本発明の態様に係るパターン形成方法、パターン形成装置、及び搬送装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態のパターン形成装置は、基板を搬送しつつ、基板上に電子デバイス用のパターンを形成するものであり、パターン形成装置は、基板に各種処理を施して電子デバイスを製造するデバイス製造システムに組み込まれている。まず、デバイス製造システムについて説明する。
図1および図2は、第1の実施の形態のデバイス製造システム10の構成を示す図である。図1および図2に示すデバイス製造システム10は、例えば、電子デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレイを製造するライン(フレキシブル・ディスプレイ製造ライン)である。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等がある。このデバイス製造システム10は、可撓性のシート基板(以下、基板)Pをロール状に巻回した供給用ロールFR1から、該基板Pが送り出され、送り出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、処理後の基板Pを回収用ロールFR2で巻き取る、いわゆるロール・ツー・ロール(Roll to Roll)方式となっている。この基板Pは、基板Pの移動方向(搬送方向)が長尺となり、幅方向が短尺となる帯状の形状を有する。第1の実施の形態のデバイス製造システム10では、フィルム状のシートである基板Pが供給用ロールFR1から送り出され、供給用ロールFR1から送り出された基板Pが、処理装置PR1、PR2、PR3、PR4、PR5を経て、回収用ロールFR2に巻き取られるまでの例を示している。まず、デバイス製造システム10の処理対象となる基板Pについて説明する。
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂のうち1または2以上を含んだものを用いてもよい。また、基板Pの厚みや剛性(ヤング率)は、搬送される際に、基板Pに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。電子デバイスとして、フレキシブルなディスプレイパネル、タッチパネル、カラーフィルタ、電磁波防止フィルタ等を作る場合、厚みが25μm〜200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等の樹脂シートが使われる。
基板Pは、例えば、基板Pに施される各種処理において受ける熱による変形量が実質的に無視できるように、熱膨張係数が顕著に大きくないものを選定することが望ましい。また、ベースとなる樹脂フィルムに、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ケイ素等の無機フィラーを混合すると、熱膨張係数を小さくすることもできる。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、または、アルミや銅等の金属層(箔)等を貼り合わせた積層体であってもよい。
ところで、基板Pの可撓性とは、基板Pに自重程度の力を加えてもせん断したり破断したりすることはなく、その基板Pを撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、基板Pの材質、大きさ、厚さ、基板P上に成膜される層構造、温度、湿度等の環境等に応じて、可撓性の程度は変わる。いずれにしろ、本実施の形態によるデバイス製造システム10内の搬送路に設けられる各種の搬送用ローラ、回転ドラム等の搬送方向転換用の部材に基板Pを正しく巻き付けた場合に、座屈して折り目がついたり、破損(破れや割れが発生)したりせずに、基板Pを滑らかに搬送できれば、可撓性の範囲といえる。
このように構成された基板Pは、ロール状に巻回されることで供給用ロールFR1となり、この供給用ロールFR1が、デバイス製造システム10に装着される。供給用ロールFR1が装着されたデバイス製造システム10は、電子デバイスを製造するための各種の処理を、供給用ロールFR1から送り出される基板Pに対して繰り返し実行する。このため、処理後の基板Pは、複数の電子デバイスが連なった状態となる。つまり、供給用ロールFR1から送り出される基板Pは、多面取り用の基板となっている。なお、基板Pは、予め所定の前処理によって、その表面を改質して活性化したもの、或いは、表面に精密パターニングのための微細な隔壁構造(凹凸構造)を形成したものでもよい。
電子デバイスは、複数のパターン層(パターンが形成された層)が重ね合わされることで構成されており、デバイス製造システム10の各処理装置PR1〜PR5を経て、1つのパターン層が生成されるので、電子デバイスを生成するために、図1および図2に示すようなデバイス製造システム10の各処理装置PR1〜PR5の処理を少なくとも2回は経なければならない。
処理後の基板Pは、ロール状に巻回されることで回収用ロールFR2として回収される。回収用ロールFR2は、図示しないダイシング装置に装着されてもよい。回収用ロールFR2が装着されたダイシング装置は、処理後の基板Pを、電子デバイスごとに分割(ダイシング)することで、複数個の電子デバイスにする。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm〜2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法が10m以上である。なお、基板Pの寸法は、上記した寸法に限定されない。
図1および図2を参照し、引き続きデバイス製造システム10について説明する。図1および図2では、X方向、Y方向およびZ方向が直交する直交座標系となっている。X方向は、水平面内において、基板Pの搬送方向であり、供給用ロールFR1および回収用ロールFR2を結ぶ方向である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板Pの幅方向である。Y方向は、供給用ロールFR1および回収用ロールFR2の軸方向となっている。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(鉛直方向)である。
デバイス製造システム10は、基板Pを供給する基板供給装置12と、基板供給装置12によって供給された基板Pに対して各種処理を施す処理装置PR1〜PR5と、処理装置PR1〜PR5によって処理が施された基板Pを回収する基板回収装置14と、デバイス製造システム10の各装置を制御する上位制御装置16とを備える。この上位制御装置16は、コンピュータと、プログラムが記憶された記憶媒体とを含み、該コンピュータが記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することで、本第1の実施の形態の上位制御装置16として機能する。
基板供給装置12には、供給用ロールFR1が回転可能に装着される。基板供給装置12は、装着された供給用ロールFR1から基板Pを送り出す駆動ローラR1と、基板Pの幅方向(Y方向)における位置を調整するエッジポジションコントローラEPC1とを有する。駆動ローラR1は、基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを供給用ロールFR1から回収用ロールFR2へ向かう搬送方向(+X方向)に送り出すことで、基板Pを処理装置PR1〜PR5に供給する。このとき、エッジポジションコントローラEPC1は、基板Pの幅方向の端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲(許容範囲)に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を修正する。
基板回収装置14には、回収用ロールFR2が回転可能に装着される。基板回収装置14は、処理後の基板Pを回収用ロールFR2側に引き寄せる駆動ローラR2と、基板Pの幅方向(Y方向)における位置を調整するエッジポジションコントローラEPC2とを有する。基板回収装置14は、駆動ローラR2により基板Pの表裏両面を挟持しながら回転させることで基板Pを引き寄せるとともに、回収用ロールFR2を回転させることで基板Pを巻き上げる。このとき、エッジポジションコントローラEPC2は、エッジポジションコントローラEPC1と同様に構成され、基板Pの幅方向の端部(エッジ)が幅方向においてばらつかないように、基板Pの幅方向における位置を修正する。供給用ロールFR1、回収用ロールFR2、および、駆動ローラR1、R2は、図示しない回転駆動源からの回転トルクが与えられることで回転する。
処理装置PR1は、基板供給装置12から供給された基板Pの表面に感光性機能液を塗布する塗布装置である。感光性機能液としては、例えば、フォトレジスト、感光性シランカップリング剤、UV硬化樹脂液、感光性メッキ還元溶液等が用いられる。処理装置PR1は、基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)から順に、塗布機構Gp1と乾燥機構Gp2とが設けられている。塗布機構Gp1は、基板Pが巻き付けられる圧胴ローラDR1と、圧胴ローラDR1に対向する塗布ローラDR2とを有する。塗布機構Gp1は、供給された基板Pを圧胴ローラDR1に巻き付けた状態で、圧胴ローラDR1および塗布ローラDR2により基板Pを挟持する。そして、塗布機構Gp1は、圧胴ローラDR1および塗布ローラDR2を回転させることで、基板Pを搬送方向(+X方向)に移動させながら、塗布ローラDR2により感光性機能液を塗布する。乾燥機構Gp2は、熱風またはドライエアー等の乾燥用エアーを吹き付け、感光性機能液に含まれる溶質(溶剤または水)を除去し、感光性機能液が塗布された基板Pを乾燥させることで、基板P上に感光性機能層を形成する。圧胴ローラDR1および塗布ローラDR2は、図示しない回転駆動源からの回転トルクが与えられることで回転する。
処理装置(第1処理装置)PR2は、基板Pの表面に形成された感光性機能層を安定にすべく、処理装置PR1から搬送された基板Pを所定温度(例えば、数10℃〜120℃程度)まで加熱する加熱装置である。処理装置PR2は、基板Pの搬送方向の上流側から順に、加熱チャンバHA1と冷却チャンバHA2とが設けられている。加熱チャンバHA1は、その内部に複数のローラおよび複数のエア・ターンバーが設けられており、複数のローラおよび複数のエア・ターンバーは、基板Pの搬送経路を構成している。複数のローラは、基板Pの裏面に転接して設けられ、複数のエア・ターンバーは、基板Pの表面側に非接触状態で設けられる。複数のローラおよび複数のエア・ターンバーは、基板Pの搬送経路を長くすべく、蛇行状の搬送経路となる配置になっている。加熱チャンバHA1内を通る基板Pは、蛇行状の搬送経路に沿って搬送されながら所定温度まで加熱される。冷却チャンバHA2は、加熱チャンバHA1で加熱された基板Pの温度が、後工程(処理装置PR3)の環境温度と揃うようにすべく、基板Pを環境温度まで冷却する。冷却チャンバHA2は、その内部に複数のローラが設けられ、複数のローラは、加熱チャンバHA1と同様に、基板Pの搬送経路を長くすべく、蛇行状の搬送経路となる配置になっている。冷却チャンバHA2内を通る基板Pは、蛇行状の搬送経路に沿って搬送されながら冷却される。冷却チャンバHA2の搬送方向における下流側には、駆動ローラR3が設けられ、駆動ローラR3は、冷却チャンバHA2を通過した基板Pを挟持しながら回転することで、基板Pを処理装置PR3側へ向けて供給する。駆動ローラR3は、図示しない回転駆動源からの回転トルクが与えられることで回転する。
処理装置(第2処理装置)PR3は、第1蓄積部(第1蓄積装置)BF1を介して処理装置PR2から供給された、表面に感光性機能層が形成された基板Pを基板Pの長手方向に沿った搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板P上にディスプレイパネル用の回路または配線等のパターンを露光する露光装置である。処理装置PR3は、露光後の基板Pを、第2蓄積部(第2蓄積装置)BF2を介して処理装置PR4へ向けて搬送する。第1蓄積部BF1および第2蓄積部BF2は、基板Pにテンションを付与した状態で、基板Pを所定長の長さに亘って蓄積可能である。この処理装置PR3、第1蓄積部BF1、および、第2蓄積部BF2は、パターン形成装置18を構成し、このパターン形成装置18については、後で説明する。
処理装置(第3処理装置)PR4は、第2蓄積部BF2を介して処理装置PR3から搬送された露光後の基板Pに対して、湿式による現像処理、無電解メッキ処理等を行う湿式処理装置である。処理装置PR4は、処理槽BTと、基板Pを搬送する複数のローラとを有する。複数のローラは、基板Pが処理槽BTの内部を通過する搬送経路となるように配置される。処理槽BTの搬送方向における下流側(+X方向側)には、駆動ローラR4が設けられ、駆動ローラR4は、処理槽BTを通過した基板Pを挟持しながら回転することで、基板Pを処理装置PR5へ向けて供給する。駆動ローラR4は、図示しない回転駆動源からの回転トルクが与えられることで回転する。
図示は省略するが、処理装置PR5は、処理装置PR4から搬送された基板Pを乾燥させる乾燥装置である。処理装置PR5は、処理装置PR4において湿式処理された基板Pに付着する水分含有量を、所定の水分含有量に調整する。処理装置PR5により乾燥された基板Pは、基板回収装置14の回収用ロールFR2に巻き上げられる。
