本発明のポリアミドイミド樹脂(A)の製造方法は、トリカルボン酸無水物(a1)と、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)とを反応させる工程(1)を有する。
始めに、ポリアミドイミド樹脂(A)を生成する工程(1)について説明する。
本発明ではトリカルボン酸無水物(a1)をポリアミドイミドの原料として用いることにより、得られるポリアミドイミド樹脂の硬化塗膜の透明性が向上する。このようなトリカルボン酸無水物としては、分子内に芳香族構造を有するトリカルボン酸無水物と分子内に脂肪族構造を有するトリカルボン酸が挙げられる。このうち、硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性に優れ、可使時間も長いものであり、硬化物の耐熱分解温度に優れる傾向にあることから、分子内に脂肪族構造を有するトリカルボン酸が好ましい。
前記分子内に芳香族構造を有するトリカルボン酸無水物としては、無水トリメリット酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸無水物等が挙げられる。また、前記脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物としては、例えば、線状脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物、環式脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物等が挙げられる。線状脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物としては、例えば、プロパントリカルボン酸無水物等が挙げられる。環式脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物としては、例えば、シクロヘキサントリカルボン酸無水物、メチルシクロヘキサントリカルボン酸無水物、シクロヘキセントリカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物等が挙げられる。
本発明で用いる脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物の中でも、透明性に加え、Tgが高く熱的物性に優れる硬化塗膜が得られることから環式脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物が好ましく、さらに前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)が環式脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートである場合に、前記トリカルボン酸無水物(a1)が環式脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物であることがさらに好ましい。環式脂肪族構造を有するトリカルボン酸無水物の例としては、シクロヘキサントリカルボン酸無水物等が挙げられる。これらを1種又は2種以上を用いることが可能である。また場合により、2官能のジカルボン酸化合物、例えばアジピン酸、セバシン酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸及びこれらの酸無水物等を併用することも可能である。
前記シクロヘキサントリカルボン酸無水物としては、例えば、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸-3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸−3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−2,3−無水物等が挙げられる。中でも、透明性に加え、溶剤溶解性に優れるポリアミドイミド樹脂となり、Tgが高く熱的物性に優れる硬化塗膜が得られることからシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物が好ましい。
ここで上述のシクロヘキサントリカルボン酸無水物としては、以下の一般式(1)の構造で示されるものであり、製造原料として用いるシクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸等の不純物が本発明の硬化を損なわない範囲、例えば、10質量%以下、このましくは5質量%以下であれば混入しても良いものである。
一方、本発明で用いる、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)としては、線状脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネート、環式脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネート等が挙げられる。
線状脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートとしては、例えば、HDI3N(ヘキサメチレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート(5量体等の重合体を含む))、HTMDI3N(トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート(5量体等の重合体を含む))等が挙げられる。これらは併用しても単独で用いても良い。
環式脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートとしては、例えば、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート(5量体等の重合体を含む))、HTDI3N(水添トリレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート(5量体等の重合体を含む))、HXDI3N(水添キシレンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート(5量体等の重合体を含む))、NBDI3N(ノルボルナンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート(5量体等の重合体を含む))、HMDI3N(水添ジフェニルメタンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート(5量体等の重合体を含む))等が挙げられる。
本発明で用いる、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)としては、特にTgが高く熱的物性に優れる硬化塗膜が得られることから環式脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートが好ましく、中でもイソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネートが好ましい。尚、イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネートは5量体等の重合体を含んでいても良い。
脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)中の環状脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネートの含有率は、該化合物(a2)の質量を基準として50〜80質量%が、Tgが高く熱的物性に優れる硬化塗膜が得られることからから好ましく、80〜100質量%がより好ましく、100質量%が最も好ましい。
また、本発明のポリアミドイミド樹脂の溶剤溶解性を損なわない範囲で上記イソシアネート化合物と各種ポリオールとのウレタン化反応によって得られるアダクト体も使用できる。
本発明で用いるカルボキシ基を含有するポリアミドイミド樹脂(A1)は、上述のトリカルボン酸無水物(a1)と上述のイソシアネート化合物(a2)から直接イミド結合を形成させることにより、安定性等に問題のあるポリアミック酸中間体を経ずに、再現性良く、溶解性が良好で、透明性に優れる硬化塗膜が得られるポリアミドイミド樹脂を合成できる。
前記トリカルボン酸無水物(a1)のカルボン酸成分とポリイソシアネート(a2)中のイソシアネート成分とが反応すると、イミド及びアミドが形成され、本発明の樹脂はアミドイミド樹脂となる。また、ポリイソシアネート(a2)とトリカルボン酸無水物(a1)とを反応させる際に、トリカルボン酸無水物(a1)のカルボン酸成分を残すような割合でトリカルボン酸無水物(a1)とポリイソシアネート(a2)とを反応させると、得られるポリアミドイミド樹脂はカルボキシ基を有する。このカルボキシ基は、後述する本発明の硬化性樹脂組成物中に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ基等の重合性基と反応し、硬化物の架橋構造を形成する。尚、反応速度はイミド化が速いため、トリカルボン酸とトリイソシアネートとの反応でも、トリカルボン酸は無水酸のところで選択的にイミドを形成する。
