JP2018035412A - 方向性電磁鋼板の製造方法、及び方向性電磁鋼板 - Google Patents

方向性電磁鋼板の製造方法、及び方向性電磁鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】方向性電磁鋼板の鉄損を低減しつつ、方向性電磁鋼板の曲げ加工時の割れの発生を抑制する。【解決手段】鋼板の搬送方向と交差する方向にレーザビームを照射して、前記搬送方向に所定間隔で溝を形成する工程を含む方向性電磁鋼板の製造方法であって、延在方向が前記鋼板の板幅方向と平行に形成された第1溝と、延在方向が前記板幅方向と交差するように形成された第2溝とを、前記板幅方向において混在するように形成することを特徴とする、方向性電磁鋼板の製造方法。【選択図】図6

Description

本発明は、レーザビームを照射して溝を形成する方向性電磁鋼板の製造方法、及び方向性電磁鋼板に関する。
方向性電磁鋼板は、比較的小さな磁化力において磁化する際のエネルギー損失(鉄損)が低いため、例えば変圧器(トランス)の巻鉄芯を製造する際に用いられている。なお、方向性電磁鋼板の表面には、通常、絶縁被膜がコーティングされる。これにより、巻鉄芯における鋼板層間の絶縁を確保している。
上記の方向性電磁鋼板においては、鉄損を更に低減することが求められている。かかる鉄損を改善する方策として、鋼板に溝を形成する方法が行なわれている。
例えば、下記の特許文献1に開示されているように、電解エッチングにより溝を形成する方法がある。かかる方法では、例えば二次再結晶後の表面にグラス被膜が形成された鋼板を用い、レーザや機械的方法により表面のグラス被膜を線状に除去し、エッチングにより地鉄が露出した部分に溝を形成する。しかし、電解エッチング法では、工程が複雑であり、製造コストが高くなり、処理速度に限界がある。
また、特許文献2に開示されているように、機械的な歯型プレスにより溝を形成する方法がある。しかし、かかる方法では、電磁鋼板が約3%のSiを含む非常に硬い鋼板であるため、歯型の摩耗及び損傷が発生しやすい。歯型が摩耗すると、溝深さにばらつきが発生するため、鉄損改善効果が不均一になる。
上述した方法の問題を解決する方法として、特許文献3、4に開示されているように、鋼板にレーザビームを照射して溝を形成する方法がある。かかる方法では、高パワー密度の集光レーザビームにより高速溝加工が可能である。また、非接触加工であるため、レーザパワー等の制御により安定して均一な溝加工を行うことが可能である。
特公昭62−54873号公報 特公昭62−53579号公報 特開平6−57335号公報 特開2003−129135号公報
ところで、レーザビームを照射して溝を形成する際に、鋼板の溝部に、溶融物や溶融再凝固物(以下、溶融物等と呼ぶ)が発生する。かかる溶融物等が発生すると、応力が集中しやすくなる。かかる場合には、巻鉄芯の製造時において方向性電磁鋼板の曲げ加工を行う際に、方向性電磁鋼板が割れる恐れがある。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、方向性電磁鋼板の鉄損を低減しつつ、方向性電磁鋼板の曲げ加工時の割れの発生を抑制することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、鋼板の搬送方向と交差する方向にレーザビームを照射して、前記搬送方向に所定間隔で溝を形成する工程を含む方向性電磁鋼板の製造方法であって、延在方向が前記鋼板の板幅方向と平行に形成された第1溝と、延在方向が前記板幅方向と交差するように形成された第2溝とを、前記板幅方向において混在するように形成することを特徴とする、方向性電磁鋼板の製造方法が提供される。
また、上記の方向性電磁鋼板の製造方法において、前記板幅方向に沿って、レーザビームを照射する第1照射部及び第2照射部が配置されており、前記第1照射部によって前記第1溝を形成し、前記第2照射部によって前記第2溝を形成しても良い。
また、上記の方向性電磁鋼板の製造方法において、前記第1溝と前記第2溝を、前記板幅方向において交互に形成しても良い。
また、上記の方向性電磁鋼板の製造方法において、前記第1溝と前記第2溝のうちの前記第2溝の割合Aは、前記第2溝と前記板幅方向との成す角度を角度θとした場合に、下記の式(1)を満たしても良い。
割合A=−3.22×角度θ+110 ・・・(1)
また、上記の方向性電磁鋼板の製造方法において、前記レーザビームを照射する工程より前に、前記鋼板の前記板幅方向についての鉄損の分布を測定する工程をさらに含み、
前記板幅方向において前記鉄損が比較的大きい部分に前記第1溝を優先的に形成し、前記板幅方向において前記鉄損が比較的小さい部分に前記第2溝を優先的に形成してもよい。
また、上記の方向性電磁鋼板の製造方法において、前記溝の深さの大きさは、前記溝の幅の大きさの0.2倍以上であっても良い。
