JP2017511372A - 脳アミロイドーシスを処置及び/又は予防する投与計画 - Google Patents

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Abstract

【解決手段】アルツハイマー病(AD)及び/又は脳アミロイド血管症(CAA) のような脳アミロイドーシスの処置及び/又は予防のための投与計画及びキットが本明細書に記載されている。

Description

本発明は一般に、アルツハイマー病及び/又は脳アミロイド血管症のようなヒト脳アミロイドーシスの処置に関する。
アルツハイマー病は、最も大きい社会経済的な医療負担の1つである。アルツハイマー病は、進行性認知症を特徴とし、組織病理学的には神経原線維のもつれ(NFT)及び神経斑(老人斑)の存在を特徴とする。斑はアミロイドベータ(Aβ)と称されるタンパク質からなり、もつれはタウと称されるタンパク質からできている。
国際公開第2011/049787号
アミロイド斑及びNFTは両方ともアルツハイマー病(AD)の顕著な特徴である。アミロイド前駆体タンパク質(APP)及びプレセニリンの突然変異は早発性形態のアルツハイマー病を引き起こし、APPのプロセシングが散発性ADの発病にも重要な役割を果たし得るという仮説を裏付けている。更に、「アミロイド仮説」では、ある毒性形態のAβの蓄積が脳に害を及ぼすと予想されている。APPは、α−及びβ−セクレターゼ経路によってプロセシングされ得る。これまで、この疾患の進行を遅延させるAD治療を開発しようとするほとんどの研究努力は、Aβペプチドを形成させるγ−セクレターゼ及びβ−セクレターゼの阻害並びにAPP代謝の阻害、又は神経保護的sAPPαペプチドの産生を増大させると同時にAβ産生を低下させるα−セクレターゼプロセシングの活性化に焦点を当てている。インビボでのβ−セクレターゼ活性の低下と、脳でのAβペプチドの低下との間には非線形の関係性があるように見えることも一因となって、特異的なβ−セクレターゼ阻害剤の開発は困難である。更なる困難は、ほとんどの阻害剤がわずかしか脳に透過しないことである。γ−セクレターゼ阻害剤は更に、notch阻害と関連する重篤なGI副作用に悩まされる。なぜなら、γ−セクレターゼは、APPの他にnotch受容体を含む他の多くの基質をプロセシングするからである。更に、γ−セクレターゼ活性の欠損は、神経変性を引き起こすことが示されており、プレセニリン1(γ−セクレターゼ複合体の活性部位を含むγ−セクレターゼ複合体の構成要素)の突然変異によって引き起こされる常染色体優性の早発性アルツハイマー病と関連する可能性がある。
アルツハイマー病の処置を目的とした努力の大半は、ADの症状を軽減することに焦点を当てている。特に、AD患者の前脳の罹患したニューロンにおける低濃度のコリンアセチルトランスフェラーゼの特定は、シナプス間隙でのアセチルコリンの加水分解を阻害し、シナプスにおけるアセチルコリンのレベルを延長することを目的とした処置をもたらした。この手法は、神経伝達物質レベルの少なくとも一部の修正をもたらすが、治療効果は少ない。
更に、ADはタウオパシーに分類される。タウオパシーは、その凝集及びNFTの形成を促進するタウの異常な過剰リン酸化によって引き起こされる。タウ及びAPPの突然変異は両方とも認知症を引き起こすので、一方又は両方がADの疾患進行の一因となり得る。APPのプロセシングの変化をもたらす突然変異がADを引き起こすことが十分に理解されている。現在、アルツハイマー病の進行を遅らせるための認可された治療法はない。従って、より有益なAD処置が今も必要とされている。開発中のほとんどの治療法はAPP 代謝の変化(例えば、β−セクレターゼ及びγ−セクレターゼ阻害)又はタウ凝集の阻止に焦点を当てているが、本発明は、一又は複数のガングリオシダーゼ及び/又はシアリダーゼに結合し、それにより、sAPPαの産生を増大させ、Aβ及び過剰リン酸化タウの産生を低下させる薬理シャペロンを用いる処置を提供するものである。
同様に、脳アミロイド血管症(CAA) は、中枢神経系の血管の壁、特に軟髄膜及び皮質の動脈におけるアミロイド沈着を特徴とする疾患である。CAA は主として高齢者に散発性疾患として生じ、その発生率は加齢と関連付けられる。このような散発性CAA の症例は、APP のタンパク質分解切断によって生じるAβの沈着に起因する。遺伝型のCAA は一般に家族性であり、散発性CAA に比べてより重篤であり、より早く発症する。CAA も最近、ADの発症の潜在的な一因として認識されている。
本明細書における引用は全て、その全体が参照により組み込まれる。
β−ヘキソサミニダーゼ(β−hex )を標的とする薬理シャペロンは、脳アミロイドーシスの処置及び/又は予防に関する多くの利点を有し得ることが分かっている。特に、薬理シャペロンである2-アセトアミド-1,2- ジデオキシノジリマイシン(AdDNJ )は、オランダ型APPE693QトランスジェニックマウスのGAβ病状を減少させることが分かっており、このようなマウスの行動表現型を用量依存的に修正する。AdDNJ は、優れた経口バイオアベイラビリティ、脳透過性、耐性、選択性及び低い細胞毒性を含む優れた医薬品質を有する。従って、AdDNJ 及びβ−hex 活性を上昇させるための他の手法は、アルツハイマー病(AD)及び/又は脳アミロイド血管症(CAA) のようなヒト脳アミロイドーシスの管理を支援することが期待されている。
従って、本発明の一態様は、有効量の2-アセトアミド-1,2- ジデオキシノジリマイシン(AdDNJ) を与えることにより、アルツハイマー病及び/又は脳アミロイド血管症を発症する危険性があるか又はアルツハイマー病及び/又は脳アミロイド血管症と診断された患者のアルツハイマー病及び/又は脳アミロイド血管症を予防及び/又は処置する方法に関する。本態様の一又は複数の実施形態では、本方法は、第1の酵素増強期間に有効量のAdDNJ を患者に与え、基質代謝回転期間にAdDNJ を与えず、その後、第2の酵素増強期間に有効量のAdDNJ を患者に与えることを有する。
第1の酵素増強期間及び第2の酵素増強期間は同一の期間であってもよく、異なる期間であってもよい。様々な実施形態では、第1の酵素増強期間及び第2の酵素増強期間の一又は複数は、約4日〜約6日の期間のような約1日〜約8日の期間である。AdDNJ は、第1の酵素増強期間及び第2の酵素増強期間の一又は複数の間に毎日与えられてもよい。
一又は複数の実施形態では、AdDNJ は経口で与えられる。他の投与経路として、鼻腔内投与が含まれるが、これに限定されない。
一又は複数の実施形態によれば、AdDNJ は、約100 mg/kg/日のような約3mg/kg/日〜約300 mg/kg/日の範囲内の用量で与えられる。
一又は複数の実施形態では、基質代謝回転期間にAdDNJ を与えない際に、約72時間のような約48時間〜約96時間AdDNJ を与えない。他の典型的な基質代謝回転期間として、約24時間AdDNJ を与えないか、又は約48時間AdDNJ を与えないことが含まれる。
酵素増強期間及び基質代謝回転期間の様々な組合せが可能である。1つの典型的なスケジュールでは、第1の酵素増強期間は約5日であり、基質代謝回転期間にAdDNJ を与えない際に、約72時間AdDNJ を与えない。
別の典型的なスケジュールとして、1日目に有効量のAdDNJ を患者に与えて、2日目にAdDNJ を与えず、3日目に有効量のAdDNJ を患者に与えて、4日目にAdDNJ を与えず、5日目に有効量のAdDNJ を患者に与えて、その後、約72時間AdDNJ を与えないことが含まれる。
更なる別の典型的なスケジュールでは、前記第1の酵素増強期間は約3日であり、基質代謝回転期間にAdDNJ を与えない際に、約120 時間AdDNJ を与えない。
本方法は、追加の基質代謝回転期間及び/又は追加の酵素増強期間を含んでもよい。一又は複数の実施形態では、本方法は、酵素増強期間と基質代謝回転期間とを、少なくとも1か月の処置期間のようなある総処置期間に交互に生じる。総処置期間は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11若しくは12か月又は1、2、3若しくは4年のような、治療のためのあらゆる適切な期間であってもよい。様々な実施形態では、AdDNJ は限られていない期間に与えられる。各酵素増強期間又は各基質代謝回転期間は、別の酵素増強期間又は基質代謝回転期間と同一であってもよく、異なってもよい。
本発明の別の態様は、アルツハイマー病及び/又はCAA の処置及び/又は予防のためのキットを備えている。一又は複数の実施形態では、本キットは、有効量のAdDNJ を含む一又は複数の剤形と、本明細書に記載されている方法のいずれかに従って前記剤形を与えるための使用説明書とを備えている。例えば、本キットは、第1の酵素増強期間に剤形を与えて、基質代謝回転期間に剤形を与えず、その後、第2の酵素増強期間に剤形を与えるための使用説明書を備えてもよい。
本キットは、有効量のAdDNJ を含まない一又は複数の非活性剤形を備えてもよい。本キットは、第1の酵素増強期間に活性剤形を与えて、基質代謝回転期間に非活性剤形を与えず、その後、第2の酵素増強期間に前記活性剤形を与えるための使用説明書を備えてもよい。
一又は複数の酵素増強期間及び一又は複数の基質代謝回転期間が、本明細書に記載されている特性のいずれかを有してもよい。
β−hex を標的とする薬理シャペロンAdDNJ の効能の概要、選択性及び細胞毒性の概要を示す図である。AdDNJ は、β−hex の特異的な阻害剤であり(a) 、O-GlcNAcase(c-d) を100 μMで阻害せず、又はリソソーム酵素β−グルコセレブロシダーゼ(GCase) 、α−ガラクトシダーゼ(α−Gal )又はβ−ガラクトシダーゼ(β−Gal )を10μMで阻害せず、最高濃度を試験した(e) 。更に、AdDNJ は、最大120 時間まで1mMのAdDNJ と同一の高い濃度で処置されたヒト皮膚線維芽細胞(f) 及びSH-SY5Y (g) に関して細胞生存率にほとんど影響を与えないか、又は全く影響を与えなかった。AdDNJ は、線維芽細胞でβ−hex レベルを3倍増加させている。健康なヒト由来の線維芽細胞をAdDNJ (95〜780 nM)で5日間処置すると、総野生型β−hex レベルが用量依存的に最大3倍増加した。データを平均±s.e.m.として表現する。 β−hex を標的とする薬理シャペロンAdDNJ の効能の概要、選択性及び細胞毒性の概要を示す図である。AdDNJ は、β−hex の特異的な阻害剤であり(a) 、O-GlcNAcase(c-d) を100 μMで阻害せず、又はリソソーム酵素β−グルコセレブロシダーゼ(GCase) 、α−ガラクトシダーゼ(α−Gal )又はβ−ガラクトシダーゼ(β−Gal )を10μMで阻害せず、最高濃度を試験した(e) 。更に、AdDNJ は、最大120 時間まで1mMのAdDNJ と同一の高い濃度で処置されたヒト皮膚線維芽細胞(f) 及びSH-SY5Y (g) に関して細胞生存率にほとんど影響を与えないか、又は全く影響を与えなかった。AdDNJ は、線維芽細胞でβ−hex レベルを3倍増加させている。健康なヒト由来の線維芽細胞をAdDNJ (95〜780 nM)で5日間処置すると、総野生型β−hex レベルが用量依存的に最大3倍増加した。データを平均±s.e.m.として表現する。 C57BL/J6マウスでの単一用量のAdDNJ の薬物動態試験を示す図である。週齢5週間のオスのC57BL/J6マウスに、単一用量100 mg/kg のβ−hex を標的とする薬理シャペロンAdDNJ を与えた。血漿(a) 及び脳(b) のAdDNJ のプロファイルである。100 mg/kg のAdDNJ は血液脳関門を通過し、結合に十分であると予測される脳のレベルに達し、(342 nMを超えて)β−hex レベルを増加させ、16時間以内にβ−hex に関するレベルをKi未満に(pH5 の253 nM)下げた(n=時点当たり5マウス)。データを平均±s.e.m.として表現する。 C57BL/J6マウスへのAdDNJ の反復投与及び用量反応試験の結果を示す図である。週齢5週間のオスのC57BL/6 マウスに、溶媒、30、100 又は300 mg/kg のβ−hex を標的とする薬理シャペロンAdDNJ のいずれかを毎日最大14日間強制経口投与した。全脳Hex A&S (a) 及びHex B (b) の活性(n=時点当たり5マウス)。データを平均±s.e.m.として表現する。 オランダ型のAPPE693QトランスジェニックマウスにAdDNJ を処置した後の脳β−hex レベルの増加を示す図である。月齢3ヶ月のオスのオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスは未処置であるか、又は溶媒若しくはAdDNJ を3ヶ月間経口で投与された。AdDNJ の処置により、β−hex Bレベルが用量依存的に増加する(未処置;n=3,溶媒;n=6,3及び10mg/kg のAdDNJ ;n=7,30及び100 mg/kg のAdDNJ ;n=6)。データを平均±s.e.m.として表現する。ボンフェローニ事後検定を用いた1-way ANOVA ,*P<0.05 ,**P<0.01,***P<0.001。 オランダ型のAPPE693QトランスジェニックマウスにAdDNJ を処置した後の脳β−hex レベルの増加を示す図である。月齢3ヶ月のオスのオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスは未処置であるか、又は溶媒若しくはAdDNJ を3ヶ月間経口で投与された。AdDNJ の処置により、β−hex A&S レベルが用量依存的に増加する(未処置;n=3,溶媒;n=6,3及び10mg/kg のAdDNJ ;n=7,30及び100 mg/kg のAdDNJ ;n=6)。データを平均±s.e.m.として表現する。ボンフェローニ事後検定を用いた1-way ANOVA ,*P<0.05 ,**P<0.01,***P<0.001。 オランダ型のAPPE693QトランスジェニックマウスにAdDNJ を処置した後の脳β−hex レベルの増加を示す図である。月齢3ヶ月のオスのオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスは未処置であるか、又は溶媒若しくはAdDNJ を3ヶ月間経口で投与された。AdDNJ の処置により、総β−hex レベルが用量依存的に増加する(未処置;n=3,溶媒;n=6,3及び10mg/kg のAdDNJ ;n=7,30及び100 mg/kg のAdDNJ ;n=6)。データを平均±s.e.m.として表現する。ボンフェローニ事後検定を用いた1-way ANOVA ,*P<0.05 ,**P<0.01,***P<0.001。 オランダ型のAPPE693QトランスジェニックマウスにおけるAdDNJ の処置後の不安症状の軽減及び学習挙動障害の発症の予防を示す図である。月齢3ヶ月のオスのオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスは未処置であるか(n=15)、又は溶媒(n=15)若しくはAdDNJ (3,10,30若しくは100 mg/kg のAdDNJ ;n=13/処置群)を3ヶ月間経口で投与された。月齢6ヶ月の溶媒で処置されたオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスは、高架式十字迷路で月齢3ヶ月の未処置マウスより不安症状の増加を示している。これは、試験された全ての用量のAdDNJ での処置後に逆転する(a) 。