以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係るエンジンシステム100の概略構成図である。エンジン(内燃機関)1は車両に搭載されている。エンジン1の吸気通路2には、吸気流れの上流側から順に、エアフローメータ14と、ターボ過給機5のコンプレッサ5Aと、スロットルバルブ4が配置されている。
スロットルバルブ4はスロットルモータによって駆動されるようになっている。スロットルバルブ4によって調量された空気は吸気マニホールド1Aによって分配され、3つの気筒の筒内1Bに流入する。図1には気筒数が3つの場合を記載しており、点火順序に従い3つの筒内1Bに空気が順次導入される。なお、気筒数が3つの場合に限定されるものでない。
吸気マニホールド1Aに臨んで燃料噴射弁6が設けられている。この燃料噴射弁6を所定の時期に開くことで燃料が吸気マニホールド1Aの空気中に噴射され、空気との混合気が形成される。また、筒内1Bに臨んで点火プラグ(図示しない)が設けられている。混合気に対しこの点火プラグで点火することで混合気が燃焼する。なお、燃料噴射弁6は筒内1Bに臨んで設けられる場合であってよい。
筒内1Bで燃焼したガスは排気マニホールド1Cからエンジン1の排気通路3に排出される。排気通路3には、排気流れの上流側から順に、ターボ過給機5のタービン5Bと、三元触媒(以下、単に「触媒」ともいう。)7と、が配置されている。触媒は、三元触媒に限らず酸化触媒であってよい。排気通路3に出た排気は排気エネルギーが大きくなる過給域になると、ターボ過給機5のタービン5Bの回転速度を上昇させる。タービン5Bの回転速度が上昇すると、これと同軸のコンプレッサ5Aの回転速度が上昇し、筒内1Bへと導入される空気を過給する。
なお、本実施形態ではターボ過給機5を用いる場合について説明するが、これに限定されるわけではなく、例えば機械式過給機であってもよく、電動式過給機であってもよい。
エンジンシステム100は、排気通路3の三元触媒7より下流側と、吸気通路2のコンプレッサ5Aより上流側とを連通する排気再循環通路(以下、「EGR通路」ともいう)8を備える。EGR通路8には、EGR通路8を流れる排気(EGRガス)を冷却するEGRクーラ9と、EGR通路8を流れる排気流量を制御するEGRバルブ10とが配置されている。EGR通路8、EGRクーラ9及びEGRバルブ10を含めて「EGR装置」という。
エアフローメータ14は吸気通路2に流入する空気量を検出する。検出された空気量は制御部としてのコントローラ30に読み込まれる。
コントローラ30は、エアフローメータ14の検出値の他に、クランク角センサ16、アクセル開度センサ17等の検出値も読み込む。そして、コントローラ30はこれらの検出値に基づいてスロットルバルブ4の開度制御及びEGRバルブ10の開度制御や、燃料噴射弁6を用いた燃料噴射制御や、点火プラグを用いた点火時期制御等を実行する。なお、コントローラ30は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ30を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
本実施形態のEGR装置は、EGR通路8がタービン5B下流の排気通路3から分岐され、コンプレッサ5Aよりも上流側の吸気通路2に接続(合流)されている、いわゆるロープレッシャー・EGR装置(以下、LP−EGR装置ともいう)である。なお、EGR率とは、エンジン1に流入する全ガス量に対するEGRガス量の割合である。また、EGRガスを再循環させる制御を「EGR制御」という。
EGRガスを吸気通路2に再循環させると、EGRガスが導入された分だけスロットルバルブ4の開度を増大させることになるので、ピストンの往復動に伴うポンピングロスが低減して燃費性能が向上することが知られている。また、EGRガスを吸気通路2に再循環させると筒内1Bでの混合気の燃焼温度が低下して耐ノッキング性が改善されるので、ノッキング回避のための点火時期遅角量が小さくなり、燃費性能が向上することも知られている。したがって、燃費性能を向上させるためには、より広い運転領域でEGR制御を実行することが望ましい。その点、LP−EGR装置はコンプレッサ5Aよりも上流側の吸気通路2にEGRガスを再循環させるので、過給域であってもEGR制御を行うことが可能であり、過給機付きエンジンの燃費性能向上に適した装置といえる。
コンプレッサ5A下流であってスロットルバルブ4上流の吸気通路2に吸気酸素濃度センサ18を取付けている。吸気酸素濃度センサ18は、コンプレッサ5A下流の吸気通路2の酸素濃度を検出するものである。コントローラ30は、エンジンの運転条件がEGR領域に含まれることになると、吸気酸素濃度センサ18により検出される吸気通路2の酸素濃度に基づいて実際のEGR率を算出する。
例えば、吸気酸素濃度センサ18の出力(出力電圧)を吸気通路2の酸素濃度に変換し、その変換した酸素濃度から図2を内容とするテーブルを検索することにより、実際のEGR率を算出する。図2において、吸気通路2の酸素濃度が20.9%(標準大気の酸素濃度)のとき、実際のEGR率は0%である。一方、実際のEGR率が増加するほど吸気通路2の酸素濃度は20.9%より減少していく。従って、EGR率と吸気通路2の酸素濃度の関係を直線で近似することで、吸気酸素濃度センサ18により検出される吸気通路2の酸素濃度から実際のEGR率を簡易に求めることができる。このようにして算出した実際のEGR率が運転条件に応じて設定されている目標EGR率と一致するように、コントローラ30がEGRバルブ10の開度をフィードバック制御する。
なお、実施形態では吸気酸素濃度センサ18の取付け位置をコンプレッサ5A下流でスロットルバルブ4上流としているが、図示の位置に限られない。吸気酸素濃度センサ18は、実際のEGR率を求めるために設けてあるので、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2のどの位置に取付けてもかまわない。
また、三元触媒7上流でかつタービン5B上流側に広域空燃比センサ19を、三元触媒7の下流側に酸素濃度センサ20を取付けている。上流側の空燃比センサ19は、三元触媒7上流側の排気通路3の空燃比を検出するものである。一方、下流側の酸素濃度センサ20は、三元触媒7下流側の排気通路3の酸素濃度に応じて、理論空燃比を境とする2値的な出力をするものである。
コントローラ30は、上流側の空燃比センサ19の出力に基づいて、排気の空燃比が目標空燃比と一致するように、空燃比フィードバック補正係数を算出し、この空燃比フィードバック補正係数で燃料噴射弁6から供給される燃料量をフィードバック制御する。また、コントローラ30は、下流側の酸素濃度センサ20の出力に基づいて、上記空燃比フィードバック補正係数を修正する。このように、三元触媒7の前後に取付けた2つのセンサ19,20を用いた空燃比のフィードバック制御を採用するのは、次の理由からである。すなわち、三元触媒7が理論空燃比を中心とする所定の空燃比の範囲(ウインドウ)でしか、HC,CO,NOxの全てを効率良く浄化できないので、コントローラ30が制御する空燃比がウインドウから外れないようにするためである。なお、上流側の空燃比センサ19の出力のみに基づいて、空燃比のフィーバック制御を行う場合であってよい。
さて、吸気酸素濃度センサ18は、このセンサ18の製作バラツキや劣化によって電圧出力シフト(以下、「出力シフト」ともいう。)が生じ、この出力シフトに伴って、吸気酸素濃度センサ18の出力に特性ズレが生じることがある。
これについて説明すると、図3は吸気通路2の酸素濃度に対する吸気酸素濃度センサの出力(以下、「センサ出力」ともいう。)の特性である。横軸に吸気通路2の酸素濃度[%]を、縦軸にセンサ出力[V]を採ったとき、センサ出力は、原点を通る直線(実線参照)の特性となる。つまり、原点を通る直線の特性は、吸気酸素濃度センサ18に製作バラツキや劣化がないときの特性である。この原点を通る直線特性を「正規の直線特性」とすると、吸気酸素濃度センサ18の製作バラツキや劣化によって、図3のケース(1)に示したように、直線の特性が原点から外れて上方向や下方向に、直線の傾きが変化することなく移動することがある(鎖線参照)。あるいは、吸気酸素濃度センサ18の製作バラツキや劣化によって、図3のケース(2)に示したように、直線の特性が原点から外れて上方向や下方向に移動すると共に、直線の傾きが変化することもある(一点鎖線参照)。このように図3のケース(1)や(2)に示したように、正規の直線特性からずれた直線特性となることを、あるいは正規の直線特性からずれた直線特性の状態となっていることを吸気酸素濃度センサ18の「出力シフト」という。
