JP2017216336A - ガスバリアフィルムを含む発電素子モジュール - Google Patents

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Abstract

【課題】原子層堆積膜からなる機能層の機能低下や損傷を抑制し、機能層のガスバリア機能と長期に亘る信頼性とを向上させたガスバリアフィルムを含む発電素子モジュールを提供する。【解決手段】原子層堆積膜を有するガスバリアフィルムと、封止材と、発電素子と、表面保護シートとを含む発電素子モジュールであって、ガスバリアフィルムが、フィルム基材と、フィルム基材の外面の少なくとも一部に積層され、第1の無機物質を含み、原子層堆積膜の成膜原料である前駆体と結合可能な吸着部位を有するアンダーコート層と、アンダーコート層の外面を覆うように積層され、第2の無機物質の原子層堆積膜よりなる機能層と、機能層の外面を覆うように積層され、第3の無機物質を含むオーバーコート層とを備える。【選択図】図1

Description

本発明は、ガスバリアフィルムを含む発電素子モジュールに関し、特に、原子層堆積膜を有するガスバリアフィルムを含む発電素子モジュールに関する。
従来、ガスバリア機能は、食品、医薬品等の分野で対象となる物を包装する用途として要求されてきた。フィルム基材に薄膜を形成し、ガスバリア機能を付与したガスバリアフィルムを用いることで、防湿性や酸素バリア性による対象物の酸化等の変質を防止することが可能となる。
一方、防湿、酸素バリアなどのガスバリア機能は有機発光(EL)素子、液晶表示素子、発電素子モジュール(太陽電池)等の電子デバイス関連分野にも要求される。これらの電子デバイスには高いガスバリア機能が要求されるため、従来ではガラス基材が使用されている。しかし、電子デバイスの薄型化、軽量化、フレキシブル化に伴い、ガラス基材と同等のガスバリア機能を有したフィルムがガラス基材の代替として注目されている。
更には、電子デバイスは長期的な信頼性も必要とされ、ガスバリア機能の耐久性についてもガスバリア機能と同様に要求される。特に、発電素子モジュールは屋外等でも使用されることから長期的な信頼性が重要となる。しかし、このような高いガスバリア機能と耐久性を兼ね備えたフィルムは得られていない。
ガスバリアフィルムの製造方法としては、物質を気体のように原子または分子レベルで動ける状態にする気相を用いて物体の表面(ここでは、フィルム基材表面)に薄膜を形成する、化学気相成長(CVD(Chemical Vapor Deposition)ともいう。以下、「CVD」という。)法と、物理気相成長(PVD(Physical Vapor Deposition)、或いは物理蒸着法ともいう。以下、「PVD」という。)法とがある。
PVD法としては、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法等がある。スパッタリング法は、膜質及び厚さの均一性に優れた高品質な薄膜の成膜が行えるため、液晶ディスプレイ等の表示デバイスの透明電極配線膜や電極配線膜、光ディスクの光反射膜等に広く適用されている。
CVD法は、真空チャンバー内に原料ガスを導入し、基材上において、熱エネルギーにより、1種類或いは2種類以上のガスを分解または反応させることで、固体薄膜を成長させる方法である。このとき、成膜時の反応を促進させたり、反応温度を下げたりするために、プラズマや触媒(Catalyst)反応を併用するものがある。
このうち、プラズマ反応を用いるCVD法を、PECVD(Plasma Enhanced CVD)法という。また、触媒反応を利用するCVD法を、Cat−CVD法という。このようなCVD法を用いると、成膜欠陥が少なくなるため、例えば、半導体デバイスの製造工程(例えば、ゲート絶縁膜の成膜工程)等に適用されている。
近年、成膜方法として、原子層堆積(ALD(Atomic Layer Deposition)法。以下、「ALD法」という。)が注目されている。ALD法は、表面吸着した物質を表面における化学反応によって原子レベルで一層ずつ成膜していく方法である。上記ALD法は、CVD法の範疇に分類されている。
いわゆるCVD法(一般的なCVD法)は、単一のガスまたは複数のガスを同時に用いて基坂上で反応させて薄膜を成長させるものである。それに対して、ALD法は、前駆体(以下、「第1の前駆体」という。例えば、TMA(Tri-Methyl Aluminum))、またはプリカーサともいわれる活性に富んだガスと、反応性ガス(ALD法では、これもまた前駆体と呼ばれる。そのため、以下、該前駆体を「第2の前駆体」という。)と、を交互に用いることで、基材表面における吸着と、これに続く化学反応と、によって原子レベルで一層ずつ薄膜を成長(一般的に二次元成長と呼ばれる)させていく特殊な成膜方法である。
ALD法の具体的な成膜方法は、以下のような手法で行われる。
始めに、いわゆるセルフ・リミッティング効果(基材上の表面吸着において、表面がある種のガスで覆われると、それ以上、該ガスの吸着が生じない現象のことをいう。)を利用し、基材上に前駆体が一層のみ吸着したところで未反応の前駆体を排気する(第1のステップ)。
次いで、チャンバー内に反応性ガスを導入して、先の前駆体を酸化または還元させて所望の組成を有する薄膜を一層のみ形成した後に反応性ガスを排気する(第2のステップ)。
ALD法では、上記第1及び第2のステップを1サイクルとし、該サイクルを繰り返し行うことで、基材上に薄膜を成長させる。
したがって、ALD法では、二次元的に薄膜が成長する。また、ALD法は、従来の真空蒸着法やスパッタリング法等との比較ではもちろんのこと、一般的なCVD法と比較しても、成膜欠陥が少ないことが特徴である。このため、食品及び医薬品等の包装分野や電子部品分野等の幅広い分野への応用が期待されている。
また、ALD法には、基材に吸着している第1の前駆体を反応させる工程において、反応を活性化させるためにプラズマを用いる方法がある。この方法は、プラズマ活性化ALD(PEALD:Plasma Enhanced ALD)、または、単に、プラズマALDと呼ばれている。
ところで、ALD法以外の前述のCVD法やPVD法にてフィルム基材上にガスバリア機能を有する薄膜を形成したガスバリアフィルムでは、ガラス基材の代替として使用可能となる程度の高いガスバリア性、および高い耐久性は実現できない。
特許文献1にはフィルム基材上にポリマー層を設け、CVD法やPVD法にて形成されたガスバリア機能を有する酸化物層をポリマー層上に形成し、形成した酸化物層上に更にポリマー層を形成することで、酸化物層をポリマー層で狭持し、優れたガスバリア機能を有する封止複合フィルムを発電素子モジュールなどの電子デバイスに用いることが開示されている。
しかしながら、ガスバリア機能を有する酸化物層をCVD法やPVD法で形成した場合、ポリマー層で挟持した3層構成とした場合でも10−2g/m/day以下のガスバリア機能を持たせることは困難である。
また、酸化物層がポリマー層に狭持されているが、高温高湿試験などの環境に暴露したときに、ポリマー層はガスバリア機能が低いため、酸化物層が劣化する速度が速くなる。つまり、高い耐久性がなく、長期間の信頼性が必要となる発電素子モジュールなどの電子デバイスの要求を満たすことが出来ない。
特許文献2には、基材上にポリシラザン化合物を含む層を改質することで酸化ケイ素化合物や酸窒化ケイ素化合物の層である第一のガスバリア層を形成し、第一のガスバリア層上にALD法により第二のガスバリア層を形成することで、優れたガスバリア機能および高い湿熱耐性を持ったガスバリアフィルムを有機EL素子や太陽電池などのような透明性を必要とするデバイス用のフレキシブル基板に利用することが開示されている。
上記特許文献2の構成の場合、高いガスバリア機能を付与することは可能だが、ガスバリア層の保護がされておらず、太陽電池などの電子デバイスの製造過程での機械的ストレスの印加に対する耐性や長期信頼性に関わる高温、高湿度環境に対する耐性は不十分である。
ところで、近年、太陽電池のバックシート、フロントシート、及び有機発光素子等のフレキシブル化及び軽量化を目的としたバリアフィルムの需要があり、バリアフィルムを構成するガスバリアフィルムには温度や湿度に対する耐性について、従来の85℃/85%RHの高温高湿度試験による耐性や、特に、太陽電池のバックシートはPCT(Pressure Cooker Test;105℃/100%RH)加速度試験での厳しい耐性が要求されている。
通常、ガスバリアフィルムの基材の少なくとも片方の面に、ガスバリア機能を有する金属もしくは金属酸化膜が形成される。しかしながら、高分子フィルムを用いた基材は、半導体分野で用いられているシリコンウェハやフォトマスクと比較すると、表面に凹凸があり、かつ自由体積などのナノレベルの空間を有するため、金属もしくは金属酸化物の安定した形成(膜質や密着性の維持)が困難となる。
