目標検体の濃度をインビボ、例えば、ユーザーの体液中で測定するように構成されている電気化学センシングシステムは、ユーザーの体内に挿入可能なセンサーを備え得る。そのようなセンサーは、目標検体の濃度の測定が望まれるたびに、体内に挿入され、体液と接触することができる。しかしながら、ユーザーの体内にセンサーを繰り返し挿入することは、煩雑な作業であり、ユーザーに不要な苦痛を及ぼすものである。
さらに、従来の電気化学センシングシステムは、目標検体を酸化または還元し、測定可能な電流を発生させるために、比較的高いバイアス電圧で分極されている複数の作用電極を備えていることが多い。また、そのような高いバイアス電圧は、干渉を起こす化学種、例えば、目標検体を含む試料中に存在する干渉を起こす電気活性種を酸化または還元させ得る。これは検査試料内の「雑音」(「干渉」と呼ばれることもある)の原因となり、信号対騒音比を大幅に低減させてしまう。
本明細書に記載された実施例は、一般的に、ウエアラブル(装着可能な)電気化学センサーおよびセンシングシステムに関し、より具体的には、挿入機構を備えるウエアラブル電気化学センシングシステムに関する。例えば、本明細書に記載された電気化学センシングシステムは、(1)例えば作用電極および/または参照電極のようなセンサーを、ユーザーの体内に容易に挿入可能とすること、(2)複雑な挿入機構を必要とせずに、ユーザーの体内にセンサーを挿入する手段を提供すること、(3)作用電極および参照電極を備え、1回の挿入でセンシング測定を可能とするような侵入部材を提供し、さらに、(4)電気化学センシングシステムがウエアラブルであり、ユーザーの快適さにあたえる影響が最小であり、小型、軽量、および人間工学的な設計を提供するという、いくつかの利点を提供する。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステムは、ユーザーに対して取り外し可能に取り付けられるよう構成されたハウジングを備えている。電気化学センシングシステムは、作用電極と、参照電極とを備え、作用電極および参照電極は、少なくとも部分的にハウジング内に配置されている。作用電極の少なくとも一部は、ロジウム金属を含んでいる。ハウジング内部には電気回路が配置されており、電気回路は、作用電極および参照電極に電子的に接続されている。該電気回路は、(a)目標検体を分解させるために作用電極に約0.4Vより低い電圧でバイアスをかけ、さらに、(b)目標検体の濃度に対応する電流を測定するように作動する。通信モジュールは、電気回路に電気的に接続されている。通信モジュールは、少なくとも一つのディスプレイが目標検体の濃度を表示し、さらに、電気回路と外部装置との間でデータを通信するように構成されている。作用電極および参照電極は、作用電極および参照電極が実質的にハウジング内に配置されている第1の構成と、作用電極および参照電極の少なくとも一部がハウジング外に配置されている第2の構成との間で移行可能である。一部の実施例においては、電気化学センシングシステムは、さらに、作用電極および参照電極を、第1の構成と第2の構成との間で移行させるように構成された挿入機構を含んでいる。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステムは、ロジウムを含む作用電極と、参照電極とを備えている。また、電気化学センシングシステムは、作用電極および参照電極をユーザーの身体に取り外し可能に接続するように構成されたハウジングを備えている。ハウジングは、ベース部分と、移動可能な部分とを含んでいる。移動可能な部分をベース部分に対して移動させることで、ハウジングは、非組立位置と、組立済位置との間を移動することができる。ハウジングのベース部分には電気回路が配置されており、電気回路は作用電極および参照電極と電子的に接続されている。該電気回路は、(a)目標検体を分解させるために作用電極に0.4Vより低い電圧でバイアスをかけ、さらに、(b)目標検体の濃度に対応する電流を測定するように作動する。通信モジュールは、ハウジングの移動可能な部分に設けられており、電気回路に電気的に接続されるように構成されている。作用電極および参照電極は、作用電極および参照電極が実質的にハウジング内に配置されている第1の構成と、作用電極および参照電極の少なくとも一部がハウジング外に配置されている第2の構成との間で移行できる。一部の実施例においては、ハウジングを非組立位置と組立済位置の間で移動させることによって、作用電極および参照電極が、第1の構成から第2の構成に移行する。一部の実施例においては、通信モジュールは、少なくとも1つのディスプレイが目標検体の濃度を表示し、さらに、電気回路と外部装置との間でデータを送信するように構成されている。
本明細書で使用されている“about”(約)とか“approximately”(おおよそ)という用語は、一般的には記述した数値のプラス、マイナス10%を意味し、例えば約250pmとは225pmから275pmを含み、約1,000pmとは900pmから1,100pmを含むものとする。
本明細書で使用されている“target analyte”(目標検体)という用語は、本明細書に記載された電気化学センシングシステムの実施例によって測定し得る化学物質または生化学物質を意味する。
本明細書で使用されている“electroactive”(電気活性(物質))という用語は、適正なバイアス電圧によってバイアスがかけられた電極によって電気化学的に酸化または還元され得る化学物質または生化学物質を意味する。
本明細書で使用されている“interferents”(干渉体)という用語は、ここに記載された電気化学センシングシステムの任意の実施例に含まれる作用電極において酸化還元反応を生じ、雑音を発生し得る、活性化学物質または生化学物資(目標検体を除く)を意味する。
図1は、実施例に係る、電気化学センシングシステム100の略図である。電気化学センシングシステム100は、作用電極110と、参照電極130と、電気回路140と、通信モジュール142と、ハウジング150とを含んでいる。電気化学センシングシステム100は、目標T上、例えば、ユーザー(例えば患者)の皮膚上に、取り外し可能に、すなわちウエアラブルに配置されるように構成されている。さらに、後に説明されるように、作用電極110および参照電極130は、作用電極110および参照電極130が実質的にハウジング150内に配置されている第1の構成と、作用電極110および参照電極130の少なくとも一部がハウジング150外に配置されている第2の構成との間で移行可能に構成されている。作用電極110および参照電極130は、目標T内部、例えば、目標Tの皮膚内に挿入され、体液、例えば、血液に接触し、体液内に含まれる目標検体を電気化学的に分解し、目標検体の濃度を測定することができる。
作用電極110は、ロジウム電極、または表面にロジウムを配置した電極を含むことができる。作用電極110は、作用電極110上の1つまたはそれ以上の干渉種による酸化還元作用を大幅に低減するよう、約0.4Vより低いバイアス電圧でバイアスされることによって、目標検体を酸化するように構成されている。特定の理論に限定されることなく、ロジウムは、目標検体を触媒的に酸化または還元することができるので、ロジウムが目標検体または目標検体の電気活性副産物を酸化または還元するためには、比較的低いバイアス電圧、例えば0.4Vより低い電圧で十分である。一部の実施例においては、バイアス電圧は、約0.35Vより低い、約0.3Vより低い、約0.25Vより低い、約0.20Vより低い、約0.15Vより低い、約0.1Vより低い、約0.05Vより低い、または約0V、さらにそれらのすべての範囲を含むいずれでもよい。バイアス電圧は、作用電極110上において、干渉体(例えば目標検体を含む試料に含まれている干渉する電気活性化学種)が酸化または還元されない程度の低いもので十分である。一部の実施例においては、作用電極110は、酸化ロジウム、例えば、RhO2、Rh(OH)3またはRh2O3から作成することができる。一部の実施例においては、ロジウムと、別の一種の金属、例えば、ルテニウム、白金、パラジウム、金、ニッケル、その他の適切な金属または合金との組み合わせを使用して、作用電極110を形成することができる。
一部の実施例においては、作用電極110は、純粋ロジウム電極であってもよい。一部の実施例において、作用電極110は、何らかの基板上にロジウムを配置したものであってもよい。その場合の基板は、ロジウムとの接着性が良い限り、任意の導電性材料、例えば、クローム、チタニウム、ニチノール、金、白金、ニッケル、パラジウム、ステンレス鋼、その他任意の適切な材料、またはそれらの組み合わせを用いて形成することができる。ロジウムは、任意の適切な方法で基板上に配置可能である。例えば、一部の実施例においては、ロジウムは、基板上をメッキしてもよい。基板上へのロジウムメッキのため、任意の適切なロジウム塩、例えば、硫化ロジウム溶液、塩化ロジウム溶液、その他の任意にロジウムメッキ溶液、またはそれらの組み合わせを使うことができる。析出電圧および/または時間を制御することにより、所定の厚さのロジウムを基板上に得ることができる。
一部の実施例においては、例えば、円筒形の作用電極110を形成する場合には、共有押出成型プロセスによって、基板上にロジウムを生成することができる。一部の実施例においては、物理的な蒸着プロセスによって、基板上にロジウムを形成することができる。そのようなプロセスは、例えば、鋳造または物理的蒸着(PVD)プロセス、例えば、電子ビーム蒸発、加熱蒸発、スパッタリング、原子層蒸着(ALD)、パルスレーザー蒸着(PLD)、イオン注入法、その他の任意の物理的蒸着プロセスまたはそれらの組み合わせによって行うことができる。一部の実施例においては、化学的蒸着(CVD)プロセスによって、基板上にロジウムを形成することができる。適切なプロセスは、例えば、低圧化学蒸着(LPCVD)、プラズマエンハンスド化学的蒸着(PECVD)、分子ビームエピタキシ(MBE)、その他の任意の化学的蒸着プロセスまたはそれらの組み合わせを含む。一部の実施例においては、自己集合によって基板上にロジウムを形成することができる。例えば、ロジウムナノ粒子を基板上に自己集合するように仕向けることにより、作用電極110を形成することができる。ロジウムおよび/または酸化ロジウムと高度な接着性を有する物質から形成される基板を使用することにより、任意の適切な基板、例えば、プラスチック基板(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)基板、シリコン基板、またはTEFLON(登録商標)基板)上に、ロジウムの蒸着層(またはロジウム電極)を形成することができる。
作用電極110は、任意の形状またはサイズに形成することができる。例えば、一部の実施例においては、作用電極110は、円形断面、だ円形断面、または多角形断面の棒状に形成することができる。一部の実施例においては、作用電極110は、中実の円筒形電極または中空の円筒形電極(例えば、管腔を形成する円筒形電極)として形成することができる。一部の実施例においては、作用電極110は、例えば、目標検体の濃度を測定するために動物や人体に挿入可能となるように、針型電極とすることもできる。一部の実施例においては、作用電極110は、平らな電極、例えば、平板、円盤、中実状の微細加工された電極(例えば、MEMS装置に使用されているようなもの)、またはスクリーン印刷された電極として形成されることができる。一部の実施例においては、作用電極110の少なくとも一部は、絶縁物質、例えば、ゴム、TEFLON(登録商標)、プラスチック、パリレン、二酸化ケイ素、窒化ケイ素その他の任意な絶縁物質またはそれらの組み合わせで形成することができる。絶縁材料は、例えば、作用電極110の作動エリアを規定するために使用されている。
一部の実施例においては、ロジウムの表面積を変更するため、例えば、作用電極110における酸化還元反応に寄与するより大きい表面積を提供する目的で、作用電極110に、表面変更プロセスを実行することができる。そのような表面変更プロセスは、例えば、エッチング(例えば、酸性またはアルカリ性溶液におけるエッチング)、電圧サイクリング(例えば、周期的ボルタンメトリー)、コロイド状ロジウムの電着、エレクトロスプレーイング、その他の適切は表面変更プロセスまたはそれらの組み合わせを含む。一部の実施例においては、ロジウム金属が酸化され、ロジウムの酸化物(酸化ロジウム)層を基板上に形成する。例えば、作用電極110の酸性槽への浸漬、酸素プラズマ、コロナ放電、その他任意の適切なプロセスに晒すことにより、作用電極110の表面上に堆積されたロジウムを酸化させることができる。