そして、正規の直線特性からずれた直線特性を「非正規の直線特性」で定義すれば、同じ吸気通路2の酸素濃度に対して非正規の直線特性の正規の直線特性からのずれを「センサ出力の特性ズレ」という。例えば、吸気通路2の酸素濃度がA%のとき、正規の直線特性によれば、センサ出力がC1[V]であるとすると、非正規の直線特性によれば、吸気通路2の同じ酸素濃度A%に対してセンサ出力がC2[V],C3[V],C4[V],C5[V]となる。このように、センサ出力がC2,C3,C4,C5となることが「センサ出力の特性ズレ」である。
さらに、図3のケース(3)に示したように、センサ出力が出力されない場合やセンサ出力が大きな値に張り付く場合がある(二点鎖線参照)。このケース(3)は、センサ出力の特性ズレとはいえない。つまり、図3のケース(3)は吸気酸素濃度センサ18に故障が生じている場合である。なお、センサ出力が出力されない場合を示す二点鎖線は、横軸と重なっている。しかしながら、センサ出力が出力されない場合を示す二点鎖線を横軸と重ねると見にくくなるので、センサ出力が出力されない場合を示す二点鎖線を横軸の少し上にずらせて示している。
吸気酸素濃度センサ18にセンサ出力の特性ズレが生じたり、吸気酸素濃度センサ18に故障が生じたりすると、吸気酸素濃度センサ18の出力を実際のEGR率に換算する際に、実際のEGR率からのエラーが生じる。EGR率の検出エラーがあると筒内1Bでの燃焼を適切に制御できなくなる。筒内1Bでの燃焼を適切に制御できないと、筒内1Bの燃焼状態が悪化したりノッキングが発生したりしてしまう。そこで、吸気酸素濃度センサ18にセンサ出力の特性ズレが生じたり、吸気酸素濃度センサ18に故障が生じたりしているか否かを診断する必要がある。以下、吸気酸素濃度センサ18にセンサ出力の特性ズレが生じたり、吸気酸素濃度センサに故障が生じたりしているか否かの診断を行うことを、まとめて「吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行う」ともいう。
このため、吸気通路2に吸気圧力センサを取付け、吸気圧力センサにより得られる異なる2つの吸気圧力(PL、PH)下における、吸気圧力の変化量と吸気酸素濃度センサ出力の変化量とからセンサ出力特性値(KHL/KL)を算出する。そして、この出力特性値が所定の上限値(1+α)以上または所定の下限値(1−β)以下になっている場合に吸気酸素濃度センサが故障したと診断する従来の故障診断方法がある。ここで、上記の上限値(1+α)は製品毎のセンサ出力のばらつきの公差(α)に基づいて設定され、下限値(1−β)は蒸発燃料パージやEGRによる実際の吸気酸素濃度の低下の影響を考慮して設定される。
しかしながら、従来の故障診断方法のように、吸気通路に取付けた吸気圧力センサの出力を用いるのでは、吸気酸素濃度センサと吸気圧力センサが同等の圧力となる位置関係に取付けられている必要があり、吸気酸素濃度センサ18の取付け位置について設計上の制約を受ける。また、吸気圧力センサの出力を用いる場合には、圧力差の大きな2つの吸気圧力となる運転条件が必要となるため、車両を市場で走行させるシーンでは故障診断の頻度を十分には確保できない可能性がある。また、吸気圧力が大気圧以下となる自然吸気の運転領域では吸気圧力センサの検出精度が悪いため、自然吸気の運転領域で故障診断の精度も悪くなる。
ここで、本発明者は、エンジンシステムの既存の構成に対して吸気酸素濃度18を取付けるだけで、つまり既存の構成を大きく変更することなく、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行うことができないかと発想した。そこで思い至ったのは、上流側の空燃比センサ19と吸気酸素濃度センサ18とで、同じ検出原理を有している点である。つまり、吸気酸素濃度センサ18は、酸素ポンプの作用により吸気通路2の酸素分圧に比例した電圧信号を出力するのに対して、上流側の空燃比センサ19は、酸素ポンプの作用により排気通路3の酸素分圧に比例した電圧信号を出力する。
このため、吸気酸素濃度センサ18と空燃比センサ19の2つに製作バラツキや劣化がないとした場合に2つのセンサ18,19についてセンサ素子の置かれる酸素濃度の雰囲気が同等とみなせる条件にあれば、空燃比に換算する前の空燃比センサ19の出力と、酸素濃度に換算する前の吸気酸素濃度センサ18の出力とはほぼ同じ電圧になるはずである。つまり、吸気酸素濃度センサ18と空燃比センサ19の各検出原理に着目すれば、空燃比センサ19も酸素濃度センサに変わりないのである。空燃比センサ19は排気通路3の酸素濃度を検出しているのであるから、空燃比センサ19を、改めて「排気酸素濃度センサ」という。なお、以下では吸気酸素濃度センサ18,排気酸素濃度センサ19の2つを主に扱うので、吸気酸素濃度センサ、排気酸素濃度センサを、単に「センサ」ともいう。
しかも、排気酸素濃度センサ19には、排気酸素濃度センサ19の出力(センサ出力)の特性ズレが生じたり、排気酸素濃度センサ19に故障が生じたりする。排気酸素濃度センサ19の特性ズレが生じたり、排気酸素濃度センサ19に故障が生じたりすると、実際の空燃比からのエラーが生じる。実際の空燃比からのエラーがあると、排気の空燃比をウインドウに収めることができなくなり、有害成分が三元触媒7で浄化されることなく排出されてしまう。このように、排気酸素濃度センサ19の出力の特性ズレが生じたり、排気酸素濃度センサ19に故障が生じたりするときには排気成分への影響が大きいことより、排気酸素濃度センサ19について診断が高い精度で行われている(公知技術参照)。以下、排気酸素濃度センサ19にセンサ出力の特性ズレが生じたり、排気素濃度センサ19に故障が生じたりしているか否かの診断を行うことを、まとめて「排気酸素濃度センサ19の出力特性が正常か否かの診断を行う」ともいう。このため、排気酸素濃度センサ19の出力特性が正常であると診断されているときの、排気酸素濃度センサ19の出力は信頼の置ける基準データとなり得る。
上記公知技術の例を挙げると、例えば、特開2004−324471号公報には、触媒上流側の酸素濃度センサ44の出力のリッチ期間及びリーン期間からなる反転周期に基づいて、触媒上流側の酸素濃度センサ44の劣化の有無を診断することが記載されている。また、特開2015−094331号公報には、パルス電流に対する応答出力電圧|ΔVs1−ΔVs2|の収束電圧差を判定基準値aと比較することで、エンジンの駆動状態に影響を受けることなく、触媒上流側の空燃比センサ126の劣化状態を診断することが記載されている。
そこで本発明の第1実施形態では、2つのセンサ18,19について各センサ素子の置かれる酸素濃度の雰囲気が同等とみなせる条件において、2つのセンサ18,19の出力を比較することによって、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行う。これによって、吸気酸素濃度センサ18の取付け位置について設計上の制約を受けることがないようにする。
コントローラ30が行う吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断方法を以下のフローチャートを参照して説明する。図4のフローチャートは、診断許可フラグを設定するためのものである。図4のフローは、一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
コントローラ30は、ステップ1で排気酸素濃度センサ19の出力特性が正常か否かをみる。
図示しないフローにおいて、コントローラ30は、排気酸素濃度センサ19の出力特性が正常か否かの診断を行い、排気酸素濃度センサ19の出力特性が正常であると診断するときに異常診断フラグ1=0としている。一方、排気酸素濃度センサ19の出力特性が正常でない(つまり異常である)と診断するときに異常診断フラグ1=1としている。そして、異常診断フラグ1の値はコントローラ30が不揮発性メモリに記憶している。従って、ステップ1で異常診断フラグ1の値を不揮発性メモリから読み出してみることで、排気酸素濃度センサ19の出力特性が正常であるか異常であるかがわかる。
ここで、排気酸素濃度センサ19について「異常診断フラグ1」を用いているのは、吸気酸素濃度センサ18について本実施形態で導入している異常診断フラグ2(後述する)と区別するためである。
ステップ1で異常診断フラグ1=1のときには、コントローラ30は、排気酸素濃度センサ19の出力特性が異常であると判断し、今回の処理をそのまま終了する。つまり、異常診断フラグ1=1のときには吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常であるか否かの判定を行わない。これは、異常診断フラグ1=1のときには、排気酸素濃度センサ19の出力が信頼の置ける値とならず、信頼のおけない値を基準値として診断を行ったのでは、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常であるか否かの診断の精度が低下してしまうためである。
