本発明の第1の実施形態に係る物品10について、図1乃至図19を用いて説明する。図1は、物品10を示す平面図である。図1に示すように、物品10は、本実施形態では、例えば紙幣である。物品10は、紙幣本体20、及び、紙幣本体20の一方の主面21上に固定された表示体30を有している。
紙幣本体20は、例えばシート状に形成されている。また、紙幣本体20は、平面視において、長方形状に形成されている。紙幣本体20は、その外観を規定する縁22を有している。縁22は、第1の縁22a、第1の縁22aに平行な第2の縁22b、第1の縁22aの一端及び第2の縁22bの一端に連続する第3の縁22c、並びに、第3の縁22cに平行であり、第1の縁22aの他端及び第2の縁22bの他端に連続する第4の縁22dを有している。
紙幣本体20は、その少なくとも一部が、光を透過可能に形成されている。すなわち、紙幣本体20の少なくとも一部は、透光性を有している。この、透光性を有する部分の表面に、表示体30が固定されている。
紙幣本体20は、本実施形態では、例えば紙を主材料として形成され、数字や図柄等が描かれた本体部23、及び光を透過可能に形成された光透過部24を有している。
本体部23は、第1の部分25、及び、第2の部分26を有している。第1の部分25は、第1の縁22a、第3の縁22cの一部、及び、第4の縁22dの一部を含んでいる。第2の部分26は、第2の縁22b、第3の縁22cの一部、及び、第4の縁22dの一部を含んでいる。
本体部23の表面には、数字5及び図柄6が、視認可能に描かれている。数字5は、紙幣の金額を示す数字である。数字5及び図柄6は、例えば、本体部23の表面に印刷により描かれている。
光透過部24は、第1の部分25及び第2の部分26間に配置されている。光透過部24は、本体部23に対して高い透光性を有している。光透過部24は、その表面上に、表示体30を固定可能な大きさを有している。すなわち、光透過部24は、その内側に、表示体30を配置可能な大きさを有している。
図2は、物品10を示す断面図である。図2に示すように、光透過部24は、第3の縁22cの一部、及び、第4の縁22dの一部を含んでいる。光透過部24は、透光性を有する材料により形成されている。光透過部24は、例えば、透明な樹脂材料から形成されている。光透過部24は、透明であって、さらに、無色である材料で形成されてもよい。
表示体30は、図1に示すように、紙幣本体20において透光性を有する部分に固定されている。本実施形態では、表示体30は、紙幣本体20の光透過部24の一方の表面上に固定されている。表示体30は、光透過部24の内側に配置されている。
表示体30は、シート状に形成されている。表示体30は、平面視で、例えば長方形状に形成されている。表示体30は、所定の反射観察条件、または、所定の透過観察条件において図柄を表示可能に形成されている。
図3は、表示体30を示す平面図である。図3に示すように、表示体30は、本実施形態では、所定の反射観察条件において、第1の図柄G1、第2の図柄G2、及び、第3の図柄G3を表示可能に形成されている。また、表示体30は、本実施形態では、所定の透過観察条件において、第1の図柄G1、及び、第2の図柄G2を表示可能に形成されている。第1の図柄G1は、例えば、長方形の図柄である。第2の図柄G2は、例えば、円形の図柄である。第3の図柄G3は、例えば、三角形の図柄である。
なお、反射観察とは、表示体30の反射層80によって反射された光を観察するものである。反射観察は、例えば、表示体30に対して光透過層40側から照射された光が反射層80にて反射することにより表示された図柄を観察するものである。透過観察とは、反射層80側から照射されて光透過層40を透過した光を観察するものである。
表示体30は、図2に示すように、光透過層40、光透過層40の一部に積層された反射層80、並びに、反射層80、及び光透過層40において反射層80が積層されていない部分に積層された接着層90を有している。
光透過層40は、光を透過可能な材料から形成されている。光透過層40は、その構成材料の一例として、光透過性を有する樹脂がある。光透過性を有する樹脂は、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネイト、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ニトロセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルスチレン共重合体、塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチルなどの熱可塑性樹脂がある。また、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステルウレタン、アクリルウレタン、エポキシウレタン、シリコーン、エポキシ、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂がある。また、紫外線又は電子線硬化性の、各種アクリルモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等のオリゴマー、アクリル基やメタクリル基等を有するアクリルやエポキシ及びセルロース系樹脂などの反応性ポリマーがある。光透過層40の厚みは、2μm以上、50μm以下とすることができる。
光透過層40の主面41は、平面に形成されている。また、主面41は、光透過層40の厚み方向Dに直交する平面に形成されている。
光透過層40において、反射層80または接着層90が積層され面となる界面42は、第1の図柄G1を表示可能な第1の領域R1、第2の図柄G2を表示可能な第2の領域R2、第3の図柄G3を表示可能な第3の領域R3、及び、領域R1,R2,R3以外の部分となる第4の領域R4を有している。なお、第4の領域R4は、光透過層40の厚み方向Dに直交する平面に形成されている。
これら領域R1,R2,R3は、それぞれに、反射層80から離れる方向に凹んだ溝部、または、反射層80側に突出した突出部が形成されている。これら溝部または突出部は、光透過層40の厚み方向Dに傾斜する平面に形成された傾斜面部、及び、傾斜面部に対して交差する平面に沿う面部を有している。
これら、溝部または突出部は、傾斜面部に、反射を目的とする反射層80が積層されるとともに、以下の条件1及び条件2を満たすように形成されている。さらに、好ましくは、条件3及び条件4を満たすように形成されている。
条件1:領域R1,R2,R3のうち少なくとも1つの領域の面部は、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部に対して、その比表面積が異なる。すなわち、複数の領域のうち少なくとも1つの領域の面部の比表面積は、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部の比表面積と異なる。
条件2:領域R1,R2,R3のうち少なくとも1つの領域の面部に積層された反射層80の厚みは、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部に積層された反射層80の厚みと異なる。すなわち、複数の領域のうち少なくとも2つの領域の面部に反射層が積層され、少なくとも1つの領域の面部に積層された反射層の厚みは、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部に積層された反射層の厚みと異なる。
条件3:領域R1,R2,R3のうち少なくとも1つの領域の面部の沿う方向が、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部の沿う方向と異なる。すなわち、面部の光透過層40の厚み方向Dに対する傾斜角度が異なる。さらに言い換えると、複数の領域のうち少なくとも1つの領域の面部が沿う平面の厚み方向に対する傾斜角度は、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部が沿う平面の厚み方向に対する傾斜角度と異なる。
条件4:領域R1,R2,R3のうち少なくとも1つの領域に形成された傾斜面部の法線、及び他の領域のうち少なくとも1つの領域に形成された傾斜面部の法線は、平行ではない。すなわち、複数の領域のうち少なくとも1つの領域に形成された溝部または突出部の傾斜面部の法線が延びる方向は、他の領域のうち少なくとも1つの領域に形成された溝部または突出部の傾斜面部の法線が延びる方向とは異なる。なお、ここで言う傾斜面部の法線は、傾斜面部に直交する方向に平行な線である。
本実施形態では、領域R1,R2,R3に形成される溝部または突出部は、上記条件1、条件2、及び条件3を満たすように形成されている。
第1の領域R1は、その外郭線は、第1の図柄G1と同様の形状を有している。すなわち、第1の領域R1の外郭線は、長方形である。第1の領域R1の外郭線は、4つの辺を有し、これら4つの辺は、表示体30の外郭線を構成する4つの辺に平行である。
第1の領域R1には、複数の第1の溝部50が形成されている。これら第1の溝部50は、全て同じ形状である。第1の溝部50の内面の一部には反射層80が積層されており、残りの部分には反射層は積層されていない。
なお、図2では説明の為、2つの第1の溝部50が、誇張して大きく描かれている。しかしながら、実際には、第1の溝部50は小さいものであり、かつ、2つ以上のより多数が形成されている。なお、第1の溝部50の数は限定されない。
第1の領域R1内に形成された第1の溝部50の内面の一部に積層された反射層80で反射した光により、第1の図柄G1が表示される。また、第1の領域R1に形成された第1の溝部50の内面において反射層80が積層されていない部分を透過した光により、第1の図柄G1が表示される。
図3は、第1の領域R1の外郭線を2点鎖線で示しており、かつ、第1の領域R1に形成された第1の溝部50を誇張して大きく描いている。第1の溝部50の幅は、実際には小さいものである。第1の溝部50は、図3に示すように、直線状に延びている。本実施形態では、第1の溝部50は、紙幣本体20の短手方向に平行な第1の方向V1に平行に延びている。
図4は、表示体30の要部を示す断面図である。図4は、具体的には、第1の溝部50及びその周辺を、第1の方向V1に直交する断面に沿って切断した状態を示す断面である。図4に示すように、第1の溝部50は、内面により形成される形状がV字形状となる形状を有している。第1の溝部50の深さは、本実施形態では、一例として一定である。
第1の溝部50は、光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜する平面である第1の面部(傾斜面部)51、及び、光透過層40の厚み方向Dに沿う第2の面部(面部)52を有している。第1の面部51は、界面42の第4の領域R4の平面の延長面との間の角度が鈍角となる平面である。
第1の面部51の比表面積は、1となる。ここで、比表面積について、説明する。比表面積は、面部の面積を、面部に対して設定される基準面で除算した値である。基準面は、面部が平面である場合は、この面部と同形状でありかつ同面積の平面となる。面部が平面ではない場合、面部を平坦に置換した、平滑な面(平面)となる。例えば、面部が凹凸構造を有する場合では、この凹凸構造を平坦にならした面が、この面部に対する基準面となる。
実際に顕微鏡での第1の面部51の測定結果から基準面を定義する際には、顕微鏡で観察された第1の溝部50を1次近似し平準化した平面を基準面とすることができる。
第1の面部51は、平面であり、かつ、第1の溝部50の深さは、一定である。第1の溝部50の配列方向及び第1の溝部50が延びる方向に平行な平面は、第1の面部51に平行な平面となる。この為、第1の面部51に対する基準面は、第1の面部51に平行な平面となるので、第1の面部51の比表面積は1である。
第2の面部52は、第1の面部51に交差する平面に沿う。本実施形態では、第2の面部52は、第1の面部51に交差する方向の一例として光透過層40の厚み方向Dに沿う。なお、方向に沿うとは、第2の面部52が平面である場合は、方向に平行であることであり、第2の面部52が平面ではない場合は、その延びる方向が、平面の延びる方向に一致することである。
第2の面部52は、第1の面部51の比表面積よりも大きな比表面積を有している。具体的には、第2の面部52は、その比表面積が、1.5以上となるように形成されている。本実施形態では、第1の面部51の比表面積は、1なので、第2の面部52の比表面積は、第1の面部51の比表面積の1.5倍以上に形成されている。第2の面部52は、その比表面積が第1の面部51の比表面積より大きくなるように、例えば、複数の凹部53を有している。第2の面部52は、複数の凹部53を有することにより、隣接する凹部53間に凸部54を有する。
凹部53及び凸部54は、本実施形態では、第1の方向V1に、第2の面部52の一端から他端まで伸びている。凹部53は、一例として、その断面形状が、角部が90度となる形状に形成されている。また、凹部53は、一例として、全て同じ形状に形成されている。凸部54は、一例として、その断面形状が、角部が90度となる形状に形成されている。また、凸部54は、一例として、全て同じ形状に形成されている。
なお、凹部53及び凸部54は、図4に示すように、その角部が90度に形成されることに限定されない。図5は、第2の面部52に形成された凹部53及び凸部54の変形例を示す断面図である。
凹部53及び凸部54は、図5(a)に示すように、曲面により形成されてもよい。または、凹部53及び凸部54は、図5(b)に示すように、断面形状が、1つの頂点を有する形状であってもよい。すなわち、凹部53及び凸部54は、その断面形状が略三角形状に形成されてもよい。または、凹部53及び凸部54は、図5(c)に示すように、全て同じ形状でなくてもよい。図5(c)では、凹部53は、少なくとも一部が異なる形状を有し、かつ、凸部54は、少なくとも一部が異なる形状を有している。
また、凹部53及び凸部54は、第1の溝部50の長手方向に沿って延びる形状に限定されない。図6Aは、表示体30の要部の変形例を示す断面図である。図6Aは、具体的には、第1の溝部50及びその周辺を、光透過層40の厚み方向Dに直交する断面に沿って切断した状態を示している。図6Aに示すように、凹部53及び凸部54は、第2の面部52に、第1の溝部50の長手方向となる第1の方向V1に複数並んで配置されても良い。
図6Bは、表示体30の要部の変形例を示す斜視図である。具体的には、図6Bは、第1の溝部50の第2の面部52の変形例を示す為に、1つの第1の溝部50の第1の面部51に積層された反射層80、並びに、反射層80及び第2の面部52に積層された接着層90を示している。すなわち、図6Bは、1つの第1の溝部50の変形例に対応した反射層80及び接着層90を示すことにより、第1の面部51及び第2の面部52を説明する。
図6Bに示すように、第2の面部52は、第1の溝部50の延びる方向となる第1の方向に周期的に屈曲する曲面に形成されてもよい。すなわち、曲面に形成された凹部53、及び曲面に形成された凸部54を、第1の方向V1に連続して有する形状であってもよい。これら凹部53及び凸部54は、第1の溝部50の深さ方向となる光透過層40の厚み方向Dに延びている。
第2の面部52は、複数の凹部53及び複数の凸部54を有することにより、その比表面積が第1の面部51の比表面積よりも大きくなる。
ここで、第2の面部52の比表面積について、具体的に説明する。まず、第2の面部52に対する基準面について、図6C及び図6Dを用いて説明する。図6Cは、図4に示す第1の溝部50の第2の面部52に対する基準面Z2を説明する図である。図6Dは、図6Bに示す第1の溝部50の変形例の第2の面部52に対する基準面Z2を説明する図である。
図6C及び図6Dでは、説明の為、光透過層40、反射層80、及び接着層90は省略しており、第1の面部51及び第2の面部52のみ示している。また、図6C及び図6D中では、第1の溝部50は、説明の為に1つのみ示している。また、図6C及び図6Dでは、第1の溝部50の第1の方向V1に沿う長さは、説明の為、短く示されている。
図6Cに示すように第2の面部52の基準面Z2は、第2の面部52の凹部53及び凸部54が形成されていないと仮定した場合の第2の面部52となる。すなわち、図6Cに示す第2の面部52の基準面Z2は、光透過層40の厚み方向D及び第1の方向V1に平行な平面となる。
第2の面部52の比表面積A1は、第2の面部52の面積をS1とし、基準面Z2の面積をS2とすると、A1=S1/S2となる。
次に、図6Dを用いて、図6Bに示す第1の溝部50の変形例の第2の面部52に対する基準面Z2について、説明する。図6Dに示すように、第2の面部52は、周期的に同形状の曲面が並ぶ形状である。図6Bに示す第1の溝部50の変形例の第2の面部52の基準面Z2は、第2の面部52が、周期的に同形状が並ぶ曲面が平坦にされたと仮定した平面となる。この為、図6Bに示す第1の溝部50の変形例においても、第2の面部52の基準面Z2は、厚み方向D及び第1の方向V1に平行な平面となる。
第1の溝部50は、第1の方向V1に直交する断面において、第1の面部51の縁から第2の面部52の縁までの長さが一例として5μm以上であってかつ50μm以下の長さであり、深さが一例として1μm以上であってかつ15μm以下の深さである。
第1の方向V1に直交する断面において、第1の面部51の縁から第2の面部52の縁までの長さを5μm未満とすると、透過観察の際に回折光が射出される為、表示体30全体が虹色に表示され、領域毎に図柄を表示できなくなる。さらに、第1の方向V1に直交する断面において、第1の面部51の縁から第2の面部52の縁までの長さを50μmより大きくすると、第1の溝部50の構造が、観察者に肉眼で認識される虞がある。この為、上述のように、5μm以上であってかつ50μm以下の長さとなっている。
第1の溝部50の深さを1μm未満とすると、第1の溝部50においてを光が透可能な部分の面積が小さく、それゆえ十分に光が透過できず、観察者による透過観察が困難になる。さらに、第1の溝部50の深さを15μmより大きくとすると、第1の溝部50を形成することが困難となる。この為、第1の溝部50は、上述のように、第1の方向V1に直交する断面において、第1の面部51の縁から第2の面部52の縁までの長さが一例として5μm以上であってかつ50μm以下の長さであり、深さが一例として1μm以上であってかつ15μm以下の深さに形成されている。
本実施形態では、さらに、アスペクト比が0.5以上であってかつ1.5以下の範囲となるように形成されている。ここで言うアスペクト比は、第1の方向V1に直交する断面において、第1の面部51の縁から第2の面部52の縁までの長さに対する第1の溝部50の深さの割合であり、第1の面部51の縁から第2の面部52の縁までの長さをA1とし、第1の溝部50の深さをA2とすると、A2/A1で表される。アスペクト比を0.5以上であってかつ1.5以下とすることにより、第1の溝部50の形成のしやすさを確保しつつ、第1の溝部50を透過する光を十分なものとすることができる。ここで言う、十分なものとは、観察者が観察するに十分であるということである。
本実施形態では、第1の溝部50は、図2に示すように、その幅方向に複数隣接して配置されている。光透過層40の界面42において接する第1の溝部50は、互いに連続して形成されている。すなわち、第1の溝部50の第2の面部52は、隣接する第1の溝部50の第1の面部51に連続している。
または、隣接する第1の溝部50どうしが離れていてもよい。すなわち、第1の溝部50の第2の面部52の縁と、隣接する第1の溝部50の第1の面部51の縁との間に、第1の面部51及び第2の面部52とは異なる面部が形成されてもよい。この面部は、例えば、光透過層40の厚み方向Dに直交する平面に形成されてもよい。
この場合、この面部の幅は、なるべく小さく形成されることが好ましい。これは、この面部に反射層80が積層されることにより、第1の領域R1を通して透過観察をすると、第1の図柄G1が暗く表示される可能性がある為である。
第2の領域R2は、図3に示すように、その外郭線は、第2の図柄G2と同様の形状を有している。すなわち、第2の領域R2の外郭線は、円形である。第2の領域R2は、第1の領域R1に並んで配置されている。
第2の領域R2内には、複数の第2の溝部60が形成されている。これら第2の溝部60は、全て同じ形状である。第2の溝部60の内面の一部には反射層80が積層されており、残りの部分には反射層は積層されていない。なお、図2では説明の為、3つの第2の溝部60が誇張して大きく描かれている。第2の溝部60は、実際には小さいものであり、かつ、3つ以上の多数が形成されている。なお、第2の溝部60の数は限定されない。第2の溝部60は、第1の溝部50に対して、上述の条件1及び条件3を満たすように形成されている。
第2の領域R2に形成された第2の溝部60の内面の一部に積層された反射層80で反射した光により、第2の図柄G2が表示される。また、第2の領域R2に形成された第2の溝部60の内面において反射層80が積層されていない部分を透過した光により、第2の図柄G2が表示される。
図3は、第2の領域R2の外郭線を2点鎖線で示しており、かつ、第2の領域R2に形成された第2の溝部60を誇張して大きく描いている。第2の溝部60の幅は、実際には、小さいものである。第2の溝部60は、図3に示すように、直線状に延びている。本実施形態では、第2の溝部60は、第1の方向V1に平行に延びている。また、第2の溝部60の長手方向両端は、第2の領域R2の外郭線まで延びている。
図7は、表示体30の要部を示す断面図である。図7は、具体的には、第2の溝部60及びその周辺を、第1の方向V1に直交する断面に沿って切断した状態を示す断面である。図7に示すように、第2の溝部60は、内面により形成される形状がV字形状となる形状を有している。第2の溝部60の深さは、本実施形態では、一例として一定である。
第2の溝部60の内面は、光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜する平面である第3の面部(傾斜面部)61、及び第3の面部61に交差する平面に沿う第4の面部62(面部)を有している。第2の溝部60の深さは、第1の溝部50の深さと同じである。
第3の面部61は、界面42の第4の領域R4の平面の延長面との間の角度が鈍角となる平面である。本実施形態では、第3の面部61は、例えば、第1の領域R1に形成された第1の溝部50の第1の面部51と平行な平面に形成されている。
第3の面部61の比表面積は、第1の面部51と同様に、1となる。
第4の面部62は、第3の面部61に交差する平面に沿う面に形成されている。第4の面部62は、例えば、光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜し、かつ、第4の領域R4の平面の延長面と間になす角度が鈍角となる第2の方向V2に沿っている。なお、平面に沿うとは、第4の面部62が平面である場合は、面部62は前記平面に平行であり、第4の面部62が平面ではない場合は、その第4の面部62を1次近似し平準化した面が平面と平行となる。第4の面部62が、第2の方向V2に沿うことにより、第2の面部52の光透過層40の厚み方向Dに対する角度が、第4の面部62の光透過層40の厚み方向Dに対する角度とことなることなり、上述の条件4が満たされることとなる。
第4の面部62は、第3の面部61の比表面積よりも大きな比表面積を有している。第4の面部62の比表面積は、1.5以上となるように形成されている。本実施形態では、第3の面部61の比表面積は1なので、第4の面部62の比表面積は、第3の面部61の比表面積の1.5倍以上となる。
第4の面部62は、その比表面積が第3の面部61の比表面積より大きくなるように、例えば、複数の凹部63を有している。第4の面部62は、複数の凹部63を有することにより、隣接する凹部63間に凸部64を有する。
凹部63及び凸部64は、本実施形態では、第1の方向V1に沿って第4の面部62の一端から他端まで延びている。凹部63は、一例として、その断面形状が、角部が90度となる形状に形成されている。また、凹部63は、一例として、全て同じ形状に形成されている。凸部64は、一例として、その断面形状が、角部が90度となる形状に形成されている。また、凸部64は、一例として、全て同じ形状に形成されている。
なお、凹部63及び凸部64は、その角部が90度に形成されることに限定されない。凹部63及び凸部64は、第1の溝部50の第2の面部52に形成された凹部53及び凸部54と同様に、その断面形状が、曲面、三角形状に形成されてもよい。または、凹部63及び凸部64は、全てが同じ形状でなくてもよい。または、凹部63及び凸部64は、図6A及び図6Bに示された凹部53及び凸部54のように、第2の溝部60の長手方向となる第1の方向V1に並んで配置されてもよい。
または、第2の溝部60の第4の面部62に形成される凹部63は、光透過層40に対して第4の面部62が沿う方向に直交する方向に凹むことに限定されない。図8Aは、表示体30の要部を示す断面図である。図8Aは、具体的には、第2の溝部60及びその周辺の変形例を示す断面図である。図8Aに示すように、第2の溝部60の第4の面部62に形成された凹部63は、光透過層40の厚み方向Dに凹む形状であってもよい。
第4の面部62は、複数の凹部63及び複数の凸部64を有することにより、その比表面積が第3の面部61の比表面積よりも大きい。また、第4の面部62は、その比表面積が、一例として、第2の面部52の比表面積より小さい。
ここで、第4の面部62の比表面積について、具体的に説明する。まず、第4の面部62に対する基準面について、図8Bを用いて説明する。図8Bは、図7に示す第2の溝部60の第4の面部62に対する基準面Z4を説明する図である。
図8Bでは、説明の為、光透過層40、反射層80、及び接着層90は省略しており、第3の面部61及び第4の面部62のみ示している。また、図8Bでは、第2の溝部60は、説明の為に1つのみ示している。また、図8Bでは、第2の溝部60の第1の方向V1に沿う長さは、説明の為、短く示されている。図8Bに示すように、第4の面部62の基準面Z4は、第4の面部62に凹部63及び凸部64が形成されていないと仮定した場合の平面となる。
第4の面部62の基準面Z4は、光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜するとともに第1の方向V1に平行な平面となる。
第4の面部62の比表面積A2は、第4の面部62の面積をS3とし、基準面Z4の面積をS4とすると、A2=S3/S4となる。
第2の溝部60は、第1の溝部50と同様の理由により、第1の方向V1に直交する断面において、第3の面部61の縁から第4の面部62の縁までの長さが一例として5μm以上であってかつ50μm以下の長さであり、深さが一例として1μm以上であってかつ15μm以下の深さである。さらに、好ましくは、そのアスペクト比が、第1の溝部50と同様の理由により、0.5以上であってかつ1.5以下となっている。
