JP2018062695A - 接合鉄基部材およびその製造方法 - Google Patents

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Mikio Kondo
幹夫 近藤
松本 伸彦
Nobuhiko Matsumoto
伸彦 松本
賢武 三宅
Kenbu Miyake
賢武 三宅
雄介 大石
Yusuke Oishi
雄介 大石
和宏 外山
Kazuhiro Toyama
和宏 外山
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Abstract

【課題】材質や形態等の異なる鉄系異種部材を焼結拡散接合した接合鉄基部材を提供する。【解決手段】本発明の接合鉄基部材は、第1鉄基部材と、第1鉄基部材の外周面に拡散接合された閉環状の第2鉄基部材とを備え、第2鉄基部材は鉄基マトリックス中にTiB2が分散した第2焼結体からなる。第1鉄基部材は溶製材でも焼結材でもよい。本発明の接合鉄基部材は、第1鉄基部材の外周側に、鉄基粉末とTiB2粉末の混合粉末を加圧成形してなる閉環状の第2成形体を隙間嵌めした組立体を焼結させることにより得られる。これにより、第1鉄基部材と第2鉄基部材は閉環状の接合界面部で拡散接合した状態となる。第1鉄基部材がCを含むときは、第2鉄基部材に含まれるTiB2量を3体積%以下とすると好ましい。【選択図】図3B

Description

本発明は、少なくとも二つの鉄基部材を拡散接合させた接合鉄基部材と、その製造方法に関する。
自動車分野等で用いられる複雑な形状の部材は、鉄系粉末からなる成形体を焼結させた鉄基焼結体(単に「焼結体」という。)からなることが多い。これにより、いわゆる部材のニアネットシェイプ化を図れ、機械加工の削減や歩留りの向上等による大幅な製造コストの低減が可能となる。
もっとも、一度の成形と焼結により得られる焼結体の形状は、成形金型から型抜き可能な形状に制限される。また焼結体からなる部材は、一般的に、全体的に均質的であって、部位により材質や特性(ヤング率、強度等)を変化させることは難しい。
しかし、焼結体を他部材と強固に接合させることができれば、より複雑な形状の部材や部位により材質や特性が異なる部材でも、低コストで製造することが可能となる。これに関連する記載が、例えば、下記の特許文献にある。
特公45−11606号公報 特公昭61−27441号公報 特公昭61−3362号公報 特公昭62−35442号公報 特公平1−430803号公報 特許3246574号公報 特許3954214号公報 特開2016−69715号公報
上記の特許文献では、成分組成の異なる成形体(焼結体)同士または溶製鋼と焼結体を接合させているが、その接合強度は必ずしも高くない。また、その焼結体の殆どはFe−C系またはFe−Cu−C系である。
本発明はこのような事情に鑑みて為されたものであり、従来とは異なる組成系の焼結体と他部材とを接合させた接合鉄基部材を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究した結果、TiBが混在している鉄系成形体と他の鉄系部材とを嵌め合わせた組立体を焼結すると、TiBが分散した鉄系焼結体と他の鉄系部材とが強固に接合された複合部材が得られることを新たに見出した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《接合鉄基部材》
本発明の接合鉄基部材は、第1鉄基部材と、該第1鉄基部材の外周面に拡散接合された閉環状の第2鉄基部材と、を備える接合鉄基部材であって、該第2鉄基部材は、第2鉄基マトリックス中にTiBが分散した第2焼結材からなる。
本発明によれば、第1鉄基部材と第2鉄基部材が強固に接合されていると共に、単なる焼結体では得られない複雑な形状や異なる特性等を有する複合部材の提供が可能となる。
《接合鉄基部材の製造方法》
本発明は接合鉄基部材の製造方法としても把握できる。すなわち本発明は、第1鉄基体の外周側に、第2鉄基粉末とTiB粉末の混合粉末を加圧成形してなる閉環状の第2成形体を嵌入した組立体を得る嵌入工程と、該組立体を加熱して、該第1鉄基体からなる第1鉄基部材と該第2成形体が焼結した第2焼結体からなる第2鉄基部材とが、閉環状の接合界面部で拡散接合された接合鉄基部材を得る焼結接合工程と、を備える接合鉄基部材の製造方法でもよい。
本発明の製造方法によれば、第1鉄基部材と第2鉄基部材が強固に接合された接合鉄基部材を比較的容易に得ることができる。この理由は次のように考えられる。TiBが分散した成形体は、高温環境下で、TiBが分散していない一般的な鉄系成形体よりも一桁大きい寸法変化率で収縮して、緻密な焼結体となる。このため本発明に係る第2成形体は、焼結接合工程時、第1鉄基体の外周面に密着し、両者の接合界面部で拡散接合を生じつつ緻密な第2焼結体となる。こうして、焼結接合工程後、第1鉄基体からなる第1鉄基部材とその第2焼結体からなる第2鉄基部材とが強固に接合された接合鉄基部材が得られるようになったと推察される。
《その他》
(1)本明細書では、説明の便宜上、内側(中心側)から外側に向かって順に配置される各部材(成形体、焼結体等)やそれらを構成する鉄基マトリックスに、「第1」、「第2」、「第3」を付与した。但し、それら序数自体に特別な意味はない。
第2成形体と嵌合させる第1鉄基体は、成形体、焼結体、溶製鋼等のいずれでもよく、焼結接合工程後の第1鉄基体を第1鉄基部材という。なお、第1鉄基体(鉄基部材)は、中実状に限らず、中空状、環状でもよい。