一部の実施例においては、バイオセンシング分子(図示せず)を、オプションとして、作用電極110上に配置することができる。そのような実施例の場合、目標検体は、非電気活性生体分子でもよい。そのような目標検体は、例えば、グルコース、サッカロース、グルタメート、ラクテート、コレステロール、アルコール、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、アルカリトランスアミナーゼ、アルカリフォスファターゼ、尿素、アスコルビン酸塩、ピルビン酸塩、L−アルギニン、クレアチン、コリン、またはその他の任意の生体分子を含む。それらのバイオセンシング分子は、非電気活性検体を触媒的に分解し、電気活性副産物を生成するように構成されることができる。それによって、電気活性副産物は、作用電極110において酸化または還元され、目標検体の濃度に対応する電流を生成することができる。一部の実施例においては、それらのバイオセンシング分子は、例えば、グルコースオキシダーゼ、グルタミン酸オキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、コレステロールオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、ピルビン酸オキシダーゼ、ミオキナーゼ、アルギナーゼ、コリンオキシダーゼ、クレアチンホスホキナーゼ、ホスハターゼ、その他任意の酵素またはそれらの組み合わせでもよい。例えば、グルコースオキシダーゼを、非電気活性物質であるグルコース(例えば、目標検体)の濃度を測定するために、作用電極110上に配置することができる。グルコースオキシダーゼは、酵素的にグルコースを分解し、グルコン酸と過酸化水素を発生させる。過酸化水素は、作用電極110上において約0.4Vより低い(例えば、約0.3V)ような低いバイアス電圧で酸化されて、グルコースの濃度に相関する電流を発生させる。
一部の実施例においては、非電気活性検体を分解し、電気活性副産物を生成するために、1つのバイオセンシング分子を使用することがある。一部の実施例においては、一連のバイオセンシング分子を、作用電極110上に配置することができる。例えば、第1のバイオセンシング分子が、非電気活性検体を分解して、中間的な非電気活性副産物を生成することができる。第2のバイオセンシング分子が、次に、少なくとも1つの中間的な非電気活性副産物を分解して、最終電気活性副産物を生成することができる。一部の実施例においては、バイオセンシング分子に、媒介体または変換体とも言うべき物質が含まれていることがある。その媒介体または変換体は、作用電極110への電子の運搬、または作用電極110からの電子の運搬を促進する役割を果たす中間電子担体として働き、これを用いることにより、酸化還元反応の実施に必要とされるバイアス電圧を低減することができる。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステム100は、複数の作用電極110、例えば、2個、3個、4個またはそれ以上の作用電極を備えていてもよい。各作用電極110は、参照電極130と、ペアとすることができる。一部の実施例においては、複数の作用電極のそれぞれが、互いに実質的に同一であり、同じ目標検体を測定するように構成することができる。この場合、各作用電子は冗長性を提供するので、たとえ1つの作用電極が誤動作を起こしても、目標検体は依然として他の作用電極により測定される。さらに、そのような実施例においては、最終的な測定の記録は、各電子からの信号の平均値となる。これは、例えば、繰り返し測定が高い信頼度で行われ得ることを意味する。さらに、同じ検体を2つの独立したシステムが測定することにより、システムは数学的に過剰処方されるので、較正(キャリブレーション)の必要性を排除することができる。一部の実施例においては、各作用電極110は、作用電極110に配置されたそれぞれ異なるバイオ分子120を含むことができる。例えば、第1の作用電極110は、グルコースを測定するためのグルコースオキシダーゼを含み、第2の作用電極110は、乳酸塩を測定するための乳酸デヒドロゲナーゼを含むことができる。このように、電気化学センシングシステム100は、複数の検体センサーとして使用されることができる。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステム100は、雑音を低減するように構成された複数の作用電極110を備えていてもよい。例えば、電気化学センシングシステム100は、第1の作用電極と、第2の作用電極とを備えることができる。第1の作用電極および第2の作用電極は、作用電極110、または本明細書において説明されているその他の任意の作用電極と、実質的に同一であってもよい。一部の実施例においては、第1の作用電極は、例えば、その上面に配置されたグルコースオキシダーゼのようなバイオセンシング分子120を含むことがある。第2の作用電極は、実質的に第1作用電極と同様であるが、ただし、第2の作用電極の上面には、バイオセンシング分子120が配置されていない。第1の作用電極および第2の作用電極のそれぞれは、参照電極130とペアにされ、同じ電圧、例えば、約+0.4Vでバイアスされることがある。そのような実施例においては、第1の作用電極は、目標検体の副産物の酸化還元による酸化還元電流と、雑音(例えば、電磁雑音、または任意の副次作用、例えば、干渉体の酸化還元反応による雑音)とを含む第1の信号を測定する。一方、第2の作用電極は、雑音にのみ対応する第2の信号(例えば、電流)を測定する。特定の理論に限定されることなく、実質的に同様の電極は、同じ雑音を測定するであろう。したがって、第2の作用電極で測定された雑音は、第1の作用電極で測定された雑音と実質的に同一であり得る。したがって、第1の作用電極で測定された雑音を除去するためには、第1の信号から第2の信号を引き算すればよい。これによって、雑音を実質的に含まない目標検体の電気化学酸化還元反応に対応する信号を、電気化学センシングシステム100によって測定することが可能となる。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステム100は、それぞれ異なるバイアス電圧によってバイアスされ、較正を不要とするように構成された複数の(例えば、2個、3個、4個、またはそれ以上の)作用電極を備えていてもよい。例えば、電気化学センシングシステム100は、第1の作用電極と、第2の作用電極とを含むことがある。第1の作用電極および第2の作用電極のそれぞれは、作用電極110、またはここにおいて説明されているその他の任意の作用電極と実質的に同一であってもよい。さらに、第1の作用電極および第2の作用電極は、互いに実質的に同一であってもよい。第1の作用電極は、第1の電圧、例えば、約+0.4Vでバイアスされる。第2の作用電極は、第1の電圧よりも高い第2の電圧、例えば、約+0.7Vでバイアスされる。特定の理論に限定されることなく、第1の作用電極は、目標検体の酸化還元電流を含み、かつ第1の大きさを有する第1の信号を測定することができる。第2の作用電極は、目標検体の酸化還元電流をも含む第2の信号を測定することができる。しかしながら、第2の電圧が第1の電圧より高いために、第2の電極によって測定された酸化還元信号の大きさは、第1の電極で測定された酸化還元信号の大きさより大きく、したがって、第2の信号は、第1の大きさよりも大きい第2の大きさを有する。第1の作用電極と第2の作用電極は、互いに実質的に同一であり、各電極で測定された信号値は、互いにレシオメトリック的に同一となっている。そのため、第1の信号および第2の信号は、共に同じ数式を解いているわけなので、両者を組み合わせることで、較正の必要性を除外することができる。
例えば、電気化学センサーの較正の仕組みは一般的に線形であり、以下の較正方程式で表すことができる。
Y=mX+b (1)
ここで、Xは目標検体の濃度を示し、Yは電流値であり、mは直線の勾配、および、bはy軸の切片である。第1の電極は、以下の第1の較正方程式を有し、
Y1=m1X+b1 (2)
第2の電極は、以下の第2の較正方程式を有し、
Y2=m2X+b2 (3)
特定の理論に限定されることなく、Y1、Y2およびb1、b2は、所定のバイアス電圧に基づき、単純な比率で相関づけられており、これにより外部の較正の必要性を除外することができる。
一部の実施例においては、バイオセンシング分子120は、合成酸化還元活性レセプター、例えば、ビオロゲンまたは共役ピリジニウムである。合成酸化還元活性レセプターは、異なる電子状態間を移行するように構成されることができる。例えば、合成酸化還元活性レセプターは、目標検体TAと結合するかまたは相互作用を起こすことにより、合成レセプターの還元電位を変化させることができる。合成酸化還元活性レセプターの目標検体TAとの結合または相互作用は、平衡反応であり、その場合、目標検体TAは分解しない。次に、合成酸化還元活性レセプターは、受け容れた電子を作用電極110に送り、異なる電子状態に移行する。これは、上述のように、電子回路140によって測定される電流を生成する。このようにして、合成酸化還元活性レセプターは、目標検体TAを消耗することなく電気化学的に目標検体TAをセンシングするために使用される。そのような合成酸化還元活性レセプターは、バイオ分子よりも高い安定性を有することができる。したがって、作用電極110の安定性はより高く、ドリフトはより少なく、より長い寿命が得られる。
バイオセンシング分子は、任意の適切な手段によって、作用電極110の表面上に配置可能である。一部の実施例においては、バイオセンシング分子を物理的に表面上に吸着させることができる。一部の実施例においては、例えば、チオール化合物を利用して、作用電極110上のロジウムの表面上に、バイオセンシング分子を物理的に吸着させることができる。一部の実施例においては、例えば、シラン化合物を利用して、作用電極110上のロジウムの表面に、バイオセンシング分子を共有結合的に結合させることができる。一部の実施例においては、例えば、逆向きに荷電した表面イオンを利用して、作用電極110上のロジウムの表面に、バイオセンシング分子をイオン的に結合させることができる。一部の実施例においては、バイオセンシング分子を多孔質の膜、例えばポリウレタン膜、グルタールアルデヒド膜、シリコーン膜、ゾルゲル膜、NAFION(登録商標)膜、プラズマ蒸着されたポリエチレン酸化物、ハイドロゲル膜、またはその他に任意の適切な膜またはそれらを組み合わせたものであり、作用電極110の外表面に設けられた膜内において、保持(サスペンド)させることができる。
一部の実施例においては、選択層(図示せず)が作用電極110上に配置、たとえばロジウムの表面とバイオセンシング分子との間に配置されていてもよい。選択層は、電気活性干渉体が作用電極110と接触して酸化還元作用が進むことを防止するよう構成されることができる。例えば、一部の実施例においては、選択層は、反対向きに荷電したイオン干渉体と反発するように構成される。例えば、NAFION(登録商標)選択層は、作用電極110の外表面とバイオセンシング分子120との間に配置されることができる。NAFION(登録商標)は、本質的にマイナス荷電されており、マイナスに荷電されている干渉体、例えば、アスコルビン酸と反発するが、中性の目標検体、例えば過酸化水素は、NAFION(登録商標)を通過して作用電極110まで拡散することができる。一部の実施例においては、選択層は、サイズ除外層、例えばセルロースアセテート層であってもよい。そのような選択層は、多孔性であり、孔のサイズを規定しており、小さい目標検体、例えば過酸化水素だけが選択層の孔を通り抜けて拡散し、一方、大きい干渉体、例えばアスコルビン酸をブロックする。
一部の実施例においては、バイオセンシング分子の上に、多孔質膜(図示せず)を配置することができる。多孔質膜は、目標検体のバイオセンシング分子への安定した拡散を作用電極110の動作寿命の全期間にわたり保証することができる。安定した拡散は、電気化学センシングシステム100によって測定される電流値におけるいかなる変化も、実質的に目標検体の濃度変化に基づくものであり、バイオセンシング分子に対する目標検体の変動束(フラックス)に基づくものではないことを保証することができる。一部の実施例においては、多孔質膜は、生体適合性を有し得る。また、一部の実施例においては、多孔質膜は、作用電極110の汚染、たとえば、タンパク質が生体試料内に存在することによる生物付着(バイオファウリング)を防止することができる。一部の実施例においては、多孔質膜は、バイオセンシング分子を活性酸素種から防護するための抗酸化物質、例えばカタラーゼを含むことがある。多孔質膜を形成するために使用される物質の例としては、例えば、ポリウレタン、シリコーン、グルタアルデヒド、ゾル−ゲル、シリコーン、ヒドロゲル、プラズマ蒸着ポリエチレン酸化物およびその他任意の適切な拡散性層またはそれらの組み合わせが挙げられる。