月齢3ヶ月の未処置マウスは完全な記憶を表し、なじみの(古い)物体より新奇の(新しい)物体を探索する一方、月齢6ヶ月の溶媒で処置されたオランダ型のトランスジェニックマウスは、新奇の物体認識(NOR )で学習挙動障害を示し、AdDNJ は、NOR 試験における学習障害の発症を用量依存的に予防する(b) 。データを平均±s.e.m.として表現する。*P<0.05,***P<0.001。 オランダ型のAPPE693QトランスジェニックマウスにおけるAdDNJ の処置後の文脈的及び手がかりの恐怖条件付け学習挙動を示す図である。月齢3ヶ月のオスのオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスは未処置であるか(n=15)、又は溶媒(n=15)若しくはAdDNJ (3,10,30若しくは100 mg/kg のAdDNJ ;処置済n=13/群)を3ヶ月間経口で投与された。AdDNJ は文脈的又は手がかりの学習挙動に影響を及ぼさなかった。データを平均±s.e.m.として表現する。 オランダ型のAPPE693QトランスジェニックマウスにAdDNJ を処置した3ヶ月後のAβレベル及びオリゴマーレベルを示す図である。月齢3ヶ月のオスのオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスは未処置であるか、又は溶媒若しくはAdDNJ (3,10,30若しくは100 mg/kg のAdDNJ ;処置済n=13/群)を3ヶ月間経口で投与された。AdDNJ は、Aβ40に影響を及ぼさなかった(n=5/群)。データを平均±s.e.m.として表現する。 オランダ型のAPPE693QトランスジェニックマウスにAdDNJ を処置した3ヶ月後のAβレベル及びオリゴマーレベルを示す図である。月齢3ヶ月のオスのオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスは未処置であるか、又は溶媒若しくはAdDNJ (3,10,30若しくは100 mg/kg のAdDNJ ;処置済n=13/群)を3ヶ月間経口で投与された。AdDNJ は、Aβ42に影響を及ぼさなかった(n=5/群)。データを平均±s.e.m.として表現する。 オランダ型のAPPE693QトランスジェニックマウスにAdDNJ を処置した3ヶ月後のAβレベル及びオリゴマーレベルを示す図である。月齢3ヶ月のオスのオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスは未処置であるか、又は溶媒若しくはAdDNJ (3,10,30若しくは100 mg/kg のAdDNJ ;処置済n=13/群)を3ヶ月間経口で投与された。AdDNJ は、Aβ42/40比率に影響を及ぼさなかった(n=5/群)。データを平均±s.e.m.として表現する。 オランダ型のAPPE693QトランスジェニックマウスにAdDNJ を処置した3ヶ月後のAβレベル及びオリゴマーレベルを示す図である。月齢3ヶ月のオスのオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスは未処置であるか、又は溶媒若しくはAdDNJ (3,10,30若しくは100 mg/kg のAdDNJ ;処置済n=13/群)を3ヶ月間経口で投与された。AdDNJ は、A11プレ原線維性Aβ(m) 又は抗体を用いたオリゴマー(OC又はNu-4,n-o )に影響を及ぼさなかった(n=5/群)。データを平均±s.e.m.として表現する。 オランダ型のAPPE693QトランスジェニックマウスにAdDNJ を処置した後にAβ免疫反応性が減少したことを示す図である。溶媒(a, c, e) 、又は100 mg/kg のAdDNJ (b, d, f) が3ヶ月間経口で投与されたオスのオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスからの矢状縫合の脳の切片が、抗体6E10(溶媒;n=4,100 mg/kg のAdDNJ ;n=4)で染色された。Aβ免疫反応性は、AdDNJ で処置されたオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスの海馬台(a, b)ではあまり強くなく、視覚野(c, d)及び海馬のCA1 部位(e, f)では強くなかった。スケールバーa-f 200 mM。 オランダ型のAPPE693QトランスジェニックマウスにAdDNJ を処置した後のガングリオシド結合Aβ(GAβ)免疫反応性の低下を示す図である。溶媒(a, c, e, g, i) 、又はAdDNJ (b, d, f, h, j) が3ヶ月間投与されたオスのオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスからの矢状縫合の脳の切片が、GAβ(43696C)で染色された(溶媒;n=4,100 mg/kg のAdDNJ ;n=4)。43696Cの抗体によって検出されるGAβ免疫反応性は海馬台及び鼻周囲皮質で低下した(k, i)。GAβは、視覚野、側部嗅内皮質及び海馬のCA1 部位で変化しなかった(m, n, o) 。スケールバーa-j 200 mM。血管内のGAβ染色が皮質部位で検出可能であった(p) 。データを平均±s.e.m.として表現する。* P<0.05。 オランダ型のAPPE693QトランスジェニックマウスにAdDNJ を処置した後のガングリオシド結合Aβ(GAβ)免疫反応性の低下を示す図である。溶媒(a, c, e, g, i) 、又はAdDNJ (b, d, f, h, j) が3ヶ月間投与されたオスのオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスからの矢状縫合の脳の切片が、GAβ(43696C)で染色された(溶媒;n=4,100 mg/kg のAdDNJ ;n=4)。43696Cの抗体によって検出されるGAβ免疫反応性は海馬台及び鼻周囲皮質で低下した(k, i)。GAβは、視覚野、側部嗅内皮質及び海馬のCA1 部位で変化しなかった(m, n, o) 。スケールバーa-j 200 mM。血管内のGAβ染色が皮質部位で検出可能であった(p) 。データを平均±s.e.m.として表現する。* P<0.05。 オランダ型のAPPE693QトランスジェニックマウスのAdDNJ 処置がTLC によって評価されるようなガングリオシドプロファイルに検出可能な影響を及ぼさないことを示す図である。月齢3ヶ月のオスのオランダ型のトランスジェニックマウスは未処置であるか、又は溶媒若しくはAdDNJ を3ヶ月間経口で投与された。前脳全体の薄層クロマトグラフィ分析により、AdDNJ 処置がGM1 、GM2 及びGM3 のガングリオシドレベルを著しく変えないことが明らかになった(a-d) (溶媒;n=6 ,100 mg/kg のAdDNJ;n=7 )。 オランダ型のAPPE693QトランスジェニックマウスのAdDNJ 処置がTLC によって評価されるようなガングリオシドプロファイルに検出可能な影響を及ぼさないことを示す図である。月齢3ヶ月のオスのオランダ型のトランスジェニックマウスは未処置であるか、又は溶媒若しくはAdDNJ を3ヶ月間経口で投与された。前脳全体の薄層クロマトグラフィ分析により、AdDNJ 処置がGM1 、GM2 及びGM3 のガングリオシドレベルを著しく変えないことが明らかになった(a-d) (溶媒;n=6 ,100 mg/kg のAdDNJ;n=7 )。
Aβは、全ての生体液中に見られ、より大きなI型膜タンパク質であるアミロイド前駆体タンパク質(APP)の酵素的切断によって生じる38〜43アミノ酸の疎水性ペプチドである。家族性AD患者の連鎖試験によって、APPとAPPの異常代謝及び凝集型のAβの産生増大に関連するプレセニリンという2つの遺伝子に多数の突然変異が特定された。Aβが、アルツハイマー病の病理に大きな役割を果たし得る毒性のオリゴマーを形成すると考えられている(Shankar 等著,2008年)。
ガングリオシドは、脳の神経毒性型Aβ(すなわち、オリゴマー)の生成を促進する。ガングリオシドは、細胞膜の外葉に見られるシアル酸含有スフィンゴ糖脂質であり、ニューロンの細胞表面に特に多く存在する。ガングリオシドは、クラスターで存在することや、形質膜の表面でマイクロドメインを形成することが知られている。ガングリオシドのこの特異的な局在のために、ガングリオシドは、糖タンパク質、ペプチドホルモン、及び増殖因子を含む種々のバイオエフェクタと相互作用することができる。更に、ガングリオシド(例えば、GM1ガングリオシド)は、細胞分化を促進し、ニューロン発生の損失を防止し、かつニューロン損傷のインビトロ及びインビボのモデルで神経保護的役割を果たすことができる。
ガングリオシドは神経系に最も多く存在し、シグナル伝達の仲介、細胞接着及び細胞分化を含む種々の機能に関与する。200を超えるガングリオシドが特定されているが、ニューロンのガングリオシドの大部分は、一又は複数のガングリオシダーゼ及び/又はシアリダーゼによって異化される。
α−セクレターゼ活性の産物である可溶性APPα(sAPPα)とβ−セクレターゼ活性の産物である可溶性APPβ(βAPPβ)は、sAPPαにAβの最初の16残基が含まれることが異なっている。α−セクレターゼによるAPPの切断はAβドメインを2つに切断するので、この反応の産物はアミロイドを生じさせることができない。従って、α−セクレターゼ活性の活性化又は上方調節は、毒性のあるAβオリゴマー及びアミロイド斑の形成を妨げるか又は低下させると同時に、神経栄養性でかつ神経保護的なsAPPαの脱落を増大させると仮定されている。興味深いことに、スフィンゴ糖脂質及びガングリオシドの合成を阻害することによって、sAPPαの脱落が活性化されることが示されている(Sawamura等著,2004年)。
APPの突然変異は、家族性アルツハイマー病及び/又は脳アミロイド血管症(CAA)も引き起こす。ガングリオシドGM2、GM3及びGD3は、脳で部位特異的に発現するので、局所的なAβ沈着を調節することができる(Yamamoto等著,2006年)。オランダ型及びイタリア型Aββとフラマン型Aβの遺伝性変異体の会合が、GM3ガングリオシド及びGD3ガングリオシドによって夫々加速した。特に、オランダ型及びイタリア型Aββが沈着する脳の血管壁を構成する脳血管平滑筋細胞は、主にGM2及びGM3を発現する(Yamamoto等著,2006年)。従って、遺伝性Aβ変異体の会合は、脳における特定のガングリオシドの存在などの、局所的な環境因子によって加速する可能性がある。
スフィンゴ糖脂質及びガングリオシドは、神経変性に関するタンパク質のミスフォールディング及び凝集に関与していることが最近分かった(例えばグルコセレブロシダーゼ突然変異へのパーキンソン病の遺伝子連鎖)(Alcalay 等著,2012年;Daniele 等著,2012年)。脳及び血管のAβの神経毒性型の生成が加速することにより、ガングリオシド代謝の異常がアルツハイマー病(AD)の発病及び脳アミロイド血管症(CAA) の一因に成り得ることを示す証拠が増えている。老化及び神経変性中、膜の生理化学的特性が変化して、膜の脂質の割合の不均衡及び/又は膜の脂質の比率の変化がもたらされるため、ADの発病の一因になり得る(Yanagisawa著,2007年;Mutoh 等著,2006年;Hayashi 等著,2004年;Karcun等著,1991年;Brooksbank等著,1989年;Matsuzaki 著,2007年)。この考えと一致して、モノシアロガングリオシド(GM1 ,GM2 及びGM3 )レベルがADの脳の皮質で上昇することが報告されており(Gylys 等著,2007年)、これらのレベルは、罹患した脳の前頭部、側頭部及び頭頂部の皮質の膜マイクロドメイン(界面活性剤耐性膜)に明らかに集中する(Kracun等著,1991年;Molander-Melin等著,2005年)。更に、ガングリオシド結合Aβ(GAβ)ペプチドは、ADの病状の最も早い段階を示す脳にのみ検出され(Yanagisawa等著,1995年;Yanagisawa等著,1997年;Yanagisawa等著,1998年)、ガングリオシドは、Aβ原線維の播種のようなADの発病の早期に一又は複数のある役割を果たし得ることが示唆されている(Yanagisawa等著,2007年;Yamamoto等著,2005年;Selkoe著,1995年)。Aβのある変異型(特にオリゴマー化に有利なこれらの突然変異体)は、GM2 及びGM3 の前凝集特性に特に感受性を示すことに注目すべきである(Yamamoto等著,2005年;Yamamoto等著,2006年)。
β−ヘキソサミニダーゼ(β−Hex )はGM2 ガングリオシドを異化し、その欠損は、常染色体劣性リソソーム貯蔵障害であるテイ・サックス病及びサンドホフ病を引き起こす(Mahuran 著,1999年)。抗Aβ様免疫反応性の神経細胞内蓄積は、HEXB KO マウスの脳における抗体4G8 、抗αシヌクレイン様免疫反応性及び抗pタウ様免疫反応性を使用して見つかった(Keilani 等著,2012年)。生化学的・免疫組織化学的分析によって、神経細胞内4G8 免疫反応性がAPP −CTFs及び/又はAβを表しているが、全長APP を表していないことが確認された。加えて、Aβ40ペプチド及びAβ42ペプチドのレベルの上昇が、(野生型脳から取り出したものと比較して)脂質結合画分で見つかった。ガングリオシド結合Aβ免疫反応性の蓄積が更に、HEXB KO マウスの脳とGM1 及びGM2 のガングリオシダーゼを有するヒト被験者の脳とに観察された。まとめると、これらの結果により、ガングリオシドの蓄積とAβの蓄積との関連が示される。
GM2 及びGM3 のガングリオシドは、特にオリゴマー化の傾向があるオランダ型、アイオワ型及びイタリア型の突然変異によるAβペプチドのインビトロでの会合を促進することが示されている(Yamamoto等著,2005年;Yamamoto等著,2006年)。Aβオリゴマーを脳に(特に海馬台、視覚野及び海馬のCA1 部位のニューロン内に)蓄積して、不安症状及び学習挙動障害を発症するが、アミロイド斑を決して発現させないオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスの生成及び特徴分析が示されている(Gandy 等著,2010年)。β−hex を標的とする「薬理シャペロン」を用いてβ−hex 活性を上昇させてGM2 レベルを低下させることにより、Aβオリゴマー化を低下させてオランダ型のAPPE693Qトランスジェニックマウスの行動変化を防ぐことが仮定された。薬理シャペロンは、標的タンパク質を選択的に結合して安定化させ、適切なフォールディングを促進して早期分解を低下させる小分子として新奇な処置手法を作用で意味する(Tropak等著,2007年;Maegawa 等著,2007年;Tropak等著,2004年;Rountree等著,2009年)。このような薬理シャペロンは、タンパク質を可逆的に結合する小分子であるため、標的タンパク質を安定させてその半減期を増大させる。ファブリ病、ゴーシェ病、ポンぺ病、サンドホフ病及びテイ・サックス病を含む嚢胞性線維症及び複数のリソソーム貯蔵障害のための薬理シャペロン療法が臨床試験で評価されたか、又は評価され続けている(Boyd等著,2013年;Wustman 等著,2012年;Osher 等著,2011年;Clarke等著,2011年)。
本発明の一態様は、β−Hex を標的とする薬理シャペロンを用いて、アルツハイマー病のような脳アミロイドーシス及び/又は脳アミロイド血管症の処置及び/又は予防のための投与計画を提供する。この態様の一又は複数の実施形態では、薬理シャペロンは、2−アセトアミド-1,2- ジデオキシノジリマイシン(AdDNJ )である。
2-アセトアミド-1,2,5- トリデオキシ-1,5- イミノ-D- グルシトールとしても知られているAdDNJ は、以下の構造を有する化合物である。