一方、ステップ1で異常診断フラグ1=0のときには、コントローラ30は、排気酸素濃度センサ19の出力特性が正常であると判断し、ステップ2以降に進む。排気酸素濃度センサ19の出力特性が正常であると診断されているときには、排気酸素濃度センサ19の出力が信頼の置ける値となる。
コントローラ30は、ステップ2,4,5で次の〈1〉〜〈3〉の3つの条件が成立しているか否かをみる。飛ばしたステップ3は後述する。
〈1〉燃料カット制御が開始されていること(ステップ2)、
〈2〉吸気通路2の内部の新気比率と排気通路3の内部の新気比率との差が所定値以内であること(ステップ4)、
〈3〉2つのセンサ18,19のセンサ素子がともに活性化していること(ステップ5) 、
上記〈1〉〜〈3〉の3つの条件が全て満たされているときにはステップ6に進み、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常であるか否かの診断を許可するため、診断許可フラグ(エンジン始動時にゼロに初期設定)=1とする。上記〈1〉〜〈3〉の3つの条件のうちの一つでも満たされていないときにはステップ7に進み、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常であるか否かの診断を非許可とするため、診断許可フラグ=0とする。
吸気酸素濃度センサ18は、酸素濃度を検出する方式としては、排気酸素濃度センサ19と同じ原理を有している。この吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常であるか否かの診断を行うためには、吸気酸素濃度センサ18の取付け位置の吸気通路2、排気酸素濃度センサ19の取付け位置の排気通路3の両方の内部の酸素濃度の雰囲気が同等とみなせる条件になっている必要がある。上記〈1〉〜〈3〉の3つの条件は2つの酸素濃度センサ18,19について各センサ素子の置かれる酸素濃度の雰囲気が同等とみなせる条件(診断許可条件)を定めたものである。
まず、上記〈1〉、つまり燃料カット制御が開始されていることを診断許可条件とするのは次の理由による。すなわち、燃料を供給して筒内1Bで燃焼を行わせているときには燃焼後のガス(排気)が筒内1Bから排気通路3に出て流れる。この場合、EGR制御を行っていない状態で燃料供給を停止する、いわゆる燃料カット制御が開始される場合には吸気通路2を流れる新気がそのまま筒内1Bを通過して排気通路3まで流れ出る。燃料カット制御が開始されていれば、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部が新気相当に掃気されるわけである。このため、2つのセンサ18,19についてセンサ素子の置かれる酸素濃度の雰囲気が同等とみなせる条件として、燃料カット条制御が開始されていることをまず採用するのである。
一方、EGRバルブ10が開かれてEGRガスが吸気通路2に導入され、このEGRガスが導入されている状態で燃料カット制御が開始されることがある。このときには、燃料カット制御の開始タイミングでEGRバルブ10が全閉位置へと切換えられるものの、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2に、その後も暫くは新気の中にEGRガスが存在する。このときには、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2に存在するEGRガスを、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より下流の排気通路3へと掃気する必要がある。これは、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2に存在するEGRガスが、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より下流の排気通路3へと掃気されたタイミングで2つのセンサ18,19についてセンサ素子の置かれる酸素濃度の雰囲気が同等とみなせる条件となるためである。以下では、EGRバルブ10が全閉位置にある状態(つまりEGR制御を行っていない状態)で燃料カット制御が開始される場合を先に説明し、その後でEGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合について言及する。
車両を市場で走行させるシーンであれば、燃料カット制御状態に至らないような運転条件はまず起こりえない。このため、車両を市場で走行させるシーンにおいて燃料カット制御が開始されるたびに吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行うことで、当該診断の頻度を十分に確保することができる。
次に、上記〈2〉の吸気通路2の内部の新気比率と排気通路3の内部の新気比率とは本実施形態で初めて導入するものである。これについて説明すると、EGR制御を行っていない状態で燃料カット制御が開始される場合に排気通路3の内部では、燃料カット制御が開始された直後に排気が100%である状態から徐々に減少して排気が0%の状態へと移行する。これを逆にいうと、新気は燃料カット制御が開始された直後に0%である。この状態から徐々に増加して新気が100%の状態へと移行する。そこで、EGR制御を行っていない状態で燃料カット制御が開始される場合に、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部に新気がどれだけ入ったのかを表す指標として、次の式で定義される「排気通路3の内部の新気比率」を導入する。
排気通路3の内部の新気比率=新気量/(新気量+排気量)×100…(1)
(1)式より排気通路3の内部の新気比率とは、排気通路3を流れるガス量に対する新気量の比率のことである。すると、排気通路3の内部の新気比率が0%であることは(1)式より排気通路3の新気量がゼロであること、つまり筒内1Bで燃焼が行われていることを意味する。EGR制御を行っていない状態で燃料カット制御が開始される場合に排気通路3の内部では、新気比率は、燃料カット制御が開始された直後から増大し、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3から排気が全て掃気された状態で100%に至る。
この排気通路3の内部の新気比率の考え方を吸気通路2の内部にも適用する。すなわち、EGR制御を行っていない状態で燃料カット制御が開始される場合に吸気通路2の内部ではEGR制御を行っていない状態のときに新気が100%の状態となる。言い換えると、吸気通路2の内部ではEGR制御を行っていない状態のときに新気比率は100%の状態であることを意味する。
一方、EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合には、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2に存在するEGRガスを考慮する必要がある。EGR制御を行っている状態では、新気とEGRガスの混合ガスがEGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2を流れるのであるから、吸気通路2の内部の新気比率は、次の式で定義される値となる。
吸気通路2の内部の新気比率=新気量/(新気量+EGRガス量)×100
…(2)
EGR制御を行っている状態の場合に、吸気通路3の内部の新気比率とは、吸気通路2を流れるガス量に対する新気量の比率のことである。(2)式よりEGR制御を行っている状態のとき、吸気通路2の内部の新気比率はEGRガス量に応じた値を採ることとなる。このとき、EGRガス量に応じた新気比率の値をD%とする。そして、EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始されると、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2の内部で、新気比率は、D%より減少してゼロ%に向かう。