上記のように、基材として高分子フィルムを用いたガスバリアフィルムが使用される製品は、信頼性テストで高熱、高湿度等の環境的ストレスに暴露した際、基材上に形成された金属含有膜が基材の伸縮や変形により、または基材と金属含有膜との化学的変化、つまり結晶化などの形態変化により、金属含有膜が元の組成を維持できない。そのため、膜が劣化し、または基材と金属含有膜との間の密着性が低下し、その結果、積層体が所望のガスバリア機能を維持することができないという問題があった。
このような問題を回避可能な技術として、例えば、特許文献3には、基材であるフィルム基材よりも表面が平滑な紫外線硬化樹脂からなる下地層の上に、無機酸化物からなるバリア層をスパッタ法にて形成する技術が開示されている。また、特許文献3には、スパッタ法にて形成したバリア層の上に、更にALD法によりバリア層を設けることも記載されている。
特表2015−531999号公報 特開2014−151571号公報 特開2012−116151号公報
しかしながら、特許文献3に開示された技術では、下地層に高分子材料を使用し、かつ、バリア膜がスパッタ法にて形成されているため、高いガスバリア機能が得られない。また、特許文献3に記載された、ALD法により成膜したバリア層を最表面に設けた構成では、ガスバリア機能を発揮する原子層堆積膜が高温高湿環境下に直接暴露され、また、機械的ストレスを受けることにより、劣化、損傷してしまい、信頼性を確保することが困難となる。
したがって、積層体の機能の確保及び積層体の特性の低下を抑制するためには、ガスバリア機能を有する薄膜(機能層)を形成する表面を高分子フィルムの表面の様に自由体積空間を有する表面ではなく、自由体積が存在しない、もしくは自由体積が少ない表面とする必要がある。そのため、自由体積が存在しないアンダーコート層を機能層と高分子フィルム基材との間に形成する必要があると考えられる。また、発明者らの調査により、アンダーコート層に無機物質を用いることにより、原子層堆積膜からなる機能層を薄く形成した場合でも十分なガスバリア機能を有することを確認している。
また、発明者らの調査により、機能層を最外層とするガスバリアフィルムにストレスを印加すると、つまり、高温高湿度等の環境内に暴露すると、機能層が劣化し、ガスバリア機能を維持できなくなるという知見を得ている。さらに、機能層の表面にスクラッチや圧迫等の機械的ストレスを与えると、機能層に欠陥が発生し、機能層の機能低下を招いてしまうという問題があることを確認している。
上記説明したように、従来から物理気相成長法や化学気相成長法によって有機高分子からなる基材の外面に、機能層を有する積層体が広く知られている。このような積層体は、ガスバリア性を有するガスバリアフィルム等の機能を発現するフレキシブルフィルムに好んで用いられている。
上記物理気相成長法や化学気相成長法を用いて、有機高分子からなる基材上に原子層堆積膜からなる機能層を形成する場合、自由体積空間の存在により原子層堆積膜の二次元成長が遅れ、ガスバリア機能の発現も遅くなる。さらには、緻密な膜形成がされないため、化学的安定性も損なわれ、機能層の信頼性を十分に確保することが困難となり、機能層の特性を維持できない恐れがある。
さらに、機能層の外面を保護するオーバーコート層がないと、機能層の劣化や機能層の特性が低下するため、積層体のガスバリア機能を確保することが困難となる。そのため、積層体を備える発電素子モジュールを製造する際、製造工程のストレスにより機能層が劣化し、発電素子モジュールにおいて水蒸気や酸素などのガスからの保護機能が失われ、発電素子モジュールの発電機能が低下してしまう。
そこで、本発明は、原子層堆積膜からなる機能層の機能低下や損傷を抑制し、機能層のガスバリア機能と長期に亘る信頼性とを向上させたガスバリアフィルムを含む発電素子モジュールを提供することを目的とする。
本発明は、原子層堆積膜を有するガスバリアフィルムと、封止材と、発電素子と、表面保護シートとを含む発電素子モジュールであって、ガスバリアフィルムが、フィルム基材と、フィルム基材の外面の少なくとも一部に積層され、第1の無機物質を含み、原子層堆積膜の成膜原料である前駆体と結合可能な吸着部位を有するアンダーコート層と、アンダーコート層の外面を覆うように積層され、第2の無機物質の前記原子層堆積膜よりなる機能層と、機能層の外面を覆うように積層され、第3の無機物質を含むオーバーコート層とを備える。
アンダーコート層およびオーバーコート層が、第III族元素、第IV族元素、第V族元素、及びランタノイド元素のうち、少なくとも1種類の元素を含んでも良い。
アンダーコート層およびオーバーコート層が、金属酸化物、金属窒化物、及び金属酸窒化物のうち、少なくとも1種類を含んでも良い。
アンダーコート層およびオーバーコート層が、Ta元素を含んでも良い。
ガスバリアフィルムの水蒸気透過率が、0.01g/(m・day)以下であることが好ましい。
本発明によれば、原子層堆積膜からなる機能層の機能低下や損傷を抑制し、機能層のガスバリア機能と長期に亘る信頼性とを向上させたガスバリアフィルムを備える発電素子モジュールを実現できる。
本発明の実施の形態に係る発電素子モジュールを模式的に示す断面図である。 本発明の実施の形態に係るガスバリアフィルムを模式的に示す断面図である。 本実施の形態の製造途中のガスバリアフィルムを模式的に示す断面図であり、具体的には、基材上にアンダーコート層が形成される前の基材の断面図、及び領域Cで囲まれた基材の表面部分を拡大した断面図である。 本実施の形態の比較対象となるガスバリアフィルムを模式的に示す断面図であり、具体的には、基材の表面に直接機能層が形成された積層体の断面図、及び領域Cで囲まれた基材と機能層との境界部分を拡大した断面図である。 本実施の形態の製造途中のガスバリアフィルムの断面図であり、具体的には、基材上にアンダーコート層及び機能層が形成された後の積層体の断面図、及び領域Dで囲まれたアンダーコート層と機能層との境界部分を拡大した断面図である。 本発明の実施の形態に係るガスバリアフィルムの製造方法を説明するためのフローチャートである。
発明者らが本発明に至る前の事前検討を行った結果、有機高分子(高分子材料)よりなるフィルム基材上に、原子層堆積膜を形成する場合、原子層堆積膜の成膜原料となる前駆体は、フィルム基材の高分子材料表面に存在する官能基と結合する以外に、自由体積(フリーボリューム)と呼ばれる空隙にも拡散する。したがって、反応ガスなどで反応させると、原子層堆積膜が微小な空間にも形成されるため、初期成長段階では原子層堆積法の特徴である一層ずつの堆積が行われず、二次元成長が開始しない。つまり、ガスバリア機能が発現するためにはある程度の膜厚(サイクル数)が必要であることを確認した。さらには、原子層堆積膜を形成する表面をよりシリコンウェハなどに近づけるため、基材上に無機物質を含有するアンダーコート層を設けることで、二次元成長の開始が薄膜(少ないサイクル)で実現することを見出した。
つまり、機能層と基材との間に、無機物質を含むアンダーコート層を形成することで、直接、基材上に機能層を形成した場合と比較して、機能層の特性を確保することができる。具体的には、積層体のガスバリア性を向上させることが可能となると共に、原子層堆積膜がより緻密に形成されるため原子層堆積膜が化学的に安定となり、さらにはアンダーコート層と原子層堆積膜である機能層との密着性が確保されるため、環境ストレスによる機能の低下を抑制することが可能となる。
また、機能層の外面に、環境的ストレスや機械的ストレスから機能層を保護するために、無機物質を含有したオーバーコート層を設けることで、機能層の劣化や機能層の特性の低下を抑制することが可能となり、ガスバリア機能および長期的信頼性(耐久性)が保障された発電素子モジュールを具備した電子デバイスの提供が可能となる。
<実施形態の概要>
本発明の実施形態に係る発電素子モジュールにおいて、ガスバリアフィルムは、フィルム基材と、第1の無機物質を含み、原子層堆積膜の成膜原料である前駆体と結合可能な吸着部位を有するアンダーコート層と、第2の無機物質の原子層堆積膜よりなる機能層と、第3の無機物質を含むオーバーコート層とを有する。尚、実施形態に係るガスバリアフィルムは、封止材と発電素子と表面保護シートとで構成される発電素子モジュールの基材となる。
原子層堆積膜である機能層の下地として第1の無機物質を含むアンダーコート層を用いることで、原子層堆積膜の二次元的な成長が早くなり、原子層堆積膜が薄い段階でガスバリア機能が発現し、より高いガスバリア機能を実現できる。さらにはアンダーコート層を下地として用いることで原子層堆積膜が緻密になり、高温、高湿下(環境ストレス下)での機能の低下を抑制することができる。
また、機能層の外面を覆うオーバーコート層を有することで、機能層の外面側が損傷することを抑制でき、また、環境ストレス下での機能層の直接暴露を防ぐことで機能の低下を抑制可能となる。さらには、積層体のガスバリア性を向上させることができる。
現在、原子層堆積法(ALD法)によって形成された原子層堆積膜を備えた積層体は、ディスプレイ、半導体メモリ(DRAM(Dynamic Random Access Memory))に用いられるガラス基板やシリコン基板等の電子部品用基板として、商業生産が行われている。