参照電極130は、電気回路140を介して、作用電極110と電子的に接続されている。参照電極130は、作用電極110に対して安定した参照電圧を提供し得ると共に、酸化または還元反応によって消耗され得ないような任意の適切な参照電極を含むことができ、その結果、長い品質期限を提供し、参照消耗による使用可能限度を持たず、また大幅に信号ドリフトを減少させることができるものである。参照電極130のための適切な物質としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化イリジウム、酸化ルテルニウム、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ロジウム、など)、金属ハロゲン化物、伝導性ポリマー(例えば、ポリエチレンジオキチオフェーン:ポリスチレンスルフォン酸塩(PEDOT:PSS)、その他任意の適切な安定した参照電極またはそれらの組み合わせを使用できる。一部の実施例においては、参照電極130は、ロジウムおよびその酸化物(例えば、RhO2、Rh(OH)3、Rh2O3など)を含み得る。一部の実施例においては、参照電極130は、イリジウムおよびその酸化物を含んでいてもよい。一部の実施例においては、参照電極130は、パラジウムおよびその酸化物を含んでいてもよい。
参照電極130は、任意の形状またはサイズに形成することができる。例えば、一部の実施例においては、参照電極130は、円形断面、楕円形断面、または多角形断面の棒状に形成することができる。一部の実施例においては、参照電極130は、例えば、目標検体の濃度を測定するために、作用電極110と共に動物や人体に挿入されるように構成された針型電極とすることもできる。一部の実施例においては、参照電極130は、平らな電極、例えば、平板、円盤、中実状の微細加工された電極(例えば、MEMS装置に使用されているようなもの)、またはスクリーン印刷された電極として形成されることもできる。一部の実施例においては、参照電極130の少なくとも一部は、絶縁物質、例えば、ゴム、TEFLON(登録商標)、プラスチック、ポリイミド、パリレン、シリコーン、二酸化ケイ素、その他の任意な絶縁物質またはそれらの組み合わせで絶縁されていてもよい。絶縁材料は、例えば、参照電極130の作動エリアを規定するために使用されている。一部の実施例においては、参照電極130は、作用電極110と同じ形状を持つことができる。
一部の実施例においては、参照電極の汚染(ファウリング)を防ぐために、多孔質膜(図示せず)が、参照電極130の表面上に形成されていてもよい。例えば、目標検体が検出されている生物学的溶液(例えば血液)中の蛋白質である場合は、蛋白質が参照電極の表面に付着し、それによって参照電極130を汚染し、参照電極130のフォーマル電圧がドリフトする原因となり得る。多孔質膜、例えば、生体適合性の多孔質膜は、蛋白質が参照電極に付着することを防ぎ、結果として参照電極の汚染を防止することができる。多孔質膜を形成するために使用される物質の例としては、例えば、ポリウレタン、グルタアルデヒド、ゾル−ゲル、シリコーン、ハイドロゲル、プラズマ蒸着ポリエチレン酸化物およびその他任意の適切な拡散性層またはそれらの組み合わせを挙げることができる。
図1に示すように、電気化学センシングシステム100は、作用電極110と、参照電極130とを備え、電気化学センシングシステム100は、2極センサーシステム内で作動するように構成されている。したがって、参照電極130は、疑似参照電極として機能し、反対にバイアスされる作用電極110に対するバイアス電圧として基準電圧を提供し、同時に、目標検体を含む試料(例えば液体またはガス状試料)への電子、または試料からの電子を伝達する。従来の疑似参照電極、例えば、銀/塩化銀(Ag/AgCl)電極は、一般的に、一定の参照電圧を維持しない。むしろ、参照電圧は、外部状況に応じて予期可能に変動し、例えば、電解質のpHおよび温度は、参照電位に影響を及ぼす。もし状況が既知であれば、電位は計算可能であり、電極を参照として使用することができるが、しかしながら、多くの場合、信頼できる測定のためには、較正測定を必要とする。多くの従来の疑似参照電極、例えばAg/AgCl電極は、限定的なpHまたは温度範囲内においてのみ作動可能である。さらに、多くの従来の疑似参照電極(例えばAg/AgCl電極)は、疑似参照電極が作用電極のために参照電圧を提供するだけでなく、試料への電子、または試料からの電子を伝達するゆえに、電気化学反応中に消耗してしまう。これによって、参照電極物質の酸化/還元が生じ、結果的に参照電極物質を消耗させてしまう。したがって、従来の参照電極の寿命は、一般的に短い。
対照的に、本明細書に記述された金属酸化物または金属/酸化金属(たとえば、ロジウム酸化物)から形成された疑似参照電極130は、周囲条件、例えばpHや温度に対して鈍感であり、結果的に安定した基準電圧を提供することができる。また、参照電極130は、相対的に不活性であり、その結果、参照電極130は消耗されにくく、比較的長い寿命を保つ。さらに、参照電極130は、より多くの有効な電子伝達を減少および/または提供して、それにより、従来の参照電極(例えばAg/AgCl参照電極)と比較して、電気化学測定の感度を大幅に高めることもできる。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステム100は、さらに、第3のカウンター電極(図示せず)を備えていてもよい。そのような実施例においては、電気化学センシングシステム100は、3電極設定において稼働され、カウンター電極を経由して、試料からまたは試料に対して電子を伝達させることができる。そのような実施例においては、参照電極130は、作用電極110に電子的参照を提供することにのみに機能する。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステム100は、侵入部材(図示せず)を備えていてもよい。侵入部材は、たとえば、鋭利な先端を有する針または先が尖った部材であり、目標Tに挿入、例えば皮膚に刺して体液に接触できるようにしたものである。作用電極110は、侵入部材の第1の表面に設けられ、参照電極130は、侵入部材の第2の表面に設けられる。このようにして、作用電極110および参照電極130は、侵入部材に沿って目標Tに挿入されて体液に接触し、電気化学的に目標検体を分解する。一部の実施例においては、侵入部材は、尖った先端と、管部を規定する円筒部材(例えば円形断面を有するもの)とを含む。例えば、侵入部材は、中空針(例えば30番針)を含んでいる。作用電極110は、侵入部材の第1の表面、例えば管腔を構成する内表面に配置される。さらに、参照電極130は、侵入部材の第2の表面、例えば侵入部材の外表面に配置される。そのような実施例においては、侵入部材は、絶縁部材(例えば、プラスチック)によって構成される。一部の実施例においては、侵入部材は、導電材料、例えば金属または合金から構成される。そのような実施例においては、作用電極110と参照電極130との間に絶縁層を設ける。また、侵入部材は、1つまたは複数の開口部を侵入部材の側面に有している。開口部は、例えば管腔から空気を逃がすことにより、体液を侵入部材の管腔内に取り入れることができるように構成されていてもよい。これにより、作用電極110と参照電極130との間の流体接触を体液経由で成立させ、それによって作用電極110上における目標検体の電気化学分解を可能にする。
一部の実施例においては、作用電極110が第1の表面の第1の場所に配置され、参照電極130が第1の表面の第2の場所に配置されるように、侵入部材が構成されてもよい。例えば、作用電極110は、侵入部材の外表面の第1の半分上に設けられ、参照電極130は、外表面の第2の半分上に設けられてもよい。そのような実施例においては、侵入部材は、管腔を規定しない中実の部材である。
電気回路140は、予め設定された作動電圧、例えば、約+0.4Vより低い電圧で作用電極110にバイアスをかけて、目標検体または目標検体の電気活性副産物の酸化または還元による酸化還元電流を測定するように構成されている。一部の実施例においては、電気回路140は、電流を、増幅された電圧に変換するように構成されたトランスインピーダンス増幅器回路を含んでいてもよい。一部の実施例においては、電気回路140は、入力された電流測定値をデジタル化するように構成されたデジタルコンバーターを含んでいてもよい。例えば、電気回路140は、電圧測定において雑音除去を増加することができる差動アナログデジタルコンバーターを含んでいてもよい。バイアス電圧は、疑似陰性レンジを提供するように構成されたアナログデジタルコンバーターのローエンド差動入力へ伝達されることができる。これは、例えば、雑音が低測定レンジに留まるとき、(例えば、センシング限度を強化するために)デジタルフィルタリングを精密に保たつことを可能にする。一部の実施例においては、電流回路140は、測定信号を増幅するように構成された作動増幅器を含んでいてもよい。一部の実施例においては、電気回路140は、信号雑音を大幅に低減するために構成されたフィルタリング回路、例えば、ローパスフィルター、ハイパスフィルター、バンドパスフィルター、その他任意のフィルター回路、またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。一部の実施例においては、電気回路140は、ポテンショスタット回路、例えば、作用電極110を所定の電圧でバイアスするように構成されたプログラマブルポテンショスタット回路を含んでいてもよい。例えば、ポテンショスタット回路は、作用電極110に約−0.6Vから約+0.5V、例えば、約−0.5V、−0.4V、−0.3V、−0.2V、−0.1V、0V、+0.1V、+0.2V、+0.3V、または約+0.4V、それらすべての間のレンジを含むバイアス電圧で、バイアスをかけることができるように構成されていてもよい。
一部の実施例においては、電気回路140は、プロセッサー、例えばマイクロコントローラー、マイクロプロセッサー、ASICチップ、ARMチップ、またはプログラマブルロジックコントローラー(PLC)を含むことがある。プロセッサーは、信号処理アルゴリズム、例えば、バンドパスフィルター、ローパスフィルター、その他任意の信号処理アルゴリズムまたはそれらの組み合わせを含むことがある。一部の実施例においては、プロセッサーは、バイアス電圧をリアルタイムで制御するように、例えば、酸化還元反応の1つまたは複数のパラメータをリアルタイムで制御するように構成されることがある。そのようなパラメータは、例えば、電気化学汚染(ファウリング)の効果を消去または最小にするため、および/またはリアルタイム構成を容易にするために使用可能な電気化学反応レートおよび電気化学ダイナミックレンジを含むことがある。一部の実施例においては、電気回路140は、酸化還元電流データ、バイアス電圧データ、ユーザーログ、または任意のその他の電気化学反応に関連する情報の少なくとも1つを記憶するように構成されたメモリを含むことがある。また、一部の実施例においては、メモリは、参照シグネチャー、例えば、較正方程式を記憶するように構成されることがある。そのような実施例においては、プロセッサーは、測定された信号(たとえば、酸化還元電流)を参照シグネチャーと関連付けて、目標検体の濃度を決定するように構成される。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステム100は、電気回路140と電気的に接続された通信モジュール142を備えていてもよい。通信モジュール142は、遠隔装置、例えば、スマートフォンアプリ、ローカルコンピューターおよび/または遠隔サーバーとの双方向通信が可能なように構成されることができる。例えば、通信モジュール142は、電気回路140から外部装置に、目標検体濃度データを通信することができる。一部の実施例においては、通信モジュール142は、外部装置との有線通信を可能にする通信インターフェース、例えば、USBまたはFreeWireインターフェースを提供するような通信インターフェースを含むことがある。一部の実施例においては、通信モジュール142は、外部装置との無線通信を可能にする手段、例えば、Wi−Fi、Bluetooth(登録商標)、ANT+、低出力Bluetooth(登録商標)、Zigbeeなどを含むことがある。一部の実施例においては、通信モジュール142は、情報、例えば、参照シグネチャーまたはセンシング履歴を記憶し、また近距離無線通信(NFC)装置によって記憶された情報を読み/または更新することを可能にするように構成されたRFIDチップを含むことがある。一部の実施例においては、電気化学センシングシステム100は、電源、例えば、電気回路140、通信モジュール142または電気化学センシングシステム100に含まれるその他任意の電子部品に電力を供給するように構成された充電式バッテリーを含むことがある。
一部の実施例においては、通信モジュール142は、検体の濃度を表示するように構成されたディスプレイを含むことがある。一部の実施例においては、ディスプレイは、その他の情報、例えば、使用履歴、残存バッテリー寿命、無線接続状態、および/またはビジュアルリマインダーをユーザーに通信するように構成されることがある。一部の実施例においては、ディスプレイは、可動インジケーター(例えば、デジタルニードル)および色分けされた静止領域を含むダイアルゲージのように構成されることもある。例えば、色分けされた領域は、赤、緑、黄、またはその他の色分けされた識別領域を含み、それぞれの領域は、目標検体の濃度、バンド、および/またはレンジを表すものである。例えば、一部の実施例においては、目標検体は、グルコースであり、色分けされた領域は、低血糖、高血糖、または正常血糖であることをユーザーに知らせる。さらに、インジケーターの移動速度は、目標検体(例えば、グルコース)の濃度の変化率を表示するために使用することができる。例えば、ダイアルゲージディスプレイの一方側に向かうインジケーターのゴースティング(すなわち移動)の移動速度は、目標検体の濃度の増加の遅速を示す。同様に、ダイアルゲージディスプレイの反対側に向かうインジケーターのゴーストの移動速度は、目標検体の濃度の低減の遅速を示す。インジケーターに動きがないことは、目標検体の濃度が安定していることを示す。