各鉄基マトリックスは、成分組成が同じでも異なっていてもよい。また、各鉄基マトリックスに分散しているTiBも、粒サイズ、粒形状または含有率が同じでも異なっていてもよい。さらに本発明に係るTiBは、原料段階から予めTiBとして供給されたものでも、焼結(接合)過程で生成されたものでもよい。このため本発明の製造方法では、TiB源としてTiB粉末を用いる他、その代替としてTi源粉末とB源粉末を用いてもよい。
鉄基マトリックスの組成(鉄基粉末の配合組成を含む)は、特に断らない限り、鉄基マトリックス全体に対する質量割合で示す。但し、TiBの含有率は、特に断らない限り、対象としている混合粉末、成形体または焼結体の全体に対する体積割合で示す。なお、「鉄基」とは、その対象全体に対してFeが50質量%以上であることを示す。例えば、鉄基マトリックスとは、その鉄基マトリックスを構成する鉄合金全体に対してFeが50質量%以上であることを示す。
TiBの体積割合(体積率)は、空孔(Pore)を除いたポアフリー体積(PFV)に基づいて算出する。例えば、焼結材(体)全体を100体積%とするとき、焼結材の見掛体積(嵩体積)から、そこに含まれる空孔(Pore)を除いて求めた体積(PFV)を100体積%とする。具体的にいうと、製造時の配合組成が既知であれば、各粉末の配合質量(Wi)と真密度(比重/文献値またはカタログ値)から、PFVもTiBの体積率を算出できる。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
焼結前の組立体を示す模式図である。 接合強度の測定方法を示す説明図である。 インナーのTiB量と接合体の収縮差との関係を示すグラフである。 インナーのTiB量と接合体の接合強度との関係を示すグラフである。 試料1に係る接合前後の接合界面部の組織写真である。 試料2に係る接合前後の接合界面部の組織写真である。 試料3に係る接合前後の接合界面部の組織写真である。 試料4に係る接合前後の接合界面部の組織写真である。 接合体の収縮差に及ぼすベース鉄粉(アウターとインナーで同じ)の影響を示す棒グラフである。 接合体の接合強度に及ぼすベース鉄粉(アウターとインナーで同じ)の影響を示す棒グラフである。 接合体の収縮差に及ぼすベース鉄粉(アウターとインナーで異なる)の影響を示す棒グラフである。 接合体の接合強度に及ぼすベース鉄粉(アウターとインナーで異なる)の影響を示す棒グラフである。 接合体の収縮差に及ぼす混合粉末に含まれるCの影響を示す棒グラフである。 接合体の接合強度に及ぼす混合粉末に含まれるCの影響を示す棒グラフである。 インナーを溶製鋼としたときにおけるアウターのTiB量と接合体の接合強度との関係を示すグラフである。 試料46に係る接合界面部の組織写真である。 試料49に係る接合界面部の組織写真である。 ベース鉄粉(1%TiB)と溶製材の相違が接合体の接合強度に及ぼす影響を示す棒グラフである。 ベース鉄粉(10%TiB)と溶製材の相違が接合体の接合強度に及ぼす影響を示す棒グラフである。 中間部材を介してインナーとアウターを接合した二重接合体の製造過程を示す写真である。 試料78〜80(アウターよりインナーのTiB量を多い試料)に係る接合強度を示す棒グラフである。 試料78に係る接合界面部の組織写真である。
本明細書で説明する内容は、本発明の接合鉄基部材のみならず、その製造方法にも該当し得る。製造方法に関する構成要素は物に関する構成要素ともなり得る。上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《接合パターン》
本発明の接合鉄基部材は、第1鉄基部材(インナー)の外周面と第2鉄基部材(アウター)の内周面が、閉環状の接合界面部で拡散接合されてなる。ここで第2鉄基部材は、第2鉄基粉末とTiB粉末(Ti源粉末とB源粉末でもよい。)の混合粉末を加圧成形した第2成形体を焼結させた第2焼結体からなる。これに対して、第1鉄基部材は、焼結接合工程前(つまり第1鉄基体)において、粉末を加圧成形した成形体、その成形体を焼結させた焼結体または溶製鋼(C非含有でもよい。)のいずれかからなる。従って、接合前の第1鉄基部材の形態により、大別して3つの接合パターンが考えられる。以下、これらについて順次説明する。
(1)第1成形体と第2成形体の接合
焼結接合(単に「焼結」または「接合」ともいう。)される際、第1成形体の外周面と第2成形体の内周面は密着状態さらには加圧状態(締まり嵌め状態)にあることが好ましい。すなわち、接合前の組立体は第1成形体と第2成形体が隙間嵌めされた場合でも、接合時には第2成形体が第1成形体よりも収縮して、両者間が締まり嵌め状態となることが望ましい。もっとも、接合時における各成形体の寸法変化量(率)を直接特定することは困難である。そこで、基準となる成形体を単独で焼結させて焼結体としたときの寸法変化(率)を予め算出しておけば、その寸法変化(率)に基づいて焼結接合過程中に生じ得る成形体間の収縮差(指標値)を推定できる。なお、本明細書では、特に断らない限り、その寸法変化を基準寸法に対する割合で示した寸法変化率の差を収縮差とする。
収縮差が0.5%以上、1%以上、2%以上さらには3%以上であると、高い接合強度が得られて好ましい。但し、過大な収縮差は、成形体が焼結体となるときの寸法精度や保形性の劣化を意味する。そこで収縮差は、敢えていうと、7%以下、6%以下さらには5%以下であると好ましい。なお、接合強度の確保にある程度の収縮差は必要であるが、必ずしも収縮差と接合強度が比例関係にある訳ではない。
