JP2018043286A - 金属管成形ロール、金属管成形装置、金属管成形方法 - Google Patents

金属管成形ロール、金属管成形装置、金属管成形方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2018043286A
JP2018043286A JP2016182379A JP2016182379A JP2018043286A JP 2018043286 A JP2018043286 A JP 2018043286A JP 2016182379 A JP2016182379 A JP 2016182379A JP 2016182379 A JP2016182379 A JP 2016182379A JP 2018043286 A JP2018043286 A JP 2018043286A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
roll
metal tube
film
tube forming
flange portion
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Ceased
Application number
JP2016182379A
Other languages
English (en)
Inventor
美昭 伊丹
Yoshiaki Itami
美昭 伊丹
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp filed Critical Nippon Steel and Sumitomo Metal Corp
Priority to JP2016182379A priority Critical patent/JP2018043286A/ja
Publication of JP2018043286A publication Critical patent/JP2018043286A/ja
Ceased legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Mounting, Exchange, And Manufacturing Of Dies (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Chemical Vapour Deposition (AREA)

Abstract

【課題】耐凝着性、耐摩耗性、耐剥離性、およびロール表面の摩擦係数に優れた成形ロールを提供する。【解決手段】質量%で、C:1.00〜2.30%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.20〜0.80%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:4.80〜13.00%、を含有し、残部が鉄及び不可避的不純物から成る鋼組成を有する基材と、基材上に形成されたCrN皮膜と、CrN皮膜上に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)とを備え、DLC膜において、ラマン分光法におり測定された波数1380cm−1における吸収強度I1380と、波数1540cm−1における吸収強度I1540との比I1380/I1540が、膜表面から膜厚の20%深さの範囲で0.5〜0.7、DLC膜と前記CrN皮膜との界面から20%深さの範囲で0.3〜0.5である。【選択図】図1