上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、鋼板の搬送方向と交差する方向にレーザビームが照射されて、前記搬送方向に所定間隔で形成された溝を有する方向性電磁鋼板であって、延在方向が前記鋼板の板幅方向と平行に形成された第1溝と、延在方向が前記板幅方向と交差するように形成された第2溝とが、前記板幅方向において混在するように形成されていることを特徴とする、方向性電磁鋼板が提供される。
以上説明したように本発明によれば、方向性電磁鋼板の鉄損を低減しつつ、方向性電磁鋼板の曲げ加工時の割れの発生を抑制することが可能となる。
本実施形態に係る方向性電磁鋼板10の構成の一例を示す断面図である。 本実施形態に係る方向性電磁鋼板10の製造工程の一例を示すフローチャートである。 本実施形態に係る方向性電磁鋼板10の製造工程の図2に示した例と異なる例を示すフローチャートである。 本実施形態に係るレーザ加工装置100の構成例を示す模式図である。 比較例に係る方向性電磁鋼板900における溝の形成状態を示す模式図である。 本実施形態に係る方向性電磁鋼板10における溝の形成状態を示す模式図である。 方向性電磁鋼板10における溝の形成状態の変形例を示す模式図である。 本実施形態に係る方向性電磁鋼板10の製造工程の図2及び図3に示した例と異なる例を示すフローチャートである。 溝の傾斜角度と、鋼板の繰り返し曲げ平均回数との関係の一例を示すグラフである。 溝の傾斜角度と、鉄損改善率との関係の一例を示すグラフである。 傾斜溝の比率と、繰り返し曲げ平均回数との関係の一例を示すグラフである。 傾斜溝の傾斜角度と、傾斜溝の比率との関係の一例を示すグラフである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<方向性電磁鋼板の概要>
方向性電磁鋼板は、鋼板の結晶粒の磁化容易軸(体心立方晶の<100>方向)が製造工程における圧延方向に略揃っている電磁鋼板である。方向性電磁鋼板は、圧延方向に磁化が向いた磁区を、磁壁を挟んで複数配列した構造を有する。このような方向性電磁鋼板は圧延方向に磁化しやすいため、磁力線の方向がほぼ一定に流れるトランスの鉄芯材料として適している。
トランスは、通常、積みトランスと巻きトランスとに大別される。本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、鋼板に巻き変形を加えながらトランスの形状に組み上げる巻きトランスの鉄芯材料として利用される。
図1は、本実施形態に係る方向性電磁鋼板10の構成の一例を示す断面図である。図1に示すように、方向性電磁鋼板10は、鋼板本体(地鉄)12と、鋼板本体12の両面に形成されたグラス被膜14と、グラス被膜14上に形成された絶縁被膜16と、を有する。
鋼板本体12は、Siを含有する鉄合金で構成されている。鋼板本体12の組成は、一例として、Si;2.5質量%以上4.0質量%以下、C;0.02質量%以上0.10質量%以下、Mn;0.05質量%以上0.20質量%以下、酸可溶性Al;0.020質量%以上0.040質量%以下、N;0.002質量%以上0.012質量%以下、S;0.001質量%以上0.010質量%以下、P;0.01質量%以上0.04質量%以下、残部がFe及び不可避不純物である。鋼板本体12の厚さは、例えば0.15mm以上で、かつ0.35mm以下である。
グラス被膜14は、例えば、フォルステライト(Mg2SiO4)、スピネル(MgAl2O4)及びコージライト(Mg2Al4Si5O18)、といった複合酸化物によって構成されている。グラス被膜14の厚さは、例えば1μmである。
絶縁被膜16は、例えば、コロイド状シリカとリン酸塩(リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウムなど)を主体とするコーティング液やアルミナゾルとホウ酸を混合したコーティング液によって構成されている。
上述した構成の方向性電磁鋼板10は変圧器(トランス)の巻鉄芯に用いられ、鉄損を更に低減させるために、方向性電磁鋼板10の製造時の搬送方向(圧延方向)と交差する方向に延在する溝が、鋼板本体(地鉄)12の表面に圧延方向に所定の溝間隔で形成されている。詳細は後述するが、溝は、レーザ加工装置によって地鉄の表面にレーザビームを照射することで形成される。
<方向性電磁鋼板の製造方法>
図2を参照しながら、本実施形態に係る方向性電磁鋼板10の製造方法について説明する。図2は、本実施形態に係る方向性電磁鋼板10の製造工程の一例を示すフローチャートである。
方向性電磁鋼板10の製造工程は、図2に示すように、鋳造工程S2と、熱間圧延工程S4と、焼鈍工程S6と、冷間圧延工程S8と、脱炭焼鈍工程S10と、焼鈍分離剤塗布工程S12と、最終仕上げ焼鈍工程S14と、絶縁被膜形成工程S16と、レーザ照射工程S18と、絶縁被膜形成工程S20と、を含む。