トリカルボン酸無水物(a1)と、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)とを反応させて、本発明に用いるポリアミドイミド樹脂(A1)を得る際には、窒素原子及び硫黄原子のいずれも含まない極性溶剤中で反応させることが好ましい。窒素原子または硫黄原子を含有した極性溶剤が存在すると、環境上の問題が生じやすく、また、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)とトリカルボン酸無水物(a1)との反応に於いて、分子の成長が妨げられやすくなる。かかる分子の切断は、組成物とした場合に物性が低下しやすく、さらに「はじき」等の塗膜欠陥が生じやすくなる。
本発明において、窒素原子及び硫黄原子のいずれも含まない極性溶剤は、非プロトン性溶剤であることがより好ましい。例えばクレゾール系溶剤は、プロトンを有するフェノール性溶剤であるが、環境面でやや好ましくなく、イソシアネート化合物と反応して分子成長を阻害しやすい。また、クレゾール溶剤は、イソシアネート基との反応を起こしブロック化剤となりやすい。したがって、硬化時に他の硬化成分(例えばエポキシ樹脂など)と反応することで良好な物性が得られ難い。さらにブロック化剤がはずれる場合、使用機器や他の材料の汚染を起こしやすい。またアルコール系溶剤については、イソシアネートあるいは酸無水物と反応するため好ましくない。非プロトン性溶剤としては、例えば水酸基を有さないエーテル系、水酸基を有さないエステル系、水酸基を有さないケトン系等の溶剤が挙げられる。水酸基を有さないエステル系の溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、および酢酸ブチル等が挙げられる。水酸基を有さないケトン系の溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、およびシクロヘキサノン等が挙げられる。このうち水酸基を有さないエーテル系溶剤が特に好ましい。
本発明において、水酸基を有さないエーテル系溶剤は、弱い極性を有し、上述の脂肪族構造を有するイソシアネートのイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)とトリカルボン酸無水物(a1)との反応において優れた反応場を提供する。かかるエーテル系溶剤としては、公知慣用のものが使用可能であるが、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;あるいは低分子のエチレン−プロピレン共重合体の如き共重合ポリエーテルグリコールのジアルキルエーテルや、共重合ポリエーテルグリコールのモノアセテートモノアルキルエーテル類;あるいはこうしたポリエーテルグリコールのアルキルエステル類;ポリエーテルグリコールのモノアルキルエステルモノアルキルエーテル類などである。
工程(1)は、トリカルボン酸無水物(a1)に対して、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)を少なくとも2回に分けて加えることにより、トリカルボン酸無水物(a1)と、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)とを反応させた後、得られた生成物に、さらに前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)を反応させる工程(1a)を含む。
本発明は、ポリアミドイミド樹脂(A)を生成するにあたって、トリカルボン酸無水物(a1)に対して、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)を少なくとも2回、さらに好ましくは3〜5回に分けて加えることにより、優れた溶剤希釈性を有するポリアミドイミド樹脂を得ることができるため好ましい。
工程(1a)では、まず始めに、溶剤中あるいは無溶剤中で、トリカルボン酸無水物(a1)の1種以上と、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)の1種類以上とを混合し、撹拌を行いながら昇温して(アミド)イミド化反応を行う。その際、各回において、トリカルボン酸無水物(a1)に対し、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)の加える割合は、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)のイソシアネート基のモル数に対して、トリカルボン酸無水物(a1)のカルボキシ基のモル数及び酸無水物基モル数の合計が過剰量となる割合であれば良い。
(アミド)イミド化反応の進行を確認しながら、好ましくは、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)のイソシアネート基が消滅するまで反応を進行させた後、さらに、好ましくは(アミド)イミド化反応の反応温度を維持しながら、撹拌を行い、得られた反応物に、さらに前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)をさらに反応させることが好ましい。トリカルボン酸無水物(a1)に対して、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)を3回以上に分けて加える場合には、上記の得られた反応物に、さらに前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)を加えて反応させる操作、すなわち、工程(a1)を繰り返し行えば良い。
前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)(以下、単に(a2)成分と略す場合がある)を分けて加える際、各回の(a2)成分の加える量は均等に割り振っても良いし、偏りを付けても良い。偏りを付ける方法としては、たとえば、初回に加える(a2)成分の量を最も多く、かつ、残部を均等にする、または残部を後に加える量ほどより少なくする方法や、初回に加える(a2)成分の量を最も少なく、かつ、残部を均等にする、または残部を後に加える量ほどより多くする方法などが種々挙げられるが、初回に加える(a2)成分の量を最も多く、かつ、残部を後に加える量ほどより少なくする方法が好ましい。たとえば、(a2)成分を3回に分けて加える場合、加えるべき(a2)成分のうち初回に40〜80質量%を加えておき、2回目にその40〜15質量%を加えておき、最後にその20〜5質量%を加えることができる。
(アミド)イミド化反応の反応温度は、好ましくは50℃〜250℃の範囲、特に好ましくは70℃〜180℃の範囲である。このような反応温度にすることにより、反応速度が早くなり、且つ、副反応や分解等が起こりにくい効果を奏する。
(アミド)イミド化反応の進行は、赤外スベクトルや、酸価、イソシアネート基の定量等の分析手段により追跡することができる。例えば、赤外スペクトルでは、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が反応とともに減少し、さらに1860cm-1と850cm-1に特性吸収を有する酸無水物基が減少する。一方、1780cm-1と1720cm-1にイミド基の吸収が増加する。反応は、目的とする酸価、粘度、分子量等を確認しながら、温度を下げて終了させても良い。しかしながら、経時の安定性等の面からイソシアネート基が消失するまで反応を続行させることがより好ましい。また、反応中や反応後は、合成される樹脂の物性を損なわない範囲で、触媒、酸化防止剤、界面活性剤、その他溶剤等を添加してもよい。
工程(1)において(アミド)イミド化反応に供される前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)の量と、トリカルボン酸無水物(a1)の量との割合は、前記イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)のイソシアネート基の合計のモル数(N)と、トリカルボン酸無水物(a1)のカルボキシ基のモル数(M1)及び酸無水物基モル数(M2)の合計のモル数との比〔(M1)+(M2))/(N)〕が1.1〜3となるように反応させるのが、反応系中の極性が高くなり反応が潤滑に進行する、イソシアネート基が残存せず、得られるポリアミドイミド樹脂の安定性が良好である、トリカルボン酸無水物(a1)の残存量も少なく再結晶等の分離の問題も起こりにくい等の理由により好ましい。中でも1.2〜2がより好ましい。なお、本発明において酸無水物基とは、カルボン酸2分子が分子内脱水縮合して得られた−CO−O−CO−基を指す。
本発明で用いるポリアミドイミド樹脂(A)としては、例えば以下の(式2)で表されるイミド樹脂等が挙げられる。
(nは、繰り返し単位で0〜30である。また、Rbは、例えば、以下の構造式(式3)または(式4)で示される構造単位である。
(R2は、例えば、炭素原子数6〜20の置換基を有しても良い芳香族又は脂肪族トリカルボン酸残基である。)Rcは、例えば、以下の構造式(式5)で示される構造単位である。
(R2は、例えば、前記と同一である。)