寸法変化率ひいては収縮差の調整は、成形体の成形圧力や組成(混合粉末の配合組成)等を変化させることにより可能である。例えば、成形圧力が低い成形体ほど、接合時に収縮して寸法変化率が大きくなる傾向にある。逆に、成形圧力が高い成形体ほど、接合時に収縮し難く寸法変化率が小さくなる傾向となる。
また、TiB等のホウ化物が多く含む成形体ほど、接合時に収縮して寸法変化率が大きくなる傾向にある。逆に、ホウ化物が少ない成形体ほど、接合時に収縮し難く寸法変化率が小さくなる傾向となる。このようなホウ化物として、TiB以外に、FeB、MoB、CrB、NbB、VB、HfB、ZrB等がある。但し、TiBは高温時でも鉄基マトリックス中で最も安定であり、高ヤング率を発揮し得るため、TiB以外の化合物は、合計量で3体積%以下さらには1.5体積%以下であると好ましい。
以上を踏まえて、第1鉄基体は、少なくとも第1鉄基粉末を加圧成形した第1成形体であり、第1成形体が焼結した第1焼結体に対する第2焼結体の収縮差は、接合界面部の基準寸法に対して0.5%以上とすると好適である。
また、アウター側となる第2鉄基部材(成形体または焼結体)は、インナー側となる第1鉄基部材(鉄基体、成形体または焼結体)よりもTiBの含有率(体積%)が多いと好ましい。その含有率差は0.5%以上、1%以上、2%以上、5%以上さらには10%以上でもよい。但し、収縮差の場合と同様に、焼結体の寸法精度や保形性を保持するため、その含有率差は30%以下さらには25%以下が好ましい。
(2)焼結体と成形体の接合
アウター側よりインナー側のTiBの含有率が過大になると、上述したように、成形体同士の焼結拡散接合は難しくなる。しかし、TiBを多く含む成形体を予め焼結した焼結体をインナー側(第1鉄基体)とすれば、成形体同士の場合と同様に、拡散接合が可能となることを本発明者は見出した。これにより、第1鉄基部材が第1鉄基マトリックス中にTiBが分散した第1焼結材からなり、その第1焼結材が第2焼結材よりもTiBの含有率が大きい場合でも、接合強度の高い接合鉄基部材が得られる。より具体的にいうと、第1鉄基粉末とTiB粉末の混合粉末を加圧成形した第1成形体を焼結させた第1焼結体を第1鉄基体として、第2成形体よりも第1成形体のTiBの含有率を大きくするとよい。この場合、第1成形体(第1焼結体)のTiBの含有率は15%以上、25%以上さらには35%以上ともすることができる。または、第2成形体(第2焼結体)に対する第1成形体(第1焼結体)のTiBの含有率差は10%以上、20%以上さらには30%以上ともすることができる。なお、TiBを多く含む第1焼結体は、適宜、研削加工されて形状や寸法精度が確保された第1鉄基体として、第2成形体と嵌合されてもよい。
(3)溶製鋼と成形体の接合
本発明によれば、成形体や焼結体のみならず、溶製鋼と成形体とを拡散接合することもできる。本明細書でいう溶製鋼には、純鉄またはそれに近い鋼材(C:0.2%未満)、炭素鋼、合金鋼(特にCを含む合金鋼)さらにステンレス鋼等が含まれる。なお、本明細書では、特に断らない限り、溶製鋼全体を100質量%とした質量割合で溶製鋼の成分組成を示す。
ところで、第1鉄基体中のC量が多く(C:0.2%以上さらには0.3%以上)、第2成形体中のTiB含有率も大きい場合、接合強度が低下し易い。この理由は次のように考えられる。TiBを含む成形体は、焼結過程中の高温下でTiBが僅かに分解し、周囲にあるFeとBが反応してFeBを生じ、さらにFe−FeBの共晶液相を生成することにより緻密な焼結体となる。ここで、TiBを含む第2成形体とCを含む第1鉄基体を焼結接合させると、両者の接合界面部で第2成形体側のTiBから分解したTiと第1鉄基体側に含まれるCとが反応して、TiCを生成し、同時に、Fe−FeBの液相も過剰となり得る。こうして接合界面部に空孔等が形成され易くなって、接合強度が低下すると考えられる。この傾向は、第1鉄基体が溶製鋼のときに生じ易いが、第1鉄基体が成形体または焼結体のときも基本的に同様である。そして、そのような傾向は、第2成形体中のTiB含有率が5%超となるときに顕著となる。そこで、Cを含む第1鉄基体(溶製鋼、成形体、焼結体)と第2成形体を直接的に焼結接合させるときは、第2成形体(第2焼結材)中のTiB含有率を5%以下、4%以下さらには3%以下とすると好ましい。
このような傾向を踏まえて、Cを含む第1鉄基体とTiB含有率の大きい成形体(第3成形体)を接合させる場合は、それらの中間にTiB含有率が相対的に小さい成形体(第2成形体)を介在させるとよい。具体的にいうと、先ず、第3鉄基粉末とTiB粉末の混合粉末を加圧成形してなる閉環状の第3成形体を、それよりもTiBの含有率の小さい第2成形体の外周側に嵌入した多重組立体を得る嵌入工程を行う。次に、この多重組立体を加熱して、第3成形体が焼結した第3焼結体からなる第3鉄基部材と第2鉄基部材とを閉環状に拡散接合された多重接合鉄基部材を得る焼結接合工程を行う。こうして、Cを含む第1鉄基部材とTiB含有率の大きい第3鉄基部材とも、TiB含有率の小さい第2鉄基部材を介して高強度に接合され得る。
このとき、第3成形体(第3焼結体)のTiBの含有率は15%以上、25%以上さらには35%以上ともすることができる。または、第2成形体(第2焼結体)に対する第3成形体(第3焼結体)のTiBの含有率差は10%以上、20%以上さらには30%以上ともできる。なお、第3成形体中のTiBの含有率が多くなると、その焼結後の寸法精度や保形性が低下しるため、その含有率は40%以下、含有率差なら35%以下とすると好ましい。
