、及びリチウム含有金属複合酸化物材料を用いた負極の構成、物性、調製方法>
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば特に限定はされないが、チタンを含むリチウム含有複合金属酸化物材料が好ましく、リチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する。)が特に好ましい。すなわち、スピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物を、非水系電解液二次電池用負極活物質に含有させて用いると、出力抵抗が大きく低減するので特に好ましい。
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンが、他の金属元素、例えば、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されているものも好ましい。
上記金属酸化物が、一般式(5)で表されるリチウムチタン複合酸化物であり、一般式(5)中、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6であることが、リチウムイオンのドープ・脱ドープの際の構造が安定であることから好ましい。
LixTiyMzO4 (5)
[一般式(5)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表わす。]
上記の一般式(5)で表される組成の中でも、
(a)1.2≦x≦1.4、1.5≦y≦1.7、z=0
(b)0.9≦x≦1.1、1.9≦y≦2.1、z=0
(c)0.7≦x≦0.9、2.1≦y≦2.3、z=0
の構造が、電池性能のバランスが良好なため特に好ましい。
上記化合物の特に好ましい代表的な組成は、(a)ではLi4/3Ti5/3O4、(b)ではLi1Ti2O4、(c)ではLi4/5Ti11/5O4である。また、Z≠0の構造については、例えば、Li4/3Ti4/3Al1/3O4が好ましいものとして挙げられる。
本発明における負極活物質としてのリチウムチタン複合酸化物は、上記した要件に加えて、さらに、下記の(1)〜(13)に示した物性及び形状等の特徴の内、少なくとも1種を満たしていることが好ましく、2種以上を同時に満たすことが特に好ましい。
(1)BET比表面積
負極活物質として用いられるリチウムチタン複合酸化物のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、0.5m2・g−1以上が好ましく、0.7m2・g−1以上がより好ましく、1.0m2・g−1以上がさらに好ましく、1.5m2・g−1以上が特に好ましく、また、200m2・g−1以下が好ましく、100m2・g−1以下がより好ましく、50m2・g−1以下がさらに好ましく、25m2・g−1以下が特に好ましい。
BET比表面積が、上記範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の非水系電解液と接する反応面積が減少し、出力抵抗が増加する場合がある。一方、上記範囲を上回ると、チタンを含有する金属酸化物の結晶の表面や端面の部分が増加し、また、これに起因して、結晶の歪も生じるため、不可逆容量が無視できなくなり、好ましい電池が得られにくい場合がある。
BET法による比表面積の測定は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。該測定で求められる比表面積を、本発明におけるリチウムチタン複合酸化物のBET比表面積と定義する。
(2)体積基準平均粒径
リチウムチタン複合酸化物の体積基準平均粒径(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)で定義される。
リチウムチタン複合酸化物の体積基準平均粒径は、通常0.1μm以上であり、0.5μm以上が好ましく、0.7μm以上がより好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、25μm以下がさらに好ましい。
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、本発明における炭素質材料の体積基準平均粒径と定義する。
リチウムチタン複合酸化物の体積平均粒径が、上記範囲を下回ると、電極作製時に多量の結着剤が必要となり、結果的に電池容量が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極極板化時に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
(3)平均一次粒子径
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合においては、リチウムチタン複合酸化物の平均一次粒子径が、通常0.01μm以上であり、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましく、また、通常2μm以下であり、1.6μm以下が好ましく、1.3μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。体積基準平均一次粒子径が、上記範囲を上回ると、球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下したりするために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。また、上記範囲を下回ると、通常、結晶が未発達になるために充放電の可逆性が劣る等、二次電池の性能を低下させる場合がある。
なお、一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、粒子が確認できる倍率、例えば10000〜100000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
(4)形状
リチウムチタン複合酸化物の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられるが、中でも一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状ないし楕円球状であるものが好ましい。
通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。そのため一次粒子のみの単一粒子の活物質であるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものである方が膨張収縮のストレスを緩和して、劣化を防ぐためである。
また、板状等軸配向性の粒子であるよりも、球状又は楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作製する際の導電材との混合においても、均一に混合されやすいため好ましい。
(5)タップ密度
リチウムチタン複合酸化物のタップ密度は、0.05g・cm−3以上が好ましく、0.1g・cm−3以上がより好ましく、0.2g・cm−3以上がさらに好ましく、0.4g・cm−3以上が特に好ましく、また、2.8g・cm−3以下がより好ましく、2.4g・cm−3以下がさらに好ましく、2g・cm−3以下が特に好ましい。タップ密度が、上記範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、また粒子間の接触面積が減少するため、粒子間の抵抗が増加し、出力抵抗が増加する場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、非水系電解液の流路が減少することで、出力抵抗が増加する場合がある。