一方、本発明の発電素子モジュールにおけるガスバリアフィルムは、高分子材料よりなる基材を持つものが対象となる。ところが、現状では、該基材に対する原子層堆積法(ALD法)のプロセスは詳細な研究が最近になって活発化してきたことが実情である。
一般的に、電子部品用基板上に原子層堆積膜を成膜すると、原子層堆積膜は、二次元成長すると考えられている。一方、高分子材料である有機高分子基材(例えば、PET:ポリエチレンテレフタレート)上に原子層堆積膜を成膜すると、原子層堆積膜は、初期成長段階、例えば、1.0nm程度の薄い膜では二次元成長していない可能性が高い。
つまり、高分子材料よりなる基材の外面へのALD法を用いた原子層堆積膜の初期成長段階では、ALD法による本来の二次元成長ができず、バリア機能の発現が遅れていると考えられる。
この主な原因は、基材の外面における「吸着サイトの密度」、及び「自由堆積領域への前駆体の拡散」にあると考えられる。したがって、ガラス基板やシリコン基板等に類似した表面を形成することで原子層堆積膜を効率良く形成できるのではないかと予想した。
そこで、本発明者らは、基材上に無機物質からなるアンダーコート層を形成することで、原子層堆積膜が早期に二次元成長し、ガスバリア機能が向上することを見出し、更には環境ストレスによる耐久性が向上することを見出した。つまり、原子層堆積膜を成長させる表面に無機物質を用いることで、成長様式が異なることを見出した。
基材として、上記ガラス基板やシリコン基板のように、表面(外面)が平滑で、かつ自由体積(フリーボリューム)がない基板を用い、該基板上に原子層堆積膜を形成すると、原子層堆積膜の成膜原料となる前駆体が、外面(表面)に配置された吸着部位と結合して、成長する。
一方、高分子材料よりなる基材は、結晶領域(結晶部)および非晶質領域(非晶部)が存在し、非晶質領域には、自由体積(フリーボリューム)と呼ばれる空隙が存在する。この空隙が存在するため、例えば、水蒸気透過率の測定をした際に水分子が空隙を通過し基材を透過する。
また、原子層堆積膜の成膜において、前駆体(成膜原料)が上記空隙よりも小さい分子サイズの場合、水分子と同様にある程度の深度で基材内に拡散することが確認されている。
また、原子層堆積膜が、直接高温・高湿などの環境ストレス下に曝された場合と比較して、原子層堆積膜の表面に一層形成した場合には、ガスバリア機能の低下が抑制されることを見出した。原子層堆積膜の表面に一層形成することにより、原子層堆積膜に直接擦れや押し付けなどの機械的ストレスを与えた際の著しいガスバリア機能の低下を抑制できる。
そこで、本発明者らは、基材と機能層との間に自由体積がない、もしくは少ないと予想される無機物質を含むアンダーコートを形成し、さらには、保護層として機能層の表面を覆うように無機物質を含むオーバーコート層を形成し、ガスバリアフィルムの環境ストレス下での水蒸気透過率との関係を調査した。また、ガスバリアフィルムを用いた発電素子モジュールの環境試験後の発電量を調査し、ガスバリアフィルムの耐久性と発電素子モジュールの耐久性の関係を考察しながら、本発明のガスバリアフィルムへのアプローチを試みた。
ここで、原子層堆積膜の原料である前駆体が表面に吸着し反応するためには吸着部位が必要となる。吸着部位とは、例えばO原子もしくはOH基を有する化学構造表面、または、N原子もしくはNH基を有する化学構造表面である。高分子材料よりなる基材、例えばPETやPEN(ポリエチレンナフタレート)、PI(ポリイミド)などは、前駆体が化学吸着可能なOH基、COOH基、COR基またはNH基を有するが、高分子材料であるため自由体積が存在し、前駆体が浸透してしまうため原子層堆積膜の二次元的な成長を阻害する。
無機物質を含むアンダーコート層の場合、例えばTaOやSiO、TiO、AlO、SiN、TiNなどO原子やN原子を有し、自由体積が存在しない表面を有するため、前駆体の浸透による原子層堆積膜の二次元的な成長の遅れを抑制することができる。また、前記無機物質は表面をプラズマなどの処理をすることで、OH基などの吸着部位を導入することも可能である。
原子層堆積膜の前駆体の吸着部位への化学吸着については、次のように考える。すなわち、ガス状の前駆体(例えば、TMA:Tri−Methyl AluminumやTiC1等の金属含有前駆体)が、無機物質よりなるアンダーコート層の外面(表面)へ化学的に吸着することが、ALD法のプロセスの第一ステップとなる。このとき吸着部位の存在が前駆体との化学吸着、つまり原子層堆積膜の二次元的な成長に大きく影響する。
原子層堆積膜の前駆体の有機高分子基材内部への拡散については、次のように考える。一般的に、高分子フィルムは、結晶領域と非結晶領域が混在しているとされる。非結晶領域では、自由体積(フリーボリューム)と呼ばれる高分子鎖が存在していない空隙があり、空隙を介して、気体が拡散または透過してしまう。このため、高分子材料よりなる基材の外面に、原子層堆積膜からなる機能層を形成すると二次元的な成長をせず初期の成長において緻密な膜が形成できない。
ここで、原子層堆積膜を形成する表面を金属酸化物(MOもしくは表面はM−OHとなっている)とした場合は、下記(1)式に示すように、非可逆的に、原子層堆積膜の前駆体が吸着部位に吸着する。
M−OH+Al(CH→M−OAl(CH+CH・・・(1)
すなわち、上記(1)式において、金属酸化物表面に存在するOH基が吸着部位となり吸着する。さらには金属酸化膜、金属窒化膜などはフリーボリュームが存在しないため、二次元的な成長を開始するために必要な膜厚が薄くなる。
上記説明したように、ALD法を用いて、無機物質よりなるアンダーコート層の外面に原子層堆積膜を形成すると、原子層堆積膜の前駆体は、アンダーコート層表面に存在する吸着部位に吸着して、当該吸着部位が原子層堆積膜の核となる。無機物質よりなる表面は、自由体積(フリーボリューム)が存在しないため、隣り合う核同士が接触して連続膜となり、二次元的成長モードとなることでより緻密な膜となる。
一方、高分子材料の様な自由体積(フリーボリューム)が存在する表面の場合は、フリーボリュームの空隙に存在する吸着部位に前駆体が3次元的に吸着し、隔離した状態で配置される。このように、吸着サイトが隔離した状態で配置されている場合、原子層堆積膜の成長は、吸着サイトを核として三次元成長することになる。
すなわち、自由体積(フリーボリューム)が存在すると、前駆体にとって原子層堆積膜が三次元的に広がって、OH基等の箇所に前駆体がまばらに吸着するため、効率良く原子層堆積膜が形成できず、理想的な機能層の形成が困難となる。そのため、原子層堆積膜の形成表面の選定が重要となる。つまり、原子層堆積膜に含まれる前駆体と結合しやすく、且つ、自由体積(フリーボリューム)が存在しない層を、機能層を形成する表面として用いることが重要となる。
以下、図面を参照して本発明を適用した実施の形態について詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、本発明の実施形態の構成を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の積層体の寸法関係とは異なる場合がある。
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係る発電素子モジュールを模式的に示す断面図である。本実施の形態の発電素子モジュール10は、図1に示すように、ガスバリアフィルム20を含む封止フィルム11と、封止材13と、発電素子14と、表面保護材15とを有する。
封止フィルム11は、例えば、ガスバリアフィルム20のみで構成しても良いし、ガスバリアフィルム20を接着剤を介して他の基材にラミネートした構成としても良い。また、発電素子モジュール10は、封止フィルム11と、封止材13により封止された発電素子14とを貼り合わせることで製造しても良いし、封止フィルム11を基材として、封止フィルム11上に直接封止材13と発電素子14と表面保護材15とを形成することで製造しても良い。
封止材13及び表面保護シート15の材質は、必要に応じて自由に選択できる。また、発電素子14は、単結晶シリコン、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、薄膜シリコン型、CIS、色素増感型、有機薄膜型など電子デバイスの用途に応じて自由に選択できる。
図2は、ガスバリアフィルム20の層構成を模式的に示す断面図である。具体的には、ガスバリアフィルム20は、フィルム基材21と、アンダーコート層22と、機能層23と、オーバーコート層24とを有する。また、フィルム基材21の外面21aの反対側にアンダーコート層、機能層、オーバーコート層を形成してもよい。つまり、フィルム基材21の両面に同じ層を形成してもよい。
(フィルム基材)