《鉄基マトリックス》
少なくとも第2鉄基部材(第2焼結体)は、鉄基マトリックス中にTiBが分散した金属組織からなる。鉄基マトリックスは、純鉄でも良いが、第2鉄基部材の高強度化や高剛性化等を図るため、合金元素を含む鉄合金からなると好適である。合金元素は、例えば、Mo、Cr、Ni、Cu、Mn、SiまたはVの一種以上である。これら合金元素は合計で、7%以下さらには5%以下であると、原料コストの低減と鉄基部材の特性向上を図れて好ましい。なお、各合金元素は、鉄基マトリックス中で、Feに固溶していても他元素(Feを含む)と化合物を形成して析出等していてもよい。
代表的な合金元素について詳述すると、MoとCrは、鉄基マトリックス(焼結鉄合金)の強度や靱性を向上させる元素であり、Moは0.3〜2.5%さらには0.5〜2%、Crは0.1〜2%さらには0.2〜1.5%含まれると好ましい。Niは、鉄基マトリックスを緻密化させ、その相対密度またはヤング率を向上させる元素であり、0.5〜4%さらには1〜3%含まれると好ましい。Cuも鉄基マトリックスの強度を向上させる元素であり、0.5〜4%さらには1〜3含まれると好ましい。
ここでいう合金組成は、特に断らない限り、分散粒子(TiB等のホウ化物粒子)を除いた鉄基マトリックス(鉄合金)全体を100質量%(適宜、単に「%」という。)としたときの質量割合である。
なお、鉄基マトリックスに係る組成は、一種以上の原料粉末からなる鉄基粉末についても該当し得る。鉄基粉末は、主たる鉄源粉末に種々の合金元素粉を混合したものでも、予め所望組成に調製された鉄合金粉末でもよい。また、ここで説明したことは、第1鉄基部材や第3鉄基部材がTiBを含む焼結材からなるとにも該当し得る。勿論、各鉄基マトリックスの組成は、同じでも異なってもよい。
《製造方法》
本発明に係る成形体、焼結体、接合鉄基部材は次のようにして製造されると好ましい。
(1)鉄基粉末
鉄基粉末は、上述した鉄基マトリックスの組成に応じて、一種の原料粉末または複数種の原料粉末からなる。鉄基粉末は、粒度が212μm以下の一般的なものでもよいが、平均粒径(メジアン径:D50)が1〜20μmさらには5〜15μmであるか、篩い分けで定まる粒度が45μm以下(または−45μm)に分級されたものであると、TiBの分散性や焼結体の密度の向上を図れて好ましい。複数種の粉末を混合して用いる場合、粒度(または平均粒径)の大きい粗粉とその小さい微粉を混在させてもよい。ちなみに、TiB粉末は、平均粒径(D50)が0.5〜5μmさらには1〜4μmであると、成形性や取扱性に優れて好ましい。
(2)成形工程
成形体は、鉄基粉末または鉄基粉末とTiBの混合粉末を加圧成形して得られる。成形圧力は、例えば、350〜1200MPaさらには390〜800MPaとするとよい。成形体同士を接合する場合、各成形体の成形圧力は同じでも異なっていてもよい。成形圧力を変化させることにより、成形体ひいては焼結体の密度や機械的特性の他、後述する焼結接合工程時の寸法変化量(率)も調整し得る。
なお、成形工程は、冷間成形(室温成形)でも温間成形でも良い。また、粉末と金型との潤滑は、内部潤滑剤を粉末に配合して行ってもよいし、金型潤滑により行ってもよい。金型潤滑を行う場合、金型潤滑温間加圧成形法(詳細は特許3309970号公報等を参照)を用いると好ましい。
(3)嵌入工程
第1鉄基部材と第2鉄基部材を接合する前に、先ず、第1鉄基部材となる第1鉄基体(成形体、焼結体または溶製鋼)の外周側に第2成形体を嵌入した組立体を用意する。組立体は、第2成形体を崩壊させない程度に、第1鉄基体と第2成形体を締まり嵌めとしたものでも良い。もっとも、本発明に係る第2成形体は、焼結接合工程中に収縮し易いため、本発明に係る嵌入工程は、第1鉄基体に第2成形体を隙間嵌めする工程とできる。これにより第2成形体を崩壊させたり、圧入作業等を要することなく、容易に組立体を得ることができる。なお、第1鉄基体と第2成形体の隙間(クリアランス)は、焼結接合が可能な範囲で調整され得るが、例えば、1〜100μmさらには5〜50μm程度とするとよい。接合界面部の基準寸法を考慮すると、クリアランスは基準寸法の0.05〜1%さらには0.1〜0.5%程度とするとよい。
(4)焼結接合工程
上述した組立体を加熱することにより、第2成形体が焼結した第2焼結体からなる第2鉄基部材が、第1鉄基体からなる第1鉄基部材の外周面に拡散接合された接合鉄基部材が得られる。
加熱温度(焼結温度)は、鉄基粒子とTiB粒子との間で液相を生じる1140℃以上が好ましく、例えば、1140℃〜1350℃、1180〜1300℃さらには1200〜1280℃とするとよい。
加熱時間(上記温度を保持する時間)は、例えば、0.1〜3時間さらには0.1〜1時間であると好ましい。加熱雰囲気は、真空雰囲気、アルゴンガス雰囲気(大気圧以上)、アルゴンガスパーシャル雰囲気(大気圧に対して減圧(例えば0.5〜2kPa)されたアルゴンガス雰囲気)等の酸化防止雰囲気が好ましい。
(5)その他
上述した嵌入工程および焼結接合工程は、第2成形体に第3成形体を嵌入した多重組立体を加熱して第2鉄基部材と第3鉄基部材の接合を行う場合にも該当し得る。また、焼結接合工程で加熱された後の冷却速度は必ずしも問わない。もっとも、その冷却速度が大きいと、焼結体の金属組織の粗大化等を抑制できて好ましい。接合鉄基部材は、焼結接合工程後、さらに、焼鈍、焼準、時効、調質(焼き入れ、焼き戻し)、浸炭、窒化等の熱処理工程が施されてもよい。
