JP2017210705A - 極細炭素繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来と比較してより簡便に良好な特性の極細炭素繊維の製造方法を提供することである。【解決手段】(1)熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1〜150質量部のメソフェーズピッチと、からなる組成物を溶融状態で成形することにより前記メソフェーズピッチを繊維化して樹脂複合繊維を得る工程と、(2)気相状態の窒素酸化物を含むガスが流通速度0.010〜10.0m/sで流通する反応系内で、前記樹脂複合繊維に前記窒素酸化物を接触させて樹脂複合安定化繊維を得る安定化工程と、(4)前記樹脂複合安定化繊維中の安定化繊維を不活性雰囲気下で加熱して炭素化乃至黒鉛化し、極細炭素繊維を得る炭化焼成工程と、を含む方法により極細炭素繊維を製造する。【選択図】なし

Description

本発明は極細炭素繊維の製造方法に関する。
カーボンナノ材料、特に、平均繊維径が1μm以下である極細炭素繊維は、高結晶性、高導電性、高強度、高弾性率、軽量等の優れた特性を有していることから、高性能複合材料のナノフィラーとして使用されている。その用途は、機械的強度向上を目的とした補強用ナノフィラーに留まらず、炭素材料に備わった高導電性を生かし、各種電池やキャパシタの電極への添加材料、電磁波シールド材、静電防止材用の導電性ナノフィラーとして、あるいは樹脂向けの静電塗料に配合するナノフィラーとしての用途が検討されている。また、炭素材料としての化学的安定性、熱的安定性、微細構造の特徴を生かし、フラットディスプレー等の電界電子放出材料としての用途も期待されている。
例えば、特許文献1には、(1)熱可塑性樹脂100質量部並びにピッチ、ポリアクリロニトリル、ポリカルボジイミド、ポリイミド、ポリベンゾアゾール及びアラミドよりなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性炭素前駆体1〜150質量部からなる混合物から前駆体成型体を形成する工程、(2)前駆体成型体を安定化処理に付して前駆体成形体中の熱可塑性炭素前駆体を安定化して安定化樹脂組成物を形成する工程、(3)安定化樹脂組成物から熱可塑性樹脂を、減圧下で除去して繊維状炭素前駆体を形成する工程、(4)繊維状炭素前駆体を炭素化もしくは黒鉛化する工程、を経る炭素繊維の製造方法が開示されている。
また、特許文献2では、メソフェーズピッチを主体とする原料ピッチを常法に従って溶融紡糸してメソフェーズピッチ繊維とした後、該ピッチ繊維を酸素含有ガス又は不活性ガスに0.1〜50容量%のNOを混入した雰囲気中で、100℃以下の温度条件下で、気相ニトロ化することにより該ピッチ繊維を不融化し、次いで常法により炭化(黒鉛化)することを特徴とする、メソフェーズピッチ系炭素繊維の製造方法が開示されている。
国際公開第2009/125857号公報 特開平6−248520号公報
特許文献1に記載された方法は、複合化された前駆体成形体中の炭素前駆体繊維を不融化して安定化する工程において、炭素前駆体繊維の原料によっては高温かつ長時間の処理が必要になるため、工程として煩雑化する。さらには、安定化処理の際には炭素前駆体繊維だけでなく、前駆体成形体に含まれる熱可塑性樹脂が酸化され、その後の工程で熱可塑性樹脂の一部が除去できずに残存する場合(残炭形成)がある。その結果、得られる極細炭素繊維中に、熱可塑性樹脂由来のアモルファスカーボンが異物として残存することがあり、導電性や強度、弾性率の低下が生じている。
一方、特許文献2では、メソフェーズピッチを原料として溶融紡糸法により紡糸したメソフェーズピッチ繊維を、0.1〜50容量%のNOを含有する空気等の酸素含有ガス又は窒素等の不活性ガス中、100℃以下で気相ニトロ化することにより、不融化が達成されることが開示されている。この特許文献2に開示される不融化は、炭化後に得られる炭素繊維の繊維径が10μmを超えるものを対象としている。即ち、特許文献1のような繊維径が1μm未満の極細炭素繊維を対象とする製造方法において、炭素前駆体繊維及び熱可塑性樹脂からなる前駆体成型体(樹脂複合繊維)を安定化する際に残炭形成されるという問題については何も言及されていない。