Description

本発明は、金属管成形ロール、金属管成形装置、金属管成形方法に関し、特に耐凝着性、耐摩耗性に優れた金属管成形ロール、金属管成形装置、金属管成形方法に関するものである。
通常、鋼管、ステンレス鋼管、チタン管、アルミニウム合金管、銅合金管等の金属管を製造する場合、高精度の外径および真円度の確保、ならびに管の曲がり矯正を目的として、鋼管、ステンレス鋼管、チタン管、銅合金管ではTIGまたはレーザー溶接後に、アルミニウム合金管ではMIG溶接後に成形ロールによる成形工程を行う。
成形ロールの摩耗が激しいと、精度の良い成形ができなくなり、成形する金属管において高精度な真円度を確保できなくなる。そのため、成形ロールには、ロール表面の状態を長期間にわたって維持できる優れた耐摩耗性が要求される。
さらに近年では、金属管の生産性の向上を図るべく、成形工程における通搬速度を増加させた過酷な条件で成形することが多い。このような条件で操業すると、特に断面視半円状の溝ロールである成形ロールで金属管を成形する際、断面視半円状溝の底側とその溝の端部側では周速(周速度)が異なるため、金属管表面の一部では成形ロール表面との間の周速差によって、その部分において凝着(焼付き)が生じやすくなり、焼付き疵が発生するおそれがある。このように、成形ロールと金属管との間で凝着が発生すると、金属管表面に疵が残り商品価値が下がり、さらに金属管製品の真円度が低下してしまうため、摩耗や凝着が起きる前に成形ロールの交換を行わなければならない。
このように、金属管を成形するロールには、耐摩耗性と、焼き付き疵を低減させうる耐凝着性を両立させ、ロールの交換頻度を低減できる長寿命なロールが要求される。
このような成形ロールに対する耐摩耗性及び耐凝着性の要求に対して、従来より様々な技術が検討されてきている。
例えば、鋼管の成形ロールにおいては、ロール表面にセラミックス皮膜を成膜し硬度を確保する方法(特許文献1)、ロール表面に、浸硫窒化層、窒化層及びTiCから選ばれる1種の表面硬化層を形成させ硬度と向上させる方法(特許文献2)、表面に硬質皮膜を備えたロールにおいて、ロール表層に分散する炭化物を微細化してロールと硬質皮膜との密着性を確保し、硬質皮膜の剥離を防止することで耐摩耗性と耐凝着性を確保する方法(特許文献3)、等が検討されている。
また一般に、成形ロールの材質としてダイス鋼などの工具鋼が使用される場合が多いが、耐摩耗性や耐凝着性を向上させるために、工具鋼の代わりに超硬合金を使用する対策も取られている。
ここで、特にチタンは他の金属材料と比較して、各種環境中における耐食性が著しく優れていることから、各種化学用の反応塔や容器、配管などの構成材料として発展してきた。近年では、火力・原子力発電所等の蒸気タービン復水器や蒸発法海水淡水化装置の伝熱管としてもチタン管が多く使用されている。
しかしこれまで、鋼管を成形する際の成形ロールの耐摩耗性及び耐凝着性については、上記の通り様々な検討がされているが、チタン管を成形する成形ロール特性についてはほとんど言及されてきていない。さらに、チタン管成形時の成形ロールに対し、上記のような従来技術を採用しても、耐摩耗性及び耐凝着性が不十分である場合があった。
また近年では、ロールの表面性状を良好に維持できることから、チタン管成形ロールの材質として銅合金を用いることが多いが、銅合金では硬度が不十分なことから、十分な耐摩耗性を確保できない場合があった。
さらに、チタンは、耐力(降伏応力)大きいわりに、弾性係数(ヤング率)が他の金属に比べ、低いことから、いわゆるスプリングバック(弾性回復)による成形不良も起き易かった。(アルミニウム合金も他の金属に比べ、弾性係数が低いが、耐力も低いため、チタンほどスプリングバックが問題とならない。)
なお、チタン管に限らず、鋼管、ステンレス鋼管、アルミニウム合金管、銅合金管においても、前記の通り、成形ロールの耐摩耗性及び耐凝着性について、通り様々な検討がされているが、真円度が高く要求される場合に、さらなる製品歩留まりの向上、成形ロールの長寿命化による生産効率の向上が要求されていた。
また、一般的に、金属管を成形する場合、搬送方向に対して複数配置された多段の成形ロールにて成形することで、真円度や残留応力の制御を行う。
複数の成形ロールはおおまかに、駆動ロールと無駆動ロールに大別される。駆動ロールは上下に対向配置された一対のロールからなり、この上下ロールに駆動回転力を付与して駆動させて金属管を搬送方向へ引っ張るロールであり、一方の無駆動ロールは左右に対向配置された一対のロールからなり、駆動回転力は付与されない。
ここで、より詳細に調査したところ、駆動ロールは無駆動ロールよりもロールの周速差が大きいことから、特にフランジの部分でロール表面が剥離、成形対象物である金属管にも疵が付きやすいことが分かった。さらに、ロール表面の硬質化を目的として硬質膜を付与した場合でも、駆動ロールは無駆動ロールによりもその硬質膜が剥離しやすく、ロール寿命が短くなることが分かった。
つまり、駆動ロールは、無駆動ロールよりも使用環境が過酷であることから、耐摩耗性や耐凝着性は勿論のこと、耐剥離性、ならびにロール表面の優れたすべり性、つまり低摩擦性が求められることが分かった。
特開平8−174014号公報 特開平1−201443号公報 国際公開第00/51756号公報
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、金属管を成形、造管する際に用いるロールにおいて、耐摩耗性、耐凝着性、耐剥離性、およびロール表面の摩擦係数に優れ、かつ安価な金属管成形ロール、ならびにロールの長寿命化を図り得る金属管成形装置、金属管成形方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、安価でかつ耐摩耗性、耐凝着性、耐剥離性、およびロール表面の摩擦係数に優れ、ロール寿命の長い金属管成形ロールを検討した結果、通常、成形ロールの材質として用いられる合金工具鋼鋼材を基材とし、更に、成形ロールを分割し、分割したロールどうしを隣接させ、かつ、当該基材上にCrN皮膜を形成し、さらにその上にダイヤモンドライクカーボン膜を形成することで、耐摩耗性、耐凝着性、耐剥離性およびロール表面の低摩擦性を向上させて金属管の成形性を高めることが可能になることがわかった。
さらに、前述の「周速差」を低減するために、断面視半円状の溝ロールである成形ロールにおいて、断面視半円状溝の底側とその両側の溝の端部側とで成形ロールを分割して、隣どうしに配置して互いが他方の回転に拘束されないようにすることで、その底側とその両側の溝の端部側との互いの分割ロール間で回転速度の差が適宜生じ、その結果、互いのロール表面における周速差を小さくする手段を採用することにした。ただし、その互いのロール間で許容できない、いわゆる「遊び(ガタ)」すなわち隙間が操業中に生じれば、金属管製品の真円度を下げてしまうおそれがある。一方で、その「遊び(ガタ)」すなわち隙間を極小とするために分割した互いの成形ロールどうしが互いに接するようにすれば、その接する面で、分割した互いの成形ロールどうしで摺動し合って、磨耗し、ロール寿命が短くなる問題点がある。また、その磨耗を防ぐために、分割した互いの成形ロール間にべアリングを介在させると、こんどは「遊び(ガタ)」すなわち隙間が生じ、さらに振動が生じて真円度が保てない等の不具合が生じる問題点がある。
そこで、分割ロールを構成する基材表面であって、少なくとも分割ロールの摺動面どうしが互いに接する面に前述のCrN皮膜を形成し、さらにその上に前出のダイヤモンドライクカーボン膜を形成することで、分割ロール間での「遊び(ガタ)」すなわち隙間を極小とした場合でも、摺動による互いの磨耗を防ぐ事ができ、ロールの交換頻度を低減できる長寿命なロールを提供できることが分かった。成形ロールの分割や、Cr皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜による摩耗低減は、駆動ロールのみならず、無駆動ロールにおいても有効である。
なお、本発明では、断面視半円状溝の底側とその両側の溝の端部側とで成形ロールを分割した際、断面視半円状溝の底側を「ロール中央部」、その両側の溝の端部側を「回動フランジ部」と称する。
本発明の要旨は、以下の通りである。
[1] その全周に渡って断面視半円状のロール凹部が設けられたロール本体を有する金属管成形ロールであって、
前記ロール本体は、ロール中央部と、前記ロール中央部の両側に配置されて前記ロール中央部に対して回動自在とされた一対の回動フランジ部と、が少なくとも備えられ、前記ロール凹部が、前記ロール中央部と前記回動フランジ部とによって分割されており、
前記ロール中央部と前記回動フランジ部が、質量%でC:1.00〜2.30%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.20〜0.80%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:4.80〜13.00%を含有し、残部が鉄及び不純物からなる組成を有する鋼材からなり、
前記ロール凹部の全面と前記回動フランジ部の表面全面に、CrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが順次積層され、
前記ダイヤモンドライクカーボン膜において、ラマン分光法により測定された波数1380cm−1における吸収強度I1380と、波数1540cm−1における吸収強度I1540との比I1380/I1540が、膜表面から膜厚の20%深さの範囲で0.5〜0.7、前記ダイヤモンドライクカーボン膜と前記CrN皮膜との界面から20%深さの範囲で0.3〜0.5であることを特徴とする金属管成形ロール。
[2] 前記ロール中央部は、前記ロール本体を駆動する回転軸に固定されており、前記回動フランジ部は前記回転軸及び前記ロール中央部に対して回動自在とされていることを特徴とする[1]に記載の金属管成形ロール。
[3] 前記ロール本体に更に、一対の前記回動フランジ部のロール幅方向両側に配置されて前記ロール中央部に固定された固定フランジ部が備えられ、
前記固定フランジ部に、前記回動フランジ部を引き寄せて固定する引きねじ部が設けられていることを特徴とする[1]または[2]に記載の金属管成形ロール。
[4] ワークとなる金属管の外径をDとしたとき、前記ロール中央部における前記ロール凹部の幅が0.7D〜0.87Dの範囲であることを特徴とする[1]乃至[3]の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
[5] 前記ダイヤモンドライクカーボン膜において、膜表面から膜厚の20%深さの範囲のビッカース硬さが3000〜3500、前記ダイヤモンドライクカーボン膜と前記CrN皮膜との界面から20%深さの範囲のビッカース硬さが2500〜3000であることを特徴とする[1]乃至[4]の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
[6] 前記ダイヤモンドライクカーボン膜の厚さが0.5μm〜2μmであることを特徴とする[1]乃至[5]の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
[7] 前記CrN皮膜の厚さが0.5μm〜5μmであることを特徴とする[1]乃至[6]の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
[8] 前記CrN皮膜のビッカース硬さが800〜2000であることを特徴とする[1]乃至[7]の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
[9] 前記ロール中央部と前記回動フランジ部の表面に、プラズマ窒化処理によって窒化された窒化層が形成されていることを特徴とする[1]乃至[8]の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
[10] 前記窒化層の厚さが0.5μm〜5μmであることを特徴とする[9]に記載の金属管成形ロール。
[11] 前記窒化層の平均窒素濃度が、10.0〜25.0質量%であることを特徴とする[9]または[10]に記載の金属管成形ロール。
[12] 前記窒化層における窒素の濃度分布が、前記窒化層表層から深さ方向に向かって減少する濃度勾配を有することを特徴とする[9]乃至[11]の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
[13] 前記ロール中央部または前記回動フランジ部の一方または両方が、さらに、質量%で、
Mo:0.70〜1.20%、
V:0.15〜1.00%、
を含有することを特徴とする[1]乃至[12]の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
[14] 前記ロール中央部または前記回動フランジ部の一方または両方が、さらに、質量%で、
W:0.60〜0.80%、
を含有することを特徴とする[1]乃至[13]の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
[15] [1]〜[14]の何れか一項に記載の金属管成形ロールを備えた金属管成形装置。
[16] [1]〜[14]の何れか一項に記載の金属管成形ロールを用いて成形することを特徴とする、金属管成形方法。
本発明によれば、金属管を成形、造管する際に用いるロールにおいて、耐摩耗性、耐凝着性、耐剥離性、およびロール表面の摩擦係数に優れ、かつ安価な金属管成形ロール、ならびにロールの長寿命化を図り得る金属管成形装置、金属管成形方法を提供することができる。
図1は、本発明の実施形態の第1の例である金属管成形ロールを用いた金属管成形方法を示す側面模式図。 図2は、本発明の実施形態である金属管成形ロールを示す正面模式図。 図3は、本発明の実施形態の第2の例である金属管成形ロールを示す正面断面模式図。 図4は、本発明の実施形態の第2の例である金属管成形ロールを示す正面断面分解模式図。 図5は、本発明の実施形態の第2の例である金属管成形ロールのロール中央部と回動フランジ部とを示す正面断面模式図。 図6は、金属管成形ロールにおける滑り率を説明する図であって、(a)は駆動ロールにおける滑り率を説明する模式図であり、(b)は無駆動ロールにおける滑り率を説明する模式図であり、(c)は本実施形態の金属管成形ロールにおける滑り率を説明する模式図。 図7は、本実施形態の金属管成形ロールの別の例を示す正面断面模式図。 図8は、本実施形態の金属管成形ロールの更に別の例を示す正面断面模式図。 図9は、本発明の実施形態の第3の例である金属管成形ロールを示す正面断面模式図。 図10は、金属管成形装置を用いた潤滑方法および装置を説明するための正面概略図。 図11は、図10に示す潤滑ノズル1の配置例を説明するための正面模式図。 図12は、図10に示す潤滑ノズル1の幅方向調整機構、上下方向調整機構を説明するための上面概略図と側面概略図。 図13は、潤滑ノズル1を用いて潤滑剤を微量滴下するためのローラーポンプ(潤滑剤供給装置)の構造を示す図。 図14は、実施例1の成形ロールにおける成分分析結果を示すグラフ。 図15は、実施例1の成形ロールにおける成分分析結果を示すグラフ。 図16は、実施例1の成形ロールにおける成分分析結果を示すグラフ。 図17(a)は、実施例1の成形ロールの表層の顕微鏡写真、図17(b)は実施例1の成形ロール表層のラマンスペクトルであり、図17(c)は実施例1の成形ロールのDLC膜内部のラマンスペクトル。 図18(a)は、比較例1の成形ロールの表層の顕微鏡写真、図18(b)は比較例1の成形ロール表層のラマンスペクトルであり、図18(c)は比較例1の成形ロールのDLC膜内部のラマンスペクトル。 図19(a)は、参考例1の成形ロールを用いて成形したチタン管の真円度の測定結果を示す図であり、図19(b)は、実施例2の成形ロールを用いて成形したチタン管の真円度の測定結果を示す図である。それぞれ、真円からの乖離を拡大表示している。
以下、本発明の実施形態である金属管成形ロール、金属管成形装置及び金属管成形方法について説明する。
なお、本実施形態は、本発明の金属管成形ロールの趣旨をより良く理解させるために詳細に説明するものであるから、特に指定の無い限り本発明を限定するものではない。