一部の実施例においては、ディスプレイにホイール型の表示(例えば、デジタルホイールディスプレイ)が含まれることがある。例えば、そのディスプレイには、色分けされた領域と、静止的インジケーター(例えば指針)とを含む移動ホイールが含まれることがある。色分けされた領域は、赤、緑、黄、またはその他の色分けされた識別領域を含み、それぞれの領域は、目標検体の濃度、バンド、またはレンジを表すものである。例えば、一部の実施例においては、目標検体は、グルコースであり、色分けされた領域は、低血糖、高血糖、または正常血糖であることをユーザーに知らせる。さらに、ホイールの移動速度は、目標検体(例えば、グルコース)の濃度の変化率を表示するために使用することができる。例えば、ディスプレイの第1の方向の回転速度は、目標検体の濃度の増加の遅速を示す。同様に、ホイールの第2の方向(すなわち反対方向)の回転速度は、目標検体の濃度の低減の遅速を示す。ディスプレイホイールに動きがないことは、目標検体の濃度が安定していることを示す。一部の実施例においては、ホイールタイプディスプレイは、インジケーターの上または下に1つまたは複数のシェード領域を含んでおり、グルコースの変化率を表すことに使われる。
一部の実施例においては、通信モジュール142が音響および触覚による警報を伝えるために、マイクロホンおよび/または振動メカニズムを含むこともある。一部の実施例においては、通信モジュール142は、ユーザー入力手段として、例えば、電気化学センシングシステム100の電源オン/オフ、電気化学センシングシステム100のリセット、電気化学センシングシステム100の外部装置(例えば、スマートフォン)との間のトリガー通信の入力用インターフェースの少なくとも1つを提供するためのボタン、スイッチ、および/またはタッチスクリーンを備えていることがある。さらに、入力インターフェースは、ビジュアル式表示(例えば、ダイアルゲージおよび/またはホイール型ディスプレイ)および数字式表示の間の表示切替に使われることもある。
電気化学センシングシステム100の様々な部品は、目標T(例えば、ユーザーの皮膚)に対し取り外し可能に取り付けられるよう構成されたハウジング150内に配置されている。ハウジング150は、電気化学センシングシステム100の部品を内包するために必要な内容積を規定している。電気化学センシングシステム100の様々な部品は、ハウジング150に固定的に、または取り外し可能的に接続される。取り外し可能に接着するための接着剤が、ハウジング150の下面の少なくとも一部に塗布され、例えば、電気化学センシングシステム100を目標T、例えば、患者の皮膚に接着できるようにする。接着剤は、非毒性で、生体適合性であり、人体の皮膚からはがし得るものである。電気化学センシングシステム100を使用する直前まで接着剤を保護するために、取り外し可能な保護カバーで接着剤を覆い、ハウジング150を皮膚に取り付ける直前に取り外す。代替方法として、接着剤を感熱性または感圧性を有するものとし、装置を皮膚に当てた後に、接着剤を加熱または加圧してもよい。接着剤の例としては、これに限られるものではないが、一般的に皮膚用の包帯などに用いられるアクリル樹脂をベースとする医療用接着剤を挙げることができる。しかしながら、接着剤は必ずしも必要ではなく、省略することも可能である、その場合は、ハウジングは、その他の任意の方法で、皮膚、あるいは人体にとりつけることもできる。例えば、紐やバンドを使用することができる。
ハウジング150は、比較的軽量で、柔軟で、しかも丈夫な材料から形成することができる。ハウジング150は、剛性を与える部分の材料と、柔軟性を与える部分の材料と組み合わせで形成することができる。材料の例としては、これに限られるものではないが、プラスチックおよびゴム材料、例えば、ポリスチレン、ポリブチレン、カーボネイト、ウレタンゴム、ブチレンゴム、シリコーン、およびその他の任意な適性のある材料を使用することができる。ハウジング150の表面は、相対的に滑らかで、カーブした側面を有し、および/または人間工学的な形状とすることができる。例えば、ハウジング150の1つまたはそれ以上の部分を、ドーム形または滴形にすることで、ハウジング150を取り扱いが容易でユーザーの衣服の中に隠しやすいものとすることができる。
一部の実施例においては、ハウジング150は、ユーザーが係合(はめ込み)させることができる変形可能な部分を備えていてもよい。例えば、ハウジング150は、硬質のベース部分と、変形可能な、ハウジング150の屋根またはふたの部分とから構成することもできる。変形可能な部分は、作用電極110および参照電極130が第1の構成(すなわち、作用電極110および参照電極130がハウジングによって規定された内部空間に実質的に収まっている状態)にある非変形位置と、変形可能な部分が作用電極110および参照電極130を第2の構成(すなわち、作用電極110および参照電極130の少なくとも一部がハウジング外に位置する状態)に移行させた変形済位置との間を移動することができる。例えば、ユーザーは、手動で変形可能な部分を変形させることができる。一部の実施例においては、作動機構、例えば、ピストン、カム、スプリング、プッシュロッド、液圧、ガス圧、圧電アクチュエーター、電気化学アクチュエーター、その他任意の作動機構、またはそれらの組み合わせを使用して、変形可能な部分を変形させることができる。一部の実施例においては、変形可能な部分および/またはベース部分は、ロック機構、例えば、ロック、ラッチ、ノッチ、溝、くぼみ、変形可能な部分を変形された部分内に維持することができるフリクションフィットまたはスナップフィット機構を含むことができる。さらに、警報またはその他のインジケーター(例えば、聴覚的、視覚的、または触知的インジケーター)が電気化学センシングシステムに組み込まれて、変形可能な部分が完全に変形していることをユーザーに知らせてもよい。
一部の実施例においては、ハウジング150は、引き込み部材、たとえばスプリング(圧縮ばね、引張ばね、ねじりばね、皿ばね、板ばねなど)、ピストン、カム、機械的リンク、またはその他の任意の引き込み部材を含み、それら部材は変形可能な部分を、変形済位置から非変形位置に戻すように構成されている。
一部の実施例においては、ハウジング150は、さらに、作用電極110および参照電極130を第1の構成と第2の構成との間で移行させるように構成された挿入機構(図示せず)を含んでいてもよい。例えば、一部の実施例においては、挿入機構は、ハウジング内に規定された管腔を含んでいる。電気化学センシングシステム100の1つまたはそれ以上の部品、例えば、作用電極110、参照電極130、電気回路140、および/または通信モジュール140は、ハウジング内で規定された管腔内でスライド可能に配置されている。それらの1つまたはそれ以上の部品に働く力、例えば、変形可能な部分を変形させる力は、それらの1つまたはそれ以上の部品を管腔内で変位させることができる。その力が加わることにより、作用電極110および参照電極130は、第1の構成から、ハウジング150内に規定された1つまたはそれ以上の開口を介して第2の構成、例えば、目標Tに挿入された状態に移行する。一部の実施例においては、通信モジュール142は、取り外し可能に管腔内に配置され、作用電極110および参照電極130を第2の構成に移行させることができるように構成されていてもよい。例えば、作用電極110および参照電極130を第1の構成にし、さらに、通信モジュール142をハウジング150外に配置することができる。通信モジュール142は、管腔内に挿入され、通信モジュール142の管腔内への挿入は、作用電極110および参照電極130を第2の構成に移行させることが可能である。そのような実施例においては、通信モジュール142は、管腔内にスナップ式でフィットまたはフリクション式でフィットしてもよい。
一部の実施例においては、侵入機構を自動化することができる。例えば、挿入機構は、挿入機構を作動させるためのボタン、ラッチ、プルタブ、電気スイッチ、またはその他任意の起動メカニズムを備えていてもよい。また、一部の実施例においては、挿入機構は、起動機構として、例えば、電動機により駆動されるピストン、機械的および/または機械力学的ローラー、圧電アクチュエーター、スプリング、ガス圧チャンバー、液圧チャンバー、カム、その他任意の適切な装置またはそれらの組み合わせを含んでいてもよい。そのような実施例においては、起動メカニズムは、電気化学センシングシステム100の1つまたはそれ以上の部品と係合し、作用電極110および参照電極130を第1の構成と第2の構成との間で移行させるように構成されている。
一部の実施例においては、ハウジング150は、ベース部分と、移動可能な部分とを含んでいる。移動可能な部分をベース部分に対して移動させることで、ハウジング150は、非組立位置と組立済位置との間を移動することができる。例えば、一部の実施例においては、移動可能な部分がベース部分に対して、例えば、ヒンジによって回動可能に取り付けられている。そのような実施例においては、移動可能な部分は、回動取り付け部を中心として、非組立位置と組立済位置との間で回転可能である。一部の実施例においては、移動可能な部分は、ベース部分上でスライド可能に配置される。一部の実施例においては、ハウジング150は、移動可能な部分を非組立位置から組立済位置に移動することにより、作用電極110および参照電極130を、第1の構成から第2の構成に移行させることができる。電気回路140は、ハウジング150のベース部分に配置されており、例えば、ベース部分に固定的に取り付けられていてもよい。通信回路142は、ハウジング150の移動可能な部分に配置されており、例えば、移動可能な部分に、取り外し可能に取り付けられていてもよい。
使用の際においては、電気化学センシングシステム100は、目標Tに配置(例えば、ユーザーの皮膚と接触)される。挿入機構は、本明細書に記述されているいずれの方法でも実行可能であり、作用電極110および参照電極130を目標T内に挿入し、作用電極110および参照電極130と目標Tの体液(すなわち、血液または間質流体)との液体接触をもたらすことができる。電気回路140は、約0.4Vより低い電圧で作用電極にバイアスをかけることにより、本明細書に説明されているように目標検体、または目標検体の電気活性副産物を電気化学的に分解することが可能である。酸化還元電流は、電気回路140で測定され、また目標検体の濃度に相関づけられる。作用電極110および参照電極130は、電気化学センシングが終わったら、目標T内に挿入したままに留めておくか、またはハウジング150に引き戻される。その後、通信モジュール142は、測定した濃度、目標検体の濃度変化率、および/または目標検体の濃度に基づいた目標Tの生理学的状態を表示する。通信モジュール142は、外部装置、例えば、スマートフォンアプリ、ローカルコンピューター、または遠隔サーバーに濃度データを通信することもできる。一部の実施例においては、電気化学センシングシステム100は、目標T上に配置されたままでリアルタイムの電気化学測定を長時間、例えば、2週間またはそれ以上にわたって行うことができる。一部の実施例においては、電気化学センシングシステム100は、1回限りの測定を行い、1回限りの測定を終えた後、取り外されることもある。一部の実施例においては、電気化学センシングシステムの一部は、廃棄可能となっていてもよい。例えば、作用電極110および参照電極130は、所定の時間および/または回数の測定後に、電気化学センシングシステム100から切り離され、新しい電極セットと交換されてもよい。
以上、様々な一般的原理について述べてきたが、ここからは、これらのコンセプトの実施例について述べる。これらの実施例は、単にいくつかの例に過ぎず、これら以外に数多くの他の構成の電気化学センシングシステムも考えられる。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステムは、変形可能な部分を有するハウジングを備えている。図2Aおよび図2Bを参照すると、電気化学センシングシステム200は、作用電極210と、参照電極230と、電気回路240と、通信モジュール242と、ハウジング250とを含んでいる。電気化学センシングシステム200は、目標、例えば、ユーザーの皮膚に取り付けられるよう構成されており、電気化学センシングシステム200がウエアラブルとなるように構成されている。