上位制御装置16は、基板供給装置12、基板回収装置14、複数の処理装置PR1〜PR5、第1蓄積部BF1、および、第2蓄積部BF2を統括制御する。上位制御装置16は、基板Pが基板供給装置12から基板回収装置14へ向けて搬送するようにデバイス製造システム10の各装置を制御する。また、上位制御装置16は、基板Pの搬送に同期させながら、複数の処理装置PR1〜PR5を制御して、基板Pに対する各種処理を実行させる。
なお、第1の実施の形態のデバイス製造システム10では、供給用ロールFR1から送り出された基板Pが、順次、5台の処理装置PR1〜PR5を経て、回収用ロールFR2に巻き取られるまでの例を示したが、この構成に限らない。つまり、供給用ロールFR1と回収用ロールFR2との間に設けられる処理装置PRの台数は、1つでもあってもよいし、6つ以上であってもよいし、その台数は任意に変更することができる。
次に、パターン形成装置18について説明する。パターン形成装置18の第1蓄積部BF1は、駆動ローラR5、R6と複数のダンサーローラ20とを有している。駆動ローラR5は、処理装置PR2から送られてきた基板Pの表裏両面を挟持しながら回転して、基板Pを第1蓄積部BF1内に搬入する。駆動ローラR6は、基板Pの表裏両面を挟持しながら回転して、第1蓄積部BF1内の基板Pを処理装置PR3に供給する。複数のダンサーローラ20は、駆動ローラR5と駆動ローラR6との間に設けられ、基板Pに対して所定のテンションを付与するものである。複数のダンサーローラ20は、Z方向に移動可能であり、上側のダンサーローラ20(20a)は、+Z方向に付勢され、下側のダンサーローラ20(20b)は、−Z方向に付勢されている。このダンサーローラ20aとダンサーローラ20bとはX方向に関して交互に配置されている。第1蓄積部BF1に搬入する基板Pの搬送速度が、第1蓄積部BF1から搬出する基板Pの搬送速度に対して相対的に速くなると、第1蓄積部BF1に蓄積される基板Pの長さは増加する。この第1蓄積部BF1に蓄積されている基板Pの長さが長くなると、付勢力によってダンサーローラ20aが+Z方向に、ダンサーローラ20bが−Z方向に移動する。これにより、第1蓄積部BF1は、基板Pに所定のテンションを付与した状態で、基板Pを蓄積することができる。逆に、第1蓄積部BF1に蓄積されている基板Pの長さが短くなると、付勢力に反してダンサーローラ20aが−Z方向に、ダンサーローラ20bが+Z方向に移動する。いずれにせよ、第1蓄積部BF1は、基板Pに所定のテンションを付与した状態で、基板Pを蓄積することができる。なお、駆動ローラR5、R6は、図示しない回転駆動源からの回転トルクが与えられることで回転する。
また、パターン形成装置18の第2蓄積部BF2は、駆動ローラR7、R8と複数のダンサーローラ22とを有している。駆動ローラR7は、処理装置PR3から送られてきた基板Pの表裏両面を挟持しながら回転して、基板Pを第2蓄積部BF2内に搬入する。駆動ローラR8は、基板Pの表裏両面を挟持しながら回転して、第2蓄積部BF2内の基板Pを処理装置PR4に供給する。複数のダンサーローラ22は、駆動ローラR7と駆動ローラR8との間に設けられ、基板Pに対して所定のテンションを付与するものである。複数のダンサーローラ22は、Z方向に移動可能であり、上側のダンサーローラ22(22a)は、+Z方向に付勢されており、下側のダンサーローラ22(22b)は、−Z方向に付勢されている。このダンサーローラ22aとダンサーローラ22bとはX方向に関して交互に配置されている。このような構成を有することにより、第2蓄積部BF2は、第1蓄積部BF1と同様に、基板Pに所定のテンションを付与した状態で、基板Pを蓄積することができる。なお、駆動ローラR7、R8は、図示しない回転駆動源からの回転トルクが与えられることで回転する。第1蓄積部BF1と第2蓄積部BF2の構成は同一とする。
通常時においては、第1蓄積部BF1は、新たに蓄積可能な基板Pの長さが所定の余裕長以上となるように基板Pを蓄積している。つまり、第1蓄積部BF1は、所定の余裕長以上の長さの基板Pを新たに蓄積できるように、蓄積している基板Pの長さを短くしている。例えば、第1蓄積部BF1が、基板Pに所定のテンションを付与した状態で蓄積可能な基板Pの長さを5mとし、所定の余裕長を4mとした場合は、通常時に第1蓄積部BF1が蓄積している基板Pの長さは1m未満となる。また、通常時においては、第2蓄積部BF2は、蓄積済みの基板Pの長さが所定の蓄積長以上となるように基板Pを蓄積している。例えば、第2蓄積部BF2が、基板Pに所定のテンションを付与した状態で蓄積可能な基板Pの長さを5mとし、所定の蓄積長を4mとした場合は、第2蓄積部BF2が蓄積している基板Pの長さは4m以上となる。
パターン形成装置18の処理装置PR3は、マスクを用いない直描方式の露光装置、いわゆるラスタースキャン方式の露光装置であり、第1蓄積部BF1を介して処理装置PR2から供給された基板Pに対して、ディスプレイ用の回路や配線等のパターンを露光することで、パターンを形成する。このディスプレイ用の回路や配線等のパターンとしては、ディスプレイを構成するTFT(薄膜トランジスタ)のゲート電極とそれに付随する配線等のパターンまたはTFTのソース電極およびドレイン電極とそれに付随する配線等のパターン等が挙げられる。処理装置PR3は、基板PをX方向に搬送しながら、露光用のレーザ光LBのスポット光SPを基板P上で所定の走査方向(Y方向)に1次元走査しつつ、スポット光SPの強度をパターンデータ(描画データ)に応じて高速に変調(オン/オフ)することによって、基板Pの表面(感光面)にパターンを描画露光する。つまり、基板Pの+X方向への搬送(副走査)と、スポット光SPの主走査方向への走査とで、スポット光SPが基板P上で相対的に2次元走査されて、基板Pに所定のパターンが描画露光される。このパターンデータは、上位制御装置16の記録媒体に記録されていてもよいし、処理装置PR3内の記録媒体に記録されていてもよい。
処理装置PR3は、搬送部30、光源装置32、および、露光ヘッド(パターン形成部)34を備えている。処理装置PR3は、温調チャンバECV内に格納されている。この温調チャンバECVは、内部の温度を所定の温度に保つことで、内部において搬送される基板Pの温度変化による形状変化を抑制する。温調チャンバECVは、パッシブまたはアクティブな防振ユニットSU1、SU2を介して製造工場の設置面Eに配置される。この設置面Eは、設置土台上の面であってもよく、床であってもよい。なお、処理装置PR3以外の他の処理装置PR1、PR2、PR4、PR5、基板供給装置12、および、基板回収装置14も設置面Eに配置されている。
搬送部30は、第1蓄積部BF1を介して処理装置PR2から搬送される基板Pを、処理装置PR4側へ搬送する。搬送部30は、基板Pの搬送方向に沿って上流側(−X方向側)から順に、エッジポジションコントローラEPC3、テンション調整ローラRT1、回転ドラム36、テンション調整ローラRT2、および、エッジポジションコントローラEPC4を有する。
エッジポジションコントローラEPC3は、エッジポジションコントローラEPC1と同様に、基板Pの幅方向の端部(エッジ)が幅方向においてばらつかないように、基板Pの幅方向における位置を修正する。例えば、エッジポジションコントローラEPC3は、回転ドラム36に搬入する基板Pの長尺方向が、回転ドラム36の回転軸AXの軸方向と直交するように、基板Pの幅方向における位置を調整する。エッジポジションコントローラEPC3は、駆動ローラR9、R10を有し、駆動ローラR9、R10は、エッジポジションコントローラEPC3内の基板Pに弛み(あそび)を与えている。駆動ローラR9、R10は、処理装置PR2側から搬送された基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを回転ドラム36側に向けて搬送する。駆動ローラR9は、駆動ローラR10に対して搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。駆動ローラR9、R10は、図示しない回転駆動源からの回転トルクが与えられることで回転する。
回転ドラム36は、基板P上でパターンが露光される部分をその円周面で支持する。回転ドラム36は、Y方向に延びる回転軸AXを中心に回転することで、基板Pを回転ドラム36の外周面(円周面)に倣って基板Pを+X方向に搬送して、エッジポジションコントローラEPC4側に送る。回転ドラム36(回転軸AX)は、図示しない回転駆動源からの回転トルクが与えられることで回転する。
エッジポジションコントローラEPC4は、エッジポジションコントローラEPC1と同様に、基板Pの幅方向の端部(エッジ)が幅方向においてばらつかないように、基板Pの幅方向における位置を修正する。エッジポジションコントローラEPC4は、駆動ローラR11、R12を有し、駆動ローラR11、R12は、エッジポジションコントローラEPC4内の基板Pに弛み(あそび)を与えている。駆動ローラR11、R12は、回転ドラム36によって搬送された基板Pの表裏両面を挟持しながら回転し、基板Pを処理装置PR4側へ向けて搬送する。駆動ローラR11は、駆動ローラR12に対して搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。駆動ローラR11、R12は、図示しない回転駆動源からの回転トルクが与えられることで回転する。テンション調整ローラRT1、RT2は、−X方向に付勢されており、回転ドラム36に巻き付けられて支持されている基板Pに、所定のテンションを与えている。
光源装置32は、レーザ光源を有し、露光に用いられる紫外線のレーザ光(照射光、露光ビーム)LBを照射するものである。このレーザ光LBは、370nm以下の波長帯域にピーク波長を有する紫外線光であってもよい。レーザ光LBは、発振周波数Fsで発光したパルス光であってもよい。光源装置32が射出したレーザ光LBは、光導入光学系38に導かれて露光ヘッド34に入射する。
露光ヘッド34は、光源装置32からのレーザ光LBがそれぞれ入射する複数の描画ユニットU(U1〜U5)を備えている。つまり、光源装置32からのレーザ光LBは、反射ミラーやビームスプリッタ等を有する光導入光学系38に導かれて複数の描画ユニットU(U1〜U5)に入射する。露光ヘッド34は、回転ドラム36の円周面で支持されている基板Pの一部分に、複数の描画ユニットU(U1〜U5)によって、パターンを描画露光する。露光ヘッド34は、構成が同一の描画ユニットU(U1〜U5)を複数有することで、いわゆるマルチビーム型の露光ヘッド34となっている。描画ユニットU1、U3、U5は、回転ドラム36の回転軸AXに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に配置され、描画ユニットU2、U4は、回転ドラム36の回転軸AXに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に配置されている。
各描画ユニットUは、入射したレーザ光LBを基板P上で収斂させてスポット光SPにし、且つ、そのスポット光SPを走査ラインLに沿って走査させる。各描画ユニットUの走査ラインLは、図3に示すように、Y方向(基板Pの幅方向)に関して互いに分離することなく、繋ぎ合わされるように設定されている。図3では、描画ユニットU1の走査ラインLをL1、描画ユニットU2の走査ラインLをL2で表している。同様に、描画ユニットU3、U4、U5の走査ラインLをL3、L4、L5で表している。このように、描画ユニットU1〜U5全部で露光領域となるデバイス形成領域Wの幅方向の全てをカバーするように、各描画ユニットUは走査領域を分担している。なお、例えば、1つの描画ユニットUによるY方向の描画幅(走査ラインLの長さ)を20〜50mm程度とすると、奇数番の描画ユニットU1、U3、U5の3個と、偶数番の描画ユニットU2、U4の2個との計5個の描画ユニットUをY方向に配置することによって、描画可能なY方向の幅を100〜250mm程度に広げている。
この描画ユニットUは、国際公開第2013/146184号パンフレット(図36参照)に開示されているように公知技術であるが、図4を用いて描画ユニットUについて簡単に説明する。なお、各描画ユニットU(U1〜U5)は、同一の構成を有することから、描画ユニットU2についてのみ説明し、他の描画ユニットUについては説明を省略する。
図4に示すように、描画ユニットU2は、例えば、集光レンズ50、描画用光学素子(光変調素子)52、吸収体54、コリメートレンズ56、反射ミラー58、シリンドリカルレンズ60、フォーカスレンズ62、反射ミラー64、ポリゴンミラー(光走査部材)66、反射ミラー68、f−θレンズ70、および、シリンドリカルレンズ72を有する。
描画ユニットU2に入射するレーザ光LBは、鉛直方向の上方から下方(−Z方向)に向けて進み、集光レンズ50を介して描画用光学素子52に入射する。集光レンズ50は、描画用光学素子52に入射するレーザ光LBを描画用光学素子52内でビームウエストとなるように集光(収斂)させる。描画用光学素子52は、レーザ光LBに対して透過性を有するものであり、例えば、音響光学素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)が用いられる。
描画用光学素子52は、上位制御装置16からの駆動信号(高周波信号)がオフの状態のときは、入射したレーザ光LBを吸収体54側に透過し、上位制御装置16からの駆動信号(高周波信号)がオンの状態のときは、入射したレーザ光LBを回折させて反射ミラー58に向かわせる。吸収体54は、レーザ光LBの外部への漏れを抑制するためにレーザ光LBを吸収する光トラップである。このように、描画用光学素子52に印加すべき描画用の駆動信号(超音波の周波数)をパターンデータ(白黒)に応じて高速にオン/オフすることによって、レーザ光LBが反射ミラー58に向かうか、吸収体54に向かうかがスイッチングされる。このことは、基板P上で見ると、感光面に達するレーザ光LB(スポット光SP)の強度が、パターンデータに応じて高レベルと低レベル(例えば、ゼロレベル)のいずれかに高速に変調されることを意味する。
