JP2015117391A - 鉄基焼結合金とその製造方法および高炭素鉄系粉末 - Google Patents

鉄基焼結合金とその製造方法および高炭素鉄系粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】強度や延性に優れる鉄基焼結合金を急速加熱・短時間焼結により効率的に得ることができる製造方法を提供する。【解決手段】本発明の鉄基焼結合金の製造方法は、純鉄粉または鉄合金粉からなる鉄源粉末と炭素源粉末とを少なくとも含む混合粉末を加圧成形した成形体を得る成形工程と、成形体を加熱した焼結体を得る焼結工程と、を備える鉄基焼結合金の製造方法であって、炭素源粉末の少なくとも一種は、Cを5質量%以上含む鉄合金または鉄化合物からなる高炭素鉄系粉末であることを特徴とする。炭素源粉末として高炭素鉄系粉末を用いると、誘導加熱等により急速加熱・短時間焼結を行っても、COガスの発生を大幅に抑制でき、高強度で高延性な鉄基焼結合金を、効率的に得ることができる。【選択図】図2A

Description

本発明は、機械的特性または寸法安定性に優れた鉄基焼結合金と、その鉄基焼結合金を効率的に得ることができる鉄基焼結合金の製造方法と、その製造方法等に利用できる高炭素鉄系粉末に関する。
製造コストを削減するために、鉄系粉末の成形体を焼結させた鉄基焼結部材が利用される。この鉄基焼結部材は最終形状に近いため、機械加工の削減や歩留りの向上等によって製造コストを低減し得る。
ところで、このような鉄基焼結部材は、通常、その機械的特性を高めるために炭素(C)を含む合金(以下、鉄基焼結合金という。)からなり、その炭素源は黒鉛粉末(Gr粉末)として添加されるのが一般的である。
黒鉛粉末と純鉄粉または鉄合金粉からなるベース粉末(以下、適宜「鉄源粉末」という。)との混合粉末からなる成形体を焼結させると、その昇温中にCOガスが発生することが知られている。このようなガスは、焼結体の構成粒子の結合(ネック形成)を阻害したり、焼結体を変形させたりし得る。しかし、焼結炉内で緩やかに昇温した後に一定温度で長時間保持する通常の焼結方法の場合、ガスの発生も緩やかであり、成形体等の内部で発生したガスは成形体等の内部にできた微細な開気孔を通じて成形体外へ放出される。このため、従来の焼結方法を行う限り、鉄基焼結合金の炭素源として黒鉛粉末を用いても、不都合を生じることは少なかった。
ところが、焼結過程に要する時間を短縮して生産性の向上を図るために、従来の焼結炉による加熱に替えて、高周波誘導加熱(適宜、単に誘導加熱という。)、通電加熱、放電加熱などによる急速加熱を行うことが提案されている。これに関連した記載が下記の特許文献にある。
特開昭59−64702号公報 特許3982945号公報
特許文献1は、加熱促進材を圧粉体の内部に配置して誘導加熱することを提案している。これにより、加熱当初に圧粉体の抵抗値を大きくする内部潤滑剤が早期に脱漏され、圧粉体が焼結温度へ到達するまでの時間(昇温時間)の短縮が図られる。
もっとも、内部潤滑剤の脱蝋後に圧粉体の温度が急激に上昇すると、圧粉体中に含まれる黒鉛粉末が周囲のOと反応して多量のCOガスが圧粉体中に急激に発生する。このようなガスは、放出が追いつかずに焼結体内に封入された状態となり、構成粒子間のネック形成等を妨げたり、焼結前後の寸法変化を大きくさせ得る。
特許文献2は、黒鉛粉末と鉄系粉末からなる圧粉体を誘導加熱する際に生じる上述した問題を回避するため、昇温途中で一定時間保持する処理(第2活性化処理)を行い、圧粉体の内部に発生したガスを放出させている。しかし、このような方法では、誘導加熱を用いても、焼結工程に要する時間を十分に短縮することは当然できない。
また、高密度成形された圧粉体(例えば、密度が7.2g/cm以上)の場合、そもそも内部で発生したガスを放出するための開気孔が乏しいため、特許文献2のような保持時間を設けてもあまり意味がない。このため、誘導加熱等を用いた急速加熱により鉄基焼結合金を短時間で焼結する製造方法は、少なくとも工業レベルで実用化されていなかった。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、誘導加熱等による成形体の急速加熱や焼結時間の大幅な短縮を現実に可能とする鉄基焼結合金の製造方法を提供することを目的とする。また、その製造方法に適した高炭素鉄系粉末と、その製造方法により得られる鉄基焼結合金も併せて提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、鉄基焼結合金の重要な合金元素である炭素の供給形態を見直し、黒鉛粉末に替えて鉄合金または鉄化合物からなる高炭素鉄系粉末を炭素源粉末として用いることを着想した。この高炭素鉄系粉末を用いることにより、成形体を急速加熱して高特性で高精度な焼結体を極短時間で得ることに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《鉄基焼結合金の製造方法》