なお、これから説明する各実施形態の金属管成形ロール、金属管成形装置、金属管成形方法において適用可能な金属管は、鋼管、ステンレス鋼管、アルミニウム管、アルミニウム合金管、チタン管、チタン合金管、銅管、銅合金管のいずれでもよく、これ以外の材質の金属管でもよい。
[金属管ロール、金属管成形装置及び金属管成形方法の第1の例]
図1に、本実施形態の第1の例である、金属管成形ロール、金属管成形装置及び金属管成形ロールを用いた金属管成形方法の側面模式図を示す。また、図2には、金属管成形ロールの正面模式図を示す。図1及び図2に示すように、本実施形態の金属管成形ロール1は、所謂カリバーロールであり、鋼材からなるロール本体2と、ロール本体2に挿通された回転軸3とが備えられている。ロール本体2のロール面2aには、断面視半円状に成形されたロール凹部4がロール本体2の全周に渡って設けられている。また、ロール凹部4の表面には、CrN皮膜と、CrN皮膜上に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられている。
図1に示すように、中空の円筒管である金属管10を真円に成形する際には、一対の金属管成形ロール1の回転軸3をそれぞれ水平に配置し、かつ、各回転軸3が平行になるように配置する。このようにして各金属管成形ロール1を上下方向に対向して配置させる。そして、上下に配置した一対の金属管成形ロール1の間に成形前の金属管10を通過させる。一対の金属管成形ロール1の間には、各金属管ロール1のロール凹部4によって、正面側から視た場合に真円形状となる孔部が設けられており、この孔部を金属管10が通過する際に金属管10が真円状に成形される。なお、金属管成形ロール1の配置は上下方向に限らず、水平方向でも斜め方向でもよい。また、図1に示すように、一対の金属管成形ロール1の回転軸3をそれぞれ水平に配置し、かつ、各回転軸3が平行になるように配置することで、金蔵管成形装置の主要部が構成される。
金属管成形ロール1の回転軸3は、駆動手段によって駆動される駆動軸でもよく、無駆動軸でもよい。本実施形態の金属管成形ロール1は駆動軸に接続されたとしても、CrN皮膜上に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられているために、耐摩耗性、耐凝着性、耐剥離性、およびロール表面の摩擦係数に優れたものとなる。
本実施系形態に係る金属管成形ロール1のロール本体2の基材は、質量%で、C:1.00〜2.30%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.20〜0.80%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:4.80〜13.00%、を含有し、残部が鉄及び不純物から成る鋼組成を有する鋼材からなる。この基材からなる金属管成形ロール1の少なくともロール凹部4の表面にCrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられる。ダイヤモンドライクカーボン膜においては、ラマン分光法により測定された波数1380cm−1における吸収強度I1380と、波数1540cm−1における吸収強度I1540との比I1380/I1540が、膜表面から膜厚の20%深さの範囲で0.5〜0.7となり、ダイヤモンドライクカーボン膜とCrN皮膜との界面から20%深さの範囲では比I1380/I1540が0.3〜0.5となっている。
以下に、本実施形態における金属管成形ロールについて詳しく説明する。
[基材の組成]
まず、本実施形態の金属管成形ロール1における基材成分組成に関し、各元素の限定理由について詳述する。
なお、以下の説明においては、特に指定の無い限り、「%」は質量%を表すものとする。また、以下に示す基本成分及び選択元素の残部は、鉄及び不可避的不純物からなる。
(C:炭素) 1.00〜2.30%
Cは、炭化物の形成および硬さの確保に必要な元素である。また、Cr、Mo、V等と結合して硬い炭化物を形成するので、焼入れ焼き戻し硬さを高め、耐摩耗性を構成させる元素として重要である。そのため、本実施形態ではCを1.00%以上含有させる。硬さの確保の観点から、1.4%以上含有させることが好ましい。
一方、C含有量が2.30%を超えると、靱性を著しく劣化させる。そこで、本実施形態では、C含有量は2.30%以下と限定する。なお、靭性確保の観点から、C含有量の上限は、2.20%であることが好ましく、2.00%以下であることがさらに好ましい。
(Si:ケイ素) 0.10〜0.60%
Siは、脱酸剤として含有される。また、Siは、高温焼戻し中の軟化抵抗性を高める作用があるため含有される。これらの観点から、Siは0.10%以上含有させる。一方、Si含有量が0.60%を超えると、熱間加工性や靱性を低下させるほか、非金属介在物が増加するおそれがある。そのため、Si含有量は0.60%以下とする。なお、靭性確保の観点から、Si含有量の上限は0.50%であることが好ましい。
(Mn:マンガン) 0.20〜0.80%
Mnは、Siと同様に脱酸効果のある元素であり、焼入れ性を向上させると同時に、残留オーステナイトを増加させる元素である。この観点から、Mnは0.20%以上含有させる。なお、硬度確保の観点から、0.30以上含有させることが好ましい。なお、靭性とのバランスを考慮し、本実施形態ではMn量の上限を0.8%とする。好ましくは、0.6%以下である。
(P:リン) 0.030%以下
(S:硫黄) 0.030%以下
P,Sともに、鋼中に存在しない方が好ましい不純物元素である。このことから、P,Sともに、その含有量を0.030%以下に制限する。なお好ましくは、0.020%以下に制限する。
(Cr:クロム) 4.80〜13.00%
CrはCと結合して、結合して炭化物を形成することにより、耐摩耗性を向上させる需要な元素である。また、本実施形態では金属管成形ロール1の基材上にCrN皮膜(硬質皮膜)を形成することから、当該CrN皮膜との密着性を確保する上でも非常に重要である。これらの観点から、Cr量は4.80%以上とし、好ましくは8.00%以上、さらに好ましくは11.00%以上とする。
一方、Crを過剰に添加すると、粗大な炭化物の生成によって靭性が劣化するおそれがあるので、Cr量の上限を13.00%とする。なお、好ましくは12.50%以下である。
なお、本実施形態では、上記成分組成にさらに、Mo:0.70〜1.20%及びV:0.15〜1.00%、を含有させてもよい。
(Mo:モリブデン) 0.70〜1.20%
Moは、焼戻し軟化抵抗性を向上させるとともに、炭化物の形成により耐摩耗性を付与する効果も有する。これらの観点から、Moは0.70%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.80%以上である。
一方、Moを過剰に添加すると靱性を劣化させるおそれがある。このことから、Moは1.20%以下含有させることが好ましく、より好ましくは1.10%以下である。
(V:バナジウム) 0.15〜1.00%
Vは、基材の焼入れ性向上、焼戻し軟化抑制さらには炭化物の微細化に有効である。そのため、Vは0.15%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.20%以上である。
一方、Vを過剰に添加すると、冷間加工性を阻害するおそれがあるため、Vは1.00%以下含有させることが好ましく、より好ましくは0.50%以下である。
また、本実施形態では、上記成分組成にさらに、W:0.60〜0.80%を含有させてもよい。
(W:タングステン) 0.60〜0.80%
Wは、Vと同様に、基材の焼入れ性向上、焼戻し軟化抑制さらには炭化物の微細化に有効である。そのため、Wは0.6%以上含有させることが好ましい。一方、Wを過剰に添加すると、冷間加工性を阻害するおそれがあるため、Wは0.80%以下含有させることが好ましい。
本実施形態においては、上記した元素以外の残部は実質的にFeからなり、不純物をはじめ、本発明の作用効果を害さない元素を微量に添加することができる。
なお、本実施形態の金属管成形ロール1においては、基材の材質として上記成分組成を有するものを用いるが、その中でも、より安価でかつ耐摩耗性と耐凝着性をバランスよく確保する観点から、JIS G 4404にて規定されている、SKD1,SKD2,SKD10,SKD11もしくはSKD12(いずれも上記成分組成範囲内)を用いることが好ましく、これらの中でも特に、SKD11を用いることがより好ましい。
[CrN皮膜(硬質皮膜)]
上記成分組成を有するような基材の硬度は、ビッカース硬さで約500〜600程度である。つまり、上記基材上に皮膜等を形成せず、基材ままの状態で金属管10を成形した場合、基材自体の硬度は確保できていることから耐摩耗性に関しては比較的良好な結果が得られるが、耐凝着性に関しては、金属管の材料が基材に焼付いてしまう場合があり、金属管成形ロール1に多数の疵が生じてしまうおそれがある。
そのため、本実施形態では、基材表面にCrN皮膜を形成することが重要であることを見出した。基材表面上にCrN皮膜を形成することにより、金属管10と金属管成形ロール1との密着性を確保でき、耐凝着性を向上させることができる。
CrN皮膜の厚さは特に限定しないが、0.5μm〜5μmとすることができる。CrN皮膜を薄くしすぎると、皮膜形成時にムラが生じ、耐凝着性が不十分となるおそれがある。また、CrN皮膜を過度に厚くすると、硬度は向上する一方で、皮膜にき裂(クラック)が生じやすくなり、脆くなるおそれがあるほか、経済的観点から製造コストが高くなり好ましくない。これらのことから、CrN皮膜の厚さは0.5μm〜5μmとすることが好ましい。
CrN皮膜の成膜方法に関しては特に限定しないが、基材との密着性を確保でき、更に成膜した皮膜の硬度を向上させうることから、PVD法(物理蒸着法)を用いることが好ましい。他の蒸着法(例えばCVD法)によっても本実施形態に係るCrN皮膜は形成できるが、硬度が不十分であったり、CrN皮膜の膜厚が過度に厚くなったりするおそれがあるため、CrN皮膜の成膜法としてはPVD法を用いることが好ましい。
また、CrN皮膜のビッカース硬さは800〜2000の範囲内とすることが好ましい。
CrN皮膜の硬度は、金属管成形ロール1の耐摩耗性を向上させる観点から、高硬度とすることが好ましい。したがって、本実施形態では、CrN皮膜のビッカース硬さを800以上とすることが好ましく、1500以上とすることがより好ましい。
一方、CrN皮膜の硬度の過度な上昇は、クラックの発生を招くおそれがあることから、CrN皮膜のビッカース硬さは2000以下とすることが好ましい。
なお、CrN皮膜は単層構造でもよく、2層以上積層する複層構造でもよい。しかし、上述したように、CrN皮膜の膜厚が厚くなりすぎるとクラックが生じるおそれがあるほか、複層構造とすることで、生産性の低下、製造コストの上昇を招くことから、CrN皮膜は単層構造とすることが好ましい。
[ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)]
金属管成形ロール1のうち、金属管10を搬送方向へ引張る役割の駆動ロールは、無駆動ロールよりも使用環境・使用条件が過酷であることから、耐摩耗性や耐凝着性は勿論のこと、耐剥離性、ならびにロール凹部4の表面の優れた低摩擦性がより求められる。
本実施形態では、CrN皮膜上に、sp混成軌道の炭素(sp構造)とsp混成軌道の炭素(sp構造)からなる高硬度なダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)を成膜する。
しかし、CrN層上に高硬度なDLC膜を成膜しただけでは、CrN層とDLC膜との間(界面)では硬度格差(強度の不連続性)が生じ、CrN層とDLC膜との界面において応力が集中しやすくなる結果、CrN層とDLC膜との密着性が十分に確保できなくなり、金属管10の成形中にDLC膜が剥離するおそれがある。
そのため、CrN層とDLC膜との間における硬度の格差を緩和させるようDLC膜の膜厚方向の硬度分布(硬度傾斜)を制御することが重要である。
具体的には、ダイヤモンドライクカーボン膜において、ラマン分光法におり測定された波数1380cm−1における吸収強度I1380と、波数1540cm−1における吸収強度I1540との比I1380/I1540を、膜表面から膜厚の20%深さの領域(上層領域)で0.5〜0.7、DLC膜とCrN皮膜との界面から20%深さの領域(下層領域)で0.3〜0.5となるよう制御し、膜表面からCrN皮膜側に向かってsp構造の割合が減少(硬度が減少)するような硬度傾斜を付与する。
なお、前述のとおり、I1380とはラマン分光法におり測定された波数1380cm−1における吸収強度、いわゆる「Dバンド」であり、他方のI1540とはラマン分光法におり測定された波数1540cm−1における吸収強度、いわゆる「Gバンド」であり、I1380/I1540(D/G)を算出することでsp構造性の目安とすることができる。
ダイヤモンドライクカーボンは、sp混成軌道(ダイヤモンド構造)の炭素の割合が比較的多いものと、sp混成軌道(グラファイト構造)の炭素の割合が比較的多いものが混在したものである。つまりsp構造が多くなるとダイヤモンド寄りの性質(高硬度)となり、sp構造が多くなるとグラファイト寄りの性質(軟質)となる。
したがって、CrN皮膜側の下層領域は軟質、膜表面側である上層領域は硬質なものとなるよう、DLC膜におけるsp構造とsp構造の割合を制御することで、DLC膜の膜厚方向における硬度の傾斜をつけ、CrN層とDLC膜との間における硬度格差を緩和させることができる。
上述したようにCrN層のビッカース硬度は800〜2000程度であるので、DLC膜の下層領域はビッカース硬度で2500〜3000程度、上層領域は3000〜3500程度とすることが望ましい。
このように、DLC膜の上層領域をsp構造の割合を高めた硬質なものとすることで、金属管10に対し優れた耐摩耗性を発揮できる上、この上層領域はsp混成軌道(グラファイト構造)の炭素も多少含んでいることから低摩擦性をも確保できる。一方で、DLC膜の下層領域をsp構造の割合を抑えた軟質なものとすることで、CrN層との硬度格差を緩和でき、耐剥離性を確保できる。
さらに、DLC膜はチタンとの親和性が低いことから、耐凝着性も良好なものとできる。
なお、I1380/I1540は、ラマン分光分析法によって測定できる。ラマン分光分析法は、試料表面にレーザー光等を照射し、それによって発せられるラマン散乱光を分光し、入射光とラマン散乱光との波長の差から試料表面の分子の構造および結合状態を明らかにする手法である。
DLC膜の膜厚については特に限定せず、0.5μm〜2.0μmの範囲内とすることが望ましいが、製法やその条件、金属管成形ロール1の使用環境等により適宜決定してよい。
本実施形態に係るDLC膜は、プラズマCVD法によって成膜できる。
DLC膜におけるsp構造とsp構造の割合を上記のように制御するためには、プラズマCVD法の各条件(成膜条件)を調整すればよい。具体的には、反応ガスの種類や割合、基板温度、陰極電圧、真空度等を適宜調整することで、DLC膜におけるsp構造とsp構造の割合を調整できる。つまり、DLC膜の膜厚方向に上記のような硬度傾斜が付与されるのであれば、成膜条件を適宜調整しながら成膜してもよく、成膜開始から一定の条件の下で成膜してもよい。
反応ガスはCHとHの混合ガス、あるいはCHガスのみとすることができる。反応ガスとして混合ガスを用いる場合は、各ガスの流量を調整することでsp構造とsp構造の割合を調整でき、CHガスのみを用いる場合は他の各条件を調整すればよい。
また、本実施形態におけるDLC膜は、sp構造とsp構造を所望の割合とすることが重要であるため、膜中にH(水素)が多量に混入することは好ましくない。そのため、反応ガスとしてHは適当な量に抑えるほうがよい。
以上述べた成膜条件は、用いるプラズマCVD装置の種類、スペック等に影響されるため、生成させているDLC膜のラマンピークを調べながらsp構造とsp構造の割合を調整すればよい。
また、基材上にCrN皮膜を成膜し、DLC膜を成膜するまでの間、CrN皮膜表面は大気に曝され汚れが付着しやすい環境下にある。そのため本実施形態では、DLC膜を成膜する前にCrN皮膜表面に対しプラズマクリーニングを施し、表面の汚れを分解・除去した上でDLC膜を成膜することが望ましい。これにより、CrN皮膜とDLC膜との密着性をより向上させることができる。