コリメートレンズ56は、描画用光学素子52から反射ミラー58に向かうレーザ光LBを平行光にする。反射ミラー58は、入射したレーザ光LBを−X方向に反射させて、シリンドリカルレンズ60、フォーカスレンズ62を介して反射ミラー64に照射する。反射ミラー64は、入射したレーザ光LBをポリゴンミラー66に照射する。ポリゴンミラー(回転多面鏡)66は、回転することでレーザ光LBの反射角を連続的に変化させて、基板P上に照射されるレーザ光LBの位置を走査方向(基板Pの幅方向)に走査する。ポリゴンミラー66は、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)によって一定の速度で回転する。
反射ミラー58と反射ミラー64との間に設けられたシリンドリカルレンズ60は、フォーカスレンズ62と協働して、前記走査方向と直交する非走査方向(Z方向)に関してレーザ光LBをポリゴンミラー66の反射面上に集光(収斂)する。このシリンドリカルレンズ60によって、前記反射面がZ方向に対して傾いている場合(XY面の法線と前記反射面との平衡状態からの傾き)があっても、その影響を抑制することができ、基板P上に照射されるレーザ光LBの照射位置がX方向にずれることを抑制する。
ポリゴンミラー66で反射したレーザ光LBは、反射ミラー68によって−Z方向に反射され、Z軸と平行な光軸AXuを有するf−θレンズ70に入射する。このf−θレンズ70は、基板Pに投射されるレーザ光LBの主光線が走査中は常に基板Pの表面の法線となるようなテレセントリック系の光学系であり、それによって、レーザ光LBをY方向に正確に等速度で走査することが可能になる。f−θレンズ70から照射されたレーザ光LBは、母線がY方向と平行となっているシリンドリカルレンズ72を介して、基板P上に直径数μm程度(例えば、3μm)の略円形の微小なスポット光SPとなって照射される。スポット光(走査スポット光)SPは、ポリゴンミラー66によって、Y方向に延びる走査ラインL2に沿って一方向に1次元走査される。
また、処理装置PR3は、図2および図3に示すように、基板P上に形成された被検出体としてのアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)を検出するための3つのアライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)が設けられている。このアライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)で検出される基板P上の領域は、回転ドラム36の円周面で支持されている。このアライメントマーク(マーク)Ksは、基板P上のデバイス形成領域Wに描画されるパターンと基板Pとを相対的に位置合わせする(アライメントする)ための基準マークである。つまり、アライメントマークKsを検出することで基板Pの位置を検出することができる。このアライメントマークKsは、基板Pの幅方向の両端側に、基板Pの長尺方向に沿って一定間隔で形成されているとともに、基板Pの長尺方向に沿って並んだデバイス形成領域Wとデバイス形成領域Wとの間で、且つ、基板Pの幅方向中央にも形成されている。なお、露光ヘッド34は、基板Pに対して電子デバイス用のパターン露光を繰り返し行うことから、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔Ls(図7参照)をあけてデバイス形成領域Wが複数設けられている。
検出部としてのアライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)は、露光ヘッド34から照射されるスポット光SPよりも基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)は、検出領域(検出視野)内に存在するアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)を検出する。アライメント顕微鏡AM1〜AM3は、Y方向に沿って設けられており、アライメント顕微鏡AM1は、検出領域内に存在する基板Pの+Y方向側の端部に形成されたアライメントマークKs1を検出し、アライメント顕微鏡AM2は、検出領域内に存在する基板Pの−Y方向側の端部に形成されたアライメントマークKs2を検出する。アライメント顕微鏡AM3は、検出領域内に存在する基板Pの幅方向中央に形成されたアライメントマークKs3を検出する。この検出領域の基板P上の大きさは、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の大きさやアライメント精度(位置計測精度)に応じて設定されるが、100〜500μm角程度の大きさである。アライメント顕微鏡AMは、アライメント用の照明光を基板Pに投影して、CCD、CMOS等の撮像素子でその反射光を撮像し、アライメントマークKsを検出する。検出するアライメントマークKsの位置情報は、上位制御装置16に送られる。なお、アライメント用の照明光は、基板P上の感光性機能層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば、波長500〜800nm程度の光である。
ここで、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)は、一定の周期で検出領域内の基板Pを撮像することで、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の検出を行う。つまり、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の検出は一定の周期で行われる。そのため、基板Pの搬送速度が速くなる程、アライメントマークKsは多く間引かれて検出される。つまり、基板Pの搬送速度が速くなる程、検出されるアライメントマークKsの数は少なくなり、アライメントマークKsの検出精度が低下する。したがって、アライメントマークKsの検出精度を高めるためには、基板Pを遅く搬送させる必要がある。
第1の実施の形態のデバイス製造システム10は、以上のような構成を有するが、パターン形成装置18内では、基板Pを−X方向にも搬送可能である。基板Pを−X方向に搬送する場合(戻し搬送を行う場合)は、上位制御装置16は、処理装置PR3の搬送部30の駆動ローラR9〜R12および回転ドラム36を逆方向に回転させるとともに、第1蓄積部BF1の駆動ローラR6および第2蓄積部BF2の駆動ローラR7も逆方向に回転させる。なお、基板Pが+X方向に搬送される方向を順方向とし、基板Pが順方向とは逆の方向に搬送される方向を逆方向とよぶ。
パターン形成装置18の動作を説明する前に、その前提となる基板Pの搬送状態とパターンデータの補正との関係について説明する。搬送部30のエッジポジションコントローラEPC1〜EPC4によって基板Pの幅方向における位置が修正されているが、基板Pはフィルム状のシート基板なのでその形状が変形しやすく、回転ドラム36に搬送される基板Pの幅方向の端部の位置が目標位置から許容範囲を超えてずれる場合がある。そのため、回転ドラム36に搬送される基板Pの長尺方向が回転ドラム36の回転軸AXに対して許容範囲を超えて傾いていたり、基板Pが許容範囲を超えて変形(歪み等)する場合があり、実際の基板Pの回転ドラム36への搬送状態が、理想とする基板Pの回転ドラム36への搬送状態とは異なってしまう。その結果、露光ヘッド34によるパターンの露光を適切に行うことができなくなる。
そのため、上位制御装置16は、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)が検出したアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の位置に基づいて基板Pの搬送状態(傾き、変形等)を認識し、露光ヘッド34がパターンを露光(形成)する位置、領域をその搬送状態に応じて補正することで、パターンの露光精度(形成精度)の低下を防止している。このパターンが露光(形成)される位置、領域の補正は、パターンデータ(描画データ)を補正(描画タイミングの補正も含む)することで対応することができる。つまり、各描画ユニットUのパターンデータを補正することで、各走査ラインL1〜L5の位置をY方向(走査方向)にシフトしたり、各走査ラインL1〜L5の長さ(走査長)を変えたりすることができるので、基板Pの変形等に対応させてパターンが形成される位置、領域を補正することができる。
このパターンを形成する位置、領域の補正は、例えば、基板Pの下地層(下層)に形成されたパターンと、これから形成するパターンとの重ね合わせ誤差が許容範囲内となるように行われる。また、下地層がない場合、つまり、これから下地層にパターンを形成する場合は、基板Pの予め決められたデバイス形成領域Wに許容範囲内でパターンを露光することができるように、各描画ユニットUが露光するパターンの位置、領域を、エッジポジションコントローラEPC3、EPC4のエッジ位置の検出情報に基づいて予測補正する。
なお、下地層に形成されたパターンの上に、新たなパターンを重ね合わせ露光する際は、アライメント顕微鏡AM1〜AM3の基板P上での各検出中心位置から、各描画ライン(L1〜L5)によるパターン描画位置までの相対的な位置関係、いわゆる2次元的なベースライン長(キャリブレーション時に予め精密に求められる)の情報も使われる。具体的には、下地層と同時に基板P上に形成されたアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の中心位置を各アライメント顕微鏡AM1〜AM3で検出し、そのアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の中心位置とアライメント顕微鏡AM1〜AM3の検出中心位置との2次元的なズレ量(ΔX、ΔY)と、予め求めておいた2次元的なベースライン長とに基づいて、重ね合わせ露光時に生じ得る重ね合せ誤差を正確に計算し、その誤差が許容範囲内に収まるように、基板Pの送り量の計測値(回転ドラム36の回転量を検出するエンコーダの計測値)を基準にして各描画ライン(L1〜L5)によるパターン描画のタイミングが補正される。また、下地層に形成されたパターンは、基板P上の予め決められたデバイス形成領域Wに、アライメントマークKsとともに形成されていると考えられる。そのため、基板Pに形成されている複数のアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の各位置を精密に計測することによって、基板P上のデバイス形成領域Wの位置や形状の変形、すなわち、下地層として形成されたパターンの位置や変形(回転誤差、スキュー誤差、伸縮誤差等の1次誤差成分や、弓形や樽形等の高次誤差成分を含む)を求めることができる。
次に、パターン形成装置18の動作について説明する。図5は、パターン形成装置18の動作を示すフローチャート、図6は、図5のフローチャートに示す動作によって搬送される基板Pの搬送動作を示すタイムチャート、および、第1蓄積部BF1、第2蓄積部BF2によって蓄積される基板Pの長さ(蓄積長)を示すタイムチャートである。なお、図5に示す動作においては、パターン形成装置18以外の各処理装置PR1、PR2、PR4、PR5においては、常に基板Pは基準速度Vsで順方向に搬送されているものとする。また、エッジポジションコントローラEPC1〜EPC4によって基板Pの幅方向における位置が修正されており、特に説明しない限り、アライメント顕微鏡AMの検出は一定の周期で継続的に行われているものとする。また、図6においては、順方向に進む搬送速度を基準にして正とし、順方向とは逆方向に進む搬送速度を負(−)としている。
まず、ステップS1で、搬送部30は、上位制御装置16の制御にしたがって、基板Pを順方向に基準速度Vsで搬送する。基準速度Vsは、アライメント顕微鏡AMがアライメントマークKsを間引いて検出する速度であるので、基板Pが基準速度Vsで搬送されている間は、アライメントマークKsは間引かれて検出される。なお、基板Pの搬送速度が同じ速度であっても、アライメントマークKsの基板Pの長尺方向に沿った形成位置間隔によって、アライメントマークKsが間引かれる数は異なる。例えば、アライメントマークKsの長尺方向に沿った形成位置間隔が長い場合は間引かれる数が少なくなり(ゼロも含む)、アライメントマークKsの長尺方向に沿った形成位置間隔が短い場合は間引かれる数が多くなる。したがって、この基準速度Vsは、基板Pの長尺方向に沿って形成されたアライメントマークKsの形成位置間隔に応じて決定される。
そして、ステップS2で、上位制御装置16は、間引かれて検出されているアライメントマークKsの位置に基づいて基板P上にパターンを形成する位置を認識し、パターンデータを用いて露光ヘッド34を制御して基板P上にパターンを描画露光する。これにより、露光ヘッド34の各描画ユニットU(U1〜U5)から基板P上に照射されるスポット光SPが2次元走査され、基板P上に電子デバイス用のパターンが所定の間隔Ls(図7参照)をあけて順次形成される。なお、基板Pの搬送状態に応じてパターンデータが修正されている場合は、該修正されたパターンデータを用いてパターンを描画露光する。この基板Pを基準速度Vsで順方向に搬送するとともに、基板P上に長尺方向に沿って複数形成されたアライメントマークKsを間引いて検出して、パターンを形成する動作(ステップS1〜ステップS2の動作)は、本発明の態様の第1モードに相当する。