Rdは、例えば、以下の(式6)で表される3価の有機基であり、
Raは、例えば、2価の脂肪族ジイソシアネート類の残基を示す。
上記の製造方法により得られたポリアミドイミド樹脂(A)は、少なくとも、脂肪族構造を有するイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)とトリカルボン酸無水物(a1)とがアミドまたはイミドを形成して結合しているポリアミドイミド樹脂(A)を含むものである。
また、本発明の製造方法により得られたポリアミドイミド樹脂(A)は、分子量分布が2.0以下の範囲であり、さらに1.5〜2.0の範囲であることが好ましく、さらに1.7〜1.9の範囲であることが特に好ましい。
このため、本発明のポリアミドイミド樹脂は、汎用溶剤に可溶で、かつ溶剤希釈性に優れるだけでなく、後述する硬化性樹脂と配合しても保存安定性や可使時間の長い硬化性樹脂組成物、および、現像性に優れた硬化物(硬化塗膜)が得られる。
数平均分子量は、溶剤への溶解性が良好であり、かつ機械強度に優れる硬化物が得られる観点から、800〜20000が好ましく、850〜8000がより好ましく、900〜2500の範囲が特に好ましい。一方、質量平均分子量は、上記の数平均分子量に対して上記の分子量分布の範囲を満たすものであれば特に限定されないが、溶剤への溶解性が良好である観点から、1600〜40000が好ましく、1650〜10000がより好ましく、さらに1700〜5000の範囲が特に好ましい。
なお、分子量は、ゲルパーミネーションクロマトグラフィー(GPC)や末端の官能基量の定量分析で測定することができる。
本発明で、数平均分子量、質量平均分子量の測定は、GPCを用いて、以下の条件により求めた。
測定装置:東ソー株式会社製 HLC−8120GPC、UV8020
カラム :東ソー株式会社製 TFKguardcolumnhxl−L、TFKgel(G1000HXL、G2000HXL、G3000HXL、G4000HXL)
検出器 :RI(示差屈折計)及びUV(254nm)
測定条件:カラム温度 40℃
溶媒 THF
流束 1.0ml/min
標準 :ポリスチレン標準試料にて検量線作成
試料 :樹脂固形分換算で0.1質量%のTHF溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(注入量:200μl)
本発明のポリアミドイミド樹脂(A)は、末端にカルボキシ基と酸無水物基を有し、その酸価は、硬化物が優れた性質を発揮すれば特に限定されるものではないが、20〜220KOHmg/gの範囲であることが好ましく、50〜210KOHmg/gの範囲であることがより好ましく、160〜200KOHmg/gの範囲であることが特に好ましい。当該範囲であれば、硬化物性として優れた性能を発揮する。
また、本発明のポリアミドイミド樹脂(A)の中でも、前記した窒素原子及び硫黄原子のいずれも含まない極性溶剤に溶解するポリアミドイミド樹脂が好ましい。このようなポリアミドイミド樹脂の例示としては、分岐型構造を有し、樹脂の酸価が130KOHmg/g以上である分岐型ポリアミドイミド樹脂が挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明のポリアミドイミド樹脂(A)と、硬化性樹脂(B)及び/又は有機溶剤(C)とを含む。
該硬化性樹脂(B)としては、例えば、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物(B1)、分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物、ベンゾオキサジン樹脂、シアネートエステル樹脂などが挙げられる。該(B1)成分としては、公知慣用のエポキシ樹脂を使用することが可能であり、2種以上を混合して用いてもよい。また、他の例としては、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、シリケート及びアルコキシシラン化合物、(メタ)アクリル系樹脂などが挙げられるが、耐熱性、寸法安定性及び機械物性(強靭性、柔軟性)に優れる硬化塗膜等の硬化物が得る点でエポキシ樹脂が好ましい。
なお、本発明に記載される上記及び後述の硬化物性の意味は、本発明のポリアミドイミド樹脂とこれと反応する成分との硬化物以外に本発明のポリアミドイミド樹脂単独あるいは本発明のポリアミドイミド樹脂と反応しないその他の樹脂、添加剤、無機材料成分などをも含む単純に溶剤乾燥した塗膜や成形体をも含めた意味を含むものとする。またさらに本発明のポリアミドイミド樹脂と加熱や光により反応する硬化剤と混合して及び/又は本発明のポリアミドイミド樹脂と反応しないが添加成分それ自体、熱や光などで硬化せしめた硬化物およびその硬化物性としたものも、その意味の中に含まれるものとする。
かかるエポキシ樹脂(B1)としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンと各種フェノール類とを反応させて得られる各種ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化物、2,2’,6,6’−テトラメチルビフェノールのエポキシ化物、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)のエポキシ化物、ナフトールやビナフトールあるいはナフトールやビナフトールのノボラック変性等ナフタレン骨格から誘導されたエポキシ、フルオレン骨格のフェノール樹脂をエポキシ化して得られるエポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂等が挙げられる。
またネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1、6−へキサンジオールジグリシジルエーテルのごとき脂肪族エポキシ樹脂や、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシビシクロヘキシル)アジペート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物等の環式脂肪族系エポキシ樹脂、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルのごとき主鎖にポリアルキレングリコール鎖を含有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートのごときヘテロ環含有のエポキシ樹脂も使用可能である。
また、(メタ)アクリロイル基やビニル基等重合性不飽和二重結合を有するエポキシ化合物の不飽和基を重合させて得られるエポキシ基含有重合系樹脂及びその他の重合性不飽和結合を有するモノマー類との共重合体も使用可能である。
かかる(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を併せ持つ化合物として、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4−ヒドロキジブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、5−ヒドロキシ−3−メチルペンチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、ラクトン変成(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、ビニルシクロヘキセンオキシドなどが挙げられる。
本発明における分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B1)成分は、環式脂肪族系エポキシ樹脂であることが特に好ましい。環式脂肪族系エポキシ樹脂であれば、Tgが高く熱的物性に優れる硬化塗膜が得られ、且つ、紫外線領域(300nm付近)の光透過性が高い硬化物を得る事が可能となる。環式脂肪族系エポキシ樹脂の中でも水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物等が好ましい。
かかる環式脂肪族系エポキシ樹脂は市場でも入手する事が可能で、例えばデナコールEX−252(ナガセケムテックス株式会社製)やEHPE3150、EHPE3150CE(ダイセル化学工業株式会社製)等が挙げられる。
前記ポリアミドイミド樹脂(A)と分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B1)は、各種目的とする物性に対応して自由に配合することが可能であるが、Tg等の熱的物性、機械物性等と硬化塗膜の透明性とのバランスの面でポリアミドイミド樹脂(A)のカルボキシ基のモル数n(COOH)と分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B1)のエポキシ基のモル数n(EPOXY)との比〔n(EPOXY)/n(COOH)〕が0.3〜4となるような範囲、好ましくは0.8〜1.2となるような範囲でポリアミドイミド樹脂(A)とエポキシ樹脂(B1)とを配合することが硬化物の特性としてTgを得やすく、機械物性等に優れる硬化物が得られ、更に硬化物の透明性が良好になることから好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物にはエポキシ−カルボン酸系の硬化触媒等を混合させても良い。かかるエポキシ−カルボン酸系硬化触媒としては、反応促進のための第1級から第3級までのアミンや第4級アンモニュウム塩、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物類等の窒素系化合物類、TPP(トリフェニルホスフィン)、アルキル置換されたトリアルキルフォニルホスフィン等のフォスフィン系化合物やその誘導体、これらのフォスホニュウム塩、あるいはジアルキル尿素類、カルボン酸類、フェノール類、またはメチロール基含有化合物類などの公知のエポキシ硬化促進剤等が挙げられ、これらを少量併用する事が可能である。