こうして、EGR制御を行っている状態のときにまで拡張して導入した吸気通路2の内部の新気比率を用いると、吸気通路2の内部の新気比率と排気通路3の内部の新気比率の差の絶対値が所定値以内である場合に、2つのセンサ18,19について各センサ素子の置かれる酸素濃度の雰囲気が同等とみなせる条件にあると判断できる。上記の所定値はゼロまたは正の値である。上記の所定値がゼロ、つまり吸気通路2の内部の新気比率と排気通路3の内部の新気比率の差の絶対値がゼロのときとは、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2、筒内1B、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部のすべてが新気のみで満たされている状態のことである。この状態で2つのセンサ18,19の出力の比較に基づいて、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行うことが理想である。
一方、上記の所定値が正の値、つまり吸気通路2の内部の新気比率と排気通路3の内部の新気比率の差の絶対値が正の値のときとは、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2、筒内1B、センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部のすべてに新気が満たされているのではなく、排気やEGRガスが多少は含まれている状態のことである。このように排気やEGRガスが多少含まれている状態で2つのセンサ18,19の出力の比較に基づいて、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行ったとき、精度上、問題のない診断結果が得られるのであれば、当該診断を行うことができる。上記の所定値を正の値にまで広げることで、当該診断の機会を増やすことができるのである。
実際には、本実施形態では吸気通路2の内部の新気比率と排気通路3の内部の新気比率を算出し、新気比率の差の絶対値が所定値以内であるか否かを判定する、ことはしていない。これに代えて次のようにしている。まず、EGR制御を行っていない状態で燃料カット制御が開始される場合に排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部が新気で掃気されたときに、吸気通路2の内部の新気比率と排気通路3の内部の新気比率の差の絶対値が所定値以内であると判定する。次に、EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合にEGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2、筒内1B、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部が新気で掃気されたときに、吸気通路2の内部の新気比率と排気通路3の内部の新気比率の差の絶対値が所定値以内であると判定する。なお、上記(1)式、(2)式を用いて吸気通路2の内部の新気比率と排気通路3の内部の新気比率をそれぞれ算出し、新気比率の差の絶対値が所定値以内であるか否かを判定するようにしてもよい。
EGR制御を行わない状態で燃料カット制御が開始される場合から詳述する。この場合には、吸気通路2の内部の新気比率が常に100%の状態にあるので、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3が掃気されれば、排気通路の内部の新気比率も100%となる。これより、吸気通路2の内部の新気比率と排気通路3の内部の新気比率の差の絶対値が所定値以内であることになる。つまり、ステップ4で掃気完了フラグ1=1は、EGR制御を行わない状態で燃料カット制御が開始される場合に排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3が掃気されていることを表している。
一方、EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合には、さらに、EGR通路8の吸気通路2への合流部より上流の吸気通路2に存在するEGRガスが全て、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より下流の排気通路3へ掃気されたときに、吸気通路2の内部の新気比率と排気通路3の内部の新気比率の差の絶対値が所定値以内であることになる。EGRガスは排気であるので、EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合にはこのEGRガスが掃気されるまでは、新気により掃気されたことにならないのである。つまり、ステップ4で掃気完了フラグ2=1は、EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合に、EGR通路8の吸気通路2への合流部より上流の吸気通路2、筒内1B、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部が掃気されていることを表している。なお、吸気通路2の内部の新気比率や排気通路3の内部の新気比率の代用値としては、吸気通路2の酸素濃度や排気通路3の酸素濃度を用いることができる。
EGR制御を行わない状態で燃料カット制御が開始されるときに、新気により排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部が掃気されていること(つまり掃気完了フラグ1=1)を診断許可条件とするのは次の理由による。すなわち、燃料カット許可条件になって燃料カット制御を開始しても、その直前に筒内1Bから排出されたガス(排気)が排気酸素濃度センサ19に到達するまでの間は、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部に排気が存在し続ける。このようにセンサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部に排気が存在し続ける状態では、2つのセンサ18,19についてセンサ素子の置かれる酸素濃度の雰囲気が同等の条件にあるとみなすことができない。一方、燃料カット制御の開始後に所定の時間が経過して排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部に排気が全く存在しなくなれば、つまり、新気によりセンサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部が掃気されれば、2つのセンサ18,19についてセンサ素子の置かれる酸素濃度の雰囲気が同等の条件にあるとみなすことができる。そこで、EGR制御を行わない状態で燃料カット制御が開始される場合には、新気により排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部が掃気されていることを診断許可条件とするのである。
こうしてEGR制御を行わない状態で燃料カット制御が開始される場合に、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部が掃気されたと判定した後に、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行うことで、当該診断の精度を確保することができる。
一方、EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合に、新気によりEGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2、筒内1B、センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部が掃気されていること(つまり掃気完了フラグ2=1)を診断許可条件とするのは次の理由による。すなわち、燃料カット許可条件になって燃料カット制御が開始されても、その直前に筒内1Bから排出されたガス(排気)が排気酸素濃度センサ19に到達するまでの間は、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部に排気が存在し続ける。また、燃料カット制御が開始される直前にEGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2の内部に存在するEGRガスが排気酸素濃度センサ19に到達するまでの間は、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部にEGRガスが存在し続ける。このように排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部に排気やEGRガスが存在し続ける状態では、2つのセンサ18,19についてセンサ素子の置かれる酸素濃度の雰囲気が同等の条件にあるとみなすことができない。一方、燃料カット制御が開始されてから所定の時間が経過し、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部に排気及びEGRガスが全く存在しなくなれば、つまり、新気によりEGR通路8の吸気通路2への合流部下流の吸気通路2、筒内1B、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部が掃気されれば、2つのセンサ18,19についてセンサ素子の置かれる酸素濃度の雰囲気が同等の条件にあるとみなすことができる。そこで、EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合には、新気によりEGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2、筒内1B、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部が掃気されていることを診断許可条件とするのである。
こうしてEGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合に、EGR通路8の吸気通路2への合流部下流の吸気通路2、筒内1B、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部が掃気されたと判定した後に、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行うことで、当該診断の精度を確保することができる。
ステップ3では、EGR制御を行っていない状態で燃料カット制御が開始される場合に、新気により排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部が掃気されたか否かの判定を行う。当該判定は、燃料カット制御開始後のスロットルバルブ通過空気流量に基づいて行う。そして、EGR制御を行っていない状態で燃料カット制御が開始される場合に、新気により排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部がまだ掃気されてないと判定したとき、掃気完了フラグ1=0とし、新気により排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部が掃気されたと判定したとき、掃気完了フラグ1=1とする。
また、ステップ3では、EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合に、新気により、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2、筒内1B、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部が掃気されたか否かの判定を行う。当該判定も、燃料カット制御開始後のスロットルバルブ通過空気流量に基づいて行う。そして、EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合に、新気により、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2、筒内1B、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部がまだ掃気されてないと判定したとき、掃気完了フラグ2=0とする。また、EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合に新気により、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2、筒内1B、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部が掃気されたと判定したとき、掃気完了フラグ2=1とする。
これについて、図5A,図5Bを参照して説明する。図5Aは、EGR制御を行っていない状態でアクセルペダルを戻す等して燃料カット制御が開始される場合のタイミングチャートである。一方、図5Bは、EGR制御を行っている状態でアクセルペダルを戻す等して燃料カット制御が開始される場合のタイミングチャートである。この場合に、燃料カット制御の開始前後で、排気通路3の酸素濃度[%]、スロットルバルブ開度[−]、燃料供給の有無[−]、EGRバルブ開度[−]、スロットバルブ通過空気流量[g/s]がどのように変化するのかをモデルで示している。ここでの「排気通路3」とは、排気酸素濃度センサ19より上流の排気通路3の全体のことである。
図5Aから説明すると、燃料カット制御が開始される前には排気通路3の酸素濃度は0%である。t0の燃料カット制御開始タイミングより、EGRバルブ開度=0として(図5Aの第3段目参照)EGR制御を行っていない状態では、新気が吸気通路2から筒内1Bを介して排気通路3に流れ込むため、排気通路3の酸素濃度が0%から増加する。そして、t1のタイミングで排気通路3の酸素濃度が20.9%(標準大気の酸素濃度)へと落ち着くものとする。EGR制御を行っていない状態で燃料カット制御が開始される場合には、排気通路3の容積分(排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の容積)の空気量が流れる時間がt0からt1までの時間である。
スロットルバルブ開度は、t0の燃料カット制御開始タイミングより、アクセルペダルを戻すことによるアクセルペダル開度の減少に応じて小さくされる。このスロットルバルブ開度の減少に応じて、スロットルバルブ通過空気流量が、t0の燃料カット制御開始タイミングより減少する。これより、スロットルバルブ通過空気流量をt0からt1までの期間(時間)で積分してやれば、排気通路3の容積分(排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の容積)の空気量を求めることができる。
一方、図5Bに示したように、EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合には、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2に存在するEGRガスを考慮する必要がある。この場合には、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2に存在するEGRガス(つまり新気とEGRガスの混合ガス)が全て、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より下流の排気通路3へと掃気されたタイミングで、掃気完了であると判定させればよい。
図5Bを具体的に説明すると、EGRバルブ開度をゼロでない所定値として(図5Aの第3段目参照)EGR制御を行っている状態では、新気とEGRガスの混合ガスが吸気通路2から筒内1Bを介して排気通路3に流れ込む。このため、t0の燃料カット制御開始タイミングより、排気通路3の酸素濃度が0%から増加する。そして、t2のタイミングで排気通路3の酸素濃度が20.9%(標準大気の酸素濃度)へと落ち着くものとする。EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合には、上記図5Aで説明した「排気通路の容積分」に「吸気通路の容積分(EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2の容積)」を加算した合計の空気量が流れる時間がt0からt2までの時間である。
スロットルバルブ開度は、t0の燃料カット制御開始タイミングより、アクセルペダルを戻すことによるアクセルペダル開度の減少に応じて小さくされる。このスロットルバルブ開度の減少に応じて、スロットルバルブ通過空気流量が、t0の燃料カット開始タイミングより減少する。これより、スロットルバルブ通過空気流量をt0からt2までの期間(時間)で積分してやれば、吸気通路2の容積分(EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2の容積)及び排気通路3の容積分(排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の容積)の空気量を求めることができる。
図6AのフローはEGR制御を行っていない状態で燃料カット制御が開始される場合に図4のステップ3で実行する「掃気完了フラグ1の設定」の処理内容を表すサブルーチンである。図6Aのフローは、コントローラ30が一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。ステップ11では、コントローラ30がスロットルバルブ通過空気流量Qth1[g/s]を算出する。EGR制御を行っていない状態で燃料カット制御が開始される場合に、スロットルバルブ4を通過する空気は全て新気である。