作用電極210は、ロジウム電極、または表面にロジウムを配置した電極を含む。作用電極210は、作用電極210上の1つまたはそれ以上の干渉種による酸化還元作用を大幅に低減するよう、約0.4Vより低いバイアス電圧でバイアスされることによって目標検体を酸化するように構成されている。作用電極210は、電気化学センシングシステム100に関連して説明された作用電極110と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。一部の実施例においては、バイオセンシング分子は、作用電極210上に配置される。バイオセンシング分子は、非電気活性検体を分解して、電気活性副産物を生成するように働く。一部の実施例においては、バイオセンシング分子は、合成還元酸化活性レセプターを含む。バイオセンシング分子は、電気化学センシングシステム100に含まれているバイオセンシング分子と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。
参照電極230は、電気回路240を介して、作用電極210に電子的に接続されている。参照電極230は、作用電極210に対して安定した基準電圧を提供し得ると共に、酸化または還元反応によって消耗され得ないような任意の適切な参照電極を含むことができ、その結果、より長い品質期限を提供し、参照消耗による使用可能限度を持たず、また大幅に信号ドリフトを減少することができる。例えば、参照電客230は、ロジウムおよびその酸化物、イリジウムおよびその酸化物、パラジウムおよびその酸化物を含むことがある。参照電極230は、電気化学センシングシステム100に関連して説明された参照電極130と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。
電気回路240は、予め設定された作動電圧、例えば、約0.4Vより低い電圧で作用電極210にバイアスをかけて、目標検体または目標検体の電気活性副産物の酸化または還元による酸化還元電流を測定するように構成されている。電気回路240は、電気化学センシングシステム100に関連して説明された電気回路140と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。通信モジュール242は、電気回路240に電気的に接続されている。通信モジュール242は、電気化学センシングシステム100に関連して説明された通信モジュール142と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。
ハウジング250は、ベース部分252と、変形可能な部分254とを含んでいる。ハウジング250は、電気化学センシングシステム200の部品を内包するために必要な内部空間256を規定している。変形可能な部分254は、ハウジング250の屋根を規定している。アーチ状の形状を有するように示された変形可能な部分254は、実質的には平坦である。ハウジング250は、電気化学センシングシステム100に含まれるハウジング150に関して説明されたものと同様に、任意の材質で形成され、任意の形状を有することができる。ハウジング250のベース部分252は、ハウジング250をユーザーの身体に取り外し可能に装着するための接着剤、またはハウジング150について説明したその他任意の適切な装着メカニズムを含むことができる。
ハウジング250は、作用電極210および参照電極230を目標、例えばユーザーの皮膚に対して取り外し可能に取り付けるように構成されている。例えば、図2Aに示した第1の構成においては、作用電極210および参照電極230は、ハウジング250によって規定された内部空間256内に実質的に配置されており、変形可能な部分254は、非変形位置に位置している。ユーザーは、変形可能な部分254に対して、矢印F1によって示された方向への力を加える。これにより、電気化学センシングシステム200は、図2Bに示した第2の構成に移行する。第2の構成においては、力F1が、変形可能な部分254を変形済位置に移動させる。変形可能な部分254は、電気回路240に対して力を加えて、電気回路240を矢印Aで示した方向に変位させる。電気回路240の変位は、作用電極210および参照電極230を移動させ、作用電極210および参照電極230の少なくとも一部が、開口257および258を経由して、それぞれ内部空間256外に突出される。例えば、ハウジング250のベース部分252をユーザーの皮膚の上に配置し、第2の構成において、作用電極210および参照電極230がユーザーの皮膚に挿入され、体液、例えば、血液と接触させることができる。その後、作用電極230は、本明細書において説明するように、目標検体を電気化学的にセンシングするために、約0.4Vより低いバイアス電圧によりバイアスされる。電気回路240が変位されていることが第2構成において示されているが、一部の実施例においては、電気回路240は、ハウジング250に固定的に配置されていてもよい。そのような実施例の場合、移動部材は、例えば、プラットフォーム、スラブ、またはその他任意の移動部材が、作用電極210および参照電極230と組み合わされてもよい。移動部材は、作用電極210および参照電極230を移動させ、第2の構成に移行させるように構成される。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステムは、侵入部材を備えていてもよい。図3Aおよび図3Bを参照すると、電気化学センシングシステム300は、侵入部材302と、電気回路340と、通信モジュール342と、ハウジング350とを備えている。電気化学センシングシステム300は、目標、例えば、ユーザーの皮膚に取り付けられるよう構成されており、電気化学センシングシステム300がウエアラブルとなるように構成されている。
図4Aおよび図4Bを参照すると、侵入部材302は、ユーザーの皮膚に侵入するように構成されており、作用電極310と、参照電極330とを備えている。図4Aおよび図4Bに示すように、侵入部材302は、管腔305を規定する円筒部材304を備えている。侵入部材302の先端は、尖った先端303を形成しており、侵入部材302は、針(例えば、30番の針)に似ている。これによって、侵入部材302がユーザーの皮膚内に容易に侵入することができる。作用電極310は、管腔305を規定する円筒部材304の内表面上に配置されている。参照電極330は、円筒部材304の外表面上に配置されている。円筒部材304は、丈夫な絶縁材料、例えば、プラスチック、酸化ケイ素、窒化ケイ素、セラミックス、またはその他任意の適切な絶縁材料で形成することができる。代わりに、円筒部材304は、作用電極310と参照電極330との電気的短絡を防ぐための絶縁層で被覆された導体物質(例えば、金属)で形成することができる。一組の開口306が円筒部材302の側壁上に設けられている。開口306は、例えば、管腔305内への空気の導入を許すことよって、管腔305への体液の導入を助ける。これによって、作用電極310と参照電極330の間での液体接触を可能とし、体液内に含まれる目標検体の電気化学センシングが可能となる。開口306は、侵入部材302の先端から距離d、例えば、約1.3mm(0.05インチ)の距離に配置されることができる。開口306は、幅w、例えば約0.64mm(0.025インチ)の幅の細長い形状となっている。ここでは細長い形状として示されているが、開口306は、任意の形状であってもよく、例えば、円形、四角形、三角形、楕円形、またはその他の任意の形状またはサイズとすることもできる。
作用電極310は、作用電極310上の1つまたはそれ以上の干渉種による酸化還元作用を大幅に低減するよう、約0.4Vより低いバイアス電圧でバイアスされることによって目標検体を酸化するように構成されている。作用電極310は、電気化学センシングシステム100に含まれる作用電極110について述べたものと同様な材料やプロセスで形成することが可能である。さらに、電気化学センシングシステム100に含まれた作用電極110について述べたものと同様なバイオセンシング分子またはその他の任意な機能層を、作用電極310上に配置することが可能である。参照電極330は、電気回路340を経由して作用電極310に電子的に接続されている。参照電極330は、作用電極310のために安定した参照電圧を提供し、酸化または還元によって消耗されないように構成されている。参照電極330は、電気化学センシングシステム100に含まれた作用電極130について述べたものと同様な材料やプロセスで形成され、1つまたはそれ以上の機能層を含むようにすることが可能である。
電気回路340は、予め設定された作動電圧、例えば、約0.4Vより低い電圧で作用電極310にバイアスをかけて、目標検体または目標検体の電気活性副産物の酸化または還元による酸化還元電流を測定するように構成されている。電気回路340は、電気化学センシングシステム100に関連して説明された電位回路140と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。通信モジュール342は、電気回路340に電気的に接続されている。通信モジュール342は、電気化学センシングシステム100に関連して説明された通信モジュール142と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。
ハウジング350は、ベース部分352と、変形可能な部分354とを備えている。ハウジング350は、電気化学センシングシステム300の部品を内包するために必要な内容積356を規定している。作用電極350は、電気化学センシングシステム200に関連して説明されたハウジング250と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。第1の構成において、侵入部材302、並びに、それによって、作用電極310および参照電極330は、実質的に内部空間356内に配置される。ユーザーは、変形可能な部分354に対して、矢印F2で示されている方向に力をかけて、変形可能な部分354を変形させ、変形済位置に移動させることよって、電気化学センシングシステム300を、図3Bに示された第2の構成に移行させることが可能である。言い換えれば、変形可能な部分354は、電気回路340に力を加えて、電気回路340を矢印Bの方向に変位させることができる。電気回路340の変位は、侵入部材302の第1の構成から第2の構成への移行を生じせしめ、それにより、侵入部材302の少なくとも一部は、ベース部分352に規定された開口358を経由して内部空間356外に突出することになる。例えば、ハウジング350のベース部分352は、ユーザーの皮膚上に配置され、第2の構成においては、侵入部材302の少なくとも一部が、ユーザーの皮膚に挿入されることになる。これによって、侵入部材302の上に配置された作用電極310および参照電極330を、体液に接触させることが可能になる。このようにして、体液内に存在する目標検体の電気化学測定が行われる。
侵入部材は、ここでは中空な部材として示されているが、一部の実施例においては、中実の部材であってもよい。例えば、図5は、中実の部材(例えば円柱)を備える侵入部材402を示している。侵入部材402の末端部は、ユーザーの皮膚への挿入を容易とするように、鋭利な先端403を形成している。作用電極410は、侵入部材402の外表面の第1の表面(例えば第1の側面)上に設けられ、参照電極430は、侵入部材402の第2の表面(例えば第2の側面)上に設けるように構成されている。侵入部材402は、絶縁材、例えば、プラスチック、ポリイミド、シリコーン、酸化ケイ素、窒化ケイ素、セラミックスなどで形成されており、または、作用電極410と参照電極430との電気的短絡を防止するための絶縁材で被覆されている。作用電極410および作用電極430は、電気化学センシングシステム302に関連して説明された作用電極310および参照電極330と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。