[窒化層]
本実施形態に係る金属管成形ロール1は、基材上にCrN皮膜を成膜し、さらにその上に高硬度なダイヤモンドカーボン膜を成膜することで、金属管成形ロール1の耐摩耗性、耐凝着性、低摩擦性を確保する。しかしながら、高硬度のCrN層と比較的軟質な基材との間(界面)では硬度格差(強度の不連続性)が生じ、CrN層と基材との界面において応力が集中しやすくなる結果、CrN皮膜の厚みによってはCrN皮膜と基材との密着性が十分に確保できない場合がある。
そこで、本発明者らが検討した結果、高硬度なCrN皮膜と、比較的軟質な基材との間に、CrN皮膜と基材とを連結させうる別の層を設けることで、硬度格差を緩和させることができ、CrN皮膜と基材との密着性、及び金属管成形ロール1の強度を両立させうることを知見した。
また、一般的に、最大せん断応力は最表面ではなく表面直下(表層)で最大となる「ヘルツの接触応力」の観点からも、金属管成形ロール1の表面直下、すなわちCrN層と基材との間にも高硬度の層をさらに設け、金属管成形ロール1の耐摩耗性を確保することが好ましい。
以上のことから、基材とCrN層との間に、基材表層をプラズマ窒化処理することによって得られる窒化層を設けることが好ましい。このように、基材の表層に窒化層を形成することで、CrN皮膜と基材との間の硬度差を緩和することができ、応力の集中を抑制することができる。その結果、CrN層と基材との密着性、ならびに強度を向上させることができ、CrN層の剥離を低減し、耐凝着性を向上させることが可能となる。
窒化層の厚さは特に限定しないが、本実施形態では、0.5μm〜5μmとすることができる。
高硬度のCrN層と比較的軟質な基材との間における強度の差を低減するためには、窒化層の厚みを0.5μm以上確保することが好ましい。より好ましくは1μm以上である。一方、窒化層の厚みを過度に厚くしすぎることは、プラズマ窒化処理に要する時間が長くなり生産性を低下させるほか、製造コストも高くなる。また、窒化層の厚みを過度に厚くすると、基材の表面粗度が大きくなってしまい、CrN皮膜成膜前に基材表面を研磨する必要がでてくる。これらの観点から、窒化層の厚みは5μm以下とすることが好ましい。
窒化層中の平均窒素濃度は、10.0〜25.0質量%とすることが好ましい。
窒化層中の窒素濃度が低すぎると、強度向上の効果が小さく、十分な耐摩耗性が得られないおそれがあるため、窒化層中の平均窒素濃度は10.0質量%以上とすることが好ましい。より好ましくは、12.0%以上である。
一方、窒化層中の窒素濃度が高すぎると、窒化層表面が脆化する傾向となりやすく、割れが生じるおそれがある。このことから、窒化層中の平均窒素濃度は25.0質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは、23.0%以下である。
また、窒化層における窒素の濃度分布が、窒化層表層から深さ方向に向かって減少するような濃度勾配を有することが好ましい。
上述したように、ロール内部で強度格差が生じることは、CrN層と基材との密着性、及び強度の観点から好ましくない。従って、CrN層、基材表層、基材内部それぞれの間の強度の格差、すなわちロール内部の深さ方向に沿った強度勾配は緩やかにすることが好ましい。そのためには、CrN層と基材との間に形成する窒化層内の窒素の濃度分布を、窒化層表層から基材側に向かって減少するような濃度勾配となるよう制御することが好ましい。
なお、窒素の濃度分布を、窒化層表層から深さ方向に向かって減少する勾配となるよう制御するためには、窒化層を形成するための基材表層に対するプラズマ窒化処理を複数回に分け、かつ、各回の処理を異なる条件で行うことにより、窒化層内における窒素の濃度分布を調整すればよい。
なお、「窒化層」の判別(基材と「窒化層」との境界の判定)は、グロー放電発光分析装置(GDS)によって行うことができる。具体的には、まず、上記プラズマ窒化処理によって窒化させた基材表層において、分析領域を直径1mmとし、通常のグロー放電発光分析を行う。引き続き、深さ方向に分析を進め、分析領域の窒素量が母材(基材)の平均窒素濃度を超えているところまでの領域を「窒化層」とする。つまり、グロー放電発光分析を深さ方向に行い、窒素量が基材の平均窒素濃度まで下がった地点を基材と「窒化層」との境界の判定することとする。
また、窒化層中の平均窒素濃度についても、GDSを用いて測定することができる。なお、本実施形態では、分析領域を直径1mmとし、GDSを用いて深さ方向に分析を行い、JIS K 0150に規定されているQDP(Quantitative Depth Profile)法を適用し、深さ50nmごとの窒素濃度を測定する。これにより、窒化層における窒素の濃度分布を得る事ができる。また、窒化層全体の平均窒素濃度は、深さ50nmごとの各窒素濃度の平均を算出することで求めることができる。
以上、本実施形態に係る金属管成形ロール1について説明したが、上記CrN皮膜を成膜する前(プラズマ窒化処理を施す前)、においては、ロール表面性状を良好なものとし、CrN皮膜の成膜性を確保するために、ロール(基材)表面を鏡面研磨することが望ましい。これにより、CrN皮膜と基材との密着性を向上させることができ、結果、優れた耐凝着性を得ることが可能となる。
なおさらに加えて、水または通常金属管の成形で用いられるエマルジョンまたはソリュブル油系潤滑剤を潤滑剤として用いれば、金属管10と金属管成形ロール1の間の摩擦が更に低減するので好ましい。潤滑性能及び製品に付着した潤滑剤の除去のし易さの観点から、水溶性切削油剤であるソリュブル油系潤滑剤が最も適している。
[金属管ロール及び金属管成形方法の第2の例]
次に、本発明の実施形態である金属管ロール及び金属管成形方法の第2の例について、図3〜8を参照して説明する。
図3及び図4には、本実施形態の第2の例である金属管成形ロール11を示す。図3及び図4に示す金属管成形ロール11は、所謂カリバーロールであり、鋼材からなるロール本体12と、ロール本体12に挿通された回転軸3とが備えられている。ロール本体12のロール面12aには、断面視半円状に成形されたロール凹部14がロール本体12の全周に渡って設けられている。また、ロール凹部14の表面には、CrN皮膜と、CrN皮膜上に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられている。
ロール本体12は、ロール中央部21と、ロール中央部21の両側に配置されてロール中央部21に対して回動自在とされた一対の回動フランジ部22と、一対の固定フランジ部23とが備えられている。ロール凹部14は、ロール中央部21と回動フランジ部22とによって分割されている。また、ロール中央部21と固定フランジ部25とは、固定ボルト26によって相互に固定されている。
ロール中央部21は、ロール本体12を駆動する回転軸3に固定されている。一方、回動フランジ部22は回転軸3及びロール中央部21に対して回動自在とされている。固定フランジ部25は固定ボルト26によってロール中央部21に固定されている。すなわち、固定フランジ部25は、ロール中央部21と一体になって回転軸3に固定されている。回転軸3が回転することでロール中央部21と固定フランジ部23とが回転する。一方、回動フランジ部22は、ロール中央部21及び固定フランジ部23に対して回動自在とされているため、ロール中央部21及び固定フランジ部23とは連動しない。以下、各部について詳細に説明する。
ロール中央部21は、回転軸3が挿通される円筒状の基部21aと、基部21aのロール幅方向中央から突出する突出部21bとからなる。基部21aには、回転軸3を挿通させるための挿通孔21cが設けられている。突出部21bの上面21dは、回転軸3側に向けて凹み、かつロール本体12の全周に渡って連続する丸溝状に成形されており、この上面21dがロール凹部14の一部を構成している。ロール中央部21は、第1の例で説明した鋼成分を有する基材から構成される。また、ロール中央部21の上面21dには、第1の例で説明したCrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられている。更に、ロール中央部21の突出部21bの側壁面21bにも、第1の例で説明したCrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられている。また、ロール中央部21の基部21aの外周面21aには、第1の例で説明したCrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが積層されていてもよく、積層されていなくてもよい。
次に、回動フランジ部22は、略リング状の部材であり、ロール中央部21の基部21aの外周側かつ突出部21bのロール幅方向両側に嵌められている。このように、回動フランジ部22は、基部21aの上にあって突出部21bのロール幅方向両側に配置される。また、回動フランジ部22の外周傾斜面22aは、断面視したときに凹んだ円弧面に成形されており、ロール中央部21の上面21dと連続する円弧面になっている。これにより、回動フランジ部22の外周傾斜面22aとロール中央部21の上面21dとによってロール凹部14が構成される。
また、回動フランジ部22を断面視してわかるように、回動フランジ部22の外周傾斜面22aを含む先端部22dは、突出部21bの先端に覆い被さるように屈曲している。これにより、回動フランジ部22が金属管10からの荷重を受けた際に、荷重を十分に受け止めることが可能になっている。
更に、ロール中央部21の突出部21bの側壁面21bと、回動フランジ部22の内側面22eとは、30μm未満の隙間を介して対向している。この隙間の存在により、回動フランジ部22はロール中央部21に対して擦れ合うことなく回動自在になっている。一方、ロール中央部21の基部21aの外周面21aと、回動フランジ部22の内周面22bとは、相互に摺動自在に接している。
更に、回動フランジ部22は、第1の例で説明した鋼成分を有する基材から構成される。また、回動フランジ部22の外周傾斜面22aには、第1の例で説明したCrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられている。更にまた、第1の例のCrN皮膜及びダイヤモンドライクカーボン膜は、外周傾斜面22aのみならず、回動フランジ部22の表面全面に備えられている。
ここで、ロール中央部21と回動フランジ部22とに着目すると、前述したように、ロール中央部21の突出部21bの側壁面21bと回動フランジ部22の内側面22eとが30μm未満の隙間を介して対向している。また、回動フランジ部22の全面と、ロール中央部21の側壁面21bにそれぞれ、第1の例で説明したCrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが積層されている。このように、ロール中央部21の側壁面21bと回動フランジ部22の内側面22eとがCrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜とを介して対向しているため、ロール中央部21と回動フランジ部22との間の摩擦が小さくなり、ロール中央部21と回動フランジ部22とが相互に円滑に摺動できるようになっている。
また、前出したように、ロール中央部21の外周面21aに、第1の例で説明したCrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜とを積層してもよい。この場合は、ロール中央部21の基部21aの外周面21aと回動フランジ部22の内周面22bとがCrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜を介して相互に対向するようになる。これにより、両方の面21a、22bが接しているにも関わらず、ロール中央部21と回動フランジ部22との間の摩擦が軽減されて更に円滑に摺動できるようになる。
次に、固定フランジ部23は、略円板状の部材であって、中央に回転軸3が挿通可能な挿通孔23aが設けられている部材である。固定フランジ部23は、ロール本体12のロール幅方向両側に配置されている。固定フランジ部23の回転軸寄りの部分は固定ボルト26によってロール中央部21の基部21aに固定されている。また、固定フランジ部23の外周寄りの部分は、回動フランジ部22のロール幅方向両側に位置しており、回動フランジ部22と対向している。
固定フランジ部23は、第1の例で説明した鋼成分を有する基材から構成される。また、固定フランジ部23のうち、回動フランジ部22と対向する対向面23bに、第1の例で説明したCrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが備えられている。
ここで、回動フランジ部22と固定フランジ部23とに着目すると、回動フランジ部22の外側面22cと固定フランジ部23の対向面23bとが相互に対向して接している。また、回動フランジ部22の全面に、第1の例で説明したCrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが積層されており、更に、固定フランジ部23の対向面23bにも第1の例で説明したCrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが積層されている。このように、回動フランジ部22の外側面22cと固定フランジ部23の対向面23bにそれぞれ、第1の例で説明したCrN皮膜及びダイヤモンドライクカーボン膜が配置されているので、両方の面22c、23bが相互に接しているにも関わらず、両者間の摩擦が小さくなり、回動フランジ部22と固定フランジ部23とが相互に円滑に摺動する。
なお、図4に示すように、本例の金属管成形ロール1は、固定ボルト26を取り外すことにより、ロール本体12を、ロール中央部21、回動フランジ部22、固定フランジ部23に分解可能となっている。
以上の構成により、金属管10を成形する際には、回転軸3の回転駆動によってロール中央部21及び固定フランジ部23を回転させる。この状態で金属管10を一対の金属管ロール1の間に挿通させると、ロール中央部21の上面21dが金属管10に接触して金属管10に回転軸3の回転トルクを伝達する。一方、回動フランジ部22の外周傾斜面22aにも金属管10が接触するが、回動フランジ部22は金属管10の動きに合わせて金属管10によって回動させられる。このとき、外周傾斜面22aの周速度はロール中央部の上面21dの周速度より小さくなるため、回動フランジ部22の回転速度はロール中央部21の回転速度よりも小さくなる。回動フランジ部22は、ロール中央部21及び固定フランジ部23に対して回動自在とされており、また、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間には30μm未満の隙間があるため、回動フランジ部22は、ロール中央部21の回転速度よりも小さな回転速度で回動する。これにより、金属管10に対するロールの滑り率が全体的に小さくなり、金属管10における疵の発生が抑制される。
また、一対の金属管成形ロール1の間に金属管10が挿入されて、ロール凹部14に金属管10が侵入すると、回動フランジ部22がロール幅方向外側に僅かに押されて固定フランジ部23に押しつけられる一方で、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間には30μm未満の隙間が確保される。これにより、回動フランジ部22と突出部21bとが擦れ合うことなく回動フランジ部22が円滑に回転する。
更に、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間には隙間が生じるが、隙間の幅は30μmを超えることはないので、ロール中央部21に対する回動フランジ部22のがたつきが極めて小さくなる。これにより、回動フランジ部22とロール中央部21とによって構成される断面視半円状のロール凹部14は、金属管10が成形される間、その真円度が高いまま維持される。
また、回動フランジ部22の内周面22bに、CrN皮膜及びダイヤモンドライクカーボン膜が配置されているので、回動フランジ部22の内周面22bとロール中央部21の外周面21aとの摩擦が小さくなり、回動フランジ部22をより円滑に回動させることができる。更に、ロール中央部21の外周面21aにCrN皮膜及びダイヤモンドライクカーボン膜を配置した場合は、摩擦低減効果が更に向上できる。