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cm3のタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量から密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本発明におけるリチウムチタン複合酸化物のタップ密度として定義する。
(6)円形度
リチウムチタン複合酸化物の球形の程度として、円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
リチウムチタン複合酸化物の円形度は、1に近いほど好ましく、通常0.10以上であり、0.80以上が好ましく、0.85以上がより好ましく、0.90以上がさらに好ましい。高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほどが向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製FPIA)を用いて行なう。試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が3〜40μmの範囲の粒子について測定する。該測定で求められる円形度を、本発明におけるリチウムチタン複合酸化物の円形度と定義する。
(7)アスペクト比
リチウムチタン複合酸化物のアスペクト比は、通常1以上、また、通常5以下であり、4以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、リチウムチタン複合酸化物のアスペクト比の理論下限値である。
アスペクト比の測定は、リチウムチタン複合酸化物の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行なう。厚さ50μm以下の金属の端面に固定した任意の50個の粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の粒子の最長となる径P’と、それと直交する最短となる径Q’を測定し、P’/Q’の平均値を求める。該測定で求められるアスペクト比(P’/Q’)を、本発明におけるリチウムチタン複合酸化物のアスペクト比と定義する。
(8)負極活物質の製造法
リチウムチタン複合酸化物の製造法としては、本発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
例えば、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質とLiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を均一に混合し、高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
特に球状又は楕円球状の活物質を作成するには種々の方法が考えられる。一例として、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解
ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作成回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
また、別の例として、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
さらに別の方法として、酸化チタン等のチタン原料物質と、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
また、これらの工程中に、Ti以外の元素、例えば、Al、Mn、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、C、Si、Sn、Agを、チタンを含有する金属酸化物構造中及び/又はチタンを含有する酸化物に接する形で存在していることも可能である。これらの元素を含有することで、電池の作動電圧、容量を制御することが可能となる。
(9)電極作製
電極の製造は、公知の何れの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
電池の非水系電解液注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは通常15μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、上限は150μm以下、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下が望ましい。
この範囲を上回ると、非水系電解液が集電体界面付近まで浸透しにくいため、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。またこの範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。また、負極活物質をロール成形してシート電極としてもよく、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
(10)集電体
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられ、中でも加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも好ましくは銅(Cu)及び/又はアルミニウム(Al)を含有する金属箔膜であり、より好ましくは銅箔、アルミニウム箔であり、さらに好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。
また、銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。またアルミニウム箔は、その比重が軽いことから、集電体として用いた場合に、電池の質量を減少させることが可能となり、好ましく用いることができる。
圧延法により作製した銅箔からなる集電体は、銅結晶が圧延方向に並んでいるため、負極を密に丸めても、鋭角に丸めても割れにくく、小型の円筒状電池に好適に用いることができる。
電解銅箔は、例えば、銅イオンが溶解された非水系電解液中に金属製のドラムを浸漬し、これを回転させながら電流を流すことにより、ドラムの表面に銅を析出させ、これを剥離して得られるものである。上記の圧延銅箔の表面に、電解法により銅を析出させていてもよい。銅箔の片面又は両面には、粗面化処理や表面処理(例えば、厚さが数nm〜1μm程度までのクロメート処理、Ti等の下地処理等)がなされていてもよい。
集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。
集電体の厚さが、上記範囲内であると、強度が向上し塗布が容易となったり、電極の形が安定したりといった点で好ましい。
(11)集電体と活物質層の厚さの比
集電体と活物質層の厚さの比は特には限定されないが、「(非水系電解液注液直前の片面の活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、通常150以下であり、20以下が好ましく、10以下がより好ましく、また、通常0.1以上であり、0.4以上が好ましく、1以上がより好ましい。
集電体と負極活性物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
(12)電極密度