搬送部30が基板Pを基準速度Vsで搬送している場合は、第1蓄積部BF1および第2蓄積部BF2が蓄積している基板Pの長さ(蓄積長)は、それぞれLe0、Le1のままである。つまり、第1蓄積部BF1および第2蓄積部BF2には、基準速度Vsで基板Pが搬入し、基準速度Vsで基板Pが搬出しているので、蓄積長は変動しない。なお、蓄積長Le1は、蓄積長Le0より長く、第1蓄積部BF1および第2蓄積部BF2は、少なくとも蓄積長Le1以上の長さの基板Pを蓄積することができる。したがって、基板Pが基準速度Vsで搬送されている場合は、第1蓄積部BF1は、所定の余裕長(Le1−Le0)以上の長さの基板Pを新たに蓄積することができる。
次いで、ステップS3で、上位制御装置16は、所定の条件が成立したか否かを判断する。基板Pへの露光を初めて行う場合、または、露光によって形成されるパターンの形成精度が許容範囲から外れる場合は、所定の条件が成立したと判断する。基板Pへの露光を初めて行う場合は、どのような状態で基板Pが回転ドラム36に搬送されてくるのかわからないからであり、パターンの形成精度が許容範囲から外れる可能性があるからである。パターンの形成精度が許容範囲から外れる場合としては、今まで搬送されてきた基板Pの搬送状態(変形、傾き等)の傾向が許容範囲を超えて変わる場合が挙げられる。つまり、今まで搬送されてきた基板Pの搬送状態で適正にパターンを形成できるように、パターンデータが補正されていたが、急に、基板Pの搬送状態(変形、傾き等)の傾向が許容範囲を超えて変わると、今まで使用してきたパターンデータでは適正に露光を行うことができなくなるからである。上位制御装置16は、ステップS2で検出されたアライメントマークKsの位置に基づいて、この基板Pの搬送状態の傾向が許容範囲を超えたか否かを判断する。つまり、検出したアライメントマークKsの位置が、今まで検出した位置とは許容範囲を超えて大きく変わるような傾向を示す場合は、基板Pの搬送状態の傾向が許容範囲を超えて変わったと判断する。
ステップS3で、所定の条件が成立していないと判断するとそのままステップS3に留まり、所定の条件が成立したと判断すると、ステップS4に進む。ステップS4に進むと、搬送部30は、上位制御装置16の制御にしたがって、パターンデータの形成精度を許容範囲内に戻すための補正準備動作の一部として、基板Pを基準速度Vsより遅い第1速度V1で順方向に低速搬送させる。つまり、搬送部30は、基板Pの搬送速度を基準速度Vsから第1速度V1にまで落として順方向に低速搬送させる。第1速度V1での搬送は、所定時間行われる。第1速度V1は、アライメント顕微鏡AMがアライメントマークKsを間引くことなく精密に検出することができる速度であるので、基板Pが第1速度V1以下で搬送されている間は、アライメントマークKsの検出精度が向上する。この第1速度V1は、アライメントマークKsの長尺方向に沿った形成位置間隔に応じて決定される。なお、第1速度V1は、アライメントマークKsが間引かれて検出される速度であってもよく、要は、第1速度V1は、基準速度Vsに比べ、多くのアライメントマークKsを検出することができる速度であればよい。
図6に示すように、所定の条件が成立したと判断したタイミングをT1とすると、搬送速度は、タイミングT1から徐々に減速し始め、タイミングT2で搬送速度が第1速度V1となる。この第1速度V1での順方向への搬送は、タイミングT2から所定時間経過後のタイミングT3で終了する。したがって、基板Pが第1速度V1で搬送されているタイミングT2〜T3の期間で、アライメント顕微鏡AMによってアライメントマークKsが精密に検出される。このように、アライメントマークKsが精密に検出されるので、検出されたアライメントマークKsの位置に基づいて、上位制御装置16は、基板Pの搬送状態の変化の傾向(例えば、基板Pの回転ドラム36の回転軸AXに対する傾き、基板Pの幅方向における位置、基板Pの変形等)を正確、精密に認識することができる。なお、タイミングT1〜タイミングT2の期間もアライメント顕微鏡AMによってアライメントマークKsが検出されているが、基板Pの搬送速度が第1速度V1以下となっていないので、精密にアライメントマークKsを検出できない場合、つまり、間引いて検出してしまう場合もある。
次いで、ステップS5で、上位制御装置16は、露光ヘッド34を制御してパターンの描画露光を一時停止させる。つまり、上位制御装置16は、所定の条件が成立すると、パターンの描画露光を一時停止させる。これにより、露光ヘッド34の各描画ユニットU(U1〜U5)によるパターンの形成は、タイミングT1から一時停止する。
次いで、ステップS6で、上位制御装置16は、補正準備動作の一部として、アライメント顕微鏡AMによって精密に検出されたアライメントマークKsの位置(および2次元的なベースライン長の情報)に基づいて、パターンデータ(描画データ)を補正する。このパターンデータを補正することで、パターンの形成精度を許容範囲内に維持することができる。つまり、パターンデータを高精度に補正するために、ステップS4で基板Pの搬送速度を基準速度Vsから第1速度V1まで低下させて、アライメント顕微鏡AMによるアライメントマークKsの位置検出(撮像した画像の画質処理、マークエッジの抽出、マーク中心点の決定等の演算処理を含む)の精度、すなわち、アライメントマークKsの計測精度が低下しないようにしている。ステップS6では、基板Pの第1速度V1での搬送が終了した時点(タイミングT3の時点)で、パターンデータの補正を行ってもよく、基板Pが第1速度V1で搬送されている最中(タイミングT2〜タイミングT3の期間)に、随時パターンデータを補正していってもよい。
なお、ステップS1においても、基板Pの搬送速度を第1速度V1にすれば、基板Pの搬送中に搬送速度を変化させる必要もなくなり、制御も簡単になるが、基板Pの搬送速度を第1速度V1にすると基板Pの搬送時間も長くなるので、結果的に電子デバイスの製造時間が長くなってしまい、非効率である。そこで、本第1の実施の形態においては、所定の条件が成立した場合にのみ、搬送速度を基準速度Vsから第1速度V1まで落とすことで、電子デバイスの製造時間が長くなることを抑制している。なお、所定条件が成立する前は、主に基板P上にパターンを形成する位置を認識するためにアライメントマークKsを検出しているので、そこまでの精密な検出は必要ない。したがって、ステップS1では、第1速度V1より速い基準速度Vsで基板Pを搬送している。
次いで、基板Pの第1速度V1での搬送が終了すると、ステップS7で、搬送部30は、上位制御装置16の制御にしたがって、基板Pの戻し搬送を行う。つまり、基板Pを逆方向に搬送させる。基板Pの戻し搬送を行う理由としては、基板Pを順方向に低速搬送(第1速度V1以下で搬送)している最中はパターンの形成が行われず、そのまま基板Pが順方向に搬送されてしまうからである。したがって、ステップS7では、パターンの形成が行われずにそのまま搬送された基板Pに対してパターンを形成するために基板Pの戻し搬送を行う。なお、この戻し搬送時においては、アライメント顕微鏡AMによるアライメントマークKsの検出を中断してもよい。
図6に示すように、第1速度V1での基板Pの順方向への搬送が終了した時点(タイミングT3の時点)で、基板Pの搬送速度が第1速度V1から徐々に低下し始め、タイミングT5で、基板Pの搬送速度が−第3速度V3となる。タイミングT4は、搬送速度が0[m/sec]となるタイミングである。つまり、基板Pの順方向への搬送速度がタイミングT3から徐々に減速し始めタイミングT4で0となり、その後、逆方向に基板Pが搬送し始め、その搬送速度が徐々に増加し、タイミングT5で基板Pの逆方向への搬送速度が第3速度V3となる。この第3速度V3での逆方向への搬送(戻し搬送)は、タイミングT5から所定時間経過後のタイミングT6で終了する。なお、タイミングT3〜タイミングT5間における基板Pの減速度(−方向への加速度)は一定とする。
次いで、第3速度V3での基板Pの戻し搬送が終了すると、ステップS8で、搬送部30は、上位制御装置16の制御にしたがって、基板Pを基準速度Vsより速い第2速度V2で高速搬送させる。つまり、基板Pの順方向への搬送速度を−第3速度V3から第2速度V2まで上げる。第2速度V2は、基準速度Vsより速い速度なので、アライメントマークKsは、アライメント顕微鏡AMによって間引かれて検出される。
図6に示すように、第3速度V3での基板Pの戻し搬送が終了した時点(タイミングT6の時点)で、基板Pの搬送速度が−第3速度V3から徐々に上昇し始め、タイミングT9で、基板Pの搬送速度が第2速度V2となる。タイミングT7は、搬送速度が0[m/sec]となるタイミングである。つまり、基板Pの逆方向への搬送速度がタイミングT6から徐々に減速し始めタイミングT7で0となり、その後、順方向に基板Pが搬送し始め、その搬送速度が徐々に増加し、タイミングT9で基板Pの順方向への搬送速度が第2速度V2となる。タイミングT8は、基板Pの順方向への搬送速度が基準速度Vsとなるタイミングを示している。なお、本第1の実施の形態では、タイミングT3〜タイミングT9の期間においては、アライメントマークKsの位置情報は必要ないので、アライメント顕微鏡AMによるアライメントマークKsの検出を中断し、基板Pの順方向への搬送速度が第2速度V2となった時点で、アライメントマークKsの検出を再開している。また、タイミングT6〜タイミングT9間における基板Pの加速度は一定とする。
ここで、ステップS8で、基板Pを基準速度Vsより速い第2速度V2で順方向に搬送させる理由について説明する。図6に示すように、基板Pの搬送速度が基準速度Vs以下となる期間(タイミングT1〜T8)においては、時間の経過とともに、第1蓄積部BF1が蓄積する基板Pの蓄積長は蓄積長Le0から増加し、第2蓄積部BF2が蓄積する基板Pの蓄積長は蓄積長Le1から減少する。具体的には、基板Pの順方向への低速搬送時(タイミングT1〜T4、タイミングT7〜T8)においては、処理装置PR2から第1蓄積部BF1に向かって基板Pが基準速度Vsで搬入するのに対して、第1蓄積部BF1から処理装置PR3に向かって基板Pを搬出する速度は、基準速度Vsより低くなるので、第1蓄積部BF1の蓄積長が徐々に増加する。そして、基板Pの逆方向への搬送時(タイミングT4〜T7)においては、処理装置PR2から第1蓄積部BF1に向かって基板Pが基準速度Vsで搬入するとともに、処理装置PR3からも基板Pが第3速度V3で第1蓄積部BF1に搬入するので、低速搬送時に比べ、第1蓄積部BF1の蓄積長が急激に増加する。第2蓄積部BF2においては、第1蓄積部BF1の逆となるので、基板Pの低速搬送時においては、第2蓄積部BF2の蓄積長が徐々に減少し、基板Pの逆方向への搬送時おいては、低速搬送時に比べ、第2蓄積部BF2の蓄積長が急激に減少する。そのため、本第1の実施の形態においては、第1蓄積部BF1および第2蓄積部BF2の蓄積長を元の状態(Le0、Le1)に戻すため、基板Pを逆方向に搬送した後は、基板Pの搬送速度を基準速度Vsより速い第2速度V2で基板Pを順方向に高速搬送している。
したがって、第1蓄積部BF1は、タイミングT8の時点で蓄積している基板Pの蓄積長が最も長くなり、タイミングT8以後は、第1蓄積部BF1の蓄積長が徐々に減少する。逆に、第2蓄積部BF2は、タイミングT8の時点で蓄積している基板Pの蓄積長が最も短くなり、タイミングT8以後は、第2蓄積部BF2の蓄積長が徐々に増加する。本第1の実施の形態では、タイミングT8で、第1蓄積部BF1の蓄積長がLe1となり、第2蓄積部BF2の蓄積長がLe0となるように、第1速度V1、第3速度V3、タイミングT2〜T8等が予め決められている。
基板Pが第2速度V2で搬送し始めると、ステップS9で、上位制御装置16は、露光ヘッド34を制御して、パターン形成を再開する。つまり、上位制御装置16は、間引かれて検出されているアライメントマークKsの位置に基づいて基板P上にパターンを形成する位置を認識し、ステップS6で補正されたパターンデータを用いて露光ヘッド34を制御して基板P上にパターンを描画露光する。このステップS9のパターン形成は補正されたパターンデータを用いていることから、ステップS9のパターンの形成精度(第2の精度)は、許容範囲内となり、且つ、ステップS2のパターン形成の精度(第1の精度)に比べ向上している。
ステップS9における基板P上のパターンの形成が再開する位置は、ステップS5における基板P上のパターンの形成が一時停止した位置となる。つまり、ステップS9における各描画ユニットUから基板P上に照射されるスポット光SPの描画開始位置は、ステップS5におけるパターンの形成の一時停止によって一時終了した各描画ユニットUからのスポット光SPの基板Pへの照射終了位置(描画終了位置)となる。したがって、各描画ユニットUからのスポット光SPの基板Pへの描画終了位置から、スポット光SPの描画を開始することができ、露光精度が低下することを防止することができる。なお、露光精度を一定に保つためには、基板Pの搬送速度が一定の速度で搬送されている必要があるため、基板Pの搬送速度が第2速度V2になるまではパターンの形成は行わない。基板Pを基準速度Vsより遅い第1速度V1で順方向に搬送して、複数のアライメントマークKsを精密に検出した後、基板Pを逆の方向への戻し搬送を行ってから、その後、基板Pを基準速度Vsより速い第2速度V2で順方向に搬送させて、複数のアライメントマークKsを間引いて検出し、パターンを形成する動作(ステップS4〜ステップS9の動作)は、本発明の態様の第2モードに相当する。この第2モードは、第2蓄積部BF2の蓄積長Le1に対応した基板Pの長さに亘って実行される。