かかる、1分子中に2個以上のマレイミド基を有する化合物(B2)(以下、マレイミド化合物(B2)という)としては、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−n−ブチルマレイミド、N−ヘキシルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド等のN−脂肪族マレイミド;N−フェニルマレイミド、N−(P−メチルフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド等のN−芳香族マレイミド;4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビス(3−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタン等のビスマレイミド類が挙げられる。これらの中でも特に硬化物の耐熱性が良好なものとなる点からビスマレイミドが好ましく、特に4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(3,5−ジメチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3−エチル−5−メチル−4−マレイミドフェニル)メタン、ビス(3,5−ジエチル−4−マレイミドフェニル)メタンが好ましいものとして挙げられる。本発明の硬化性樹脂組成物にマレイミド化合物(B2)を用いる場合には、必要に応じて、硬化促進剤を用いることができる。ここで使用できる硬化促進剤としては、アミン化合物、フェノール化合物、酸無水物、イミダゾール類、有機金属塩などが挙げられる。
本発明の硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じて有機溶剤(C)を含有させることもできる。本発明の硬化性樹脂組成物に有機溶剤(C)を含有させる場合、前記アルコール変性ポリアミドイミド樹脂(A2)を調製したものと同じ有機溶剤を用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに硬化に際し、エネルギー線、特に紫外線を照射して硬化させる場合には、光重合開始剤(D)とさらに必要に応じて反応性希釈剤(E)を使用することができる。かかる光重合開始剤(D)としては、特に制限はなく、公知慣用の重合性光開始剤を用いることができるが、代表例を挙げれば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルのごときベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンのごときアセトフェノン類、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリブチルアントラキンノン、1−クロロアントラキノン、2−アルミアントラキノンのごときアントラキノン類、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンのごときチオキサントン類、ビス(2,6ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドのごときトリメチルベンゾイルアルキルフォスフィンオキサイド類、アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールのごときケタール類、ベンゾフェノンのごときベンゾフェノン類またはキサントン類等がある。これらは単独であるいは2種以上を組み合わせて用いる事ができる。
光重合開始剤(D)の使用量は、本発明の効果を損ねない範囲であれば特に限定されないが、通常、ポリアミドイミド樹脂(A)100質量部に対して0.1〜30質量部の範囲であることが好ましく、さらに0.5〜10質量部の範囲がより好ましい。かかる光重合開始剤は公知慣用の光重合促進剤の一種あるいは二種以上と組み合わせて用いることもできる。
本発明で用いる反応性希釈剤(E)としては、公知慣用の光重合性ビニルモノマーを用いることができるが、代表的な例としては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン、スチレンもしくは、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、また、メチルメタクリレート、エチルアクリレートのごときアルキル(メタ)アクリレート、または、上記アクリレートに対する各メタクリレート類、多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−またはそれ以上のポリエステル、あるいはビスフェノールA型エポキシアクリレート、ノボラック型エポキシアクリレートまたはウレタンアクリレートのごとき、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー類、オリゴマー類を挙げることができる。これらの1種、または2種以上を使用することができる。
前記ポリアミドイミド樹脂(A)と反応性希釈剤(E)は、各種目的とする物性に対応して自由に配合することが可能であるが、Tg等の熱的物性、機械物性等と硬化塗膜の透明性とのバランスの面でポリアミドイミド樹脂(A)と、反応性希釈剤(E)の光重合性基との比〔A/E〕が質量基準で0.2〜5.0となるような範囲でポリアミドイミド樹脂(A)と反応性希釈剤(C)とを配合することが硬化物の特性としてTgを得やすく、機械物性等に優れる硬化物が得られ、更に硬化物の透明性が良好になることから好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化は、基本的にポリアミドイミド樹脂(A)、硬化性樹脂(B)、その他成分の種類や配合割合、硬化条件等を適宜選択し調整しながら行うことができる。
本発明の硬化性樹脂組成物の硬化方法としては、活性エネルギー線硬化、熱による硬化、さらに両者を併用、すなわち、活性エネルギー線硬化で半硬化させた後に熱による硬化、熱による硬化で半硬化させた後に活性エネルギー線硬化、両者を同時に行うことも可能である。
活性エネルギー線で硬化させる場合は、紫外線や電子線が使用可能である。紫外線としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等が使用できる。紫外線波長としては、1900〜3800オングストロームの波長が主に使用される。また、電子線による硬化を行う場合は、各種電子線加速器等の照射源を備えた装置を用いることができ、100〜1000KeVのエネルギーを持つ電子を照射する。
また、熱で硬化させる場合は、熱重合を開始させる触媒や、添加剤の存在下で、硬化温度80℃〜300℃の範囲、好ましくは120℃〜250℃の範囲で行う。たとえば被塗装物に塗装、キャスティング等施した後に、加熱により硬化させることができる。また、各種温度でのステップ硬化を行っても良い。また、50℃〜170℃程度の温度で半硬化させたシート状あるいは塗膜状の組成物を貯蔵して、必要な時に上述の硬化温度にて処理を施してもよい。
もちろん、活性エネルギー線と熱とを併用して硬化させることについてもその使用にあたっては、何ら限定がない。
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、その他溶剤、各種レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、沈降防止剤、レオロジーコントロール剤等の各種添加剤や、硫酸バリウム、酸化ケイ素、タルク、クレー、炭酸カルシウム、シリカ、コロイダルシリカ、ガラスなどの公知慣用の充填剤、各種金属粉末、ガラス繊維やカーボンファイバー、ケブラー繊維等の繊維状充填剤など、あるいはフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラック、シリカなどの公知慣用の着色用顔料、その他密着性付与剤類等を配合してもよい。また必要に応じてアクリル樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルスルフォン等ポリマーを配合することも可能である。
本発明の硬化性樹脂組成物には、硬化物に難燃性を発揮させるため、本発明の効果を損ねない範囲であれば、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合してもよい。前記非ハロゲン系難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、それらの使用に際しても何等制限されるものではなく、単独で使用しても、同一系の難燃剤を複数用いても良く、また、異なる系の難燃剤を組み合わせて用いることも可能である。