また、NOを主成分として用いた不融化反応は酸化反応であるため、膨大な発熱を伴うことを本発明者らは知見している。特許文献2に記載の発明は、100℃以下の低い反応温度で、かつ酸化による発熱を伴わない状態で不融化処理することが可能であることが記載されている(段落0015)。しかし、特許文献2の実施例には、不融化する際の温度が95℃、NOの濃度が10容量%以下の場合のみが開示されており、係る条件で不融化する場合は4〜24時間の長時間を要している。
本発明の目的は、繊維径が細く、かつ結晶性に優れた極細炭素繊維を、従来と比較して短時間で効率よく製造する方法を提供することである。
本発明者らは、上記の従来技術に鑑みて鋭意検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂を海成分とし、メソフェーズピッチを島成分として繊維化した樹脂複合繊維を用い、これを安定化する工程において、気相状態の窒素酸化物を主成分とするガスの流通速度に注目した。具体的には、当該ガスの流通速度を所定範囲とすることで、酸化による発熱を軽減して不融化(安定化)反応を効率化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、上記課題を解決する本発明は以下に記載するものである。
〔1〕 (1)熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1〜150質量部のメソフェーズピッチと、からなる組成物を溶融状態で成形することにより前記メソフェーズピッチを繊維化して樹脂複合繊維を得る工程と、
(2)気相状態の窒素酸化物を含むガスが流通速度0.010〜10.0m/sで流通する反応系内で、前記樹脂複合繊維に前記窒素酸化物を接触させて樹脂複合安定化繊維を得る安定化工程と、
(4)前記樹脂複合安定化繊維中の安定化繊維を不活性雰囲気下で加熱して炭素化乃至黒鉛化し、極細炭素繊維を得る炭化焼成工程と、
を含むことを特徴とする極細炭素繊維の製造方法。
〔2〕 前記ガスが、さらに酸素を含む〔1〕に記載の極細炭素繊維の製造方法。
〔3〕 前記ガスが、酸素に対する窒素酸化物のモル比(NOモル/Oモル)が1〜7である〔2〕に記載の極細炭素繊維の製造方法。
〔4〕 前記安定化工程が、前記反応系内に前記ガスを前記流通速度で循環させる工程である〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載の極細炭素繊維の製造方法。
〔5〕 前記熱可塑性樹脂が、JIS K 7210に準拠して測定されるメルトマスフローレート(MFR)が0.1〜25g/10min.のポリエチレンである〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の極細炭素繊維の製造方法。
〔6〕 前記メソフェーズピッチのメソフェーズ率が、90%以上である〔1〕乃至〔5〕のいずれかに記載の極細炭素繊維の製造方法。
〔7〕 前記安定化工程の後であって前記炭化焼成工程の前に、
(3)前記樹脂複合安定化繊維から前記熱可塑性樹脂を除去する熱可塑性樹脂除去工程
をさらに含む〔1〕乃至〔6〕のいずれかに記載の極細炭素繊維の製造方法。
本発明によれば、気相状態の窒素酸化物を含むガスの流通速度を特定範囲とすることにより、従来の炭素繊維の製造方法よりも効率的な工程で極細炭素繊維を得ることができる。即ち、反応系内に投入した気相状態の窒素酸化物を含むガスを所定の流速で流通させながら、樹脂複合繊維と接触させて反応を行う。そのため、窒素酸化物の濃度を高めても反応速度の上昇による発熱を抑えることができ、その結果、短時間で安定化処理を完了できる。また、発熱反応が低減されることで、例えば熱可塑性樹脂と窒素酸化物との副反応により生じる副生成物が抑制されることが期待できる。
実施例1の安定化繊維のSEM写真(2000倍)である。 実施例2の安定化繊維のSEM写真(2000倍)である。 循環方式による安定化装置の一例を示す模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の極細炭素繊維の製造方法は、
(1)熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1〜150質量部のメソフェーズピッチと、からなる海島構造の混合物を溶融状態で紡糸して繊維化することにより、紡糸された混合物内で前記メソフェーズピッチが繊維化されている樹脂複合繊維を得る工程と、
(2)気相状態の窒素酸化物を含むガス(以下、単にガスともいう)が流通速度0.010〜10.0m/sで流通する反応系内で、前記樹脂複合繊維に前記窒素酸化物を接触させることにより、前記樹脂複合繊維内で繊維化されているメソフェーズピッチを安定化(不融化)して樹脂複合安定化繊維を得る安定化工程と、