負極活物質の電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上がより好ましく、1.3g・cm−3以上がさらに好ましく、1.5g・cm−3以上が特に好ましく、また、3g・cm−3以下が好ましく、2.5g・cm−3以下がより好ましく、2.2g・cm−3以下がさらに好ましく、2g・cm−3以下が特に好ましい。
集電体上に存在している活物質の密度が、上記範囲を上回ると、集電体と負極活物質の結着が弱くなり、電極と活物質が乖離する場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大する場合がある。
(13)バインダー
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−
ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を、溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメリルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。特に水系溶媒を用いる場合、上述の増粘剤に併せて分散剤等を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化する。なお、これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、また、通常20質量%以下であり、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲内であるとバインダー量が電池容量に寄与しないバインダー割合が低下し電池容量が増加し、また負極電極の強度が保たれるので、電池作製工程上好ましい。
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。
また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には活物質に対する割合は、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましい。
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲内であると、粘着剤の塗布性の点で好ましく、
また、負極活性物質層に占める活物質の割合が好適であり、電池の容量や負極活性物質間の抵抗の点で好ましい。
<2−4.正極>
正極は、集電体上に正極活物質層を有するものであり、正極活物質層は正極活物質を含有する。以下、正極活物質について述べる。
<2−4−1.正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質について説明する。
(1)組成
正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はないが、例えば、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物が挙げられる。
リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、LiCoO2等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiMnO2、LiMn2O4、Li2MnO4等のリチウム・マンガン複合酸化物、LiNiO2等のリチウム・ニッケル複合酸化物、等が挙げられる。また、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられ、具体例としては、リチウム・コバルト・ニッケル複合酸化物、リチウム・コバルト・マンガン複合酸化物、リチウム・ニッケル・マンガン複合酸化物、リチウム・ニッケル・コバルト・マンガン複合酸化物等が挙げられる。
置換されたものの具体例としては、例えば、Li1+aNi0.5Mn0.5O2、Li1+aNi0.8Co0.2O2、Li1+aNi0.85Co0.10Al0.05O2、Li1+aNi0.33Co0.33Mn0.33O2、Li1+aNi0.45Co0.45Mn0.1O2、Li1+aMn1.8Al0.2O4、Li1+aMn1.5Ni0.5O4、xLi2MnO3・(1−x)Li1+aMO2(M=遷移金属)等が挙げられる(a=0<a≦3.0)。
リチウム含有遷移金属リン酸化合物は、LixMPO4(M=周期表の第4周期の4族〜11族の遷移金属からなる群より選ばれた一種の元素、xは0<x<1.2)を基本組成として表すことができ、上記遷移金属(M)としては、V,Ti,Cr,Mg,Zn,Ca,Cd,Sr,Ba,Co,Ni,Fe,MnおよびCuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であることが好ましく、Co,Ni,Fe,Mnからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素であることがより好ましい。例えば、LiFePO4、Li3Fe2(PO4)3、LiFeP2O7等のリン酸鉄類、LiCoPO4等のリン酸コバルト類、LiMnPO4等のリン酸マンガン類、LiNiPO4等のリン酸ニッケル類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
なお、上述の「LixMPO4」とは、その組成式で表される組成のものだけでなく、結晶構造における遷移金属(M)のサイトの一部を他の元素で置換したものも含むことを意味する。さらに、化学量論組成のものだけでなく、一部の元素が欠損等した非化学量論組成のものも含むことを意味する。上記他元素置換を行う場合は、通常0.1mol%であり、好ましくは0.2mol%以上である。また、通常5mol%以下であり、好ましくは2.5mol%以下である。
上記正極活物質は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(2)表面被覆
上記の正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質(以後、適宜「表面付着物質」という。)が付着したものを用いることもできる。表面付着物質の例としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させた後に乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させた後に加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により、正極活物質表面に付着させることができる。
正極活物質の表面に付着している表面付着物質の質量は、正極活物質の質量に対して、通常0.1ppm以上であり、1ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、また、通常20%以下であり、10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
表面付着物質により、正極活物質表面での非水系電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができる。しかし、付着量が上記範囲を下回ると、その効果は十分に発現せず、また上記範囲を上回ると、リチウムイオンの出入りを阻害するために抵抗が増加する場合があるため、上記範囲が好ましい。
(3)形状
正極活物質粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられるが、中でも一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状又は楕円球状であるものが好ましい。