前記リン系難燃剤としては、無機系、有機系のいずれも使用することができる。無機系化合物としては、例えば、赤リン、リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム類、リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物が挙げられる。また、前記赤リンは、加水分解等の防止を目的として表面処理が施されていることが好ましく、表面処理方法としては、例えば、(i)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、硝酸ビスマス又はこれらの混合物等の無機化合物で被覆処理する方法、(ii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物、及びフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂の混合物で被覆処理する方法、(iii)水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化チタン等の無機化合物の被膜の上にフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂で二重に被覆処理する方法等が挙げられる。前記有機リン系化合物としては、例えば、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物、ホスフィンオキシド化合物、ホスホラン化合物、有機系含窒素リン化合物等の汎用有機リン系化合物の他、9,10−ジヒドロ−9−オキサー10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10−(2,5―ジヒドロオキシフェニル)―10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド、10―(2,7−ジヒドロオキシナフチル)−10H−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン=10−オキシド等の環状有機リン化合物、及びそれをエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の化合物と反応させた誘導体等が挙げられる。それらの配合量としては、リン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、ポリアミドイミド樹脂(A)、硬化性樹脂(B)及び/又は有機溶剤(C)、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、赤リンを非ハロゲン系難燃剤として使用する場合は0.1〜2.0質量部の範囲で配合することが好ましく、有機リン化合物を使用する場合は同様に0.1〜10.0質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜6.0質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記リン系難燃剤を使用する場合、該リン系難燃剤にハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、ホウ化合物、酸化ジルコニウム、黒色染料、炭酸カルシウム、ゼオライト、モリブデン酸亜鉛、活性炭等を併用してもよい。
前記窒素系難燃剤としては、例えば、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物、フェノチアジン等が挙げられ、トリアジン化合物、シアヌル酸化合物、イソシアヌル酸化合物が好ましい。前記トリアジン化合物としては、例えば、メラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メロン、メラム、サクシノグアナミン、エチレンジメラミン、ポリリン酸メラミン、トリグアナミン等の他、例えば、(i)硫酸グアニルメラミン、硫酸メレム、硫酸メラムなどの硫酸アミノトリアジン化合物、(ii)フェノール、クレゾール、キシレノール、ブチルフェノール、ノニルフェノール等のフェノール類と、メラミン、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ホルムグアナミン等のメラミン類およびホルムアルデヒドとの共縮合物、(iii)前記(ii)の共縮合物とフェノールホルムアルデヒド縮合物等のフェノール樹脂類との混合物、(iv)前記(ii)、(iii)を更に桐油、異性化アマニ油等で変性したもの等が挙げられる。前記シアヌル酸化合物の具体例としては、例えば、シアヌル酸、シアヌル酸メラミン等を挙げることができる。前記窒素系難燃剤の配合量としては、窒素系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、ポリアミドイミド樹脂(A)、硬化性樹脂(B)及び/又は有機溶剤(C)、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜10質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.1〜5質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記窒素系難燃剤を使用する際、金属水酸化物、モリブデン化合物等を併用してもよい。
前記シリコーン系難燃剤としては、ケイ素原子を含有する有機化合物であれば特に制限がなく使用でき、例えば、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーン樹脂等が挙げられる。前記シリコーン系難燃剤の配合量としては、シリコーン系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、ポリアミドイミド樹脂(A)、硬化性樹脂(B)及び/又は有機溶剤(C)、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましい。また前記シリコーン系難燃剤を使用する際、モリブデン化合物、アルミナ等を併用してもよい。
前記無機系難燃剤としては、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属粉、ホウ素化合物、低融点ガラス等が挙げられる。前記金属水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ドロマイト、ハイドロタルサイト、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ジルコニウム等を挙げることができる。前記金属酸化物の具体例としては、例えば、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデン、スズ酸亜鉛、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化マンガン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化コバルト、酸化ビスマス、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化タングステン等を挙げることができる。前記金属炭酸塩化合物の具体例としては、例えば、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、炭酸鉄、炭酸コバルト、炭酸チタン等を挙げることができる。前記金属粉の具体例としては、例えば、アルミニウム、鉄、チタン、マンガン、亜鉛、モリブデン、コバルト、ビスマス、クロム、ニッケル、銅、タングステン、スズ等を挙げることができる。前記ホウ素化合物の具体例としては、例えば、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸、ホウ砂等を挙げることができる。前記低融点ガラスの具体例としては、例えば、シープリー(ボクスイ・ブラウン社)、水和ガラスSiO2−MgO−H2O、PbO−B2O3系、ZnO−P2O5−MgO系、P2O5−B2O3−PbO−MgO系、P−Sn−O−F系、PbO−V2O5−TeO2系、Al2O3−H2O系、ホウ珪酸鉛系等のガラス状化合物を挙げることができる。前記無機系難燃剤の配合量としては、無機系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、ポリアミドイミド樹脂(A)、硬化性樹脂(B)及び/又は有機溶剤(C)、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.05〜20質量部の範囲で配合することが好ましく、特に0.5〜15質量部の範囲で配合することが好ましい。前記有機金属塩系難燃剤としては、例えば、フェロセン、アセチルアセトナート金属錯体、有機金属カルボニル化合物、有機コバルト塩化合物、有機スルホン酸金属塩、金属原子と芳香族化合物又は複素環化合物がイオン結合又は配位結合した化合物等が挙げられる。