本実施形態では、第2の溝部60は、その幅方向に複数隣接して配置されている。光透過層40の界面42において隣接する第2の溝部60は、互いに連続して形成されている。すなわち、第2の溝部60の第4の面部62は、隣接する第2の溝部60の第3の面部61に連続している。
または、隣接する第2の溝部60どうしが離れていてもよい。すなわち、第2の溝部60の第4の面部62の縁と、隣接する第2の溝部60の第3の面部61の縁との間に第3の面部61及び第4の面部62とは異なる面部が形成されてもよい。この面部は、例えば、光透過層40の厚み方向Dに直交する平面に形成されてもよい。
この場合、この面部の幅は、なるべく小さく形成されることが好ましい。これは、この面部に反射層80が積層されることにより、第2の領域R2を通して透過観察をすると、第2の図柄G2が暗く表示される可能性がある為である。
第3の領域R3は、図3に示すように、その外郭線は、第3の図柄G3と同様の形状を有している。すなわち、第3の領域R3の外郭線は、三角形である。第3の領域R3は、第2の領域R2に並んで配置されている。
第3の領域R3には、図2に示すように、複数の第3の溝部70が形成されている。これら第3の溝部70は、全て同じ形状である。第3の溝部70の全域には反射層80が積層されている。なお、図2では説明の為、2つの第3の溝部が、誇張して大きく描かれている。しかしながら、第3の溝部70は、実際には小さいものであり、かつ、2つ以上の多数が形成されている。なお、第3の溝部70の数は限定されない。
第3の領域R3に形成された第3の溝部70に積層された反射層80で反射した光により、第3の図柄G3が表示される。図3は、第3の領域R3の外郭線を2点鎖線で示しており、かつ、第3の領域R3内に形成された第3の溝部70を誇張して大きく描いている。実際には、第3の溝部70の幅は、小さいものである。第3の溝部70は、図3に示すように、直線状に延びている。本実施形態では、第3の溝部70は、第1の方向V1に平行に延びている。また、第3の溝部70の長手方向両端は、第3の領域R3の外郭線まで延びている。
第3の溝部70は、図2に示すように、その延びる方向に直交する断面では、内面により形成される形状がV字形状となる形状を有している。第3の溝部70の深さは、第1の溝部50の溝部の深さと同じである。第3の溝部70は、光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜する平面である第5の面部(傾斜面部)71、及び、光透過層40の厚み方向Dに平行な平面である第6の面部(面部)72を有している。
第5の面部71は、第4の領域R4の平面の延長面との間の角度が鈍角となる平面である。本実施形態では、第5の面部71は、例えば、第1の面部51と平行な平面に形成されている。
第5の面部71は平面であるので、第5の面部71の比表面積は、1である。第6の面部72は平面であるので、第6の面部72の比表面積は、1である。
第3の溝部70は、後述されるようにその全面に反射層80が積層される為、透過観察により図柄を表示することはないが、一例として、第1の方向V1に直交する断面において、第5の面部71の縁から第6の面部72の縁までの長さが一例として5μm以上であってかつ50μm以下の長さであり、深さが一例として1μm以上であってかつ15μm以下の深さである。さらに、好ましくは、そのアスペクト比が、第1の溝部50と同様の理由により、0.5以上であってかつ1.5以下となっている。このように形成されることにより、第3の溝部70の形成しやすさを確保しつつ、観察者が肉眼でその溝部の形状を認識することを防止できる。
本実施形態では、第3の溝部70は、その幅方向に複数隣接して配置されている。隣接する第3の溝部70は、互いに連続して形成されている。すなわち、第3の溝部70の第6の面部72は、隣接する第3の溝部70の第5の面部71に連続している。
または、隣接する第3の溝部70どうしが離れていてもよい。すなわち、第3の溝部70の第6の面部72の縁と、隣接する第2の溝部60の第5の面部71の縁との間に第5の面部71及び第6の面部72とは異なる面部が形成されてもよい。この面部は、例えば、光透過層40の厚み方向Dに直交する平面に形成されてもよい。
反射層80は、図2に示すように、第1の領域R1の一部、第2の領域R2の一部、第3の領域R3の全域、及び、第4の領域R4の全域に積層されている。反射層80は、その材料として例えばアルミニウムが用いられている。他の例では、反射層80は、アルミニウム、銀、錫、クロム、ニッケル、銅、及び金のいずれか1つの金属、又は、これら複数の金属の少なくとも2つを有する合金により形成されてもよい。反射層80の厚みは、30nm以上100nm以下であることが好ましい。反射層80の厚みが30nm未満(薄い)であると、反射層80の透過率が高く、画像のコントラストが低下する。反射層80の厚みが100nmより大きい(厚い)場合には、溝部(第1の溝部50及び第2の溝部60)にも反射層80が形成されることにより、反射層80を透過する光(透過光)が減少する。
より具体的には、反射層80は、第1の領域R1においては、少なくとも第1の面部51に積層されている。本実施形態では、反射層80は、第1の領域R1においては、例えば第1の面部51にのみ積層されている。第1の面部51に積層された反射層80は、光を反射することを目的として形成される。第1の面部51に積層された反射層80は、例えば、当該反射層80に照射された光の10パーセント以下の光のみ透過するように形成されている。第1の面部51に積層された反射層80は、例えば、50nmの厚みを有している。
反射層80は、第2の領域R2においては、少なくとも第3の面部61に積層されている。本実施形態では、反射層80は、第2の領域R2においては、第3の面部61及び第4の面部62に積層されている。第3の面部61に積層された反射層80は、光を反射することを目的として形成される。第3の面部61に積層された反射層80は、例えば、当該反射層80に照射された光の10パーセント以下の光のみ透過するように形成されている。第3の面部61に積層された反射層80は、例えば、50nmの厚みを有している。第4の面部62に積層された反射層80は、第4の面部62を透過した光が観察者により観察可能となる厚みを有している。第4の面部62に積層された反射層80の厚みは、入射した光の20以上の光を透過するように形成されている。第4の面部62に積層された反射層80の厚みは、例えば、30nmである。
なお、本実施形態においては、光を反射することを目的として形成された反射層80の厚みは、例えば、一定である。すなわち、第2の領域R2の第2の溝部60の第4の面部62に積層された反射層80を除いて、第3の領域R3に積層された反射層80の厚みも第1の領域R1及び第2の領域R2(第3の面部61)に積層された反射層80の厚みと同じであり、光を反射することを目的として積層されている。また、第3の領域R3に積層された反射層80、及び第4の領域R4に積層された反射層80も、光を反射することを目的として積層されている。
接着層90は、図2に示すように、光透過層40において反射層80が積層されていない部分、及び、反射層80に積層されている。接着層90は、紙幣本体20の光透過部24に固定可能に形成されている。接着層90は、光を透過可能な材料から形成されている。接着層90は、例えば、透明である。また、接着層90は、例えば、無色である。
次に、表示体30の製造方法の一例について、説明する。まず、溝部50,60,70が形成される前の光透過層40を、樹脂などの材料に対して切削機やレーザー描画機により下加工を施すことにより形成する。
次に、溝部50,60,70が形成される前の光透過層40に対して、例えば電鋳により形成された、溝部50,60,70に対応する凸部が形成された金属板を、加圧して押し付け、その後に剥離する。このように、金属板を押し付けるとともにその後に剥離することにより、金属板の凸部が光透過層40に転写され、溝部50,60,70が形成される。
なお、第1の溝部50の第2の面部52に形成された凹部53は、金属板などを押し付けることにより第1の溝部50が形成された後に、例えば機械加工やエッチングにより形成されてもよい。第2の溝部60の第4の面部62に形成された凹部63も同様に形成されてもよい。
なお、凹部53及び凹部63が、図6A,6B,8Aに示すように、光透過層40の厚み方向Dに延びる形状である場合は、凹部53及び凹部63に応じた凸部が形成された金属板を用いることにより、凹部53及び凹部63を、第1の溝部50及び第2の溝部60と同時に形成することができる。
反射層80は、例えば、溝部50、60,70が形成された光透過層40に対して真空蒸着法を用いて形成することができる。図9は、真空蒸着法により、反射層80を形成する製造方法を示す概略図である。
図9に示すように、真空蒸着法を用いて反射層80を形成する場合には、真空蒸着装置100が用いられる。真空蒸着装置100は、反射層80を形成する蒸着材料101を気化または昇華させるとともに、気体となった蒸着材料101を、光透過層40に付着させて膜を形成可能に構成されている。この膜により、反射層80が形成される。真空蒸着装置100は、蒸着材料101を気化または昇華させるるつぼ102を有している。光透過層40は、溝部50,60、70をるつぼ102に向けた姿勢で、真空蒸着装置100に対して設置される。
図10は、真空蒸着法により光透過層40に蒸着材料101による膜103が形成された状態を示している。なお、図10では、第2の領域R2に形成された膜103を一例として示している。
第1の領域R1では、第2の面部52に形成された蒸着材料101による膜103は、第1の面部51に形成された膜103より薄い。第2の領域R2では、図10に示すように、第4の面部62に形成された蒸着材料101による膜103は、第3の面部61に形成された膜103よりも薄い。
これは、第2の面部52の比表面積が、第1の面部51の比表面積よりも大きい為、第2の面部52の単位表面積当たりの蒸着材料101の蒸着量が、第1の面部51の単位表面積当たりの蒸着材料101の蒸着量より少なくなる為である。同様に、第4の面部62の比表面積が、第3の面部61の比表面積よりも大きいため、第4の面部62の単位表面積当たりの蒸着材料の蒸着量が、第3の面部61の単位面積当たりの蒸着材料101の蒸着量よりも少なくなる為である。
第2の面部52の比表面積が第1の面部51の比表面積の1.5倍以上であることにより、第2の面部52に形成される膜103の厚みは、第1の面部51に形成される膜103の厚みの0.67倍以下となる。第4の面部62の比表面積が第3の面部61の比表面積の1.5倍以上であることにより、第4の面部62に形成される膜103の厚みは、第3の面部61に形成される膜103の厚みの0.67倍以下の厚みとなる。
第1の面部51及び第3の面部61が、それぞれの延びる方向が互いに平行であり、同じ形状であり、及び同じ比表面積を有することにより、第1の面部51及び第3の面部61に、反射を目的とする、光の透過率が10パーセント以下となる十分な厚みの膜103を形成した場合、第2の面部52に形成された膜103の厚みは、第1の面部51及び第3の面部61に形成された膜103の厚みの0.67倍の厚みの膜103が形成される。0.67倍の厚みの膜103は、本実施形態では、光の透過率が20パーセント以上となる。なお、反射層80は、例えば、スパッタリングにより形成されてもよい。第2の溝部60の第4の面部62の比表面積は、第1の溝部50の第2の面部52の比表面積より小さいので、第4の面部62に形成された膜103の厚みは、第2の面部52に形成された膜103の厚みより厚い。すなわち、第4の面部62に形成された膜103の厚みは、第3の面部61に形成された膜103より薄く、かつ、第3の面部61に形成された膜103の厚みの0.67倍より厚い。
次に、図11に示すように、光透過層40において反射層80が不要な部分から、膜103を除去する。除去の方法の一例としては、ウェットエッチングがある。光透過層40に対してウェットエッチングを施すことにより、第1の面部51に形成された膜103が残った状態で、第2の面部52に形成された膜103が除去される。これは、第1の面部51に形成された膜103の厚みが、第2の面部52に形成された膜103の厚みよりも厚い為、第2の面部52に形成された膜103が先に除去される為である。第2の領域R2では、ウェットエッチングを施すことにより、第3の面部61に形成された膜103及び第4の面部62に形成された膜103が薄くなる。第4の面部62に残った膜103の厚みは、透過観察の際に観察者により観察可能な厚みとなる。そして、残った膜103が反射層80となる。なお、不要な膜103を除去する他の手段としては、例えば、削り取ってもよい。なお、ウェットエッチングや削り取るなどの除去手段は、第1の面部51、第3の面部61、第3の領域R3、及び第4の領域R4に積層された反射層80の厚みが、本実施形態では、入射した光の透過率が10%以下となる厚みを残すように、かつ、第4の面部62に積層された反射層80の厚みが、入射した光の透過率が20%以上となる厚みとなるように、制御される。すなわち、第1の面部51、第3の面部61、第3の領域R3,及び第4の領域R4では、反射観察により観察可能な図柄を表示可能な厚みを有し、第4の面部62では、透過観察により画像を表示可能な厚みを有している
次に、表示体30に光を入射させ、透過観察した場合に表示される図柄について、説明する。なお、透過観察として、紙幣本体20において表示体30が固定される主面21に対して反対側の主面27から光を入射させる。観察者Hは、表示体30の主面となる光透過層40の主面41に対向する位置にいる。より具体的には、観察者Hは、主面41に対して、光透過層40の厚み方向に平行な方向に離間した位置で、表示体30を観察する。
図12は、物品10対して、光透過層40の厚み方向Dに対して交差する方向に沿って光L1を入射させた状態を示している。なお、図12では、物品10は省略しており、表示体30のみを示している。また、図12では、表示体30において暗く表示される部分にハッチングを付して示している。このハッチングは、断面を示すものではない。
光L1の照射方向は、具体的には、図4及び図7に示すように、光透過層40の厚み方向Dに交差する方向であって、かつ、第1の面部51側から第2の面部52側へ向かう方向である。
より具体的には、光L1の入射方向は、溝部50,60,70の延びる方向である第1の方向V1及び光透過層40の厚み方向Dのこれら2つの方向に直交する2方向のうち第1の面部51から第2の面部52へ向かう方向から、光透過層40の厚み方向Dまでの範囲である。図4及び図7に示される光L1は、この範囲の方向のうちの1つの方向に沿って入射する光である。
光L1の一部は、物品10の光透過部24、接着層90、第1の溝部50の第2の面部52または第2の溝部60の第4の面部62、及び、光透過層40を透過して、観察者Hにより観察される。この為、第1の領域R1、及び、第2の領域R2は、明るく表示される。すなわち、第1の図柄G1及び第2の図柄G2が明るく表示される。なお、第4の面部62には反射層80が積層されている為、第2の図柄G2は、第1の図柄G1よりも暗く表示される。
また、光L1の一部は、反射層80で反射されることにより、界面42の第4の領域R4、及び、第3の領域R3には到達しない。この為、第3の領域R3及び第4の領域R4は、暗く表示される。この為、観察者は、図12に示すように、第1の図柄G1及び第2の図柄G2を観察することができる。なお、光L1が、第1の面部51及び第3の面部61に平行に入射されると、第2の面部52と通る光の量、及び、第4の面部62を通る光の量を最大とすることができるので、第1の図柄G1及び第2の図柄G2が最も明るく表示されるようになる。
図13は、光L2を、光透過層40の厚み方向Dに平行に入射させた状態を示している。図13では、物品10は省略しており、表示体30のみを示している。また、図13では、表示体30において暗く表示される部分は、ハッチングを付して示している。このハッチングは、断面を示すものではない。光L2は、図7に示すように、物品10の光透過部24、接着層90、第2の溝部60の第4の面部62、第4の面部62に積層された反射層80及び、光透過層40を透過して、観察者Hにより観察される。この為、第2の図柄G2が明るく表示される。
第1の領域R1に入射した光L2は、図4に示すように、第2の面部52が光透過層40の厚み方向Dに沿う面であることから、第2の面部52を透過することがない。この為、第1の図柄G1は、表示されない。
なお、図4に示すように、光の照射方向が、光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜している状態から光透過層40の厚み方向Dに近づくに従い、すなわち、光L1の入射方向が、光透過層40の厚み方向Dに近づくにつれて、第1の溝部50の第2の面部52を通過する光が少なくなる。この為、透過観察では、光の照射方向が光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜している状態から光透過層40の厚み方向Dに近づくに従い、第1の図柄G1及び第2の図柄G2が表示される状態から次第に第1の図柄G1が暗く表示されるようになる。そして、光の入射方向が光透過層40の厚み方向Dに平行となる、図13に示すように、第2の図柄G2のみ表示されるようになる。
図14は、物品10の主面11に対して、光透過層40の厚み方向Dに対して交差する方向から光L3を入射させた状態を示している。なお、図14では、物品10は、省略しており、表示体30のみを示している。また、図14では、表示体30において暗く表示される部分は、ハッチングを付して示している。このハッチングは、断面を示すものではない。
光L3の照射方向は、図4及び図7に示すように、第1の溝部50の第2の面部52、及び、第2の溝部60の第4の面部62を透過しない方向である。光L3の照射方向は、具体的には、溝部50,60,70の延びる方向である第1の方向V1及び光透過層40厚み方向Dのこれら2つの方向のうち第2の面部52から第1の面部51に向かう方向から光透過層40の厚み方向Dまでの範囲である。この為、光L3は、観察者Hにより観察されることがないので、第1の図柄G1、第2の図柄G2、及び、第3の図柄G3のいずれも表示されない。
次に、表示体30を反射観察した場合に表示される図柄について、説明する。なお、反射観察として、物品10において、表示体30が固定される主面12側から光を入射させる。観察者Hは、表示体30の主面となる光透過層40の主面41に対向する位置にいる。より具体的には、観察者Hは、主面41に対して、光透過層40の厚み方向Dに平行な方向に離間した位置で、観察する。
図15は、物品10の主面11に対して、光透過層40の厚み方向Dに光L4を入射させた状態を示している。なお、図15では、表示体30において暗く表示される部分にハッチングを付して示している。このハッチングは、断面を示すものではない。光L4は、光透過層40を透過して、界面42の第1の領域R1、第2の領域R2、第3の領域R3、及び、第4の領域R4に到達する。
第4の領域R4に到達した光L4は、反射層80により反射する。第4の領域R4は、光透過層40の厚み方向Dに直交する平面であることから、光L4は、観察者H側に反射する。
図16は、第1の溝部50及びその周辺を、第1の方向V1に直交する断面に沿って切断した状態を示す断面図であり、反射観察において第1の溝部50に入射する光を概略的に示している。図16に示すように、第1の領域R1に入射した光L4は、第1の溝部50の第2の面部52が光透過層40の厚み方向Dに沿う面であることから第2の面部52を透過することがない。また、第1の領域R1に入射した光L4の一部は、第1の面部51に積層された反射層80により反射される。
第1の面部51に積層された反射層80により反射された光L4は、第1の面部51が光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜する平面であることから、観察者H側には戻らない。この為、第1の領域R1で反射した光L4は、観察者Hには観察されない。この為、第1の図柄G1は暗く表示される。
図17は、第2の溝部60及びその周辺を、第1の方向V1に直交する断面に沿って切断した状態を示す断面図であり、反射観察において第2の溝部60に入射した光を概略的に示している。
図17に示すように、第2の領域R2に入射した光L4の一部は、第4の面部62が光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜することから、第4の面部62、第4の面部62に積層された反射層80、接着層90、及び、光透過部24を透過することにより、物品10を透過する。
また、第2の領域R2に入射した光L4の一部は、第3の面部61に積層された反射層80により反射される。第3の面部61に積層された反射層80により反射された光L4は、第3の面部61が光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜する平面であることから、観察者H側には戻らない。この為、第2の領域R2に入射した光L4は、観察者H側には観察されない。この為、第2の図柄G2は、暗く表示される。
第3の領域R3に到達した光L4は、図2に示すように、第3の溝部70の第5の面部71に積層された反射層80により反射される。第5の面部71に積層された反射層80により反射された光L4は、第5の面部71が光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜することから、観察者H側には戻らない。この為、第3の図柄G3は、暗く表示される。
このように、表示体30に対して、光透過層40の厚み方向Dに平行に入射する光L4による反射観察では、第4の領域R4が明るく表示されることにより、第1の図柄G1、第2の図柄G2、及び、第3の図柄G3が暗く表示されることとなる。
図18は、物品10の主面12に対して、光透過層40の厚み方向Dに対して交差する方向に光L5を入射させた状態を示している。なお、図18では、表示体30において暗く表示される部分にハッチングを付して示している。このハッチングは、断面を示すものではない。光L5は、図16及び図17に示すように、第1の面部51側から第2の面部52側へ照射される。光L5の入射方向は、具体的には、溝部50,60,70の延びる方向である第1の方向V1及び光透過層40の厚み方向Dのこれら2つの方向に直交する2方向のうち第1の面部51から第2の面部52へ向かう方向から光透過層40の厚み方向Dまでの範囲である。光L5は、光透過層40を透過して、界面42の第1の領域R1、第2の領域R2、第3の領域R3、及び、第4の領域R4に到達する。
第4の領域R4に到達した光L5は、第4の領域R4に積層された反射層80により反射する。第4の領域R4に積層された反射層80により反射した光L5は、第4の領域R4が光透過層40の厚み方向Dに直交する平面であることから、観察者H側には反射されない。この為、第4の領域R4は暗く表示される。
第1の領域R1に入射した光L5の一部は、第1の面部51に積層された反射層80により反射される。第1の面部51に積層された反射層80により反射された光L5の一部は、第1の面部51が光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜する平面であることから、観察者H側には反射される。この為、第1の図柄G1が明るく表示される。
第2の領域R2に到達した光L5は、第3の面部61に積層された反射層80により反射される。第3の面部61に積層された反射層80により反射された光L5の一部は、第3の面部61が光透過層40の厚み方向Dに傾斜する平面であることから、観察者H側には反射される。この為、第2の図柄G2が明るく表示される。
第3の領域R3に到達した光L5は、第5の面部71に積層された反射層80により反射される。第5の面部71に積層された反射層80により反射された光L5の一部は、第5の面部71が光透過層40の厚み方向Dに傾斜する平面であることから、観察者H側に反射される。この為、第3の図柄G3が明るく表示される。
このように、表示体30は、第1の図柄G1、第2の図柄G2、及び、第3の図柄G3を明るく表示する。
図19は、物品10の主面11に対して、光透過層40の厚み方向Dに対して交差する方向に光L6を入射させた状態を示している。なお、図19では、表示体30において暗く表示される部分にハッチングを付して示している。このハッチングは、断面を示すものではない。光L6は、図16及び図17に示すように、第2の面部52側から第1の面部51側へ入射する。光L6の入射方向は、具体的には、溝部50,60,70の延びる方向である第1の方向V1及び光透過層40の厚み方向Dのこれら2つの方向に対して直交する2方向のうち第2の面部52から第1の面部51へ向かう方向から光透過層40の厚み方向Dまでの範囲である。光L6は、光透過層40を透過して、界面42の第1の領域R1、第2の領域R2、第3の領域R3、及び、第4の領域R4に到達する。
第4の領域R4到達した光L6は、第4の領域R4に積層された反射層80により反射する。第4の領域R4に積層された反射層80により反射された光L6は、第4の領域R4が光透過層40の厚み方向Dに直交する平面であることから、観察者H側には反射されない。
第1の領域R1に到達した光L6は、第2の面部52に反射層80が積層されていないことから、反射されない。第2の領域R2に到達した光L2は、第4の面部62に積層された反射層80が透過率20パーセント以上であることから、反射する光の量が少ない。または、ほとんど反射されない。
第3の領域R3に到達した光L6は、第6の面部72に積層された反射層80により反射される。第6の面部72に積層された反射層80により反射された光L6は、第6の面部72が光透過層40の厚み方向Dに平行な平面であることから、観察者H側には反射されない。このように、表示体30は、光L4を観察者H側に反射することがないので、全体的に暗く表示される。
このように構成された物品10では、第1の領域R1の第1の溝部50の第2の面部52の比表面積、第2の領域R2の第2の溝部60の第4の面部62の比表面積、及び第3の領域R3の第3の溝部70の第6の面部72の比表面積は、異なる。さらに、互いに異なる比表面積を有する、第2の溝部60の第4の面部62、及び第3の溝部70の第6の面部72は、それぞれに積層された反射層80の厚みが異なる。具体的には、第4の面部62に積層された反射層80は、透過観察を可能とする、入射した光の20パーセント以上を透過する厚みを有し、第6の面部72に積層された反射層80は、反射することを目的としており、入射した光の10パーセント以下のみ透過する厚みを有している。このように、物品10は、条件1、条件2を満たしている。さらに、条件3を満たしている。この為、透過観察する場合に表示体30により表示される図柄と、反射観察する場合に表示体30により表示される図柄とが異なるものとなる。