《接合鉄基部材》
本発明によれば、複雑な形状を有する部材や部位により異なる特性を有する部材等の提供が容易となる。例えば、強度、延性または加工性等に優れる溶製鋼部材(第1鉄基部材)とTiBを多く含む高剛性部材(第2鉄基部材)とからなる複合部材の提供も容易となる。このような接合鉄基部材として、例えば、溶製鋼からなる軸部と、TiBを含む焼結材からなり軸部に設けられた付属体(歯車、カムロブ、カウンターウエイト等)とを有する伝動軸、カムシャフト、クランクシャフト等がある。
原料粉末の配合組成、成形条件、接合態様等を変更した多数の試料(接合鉄基部材)を製作し、それら試料の測定、組織観察および評価を行った。これらを通じて、本発明の内容をさらに具体的に説明する。
[実施例1/焼結材同士の接合]
《試料の製造》
(1)原料粉末
表1に示すように成分組成の異なる複数のベース鉄粉(鉄基粉末)を用意した。また、TiB粉末(日本新金属株式会社製TiB−NF/比重4.5g/cm/平均粒径1.8μm)および潤滑剤粉末(ステアリン酸アミド/比重0.9g/cm)も用意した。さらに、黒鉛(Gr)粉末(日本黒鉛社製JCPB、平均粒径:5μm)、Cu粉末(福田金属箔粉工業株式会社製CE−25/粒度63μm以下)も用意した。
表1に示した各ベース鉄粉は、いずれもアトマイズ粉であり、94FDH:株式会社神戸製鋼製アトメル94FDH(比重7.85g/cm/粒度212μm以下)、A.Mo:ヘガネスAB社製Astaloy Mo(比重7.85g/cm/粒度212μm以下)、DH1:ヘガネスAB社製Distaloy DH1(比重7.87g/cm/粒度212μm以下)、DC1:ヘガネスAB社製Distaloy DC1(比重7.87g/cm/粒度212μm以下)である。
なお、ベース鉄粉およびTiB粉末は分級せずに入手したまま用いた。また、特に断らない限り本実施例では、ベース鉄粉に係る成分組成は、ベース鉄粉全体に対する質量%(mass%)で示した。TiB粉末の配合組成は混合粉末全体に対する体積%(vol%)で示した。ベース鉄粉とTiB粉末以外の添加粉末については、混合粉末全体に対する質量%で示した。
(2)混合工程
各原料粉末は、表1〜表3に示す割合に秤量配合した後、乳鉢で3分間予備混合し、さらにボールミルで30分間回転混合した混合粉末とした。
(3)成形工程
キャビティ形状の異なる2種の金型を用意した。一つは、円柱軸状のインナー(第1鉄基体、第1鉄基部材)となる成形体(第1成形体)を得るための円筒型(φ14mm×H10mm)である。もう一つは、円環状のアウター(第2鉄基部材)となる成形体(第2成形体)を得るためのリング型(φ14mm×φ23mm×H6mm)である。
特に断らない限り(後述の実施例4を除いて)、本実施例に係るインナー用成形体の外周面とアウター用成形体の内周面とが、基準寸法φ14mmに対して隙間嵌めとなるように、円筒型の内径とリング型の内径(中心に配置される円柱状のコアの外径)とを設定した。ここでは円筒型の内径:φ14.00、コアの外径:φ14.05とした。
成形は、各金型のキャビティに充填した混合粉末を室温大気中で加圧して行った。成形圧力は392MPa、588MPaまたは784MPaのいずれかとした。こうして、円筒型を用いた種々のインナー用成形体と、リング型を用いた種々のアウター用成形体を得た。特に断らない限り、インナー用成形体は588MPaで成形し、アウター用成形体は392MPaで成形した。
ちなみに、基礎データの取得(焼結前後の寸法変化率と焼結体のヤング率の測定)に用いた測定用成形体は、上述した円筒型を用いて、392MPa、588MPaおよび784MPaでそれぞれ成形した。
(4)焼結工程
インナー用成形体とアウター用成形体の接合に先だって、表2に示す各種の測定用成形体を焼結させた測定用焼結体を得た(焼結工程)。焼結(焼結接合を含む)は、バッチ式焼結炉(島津メクテム株式会社製PVSGgr20/20)を用いて行った。具体的にいうと、先ず、減圧Arガス雰囲気中で脱ロウ工程を行った後、さらに真空雰囲気中で昇温して1250℃×30分間(均熱保持時間)の加熱を行った。次に、その加熱終了後、1000℃まで炉冷した後、400kPaの窒素ガスを導入して急冷した。
(5)焼結接合工程
図1に示すように、インナー用成形体とアウター用成形体を嵌合させた組立体を得た。インナー用成形体の底面側に介在させた敷板(板厚2mm)は、接合強度を測定する際に用いる抜出治具に嵌合させる段差を形成するために設けた(図2参照)。
図1に示す組立体を、上述した焼結工程と同じ条件で加熱した。こうして表3に示すように、軸状のインナー(第1焼結体、第1鉄基部材)と環状のアウター(第2焼結体、第2鉄基部材)とが閉環状の接合界面部で接合された種々の接合体(接合鉄基部材)を得た。
《測定・観察》
(1)基礎データ
測定用成形体と測定用焼結体を用いて、混合粉末の配合組成と成形圧力を変化させたときにおける焼結前後の寸法変化率と、各焼結体のヤング率を予め求めた。寸法変化率は、基準寸法(φ14.00)に対する実測した測定用成形体(d)と測定用焼結体(d)の外径差(Δd=d−d)の比率として算出した。測定用焼結体のヤング率は、超音波パルス法により測定して求めた。こうして得られた基礎データ(焼結の影響)を表2にまとめて示した。なお、表2中の寸法変化率の「−」は収縮を意味する。
(2)クリアランスと収縮差