通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。従って、一次粒子のみの単一粒子活物質であるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものである方が膨張収縮のストレスを緩和して、劣化を防ぐためである。
また、板状等軸配向性の粒子よりも、球状又は楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作成する際の導電材との混合においても、均一に混合されやすいため好ましい。
(4)タップ密度
正極活物質のタップ密度は、通常0.4g・cm−3以上であり、0.6g・cm−3以上が好ましく、0.8g・cm−3以上がさらに好ましく、1.0g・cm−3以上が特に好ましく、また、通常4.0g・cm−3以下であり、3.8g・cm−3以下が好ましい。
タップ密度の高い金属複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。従って、正極活物質のタップ密度が上記範囲を下回ると、正極活物質層形成時に必要な分散媒量が増加すると共に、導電材や結着剤の必要量が増加し、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。また、
タップ密度は一般に大きいほど好ましく特に上限はないが、上記範囲を下回ると、正極活物質層内における非水系電解液を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合がある。
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cm3のタッピングセルに試料を落下させてセル容積を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の質量から密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本発明における正極活物質のタップ密度として定義する。
(5)メジアン径d50
正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いても測定することができる。
メジアン径d50は、通常0.1μm以上であり、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、3μm以上がさらに好ましく、また、通常20μm以下であり、18μm以下が好ましく、16μm以下がより好ましく、15μm以下がさらに好ましい。メジアン径d50が、上記範囲を下回ると、高嵩密度品が得られなくなる場合があり、上記範囲を上回ると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池特性の低下や、電池の正極作成すなわち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際に、スジを引く等が生じる場合がある。
なお、異なるメジアン径d50をもつ正極活物質を2種類以上、任意の比率で混合することで、正極作成時の充填性をさらに向上させることもできる。
メジアン径d50の測定は、0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒にして、粒度分布計として堀場製作所社製LA−920用いて、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24に設定して測定する。
(6)平均一次粒子径
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合、正極活物質の平均一次粒子径は、通常0.03μm以上であり、0.05μm以上が好ましく、0.08μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、また、通常5μm以下であり、4μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。上記範囲を上回ると球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下するために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。また、上記範囲を下回ると、通常、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等、二次電池の性能を低下させる場合がある。
なお、平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
(7)BET比表面積
正極活物質のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、通常0.1m2・g−1以上であり、0.2m2・g−1以上が好ましく、0.3m2・g−1以上がより好ましく、また、通常50m2・g−1以下であり、40m2・g−1以下が好ましく、30m2・g−1以下がより好ましい。BET比表面積の値が、上記範囲を下回
ると、電池性能が低下しやすくなる。また、上記範囲を上回ると、タップ密度が上がりにくくなり、正極活物質形成時の塗布性が低下する場合がある。
BET比表面積は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて測定する。試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定する。該測定で求められる比表面積を、本発明における陽極活物質のBET比表面積と定義する。
(8)正極活物質の製造法
正極活物質の製造法としては、本発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えばその1つとして、遷移金属硝酸塩、硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
また、別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
さらに別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、Li2CO3、LiNO3等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
<2−4−2.電極構造と作製法>
以下に、本発明に使用される正極の構成及びその作製法について説明する。
(1)正極の作製法
正極は、正極活物質粒子と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、公知の何れの方法で作製することができる。すなわち、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。
正極活物質の正極活物質層中の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上、さらに好ましくは84質量%以上である。また上限は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。正極活物質層中の正極活物質の含有量が低いと電気容量が不十分となる場合がある。逆に含有量が高すぎると正極の強度が不足する場合がある。なお、本発明における正極活物質粉体は1種を単独で用いてもよく、異なる組成又は異なる粉体物性の2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(2)導電材
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