具体的には、表示体30は、透過観察では、その観察条件により、図12に示すように第1の図柄G1及び第2の図柄G2のみ表示し、図13に示すように第2の図柄G2のみを表示し、または、図14に示すようにいずれの図柄も表示しない。さらに、第1の領域R1では第2の面部52に反射層80が積層されず、第2の領域R2では第4の面部62に透過観察が可能な厚みを有する反射層80が積層され、かつ、第3の領域R3では第6の面部72に光を反射することを目的とする反射層80が積層されることにより、図12に示すように、第1の図柄G1が表示され、第2の図柄G2が第1の図柄G1より暗く表示される。
すなわち、表示体30は、観察条件として表示体30に対する光の入射方向により、表示する図柄として、第1の図柄G1及び第2の図柄G2を合わせた図柄、第2の図柄G2のみ、いずれの図柄を表示せず全体として暗い図柄、という3種類の図柄を表示することが可能である。
また、表示体30は、反射観察では、その観察条件により、図15及び図18に示すように、第1の図柄G1、第2の図柄G2、及び、第3の図柄G3を表示し、図19に示すようにいずれの図柄も表示しない。
すなわち、観察条件として、表示体30に対する光の入射方向により、表示体30は、表示する図柄として、第1の図柄G1、第2の図柄G2、及び、第3の図柄G3を組み合わせた図柄、並びに、いずれの図柄も表示せず全体として暗い図柄、という2種類の図柄を表示する。
このように、表示体30は、透過観察では3種類の図柄を表示可能であり、反射観察では2種類の図柄を表示可能であり、それゆえ、反射観察で表示可能な図柄と透過観察で表示可能な図柄を異なるものとすることができる。この為、表示体30は、高い視覚効果を有する。
さらに、表示体30が高い視覚効果を有することにより、表示体30の偽造防止をすることができるので、物品10の偽造を防止することができる。
また、第1の溝部50においては、第2の面部52の比表面積を第1の面部51の比表面積よりも大きくすることにより、真空蒸着方法により反射層80を形成する場合において、第2の面部52に形成される蒸着材料101により膜103の厚みを小さくすることができるので、これを除去する作業の効率を向上することができる。この為、表示体30の製造効率を向上することができる。
さらに、第2の溝部60において、第4の面部62の比表面積が第3の面部61の比表面積よりも大きいことにより、同様に、表示体30の製造効率を向上することができる。
また、第2の面部52に凹部53を形成し、第4の面部62に凹部63を形成することにより、第2の面部52の外形、及び、第4の面部62の外形を大きくすることなく、第2の面部52の比表面積、及び、第4の面部62の比表面積を大きくすることができるので、表示体30をコンパクトに形成することができる。
また、第2の面部52を光透過層40の厚み方向Dに沿う形状とすることにより、真空蒸着方法により反射層80を形成する場合に、るつぼ102より上昇した気化または昇華した蒸着材料101が第2の面部52に付着しにくくなる。この為、第2の面部52に、蒸着材料102による膜103が形成されにくくなることにより、膜103の厚みを薄くすることができるので、これの除去作業の効率を向上することができる。
次に、本発明の第2の実施形態に係る物品10Aを、図20乃至図24を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図20は、物品10Aを示す平面図である。図21は、物品10Aを示す断面図である。図22は、物品10Aの要部を示す断面図である。図23は、物品10Aの要部を示す断面図である。図24は、物品10Aの要部を示す断面図である。
図20に示すように、物品10Aは、本実施形態では、例えば紙幣である。物品10Aは、紙幣本体20、及び、紙幣本体20の一方の主面21上に固定された表示体30Aを有している。紙幣本体20は、本体部23、及び光を透過可能に形成された光透過部24を有している。
表示体30Aは、光透過部24に固定されている。表示体30Aは、シート状に形成されている。表示体30Aは、平面視で、例えば長方形状に形成されている。表示体30Aは、所定の反射観察条件、または、所定の透過観察条件において図柄を表示可能に形成されている。
表示体30Aは、本実施形態では、所定の反射観察条件において、第5の図柄G5、第6の図柄G6、第7の図柄G7、第8の図柄G8、及び、第9の図柄G9を表示可能に形成されている。また、表示体30Aは、本実施形態では、所定の透過観察条件において、第5の図柄G5、第6の図柄G6、第7の図柄G7、第8の図柄G8、第9の図柄G9、第10の図柄G10、及び、第11の図柄G11を表示可能に形成されている。
第5の図柄G5は、例えば、星形の図柄である。第6の図柄G6は、例えば、星形の図柄である。第7の図柄G7は、例えば星形の図柄である。第8の図柄G8は、例えば長方形の図柄である、第9の図柄G9は、例えば長方形の図柄である。第10の図柄G10は、例えば、長方形の図柄である。第11の図柄G11は、例えば、円の中に表示される月形の図柄である。
表示体30Aは、図21に示すように、光透過層40A、光透過層40Aの主面41Aに積層された保護層110、光透過層40Aの一部に積層された反射層80、並びに、反射層80、及び、光透過層40Aにおいて反射層80が積層されていない部分に積層された接着層90を有している。
光透過層40Aは、光を透過可能な材料から形成されている。光透過層40Aは、例えば、光透過層40と同じ材料で形成されている。光透過層40Aの主面41Aは、平面に形成されている。また、主面41Aは、光透過層40Aの厚み方向に直交する平面に形成されている。
光透過層40Aにおいて、反射層80または接着層90が積層される面となる界面42Aは、第5の図柄G5を表示可能な第5の領域R5、第6の図柄G6を表示可能な第6の領域R6、第7の図柄G7を表示可能な第7の領域R7、第8の図柄G8を表示可能な第8の領域R8、第9の図柄G9を表示可能な第9の領域R9、第10の図柄G10を表示可能な第10の領域R10、第11の図柄G11を表示可能な第11の領域R11及び第12の領域R12、並びに、界面42において第5の領域R5乃至第12の領域R12以外の領域となる第13の領域R13を有している。第13の領域R13は、光透過層40Aの厚み方向Dに直交する平面に形成されている。
これら領域R5乃至R12は、それぞれに、反射層80から離れる方向に凹んだ溝部、または、反射層80側に突出した突出部が形成されている。これら溝部または突出部は、光透過層40Aの厚み方向Dに傾斜する平面に形成された傾斜面部、及び、傾斜面部に対して交差する平面に沿う面部を有している。
これら、溝部または突出部は、傾斜面部に、反射を目的とする反射層80が積層されるとともに、以下の条件1及び条件2満たすように形成されている。さらに好ましくは、条件3及び条件4を満たすように形成されている。
条件1:領域R5乃至R12のうち少なくとも1つの領域の面部は、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部に対して、その比表面積が異なる。すなわち、複数の領域のうち少なくとも1つの領域の面部の比表面積は、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部の比表面積と異なる。
条件2:領域R乃至R12のうち少なくとも1つの領域の面部に積層された反射層80の厚みは、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部に積層された反射層80の厚みと異なる。すなわち、複数の領域のうち少なくとも2つの領域の面部に反射層が積層され、少なくとも1つの領域の面部に積層された反射層の厚みは、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部に積層された反射層の厚みと異なる。
条件3:領域R5乃至R12のうち少なくとも1つの領域の面部の沿う方向が、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部の沿う方向と異なる。すなわち、面部の光透過層40の厚み方向Dに対する傾斜角度が異なる。さらに言い換えると、複数の領域のうち少なくとも1つの領域の面部が沿う平面の厚み方向に対する傾斜角度は、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部が沿う平面の厚み方向に対する傾斜角度と異なる。
条件4:領域R5乃至R12のうち少なくとも1つの領域に形成された傾斜面部の法線、及び他の領域のうち少なくとも1つの領域に形成された傾斜面部の法線は、平行ではない。すなわち、複数の領域のうち少なくとも1つの領域に形成された溝部または突出部の傾斜面部の法線が延びる方向は、他の領域のうち少なくとも1つの領域に形成された溝部または突出部の傾斜面部の法線が延びる方向とは異なる。なお、ここで言う傾斜面部の法線は、傾斜面部に直交する方向に平行な線である。
本実施形態では、領域R5乃至R12に形成される溝部または突出部は、上記条件1乃至4のうち、条件1,2,3、4を満たすように形成されている。
第5の領域R5は、その外郭線は、第5の図柄G5と同様の形状を有している。すなわち、第5の領域R5の外郭線は、星形である。第5の領域R5には、複数の第2の溝部60が形成されている。これら第2の溝部60は、全て同じ形状である。第2の溝部60は、第1の方向V1に延びている。第2の溝部60の長手方向の両端は、第5の領域R5の外郭線まで延びている。
第6の領域R6は、第5の領域R5に並んで配置されている。第6の領域R6は、その外郭線は、第6の図柄G6と同様の形状を有している。すなわち、第6の領域R6の外郭線は、星形である。第6の領域R6には、複数の第2の溝部60が形成されている。これら第2の溝部60は、全て同じ形状である。第2の溝部60は、第1の方向V1に延びている。第2の溝部60の長手方向の両端は、第6の領域R6の外郭線まで延びている。
第6の領域R6に形成された第2の溝部60の第4の面部62の比表面積は、第3の面部61の比表面積よりも大きく、かつ、第5の領域R5に形成された第2の溝部60の第4の面部62の比表面積よりも小さい。
第7の領域R7は、第6の領域R6に並んで配置されている。第7の領域R7は、その外郭線は、第7の図柄G7と同様の形状を有している。すなわち、第7の領域R7の外郭線は、星形である。第2の溝部60は、第1の方向V1に延びている。第2の溝部60の長手方向の両端は、第7の領域R7の縁まで延びている。
第7の領域R7に形成された第2の溝部60の第4の面部62の比表面積は、第3の面部61の比表面積よりも大きく、かつ、第6の領域R6に形成された第2の溝部60の第4の面部62の比表面積よりも小さい。
第8の領域R8は、その外郭線は、第8の図柄G8と同様の形状を有している。すなわち、第8の領域R8の外郭線は、長方形である。第8の領域R8には、複数の第1の溝部50が形成されている。これら第1の溝部50は、全て同じ形状である。第1の溝部50の内面の一部には反射層80が積層されており、残りの部分には反射層は積層されていない。
第8の領域R8に形成された第1の溝部50の内面の一部に積層された反射層80で反射した光により、第8の図柄G8が表示される。また、第8の領域R8に形成された第1の溝部50の内面において反射層80が積層されていない部分を透過した光により、第8の図柄G8が表示される。
図20では、第8の領域R8内に形成された第1の溝部50を誇張して大きく描いている。これは、第8の領域R8に形成された第1の溝部50の延びる方向を説明するためである。実際には、第8の領域R8に形成された第1の溝部50は、その幅が小さいものである。図20に示すように、第8の領域R8に形成された第1の溝部50は、例えば第1の方向V1に延びている。第1の溝部50の長手方向両端は、第8の領域R8の外郭線まで延びている。
第9の領域R9は、第8の領域R8に隣接して配置されている。第9の領域R9は、第8の領域R8と同じ形状であり、その長手方向に沿う縁を第8の領域R8の長手方向に沿う縁上に配置している。また、第9の領域R9の短手方向の縁は、第8の領域R8の短手方向の縁の延長上に配置されている。
第9の領域R9には、複数の第1の溝部50が形成されている。これら第1の溝部50は、全て同じ形状である。第1の溝部50の内面の一部には反射層80が積層されており、残りの部分には反射層は積層されていない。
第9の領域R9に形成された第1の溝部50の内面の一部に積層された反射層80で反射した光により、第9の図柄G9が表示される。また、第9の領域R9内に形成された第1の溝部50の内面において反射層80が積層されていない部分を透過した光により、第9の図柄G9が表示される。
図20では、第9の領域R9に形成された第1の溝部50を誇張して大きく描いている。これは、第9の領域R9に形成された第1の溝部50の延びる方向を説明するためである。実際には、第9の領域R9に形成された第1の溝部50は、その幅が小さいものである。第9の領域R9に形成された第1の溝部50は、第8の領域R8に形成された第1の溝部50が延びる方向に対して交差する方向に延びている。第9の領域9に形成された第1の溝部50は、例えば、第1の方向V1に対して45度傾斜する第3の方向V3に延びている。第1の溝部50の長手方向両端は、第8の領域R8の外郭線まで延びている。
第10の領域R10は、第9の領域R9に隣接して配置されている。第10の領域R10は、第8の領域R8と同じ形状であり、その長手方向に沿う縁が第9の領域R9の長手方向に沿う縁上に配置されている。また、第10の領域R10の短手方向の縁は、第8の領域R8の短手方向の縁の延長上に配置されている。すなわち、第8の領域R8、第9の領域R9、及び、第10の領域R10は、それぞれ、1つの四角形の領域を3等分した領域の1つとなる。
第10の領域R10には、複数の第1の溝部50が形成されている。これら第1の溝部50は、全て同じ形状である。第1の溝部50の内面の一部には反射層80が積層されており、残りの部分には反射層は積層されていない。
第10の領域R10に形成された第1の溝部50の内面の一部に積層された反射層80で反射した光により、第10の図柄G10が表示される。また、第10の領域R10に形成された第1の溝部50の内面において反射層80が積層されていない部分を透過した光により、第10の図柄G10が表示される。
図20では、第10の領域R10内に形成された第1の溝部50を誇張して大きく描いている。これは、第10の領域R10に形成された第1の溝部50の延びる方向を説明するためである。実際には、第10の領域R10に形成された第1の溝部50は、その幅が小さいものである。
第10の領域R10に形成された第1の溝部50は、第8の領域R8に形成された第1の溝部50の延びる方向、及び、第9の領域R9に形成された第1の溝部50が延びる方向の少なくとも一方に対して交差する方向に延びている。本実施形態では、第10の領域R10に形成された第1の溝部50が延びる方向は、第8の領域R8に形成された第1の溝部50が延びる方向、及び、第9の領域R9に形成された第1の溝部50が延びる方向に対して交差する方向に延びている。第10の領域R10に形成された第1の溝部50は、具体的には、第1の方向V1に対して直交する方向である紙幣本体20の長手方向に沿う第4の方向V4に延びている。第1の溝部50の長手方向両端は、第10の領域R10の外郭線まで延びている。
このように、第8の領域R8に形成された第1の溝部50の延びる方向、第9の領域R9に形成された第1の溝部50の延びる方向、及び、第10の領域R10に形成された第1の溝部50の延びる方向が互いに異なることにより、第8の領域R8に形成された第1の溝部50の第1の面部51に直交する方向、第9の領域R9に形成された第1の溝部50の第1の面部51に直交する方向、及び第10の領域R10に形成された第1の溝部50に直交する方向は、異なる。この為、上述の条件4が満たされることとなる。
第11の領域R11は、第11の図柄G11のうち、円形の内側であって、かつ、月形状の外側の部分を表示する領域である。第12の領域R12は、第11の図柄G11のうち、月形状の内側の部分である。この為、第12の領域R12の外郭線は、月形状である。第11の領域R11の外郭線は、第12の領域R12の外郭線を内側に配置する円形の外郭線となる。
第11の領域R11は、複数の第1の溝部50が形成されている。これら第1の溝部50は、全て同じ形状である。第1の溝部50の内面の一部には反射層80が積層されており、残りの部分には反射層は積層されていない。
第11の領域R11に形成された第1の溝部50の内面の一部に積層された反射層80で反射した光により、第11の領域R11の図柄、すなわち、円形の内側であって月形状の外側の部分の図柄が表示される。また、第11の領域R11に形成された第1の溝部50の内面において反射層80が積層されていない部分を透過した光により、第11の図柄が表示される。第1の溝部50は、第1の方向V1に延びている。第1の溝部50の長手方向の両端は、第11の領域R11の外郭線まで延びている。
第12の領域R12には、第4の溝部120が形成されている。図21は、物品10Aを、第11の領域R11及び第12の領域R12を通る断面で切断した状態を示す断面図である。図21に示すように、第4の溝部120は、反射層80が積層される第7の面部(傾斜面部)121、及び、反射層80が積層されない第8の面部(面部)122を有する、断面V字形状であり、その深さが、第11の領域R11に形成された第1の溝部50の深さよりも深い溝部である。なお、第7の面部121は、光透過層40Aの厚み方向Dに傾斜する平面である。第8の面部122は、第7の面部121に対して交差する方向に沿う面部である。第8の面部122は、例えば光透過層40Aの厚み方向Dに沿っている。
本実施形態では、第4の溝部120は、例えば、第1の溝部50と同じ形状であり、かつ、その断面形状が第1の溝部50の断面形状よりも大きい溝部である。すなわち、第4の溝部120は、その断面形状が、第1の溝部50の断面形状と相似または略相似の関係を有している。第4の溝部120は、第11の領域R11に形成された第1の溝部50と同じ方向に延びている。具体的には、第4の溝部120は、第1の方向V1に延びている。
第7の面部121は、第8の領域R8に形成された第1の溝部50の第1の面部51に平行である。すなわち、第7の面部121は、平面である。この為、第7の面部121の批表面積は1である。
第8の面部122の沿う方向は、第11の領域R11に形成された第1の溝部50の第2の面部52が沿う方向に平行である。なお、第8の面部122は、第8の面部122の比表面積を一例として1.5以上とする為に、凹部123が複数形成されている。第7の面部121の比表面積は1である為、第8の面部122の比表面積は、第7の面部121の比表面積の1.5倍以上である。凹部123は、第1の溝部50の凹部53、または、第2の溝部60の凹部63と同様に形成されている。第8の面部122の比表面積は、本実施形態では一例として第2の面部52の比表面積と同じである。
反射層80は、第5の領域R5、第6の領域R6、第7の領域R7、第8の領域R8の一部、第9の領域R9の一部、第10の領域R10の一部、第11の領域R11の一部、第12の領域R12の一部、及び、第13の領域R13に形成されている。
図22は、表示体30Aを第5の領域R5を通る断面で切断した状態を示す断面図である。図22は、第5の領域R5に形成された第2の溝部60及びその周辺を示している。図22に示すように、反射層80は、第5の領域R5においては、第3の面部61、及び、第4の面部62に積層されている。
第5の領域R5では、第3の面部61に積層された反射層80は、光を反射することを目的として積層されている。第3の面部61に積層された反射層80は、例えば、照射された光の10パーセント以下のみ透過可能な厚みを有している。反射層80は、例えば、第1の実施形態の第1の領域R1の第1の面部51に積層された反射層80と同じ厚みを有している。
第5の領域R5では、第4の面部62に積層された反射層80の厚みは、第3の面部61に積層された反射層80の厚みよりも薄い。第4の面部62に積層された反射層80の厚みは、入射した光を透過可能な厚みである。ここでいう、光を透過可能な厚みとは、透過した光により図柄を表示可能な厚みであり、例えば、照射された光の20パーセント以上を透過可能な厚みである。
図23は、表示体30Aを第6の領域R6を通る断面で切断した状態を示す断面図である。図23は、第6の領域R6に形成された第2の溝部60を示している。図23に示すように、反射層80は、第6の領域R6においては、第3の面部61、及び、第4の面部62に積層されている。
第6の領域R6では、第3の面部61に積層された反射層80は、光を反射することを目的として積層されている。第3の面部61に積層された反射層80は、例えば、照射された光の10パーセント以下のみ透過可能な厚みを有している。反射層80は、例えば、第1の実施形態の第1の領域R1の第1の面部51に積層された反射層80と同じ厚みを有している。
第6の領域R6では、第4の面部62に積層された反射層80は、入射した光を透過可能な厚みである。ここでいう、光を透過可能な厚みとは、透過した光により図柄を表示可能な厚みであり、例えば、照射された光の20パーセント以上を透過可能な厚みである。
第6の領域R6では、第4の面部62に積層された反射層80の厚みは、第3の面部61に積層された反射層80の厚みよりも薄く、かつ、第5の領域R5に形成された第2の溝部60の第4の面部62に積層された反射層80の厚みよりも厚い。
図24は、表示体30Aを第7の領域R7を通る断面で切断した状態を示す断面図である。図24は、第7の領域R7に形成された第2の溝部60を示している。図24に示すように、反射層80は、第7の領域R7においては、第3の面部61、及び、第4の面部62に積層されている。
第7の領域R7では、第3の面部61に積層された反射層80は、光を反射することを目的として積層されている。第3の面部61に積層された反射層80は、例えば、照射された光の10パーセント以下のみ透過可能な厚みを有している。反射層80は、例えば、第1の実施形態の第1の領域R1の第1の面部51に積層された反射層80と同じ厚みを有している。
第7の領域R7では、第4の面部62に積層された反射層80は、入射した光を透過可能な厚みである。ここでいう、光を透過可能な厚みとは、透過した光により図柄を表示可能な厚みであり、例えば、照射された光の20パーセント以上を透過可能な厚みである。
第7の領域R7では、第4の面部62に積層された反射層80の厚みは、第3の面部61に積層された反射層80の厚みよりも薄く、かつ、第6の領域R6に形成された第2の溝部60の第4の面部62に積層された反射層80の厚みよりも厚い。
なお、第5の領域R5、第6の領域R6、及び、第7の領域R7においては、第2の溝部60の第3の面部61に積層される反射層80の厚みは、同じである。
このように、領域R5,R6,R7の第4の面部62の比表面積がそれぞれ異なり、かつ、領域R5,R6,R7の第4の面部62に積層された反射層80の厚みが異なることにより、上述の条件1及び条件2が満たされることとなる。なお、領域R5,R6,R7において、第4の面部62に積層された反射層80の厚みは、特に、誇張して厚く描かれている。
反射層80は、第8の領域R8、第9の領域R9、及び、第10の領域R10においては、第1の実施形態と同様に、第1の溝部50の第1の面部51に積層されており、第2の面部52には積層されていない。領域R8,R9,R10では、第1の面部51に積層された反射層80は、照射された光を反射することを目的として形成されており、例えば、照射された光の10パーセント以下のみ透過可能に形成されている。第8の領域R8、第9の領域R9、及び、第10の領域R10の第1の溝部50の第1の面部51に積層された反射層80の厚みは、同じである。
反射層80は、図21に示すように、第11の領域R11では、第1の溝部50の第1の面部51に積層されており、第2の面部52には積層されていない。第12の領域R12では、反射層80は、第4の溝部120の第7の面部121に積層されており、第8の面部122には、積層されていない。第11の領域R11の第1の面部51、及び、第12の領域R12の第7の面部121に積層された反射層80は、照射された光を反射することを目的として形成されており、例えば、照射された光の10パーセント以下のみ透過可能に形成されている。
なお、第11の領域R11に形成された第1の溝部50の第1の面部51に積層された反射層80の厚み、及び、第12の領域R12に形成された第4の溝部120の第7の面部121に積層された反射層80の厚みは、同じである。また、第11の領域R11に形成された第1の溝部50の第1の面部51に積層された反射層80の厚み、及び第12の領域R12に形成された第4の溝部120の第7の面部121に積層された反射層80の厚みは、例えば、第1の実施形態の第1の溝部50の第1の面部51に積層された反射層80と同じ厚みである。
接着層90は、図21に示すように、光透過層40Aにおいて反射層80が積層されていない部分、及び、反射層80に積層されている。
保護層110は、光透過層40Aに積層されている。保護層110は、光透過性を有する材料で形成されている。保護層110は、表示体30Aを傷や汚れから保護可能に形成されている。
本実施形態の表示体30Aは、例えば、第1の実施形態の表示体30と同様に製造される。すなわち、各溝部が形成される前の光透過層40Aを、樹脂などの材料に対して切削機やレーザー描画機により下加工を施すことにより形成する。
次に、溝部が形成される前の光透過層40Aに対して、例えば電鋳により形成された、溝部に嵌合する凸部が形成された金属板を加圧して押し付け、その後に剥離する。このように、金属板を押し付けるとともにその後に剥離することにより、金属板の凸部が光透過層40Aに転写され、各溝部が形成される。
反射層80は、例えば第1の実施形態と同様に、各溝部が形成された光透過層40Aに対して真空蒸着法を用いて形成することができる。なお、不要な膜103は、ウェットエッチングにより除去される。なお、第5の領域R5、第6の領域R6、及び、第7の領域R7では、第4の面部62に反射層80を積層する為に、除去する材料の除去量が調整される。
なお、第5の領域R5、第6の領域R6、及び第7の領域R7は、それぞれの第4の面部62の比表面積が、異なる。この為、上述のように、例えば真空蒸着法により形成することにより、第5の領域R5、第6の領域R6、及び第7の領域R7内では、第5の領域R5の第4の面部62に形成される膜103が最も厚くなり、次に第6の領域R6の第4の面部62に形成される膜103が厚くなり、次に第7の領域R7の第4の面部62に形成される膜103が厚くなる。