ここで、各描画ユニットUからのスポット光SPの基板Pへの描画終了位置から、スポット光SPの描画を開始するためには、ステップS5で基板P上におけるパターンの形成が一時停止した描画終了位置(スポット光SPの基板Pへの照射終了位置)が、タイミングT9の時点において、露光ヘッド34の各描画ユニットUによってスポット光SPが照射される基板P上の位置より−X方向側となる必要がある。つまり、ステップS5におけるパターンの形成の一時停止によって一時終了した各描画ユニットUからのスポット光SPの基板Pへの照射終了位置(描画終了位置)が、露光ヘッド34の各描画ユニットUによってスポット光SPが照射される基板P上の位置に到達する前に、基板Pの搬送速度が第2速度V2となっている必要がある。そのために、タイミングT4〜T7の期間に逆方向に搬送される基板Pの長さ(戻し長さ)を、タイミングT1〜T4の期間に順方向に搬送された基板Pの長さよりも助走長分だけ長くすることで、これを担保している。
その後、ステップS10で、上位制御装置16は、第1蓄積部BF1の蓄積長が、予め決められた所定の長さになったか否かを判断する。ステップS10で、第1蓄積部BF1の蓄積長が所定の長さになっていないと判断すると、所定の長さになるまでステップS10に留まり、所定の長さになったと判断すると、ステップS11に進む。ステップS11に進むと、搬送部30は、上位制御装置16の制御にしたがって、基板Pの搬送速度を第2速度V2から基準速度Vsに戻して基板Pを順方向に搬送する。詳しく説明すると、図6に示すように、第1蓄積部BF1が蓄積している基板Pの長さが所定長になったと判断したタイミングT10で、基板Pの搬送速度が第2速度V2から徐々に低下し、タイミングT11で基板Pの搬送速度が基準速度Vsとなる。このタイミングT11で、第1蓄積部BF1の蓄積長がLe0、第2蓄積部BF2の蓄積長がLe1となるように、基板Pの第2速度V2から基準速度Vsへの減速度等が予め決められている。基板Pの搬送速度が基準速度Vsになった以降は、再びステップS1に戻り、上記した動作を繰り返す。なお、タイミングT10以降においても、アライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)は、アライメントマークKsを間引いて検出している。
ここで、第1蓄積部BF1が蓄積している基板Pの長さが所定の長さになったか否かの判断は、タイミングT9から所定の時間が経過したか否かによって判断してもよい。タイミングT1以前に第1蓄積部BF1に蓄積されている基板Pの長さがLe0であることから、第1〜第3速度V1、V2、V3や、タイミングT2〜T9との関係から、計算によって予めこの所定の時間を求めることができるからである。また、第1蓄積部BF1の各ダンサーローラ20の位置を検出するセンサを設け、該センサが検出した各ダンサーローラ20の位置に基づいて、第1蓄積部BF1の蓄積長を求めることで、第1蓄積部BF1が所定の長さになったか否かを判断してもよい。また、第1蓄積部BF1に搬入する基板Pの速度と、第1蓄積部BF1から搬出される基板Pの速度とを検出するセンサを設け、該センサが検出した速度差に基づいて、第1蓄積部BF1の蓄積長を算出することで、第1蓄積部BF1が所定の長さになったか否かを判断してもよい。なお、本第1の実施の形態では、第1蓄積部BF1の蓄積長が所定の長さとなったかどうかを判断するようにしたが、第2蓄積部BF2の蓄積長が所定の長さとなったかどうかを判断してもよい。
基板Pのパターン形成は、基板Pを第2速度V2で搬送している最中は勿論のこと、第2速度V2から基準速度Vsに戻った以後も継続して行われることになるが、パターンの形成中に基板Pの搬送速度が変動することは、パターン形成の精度の観点からあまり好ましくはない。したがって、露光ヘッド34によるデバイス形成領域Wのパターンの形成が終了して次のデバイス形成領域Wへのパターンの形成が開始するまでの期間において、搬送速度を下げることで、基板Pの搬送速度を第2速度V2から基準速度Vsまで段階的に徐々に下げてもよい。また、デバイス形成領域Wとデバイス形成領域Wとの間隔Ls(図7参照)が充分に長い場合は、露光ヘッド34によるデバイス形成領域Wのパターンの形成が終了して次のデバイス形成領域Wへのパターンの形成が開始するまでの期間において、搬送速度を第2速度V2から基準速度Vsまで一気に下げてもよい。
図7は、図6のタイムチャートに示す動作によって搬送される基板Pに対するアライメント顕微鏡AMの相対的な移動方向および移動範囲を示す図である。図7の矢印Aは、基板Pの順方向への低速搬送時(タイミングT1〜T4)における基板Pに対するアライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)の相対的な移動方向および移動範囲の一例を示している。図7の破線で示されたアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)は、基板Pを第1速度V1で搬送することによって精密に検出されたアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の一例を示している。このときは、図7に示すように、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)が間引きされずに検出されていることがわかる。図7の矢印Bは、基板Pの逆方向への搬送時(タイミングT4〜T7)における基板Pに対するアライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)の相対的な移動方向および移動範囲を示している。この基板Pが順方向とは逆方向に搬送されている場合は、アライメント顕微鏡AMによってアライメントマークKsの検出は行われない。図7の矢印Cは、戻し搬送後に基板Pを順方向に高速搬送したとき(タイミングT7以降)における基板Pに対するアライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)の相対的な移動方向および移動範囲の一例を示している。図7の破線の円で囲まれたアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)は、基板Pを第2速度V2で搬送することによって間引かれて(1つ置き間隔で)検出されたアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の一例を示している。
以上のように、上記第1の実施の形態においては、基板Pを順方向に第1速度V1で搬送することで、アライメント顕微鏡AMに複数のアライメントマークKsを精密に検出させる。そして、基板Pを逆方向に搬送させ、その後、基板Pを順方向に第1速度V1より速い第2速度V2で搬送させることで、アライメント顕微鏡AMに複数のアライメントマークKsを間引いて検出させて、露光ヘッド34にパターンの形成を行わせる。これにより、基板Pに繰り返し形成される電子デバイス用のパターンの形成を、所定のパターニング精度範囲内に保った状態で連続して実施することが可能となり、精度劣化に起因した製造ラインの一時的な停止を回避して、電子デバイスの製造時間の短縮化が図られる。
[第1の実施の形態の変形例]
上記第1の実施の形態は、以下の変形例も可能である。
(変形例1)変形例1では、基板Pを第1速度V1で順方向に低速搬送させることによって、アライメント顕微鏡AMがアライメントマークKsを精密に検出しているときも(タイミングT2〜T3においても)、露光ヘッド34によるパターンの形成を行う。タイミングT2〜T3においては、精密に検出されたアライメントマークKsの位置に基づいて、パターンデータを逐次修正し、修正されたパターンデータに基づいてパターンを形成する。この場合は、基板Pを基準速度Vsで搬送している最中は勿論のこと、基板Pの基準速度Vsから第1速度V1に変動した以後も継続してパターンの形成が行われることになるが、パターンの形成中に基板Pの搬送速度が変動することは、パターン形成の精度の観点からあまり好ましくはない。したがって、タイミングT1〜T2の期間においてはパターンの形成を一時停止する。このパターンの形成の一時停止によりパターンを形成することができなかった領域に対しては、基板Pを戻し搬送した後、第2速度V2で順方向に搬送するときに、パターンの形成を行う。この場合であっても、基板Pに繰り返し形成される電子デバイス用のパターンの形成を、所定の精度範囲内に保った状態で実施することが可能となり、電子デバイスの製造時間が長くなることを抑制することができる。
(変形例2)変形例2では、基板Pが第3速度V3で順方向とは逆方向に搬送しているときも(タイミングT5〜T6においても)、アライメント顕微鏡AMによるアライメントマークKsの検出、および、露光ヘッド34によるパターンの形成を行うようにしてもよい。この場合であっても、基板Pに繰り返し形成される電子デバイス用のパターンの形成を、所定の精度範囲内に保った状態で実施することが可能となり、電子デバイスの製造時間が長くなることを抑制することができる。なお、逆搬送のときも、精密に検出されたアライメントマークKsの位置に基づいて修正されたパターンデータを用いてパターンを形成する。
(変形例3)上記第1の実施の形態では、基板Pが基準速度Vsで搬送しているときは、第1蓄積部BF1に蓄積されている基板Pの長さをLe0とし、第2蓄積部BF2に蓄積されている基板Pの長さをLe1としたが、実際には誤差を生じてしまう可能性もあり得る。したがって、変形例3では、基板Pが基準速度Vsで搬送しているときは、第1蓄積部BF1の蓄積長がLe0、第2蓄積部BF2の蓄積長がLe1となるように、各処理装置PR1〜PR5における基板Pの相対的な速度を調整してもよい。例えば、第1蓄積部BF1の蓄積長がLe0よりも長い場合には、処理装置PR3〜PR5の搬送速度を基準速度Vsとし、処理装置PR1、PR2の基板Pの搬送速度を基準速度Vsより遅くすることで、第1蓄積部BF1の蓄積長がLe0となるように調整してもよい。この第1蓄積部BF1および第2蓄積部BF2の蓄積長は、上述したように、ダンサーローラ20、22の位置に基づいて算出してもよいし、第1蓄積部BF1および第2蓄積部BF2に搬入する基板Pの速度と、第1蓄積部BF1および第2蓄積部BF2から搬出される基板Pの速度とに基づいて算出してもよい。
(変形例4)変形例4では、図6のタイミングT1〜T3における基板Pの搬送速度を、基準速度Vsとする。タイミングT1〜T3における基板Pの搬送速度を基準速度Vsにした場合は、タイミングT1〜タイミングT3でアライメント顕微鏡AMによるアライメントマークKsの間引き検出が行われるが、この間引き検出によって、基板Pの搬送状態の傾向をある程度認識することができ、パターンデータを補正することができるからである。したがって、本変形例4においても、基板Pに繰り返し形成される電子デバイス用のパターンの形成を、所定の精度範囲内に保った状態で実施することが可能となり、電子デバイスの製造時間が長くなることを抑制することができる。また、タイミングT1〜T4においても基板Pを基準速度Vsにするので、上記第1の実施の形態に比べ、電子デバイスの製造時間を短くすることができる。
(変形例5)変形例5では、基板Pの搬送速度と、第1蓄積部BF1および第2蓄積部BF2の蓄積可能長との関係について説明する。本変形例5では、第1蓄積部BF1および第2蓄積部BF2の最大蓄積可能長をLe1とし、基板Pの順方向への搬送速度を全て基準速度Vsとする。つまり、図6のタイミングT1〜T3とタイミングT9〜T11とにおける基板Pの搬送速度は基準速度Vsである。なお、上記第1の実施の形態で述べた通り、所定の条件が成立する前の、第1蓄積部BF1の基板Pの蓄積長はLe0であり、第2蓄積部BF2の基板Pの蓄積長はLe1である。
したがって、基板Pが順方向とは逆方向に搬送される期間ΔT(タイミングT4〜T7)中の第1蓄積部BF1の蓄積条件は、数式(1)で表すことができ、期間ΔT中の第2蓄積部BF2の蓄積条件は、数式(2)で表すことができる。なお、数式(1)、数式(2)においては、基板Pの搬送速度が基準速度Vsから第3速度V3へ、第3速度V3から基準速度Vsへ徐々に変化することを考慮していない。つまり、タイミングT3〜T4、および、タイミングT7〜T9の基板Pの搬送速度を基準速度Vsとし、タイミングT4〜T5、および、タイミングT6〜T7の搬送速度を第3速度V3としている。
(Le1−Le0)−(Vs+V3)ΔT>0 …(1)
Le1−(Vs+V3)ΔT>0 …(2)
また、デバイス形成領域WのX方向の長さをLD(図7参照)、デバイス形成領域Wの間隔Ls(図7参照)、基板Pを順方向とは逆方向の搬送によって戻したいデバイス形成領域Wの数をn、助走長をLuとすると、基板Pが順方向とは逆方向に搬送される基板Pの長さLrは、数式(3)で表すことができ、ΔTは、Lrを用いて数式(4)で表すことができる。
Lr=Lu+n(LD+Ls) …(3)
ΔT=Lr/V3 …(4)
よって、数式(1)は、数式(3)および数式(4)を用いて、数式(5)で表すことができる。
(Le1−Le0)−(Vs/V3+1)Lr>0
⇒(Le1−Le0)−(Vs/V3+1){Lu+n×(LD+Ls)}>0 …(5)
また、数式(2)は、数式(3)および数式(4)を用いて、数式(6)で表すことができる。
Le1−(Vs/V3+1)Lr>0
⇒Le1−(Vs/V3+1){Lu+n×(LD+Ls)}>0 …(6)
したがって、数式(5)および数式(6)の関係を満たすように、Le1、Le0、Vs、V3、Lr(Lu+n(LD+Ls))を決定すればよい。