(1)本発明の鉄基焼結合金の製造方法は、鉄源粉末と炭素源粉末を少なくとも含む混合粉末を加圧成形した成形体を得る成形工程と、該成形体を加熱した焼結体を得る焼結工程と、を備える鉄基焼結合金の製造方法であって、前記炭素源粉末の少なくとも一種は、Cを5質量%(以下、単に「%」で表す。)以上含む鉄合金または鉄化合物からなる高炭素鉄系粉末であることを特徴とする。
(2)本発明の製造方法では、炭素源粉末としてCを高濃度に含有した鉄合金または鉄化合物からなる高炭素鉄系粉末を用いている。これにより、例えば成形体を急速加熱した場合でも、その昇温過程中に成形体内部でCOガスが急激に発生することが抑止される。この結果、本発明の製造方法によれば、焼結工程時の昇温速度の大小や成形体密度の高低に拘わらず、機械的特性や寸法安定性に優れた鉄基焼結合金を安定して得ることができる。
(3)本発明に係る高炭素鉄系粉末が、上述したような優れた作用効果を発揮する理由は必ずしも定かではないが、焼結工程中におけるCの拡散挙動が高炭素鉄系粉末と黒鉛粉末とで異なるためと考えられる。具体的にいうと、次のように考えられる。黒鉛粉末の場合、その粒子(黒鉛粒子)はCのみからなる。このため、黒鉛粒子の最表面から接触している鉄源粒子へCが固相拡散すると、その拡散に伴い、その最表面(接触界面)近傍において黒鉛粒子の一部が消失することになる。そして、その黒鉛粒子の残部が、鉄源粒子との接触を断たれて成形体中でCOガス化することになる。
一方、高炭素鉄系粉末の場合、その粒子(高炭素鉄系粒子)はC以外の主成分(Fe等)により基本的に構成されている。このため、高炭素鉄系粒子から鉄源粒子へCが拡散しても、高炭素鉄系粒子の接触界面近傍に空孔が生じることはなく、高炭素鉄系粒子と鉄源粒子の接触状態は維持されたままとなる。その結果、高炭素鉄系粒子中のCは容易にCOガス化せず、高炭素鉄系粒子から鉄源粒子へ安定的に固相拡散し続ける。
このようなCの拡散挙動の相違により、高炭素鉄系粉末を用いると、成形体を急速加熱した場合でも、急激なCOガスの発生が十分に抑制されたと考えられる。こうして本発明の製造方法によると、急速加熱・短時間焼結をした場合であっても、黒鉛粉末を用いた場合のようにCOガスにより鉄源粉末の粒子界面が押し広げられてネック形成(構成粒子間の結合)が妨げられたり、膨れが生じたりすることもなく、機械的特性(強度、延性、靱性等)または寸法安定性に優れる焼結体(鉄基焼結合金)が得られるようになったと考えられる。
《鉄基焼結合金と高炭素鉄系粉末》
(1)本発明は、上述した製造方法のみならず、それにより得られる鉄基焼結合金としても把握できる。
(2)また本発明は、全体を100%として、Cを5%以上含む鉄合金または鉄化合物からなることを特徴とする高炭素鉄系粉末としても把握できる。この高炭素鉄系粉末の代表的な用途は上述した鉄基焼結合金の製造方法であるが、他の用途(例えば、常温付近で、きわめて硬い物質であるため、耐摩耗性を要求される機械部品の製造や砥石の製造等)に用いることも可能である。従って、ここでいう本発明の高炭素鉄系粉末は、その用途が焼結用炭素源粉末に限定されるものではない。
《その他》
(1)本明細書でいう「鉄基焼結合金」はその形態を問わず、例えば、インゴット状、棒状、管状、板状等の素材であっても良いし、最終製品またはそれに近い部材(鉄基焼結部材)であっても良い。なお本明細書では、鉄基焼結合金が素材(バルク)であるか特定形状をした部材であるかを問わず、鉄基焼結合金を単に焼結体ともいう。
(2)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値または数値範囲に含まれる任意の数値を新たな下限値または上限値として「a〜b」のような範囲を新設し得る。