前記有機金属塩系難燃剤の配合量としては、有機金属塩系難燃剤の種類、硬化性樹脂組成物の他の成分、所望の難燃性の程度によって適宜選択されるものであるが、例えば、ポリアミドイミド樹脂(A)、硬化性樹脂(B)及び/又は有機溶剤(C)、硬化剤、非ハロゲン系難燃剤及びその他の充填材や添加剤等全てを配合した硬化性樹脂組成物100質量部中、0.005〜10質量部の範囲で配合することが好ましい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、汎用溶剤に可溶であり、且つ、耐熱性と光透過性に優れる硬化塗膜が得られる。このため、特に、硬化物の透明性が要求される分野、例えば、光学材料用分野、プリント配線基板のソルダーレジスト材料、冷蔵庫や炊飯器など家庭用電化製品の保護材料および絶縁材料、液晶ディスプレーや液晶表示素子、有機及び無機エレクトロルミネッセンスディスプレーや有機及び無機エレクトロルミネッセンス素子、LEDディスプレー、発光ダイオード、電子ペーパー、太陽電池、貫通シリコン電極(Through Silicon Via:TSV)、光ファイバーや光導波路等に用いる保護材料、絶縁材料、接着剤や、反射材料等の分野や、液晶配向膜、カラーフィルター用保護膜等の表示装置分野等に好適に用いることができる。
当然ながら、硬化物の透明性が要求されていない分野、例えば、各種耐熱性コーティング材料、耐熱性接着剤;電気・電子部品封止材料、絶縁ワニス、積層板、絶縁粉体塗料、半導体のパッシベーション膜、ゲート絶縁膜等の電気絶縁材;導電膜、導電性接着材などの導電性材料;プリント配線基板用積層板、プリブレグおよびハニカムパネルの如き構造材料用等の接着剤;ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等の各種強化繊維を用いた繊維強化プラスチックおよびそのプリプレグ;レジストインキなどのパターンニング材料;リチウムイオン二次電池等の非水電解質系二次電池のガスケット等の用途にも利用することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、汎用溶剤に可溶であり、且つ、耐熱性と光透過性に優れる硬化塗膜が得られるため、白色プリプレグ、白色積層板、当該白色積層板を備えたチップLEDに好適に用いることができる。以下、詳述する。
本発明の白色プリプレグは、本発明の硬化性樹脂組成物と白色顔料を含む混合物を、シート状ガラス繊維基材に含浸または塗布させた後、乾燥させてなることを特徴とする。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物と白色顔料を含む混合物を、シート状ガラス繊維基材に含浸または塗布させた後、100〜200℃の範囲の乾燥機中で1〜60分間の範囲にて半硬化させることを特徴とする。以下に白色プリプレグ、その製造方法を具体的に説明する。
前記白色顔料としては、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、アルミナ、合成スメクタイトなどが例示でき、白色の無機粉末であれば特に限定されるものではないが、可視光反射率や白色度、或いは電気特性といった観点から二酸化チタンを用いるのが最も好ましい。
二酸化チタンの結晶構造はアナターゼ型とルチル型がある。両者の特徴を挙げると、アナターゼ型は可視光短波長領域の反射率が良好であり、ルチル型は長期の耐久性や耐変色性に優れる。本発明の硬化性樹脂組成物に添加する白色顔料としてはどちらでも良く、特に限定されるものではない。両者を混合して使用することも勿論可能である。
前記混合物に含まれる白色顔料の含有量は、配合物中10〜75質量%の範囲が良い。10質量%以上であれば十分な白色度、反射率を得ることができ、75質量%以下であればシート状ガラス繊維基材への含浸性が低下したり金属箔との接着強度が低下したりといった不具合が発生することはない。
白色顔料として二酸化チタンを使用する場合、二酸化チタンには表面処理としてアルミナ、シリカ処理等を行っても良い。又、シラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤処理も可能である。
シート状ガラス繊維基材に含浸させる混合物には、上記白色顔料以外に、必要に応じてシリカなどの無機充填材を含有することができる。含有することのできる無機充填材としては、シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、Eガラス粉末、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ケイ酸カルシウム、クレー、タルク等が挙げられ、単体で使用しても良く、又、2種類以上を併用しても良い。これらの無機充填材を含有することにより、基板の剛性率が向上する。配合量は特に限定しないが、混合物に対して50質量%以下であることが好ましい。50質量%以下であればシート状ガラス繊維基材への含浸性が低下したり金属箔との接着強度が低下したりといった不具合が発生する可能性はほとんど生じない。
シート状ガラス繊維基材に含浸させる混合物には、上記白色顔料や無機充填材以外に、必要に応じて蛍光剤を配合することができる。蛍光剤を配合することにより、可視光短波長領域での見かけの反射率を高くすることができる。ここで、蛍光剤とは、光、放射線、紫外線等の光エネルギーを吸収し、他の波長の光に変えて放射する特性を持つ化合物であり、例えば有機物では、ジアミノスチルベン誘導体、アントラセン、サリチル酸ナトリウム、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカリルアミン誘導体等がある。また無機物では、ZnCdS:Ag、ZnS:Pb、ZnS:Cu等がある。蛍光剤は、反射率の低下が著しい可視光短波長領域(380〜470nm)に放射波長が存在することが好ましく、上記の蛍光剤のうち、一般的には蛍光増白剤と呼ばれているジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、ピラゾリン誘導体等が好適である。その添加量については、限定するものではないが、ピラゾリン誘導体の場合、混合物に対して0.1質量%程度の添加から効果を発揮し、添加量が多いほど効果が大きくなる。また、添加する蛍光増白剤は、溶剤に可溶であることが望ましい。
本発明の白色プリプレグに使用するシート状ガラス繊維基材としては、ガラスクロス、不織布のいずれでもよく、ガラスクロスと不織布とを併用してもよい。ガラスクロスの場合、平織り構造を基本とするが、ななこ織り、繻子織り、綾織り等の織物構造でもよく、特に限定するものではない。外観や加工性を損なわないために経糸と緯糸の交差部の隙間が小さい織り構造を使用することが好ましい。ガラスクロスの厚みについては、特に制限はないが0.02〜0.3mmの範囲のものが取り扱いやすく好ましい。
また、シート状ガラス繊維基材に、シランカップリング剤等による表面処理を行ってもよい。さらに、シート状ガラス繊維基材自身が白色に着色されたものでもよい。
以上説明した混合物に必要応じてメチルエチルケトン等の溶剤を加え、樹脂ワニスを調製し、ガラスクロス等からなるシート状ガラス繊維基材に含浸させ、乾燥して白色プリプレグを製造する。樹脂ワニスをシート状ガラス繊維基材に含浸・乾燥させる方法としては特に限定するものではなく、例えば樹脂ワニス中に、シート状ガラス繊維基材を浸漬するなどして含浸させた後、100℃〜200℃程度の温度で1〜60分間加熱して溶剤の除去および硬化性樹脂を半硬化させる方法等が採用できる。シート状ガラス繊維基材に含浸・乾燥して製造する白色プリプレグの硬化性樹脂組成物の含浸量は特に限定しないが30〜60質量%の範囲とするのが好ましい。前記プリプレグの乾燥条件の選定としては、例えば、予め樹脂ワニスのゲルタイムをゲルタイムテスター(安田精機製作所製)により測定しておくことが好ましい。ここで、ゲルタイムの測定条件としては、前記装置により160℃におけるゲルタイム(硬化時間:ローターのトルクが約3.3Kg・cmに達するまでに要する時間)を測定し、ワニス樹脂のゲルタイムが5分以上〜15分未満の範囲が好ましく、前記ゲルタイムが5分以上〜10分未満がより好ましい。樹脂ワニスのゲルタイムが短いと半硬化の状態を維持できず、均一なプリプレグ作製が困難となる。また、半硬化を維持できず硬化まで至ると後述する金属箔との張り合わせが困難になる。そのため、ワニスゲルタイム測定により、プロセスにあった条件で半硬化させることが好ましい。