インナー用成形体の外径(din)とアウター用成形体の内径(dout)を実測して、径方向のクリアランス(Δd=dout―din)を求めた。この結果を表3に併せて示した。なお、正数のクリアランスは、インナー用成形体とアウター用成形体が隙間嵌めとなることを示す。
また、表2に示した基礎データ(寸法変化率)に基づいて、インナー用成形体とアウター用成形体からなる組立体を焼結させたときに、インナーとアウターとの間で生じ得るであろう収縮差(ΔD)を算出した。この結果も表3に併せて示した。
この収縮差は、例えば、表3に示した試料1の場合なら、次のようにして求まる。表2の基礎データに基づいて、アウターに相当する測定用焼結体(原料粉末:B110、TiB:10体積%、成形圧力:392MPa)の寸法変化率(ΔDout):−5.03%と、インナーに相当する測定用焼結体(原料粉末:B100、TiB:0体積%、成形圧力:588MPa)の寸法変化率(ΔDin):−0.48%とを特定する。そしてインナー側の寸法変化率からアウター側の寸法変化率を差し引く。こうして本例で想定される収縮差は、ΔD=ΔDin−ΔDout=−0.48%−(−5.03%)=4.55%のように求まる。なお、正数の収縮差は、アウター側がインナー側よりも多く収縮して、アウター側とインナー側との嵌合が締まり嵌め状態となり得ることを示す。
(3)接合強度
インナーとアウターの接合強度は、抜出治具を用いて、図2に示すように測定した。具体的にいうと、先ず、円環状の保持治具にインナー側の凸部を嵌合して接合体を保持する。次に、インナー側の凹部に嵌めた円柱状の押圧治具に荷重を上方から印加する。そして、アウターとインナーが分離したとき、またはいずれか一方が破壊したときの負荷荷重(F)を測定する。この負荷荷重を、予め求めておいたアウターとインナーの接合界面部の円筒状面積(d:φ14mm×H:4mm)で除することにより接合強度を求めた。この結果も表3に併せて示した。
(4)組織観察
組立体と接合体の各接合界面部近傍を、切断、樹脂埋め、鏡面研磨した後、光学顕微鏡でそれぞれ観察した。
《評価》
(1)TiB量の影響
表3に示す試料1〜20(ベース鉄粉:94FDH)に基づいて、接合体の収縮差と接合強度に及ぼすTiB量の影響を図3Aと図3B(これらを併せて単に「図3」という。)にそれぞれ示した。
先ず、図3Aから明らかなように、インナーのTiB量が多くなるほど、アウターのTiB量に依らずに、収縮差は小さくなる傾向にある。但し、インナーのTiB量が2体積%(単に「%」という。)を超えると、収縮差は殆ど変化しなくなることもわかった。また、アウターのTiB量が2%以上であると、インナーのTiB量が増加しても、約1.5%以上の収縮差が確保されることもわかった。
次に、図3Bから明らかなように、インナーのTiB量が多くなるほど、アウターのTiB量の相違に依って、接合強度も大きく影響されることがわかった。例えば、アウターのTiB量が1%のとき、インナーのTiB量が4〜5%程度になると、接合強度の確保は困難となる。しかし、アウターのTiB量が2%以上になると、インナーのTiB量が増加しても、相応な接合強度が確保されることもわかった。少なくとも、インナーよりアウターのTiB量が多い範囲であれば、いずれの場合でも200MPa以上さらには300MPa以上の非常に高い接合強度が確保され得ることがわかった。逆に、表3に示した試料19〜21からわかるように、アウターがTiBを含まない場合や、アウターのTiB量がインナーよりも少ない場合(具体的には3%以上さらには4%以上少ない場合)、アウターとインナーは殆ど接合されないこともわかった。
十分に大きな接合強度が得られている試料1〜4について、接合前の組立体と接合後の接合体に係る接合界面部の組織写真を図4A〜図4D(これらを併せて単に「図4」という。)にそれぞれ示した。いずれの場合でも、接合体の接合界面部に未接合部等は観察されず、良好な接合状態となっていることが確認された。
(2)ベース鉄粉の影響
表3に示す試料2、5、22〜26に基づいて、接合体の収縮差と接合強度に及ぼすベース鉄粉の影響を図5Aと図5B(これらを併せて単に「図5」という。)にそれぞれ示した。なお、抽出した各試料は、インナーとアウターのベース鉄粉が同じで、アウターのTiB量が10%、インナーのTiB量が1%または10%としたものである。
また、表3に示す試料27〜30に基づいて、接合体の収縮差と接合強度に及ぼすベース鉄粉の影響を図6Aと図6B(これらを併せて単に「図6」という。)にそれぞれ示した。試料27〜30は、アウターとインナーのベース鉄粉が異なる場合であって、アウターのベース鉄粉にNiまたはCuが含まれる場合である。
図5および図6から明らかなように、いずれも相応な接合強度が確保されることがわかった。また、試料27〜30および図6から明らかなように、収縮差はあまり大きくなくても、接合強度は十分に大きくなり得ることもわかった。
また、NiやCu等の拡散性に優れた元素を含むベース鉄粉を用いた場合(特にそのベース鉄粉をアウターに用いた場合)、TiB量や成形圧力が変化しても、相応に大きな接合強度が確保され易いこともわかった。逆に、そのような元素を含まないベース鉄粉を用いる場合は、アウターとインナーの間で十分な収縮差が生じるように、TiB量等を調整する(例えば、インナーよりもアウターのTiB量を多くする)と好ましい。
なお、試料5、24、26のように、ベース鉄粉およびTiB量が同じアウター(392MPa成形)とインナー(588MPa成形)の収縮差は、成形圧力差の影響と考えられる。従って、アウターとインナーに係る成形圧力を変化させることで、収縮差は調整可能ともいえる。