高炭素鉄系粉末(P1粉末、P2粉末、P3粉末)の構成粒子の顕微鏡写真である。 高炭素混合粉末(P1粉末)の加熱前後のX線回折パターンである。 昇温速度と圧環強度の関係を示す棒グラフである。 昇温速度と破壊時の変位量(延性)の関係を示す棒グラフである。 昇温速度と焼結前後の寸法変化の関係を示す棒グラフである。 各試料(焼結体)の破面を観察したSEM写真である。 焼結温度と圧環強度の関係を示すグラフである。 焼結温度と破壊時の変位量の関係を示すグラフである。 高炭素鉄系粉末(P1粉末)を炭素源として焼結温度を種々変更した試料の金属組織を示す顕微鏡写真である。 黒鉛粉末を炭素源として焼結温度を種々変更した試料の金属組織を示す顕微鏡写真である。 保持時間と圧環強度の関係を示すグラフである。 保持時間と破壊時の変位量の関係を示すグラフである。 炭素源粉末の構成割合と圧環強度の関係を示す棒グラフである。 炭素源粉末の構成割合と破壊時の変位量の関係を示す棒グラフである。 成形体密度:7.5g/cmのときにおける鉄源粉末の組成と圧環強度の関係を示す棒グラフである。 成形体密度:7.0g/cmのときにおける鉄源粉末の組成と圧環強度の関係を示す棒グラフである。 成形体密度:7.5g/cmのときにおける炭素源粉末の組成と圧環強度の関係を示す棒グラフである。 成形体密度:7.0g/cmのときにおける炭素源粉末の組成と圧環強度の関係を示す棒グラフである。 粒度の異なる高炭素鉄系粉末を用いた各試料の金属組織を示す顕微鏡写真である。
本明細書で説明する内容は、鉄基焼結合金または高炭素鉄系粉末のみならず、それらの製造方法にも該当し得る。製造方法に関する構成要素は、プロダクトバイプロセスクレームとして理解すれば物に関する構成要素ともなり得る。上述した本発明の構成要素に、本明細書中から任意に選択した一つまたは二つ以上の構成要素を付加し得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《原料粉末/混合粉末》
本発明に係る焼結体は、原料粉末を所望組成に配合した混合粉末の成形体を焼結させてなる。混合粉末は主に鉄源粉末と炭素源粉末からなるが、適宜、それら以外の改質粉末、内部潤滑剤等を含んでもよい。以下、各粉末について詳述する。
[炭素源粉末]
(1)本発明に係る炭素源粉末の少なくとも一部は、高炭素鉄系粉末からなる。高炭素鉄系粉末は、Cを5%以上、6%以上さらには6.5%以上含む鉄合金または鉄化合物からなる粒子(適宜、高炭素鉄系粒子という。)であると好ましい。C量が過少では、焼結体中のC量が不十分となり、また多くの高炭素鉄系粉末が必要となって不経済である。一方、そのC量の上限値は問わないが、C量が過多な粉末の製造は容易ではない。なお、ここでいうC量は、高炭素鉄系粉末全体(それを構成する鉄合金または鉄化合物からなる粒子全体)を100質量%としたときの割合である。
高炭素鉄系粒子は、全体としてCを高濃度に含む鉄合金または鉄化合物からなる限り、その微細組織やCの存在形態は特に問わない。例えば、Cの一部は、Fe中に固溶していてもよいし、セメンタイトを形成していてもよいし、さらにはC粒子として高炭素鉄系粒子中に析出していてもよい。
もっとも、高炭素鉄系粉末は、セメンタイト型鉄化合物を有する粒子からなると好ましい。セメンタイト型鉄化合物は準安定相であり、焼結工程の昇温初期(低温域)には化合物状態で存在するが、焼結温度付近の高温域になると、Fe(γ相)とC(炭素)に分解し易い。従って、焼結工程中にCOガスの発生を抑えつつ、Cを成形体または焼結体の構成粒子へ素早く拡散させる上で、セメンタイト型鉄化合物の粉末は炭素源粉末として好ましい。
本明細書でいうセメンタイト型鉄化合物は、FeCの他、そのFeの一部がCr、Mo、Mnなどの他の金属元素で置換されたものでもよい。要するに、MC(M:金属元素)で表される化合物を本明細書ではセメンタイト型鉄化合物という。また、そのセメンタイト型鉄化合物は、α−Feと層状をなしたパーライト組織を形成していてもよい。つまり本発明に係る高炭素鉄系粉末は、セメンタイト型鉄化合物からなる場合(セメンタイト型鉄化合物が主相の場合)でもよいし、セメンタイト型鉄化合物とα−Feの複合組織からなる場合でもよい。
(2)本発明に係る高炭素鉄系粉末は、その製造方法を問わない。但し、純鉄粉と黒鉛粉末のみから、純粋なFeCからなる高炭素鉄系粉末を効率的に製造することは容易ではない。そこで、Cr、Mo、Mnなどの合金元素を含む鉄合金粉と黒鉛粉末を用いると、比較的容易にMC(M:Fe、Cr、Mo、Mn、Siなど)のセメンタイト型鉄化合物からなる高炭素鉄系粉末を得ることができる。その鉄合金粉は、高炭素鉄系粉末となる混合粉末全体を100%として、例えば、Cr:0.5〜5%さらには0.8〜3.5%、Mo:0.1〜2%さらには0.3〜1.5%、Mn:0.05〜1%さらには0.3〜0.8%、Si:0.1〜0.8%さらには0.2〜0.6%の一種以上を含むと好ましい。このような鉄合金粉と黒鉛粉末の混合粉末(高炭素混合粉末)を焼成、粉砕等することにより高炭素鉄系粉末は得られる。