得られた白色プリプレグと銅箔、またはアルミ箔とを組み合わせを加熱加圧成形して白色積層板を製造する。又、重ね合わせる白色プリプレグの枚数は特に制限はないが、単層基板としては白色プリプレグ1枚、又は2〜10枚を重ね、金属箔張り白色積層板の場合はその上に、又は上下に金属箔を積層配置するのが一般的である。多層基板は、上記単層基板を複数枚積層して製造されるが、重ね合わせる枚数については特に制限はない。金属箔としては、銅箔、アルミニウム箔等が用いられる。又、金属箔の厚みは1μm〜105μmが一般的であり、特に1.5μm〜35μmの範囲とするのが好ましい。また、前記白色プリプレグを積層する表面層のみに使用し、中間層には従来技術によるプリプレグを使用することも可能である。このようにして得られた白色積層板、金属箔張り白色積層板は、可視光領域の反射率が高く、しかも加熱や紫外線による変色が著しく少なく、高い耐熱性を持った板厚精度に優れるプリント配線基板用白色積層板、及び金属箔張り白色積層板となる。金属箔張り積層板の積層成形条件としては、通常のプリント配線板用積層板の手法が適用でき、例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機などを使用し、温度:100〜300℃の範囲、圧力:2〜100kgf/cm2 、加熱時間:0.1〜5時間の範囲が一般的であるが、絶縁層厚みの均一化、気泡の除去等の点から、積層成形は70mmHg以下の真空下で行うことが好ましい。
得られた白色積層板に、アディティブ法にて導体パターンを形成し、プリント配線基板とする。又、得られた金属箔張り白色積層板の金属箔上に回路パターンを印刷し、エッチングを施してプリント配線基板とする。チップLEDを該プリント配線基板に実装するには、先ずプリント配線基板上に半田を塗布し、その上にチップLEDを載置したのち、これをリフロー等に通して半田を溶融することでチップLEDをプリント基板に固定する。チップLEDを高密度集積させることで面光源としての利用も可能になり、このような面光源は特に薄型であることが要求される液晶ディスプレー用バックライトに好適に利用される。その他、面発光型の照明装置として誘導表示照明灯、避難口照明灯、広告灯等へ応用される。
チップLED実装用基板の板厚精度は、基板上に実装した素子をトランスファー成形で封止する際にきわめて重要である。ここでトランスファー成形とは、型締めした金型内に樹脂を圧入する手法のことをいう。チップLEDに用いられる基板の厚みは、0.06mmから1.0mmが一般的であるが、板厚の精度が悪ければ、トランスファー成形の際、型締め時に基板と金型との間に隙間が発生し、圧入した樹脂がその隙間から漏れて成形不良が発生する。このようなトランスファー成形における基板の板厚の要求精度は、例えば厚みが1.0mmの基板であれば許容差±0.05mm以下(範囲は0.1mm)、好ましくは許容差±0.03mm以下(範囲は0.06mm)である。従って、板厚精度の高い基板があればチップLEDの製造工程において不良率を大幅に低減でき、産業上極めて有意となる。
本発明の硬化性樹脂組成物をパターンニング材料に使用する場合には、例えば、本発明の硬化性樹脂組成物を基材上に塗布し、溶剤を乾燥させた後、パターンを有するマスクを通してエネルギー線を照射し、アルカリ水溶液又は溶剤にて現像することにより、パターンを形成することができる。さらに80℃以上で熱処理させることによりさらに強靭なパターンを形成することができる。以下、詳述する。
まず、支持体と、該支持体上に形成された本発明の硬化性樹脂組成物からなる感光性樹脂組成物層とを備えた感光性フィルムを製造する。感光性樹脂組成物層上には、該感光性樹脂組成物層を被覆する保護フィルムを更に備えていてもよい。
感光性樹脂組成物層は、本発明の硬化性樹脂組成物を溶剤又は混合溶剤に溶解して固形分30〜70質量%程度の溶液とした後に、かかる溶液を支持体上に塗布して形成することが好ましい。感光性樹脂組成物層の厚みは、用途により異なるが、加熱及び/又は熱風吹き付けにより溶剤を除去した乾燥後の厚みで、10〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。この厚みが10μm未満では工業的に塗工困難な傾向があり、100μmを超えると本発明により奏される上述の効果が小さくなりやすく、特に、物理特性及び解像度が低下する傾向がある。
感光性フィルムが備える支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン等の耐熱性及び耐溶剤性を有する重合体フィルムなどが挙げられる。支持体の厚みは、5〜100μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。この厚みが5μm未満では現像前に支持体を剥離する際に当該支持体が破れやすくなる傾向があり、また、100μmを超えると解像度及び可撓性が低下する傾向がある。上述したような支持体と感光性樹脂組成物層との2層からなる感光性フィルム又は支持体と感光性樹脂組成物層と保護フィルムとの3層からなる感光性フィルムは、例えば、そのまま貯蔵してもよく、又は保護フィルムを介在させた上で巻芯にロール状に巻き取って保管することができる。
本発明の硬化性樹脂組成物を感光性樹脂組成物又は感光性フィルムとして用いた場合のレジストパターンの形成方法は、初めに、其々、公知のスクリーン印刷、ロールコータにより塗布する工程、又は保護フィルムを除去してラミネート等により貼り付ける工程により、レジストを形成する基板上に積層する。次いで、必要に応じて上述した感光性フィルムから支持体フィルムを除去する除去工程を行い、または支持体フィルムを除去せずに活性光線を、マスクパターンを通して、感光性樹脂組成物層の所定部分に照射して、照射部の感光性樹脂組成物層を光硬化させる露光工程を行う。照射部以外の感光性樹脂組成物層は、支持体フィルムがある場合、それを除去して次の現像工程により除去される。なお、レジストを形成する基板とは、プリント配線板、半導体パッケージ用基板、フレキシブル配線板を指す。
活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に放射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いられる。更に直接描画方式のダイレクトレーザ露光を用いても良い。其々のレーザ光源、露光方式に対応する光重合開始剤(D)を用いることにより優れたパターンを形成することが可能となる。
現像工程では、現像液として、例えば、20〜50℃の炭酸ナトリウムの希薄溶液(1〜5質量%水溶液)等のアルカリ現像液が用いられ、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッピング等の公知の方法により現像する。
上記現像工程終了後、はんだ耐熱性、耐薬品性等を向上させる目的で、高圧水銀ランプによる紫外線照射や加熱を行うことが好ましい。紫外線を照射させる場合は必要に応じてその照射量を調整することができ、例えば0.2〜10J/cm2程度の照射量で照射を行うこともできる。また、レジストパターンを加熱する場合は、100〜170℃程度の範囲で15〜90分程行われることが好ましい。さらに紫外線照射と加熱とを同時に行うこともでき、いずれか一方を実施した後、他方を実施することもできる。紫外線の照射と加熱とを同時に行う場合、はんだ耐熱性、耐薬品性等を効果的に付与する観点から、60〜150℃に加熱することがより好ましい。
この感光性樹脂組成物層は、基板にはんだ付けを施した後の配線の保護膜を兼ね、優れた耐クラック性、HAST耐性、金めっき性を有するので、プリント配線板用、半導体パッケージ基板用、フレキシブル配線板用のソルダーレジストとして有用である。
このようにしてレジストパターンを備えた基板は、その後、半導体素子などの実装(例えば、ワイヤーボンディング、はんだ接続)がなされ、そして、パソコン等の電子機器へ装着される。
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明する。例中特に断りの無い限り「部」、「%」は質量基準である。
実施例1
〔ポリアミドイミド樹脂(A1)の調製〕
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにPGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)1102.8g、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=17.2)197.6g(0.27mol)及びシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸-3,4−無水物506.9g(2.56mol)を加え、140℃まで2時間掛けて昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で2時間反応させた。系内は淡黄色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅したことが確認された。更に、IPDI3Nを197.6g(0.27mol)加え、反応を継続させた。赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅したことを確認した後、更にIPDI3Nを197.6g(0.27mol)加え、反応を継続させた。赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅し、1780cm−1、1720cm−1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で191KOHmg/gであった。この樹脂の溶液をイミド樹脂(A1)の溶液と略記する。
実施例2
〔ポリアミドイミド樹脂(A2)の調製〕