鋳造工程S2では、所定の組成に調整された溶鋼を連続鋳造機に供給して、鋳塊を連続的に形成する。熱間圧延工程S4では、鋳塊を所定温度(例えば1150〜1400℃)に加熱して熱間圧延を行う。これにより、所定厚さ(例えば1.8〜3.5mm)の熱間圧延材が形成される。
焼鈍工程S6では、熱間圧延材に対して、例えば、加熱温度750〜1200℃、加熱時間30秒〜10分の条件で熱処理を行う。冷間圧延工程S8では、熱間圧延材の表面を酸洗した後に、冷間圧延を行う。これにより、所定厚さ(例えば、0.15〜0.35mm)の冷間圧延材が形成される。
脱炭焼鈍工程S10では、冷間圧延材に対して、例えば、加熱温度700〜900℃、加熱時間1〜3分の条件で熱処理を行い、鋼板本体を形成する。鋼板本体12の表面には、シリカ(SiO2)を主体とする酸化物層が形成される。焼鈍分離剤塗布工程S12では、鋼板本体12の酸化物層の上に、マグネシア(MgO)を主体とする焼鈍分離剤を塗布する。
最終仕上げ焼鈍工程S14では、焼鈍分離剤が塗布された鋼板本体12をコイル状に巻き取った状態で、バッチ式炉内に挿入して熱処理を行う。熱処理条件は、例えば、加熱温度1100〜1300℃、加熱時間20〜24時間である。この際、鋼板本体12の圧延方向と磁化容易軸とが一致した、いわゆるゴス粒が優先的に結晶成長する。この結果、仕上げ焼鈍の後に結晶方位性(結晶配向性)が高い方向性電磁鋼板が得られることとなる。また、最終仕上げ焼鈍工程S14により、酸化物層と焼鈍分離剤が反応し、鋼板本体12の表面にフォルステライト(Mg2SiO4)からなるグラス被膜14が形成される。
絶縁被膜形成工程S16では、コイル状に巻き取られた鋼板本体12を巻き解して板状に伸ばして搬送する。そして、鋼板本体12の両面に形成されたグラス被膜14の上に絶縁剤を塗布、焼付けを行い、絶縁被膜16を形成する。絶縁被膜16が形成された鋼板本体12は、コイル状に巻き取られる。
レーザ照射工程S18では、コイル状に巻き取られた鋼板本体12を巻き解して板状に伸ばして搬送する。そして、後述するレーザ照射装置によって、鋼板本体12の片面に向けてレーザビームを集光・照射し、圧延方向に搬送される電磁鋼板の圧延方向と交差する交差方向に走査する。これにより、鋼板本体12の表面に、交差方向に延在する溝が、圧延方向において所定間隔で形成される。なお、レーザビームの集光・照射は、鋼板本体12の表面及び裏面の両方から行ってもよい。
絶縁被膜形成工程S20では、溝が形成された鋼板本体12に対して、絶縁被膜形成工程S16と同様に絶縁被膜16を形成する。すなわち、2回目の絶縁被膜16を形成する。上記の一連の工程により、圧延方向と交差する方向に延在する溝が、鋼板本体(地鉄)の表面に圧延方向に所定の溝間隔で形成された方向性電磁鋼板が製造される。
このようにして、鋼板本体12の表面にグラス被膜14及び絶縁被膜16が形成され、レーザ照射によって磁区制御された方向性電磁鋼板10が製造される。その後、製造された複数枚の方向性電磁鋼板10を重ねた状態で巻くことで、巻鉄芯が製造されることになる。
なお、上記では、レーザ照射工程S18が絶縁被膜形成工程S16の後に行われることとしたが、これに限定されず、レーザ照射工程S18が絶縁被膜形成工程S16よりも前に行われてもよい。例えば、方向性電磁鋼板10の製造工程において、図3に示すように、冷間圧延工程S8の後に、レーザ照射工程S18が行われても良い。かかる場合には、図3に示すように、レーザ照射工程S18の後に絶縁被膜形成工程S16が行われるので、2回目の絶縁被膜形成工程S20は方向性電磁鋼板10の製造工程から省略され得るので、製造工程を短縮できる。また、脱炭焼鈍工程S10の後に、レーザ照射工程S18が行われても良い。更に、最終仕上げ焼鈍工程S14の後に、レーザ照射工程S18が行われても良い。かかる場合においても、レーザ照射工程S18の後に絶縁被膜形成工程S16が行われるので、2回目の絶縁被膜形成工程S20が不要となり、製造工程を短縮できる。
<レーザ加工装置の構成>
図4を参照しながら、方向性電磁鋼板10にレーザビームを照射して溝を形成するレーザ加工装置100の構成例について説明する。図4は、本実施形態に係るレーザ加工装置100の構成例を示す模式図である。
レーザ加工装置100は、圧延方向に一定速度で搬送される方向性電磁鋼板10の絶縁被膜16の上から圧延方向と交差する交差方向にレーザビームを照射して、交差方向に延在する溝を形成する。交差方向は、鋼板の板厚方向とも交差する方向である。レーザ加工装置100は、図4に示すように、レーザ発振器102と、伝送ファイバ104と、レーザ照射装置106とを、それぞれ複数有する。図4では、3つのレーザ発振器102、伝送ファイバ104、及びレーザ照射装置106が示されているが、それぞれの構成は同様である。