導電材は、正極活物質層中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、また、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有するように用いられる。含有量が上記範囲よりも下回ると、導電性が不十分となる場合がある。また、上記範囲よりも上回ると、電池容量が低下する場合がある。
(3)結着剤
正極活物質層の製造に用いる結着剤は、非水系電解液や電極製造時用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に限定されない。
塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であればよいが、具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。なお、これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上であり、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、また、通常50質量%以下であり、30質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。結着剤の割合が、上記範囲内であると正活性物質を十分保持でき正極の機械的強度が保たれ、サイクル特性、電池容量及び導電性の点から好ましい。
(4)液体媒体
スラリーを形成するための液体媒体としては、正極活物質、導電材、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
水系媒体の例としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メチ
ルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(5)増粘剤
スラリーを形成するための液体媒体として水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調製するために使用される。
増粘剤としては、本発明の効果を著しく制限しない限り制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
さらに増粘剤を使用する場合には、活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下が望ましい。上記範囲を下回ると著しく塗布性が低下する場合があり、また上記範囲を上回ると、正極活物質層に占める活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
(6)圧密化
塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.5g・cm−3以上がより好ましく、2g・cm−3以上がさらに好ましく、また、4g・cm−3以下が好ましく、3.8g・cm−3以下がより好ましく、3.7g・cm−3以下がさらに好ましい。
正極活物質層の密度が、上記範囲を上回ると集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下する場合がある。また上記範囲を下回ると、活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大する場合がある。
(7)集電体
正極集電体の材質としては特に制限は無く、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素質材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。薄膜が、上記範囲内であると集電体として必要な強度が保たれ、また取り扱い性の点からも好ましい。
集電体と正極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、(電解液注液直前の片面の正極活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)の値は、通常20以下、好ましくは15以下、より好ましくは10以下であり、下限は、通常0.5以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは1以上の範囲である。この範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。この範囲を下回ると、正極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
<2−5.セパレータ>
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
セパレータの材料や形状については特に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、さらに好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上記セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
さらに、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上がより好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下がより好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物類、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。前記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて前記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤
として多孔層を形成させることが挙げられる。
<2−6.電池設計>
[電極群]
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のものの何れでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する。)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる。また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、さらには、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
[集電構造]
集電構造は特に限定されるものではないが、本発明の非水系電解液による放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本発明の非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。1枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
[外装ケース]
外装ケースの材質は用いられる非水系電解液に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