次に、透過観察及び反射観察により観察される、各領域により表示される図柄について説明する。まず、第5の領域R5、第6の領域R6、第7の領域R7による、透過観察により観察される図柄について説明する。
第5の領域R5、第6の領域R6、及び、第7の領域R7では、いずれも第2の溝部60が形成されており、かつ、第4の面部62に積層される反射層80の厚みが異なることから、観察者Hにより観察される図柄の外形は、いずれも同じであるが、その濃淡が異なるものとなる。
すなわち、透過観察においては、図22乃至図24に示すように、領域R5,R6,R7に、光透過層40Aの厚み方向Dに平行な光L7が入射すると、光L7の一部は、接着層90、第4の面部62に積層された反射層80、及び、光透過層40Aを透過して観察者Hに観察される。この為、第5の領域R5により第5の図柄G5が表示され、第6の領域R6により第6の図柄G6が表示され、かつ、第7の領域R7により第7の図柄G7が表示される。
しかしながら、各領域R5,R6,R7において、第4の面部62に積層された反射層80の厚みが異なることから、第5の図柄G5の濃淡、第6の図柄G6の濃淡、及び、第7の図柄G7の濃淡が異なるものとなる。具体的には、第5の図柄G5が最も明るく、その次に第6の図柄G6が明るく、その次に第7の図柄G7が明るく表示される。すなわち、同じ外形を有する図柄であっても、その濃淡に差が生じることとなる。
このように、図柄の濃淡を、第4の面部62に積層された反射層80の厚みにより調整することができる。なお、本実施形態では、真空蒸着法により、第4の面部62に反射層80を積層している。この為、第4の面部62の比表面積を調整することにより、第4の面部62に積層された反射層80の厚みを調整することができる。具体的には、第4の面部62に形成される凹部63の大きさにより、比表面積を調整している。
図柄の濃淡の調整方法の一例としては、所望の濃淡を、第4の面部62の比表面積に対応させ、所望の濃淡に対応する比表面積に基づいて第4の面部62の面積を決定する調整方法である。
具体的に説明すると、例えば、255階調のグレースケールを、第4の面部62の比表面積に対応させる。255階調のグレースケールは、0が黒を表し、255が白を表す。そして、透過観察において、第4の面部62を透過して観察者に観察される図柄の所望の濃淡を、255階調のグレースケールで表し、この数値に対応する比表面積に基づいて、第4の面部62の比表面積を決定する。
より具体的には、第4の面部62がとり得る比表面積の最大値をグレースケールの255とし、比表面積の値1をグレースケールの0とする。そして、比表面積1から最大値の間の値を、グレースケールの値に対応させる。そして、第4の面部62を、グレースケール0から255のうち所望の値に対応する比表面積を有するように、形成する。なお、第4の面部62がとり得る比表面積の最大値は、例えば、第4の面部62の形成手段により決定される。または、比表面積の最大値は、例えば、任意に決定されてもよい。
次に、第5の領域R5、第6の領域R6、及び、第7の領域R7について、反射観察により観察される図柄について説明する。第5の領域R5、第6の領域R6、及び、第7の領域R7では、第1の実施形態と同様に、第2の溝部60が延びる方向である第1の方向V1及び光透過層40Aの厚み方向Dのこれら2つの方向に直交する2方向のうち第3の面部61から第4の面部62へ向かう方向から光透過層40Aの厚み方向Dまでの範囲の方向に沿って光が入射されると、第3の面部61に積層された反射層80により光の一部が観察者H側に反射して観察者に観察される。この為、第5の領域R5は、第5の図柄を表示し、第6の領域R6は、第6の図柄G6を表示し、第7の領域R7は、第7の図柄G7を表示する。
第5の領域R5の第3の面部61に形成された反射層80の厚み、第6の領域R6の第3の面部61に形成された反射層80の厚み、及び、第7の領域R7の第3の面部61に積層された反射層80の厚みは、いずれも同じである。この為、第5の領域R5により表示される第5の図柄G5、第6の領域R6により表示される第6の図柄G6、及び、第7の領域R7により表示される第7の図柄G7は、いずれも同じであり、その濃淡も同じとなる。
このように、第5の領域R5、第6の領域R6、及び、第7の領域R7では、反射観察により観察される図柄、及び、透過観察により観察される図柄は、その濃淡が異なるものとなる。すなわち、透過観察で表示される図柄、及び、反射観察で表示される図柄が異なるものとなる。
次に、第8の領域R8、第9の領域R9、及び、第10の領域R10による、透過観察により表示される図柄、及び、反射観察により表示される図柄について説明する。第8の領域R8、第9の領域R9、及び、第10の領域R10は、第1の溝部50が形成されているが、その延びる方向が異なる。
具体的には、第8の領域R8に形成された第1の溝部50の延びる方向を基準にすると、第9の領域R9に形成された第1の溝部50の延びる方向は、45度で交差している。第10の領域R10に形成された第1の溝部50の延びる方向は、直交している。
この為、反射観察においては、特定の方向から入射された光の反射率が、第8の領域R8、第9の領域R9、及び、第10の領域R10で異なるものとなる。すなわち、第8の領域R8が表示する第8の図柄G8の濃淡、第9の領域R9が表示する第9の図柄G9の濃淡、及び、第10の領域R10が表示する第10の図柄G10の濃淡が異なるものとなる。
同様に、透過観察においては、特定の方向から入射された光の、各領域R8,R9,R10の第2の面部52を透過する量が異なるものなる。すなわち、第8の図柄G8の濃淡、第9の図柄G9の濃淡、及び、第10の図柄G10の濃淡が異なるものとなる。
このように、第1の溝部50の延びる方向を調整することにより、透過観察及び反射観察において、特定の方向から入射する光により表示される図柄も濃淡を表現することができる。
例えば、濃淡を255階調のグレースケールで表す場合、所望の濃淡を示す数値を第1の溝部50が延びる方向に対応させる。具体的には、255階調のグレースケールを0度から359度に対応させる。そして、表現したい所望の濃淡の数値に対応する角度に沿って第1の溝部50を形成する。
このように、第8の領域R8、第9の領域R9、及び、第10の領域R10では、反射観察により観察される図柄、及び、透過観察により観察される図柄は、その濃淡が異なるものとなる。すなわち、透過観察で表示される図柄、及び、反射観察で表示される図柄が異なるものとなる。
なお、この第1の溝部50の延びる方向を、255階調のグレースケールに対応させることができるのでは、表示体30Aに対して、特定の1方向から光が入射した場合である。この特定の1方向に沿って入射した光を最も強く反射する第1の溝部50の延びる方向、すなわち、この特定の1方向に沿って入射した光を反射し、この反射光により表示された図柄が最も明るく表示される第1の溝部50の延びる方向を、グレースケールの0と対応させる。さらに、この特定の1方向に沿って入射した光を反射しない、または反射してもその反射光により表示される図柄の明るさが最も暗くなる第1の溝部50の延びる方向をグレースケールの255に対応させる。そして、反射光が最も明るく表示される第1の溝部50の延びる方向、及び反射しないまたは反射光がもっとも暗くなる第1の溝部50の延びる方向の間を、グレースケール0及び255の間の値に対応させる。
しかしながら、この特定の方向以外の方向から光が入射した場合においても、第8の図柄G8、第9の図柄G9、及び、第10の図柄G10の濃淡に差異が生じるようになる。
次に、第11の領域R11及び第12の領域R12について、反射観察により観察される図柄について説明する。図21に示すように、第11の領域R11に形成された第1の溝部50の第1の面部51、及び、第12の領域R12に形成された第4の溝部120の第7の面部121は、平行である、この為、反射観察においては、第11の領域R11及び第12の領域R12は、入射される光を同様に反射することとなる。
この為、第11の領域R11により表示される図柄、及び、第12の領域R12により表示される図柄に濃淡の差が生じない。この為、第11の領域R11及び第12の領域R12は、第1の溝部50及び第4の溝部120の延びる方向である第1の方向V1及び光透過層40Aの厚み方向Dのこれら2つの方向に直交する2方向のうち第1の面部51から第2の面部52へ向かう方向から光透過層40Aの厚み方向Dの間の範囲のいずれかの方向に沿う光L8の一部を観察者H側に反射する。観察者Hがこの反射光を観察することにより、第11の領域R11及び第12の領域R12は、円形の図柄を明るく表示することとなる。
透過観察においては、第1の方向V1及び光透過層40Aの厚み方向Dのこれら2つの方向に直交する2方向のうち第1の面部51から第2の面部52へ向かう方向から光透過層40Aの厚み方向Dの間の範囲のいずれかの方向に沿う光L9が、第11の領域R11の第2の面部52、及び、第12の領域R12の第8の面部122を透過して観察者により観察される。しかしながら、第2の面部52の表面積に対して第8の面部122の表面積が大きいことにより、第12の領域R12により表示される月形状の図柄は、第11の領域R11により表示される図柄に対して明るく表示される。
このように、第11の領域R11、及び、第12の領域R12では、透過観察において光を透過可能な面部の表面積が異なることにより、表示される図柄に濃淡を生じさせている。本実施形態では、第8の面部122の表面積を、第2の面部52の表面積よりも大きくする手段の一例として、第4の溝部120の形状を第1の溝部50と相似または略相似となる形状とするとともに、第4の溝部120の深さを第1の溝部50の深さよりも深くしている。
このように、溝部の深さを調整することにより、透過観察により表示される図柄に濃淡を生じさせることができる。具体的には、溝部の深さと255階調のグレースケールとを対応させる。溝部の深さが深くなるにつれて、表示される図柄が明るく表示されるようになる。この場合、光透過層40Aに形成可能な溝部の深さの上限値までを255階調のグレースケールに対応させるようにしてもよい。すなわち、光透過層40Aに形成可能な溝部の深さが15μmであった場合、15μmをグレースケールの値として0とする。
このように構成された物品10Aでは、表示体30Aは、観察者が反射観察により視認可能な図柄に対して、透過観察で視認可能な図柄に濃淡を生じさせることにより、表される図柄の形状は同じであっても、異なる図柄として表示することができる。この為、表示体30Aの視覚効果を高めることができる。
さらに、表示体30Aは、その視覚効果が高められることにより、偽造されにくくなる。この為、表示体30Aが偽造されることを防止できる。さらに、表示体30Aを有する物品が偽造されることも防止できる。
なお、第1の実施形態及び第2の実施形態では、表示体30,30Aは、物品10,10Aに接着層90により固定されているが、これに限定されない。他の例としては、表示体30,30Aの構成が、物品10,10Aの一部に一体に形成されてもよい。すなわち、物品10,10Aの一部に、反射層80及び光透過層40,40Aが積層されることにより、物品10,10Aと表示体30,30Aとを一体に形成してもよい。
また、第1の実施形態及び第2の実施形態では、光透過層40,40Aの界面42,42Aの各領域には、溝部が形成された。しかしながら、各領域に形成されるものは、溝部に限定されない。例えば、突出部が形成されてもよい。
図25は、表示体30の変形例である表示体30Bを示している。表示体30Bは、第1の領域R1に、第1の溝部50に代えて複数の第1の突出部200が形成されている。第2の領域R2に、第2の溝部60に代えて複数の第2の突出部210が形成されている。第3の領域R3に、第3の溝部70に代えて複数の第3の突出部220が形成されている。
これら突出部は、光透過層40の厚み方向Dに傾斜する平面に形成された傾斜面部、及び、傾斜面部に対して交差する平面に沿う面部を有している。これら突出部は、傾斜面部に、反射を目的とする反射層80が積層されるとともに、上述の条件1及び条件2を満たし、好ましくは、条件3及び条件4の少なくとも一方を満たすように形成されている。
表示体30Bでは、突出部200,210,220は、例えば条件1及び条件2が満たされるように形成されている。
第1の突出部200は、全て同じ形状である。第1の突出部200の高さは、例えば一定である。第1の突出部200は、第1の方向V1に平行に延びている。第1の突出部200の外面の一部には反射層80が積層されており、残りの部分には反射層は積層されていない。
なお、図25では説明の為、2つの第1の突出部200が、誇張して大きく描かれている。しかしながら、実際には、第1の突出部200は小さいものであり、かつ、2つ以上のより多数が形成されている。
第1の領域R1内に形成された第1の突出部200に積層された反射層80で反射した光により、第1の図柄G1が表示される。また、第1の領域R1に形成された第1の突出部200の内面において反射層80が積層されていない部分を透過した光により、第1の図柄G1が表示される。
第1の突出部200は、光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜する平面である第10の面部(傾斜面部)201、及び、第10の面部201に交差する平面に沿う第11の面部(面部)202を有している。
第10の面部201は、界面42の第4の領域R4の平面の延長面との間の角度が鈍角となる平面である。第11の面部202は、第10の面部201に交差する方向の一例として、光透過層40の厚み方向Dに沿う。なお、平面に沿うとは、第11の面部202が平面である場合は、平面に平行であることであり、第11の面部202が平面ではない場合は、第11の面部202の延びる方向が平面の延びる方向と一致することである。第10の面部201は、平面であるので、その比表面積は、1となる。
第11の面部202は、第10の面部201の比表面積よりも大きな比表面積を有している。具体的には、第11の面部202は、その比表面積が、第10の面部201の比表面積の1.5倍以上である。第11の面部202は、その比表面積が第10の面部201の比表面積より大きくなるように、例えば、複数の凹部203を有している。凹部203は、第1の溝部50に形成された凹部53と同様に形成されている。第11の面部202は、複数の凹部203を有することにより、その比表面積が第1の面部51の比表面積よりも大きくなる。
第1の突出部200は、第1の方向V1に直交する断面において、第10の面部201の縁から第11の面部202の縁までの長さが一例として5μm以上であってかつ50μm以下の長さであり、高さが一例として1μm以上であってかつ15μm以下の深さである。
第1の方向V1に直交する断面において、第10の面部201の縁から第11の面部202の縁までの長さを5μm未満とすると、透過観察の際に回折光が射出される為、表示体30全体が虹色に表示され、領域毎に図柄を表示できなくなる。さらに、第1の方向V1に直交する断面において、第10の面部201の縁から第11の面部202の縁までの長さを50μmより大きくすると、第1の突出部200の構造が、観察者に肉眼で認識される虞がある。この為、上述のように、5μm以上であってかつ50μm以下の長さとなっている。
第1の突出部200の深さを1μm未満とすると、第1の突出部200においてを光が透可能な部分の面積が小さく、それゆえ十分に光が透過できず、観察者による透過観察が困難になる。さらに、第1の突出部200の高さを15μmより大きくすると、第1の突出部200を形成することが困難となる。この為、第1の突出部200は、上述のように、第1の方向V1に直交する断面において、第10の面部201の縁から第11の面部202の縁までの長さが一例として5μm以上であってかつ50μm以下の長さであり、高さが一例として1μm以上であってかつ15μm以下の高さに形成されている。
本実施形態では、さらに、アスペクト比が0.5以上であってかつ1.5以下の範囲となるように形成されている。ここで言うアスペクト比は、第1の方向V1に直交する断面において、第10の面部201の縁から第11の面部202の縁までの長さに対する第1の突出部200の高さの割合であり、第10の面部201の縁から第11の面部202の縁までの長さをA3とし、第1の突出部200の高さをA4とすると、A4/A3で表される。アスペクト比を0.5以上であってかつ1.5以下とすることにより、第1の突出部200の形成のしやすさを確保しつつ、第1の突出部200を透過する光(透過光)を十分なものとしやすい。なお、ここでいう、十分なものとは、観察者が観察するに十分な光であることを示す。
第1の突出部200は、その幅方向に複数隣接して配置されている。光透過層40の界面42において隣接する第1の突出部200は、互いに連続して形成されている。または、隣接する第1の突出部200は、隣接する第1の突出部200が互いに離れていてもよい。
第10の面部201には、反射層80が積層されている。反射層80は、照射された光を反射することを目的として形成されており、例えば、照射された光の10パーセント以下のみ透過可能に形成されている。第11の面部202には、反射層80は積層されていない。
第2の突出部210は、全て同じ形状である。第2の突出部210の高さは、例えば一定である。第2の突出部210の外面には反射層80が積層されている。なお、図25では説明の為、2つの第2の溝部60が誇張して大きく描かれている。第2の突出部210は、実際には小さいものであり、かつ、2つ以上の多数が形成されている。第2の突出部210は、第1の突出部200に対して、上述の条件2を満たすように形成されている。
第2の領域R2に形成された第2の突出部210の外面の一部に積層された反射層80で反射した光により、第2の図柄G2が表示される。また、第2の領域R2に形成された第2の突出部210の外面において反射層80が積層されていない部分を透過した光により、第2の図柄G2が表示される。
第2の突出部210は、直線状に延びている。第2の突出部210は、第1の方向V1に平行に延びている。第2の突出部210の長手方向両端は、第2の領域R2の外郭線まで延びている。
第2の突出部210の外面は、光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜する平面である第12の面部(傾斜面部)211、及び、第12の面部211に交差する平面に沿う第13の面部(面部)212を有している。
第12の面部211は、界面42の第4の領域R4の平面の延長面との間の角度が鈍角となる平面である。第12の面部211は、例えば、第1の領域R1に形成された第1の突出部200の第10の面部201と平行な平面に形成されている。第12の面部211の比表面積は1である。
第13の面部212は、第12の面部211に交差する方向の一例として、例えば、光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜し、かつ、第4の領域R4の平面の延長面と間になす角度が鈍角となる方向に沿っている。なお、平面に沿うとは、第13の面部212が平面である場合は、平面に平行であることであり、第13の面部212が平面ではない場合は、平面に沿うことである。第13の面部212は、例えば、第2の溝部60の第4の面部62が沿う平面に平行な平面に沿う面に形成されている。
第13の面部212が、光透過層40の厚み方向Dに交差する平面に沿う面に形成されることにより、第1の突出部200の第11の面部202が沿う方向、及び、第2の突出部210の第13の面部212が沿う方向が異なることとなるので、上述の条件3が満たされることとなる。
第13の面部212は、第12の面部211の比表面積よりも大きな比表面積を有している。第13の面部212の比表面積は、第12の面部211の比表面積の1.5倍以上の大きさを有している。第13の面部212は、その比表面積が第12の面部211の比表面積より大きくなるように、例えば、複数の凹部213を有している。凹部213は、第2の溝部60の凹部63と同様に形成されている。第13の面部212の比表面積は、第11の面部202の比表面積と、異なる。第13の面部212の比表面積は、第11の面部202の比表面積よりも小さい。
第2の突出部210は、第1の突出部200と同様の理由により、第1の方向V1に直交する断面において、第12の面部211の縁から第13の面部212の縁までの長さが一例として5μm以上であってかつ50μm以下の長さであり、高さが一例として1μm以上であってかつ15μm以下の深さである。さらに、好ましくは、そのアスペクト比が、第1の突出部200と同様の理由により、0.5以上であってかつ1.5以下となっている。
第2の突出部210は、その幅方向に複数隣接して配置されている。光透過層40の界面42において隣接する第2の突出部210は、互いに連続して形成されている。または、隣接する第2の突出部210は、離れて配置されてもよい。
第12の面部211には、反射層80が積層されている。第12の面部211に積層された反射層80は、照射された光を反射することを目的として形成されており、例えば、照射された光の10パーセント以下のみ透過可能に形成されている。第13の面部212には、反射層80が積層されている。第13の面部212に積層された反射層80は、観察者が透過観察可能な厚みを有しており、入射した光の20パーセント以上を透過可能な厚みを有している。
第3の突出部220は、全て同じ形状である。図25では説明の為、2つの第3の突出部220が、誇張して大きく描かれている。しかしながら、第3の突出部220は、実際には小さいものであり、かつ、2つ以上の多数が形成されている。第3の突出部220は、その外面の全域に、反射を目的として反射層80が積層されている。第3の領域R3に形成された第3の溝部70に積層された反射層80で反射した光により、第3の図柄G3が表示される。第3の溝部70は、図3に示すように、直線状に延びている。本実施形態では、第3の溝部70は、第1の方向V1に平行に延びている。また、第3の溝部70の長手方向両端は、第3の領域R3の外郭線まで延びている。
第3の突出部220は、光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜する平面である第14の面部221、及び、第14の面部221に交差する平面に沿う第15の面部222を有している。
第14の面部221は、第4の領域R4の平面の延長面との間の角度が鈍角となる平面である。本実施形態では、第14の面部221は、例えば、第1の実施形態で説明された第1の領域R1に形成された第1の溝部50の第1の面部51と平行な平面に形成されている。
第15の面部222は、第14の面部221に交差する方向の一例として光透過層40の厚み方向Dに平行な平面に形成されている。第15の面部222は、比表面積が1である。このように、第2の突出部210及び第3の突出部220は、それぞれの面部の比表面積が異なるので、条件1が満たされる。
第3の突出部220は、その全面に反射層80が積層される為、透過観察により図柄を表示することはないが、一例として、第1の方向V1に直交する断面において、第14の面部221の縁から第15の面部222の縁までの長さが一例として5μmより大きくかつ50μm未満の長さであり、高さが一例として1μmより高くかつ15μm未満の高さである。さらに、好ましくは、そのアスペクト比が、0.5以上であってかつ1.5以下となっている。このように形成されることにより、第3の突出部220の形成しやすさを確保しつつ、観察者が肉眼でその突出部の形状を認識することを防止できる。
本実施形態では、第3の突出部220は、その幅方向に複数隣接して配置されている。隣接する第3の突出部220は、互いに連続して形成されている。または、隣接する第3の突出部220は、離れて配置されてもよい。
第14の面部221及び第15の面部222には、反射層80が積層されている。面部221,222に積層された反射層80は、照射された光を反射することを目的として形成されており、例えば、照射された光の10パーセント以下のみ透過可能に形成されている。このように、第15の面部222に透過率が10パーセント以下となる厚みを有する反射層80が積層され、第2の突出部210の第13の面部212に透過率が20パーセント以上となる厚みを有する反射層80が積層されることにより、第2の条件が満たされる。
このように構成された表示体30Bでは、第1の突出部200は、光に対して、第1の実施形態で説明された第1の領域R1に形成された第1の溝部50と同様に作用する。第2の突出部210は、光に対して、第1の実施形態で説明された第2の領域R2に形成された第2の溝部60と同様に作用する。第3の突出部220は、光に対して、第1の実施形態で説明された第3の領域R3に形成された第3の溝部70と同様に作用する。
この為、表示体30Bは、透過観察、及び、反射観察した場合に、第1の実施形態で説明された表示体30と同様の図柄を表示する。
また、界面42,42Aに、溝部及び突出部を形成してもよい。図26は、その一例である、表示体30の変形例となる表示体30Cを示している。表示体30Cでは、第1の領域R1に、表示体30と同様に第1の溝部50が複数形成されている。この第1の溝部50には、第1の実施形態と同様に、第1の面部51に、反射光により図柄を表示可能であり、反射観察により当該図柄を観察者が観察可能となる反射層80が積層されている。第2の面部52には、反射層80は積層されていない。
第2の領域R2には、表示体30Bと同様に、第2の突出部210が複数形成されている。この第2の突出部210には、表示体30Bと同様に、第12の面部211に、反射光により図柄を表示可能であり、反射観察により当該図柄を観察者が観察可能となる反射層80が積層されている。第13の面部212には、反射層80は、透過観察可能な厚みの反射層80が積層されている。
第3の領域R3には、表示体30と同様の第3の溝部70、及び、表示体30Bと同様の第3の突出部220が形成されている。第3の溝部70は、複数形成されている。第3の突出部220は、複数形成されている。第3の溝部70及び第3の突出部220は、幅方向に交互に並んで配置されている。この第3の溝部70、及びこの第3の突出部220には、反射光により図柄を表示可能であり、反射観察により当該図柄を観察者が観察可能となる反射層80が積層されている。
このように構成された表示体30Cは、透過観察した場合、及び、反射観察した場合に、表示体30と同様の図柄を表示する。
なお、突出部が形成される例として、表示体30の変形例となる表示体30B、30Cを用いて説明した。他の例として、第2の実施形態で説明された表示体30Aにおいても、表示体30B,30Cと同様に、溝部に代えて、突出部が形成されてもよい。