フィルム基材21は、高分子材料により構成されている。フィルム基材21は、アンダーコート層22が形成される外面21aを有する。アンダーコート層22は物理気層蒸着法や化学気層蒸着法を用いて形成するため、フィルム基材21を構成する高分子材料には特に制限はなく、どの様な高分子材料でも適用可能である。
フィルム基材21の材料となる高分子材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)等を用いることができる。
ガスバリアフィルム20を構成するフィルム基材21の厚さは、例えば、12μm以上300μm以下の範囲が好ましく、12μm以上100μm以下の範囲がより好ましい。
(アンダーコート層)
図2に示すように、アンダーコート層22は、フィルム基材21の外面21aを覆うように積層されている。アンダーコート層22は、外面22aを有する。アンダーコート層22は、第1の無機物質を含む膜で構成されており、機能層23の原子層堆積膜の成膜原料である前駆体が化学吸着可能な吸着部位を膜表面に有する。
第1の無機物質は、TaO、SiO、TiO、HfO、NbO、ZrOやAlOなどの金属酸化物、およびSiN、TiN、AINなどの金属窒化物のいずれか、もしくはそれらの混合膜、さらにはAlSi、TiAlやTaAlなどの3元系の酸化物であってもよく、金属酸窒化物であっても良い。つまり、第1の無機物質により構成されるアンダーコート層22の表面に、機能層23の原子層堆積膜25の成膜原料である前駆体が化学吸着可能なO原子、N原子、その他求核特性を示す原子や官能基を有する表面を構成できる材料であれば、上記無機物質に限らない。
また、第1の無機物質としては、例えば、第III族元素、第IV族元素、第V族元素、及びランタノイド元素のうち、少なくとも1種類の元素を含有した金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属酸窒化物を使用することができる。これらの混合膜や金属元素を複数含有した3元系以上の化合物であっても良い。また、第II族元素、遷移金属元素を含有しても良い。さらには、表面にOH基などの原子層堆積膜の成膜原料である前駆体が化学吸着可能な吸着部位が存在してもよく、アンダーコート層22の主成分が金属膜であってもよい。
また、アンダーコート層22の組成として、BaTiO、SrTiO等の半導体デバイスで使用するゲート絶縁膜や、メモリ素子の材料として用いられる組成、一般的にリーク電流が少ない材料として用いられる組成を適用してもよい。
図3は、本実施形態の製造途中のガスバリアフィルムを模式的に示す断面図であり、具体的には、基材上にアンダーコート層が形成される前の基材の断面図、及び領域Cで囲まれた基材の表面部分を拡大した断面図である。図3において、領域C1で囲まれた断面図は、領域Cで囲まれたフィルム基材21の外面21a部分を拡大した断面図であり、C1で囲まれた領域に自由体積(フリーボリューム)が存在していることを示している。
図4は、本実施形態の比較対象となるガスバリアフィルムを模式的に示す断面図であり、具体的には、フィルム基材21の外面に直接機能層が形成された積層体の断面図、及び領域Cで囲まれた基材と機能層との境界部分を拡大した断面図である。図4において、領域C2で囲まれた部分は、領域Cで囲まれたフィルム基材21の外面21b部分を拡大した断面図である。
図4に示す領域C2で囲まれた部分に存在する自由体積(フリーボリューム)は、機能層23の原子層堆積膜の成膜原料である前駆体の分子サイズよりも大きい空間を有する。このため、自由体積中に前駆体が拡散して化学吸着することで、原子層堆積膜の三次元的な成長がおこる。
言い換えれば、原子層堆積膜を形成する表面に高分子材料を用いた場合は、原子層堆積法の特徴である、緻密膜が形成可能とされる二次元的な成長が開始するまでにある程度の膜厚が必要となり、初期成長段階で膜の緻密性が確保できない。よって、原子層堆積膜を形成する表面に高分子材料を用いることは、ガスバリア機能の向上や耐久性の向上のためには好ましくない。
図5は、本実施形態の製造途中のガスバリアフィルムの断面図であり、具体的には、基材上にアンダーコート層22及び機能層23が形成された後の積層体の断面図、及び領域Dで囲まれたアンダーコート層と機能層との境界部分を拡大した断面図である。図5において、領域D1で囲まれた部分は、領域Dで囲まれたアンダーコート層22の外面22a部分を拡大した断面図である。図5に示すように、アンダーコート層22の外面22aには自由体積が存在しないため、前駆体が外面22aから浸透せずに整列して外面22aの吸着部位と結合することとなる。その結果、外面22a上に前駆体の酸化物32からなる原子層堆積膜が2次元的に成長する。
より詳細には、第1の無機物質を含むアンダーコート層22が、上記説明したO原子を有する表面、またはN原子を有する表面を有することにより、アンダーコート層22の表面に含まれる吸着部位に対して、原子層堆積膜を成膜する際に使用する成膜原料(機能層23を形成する際の原料)である前駆体が吸著しやすくなる。また、無機物質は自由体積(フリーボリューム)が存在しないため、成膜原料となる前駆体の機能層形成表面への浸透、拡散がなくなる。
これにより、アンダーコート層22上に形成する原子層堆積膜よりなる機能層23が緻密に形成され、機能層23のガスバリア性と耐久性を向上させることができる。
なお、アンダーコート層22が含有する吸着部位は、非共有電子対または不対電子を有する原子を含み、前駆体と配位結合、分子間力(ファンデルワールス力)による結合、水素結合等の相互作用をする化学構造を有すればよい。
また、アンダーコート層22は化学気層成長法や物理気層成長法を用いて形成することができる。
アンダーコート層22の厚さは、例えば、2nm以上1000nm以下であるとよい。アンダーコート層22の厚さを2nm未満にした場合、アンダーコート層22は島状成長段階であり膜として成長していない。そのため、フィルム基材21の外面21aが露出しており、原子層堆積膜が早期に二次元的に成長可能な下地となっていない。また、1000nmを超えると、アンダーコート層22がフィルムの屈曲や熱による膨張などのストレスを受けた際にクラックなどの欠陥が生じやすくなる。
さらに、アンダーコート層22の厚さは、3nm以上200nm以下であるとより好ましい。アンダーコート層22の厚さが3nm以上であると、原子層堆積膜のガスバリア機能の発現がより薄い膜で確認できる。アンダーコート層22の厚さが200nm以下であると、アンダーコート層22の形成に要する時間やコストを抑制することができる。つまり、アンダーコート層22の厚さを3nm以上200nm以下とすることで原子層堆積膜を早期に二次元的に成長させる下地を確保しつつ、短時間、低コストでアンダーコート層22を形成できる。
なお、図2では、一例として、フィルム基材21の外面21aを覆うように、アンダーコート層22を積層した場合を例に挙げて説明したが、アンダーコート層22は、フィルム基材21の外面21aの少なくとも一部に積層されておればよく、図2に示す構成に限定されない。つまり、フィルム基材21の上の機能層23を設ける必要がない領域には、アンダーコート層21はなくても良い。
(機能層)
再度図2を参照して、機能層23は、アンダーコート層22の外面22aを覆うように積層されている。機能層23は、外面23aを有する。機能層23は、原子層堆積法(ALD法)で形成された膜であり、原子層堆積膜は、第2の無機物質から構成されている。第2の無機物質は、アンダーコート層22の外面22aに位置する吸着部位に結合した前駆体(成膜材料)が酸化、窒化や酸窒化されて生成されたものである。
機能層23を構成する原子層堆積膜25の成膜原料となる前駆体としては、例えば、有機金属化合物を用いることができる。有機金属化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム(TMA(Tri−Methyl Aluminum))、四塩化チタン(TiC1)、トリスジメチルアミノシラン(3DMAS)、ビスジェチルアミノシラン(BDEAS)、ペンタキスジメチルアミノタンタル(PDMAT)等を用いることができる。
機能層23は、上述した前駆体材料を原料として成膜され、第2の無機物質からなる原子層堆積膜25よりなる。第2の無機物質としては、例えば、TaO、SiO、TiO、AlO、HfO、NbO、ZrOおよび、これら複数の物質を混合したAlSi、TiAl、TaAlなどの酸化膜等を用いることができる。
例えば、SiO(但し、Xは1≦X≦2)、AlO(但し、Xは2≦X≦2.5)、TiO(但し、Xは1.5≦X≦2)、またはこれらの無機酸化物を混合させた混合無機酸化物等を用いることができる。
また、第2の無機物質としては、例えば、第III族元素、第IV族元素、第V族元素、及びランタノイド元素のうち、少なくとも1種類の元素を用いることができる。これらの元素を含む原子層堆積膜を形成することにより、他の成膜方法と比較してより高いバリア機能を確保することが可能となる。なお、バリア機能の確保が可能な元素ならば上記に限定されず、遷移元素や典型元素など、アンダーコート層22上に形成可能な組成ならばどのような元素も使用することができる。