AdDNJ は、上記に示されているような遊離型で与えられてもよく、又は医薬として許容されるその塩、溶媒和物若しくはプロドラッグの形態で与えられてもよい。
一又は複数の実施形態では、AdDNJ が、AdDNJ のシャペロン作用及び阻害作用の平衡を保つ特有の投与計画で与えられる。例えば、適切なフォールディング、輸送、非凝集などを促進することにより、AdDNJ がβ−hex 活性を高める酵素増強期間にAdDNJ が与えられてもよい。AdDNJ の濃度が阻害剤の濃度未満に低下してAdDNJ のβ−hex からの分離を可能にすべく、酵素増強期間の後、AdDNJ が基質代謝回転期間に与えられなくてもよい。投与計画は、第1の酵素増強期間と同一であってもよく異なってもよい第2の酵素増強期間を有してもよい。投与計画は、第1の基質代謝回転期間と同一であってもよく異なってもよい第2の基質代謝回転期間を有してもよい。投与計画は、酵素増強期間と基質代謝回転期間との間にサイクリングを更に有してもよい。
典型的な酵素増強期間は数時間から数日の範囲内であってもよい。例えば、AdDNJ は、1日から10日の期間に1日に1回又は1日複数回(2回、3回、4回など)与えられてもよい。様々な実施形態では、酵素増強期間は、約1, 2, 3, 4, 5, 6, 8, 10, 12, 24, 36, 48, 60, 72, 96, 120 時間又は約1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9 若しくは10日間である。
典型的な基質代謝回転期間は更に数時間から数日の範囲内であってもよい。基質代謝回転期間は、連続する酵素増強期間の間の時間として定められる。様々な実施形態では、基質代謝回転期間は、約1, 2, 3, 4, 5, 6, 8, 10, 12, 24, 36, 48, 60, 72, 96, 120 時間又は約1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9 若しくは10日間である。例えば、基質代謝回転期間が約24時間であり、酵素増強期間がAdDNJ の1回の投与からなる場合、連続するAdDNJ 投与間の時間は約24時間(つまり1日に1回)である。同様に、基質代謝回転期間が約48時間であり、酵素増強期間がAdDNJ の1回の投与からなる場合、連続するAdDNJ 投与間の時間は約48時間(つまり2日に1回)である。更なる例として、約72時間の基質代謝回転期間(例えば、火曜日及び水曜日に投与せず月曜日及び木曜日に投与する)が含まれる。「約24時間」、「約48時間」及び「約72時間」という用語は、夫々の投与日の同一の時間に投与することを必要とするわけではなく、異なる日に投与することを単に表しているだけである。
適切な投与計画の例として、以下の投与を含むが、これらに限定されない。
a.1週間の内連続5日間(例えば月曜〜金曜)1日に1回、2回又は3回;
b.1週間の内7日間(例えば月曜〜日曜)1日に1回、2回又は3回;
c.1週間の内連続3日間(例えば月曜〜水曜)1日に1回、2回又は3回;
d.1週間の内連続ではない3日間(例えば月曜、水曜、金曜)1日に1回、2回又は3回;
e.1日おきに1日に1回、2回又は3回。
個々の投与は夫々、治療上有効な量のAdDNJ 又はその塩、溶媒和物若しくはプロドラッグを含んでもよい。投与は夫々、約1mg/kg 〜約1,000 mg/kg の範囲内の量のAdDNJ 又はその塩、溶媒和物若しくはプロドラッグを含んでもよい。典型的な量として、1 mg/kg ,2 mg/kg ,3 mg/kg ,4 mg/kg ,5 mg/kg ,6 mg/kg ,7 mg/kg ,8 mg/kg ,9 mg/kg ,10mg/kg ,15mg/kg ,20mg/kg ,25mg/kg ,30mg/kg ,35mg/kg ,40mg/kg ,45mg/kg ,50mg/kg ,55mg/kg ,60mg/kg ,65mg/kg ,70mg/kg ,75mg/kg ,80mg/kg ,85mg/kg ,90mg/kg ,95mg/kg ,100 mg/kg ,125 mg/kg ,150 mg/kg ,175 mg/kg ,200 mg/kg ,225 mg/kg ,250 mg/kg ,275 mg/kg ,300 mg/kg ,325 mg/kg ,350 mg/kg ,375 mg/kg ,400 mg/kg ,425 mg/kg ,450 mg/kg ,475 mg/kg ,500 mg/kg ,550 mg/kg ,600 mg/kg ,650 mg/kg ,700 mg/kg ,750 mg/kg ,800 mg/kg,850 mg/kg ,900 mg/kg ,950 mg/kg 及び1,000 mg/kg が含まれる。典型的な量として、25mg,50mg,75mg,100 mg,125 mg,150 mg,175 mg,200 mg,250 mg,300 mg,400 mg,500 mg,600 mg,700 mg,800 mg,900 mg,1,000 mg,1,100 mg,1,200 mg,1,300 mg,1,400 mg,1,500 mg,1,600 mg,1,700 mg,1,800 mg,1,900 mg,2,000 mg,2,500 mg,3,000 mg,3,500 mg,4,000 mg,4,500 mg,5g,6g,7g,8g,9g,10 g,11g ,12g ,13g ,14g ,15g ,16g ,17g ,18g ,19g 及び20g が更に含まれる。異なる投与中に与えられる量は同一であってもよく、異なってもよい。
本発明の別の態様は、β−Hex を標的とする薬理シャペロンを用いてアルツハイマー病のような脳アミロイドーシス及び/又はCAA の処置及び/又は予防のためのキットを提供する。この態様の一又は複数の実施形態では、薬理シャペロンは、2−アセトアミド-1,2- ジデオキシノジリマイシン(AdDNJ )である。本キットは、有効量の薬理シャペロンを有する一又は複数の剤形を含んでいる。本キットは、本明細書に記載されている投与計画のいずれかに従って薬理シャペロンを与えるための使用説明書を含んでもよい。本キットは、薬理シャペロンを含まない不活性な剤形を更に含んでもよい。活性及び/又は不活性な剤形は、併用療法に適している治療薬のような他の治療薬を含んでもよい。
薬理シャペロンは、例えば錠剤、カプセル又は液体の形態での経口、又は注射のための無菌水溶液を含むあらゆる投与経路に適しているように処方され得る。薬理シャペロンが経口投与のために処方される場合、錠剤又はカプセルは、結合剤(例えばアルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えばラクトース、微結晶性セルロース又はリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム、タルク又はシリカ);崩壊剤(例えばジャガイモデンプン又はグリコール酸デンプンナトリウム);又は湿潤剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム)のような医薬として許容される賦形剤を用いた従来の手段によって調製され得る。錠剤は本技術分野でよく知られている方法によって覆われてもよい。経口投与のための液体製剤は、例えば溶液、シロップ若しくは懸濁液の形態を有してもよく、又は、使用前に水又は別の適した溶媒を有する構成のために乾燥した製品として存在してもよい。このような液体製剤は、懸濁剤(例えばソルビトールシロップ、セルロース誘導体若しくは食用硬化脂肪);乳化剤(例えばレシチン若しくはアカシア);非水性溶媒(例えばアーモンド油、油性エステル、エチルアルコール若しくは分画された植物油);又は防腐剤(例えばp-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル若しくはソルビン酸)のような医薬として許容される添加剤を用いた従来の手段によって調製されてもよい。液体製剤は、必要に応じて緩衝塩、調味料、着色料又は甘味料を更に含んでもよい。経口投与のための製剤は、化合物を制御して又は持続して放出すべく適切に処方されてもよい。
本発明の一又は複数の実施形態では、化合物が神経細胞に効果を発揮するように血液脳関門を通過し得るべく全身分布又は摂取を可能にする剤形で化合物は与えられる。全身分布又は摂取を可能にするこのような剤形は経口であってもよく、又は非経口であってもよい。ある実施形態では、化合物は、血液脳関門の通過を含めて全身的に分散してもよい。例えば、非経口/注射可能な使用に適した化合物の医薬製剤は一般に、無菌水溶液(水溶性)、又は、無菌注射溶液の即時調製又は分散のための分散体及び無菌粉末を含んでいる。全ての場合において、形態は無菌でなければならず、容易に注射できる程度の流体でなければならない。形態は、製造及び保存の条件下で安定していなければならず、バクテリア及び菌類のような微生物の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、その適切な混合物又は植物油を含む溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性が、例えば、レシチンのような被覆体の使用、分散の場合に必要な粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持され得る。微生物の作用の予防は、様々な抗菌抗黴剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸などによってもたらされ得る。多くの場合において、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むことは合理的である。注射可能な組成物の長期の吸収は、組成物に吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム又はゼラチンを使用することによりもたらされ得る。
無菌注射溶液は、必要な量の化合物を適切な溶媒に、必要に応じて上記に列挙された様々な他の成分と共に混合して、その後にフィルタ又は最終滅菌を行うことにより調製される。一般に分散体は、基本的な分散媒及び上記に列挙された成分のうち必要な他の成分を含有する無菌溶媒に、様々な滅菌した活性成分を混合することにより調製される。無菌注射溶液を調製するための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、既に無菌フィルタされた溶液から、活性成分及びあらゆる追加の所望の成分の粉末をもたらす真空乾燥・凍結乾燥技術である。
製剤は賦形剤を含有することが可能である。製剤に含まれてもよい医薬として許容される賦形剤は、クエン酸塩緩衝剤、リン酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、重炭酸塩緩衝剤、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質などの緩衝剤;血清アルブミン、コラーゲン及びゼラチンのようなタンパク質;EDTA又はEGTA、及び塩化ナトリウムのような塩;リポソーム;ポリビニルピロリドン;デキストラン、マンニトール、ソルビトール及びグリセロールのような糖;プロピレングリコール及びポリエチレングリコール(例えばPEG-4000、PEG-6000);グリセロール;グリシン又は他のアミノ酸;及び脂質である。製剤と共に使用するための緩衝系として、クエン酸塩;酢酸塩;重炭酸塩;及びリン酸塩の緩衝剤が含まれる。リン酸塩の緩衝剤は一般に用いられている賦形剤である。
製剤は非イオン性界面活性剤を更に含有することが可能である。非イオン性界面活性剤の例として、ポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトンX-100 、トリトンX-114 、ノニデットP-40、オクチルα−グルコシド、オクチルβ−グルコシド、ブリジ35、プルロニック、及びトゥイーン20が挙げられる。
一又は複数の治療薬は、静脈内、皮下、動脈内、腹腔内、眼、筋肉内、口腔、直腸、膣、眼窩内、脳内、皮内、頭蓋内、髄腔内、脳室内、くも膜下腔内、槽内、包内、肺内、鼻腔内、経粘膜、経皮を含む経口若しくは非経口で、又は吸入により与えられてもよい。好ましい一実施形態では、一又は複数の治療薬は経口で与えられる。
一又は複数の治療薬の投与は、製剤のボーラスの周期的な注射によって行われてもよく、又は外部(例えばi.v.バッグ)若しくは内部(例えば生体侵食性インプラント)のリザーバから静脈内又は腹腔内への投与により与えられてもよい。例えば、参照によって本明細書に夫々組み込まれる米国特許第4407957 号明細書及び米国特許第5798113 号明細書参照。肺内への送達方法及び装置は、例えば、参照によって本明細書に夫々組み込まれる米国特許第5654007 号明細書、米国特許第5780014 号明細書及び米国特許第5814607 号明細書に記載されている。他の有用な非経口送達システムとして、エチレン酢酸ビニル共重合体粒子、浸透圧ポンプ、埋込み型注入システム、ポンプ送達、カプセル化細胞送達、リポソーム送達、針で送達される注射、無針注射、ネブライザ、エアロゾライザ、電気穿孔及び経皮パッチが含まれる。無針注射器デバイスは、米国特許第5879327 号明細書、米国特許第5520639 号明細書、米国特許第5846233 号明細書及び米国特許第5704911 号明細書に記載されており、これらの明細書は参照によって本明細書に組み込まれる。上記に記載されている製剤はいずれもこれらの方法を用いて与えられ得る。
皮下注射は、静脈内投与と比較して、自己投与を可能にする一方、長期の血漿半減期を更にもたらすという利点を有する。更に、補充可能な注射ペン、無針注射デバイスのような患者の便宜性のために設計された様々なデバイスが、本明細書に記載されているように本発明の製剤と共に使用されてもよい。
適切な医薬製剤は、単位剤形である。このような形態では、製剤は、適量、例えば所望の目的を達成するための有効量の活性成分を含有する適切な大きさの単位用量に細分される。ある実施形態では、一又は複数の治療薬は、一又は複数の1日用量(例えば、1日1回、1日2回、1日3回)与えられる。ある実施形態では、一又は複数の治療薬は間欠的に与えられる。
本発明の一又は複数の実施形態によれば、処置される個体はあらゆる脳アミロイドーシスを発症するか、発症する危険性があり得る。このような脳アミロイドーシスは、アルツハイマー病及び脳アミロイド血管症(CAA) を含むが、これらに限定されない。例えば、脳アミロイドーシスは、早期の家族性アルツハイマー病を含むあらゆる形態のアルツハイマー病であり得る。脳アミロイドーシスは更に、遺伝性のCAA 及びアルツハイマー病を伴うCAA を含むあらゆる形態のCAA であり得る。個体は、脳アミロイドーシスの危険因子を有するか、又は脳アミロイドーシスを発症する危険性があり得る。このような危険因子は、アルツハイマー病及びCAA を発症する危険性の増加に関連するアポリポタンパク質EのApoE4 対立遺伝子を含むが、これに限定されない。個体は、脳アミロイドーシスであると既に診断されている場合がある。更に個体は、脳アミロイドーシスであると診断されてはいないが、疾患の内の1つの顕著な特徴を示している場合がある。更なる実施形態では、アルツハイマー病は、ダウン症によって引き起こされるか、又はダウン症と関連がある。
更に処置は、一又は複数の薬理シャペロンの組合せを含んでもよく、他の既知のアルツハイマー処置又は他の脳アミロイドーシスと更に組み合わせられてもよい。処置は、1、2、3以上の薬理シャペロンの組合せ、又は1、2、3以上のシャペロンとグルコシルセラミド合成酵素の一又は複数の阻害剤との組合せを更に含んでもよい。一又は複数のシャペロンとグルコシルセラミド合成酵素の一又は複数の阻害剤とを含む併用療法は、ガングリオシダーゼの活性を上昇させ、且つグルコシルセラミド合成酵素の活性を低下させることができる。