また、回動フランジ部22の外側面22cに、CrN皮膜及びダイヤモンドライクカーボン膜が配置されているので、回動フランジ部22の外側面22cと固定フランジ部23の対向面23との摩擦が小さくなり、回動フランジ部22と固定フランジ部23とが相互に円滑に摺動し、回動フランジ部22を円滑に回動させることができる。更に、固定フランジ部23の対向面23にCrN皮膜及びダイヤモンドライクカーボン膜を配置した場合は、摩擦低減効果が更に向上できる。
なお、CrN膜とDLC膜の形成箇所は、上述した箇所に限られるものではなく、少なくともCrN膜とDLC膜とがロール凹部14の全面と回動フランジ部22の表面全面とに形成されていれば、ロール中央部21及び固定フランジ部23との摩擦が軽減されて回動フランジ部22を円滑に回動させることができ、金属管10の疵発生を抑制できるとともに、回動フランジ部22の焼き付きが防止される。
次に、ロール中央部21の突出部21bの幅の好適範囲とロールの滑り率について、図5及び図6により説明する。
図5に示すように、ロール中央部21の突出部21bの上面21dの幅Wは、ワークとなる金属管の外径をDとしたとき、0.7D〜0.87Dの範囲であることが好ましい。ここで、図5に示すように、ロール中央部21の上面21dと回動フランジ部22の外周傾斜面22aとの境界位置をAとし、金属管10の中心軸Oから境界位置Aに向かう方向と水平方向とのなす角度をθとしたとき、幅Wが0.7Dの場合の境界位置Aはθ=45°の位置となり、また、幅Wが0.87Dの場合の境界位置Aはθ=30°の位置となる。すなわち、本実施形態では、角度θが30〜45°の範囲になるように境界位置Aを設定するとよい。この理由を以下に説明する。
図6(a)は非分割型の駆動ロールにおける滑り率を説明する模式図である。駆動ロールの場合、金属管10に対して最も効率よく回転トルクを伝達できるピンチ位置は、ロール凹部4の最底部になる。そこで、ロール凹部14の最底部におけるロール径をRdとし、ピンチ位置におけるロール径をRpとし、ロールのフランジ部上面におけるロール径をRfとすると、フランジ部上面近傍における金属管に対する滑り率は以下の通りとなる。
(フランジ部)滑り率=(Rf−Rp)/Rp …(1)
例えば金属管の外径Dを25mmとし、Rd=50mm、Rf=62.25mmとした場合、RpはRdにほぼ一致するから(Rp=Rd=50mm)、駆動ロールにおける滑り率は0.245になる。
次に、図6(b)は非分割型の無駆動ロールにおける滑り率を説明する模式図である。無駆動ロールの場合のピンチ位置は、ロール凹部4の最底部と、フランジ部の上面との間の中間になる。この場合のフランジ部の上面近傍における金属管に対する滑り率は、例えば金属管の外径Dを25mmとし、Rd=50mm、Rf=62.25mm、Rp=56.125mmとなるから、これらを上記式(1)に導入すると、無駆動ロールにおける滑り率は0.109になる。
図6(a)と図6(b)との対比から明らかなように、駆動ロールは無駆動ロールに比べて滑り率が大きく、金属管10に疵が発生しやすく、ロール自体も摩耗しやすい。
次に、図6(c)に示すように、本実施形態の分割型の駆動ロールについて検討する。本実施形態の金属管成形ロール11においては、ロール中央部21が駆動ロールとして機能し、回動フランジ部22が無駆動ロールとして機能する。そうすると、Rf、Rp及びRdは図6(c)に図示した通りになる。
ここで、図5に示すように境界位置Aがθ=30°の位置にある場合、ロール中央部21における滑り率は0.1225となり、回動フランジ部22における滑り率は0.0517となり、いずれも図6(b)における非分割型の無駆動ロールの滑り率(0.125)よりも小さくなる。しかしながら、角度θが30°未満になると、非分割型の無駆動ロールの滑り率(0.125)よりも滑り率が大きくなってしまう。
また、図5に示すように境界位置Aがθ=45°の位置にある場合は、ロール中央部21における滑り率は0.073となり、回動フランジ部22における滑り率は0.076となり、いずれも図6(b)における非分割型の無駆動ロールの滑り率(0.125)よりも大幅に小さくなる。しかしながら、角度θが45°を超えると、回動フランジ部22の外周傾斜面22aの幅が小さくなりすぎ、金属管10の荷重を十分に受け止めきれなくなり、回動フランジ部22が破損するおそれがある。
以上のことから、図5に示す角度θは30〜45°の範囲が好ましい。これをロール中央部21の突出部21bの上面21dの幅Wで表すと、ワークとなる金属管10の外径をDとしたときに、幅Wは0.7D〜0.87Dの範囲となる。この範囲であれば、金属管10に疵を生じさせることなく成形が可能になり、かつ、回動フランジ部22の破損も防止される。
以上説明したように、本実施形態の第2の例の金属管成形ロール11によれば、ロール本体12が、ロール中央部21と、ロール中央部21の両側に配置されてロール中央部21に対して回動自在とされた一対の回動フランジ部22とからなり、ロール凹部14が、ロール中央部21と回動フランジ部22とによって分割されているので、回動フランジ部22と金属管10とが互いに滑りにくくなり、これにより、金属管10に疵が発生しにくくなり、また、回動フランジ部22に形成したCrN膜及びDLC膜が剥がれにくくなる。このように本例の金属管成形ロール1によれば、耐摩耗性、耐凝着性、耐剥離性が向上し、ロール表面の摩擦係数を小さくできる。
また、ロール中央部21がロール本体12を駆動する回転軸3に固定される一方で、回動フランジ部22が回転軸3及びロール中央部21に対して回動自在とされているので、回転軸3が駆動軸となる場合にはロール中央部21が駆動ロールとなり、回動フランジ部22が無駆動ロールとなり、無駆動ロールとなる回動フランジ部22における滑り率が小さくなるので、金属管10における疵発生を防止し、また、回動フランジ部22に形成したCrN膜及びDLC膜の剥がれを抑制できる。これにより、金属管成形ロール1の耐久性を向上でき、メンテナンスの頻度を低減できる。
また、ワークとなる金属管10の外径をDとしたとき、ロール中央部21におけるロール凹部14の幅を0.7D〜0.87Dの範囲とすることで、金属管10に対する滑り率を低減し、かつ、回動フランジ部22の破損を防止できる。
更に、回動フランジ部22の全面にCrN膜及びDLC膜が積層されるとともに、この回動フランジ部22と対応するロール中央部21及び固定フランジ部23の面にもCrN膜及びDLC膜が積層されるため、ロール中央部21及び固定フランジ部23と回動フランジ部22との間で焼き付きが発生するおそれがなく、回動フランジ部22を円滑に回動させることができる。
また、ロール凹部14に金属管10が侵入した際に回動フランジ部22がロール幅方向外側に僅かに押され、回動フランジ部22と突出部21bとの間に隙間が生じた場合でも、隙間の大きさが30μm未満になるため、金属管が成形される間のロール凹部14の真円度が高いまま維持され、真円度の高い金属管を成形できる。
また、回動フランジ部22を円滑に回動させるための軸受などが不要になるので、ロール本体12を小さくして設備のコンパクト化が図れる。
更に、ロール本体12には、固定フランジ部23が備えられており、固定フランジ部23によってロール中央部21からの回動フランジ部22の脱落を防止しつつ、回動フランジ部22を円滑に回動させることができる。
更に、図4に示したように、本例の金属管成形ロール1は、固定ボルト26を取り外すことで、ロール本体12を、ロール中央部21、回動フランジ部22及び固定フランジ部23に分解可能となっているため、保守作業を容易に行うことができる。例えば、回動フランジ部22のみが摩耗してCrN膜及びDLC膜が剥がれた場合は、予備の回動フランジ部22に交換することで、直ちに使用可能な状態になり、金属管の成形加工を継続することができる。また、取り外した回動フランジ部22については、補修が必要な箇所にCrN膜及びDLC膜を形成するだけで、再利用可能な状態にすることができる。
なおさらに加えて、水または通常金属管の成形で用いられるエマルジョンまたはソリュブル油系潤滑剤を潤滑剤として用いれば、金属管10と金属管成形ロール11の間の摩擦が更に低減するので好ましい。また、エマルジョンまたはソリュブル油系潤滑剤を潤滑剤として用いることで、ロール中央部21と、ロール中央部21の両側に配置されてロール中央部21に対して回動自在とされた一対の回動フランジ部22との間の摩擦もさらに低減されるので好ましい。なお、潤滑剤を用いる場合は、潤滑性能及び製品に付着した潤滑剤の除去のし易さの観点から、水溶性切削油剤であるソリュブル油系潤滑剤が最も適している。
以上、第2の例の金属管成形ロール11について説明したが、本例では、図7または図8に示す変形例を採用してもよい。
図7に示す変形例では、ロール本体12を断面視した際に、回動フランジ部22と突出部21bとの境界面がロール本体12の外周方向に向けて真っ直ぐに伸びている。図7の例によれば、回動フランジ部22及び突出部21bの形状を図3の場合よりも比較的単純な形状にすることができ、がたつきが起きにくくなり、金属管10の成形精度を高めることができる。この図7の例では、金属管10から受ける荷重が比較的小さい場合に適用できる。
また、図8に示す変形例では、ロール本体12を断面視した際に、回動フランジ部22の先端部22dが、ほぼ真横に屈曲している。図8の例においても、回動フランジ部22及び突出部21bの形状を図3の場合よりも比較的単純な形状にすることができ、がたつきが起きにくくなり、金属管10の成形精度を高めることができる。図8の例についても、金属管10から受ける荷重が比較的小さい場合に適用できる。
[金属管ロール及び金属管成形方法の第3の例]
次に、本発明の実施形態である金属管ロール及び金属管成形方法の第3の例について、図9を参照して説明する。図9に示す金属管成形ロール31と、図3〜図4に示す第2の例の金属管成形ロール11との違いは、回動フランジ部22を固定フランジ部23に固定するための機構が備えられた点であり、その他の点には違いがない。以下の説明では、回動フランジ部22を固定フランジ部23に固定する機構について説明する。
図9には、本実施形態の第3の例である金属管成形ロール31を示す。この金属管成形ロール31には、固定フランジ部23に、回動フランジ部22を引き寄せて固定する引きねじ部32が設けられている。引きねじ部32は例えば、固定フランジ部23の3箇所に備えられている。引きねじ部32は、着脱ボルト32aと、この着脱ボルト32aが挿入されるねじ穴32bとから構成されている。ねじ穴32bは、固定フランジ部23及び回動フランジ部22にそれぞれ設けられている。
金属管10を成形する際には、着脱ボルト32aを取り外して、回動フランジ部22を固定フランジ部23及びロール中央部21に対して回動自在な状態にする。
一方、金属管成形ロール31のロール凹部14を補修する際には、着脱ボルト32aをねじ穴32bに挿入してねじ締めする。これにより回動フランジ部22は、固定フランジ部23側に引き寄せられて固定フランジ部23と密着する一方で、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間には30μm未満の隙間が生じる。この状態は、金属管10を成形加工中に回動フランジ部32が固定フランジ部23側に押された状態とほぼ同じになる。そして、回動フランジ部22と固定フランジ部23とが密着した状態で、ロール凹部14の補修を行う。補修内容として具体的には、ロール凹部14が部分的に摩耗して真円度が低下した場合に、真円度を回復させるようにロール凹部14の内面を研磨加工する。すなわち、回動フランジ部22を固定フランジ部23側に引き寄せて金属管10を成形加工する場合と同じ状態にして、補修を行う。
以上説明したように、本例の金属管成形ロール31には、回動フランジ部22と固定フランジ部23とを密着した状態で固定する引きねじ部32が備えられており、ロール凹部14を補修する際に、回動フランジ部22を、金属管10を成形加工する場合と同じ状態することができるので、補修後のロール凹部の真円度を高めることができる。
[金属管成形方法および装置]
本実施形態に係る金属管成形装置は、図1、図3または図9に示す金属管成形ロール1、11、31のいずれかを備えるとともに、金属管成形ロール1、11、31の一部分に対し、金属管成形中に潤滑剤を供給する潤滑ノズルを備える。なお、潤滑剤の使用及びここで示す潤滑ノズルの使用は望ましいが、必要に応じて、潤滑剤を使用するか否か、及び潤滑ノズルの使用をするか否か、適宜選択して良い。また、潤滑剤を使用する場合、潤滑剤を布に浸して塗布する、潤滑剤をスプレーで吹き付ける等の他の方法でも良い。
一般的に、実際に金属管を造管するに際し、金属管溶接後の定型工程では、パイプ疵の防止および冷却のために水溶性の潤滑剤が用いられることが多い。
そこで、本実施形態に係る金属管成形ロールの更なる寿命の向上およびロール表面のロールマーク・疵を防止するためにも、本実施形態に係る金属管成形装置においては、金属管成形ロールに対して潤滑剤を供給する潤滑ノズルを備えることが好ましい。
以下、潤滑ノズルを備えた金属管成形装置の一例について図面を用いて説明するが、尚、以下に示す図面は、金属管成形装置の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の加熱炉の寸法関係等とは異なる場合がある。
図10は、本実施形態に係る金属管成形装置を示す図であって、(a)は正面概略図であり、(b)は潤滑ノズル101の近傍の構成を示す側面図であり、(c)は潤滑ノズル101の近傍の構成を示す断面図である。図11は、潤滑ノズル101の配置例を説明するための図であって、(a)は正面模式図であり、(b)は側面模式図である。図12は、潤滑ノズル101の幅方向調整機構、上下方向調整機構を詳細に説明するための図であって、(a)は金属管成形装置の上面概略図であり、(b)は側面概略図である。
金属管10は、上下に対向するように配置された金属管成形ロール1,11、31により成形されながら搬送される。
このとき、成形ロール1、11、31と金属管10が接するロールフランジ部(孔型の終端のロール平行部)近傍では、他の部位よりも摩擦による摩耗、疵の発生が起こりやすくなっている。そのため、金属管10を成形するに際し、潤滑剤は、ロールフランジ部近傍に滴下することが必要である。
しかしながら、ロールフランジ部は、金属管成形ロール1,11、31の径の変更等によってその都度その位置が変わる。そのため、潤滑剤を滴下するための潤滑ノズル101の位置もその都度調整しなければならない。したがって本実施形態においては、潤滑剤を滴下するための潤滑ノズル101を配置する際は、潤滑剤の滴下位置を幅方向および上下方向に調整できるような拡縮機構を設けることが好ましい。
本実施形態に係る潤滑ノズル101を幅方向に拡縮する機構について説明する。
図10に示すように、幅移動溝(長溝)118が設けられたパイプ状の水平移動ガイド103が成形ロール1、11、31の前方に配置されており、この水平移動ガイド103上には、幅移動溝118内に嵌め込まれた幅移動ガイド119を介して、潤滑ノズル固定台102ならびに潤滑ノズル固定台102上に載置された潤滑ノズル101が設けられている。スライド可能に設けてある潤滑ノズル角度調整冶具109に接続した幅移動用ガイド部品115が、幅調整用ねじ(中心から左・右をそれぞれ正・逆ねじとし、調整ねじを回転させるとその左・右のガイド部115が対称的に反対方向に移動する)114(図12参照)により幅方向に拡縮する機構を有している。
また、潤滑ノズル101を上下方向に拡縮する機構としては、成形スタンド支柱117に固定されたあり型台座107と、あり型台座107に対して上下方向にスライド可能に設けられた中心位置調整冶具106と、中心位置調整冶具106に差し込まれた上下移動ねじ116とにて潤滑ノズル101の上下位置を調整する。中心位置調整冶具106は水平移動ガイド103とも連結しているため、あり型台座107上をこの中心位置調整冶具106が上下方向に移動すると、水平移動ガイド103、すなわち潤滑ノズル101も同じように上下方向に移動することとなる。
なお、上下移動ねじ116は上下位置調整ハンドル104と連結しており、この上下位置調整ハンドル104を回すことで、中心位置調整冶具106の上下方向の移動を制御でき、ロールフランジ部に合わせた潤滑ノズル101の上下方向の調整が可能となっている。