(3)高炭素鉄系粉末の粒度は問わないが、粒度が過大になると、焼結体中に比較的大きな残留気孔が形成され易くなり、焼結体の強度や延性の低下を招く。そこで高炭素鉄系粉末の粒度は75μm以下、65μm以下、55μm以下さらには50μm以下であると好ましい。一方、その粒度が過小になると、高炭素鉄系粉末の生産性や取扱性等が低下し得るため、敢えていうと高炭素鉄系粉末の粒度は5μm以上、10μm以上さらには15μm以上であると好ましい。
なお、本明細書でいう粉末の「粒度」は、篩い分けにより特定され、その篩いの公称目開き(メッシュサイズ)により表現される。例えば、粒度がaμm以下の粉末とは、公称目開きがaμmの篩いを通過した粒子からなる粉末を意味する。その他、篩いを用いた分級や粒度の特定はJIS Z 8801に準拠する。
(4)本発明に係る炭素源粉末は、高炭素鉄系粉末以外に、黒鉛粉末など他種粉末をさらに含むものでもよい。また高炭素鉄系粉末は、一種からなる場合に限らず、複数種からなる場合でもよい。組成の異なる複数種の高炭素鉄系粉末を用意し、焼結体の所望組成に応じて適切な高炭素鉄系粉末を適宜選択して用いると、焼結体となる混合粉末の配合が容易となり得る。
例えば、炭素源粉末として高炭素鉄系粉末と他の炭素粉末(例えば黒鉛粉末)を併用する場合、混合粉末全体を100%としてC:0.4〜1%さらには0.5〜0.8%となるように各粉末を配合すると好ましい。この際、高炭素鉄系粉末は混合粉末全体の50%以上、60%以上さらには70%以上であると好ましい。特に、高密度成形体を急速加熱して短時間焼結させる場合ほど、高炭素鉄系粉末の割合を高めるとよい。
[鉄源粉末]
鉄源粉末は、純鉄粉または鉄合金粉の一種以上からなる。例えば、鉄源粉末は、純鉄粉と一種以上の鉄合金粉の混合粉末でもよいし、二種以上の鉄合金粉からなってもよい。鉄合金粉を構成する合金元素として、Cr、Mo、V、Mn、SiさらにはCなどがある。鉄源粉末の全体組成や構成は、鉄基焼結合金の所望組成に適したものであると好ましい。鉄源粉末の粒度は、250μm以下さらには200μm以下であると、焼結体の機械的特性の向上を図れて好ましい。焼結体となる混合粉末全体に対する鉄源粉末の割合は、例えば85質量%以上さらには90質量%以上であると、特性に優れた焼結体が比較的低コストで効率的に生産され得る。
[改質粉末]
焼結体となる混合粉末は、鉄源粉末および炭素源粉末以外に、適宜、改質粉末は含んでもよい。改質粉末は、Feを含有するものでも含有しないものでもよい。このような改質粉末として、例えば、FeとMnとSiの合金粉末(FeMS粉末)またはFeとMnとSiとCの合金粉末(FeMSC粉末)などがある。FeMS粉末またはFeMSC粉末は、Oとの親和力が高く酸化物生成自由エネルギーも低いため、焼結時にOゲッターとして機能し、焼結体の機械的特性(強度、靱性、延性等)の向上や寸法安定性の向上(焼結前後の寸法変化の抑制)に寄与し得る。なお、各粉末中には、当然ながら、コスト的または技術的に除去困難な不可避不純物が含まれる。
《製造方法》
(1)成形工程
成形工程は、鉄源粉末と炭素源粉末を含む混合粉末を加圧成形して成形体を得る工程である。この際、得られる成形体の密度(ρ)や成形圧力は問わないが、敢えていうと、機械的特性に優れた焼結体を得るため、成形体密度は6.8g/cm以上、7g/cm以上さらには7.3g/cm以上であると好ましい。成形圧力は、所望する成形体密度や混合粉末の組成または構成により適宜選択されるが、例えば、400〜1600MPaさらには600〜1200MPaの範囲内で調整され得る。なお、本発明の製造方法によれば、焼結工程中におけるCOガスの内部発生が大幅に抑制されるため、例えば、開気孔が殆どない高密度な成形体も急速加熱による短時間焼結が可能である。
成形工程は、冷間成形(室温成形)でも温間成形でも良い。また、混合粉末と金型との潤滑は、内部潤滑剤を混合粉末に添加して行ってもよいし、金型潤滑により行ってもよい。金型潤滑を行う場合、金型潤滑温間加圧成形法(詳細は特許3309970号公報等を参照)によると好ましい。なお、焼結工程の加熱方法にも依るが、例えば、誘導加熱を行う場合なら、昇温初期における成形体の抵抗値を高める内部潤滑剤の使用量は少ないほど好ましい。そして、内部潤滑剤を含まない混合粉末を高圧で加圧成形できる金型潤滑温間加圧成形法により成形工程を行うとより好ましい。