(3)添加粉末の影響
表3に示す試料31〜34に基づいて、接合体の収縮差と接合強度に及ぼす添加鉄粉(特にGr粉末)の影響を図7Aと図7B(これらを併せて単に「図7」という。)にそれぞれ示した。試料31〜34は、アウターとインナーで同じベース鉄粉を用いつつ、インナーの混合粉末にTiBに換えてGr粉末さらにはCu粉末を添加した場合である。
図7から明らかなように、焼結体からなるインナー中にCが含まれる場合、いずれの試料でも相応な接合強度が得られている。但し、アウターのTiB量が少ないときほど、収縮差および接合強度が高い。逆に、そのアウターのTiB量が多くなると、収縮差は増加するが、接合強度は低下する傾向となることもわかった。これは、接合界面部において、インナーのCとアウターのTiBが反応し、TiCが少し生成しているためと考えられる。
[実施例2/溶製鋼と成形体の接合]
《試料の製造および測定》
実施例1で用いた焼結体からなるインナーを、溶製材(鋼材)を機械加工したインナー(φ14.00mm×15mm)に変更した試料を製造した。このとき、コアの外径:φ14.025とした。その他は、実施例1の場合と同様な方法で試料の製造および測定を行った。但し、収縮差は、鋼材からなるインナーの寸法変化率を0%として算出した。これら試料を表4に示した。
なお、用いた鋼材は、JISに規定された一般構造用圧延材(SS400)、機械構造用鋼(S45C)、機械構造用合金鋼(SCM435)およびステンレス鋼(SUS304)の4種類である。各鋼材の主な成分組成(質量%)は、S45C:Fe−(0.42〜0.48)%C−(0.15〜0.35)%Si−(0.6〜0.9)%Mn、SCM435:Fe−(0.33〜0.38)%C−(0.15〜0.35)%Si−(0.6〜0.9)%Mn−(0.9〜1.2)%Cr−(0.15〜0.3)%Mo、SUS304:Fe−(8〜10.5)%Ni−(18〜20)%Crである。
《評価》
(1)鋼種とTiB量の影響
先ず、表4に示す試料35〜53(アウター側のベース鉄粉:94FDH)に基づいて、接合体の接合強度に及ぼす鋼種とTiB量の影響を図8に示した。図8から明らかなように、インナーをCを含む溶製鋼(SS400、S45CおよびSCM435)とした場合、アウターにTiBが含まれることにより高い接合強度が得られるが、そのTiB量が4%超、さらには5%超になると、接合強度が急激に低下し始めることがわかった。
一方、インナーをCを含まない溶製鋼(SUS304)とした場合、アウターにTiB量が含まれることにより、接合強度が急激に高まり、そのTiB量が増加しても高い接合強度が維持されることがわかった。
次に、アウターのTiB量の相違(1%と10%)により接合強度が大きく変化した試料46と試料49に係る接合界面部の組織写真を図9Aおよび図9B(これらを併せて単に「図9」という。)にそれぞれ示した。
接合強度が高い試料46では、接合界面部に未接合部等は観察されず、良好な接合状態となっていた。一方、接合強度が低い試料49では、接合界面部に未接合部が多く、界面近傍に大きな気孔が認められた。
接合強度と接合界面部の組織状況から次のように考察される。TiBを含む鉄基成形体は、焼結時に、TiBの一部が分解してFeBを生成し、Fe−FeBの液相を生じて緻密な焼結体となる。ここでCが存在する環境下でTiB量が多いと、TiBが分解し易くなり、遊離したTiとCが結合してTiCが生成する。その際、Fe−FeBの液相も過剰となって、接合界面部に脆い相が形成され、接合強度が低下すると考えられる。
(2)ベース鉄粉の影響
表4に示す試料36、39、41、44、46、49、53と試料54〜73とに基づいて、ベース鉄粉(アウター)と鋼材(インナー)の組合わせの相違が接合体の接合強度に及ぼす影響を図10Aと図10B(これらを併せて単に「図10」という。)に示した。図10AはアウターのTiB量が1%のとき、図10BはアウターのTiB量が10%のときを示す。
図10Aから明らかなように、アウターのTiB量が比較的少ないとき、いずれも相応な接合強度が得られることがわかる。一方、図10Bから明らかなように、アウターのTiB量が多くなると、Cを含まないインナー(SUS304)とは十分な接合強度が確保されるが、Cを含むインナーとの接合強度は低くなることもわかった。
[実施例3/二重接合]
《試料の製造および測定》
実施例2に示した溶製材からなるインナー(第1鉄基部材)と焼結材(10%TiB)からなるアウター(第3鉄基部材)との間に、焼結材(1%TiB)からなる中間部材(第2鉄基部材)を有する二重接合体からなる試料を製造した。この様子を図11に示した。なお、インナー:φ14mm×15mm、アウター用成形体:φ23.1mm×φ39mm×10mm、中間部材用成形体:φ14mm×φ23mm×10mmとした。
その他は、既述した実施例と同様な方法で試料の製造および測定を行った。これら試料を表5に示した。表5に示したクリアランスと収縮差は、インナーと中間部材用成形体に関するものである。また接合強度は、接合界面部が破壊する以前に溶製材からなるインナーが変形したため、その段階で測定を中止したが、いずれの接合強度も200MPa以上あることを確認している。
《評価》
TiBを少し含む焼結材からなる中間部材を用いることにより、各種の鋼材(特にCを含む鋼材)からなるインナーと、TiBを多く含む焼結材からなるアウターとを、強固に接合できることがわかった。
[実施例4/焼結体と成形体の接合]