前記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して前記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。前記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、前記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
[保護素子]
前述の保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、高出力の観点から、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
[外装体]
本発明の非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体内に収納して構成される。この外装体に制限は無く、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
具体的に、外装体の材質は任意であるが、通常は、例えばニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が用いられる。
また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
以下、実施例及び参考例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
<原料>
化合物A:トリクレジルホスフェート(大八化学社製、パラ位置置換体:メタ位置置換体:オルト位置置換体 67:33:0)
<評価方法>
[初期−30℃出力特性の評価]
初期放電容量の評価が終了した電池を、25℃にて、0.2Cの定電流で初期放電容量の半分の容量となるよう充電した。これを−30℃において各々0.5C、1.0C、1.5C、2C、2.5Cで放電させ、その10秒時の電圧を測定した。電流−電圧直線より2.8Vにおける電流値を求め、3.0×(3.0Vにおける電流値)を出力(W)とした。
(実施例1)
[負極の作製]
炭素質材料98質量部に、増粘剤及びバインダーとして、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)1質量部及びスチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)1質量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ10μmの銅箔に塗布して乾燥し、プレス機で圧延したものを、活物質層のサイズとして幅30mm、長さ40mm、及び幅5mm、長さ9mmの未塗工部を有する形状に切り出して負極とした。
[正極の作製]
正極活物質としてLi(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O2(LNMC)90質量%と、導電材としてのアセチレンブラック5質量%と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)5質量%とを、N−メチルピロリドン溶媒中で混合して、スラリー化した。得られたスラリーを、予め導電助剤を塗布した厚さ15μmのアルミ箔の片面に塗布
して、乾燥し、プレス機にてロールプレスしたものを、活物質層のサイズとして幅30mm、長さ40mm、及び幅5mm、長さ9mmの未塗工部を有する形状に切り出して正極とした。
[電解液の調製]
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)と、1,2−ジメトキシエタン(DME)との混合物(体積比30:60:10)に乾燥したLiPF6を1mol/Lの割合となるように基本電解液を調整した。この電解液に、ビニレンカーボネート(VC)を0.5質量部と、化合物Aを3質量部混合して、電解液を調製した。
[リチウム二次電池の製造]
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正極と負極の端子を突設させながら挿入した後、上記電解液を袋内に注入し、真空封止を行い、4.2Vで満充電状態となるラミネート型電池を作製した。
(実施例2)
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)と、1,2−ジメトキシエタンとの混合物(体積比30:50:20)に乾燥したLiPF6を1mol/Lの割合となるように基本電解液を調整した以外は実施例1と同様にして、ラミネート型リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)と、プロピオン酸メチル(MP)との混合物(体積比30:60:10)に乾燥したLiPF6を1mol/Lの割合となるように基本電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして、ラミネート型リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合物(体積比30:70)に乾燥したLiPF6を1mol/Lの割合となるように基本電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして、ラミネート型リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)と、2−メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)との混合物(体積比30:60:10)に乾燥したLiPF6を1mol/Lの割合となるように基本電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして、ラミネート型リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例3)
乾燥アルゴン雰囲気下、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)と、1,3-ジオキソラン(DOL)との混合物(体積比30:60:10)に
乾燥したLiPF6を1mol/Lの割合となるように基本電解液を調整した以外は、実施例1と同様にして、ラミネート型リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表
1に示す。
(比較例4)
化合物Aを添加せず、リン酸トリアリル(TAP)を3質量部添加した以外は、実施例1と同様にして、ラミネート型リチウム二次電池を作製し、評価を行った。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜実施例3は、比較例1〜4に対して、−30℃出力(低温出力)が優れていることがわかる。
さらに、実施例1〜3と比較例1より、1,2-ジメトキシエタンのような鎖状エーテ
ルや、プロピオン酸メチルのような鎖状カルボン酸エステルを非水溶媒に用いると、―30℃出力を向上させることができることがわかる。
しかし、鎖状エーテルやカルボン酸エステル以外の溶媒(2−メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン)を用いた比較例2及び比較例3では―30℃出力が大幅に低
下している。
実施例1と比較例4より、リン酸トリアリルのような鎖状アルキル基を芳香族環に有さないリン酸エステルは、十分な低温出力が得られていない。よって、鎖状エーテルやカルボン酸エステルと、芳香族環に鎖状アルキル基を有する一般式(1)で表される化合物を組み合わせた時のみ、―30℃出力が向上することが分かる。
以上のように、一般式(1)の化合物と、鎖状エーテル及び/又は鎖状カルボン酸エステルとを非水電解液に用いることで、優れた低温出力を有する非水系電解液及び非水系電解液二次電池を得ることができる。