(2)焼結工程
焼結工程は、成形体を加熱して焼結体を得る工程である。この際、焼結炉を用いた従来の加熱方法を用いることもできるが、誘導加熱方法等を用いると、成形体の急速加熱・短時間焼結により焼結体の生産性向上や省エネルギー化を図ることができる。
焼結工程に係る昇温速度、焼結温度、その保持時間、冷却速度等は適宜設定され得る。本発明に係る高炭素鉄系粉末を用いる場合、昇温速度は、例えば、5℃/秒以上、10℃/秒以上、15℃/秒以上、20℃/秒以上、30℃/秒以上さらには40℃/秒以上とすることができる。このように本発明に係る焼結工程は、成形体を急速加熱する急速加熱過程を含むと好適である。ちなみに、従来の焼結炉を用いた加熱方法の場合、昇温速度は高々0.5℃/秒以下程度に過ぎなかった。なお、本明細書でいう昇温速度は、成形体の温度が、加熱開始時(t0)の初期温度(T0)から所望の焼結温度(T1)になる時(t1)までにおける温度の時間変化率である(T1−T0/t1−t0)。
焼結温度は、例えば、1050℃〜1350℃以上さらには1100〜1300℃が好ましい。焼結温度が過小では焼結体の機械的特性が不十分となり、焼結温度が過大では非効率であると共に、焼結体の機械的特性や寸法安定性を却って劣化させ得る。焼結温度の保持時間は適宜選択され得るが、本発明に係る高炭素鉄系粉末を用いた場合、極短時間でも機械的特性に優れた焼結体を得ることができる。例えば、高炭素鉄系粉末を用いた場合、保持時間が1〜20分間、2〜10分間さらには3〜5分間でも、黒鉛粉末を用いて保持時間を30分間以上とした場合と同等な機械的特性が得られる。さらに誘導加熱等により急速加熱を行えば、焼結工程中の加熱開始から加熱終了までに要する合計時間も大幅に短縮できる。例えば、その合計時間を1〜30分間、2〜20分間さらには3〜10分間とすることも可能となる。
その他、焼結雰囲気は、真空雰囲気、不活性ガス雰囲気、窒素ガス雰囲気等の酸化防止雰囲気でなされると好ましい。また、加熱終了後の冷却過程では、焼結体を徐冷しても急冷してもよい。この際の冷却速度は問わないが、例えば、20〜200℃/分(0.4〜3.3℃/秒)とするとよい。なお、焼結温度から続けて急冷すれば、焼入れ(シンターハードニング)により高強度化された焼結体を効率的に得ることもできる。
《鉄基焼結合金》
本発明の鉄基焼結合金は、必須元素であるFeおよびC以外に、適宜、Cr、Mo、V、Mn、Siなど合金元素を一種以上含むと好ましい。この場合、例えば、全体を100%として、Cr:0.05〜2%さらには0.1〜1.5%、Mo:0.05〜1%さらには0.1〜0.5%、V、MnまたはSi:合計で0.05〜1%さらには0.1〜0.7%とするとよい。なお、鉄基焼結合金に係る組成は、ほぼそのまま混合粉末全体の組成としても把握できる。
《用途》
本発明の鉄基焼結合金は、前述したように素材(バルク材)でもよいが、通常は、所望形状をした鉄基焼結部材であることが多い。このような鉄基焼結部材は、種々考えられるが、例えば、各種プーリー、変速機のシンクロハブ、エンジンのコンロッド、ハブスリーブ、スプロケット、リングギヤ、パーキングギヤ、ピニオンギヤ、サンギヤ、ドライブギヤ、ドリブンギヤ、リダクションギヤ等がある。なお、鉄基焼結部材は、その要求仕様に応じて、適宜、焼鈍、焼準、時効、調質(焼入れ、焼き戻し)、浸炭、窒化等の熱処理や種々の加工が施され得る。
炭素源粉末を種々変更した混合粉末を加圧成形した成形体を焼結した試料(鉄基焼結合金)を多数製作し、それら試料を観察、測定および評価した。これらに基づき、本発明をより具体的に説明する。
《高炭素鉄系粉末の製造》
個別に調製した表1に示す複数種の鉄合金粉と黒鉛(Gr)粉末(日本黒鉛社製JCPB、平均粒径:5μm)とを用意した。これらの粉末を表1に示す割合でそれぞれ配合した後、ボールミル式回転混合により高炭素混合粉末を調整した。なお、表1に示した配合組成は、高炭素混合粉末全体を100質量%(適宜、単に%で表す。)としたときの黒鉛粉末の割合であり、残部は鉄合金粉である。また、表1に示した各鉄合金粉の組成は、その鉄合金粉の全体を100質量%としたときの各合金元素の割合であり、その残部はFeである。さらに、各鉄合金粉の粒度も表1に併せて示した。本実施例でいう粒度も、前述したようにJIS Z 8801に準拠した篩分けにより特定される。