レーザ発振器102は、例えば高出力のレーザビームを出射する。伝送ファイバ104は、レーザ発振器102から出射されたレーザビームをレーザ照射装置106まで伝送する光ファイバである。
レーザ発振器102の種類としては、微小集光特性に優れ、狭い溝を形成できる観点等から、ファイバレーザ又はディスクレーザが好ましい。ファイバレーザ又はディスクレーザは、波長が近紫外域から近赤外域(例えば1μm帯)にあるためレーザビームを光ファイバによる伝送が可能であり、レーザビームを光ファイバで伝送することで比較的コンパクトなレーザ加工装置100を実現できる。また、レーザ発振器102は連続波レーザでもパルスレーザでも良い。
レーザ照射装置106は、レーザ発振器102から伝送ファイバ104により伝送されたレーザビームを方向性電磁鋼板10に集光・走査させる。ここで、レーザビームの集光形状は、例えばレーザ照射に伴う溶融物の発生を抑制する観点等から、楕円形状である。一つのレーザ照射装置106がレーザビームを走査できる幅は、方向性電磁鋼板10の板幅よりも小さいこともあるが、図4に示すようにレーザ照射装置106を板幅方向に複数配列させることにより、方向性電磁鋼板10の板幅全域に亘ってレーザビームを走査できる。
本実施形態としては、レーザ照射装置106としてレーザ照射装置106Aとレーザ照射装置106Bが、板幅方向に沿って交互に配置されている。レーザ照射装置106Aは、延在方向が鋼板の板幅方向と平行な溝(以下、平行溝とも呼ぶ)D1を形成する。具体的には、レーザ照射装置106Aは、板幅方向と平行な方向へレーザビームを少なくとも1回走査することによって、平行溝D1を形成する。レーザ照射装置106Bは、延在方向が鋼板の板幅方向と交差する溝(以下、傾斜溝とも呼ぶ)D2を形成する。具体的には、レーザ照射装置106Bは、板幅方向と交差する方向へレーザビームを少なくとも1回走査することによって、傾斜溝D2を形成する。これにより、板幅方向において、平行溝D1と傾斜溝D2が交互に形成される。本実施形態では、平行溝D1が第1溝に該当し、傾斜溝D2が第2溝に該当する。また、レーザ照射装置106Aが第1照射部に該当し、レーザ照射装置106Bが第2照射部に該当する。このように平行溝D1と傾斜溝D2を板幅方向において混在させる理由については、後述する。
また、複数のレーザ照射装置106により形成される複数の溝は、例えば、互いに離れるように、板幅方向に沿って断続的に形成される。具体的には、平行溝D1及び傾斜溝D2は、互いに離れるように、板幅方向に沿って断続的に形成され得る。その場合、互いに隣り合う溝が結合することにより所定の角度を成すような屈曲した溝部は形成されない。なお、以下では、方向性電磁鋼板10において複数の溝が互いに離れるように形成される例について主に説明するが、かかる例に限定されず、レーザ照射装置106と方向性電磁鋼板10との相対関係に起因して、複数の溝は互いに接触して形成されたり、交差するように形成されることがあってもよい。
なお、上記では、方向性電磁鋼板10上のレーザビームの集光形状が楕円形状であることとしたが、これに限定されない。例えば、レーザビームの集光形状が、真円形状であっても良い。
また、上記では、レーザ発振器102がファイバレーザ又はディスクレーザであることとしたが、これに限定されない。例えば、レーザ発振器102が、COレーザであっても良い。
<巻トランス製造時の鋼板の曲げ加工に伴う割れの発生>
溝が形成された方向性電磁鋼板は、巻きトランスの鉄芯(巻鉄芯)として利用される。そして、巻鉄芯の製造時に、方向性電磁鋼板の曲げ加工が行なわれる。かかる曲げ加工の際に、溝に起因して鋼板が割れる恐れがある。
ここで、比較例として、図5に示すように圧延方向に直交する溝(別言すれば、板幅方向に平行な溝)D1が形成された方向性電磁鋼板を例に挙げて、鋼板の割れについて説明する。
図5は、比較例に係る方向性電磁鋼板900における溝D1の形成状態を示す模式図である。図5では、延在方向が板幅方向と平行な4つの溝D1が、板幅方向に沿って断続的に形成されている。すなわち、4つの溝D1が、圧延方向において若干隙間があるように形成されている。方向性電磁鋼板の曲げ加工においては、通常、鋼板の圧延方向が曲げられる。このため、図5に示すように溝D1が鋼板の板幅方向に平行に形成された場合には、溝D1の幅方向が曲げ方向と同じであるため、鋼板の割れが発生する可能性が高まる。
鋼板が割れる原因としては、レーザビームを照射して溝D1を形成する際に鋼板の溝部に発生する溶融物や溶融再凝固物(以下、溶融物等と呼ぶ)が挙げられる。かかる溶融物等が発生すると、応力が集中しやすくなるため、鋼板の曲げ加工を行う際に、鋼板が割れる可能性が高まる。
また、方向性電磁鋼板においては、鉄損の改善の観点等から、溝D1が深く形成される場合がある。かかる場合には、溝の深さの溝の幅に対する比率が高まり、割れが発生しやすい。