(4)前記樹脂複合安定化繊維中の安定化繊維を不活性雰囲気下で加熱して炭素化乃至黒鉛化し、極細炭素繊維を得る炭化焼成工程と、
を含む。
本発明の極細炭素繊維の製造方法は、上記(2)と(4)との間に以下の(3)の工程、
(3)前記樹脂複合安定化繊維から前記熱可塑性樹脂を除去する熱可塑性樹脂除去工程
を含むことが好ましい。
<熱可塑性樹脂>
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、樹脂複合安定化繊維を製造後、容易に除去される必要がある。このような熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート系ポリマー、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエステルカーボネート、ポリサルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリケトン、ポリ乳酸等が好ましく使用される。これらの中でも、ポリオレフィンが好ましく用いられる。
ポリオレフィンの具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−4−メチルペンテン−1及びこれらを含む共重合体が挙げられる。熱可塑性樹脂除去工程において除去し易いという観点からは、ポリエチレンを用いることが好ましい。ポリエチレンとしては、高圧法低密度ポリエチレン、気相法・溶液法・高圧法直鎖状低密度ポリエチレンなどの低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどの単独重合体又はエチレンとα−オレフィンとの共重合体;エチレン・酢酸ビニル共重合体などのエチレンと他のビニル系単量体との共重合体が挙げられる。
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、JIS K 7210(1999年度)に準拠して測定されたメルトマスフローレート(MFR)が0.1〜25g/10minであることが好ましく、0.1〜15g/10minであることがより好ましく、0.1〜10g/10minであることが特に好ましい。MFRが上記範囲であると、熱可塑性樹脂中にメソフェーズピッチを良好にミクロ分散することができる。また、樹脂複合繊維を成形する際に、繊維が引き延ばされることにより、得られる炭素繊維の繊維径をより小さくすることができる。本発明で使用する熱可塑性樹脂は、メソフェーズピッチと容易に溶融混練できるという点から、非晶性の場合はガラス転移温度が250℃以下、結晶性の場合は融点が300℃以下であることが好ましい。
<メソフェーズピッチ>
メソフェーズピッチとは、溶融状態において光学的異方性相(液晶相)を形成しうるピッチである。本発明で使用するメソフェーズピッチとしては、石炭や石油の蒸留残渣を原料とするものや、ナフタレン等の芳香族炭化水素を原料とするものが挙げられる。例えば、石炭由来のメソフェーズピッチは、コールタールピッチの水素添加・熱処理を主体とする処理、水素添加・熱処理・溶剤抽出を主体とする処理等により得られる。
メソフェーズピッチの光学的異方性含有量(メソフェーズ率)は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
また、上記メソフェーズピッチは、軟化点が100〜400℃であることが好ましく、150〜350℃であることがより好ましい。
<メソフェーズピッチ組成物>
本発明の製造方法において用いられる、熱可塑性樹脂とメソフェーズピッチとから成る組成物(以下、メソフェーズピッチ組成物ともいう)は、熱可塑性樹脂と、この熱可塑性樹脂100質量部に対して1〜150質量部のメソフェーズピッチと、を含んで成る。メソフェーズピッチの含有量は5〜100質量部であることが好ましい。メソフェーズピッチの含有量が150質量部を超えると所望の分散径を有する樹脂複合繊維が得られず、1質量部未満であると目的とする炭素繊維を安価に製造することができない等の問題が生じるため好ましくない。