具体的には、領域R5、R6、R7では、第2の溝部60に代えて、第2の突出部210が複数形成されてもよい。または、領域R5,R6,R7では、複数の第2の溝部60及び複数の第2の突出部210が形成されてもよい。
領域R8,R9,R10では、第1の溝部50に代えて、第1の突出部200が形成されてもよい。または、領域R8,R9,R10では、複数の第1の溝部50、及び、複数の第1の突出部200が形成されてもよい。
第11の領域R11では、第1の溝部50に代えて、第1の突出部200が複数形成されてもよい。または、第11の領域R11では、複数の第1の溝部50、及び、複数の第1の突出部200が形成されてもよい。
第12の領域R12では、第4の溝部120に代えて、第1の突出部200と相似または略相似の形状であり、かつ、その高さが第1の突出部200の高さよりも高い突出部が形成されてもよい。この突出部は、光に対して、第4の溝部120と同様の作用を有する。または、第12の領域R12では、複数の第4の溝部120、及び、光に対して第4の溝部120と同様の作用を有する上述の突出部が複数形成されてもよい。
なお、第1の実施形態、及び、第2の実施形態では、第1の溝部50の第2の面部52、及び、第2の溝部60の第4の面部62は、反射層80が積層されていないがこれに限定されない。他の例としては、第1の溝部50の第2の面部52、及び、第2の溝部60の第4の面部62は、薄膜の反射層80が積層されてもよい。ここで言う薄膜とは、光を十分可能な厚みであり、第1の面部51に積層された反射層80や第3の面部61に積層された反射層80のように、光を反射することを主目的とする反射層80の厚みよりも薄いものを言う。光を反射することを主目的とする反射層80の光透過率が10パーセント以下であることに対して、光を透過することを目的とする第2の面部に積層される反射層80は、入射した光の20パーセント以上の光を透過可能な厚みを有することが好ましい。
なお、第1の実施形態、及び、第2の実施形態では、第2の面部52の比表面積を、第1の面部51の比表面積の1.5倍以上とし、第4の面部62の比表面積を第3の面部61の比表面積の1.5倍以上としている。これは、比表面積を1.5倍以上とすることにより、真空蒸着方法により第1の面部51に十分な厚みの反射層80を積層させ、かつ、第3の面部61に十分な厚みの反射層80を積層させると、第2の面部52には第1の面部51に積層された反射層80の0.67倍の厚みの反射層80が積層されることとなる為である。この厚みの反射層80は、光の透過率が20パーセント以下となる。
つまり、真空蒸着方法により第2の面部52及び第4の面部62に反射層80が積層されてしまっても、この反射層80の厚みを、使用に不具合の生じない厚みに抑えることができるので、第2の面部52、及び、第4の面部62から反射層80を作業しなくてもよい。
なお、第1の実施形態、及び、第2の実施形態では、一例として、第2の面部52に積層された反射層80、及び、第4の面部62に積層された反射層80を除去しているが、これに限定されない。例えば、第1の実施形態において、第1の溝部50の第2の面部52に、透過光により図柄を表示可能とし、透過観察により観察者に認識可能とする厚みを有する反射層80が積層されてもよい。第2の溝部60の第4の面部62にも同様の反射層80が積層されてもよい。
また、第2の実施形態では、第5の領域R5乃至第12の領域R12に形成された溝部のうち、第12の領域R12に形成された溝部である第4の溝部120のみ、その深さが他の領域に形成された溝部の深さとは異なる。例えば、各領域に形成された溝部の深さが、互いに異なっていてもよい。このように各領域に形成された溝部の深さが異なることにより、領域毎に溝部の光透過量が異なることとなる。このように、領域毎に光透過量が異なることにより、透過観察により認識される図柄の濃淡も異なるものとなる。さらに、各領域に形成される溝部の深さは、領域毎に異なることなる深さとしつつ、かつ、透過観察により認識される図柄を所望の明るさとなるように、設定されてもよい。
図27は、複数の領域のそれぞれに形成された、溝部の深さが領域毎に異なることの一例を示している。図27は、第1の実施形態で説明された表示体30の変形例を示している。図27に示すように、第2の領域R2に形成された第2の溝部60の深さは、第1の領域R1に形成された第1の溝部50の深さよりも深い。さらに、第3の領域R3に形成された第3の溝部70の深さは、第2の領域R2に形成された第2の溝部60の深さよりも深い。
または、各領域に溝部のみ形成される場合では、第2の実施形態のように、複数の領域に少なくとも1つに形成された溝部の深さを、他の領域に形成された溝部の深さと異なる深さとしてもよい。
同様に、図25に示す変形例のように各領域に突出部が形成される場合では、突出部の高さは、領域毎に異なっていてもよい。さらに、各領域に形成される突出部の高さは、領域毎に異なることなる高さとしつつ、かつ、透過観察により認識される図柄を所望の明るさとなるように、設定されてもよい。
図28は、複数の領域のそれぞれに形成された、突出部の高さが領域毎に異なることの一例を示している。図28は、図25を用いて説明された表示体30Bの変形例を示している。図28に示すように、第2の領域R2に形成された第2の突出部210の高さは、第1の領域R1に形成された第1の突出部200の高さよりも高い。さらに、第3の領域R3に形成された第3の突出部220の高さは、第2の領域R2に形成された第2の突出部210よりも高い。
または、図25及び図28に示すように、各領域に突出部のみ形成される場合では、複数の領域に少なくとも1つに形成された突出部の高さを、他の領域に形成された突出部の高さと異なる高さとしてもよい。
同様に、図26に示す変形例のように、溝部が形成される領域及び突出部が形成される領域が存在する場合では、溝部の深さの長さ及び突出部の高さの長さが、領域毎に異なってもよい。より具体的には、第1の領域R1に形成された溝部の深さの長さS1、第2の領域R2に形成された突出部の高さの長さS2、並びに、第3の領域R3の形成された溝部の深さの長さ及び第3の領域R3に形成された突出部の高さの長さS3は、互いに異なる。すなわち、S1、S2、S3は、それぞれ異なる。
図29は、上述の変形例の一例を示している。図29は、図26を用いて説明された表示体30Cの変形例である。図29は、すなわち、複数の領域のそれぞれに形成された、溝部または突出部の深さまたは高さが領域毎に異なることの一例を示している。図29に示すように、第2の領域R2に形成された第2の突出部210の高さ2は、第1の領域R1に形成された第1の溝部50の深さS1よりも長い。さらに、第3の領域R3に形成された第3の溝部70の深さS3、及び第3の領域R3に形成された第3の突出部220の高さS3は、互いに同じであり、かつ、深さS3及び高さS3は、第2の領域R2に形成された第2の突出部210の高さS2よりも長い。
または、図26及び図29に示すように、溝部が形成される領域、及び突出部が形成される領域を有する場合では、複数の領域の少なくとも1つに形成された溝部または突出部の深さまたは高さが、他の領域に形成された溝部または突出部の深さまたは高さと異なるものとしてもよい。
本発明の第3の実施形態に係る物品10Bについて、図30乃至図48を用いて説明する。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する構成は、第1の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。本実施形態の物品10Bは、第1の実施形態の物品10の表示体30が、表示体30Dに置き換えられたものである。なお、第1の方向V1は、紙幣本体20の短手方向に平行な方向であり、表示体30Dの短手方向に平行な方向である。第5の方向V5は、紙幣本体20の長手方向に平行な方向であり、表示体30Dの長手方向に平行な方向である。なお、第5の方向V5は、第1の実施形態の第1の溝部50の配列方向V10と平行な方向である。
図30は、物品10Bを示す平面図である。図30に示すように、物品10Bは、紙幣本体20、及び、紙幣本体20の一方の主面21上に固定された表示体30Dを有している。
表示体30Dは、紙幣本体20において透光性を有する部分に固定されている。本実施形態では、表示体30Dは、紙幣本体20の光透過部24の一方の表面上に固定されている。表示体30Dは、光透過部24の領域内に配置されている。
表示体30Dは、シート状に形成されている。表示体30Dは、平面視で、例えば長方形状に形成されている。表示体30Dは、その短手方向を第1の方向V1に平行とする姿勢で、光透過部24に固定されている。表示体30Dは、所定の反射観察条件、または、所定の透過観察条件において図柄を表示可能に形成されている。
図31は、表示体30Dを示す平面図である。図31に示すように、表示体30Dは、所定の反射観察条件において、第12の図柄G12、第13の図柄G13、及び、第14の図柄G14を表示可能に形成されている。また、表示体30Dは、所定の透過観察条件において、第12の図柄G12、第13の図柄G13、及び、第14の図柄G14を表示可能に形成されている。第12の図柄G12は、例えば、長方形の図柄である。第13の図柄G13は、例えば、円形の図柄である。第14の図柄G14は、例えば、三角形の図柄である。
反射観察とは、表示体30Dの反射層80(図32参照)によって反射された光を観察するものである。反射観察は、例えば、表示体30Dに対して光透過層40(図32参照)側から照射された光が反射層80にて反射することにより表示された図柄を観察するものである。透過観察とは、反射層80側から照射されて光透過層40を透過した光を観察するものである。
図32は、物品10Bを示す断面図である。図32は、表示体30Dの第1の方向V1の中途部を通り、第1の方向V1に直交する断面に沿って切断した状態を示している。表示体30Dは、図32に示すように、光透過層40、光透過層40の一部に積層された反射層80、並びに、反射層80、及び光透過層40において反射層80が積層されていない部分に積層された接着層90を有している。
光透過層40の主面41は、平面に形成されている。また、主面41は、光透過層40の厚み方向Dに直交する平面に形成されている。光透過層40において、反射層80または接着層90が積層される面となる界面42は、第12の図柄G12を表示可能な第14の領域R14、第13の図柄G13を表示可能な第15の領域R15、第14の図柄G14を表示可能な第16の領域R16、及び、領域R14,R15,R16以外の部分となる第17の領域R17を有している。第17の領域R17は、光透過層40の厚み方向Dに直交する平面に形成されている。
これら領域R14,R15,R16は、それぞれに、反射層80から離れる方向に凹んだ溝部、または、反射層80側に突出した突出部が形成されている。これら溝部または突出部は、その断面形状が三角形状となる第1の形状または台形状となる第2の形状に形成されている。
第1の形状は、光透過層40の厚み方向Dに傾斜する平面に形成された傾斜面部、及び、傾斜面部に連続し、かつ、傾斜面部に対して交差する平面に沿う面部を有している。そして傾斜面部及び面部が、界面42の厚み方向Dに直交する同一の平面まで延びている。なお、ここで言う同一の平面は、実際に存在する平面ではなく、仮想の面である。この仮想の平面は、例えば、第17の領域R17に平行な平面である。第2の形状は、傾斜面部、面部、傾斜面部に連続し、かつ、傾斜面部に対して交差する平面に沿う面部、及び、厚み方向Dに直交する平面部及び傾斜面部に連続する側面部を有する。この平面部は、界面42に形成された実際に存在する面部である。
これら溝部または突出部は、傾斜面部に、反射を目的とする反射層80が積層されるとともに、以下条件1及び条件2を満たし、好ましくは、条件3及び条件4の少なくとも一方を満たすように形成されている。条件1乃至条件4は、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明したものと同じである。
条件1:領域R14,R15,R16のうち少なくとも1つの領域の面部は、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部に対して、その比表面積が異なる。すなわち、複数の領域のうち少なくとも1つの領域の面部の比表面積は、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部の比表面積と異なる。
条件2:領域R14,R15,R16のうち少なくとも1つの領域の面部に積層された反射層80の厚みは、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部に積層された反射層80の厚みと異なる。すなわち、複数の領域のうち少なくとも2つの領域の面部に反射層が積層され、少なくとも1つの領域の面部に積層された反射層の厚みは、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部に積層された反射層の厚みと異なる。
条件3:領域R14,R15,R16のうち少なくとも1つの領域の面部の沿う方向が、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部の沿う方向と異なる。すなわち、面部の光透過層40の厚み方向Dに対する傾斜角度が異なる。さらに言い換えると、複数の領域のうち少なくとも1つの領域の面部が沿う平面の厚み方向に対する傾斜角度は、他の領域のうち少なくとも1つの領域の面部が沿う平面の厚み方向に対する傾斜角度と異なる。
条件4:領域R14,R15,R16のうち少なくとも1つの領域に形成された傾斜面部の法線、及び他の領域のうち少なくとも1つの領域に形成された傾斜面部の法線は、平行ではない。すなわち、複数の領域のうち少なくとも1つの領域に形成された溝部または突出部の傾斜面部の法線が延びる方向は、他の領域のうち少なくとも1つの領域に形成された溝部または突出部の傾斜面部の法線が延びる方向とは異なる。なお、ここで言う傾斜面部の法線は、傾斜面部に直交する方向に平行な線である。
本実施形態では、図32に示すように、第14の領域R14には、第2の形状を有する溝部が形成されている。第15の領域R15には、第1の形状を有する溝部が形成されている。第16の領域R16には、第2の形状を有する溝部が形成されている。さらに、領域R14,R15,R16に形成される溝部は、上記条件1乃至4のうち、条件1及び条件2を満たし、さらに、条件4を満たすように形成されている。
第14の領域R14は、その外郭線は、第12の図柄G12と同様の形状を有している。第12の図柄G12は、例えば、第1の図柄G1と同じであり、長方形である。
第14の領域R14には、第2の形状を有する第5の溝部230が複数形成されている。第5の溝部230は、界面42から光透過層40の内側に向かって凹む溝部である。これら第5の溝部230は、全て同じ形状である。第5の溝部230の内面の一部には反射層80が積層されており、残りの部分には反射層は積層されていない。
なお、図32では説明の為、第14の領域R14には3つの第5の溝部230が誇張して大きく描かれている。しかしながら、実際には、第5の溝部230は小さいものであり、かつ、3つ以上のより多数が形成されている。なお、第5の溝部230の数は限定されない。
第5の溝部230の内面の一部に積層された反射層80で反射した光により、第12の図柄G12が表示される。また、第5の溝部230の内面において反射層80が積層されていない部分を透過した光により、第12の図柄G12が表示される。
図31は、第14の領域R14の外郭線を2点鎖線で示しており、かつ、第14の領域R14に形成された第5の溝部230を誇張して大きく描いている。第5の溝部230の幅は、実際には小さいものである。第5の溝部230は、図31に示すように、直線状に延びている。本実施形態では、第5の溝部230は、表示体30Dの短手方向に平行に延びており、表示体30Dが紙幣本体20に固定された状態では、第1の方向V1に平行に延びている。
図33は、表示体30Dの要部を示す断面図である。図33は、具体的には、第5の溝部230及びその周辺を、第1の方向V1に直交する断面に沿って切断した状態を示す断面である。図33に示すように、第5の溝部230は、厚み方向Dに対して傾斜する平面である第16の面部(傾斜面部)231、光透過層40の厚み方向Dに沿う第17の面部(面部)232、並びに、第16の面部231及び第1の平面部233に連続する第18の面部(側面部)234を有している。
第1の平面部233は、第14の領域R14において光透過層40の厚み方向Dに直交する平面に形成された部分である。第14の領域R14では、後述するように、第5の方向V5に並んだ2つの第5の溝部230は、間隔を有して配置される。並んだ2つの第5の溝部230の間の部分は、厚み方向Dに直交する平面に形成されている。この部分が第1の平面部233となる。
第16の面部231は、厚み方向Dに直交する平面との間の角度が鈍角となる平面に形成されている。第16の面部231の比表面積は、1である。第16の面部231は、厚み方向Dに対して、1度以上45度以下の範囲のいずれの角度に形成されている。本実施形態では、第16の面部231は、一例として、光透過層40の厚み方向Dに対して30度の傾斜をなす平面に形成されている。
ここで、第16の面部231の、厚み方向Dに対する傾斜角度の範囲について説明する。第16の面部231の、厚み方向Dに対する傾斜角度の下限値は、第16の面部231に積層された反射層80による反射光を、厚み方向Dに直交する平面に積層された反射層80による反射光に対して観察者が判別可能となる値に設定されている。第16の面部231の厚み方向Dに対する傾斜角度が1度である場合は、観察者は、第16の面部231に積層された反射層80による反射光を、厚み方向Dに直交する平面に積層された反射層80による反射光に対して判別することができる。この為、下限値を1度としている。
第16の面部231の、厚み方向Dに対する傾斜角度の上限値は、第5の溝部230を形成できる上限値としている。第16の面部231の、厚み方向Dに対する傾斜角度が45度より大きいと、第5の溝部230の形成が困難となる。この為、本実施形態では、上限値を、45度としている。
第17の面部232は、第16の面部231に交差する平面に沿う面に形成されている。本実施形態では、第17の面部232は、第16の面部231に交差する方向の一例として光透過層40の厚み方向Dに沿う。なお、方向に沿うとは、第17の面部232が平面である場合は、方向に平行であることであり、第17の面部が平面ではない場合は、その延びる方向が一致することである。
第17の面部232は、その比表面積が1より大きく形成されている。また、第17の面部232は、その比表面積が第16の面部231の比表面積よりも大きな比表面積を有している。なお、本実施形態では、第16の面部231の比表面積は、1である。この為、第17の面部232の比表面積は、1より大きく形成されている。
第17の面部232は、本実施形態では、その比表面積が、1.5以上に形成されている。第17の面部232は、その表面積を大きくする為に、例えば、複数の凹部235を有している。第17の面部232は、複数の凹部235を有することにより、隣接する凹部235間に凸部236を有する。
図34は、第5の溝部230の第16の面部231に積層された反射層80、及び、接着層90を示す斜視図である。すなわち、図34に示される反射層80及び接着層90は、第5の溝部230の内部の形状と同じ形状を有している。
図34に示すように、接着層90は、第5の溝部230の凹部235内に収容された被収容部235aを有している。すなわち、被収容部235aは、凹部235の形状に対応した形状を有している。図34の被収容部235aが示すように、第5の溝部230の凹部235及び凸部236は、本実施形態では、第1の方向V1に、第17の面部232の一端から他端まで伸びている。凹部235は、図33に示すように、その断面形状が一例として、角部が90度となる形状に形成されている。また、凹部235は、一例として、全て同じ形状に形成されている。凸部236は、一例として、その断面形状が、角部が90度となる形状に形成されている。また、凸部236は、一例として、全て同じ形状に形成されている。凹部235は、例えば、3μmの間隔で配置されている。
なお、凹部235及び凸部236は、第5の溝部230が延びる方向に平行に延びることに限定されない。凹部235及び凸部236は、光透過層40の厚み方向Dに平行に延びる形状に形成されてもよい。図35は、反射層80及び接着層90において、凹部235及び凸部236が光透過層40の厚み方向Dに平行に延びる形状に形成された第5の溝部230内の部分を示す斜視図である。
図36は、凹部235及び凸部236が光透過層40の厚み方向Dに平行に延びる形状に形成された第5の溝部230を、厚み方向Dに直交する断面に沿って切断した状態を示す断面図である。図35及び図36に示すように、凹部235及び凸部236は、厚み方向Dに直交する断面が、角部が90度となる矩形状に形成されている。図36に示す凹部235は、例えば、3μmの間隔で配置されている。または、凹部235及び凸部236の延びる方向は、厚み方向Dに対して45度の角度をなす方向に延びてもよい。
凹部235及び凸部236は、その延びる方向に直交する断面形状が、図33及び図36に示すように、角部が90度となる矩形状であることに限定されない。凹部235及凸部236は、その断面形状が、例えば、第1の実施形態の図5の(a)及び図5の(b)に示すように形成されてもよい。または、凹部235及び凸部236は、図5の(c)に示すように、全て同じ形状であることに限定されない。一部または全部がことなる形状であってもよい。
第17の面部232の比表面積は、第1の実施形態で説明された、基準面に基づいて求められる。第17の面部232は、凹部235及び凸部236により、比表面積が1.5以上に形成されている。
第18の面部234は、図33に示すように、光透過層40の厚み方向Dに沿う面部に形成されている。なお、ここで言う光透過層40の厚み方向Dに沿うとは、第18の面部234が平面である場合は、厚み方向Dに平行な平面であることであり、第18の面部234が平面でない場合は、厚み方向Dに延びていることを示す。
第18の面部234は、その比表面積が、1より大きく形成されている。また、第18の面部234は、第16の面部231の比表面積よりも大きな比表面積を有している。本実施形態では、第18の面部234は、一例として比表面積が、1.5以上に形成されている。第18の面部234は、具体的には、凹部235及び凸部236が形成されることにより、比表面積が1.5以上に形成されている。なお、第18の面部234に形成された凹部235及び凸部236は、図33に示す形状に限定されない。第17の面部232に形成された凹部235凹及び凸部236と同様に変形例を有している。
このように構成された第5の溝部230は、底237と底237との間の、複数の第5の溝部230が並ぶ第5の方向V5に沿う長さX1が、一例として5μm以上50μm以下の長さに設定され、深さD1が一例として1μm以上25μm以下の深さに設定されている。なお、第5の溝部230の底237は、第5の溝部230の第16の面部231と第17の面部232との交線となる部分である。深さD1は、反射層80は含まず、底237から第1の平面部233までの、厚み方向Dに沿う深さである。第5の溝部230は、本実施形態では、一例として、底237と底237との間の間隔が20μmであり、深さが10μmである。
なお、本実施形態では、隣り合う2つの第5の溝部230は、第5の方向V5に、長さX2を有して配置されている。長さX2は、一定であってもよいし、または、一定でなくてもよい。本実施形態では、長さX2は、全て一定の値である。長さX1は、長さX2を含む。
第5の方向V5に並ぶ2つの第5の溝部230の底237と底237との間の長さX1を5μm未満とすると、透過観察の際に回折光が射出される為、表示体30全体が虹色に表示され、領域毎に図柄を表示できなくなる。さらに、第5の方向V5に並ぶ2つの第5の溝部230の底237と底237との間長さX1を50μmより大きくすると、第5の溝部230の構造が、観察者に肉眼で認識される虞がある。この為、底237と底237との間の長さX1は、上述のように、5μm以上50μm以下の長さに設定されている。
第5の溝部230の深さD1を1μm未満とすると、第5の溝部230においてを光が透可能な部分、すなわち第17の面部232及び第18の面部234の面積が小さくなり、それゆえ十分に光が透過できず、観察者による透過観察が困難になる。さらに、第5の溝部230の深さD1を50μmより大きくすると、光透過層40の厚みを厚くする必要がある。光透過層40の厚みが厚くなることにより、表示体30Dの厚みが厚くなる。表示体30Dの厚みが厚くなることにより、表示体30Dの表面と紙幣本体20の表面との間の段差が大きくなる。段差が大きくなると、表示体30Dが引っかかることが多くなり、または、見栄えが悪くなる。この為、第5の溝部230の深さD1は、1μm以上50μm以下の長さに設定されている。
本実施形態では、第5の溝部230は、さらに、アスペクト比が1.5以下の範囲に形成されている。本実施形態では、一例として、第5の溝部230は、第1の実施形態の第1の溝部50と同様に、アスペクト比が0.5以上1.5以下の範囲となるように形成されている。
なお、ここで言うアスペクト比は、第18の面部234の縁から第17の面部232の縁までの長さX3に対する第5の溝部230の深さD1の割合であり、D1/X3で表される。第5の溝部230のアスペクト比を0.5以上とすることにより、第5の溝部230の形成のしやすさを確保しつつ、第5の溝部230を透過する光を十分なものとすることができる。ここで言う、十分なものとは、観察者が観察するに十分であるということである。さらに、アスペクト比を1.5以下とすることにより、第5の溝部230の形成のしやすさを確保できる。
このように形成された第5の溝部230は、一例として、第14の領域R14の第1の方向V1の一端から他端まで延びている。なお、第5の溝部230は、第1の方向V1に、第14の領域R14の一端から他端まで延びる形状に限定されない。
図37は、第5の溝部230の配置の変形例を説明する斜視図である。図37は、第5の溝部230に積層された反射層80、及び、接着層90において第5の溝部230内の部分を示す斜視図である。図38は、図37に示す第5の溝部230を有する表示体30Dを、光透過層40の中途部で厚み方向Dに直交する断面に沿って切断した状態を示す断面図である。第5の溝部230は、図37及び図38に示すように、互いに直交する2方向に所定の間隔を有して配置されてもよい。図37及び図38に示す変形例では、第5の溝部230は、第1の方向V1に所定の一定の間隔を有して配置されている。また、第5の溝部230は、第5の方向V5に、底237と底237との間の長さX1が5μm以上50μm以下の範囲となる一定の間隔を有して、マトリクス状に配置されている。