図8は、戻り搬送時における第1蓄積部BF1の蓄積長の増加量を示すグラフである。詳しくは、デバイス形成領域WのX方向の長さLDと、基準速度Vsと第3速度V3との速度比(Vs/V3)とを変えたときの、戻り搬送時における第1蓄積部BF1の蓄積長の増加量を示している。なお、図8においては、デバイス形成領域Wの間隔Lsを5[cm]、基板Pを順方向とは逆方向の搬送によって戻したいデバイス形成領域Wの数nを2、助走長Luを40[cm]としている。
戻り搬送時には、第1蓄積部BF1には、処理装置PR2から基準速度Vsで基板Pが搬入され、処理装置PR3から基板Pが第3速度V3で搬入されるので、図8に示すように、速度比(Vs/V3)が高くなるにつれ、戻り搬送時に第1蓄積部BF1に蓄積される基板Pの増加量は大きくなる。また、デバイス形成領域WのX方向の長さLDが長くなるにつれ、戻し搬送によって順方向とは逆方向に搬送される基板Pの長さLrも長くなるので、長さLDが長くなるほど、戻り搬送時に第1蓄積部BF1に蓄積される基板Pの増加量も大きくなる。図8においては、長さLDが、20、40、60、80、100[cm]の場合を例にとって比較した。なお、長さLDが20[cm]の場合は、数式(3)から、長さLrは0.9[m]となる。同様に、長さLDが、40、60、80、100[cm]の場合は、数式(3)から、長さLrは、1.3、1.7、2.1、2.5[m]となる。なお、第2蓄積部BF2においては、第1蓄積部BF1と逆のことがいえるので、速度比(Vs/V3)が高くなるにつれ、戻り搬送時に第2蓄積部BF2に蓄積される基板Pの減少量も大きくなる。また、長さLDが長くなるほど、戻り搬送時に第2蓄積部BF2に蓄積される基板Pの減少量も大きくなる。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。図9は、本第2の実施の形態におけるパターン形成装置18の構成を示す図である。第2の実施の形態においては、パターン形成装置18は、処理装置PR3、第1蓄積部BF1、および、第2蓄積部BF2を備えるとともに、さらに、アライメント検出装置AMDを備える。なお、本第2の実施の形態においては、上記第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付すとともに、原則として、上記第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明する。
処理装置PR3は、第2蓄積部BF2と処理装置PR4との間に設けられ、アライメント検出装置AMDは、第1蓄積部BF1と第2蓄積部BF2との間に設けられている。つまり、アライメント検出装置AMDは、第1蓄積部BF1を介して処理装置PR2から供給された基板PのアライメントマークKs等を検出した後、第2蓄積部BF2を介して処理装置PR3に向けて基板Pを搬送する。処理装置PR3は、第2蓄積部BF2を介してアライメント検出装置AMDから供給された基板Pを順方向(+X方向)に搬送しつつ、基板P上にパターンを形成した後、基板Pを処理装置PR4へ向けて搬送する。
アライメント検出装置AMDは、搬送部80と、検出部としてのアライメント顕微鏡AMa、AMb、AMc、AMd、AMe(以下、AMa〜AMeと略す)とを有する。搬送部80は、第1蓄積部BF1を介して処理装置PR2から搬送される基板Pを、処理装置PR3側へ搬送する。搬送部80は、基板Pの順搬送方向に沿って上流側(−X方向側)から順に、エッジポジションコントローラEPC5、テンション調整ローラRT3、回転ドラム82、テンション調整ローラRT4、および、エッジポジションコントローラEPC6を有する。
エッジポジションコントローラEPC5は、第1蓄積部BF1を介して処理装置PR2から搬送された基板Pを回転ドラム82へ向けて搬送する。なお、エッジポジションコントローラEPC5の構成および機能は、処理装置PR3のエッジポジションコントローラEPC3と同一なので、その説明を省略する。回転ドラム82は、処理装置PR3の回転ドラム36と同一の構成を有し、アライメント顕微鏡AMa〜AMeによって検出される基板P上の領域を円周面で支持する。回転ドラム82は、Y方向に延びる回転軸AX1を中心に回転することで、基板Pを回転ドラム36の外周面(円周面)に倣って基板Pを+X方向に搬送して、エッジポジションコントローラEPC6側に送る。回転ドラム82(回転軸AX1)は、図示しない回転駆動源からの回転トルクが与えられることで回転する。エッジポジションコントローラEPC6は、回転ドラム82から搬送された基板Pを第2蓄積部BF2に向けて搬送する。なお、エッジポジションコントローラEPC6の構成および機能は、処理装置PR3のエッジポジションコントローラEPC4と同一なので、その説明を省略する。本第2の実施の形態の搬送部80は、上記第1の実施の形態の搬送部30と同様に、基板Pを順方向(+X方向)および逆方向(−X方向)にも搬送可能である。
基板Pの順搬送方向における上流側(−X方向側)から順に、アライメント顕微鏡AMa〜AMeが設けられている。アライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa3)は、処理装置PR3のアライメント顕微鏡AM(AM1〜AM3)と同一の構成および機能を有し、基板P上に形成された被検出体としてのアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)を検出する。つまり、アライメント顕微鏡AMa1は、基板Pの+Y方向側の端部に形成されたアライメントマークKs1を検出し、アライメント顕微鏡AMa2は、基板Pの−Y方向側の端部に形成されたアライメントマークKs2を検出する。アライメント顕微鏡AMa3は、基板Pの幅方向中央に形成されたアライメントマークKs3を検出する。なお、アライメント顕微鏡AMaの回転ドラム82に対する設置位置は、処理装置PR3のアライメント顕微鏡AMの回転ドラム36に対する設置位置と同じ位置である。
アライメント顕微鏡AMb〜AMeは、基板P上に形成されているパターンのうち、特定の形状を有する被検出体を検出する。この被検出体としては、例えば、ディスプレイを構成するTFT、または、TFTのソース電極およびドレイン電極等の金属性配線部が挙げられる。TFTやTFTのソース電極およびドレイン電極は、デバイス形成領域W内に無数にマトリクス状に形成されている。そのため、各アライメント顕微鏡AMb〜AMeは、基板Pの幅方向(Y方向)に沿って複数設けられており、この複数のアライメント顕微鏡AMb〜AMeは、互いに異なる領域を検出するように配置されている。このアライメント顕微鏡AMb〜AMeによって、基板Pのデバイス形成領域Wの搬送状態や形状変形、形成されたTFT等の配置状態をより精度よく認識することができ、下地層に形成されたパターンと新たにパターンを形成して重ね合わせる際の重ね合わせ誤差をより小さくすることができる。なお、アライメント顕微鏡AMa〜AMeは、アライメント顕微鏡AMと同様に、一定の周期で検出領域内の基板Pを撮像することで、被検出体の検出を行う。
次に、アライメント検出装置AMDの動作を図10のフローチャートにしたがって説明するが、搬送部80による基板Pの搬送動作は、上記第1の実施の形態で説明した図6に示す搬送部30の搬送動作と同一であるので、基板Pの搬送動作については詳しく説明しない。また、搬送動作が図6に示すタイムチャートと同一であることから、第1蓄積部BF1および第2蓄積部BF2の蓄積長も図6に示すタイムチャートと同一である。なお、図10のフローチャートに示す動作では、特に説明しないが、エッジポジションコントローラEPC5、EPC6は、基板Pの幅方向における位置を調整しているものとし、特に説明しない限り、アライメント顕微鏡AMa〜AMeの検出は一定の周期で継続的に行われているものとする。また、本第2の実施の形態においては、アライメント検出装置AMD内で基板Pの搬送速度や搬送方向は変わるが、第2蓄積部BF2から処理装置PR3に搬送される基板Pの搬送速度は、基準速度Vsで一定となり、搬送方向が逆方向になることはない。したがって、露光ヘッド34は、該検出されたアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の位置に基づいてパターンを継続的に順次形成している。
ステップS21で、搬送部80は、上位制御装置16の制御にしたがって、基板Pを順方向に基準速度Vsで搬送する。基準速度Vsは、アライメント顕微鏡AMa〜AMeが被検出体(アライメントマークKsやソース電極およびドレイン電極等)を間引いて検出する速度であるので、基板Pが基準速度Vsで搬送されている間は、被検出体は間引かれて検出される。
その後、ステップS22で、上位制御装置16は、所定の条件が成立したか否かを判断する。上位制御装置16は、基板Pへの露光を初めて行う場合や露光によって形成されるパターンの形成精度が許容範囲から外れる場合は、所定の条件が成立したと判断する。ステップS22で、所定の条件が成立したと判断すると、ステップS23で、搬送部80は、上位制御装置16の制御にしたがって、補正準備動作の一部として基板Pを基準速度Vsより遅い第1速度V1で順方向に低速搬送させる。つまり、搬送部80は、基板Pの搬送速度を基準速度Vsから第1速度V1まで落として、基板Pを順方向に低速搬送する。第1速度V1での搬送は、所定時間行われる。
基板Pを第1速度V1で順方向に低速搬送することで、アライメント顕微鏡AMa〜AMeによって被検出体が精密に検出され、検出精度が向上する。基板Pが第1速度V1で順方向に搬送されているときのアライメント顕微鏡AMa〜AMeの検出精度は、基板Pが基準速度Vsで順方向に搬送されているときのアライメント顕微鏡AMa〜AMeの検出精度より高ければよく、全く間引きしないで検出することに限定されない。例えば、TFTは、配置密度が高いため、全ての被検出体を間引かないで検出するためには、基板Pの搬送速度を極めて遅くさせなければならず、非効率であるからである。
次いで、ステップS24で、上位制御装置16は、補正準備動作の一部として、アライメント顕微鏡AMa〜AMeによって精密に検出された被検出体の位置に基づいて、パターンデータ(描画データ)を補正する。このパターンデータを補正することで、パターンの形成精度を許容範囲内に維持することができる。ステップS24では、基板Pの第1速度V1での搬送が終了した時点で、パターンデータの補正を行ってもよく、基板Pが第1速度V1で搬送されている最中に、随時パターンデータを補正(描画タイミングの補正も含む)していってもよい。なお、搬送状態にある基板Pの変形の傾向が許容範囲を超えて変わったと判断される基板P上の位置が、処理装置PR3の露光ヘッド34によってパターンが形成される位置(スポット光SPが照射される位置)まで搬送されると、上位制御装置16は、この補正したパターンデータを用いて露光ヘッド34を制御して基板P上にパターンを形成する。
そして、基板Pの第1速度V1での搬送が終了すると、ステップS25で、搬送部80は、上位制御装置16の制御にしたがって、基板Pの戻し搬送を行う。具体的には、搬送部80は、基板Pを順方向とは逆方向に第3速度V3で所定時間搬送させる。なお、この戻し搬送時においては、アライメント顕微鏡AMa〜AMeによるアライメントマークKsの検出を中断してもよい。その後、基板Pの戻し搬送が終了すると、ステップS26で、搬送部80は、上位制御装置16の制御にしたがって、基板Pを基準速度Vsより速い第2速度V2で順方向に高速搬送させる。第2速度V2は、基準速度Vsより速い速度なので、被検出体はアライメント顕微鏡AMa〜AMeによって間引かれて検出される。
その後、ステップS27で、上位制御装置16は、第1蓄積部BF1または第2蓄積部BF2の蓄積長が、所定の長さになったか否かを判断する。ステップS27で、第1蓄積部BF1または第2蓄積部BF2の蓄積長が、所定の長さになったと判断すると、ステップS28で、搬送部80は、上位制御装置16の制御にしたがって、基板Pの搬送速度を第2速度V2から基準速度Vsに戻して基板Pを順方向に搬送し、ステップS21に戻る。なお、基板Pの搬送速度が第2速度V2から基準速度Vsに変化する間も、アライメント顕微鏡AMa〜AMeは、被検出体を間引いて検出している。
以上のように、第2の実施の形態においては、第1蓄積部BF1と第2蓄積部BF2との間に、アライメント検出装置AMDを設け、処理装置PR3を第2蓄積部BF2より+X方向側に設けたので、処理装置PR3の露光ヘッド34のパターン形成を中断することなく、基板Pの搬送状態の変形の傾向を認識することができる。したがって、基板Pに繰り返し形成される電子デバイス用のパターンの形成を、所定の精度範囲内に保った状態で実施することが可能となり、精度劣化に起因した製造ラインの一時的な停止による電子デバイスの製造時間の長時間化を抑制することができる。また、パターン形成を中断する必要がないので、パターンの形成精度を向上させることができる。
[第2の実施の形態の変形例]
上記第2の実施の形態は、以下の変形例も可能である。
(変形例1)上記第2の実施の形態では、ステップS25で、基板Pの戻し搬送を行うようにしたが、戻し搬送を行わなくてもよい。つまり、ステップS23での基板Pの低速搬送が終了すると、ステップS25の動作を飛ばして、ステップS26に進み、搬送部80は、基板Pを基準速度Vsより速い第2速度V2で順方向に高速搬送させる。つまり、基板Pの第1速度V1での搬送が所定時間経過すると、基板Pの搬送速度を第1速度V1から第2速度V2にまで上昇させて、基板Pを順方向に高速搬送させる。