一部の実施例においては、作用電極および参照電極は、共に侵入部材の同じ表面上に配置されていてもよい。例えば、図6は、中実の部材(例えば円柱)を備え、鋭利な先端503を規定する侵入部材502を示している。作用電極510は、侵入部材502の第1の表面の第1の部分に配置され、参照電極530は、侵入部材502の同じ第1の表面の第2の部分に配置され、したがって、作用電極510および参照電極530は、同じ表面に配置される。作用電極510および作用電極530は、電気化学センシングシステム302に関連して説明された作用電極310および参照電極330と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステム300は、2つの侵入部材を備えていてもよい。図7Aおよび図7Bを参照すると、一部の実施例においては、電気化学センシングシステム300は、互いに実質的に同一な第1の侵入部材302aと、第2の侵入部材302bとを含んでいる。第1の侵入部材302aおよび第2の侵入部材302bのそれぞれは、本明細書において記述された侵入部材302、402または502のいずれとも実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。一部の実施例においては、第1の侵入部材302aに含まれる作用電極は、第1の目標検体をセンシングするように構成され、第2の侵入部材302bに含まれる作用電極は、第2の目標検体をセンシングするように構成されている。一部の実施例においては、第1の作用電極および第2の作用電極は、異なるセンシング化学薬品、例えば、本明細書に記述されたような雑音を低減し、または較正を排除するための薬品を含むこともある。一部の実施例においては、第1の作用電極および第2の作用電極は、同じセンシング化学薬品を有し、同じ目標検体をセンシングするように構成されていてもよい。そのような実施例においては、第1の侵入部材に含まれる第1の作用電極は、第1のバイアス電位(例えば、約+0.4V)でバイアスがかけられ、第2の侵入部材に含まれる第2の作用電極は、第1のバイアス電位よりも高い第2の電位(例えば、約+0.7V)でバイアスがかけられていてもよい。第1の作用電極は、目標検体の酸化還元電流を含み、かつ第1の大きさを有する第1の信号を測定することができる。第2の作用電極は、目標検体の酸化還元電流をも含む第2の信号を測定することができる。しかしながら、第2の電圧が第1の電圧より高いために、第2の電極によって測定された酸化還元信号の大きさは、第1の電極で測定された酸化還元信号の大きさより大きく、したがって、第2の信号値が第1の信号値よりも大きい。第1の作用電極および第2の作用電極は、互いに実質的に同一であり、各電極で測定された信号値は、ほぼ同一であるので、互いにラシオメトリック的に関連している。したがって、本明細書で説明したように、外部の較正を除外することが可能である。
第1の構成において、第1の侵入部材302aおよび第2の侵入部材302bは、内部空間356内に配置されている。ユーザーは、変形可能な部分354に対して、矢印F2で示されている方向に力をかけて、変形可能な部分354を変形済位置まで変形させ、これによって、電気化学センシングシステム300を、図7Bに示された第2の構成に移行させることが可能である。別の言い方をすれば、変形可能な部分354は、電気回路340に対して力を加え、電気回路340を矢印Bで示した方向に変位させることができる。電気回路340の変位は、第1の侵入部材302aおよび第2の侵入部材302bを、第1の構成から第2の構成へ移行させ、これにより、第1の侵入部材302aおよび第2の侵入部材302bの少なくとも一部は、それぞれベース部分352に規定された第1の開口357と第2の開口358を経由して、内部空間356外に突出することになる。例えば、ハウジング350のベース部分352は、ユーザーの皮膚上に配置され、第2の構成においては、第1の侵入部材302aおよび第2の侵入部材302bの少なくとも一部が、ユーザーの皮膚に挿入されることになる。このようにして、体液内に存在する目標検体(または複数の目標検体)の電気化学測定が行われる。
一部の実施例においては、第1の侵入部材302aと第2の侵入部材302bとを有するとして示されている電気化学センシングシステム300は、第1の作用電極と、第2の作用電極とを備える単独の侵入部材を備えていてもよい。例えば、図8は、電気化学センシングシステム300またはその他の本明細書に記述された電気化学センシングシステムに含まれる侵入部材602の垂直断面を示している。侵入部材602は、管腔605を規定する略円筒形の部材である。侵入部材602の末端は、尖った先端603を形成しており、侵入部材302は、針(例えば、30番の針)に似ている。これによって、侵入部材602をユーザーの皮膚に容易に侵入させることができる。第1の作用電極610aは、侵入部材602の外表面上に設けられ、第2の作用電極610bは、侵入部材602の内面上に設けられている。参照電極630は、第1の作用電極610aと第2の作用電極610bとの間に配置されている。参照電極630は、第1の絶縁層604aによって、第1の作用電極610aから電気的に絶縁されている。同様に、参照電極630は、第2の絶縁層604bによって、第2の作用電極610bから電気的に絶縁されている。侵入部材602は、任意の適切なプロセス、例えば共射出成型、金属蒸着、電気メッキ、その他の適切なプロセスまたはそれらの組合せを使用して、形成することができる。
1つまたはそれ以上の開口606は、侵入部材602の側壁上に規定されている。開口606は、例えば、管腔605内への空気の導入を許すことよって、管腔605への体液の導入を助ける。これによって、第1の作用電極610aと、第2の作用電極610bと、参照電極630との間で液体接触を可能とし、体液内に含まれる目標検体の電気化学センシングが可能となる。第1の作用電極610aおよび第2の作用電極610bのそれぞれは、参照電極630とペアにされる。一部の実施例においては、第1の作用電極610aおよび第2の作用電極610bは、異なるセンシング化学薬品、例えば、本明細書に記述するように、雑音を低減し、または較正を排除する薬品を含んでいてもよい。一部の実施例においては、第1の作用電極610aおよび第2の作用電極610bは、同じ検体を検査するように構成され、しかも異なるバイアス電圧で分極されることによって、本明細書に説明したように外部の較正を不要とすることができる。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステムは、引き戻し機構を含むこともある。図9Aおよび図9Bを参照すると、電気化学センシングシステム600は、侵入部材602と、電気回路640と、通信モジュール642と、ハウジング650と、引き戻し機構659とを備えている。電気化学センシングシステム600は、目標、例えば、ユーザーの皮膚に取り付けられるよう構成されており、電気化学センシングシステム600がウエアラブルとなるように構成されている。
侵入部材602は、本明細書に詳述したように、ユーザーの皮膚を貫通するように構成され、第1の作用電極と、第2の作用電極と、参照電極とを備えている。一部の実施例においては、侵入部材602を備えているように示されているが、電気化学センシングシステムは、その他の任意の侵入部材、例えば侵入部材302、402、502またはここに説明されたその他の任意の侵入部材をも備えることができる。
作用電極は、作用電極上の1つまたはそれ以上の干渉種による酸化還元作用を大幅に低減するよう、約0.4Vより低いバイアス電圧でバイアスされることによって目標検体を酸化するように構成されている。この作用電極は、作用電極110、210、310、またはここに説明されたその他の任意の作用電極と実質的に同一であり、したがってここでは詳しい説明は繰り返さない。参照電極は、電気回路640を介して、作用電極と電子的に接続されている。この参照電極は、参照電極130、230、330、またはここに説明されたその他の任意の作用電極と実質的に同一であり、したがってここでは詳しい説明は繰り返さない。
電気回路640は、予め設定された作動電圧、例えば、約0.4Vより低い電圧で作用電極にバイアスをかけて、目標検体または目標検体の電気活性副産物の酸化または還元による酸化還元電流を測定するように構成されている。電気回路640は、電気化学センシングシステム100に関連して説明された電位回路140と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。通信モジュール642は、電気回路640に電気的に接続されている。通信モジュール642は、電気化学センシングシステム100に含まれた通信モジュール142と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。
ハウジング650は、ベース部分652と、変形可能な部分654とを備え、これらの間に電気化学センシングシステム600の部品を内包するために必要な内容積656を規定している。ハウジング650は、電気化学センシングシステム200に関連して説明されたハウジング250と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。引き戻し機構659は、ハウジング650内に配置されており、例えば、ハウジング650のベース652の内面上に配置されている。例えば、引き戻し機構659は、バイアシング部材、例えば、スプリング(すなわち、圧縮ばね、引張ばね、ねじりば、ばね座金、皿ばね、テーパーばね、任意の形態のばね)、任意のバイアシング部材、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
引き戻し機構659は、侵入部材602の少なくとも一部が、内部空間656外に配置された後に、侵入部材602を内部空間656内に引き戻すように構成されることができる。例えば、図9Aに示された第1の構成においては、侵入部材602は、ハウジング650により規定された内部空間656内に実質的に配置されており、変形可能な部分654は、非変形位置に存在する。ユーザーは、変形可能な部分654に対して、矢印F3によって示された方向に力を加える。これにより、電気化学センシングシステム600は、図9Bに示した第2の構成に移行する。第2の構成においては、力F3は変形可能な部分654を、変形済位置に移動させることができる。変形可能な部分654は、電気回路240に力を加えて、電気回路640を矢印Dで示された方向に変位させることができる。電気回路640の変位は、侵入部材602を移動させ、侵入部材602の少なくとも一部が、開口658を経由して内部空間656外に押し出される。例えば、ハウジング650のベース部分652をユーザーの皮膚の上に配置し、第2の構成において、侵入部材602に含まれる作用電極および参照電極を、ユーザーの皮膚に挿入し、体液、例えば、血液と接触させることができる。
電気回路640の変位は、図9Bに示されたように、第2の構成において、引き戻し機構659にバイアスをかける。電気化学測定を実施した後、ユーザーは、力F3を解除する。すると、引き戻し機構659は、電気回路640を矢印Dで示された方向に対向する方向に動かすことができる。これによって、変形可能な部分654を非変形位置に移動させ、また、侵入部材602は、内部空間656内に引戻され、侵入部材602は、実質的に内部空間656内に位置することになる。このようにして、侵入部材602は、第1の構成に戻ることができる。一部の実施例においては、引き戻し機構659は、一定時間後に後退するように構成することができる。例えば、ユーザーがそれまでかけていた力F3を解除したとき、引き戻し機構659が作動して、変形可能な部分654を非変形位置に移動させ、侵入部材602を、内部空間656内に引戻すように電気回路640が動作するまでには、時間的な遅れが生じてもよい。一部の実施例においては、引き戻し機構659は、一定時間後に徐々に引き戻すように構成されている。例えば、ユーザーがそれまでかけていた力F3を解除したとき、引き戻し機構659は、時間をかけて徐々に動作して、変形可能な部分654を非変形位置に移動させ、侵入部材602を、内部空間656内に引き戻してもよい。そのような実施例においては、作用電極および参照電極が、電気化学測定を実施するのに十分な時間が得られる。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステムは、取り外し可能な通信モジュールを備えていてもよい。図10Aおよび図10Bを参照すると、電気化学センシングシステム700は、侵入部材702と、電気回路740と、通信モジュール742と、ハウジング750とを含んでいる。電気化学センシングシステム700は目標、例えば、ユーザーの皮膚に取り付けられるよう構成ており、電気化学センシングシステム700がウエアラブルとなるように構成されている。
侵入部材702は、本明細書に詳述したように、ユーザーの皮膚を貫通するように構成され、作用電極と、参照電極とを含んでいる。侵入部材702は、侵入部材302、402、502、またはここに説明されたその他の任意の侵入部材と実質的に同一であり、したがってここでは詳しい説明は繰り返さない。
作用電極は、作用電極上の1つまたはそれ以上の干渉種による酸化還元作用を大幅に低減するよう、約0.4Vより低いバイアス電圧でバイアスされることによって目標検体を酸化するように構成されている。この作用電極は、作用電極110、210、310、またはここに説明されたその他の任意の作用電極と実質的に同一であり、したがってここでは詳しい説明は繰り返さない。参照電極は、電気回路740を介して、作用電極と電子的に接続されている。この参照電極は、参照電極130、230、330、またはここに説明されたその他の任意の作用電極と実質的に同一であり、したがってここでは詳しい説明は繰り返さない。
電気回路740は、予め設定された作動電圧、例えば、約0.4Vより低い電圧で作用電極にバイアスをかけて、目標検体または目標検体の電気活性副産物の酸化または還元による酸化還元電流を測定するように構成されている。電気回路740は、電気化学センシングシステム100に関連して説明された電位回路140と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。