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにPGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)331.9g、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=17.2)35.1g(0.05mol)及びシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸-3,4−無水物150.3g(0.76mol)を加え、140℃まで2時間掛けて昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で2時間反応させた。系内は淡黄色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅したことが確認された。更に、IPDI3Nを35.1g(0.05mol)加え、反応を継続させた。赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅したことを確認した後、更にIPDI3Nを35.1g(0.05mol)加え、反応を継続させた。赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅したことを確認した後、更にIPDI3Nを35.1g(0.05mol)加え、反応を継続させた。赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅したことを確認した後、更にIPDI3Nを35.1g(0.05mol)加え、反応を継続させた。赤外スペクトルで特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅し、1780cm−1、1720cm−1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で196KOHmg/gであった。この樹脂の溶液をイミド樹脂(A2)の溶液と略記する。
実施例3
〔ポリアミドイミド樹脂(A3)の調製〕
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにPGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)331.9g、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=17.2)87.8g(0.12mol)及びシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸-3,4−無水物150.3g(0.76mol)を加え、140℃まで2時間掛けて昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で2時間反応させた。系内は淡黄色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅したことが確認された。更に、IPDI3Nを58.6g(0.08mol)加え、反応を継続させた。赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅したことを確認した後、更にIPDI3Nを29.3g(0.04mol)加え、反応を継続させた。赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅し、1780cm−1、1720cm−1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で185KOHmg/gであった。この樹脂の溶液をイミド樹脂(A3)の溶液と略記する。
実施例4
〔ポリアミドイミド樹脂(A4)の調製〕
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにPGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)331.9g、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=17.2)29.3g(0.04mol)及びシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸-3,4−無水物150.3g(0.76mol)を加え、140℃まで2時間掛けて昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で2時間反応させた。系内は淡黄色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅したことが確認された。更に、IPDI3Nを58.6g(0.08mol)加え、反応を継続させた。赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅したことを確認した後、更にIPDI3Nを87.8g(0.12mol)加え、反応を継続させた。赤外スペクトルにて特性吸収を測定し、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅し、1780cm−1、1720cm−1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で190KOHmg/gであった。この樹脂の溶液をイミド樹脂(A4)の溶液と略記する。
比較例1〔ポリアミドイミド樹脂(A5)の調製〕
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにPGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)276.4g、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=17.2)146.4g(0.20mol)及びシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸-3,4−無水物125.1g(0.63mol)を加え、140℃まで2時間掛けて昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で4時間反応させた。系内は淡黄色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅し、1780cm−1、1720cm−1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で189KOHmg/gであった。この樹脂の溶液をイミド樹脂(A5)の溶液と略記する。
比較例2〔ポリアミドイミド樹脂(A6)の調製〕
撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにPGMAc(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)276.4g、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートから合成されたイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=17.2)146.4g(0.20mol)及びシクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物125.1g(0.63mol)を加え、140℃まで4時間掛けて昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で4時間反応させた。系内は淡黄色の液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm−1が完全に消滅し、1780cm−1 、1720cm−1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で195KOHmg/gであった。この樹脂の溶液をイミド樹脂(A6)の溶液と略記する。
(実施例1〜4、比較例1〜2)
上記で得られたポリアミドイミド樹脂を用いて、表1に記載した配合条件で、硬化性樹脂組成物1〜6を製造した。
第1表の脚注
EHPE3150:ダイセル化学工業株式会社製の環式脂肪族系エポキシ樹脂(2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物)。エポキシ当量は177。樹脂分の濃度は100質量%。
<貯蔵安定性の測定>
160℃に加熱したホットプレート上で加熱し、当該硬化性樹脂組成物1〜6の糸引きがなくなるまでの時間をそれぞれ測定した。得られた結果を表2に「160℃ゲルタイム」として示した。
・現像性評価
樹脂をガラス基板上に乾燥後に膜厚17μmになるように塗装を行った。塗装板を90℃の乾燥機で15分乾燥させて、塗膜を得た。次いで、塗装板を25℃の1%Na2CO3水溶液に浸漬し、塗膜が消失するまでの時間を測定した。表2に示した。
・PGMAcトレランス評価
フラスコに樹脂を10g加えた後、25℃のPGMAcを加えていき、濁りが確認されたところを希釈限界とした。表3に示した。
・分散度(分子量分布)
ポリスチレン換算の数平均分子量と質量平均分子量の比から算出した。表3に示した。