なお、図37の示すように、第5の溝部230が、互いに直交する2方向のそれぞれに沿って配置される例においては、第5の溝部230は、これら2方向に一定の間隔を有して配置されることに限定されない。他の例では、第5の溝部230は、互いに直交する2方向のそれぞれに沿って、不規則な間隔、すなわち一定ではない間隔を有して配置されてもよい。
第15の領域R15は、図31に示すように、その外郭線は、第13の図柄G13と同様の形状を有しており、円形である。第15の領域R15は、第14の領域R14に並んで配置されている。
第15の領域R15には、第1の形状に形成された溝部または突出部が形成複数形成されている。本実施形態では、第15の領域R15には、第1の形状の溝部または突出部の一例として、第1の溝部50が複数形成されている。第15の領域R15に形成された複数の第1の溝部50は、全て同じ形状である。これら第1の溝部50の内面の一部には反射層80が積層されており、残りの部分には反射層は積層されていない。なお、図32では説明の為、4つの第1の溝部50が誇張して大きく描かれている。第1の溝部50は、実際には小さいものであり、かつ、4つ以上の多数が形成されている。なお、第1の溝部50の数は限定されない。
第15の領域R15に形成された第1の溝部50の内面の一部に積層された反射層80で反射した光により、第13の図柄G13が表示される。また、第15の領域R15に形成された第1の溝部50の内面において反射層80が積層されていない部分を透過した光により、第13の図柄G13が表示される。
第15の領域R15に形成された第1の溝部50は、直線状に延びている。本実施形態では、第15の領域R15に形成された第1の溝部50は、第1の方向V1に平行に延びている。また、第1の溝部50の長手方向両端は、第15の領域R15の外郭線まで延びている。
第15の領域R15に形成された複数の第1の溝部50は、第5の方向V5に並ぶ2つ第1の溝部50の底55と底55との間の長さX4が、5μm以上50μm以下の範囲に設定されている。本実施形態では、第5の方向V5に並ぶ2つの第1の溝部50の底55と底55との間の長さX4は、20μmに設定されている。
第15の領域R15に形成された複数の第1の溝部50の深さD2は、1μm以上50μm以下の範囲に設定されている。深さD2は、反射層80は含まず、第1の溝部50の底となる第1の面部51及び第2の面部52の交線から、山となる第1の面部51及び第2の面部52の交線までの深さである。本実施形態では、第15の領域R15に形成された複数の第1の溝部50の深さD2は、10μmに設定されている。第15の領域R15に形成された複数の第1の溝部50の長さX4及び深さD2の範囲は、第14の領域R14に形成された複数の第5の溝部230にて説明された理由と同じ理由による。第15の領域R15に形成された複数の第1の溝部50の第1の面部51は、光透過層40の厚み方向Dに対する角度は、例えば、26.6度である。
第15の領域R15に形成された第1の溝部50の第2の面部52の比表面積は、第1の面部51の比表面積よりも大きい。第2の面部52は、凹部63及び凸部64を有しており、1より大きく形成している。本実施形態では、第2の面部52の比表面積は、比表面積が1.5以上に形成されている。第15の領域R15に形成された複数の第1の溝部50の深さD2は、第5の溝部230の深さD1と同じである。また、第15の領域R15では、第5の方向V5に並ぶ2つの第1の溝部50のうち一方の第2の面部52が他方の第1の面部51に連続している。すなわち、第15の領域R15では、第5の方向V5に並ぶ2つの第1の溝部50の間には、光透過層40の厚み方向Dに直交する平面となる平面部は形成されていない。
また、第15の領域R15に形成された第1の溝部50の第2の面部52の比表面積は、第14の領域R14に形成された第5の溝部230の第17の面部232の比表面積とは異なる。この為、条件1が満たされている。
第16の領域R16は、図31に示すように、その外郭線は、第14の図柄G14と同様の形状を有している。すなわち、第16の領域R16の外郭線は、三角形である。第16の領域R16は、第15の領域R15に並んで配置されている。
第16の領域R16には、図32に示すように、複数の第6の溝部240が形成されている。第6の溝部240の内面の一部に積層された反射層80で反射した光により、第14の図柄G14が表示される。また、第6の溝部240の内面において反射層80が積層されていない部分を透過した光により、第14の図柄G14が表示される。なお、図32では説明の為、3つの第6の溝部240が、誇張して大きく描かれている。しかしながら、第6の溝部240は、実際には小さいものであり、かつ、2つ以上の多数が形成されている。なお、第6の溝部240の数は限定されない。
第6の溝部240は、第5の溝部230を光透過層40の厚み方向Dに平行な軸周りに回転した形状を有している。すなわち、第6の溝部240の、第1の方向V1に直交する断面は、第5の溝部230の第1の方向V1に直交する断面を、左右反転した形状となる。第6の溝部240は、具体的には、光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜する平面である第19の面部(傾斜面部)241、厚み方向Dに沿う第20の面部(面部)242、並びに、第19の面部241及び第2の平面部243に連続する第21の面部(側面部)244を有している。第2の平面部243は、第16の領域R16において、厚み方向Dに直交する平面に形成された部分である。第2の平面部243は、第5の方向V5に並ぶ2つの第6の溝部240の間の形成されている。
第19の面部241は、厚み方向Dに直交する平面との間の角度が鈍角となる平面である。第19の面部241に直交する方向は、第5の溝部230の第16の面部231に直交する方向と異なる。厚み方向Dに対する第19の面部241の傾斜角度は、厚み方向Dに対する第16の面部231の傾斜角度と同じである。第19の面部241は、比表面積が1である。
第20の面部242は、光透過層40の厚み方向Dに沿う。なお、方向に沿うとは、第20の面部242が平面である場合は、方向に平行であることであり、第20の面部242が平面ではない場合は、その延びる方向が、一致することである。第20の面部242は、比表面積が第19の面部241の比表面積より大きく形成されている。第20の面部242は、第17の面部232と同様に、凹部235及び凸部236を有しており、比表面積が1.5以上に形成されている。また、本実施形態では、第20の面部242の比表面積は、第17の面部232の比表面積と同じである。すなわち、第20の面部242の比表面積は、第16の領域R16の第1の溝部50の第2の面部52の比表面積とは異なる。
第21の面部244は、厚み方向Dに沿う。なお、方向に沿うとは、第21の面部244が平面である場合は、方向に平行であることであり、第21の面部244が平面ではない場合は、その延びる方向が、一致することである。第21の面部244は、比表面積が第19の面部241の比表面積より大きく形成されている。第21の面部244は、第18の面部234と同様に、凹部235及び凸部236を有しており、比表面積が1.5以上に形成されている。また、本実施形態では、第21の面部244の比表面積は、第18の面部234の比表面積と同じである。
複数の第6の溝部240は、第5の方向V5に、長さX2を空けて配置されている。底と底との間の長さは、長さX1である。第6の溝部240の深さD3は、第5の溝部230の深さD2と同じである。
複数の第6の溝部240は、第1の方向V1に第16の領域R16の一端から他端まで延びて、第5の方向V5に所定の間隔を有して配置されることに限定されない。複数の第6の溝部240は、例えば、図37及び図38に示す第5の溝部230のように、第1の方向V1及び第5の方向V5に間隔を有して配置されてもよい。
反射層80は、図32に示すように、第14の領域R14の一部、第15の領域R15、第16の領域R16の一部、及び、第17の領域R17の全域に積層されている。より具体的には、反射層80は、第14の領域R14においては、少なくとも第16の面部231に積層されている。本実施形態では、反射層80は、第14の領域R14においては、第16の面部231、及び、第1の平面部233に積層されている。反射層80は、第17の面部232及び第18の面部234には積層されていない。第16の面部231及び第1の平面部233に積層された反射層80は、光を反射することを目的として形成される。第16の面部231及び第1の平面部233に積層された反射層80は、例えば、当該反射層80に照射された光の10%以下の光のみ透過する、すなわち透過率が10%以下に形成されている。第16の面部231及び第1の平面部233に積層された反射層80は、例えば、100nmの厚みを有している。
反射層80は、第15の領域R15においては、少なくとも第1の面部51に積層されている。本実施形態では、反射層80は、第15の領域R15においては、第1の面部51、及び第2の面部52に積層されている。第1の面部51に積層された反射層80は、光を反射することを目的として形成される。第1の面部51に積層された反射層80は、例えば、当該反射層80に照射された光の10%以下の光のみ透過するように形成されている。第1の面部51に積層された反射層80は、例えば、100nmの厚みを有している。第2の面部52に積層された反射層80は、第2の面部52に入射した光を透過観察可能な厚みを有している。第2の面部52に積層された反射層80は、例えば、照射された光の20パーセント以上を透過可能な厚み、すなわち透過率が20パーセント以上となる厚みを有している。
反射層80は、第16の領域R16では、少なくとも第19の面部241に積層されている。本実施形態では、反射層80は、第19の面部241、第20の面部242、及び第2の平面部243に積層されている。反射層80は、第21の面部244には積層されていない。第19の面部241及び第2の平面部243に積層された反射層80は、光を反射することを目的として形成される。第19の面部241及び第2の平面部243に積層された反射層80は、例えば、当該反射層80に照射された光の10%以下の光のみ透過するように形成されている。第19の面部241及び第2の平面部243に積層された反射層80は、例えば、100nmの厚みを有している。第20の面部242に積層された反射層80は、透過観察可能な厚みを有している。第20の面部242に積層された反射層80は、例えば、照射された光の20パーセント以上を透過可能な厚み、すなわち透過率が20パーセント以上となる厚みを有している。
第17の領域R17に積層された反射層80は、光を反射することを目的として形成される。第17の領域R17に駅層された反射層80は、例えば、当該反射層80に照射された光の10%以下の光のみ透過するように形成されている。なお、本実施形態では、反射層80の厚みは、例えば、一定である。すなわち、第17の領域R17に積層された反射層80の厚みは、第14の領域R14、第15の領域R15、及び、第16の領域の領域R16に積層された反射層80の厚みと同じであり、光を反射することを目的として積層されている。
表示体30Dにおいて反射層80が積層されていない部分は、光を透過させることにより、各領域の図柄を表示可能としている。なお、第14の領域R14において光を透過させる第17の面部232及び第18の面部234は、光を透過させることにより、この透過光によって第12の図柄G12を表示可能とする程度の薄膜の反射層80であれば積層されてもよい。具体的には、第17の面部232及び第18の面部234に積層された反射層80の厚みは、入射した光の20%以上を透過可能、すなわち透過率が20%以上となる厚みであればよい。
接着層90は、図32に示すように、光透過層40において反射層80が積層されていない部分、及び、反射層80に積層されている。
このように形成された表示体30Dは、表示体30と同様に形成される。すなわち、第5の溝部230、第1の溝部50、及び、第6の溝部240が形成される前の光透過層40を、樹脂などの材料に対して切削機やレーザー描画機により下加工を施すことにより形成する。
次に、第5の溝部230、第1の溝部50、及び、第6の溝部240が形成される前の光透過層40に対して、例えば電鋳により形成された、第5の溝部230、第1の溝部50、及び、第6の溝部240に対応する凸部が形成された金属板を、加圧して押し付け、その後に剥離する。このように、金属板を押し付けるとともにその後に剥離することにより、金属板の凸部が光透過層40に転写され、第5の溝部230、第1の溝部50、及び、第6の溝部240が形成される。
反射層80は、第1の実施形態で説明したように、第5の溝部230、第1の溝部50、及び、第6の溝部240が形成された光透過層40に対して真空蒸着法を用いて形成することができる。光透過層40は、その厚み方向Dが、重力の作用する方向に平行となる姿勢で、図9に示すようにるつぼ102に対向配置される。すなわち、光透過層40は、第5の溝部230の第17の面部232及び第18の面部234、並びに、第6の溝部240の第20の面部242及び第21の面部244が、重力の作用する方向に沿う姿勢で配置される。
図39は、真空蒸着法により光透過層40に蒸着材料101による膜103が形成された状態を示している。なお、図39では、第14の領域R14に形成された膜103を一例として示している。膜103が、反射層80を形成する。
第14の領域R14では、第17の面部232及び第18の面部234に形成された膜103は、第16の面部231に形成された膜103より薄い。これは、第17の面部232及び第18の面部234の比表面積が、第16の面部231比表面積よりも大きい為、第17の面部232及び第18の面部234の単位表面積当たりの蒸着材料101の蒸着量が、第16の面部231の単位表面積当たりの蒸着材料101の蒸着量より少なくなる為である。さらに、気化もしくは昇華した蒸着材料101は、直進性を有している。すなわち、気化もしくは昇華した蒸着材料101は、重力にさからって上方に直進する。この為、気化もしくは昇華した蒸着材料101は、重力の作用する方向に沿う第17の面部232及び第18の面部234には、付着しにくい。
第17の面部232及び第18の面部234の比表面積が第16の面部231の比表面積の1.5倍以上であることにより、第17の面部232及び第18の面部234に形成される膜103の厚みは、第16の面部231に形成される膜103の厚みの0.67倍以下となる。
第15の領域R15に形成された複数の第1の溝部50においても、同様である。具体的には、第2の面部52の比表面積が第1の面部51の比表面積の1.5倍以上であることによって、第2の面部52に形成された膜103の厚みは、第1の面部51に形成された膜103の厚みの、0.67倍以下となる。
第16の領域R16では、同様に、第20の面部242及び第21の面部244の比表面積が第19の面部241の比表面積の1.5倍以上であることによって、第20の面部242及び第21の面部244に形成された膜103の厚みは、第19の面部241に形成された膜103の厚みの0.67以下となる。
なお、第5の溝部230の第16の面部231の比表面積が1であり、第15の領域R15の第1の溝部50の第1の面部51の比表面積が1であり、第6の溝部240の第19の面部241の比表面積が1であることから、第16の面部231、第1の面部51、及び、第19の面部241に形成された膜103の厚みは同じ、または、略同じとなる。
次に、図40に示すように、光透過層40において膜103が不要な部分から、膜103を除去する。除去の方法の一例としては、ウェットエッチングがある。光透過層40に対してウェットエッチングを施すことにより、第1の面部51、第2の面部52、第16の面部231に形成された膜103、第1の平面部233に形成された膜103、第1の面部51に形成された膜103、及び、第19の面部241に形成された膜103、第20の面部242に形成された膜103、及び、第2の平面部243に形成された膜103が残った状態で、第17の面部232、第18の面部234、第2の面部52、第20の面部242、及び、第21の面部244に形成された膜103が除去される。なお、第1の面部51に残った膜103の厚みは、第2の面部52に残った膜103の厚みよりも厚い。第19の面部241に残った膜103の厚みは、第20の面部242に残った膜103の厚みよりも厚い。
これは、第16の面部231に形成された膜103の厚みが、第17の面部232及び第18の面部234に形成された膜103の厚みよりも厚く、第1の面部51に形成された膜103の厚みが第2の面部52に形成された膜103の厚みよりも厚く、かつ、第19の面部241に形成された膜103の厚みが、第20の面部242及び第21の面部244に形成された膜103よりも厚い為、第17の面部232、第18の面部234、第2の面部52、第20の面部242、及び、第21の面部244に形成された膜103が先に除去される為である。
なお、不要な膜103を除去する他の手段としては、例えば、削り取ってもよい。ウェットエッチングや削り取るなどの除去手段は、第16の面部231、第1の平面部233、第1の面部51、第19の面部241、第2の平面部243、及び、第17の領域R17に積層された反射層80の厚みが、本実施形態では、入射した光の透過率が10%以下となる厚みを残すように、制御される。すなわち、反射観察により観察可能な図柄を表示可能な厚みを有している。さらに、第2の面部52、第20の面部242に積層された反射層80の厚みが、本実施形態では、入射した光の透過率が20%以上となる厚みを残すように、制御される。膜103から不用な部分が除去されることにより、反射層80が形成される。
次に、第5の溝部230に、物品10Bの主面12側から入射した光の挙動を説明する。図33は、第5の溝部230に、光が入射した状態を示している。図33に示すように、主面12側から光透過層40の厚み方向Dに平行に入射した光L10は、第16の面部231に積層された反射層80に入射する。図中、光L10は、実線で示している。第16の面部231に積層された反射層80は、光の透過率が10%以下となっている為、反射層80をほとんど透過しない。光L10は、反射層80で反射される。
第5の溝部230に、光透過層40の厚み方向Dに傾斜する方向に進む光のうち、第18の面部234側から第17の面部232側へ進み、第18の面部234に入射した光L11は、第18の面部234を透過する。光L11は、二点鎖線で示されている。厚み方向Dに傾斜する方向に進む光のうち、第16の面部231に入射した光L13は、第16の面部231に積層された反射層80で反射して、物品10の上方に進む。光L13は、三点鎖線で示している。厚み方向Dに傾斜する方向に進む光のうち、第17の面部232側から第18の面部234側に進み、第17の面部232に入射した光L14は、第17の面部232を透過する。光L14は、四点鎖線で示されている。
次に、第5の溝部230に、物品10の主面27側から入射した光の挙動を説明する。図33に示すように、光透過層40の厚み方向Dに平行に入射した光L15は、第16の面部231に積層された反射層80に入射し、反射層80で反射して主面27側に戻る。光L15は、七点鎖線で示している。
第5の溝部230に、光透過層40の厚み方向Dに傾斜する方向に沿って進む光のうち、第18の面部234側から第17の面部232側へ進む光L16は、第17の面部232を透過する。光L16は、六点鎖線で示している。厚み方向Dに傾斜する方向に進光のうち、第17の面部232側から第18の面部234側に進む光L17は、第18の面部234を透過する。光L17は、五点鎖線で示されている。
第15の領域R15に形成された第1の溝部50に入射した光の挙動は、第1の実施形態で説明した通りである。なお、第15の領域R15に形成された第1の溝部50は、第2の面部52に、透過観察が可能程度の厚みを有する反射層80が積層されている。この為、第15の領域R15を透過することにより表示される画像は、暗く表示される。第16の領域R16に入射した光の挙動、すなわち第6の溝部240に入射した光の挙動は、第6の溝部240が、第5の溝部230を厚み方向Dに平行な軸回りに180度回転した形状であることから、第5の溝部230と同様であるが、第5の方向V5に左右対称となる。
次に、図41に示すように、第14の領域R14に、線光源250から光が入射したときの光の透過光について説明する。線光源250は、物品10Bの主面12側に配置されている。線光源250は、第5の方向V5に延びる光源である。線光源250は、第5の方向V5に点光源251が複数並んだものと考えることができる。
この為、線光源250は、図41に示すように、配列方向に並ぶ複数の点光源251を有すると考えられる。各点光源251から照射された光の一部は、第17の面部232及び第18の面部234、並びに、接着層90を透過する。各点光源251から照射された光の残りは、第16の面部231及び第1の平面部233で反射されことにより、接着層90に入射しない。
第16の領域R16に線光源250、すなわち各点光源251から光が入射したときの光の透過光の一部は、第20の面部242及び第21の面部244、並びに、接着層90を透過する。各点光源251から照射された光の残りは、第19の面部241及び第2の平面部243で反射されることにより、接着層90に入射しない。
次に、図42に示すように、第15の領域R15に、線光源250から光が入射したときの光の透過光について説明する。各点光源251から照射された光の一部は、第1の面部51に積層された反射層80で反射されて接着層90に入射しない。各点光源251から照射された光の残りは、第2の面部52、及び、接着層90を透過する。
このように、第14の領域R14では、第17の面部232及び第18の面部234を光が透過する。すなわち、2つの側面を光が透過する。同様に第16の領域R16では、第20の面部242及び第21の面部244の2つの側面を光が透過する。この為、第15の領域R15を透過する光の強度は、第14の領域R14及び第16の領域R16を透過する透過光の強度とは、異なる。本実施形態では、第14の領域R14を透過する光の用度は、第15の領域R15を透過する光の強度よりも大きい。同様に、第16の領域R16を透過する光の強度は、第15の領域R15を透過する光の強度よりも大きい。
さらに、第15の領域R15では第5の方向V5に一方に配置された第2の面部52のみを光が透過可能であることに対して、第14の領域R14及び第16の領域R16では、第5の方向V5に両側に配置された側面を光が透過可能である。この為、第14の領域R14及び第16の領域R16を透過する光は、第15の領域R15を透過する光に対して、広い範囲に到達する。
次に、表示体30Dに光を入射させ、反射観察した場合に表示される図柄について、説明する。なお、反射観察をする際では、物品10Bにおいて、表示体30Dが固定される主面12側から光を入射させる。観察者Hは、表示体30Dの主面の一部となる光透過層40の主面41に対向する位置にいる。より具体的には、観察者Hは、主面41に対して、光透過層40の厚み方向Dに平行な方向に離間した位置で、観察する。
図43は、物品10Bの主面12に対して、光透過層40の厚み方向Dに対して交差する方向に光L12を入射させた状態を示している。なお、図43では、説明の為、紙幣本体20は省略している。図43では、表示体30Dにおいて暗く表示される部分にハッチングを付して示している。このハッチングは、断面を示すものではない。光L12は、図33に示すように、第18の面部234側から第17の面部232側へ進む。
光L12の入射方向は、具体的には、第1の方向V1及び光透過層40の厚み方向Dのこれら2つの方向に直交する2方向のうち第18の面部234から第17の面部232へ向かう方向から光透過層40の厚み方向Dまでの範囲である。光L12は、光L11及び光L13を含む。光L12は、光透過層40を透過して、界面42の第14の領域R14、第15の領域R15、第16の領域R16、及び、第17の領域R17に到達する。
第17の領域R17に到達した光L12は、反射層80により反射する。第17の領域R17に積層された反射層80により反射した光L11は、第17の領域R17が光透過層40の厚み方向Dに直交する平面であることから、観察者H側には反射されない。この為、第17の領域R17は図43に示すように暗く表示される。
第14の領域R14に入射した光L12の一部となる光L13は、第16の面部231に積層された反射層80により反射される。第16の面部231に積層された反射層80により反射された光L13は、第16の面部231が光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜する平面であることから、観察者H側には反射される。この為、第12の図柄G12が明るく表示される。また、第14の領域R14に入射した光L12の残りの一部は、第1の平面部233に積層された反射層80により反射される。第1の平面部233は、厚み方向Dに直交する平面であることから、第1の平面部233に積層された反射層80で反射された光は、観察者H側には反射されない。また、第14の領域R14に入射した光L11の残りの一部となる光L11は、第18の面部234を透過する。
第15の領域R15に到達した光L12は、第1の面部51に積層された反射層80により反射される。第1の面部51に積層された反射層80により反射された光L5の一部は、第1の面部51が光透過層40の厚み方向Dに傾斜する平面であることから、観察者H側には反射される。この為、第13の図柄G13が明るく表示される。
第16の領域R16に到達した光L12の一部は、第21の面部244及び接着層90を通り、表示体30Dを透過する。第16の領域R16に到達した光の残りは、第2の平面部243に積層された反射層80で反射される。第2の平面部243が光透過層40の厚み方向Dに直交する平面であることから、第2の平面部243で反射された光は、観察者H側には反射されない。この為、第14の図柄G14は表示されない。
このように、表示体30Dは、光L12に対しては、第12の図柄G12、及び、第13の図柄G13を明るく表示する。
図44は、物品10の主面12に対して、光透過層40の厚み方向Dに平行に進む光L10を入射させた状態を示している。なお、図44では、説明の為、紙幣本体20を省略している。図44では、表示体30Dにおいて暗く表示される部分にハッチングを付して示している。このハッチングは、断面を示すものではない。光L10は、光透過層40を透過して、界面42の第14の領域R14、第15の領域R15、第16の領域R16、及び、第17の領域R17に到達する。