また、機能層23の組成として、BaTiO、SrTiO、Ta等の半導体デバイス分野で使用するゲート絶縁膜や、メモリ素子の材料として用いられる組成、一般的にリーク電流が少ない材料として用いられる組成を適用してもよい。
機能層23の厚さは、例えば、0.5nm以上200nm以下であることが好ましい。機能層23の厚さが0.5nm未満であると、ガスバリア性等の機能を発現することができない。また、機能層23の厚さが200nmを超えると、コスト及び成膜時間を要するため好ましくない。したがって、機能層23の厚さを0.5nm以上200nm以下とすることで、所望のガスバリア性を得ることが可能となる。
(オーバーコート層)
図2に示すように、オーバーコート層24は、機能層23の外面23aを覆うように積層されている。このように、機能層23の外面23aを覆うオーバーコート層24を有することで、環境ストレス、特に、高温高湿度環境下における機能層23を保護することができると共に、機械的ストレスからアンダーコート層22及び機能層23を保護することができる。
オーバーコート層24は、第3の無機物質を含んだ構成とする。第3の無機物質としては、例えば、TaO、SiO、TiO、HfO、NbOやZrOなどの金属酸化物、およびSiN、TiN、AINなどの金属窒化物のいずれか、もしくはそれらの混合膜、さらにはAlSi、TiAlやTaAlなどの3元系の酸化物であってもよく、金属酸窒化物を用いることができる。
また、第3の無機物質としては、例えば、第III族元素、第IV族元素、第V族元素、及びランタノイド元素のうち、少なくとも1種類の元素を含有した金属酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属酸窒化物を使用することができる。これらの混合膜や金属元素を複数含有した3元系以上の化合物であっても良い。
オーバーコート層24に、機能層23に含まれる第2の無機物質と同等もしくはそれ以上の環境ストレス耐性をもつ第3の無機物質を用いることにより、アンダーコート層22及び機能層23の環境的ストレスによるガスバリア機能の低下抑制をすることができる。さらに、機能層23上に第3の無機物質であるオーバーコート層24を形成することで、ガスバリア機能をさらに向上させることができる。
オーバーコート層24は、アンダーコート層22と同様に化学気層成長法や物理気層成長法を用いて形成することができ、アンダーコート層22と同組成であってもよく、異なる組成であってもよい。
上記構成としたオーバーコート層24の厚さは、例えば、3nm以上1000nm以下の範囲内で適宜設定することができる。オーバーコート層24の厚さが3nm未満の場合、環境ストレスの保護の効果がないため好ましくない。オーバーコート層24の厚さが1000nmより厚い場合、フィルムの屈曲や熱による膨張でクラックなどの欠陥が生じてしまうため好ましくない。
なお、オーバーコート層24の厚さは、例えば、5nm以上300nmの範囲であることがより好ましい。オーバーコート層の厚さが5nm以上であることで環境ストレスの保護効果が発現し、300nm以下であることでフィルムの屈曲や熱による膨張によるクラックなどがさらに発生しにくくなる。また、オーバーコート層24の厚さが200nm程度の厚さ以上であれば、機械的ストレスに対する保護効果が発現する。
ただし、アンダーコート層22及び機能層23を環境ストレスから保護できる厚さや機械的ストレスから保護できる厚さは、第3の無機物質の組成によって異なるため、オーバーコート層24の厚さは上記範囲に限定されない。
以上のように、ガスバリアフィルム20は、高分子材料からなるフィルム基材21と、フィルム基材21の外面21aに形成された、第1の無機物質を含有するアンダーコート層22と、アンダーコート層22の外面22aに形成された、第2の無機物質の原子層堆積膜25よりなる機能層23と、機能層23の外面23aに形成された、第3の無機物質を含有するオーバーコート層24と、を有する。原子層堆積膜である機能層23が自由体積の存在しない第1の無機物質を含有するアンダーコート層22上に形成されることで、原子層堆積膜が早期に二次元的に成長することを可能とする。
また、アンダーコート層22上に機能層23が形成されることで、原子層堆積膜である機能層23が緻密となり、ガスバリア機能の向上および耐久性の向上が可能となる。
また、機能層23の外面23aを覆うオーバーコート層24を有することで、機能層23に水蒸気を透過する欠陥があっても、ガスバリア機能の低下を抑制することができる。さらには、機能層23の外面23a側が環境ストレスや機械的ストレスなどから保護されるため、劣化や損傷することを抑制することができる。その結果、ガスバリアフィルム20の耐久性を向上させることができる。
ガスバリアフィルム20の水蒸気透過率は、例えば、0.01g/m/day以下にする。ガスバリアフィルム20の水蒸気透過率が0.01g/m/dayよりも大きいと、酸素や水蒸気から発電素子14を保護できなくなり、発電素子モジュールの発電量が低下する。ガスバリアフィルム20の水蒸気透過率を0.01g/m/day以下にすることで、発電素子モジュールおよびそれを具備する電子デバイスの機能の維持を可能とする。
次に、本実施形態に係るガスバリアフィルムの製造方法について説明する。図6は、本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの製造方法を説明するためのフローチャートである。
まず、ステップS1では、高分子材料(有機高分子材料を含む)よりなるフィルム基材21を準備する。図3で説明したように、フィルム基材21の外面21a部分のうち、非結晶領域では、高分子鎖が存在していない自由体積部分、つまり空隙31が存在している。
フィルム基材21の材料となる高分子材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド(PI)等を用いることができる。フィルム基材21の高分子材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いる場合には、図6に示すステップS2を実施する前に、例えば、フィルム基材21の外面21aをプラズマ処理や加水分解処理等により活性化または改質させて、フィルム基材21の外面21a上に形成するアンダーコート層22の密着性を向上させることができる。
上記説明した高分子材料で構成されたフィルム基材21の厚さは、例えば、12μm以上300μm以下の範囲が好ましく、12以上100μm以下の範囲がより好ましい。
上記ステップS1の処理が完了すると、処理は、ステップS2(アンダーコート層形成工程)へと進む。
ステップS2において、フィルム基材21上にアンダーコート層22を形成する。具体的には、真空チャンバー内のステージに固定されたフィルム基材21の外面21a、もしくは、真空チャンバー内の軸に巻回されたロール(原反)状のフィルム基材21の外面21aに、物理気相成長法(PVD法)または化学気相成長法(CVD法)により、第1の無機物質を含有するアンダーコート層22を形成する。なお、アンダーコート層22は、ゾルゲル法により形成してもよい。
物理気相成長法(PVD法)としては、例えば、誘導加熱法、抵抗加熱法、電子ビーム法、スパッタリング法等の方法を用いることができる。また、化学気相成長法(CVD法)としては、例えば、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等の方法を用いることができる。
第1の無機物質としては、例えば、原子層堆積法(ALD法)により形成される機能層23の成膜原料となる前駆体が吸着しやすいO原子を有するSiO、TiO、AlO、TaO、ZrOおよびこれら複数の物質を混合した積層膜や、AlSi、TiAl、TaAlOなどの混合酸化物膜等を用いることができる。
また、アンダーコート層22の組成として、BaTiO、SrTiO等の半導体デバイスで使用するゲート絶縁膜や、メモリ素子の材料として用いられる組成、一般的にリーク電流が少ない材料として用いられる組成を適用してもよい。
また、アンダーコート層22の外面22aにOやHOなどのO原子を含んだガスをプラズマにより励起させ、アンダーコート層22の外面22aを水酸基(OH基)などの吸着部位に置き換えても良い。
また、アンダーコート層22の組成として、例えば上記金属を用いた窒化物や酸窒化物、またはそれらの混合膜(積層膜を含む)を用いてもよい。
アンダーコート層22の厚さは、例えば、2nm以上1000nm以下であることが好ましく、3nm以上200nm以下であることがより好ましい。アンダーコート層22の厚さが3nm未満であるとフィルム基材21の外面2laが完全に被覆されず膜として成立しない。また、アンダーコート層22の厚さが200nmを超えると、高コスト及び成膜に時間を要するため好ましくない。したがって、アンダーコート層22の厚さを3nm以上200nm以下とすることでアンダーコート機能とコスト、生産性及び信頼性とを両立できる。