(変形例2)上記第1の実施の形態の変形例3と同様に、基板Pが基準速度Vsで搬送しているときは、第1蓄積部BF1の蓄積長がLe0、第2蓄積部BF2の蓄積長がLe1となるように、各処理装置PR1〜PR5における基板Pの相対的な速度を調整してもよい。例えば、第1蓄積部BF1の蓄積長がLe0よりも長い場合には、アライメント検出装置AMDおよび処理装置PR3〜PR5の搬送速度を基準速度Vsとし、処理装置PR1、PR2の基板Pの搬送速度を基準速度Vsより遅くすることで、第1蓄積部BF1の蓄積長をLe0なるように調整してもよい。
なお、上記第1および第2の実施の形態およびその変形例においては、露光装置である処理装置PR3を用いてパターンを形成するようにしたが、例えば、処理装置PR3は、平面マスクや円筒マスクを用いたプロキシミティ方式または投影方式の露光装置であってもよく、さらにはインクを塗布するインクジェット印刷機等であってもよい。要は、処理装置PR3は、基板Pにパターンを位置決めして形成することができるパターニング装置であればよく、パターンが形成された印刷用の版胴を用いるグラビア印刷機、微細な凹凸パターンを型押し方式で形成するインプリント転写機等であってもよい。
[第3の実施の形態]
上記第1、第2の形態による処理装置(露光装置)を用いることで、フレキシブルな表示パネル(例えば、有機ELディスプレイ)、タッチパネル、カラーフィルタ等の種々の電子デバイスを長尺の基板P上に連続的に製造することができる。本第3の実施の形態では、図11のフローチャートを用いて、一例として表示パネルに用いられる電子デバイスの一種である薄膜トランジスタ(TFT)を製造する製造工程を説明する。なお、図11では、ボトムゲート(BG)型のTFTの製造工程と、トップゲート(TG)型のTFTの製造工程の両方をまとめて表したフローチャートとなっている。
まず、前工程のプロセス装置は、表示パネルのベースとなる基板Pの表面を、紫外線、大気圧プラズマ、電子線、および、X線等のいずれかを照射して活性化処理(表面改質)を行う(ステップS40)。そして、プロセス装置(図1中の処理装置PR1、PR2等)は、基板Pの表面に感光性の機能液を一様に、または、選択的に塗布し、その基板Pをガラス転移温度以下の乾燥炉に通して、感光性機能層を成膜する(ステップS41)。感光性機能層としては、上述したように、感光性シランカップリング材、感光性メッキ還元材等があり、工程によって使い分けられる。なお、感光性機能層として一般的なフォトレジスト層を塗布し、露光後の現像によってレジスト層(撥液性)をパターン形状に応じて食刻(エッチング)するフォトリソグラフィ法を利用する場合は、ステップS41でフォトレジストの塗布が行われる。その場合は、フォトレジストの塗布の前に、例えば、ステップS40において、基板Pの表面を親液性にしたり、メッキ還元材を塗布したりする工程が必要になる。
感光性機能層が形成された基板Pは、露光装置(図2中の処理装置PR3等)に送られ、TFTのゲート電極、または、ソース/ドレイン電極と、それに接続される配線(バスライン等)とを含む第1層用のパターン形状に対応した紫外線の光パターンが感光性機能層に露光(描画)される(ステップS42)。ボトムゲート(BG)型のTFTの場合、第1層用のパターンはゲート電極とそれに接続される配線であり、トップゲート型のTFTの場合、第1層用のパターンはソース/ドレイン電極とそれに接続される配線である。このとき、基板P上に予め複数のアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)が形成されている場合は、露光装置のアライメント顕微鏡AMによってアライメントマークKsの各位置を検出し、その検出結果(位置ずれ情報)に基づいて、露光位置を補正しながらパターン露光が行われる。また、第1層用のパターンの露光時に、基板P上にアライメントマークKsが形成されていない場合は、露光装置が第1層用のパターンを露光(描画)する際に、アライメントマークKsとなるマークパターンを第1層用のパターンとともに基板P上に露光し、アライメントマークKsを基板P上に形成し、第2層用のパターンの形成(露光)時から使うようにしてもよい。
このようにして露光装置で露光された基板Pは、後工程のプロセス装置に送り出されて次の工程が行われるが、ステップS41で成膜された感光性機能層の種類によって、ステップS44A、S45Aの工程と、ステップS44B、S45Bの工程とのいずれかの工程が行われる。感光性機能層としてフォトレジストが使われた場合は、ステップS44AまたはステップS44Bの前にレジスト層の現像と洗浄の工程が実施される。
感光性機能層として親撥液性が改質される感光性シランカップリング材が用いられた場合は、基板P上の紫外線で露光されたゲート電極とそれに接続される配線とに対応した部分、或いは、ソース/ドレイン電極とそれに接続される配線とに対応した部分が、撥液性から親液性に改質されるため、ステップS44Aに進む。ステップS44Aで、プロセス装置は、親液性となった部分(露光された部分)の上に導電性インクを選択塗布(パターニング)することで、パターン(ゲート電極と配線、或いは、ソース/ドレイン電極と配線)を形成する。この導電性インクの選択塗布は、インクジェット方式、グラビア印刷、オフセット印刷等であってよい。また、導電性インクとしては、例えば、銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインクが用いられている。この導電性インクにより形成された電極および配線のパターン層を第1層と呼ぶ。
そして、後工程のプロセス装置は、基板Pに選択塗布された導電性インクに含有されるナノ粒子同士の電気的な結合を強固にし、導電性インクの溶剤を除去するために、基板Pに対してアニール処理と乾燥処理を行う(ステップS45A)。ナノ粒子同士の電気的な結合を強固にするアニール処理として、ストロボランプからの高輝度なパルス光を基板Pに照射する方式を採用してもよい。
一方、感光性機能層として紫外線を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性メッキ還元材を用いた場合は、基板P上の紫外線で露光されたゲート電極とそれに接続された配線とに対応した部分、或いは、ソース/ドレイン電極とそれに接続された配線とに対応した部分、にメッキ還元基が露呈するため、ステップS44Bに進む。ステップS44Bで、後工程のプロセス装置(図2中の処理装置PR4等)は、基板Pに対して無電解のメッキ処理を行う。具体的には、後工程のプロセス装置は、パラジウムイオン等を含むメッキ液に基板Pを一定時間漬けて、電極や配線となるパラジウムによるパターンを、メッキ還元基が露呈した部分(露光された部分)の上に析出させる。
このメッキ処理の工程では、パラジウムによるパターンの層を下地として、その上にさらに他の金属(NiP、金、銅等)によるメッキ処理が施される。このパラジウムにより析出された電極および配線のパターン層を第1層と呼ぶ。この第1層には、パラジウムによるパターン層を下地としてさらにメッキ処理が施された場合は、その層も含まれる。そして、後工程のプロセス装置は、メッキ処理が施された基板Pに対して純水による洗浄を行い、その後ガラス転移温度以下の乾燥炉に送り、基板Pの水分含有率が所定値以下になるまで乾燥させる(ステップS45B)。
また、感光性機能層としてフォトレジストを用いた場合は、現像、洗浄後に、レジスト層中のパターン形状に応じてエッチングされた部分(下地が露呈した部分)に、導電性インクが選択的に塗布されたり(ステップS44A)、または、メッキ層(パラジウム、或いは、その上の金属層)が析出されたり(ステップS44B)する。
ステップS45AまたはステップS45Bの工程を経ると、ステップS46において、ボトムゲート(BG)型TFTか否かを判断し、ボトムゲート型の場合は、ステップS47Aに進み、トップゲート型の場合はステップS47Bに進む。なお、基板P上に形成すべき電子デバイスの品種が決まっていると、通常はTFTもボトムゲート型かトップゲート型のいずれか一方に決まっているため、実際の製造ライン中でステップS46を明示的に実行することはないが、ここでは説明上、ステップS46の判断を設けてある。
ステップS46でボトムゲート型TFTと判断されると、第2層を形成するか否かを判断する(ステップS47A)。第1層であるパターン層(ここでは、ゲート電極とそれに接続される配線)が形成された直後では、ステップS47Aで第2層を形成すると判断される。なお、実際の工程では、第1層が形成された後には、自ずと第2層の形成工程が実施されるため、このステップS47Aの判断工程は不要である。
ステップS47Aで、第2層を形成すると判断されると、後工程のプロセス装置である絶縁層成膜装置が、第1層のパターン(ゲート電極とそれに接続される配線)を基準にして、その上に積層すべきゲート絶縁層の溶液(絶縁性溶液)を選択塗布(パターニング)することで、ゲート絶縁層となるパターンを形成する(ステップS48A)。このゲート絶縁層の成膜工程は、版を使用した印刷方式、インクジェット方式等を用いて絶縁性溶液を選択塗布するため、ステップS48Aでは、溶液塗布後に基板Pをガラス転移温度以下の温度で乾燥させて、溶剤成分を蒸発させて硬化させる処理も行う。ボトムゲート型TFTの場合、その形成されたゲート絶縁層が第2層となる。なお、ゲート絶縁層を基板Pの全面に塗布する場合は、ダイコーターによるスリット塗工、マイクログラビア印刷用のロール版による塗工の他に、絶縁材料となる溶液をミスト化して基板Pの表面に噴霧するミストデポジション法、絶縁材料となる溶液をスプレーする方法等も利用できる。
さらに、ゲート絶縁層を基板P上に選択的に形成するために、先のステップS41、S42、S44A、S45Aと同様の露光装置を用いた光アシストによるパターニング法を用いてもよい。露光装置を用いたパターニングでは、TFTのゲート絶縁層の形成位置を正確に設定したり、形成領域を微細化したりすることができるため、高性能なTFTが作れるといった利点がある。
ステップS48Aで第2層である絶縁層のパターンが形成された基板Pは、ステップS41と同様のプロセス装置によって第2層を覆うように感光性機能層が基板Pの全面に、または選択的に成膜される。そして、ステップS42と同様の露光装置によって、TFTのソース電極およびドレイン電極とそれに接続される配線とに対応した形状の第3層用のパターンが感光性機能層に露光(描画)される。このとき、第3層用のパターンは、第1層のパターン(ゲート電極と配線)に対して精密にアライメントされる必要がある。そのため、露光装置のアライメント顕微鏡AM等が検出したアライメントマークKsの位置情報に基づいて、露光ヘッドによるパターンの露光位置(描画位置)を基板P上の第1層のパターンに合わせるように補正して、第3層用のパターンを露光する。これにより、第3層用のパターン(ソース電極およびドレイン電極とそれに付随する配線)を、その下地に形成された第1層のパターン(ゲート電極とそれに付随する配線)に精密に位置合せして形成することができる。
次いで、感光性機能層として感光性シランカップリング材が用いられた場合は、ステップS44A、S45Aと同様のプロセス装置によって、親液性となった部分(露光された部分)の上に導電性インクが選択塗布されて、パターン(ソース電極およびドレイン電極とそれに付随する配線)が形成され、その後、アニール処理と乾燥処理が施される。一方、感光性機能層として感光性還元材が用いられた場合は、ステップS44B、S45Bと同様のプロセス装置によって、メッキ還元基が露呈した部分(露光された部分)の上にパラジウムやNiP、金(Au)によるパターン(ソース電極およびドレイン電極とそれに付随する配線)が析出され、その後、乾燥処理が施される。ボトムゲート型TFTの場合、そのソース電極およびドレイン電極とそれに付随する配線のパターン層が第3層となる。
第3層のパターン形成の際に、感光性機能層としてフォトレジストを用いる場合も、先の説明と同様に、レジスト層中の第3層のパターン形状に応じてエッチングされた部分(下地が露呈した部分)に、導電性インクを選択的に塗布したり(ステップS44A)、または、メッキ層(パラジウム、或いは、その上の金属層)を析出させたり(ステップS44B)することができる。
次のステップS46においてボトムゲート(BG)型TFTと判断されると、ステップS47Aにおいて、第2層を形成するか否かが判断される。ここでは、第2層も形成済みであるため、ステップS49Aに進む。ステップS49Aでは、半導体層形成装置によって、ソース電極とドレイン電極とのチャネル長の間に、TFTの半導体層となるパターンが形成される。この半導体層の形成は、半導体材料(例えば、有機半導体、酸化物半導体、カーボンナノチューブ等)に適した手法で行われる。この半導体層の形成工程は、一例として、版を用いた印刷方式、インクジェット方式等を用いて半導体材料のインクを選択的に塗布する方法で実施される。
その他、ソース電極とドレイン電極との間のチャネル長部分を含む局所領域を親液化し、その局所領域以外を撥液性の高い絶縁性の膜(レジスト層等でもよい)で覆い、チャネル長部分を含む局所領域に、半導体材料を含有した液体のミストを噴霧するミストデポジション法を用いて、半導体層を選択形成してもよい。このように、ステップS49Aの半導体層形成は湿式処理で行われることから、半導体層形成装置は、塗布または形成された半導体材料の溶液の溶剤除去や半導体結晶の配向のためにアニール処理(例えば、熱アニール、光アニール、電磁波アニール等)を行う機能も備える。このようにして形成された半導体層は、ボトムゲート型TFTの場合、第4層となる。
以上のようにして、第1層〜第4層のパターンが基板P上に積層されると、ボトムゲート型TFTとして機能する画素駆動素子(バックプレーン層)が完成するが、有機ELディスプレイ等では、第4層の上に有機ELの発光層を積層するため、基板Pは、次の製造工程(基板Pの全面への絶縁膜形成、発光層形成等の工程)に送られる。