各高炭素混合粉末をルツボに入れて、窒素雰囲気中で900〜1100℃×90分間加熱した。加熱後の高炭素混合粉末を粉砕して、所望の粒度(32μm以下)に篩い分けした。こうして表1に示す9種類の高炭素混合粉末(P1〜P9)を得た。
《試料の製造》
(1)原料粉末
原料粉末として、炭素源粉末である高炭素混合粉末および黒鉛粉末と、鉄源粉末である純鉄粉(ヘガネスAB社製ASC100.29、粒度:−212μm)および3種類の鉄合金粉とを用意した。用意した鉄合金粉は、Fe−0.5%Mo(ヘガネスコーポレーション社製、粒度:−212μm)、Fe−0.3%V−0.3%Mo(試作粉末、粒度:−180μm)、Fe−1.5%Cr−0.2%Mo(ヘガネスAB社製、粒度:−212μm)である。なお、純鉄粉および鉄合金粉は、水噴霧アトマイズ粉である。
(2)混合粉末
各粉末を全体に対するC量が0.6%となるように配合した後、ボールミル式回転混合を30分間行い、均一な混合粉末を得た(混合工程)。
(3)成形工程
成形工程は、所望形状(φ14mm×12mm)に応じたキャビティを有する金型を用意して、金型潤滑温間加圧成形法により行った。成形温度(金型温度)は150℃とし、加熱した金型の内周面に高級脂肪酸系潤滑剤であるステアリン酸リチウム(LiSt)を塗布して行った。成形圧力は、成形体密度が7.0g/cmまたは7.5g/cmの成形体が得られるように400〜1050MPa内で調整した。なお、金型潤滑温間加圧成形法の詳細は特許3309970号公報の記載を参考にした。また成形体密度は、成形体の寸法と重量から算出した。
(4)焼結工程
各成形体を高周波加熱装置(日鉄住金テクノロジー株式会社製サーメックマスタZ)を用いて加熱した。この際、昇温速度:2〜50℃/秒、焼結温度:800〜1250℃、各焼結温度で保持する時間(保持時間):10〜600秒の範囲で種々調整した。特に断らない場合は、昇温速度:50℃/秒、焼結温度:1200℃、保持時間:180秒(3分)とした。いずれの場合も保持時間経過後の降温速度(冷却速度)は100℃/分とした。なお、加熱雰囲気は、Arガス分圧:0.05Paの真空雰囲気(Arパーシャル雰囲気)とした。
比較のため、一部の成形体は窒素ガス雰囲気中のバッチ式焼結炉で加熱した。この際、昇温速度:0.33℃/秒、焼結温度:1200℃、保持時間:30分間、降温速度:100℃/分とした。
こうして表2〜8に示す種々の焼結体(鉄基焼結合金)からなる試料を得た。各試料の組成(混合粉末の配合組成)、工程内容(製造条件)は、各表に示した。なお、表2〜表8に示した炭素源粉末量は、焼結体となる混合粉末全体を100質量%としたときの割合である。この点で、上述した表1に示す炭素源粉末の割合と異なる。
《測定》
(1)寸法変化
各試料に係る成形体と焼結体の直径(基準寸法:φ14mm)をそれぞれ測定することにより、焼結前後の寸法変化を求めた。こうして得られた結果は各表に併せて示した。
(2)各焼結体を機械加工して、外径:φ13mm×内径:φ8mm×厚さ:3mmのリング状試験片をそれぞれ製作した。こうして得られたリング状試験片に対して圧縮試験を行うことにより、各試料(焼結体)の圧環強度および破壊時の変位量を求めた。なお、圧縮試験はクロスヘッドスピード:0.4mm/分で行った。こうして得られた結果も各表に併せて示した。
《評価・観察》
(1)高炭素鉄系粉末
表1に示した高炭素鉄系粉末の一部について、その構成粒子の断面(研磨面)を光学顕微鏡により観察して得られた金属組織写真を図1Aに示した。各写真中、白色部分はセメンタイト相であり、灰色部分はパーライト相である。図1Aから、高炭素鉄系粉末の構成粒子は、セメンタイト相(セメンタイト型鉄化合物)が主体であることがわかった。これは、高炭素混合粉末中の黒鉛粉末が6.7質量%以上の場合(P2粉末)でも同様であった。
また、粉末P1に係る高炭素混合粉末(加熱前)と高炭素鉄系粉末(加熱後)をそれぞれX線回折(XRD)により観察した様子を図1Bに示した。図1Bからも、加熱前には存在しなかったセメンタイト相が加熱後に多量に生成されており、高炭素鉄系粉末の構成粒子が主にセメンタイト相(FeC相)からなることが確認された。
(2)昇温速度の影響
表2に示す各試料の特性と、各試料の圧環強度(適宜、単に「強度」という。)を比較した図2A、各試料の破壊時の変位量(適宜、単に「変位量」または「延性」という。)を比較した図2Bおよび各試料の焼結前後の寸法変化(適宜、単に「寸法変化」という。)を比較した図2Cとから、昇温速度に関して次のことがわかる。