ステップS2の処理が完了すると、処理は、ステップS3へと進む。
ここで、原子層堆積膜としてAl膜を成膜する場合を例に挙げて、ステップS3〜S7の処理(機能層形成工程A)について、順次説明する。
ステップS3において、前駆体を供給する。より具体的には、原子層堆積膜成膜装置の真空チャンバー内において、フィルム基材21上に形成されたアンダーコート層22の外面22aに、前駆体としてトリメチルアルミニウム(TMA)を供給し(第1のステップ)、アンダーコート層22の外面22aに存在する吸着部位に前駆体を吸着させる。
図5に示すように、アンダーコート層22は空隙部分が存在しないため、アンダーコート層22の外面22aの表面22bに前駆体が浸透せずに整列して吸着部位に結合することとなる。
ステップS3の処理が完了すると、処理は、ステップS4へと進む。
次いで、ステップS4では、真空チャンバー内でアンダーコート層22の吸着部位に結合していない前駆体を排気する(第2のステップ)。具体的には、原子層堆積膜成膜装置の真空チャンバー内を真空ポンプで減圧して、吸着部位と結合していない前駆体を排気する。あるいは、例えば、真空ポンプを用いて、真空チャンバー内を排気しながら、不活性ガス(例えば、ヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガス類元素や、窒素等)を供給することで、真空チャンバー内に残存するアンダーコート層22の吸着部位に結合しなかった前駆体を、真空チャンバーの外に排出する。
ここで、ロール(原反)状のフィルム21上に形成されたアンダーコート層22上に原子層堆積膜を成膜する場合、アンダーコート層22の外面22aに前駆体を吸着させるべく、前駆体が充填された領域にフィルムを順次輸送する。次に、吸着部位と結合していない前駆体を、前駆体が充填された領域とはフィルムが通過するための空間以外は仕切られて隣に配置された不活性ガスが供給されている領域にて排除する。
ステップS4の処理が完了すると、処理は、ステップS5へと進む。
次いで、ステップS5では、予め決定しておいた第1及び第2のステップを所定の回数(以下、「所定の回数n(nは整数)」という)繰り返したか否かの判定が行われる。ステップS5において、所定の回数nに到達したと判定(Yesと判定)されると、処理はS6へと進む。ステップS5において、所定の回数nに到達していないと判定(Noと判定)されると、処理は、ステップS3へと戻り、ステップS3及びステップS4の処理が再度行われる。上記所定の回数nは、例えば、15回とすることができる。なお、図5に示す工程Bは、第1のステップ(ステップS3)と、第2のステップ(ステップS4)とを所定の回数繰り返し行う第3のステップに相当する。
次いで、ステップS6では、真空チャンバー内に反応ガスを供給し、反応ガスに電圧を印加することでプラズマを発生させ(もしくは、反応ガスを供給した後に電圧を印加してプラズマを発生させた領域に輸送し)、プラズマと前駆体とを反応させることで、一原子層の厚さの原子層堆積膜25を形成する(第4のステップ)。
具体的には、以下に説明する手法により、一原子層の厚さの原子層堆積膜25を形成することができる。始めに、真空チャンバー内に、反応ガス(例えば、O、N、CO、H、或いはこれらのガスのうち少なくとも2つ以上のガスを混合させた混合ガス)を供給する。このとき、真空チャンバー内の圧力は、例えば、10〜200Paの範囲内の所定の圧力とする。次に、真空チャンバー内において、プラズマ放電を行うことでプラズマを発生させ、プラズマと前駆体とを反応させることで、一原子層の厚さの原子層堆積膜25を形成する。他の方法としては、例えば、真空チャンバー内に、HOまたはHを導入し、HOまたはHと前駆体とを反応させることで、一原子層の厚さの原子層堆積膜25を形成する方法がある。また、その際にプラズマを発生させても良い。
ステップS6の処理が完了すると、処理は、ステップS7へと進む。
次いで、ステップS7では、成膜した原子層堆積膜25の合計の厚さが予め設定した目標とする機能層23の厚さ(以下、「厚さD」という)に到達したか否かの判定が行われる。ステップS7において、成膜した原子層堆積膜25の合計の厚さが機能層23の厚さD(目標とする厚さ)に到達したと判定(Yesと判定)されると、機能層形成工程Aを完了し、処理は、ステップS8へと進む。ステップS7において、成膜した原子層堆積膜25の合計の厚さが機能層23の厚さD(目標とする厚さ)に到達していないと判定(Noと判定)されると、処理は、ステップS3へと戻る。
上記のステップS3〜ステップS7までの処理を1サイクルとし、このサイクルを複数回実施することで、Al膜よりなる機能層23が形成される。サイクル数は、1サイクルで形成される原子層堆積膜25の厚さと、機能層23の所望の厚さDとに基づいて、決定することができる。
上記サイクル処理(S3〜S7までの処理)を行う回数は、例えば、1000回以下が好ましく、2回以上200回以下がより好ましい。また、予め設定した目標とする機能23の厚さD(言い換えれば、機能層23となる原子層堆積膜25の厚さ)は、例えば、200nm以下にするとよりよい。このように、機能層形成工程Aにおいて、厚さが200nm以下となるように、機能層23を形成する(言い換えれば、機能層23の厚さDを200nm以下にする)ことで、バリア機能を発現しつつ、コスト、生産性、信頼性を確保することが可能となる。
上記説明では、機能層23を構成する原子層堆積膜25の成膜原料となる前駆体として、トリメチルアルミニウム(TMA(Tri−Methyl Aluminum))を用いた場合を例に挙げて説明したが、前駆体は、トリメチルアルミニウムに限定されない。
原子層堆積膜24の成膜原料となる前駆体として、例えば、トリメチルアルミニウム以外の有機金属化合物である四塩化チタン(TiC1),テトライソプロピルチタン(TTIP),トリスジメチルアミノシラン(3DMAS),ビスジエチルアミノシラン(BDEAS),ペンタキスジメチルアミノタンタル(PDEAT)等を用いてもよい。
また、機能層形成工程Aでは、機能層23を第2の無機物質にて形成する。第2の無機物質としては、例えば、第III族元素、第IV族元素、第V族元素、及びランタノイド元素のうち、少なくとも1つの元素を用いるとよい。このように、機能層23に含まれる第2の無機物質として、第III族元素、第IV族元素、第V族元素、及びランタノイド元素のうち、少なくとも1種類の元素を含む原子層堆積膜25を形成することにより、他の成膜方法と比較してより高いバリア機能を確保することが可能となる。また、バリア機能の確保が可能な元素ならば上記に限定せず、遷移元素や典型元素など、アンダーコート層22上に形成可能な組成ならばどのような元素も使用することができる。
機能層23は、例えば、その厚さが200nm以下となるように形成するとよい。機能層23の厚さが200nmよりも厚いと、膜の内部応力により割れなどが生じやすくなる。よって、機能層23の厚さを200nm以下にすることで、信頼性が確保できる。更には、機能層23の厚さが20nm以下となるように形成するとよい。機能層23の厚さを20nm以下とすることで、コストを抑制し、生産性を向上させることができる。なお、機能層23の厚さは、例えば、0.5nm以上がより好ましい。機能層13の厚さが0.5nmよりも薄いと機能層23のバリア機能が発現しにくくなる。
次いで、ステップS8では、オーバーコート層24を形成する。具体的には、原子層堆積膜形成装置の真空チャンバー内から、図5に示す積層体を取り出し、オーバーコート層形成装置の成膜チャンバー内のステージ上に、図5に示す積層体を配置する。このとき、機能層23の外面23aが上面側となるように積層体を配置する。次いで、物理気相成長法(PVD法)または化学気相成長法(CVD法)により、機能層23の外面23aを覆うように、第3の無機物質を含有するオーバーコート層24を形成する(オーバーコート層形成工程)。
このように、機能層23の外面23aを覆うオーバーコート層24を形成することで、環境ストレス、特に、高温高湿度環境下における機能層23を保護することができると共に、機械的ストレスからアンダーコート層22及び機能層23を保護することができる。
オーバーコート層24に含まれる第3の無機物質としては、例えば、TaO、SiO、TiO、HfO、NbOやZrOx、および、これら複数の物質を混合した酸化膜等を用いることができる。
オーバーコート層24が、機能層23に含まれる第2の無機物質の組成と同等もしくはそれ以上の環境ストレス耐性をもつ組成である第3の無機物質を含むことで、環境ストレスにより劣化してしまう機能層23を保護することが可能となるので、ガスバリアフィルム20の信頼性を向上することができる。