上記のスロットルバルブ通過空気流量Qth1はスロットルバルブ4の開口面積とスロットルバルブ4前後の圧力差から求めることができる。スロットルバルブ4の開口面積はスロットルバルブ開度から所定の2次元テーブルを検索することにより求めることができる。スロットルバル開度は、コントローラ30が知っている。
一方、エアフローメータ14には大気圧センサ(図示しない)を付属している。この大気圧センサにより検出される大気圧と、吸気圧力センサ21により検出される吸気圧力とから、スロットルバルブ前後の圧力差を求めることができる。吸気圧力センサ21は、本実施形態では、図1に示したようにスロットルバルブ4の下流の吸気通路2に取付けてある。
ステップ12では、コントローラ30がこのようにして算出したスロットルバルブ通過空気流量Qth1を前回のスロットルバルブ通過空気流量積算値であるSUMQ1z[g]に加算した値を今回のスロットルバルブ通過空気流量積算値SUMQ1[g]とすることで、燃料カット制御が開始されてからのスロットルバルブ通過空気流量Qth1を積算する。エンジン始動時にSUMQ1zの初期値としてゼロを入れておく。
ステップ13では、燃料カット制御が開始されてからのスロットルバルブ通過空気流量積算値SUMQ1と所定値1をコントローラ30が比較する。所定値1は、図5A最下段に示した、排気通路の容積分(排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の容積)の空気量(ハッチングした部分の面積)で、予め求めておく。燃料カット制御が開始されてからのスロットルバルブ通過空気流量積算値SUMQ1が所定値1未満であれば、コントローラ30は排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部がまだ掃気されていないと判断する。このときには、コントローラ30がステップ15に進んで、掃気完了フラグ1(エンジン始動時にゼロに初期設定する)=0とする。
ステップ13で燃料カット制御が開始されてからのスロットルバルブ通過空気流量積算値SUMQ1が所定値1未満である限り、コントローラ30はステップ15の処理を繰り返す。やがて、ステップ13で燃料カット制御が開始されてからのスロットルバルブ通過空気流量積算値SUMQ1が所定値1以上になると、コントローラ30は排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部が掃気されたと判断する。このときにはコントローラ30はステップ14に進んで、掃気完了フラグ1=1とする。このようにして設定した掃気完了フラグ1の値はコントローラ30がメモリに保存しておく。これでサブルーチンを終了するので、コントローラ30は図4のフローに戻る。
図4のステップ4ではコントローラ30がこの掃気完了フラグ1をみる。掃気完了フラグ1=0であれば、新気により排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部がまだ掃気されていないとコントローラ30が判断する。このときには、コントローラ30は、図4のステップ7に進み、ステップ7の処理を実行する。一方、図4のステップ4で掃気完了フラグ1=1であれば、新気によりセンサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部が掃気されたとコントローラ30が判断し、図4のステップ5に進む。
次に、図6BのフローはEGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合に図4のステップ3で実行する「掃気完了フラグ2の設定」の処理内容を表すサブルーチンである。図6Aのフローは、コントローラ30が一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。ステップ21では、コントローラ30がスロットルバルブ通過空気流量Qth2[g/s]を算出する。EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合に、燃料カット制御が開始された直後であれば、スロットルバルブ4を通過する空気は新気とEGRガスの混合ガスであり、燃料カット制御が開始されてからしばらくの間は、この状態が続く。
上記スロットルバルブ通過空気流量Qth2の算出方法は、図6Aのステップ11のスロットルバルブ通過空気流量Qth1の算出方法と同様である。すなわち、スロットルバルブ4の開口面積とスロットルバルブ4前後の圧力差から求めることができる。
ステップ22では、コントローラ30が、算出したスロットルバルブ通過空気流量Qth2を前回のスロットルバルブ通過空気流量積算値であるSUMQ2z[g]に加算した値を今回のスロットルバルブ通過空気流量積算値SUMQ2[g]とすることで、燃料カット制御が開始されてからのスロットルバルブ通過空気流量Qth2を積算する。エンジン始動時にSUMQ2zの初期値としてゼロを入れておく。
ステップ23では、燃料カット制御が開始されてからのスロットルバルブ通過空気流量積算値SUMQ2と所定値2をコントローラ30が比較する。所定値2は、図5B最下段に示した、吸気通路及び排気通路の容積分(EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2、筒内1B、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各容積)の空気量(ハッチングした部分の面積)で、予め求めておく。燃料カット制御が開始されてからのスロットルバルブ通過空気流量積算値SUMQ2が所定値2未満であれば、コントローラ30はEGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2、筒内1B、センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部がまだ掃気されていないと判断する。このときには、コントローラ30がステップ25に進んで、掃気完了フラグ2(エンジン始動時にゼロに初期設定する)=0とする。
ステップ23で燃料カット制御が開始されてからのスロットルバルブ通過空気流量積算値SUMQ2が所定値2未満である限り、コントローラ30はステップ25の処理を繰り返す。やがて、ステップ23で燃料カット制御が開始されてからのスロットルバルブ通過空気流量積算値SUMQ2が所定値2以上になると、コントローラ30はEGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2、筒内1B、センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部が掃気されたと判断する。このときにはコントローラ30はステップ24に進んで、掃気完了フラグ2=1とする。このようにして設定した掃気完了フラグ2の値はコントローラ30がメモリに保存しておく。これでサブルーチンを終了するので、コントローラ30は図4のフローに戻る。
図4のステップ4ではコントローラ30がこの掃気完了フラグ2をみる。掃気完了フラグ2=0であれば、新気によりEGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2、筒内1B、センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部がまだ掃気されていないとコントローラ30が判断する。このときには、コントローラ30は、図4のステップ7に進み、ステップ7の処理を実行する。一方、図4のステップ4で掃気完了フラグ2=1であれば、新気によりEGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2、筒内1B、センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部が掃気されたとコントローラ30が判断し、図4のステップ5に進む。
なお、図6Aのフローと図6Bのフローが続いて行われることはなく、いずれかのフローが選択されて行われる。つまり、コントローラ30は、燃料カット制御が開始される直前にEGR制御が行われているか否かを判定しており、燃料カット制御が開始される直前にEGR制御が行われていない状態で燃料カット制御が開始されると図6Aのフローが選択される。一方、燃料カット制御が開始される直前にEGR制御が行われている状態で燃料カット制御が開始されると図6Bのフローが選択される。