一方、図11の製造方法によってトップゲート型TFTを作る場合、基板P上に最初に形成される第1層のパターンは、ソース/ドレイン電極とそれに接続される配線類であるが、その第1層形成の工程は、図11中のステップS40〜S42、S44A、S45Aの工程、または、ステップS40〜S42、S44B、S45Bの工程と同じである。トップゲート型TFTの場合、ステップS46の判断により、第2層を形成するか否かを判断するステップS47Bに進む。実際の工程では、第1層であるパターン層(ここでは、ソース/ドレイン電極とそれに接続される配線)が形成された直後では、自ずと第2層の形成工程が実施されるため、このステップS47Bの判断は不要である。
ステップS47Bで、第2層を形成すると判断されると、先のステップS49Aと同様の半導体層形成装置が、第1層のパターンであるソース電極とドレイン電極とのチャネル長の間に、TFTの半導体層となるパターンを形成する(ステップS49B)。先のステップS49Aで説明したように、この半導体層の形成工程は、一例として、版を用いた印刷方式、インクジェット方式等を用いて半導体材料のインクをチャネル長部分に選択的に塗布する方法で実施される。或いは、ソース電極とドレイン電極との間のチャネル長部分を含む局所領域を親液化し、その局所領域以外を撥液性の高い絶縁性の膜(レジスト層等でもよい)で覆い、チャネル長部分を含む局所領域に、半導体材料を含有した液体のミストを噴霧するミストデポジション法で実施される。ステップS49Bの半導体層形成においても、半導体層形成装置は、塗布または形成された半導体材料の溶液の溶剤除去や半導体結晶の配向のためにアニール処理(例えば、熱アニール、光アニール、電磁波アニール等)を行う機能を備える。このようにして形成された半導体層は、トップゲート型TFTの場合、第2層となる。
半導体層が形成されると、先のステップS48Aと同様の絶縁層成膜装置によって、第1層のパターン(ソース/ドレイン電極やその配線等)を基準にして、その上に積層すべきゲート絶縁層の溶液(絶縁性溶液)を選択塗布(パターニング)または全面塗布することで、ゲート絶縁層となるパターンを形成する(ステップS48B)。このゲート絶縁層の成膜工程は、版を使用した印刷方式、インクジェット方式等を用いて絶縁性溶液を塗布する湿式であるため、ステップS48Bでも、溶液塗布後に基板Pをガラス転移温度以下の温度で乾燥させて、溶剤成分を蒸発させて硬化させる処理が施される。
トップゲート型TFTの場合、その形成されたゲート絶縁層が第3層となる。なお、ゲート絶縁層を基板Pの全面に塗布する場合は、ダイコーターによるスリット塗工、マイクログラビア印刷用のロール版による塗工の他に、ミストデポジション法、スプレー法等も利用できる。さらに、ゲート絶縁層をTFTの形成領域に合わせて基板P上の局所領域に選択的に形成する場合、先のステップS41、S42、S44A、S45Aと同様の露光装置を用いた光アシストによるパターニング法を用いてもよい。
ステップS48Bでゲート絶縁層が形成されると、再び、ステップS41の感光機能層の成膜、ステップS42のパターン露光が行われる。ここでは、露光装置によって、トップゲート型TFTのゲート電極とそれに接続される配線類に対応したパターン形状の紫外線光が基板Pの感光機能層に照射される。その後、先のステップS44A、S45Aで説明した導電性インクによるパターン形成、または、先のステップS44B、S45Bで説明したメッキ析出によるパターン形成が行われ、ゲート電極とそれに接続される配線類が形成される。トップゲート型TFTの場合、ゲート電極とそれに接続される配線類が第4層となる。
以上、ステップS45AまたはステップS45Bの工程によって第4層が形成され、ステップS46の後のステップS47Bで、第2層が形成済みと判断されると、第1層〜第4層の積層構造によりトップゲート型TFTとして機能する画素駆動素子(バックプレーン層)が完成し、基板Pは有機ELディスプレイ等の発光層を積層するための次の製造工程に送られる。
以上、図11に示したTFTの製造工程において、パターニングの際に使われる露光装置を、先に説明した図2または図9に示した基板Pの逆転搬送可能な構成とすることで、TFTの性能や品質を左右する層間のパターンの重ね合せ精度を許容範囲内に収めつつ、長時間に渡って安定に製造ラインを稼働させることができる。
[第4の実施の形態]
先の第1、第2の形態で説明した露光装置(描画装置)は、図4のようなスポット走査型の描画ユニットUを搭載したマスクレス露光機であったが、その他に、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を使ってパターン描画を行うマスクレス露光機であってもよい。図12は、DMDを用いたマスクレス露光機の概略構成を示し、光源ユニット500から射出される紫外波長域の照明光は、ミラー501で反射されて、DMD502のマイクロミラー領域の全体を一様な強度で照明する。DMD502の2次元に配列されたマイクロミラーの各々は制御回路503によって偏向角を切り替えられる。その偏向角の切替えは、基板PのX方向の移動位置やY方向の位置ずれ、或いは、基板Pの伸縮や変形等に基づいて生成されるパターンデータ(CADデータ)に応じて行われる。そして、DMD502の多数のマイクロミラーのうち、基板PのX方向の送り位置に同期してパターン描画状態に切り替えられるマイクロミラーからの反射光は、投影レンズ504を通って基板P上に投射され、CADデータに対応した形状のパターンが基板P上に露光される。
基板Pは、投影レンズ504の下方に配置された支持テーブル506の平坦な支持表面に沿って支持される。支持テーブル506の支持表面と基板Pの裏面側との間には、数μm〜十数μm程度の厚みでエアベアリング層が形成されるように、支持テーブル506の支持面には気体噴出用の微細な孔が多数形成されたエアパット部が設けられている。そのエアパッド部は、通気性のある多孔質セラミック材でもよい。これによって、基板Pは支持テーブル506の支持面(平坦面)に非接触状態または低摩擦状態で平坦に支持された状態で、長手方向であるX方向に搬送される。なお、図12において、+X方向に向いた矢印ARfは、パターン露光時の基板Pの順方向への搬送方向を表し、−X方向に向いた矢印ARbは、基板Pの逆方向への搬送方向を表す。
例えば、基板P上に図7のように形成されたアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)は、基板Pの順方向(矢印ARf)への移動において、投影レンズ504の上流側に配置されたアライメント顕微鏡AMf(AMf1〜AMf3)と、投影レンズ504の下流側に配置されたアライメント顕微鏡AMg(AMg1〜AMg3)とのいずれか一方または両方によって検出される。ここで、アライメント顕微鏡AMf(AMf1〜AMf3)の各検出中心位置と、アライメント顕微鏡AMg(AMg1〜AMg3)の各検出中心位置と、DMD502からのパターン光の投影レンズ504による投射中心位置とのXY座標系内での相対的な位置関係(2次元的なベースライン長)は、予め精密に計測されて、キャリブレーションされているものとする。
その場合、基板Pを矢印ARbのように低速で逆転移動させる間に、下流側のアライメント顕微鏡AMg(AMg1〜AMg3)によって、基板P上の露光済み(または未露光)のデバイス形成領域Wに付随した複数のアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の各位置情報を、図5中のステップS4のように低速で、逆方向に搬送することで精密に再計測して、パターニング精度の劣化度合い(基板Pのローカルな変形や歪み、下地層のパターンの変形や歪み等)を再確認する。そして、そのパターニング精度が許容範囲から外れるような傾向を示す場合は、DMD502によるパターン描画のタイミングや描画用のCADデータを、それまでの補正状態から最適な補正状態に修正する。
図12において、上流側のアライメント顕微鏡AMf(AMf1〜AMf3)は、先の図2に示したアライメント顕微鏡AM1〜AM3、または、図9に示したアライメント顕微鏡AMa〜AMeと同様に使われる。さらに、図12のように、投影レンズ504によるDMD502からのパターン光の投影領域を挟んで、基板Pの送り方向(X方向)の上流側と下流側の各々にアライメント顕微鏡AMf、AMgを配置して、アライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の位置を逐次計測すると、投影レンズ504によるパターンの露光動作中に、露光領域を含む基板Pの部分的な伸縮や変形をリアルタイムに計測することができる。以上のように、露光位置(露光領域)を挟んで基板Pの搬送方向の上流側と下流側に2組のアライメント顕微鏡AMf、AMgを設ける構成は、先の図2および図9の露光装置にも同様に適用可能である。
[第4の実施の形態の変形例]
上記第4の実施の形態は、以下のように変形してもよい。図13は、図12の露光装置に適用される変形例を示し、支持テーブル506の支持面の一部に形成された小さな開口部506a(直径5mm程度)を介して、基板Pの裏面側からアライメント用の波長域を持った照明光をアライメント顕微鏡AMf(またはAMg)に向けて投射する補助照明機構が、支持テーブル506内に設けられる。補助照明機構は、アライメント顕微鏡AMf(またはAMg)の光軸と平行な光軸となるように配置されたレンズ系GC1、振幅分割または波面分割(偏光分離)のビームスプリッタBS、レンズ系GC2、基準レチクルRT、光ファイバーFB、LED等の光源LD1、LD2、および、光源点灯制御回路LECから構成される。
図13において、レンズ系GC1とレンズ系GC2によって、基板Pの表面(アライメントマークKsが形成される上面)と、基準レチクルRTとを光学的に共役にする結像光学系が構成され、光源LD2の光で照明される基準レチクルRT上の基準マーク(十字マーク等)からの光が、レンズ系GC2を通ってビームスプリッタBSで反射されてレンズ系GC1を通った後に、基板Pの透明部を介してアライメント顕微鏡AMf(またはAMg)に入射する。その際、基板Pの表面には、基準レチクルRTの基準マークの像(空間像)が形成され、アライメント顕微鏡AMf(またはAMg)は、アライメントマークKsと同様に基準マークの像を検出することができる。
ビームスプリッタBSは、レンズ系GC1、GC2による結像光学系の瞳面epの近くに配置され、光ファイバーFBの光射出端FBoは、ビームスプリッタBSを挟んでレンズ系GC1の反対側であって、瞳面epと対応した位置に配置される。したがって、光ファイバーFBの光入射端から入射して光射出端FBoから射出する光源LD1からの光は、レンズ系GC1によって基板Pを裏面側から一様な照度分布でケーラー照明することになり、アライメント顕微鏡AMf(またはAMg)は、基板P上のアライメントマークKsを透過照明で検出することができる。
ここで、基準レチクルRTの母材を、例えば支持テーブル506内でY方向(基板Pの幅方向)に細長くした石英板とし、その表面に、Y方向に並ぶ3つのアライメント顕微鏡AMf1〜AMf3(またはAMg1〜AMg3)の各配置に合せて、基準マークを設けておくと、基準レチクルRTを基準として3つのアライメント顕微鏡AMf1〜AMf3(またはAMg1〜AMg3)の相互の位置関係や相対的な位置誤差を精密に計測することができる。すなわち、アライメント顕微鏡AMf(またはAMg)の取付け位置の経時的な変化(ドリフト等)をときどき計測して、重ね合せ精度(パターニング精度)が劣化しないようにキャリブレーションすることができる。
そのために、光源点灯制御回路LECは、基板Pが搬送されている間、基板P上のアライメントマークKsや下地層が存在しない透明部分が、アライメント顕微鏡AMf(またはAMg)の直下にくるタイミングで、光源LD2を点灯し、光源LD1を消灯する。また、アライメント顕微鏡AMf(またはAMg)は、通常は落射照明のもとで被検出体としてのアライメントマークKs、或いは、下地層の特定のパターン部分を検出するが、被検出体の材料によっては、透過照明でアライメントマークKsや特定のパターン部分を検出することで、撮像した画像のコントラストを高めて位置計測の精度を高められることもある。その場合、光源点灯制御回路LECは、光源LD1を点灯し、光源LD2を消灯する。もちろん、落射照明のみでアライメントマークKs、或いは、下地層の特定のパターン部分を検出する場合、光源点灯制御回路LECは、光源LD1と光源LD2の両方を消灯する。
また、図13のような補助照明機構において、光源LD2を、例えば波長370nm以下の紫外波長域の光を発する紫外光源に切替えて、発光時間が極めて短く発光ピーク強度が大きい俊鋭なパルス光を発生させるようにすると、基準レチクルRT上の基準マークの像を、基板Pの表面に塗布された感光層(アライメントマークKsや下地層の無い部分)に、任意のタイミングでバック露光することができる。そこで、基板PをX方向に送りつつ、一定の時間毎に基準レチクルRT上の基準マーク(Y方向に離れた3ヶ所)の像を基板P上に順次露光しておくと、その基準マークの像の配列状態を調べることによって、支持テーブル506に対する基板Pの位置シフト、XY面内での傾き(蛇行)、2次元的な伸縮、或いは、速度変動等を把握することができる。
したがって、重ね合せ露光の際に、層ごとに形成されたアライメントマークKs(Ks1〜Ks3)の他に、前工程での露光時に補助照明機構によって基板P上に転写された基準レチクルRTの基準マークを、アライメント顕微鏡AMf(またはAMg)によって併せて計測することにより、基板P上の下地層のパターンのローカルな変形や歪みの基板長手方向における変化傾向をより高精度に予測することができる。