上記構成とされたオーバーコート層24の厚さは、例えば、3nm以上1000nm以下の範囲内で適宜設定することができる。素子形成工程で機械的ストレスがかかる場合には厚く形成する必要があり、その場合はオーバーコート層24の厚みを200nm以上で形成するとよい。ただし、素子形成工程で機械的ストレスがかからない場合には、オーバーコート層24の厚みが3nm以上200nm以下の範囲であれば環境ストレス耐性が確保できるため、用途に応じて厚みを設定できる。
ステップS8において、オーバーコート層24が形成されると、図6に示す処理を終了する。以上の工程を経て、図2に示すようなガスバリアフィルム20が製造される。
本実施の形態のガスバリアフィルムの製造方法は、真空チャンバー内に配置され、高分子材料からなるフィルム基材21の外面21aに、第1の無機物質を含むアンダーコート層22を物理気相成長法もしくは化学気相成長法により形成する工程と、アンダーコート層22の外面22aに、第2の無機物質の原子層堆積膜25よりなる機能層23を原子層堆積法により形成する機能層形成工程と、機能層23の外面23aに、第3の無機物質を含有するオーバーコート層24を物理気相成長法もしくは化学気相成長法により形成する工程とを有する。機能層23が自由体積の存在しない第1の無機物質を含有するアンダーコート層22上に形成されることにより、原子層堆積膜を成膜する際に、フィルム基材21の非晶質部分の空隙に前駆体が入り込むことなく、原子層堆積膜がアンダーコート層22上に成膜される。
また、機能層23のバリア機能が薄い膜で発現する(つまり、高いバリア性を有する)と共に、機能層23の環境ストレスなどによる耐性を向上させることが可能となる。
また、機能層23の外面23aを覆うオーバーコート層24を形成するオーバーコート層形成工程を有することで、機能層23の外面23a側の損傷や変質を抑制することが可能となるので、ガスバリアフィルム20のガスバリア性を維持することができる。
さらに、機能層23のガスを透過する欠陥をオーバーコート層24が補うため、バリア機能が向上する。
なお、本実施の形態では、ステップS3(前駆体を供給する第1のステップ)と、ステップS4(前駆体を排出する第2のステップ)と、を所定の回数繰り返した後に、ステップS6(一原子層単位で堆積する原子層堆積膜を成膜する第4のステップ)を行う例を説明した。この方法であれば、原子層堆積膜24を効率良く成膜することが可能である。ただし、これに替えて、ステップS3およびステップS4をそれぞれ1回ずつ行った後に、ステップS6を行うことで、一原子層分の原子層堆積膜23を成膜してもよい。
上記により形成したガスバリアフィルム20と、封止材13と、発電素子14と、表面保護シート15とを用い、図1に示す発電素子モジュール10を形成する。発電素子モジュール10は上記構成が基本となる。尚、必要に応じて封止材13及び表面保護シート15の材質は自由に選択でき、発電素子14は、単結晶シリコン、多結晶シリコン型、アモルファスシリコン型、薄膜シリコン型、CIS、色素増感型、有機薄膜型など電子デバイスの用途に応じて自由に選択できる。
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明するが、本発明は、下記実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
始めに、高分子材料よりなるフィルム基材21として、厚さ25μmのポリイミド(PI)フィルムを準備した。
次いで、スパッタリング法により、フィルム基材21の外面21aに、厚さ20nmのTa膜よりなるアンダーコート層22を形成した。具体的には、真空チャンバー内に収容されたフィルム基材21の外面21aに、Taターゲットを用いて反応性スパッタにより厚さ20nmのTaを形成した。
次いで、アンダーコート層22の外面22aに、厚さ10nmのAl膜(原子層堆積膜25)よりなる機能層23を形成した。
具体的には、真空チャンバー内に収容されたフィルム基材21上に形成されたアンダーコート層22の外面22aに、成膜原料(前駆体)であるトリメチルアルミニウム(TMA)を供給した(第1のステップ)。また、このときの真空チャンバー内の温度は、90℃とした。尚、真空チャンバーへの前駆体の供給はNガスやArガスなどの不活性ガスをキャリアガスとして用いても良い。
次いで、真空チャンバー内を排気しながら、該真空チャンバー内にパージガスであるO及びNを供給することで、アンダーコート層22の外面22aに存在する吸着部位と結合されていない前駆体を該真空チャンバーから排気した(第2のステップ)。第2のステップにおいて、パージガスであるO及びNを供給する時間は、それぞれ10秒とした。また、このときの真空チャンバー内の温度は、90℃とした。
上記の第1のステップと第2のステップとを15サイクル繰り返し行った(第3のステップ)。
次いで、真空チャンバー内に、反応ガス(反応ガス兼放電ガス)としてOを供給し、Oに電圧を印加してプラズマを発生させ、プラズマ放電を実施し、該プラズマと前駆体とを反応させることで、一原子層の原子層堆積膜25を形成した(第4のステップ)。
上記第1〜第4のステップよりなるサイクルを1回行った際の原子層堆積膜25の厚さは1.4Åであった。そこで、第1〜第4のステップよりなるサイクルを73回行うことで、厚さが10nmであるAl膜(機能層23)を形成した。
次いで、スパッタリング法により、機能層23の外面23aに、厚さ20nmのTa膜よりなるオーバーコート層24を形成した。具体的には、真空チャンバー内に収容された機能層23の外面23aに、Taターゲットを用いて反応性スパッタにより、厚さ20nmのTaを形成した。以上の工程により、実施例1のガスバリアフィルムを得た。
次いで、実施例1のガスバリアフィルムと、封止材と、発電素子と、表面保護シートとを用いて、図1に示す積層構造を有する実施例1に係る発電素子モジュール10を形成した。
(実施例2)
実施例2では、実施例1で示したPI基材(フィルム基材21)を用い、Ta膜よりなるアンダーコート層22及びオーバーコート層24を、実施例1と同様に形成した。ただし、原子層堆積膜25よりなる機能層23については、図6に表すステップAにおいて、原子層堆積膜25の成膜原料である前駆体として、トリメチルアルミニウムとトリスジメチルアミノシランとを交互に用いて原子層を堆積させ、AlSiを10nmの厚みで形成し、実施例2のガスバリアフィルムを得た。
次いで、実施例2のガスバリアフィルムと、封止材と、発電素子と、表面保護シートとを用いて、図1に示す積層構造を有する実施例2に係る発電素子モジュール10を形成した。
(比較例1)
比較例1では、フィルム基材上に直接機能層を形成してガスバリアフィルムを得た。フィルム基材及び機能層は、実施例1と同じ材料及び手法により形成した。つまり、比較例1に係るガスバリアフィルムは、実施例1の層構成からアンダーコート層22とオーバーコート層24とを省略したものである。
次いで、比較例1のガスバリアフィルムと、封止材と、発電素子と、表面保護シートとを用いて、図1に示す積層構造を有する比較例1に係る発電素子モジュール10を形成した。
(比較例2)
比較例2では、実施例1で形成したオーバーコート層24を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様の手法により、ガスバリアフィルムを作製した。
次いで、比較例2のガスバリアフィルムと、封止材と、発電素子と、表面保護シートとを用いて、図1に示す積層構造を有する比較例2に係る発電素子モジュール10を形成した。
(比較例3)
比較例3では、実施例2で形成したオーバーコート層24を形成しなかったこと以外は、実施例2と同様の手法により、ガスバリアフィルムを作製した。
次いで、比較例3のガスバリアフィルムと、封止材と、発電素子と、表面保護シートとを用いて、図1に示す積層構造を有する比較例3に係る発電素子モジュール10を形成した。
<試験1:耐久性試験前後の水蒸気透過率の測定>
実施例1、2及び比較例1〜3のガスバリアフィルムについて、耐久性試験前及び耐久性試験後に水蒸気透過率WVTR(g/m/day)を測定した。水蒸気透過率WVTRの測定は、MOCON社製の高感度水蒸気透過率測定装置であるAQUATRAN(登録商標)を用いて行った。水蒸気透過率の測定は、温度が40℃、かつ湿度が90%RHに調整されたNガス雰囲気下で行った。
耐久性試験は、実施例1、2及び比較例1〜3のガスバリアフィルムをPCT(Pressure Cooker Test)加速度試験器に投入し、24時間保持することにより行った。加速度試験機内の温度は105℃、湿度は100%RHとした。
その結果、耐久性試験後において、実施例1のガスバリアフィルムの水蒸気透過率が0.45(g/m/day)、実施例2のガスバリアフィルムの水蒸気透過率が5.0E−4(g/m/day)以下、比較例1のガスバリアフィルムの水蒸気透過率が1.21(g/m/day)、比較例2のガスバリアフィルムの水蒸気透過率が1.17(g/m/day)、比較例3のガスバリアフィルムの水蒸気透過率が0.07(g/m/day)となった。ここで、高感度水蒸気測定装置であるAQUQTRAN(登録商標)の測定下限値は5.0E−4(g/m/day)である。