図5では、4つの溝D1が板幅方向に沿って断続的に形成されていることとしたが、これに限定されない。例えば、4つの溝D1が、圧延方向において同じ位置に位置して1本の線状に形成されても、鋼板の割れが発生する可能性が高まる。
<鋼板の割れを抑制する方策>
上述した鋼板の割れを防止するために、本実施形態に係る方向性電磁鋼板10においては、図6に示すような溝D1、D2が圧延方向に所定間隔PLで形成されている。
図6は、本実施形態に係る方向性電磁鋼板10における溝の形成状態を示す模式図である。本実施形態では、溝として、延在方向が鋼板の板幅方向と平行な平行溝D1と、延在方向が鋼板の板幅方向と交差する傾斜溝D2が、形成されている。そして、平行溝D1と傾斜溝D2は、鋼板の板幅方向において混在し、かつ鋼板の板幅全域に亘って形成されている。
また、平行溝D1と傾斜溝D2は、板幅方向において交互に配置されている。平行溝D1と傾斜溝D2は、板幅方向に配置された異なるレーザ照射装置106によって形成されている。例えば、平行溝D1は、図4に示すレーザ照射装置106Aによって形成され、傾斜溝D2は、レーザ照射装置106Bによって形成されている。
傾斜溝D2を形成した場合には、傾斜溝D2の延在方向が鋼板の曲げ加工時の曲げ方向と垂直な板幅方向と交差するので(別言すれば、傾斜溝の幅方向が曲げ方向と同じ方向でないため)、鋼板が曲がった際の鋼板の割れを抑制できる。ここで、傾斜溝の延在方向と板幅方向との成す角度(傾斜溝の傾斜角度とも呼ぶ)θが大きい方が、鋼板の割れの防止には有効である。本実施形態では、傾斜溝の傾斜角度θは、例えば20度である。
一方で、傾斜溝D2を形成した場合には、鋼板の割れを抑制できる一方で、鉄損改善の効果が低下する恐れがある。特に、溝の傾斜角度θが大きいほど、鉄損改善の効果が低下しやすい。これは、傾斜溝の場合には、圧延方向に直交する溝に比べて磁極の発生が減少するためである。
そこで、本実施形態では、傾斜溝D2だけを形成するのでは無く、板幅方向において平行溝D1と傾斜溝D2を混在して配置させることで、方向性電磁鋼板10の曲げ加工の際の割れを防止しつつ、鉄損改善の効果の低下を抑制可能である。特に、本実施形態では、板幅方向において平行溝D1と傾斜溝D2を交互に配置させることで、平行溝D1の延在方向での長さを小さくできるので、上記の効果がより有効に奏される。
図6では、平行溝D1と傾斜溝D2が同じ割合で形成されている。しかし、これに限定されず、傾斜溝D2の割合は、傾斜溝D2の傾斜角度θに応じて変化することが、後述する実験例から導かれる。具体的には、上述した効果を発揮させるためには、傾斜溝D2の割合A(%)が、下記の近似式(1)のように設定されることが望ましい。
割合A=−3.22×傾斜角度θ+110 ・・・(1)
ところで、鉄損改善を向上するには、溝を深くすることが有効であることが分かっている。そこで、本実施形態では、幅を大きくせずに深さを大きくするように、溝(平行溝D1と傾斜溝D2)が形成されている。例えば、溝の深さの大きさは、溝の幅の大きさの0.2倍以上である。溝の深さは、具体的には20μm前後の大きさである。
このような深さが大きい溝を形成した場合には、方向性電磁鋼板の曲げ加工の際に鋼板の割れが発生する恐れがある。これに対して、本実施形態のように板幅方向において平行溝D1と傾斜溝D2を混在するように形成することで、溝の深さが大きくても、曲げ加工の際の鋼板の割れの発生を有効に抑制できる。
なお、図6では、板幅方向において平行溝D1と傾斜溝D2が離れるように形成されているが、これに限定されない。例えば、平行溝D1と傾斜溝D2が板幅方向において繋がって1本の線状に形成されても良い。
また、平行溝と傾斜溝は、図6に示すような形成状態に限定されず、例えば図7に示すように形成されても良い。かかる場合であっても、方向性電磁鋼板10の曲げ加工の際の割れを防止しつつ、鉄損改善の効果の低下を抑制可能である。
図7は、方向性電磁鋼板10における溝の形成状態の変形例を示す模式図である。図7では、平行溝D1に加えて、2種類の傾斜溝D2と傾斜溝D3が形成されている。傾斜溝D2と傾斜溝D3は、板幅方向に対する傾斜の向きが異なる。図7では、傾斜溝D2の板幅方向に対する傾斜角度θと、傾斜溝D3の板幅方向に対する傾斜角度θとが、同じ大きさである。しかし、これに限定されず、傾斜溝D2の傾斜角度と、傾斜溝D3の傾斜角度とが、異なる大きさであっても良い。
また、方向性電磁鋼板10の製造方法は、レーザビームを照射する工程(図2におけるレーザ照射工程S18)より前に、(鋼板における各部分間の鉄損の差を明確にするためには最終仕上げ焼鈍工程S14より後に、)鋼板の板幅方向についての鉄損の分布を測定する工程である鉄損分布測定工程をさらに含んでもよい。かかる場合において、レーザ照射工程S18では、当該鋼板の板幅方向において鉄損が比較的大きい部分に平行溝D1を優先的に形成し、当該鋼板の板幅方向において鉄損が比較的小さい部分に傾斜溝D2を優先的に形成する。ここで、鋼板に傾斜溝D2を形成することによって、上述したように、鋼板の割れを抑制できる一方で、鉄損改善の効果が低下し得る。ゆえに、平行溝D1及び傾斜溝D2の板幅方向における配置を、上記のように鋼板の板幅方向についての鉄損の分布に基づいて、決定することによって、より効果的に鉄損改善を向上させることができる。