通信モジュール742は、取り外し可能にハウジング内に配置されており、電気回路740に電気的に接続されている。通信モジュール642は、電気化学センシングシステム100に含まれる通信モジュール142と実質的に同一である。通信モジュール742は、連結部材747、例えば、ノッチ、溝、くぼみ、ロッキング部材、その他の連結部材またはそれらの組み合わせを含むことができ、それらは連結機構757、例えば、ノッチ、溝、くぼみ、またはそれらの組み合わせと契合するように構成されたものであり、本明細書に説明するようにハウジング750によって規定された管腔754内に組み込まれている。
ハウジング750は、内部空間756を規定する硬質のベース部分752を備えている。侵入部材702および電気回路740は、内部空間756内にスライド可能に配置されている。ハウジング750は、電気化学センシングシステム100に含まれるハウジング150に関して説明されたものと同様に、任意の材質で形成され、任意の形状とサイズを持つことができる。ハウジング750は、通信モジュール742を受け入れるように構成された凹部754を規定している。連結機構757は、凹部754の側壁に設けられており、通信モジュール742に含まれている連結部材747と係合するように構成されており、さらに、通信モジュール742をハウジング750に取り外し可能に連結している。第1の構成においては、通信モジュール742は、実質的に凹部754外に配置されることができ、侵入部材702は、実質的に内部空間756内に配置することができる。ユーザーは、通信モジュール742Aを、凹部754内に矢印F4に示された方向に挿入することができる。それによって、通信モジュール742は、電気回路740と接続され、電気通信が確立される。挿入力(矢印F4で図示された力)は、電気回路740およびそれと接続された侵入部材702を、矢印Eで図示された方向に変位させ、第2の構成においては、侵入部材702の少なくとも一部は、内部空間756外に突出する状態となる。第2の構成においては、通信モジュール742に含まれる連結部材747は、凹部754に含まれている連結機構757と連結し、力F4が解除された後は、通信モジュール742は、凹部754に連結され、凹部754内に配置されたままとなる。一部の実施例においては、通信モジュール742は、第2の構成において、ハウジング750に固定的に連結されたままとなる。一部の実施例においては、第2の構成において、通信モジュール742は、ハウジング750に取り外し可能に連結される(すなわち、他のセンシングシステムで再利用が可能とするために)。一部の実施例においては、連結機構747を有するとして示されているが、通信モジュール742は、摩擦結合機構を使って、ハウジング750と連結してもよい。一部の実施例においては、引き戻し機構、例えば、引き戻し機構659は、電気化学センシングシステム700内に含まれていてもよい。そのような実施例においては、通信モジュール742が連結を解除し、凹部754から取り外されると、引き戻し機構は、侵入部材702を第1の構成に戻すように構成されている。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステムは、作用電極および参照電極を、ユーザーの身体に対して取り外し可能に取り付けられるように構成されたハウジングを備えている。図11から図13を参照すると、電気化学センシングシステム800は、侵入部材802と、ハウジング850とを備えている。ハウジング850は、ベース部分852と、移動可能な部分854とを備えている。電気化学センシングシステム800は、目標、例えば、ユーザーの皮膚に取り付けられるよう構成されており、電気化学センシングシステム800がウエアラブルとなるように構成されている。
侵入部材802は、本明細書に詳述したように、ユーザーの皮膚を貫通するように構成され、作用電極および参照電極を含んでいる。侵入部材802は、侵入部材302、402、502、またはここに説明されたその他の任意の侵入部材と実質的に同一であり、したがってここでは詳しい説明は繰り返さない。
電気回路は、ハウジングのベース部分852または移動可能な部分854に配置されることができる。電気回路は、予め設定された作動電圧、例えば、約0.4Vより低い電圧で作用電極にバイアスをかけて、目標検体または目標検体の電気活性副産物の酸化または還元による酸化還元電流を測定するように構成されている。電気回路は、電気回路140、240、340、またはここに説明されたその他の任意の電気回路と実質的に同一であり、したがってここでは詳しい説明は繰り返さない。
通信モジュール842は、ハウジングの移動可能な部分854に配置されることができる。通信モジュール842は、電気化学センシングシステム100に関連して説明された通信モジュール142と実質的に同一であり、したがってここではそれ以上に詳しくは説明しない。一部の実施例においては、通信モジュール842は、移動可能な部分854外に配置されている一部を有しているが、通信モジュール842は、実質的に移動可能な部分854内に配置されることができる。
ベース部分852(図13)の底面853は、ユーザーの皮膚上に配置することが可能である。底面853は、電気化学センシングシステム100に含まれるハウジング150に関して説明したように、ハウジング850を、ユーザーの皮膚に取り外し可能に取り付けるための接着剤またはその他任意の適切な取付機構を含むことができる。移動可能な部分854は、ヒンジ855によって、ベース部分852に回動可能に取り付けられる。移動可能な部分854をベース部分852に対して移動させることで、移動可能な部分854を、非組立位置と組立済位置の間を移動させるように構成することができる。例えば、図11に示された第1の構成において、移動可能な部分854が非組立位置に存在している。この位置においては、侵入部材802は、ハウジング内部、例えば、ベース部分852の開口858内に存在し、侵入部材802のいかなる部分も、ハウジング850外には存在していない。ユーザーは、移動可能な部分854を、ヒンジ855周りの矢印Gで示された方向に回転させることによって、移動可能な部分854を移動させることができる。これによって、移動可能な部分854は、組立済位置(図12および図13)に移動し、侵入部材802を第2の構成に移行させる。第2の構成においては、侵入部材802の少なくとも一部が、ベース部材852に規定された開口858を経由して、ハウジング850外に突出する。このようにして、侵入部材をユーザーの皮膚に挿入することができる。侵入部材802を引き込むためには、移動可能な部分854を非組立位置に移動させる。これは、例えば、電気化学センシングシステム800の1つまたはそれ以上の部品、例えば、侵入部材802を変位させることに対応する。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステムは、取り外し可能に接続された通信モジュールを備えていてもよい。図14から図16を参照すると、電気化学センシングシステム900は、侵入部材902と、通信モジュール942と、ハウジング950とを備えている。ハウジング950は、硬質の(曲がらない)ベース部分952と、硬質の(曲がらない)カバー部分954とを備えている。電気化学センシングシステム900は、目標、例えば、ユーザーの皮膚に取り付けられるよう構成されており、電気化学センシングシステム900がウエアラブルとなるように構成されている。
侵入部材902は、本明細書に詳述したように、ユーザーの皮膚を貫通するように構成され、作用電極と、参照電極とを備えている。侵入部材902は、侵入部材302、402、502、またはここに説明されたその他の任意の侵入部材と実質的に同一であり、したがってここでは詳しい説明は繰り返さない。
電気回路は、ハウジング950のベース部分952に配置されることができる。電気回路は、予め設定された作動電圧、例えば、約0.4Vより低い電圧で作用電極にバイアスをかけて、目標検体または目標検体の電気活性副産物の酸化または還元による酸化還元電流を測定するように構成されている。電気回路は、電気回路140、240、340、またはここに説明されたその他の任意の電気回路と実質的に同一であり、したがってここでは詳しい説明は繰り返さない。
通信モジュール942は、本明細書に説明されたように、カバー部分954に取り外し可能に配置されることができる。通信モジュール942は、通信モジュール142、242、742、およびここに説明されたその他の任意の通信モジュールと実質的に同一である。
ハウジング950に含まれるベース部分952およびカバー部分954は、それらの間に電気化学センシングシステム900の1つまたはそれ以上の部品を配置するための内部空間を規定することができる。ベース部分952(図16)の底面953は、ユーザーの皮膚上に配置されることが可能である。底面953は、電気化学センシングシステム100に含まれるハウジング150に関して説明したように、取り外し可能にハウジング950をユーザーの皮膚に取り付けるための接着剤またはその他任意の適切な連携機構を含むことができる。カバー部分954は、ベース部分952に固定的に接続される。カバー部分954は、アーチ状の表面を備えており、カバー部分954は、ドーム形状を規定し、ハウジング950は、滴形状に類似することになる。カバー部分954は、通信モジュール942をぴったり受け入れるように構成された空洞956を規定している。空洞956に通信モジュール942を配置することにより、侵入部材902の少なくとも一部が、ベース部分952に規定された開口953から突出して(図17)、例えば、ユーザーの皮膚への挿入が可能になる。例えば、図14に示された第1の構成において、通信モジュール942は、空洞956外に配置され、侵入部材902は、実質的にハウジング950内に配置されている。ユーザーは、通信モジュール942を空洞956内に挿入することができる。通信モジュール942と空洞956は、通信モジュールを取り外し可能にカバー部分952に連結するための連結機構、例えば、ノッチ、溝、くぼみ、スナップフィット機構、または他任意の連結機構を含むことができる。通信モジュール942は、アーチ状の表面を備え、その結果、通信モジュール942の上端が空洞956の上端と同一面となり、さらに、通信モジュール942の露出面もまたドーム形状を規定することができる。通信モジュール942は、空洞956の通信モジュール942への挿入(図15)され、侵入部材902を第2構成(図16)へ移行させ、その結果、侵入部材902の少なくとも一部が、開口958を経由してハウジング950外に突出するよう構成されている。このようにして、侵入部材をユーザーの皮膚に挿入することができる。一部の実施例においては、引き戻し機構、例えば、バイアシング部材(例えば、スプリング、例えば圧縮ばね、引張ばね、ねじりばね、ばね座金、皿ばね、テーパーばね、その他任意のばね)または任意の引き戻し機構がハウジング950内に配置される。例えば、通信モジュール942が連結を解き、凹部956から取り外されると、引き戻し機構は、侵入部材を第1の構成に引き戻すように構成されている。これは、例えば、電気化学センシングシステム900の1つまたはそれ以上の部品、例えば、侵入部材902の変位を可能とすることである。
一部の実施例においては、電気化学センシングシステム、例えば、電気化学センシングシステム100、800、900またはここに説明した任意の電気化学センシングシステムに含まれる通信モジュールは、ダイアルゲージディスプレイを備えている。図17は、本明細書で説明した通信モジュールのいずれにおいても含まれ得るディスプレイ1070を示している。ディスプレイ1070は、静的ダイアルゲージ1072と、可動インジケーター1078、例えば、デジタルニードルとを含んでいる。ダイアルゲージ1072は、3色に色分けされたゾーンを含んでいる。ゾーンAは赤色、ゾーンBは緑色、ゾーンCは黄色に色分けされている。各ゾーンは、特定の濃度レンジ、バンド、または目標検体のレンジに対応している。一部の実施例においては、色分けゾーンがユーザーの生理学的状態を示すように構成されることもある。例えば、一部の実施例においては、目標検体はグルコースであり、色分けされた領域は低血糖、高血糖、または正常血糖であることをユーザーに知らせる。さらに、インジケーター1078の変位速度は、目標検体(例えば、グルコース)の濃度の変化率を表示するために使用することができる。例えば、ダイアルゲージ1072の一方側(例えば、ゾーンC)に向かうインジケーター1078のゴースト(すなわち移動)の遅速は、目標検体の濃度の増加の遅速を示す。同様に、ダイアルゲージ1072の反対側に向かうインジケーターのゴースト(すなわち移動)の移動速度は、目標検体の濃度の低減の遅速を示す。インジケーター1078(例えば、ゾーンBにおいて静止)に動きがないことは、目標検体の濃度が安定していることを示す。