繊維径が2μm未満である炭素繊維を製造するためには、熱可塑性樹脂中におけるメソフェーズピッチの分散径を0.01〜50μmとすることが好ましく、0.01〜30μmとすることがより好ましい。メソフェーズピッチの熱可塑性樹脂中への分散径が0.01〜50μmの範囲を逸脱すると、所望の炭素繊維を製造することが困難となることがある。なお、メソフェーズピッチ組成物中において、メソフェーズピッチは球状又は楕円状の島相を形成するが、本発明における分散径とは、島成分が球状の場合はその直径を意味し、楕円状の場合はその長軸径を意味する。
上記0.01〜50μmの分散径は、メソフェーズピッチ組成物を300℃で3分間保持した後においても上記範囲内を維持していることが好ましく、300℃で5分間保持した後においても維持していることがより好ましく、300℃で10分間保持した後においても維持していることが特に好ましい。一般に、メソフェーズピッチ組成物を溶融状態で保持しておくと、熱可塑性樹脂中においてメソフェーズピッチが時間と共に凝集する。メソフェーズピッチが凝集してその分散径が50μmを超えると、所望の炭素繊維を製造することが困難となることがある。熱可塑性樹脂中におけるメソフェーズピッチの凝集速度は、使用する熱可塑性樹脂及びメソフェーズピッチの種類により変動する。
メソフェーズピッチ組成物は、熱可塑性樹脂とメソフェーズピッチとを溶融状態において混練することにより製造することができる。熱可塑性樹脂とメソフェーズピッチとの溶融混練は公知の装置を用いて行うことができる。例えば、一軸式混練機、二軸式混練機、ミキシングロール、バンバリーミキサーからなる群より選ばれる1種類以上を用いることができる。これらの中でも、熱可塑性樹脂中にメソフェーズピッチを良好にミクロ分散させるという目的から、二軸式混練機を用いることが好ましく、特に各軸が同方向に回転する二軸式混練機を用いることが好ましい。
混練温度としては、熱可塑性樹脂とメソフェーズピッチとが溶融状態であれば特に制限されないが、100〜400℃であることが好ましく、150〜350℃であることが好ましい。混練温度が100℃未満であると、メソフェーズピッチが溶融状態にならず、熱可塑性樹脂中にミクロ分散させることが困難であるため好ましくない。一方、400℃を超える場合、熱可塑性樹脂及びメソフェーズピッチの分解が進行するため好ましくない。また、溶融混練の時間としては、0.5〜20分間であることが好ましく、1〜15分間であることがより好ましい。溶融混練の時間が0.5分間未満の場合、メソフェーズピッチのミクロ分散が困難であるため好ましくない。一方、20分間を超える場合、炭素繊維の生産性が著しく低下するため好ましくない。
本発明で使用するメソフェーズピッチは、溶融混練時に酸素と反応することにより変性してしまい、熱可塑性樹脂中へのミクロ分散を阻害することがある。このため、不活性雰囲気下で溶融混練を行い、酸素とメソフェーズピッチとの反応を抑制することが好ましい。溶融混練は、酸素ガス含有量が10体積%未満の不活性雰囲気下で行うことが好ましく、酸素ガス含有量が5体積%未満の不活性雰囲気下で行うことがより好ましく、酸素ガス含有量が1%体積未満の不活性雰囲気下で行うことが特に好ましい。
<樹脂複合繊維>
上記のメソフェーズピッチ組成物から樹脂複合繊維を製造する方法としては、所望の炭素繊維が作製できれば限定されないが、メソフェーズピッチ組成物を紡糸口金より溶融紡糸する方法、メソフェーズピッチ組成物を矩形口金より溶融製膜する方法を例示することができる。これにより、樹脂複合繊維に含まれるメソフェーズピッチの初期配向性を高くすることができる。
メソフェーズピッチ組成物から樹脂複合繊維を製造する際の温度は、メソフェーズピッチの溶融温度よりも高いことが必要であり、150〜400℃であることが好ましく、180〜350℃であることがより好ましい。400℃を超える場合、メソフェーズピッチの変形緩和速度が大きくなり、繊維の形態を保つことが難しくなる。
また、樹脂複合繊維の製造工程は冷却工程を有していてもよい。冷却工程としては、例えば、溶融紡糸の場合、紡糸口金の下流の雰囲気を冷却する方法が挙げられる。溶融製膜の場合、矩形口金の下流に冷却ドラムを設ける方法が挙げられる。冷却工程を設けることにより、メソフェーズピッチが伸長により変形する領域を調整でき、ひずみの速度を調整することができる。また、冷却工程を設けることにより、紡糸又は製膜後の樹脂複合繊維を直ちに冷却固化させて安定した成形を可能とする。
<樹脂複合安定化繊維>
上記のようにして得られた樹脂複合繊維は、該樹脂複合繊維に含まれるメソフェーズピッチ繊維を安定化(不融化ともいう)して樹脂複合安定化繊維が作製される。安定化は、該樹脂複合繊維に気相状態の窒素酸化物を含むガスを所定の流通速度で接触させることにより行う。