定義
本明細書で用いられる用語は一般に、本発明の文脈の中で及び各用語が使用される具体的文脈の中で当技術分野におけるその通常の意味を有する。一部の用語は、本発明並びに本発明の作製及び使用方法を説明する上で実施者に対する更なる指針を提供するために、以下で又は本明細書の他の箇所で述べられる。
本明細書に使用する場合、「薬理シャペロン」という用語は、一又は複数のガングリオシダーゼ及び/又はシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼに特異的に結合して以下の効果の内の一又は複数を有する分子を指す。(i) タンパク質の安定した分子構造の形成を高める;(ii)ERから別の細胞位置、好ましくは本来の細胞位置へのタンパク質の適切な輸送を高める、すなわち、タンパク質のER関連分解を防止する;(iii) 構造的に不安定な、すなわち、ミスフォールディングしたタンパク質の凝集を防止する;(iv)タンパク質の少なくとも一部の野生型機能、安定性及び/若しくは活性を回復させるか若しくは高める;並びに/又は(v) 細胞の表現型若しくは機能を改善する。従って、ガングリオシダーゼ又はシアリダーゼの薬理シャペロンとは、一又は複数のガングリオシダーゼ及び/又はシアリダーゼに結合して、適切なフォールディング、輸送、非凝集、並びにガングリオシダーゼ及び/又はシアリダーゼの活性の増加をもたらす分子である。これには、タンパク質の安定性を高める特異的結合分子、例えば、活性部位特異的シャペロン、阻害剤、アロステリック結合剤、非活性部位結合剤が含まれる。一又は複数の実施形態では、薬理シャペロンはAdDNJ のようなβ−Hex に特有である。
「薬理シャペロン」(PC)という用語は、標的タンパク質を選択的に結合して安定化させ、適切なフォールディングを促進して早期分解を低下させ、ER輸出の効率を増大させる小分子を指す。これらの小分子は、タンパク質が合成される場所(ER)からその意図される場所(例えば、リソソーム又は細胞表面)にタンパク質が至るのを助けるので「シャペロン」と称される。これらの分子は、タンパク質標的を結合して安定化させ、適切な輸送の回復を助けた後、解離する可逆的結合剤であり、そのため、タンパク質はその適切な機能を実行することができる。「薬理学的」修飾因子は分子の特異性を意味する。これらの分子は、意図される単一のタンパク質標的のみと相互作用してこのタンパク質標的を安定化させるように設計され、PCは通常、複数のタンパク質又は細胞プロセス、例えばタンパク質輸送、ER品質管理、プロテアソーム機能若しくは生物学的シャペロン(例えば、熱ショックタンパク質)の活性に影響を及ぼさない。この手法は、特定のタンパク質(突然変異体又は野生型)の機能を増大させることによって治療効果がもたらされると予測される疾患に広く適用できる。
不正確にフォールディングしたタンパク質の保持及び早期分解は、突然変異体タンパク質に限られたものではない。全ての新たに合成されるタンパク質の大部分(最大30%)は、プロテアソームによる早期分解の標的とされることが示されている。その後の試験により、薬理シャペロンは、タンパク質のフォールディング、安定性及びER輸出を促進することによって、多くの野生型タンパク質の細胞レベルを上昇させることができることが示されている。
分子シャペロンはタンパク質の構造を安定化する。
ヒトの体内で、タンパク質は、細胞機能のほとんど全ての局面に関与している。あるヒト疾患は、その安定性を低下させてタンパク質が適切にフォールディングするのを妨げ得るタンパク質のアミノ酸配列の変化を引き起こす突然変異に起因する。安定性が低い又はミスフォールディングしたタンパク質の産生をもたらす遺伝子突然変異の大部分は、ミスセンス突然変異と称される。これらの突然変異は、タンパク質中の単一アミノ酸の、別のアミノ酸への置換をもたらす。このようなエラーのために、ミスセンス突然変異は、生物学的活性のレベルが低下したタンパク質を生じさせることが多い。ミスセンス突然変異の他に、生物学的活性が低下したタンパク質を生じさせ得る他の種類の突然変異もある。
タンパク質は通常、小胞体、つまりERとして知られる細胞の特定の領域でフォールディングする。細胞は、タンパク質がその正確な3次元形状にフォールディングした後、一般にタンパク質輸送と称されるプロセスである、ERから細胞内の適切な目的地への移動を可能にすることを保証する品質管理機構を有する。ミスフォールドしたタンパク質及び/又は不安定なタンパク質は、最初にERに保持された後、品質管理機構によって排除されることが多い。場合によっては、ミスフォールドしたタンパク質は、排除される前にERに蓄積することがある。
ERでのミスフォールドしたタンパク質の保持は、その適切な輸送を妨害し、その結果として生じる生物学的活性の低下は、細胞機能の障害、最終的には疾患を引き起こすことがある。加えて、ERでのミスフォールドしたタンパク質の蓄積は、細胞機能障害及び疾患の一因ともなり得る、細胞に対する様々な種類のストレスをもたらす可能性がある。
内因性分子シャペロンは、ほとんど全ての種類の細胞及び大半の細胞区画に存在する。タンパク質の輸送に関与し、細胞が熱ショック及びグルコース飢餓などのストレス下で生存するのを可能にするものもある。内因性シャペロン(分子シャペロン)の中で、BiP(免疫グロブリン重鎖結合タンパク質、Grp78)は最も良く特徴付けられているERのシャペロンである。他のシャペロンと同様に、BiPは、その成熟を通してER内で多くの分泌タンパク質及び膜タンパク質と相互作用する。新たに始まるタンパク質フォールディングが順調に進行する場合、この相互作用は、通常弱く、長続きしない。本来のタンパク質構造が達成されると、分子シャペロンはタンパク質と相互作用しなくなる。フォールディングできないか、会合できないか、又は適切にグリコシル化できないタンパク質へのBiP結合は安定したものとなり、通常、ER関連分解経路によるタンパク質の分解をもたらす。このプロセスは、ERでの「品質管理」システムとしての機能を果たし、適切にフォールディング及び会合したタンパク質だけがERから外へ輸送されて更に成熟し、不適切にフォールディングしたタンパク質、又は不安定なタンパク質は保持されて、後に分解されることを保証している。熱力学的タンパク質フォールディングプロセス及びER品質管理システムの効率の悪さの複合作用のために、いくつかの野生型タンパク質のごく一部だけが安定した構造へとフォールディングされるようになって、ERから脱出するのに成功する。
特異的な酵素阻害剤に由来する薬理シャペロンは突然変異体酵素を救済し、野生型酵素を増強する。
リソソーム蓄積症(LSD)と関連する酵素の低分子阻害剤の結合は、例えば、突然変異体酵素及び対応する野生型酵素の両方の安定性を増大させることができる(全て参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6274597号明細書;米国特許第6583158号明細書;米国特許第6589964号明細書;米国特許第6599919号明細書;米国特許第6916829号明細書;及び米国特許第7141582号明細書参照)。特に、いくつかの標的リソソーム酵素の特異的で、選択的な競合阻害剤である、グルコース及びガラクトースの低分子誘導体の投与が、インビトロで細胞の酵素の安定性を効果的に増大させ、それにより、酵素のリソソームへの輸送を増大させることが発見された。従って、リソソームの酵素の量を増大させることにより、酵素基質の加水分解が増大すると考えられる。突然変異体酵素タンパク質はER中で不安定であるので、酵素タンパク質は、通常の輸送経路(ER→ゴルジ装置→エンドソーム→リソソーム)で遅延し、早期に分解される。従って、突然変異体酵素に結合してその安定性を増大させる特定の化合物は、その酵素の「シャペロン」としての役割を果たし、ERから脱出してリソソームに移ることができる量を増大させることができる。
いくつかの酵素阻害剤は、酵素の触媒中心(「活性部位」)に特異的に結合し、インビトロでの酵素構造の安定化をもたらすことが知られているので、これらの阻害剤は、いささか逆説的ではあるが、ERからの脱出、リソソームへの輸送、加水分解活性の回復を助けることができる効果的なシャペロンであると提案された。これらの特異的薬理シャペロンは、酵素の活性部位に特異的に結合するので、「活性部位特異的シャペロン(ASSC)」又は「特異的薬理シャペロン」と称された。低分子は経口投与されることができ、かつタンパク質ベースの治療と比べて優れた生体分布を有し得るので、薬理シャペロン療法は、酵素補充療法(ERT)に優る潜在的な利点を有する。
突然変異体酵素を救済するのに加えて、薬理シャペロンは、野生型酵素のER分泌及び活性を高める。従って、フォールディング中に酵素の安定した分子構造を誘導する化合物は、酵素を適切な構造に安定化してERから脱出させる「シャペロン」としての役割を果たす。
「ガングリオシド」又は「シアロガングリシド」という用語は、N−アシルスフィンゴシンと一又は複数のN−アセチルノイラミン酸(シアル酸、NeuAc)残基を有するオリゴ糖鎖とからなるスフィンゴ糖脂質を指す。
「アシアロガングリオシド」という用語は、N−アセチルノイラミン酸(シアル酸、NeuAc)残基を含まないガングリオシドを指し、これには、LacCer、GA2及びGA1(Ariga 等著)が含まれる。
「ガングリオシダーゼ」という用語は、ガングリオシド及びアシアロガングリオシドの非還元末端単位から順次、個々のN−アセチルノイラミン酸(シアル酸、NeuAc)残基及び糖残基を除去するシアリダーゼ及びエキソグリコヒドロラーゼを指す。この分解は、主にエンドサイトーシス−エンドソーム−リソソーム経路を通じて生じる。ガングリオシダーゼの例として、シアリダーゼ2(ノイラミニダーゼ2;NEU2)、シアリダーゼ3(ノイラミニダーゼ3;NEU3)、シアリダーゼ4(ノイラミニダーゼ4;NEU4)、β−ガラクトシダーゼ(GLB1)、β−ヘキソサミニダーゼA(HEXA/HEXB)、β−ヘキソサミニダーゼB(HEXB)、及びβ−ヘキソサミニダーゼS(HEXS)が挙げられる。
「シアリダーゼ」という用語は、ガングリオシド、オリゴ糖及び糖タンパク質の非還元末端単位から個々のN−アセチルノイラミン酸(シアル酸、NeuAc)残基を除去する酵素を指す。「シアリダーゼ」という用語は、エンドソーム−リソソーム経路でガングリオシドから個々のN−アセチルノイラミン酸残基を除去する酵素のシアリダーゼ2(ノイラミニダーゼ2)、シアリダーゼ3(ノイラミニダーゼ3)及びシアリダーゼ4(ノイラミニダーゼ4)、並びにオリゴ糖及び糖タンパク質から個々のN−アセチルノイラミン酸残基を除去するシアリダーゼ1を含む。ガングリオシド上のN−アセチルノイラミン酸残基は、Aβ結合親和性を増大させ、β−シート構造を誘導する傾向を高めることが示されている。最近、APP/PSENマウス(APPswe+PSEN1 A’E9)でジシアロガングリオシド合成酵素(GD3S)をノックアウトすると、Aβの蓄積とその後のAPP/PSENマウスに特有の記憶障害の発症の両方が抑制されることが報告された。Bernardo等著,Neurobiology of Aging,In Press,Corrected Proof,「Elimination of GD3 synthase improves memory and reduces amyloid-[beta] plaque load in transgenic mice.」。GD3Sは、α-2,8- 結合を介してシアル酸をシアル酸に連結し、b系列及びc系列のガングリオシドの合成に必要とされる。これらの結果は、ガングリオシド上のシアル酸含有量を減少させることが、ADを治療する上で有益であり得ることを示唆している。
リソソーム酵素「β−ガラクトシダーゼ」は、アシアロガングリオシド及びシアロガングリオシドの非還元末端からβ1,3-ガラクトースを除去するエキソヒドロラーゼである。β−ガラクトシダーゼGLB1をコードする遺伝子の突然変異は、β−ガラクトシダーゼ活性の欠損並びにGA1及びGM1ガングリオシドの蓄積が原因で生じるリソソーム貯蔵障害のGM1ガングリオシドーシスを引き起こす。Beutler, E.等著,Biol. Chem. ,247(22): 7195-200 (1972)。GM1ガングリオシドは、細胞培養物でのAβの生成及び会合を促進するマイクロドメインの主要構成要素であり、GM1に結合したAβ(υAβ)は、ADの病状の初期段階を示す脳に見出されている。
リソソーム酵素のβ−ヘキソサミニダーゼA及びBは、アシアロガングリオシド及びシアロガングリオシドの非還元末端からβ結合N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)を加水分解する。GM1ガングリオシドが最も注目を集めているが、他のa系列ガングリオシド(GD1A、GM2及びGM3)もインビトロでAβに結合し、その会合を促進する。
β−ヘキソサミニダーゼの2つのアイソザイム、HEXA及びHEXBが存在する。HEXAがα−サブユニットとβ−サブユニット(αβ)からなるのに対し、HEXBは2つのβ−サブユニット(ββ)からなる。HEXAは、HEXAのα−サブユニットをコードし、HEXBはHEXA及びHEXBのβ−サブユニットをコードする。HEXAの突然変異は、HEXA活性の欠損及びGM2の蓄積が原因で生じるリソソーム貯蔵障害のテイ・サックス病を引き起こす。HEXBの突然変異は、HEXA活性及びHEXB活性の欠損並びにGM2及びGA2の蓄積が原因で生じるリソソーム貯蔵障害のサンドホフ病を引き起こす。
本明細書で使用する場合、「特異的に結合する」という用語は、薬理シャペロンと、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ、又はグルコセレブロシダーゼとの相互作用、特に、薬理シャペロンと接触するときに直接関与する、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ、又はグルコセレブロシダーゼのアミノ酸残基との相互作用を指す。薬理シャペロンは、標的タンパク質、例えば、β−ヘキソサミニダーゼBと特異的に結合して、この酵素に対するシャペロン効果を発揮し、かつ関連タンパク質又は無関係なタンパク質の一般群に対するシャペロン効果を発揮しない。任意の所与の薬理シャペロンと相互作用するβ−ヘキソサミニダーゼのアミノ酸残基は、タンパク質の「活性部位」にある場合もあるし、タンパク質の「活性部位」にない場合もある。特異的結合は、ルーチンの結合アッセイ(例えば、阻害、熱安定性)によって、又は構造試験、例えば、共結晶化、NMRなどによって評価され得る。
本明細書で使用する場合、「安定性を高める」又は「安定性を増大させる」という用語は、インビトロで、又は薬理シャペロンと接触していないガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ(好ましくは、例えば、それより前の同じ細胞型又は同じ細胞のもの)、若しくはグルコセレブロシダーゼと比べて、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ、若しくはグルコセレブロシダーゼに特異的な薬理シャペロンと接触した細胞内で、不可逆的な不活化に対する酵素耐性を増大させることを指す。タンパク質安定性を増大させると、ERでのタンパク質の半減期及びERから輸送される機能タンパク質の量が増大する。本発明の一態様では、野生型ガングリオシダーゼ若しくはシアリダーゼ、又はグルコセレブロシダーゼの安定性を高めるか又は増大させる。本発明の別の態様では、突然変異体ガングリオシダーゼ若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの構造安定性を高めるか又は増大させる。