一部の実施例においては、通信モジュールにホイール型の表示(例えば、デジタルホイールディスプレイ)が含まれることがある。図18を参照すると、ディスプレイ2070は、第1のホイール2072と、第2のホイール2074と、第3のホイール2076と、静的インジケーター2078とを含んでいる。各ホイールは、可動であり、矢印Hで示したように、時計方向または半時計方向に回転するように構成されている。インジケーター2078と並んで配置されたホイールのそれぞれに示された情報は、目標検定の濃度、目標検定の変化率、およびユーザーの生理学的状態に関する情報をユーザーに提供する。例えば、第1のホイール2072は、目標検体の濃度、濃度レンジ、バンドまたは数値の情報を表示するように構成することができる。第2のホイール2074は、目標検体の濃度の変化率に関する情報を表示するように構成することができる。例えば、第2のホイール2074は、「低速」という言葉とともに、上下方向を指す矢印を示すことで、それぞれ、目標検体の濃度の緩慢な増減を示すことができる。同様に、第2のホイール2074は、「高速」という言葉とともに、上下方向を指す矢印を示すことで、それぞれ、目標検体の濃度の急速な増減を示すことができる。「中速」という言葉は目標検体の濃度に変化がないことを示すことができる。第3のホイール2076は、ユーザーの生理学的状態の情報を示すように構成することができ、色分けゾーン、例えば赤、黄、および緑、またはその他の任意の色に色分けしたゾーンを含むことができる。各ゾーンは、ユーザーの生理学的状態に対応することができる。例えば、目標検体がグルコースであり、色分けされた領域は低血糖、高血糖、または正常血糖であることをユーザーに知らせる。一部の実施例においては、インジケーター2078は、直線でつながった2つの矢印を示すことがあるが、インジケーター2078は各ホイール上で目標検体データを示すために背景をハイライトしてもよい。
ここに説明されたウエアラブル電気化学センシングシステム、たとえば、電気化学センシングシステム100、200、800、900、またはここで説明されたその他の任意の電気化学センシングシステムは体液、例えば、血液中の目標検体の濃度に関するリアルタイムの情報を提供するのに使用することができる。例えば、一部の実施例においては、目標検体はグルコースであってもよい。本明細書に説明された任意のウエアラブル電気化学センシングシステムも、ユーザーの体液、例えば、血液のグルコース濃度をモニターするために使用することができる。電気化学センシングシステム(例えば、ここで説明した任意の電気化学センシングシステム)は、血液グルコースのリアルタイムレベルをユーザーに知らせることができる。ユーザー、例えば、糖尿病患者は、この情報によって血糖値および食物の選択を管理することができる。一部の実施例においては、ここに説明された任意の電気化学センシングシステムによって測定されたリアルタイムグルコース濃度データは、例えば、ユーザーにとってエクササイズの強度を決定すること、体重減少を管理するための日々のグルコースレベルのモニタリング、またはその他の任意の健康管理プログラムに役立てるために使用することができる。以下は、ユーザーが望む情報を示すための、本明細書に説明された任意のウエアラブル電気化学センシングシステムで測定されたリアルタイムグルコースモニタリングデータの様々な例、またはユーザーが総合的な健康と生活向上のために利用できる情報を示すための様々な利用例である。
エクササイズの強度
一部の実施例においては、本明細書で説明されたウエアラブル電気化学センシングシステムは、ユーザーのエクササイズの強度を決定するために利用されるグルコース(GLUCOSE RATE INDEXTM(グルコース率係数)と称されることもある)を測定するように構成される。図19は、ウエアラブル電気化学センシングシステムによって測定されたグルコースレベルに基づき、ユーザーが実施したエクササイズの強度を示すグラフである。この場合、ユーザーのグルコースレベルは、ユーザーの代謝活動の直接的なインジケーターとして使用することができる。ユーザーの血液グルコース濃度の変化率は、エクササイズの強度および新陳代謝の需要を決定するために利用することができる。図19に示すように、血液グルコースレベルのより迅速で急激な低下はエクササイズのより高い強度を示唆する。これは、昏睡感覚およびエクササイズ強度の突然の低下を引き起こす血液グルコースレベルに起因する新陳代謝の急激な低下を防止するために使用することができる。
回復の最適化−低グルコースの防止
ウエアラブル電気化学センシングシステムによって測定されたリアルタイムグルコースデータは、回復期にあるユーザーの回復に使用することができる。運動選手は、エクササイズ中に低グルコースレベルをしばしば経験する。食事の選択(例えば、エクササイズ後に大量の液体補充ドリンクを摂取すること)もエクササイズ後のグルコースレベルに影響を及ぼす。これらの低グルコースレベルは、筋肉内へのグルコースの吸収に何時間から何日にもわたって影響を及ぼし、さらに筋肉内グリコーゲン保存量の補充にも影響を及ぼす可能性がある。グルコースレベルデータは、筋肉グリコーゲンを復元する身体能力を最適化するためのエクササイズ後の食事、スナック、または液体補充の選択において、ユーザーを支援することができる。
健康推進インジケーター
グルコース可変性、すなわち、一定期間中のグルコースの高低(GLUCOSE VARIATION INDEXTM(グルコース変動係数)と称されることもある)は、ユーザーの健康度の値である。血液中の過剰なグルコースおよび高度のグルコース逸脱は、いくつかの健康問題と関連している。劣悪な食事とエクササイズに起因して、グルコースの変動が高ければ高いほど係数は悪くなり、長期的な合併症を招く可能性が高まる。適切な食事とエクササイズに起因して、変動が低ければ低いほど将来の健康が良好となる可能性が高まる。この情報は、糖尿病予備群の患者の理解を深め、彼らの身体におけるグルコースの変動レベルを追跡する上で役立つ。図18は、24時間にわたるユーザーのGLUCOSE VARIATION INDEXTM(グルコース変動係数)のサンプルを示している。
体重減少
本明細書で説明されたウエアラブル電気化学センシングシステムによって実施されたリアルタイムグルコースモニタリングは、体重減少療法の管理にも使用することができる。例えば、グルコースモニタリングデータは、TOTAL DAILY GLUCOSE INDEXTM(日々のグルコース係数)を判別するために使用することができる。この係数は、グルコース欠乏症(体重減少)またはグルコース過剰症(体重増加)のいずれかであり、固定されたグルコースと比較して下側の曲線の面積から決定することができる。ある閾値以下の測定値(グルコース欠乏症)は、ユーザーの体重が減っていることを示し、ある閾値以上の測定値(グルコース過剰症)は、ユーザーの体重が増えていることを示している。このデータは、グルコース変動メトリックスと組み合わせて使用され、ユーザーに対して彼らの個人的新陳代謝プロフィールのより良い理解をもたらすことができる。
一部の実施例においては、この係数は、各食事に対して計算されて、リアルタイムで任意の食事に対する数値(GLUCOSE MEAL INDEXTM(グルコース食事係数)と称されることもある)を提供することができる。グルコース以外のいくつかの他のパラメータも、食事に対する身体の応答に影響を与え得るので、リアルタイムでの食事に対する数値は、ユーザーに、ユーザーの食事メニューと食事の選択に関して、任意の時間においてユーザーの身体がどのように応答するかについてのユーザーフィードバック情報を提供する。ユーザーが同じ食事を2度違う時に食べたとすると、様々な生理学的因子のせいで、結果として現れるグルコースプロフィールは異なる。さらに、低グルコース防止は、ダイエット療法を行おうとするユーザーの食欲を低減する効果をもたらし得る。
グルコースデータと他の生理学的データの組み合わせ
一部の実施例においては、ユーザーのグルコースデータは、他の生理学的データ、例えば、活動モニタリングデータ(たとえば心拍数、歩数、走行速度、脈拍数、身体温度、など)と組み合わせて、ユーザーの一式の健康プロフィールを作成することができる。例えば、脈拍数データは、グルコース強度係数と組み合わせることにより、ユーザーの運動競技努力度をより正確に知ることとなり、平均的な選手にも、競技の新たな目標を提供することができる。一部の実施例においては、活動モニタリングセンサー、例えば、脈拍数センサー、酸素センサー、温度センサー、その他任意の活動センサーまたはそれらの組み合わせは、本明細書に説明された電気化学センシングシステムに組み込むことが可能である。
グルコースモニタリングデータは、エクササイズ中にユーザーが燃焼するカロリーをさらによく知るために利用することができる。脈拍数はそれ自身、軽度から中程度のエクササイズ中に燃焼されるカロリーを知るためのものとしては粗末なインジケーターであり、しばしば消費カロリーを大きく誇張して予想する傾向がある。脈拍数にグルコースを組み合わせる(前出のGLUCOSE RATE INDEXTMまたはTOTAL DAILY GLUCOSE INDEXTMのいずれかを使用)ことにより、中程度のエクササイズまでの消費カロリーの予想精度を向上させることができる。この情報は、活動追跡にも使用することができる。
さらに、グルコースモニタリングデータは、激しい短期間のエクササイズ後のユーザーが経験する「アフターバーン」の予測に使用される。アフターバーンは、高度の酸素消費に関連することが分かっている。したがって、グルコースモニタリングデータおよび特にTOTAL DAILY GLUCOSE INDEXTMは、本イベントの直接的測定値として使用可能であり、また激しい短期間の運動が脂肪燃焼に及ぼす影響を示すことができる。
一部の実施例において、ウエアラブル電気化学センシングシステム100、200、300、400、500、600、700、またその他任意の本明細書で説明した電気化学センシングシステムは、ここで説明した各種係数に関する情報をユーザーに知らせるためのディスプレイを備えていてもよい。例えば、図21は、本明細書で説明した電気化学センシングシステムのいずれにも装備可能なディスプレイ3070を示している。ディスプレイ3070は、ユーザーに対してグルコースゾーン(またはランニング係数)を知らせるように構成されたホイールタイプのゲージを含んでいる。インジケーターの上下ゾーンに、ユーザーに情報を知らせるためのシェードをかけることができる。また、ディスプレイ3070は、GLUCOSE VARIATION INDEXTM(グルコース変動係数)およびTOTAL DAILY GLUCOSE INDEXTM(日々のグルコース係数)(またはGLUCOSE MEAL INDEXTM(グルコース食事計数))に関する情報を伝えるための第1デジタルディスプレイおよび第2デジタルディスプレイを備えている。さらに、第1デジタルディスプレイおよび第2デジタルディスプレイのそれぞれには、ユーザーの状態を示すために色分け(例えば、赤、緑、青、黄)が施されている。一部の実施例においては、ディスプレイ3070を備えるウエアラブル電気化学センシングシステムを、例えば、ユーザーが腕に装着できるように、腕時計に似せたように構成することもできる。一部の実施例においては、電気化学センシングシステム、例えば、ここで説明されたような任意のウエアラブル電気化学センシングシステムは、活動追跡器として構成することもできる。一部の実施例においては、電気化学センシングシステムは、GLUCOSE VARIATION INDEXTM(グルコース変動係数)およびTOTAL DAILY GLUCOSE INDEXTM(日々のグルコース係数)(またはGLUCOSE MEAL INDEXTM(グルコース食事計数))に関する情報を伝えるためのディスプレイを備えていてもよい。図22は、ウエアラブル電気化学センシングシステムに装備することが可能なディスプレイ4070を示している。また、ディスプレイ4070は、GLUCOSE VARIATION INDEXTM(グルコース変動係数)およびTOTAL DAILY GLUCOSE INDEXTM(日々のグルコース係数)(またはGLUCOSE MEAL INDEXTM(グルコース食事計数))に関する情報を伝えるための第1デジタルディスプレイおよび第2デジタルディスプレイを備えている。さらに、第1デジタルディスプレイおよび第2デジタルディスプレイのそれぞれは、ユーザーの状態を示すために色分け(例えば、赤、緑、青、黄)が施されている。
本明細書では、ここまで様々なシステム、方法、および装置を説明してきたが、それらはいずれも単なる例に過ぎず、限定を意味するものではないことが理解されなければならない。上で説明された方法やステップが、ある順序で、あるイベントを示した場合、本分野における当業者であれば、ある種の複数のステップの順序を変更し得るであろうし、それらの変更は、本発明の変形であることを認識するはずである。例えば、非水溶電解液は、ゲルポリマー電解液を含むことができる。さらに、ある種の複数のステップは、それが可能な場合には平行して同時に実施すること、また上述したように順次実行することも可能である。特定の実施例が示され、説明されたが、態様および詳細において様々な変更が可能であることも理解されるべきである。