また、金属管成形ロール1、21、31の径の変動による金属管10との接触を考慮した潤滑ノズル101の位置合わせのための角度調整は、潤滑ノズル挟み込み冶具(潤滑ノズル前後調整冶具)113と潤滑ノズル角度調整冶具109を潤滑ノズル角度固定ねじ112にて回転させることで調整が可能である。
潤滑ノズル101が前後する機構は潤滑ノズル挟み込み冶具(潤滑ノズル前後調整冶具)113を有する装置にて、潤滑ノズル角度固定ねじ112によって調整ができる。
これらの機構により金属管成形ロール1、21、31と金属管10が接するロールフランジ部近傍に潤滑剤が滴下をすることができる。
ここで、潤滑剤としては、潤滑性能及び製品に付着した潤滑剤の除去のし易さの観点から、水溶性切削油剤であるソリュブル油系潤滑剤が最も適している。
潤滑ノズル101は、金属管サイズ(ロールフランジ幅)に応じて適宜、ロールフランジ部に対応するようその配置位置を調節する必要がある。また、ロール潤滑の状況により金属管成形ロール1、21、31のうち上部ロールへはロールの上からの滴下も必要となる。
図11は潤滑ノズル101の配置例を説明するための正面模式図であるが、上述にて説明したような、金属管成装置には潤滑ノズル101の前後・上下ならびに左右の調整機構が備えられているので、金属管成形ロール1、21、31のフランジ幅の大小に合わせて、潤滑ノズル101の位置を所望の位置へ適宜変更できる。
図12を用いて、潤滑ノズル101の幅方向調整機構、上下方向調整機構を詳細に説明する。
なお、潤滑ノズル101の各方向調整機構を説明しやすくするため、図12中において、一部の部材については記載を省略している。
パイプ状の水平移動ガイド103内の略中央部分には、正逆反転する2つの幅調整用ねじ114(左、右ねじ)が配置されている。そしてこの幅調整用ねじ114は、水平移動ガイド103内に敷設された左右位置調整ハンドル105と連結しており、左右位置調整ハンドル105を回すことで水平移動ガイド103を水平方向に移動させることができ、結果、ロールフランジ部に合わせた潤滑ノズル101の幅方向拡縮が調整できる。
また、幅調整用ねじ114を中心に移動すること、ならびにあり型台座107に設けられた中心位置調整冶具106を調整することで、金属管成形ロール1、21、31の中央位置を合わせることができる。
また、図12の側面図に示すように、潤滑ノズル101の前後調整、拡縮移動位置調整により、自在に潤滑剤の滴下位置を変えることができ、金属管10と金属管成形ロール1、21、31との接触部への潤滑剤の滴下位置の調整が可能となっている。
なお、あり型台座107はスタンド支柱取付冶具108を介して成形スタンド支柱117に固定されているが、成形スタンド支柱117にスタンド支柱取付冶具108を固定する際は、スタンド固定ねじ120により容易に装着できるような片持ち形式となっている。
図13に、潤滑ノズル101を用いて潤滑剤を微量滴下するためのローラーポンプ(潤滑剤供給装置)の構造を示す図である。
潤滑剤は、原液と同等な濃い潤滑剤をロールに微量添付するため、チューブポンプといわれるチューブ132を、中心軸131を中心に自公転するローラー130で押しつぶしながら搬送する。
潤滑方法としては、内径3mm以下のチューブ132を用いて、滴下速度が20ml/hr以下の汚染のないチューブ(ローラー)ポンプを用いた微量滴下する方法となっている。
ここで、潤滑ノズル101としては、内径0.5mm以上3mm以下のチューブを用いるのが、潤滑剤を適量供給する上で適切である。
さらに、該潤滑剤を1ml/hr以上20ml/hr以下の滴下速度で微量滴下して該潤滑剤を供給することが適している。
該潤滑剤の供給速度が1ml/hr未満では、潤滑剤としての機能を十分に発揮できず、一方、その供給速度が20ml/hrを超えると潤滑剤としての機能は飽和し、むしろ金属管成形ロール1、21、31の空転を招き、金属管成形に支障が出たり、最終製品から除去すべき潤滑剤が多量となり、製造コストが嵩むことになる。
以上説明したような、本発明に係る金属管成形ロールによれば、基材上に、CrN皮膜ならびにダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)を形成するため、耐摩耗性及び耐凝着性を向上させることができる。またDLC膜において、DLC膜の膜厚方向に硬度の傾斜をつけることで、CrN層とDLC膜との間における硬度の格差を緩和させることができる。その結果、DLC膜の上層領域は、硬質なものとすることで、金属管に対し優れた耐摩耗性を発揮できる上、sp混成軌道(グラファイト構造)の炭素も多少含んでおり低摩擦性を確保できる。一方の下層領域は軟質なものとすることで、CrN層との硬度格差を緩和でき、耐剥離性の確保できる。
また、金属管を成形する際、潤滑剤を成形ロールの一部に微量滴下しながら成形することで、成形ロール、特に駆動ロールの摩擦係数を低減することができる。その効果による、周速差の大きい(すべりの大きい)ことによる、ロールフランジ部の凝着を防止することにより、駆動ロールで発生するロールフランジ部の疵や、ロールマークの発生を抑えることができる。
すなわち、本発明に係る金属管成形ロール、金属管成形装置、金属管成形方法によれば、成形ロール寿命を格段に向上でき、成形ロールの交換頻度を低減でき、製造コストを大幅に削減できる。また、成形ロール寿命の向上による成形ロールの交換頻度を低減によって、ロール交換時のロール調整(位置調整等)に伴う歩留まり低下の防止、及び、成形寸法精度向上による歩留まり向上(高精度化)を達成することができる。
なお、図10〜図13に示した金属管成形装置及び金属管成形方法は、金属管としてチタン管を成形する際に特に優れた効果を発揮できる。
次に、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。
<成形ロール>
(実施例1)
まず、成形ロールの基材としてJIS G 4404にて規定されている工具鋼SKD11を採用し、焼入れ及び焼戻し処理を行った。
次に、得られた基材表面に対して、窒化処理を行い、基材表層に、25μm厚、平均窒素濃度が0.20質量%である窒化層を形成した。
なお、窒化処理は、アンモニアと水素の混合ガス雰囲気中(NH、H、Ar)で直流グロー放電により生じた反応性の高い活性種を利用し窒化するラジカル窒化処理を用いた。処理温度は500℃とし3時間の処理を施した。
次に、窒化処理を施した基材表層(窒化層)上に、PVD蒸着法により、1.5μmμmのCrN皮膜(単層)を成膜した。
次に、CrN皮膜を形成した基材を、孔型R:12.6mm、ロール底径Dr:100mm、ロール外径Do:124mm、ロール幅W:60.0mmの寸法でロールに加工し、図2に示す成形ロールを製造した。
成形ロールについて、CrN皮膜表面から深さ方向に、グロー放電発光分析装置(GDS)を用いて成分分析を行った。分析結果を図14〜16に示す。図14〜16における横軸は、CrN層表面からの深さ(μm)、縦軸は各成分の濃度(質量%)を示す。
図14及び図15に示すように、基材表層に、厚さ1.5μmのCrN層が形成されていることが分かる。また、図16は、微量に含有する元素の深さ方向への濃度挙動を確認するために、図14のグラフの縦軸範囲を変化させ表したグラフである。図16のグラフより、CrN皮膜と基材との間には、窒化層が形成されていることが分かる。また、グラフからも明らかなように、CrN皮膜側から基材側に向けて窒素濃度が緩やかに減少する勾配を示しており、窒化層内における深さ方向に対する硬さ変動も緩やかであることが分かる。
次に、予め上記成形ロールの表面(CrN皮膜)に対してプラズマクリーニングを施し汚れを除去した上で、CrN皮膜上にダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)を成膜した。膜厚は1.0μmとした。
DLC膜はプラズマCVD法によって成膜した。装置は容量結合型高周波プラズマCVD装置を用い、温度は500℃とした。プラズマ発生用電源には、13.56MHzの高周波電源を用いた。反応ガスとしては、CHとHの混合ガスを用いた。このとき、CHとHの混合ガスの混合比を変えることにより、CrN皮膜との界面から表面に向かって膜の硬さが徐々に増加するようにした。
(比較例1)
実施例1で採用した工具鋼SKD11を基材とし、実施例1と同様に、窒化層およびCrN皮膜(単層)ロールに加工し成形ロールを製造した。
次に、CrN皮膜上に、イオンプレーティング法によりダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)を1.0μmの厚さで成膜した。
<ラマン分光法>
実施例1および比較例で得られた成形ロールの表層の、sp混成軌道の炭素とsp混成軌道の炭素の割合(sp/sp)をラマン分光分析によって測定した。
結果を図17(a)〜(c)及び図18(a)〜(c)、表1、2に示す。
図17(a)は、実施例1の成形ロールの表層の顕微鏡写真、図17(b)は実施例1の成形ロールのDLC膜の表層のラマンスペクトル、図17(c)は実施例1の成形ロールのDLC膜内部のラマンスペクトルを示す。図18(a)は比較例1の成形ロールの表層の顕微鏡写真、図18(b)は比較例1の成形ロールのDLC膜の表層のラマンスペクトル、図18(c)は比較例1の成形ロールのDLC膜内部のラマンスペクトルを示す。なお、図中の「表面付近」とはDLC膜の表層、「DLC膜内部」DLC膜の内部、「界面付近」とはDLC膜とCrN皮膜との界面付近のラマンスペクトルである。
また表1に、実施例1のラマンバンドパラメータを、表2に比較例1のラマンバンドパラメータを示す。
図17(a)〜(c)、表1から明らかなように、実施例1で得られたDLC膜は、CrN皮膜からDLC膜に向かうにしたがい、I1380/I1540が大きくなっている。
つまり、CrN皮膜からDLC膜に向かうにしたがい硬度が大きくなる硬度傾斜となっていることが分かる。
次に、実施例1で得られた窒化層、CrN皮膜、ならびにDLC膜のビッカース硬さについて測定した。これらの各層・各膜の厚さはいずれも極めて薄いため、ナノインデンテーション(押込み)法によって、極低荷重の押込み試験を行うことでビッカース硬さを測定した。なお、何れの層、膜においても、断面において3点測定しその平均をもって「ビッカース硬さ」とした。なお、窒化層については窒素濃度が一番高い表層近傍(2μm深さまでの領域)において測定した。DLC膜は、膜表面から膜厚の20%深さの領域(表面付近)、DLC膜とCrN皮膜との界面から20%深さの領域(界面付近)、およびDLC膜の膜厚方向中心部(DLC膜内部)の計3か所において測定した。
その結果、各層・各膜の平均ビッカース硬さはそれぞれ、窒化層は1000、CrN皮膜は2000、DLC膜の「界面付近」は2500、「DLC膜内部」は3000、DLC膜の「表面付近」は3500となり、膜厚方向において硬度傾斜が付与されていた。
一方、図18(a)〜(c)、表2から明らかなように、比較例1で得られたDLC膜は、「表面付近」、「DLC膜内部」ともにI1380/I1540が大きく、膜厚方向において硬度傾斜が付与されていないことが分かる。
また、比較例1で得られたDLC膜の「表面付近」、「DLC膜内部」、「界面付近」それぞれおいて実施例1と同様にビッカース硬度を測定したところ、「界面付近」は2000z、「DLC膜内部」は2000、「界面付近」は2000となり、膜厚方向において均一な硬度分布であった。
<機械特性評価>
実施例1及び比較例の各成形ロールにおいて、機械特性を評価した。評価条件は、径25.0mm、0.5mm厚のJIS3種チタン金属管を用い、TIG溶接による造管速度を6/min分として、溶接後に図10に示す成形装置を用いて成形を行った。このとき、潤滑剤としてはソリュブル油系潤滑剤を用い、この潤滑剤を10ml/hrで微量に滴下しながら成形を行った。
その結果、実施例1は、成形時間が24時間経過しても、ロール疵は発生せず、耐凝着性、耐摩耗性は良好であり、ロールフランジ部の疵、ロールマークの発生を抑制できた。
一方、比較例のロールを用いJIS3種チタン管の成形を行うと、30分も立たずにロール疵、膜剥離が発生し、CrN皮膜が露出した。
(実施例2、参考例1)
図3に示す成形ロールを製造した。その際、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間の隙間を50μmに調整した。この成形ロールを参考例1の成形ロールとした。
また、図3に示す成形ロールを製造し、その際、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間の隙間を10μm以下に調整した。この成形ロールを実施例2の成形ロールとした。各成形ロールにおけるCrN膜とDLC膜の品質は、実施例1と同等であった。
これら実施例2及び参考例1の成形ロールを用いて、径25.0mm、0.5mm厚の普通鋼管、SUS304ステンレス鋼管、JIS3種チタン管の工業用溶接金属管を成形した。成形条件は、普通鋼管、SUS304ステンレス鋼管、JIS3種チタン管をそれぞれTIG溶接して、いずれも造管速度を6/min分とした。溶接後に図10に示す成形装置に図3のロールを用い、チタン管製造時のみ潤滑剤としてはソリュブル油系潤滑剤を用い、この潤滑剤を10ml/hrで微量に滴下しながら成形を行った。普通鋼管、SUS304ステンレス鋼管の成形では潤滑剤を用いなかった。成形後のチタン管の真円度の評価結果を図19に示す。図19には、300時間連続製造の成形後のチタン管の真円度の測定結果を実線で示し、製品としての真円度の許容範囲を三重円(点線)で示している。三重円のうちの内側と外側の円が許容範囲を示しており、残りの円は成形目標を示している。
隙間を10μm以下に調整したロールを用い、300時間連続製造した成形後の普通鋼管、SUS304ステンレス鋼管、チタン管においては、真円度の測定の結果、全て製品としての真円度の許容範囲(目標円の半径の±10μm以内)に納まり、真円度の高い製管を安定して行うことができた。
また、図19に示すように、チタン管については、実施例2、参考例1とも真円度は良好で、チタン管製品としての真円度の許容範囲内であったが、実施例2のほうがより高い真円度を示した。また、参考例1では、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間の隙間によって、チタン管の表面に製品として許容できる程度の疵が生じた。
また、実施例2、参考例1においては、チタン管に対するロールとの焼き付きや、ロール中央部または固定フランジ部と回動フランジ部と間の焼き付きは、発生することがなく、更に連続製管の続行が可能な状態であった。
更に、隙間を10μmに調整したロールを用い、かつ、潤滑剤を用いずに成形した普通鋼管及びSUS304ステンレス鋼管においても、300時間連続製管後に、ロール中央部または固定フランジ部と回動フランジ部と間の焼き付きが発生することがなく、更に連続製管の続行が可能な状態であった。
よって、実施例2のように、回動フランジ部22とロール中央部21の突出部21bとの間の隙間を10μm以下に調整し、それらが製管中に互いに摺動したとしても、CrN膜とDLC膜による摩擦係数の低減により、互いに磨耗することがなく、問題がなく連続製管することができ、金属管製品の真円度を保ち、疵発生を防ぐ点から望ましいことがわかる。
1、21、31…金属管成形ロール、3…回転軸、10…金属管、12…ロール本体、4、14…ロール凹部、21…ロール中央部、21a1…外周面(対向面)、21a…基部、21b…突出部、22…回動フランジ部、22b…内周面(対向面)、22c…外側面(対向面)、23…固定フランジ部、23b…対向面、32…引きねじ部、101…潤滑ノズル、102…潤滑ノズル固定台、103…水平移動ガイド、104…上下位置調整ハンドル、105…左右位置調整ハンドル、106…中心位置調整冶具、107…あり型台座、108…スタンド支柱取り付け冶具、109…潤滑ノズル角度調整冶具、112…潤滑ノズル角度固定ねじ、113…潤滑ノズル前後調整冶具、114…幅調整用ねじ(正・ねじ使用)、115…幅移動用ガイド部品、116…上下移動ねじ、117…成形スタンド支柱、118…幅移動溝、119…幅移動ガイド、120…スタンド固定ねじ、130…ローラー、131…中心軸、132…シリコンチューブ。