本明細書で使用する場合、「輸送を高める」又は「輸送を増大させる」という用語は、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼに特異的な薬理シャペロンと接触していない(好ましくは、例えば、それより前の同じ細胞型又は同じ細胞)の細胞におけるガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの輸送効率と比べて、一又は複数のガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼに特異的な薬理シャペロンと接触した細胞の細胞質ゾル(シアリダーゼ 2)又はエンドソーム及びリソソームへのガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの輸送効率を増大させることを指す。
本明細書で使用する場合、「活性を高める」又は「活性を増大させる」という用語は、一又は複数のガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼに特異的な薬理シャペロンと接触していない(好ましくは、例えば、それより前の同じ細胞型又は同じ細胞)の細胞におけるガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの活性と比べて、一又は複数のガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼに特異的な薬理シャペロンと接触した細胞における、本明細書に記載されているような、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの活性を増大させることを指す。本発明の薬理シャペロンは、細胞内の酵素の総量を増大させることによって、及び/又は酵素の比活性を増大させることによって酵素活性を増大させることもできる。
「比活性」という用語は、酵素が、単位時間で、酵素調製中のタンパク質1ミリグラム当たりに変換する基質の量を指す。
本明細書で使用する場合、「レベルを高める」又は「レベルを上昇させる」という用語は、一又は複数のガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼに特異的な薬理シャペロンと接触していない(好ましくは、例えば、それより前の同じ細胞型又は同じ細胞)の細胞におけるガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼのレベルと比べて、一又は複数のガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼに特異的な薬理シャペロンと接触した細胞における一又は複数のガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼのレベルを上昇させることを指す。
「適切な構造を安定化する」という用語は、その意図される機能を果たす野生型ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの構造と機能的に同一の突然変異型又は野生型ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼ酵素の構造を誘導又は安定化するガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの薬理シャペロンの能力を指す。
「機能的に同一の」という用語は、構造にわずかなばらつきはあり得るが(ほとんど全てのタンパク質はその生理的状態において若干の構造的柔軟性を示す)、構造的柔軟性が、野生型タンパク質よりも大きい程度に又は小さい程度に、(1)タンパク質凝集、(2)小胞体関連分解経路による排除、(3)タンパク質機能の障害、例えば、APP代謝活性、及び/又は(4)細胞内での不適切な輸送、例えば、細胞質ゾルへの局在化を生じさせないことを指す。
「安定した分子構造」という用語は、細胞内の少なくとも一部の野生型機能を提供するか又は野生型機能を高める薬理シャペロンによって誘導されるタンパク質、すなわち、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの構造を指す。例えば、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの安定した分子構造は、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼが、ミスフォールドして分解されることなく、かつ/又はその意図される機能を発揮しないことなく、ERを離れて細胞質ゾルに輸送される場合の構造である。更に、突然変異型ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの安定した分子構造は、完全な又は部分的な活性を有することもできる。しかしながら、安定した分子構造が野生型タンパク質の機能的属性の全てを有する必要はない。
「活性」という用語は、細胞内における野生型のガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの正常な意図した生理機能を指す。例えば、ガングリオシダーゼ活性及び/又はシアリダーゼ活性にはガングリオシドの異化が含まれ、グルコセレブロシダーゼ活性にはスフィンゴ糖脂質グルコシルセラミドの異化が含まれる。そのような機能性は、機能性を立証することが知られている任意の手段によって試験され得る。
「ガングリオシド異化」という用語は、シアリダーゼ及びエキソグリコヒドロラーゼによってアシアロガングリオシド及びシアロガングリオシドの非還元末端単位から順次、個々のシアル酸及び糖残基を除去して、セラミドを形成させることを指す。この分解は、細胞質ゾルにあるシアリダーゼ2を除いて、主にエンドサイトーシス−エンドソーム−リソソーム経路を通じて起こる。
非限定的な一実施形態では、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ、又はグルコセレブロシダーゼポリペプチドは、野生型ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼをコードする核酸分子との50%、60%、70%未満、80%未満及び最大100%の相同性を示す任意の核酸分子、並びにこれらの配列に標準的な条件下でハイブリッド形成する任意の配列によってコードされてもよい。別の非限定的な実施形態では、任意の他のヌクレオチド配列が、ERでの機能的な構造を達成し、細胞内での適切な局在化を達成し、かつ野生型活性を示す能力を有する(前述のポリペプチド配列と同じ機能特性及び結合親和性を有する)ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼポリペプチド、例えば正常個体の対立遺伝子変異体をコードする。
本明細書で使用する場合、「突然変異体」ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼという用語は、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼのアミノ酸配列の変化を生じさせる遺伝子突然変異を含む遺伝子から翻訳されるガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼポリペプチドを指す。一実施形態では、突然変異は、野生型ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ若しくはグルコセレブロシダーゼと比較したとき、ERに通常存在する条件下で本来の構造を達成しないか、又は野生型ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ若しくはグルコセレブロシダーゼと比較したときに、安定性若しくは活性の低下を示すガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼタンパク質を生じさせる。この種の突然変異は、本明細書では「構造突然変異」と称され、このような突然変異を有するタンパク質は、「構造突然変異体」と称される。この構造の達成がうまく行かないと、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼタンパク質は分解されるか、又は凝集し、タンパク質輸送系の通常の経路を通した、細胞内のその本来の位置への又は細胞外環境への輸送は行なわれない。ある実施形態では、突然変異は、あまり効率的でないタンパク質発現をもたらす、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼをコードする遺伝子の非コード部分に生じる場合があり、これには、例えば、転写効率、スプライシング効率、mRNA安定性などに影響を及ぼす突然変異がある。ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの野生型及び構造突然変異体の発現レベルを高めることにより、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの薬理シャペロンの投与は、このような非効率なタンパク質発現に起因する欠損を改善することができる。
ある試験は、その実際のインビボ活性に相当したり、相当しなかったりするが、それでもタンパク質機能性の適切な代替物となるタンパク質の属性を評価することができ、このような試験での野生型の挙動は、本発明のタンパク質フォールディング救済又は増強技術を裏付ける証拠を示す。本発明に係るこのような活性の一つは、機能的なガングリオシダーゼ及び/又はシアリダーゼの、小胞体から細胞質ゾルへの適切な輸送である。
「内因性発現」及び「内因性に発現される」という用語は、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼ欠損、ドミナントネガティブ突然変異体の過剰発現、又は他の欠陥、例えば、その発現、活性若しくは安定性を変化させる、例えば阻害するガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ若しくはグルコセレブロシダーゼ核酸若しくはポリペプチド配列の突然変異と関連する疾患若しくは障害を有さないか又は有すると疑われない個体の細胞におけるガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの通常の生理的発現を指す。この用語はまた、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼが健康個体で通常発現される細胞又は細胞型におけるそれらの発現を指し、ガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼが健康個体で発現されない細胞又は細胞型、例えば、腫瘍細胞におけるガングリオシダーゼ及び/若しくはシアリダーゼ又はグルコセレブロシダーゼの発現を含まない。
本明細書で使用する場合、「上昇したガングリオシド」は、脳のガングリオシドレベルが上昇している個体、患者又は患者集団を指す。ガングリオシドレベルは、細胞全体の膜、また同様にマイクロドメイン内で上昇してもよい。「マイクロドメイン」又は「脂質ラフト」という用語は、コレステロール、スフィンゴ糖脂質及びガングリオシドが濃縮された、細胞膜に見られる界面活性剤耐性領域を指す。本発明の一態様では、薬理シャペロンは、脳のガングリオシドを異化することが知られている酵素の活性を増大させることによって、マイクロドメイン又は脂質ラフトのガングリオシドレベルを低下させるために用いられる。
本明細書で使用する場合、「輸送効率」という用語は、小胞体から外に出て、細胞内、細胞膜内のその本来の位置へ、又は細胞外環境へと輸送されるタンパク質の能力を指す。
酵素の「競合阻害剤」は、酵素基質の化学構造及び分子形状が構造的に類似していて、基質と略同じ部位で酵素を結合する化合物を指すことができる。従って、この阻害剤は、基質分子と同じ活性部位を競合し、それによりKmを増大させる。競合阻害は一般に、阻害剤を排除するほどの十分な基質分子が利用可能な場合は可逆的である、すなわち、競合阻害剤は可逆的に結合することができる。従って、酵素阻害の量は、阻害剤濃度、基質濃度、及び阻害剤と基質との活性部位に対する相対的親和性によって決まる。
非古典的な競合阻害は、阻害剤が酵素の活性部位から離れたところで結合し、基質が酵素に結合することができなくなるような酵素の構造変化を起こす場合に起こる。非古典的な競合阻害では、活性部位での基質の結合によって、離れた部位での阻害剤の結合が妨げられ、逆もまた同様である。これには、アロステリック阻害が含まれる。
酵素の「線形混合型阻害剤」は、基質が結合するのを可能にするが、その親和性を低下させ、その結果、Kmを増大させ、Vmaxを低下させるタイプの競合阻害剤である。
「非競合阻害剤」は、酵素との強い結合を形成し、過剰な基質の添加によって排除することができない化合物を指す。すなわち、非競合阻害剤は不可逆的であることができる。非競合阻害剤は、酵素又はタンパク質の活性部位、その近く、又はそこから離れた部位で結合することができ、酵素に関してKmに対する効果はないが、Vmaxを減少させる。非競合阻害は、阻害剤が酵素−基質(ES)複合体だけに結合する状況を指す。酵素は阻害剤が結合すると不活性になる。これは、基質の非存在下で酵素に結合することができる非古典的競合阻害剤とは異なる。
「Vmax」という用語は、酵素触媒反応の最大初期速度、すなわち、飽和基質レベルでの速度を指す。「Km」という用語は、Vmaxの2分の1を達成するのに必要な基質濃度である。
酵素「エンハンサ」は、ガングリオシダーゼ及び/又はシアリダーゼに結合し、酵素反応速度を増大させる化合物である。
「治療有効用量」及び「有効量」という用語は、適切な細胞位置で既に発現したタンパク質を阻害することなく(アンタゴニストの場合)、又は適切な細胞位置からのタンパク質のリガンド媒介性受容体内在化を誘発することなく(アゴニストの場合)、ERでの(機能的構造を可能にする)タンパク質プロセシングを高めて、標的タンパク質の活性を高め、それにより、対象における治療応答を生じさせるのに十分な量を指す。治療応答は、使用者(例えば、臨床医)が有効な治療応答と認識する任意の応答であることができ、これには、前述の症状及び代用臨床マーカが含まれる。従って、治療応答は一般に、疾患又は障害、例えばアルツハイマー病の一又は複数の症状の改善又は阻害である。
「医薬として許容される」という表現は、ヒトに投与したときに、生理的に耐えられ、かつ通常は有害反応を起こさない分子実体及び組成物を指す。好ましくは、本明細書で使用する場合、「医薬として許容される」という用語は、連邦政府若しくは州政府の規制当局によって認可されているか、又は動物、より具体的にはヒトでの使用について米国薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方に記載されていることを意味する。「担体」という用語は、ともに化合物を投与する希釈剤、補助剤、賦形剤又は任意の溶媒を指す。このような医薬担体は、例えば、水及び油などの滅菌液であり得る。水又は水溶液の生理食塩水溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液は、特に注射溶液用の担体として利用されることが好ましい。好適な医薬担体は、E.W.Martin著,「Remington’s Pharmaceutical Sciences」,第18版又は他の版に記載されている。