次に、上記〈3〉、つまり2つのセンサ18,19のセンサ素子が活性化している(活性状態にある)ことを診断許可条件とするのは次の理由による。すなわち、センサ18,19は通常、センサ素子内部にヒータを有している。そして、イグニッションスイッチ(図示しない)がオンになったタイミングでコントローラ30が各ヒータに通電することでセンサ素子が活性化する温度へと上昇するように制御している。これは、センサ素子が活性化する前にはセンサ18,19の検出精度が低下するので、センサ素子を活性化させることで、センサ18,19の検出精度を高くするためである。これより、排気酸素濃度センサ19の出力を用いて、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を、精度良く実行させるためにはセンサ18,19の各センサ素子が十分に活性化している必要がある。そこで、2つのセンサ18,19のセンサ素子が活性化していることを判定した後に、排気酸素濃度センサ19の出力を用いて、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を開始することで、当該診断の精度が低下することを防止するのである。
センサ18,19のセンサ素子が活性化しているか否かは、イグニッションスイッチがオンになったタイミングからの経過時間で判定すればよい。イグニッションスイッチがオンになったタイミングからセンサ素子が活性化するまでの時間は予め判っているので、この時間を所定時間として定めておく。イグニッションスイッチがオンになったタイミングからの経過時間と、この所定時間を比較し、経過時間が所定時間以上となれば、センサ18,19のセンサ素子が活性化したとコントローラ30が判定する。ここで、上記の所定時間は大気の温度が所定温度(例えば20℃)のときに適合される。なお、センサ18,19の各ヒータに通電されていることを判定したときにセンサ18,19のセンサ素子が活性化していると判定する手法がある。しかしながら、センサ18,19のヒータに通電されていることと、センサの18,19のセンサ素子が活性化していることとは等価でない。例えば、大気の温度が適合時の上記所定温度より低い環境条件では、センサ18,19のヒータに通電されていても、センサの18,19のセンサ素子が活性化していないことがある。この場合にも、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を許可したのでは、当該診断の精度が低下してしまう。
このように、センサ18,19のヒータに通電されていることを判定するのではなく、センサ18,19のセンサ素子が活性化していることを判定した後に、排気酸素濃度センサ19の出力を用いて、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行うことで、当該診断の精度が低下することを防止ができる。
ここでは、センサ18,19のセンサ素子が活性状態にあるか否か、あるいは活性化しているか否かを、イグニッションスイッチがオンになったタイミングからの経過時間で判定したが、この場合に限られるものでない。これについて説明すると、イグニッションスイッチがオンになったタイミングで即座に活性化する酸素濃度センサが開発されている。このような将来的に商品化される酸素濃度センサを吸気酸素濃度センサ18及び排気酸素濃度センサ19として備えるエンジンシステムでは、イグニッションスイッチがオンになったタイミングでセンサ18,19のセンサ素子が活性化していると判定すればよい。
図7のフローチャートは、コントローラ30が吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行うためのものである。図7のフローは、図4のフローに続けて一定時間毎(例えば10ms毎)に実行する。
ステップ31では、コントローラ30は異常診断フラグ2をみる。ここでは、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断がまだ行われていない、つまり異常診断フラグ2=0であるとしてステップ32に進む。ステップ32では、コントローラ30は診断許可フラグ(図4のフローにおいて設定済み)をみる。診断許可フラグ=1であるときには、コントローラ30は2つのセンサ18,19についてセンサ素子の置かれる酸素濃度の雰囲気が同等とみなせる条件にあると判断し、ステップ33に進む。
コントローラ30は、ステップ33で2つのセンサ18,19の出力[V]の差を算出し、ステップ34で2つのセンサ18,19の出力の差[V]の絶対値と所定値[V]を比較する。所定値は、ゼロまたは正の値で、適合により予め設定しておく。出力の差の絶対値が所定値未満であれば、コントローラ30は2つのセンサ18,19が同等の出力をしている、つまり、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常である(異常が生じていない)とコントローラ30が診断する。このときには、コントローラ30はステップ36に進んで、異常診断フラグ2=0とする。
一方、出力の差の絶対値が所定値以上であれば、コントローラ30は2つのセンサ18,19が同等の出力をしていない、つまり、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常でない(異常が生じている)と診断する。このときには、コントローラ30はステップ35に進んで、異常診断フラグ2=1とする。
なお、本実施形態では、2つのセンサ18,19の出力の差を算出しているが、出力の差に限定されるものでない。2つのセンサ18,19の出力の比であってよい。
このようにして設定した異常診断フラグ2の値は、その値が消失しないようにコントローラ30が、不揮発性メモリに保存しておく。ステップ35で異常診断フラグ2=1としたことで、次回以降はステップ31で異常診断フラグ2=1となる。このため、コントローラ30はステップ32以降に進むことができない。つまり、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常でない(異常が生じている)と診断した後には、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常であるか否かの2度目の診断をコントローラ30が続けて行うことはない。
ここでは、2つのセンサ18,19の出力に基づいて、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常であるか否かの診断を行ったが、当該診断に用いるパラメータは、センサ18,19の出力そのものに限られない。たとえば、吸気酸素濃度センサ18の出力は酸素濃度に換算され、排気酸素濃度センサ19の出力は空燃比に換算されているので、両者を比較するためには同じ物理量に揃えてやればよい。そこで、排気酸素濃度センサ19の出力を酸素濃度にまず換算する。そして、この換算した酸素濃度と、吸気酸素濃度センサ18により検出される酸素濃度とを比較させてもよい。また、吸気酸素濃度センサ18の出力を空燃比にまず換算する。そして、この換算した空燃比と、排気酸素濃度センサ19により検出される空燃比とを比較させてもよい。
ここで、本実施形態の作用効果をまとめる。
本実施形態の吸気酸素濃度センサ18の診断方法は、エンジンの吸気通路2に設けた吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行うものである。そして、吸気通路2の内部と排気通路3の内部との新気比率の差が所定値以内であるか否かを判定し、前記新気比率の差が所定値以内の場合に、吸気酸素濃度センサ18の出力と排気通路3に設けた排気酸素濃度センサ19の出力とを比較し、その比較結果に基づいて前記診断を行う。本実施形態によれば、吸気通路2の内部と排気通路3の内部の新気比率の差が所定値以内であることより2つのセンサ18,19についてセンサ素子の置かれる酸素濃度の雰囲気が同等とみなせる条件において、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行うのである。これによって、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断に吸気圧力センサを用いないのであるから、従来装置のように吸気酸素濃度センサ18の取付け位置について設計上の制約を受けることを回避できる。また、本実施形態では、吸気圧力が大気圧以下となる自然吸気の運転領域において精度が低下する吸気圧力センサを用いないので、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断について、当該診断の自然吸気の運転領域での精度低下を回避できる。
吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常でなく、出力特性に異常が生じていると、実際のEGR率からのエラーが生じ、このEGR率の検出エラーに起因して適切な燃焼制御を行うことができない事態が生じることがある。例えば、吸気酸素濃度センサ18の出力から換算されたEGR率が実際のEGR率より小さいときには、EGRバルブ10がエラーの分だけ余計に開かれる。これによって、EGRガスの過多となり筒内1Bでの燃焼状態が悪化してしまう。一方、上記の検出エラーで吸気酸素濃度センサ18の出力から換算されたEGR率が実際のEGR率より大きいときには、EGRバルブ10が検出エラーの分だけ余計に閉じられる。これによって、EGRガスの過少となり筒内1Bでの燃焼温度が上昇しノッキングが生じ得る。一方、本実施形態では、エンジンが、排気通路3と吸気通路2を連通するEGR通路8と、EGR通路を8流れるEGRガス量を調整可能なEGRバルブ10と、を備え、吸気酸素濃度センサ18が、吸気通路2のEGR通路8との合流部よりも下流側に位置している。そして、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行っている。吸気酸素濃度センサ18の出力特性に異常が生じていることに伴うEGR率の検出エラーがあると、前述したように適切な燃焼制御ができなくなる事態が生じ得るのであるが、本実施形態によれば、こうした事態を回避することができる。
吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行うためには、吸気酸素濃度センサ18の取付け位置の吸気通路2の内部と、排気酸素濃度センサ19の取付け位置の排気通路3の内部の酸素濃度の雰囲気が同等とみなせる条件になっている必要がある。エンジンの運転中、筒内1Bで燃焼していれば排気通路3に排気が流れている。一方、エンジンの運転中でもEGR制御を行っていない状態で燃料カット制御が開始される場合には吸気通路2を流れる新気が排気通路3まで流れ、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3内部が新気相当に掃気されるため、2つのセンサ18,19の取付け位置の酸素濃度の雰囲気が同等とみなせる条件になる。本実施形態によれば、吸気通路2と排気通路3の内部の新気比率の差が所定値以内の場合が、排気通路3(排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3)の内部が新気で掃気された場合である。この場合に、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行うことで、当該診断を精度良く行うことができる。
一方、EGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始される場合には、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2に存在するEGRガスを考慮する必要がある。この場合には、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2に存在するEGRガス(つまり新気とEGRガスの混合ガス)が全て、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より下流の排気通路3へと掃気されたタイミングで、掃気が完了する。本実施形態によれば、吸気通路2と排気通路3の内部の新気比率の差が所定値以内の場合が、吸気通路2(EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2)及び排気通路3(排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3)の内部が新気で掃気された場合である。この場合に、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行うことで、当該診断を精度良く行うことができる。
本実施形態によれば、EGR制御が行われていない状態で燃料カット制御が開始される場合に、新気により排気通路3(排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3)の内部が掃気されているか否かの判定を、燃料カット制御開始後のスロットルバルブ通過空気流量に基づいて行っている。一方、EGR制御が行われている状態で燃料カット制御が開始される場合に、新気により吸気通路2(EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2)及び排気通路3(排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3)の内部が掃気されているか否かの判定を、燃料カット制御開始後のスロットルバルブ通過空気流量に基づいて行っている。これによって、EGR制御が行われていない状態で燃料カット制御が開始される場合、EGR制御が行われている状態で燃料カット制御が開始される場合のいずれの場合とも、燃料カット制御開始直前のスロットルバルブの開度に関係なく、掃気されているか否かの判定を精度良く行うことができる。
本実施形態によれば、吸気酸素濃度センサ18及び排気酸素濃度センサ19のセンサ素子が活性状態である場合に、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を実行する。センサ出力の精度がよいセンサ素子の活性状態で吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行うので、当該診断の精度を確保できる。
実施形態では、エンジンの運転中にEGR制御を行っていない状態で燃料カット制御が開始され、新気が排気酸素濃度センサ19の取付け位置の排気通路3まで到達することで、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部が掃気されたときに吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行った。また、実施形態では、エンジンの運転中にEGR制御を行っている状態で燃料カット制御が開始され、新気が排気酸素濃度センサ19の取付け位置の排気通路3まで到達することで、EGR通路8の吸気通路2への合流部より下流の吸気通路2、筒内1B、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の各内部が掃気されたときに吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行った。つまり、エンジン1の運転中に、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行う例を示した。
改めて考えてみると、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部が新気相当になる条件は、エンジン運転中に限られない。例えば、エンジンの停止後、十分な時間、ソーク(低温放置)され、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部の排気が、滞留により排気酸素濃度センサ19の取付け位置より下流の排気通路3へと十分拡散し、排気酸素濃度センサ19の取付け位置より上流の排気通路3の内部が新気相当になることがあり得る。こうした場合に、将来的に商品化され得る、イグニッションをONにしたタイミングで即座に活性化する酸素濃度センサを組み合わせることで、イグニッションスイッチがオンなった後かつエンジンの始動前においても、新気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を行うことができる。
このように、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かの診断を、イグニッションスイッチがオンになった後かつエンジンの始動前にも行うことで、当該診断の頻度が増大する。これによって、吸気酸素濃度センサ18の出力特性が正常か否かを早期に診断することができる。
実施形態では、ロープレッシャー・EGR装置を備える場合で説明したが、いわゆるハイプレッシャー・EGR装置を備える場合にも本発明の適用がある。ロープレッシャー・EGR装置やハイプレッシャー・EGR装置は有さず、かつ吸気通路に何らかの目的で吸気酸素濃度センサを取付けたエンジンの場合にも本発明の適用がある。