本発明の製造方法において、気相状態の窒素酸化物を含むガスの流通速度とは、窒素酸化物を含むガスが樹脂複合繊維の表面に接触しながら移動する際の該ガスの線速度をいう。気相状態の窒素酸化物を含むガスの流通速度は、0.010〜10.0m/sの範囲である。流通速度の下限値は、0.010m/s超であることが好ましく、0.050m/s以上であることがより好ましく、0.100m/s以上であることがさらに好ましい。流通速度の上限値は、10.0m/s以下であり、7.0m/s以下であることが好ましく、5.0m/s以下であることがより好ましく、2.0m/s以下であることがさらに好ましく、1.0m/s以下であることが特に好ましい。10.0m/sを超える場合、流通速度が速すぎて窒素酸化物が樹脂複合繊維中のメソフェーズピッチに接触する頻度が低下し、窒素酸化物と樹脂複合繊維中に含まれるメソフェーズピッチとの反応性が低下する。また、得られる樹脂複合安定化繊維を用いて炭素繊維を製造する場合、得られる炭素繊維に残炭が形成され易くなる。0.010m/s未満の場合、安定化反応時に発生する発熱を制御するのが困難になる。その結果、熱暴走を生じる場合がある。ガスの流通速度は、安定化反応時において終始同一であっても良いし、上記の範囲内で漸次変化させても良い。
本発明の製造方法によれば、メソフェーズピッチが熱可塑性樹脂と複合化した樹脂複合繊維の状態で安定化が行われる。そのため、メソフェーズピッチのみを溶融紡糸して成る繊維を安定化する場合と比較して、反応性と生産性とのバランスを高くすることができる。
本発明の製造方法においては、上記ガスは窒素酸化物単独であっても良いし、酸化性気体と併用しても良い。酸化性気体としては、空気、酸素又はこれらの混合物が例示される。酸化性気体と併用すると、安定化反応により還元された窒素酸化物を酸化して効率良く使用することができ、生産性が向上するため好ましい。その場合、窒素酸化物と酸化性気体中の酸素とのモル比(NOモル/Oモル)としては1〜7の範囲が好ましく、1を超え7未満の範囲がより好ましく、2〜6の範囲がさらにより好ましい。また、上記ガスには、酸化性気体以外の気体が含まれていても良い。酸化性気体以外の気体としては、二酸化炭素、窒素、アルゴンなどの不活性ガスを挙げることができる。
安定化の反応温度は、25〜100℃が好ましく、30〜80℃がより好ましい。この範囲の温度で安定化処理することにより、熱暴走が抑制され、樹脂複合繊維同士が過度に融着することを防ぎ、樹脂複合繊維に含まれるメソフェーズピッチの配向性が高く維持される。
安定化の処理時間は、10〜200分間が好ましく、20〜110分間が好ましい。
上記安定化処理によりメソフェーズピッチの軟化点は著しく上昇するが、所望の炭素繊維を得るという目的から、メソフェーズピッチの軟化点は400℃以上となることが好ましく、500℃以上となることがさらに好ましい。
樹脂複合繊維の形態は、繊維状であれば50〜350dtexであることが好ましく、シート状であれば厚みが10μm〜2mmであることが好ましい。
安定化処理は、気相状態の窒素酸化物を含むガスが流通速度0.010〜10.0m/sで流通する反応系内で、樹脂複合繊維に窒素酸化物を接触させることにより行われる。そのような方法としては特に限定されないが、例えば以下に説明するフロー方式及び循環方式を挙げることができる。
(1)フロー方式
フロー方式は、例えば、ガス導入口及びガス導出口を備える反応容器内に樹脂複合繊維を投入し、該ガス導入口から気相状態の窒素酸化物を含むガスを導入する。この際、ガスの導入速度は、反応容器内におけるガスの線速度が0.010〜10.0m/sとなるように調整される。該ガスは、反応容器内で樹脂複合繊維と接触した後、ガス導出口から反応容器外に排出される。ガス導入口から導入されるガスの温度は、安定化の反応温度が前述の温度範囲となる温度であれば特に限定されないが、通常30〜80℃であり、30〜70℃であることが好ましい。
(2)循環方式
循環方式は、例えば、ガス導入口及びガス導出口を備える反応容器内に樹脂複合繊維を投入し、該ガス導入口から気相状態の窒素酸化物を含むガスを導入する。この際、ガスの導入速度は、反応容器内におけるガスの線速度が0.010〜10.0m/sとなるように調整される。該ガスは、反応容器内で樹脂複合繊維と接触した後、ガス導出口から反応容器外に排出される。この排出されたガスは、再度ガス導入口から導入される。再導入されるガスは、安定化の反応温度が前述の温度範囲になるように、予め冷却される。再導入されるガスの冷却はどのように行っても良いが、通常、熱交換器を用いて冷却される。ガス導入口から導入されるガス(又は再導入されるガス)の温度は、(1)のフロー方式で説明したとおりである。