鉄損分布測定工程S30は、例えば、図8に示すように、絶縁被膜形成工程S16の後に行われる。その後、鉄損分布の測定結果に基づいて、レーザ照射工程S18が行われる。鉄損分布測定工程S30では、鋼板の板幅方向の各位置に対応する部分をサンプルとして切り取り、各サンプルについて、鉄損の測定を行う。なお、鉄損分布測定工程S30は、絶縁被膜形成工程S16よりも前に行われてもよい。例えば、最終仕上げ焼鈍工程S14の後に鉄損分布測定工程S30が行われてもよい。
各サンプルは、例えば、鋼板における圧延方向の先端側の所定の長さ(例えば1m)の部分を当該鋼板から切り取り、さらに、切り取られた当該先端側の部分を圧延方向に沿って短冊状に切り分けることによって得られる。このようにして得られる各サンプルは、鋼板の板幅方向における各位置と対応関係を有する。例えば、各サンプルは、図4に示す各レーザ照射装置106によりレーザビームを走査可能な範囲と対応してもよい。その場合、各サンプルの板幅方向の長さは、各レーザ照射装置106によりレーザビームを走査可能な幅と略一致してもよい。
また、鉄損分布測定工程S30では、例えば、各サンプルについて、SST(Single Sheet Test)を行うことによって、鉄損が測定される。測定される鉄損の値は、具体的には、周波数が50Hz、最大磁束密度が1.7Tのときの鉄損値である。鉄損分布測定工程S30では、このように、鋼板の板幅方向における各位置での鉄損として、各サンプルについての鉄損を測定することによって、鋼板の板幅方向についての鉄損の分布を測定する。
鉄損分布測定工程S30の後のレーザ照射工程S18では、具体的には、平行溝D1及び傾斜溝D2の板幅方向における配置を、傾斜溝D2の割合A(%)及び鋼板の板幅方向についての鉄損の分布に基づいて決定する。傾斜溝D2の割合A(%)は、上述したように、傾斜角度θに基づいて設定され得る。具体的には、傾斜溝D2の割合A(%)は、近似式(1)のように設定され得る。例えば、傾斜溝D2の割合A(%)が50%であり、サンプルが10個得られた場合、鋼板の板幅方向において、鉄損についての上位5個のサンプルに対応する位置に平行溝D1を配置し、鉄損についての下位5個のサンプルに対応する位置に傾斜溝D2を配置する(なお、ここでいう上位とは、鉄損の測定値が高い、即ち、磁化する際のエネルギー効率についての性能が悪く、当該性能が劣位にあることを示しており、下位とはその逆であることを示している)。
また、レーザ照射工程S18では、平行溝D1及び傾斜溝D2の板幅方向における配置を、鋼板の割れをより確実に抑制する観点から、2つの平行溝D1が互いに隣接しないように、決定してもよい。なお、このような場合において、当該鋼板の板幅方向において鉄損が比較的大きい部分の一部に傾斜溝D2が形成されてもよい。また、絶縁被膜形成工程S20の後工程として、方向性電磁鋼板10を圧延方向に沿って切断することによって、所定の幅を有する複数の鋼板を成形する切断工程が行われる場合がある。そのような場合において、レーザ照射工程S18では、平行溝D1及び傾斜溝D2の板幅方向における配置を、切断工程による分割後の所定の幅を有する各鋼板に形成される溝が平衡溝D1のみにならないように、決定してもよい。それにより、切断工程による分割後の各鋼板の割れをより確実に抑制することができる。なお、このような場合において、当該鋼板の板幅方向において鉄損が比較的大きい部分の一部に傾斜溝D2が形成されてもよい。
<実施例>
上述した本実施形態に係る方向性電磁鋼板の有効性を確認するための実施例について説明する。
本実施例に係る方向性電磁鋼板は、以下のように製造されている。
まず、Si;3.0質量%、C;0.05質量%、Mn;0.1質量%、酸可溶性Al;0.02質量%、N;0.01質量%、S;0.01質量%、P;0.02質量%、残部がFe及び不可避不純物、といった組成のスラブを準備した。このスラブに対して、1280℃で熱間圧延を実施し、厚さ2.3mmの熱間圧延材を製出した。次に、熱間圧延材に対して、1000℃×1分の条件で熱処理を行った。熱処理後に酸洗処理を施した上で冷間圧延を実施し、厚さ0.23mmの冷間圧延材を製出した。この冷間圧延材に対して、800℃×2分の条件で脱炭焼鈍を実施した。次に、脱炭焼鈍後の冷間圧延材の両面に、マグネシアを主成分とする焼鈍分離材を塗布した。そして、焼鈍分離材を塗布した冷間圧延材をコイル状に巻き取った状態で、バッチ式炉に装入し、1200℃×20時間の条件で仕上げ焼鈍を実施した。これにより、表面にグラス被膜が形成された鋼板地鉄(鋼板本体12)を製出した。次に、グラス被膜14の上に、リン酸アルミニウムからなる絶縁材を塗布、焼き付け(850℃×1分)し、1回目の絶縁被膜を形成した。