Claims (16)

  1. その全周に渡って断面視半円状のロール凹部が設けられたロール本体を有する金属管成形ロールであって、
    前記ロール本体は、ロール中央部と、前記ロール中央部の両側に配置されて前記ロール中央部に対して回動自在とされた一対の回動フランジ部と、が少なくとも備えられ、前記ロール凹部が、前記ロール中央部と前記回動フランジ部とによって分割されており、
    前記ロール中央部と前記回動フランジ部が、質量%でC:1.00〜2.30%、Si:0.10〜0.60%、Mn:0.20〜0.80%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cr:4.80〜13.00%を含有し、残部が鉄及び不純物からなる組成を有する鋼材からなり、
    前記ロール凹部の全面と前記回動フランジ部の表面全面に、CrN皮膜とダイヤモンドライクカーボン膜とが順次積層され、
    前記ダイヤモンドライクカーボン膜において、ラマン分光法により測定された波数1380cm−1における吸収強度I1380と、波数1540cm−1における吸収強度I1540との比I1380/I1540が、膜表面から膜厚の20%深さの範囲で0.5〜0.7、前記ダイヤモンドライクカーボン膜と前記CrN皮膜との界面から20%深さの範囲で0.3〜0.5であることを特徴とする金属管成形ロール。
  2. 前記ロール中央部は、前記ロール本体を駆動する回転軸に固定されており、前記回動フランジ部は前記回転軸及び前記ロール中央部に対して回動自在とされていることを特徴とする請求項1に記載の金属管成形ロール。
  3. 前記ロール本体に更に、一対の前記回動フランジ部のロール幅方向両側に配置されて前記ロール中央部に固定された固定フランジ部が備えられ、
    前記固定フランジ部に、前記回動フランジ部を引き寄せて固定する引きねじ部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属管成形ロール。
  4. ワークとなる金属管の外径をDとしたとき、前記ロール中央部における前記ロール凹部の幅が0.7D〜0.87Dの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
  5. 前記ダイヤモンドライクカーボン膜において、膜表面から膜厚の20%深さの範囲のビッカース硬さが3000〜3500、前記ダイヤモンドライクカーボン膜と前記CrN皮膜との界面から20%深さの範囲のビッカース硬さが2500〜3000であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
  6. 前記ダイヤモンドライクカーボン膜の厚さが0.5μm〜2μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
  7. 前記CrN皮膜の厚さが0.5μm〜5μmであることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
  8. 前記CrN皮膜のビッカース硬さが800〜2000であることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
  9. 前記ロール中央部と前記回動フランジ部の表面に、プラズマ窒化処理によって窒化された窒化層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
  10. 前記窒化層の厚さが0.5μm〜5μmであることを特徴とする請求項9に記載の金属管成形ロール。
  11. 前記窒化層の平均窒素濃度が、10.0〜25.0質量%であることを特徴とする請求項9または10に記載の金属管成形ロール。
  12. 前記窒化層における窒素の濃度分布が、前記窒化層表層から深さ方向に向かって減少する濃度勾配を有することを特徴とする請求項9乃至請求項11の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
  13. 前記ロール中央部または前記回動フランジ部の一方または両方が、さらに、質量%で、
    Mo:0.70〜1.20%、
    V:0.15〜1.00%、
    を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項12の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
  14. 前記ロール中央部または前記回動フランジ部の一方または両方が、さらに、質量%で、
    W:0.60〜0.80%、
    を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項13の何れか一項に記載の金属管成形ロール。
  15. 請求項1〜14の何れか一項に記載の金属管成形ロールを備えた金属管成形装置。
  16. 請求項1〜14の何れか一項に記載の金属管成形ロールを用いて成形することを特徴とする、金属管成形方法。
JP2016182379A 2016-09-16 2016-09-16 金属管成形ロール、金属管成形装置、金属管成形方法 Ceased JP2018043286A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016182379A JP2018043286A (ja) 2016-09-16 2016-09-16 金属管成形ロール、金属管成形装置、金属管成形方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016182379A JP2018043286A (ja) 2016-09-16 2016-09-16 金属管成形ロール、金属管成形装置、金属管成形方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2018043286A true JP2018043286A (ja) 2018-03-22