この結果を表1に示す。
<試験2:発電素子モジュールの発電量測定>
実施例1、2及び比較例1〜3で作製した発電素子モジュールを、105℃、100%RHの環境下に24時間暴露(環境試験)し、環境試験後に、発電素子モジュールにソーラーシュミレーターを用い擬似太陽光を100W照射し、発電量(W;ワット)を測定した。
表1に、耐久性試験前後の水蒸気透過率の測定値と、発電量比率を示す。尚、表1における「5.0E−04」は、5.0×10−4を意味し、「4.1E−02」は、4.1×10−2を意味する。また、発電量比率は耐久性試験後の発電量(W)を耐久性試験前の発電量(W)で除した値を意味する。
(試験1の結果について)
実施例1の結果から、フィルム基材21の外面21a上に原子層堆積膜の成膜原料である前駆体が結合可能な吸着部位を有するアンダーコート層22を形成し、次に、ALD法により、アンダーコート層22の外面22a上に原子層堆積膜25を成膜して機能層23を形成し、次に、機能層23の外面23a上にオーバーコート層24を形成することで、低い水蒸気透過率(言い換えれば、高いガスバリア性)を確保できると共に、オーバーコート層24により機能層23が保護されるため、耐久性試験後において、水蒸気に対して化学的安定性が低いAl膜の劣化をある程度抑制できることが確認できた。
また、実施例2の結果からも、フィルム基材21の外面21a上に原子層堆積膜の成膜原料である前駆体が結合可能な吸着部位を有するアンダーコート層22を形成し、次に、ALD法により、アンダーコート層22の外面22a上に原子層堆積膜25を成膜して機能層23を形成し、次に、機能層23の外面23a上にオーバーコート層24を形成することで、低い水蒸気透過率(言い換えれば、高いガスバリア性)を確保できると共に、オーバーコート層24により機能層23が保護されるため、耐久性試験後において、低い水蒸気透過率(言い換えれば、高いガスバリア性)を確保できることを確認できた。
一方、比較例1では、フィルム基材の外面上に直接機能層を形成しているため、耐久性試験前であってもガスバリア性が発現しにくかった(言い換えれば、10nmでは中程度のガスバリア性であった)。また、オーバーコート層がないため、耐久性試験後は機能層が劣化し、低い水蒸気透過率(言い換えれば、高いガスバリア性)を確保できないことが確認できた。
また、比較例2では、フィルム基材の外面上に原子層堆積膜の成膜原料である前駆体が結合可能な吸着部位を有するアンダーコート層を形成し、ALD法により、アンダーコート層の外面上に原子層堆積膜を成膜して機能層を形成することで、耐久性試験前において、低い水蒸気透過率(言い換えれば、高いガスバリア性)を確保できた。ただし、オーバーコート層がないため、耐久性試験後は機能層が劣化し、低い水蒸気透過率(言い換えれば、高いガスバリア性)を確保できないことが確認できた。
また、比較例3でも、フィルム基材の外面上に原子層堆積膜の成膜原料である前駆体が結合可能な吸着部位を有するアンダーコート層を形成し、ALD法により、アンダーコート層の外面上に原子層堆積膜を成膜して機能層を形成しているため、耐久性試験前において、低い水蒸気透過率(言い換えれば、高いガスバリア性)を確保できた。ただし、オーバーコート層がないため、耐久性試験前と比較して耐久性試験後は機能層が劣化し、水蒸気透過率が高くなることが確認できた(但し、組成による湿熱耐性の関係上、Al膜よりは耐久性を有している)。
(試験2の結果について)
実施例1のガスバリアフィルムでは、機能層23に水蒸気に対して化学的安定性が低いAl膜を使用しているが、アンダーコート層22およびオーバーコート層24を設けることで、ある程度水蒸気に対する急速な性能の劣化を抑制することができ、環境試験後の素子の発電量比率の低下、つまり発電素子モジュールの性能低下をある程度抑制できることが確認できた。
また、実施例2のガスバリアフィルムは、耐久性試験後も高いガスバリア機能を保持できるため、環境試験後の素子の発電量比率の低下、つまり発電素子モジュールの性能低下が殆どないことが確認できた。
一方、比較例1のガスバリアフィルムは、耐久性試験後にPIフィルム単体と同程度までガスバリア機能が低下したため、環境試験後の素子の発電量は殆どなくなり、ガスバリアフィルムによる発電素子モジュールの保護機能はないことが確認できた。
また、比較例2のガスバリアフィルムでは、耐久性試験後にPIフィルム単体と同程度までガスバリア機能が低下したため、環境試験後の素子の発電量比率の低下が著しく、ガスバリアフィルムによる発電素子モジュールの保護機能はほとんどないことが確認できた。
また、比較例3のガスバリアフィルムは、耐久性試験後にガスバリア機能が低下したため、環境試験後の素子の発電量が低下したことが確認できた。
尚、比較例3の評価結果は、実施例1の評価結果より良いが、これは、AlSi膜の水蒸気に対する化学的安定性が、Al膜と比べて極めて高いためである。しかしながら、実施例1と比較例2との対比、及び実施例2と比較例3との対比から、機能層23の組成が同じである場合には、オーバーコート層24を設けることによりガスバリア性及び耐久性が向上することが明らかである。
上記の実施例1、2の結果から、本発明の発電素子モジュール10におけるガスバリアフィルム20は、原子層堆積膜25よりなる機能層23を、第1の無機物質を含むアンダーコート層22の外面22aに形成することで、原子層堆積膜25が早期に二次元的に成長させることができ、薄い膜厚で低い水蒸気透過率を確保できる。
また、機能層23の外面23a上にオーバーコート層24を形成することで、機能層23の保護が可能となるため、高温の水蒸気暴露などの耐久性試験による機能層23の劣化を抑制し、かつ、耐久性を向上させることができる。また、本発明の発電素子モジュール10は、環境試験の暴露による発電量比率の低下を抑制することができるため、発電素子モジュールおよびそれを具備した電子デバイスの性能を向上させることができる。
よって、従来の構成に比べて、ガスバリアフィルム20のガスバリア性、耐久性が向上し、発電素子モジュール10およびそれを具備した電子デバイスの性能の向上と長期的品質の確保ができることが確認できた。
本発明は、ガスバリアフィルムを備える発電素子モジュールに適用可能である。
10…発電素子モジュール、11…封止フィルム、13…封止材、14…発電素子、15表面保護シート、20…ガスバリアフィルム、21…フィルム基材、22…アンダーコート層、22b…表面、23…機能層、24…オーバーコート層、25…原子層堆積膜、2la,22a,23a,24a…外面、31…空隙、32…前駆体の酸化物、A…機能層形成工程、B…第3のステップ、C,Cl,C2,D,Dl…領域

Claims (5)

  1. 原子層堆積膜を有するガスバリアフィルムと、封止材と、発電素子と、表面保護シートとを含む発電素子モジュールであって、
    前記ガスバリアフィルムが、
    フィルム基材と、
    前記フィルム基材の外面の少なくとも一部に積層され、第1の無機物質を含み、前記原子層堆積膜の成膜原料である前駆体と結合可能な吸着部位を有するアンダーコート層と、
    前記アンダーコート層の外面を覆うように積層され、第2の無機物質の前記原子層堆積膜よりなる機能層と、
    前記機能層の外面を覆うように積層され、第3の無機物質を含むオーバーコート層とを備える、発電素子モジュール。
  2. 前記アンダーコート層および前記オーバーコート層が、第III族元素、第IV族元素、第V族元素、及びランタノイド元素のうち、少なくとも1種類の元素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の発電素子モジュール。
  3. 前記アンダーコート層および前記オーバーコート層が、金属酸化物、金属窒化物、及び金属酸窒化物のうち、少なくとも1種類を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の発電素子モジュール。
  4. 前記アンダーコート層および前記オーバーコート層が、Ta元素を含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の発電素子モジュール。
  5. 前記ガスバリアフィルムの水蒸気透過率が、0.01g/(m・day)以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の発電素子モジュール。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN111326601A (zh) * 2018-12-14 2020-06-23 汉能移动能源控股集团有限公司 一种光伏组件板材及其制备方法和光伏组件

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