「約」及び「略」という用語は一般に、測定の性質又は精度を考慮して測定された量についての許容される誤差の程度を意味するものとする。通常、例示的な誤差の程度は、所与の値又は値の範囲の20パーセント(%)以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内である。或いは、特に生物系では、「約」及び「略」という用語は、所与の値の1桁以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内の値を意味することができる。本明細書に示される数量は、特に記載されない限り、近似であり、明示的に記載されていない場合に「約」又は「略」という用語が暗示され得ることを意味する。
本明細書で使用する場合、「単離された」という用語は、言及された材料が、この材料が通常見られる環境から取り除かれていることを意味する。従って、単離された生体材料は、細胞成分、すなわち、その材料が見られるか又は産生される細胞の成分を含まないことがあり得る。核酸分子の場合、単離された核酸には、PCR産物、ゲル上のmRNAバンド、cDNA、又は制限断片が含まれる。別の実施形態では、単離された核酸は、その核酸が見られる染色体から切り出されていることが好ましく、かつ染色体に見られるとき、単離された核酸分子によって含まれる遺伝子の上流又は下流に位置する非調節性、非コード領域、又は他の遺伝子に結合していないことがより好ましい。また別の実施形態では、単離された核酸は一又は複数のイントロンを欠く。単離された核酸には、プラスミド、コスミド、人工染色体などに挿入された配列が含まれる。従って、特定の実施形態では、組換え核酸は単離された核酸である。単離されたタンパク質は、そのタンパク質が細胞内で結合している他のタンパク質若しくは核酸、若しくは両方と、又はそのタンパク質が膜結合型タンパク質である場合には細胞膜と結合してもよい。単離された細胞小器官、細胞又は組織は、これらが生物内で見られる解剖学的部位から取り除かれている。単離された材料は、精製されてもよいが、精製される必要はない。
本明細書で使用される「精製された」という用語は、無関係な材料、すなわち汚染物質を減少させるか又は排除する条件下で単離されたガングリオシダーゼ及び/又はシアリダーゼの核酸又はポリペプチドなどの材料を指す。例えば、精製されたタンパク質は、そのタンパク質が細胞内で結合している他のタンパク質又は核酸を実質的に含まないことが好ましい。本明細書で使用する場合、「実質的に含まない」という用語は、材料の分析的実験の文脈で操作上用いられる。好ましくは、汚染物質を実質的に含まない精製された材料は、少なくとも50%純粋であり、より好ましくは少なくとも90%純粋であり、より好ましくは、更に少なくとも99%純粋である。純度は、従来の手段、例えば、クロマトグラフィ、ゲル電気泳動法、免疫測定法、組成分析、生物学的試験法、及び当技術分野で公知の他の方法によって評価され得る。
「タウオパシー」という用語は、ヒトの脳で神経原線維のもつれ(NFT)を形成させるタウタンパク質の病的凝集によって生じる任意の状態を指し、これには、(限定するものではないが)前頭側頭認知症、アルツハイマー病、進行性核上麻痺、皮質基底核変性症及び前頭側頭葉変性症(ピック病)などの疾患が含まれる。
「脳アミロイドーシス」という用語は、脳又は脳の血管にアミロイドの沈着又は蓄積が生じる状態を指す。脳アミロイドーシスの例として、アルツハイマー病及び脳アミロイド血管症(CAA) を含むが、これらに限定されない。
「アルツハイマー病」又は「AD」という用語は、緩徐進行性認知症及び肉眼的皮質性脳萎縮症を特徴とする状態を指す。β−アミロイド神経斑、ニューロン内の神経原線維のもつれ、及びアミロイド血管症の存在は、ADの顕著な特徴であり、死体の検死の際に観察される。ADは、家族性発現する遺伝性のものである場合もあるし、散発性のものである場合もある。本明細書では、ADは、表現型発現に基づいて、家族性、散発性、並びにそれらの中間及びサブグループを含む。家族性ADが一般に早発性(65歳より前)であるのに対し、散発性ADは一般に遅発性(65歳以降)である。非限定的な実施形態では、家族性ADは、プレセニリン1(ヒトプレセニリン1、ジェンバンク受託番号NM_000021、NM_007318、及びNM_007319;マウスプレセニリン1、ジェンバンク受託番号NM_008943;並びにラットプレセニリン1、ジェンバンク受託番号NM_019163)、プレセニリン2(ヒトプレセニリン2、ジェンバンク受託番号NM_000447、及びNM_012486;マウスプレセニリン2、ジェンバンク受託番号NM_011183;並びにラットプレセニリン2、ジェンバンク受託番号NM_031087)、及びアミロイド前駆体タンパク質(APP)(ヒトAPP、ジェンバンク受託番号NM_201414、NM_201413、及びNM_000484;マウスAPP、ジェンバンク受託番号NM_007471;並びにラットAPP、ジェンバンク受託番号NM_019288)を含む群から選択される一又は複数の遺伝子の突然変異と関連することができる。散発性ADは、直接試験され得ないが、特定の危険因子が、散発性ADの発症に対する個体の感受性を増大させる可能性がある。1つの非限定的な実施形態では、アポリポタンパク質E(APOE)(ヒトAPOE、ジェンバンク受託番号NM_000041;マウスAPOE、ジェンバンク受託番号NM_009696;及びラットAPOE、ジェンバンク受託番号NM_138828)の少なくとも1コピーのe4対立遺伝子を有する個体は、遅発性の散発性ADを発症する危険性がある。
この用語は、21トリソミー、すなわちダウン症(DS)を有し、アルツハイマー病(AD)の特徴的病変である脳アミロイド(Aβ)斑及び神経原線維のもつれ(NFT)を含む、ADの臨床的及び神経病理学的な特徴と同一の認知症を(20代又は30代で)発症する個体も含む。最近の研究により、Aβ42は、ダウン症脳に沈着するこのタンパク質の最早期の形態であり、若くて12歳位の対象に見られ得ること、及び可溶性Aβは、Aβ斑の形成のずっと前、早くて妊娠21週にはDS対象の脳で検出され得ることが示されている。Gyure 等著,Archives of Pathology and Laboratory Medicine 125: 489-492 (2000)。
本発明の目的のために、「神経障害」は、アミロイド前駆体タンパク質(APP)のβ−アミロイド原性プロセシングと関連する任意の中枢神経系(CNS)又は末梢神経系(PNS)疾患を指す。これは、ニューロンの損失、ニューロンの変性、ニューロンの脱髄、グリオーシス(すなわち、アストログリオーシス)、又はニューロン若しくはニューロン外への異常タンパク質若しくは毒素(例えば、アミロイド−β)の蓄積を含むが、これらに限定されないニューロン又はグリア細胞の欠陥を引き起こす場合がある。
1つの例示的な神経障害は、コンゴーレッド親和性血管障害とも称される脳アミロイド血管症(CAA)である。この障害は、アルツハイマー病に関連する同じアミロイドタンパク質であるアミロイド−β(Aβ)が、脳の軟髄膜及び浅大脳皮質血管の壁に沈着する血管障害の形態である。アミロイド沈着によって、これらの血管に障害が生じやすくなり、出血性脳卒中の危険性が増大する。このアミロイドは、アルツハイマー病の認知症に関連する同じアミロイドタンパク質であるので、このような脳出血は、アルツハイマー病に罹患している人に多く見られるが、認知症の既往歴のない人にも起こることがある。脳内の出血は通常、特定の葉に限定され、これは、出血性脳卒中(又は脳出血)のより一般的な原因である高血圧(高血圧症)の結果として起こる脳出血と比較すると、若干異なっている。CAAは、一過性脳虚血発作、くも膜下出血、ダウン症、照射後壊死、多発性硬化症、白質脳症、海綿状脳症、及びボクサー認知症とも関連する。本発明の実施形態に従って処置されてもよいCAAの典型的な形態は、(家族性CAAとしても知られている)遺伝性CAA及びアミロイドーシスを伴う遺伝性脳出血−オランダ型(HCHWA-D) を含んでいる。ある実施形態では、遺伝性CAAは、APPの突然変異によって引き起こされる。
「個体」、「患者」又は「患者集団」という用語は、本明細書に記載されている様々な疾患の内の1つであると診断されたか、又はこれらの疾患の内の1つを発症する危険性がある一又は複数の人を指す。例えば個体は、家族性ADと診断されるか、又は家族性ADを発症する危険性がある場合がある。別の例では個体は、散発性ADと診断されるか、又は散発性ADを発症する危険性がある。ADの診断は、個体が示す遺伝子型又は表現型の特徴に基づいてなされ得る。例えば、プレセニリン1、プレセニリン2、又はAPPの突然変異体を有する個体は、家族性ADを発症する危険性がある。別の非限定的な例では、APOEのE4変異体を有する個体は、散発性ADを発症する危険性がある。
個体は、ADと関連する表現型を示すことによって、ADであると診断され得るか、又はADを発症する危険性があり得る。ADと関連する表現型は、認知に関するものであっても、精神医学的なものであってもよい。認知に関する表現型の例としては、記憶喪失、失語、失行及び失認が挙げられるが、これらに限定されない。精神医学的症状の例としては、人格変化、鬱状態、幻覚及び妄想が挙げられるが、これらに限定されない。1つの非限定的な例として、Diagnostic and Statistical Manual of Mental disorders,第4版(DSM-IV-TR)(American Psychiatric Associationにより出版)は、アルツハイマー病型の認知症に関する以下の基準の組を含んでいる:
A.複数の認知障害の発症が、記憶障害と失語、失行、失認及び実行機能障害の内の一又は複数との両方によって発現すること;
B.認知障害が、以前の機能からの低下を示し、社会的又は職業的機能の著しい障害を引き起こすこと;
C.その経過が、緩やかな発症と持続的な低下を特徴とすること;
D.認知障害が、記憶及び認知に進行性の障害を引き起こす他の中枢神経系疾患、全身性疾患、又は物質誘発性の疾患によるものでないこと;及び
E.障害が、別の精神障害ではうまく説明されないこと。
別の非限定的な例は、以下のような、アルツハイマー病に関する国立神経障害・脳卒中研究所−アルツハイマー病・関連障害協会(The National Institute of Neurological and Communicative Disorders and Stroke-Alzheimer’s Disease and Related Disorder Association)(NINDS-ADRDA)基準である:
A.確実なアルツハイマー病:ほぼ確実なアルツハイマー病の基準を満たし、剖検又は生検によるアルツハイマー病の組織病理学的な証拠がある
B.アルツハイマー病の可能性大:臨床的及び神経心理学的検査で確認され、かつ以下を含む認知症
(a)記憶を含む認知の2以上の領域で進行性の障害がある
(b)40〜90歳で発症する
(c)せん妄を含む認知症症候群を生じさせることができる全身疾患又は他の脳疾患が存在しない
C.アルツハイマー病の可能性中:発症、提示、又は進行が非定型であり、原因が不明の認知症症候群;認知症を生じさせることができる任意の合併症が原因であるとは考えられない
D.アルツハイマー病の可能性小:突然発症、局所性神経学的兆候、又は病気の早い段階での発作若しくは歩行障害のいずれかを有する認知症症候群。
ADの表現型発現は更に、例えば、アミロイド−β斑の直接的(イメージング)検出又は間接的(生化学的)検出による物理的なものであってもよい。末梢血中のアミロイド−β(1−40)の定量は、線形イオントラップタンデム質量分析法と併用する高速液体クロマトグラフィを用いて実証されている(Du等著,J Biomol Tech.,16(4):356-63(2005))。蛍光相関分光法によるアルツハイマー病患者の脳脊髄液中での単一のβ−アミロイドタンパク質凝集の検出も記載されている(Pitschke等著,Nature Medicine,4:832-834(1998))。米国特許第5593846号明細書には、可溶性アミロイド−βを検出するための方法が記載されている。抗体を用いるアミロイド−βペプチド及び終末糖化産物受容体(RAGE)の間接的な検出も記載されている。最近、発色性基質を用いた脳脊髄液中のBACE−1活性の増大の生化学的検出も、ADの診断指標又は予後指標であると仮定されている(Verheijen 等著,Clin Chem.,Apr 13[Epub.](2006))。
β−アミロイドのインビボイメージングは、放射性ヨウ素標識フラボン誘導体を造影剤として用いて(Ono 等著,J Med Chem.,48(23):7253-60(2005))、及び(125 I-PUT-A 1-40を生じる)40残基の放射性ヨウ素標識Aペプチドに結合したプトレセイン(これは、血液脳関門を越えて、αβ斑に結合することが示された)などのアミロイド結合色素を用いて達成され得る(Wengenack等著,Nature Biotechnology,18(8):868-72(2000))。β−アミロイドのイメージングは、スチルベンSB−13及び(PIBとしても知られる)ベンゾチアゾール6−OH−BTA−1を用いても示された。Nicholaas 等著,Am J Geriatr Psychiatry, 12:584-595 (2004)。
実施例
本発明は、以下に示された実施例によって更に記載される。このような実施例の使用は単に例示のためであり、本発明又はあらゆる例示された用語の範囲及び意味を少しも限定するものではない。同様に、本発明は本明細書に記載されているあらゆる特定の好ましい実施形態に限定されるものではない。実際には、本発明の多くの修正及び変更が、本明細書を読むと当業者に明らかになる。従って、本発明は、特許請求の範囲の等価物の全範囲と共に添付の特許請求の範囲の用語のみによって限定されるものである。
実施例1:AdDNJ はBBBを通過して生存率に影響を及ぼすことなくβ−hex を増大させる
オランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスを処置するための治療方法としてβ−hex を標的とする薬理シャペロンAdDNJ を評価するために、本発明者らはまず、標的の関与及び細胞生存率への影響を評価するための試験を行った。更に、本発明者らのオランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスの概念実証(POC)試験で使用するための適切な用量及び投与計画を決定するために、本発明者らは、C57Bl6マウスを使用してAdDNJ に関する薬物動態試験及び用量反応/経時変化試験を完了した。薬物動態試験及び用量反応/経時変化試験の目的は、AdDNJ が血液脳関門(BBB) を通過することを確認することと、AdDNJ が阻止濃度未満に間欠的に低下してβ−hex からの分離及び基質の代謝回転を可能にしながら、C57BL/J6マウスにおける内因性野生型β−hex の脳レベルを最大に上昇させる連日投与の最小の用量及び最小の継続期間を決定することとであった。
材料及び方法
細胞生存率へのAdDNJ の影響
ヒト線維芽細胞(CRL2076 )及びヒト神経芽腫(SH-SY5Y) 細胞の生存率を、様々な濃度のAdDNJ に長期に亘って曝した後に試験した。96ウェルプレートで、線維芽細胞を、加湿型8%CO2 培養器内の1mMまでの増加する濃度のAdDNJ を含む完全培地で72時間又は120 時間37℃で培養した。製造業者の使用説明書(Promega Non-Radioactive 96-well Titer assay, TB112)に従ってテトラゾリウム−ホルマザン変換法を使用して生細胞を定量した。SH-SY5Y 細胞を、線維芽細胞と同じ方法であるが、コラーゲンで覆われたプレート(Nunc #152036)で培養して試験した。24時間、48時間及び120 時間、AdDNJ に曝した後、SH-SY5Y 生細胞を上記に記載したように定量した。全ての投与濃度を3回繰り返した。