第17の領域R17に到達した光L10は、図33に示すように、反射層80により反射する。第17の領域R17は、光透過層40の厚み方向Dに直交する平面であることから、光L4は、観察者H側に反射する。この為、第17の領域R17は、明るく表示される。
第14の領域R14に入射した光L10の一部は、図33に示すように、第16の面部231に積層された反射層80により反射される。第16の面部231に積層された反射層80により反射された光L10は、第16の面部231が光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜する平面であることから、観察者H側には戻らない。この為、第14の領域R14で反射した光L10は、観察者Hには観察されない。この為、第1の図柄G1は暗く表示される。
なお、第14の領域R14に入射した光の残りは、第1の平面部233に積層された反射層80により反射される。第1の平面部233が厚み方向Dに直交する平面であることから、第1の平面部233に積層された反射層80で反射された光は観察者H側に戻る。しかしながら、第14の領域R14における第1の平面部233に占める割合は、小さい。この為、第1の平面部233に積層された反射層80により反射された光の強度は小さく、第14の領域R14により示される第12の図柄G12は観察者Hには認識されない。または、第12の図柄G12は、認識されてもとても暗く表示される。なお、第1の平面部233の面積は、第1の平面部233に積層された反射層80により反射された光のみによって第12の図柄G12が観察されることがない程度の比較的小さな面積に設定されている。
図33に示すように、第15の領域R15に入射した光L10の一部は、第1の面部51に積層された反射層80により反射される。第1の面部51に積層された反射層80により反射された光L10は、第1の面部51が厚み方向Dに傾斜する平面であることから、観察者H側には反射されない。この為、第13の図柄G13は暗く表示される。
第16の領域R16に到達した光L10の一部は、第19の面部241に積層された反射層80により反射される。第19の面部241に積層された反射層80により反射された光は、第19の面部241が厚み方向Dに対して傾斜する平面であることから、観察者H側には反射されない。この為、第14の図柄G14は暗く表示される。
なお、第16の領域R16に入射した光の残りは、第2の平面部243に積層された反射層80により反射される。第2の平面部243が厚み方向Dに直交する平面であることから、第2の平面部243に積層された反射層80で反射された光は観察者H側に戻る。しかしながら、第16の領域R16における第2の平面部243が占める割合は、小さい。この為、第2の平面部243に積層された反射層80により反射された光の強度は小さく、第16の領域R16により示される第15の図柄G15は暗く表示される。または、第15の図柄G15は、認識されてもとても暗く表示される。第2の平面部243の面積は、第2の平面部243に積層された反射層80により反射された光のみによって第14の図柄G14が観察されることがない程度の比較的小さな面積に設定されている。
このように、表示体30Dに対して、光透過層40の厚み方向Dに平行に入射する光L10による反射観察では、第17の領域R17が明るく表示されことにより、第14の領域R14、第15の領域R15、及び、第16の領域R16は暗く表示される。すなわち、第17の領域R17のみが明るく表示されることにより、第12の図柄G12、第13の図柄G13、及び、第14の図柄G14が暗く表示されることとなる。
図45は、物品10Bの主面12に対して、光透過層40の厚み方向Dに対して交差する方向に光L14を入射させた状態を示している。なお、図45では、紙幣本体20は省略されている。図45では、表示体30Dにおいて暗く表示される部分にハッチングを付して示している。このハッチングは、断面を示すものではない。
光L14は、図33に示すように、第17の面部232側から第18の面部234側へ進む光である。光L12の入射方向は、具体的には、第1の方向V1及び光透過層40の厚み方向Dのこれら2つの方向に対して直交する2方向のうち第17の面部232から第18の面部234へ向かう方向から光透過層40の厚み方向Dまでの範囲である。光L12は、光透過層40を透過して、界面42の第14の領域R14、第15の領域R15、第16の領域R16、及び、第17の領域R17に到達する。
第17の領域R17に到達した光L14は、第17の領域R17に積層された反射層80により反射する。第17の領域R17に積層された反射層80により反射された光L12は、第17の領域R17が光透過層40の厚み方向Dに直交する平面であることから、観察者H側には反射されない。この為、第17の領域R17は、暗く表示される。
第14の領域R14に到達した光L12の一部は、図33に示すように、第17の面部232及び接着層90を透過することにより、表示体30Dを透過する。第14の領域R14に入射した光の残りは、第1の平面部233に積層された反射層80により反射される。第1の平面部233が厚み方向Dに直交する平面であることから、第1の平面部233に積層された反射層80で反射された光は観察者H側に反射されない。この為、第14の領域R14は、暗く表示される。
第15の領域R15に到達した光L12は、第2の面部52及び接着層90を透過することにより、表示体30Dを透過する。この為、第15の領域R15は、暗く表示される。
第16の領域R16に到達した光L12の一部は、第21の面部244及び接着層90を透過することにより、表示体30Dを透過する。第16の領域R16に到達した光L12の残りは、第19の面部241に積層された反射層80により反射される。第19の面部241に積層された反射層80により反射された光L12は、第19の面部241が厚み方向Dに傾斜する平面であることから、観察者H側に反射される。この為、第16の領域R16は、明るく表示されることにより、第14の図柄G14が表示される。
このように、表示体30Dに対して、光透過層40の厚み方向Dに傾斜する方向に沿って入射する光L12による反射観察では、第16の領域R16が明るく表示されことにより、第14の図柄G14が明るく表示される。
次に、表示体30Dに光を入射させ、透過観察した場合に表示される図柄について、説明する。なお、透過観察では、紙幣本体20において表示体30Dが固定される主面21に対して反対側の主面27から光を入射させる。観察者Hは、表示体30Dの主面となる光透過層40の主面41に対向する位置にいる。より具体的には、観察者Hは、主面41に対して、光透過層40の厚み方向に平行な方向に離間した位置で、表示体30Dを観察する。
図46は、物品10B対して、光透過層40の厚み方向Dに対して交差する方向に沿って光L16を入射させた状態を示している。なお、図46では、紙幣本体20は省略している。図46では、表示体30Dにおいて暗く表示される部分にハッチングを付して示している。このハッチングは、断面を示すものではない。
光L16の照射方向は、具体的には、図33に示すように、光透過層40の厚み方向Dに交差する方向であって、かつ、第18の面部234側から第17の面部232側へ向かう方向である。より具体的には、光L16の入射方向は、第1の方向V1及び光透過層40の厚み方向Dのこれら2つの方向に直交する2方向のうち第18の面部234から第17の面部232へ向かう方向から、光透過層40の厚み方向Dまでの範囲である。
光L16の一部は、物品10Bの光透過部24、接着層90、第17の面部232、第2の面部52、及び、第21の面部244を透過して、表示体30Dを透過し、観察者Hにより観察される。この為、第14の領域R14、第15の領域R15、及び、第16の領域R16は、明るく表示される。すなわち、第12の図柄G12、第13の図柄G13、及び第14の図柄G14が明るく表示される。なお、第2の面部52には、透過観察可能な厚みの反射層80が積層されている為、第13の図柄G13は、第12の図柄及び第14の図柄G14よりも暗く表示される。
また、光L16の残りは、反射層80で反射されることにより、界面42の第17の領域R17には到達しない。この為、第17の領域R17は、暗く表示される。この為、観察者は、図47に示すように、第12の図柄G12、第13の図柄G13、及び第14の図柄G14を観察することができる。
図47は、物品10Bに、光透過層40の厚み方向Dに平行に進む光L15を照射した状態を示している。なお、図47では、紙幣本体20は省略しており、表示体30Dのみを示している。また、図47では、表示体30Dにおいて暗く表示される部分は、ハッチングを付して示している。このハッチングは、断面を示すものではない。光透過部24、及び、接着層90を透過した光L15は、反射層80により反射されることにより、界面42には到達しない。この為、表示体30Dは、暗く表示される。この為、第12の図柄G12、第13の図柄、及び、第14の図柄G14は、いずれも表示されない。
図48は、物品10Bの主面27に対して、光透過層40の厚み方向Dに対して交差する方向から光L17を入射させた状態を示している。なお、図48では、紙幣本体20は省略しており、表示体30Dのみを示している。また、図48では、表示体30Dにおいて暗く表示される部分は、ハッチングを付して示している。このハッチングは、断面を示すものではない。
光L17の照射方向は、具体的には、第1の方向V1及び光透過層40厚み方向Dのこれら2つの方向のうち第17の面部232から第18の面部234に向かう方向から光透過層40の厚み方向Dまでの範囲である。この為、光L16の一部は、物品10Bの光透過部24、接着層90、第18の面部234、第2の面部52、第21の面部244を透過し、光透過層40を透過して観察者Hに観察される。この為、第14の領域R14、及び、第16の領域R16が明るく表示されることにより、第12の図柄G12、及び、第14の図柄G14が明るく表示される。
光L17の残りは、反射層80により反射されることにより、界面42の第15の領域R15及び第17の領域R17には到達しない。この為、第17の領域R17は、暗く表示される。この為、光16による透過観察では、第12の図柄G12及び、第14の図柄G14が明るく表示される。
このように構成された物品10Bでは、透過観察する場合に表示体30Dにより表示される図柄と、反射観察する場合に表示体30により表示される図柄とが異なるものとなる。具体的には、表示体30Dは、反射観察では、その観察条件により、図43に示すように第12の図柄G12及び第13の図柄G13のみを明るく表示し、図44に示すように第12の図柄G12、第13の図柄G13、及び、第14の図柄G14を暗く表示し、図45に示すように、第14の図柄G14のみを明るく表示する。
すなわち、表示体30Dは、反射観察では、観察条件として表示体30に対する光の入射方向により、表示する図柄として、第12の図柄G12及び第13の図柄G13を合わせた図柄、第12の図柄G12第13の図柄G13及び第14の図柄G14を合わせた図柄、図14の図柄G14のみ、という3種類の図柄を表示することが可能である。
また、表示体30Dは、透過観察では、その観察条件により、図46に示すように、第12の図柄G12、第13の図柄G13及び第14の図柄G14を明るく表示し、図48に示すように第12の図柄G12及び第14の図柄G14を明るく表示する。または、図47に示すように、いずれの図柄も表示しない。すなわち、第12の図柄G12及び第14の図柄G14を合わせた図柄、第12の図柄G12、第13の図柄G13、及び、第14の図柄G14を合わせた図柄、いずれの図柄も表示せず全体として暗い図柄、という3種類の図柄を表示可能である。
このように、表示体30Dは、第14の領域R14の第5の溝部230の面部となる第17の面部232の比表面積、第15の領域R15の第1の溝部50の面部となる第2の面部52の比表面積、及び第16の領域R16の第6の溝部240の面部となる第20の面部242の比表面積が異なることにより、条件1を満たしている。さらに、第15の領域15の第2の面部52、及び第16の領域R16の第20の面部242には、それぞれ、透過観察を可能とする厚みを有する反射層80が積層されており、かつ、それぞれの反射層80の厚みが異なることにより、条件2を満たしている。このように、表示体30Dが、条件1及び条件2を満たすことにより、反射観察で表示可能な図柄と透過観察で表示可能な図柄を異なるものとすることができる。この為、表示体30Dは、高い視覚効果を有する。
さらに、表示体30Dが高い視覚効果を有することにより、カラーコピーによる偽造方法やスキャナを用いる偽造方法では、表示体30Dを偽造することができない。この為、物品10の偽造を防止することができる。
また、第5の溝部230においては、第17の面部232及び第18の面部234の比表面積を第16の面部231の比表面積よりも大きくすることにより、真空蒸着方法により反射層80を形成する場合において、第17の面部232及び第18の面部234に形成される蒸着材料101により膜103の厚みを小さくすることができるので、これを除去する作業の効率を向上することができる。この為、表示体30Dの製造効率を向上することができる。同様に、第6の溝部240においては、第20の面部242及び第21の面部244の比表面積を第19の面部241の比表面積よりも大きくすることにより、表示体30Dの製造効率を向上できる。
また、第17の面部232及び第18の面部234に凹部235を形成し、第20の面部242及び第21の面部244に凹部235を形成することにより、第17の面部232及び第18の面部234の外形、並びに、第20の面部242及び第21の面部244の外形を大きくすることなく、第17の面部232及び第18の面部234の比表面積、並びに、第20の面部242及び第21の面部244の比表面積を大きくすることができるので、表示体30Dをコンパクトに形成することができる。
次に、本発明の第4の実施形態に係る物品10Cを、図49、図50、及び図50Aを用いて説明する。なお、第2の実施形態と同様の機能を有する構成は、第2の実施形態と同一の符号を付して説明を省略する。
図49は、物品10Cを示す平面図である。図50は、物品10Cを示す断面図である。図49に示すように、物品10Cは、物品10Aに対して、表示体30Aを表示体30Eに置き換えたものである。すなわち、物品10Cは、紙幣本体20、及び、紙幣本体20の一方の主面21上に固定された表示体30Eを有している。
表示体30Eは、表示体30Aに対して、第12の領域R12に形成された溝部または突出部が異なる。さらに、表示体30Eは、第18の領域R18、第19の領域R19、及び、第20の領域R20を有している。他の構造は、表示体30Aと同じである。この為、表示体30Eは、第12の領域R12、第18の領域R18,第19の領域R19、及び、第20の領域R20についてのみ説明し、他の説明は省略する。表示体30Eは、第5の領域R5、第6の領域R6、及び第7の領域R7を有しているので、条件1及び条件2を満たしている。
第12の領域R12には、第2の形状を有する溝部または突出部が複数形成されている。本実施形態では、一例として、第12の領域R12には、第5の溝部230が複数形成されている。複数の第5の溝部230は、第5の方向V5に隣り合う2つの第5の溝部230の間に所定の間隔(長さX2)を有して配置されている。隣り合う第5の溝部230の間の部分は、第1の平面部233となる。
第12の領域R12に形成された第5の溝部230は、第11の領域R11に形成された第1の溝部50と同じ方向に延びている。すなわち、第5の溝部230は、第1の方向V1に延びている。第5の方向V5に並ぶ2つの第5の溝部230の底237と底237との間の長さX2は、20μmである。第12の領域R12に形成された第5の溝部230の深さD1は、第11の領域R11に形成された第1の溝部50の深さと同じ深さであり、一例として、5μmである。
第12の領域R12に形成された第5の溝部230の第16の面部231は、第11の領域R11に形成された第1の溝部50の第1の面部51と平行であり、一例として、光透過層40の厚み方向Dに対する傾斜角度は、30度である。
次に、第18の領域R18,第19の領域R19、及び、第20の領域R20について説明する。これら領域R18,R19,R20は、例えば、平面視で円形に形成されている。領域R18,R19,R20は、第5の方向に並んで配置されている。
図50Aは、表示体30Hを、領域R18,R19,R20を通り第5の方向V5に平行な切断面に沿って切断した状態を示す断面図である。図50Aに示すように、領域R18,R19,R20には、それぞれ、第5の溝部230が形成されている。第18の領域R18に形成された第5の溝部230の第16の面部231の厚み方向Dに対する傾斜角度、第19の領域R19に形成された第5の溝部230の第16の面部231の厚み方向Dに対する傾斜角度、及び、第20の領域R20に形成された第5の溝部230の第16の面部231の厚み方向Dに対する傾斜角度は、異なる。すなわち、領域R18,R19,R20では、傾斜面部に直交する方向が異なることとなり、条件4が満たされる。また、領域R18,R19,R20のそれぞれの第5の溝部230の第17の面部232及び第18の面部234には、反射層80は積層されていない。なお、領域R18,R19,R20のそれぞれの第5の溝部230の深さは、いずれも同じであり、第5の方向V5の長さも同じである。
第18の領域R18に形成された複数の第5の溝部230の第16の面部231の厚み方向Dに対する傾斜角度は、45度である。第19の領域R19に形成された複数の第5の溝部230の第16の面部231の厚み方向Dに対する傾斜角度は、40度である。第20の領域R20に形成された複数の第5の溝部230の第16の面部231の厚み方向Dに対する傾斜角度は、35度である。
次に、第12の領域R12で反射された反射光による反射観察、及び、第12の領域R12に入射する光による透過観察について、説明する。
まず、反射観察について説明する。第11の領域R11に形成された第1の溝部50の第1の面部51と、第12の領域R12に形成された第5の溝部230の第16の面部231とが平行であることから、第12の領域R12は、第11の領域R11と同様に光を反射する。すなわち、第12の領域R12は第11の領域R11と同様に光を反射することにより、反射観察では、月形状の第12の図柄G12は表示されない。なお、ここで言う月形状とは、2つの円弧により形成された閉じた範囲の形状である。
次に、透過観察について説明する。第12の領域R12に形成された複数の第5の溝部230が第17の面部232及び第18の面部234を有することから、光透過層40Aの厚み方向Dに傾斜し、第11の領域R11の第1の溝部50の第1の面部51側から第2の面部52側へ進む方向に入射する光のうち第11の領域R11に入射した光は第1の溝部50の第1の面部51に積層された反射層80で反射されることにより観察者Hには観察されないが、第12の領域R12に入射した光は第18の面部234を透過することにより観察者Hにより観察される。透過観察においては、第11の領域R11が暗く表示され、かつ、第12の領域R12が明るく表示されることにより、月形状の第12の図柄G12が明るく表示される。
次に、第18の領域R18、第19の領域R19、及び、第20の領域R20による透過観察について説明する。領域R18,R19,R20の透過観察は、第3の実施形態で説明した第14の領域R14に形成された第5の溝部230と同様であり、領域R18,R19,R20は、それぞれ、円を表示する。
領域R18,R19,R20の反射観察では、観察者は、円が動いているに、見える。すなわち、領域R18,R19,R29のように、一方向に並んだ複数の領域のそれぞれに形成された第5の溝部230の第16の面部231の厚み方向Dに対する傾斜角度を、この複数の領域の並ぶ方向に、増大または減少させることにより、反射観察により視認される画像の動きを表現できる。
この点について具体的に説明する。図50Aでは、領域R18,R19,R20は、第5の方向V5に並んでいる。そして、第5の方向V5に沿って一端に配置された第18の領域R18から他端に配置された第20の領域R20まで、第5の溝部230の第16の面部231の厚み方向Dに対する傾斜角度を減少させている。具体的には、第18の領域R18では、第16の面部231の厚み方向Dに対する傾斜角度を45度とし、第19の領域R19では、第16の面部231の厚み方向Dに対する傾斜角度を40度とし、第20の領域R20では、第16の面部231の厚み方向Dに対する傾斜角度を35度としている。
このように、傾斜角度が異なることにより、反射観察では、表示体30Hに対する観察者の位置が変化させると、領域R18,R19,R20のうち、第18の領域R18により表示される円のみ視認できる状態、第19の領域R19により表示される円のみ視認できる状態、第20の領域R20のみ視認できる状態が切り替わる。この切換により、観察者は、円が第5の方向V5に移動するように見える。すなわち、図柄の動きが表現される。
このように構成された物品10Cでは、第5の領域R5乃至第10の領域R10、及び、第13の領域R13に対する透過観察により表示される図柄及び反射観察により表示される図柄は、その一部が、物品10Aと同じである。この為、本実施形態では、第2の実施形態と同様の効果が得られる。
さらに、領域R18,R19,R20のそれぞれに形成された第5の溝部230の第16の面部231の厚み方向Dに対する傾斜角度を異なる角度とすることにより、反射観察により視認される図柄が動いているように、観察者に対して視認指せることができる。
なお、本実施形態では、複数の領域に形成された溝部または突出部の傾斜面部の、光透過層の厚み方向に対する傾斜角度を異なる角度とすることの例として、複数の領域のそれぞれに第5の溝部230を形成した。しかしながら、これに限定されない。例えば、1つの領域に第5の溝部230を形成し、他の1つの領域に第1の溝部50を形成し、他の1つの領域に第2の溝部60を形成してもよい。
また、厚み方向Dに対する傾斜角度として、45度、40度、35度としたが、これに限定されない。並ぶ2つの領域に形成された傾斜面部の、光透過層の厚み方向に対する傾斜角度の差を小さくすることにより、図柄の動きを細かく表現することができる。
ご確認下さい。
また、第3の実施形態及び第4の実施形態では、光透過層40,40Aの界面42,42Aの各領域には、第1の形状を有する溝部、または、第2の形状を有する溝部が形成された。しかしながら、各領域に形成されるものは、溝部に限定されない。例えば、突出部が形成されてもよい。
図51は、表示体30Dの変形例である表示体30Fを示している。表示体30Fは、第14の領域R14に、第5の溝部230に代えて複数の第1の突出部200が形成されている。第1の突出部200は、図25に示しており、第1の実施形態の表示体30の変形例である表示体30Bが有している。第15の領域R15に、第1の溝部50に代えて複数の第4の突出部260が形成されている。第16の領域R16に、第5の溝部230に代えて複数の第3の突出部220が形成されている。
第14の領域R14に形成された第1の突出部200は、全て同じ形状である。第1の突出部200の高さは、例えば一定である。第1の突出部200は、第1の方向V1に平行に延びている。なお、第1の突出部200は、図51では説明の為、2つの第1の突出部200が、誇張して大きく描かれている。しかしながら、実際には、第1の突出部200は小さいものであり、かつ、2つ以上のより多数が形成されている。
第1の突出部200の第10の面部201に反射層80が積層されている。第10の面部201に積層された反射層80は、照射された光を反射することを目的として形成されており、例えば、照射された光の10%以下のみ透過可能に形成されている。第11の面部202には、反射層80は積層されていない。第10の面部201及び第11の面部202は、界面42の第17の領域R17の平面の延長面との間の角度が鈍角となる平面である。
第1の突出部200は、その幅方向に複数隣接して配置されている。光透過層40の界面42において隣接する第1の突出部200は、互いに連続して形成されている。または、隣接する第1の突出部200は、隣接する第1の突出部200が互いに離れていてもよい。
第15の領域R15に形成された複数の第4の突出部260は、第2の形状を有している。第4の突出部260は、光透過層40の厚み方向Dに傾斜する平面に形成された傾斜面部、傾斜面部に対して交差する平面に沿う面部、並びに、厚み方向Dに直交する平面部及び傾斜面部に連続する側面部を有している。第4の突出部260の傾斜面部に、反射を目的とする反射層80が積層されている。
第4の突出部260は、全て同じ形状である。第4の突出部260の高さは、例えば一定である。第4の突出部260の外面の一部には反射層80が積層されており、残りの部分には反射層は積層されていない。なお、図51では説明の為、2つの第4の突出部260が誇張して大きく描かれている。第4の突出部260は、実際には小さいものであり、かつ、2つ以上の多数が形成されている。
第15の領域R15に形成された第4の突出部260の一部に積層された反射層80で反射した光により、第13の図柄G13が表示される。また、第15の領域R15に形成された第4の突出部260の外面において、透過観察が可能な厚みを有する反射層80が積層された部分、及び反射層80が積層されていない部分を透過した光により、第13の図柄G13が表示される。
第4の突出部260は、直線状に延びている。第4の突出部260は、第1の方向V1に平行に延びている。第4の突出部260の長手方向両端は、第15の領域R15の外郭線まで延びている。
第4の突出部260の外面は、光透過層40の厚み方向Dに対して傾斜する平面である第22の面部(傾斜面部)261、第22の面部261に交差する平面に沿う第23の面部(面部)262、並びに、厚み方向Dに直交する平面である第3の平面部263及び第22の面部261に連続する第24の面部(側面部)264を有している。第3の平面部263は、第5の方向V5に並ぶ2つの第4の突出部260の間の平面部である。第3の平面部263の延長面は、第17の領域R17と同一平面となる。
第22の面部261は、その延長面と界面42の第4の領域R4の平面の延長面との間の角度が鈍角となる平面である。第22の面部261は、例えば、第14の領域R14に形成された第1の突出部200の第10の面部201と平行な平面に形成されている。第22の面部261の比表面積は1である。
第23の面部262は、第22の面部261に交差する方向の一例として、例えば、光透過層40の厚み方向Dに沿う面に形成されている。なお、平面に沿うとは、第13の面部212が平面である場合は、平面に平行であることであり、第13の面部212が平面ではない場合は、その延びる方向が平面の延びる方向に一致することである。