炭素源が高炭素鉄系粉末(P1粉末)である試料は、昇温速度が非常に大きくなっても、優れた強度や延性を示し、その寸法変化も十分に小さかった。一方、炭素源が黒鉛粉末である試料は、昇温速度が非常に大きくなると、強度および延性が大きく劣化し、寸法変化も大きくなった。
このような傾向は、各試料の破面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した組織写真(図2D)からもわかる。つまり、炭素源が高炭素鉄系粉末である試料は、鉄粉粒子の隣接間に未結合部が殆ど観られなかったが、炭素源が黒鉛粉末である試料は、鉄粉粒子の隣接間に未結合部が多く観られた。この理由として、炭素源に黒鉛粉末を用いた場合、昇温速度が大きいために焼結開始後からCOガスが急激に発生し、そのガスが放出されることなく成形体内部で高圧となって鉄粉粒子間を押し広げ、鉄粉粒子同士の結合(ネック形成)を妨げたことが考えられる。
(3)焼結温度の影響
表3に示す各試料の特性と、それらの強度および延性をそれぞれグラフに示した図3Aおよび図3Bから、焼結温度に関して次のことがわかる。焼結温度(加熱温度)が900℃までは、炭素源粉末の相違が焼結体の強度または延性に及ぼす影響は少ない。しかし、焼結温度が950℃以上になると、炭素源粉末の相違が焼結体の強度または延性に顕著に影響している。つまり、黒鉛粉末を炭素源とした試料では、焼結温度を上昇させても強度や延性の向上はあまり望めない。一方、高炭素鉄系粉末を炭素源とした試料では、焼結温度の上昇に伴い、強度および延性が大幅に上昇して、機械的特性に非常に優れた焼結体(鉄基焼結合金)が得られることがわかった。
このような傾向は、各試料の金属組織を観察したSEM写真(図3Cおよび図3D)からもわかる。例えば、1050℃または1150℃の組織を比較すると、黒鉛粉末を用いた試料では高炭素鉄系粉末を用いた試料よりも、炭素拡散が進行してパーライト相(灰色部分)の比率がより大きくなっている。このような炭素の拡散速度差が焼結時におけるCOガスの発生挙動に影響し、ひいては鉄粉粒子の結合(ネック形成)に影響して、上述したような結果になったと考えられる。
(4)保持時間の影響
表4に示す各試料の特性と、それらの強度および延性をそれぞれグラフに示した図4Aおよび図4Bから、保持時間に関して次のことがわかる。黒鉛粉末を炭素源とした試料では、成形体を一定の加熱温度(焼結温度)に保持する時間(保持時間)を長くしても、強度や延性は緩やかにしか向上しない。一方、高炭素鉄系粉末を炭素源とした試料では、保持時間を僅か180秒(3分)程度とするだけで、十分な強度および延性の焼結体が得られることがわかる。その強度や延性は、従来の焼結炉でゆっくり加熱して保持時間を1800秒(30分)とした焼結体と同程度となることもわかった。ちなみに、高炭素鉄系粉末を炭素源とした試料では、緩慢加熱後に長時間保持して得られた焼結体(試料P46)でも、十分に高い強度および延性が発揮されることも確認された。
(5)高炭素鉄系粉末と黒鉛粉末の配合割合の影響
表5に示す各試料の特性と、それらの強度および延性をそれぞれ棒グラフで示した図5Aおよび図5Bから、高炭素鉄系粉末と黒鉛粉末の配合割合に関して次のことがわかる。急速加熱・短時間焼結を行う場合、高炭素鉄系粉末の割合が多いと、黒鉛粉末を併用した場合でも、強度および延性に優れた焼結体が得られることがわかった。具体的には、炭素源粉末の1/4程度(50%以下、40%以下さらには30%以下)を黒鉛粉末としても、残部が高炭素鉄系粉末であれば、急速加熱・短時間焼結により十分に高強度・高延性な焼結体が得られることもわかった。
このような傾向は、成形体密度が高い場合(7.5g/cm)でも低い場合(7.0g/cm)でも同様であったが、成形体密度が高い場合ほど顕著であった。これは急速加熱した際に生じるCOガスが成形体中の開気孔を経由して放出される程度を反映していると考えられる。具体的にいうと、成形体密度が低い場合、黒鉛粉末の割合が大きくても、成形体内部に発生したCOガスは開気孔から放出され得るため、鉄粉粒子のネック形成はさほど阻害されない。しかし、成形体密度が高い場合、黒鉛粉末の割合が大きくなると、成形体内部に発生した多量のCOガスは開気孔から放出され難くなり、鉄粉粒子のネック形成が大きく阻害され得る。従って、成形体密度が高い場合ほど、高炭素鉄系粉末の割合を大きくすると好ましいといえる。
(6)鉄源粉末組成の影響