酵素活性及びAdDNJ 選択性
AdDNJ 選択性を、ヘキソサミニダーゼ(Total Hex,Hex A/S及びHex B)と、3つの他のリソソーム加水分解酵素:アルファ−ガラクトシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼ及びグルコセレブロシダーゼとの酵素活性に対する作用を測定することにより評価した。酵素分析のために、野生型線維芽細胞(CRL2076) ペレット(〜2.5e6 細胞/ペレット)を、200 μlのpH 5溶解緩衝液(リン酸塩/クエン酸塩,0.25%のタウロコール酸塩,0.1 %のTX100 )で溶解した。線維芽細胞の溶解物を、2mMの適切な4−メチルウンベリフェリル(4-MU)基質を含むpH 5の反応緩衝液(TX100 無しの溶解緩衝液)で1:200 に希釈して、37℃で1時間培養し、0.5 Mの炭酸ナトリウムで停止した。放出された4MU を、Perkin Elmer Victor 5x 蛍光プレートリーダ(ex355/em460)を使用して測定した。総Hex 活性の測定を、4-メチルウンベリフェリルβ-N- アセチルグルコサミニド(MUG) を使用して、Hex A/S 活性に関して4MU−β-N- アセチルグルコサミン-6- 硫酸塩(MUGS)を使用して;Hex B 活性は総Hex 活性とHex A/S 活性との差で計算した;α−ガラクトシダーゼ活性に関して4MU−α-D- グルコピラノシド;β−ガラクトシダーゼ活性に関して4-MUβ-D- ガラクトシドを使用して;グルコセレブロシダーゼ活性に関して4MU β-D- グルコピラノシドを用いて行った。酵素阻害のための陽性対照として、100 μMの以下の化合物を使用した。α−ガラクトシダーゼに関して1-デオキシガラクトノジリマイシンを使用し、β−ガラクトシダーゼに関してN-ブチル-1- デオキシガラクトノジリマイシンを使用し、グルコセレブロシダーゼに関してイソファゴミンを使用した。β−ヘキソサミニダーゼ増強分析のために、線維芽細胞を0,95,390 及び780 nMのAdDNJ に5日間曝し、その後β−ヘキソサミニダーゼ活性の測定を行った。酵素活性の測定を2回繰り返した。
O-GlcNAcase 活性に対するAdDNJ の影響
細胞のO-GlcNAcase 活性に対するAdDNJ の影響を、野生型線維芽細胞(AG07059 ,Coriell )及びSH-SY5Y 細胞の両方で試験した。線維芽細胞を、加湿型8%CO2 培養器内の完全培地で10μMのAdDNJ 又はThiamet G 有り又は無しで24時間37℃で培養した。SH-SY5Y 細胞に関して、複数の濃度(0μM〜100 μM)のAdDNJ 及びThiamet G を使用した。細胞ペレットをRIPA緩衝液で溶解し、総タンパク質結合O-GlcNAcレベルをウェスタンブロットを使用して測定した。簡潔には、40μgの総タンパク質を分離して、PVDFに移し、抗O-GlcNAc抗体(18B10.C7, Pierce)を用いて調べた。化学発光を、Alpha Innotech FluoroChem Q imagerを用いて撮像し、AlphaView SAソフトウェア(Alpha Innotech)を用いたデンシトメトリによって定量した。ブロットを剥離して、抗カルネキシン抗体(ab22595, Abcam)を用いて再度調べた。O-GlcNAc定量のために、全レーンO-GlcNAcデンシトメトリをバックグラウンド減算し、カルネキシンロードコントロールバンドに正規化した。
AdDNJ の反復投与/用量反応及びPK試験
週齢5週間のC57BL/J6マウス(n=5マウス/群,Taconic Farms, Germantown,NY)に、溶媒(水)又はAdDNJ (30,100 又は300 mg/kg )を14日間毎日強制経口投与した。15日目にマウスを安楽死させ、分析のために脳/血漿を収集した。単一用量PK試験のために、週齢5週間のC57BL/J6マウス(n=5マウス/群,Taconic Farms,Germantown,NY)に、単一用量100 mg/kg のAdDNJ を与えて(強制経口)、投与してから0.5 、1、2、4、8、16、24及び48時間後に脳及び血漿分析のためにマウス群を安楽死させた。脳組織全体(10〜15mg)を、上記に記載されているようにβ−ヘキソサミニダーゼ活性を測定するために1mLのpH 5溶解緩衝液で均質化した。AdDNJ レベルをLC-MS/MSを使用して血漿及び脳の試料で測定した。
結果
AdDNJ は、β−hex の強力で特異的な阻害剤であり(Ki=253.4 nM(pH 5);Ki=342.3 nM(pH 7);図1a)、最大100 μMまでの濃度でO-GlcNAcase (図1c〜1d)を阻害せず、又はリソソーム酵素β−グルコセレブロシダーゼ(GCase ) 、α−ガラクトシダーゼ(α−Gal )又はβ−ガラクトシダーゼ(β−Gal )を10μMで阻害しなかった。最高濃度を試験した(図1e)。更にAdDNJ は、最大120 時間まで1mMのAdDNJ と同一の高い濃度で処置されたSH-SY5Y 及びヒト皮膚線維芽細胞に関して細胞生存率にほとんど影響を与えないか、又は全く影響を与えなかった(図1f〜1g)。健康なヒトの皮膚線維芽細胞を95、390 又は780 nMのAdDNJ で処置すると、β−hex レベルを用量依存的に最大3倍上昇させ(図1b)、AdDNJ がその標的β−hex に関与し得ることが実証された。
単一用量(強制経口)薬物動態試験では、用量100 mg/kg のAdDNJ がBBB を通過し、ERの中性pH環境(342 nM,β−hex 阻害のためのAdDNJ のKi(pH 7))でβ−hex の結合に有利に機能するのに十分であると予測される脳のレベルに達し、16時間以内にリソソームβ−hex を阻害すると予測されるレベル未満(つまり、253 nM,β−hex 阻害のためのAdDNJ のKi(pH 5))に低下したことが本発明者らによって分かった(図2a,b)。更に、30,100 及び300 mg/kg のAdDNJ を14日間毎日強制経口投与することにより、全脳抽出物におけるGM2 レベルを上昇させることなく(図10a 及び10c )、β−hex レベルが用量依存的に上昇する(図3a〜3b)ことが実証された。これらの用量では、β−hex レベルの最大上昇が処置の5日目までに生じた(図3a〜3b)。脳における上昇したβ−hex レベルの半減期は2日以下であった(データは不図示)ので、本発明者らは、β−Hex の増強を最大化すべくマウスを1日1回5日間処置し、その後(AdDNJ がない状態で基質の代謝回転を最大化すべく)2日間薬なしの処置方法を選択した。全ての用量はマウスに対して十分耐性を示した。
実施例2:AdDNJ の概念実証試験
次に、本発明者らは、AdDNJ がオランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスにおけるガングリオシド結合Aβ病状を減少させるか否かを評価するためにPOC 試験を行った。
動物及び試験設計
オランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスの生成及び特徴分析は、Gandy, S. 等著,「Days to criterion as an indicator of toxicity associated with human Alzheimer amyloid-beta oligomers」,Annals of neurology,68,220-230 (2010)に記載されている。月齢3ヶ月のオスのオランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスに、溶媒(水)(n=15)又は3、10、30若しくは100 mg/kg のAdDNJ (n=13)のいずれかを3ヶ月間、5日/週で強制経口投与した。全ての動物試験は認可され、動物管理使用委員会(the Institutional Animal Care and Usage Committee)に従って行われた。マウスを12時間の明/暗サイクルで病原体フリーの環境で保持して、食物及び水へのアクセスを適宜与えた。月齢6ヶ月の処置群及び月齢3ヶ月の未処置ベースライン群(n=15)を、NOR 試験、EPM 試験及びFC試験で認識に関して評価した。最後の用量から48時間後、マウスに氷冷した1xのPBS を潅流した。脳を取り除いて2つの半球に解剖した。2分の1をドライアイスで急速凍結して、生化学検査のために−80℃で保管し;他方の半分を、4%のパラホルムアルデヒドで後固定し、次にビブラトーム上で30μmの切片に矢状に切開し、組織学的分析まで貯蔵緩衝液に4℃で貯蔵した。
行動試験
マウスを部屋に順応させるために、試験前の1時間マウスを試験室に置いた。AdDNJ を最後に与える2週間前に、全ての試験を火曜日〜金曜日の午前8時〜午後3時の間に完了した。動物間の全ての機器を清潔にした。
新奇の物体認識(NOR )
1日目に、マウスを順応させるためにNOR アリーナ(直径20cm)に10分間置いた。2日目に、マウスに、2つのステージからなる試験段階を経験させた。試験段階1の間、マウスをアリーナに置いて、2つの同一の未知の物体を10分間探索させた。その後、マウスを1時間の間隔でホームケージに戻した。この時間中、マウスが既に探索した2つの物体の内の1つを取り除いて、新たな物体と取り換えた。試験段階2の間、マウスをアリーナに戻して、見慣れた物体及び新たな物体を4分間探索させた。頭上カメラを使用して試験を録画した。その後、物体の探索に費やした時間をANY-maze(Stoelting,Wood Dale,IL)を使用して測定した。
高架式十字迷路(EPM )
十字の構成の迷路は、中央のニュートラルゾーンと共に、互いに向き合って2つのクローズドアーム(35×5×16cm)に垂直な2つのオープンアーム(35×5×0cm)を有している(Stoelting ,Wood Dale ,IL)。マウスをニュートラルゾーンに置いて、8分間探索させた。各試験を頭上で録画して、ANY-maze(Stoelting,Wood Dale,IL)を使用してオープンアーム及びクローズドアームで費やした時間を採点した。アームへのエントリは、頭部及び2つの足がアーム内にあることと定めた。
恐怖条件付け
文脈的手がかり恐怖条件付けは、Steele, J.W.等著に記載されているように、ANY-Maze恐怖条件付けシステム(Stoelting Co., Wood Dale, IL, USA)を使用して評価された。早期の恐怖記憶障害は、TgCRND8 アルツハイマー病マウスモデルのシナプス可塑性及び分子構造の変化に関連している。The Journal of comparative neurology (2014)。
Aβ分析
右の半脳を、Kawarabayashi T.等著,「Age-dependent changes in brain, CSF, and plasma amyloid (beta) protein in the Tg2576 transgenic mouse model of Alzheimer's disease」,J Neurosci,21,372-381 (2001)に従って異なる界面活性剤可溶化によって処理した。本来のオリゴマーAβタンパク質構造の分析のために、可溶性TBS からの2〜4μLの天然タンパク質試料を、活性化/事前湿潤されたPVDF膜(0.22μm;Millipore)上にスポットして乾燥させた。タンパク質のスポットの後、0.1 %v/v のトゥイーン-20 (Fisher Scientific; TBS-T)を含有するTBS 内の5%w/v 脱脂乳(Santa Cruz)内で室温で1時間遮断した。その後、膜を(5%の牛乳/TBS-T 中の)示された一次抗体で一晩4℃で培養し、TBS-T で4回洗浄し、(5%の牛乳/TBS-T 中の)種特異的なHRP 結合二次抗体で1時間室温で培養し、その後TBS-T で4回洗浄した。続いて、富士フィルムLAS-3000現像器を用いてECL ウェスタンブロット基質(Pierce)と共に膜を現像した。その後、膜をTBS-T で1回洗浄し、強力な振盪により低pH剥離緩衝液[25mMグリシンHCl ,pH2.0 及び1%w/v SDS]で剥離して一次抗体及び二次抗体を除去し、TBS-T で3回洗浄して、次の一次抗体を用いた調査の前に室温で1時間(5%の牛乳/TBS-T 中で)遮断した。免疫反応性スポットの総密度をMultiGaugeソフトウェア(富士フィルム)を用いて測定し、%対照(溶媒)に正規化した。ウサギpAβ A11(抗プレ原線維性オリゴマ,0.5 μg/ml)、ウサギpAβOC(抗原線維性オリゴマ及び原線維;0.25μg/ml)及びマウスmAβNu-4(抗オリゴマ;1μg/ml)の生成、精製及び特徴分析は既に記載されている(Tomic, J.L.著,Pensalfini, A.,Head, E. & Glabe, C.G.,「Soluble fibrillar oligomer levels are elevated in Alzheimer's disease brain and correlate with cognitive dysfunction.」,Neurobiology of disease 35,352-358 (2009);Lambert, M.P.等著,「Monoclonal antibodies that target pathological assemblies of Abeta」,Journal of neurochemistry 100,23-35 (2007))。総APP/Aβ信号への正規化は、マウスmAb 6E10(1:1000;Covance)を用いたヒトAPP 導入遺伝子代謝物質の検出によって達成された。ペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgG (H+L;1:20,000;Vector Labs)又はヤギ抗マウスIgG (H+L;1:20,000;Vector Labs)を検出のために使用した。モノマーAβレベルを定量するために、ヒト/ラットAβ1-40/1-42 ELISAキット(和光)を製造業者の使用説明書に従って使用した。モノマー又はオリゴマーのAβの絶対濃度を、分析の前に最初の組織重量に正規化した。
組織構造
Aβを、既に記載したようにmAb 6E10(1:1000,Covance)を使用して浮遊性免疫組織化学的検査によって評価した。GAβを、既に記載したようにヤナギサワカツヒコ博士による賜物であるマウス抗GAβ,クローン4396C(1:100 )を用いて浮遊性免疫組織化学的検査によって評価した。画像を、オリンパスBX61正立顕微鏡上で付属のオリンパスDP71カメラを用いて撮像した。GAβ染色の総密度をImage J (National Institute of Health, Bethesda, Maryland)を用いて測定した。
行動結果、生化学的結果及び組織学的結果の統計解析
全てのデータを平均±s.e.m.として表現する。統計的有意性(P<0.05)を、ボンフェローニ事後解析(GraphPad Prism,San Diego,CA)と共にStudent のt検定又は1-way ANOVA 検定を用いて決定した。
結果
AdDNJ はオランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスのβ−hex レベルを上昇させた。