第23の面部262は、第22の面部261の比表面積よりも大きな比表面積を有している。第23の面部262の比表面積は、第22の面部261の比表面積の1.5倍以上の大きさを有している。第23の面部262は、その比表面積が第22の面部261の比表面積より大きくなるように、例えば、複数の凹部265を有している。凹部265は、第5の溝部230の凹部235と同様に形成されている。第23の面部262の比表面積は、第14の領域R14に形成された第1の突出部200の第11の面部202の比表面積より小さい。
このように形成された第4の突出部260は、その幅が第5の溝部230の幅と同様に形成され、高さが第5の溝部230の深さと同様の長さを有している。具体的には、第4の突出部260は、第5の方向V5に並ぶ2つの第4の突出部260の頂部267と頂部267との間の、第5の方向V5に沿う長さX1が、一例として5μm以上50μm以下の長さに設定され、高さH1が一例として1μm以上50μm以下の高さに設定されている。なお、第4の突出部260の頂部267は、第22の面部261と第23の面部262との交線となる部分である。高さH1は、反射層80は含まず、第3の平面部263から頂部267までの、厚み方向Dに沿う高さである。本実施形態では、一例として、第5の方向V5に並ぶ2つの第4の突出部260の頂部267と頂部267との間の間隔となる長さX1が20μmであり、高さH1が10μmである。
なお、第5の方向V5に隣り合う2つの第4の突出部260は、第5の方向V5に、長さX2を有して配置されている。長さX2は、一定であってもよいし、または、一定でなくてもよい。本実施形態では、長さX2は、全て一定の値である。長さX1は、長さX2を含む。
第5の方向V5に並ぶ2つの第4の突出部260の頂部267と頂部267との間の長さX1を5μm未満とすると、透過観察の際に回折光が射出される為、表示体30全体が虹色に表示され、領域毎に図柄を表示できなくなる。さらに、第5の方向V5に並ぶ2つの第4の突出部260の頂部267と頂部267との間長さX1を50μmより大きくすると、第4の突出部260が、観察者に肉眼で認識される虞がある。この為、頂部267と頂部267との間の長さX1は、上述のように、5μm以上50μm以下の長さに設定されている。
第4の突出部260の高さH1を1μm未満とすると、第4の突出部260においてを光が透可能な部分、すなわち第23の面部262及び第24の面部264の面積が小さくなり、それゆえ十分に光が透過できず、観察者による透過観察が困難になる。さらに、第4の突出部260の高さH1を50μmより大きくすると、光透過層40の厚みを厚くする必要がある。光透過層40の厚みが厚くなることにより、表示体30Fの厚みが厚くなる。表示体30Fの厚みが厚くなることにより、表示体30Fの表面と紙幣本体20の表面との間の段差が大きくなる。段差が大きくなると、表示体30Fが引っかかることが多くなり、または、見栄えが悪くなる。この為、第4の突出部260の高さH1は、1μm以上50μm以下の長さに設定されている。
本実施形態では、第4の突出部260は、さらに、アスペクト比が1.5以下の範囲に形成されている。本実施形態では、一例として、第4の突出部260は、第1の実施形態の変形例として図25で説明された第1の突出部200と同様に、アスペクト比が0.5以上1.5以下の範囲となるように形成されている。
なお、ここで言うアスペクト比は、第24の面部264の縁から第23の面部262の縁までの長さX3に対する第4の突出部260の高さH1の割合であり、D1/X3で表される。第4の突出部260のアスペクト比を0.5以上とすることにより、第1の溝部50を透過する光を十分なものとすることができる。ここで言う、十分なものとは、観察者が観察するに十分であるということである。さらに、アスペクト比を1.5以下とすることにより、第4の突出部260の形成のしやすさを確保できる。
第15の領域R15に形成された第4の突出部260では、第22の面部261及び第3の平面部263に、反射することを目的とした反射層80が積層されている。第22の面部261及び第3の平面部263に積層された反射層80の厚みは、例えば、10パーセント以下の光のみ透過可能な、すなわち透過率が10パーセント以下となる厚みを有している。第23の面部262には、透過観察可能な反射層80が積層されている。第23の面部262に積層された反射層80は、20パーセント以上の光を透過可能な、すなわち透過率が20パーセント以上となる厚みを有している。第23の面部262に積層された反射層80の厚みは、第22の面部261に積層された反射層80の厚みよりも薄い。
第23の面部262を透過した光、または、第24の面部264を透過した光により、第13の図柄G13が表示される。
第16の領域R16に形成された複数の第3の突出部220は、全て同じ形状である。図51では説明の為、2つの第3の突出部220が、誇張して大きく描かれている。しかしながら、第3の突出部220は、実際には小さいものであり、かつ、2つ以上の多数が形成されている。第3の突出部220は、その外面の全域に、反射を目的とした反射層80が積層されている。第3の領域R3に形成された第3の溝部70に積層された反射層80で反射した光により、第14の図柄G14が表示される。第3の溝部70は、第1の方向V1に平行に延びている。また、第3の溝部70の長手方向両端は、第16の領域R16の外郭線まで延びている。
第3の突出部220の第14の面部221は、第17の領域R17の平面の延長面との間の角度が鈍角となる平面である。第16の領域R16に形成された第3の突出部220は、その全面に、照射された光の10%以下のみ透過する反射層80が積層されている。第16の領域R16に形成された複数の第3の突出部220は、その幅方向に複数隣接して配置されている。隣接する第3の突出部220は、互いに連続して形成されている。または、隣接する第3の突出部220は、離れて配置されてもよい。
このように構成された表示体30Fは、第14の領域R14の第1の突出部200の面部となる第11の面部202の比表面積、第15の領域R15の第4の突出部260の面部となる第23の面部262の比表面積、及び、第16の領域R16の第3の突出部220の面部となる第15の面部222の比表面積は、異なることにより、条件1を満たしている。さらに、第23の面部262に積層された反射層80の厚みが、第15の面部222に積層された反射層80の厚みとことなることにより、条件2を満たしている。この為、表示体30Fでは、第14の領域R14に形成された第1の突出部200は、光に対して、第1の実施形態で説明された第1の領域R1に形成された第1の溝部50と同様に作用する。第15の領域R15に形成された複数の第4の突出部260は、光に対して、第3の実施形態で説明された第16の領域R16に形成された第6の溝部240と同様に作用する。第16の領域R16に形成された複数の第3の突出部220は、光に対して、第1の実施形態で説明された第3の領域R3に形成された第3の溝部70と同様に作用する。
また、第3の実施形態及び第4の実施形態では、界面42,42Aは、少なくとも1つの領域に第1の形状を有する溝出部が形成され、残りの少なくとも1つの領域に第2の形状を有する突出部が形成され、残りの少なくとも1つの領域に、第1の形状または第2の形状を有する突出部と溝部とが形成されてもよい。図52は、その一例である、表示体30Bの変形例となる表示体30Gを示している。表示体30Gでは、第14の領域R14に、表示体30と同様に第1の溝部50が複数形成されている。この第1の溝部50には、第1の実施形態と同様に、第1の面部51に、反射光により図柄を表示可能であり、反射観察により当該図柄を観察者が観察可能となる反射層80が積層されている。第2の面部52には、透過観察により図柄を表示可能な厚みを有する反射層80が積層されている。
第15の領域R15には、表示体30Fと同様に、第4の突出部260が複数形成されている。この第4の突出部260には、表示体30Fと同様に、第22の面部261に、反射光により図柄を表示可能であり、反射観察により当該図柄を観察者が観察可能となる反射層80が積層されている。第23の面部262には、透過観察により図柄を表示可能となる厚みの反射層80が積層されている。表示体30Fでは、第15の領域R15に形成された第4の突出部260の第23の面部262の比表面積は、第14の領域R14に形成された第1の溝部50の第2の面部52の比表面積より小さい。第23の面部262に積層された反射層80の厚みは、第2の面部52に積層された反射層80の厚みよりも薄い。
第16の領域R16には、表示体30Dと同様の第5の溝部230、及び、表示体30Fと同様の第4の突出部260が形成されている。なお、表示体10Gの第16の領域R16に形成された第4の突出部260では、第23の面部262には、反射層80は積層されていない。第5の溝部230は、複数形成されている。第4の突出部260は、複数形成されている。第5の溝部230及び第4の突出部260は、第5の方向V5に交互に並んで配置されている。これら複数の第5の溝部230の第16の面部231、及び、これら複数の第4の突出部260の第22の面部261には、反射光により図柄を表示可能であり、反射観察により当該図柄を観察者が観察可能となる反射層80が積層されている。第17の面部232、第18の面部234、第23の面部262、及び、第24の面部264には、反射層80は積層されていない。
このように構成された表示体30Gは、透過観察した場合、及び、反射観察した場合に、表示体30Fと同様の図柄を表示する。
なお、第2の形状を有する突出部が形成される例として、表示体30Dの変形例となる表示体30F、30Gを用いて説明した。他の例として、第4の実施形態で説明された表示体30Eにおいても、表示体30F,30Gと同様に、第2の形状を有する突出部が形成されてもよい。
具体的には、領域R5、R6、R7では、第2の溝部60に代えて、第4の突出部260が複数形成されてもよい。なお、第4の突出部260とは異なる形状であり、第2の形状を有する突出部が形成されてもよい。または、領域R5,R6,R7では、表示体30Gの第16の領域R16のように、複数の第5の溝部230及び複数の第4の突出部260が形成されてもよい。なお、第4の突出部260とは異なる形状であり、第2の形状を有する突出部が形成されてもよい。
領域R8,R9,R10では、第1の溝部50に代えて、第4の突出部260が形成されてもよい。なお、第4の突出部260とは異なる形状であり、第2の形状を有する突出部が形成されてもよい。または、表示体30Gの第16の領域R16のように、領域R8,R9,R10では、複数の第5の溝部230、及び、複数の第4の突出部260が形成されてもよい。なお、第4の突出部260とは異なる形状であり、第2の形状を有する突出部が形成されてもよい。
第11の領域R11では、第1の溝部50に代えて、第4の突出部260が複数形成されてもよい。なお、第4の突出部260とは異なる形状であり、第2の形状を有する突出部が形成されてもよい。または、第11の領域R11では、表示体30Gの第16の領域R16のように、複数の第1の溝部50、及び、複数の第1の突出部200が形成されてもよい。なお、第4の突出部260とは異なる形状であり、第2の形状を有する突出部が形成されてもよい。
第12の領域R12では、第4の溝部120に代えて、第4の突出部260と相似または略相似の形状であり、かつ、その高さが第4の突出部260の高さよりも高い突出部が形成されてもよい。この突出部は、光に対して、第4の突出部260と同様の作用を有する。なお、第4の突出部260とは異なる形状であり、第2の形状を有する突出部が形成されてもよい。または、第12の領域R12では、複数の第4の溝部120、及び、光に対して第4の溝部120と同様の作用を有する上述の突出部が複数形成されてもよい。
なお、第3の実施形態、及び、第4の実施形態では、第1の溝部50の第2の面部52、及び、第5の溝部230の第17の面部232は、反射層80が積層されていないがこれに限定されない。他の例としては、薄膜の反射層80が積層されてもよい。ここで言う薄膜とは、光を十分反射可能な厚みであり、第1の面部51に積層された反射層80や第3の面部61に積層された反射層80のように、光を反射することを主目的とする反射層80の厚みよりも薄いものを言う。光を反射することを主目的とする反射層80の光透過率が10%以下であることに対して、光を透過することを目的とする面部に積層される反射層80は、入射した光の20%以上の光を透過可能な厚みを有することが好ましい。
なお、第3の実施形態、及び、第4の実施形態では、第5の溝部230の第17の面部232及び第18の面部234の比表面積を、第16の面部231の比表面積の1.5倍以上としている。これは、比表面積を1.5倍以上とすることにより、真空蒸着方法により第16の面部231に十分な厚みの反射層80を積層させ、かつ、第17の面部232及び第18の面部234に十分な厚みの反射層80を積層させると、第17の面部232及び第18の面部234には第16の面部231に積層された反射層80の0.67倍以下の厚みの反射層80が積層されることとなる為である。この厚みの反射層80は、光の透過率が20%以下となる。
つまり、真空蒸着方法により第17の面部232及び第18の面部234に反射層80が積層されても、この反射層80の厚みを、使用に不具合の生じない厚みに抑えることができるので、第17の面部232、及び、第18の面部234から反射層80を除去する作業をしなくてもよい。
なお、第3の実施形態、及び、第4の実施形態では、一例として、第17の面部232及び第18の面部234に積層された反射層80を除去しているが、これに限定されない。例えば、透過光により図柄を表示可能とし、透過観察により観察者に図柄を認識可能とする厚みを有する反射層80が積層されてもよい。
または、第3の実施形態、及び、第4の実施形態では、第5の溝部230の第17の面部232及び第18の面部234には、透過観察において画像の濃さ(光の強度)を調整する為に、観察者により画像を認識できる光を透過可能な反射層80が形成されてもよい。このように、第17の面部232及び第18の面部234に反射層80が積層されることにより、透過観察により観察される画像は、輝度が低下する為、反射観察により観察される画像よりも薄くなる。
または、2つ以上の領域に、第2の形状を有する溝部または突出部が形成される場合では、第2の形状を有する溝部または突出部が形成された領域ごとに、第2の傾斜部及び側面部に反射層を積層するとともに反射層の厚みを変えることにより、第2の実施形態で説明されたように、透過観察において所望の濃淡を表現してもよい。
また、第4の実施形態では、第5の領域R5乃至第12の領域R12に形成された溝部のうち、第12の領域R12に形成された溝部である第5の溝部230のみ、その深さが他の領域に形成された溝部の深さとは異なる。例えば、界面42Aに形成された複数の領域の少なくとも1つに第2の形状を有する溝部が形成され、残りの領域の少なくとも1つに第1の形状を有する溝部が形成され、さらに、各領域に形成された溝部の深さが異なっていてもよい。このように各領域に形成された溝部の深さが異なることにより、領域毎に溝部の光透過量が異なることとなる。このように、領域毎に光透過量が異なることにより、透過観察により認識される図柄の濃淡も異なるものとなる。さらに、各領域に形成される溝部の深さは、領域毎に異なる深さとしつつ、かつ、透過観察により認識される図柄を所望の明るさとなるように、設定されてもよい。
図53は、複数の領域の少なくとも1つに第2の形状を有する溝部が形成され、残りの領域の少なくとも1つに第1の形状を有する溝部が形成され、さらに、各領域に形成された溝部の深さが異なっていてもよい。ことの一例を示している。図53は、第3の実施形態で説明された表示体30Dの変形例である表示体30Hを示している。図53に示すように、第15の領域R15に形成された第5の溝部230の深さは、第14の領域R14に形成された第1の溝部50の深さよりも深い。さらに、第16の領域R16には、複数の第5の溝部230が形成されており、これら第5の溝部230の深さは、第15の領域R15に形成された第5の溝部230の深さよりも深い。
または、各領域に溝部のみ形成される場合では、第2の実施形態のように、複数の領域に少なくとも1つに形成された溝部の深さを、他の領域に形成された溝部の深さと異なる深さとしてもよい。
同様に、複数の領域の少なくとも1つに第2の形状を有する突出部が形成され、残りの少なくとも1つに第1の形状を有する突出部が形成され、さらに、各領域の突出部の高さが異なっていてもよい。各領域に突出部が形成される場合では、突出部の高さは、領域毎に異なっていてもよい。さらに、各領域に形成される突出部の高さは、領域毎に異なることなる高さとしつつ、かつ、透過観察により認識される図柄を所望の明るさとなるように、設定されてもよい。
図54は、複数の領域の少なくとも1つに第2の形状を有する突出部が形成され、残りの少なくとも1つに第1の形状を有する突出部が形成され、さらに、各領域の突出部の高さが異なることの一例を示している。図54は、表示体30Dの変形例である表示体30Iを示している。図54に示すように、第14の領域R14には、複数の第1の突出部200が形成されている。第15の領域R15には、複数の第4の突出部260が形成されている。第15の領域R15に形成された複数の第4の突出部260の高さは、第14の領域R14に形成された第1の突出部200の高さよりも高い。第16の領域R16には、複数の第4の突出部260が形成されている。第16の領域R16に形成された第4の突出部260の高さは、第15の領域R15に形成された第4の突出部260よりも高い。
または、各領域に突出部のみ形成される場合では、複数の領域の少なくとも1つに形成された突出部の高さを、他の領域に形成された突出部の高さと異なる高さとしてもよい。
複数の領域のうち、少なくとも1つの領域に第1の形状を有する溝部または突出部が形成され、残りの領域の少なくとも1つに第2の形状を有する溝部または突出部が形成され、残りの領域のいずれか1つに第1の形状または第2の形状を有する突出部及び溝部が形成され、各領域の溝部の光透過層40の厚み方向に沿う長さ(すなわち深さ)と、各領域の突出部の厚み方向Dに沿う長さ(すなわち高さ)とが異なっていてもよい図55は、上述の変形例の一例を示している。図55は、表示体30Dの変形例である表示体30Jを示している。図55に示すように、表示体30Jは、第14の領域R14には、複数の第1の溝部50が形成されている。第15の領域R15には、複数の第4の突出部260が形成されている。第15の領域R15に形成された第4の突出部260の高さ2は、第1の領域R1に形成された第1の溝部50の深さS1よりも長い。第16の領域R16には、複数の第5の溝部230及び複数の第4の突出部260が形成されている。第16の領域R16に形成された第5の溝部230の深さS3、及び第16の領域R16に形成された第4の突出部260の高さS3は、互いに同じであり、かつ、深さS3及び高さS3は、第15の領域R15に形成された第4の突出部260の高さS2よりも長い。
または、溝部が形成される領域、及び突出部が形成される領域を有する場合では、複数の領域の少なくとも1つに形成された溝部または突出部の深さまたは高さが、他の領域に形成された溝部または突出部の深さまたは高さと異なるものとしてもよい。
または、複数の領域の全てに、第2の形状を有する溝部が形成されてもよい。この場合、溝部の深さは、全ての領域で同じでもよいし、少なくとも1つの異なっていてもよいし、全て異なっていてもよい。または、複数の領域のすべてに、第2の形状を有する突出部が形成されてもよい。この場合、突出部の高さは、全ての領域で同じでもよいし、少なくとも1つの領域のみ異なっていてもよし、全て異なっていてもよい。
また、第1の実施形態乃至第4の実施形態では、本体部23及び光透過部24には、印刷層が形成されてもよい。この印刷層に表示体が積層されてもよい。また、第1の実施形態乃至第4の実施形態では、表示体は、矩形状に形成されたがこれに限定されない。表示体は、平面視で、例えば、円形または楕円形に形成されてもよい。また、表示体は、紙幣本体20の長手方向一端から他端まで延びる帯状、または、紙幣本体20の短手方向一端から他端まで延びる帯状に形成されてもよい。
なお、図1乃至図29を用いて説明した第1の実施形態、第2の実施形態、及び各種変形例でしめされた溝部または突出部は、本発明で言う第1の形状を有する溝部または突出部の一例である。
また、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、及び、各種変形例では、複数の領域の全てに形成された溝部または突出部の傾斜面部の、光透過層の厚み方向に対する傾斜角度は、同じであってもよい。
また、第1の実施形態、第2の実施形態、第4の実施形態、及び、各種の変形例で示した溝部または突出部は、第3の実施形態の図37及び図38で説明したように、2つの互いに直交する2方向に沿って、マトリクス状に配置されてもよい。
また、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、第4の実施形態、及び、各種変形例では、光透過層40または光透過層40Aは、表面強度、溝部または突出部の形成しやすさなどを考慮して、2層以上有していてもよい。また、金属材料により光透過層を形成した場合では、金属材料に特有の金属光沢色を他の色に変える為に、この金属材料に染料や顔料等の色を形成する材料を混ぜ、この色の材料により、特定の光を吸収させてもよい。
また、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、第4の実施形態、及び、各種変形例では、反射層80は、単層であったが、これに限定されない。他の例では、反射層は、2層以上の多層に形成されてもよい。
また、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、第4の実施形態、及び、各種変形例では、表示体30乃至30Jを紙幣本体20に固定する接着層90は、光透過層40,40Aの、溝部または突出部が形成される主面側に設けられた。しかしながら、これに限定されない。他の例では、表示体を紙幣本体等の被固定部材に固定する接着層は、光透過層において溝部または突出部が形成される主面に対して反対側の主面に設けられてもよい。
また、第1の実施形態、第2の実施形態、第3の実施形態、第4の実施形態、及び、各種変形例では、第1の溝部50及び第5の溝部230では、面部となる第2の面部52及び第17の面部232、並びに、第5の溝部230の第18の面部234を、厚み方向D及び第1の方向V1に平行な平面に沿う面部に形成している。
そして、図9乃至図11、並びに、図39及び図40を用いて説明した反射層80の製造方法では、蒸着材料101が気化または昇華したものの直進性により、第2の面部52、第17の面部232、及び、第18の面部234に気化または昇華した蒸着材料が付着しにくいとした。しかしながら、この効果は、本発明の面部となる面部及び側面が厚み方向Dに沿う面に形成されることのみ限定されない。例えば、面部または側面部の、厚み方向Dに対する傾斜角度が、0度以上20度以下の範囲であれば、気化または昇華した蒸着材料は、面部には付着しにくい。これは、溝部だけではなく、突出部であっても同様である。
第2の面部52、第17の面部232、及び、第18の面部234の、厚み方向Dに対する傾斜角度が0度以上20度以下の範囲であれば、これら面部52,232,234に反射層80が積層されても、表示体の表面に垂直に入射した光による反射観察の際に、面部52,232,234に積層された反射層80による反射光を観察することは難しい。
また、第3の実施形態及び第4の実施形態においても、第5の溝部230の第17の面部232及び第18の面部234に積層された反射層80の厚みを調整することにより、第2の実施形態の図23乃至図24を用いて説明したように、第17の面部232及び第18の面部234を透過する光の強度を調整できる。一例としては、第17の面部232及び第18の面部234に形成された凹部235及び凸部236の形状を調整することにより、すなわち、比表面積を調整することにより、反射層80の厚みを調整できる。
そして、濃淡を255階調のグレースケールで表現し、この255階調のグレースケールを、比表面積に対応させる。具体的には、比表面積の最大値を、階調数255に対応させる。比表面積の最大値は、面部の製造方法などにより得ることが可能である。
例えば、第17の面部232及び第18の面部234の比表面積を1以上10以下にできる場合、最大値が10となる。この為、階調数255を比表面積10に対応させる。そして、階調数0を比表面積1に対応される。そして、比表面積の1より大きく10より小さい範囲を会長数0より大きく255より小さい範囲に対応させる。
このように、第17の面部232及び第18の面部234の比表面積を、透過観察により視認される画像の所望の濃淡に応じて設定することにより、透過観察により視認される画像に所望の濃淡を付すことができる。
なお、第1実施形態乃至第4の実施形態、並びに、各変形例では、表示体30乃至表示体30Jは、紙幣本体20に設けられている。すなわち、表示体は、紙を基材としている。しかしながら、表示体が固定される基材は、紙に限定されない。他の例では、基材は、プラスチック板やプラスチックフィルムから形成されたシートであってもよい。
また、第1の実施形態乃至第4の実施形態、並びに、各変形例では、物品10乃至10Bは、一例として、紙幣が用いられた。紙幣は、情報印刷物の一例である。しかしながら、これに限定されない。表示体が設けられる物品の他の例では、紙幣以外の情報印刷物であってもよい。この例としては、プラスチック板を基材とするクレジットカードやIDカードがある。これらのように、プラスチック板を基材とする情報印刷物の場合、基材の反り返りを防止する反り返り防止層や、印刷のインクの密着性を高めるインク密着層が設けられてもよい。さらに、基材に磁気フィルム層が設けられてもよい。または、第1実施形態乃至第4の実施形態、並びに、各変形例のように、基材が紙である場合は、必要に応じて、様々な機能を有する層が形成されてもよい。
また、第1の実施形態乃至第3の実施形態では、溝部または突出部の延びる方向が異なることにより、条件4が満たされた。第4の実施形態では、溝部または突出部の傾斜面部の透過層40の厚み方向Dに対する傾斜角度が異なることにより、条件4が満たされた。このように、条件4は、一例として、傾斜面部の、透過層40の厚み方向に対する傾斜角度が同じであっても、溝部または突出部の延びる方向が異なることにより達成される。他の例では、条件4は、溝部または突出部の延びる方向が同じであっても、傾斜面部の透過層40の厚み方向Dに対する傾斜角度が異なることにより、達成される。
この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。