表6に示す各試料の特性と、それらの強度を棒グラフで示した図6Aおよび図6Bから、鉄源粉末の組成に関して次のことがわかる。鉄源粉末が純鉄粉でも鉄合金粉でも、上述した場合と同様に、高炭素鉄系粉末を用いた試料の方が黒鉛粉末を用いた試料よりも優れた強度や延性を発揮した。そして、このような傾向は成形体密度が高いほど顕著であった。なお、いずれの試料でも合金元素(Mo、V、Cr等)の合計量が増加するほど、高強度、高延性となることも確認された。
(7)高炭素鉄系粉末の組成の影響
表7に示す各試料の特性と、それらの強度を棒グラフで示した図7Aおよび図7Bから、高炭素鉄系粉末の組成に関して次のことがわかる。高炭素鉄系粉末の組成が変化しても、いずれの試料も優れた強度や延性を発揮した。このような傾向は成形体密度が高いほど顕著であった。
また、表7に示す各試料と同等な組成となるように、炭素源である黒鉛粉末と各種の鉄合金粉(平均粒径10μm以下)と純鉄粉を配合した混合粉末からなる焼結体も同様に製作した。こうして得られた各試料の特性を表8に示した。また、これら各試料の強度を示す棒グラフを図7Aおよび図7Bに併記した。その際、焼結体の全体組成が同一となる試料に係る棒グラフを隣接して配置した(例えば、表7の試料H1と表8の試料HM1)。
上述した場合と同様に、いずれの組成に係る試料でも、高炭素鉄系粉末を用いた試料の方が黒鉛粉末を用いた試料よりも優れた強度を発揮した。このような傾向も成形体密度が高いほど顕著であった。
また、同組成であるが粒度の異なるP1粉末、P3粉末、P4粉末およびP5粉末をそれぞれ用いて、表7に示す試料L1と同様に製造した焼結体の金属組織を光学顕微鏡で観察した様子を図8に示した。これから、急速加熱・短時間焼結により焼結させた場合、高炭素鉄系粉末の粒度が大きくなるほど、Fe−C系共晶液相の生成に由来した大きな残留気孔が発生することがわかる。そして、P5粉末のように粒度45μm以上の粒子からなる高炭素鉄系粉末を炭素源粉末として用いると、その残留気孔がかなり粗大になることもわかった。このように残留気孔が大きくなると、焼結体の機械的特性(特に延性)の低下を招き得ると考えられる。

Claims (13)

  1. 鉄源粉末と炭素源粉末を少なくとも含む混合粉末を加圧成形した成形体を得る成形工程と、
    該成形体を加熱した焼結体を得る焼結工程と、
    を備える鉄基焼結合金の製造方法であって、
    前記炭素源粉末の少なくとも一種は、Cを5質量%(以下、単に「%」で表す。)以上含む鉄合金または鉄化合物からなる高炭素鉄系粉末であることを特徴とする鉄基焼結合金の製造方法。
  2. 前記高炭素鉄系粉末は、セメンタイト型鉄化合物を有する粒子からなる請求項1に記載の鉄基焼結合金の製造方法。
  3. 前記高炭素鉄系粉末は、該粉末全体を100%として、下記成分の一種以上を含む請求項1または2に記載の鉄基焼結合金の製造方法。
    Cr:0.5〜5%、
    Mo:0.1〜2%、
    Mn:0.05〜1%
  4. 前記高炭素鉄系粉末は、粒度:75μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の鉄基焼結合金の製造方法。
  5. 前記炭素源粉末は、さらに、黒鉛粉末を含む請求項1〜4のいずれかに記載の鉄基焼結合金の製造方法。
  6. 前記混合粉末は、該混合粉末全体を100%として、下記成分の一種以上を含む請求項1〜5のいずれかに記載の鉄基焼結合金の製造方法。
    Cr:0.05〜2%、
    Mo:0.05〜1%、
    V、MnまたはSi:合計で0.05〜1%
  7. 前記混合粉末は、内部潤滑剤を含まない請求項1〜6のいずれかに記載の鉄基焼結合金の製造方法。
  8. 前記成形工程は、成形体密度:6.8g/cm以上の成形体を得る工程である請求項1に記載の鉄基焼結合金の製造方法。
  9. 前記焼結工程は、前記成形体の加熱開始から焼結温度に至るまでの昇温速度を5℃/秒以上とする急速加熱過程を含む請求項1に記載の鉄基焼結合金の製造方法。
  10. 前記急速加熱過程は、誘導加熱によりなされる請求項9に記載の鉄基焼結合金の製造方法。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法により得られることを特徴とする鉄基焼結合金。
  12. 全体を100%として、Cを5%以上含む鉄合金または鉄化合物からなることを特徴とする高炭素鉄系粉末。
  13. セメンタイト型鉄化合物を有する粒子からなる請求項12に記載の高炭素鉄系粉末。
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