次に、グラス被膜14及び絶縁被膜が形成された鋼板本体12に対して、レーザビームを照射し、鋼板本体12の表面に溝を形成した。例えば、図6に示すように、平行溝D1と傾斜溝D2が、板幅方向において混在するように形成される。
ここで、レーザ照射装置としては、図4に示すレーザ照射装置106A、106Bを用いた。照射条件としては、レーザビーム強度を1000W、ビーム走査速度を30m/s、照射ピッチを3mmとした。また、レーザビームの形状は楕円形状であり、ビーム径の圧延方向は0.1mmであり、ビーム径の走査方向は0.3mmである。かかる照射条件により、幅が50μmで、深さが20μmの溝が形成された。
次に、溝が形成された鋼板本体12に対して、2回目の絶縁被膜を形成した。これにより、図1に示すような方向性電磁鋼板10が製造される。
そして、本実施例では、傾斜溝の傾斜角度と、傾斜溝の割合とが異なる方向性電磁鋼板10を製造し、製造した方向性電磁鋼板10を測定することで、図9〜図12に示すような測定結果を得た。
図9は、溝の傾斜角度と、鋼板の繰り返し曲げ平均回数との関係の一例を示すグラフである。グラフの横軸は溝の傾斜角度を示し、グラフの縦軸は鋼板の繰り返し曲げ平均回数を示す。ここで、繰り返し曲げ平均回数とは、鋼板の曲げ試験を行った際に鋼板が割れずに繰り返して曲げを行える平均回数を意味する。図9のグラフを見ると分かるように、溝の傾斜角度が0度の場合(すなわち、図5に示すように溝が板幅方向に平行な場合)には、繰り返し曲げ平均回数は0.5回であり、鋼板が割れやすい結果となった。一方で、溝の傾斜角度が大きくなるにつれて、繰り返し曲げ平均回数が多くなる傾向を示す。
図9のグラフを見ると、溝の傾斜角度が15度以上の場合には、溝の傾斜角度が15度未満の場合に比べて、繰り返し曲げ平均回数の増加度合いが大きくなっている。なお、繰り返し曲げ平均回数が3回以上であれば、巻鉄芯の製造時の鋼板の割れを有効に抑制できるので、溝の傾斜角度は15度以上が望ましい。ただし、溝の傾斜角度は20度以上であることがより望ましく、かかる場合には繰り返し曲げ平均回数が7回となり、鋼板の割れをより確実に防止できる。
ところで、溝を板幅方向に対して交差する方向に形成した場合には、磁極の発生が減少するため、鉄損改善の効果が低下してしまう。
図10は、溝の傾斜角度と、鉄損改善率との関係の一例を示すグラフである。グラフの横軸は溝の傾斜角度を示し、グラフの縦軸は鉄損改善率を示す。図10のグラフを見ると分かるように、溝の傾斜角度が大きくなるにつれて、鉄損改善率が低下する傾向を示している。特に、溝の傾斜角度が20度より大きいと鉄損改善率が大きく低下するので、溝の傾斜角度は20度以下が望ましい。
そこで、前述したように、方向性電磁鋼板10の曲げ加工の際の割れを防止しつつ、鉄損改善の効果の低下を抑制するために、傾斜溝だけを形成するのでは無く、板幅方向において平行溝D1と傾斜溝D2を混在するように形成することが望ましい。
図11は、傾斜溝の比率と、繰り返し曲げ平均回数との関係の一例を示すグラフである。グラフの横軸は傾斜溝の比率を示し、グラフの縦軸は繰り返し曲げ平均回数を示す。図11の測定で用いられた傾斜溝の傾斜角度は、20度である。図11のグラフを見ると分かるように、鋼板の割れを有効に抑制できる繰り返し曲げ平均回数の3回を超えるためには、傾斜角度が20度の傾斜溝の比率を約50%以上にすることが望ましい。すなわち、平行溝D1と傾斜溝D2を同じ割合だけ板幅方向に混在させる必要がある。
図11では、傾斜角度が20度の傾斜溝について説明したが、他の傾斜角度の場合において、繰り返し曲げ平均回数が3回以上となるためには、図12に示すような傾斜溝の比率にする必要がある。
図12は、傾斜溝の傾斜角度と、傾斜溝の比率との関係の一例を示すグラフである。グラフの横軸は傾斜溝の傾斜角度を示し、グラフの縦軸は傾斜溝の比率を示す。グラフを見ると分かるように、傾斜角度が大きくなるにつれて、傾斜溝の比率が小さくなる傾向を示す。図12の測定結果から、傾斜溝の傾斜角度θと割合Aとの関係を示す下記の近似式(1)が求められる。
割合A=−3.22×傾斜角度θ+110 ・・・(1)