Family

ID=61693465

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016182379A Ceased JP2018043286A (ja) 2016-09-16 2016-09-16 金属管成形ロール、金属管成形装置、金属管成形方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2018043286A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020099979A (ja) * 2018-12-25 2020-07-02 ユニオンツール株式会社 切削工具用ダイヤモンド皮膜
CN114714043A (zh) * 2022-04-19 2022-07-08 济南傲伟机械设备有限公司 一种法兰圆度和平整度控制装置

Citations (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4881140U (ja) * 1972-01-08 1973-10-04
JPH01148422A (ja) * 1987-12-03 1989-06-09 Hitachi Metals Ltd 駆動回転化遊転ロール
JPH01201443A (ja) * 1988-02-08 1989-08-14 Hitachi Metals Ltd 冷間成形ロール用合金鋼およびロール
JPH0768304A (ja) * 1993-09-02 1995-03-14 Hitachi Metals Ltd 棒鋼圧延用ロール
JP2004010923A (ja) * 2002-06-04 2004-01-15 Toyota Motor Corp 摺動部材及びその製造方法
JP2005161431A (ja) * 2003-12-01 2005-06-23 Kiwa Tekkosho:Kk 工作機械ガイド装置およびそのコーティング方法
JP2006144848A (ja) * 2004-11-17 2006-06-08 Jtekt Corp ロッカアーム用軸受
JP2006257466A (ja) * 2005-03-15 2006-09-28 Jtekt Corp 被覆部材の製造方法
JP2007056721A (ja) * 2005-08-23 2007-03-08 Sanden Corp 斜板式圧縮機
JP2008057624A (ja) * 2006-08-30 2008-03-13 Kobe Steel Ltd 無段変速機用プーリ
JP2013007077A (ja) * 2011-06-23 2013-01-10 Air Water Inc 鋼製品
JP2013094823A (ja) * 2011-11-01 2013-05-20 Shin-Hokoku Steel Corp 球状黒鉛鋳鉄製鋼管成形用ロール及びその素材の製造方法

Patent Citations (12)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS4881140U (ja) * 1972-01-08 1973-10-04
JPH01148422A (ja) * 1987-12-03 1989-06-09 Hitachi Metals Ltd 駆動回転化遊転ロール
JPH01201443A (ja) * 1988-02-08 1989-08-14 Hitachi Metals Ltd 冷間成形ロール用合金鋼およびロール
JPH0768304A (ja) * 1993-09-02 1995-03-14 Hitachi Metals Ltd 棒鋼圧延用ロール
JP2004010923A (ja) * 2002-06-04 2004-01-15 Toyota Motor Corp 摺動部材及びその製造方法
JP2005161431A (ja) * 2003-12-01 2005-06-23 Kiwa Tekkosho:Kk 工作機械ガイド装置およびそのコーティング方法
JP2006144848A (ja) * 2004-11-17 2006-06-08 Jtekt Corp ロッカアーム用軸受
JP2006257466A (ja) * 2005-03-15 2006-09-28 Jtekt Corp 被覆部材の製造方法
JP2007056721A (ja) * 2005-08-23 2007-03-08 Sanden Corp 斜板式圧縮機
JP2008057624A (ja) * 2006-08-30 2008-03-13 Kobe Steel Ltd 無段変速機用プーリ
JP2013007077A (ja) * 2011-06-23 2013-01-10 Air Water Inc 鋼製品
JP2013094823A (ja) * 2011-11-01 2013-05-20 Shin-Hokoku Steel Corp 球状黒鉛鋳鉄製鋼管成形用ロール及びその素材の製造方法

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2020099979A (ja) * 2018-12-25 2020-07-02 ユニオンツール株式会社 切削工具用ダイヤモンド皮膜
CN114714043A (zh) * 2022-04-19 2022-07-08 济南傲伟机械设备有限公司 一种法兰圆度和平整度控制装置
CN114714043B (zh) * 2022-04-19 2024-02-02 济南傲伟机械设备有限公司 一种法兰圆度和平整度控制装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6217871B2 (ja) チタン管成形ロール、チタン管成形装置およびチタン管の製造方法
JP2018159126A (ja) チタン管成形ロール、チタン管成形装置およびチタン管の製造方法
EP0556833B1 (en) Continuous hot dipping apparatus and slide bearing structure therefor
JP5202978B2 (ja) スラストころ軸受
JP2018158356A (ja) 金属管成形ロール、金属管成形装置、金属管成形方法
CN105283697A (zh) 活塞环及其原料以及它们的制造方法
JP2018043286A (ja) 金属管成形ロール、金属管成形装置、金属管成形方法
JP2008174822A (ja) スラスト軸受
JP2005030569A (ja) カムフォロア
JP4299604B2 (ja) 線引き装置
JP2007155022A (ja) 転動装置
JP2018158355A (ja) チタン板のプレス用金型及びチタン板のプレス成形方法
JP2018158354A (ja) チタン板のプレス用金型及びチタン板のプレス成形方法
JP4364064B2 (ja) ディスクロール及びその製造方法
JP2019218607A (ja) 部材、チタン管成形ロール、チタン管成形装置およびチタン管の製造方法
JP2000337392A (ja) 回転軸保護スリーブ
JP2007127263A (ja) 転がり部材及び転動装置
JP2021055134A (ja) 部材、チタン管成形ロール、チタン管成形装置およびチタン管の製造方法
JP2009243619A (ja) 転がり摺動部材及び鋼管成形ロール用軸受
KR100825509B1 (ko) 용융금속 도금설비용 저널베어링 및 그 제조방법
US20080148972A1 (en) Low-wear bearer ring
JP2007321806A (ja) 転がり摺動部品及び該転がり摺動部品を備えた転動装置
JP2008111462A (ja) 転がり部材及び転動装置
JPH05221756A (ja) 摺動用セラミックス材及びその製造方法と用途
WO2021152346A1 (en) Process for coating a mandrel for seamless pipe production

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20181019

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190415

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200212

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20200218

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20200420

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200908

A045 Written measure of dismissal of application [lapsed due to lack of payment]

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A045

Effective date: 20210119