本発明者らは、AdDNJ がオランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスで標的β−hex に関与したか否かを評価しようとした。本発明者らは、AdDNJ の投与から3ヶ月経過すると、総脳β−hex が用量依存的に最高用量で最大3倍増加したことを観察した(図4c)。AdDNJ は更にβ−hexB(図4a)及びβ−hex A&S(図4b)を用量依存的に増加させた。全脳抽出物のTLC 分析は、ガングリオシドレベルのいかなる変化も示さず、β−hex は、100 mg/kg のAdDNJ を3ヶ月投与した後であっても脳全体に亘って一般に阻害されなかった(図10a 〜10d )。 AdDNJ の作用の提案された薬理シャペロンに基づいて、本発明者らはGM2 ガングリオシドの減少を観察することが予測される。しかしながら、TLC 分析はβ−hex の持続した阻害が予測されるガングリオシドレベルの桁違いの上昇を示すはずであるが、図10a 〜10d のTLC 分析はガングリオシドレベルの相対的に小さい変化を示すには感度が低過ぎる。更に、局所的な変化は、全脳ホモジネートのみが評価されるのでマスクされ得る。GAβの最も著しい減少が、ホモジネートの生成に使用される非常に小さい割合の総脳容積を構成する海馬台及び鼻周囲皮質部位に観察された。
AdDNJ は、オランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスの行動表現型を修正した。
本発明者らは、高架式十字迷路(EPM) の不安症状を評価し、月齢6ヶ月の溶媒処置されたオランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスが月齢3ヶ月の未処置マウスより更に不安を感じていることを観察した(図5a)。本発明者らは、AdDNJ の投与からの3ヶ月の経過が、試験された全ての用量で不安症状の低下に関連していることを観察した(図5a)。
本発明者らは、新奇の物体認識(NOR) 試験を採用することにより学習挙動を評価した。月齢3ヶ月の未処置のオランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスは、見慣れた物体より新たな物体を著しく長い時間費やして探索することにより証明されるように完全な学習挙動を示す一方、月齢6ヶ月の溶媒処置されたマウスは学習挙動障害を示した(図5b)。AdDNJ の投与から3ヶ月経過した後、本発明者らは、不安症状の低下を示した同一のマウス(現在月齢6ヶ月)が、より多い用量でNOR 試験で典型的な老化関連学習挙動障害の予防を更に示したことを観察した(図5b)。30又は100 mg/kg の用量でAdDNJ で処置された月齢6ヶ月のオランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスは、自身の半分の歳のマウスの学習挙動を示した。対照的に、AdDNJ は文脈的又は手がかりの恐怖条件付けに影響を及ぼさなかった(図6)。
AdDNJ は、オランダ型APPE693QトランスジェニックマウスのAβ及びガングリオシド結合Aβ病状を減少した。
次に、本発明者らは、AdDNJ の3ヶ月の処置後、オランダ型APPE693QトランスジェニックマウスにおけるAβ及びガングリオシド結合Aβ(GAβ)を評価した。本発明者らは、試験された全ての用量のAdDNJ でAβ40(図7a〜7d)、Aβ42(図7e〜7h)、Aβ42/40比率(図7i〜7l)、プレ原線維性Aβ(図7m)又はAβオリゴマーレベル(図7n,7o)の変化を見い出さなかった。その後、本発明者らはAβ及び/又はGAβの局所的な変化を探し続けた。免疫組織化学的分析によって、特には海馬台内のAβ蓄積の定性的な部位特異的な減少が明らかになった(図8a,8b)が、100 mg/kg のAdDNJ を投与されたオランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスの視覚野(図8c,8d)又は海馬のCA1 部位(図8e,8f)で差が観察されなかった。
Aβの部位特異的な減少は、(NOR に関与する脳の領域である)海馬台(図9a,9b,9k)及び鼻周囲皮質(図9c,9d,9i)内のGAβの顕著な定性的な減少に付随する。GAβの減少への傾向は、NOR に関与する別の脳の領域である側部嗅内皮質で観察された(図9e,9f,9m)。GAβの減少は、視覚野(図9g,9h,9n)又は海馬のCA1 部位(図9l,9j,9o)で有意性に達しなかった。GAβ−様免疫反応性が更に皮質血管で容易に検出可能であった(図9p)。
議論
GM2 及びGM3 のガングリオシドは、インビトロでのオリゴマー化を非常に受け易いAβ(オランダ型Aβ)の変異型の会合を促進する(Yamamoto等著,2005年)。GM2 及びGM3 のガングリオシドは、脳血管で選択的に発現して、オランダ型突然変異体のAβだけでなくアイオワ型及びイタリア型突然変異体のAβペプチドの会合を促進することが示されており、これら全ては家族性CAA を生じさせる(Yamamoto等著,2005年;Yamamoto等著,2006年)。ガングリオシドの局在化及びガングリオシド加速凝集を受ける突然変異体ペプチドの部位特異的な蓄積の収束は、これらのデータが家族性CAA 及びADに特別の意味を有する可能性を高めている。オランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスは神経細胞内のAβを蓄積し、これはADの初期段階で観察される。
この試験では、本発明者らは、薬理シャペロンAdDNJ がBBB を通過し、野生型C57BL/J6マウスの脳内の野生型β−hex のレベルを上昇させていることを実証した。その後、本発明者らは、オランダ型APPE693QトランスジェニックマウスにおけるAβ及びGAβの沈着、不安症状の発症及び学習行動障害に対するAdDNJ の影響の評価を続行した。本発明者らは、オランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスが、月齢6ヶ月での記憶障害の発症年齢と共に不安症状及び学習挙動の老化に依存する欠損を示すことを確認した。オランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスは、月齢3ヶ月でNOR 試験に完全な学習挙動を示す一方、月齢6ヶ月の溶媒処置されたマウスは学習挙動障害を示した。月齢6ヶ月オランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスに観察された機能障害は、特に海馬台、視覚野及び海馬のCA1 部位のニューロン内のAβ蓄積に関連していた。これらは、オランダ型突然変異体APPE693 マウスが最も明らかな老化に依存するAβ沈着を蓄積することを本発明者らが既に実証した脳の部位である。最も強いAβ様免疫反応性が海馬台で観察された。最近の研究により、本発明者らがオランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスで欠損を確認している、特にマウスのNOR 試験で記憶に海馬台が関与していることが分かった(Chang 等著,2012年)。
本発明者らは更に、β−hex を標的とする薬理シャペロンがAβ及びGAβ蓄積の明らかな低下に関連してオランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスの行動表現型の2つの特徴を修正することを確認した。AdDNJ の投与から3ヶ月経過すると、オランダ型APPE693 トランスジェニックマウスの脳のβ−hex レベルが3倍上昇し、AdDNJ がその標的と関与していることが実証された。GAβの顕著な定量的減少が、NOR に関与する脳の領域である海馬台及び鼻周囲皮質内に観察された。GAβの減少が更に、側部嗅内皮質、視覚野及び海馬のCA1 部位で観察されたが、統計的有意性に達しなかった。
本発明者らの研究により、β−hex を標的とする薬理シャペロンがβ−hex レベルを上昇させる一方、最高量のAβ免疫反応性を実証する部位でGAβ病状が減少するという証拠が最初に提供されている。このような分子変化及び組織学的変化が、行動表現型(つまり、不安症状、学習挙動)の2つの態様の修正に関連して生じている。このようなデータは、対象の薬理シャペロンを用いたβ−hex 活性の上昇という潜在的に有益な効果を強調している。この種の化合物は、脳アミロイドーシスの緩和に有望であることを示しており、ヒト脳アミロイドーシス、特にアミロイド血管症及びAPP/Aβ突然変異に関連する脳アミロイドーシスの管理に有益であると予測される。AdDNJ は、優れたバイオアベイラビリティ、BBB 透過性、β−hex のための高い選択性、及びAdDNJ を優れた薬剤候補にする低い細胞毒性を有しているため、オランダ型APP 突然変異を有する患者集団の臨床試験のための迅速な開発を可能にして、オランダ型APPE693Qトランスジェニックマウスで観察された結果を特に関連付けることを可能にする。

Claims (26)

  1. アルツハイマー病及び/又は脳アミロイド血管症を発症する危険性があるか、又はアルツハイマー病及び/又は脳アミロイド血管症と診断された患者のアルツハイマー病及び/又は脳アミロイド血管症を予防及び/又は治療する際に使用するための2-アセトアミド-1,2- ジデオキシノジリマイシン(AdDNJ )を含む製剤であって、
    AdDNJ は、第1の酵素増強期間に有効量で患者に与えられ、
    AdDNJ は、基質代謝回転期間に与えられず、その後、
    AdDNJ は、第2の酵素増強期間に有効量で患者に与えられることを特徴とする製剤。
  2. 前記第1の酵素増強期間及び前記第2の酵素増強期間は同一の期間であることを特徴とする請求項1に記載の製剤。
  3. 前記第1の酵素増強期間及び前記第2の酵素増強期間の内の1又は複数は、約1日〜約8日の期間であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製剤。
  4. 前記第1の酵素増強期間及び前記第2の酵素増強期間の内の一又は複数は、約4日〜約6日の期間であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の製剤。
  5. AdDNJ は、前記第1の酵素増強期間及び前記第2の酵素増強期間中に毎日与えられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の製剤。
  6. AdDNJ は経口で与えられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の製剤。
  7. AdDNJ は、約3mg/kg/日〜約300 mg/kg/日の範囲内の用量で与えられることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の製剤。
  8. AdDNJ は、約100 mg/kg/日の用量で与えられることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の製剤。
  9. 前記基質代謝回転期間にAdDNJ を与えない際に、約48時間〜約96時間AdDNJ を与えないことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の製剤。
  10. 前記基質代謝回転期間にAdDNJ を与えない際に、約72時間AdDNJ を与えないことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載の製剤。
  11. 前記第1の酵素増強期間は約5日間であり、前記基質代謝回転期間にAdDNJ を与えない際に、約72時間AdDNJ を与えないことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の製剤。
  12. AdDNJ は、1日目に有効量で患者に与えられ、
    AdDNJ は、2日目に患者に与えられず、
    AdDNJ は、3日目に有効量で患者に与えられ、
    AdDNJ は、4日目に患者に与えられず、
    AdDNJ は、5日目に有効量で患者に与えられ、その後、
    AdDNJ は、約72時間与えられないことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の製剤。
  13. 前記基質代謝回転期間にAdDNJ を与えない際に、約24時間AdDNJ を与えないことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の製剤。
  14. 前記基質代謝回転期間にAdDNJ を与えない際に、約48時間AdDNJ を与えないことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の製剤。
  15. 前記第1の酵素増強期間は約3日間であり、前記基質代謝回転期間にAdDNJ を与えない際に、約120 時間AdDNJ を与えないことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の製剤。
  16. 前記酵素増強期間及び基質代謝回転期間は、少なくとも1か月の総処置期間に交互に生じることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載の製剤。
  17. 総処置期間は少なくとも3か月であることを特徴とする請求項1乃至16のいずれか一項に記載の製剤。
  18. 少なくとも1つの基質代謝回転期間は、少なくとも1つの他の基質代謝回転期間とは異なる期間を有していることを特徴とする請求項1乃至17のいずれか一項に記載の製剤。
  19. 有効量の2-アセトアミド-1,2- ジデオキシノジリマイシン(AdDNJ) を含む一又は複数の剤形と、
    前記剤形を第1の酵素増強期間に与えて、前記剤形を基質代謝回転期間に与えず、その後、前記剤形を第2の酵素増強期間に与えるための使用説明書と
    を備えていることを特徴とするキット。
  20. 前記第1の酵素増強期間及び前記第2の酵素増強期間は同一の期間であることを特徴とする請求項19に記載のキット。
  21. 前記第1の酵素増強期間及び前記第2の酵素増強期間の内の1又は複数は、約1日〜約8日の期間であることを特徴とする請求項19又は20に記載のキット。
  22. 前記基質代謝回転期間にAdDNJ を与えない際に、約48時間〜約96時間AdDNJ を与えないことを特徴とする請求項19乃至21のいずれか一項に記載のキット。
  23. 有効量の2-アセトアミド-1,2- ジデオキシノジリマイシン(AdDNJ) を含む一又は複数の活性剤形と、
    有効量のAdDNJ を含まない一又は複数の非活性剤形と、
    前記活性剤形を第1の酵素増強期間に与えて、前記非活性剤形を基質代謝回転期間に与えず、その後、前記活性剤形を第2の酵素増強期間に与えるための使用説明書と
    を備えていることを特徴とするキット。
  24. 前記第1の酵素増強期間及び前記第2の酵素増強期間は同一の期間であることを特徴とする請求項23に記載のキット。
  25. 前記第1の酵素増強期間及び前記第2の酵素増強期間の内の1又は複数は、約1日〜約8日の期間であることを特徴とする請求項23又は24に記載のキット。
  26. 前記基質代謝回転期間にAdDNJ を与えない際に、約48時間〜約96時間AdDNJ を与えないことを特徴とする請求項23乃至25のいずれか一項に記載のキット。
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