なお、図9に測定結果が示される測定では、各傾斜角度について、溝を、板幅方向において繋がった一本の線状に、形成した。一方、図11及び図12に測定結果が示される測定では、平行溝D1及び傾斜溝Dを、互いに離れるように、板幅方向に沿って断続的に、形成した。溝の傾斜角度及び傾斜溝の比率が一致する場合であっても、板幅方向において繋がった一本の線状に溝を形成したときと、板幅方向に沿って断続的に溝を形成したときとで、繰り返し曲げ平均回数は異なり得る。ここで、図9に測定結果が示される測定は、傾斜溝の比率が100%の場合に相当する。例えば、このような測定結果である図9によれば、溝の傾斜角度が5度や10度の場合における繰り返し曲げ平均回数は、3回を下回っている。一方、図12によれば、溝の傾斜角度が5度や10度の場合における繰り返し曲げ平均回数は、傾斜溝の比率が所定の値以上のときに、3回を上回り得る。このように、板幅方向に沿って断続的に溝を形成することにより、板幅方向において繋がった一本の線状に溝を形成したときと比較して、繰り返し曲げ平均回数が多くなる場合がある。
<まとめ>
上述したように、本実施形態に係る方向性電磁鋼板10において、図6に示すように、延在方向が鋼板の板幅方向と平行に形成された平行溝D1と、延在方向が板幅方向と交差するように形成された傾斜溝D2とが、板幅方向において混在するように形成されている。
溝の延在方向が鋼板の曲げ加工時の曲げ方向と垂直な板幅方向と交差する傾斜溝D2を形成することで、方向性電磁鋼板の曲げ加工時の割れの発生を抑制できるが、鉄損改善の効果が低下する恐れがある。一方で、平行溝D1は、傾斜溝D2に比べて鉄損改善の効果が有利である。そこで、板幅方向において平行溝D1と傾斜溝D2を混在するように形成することで、方向性電磁鋼板10の曲げ加工の際の割れを防止しつつ、鉄損改善の効果の低下を抑制可能となる。
特に、本実施形態では、溝の深さの大きさが溝の幅の大きさの0.2倍以上となるように、深く形成されている。溝が深いと曲げ加工の際に割れの発生が生じやすくなるが、上述したように平行溝D1と傾斜溝D2を板幅方向において混在するように形成することで、曲げ加工の際の鋼板の割れの発生を抑制できる効果が一層有効に発揮される。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
10 方向性電磁鋼板
12 鋼板本体
14 グラス被膜
16 絶縁被膜
100 レーザ加工装置
102 レーザ発振器
104 伝送ファイバ
106A、106B レーザ照射装置
D1 平行溝
D2、D3 傾斜溝

Claims (7)

  1. 鋼板の搬送方向と交差する方向にレーザビームを照射して、前記搬送方向に所定間隔で溝を形成する工程を含む方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    延在方向が前記鋼板の板幅方向と平行に形成された第1溝と、延在方向が前記板幅方向と交差するように形成された第2溝とを、前記板幅方向において混在するように形成することを特徴とする、方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法において、
    前記板幅方向に沿って、レーザビームを照射する第1照射部及び第2照射部が配置されており、
    前記第1照射部によって前記第1溝を形成し、前記第2照射部によって前記第2溝を形成することを特徴とする、方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法において、
    前記第1溝と前記第2溝を、前記板幅方向において交互に形成することを特徴とする、方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法において、
    前記第1溝と前記第2溝のうちの前記第2溝の割合Aは、前記第2溝と前記板幅方向との成す角度を角度θとした場合に、下記の式(1)を満たすことを特徴とする、方向性電磁鋼板の製造方法。
    割合A=−3.22×角度θ+110 ・・・(1)
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法において、
    前記レーザビームを照射する工程より前に、前記鋼板の前記板幅方向についての鉄損の分布を測定する工程をさらに含み、
    前記板幅方向において前記鉄損が比較的大きい部分に前記第1溝を優先的に形成し、前記板幅方向において前記鉄損が比較的小さい部分に前記第2溝を優先的に形成する、
    方向性電磁鋼板の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法において、
    前記溝の深さの大きさは、前記溝の幅の大きさの0.2倍以上であることを特徴とする、方向性電磁鋼板の製造方法。
  7. 鋼板の搬送方向と交差する方向にレーザビームが照射されて、前記搬送方向に所定間隔で形成された溝を有する方向性電磁鋼板であって、
    延在方向が前記鋼板の板幅方向と平行に形成された第1溝と、延在方向が前記板幅方向と交差するように形成された第2溝とが、前記板幅方向において混在するように形成されていることを特徴とする、方向性電磁鋼板。
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