《試料の製造および測定》
アウターよりインナーに含まれるTiB量が多い接合体からなる複数の試料を製造した。先ず、表6に示す混合粉末を392MPaで加圧した成形体(φ12.6mm)に既述した焼結工程を施した。こうして得られた焼結体をφ10mm×17mmに機械加工してインナーとした。インナー側のベース鉄粉には、エプソンアトミックス株式会社製の粉末(平均粒径11.63μm)を用いた。ちなみに、このインナー(焼結体)のヤング率は280GPaであった。
次に、表6に示す混合粉末を588MPaで加圧したアウター用成形体(φ10mm×φ23mm×11.5mm)を用意した。表6に示した添加微粉は、いずれもエプソンアトミックス株式会社製の粉末(平均粒径11.63μm)である。
さらに、焼結体からなるインナー(第1鉄基体)とアウター用成形体とを嵌合させた組立体に対して、既述した焼結接合工程を施した。その他は、既述した実施例と同様な方法で試料の製造および測定を行った。こうして得られた試料の接合強度等を表6に併せて示した。
《評価》
各試料の接合強度を図12に示した。これから明らかなように、アウターよりもインナーのTiB量が多い接合体であっても、焼結体と成形体を組合わせることにより、十分に高い接合強度の接合体が得られることがわかった。
また、試料78に係る接合界面部の組織写真を図13に示した。これから明らかなように、焼結体(インナー)と成形体(アウター)を接合させた場合でも、接合界面部に未接合部等は観察されず、良好な接合状態となることが確認された。

Claims (17)

  1. 第1鉄基部材と、
    該第1鉄基部材の外周面に拡散接合された閉環状の第2鉄基部材と、
    を備える接合鉄基部材であって、
    該第2鉄基部材は、第2鉄基マトリックス中にTiBが分散した第2焼結材からなる接合鉄基部材。
  2. 前記第1鉄基部材は、前記第2焼結材よりもTiBの含有率が小さい第1焼結材からなる請求項1に記載の接合鉄基部材。
  3. 前記第1鉄基部材は、C含有率が0.2質量%未満の溶製鋼からなる請求項1に記載の接合鉄基部材。
  4. 前記第1鉄基部材は、Cを含み、
    前記第2焼結材は、TiBの含有率が5体積%以下である請求項1または2に記載の接合鉄基部材。
  5. さらに、前記第2鉄基部材の外周面に拡散接合された閉環状の第3鉄基部材を備え、
    該第3鉄基部材は、第3鉄基マトリックス中にTiBが分散した第3焼結材からなり、
    該第3焼結材は、前記第2焼結材よりもTiBの含有率が大きい請求項4に記載の接合鉄基部材。
  6. 前記第1鉄基部材は、溶製鋼からなる請求項4または5に記載の接合鉄基部材。
  7. 前記第1鉄基部材は、第1鉄基マトリックス中にTiBが分散した第1焼結材からなり、
    該第1焼結材は、前記第2焼結材よりもTiBの含有率が大きい請求項1に記載の接合鉄基部材。
  8. 前記第1焼結材は前記第2焼結材に対してTiBの含有率が10体積%以上大きい請求項7に記載の接合鉄基部材。
  9. 前記第2鉄基マトリックスは、Mo、Ni、Cu、Cr、Mn、SiまたはVの一種以上からなる合金元素を合計で7質量%以下含む鉄合金からなる請求項1〜8のいずれかに記載の接合鉄基部材
  10. 第1鉄基体の外周側に、第2鉄基粉末とTiB粉末の混合粉末を加圧成形してなる閉環状の第2成形体を嵌入した組立体を得る嵌入工程と、
    該組立体を加熱して、該第1鉄基体からなる第1鉄基部材と該第2成形体が焼結した第2焼結体からなる第2鉄基部材とが閉環状の接合界面部で拡散接合された接合鉄基部材を得る焼結接合工程と、
    を備える接合鉄基部材の製造方法。
  11. 前記嵌入工程は、前記第1鉄基体に前記第2成形体を隙間嵌めする工程である請求項10に記載の接合鉄基部材の製造方法。
  12. 前記焼結接合工程は、前記組立体を1140℃以上で加熱する工程である請求項10または11に記載の接合鉄基部材の製造方法。
  13. 前記第1鉄基体は、少なくとも第1鉄基粉末を加圧成形した第1成形体であり、
    該第1成形体が焼結した第1焼結体に対する前記第2焼結体の収縮差は、前記接合界面部の基準寸法に対して0.5%以上である請求項10〜12のいずれかに記載の接合鉄基部材の製造方法。
  14. 前記第1鉄基体は、Cを含み、
    前記第2成形体は、TiBの含有率が5体積%以下である請求項10〜13のいずれかに記載の接合鉄基部材の製造方法。
  15. 前記嵌入工程は、第3鉄基粉末とTiB粉末の混合粉末を加圧成形してなる閉環状の第3成形体をさらに前記第2成形体の外周側に嵌入した多重組立体を得る工程であり、
    前記焼結接合工程は、該多重組立体を加熱して、該第3成形体が焼結した第3焼結体からなる第3鉄基部材と前記第2鉄基部材とが拡散接合された多重接合鉄基部材を得る工程であり、
    該第3成形体は、該第2成形体よりもTiBの含有率が大きい請求項14に記載の接合鉄基部材の製造方法。
  16. 前記第1鉄基体は、第1鉄基粉末とTiB粉末の混合粉末を加圧成形した第1成形体を焼結させた第1焼結体からなり、
    該第1成形体は、前記第2成形体よりもTiBの含有率が大きい請求項10〜12のいずれかに記載の接合鉄基部材の製造方法。
  17. 前記第1成形体は、前記第2成形体に対してTiBの含有率差が10体積%以上大きい請求項16に記載の接合鉄基部材の製造方法。
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