図3は、循環方式による安定化装置の一例を示す模式図である。図3中、10は安定化装置であり、11は反応容器である。反応容器11は気密に形成された箱状の容器であり、その一端にはガス導入口11aが形成されており、他端にはガス導出口11bが形成されている。反応容器11は、ガス導入口11aとガス導出口11bとの間に樹脂複合繊維23を載置できるように構成されている。ガス導入口11aには、ガス循環管13の一端が気密に接続されており、ガス導出口11bには、ガス循環管13の他端が気密に接続されている。ガス循環管13には、熱交換器15及び送風機17が介装されている。また、ガス循環管13には、安定化装置10内にガスを供給するガス供給口19及び安定化装置10外にガスを排出するガス排出口21がそれぞれ形成されている。
この装置を用いる安定化工程は、例えば次のように行われる。
先ず、反応容器11内に樹脂複合繊維23が載置される。次いで、ガス排出口21を閉じ、ガス供給口19から安定化装置10内にガスが供給される。また、送風機17により安定化装置10内のガスは循環される。安定化装置10内に所定量の窒素酸化物が導入されたら、ガス供給口19が閉じられる。ガス導入口11aから反応容器11内に導入されたガスは、樹脂複合繊維23と接触しながら流通して、樹脂複合繊維23の安定化反応(発熱反応)を進行させる。該ガスは、ガス導出口11bから反応容器外に導出され、熱交換器15に送られ、ここで冷却される。熱交換器15で冷却されたガスはガス導入口11aから反応容器11内に再導入されて安定化反応に供され、これが繰り返される。なお、反応容器11内におけるガスの線速度や安定化の反応温度は前述のとおりである。
循環方式による製造方法においては、反応系内に導入する窒素酸化物の量は、樹脂複合繊維中のメソフェーズピッチ100gに対して0.5〜1.5モルであることが好ましく、0.5〜1モルであることがより好ましい。0.5モル未満であると安定化が不十分となる。1.5モルを超えて導入すると熱暴走を生じ易くなる上に、経済上も好ましくない。
また、反応系内における窒素酸化物の濃度は、30容量%以上が好ましく、40容量%以上がより好ましい。30容量%未満である場合、安定化処理に長時間を要する。
本発明における安定化工程は、いずれの方式で行っても良いが、循環方式の方が未利用となる窒素酸化物の量を低減できるので、経済性及び生産性の観点から好ましい。
<熱可塑性樹脂除去工程>
次に、上述のようにして得られる樹脂複合安定化繊維は、その中に含まれる熱可塑性樹脂が除去されて安定化繊維が分離される。この工程では、安定化繊維の熱分解を抑制しながら、熱可塑性樹脂を分解・除去する。熱可塑性樹脂を分解・除去する方法としては、例えば、溶剤を用いて熱可塑性樹脂を除去する方法や、熱可塑性樹脂を熱分解して除去する方法が挙げられる。
熱可塑性樹脂の熱分解は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。ここでいう不活性ガス雰囲気とは、二酸化炭素、窒素、アルゴン等のガス雰囲気をいい、その酸素濃度は30体積ppm以下であることが好ましく、20体積ppm以下であることがより好ましい。本工程で使用する不活性ガスとしては、コストの関係から二酸化炭素及び窒素を用いることが好ましく、窒素を用いることが特に好ましい。
熱可塑性樹脂を熱分解によって除去する場合、減圧下で行うこともできる。減圧下で熱分解することにより、熱可塑性樹脂を十分に除去することができる。その結果、安定化繊維を炭素化又は黒鉛化して得られる炭素繊維又は黒鉛化繊維の繊維間における融着を少なくすることができる。雰囲気圧力は低いほど好ましいが、50kPa以下であることが好ましく、30kPa以下であることがより好ましく、10kPa以下であることがさらに好ましく、5kPa以下であることが特に好ましい。一方、完全な真空は達成が困難であるため、圧力の下限は一般に0.01kPa以上である。
熱可塑性樹脂を熱分解によって除去する場合、上記の雰囲気圧力が保たれれば、微量の酸素や不活性ガスが存在してもよい。特に微量の不活性ガスが存在すると、熱可塑性樹脂の熱劣化による繊維間の融着が抑制される利点があり好ましい。なお、ここでいう微量の酸素雰囲気下とは、酸素濃度が30体積ppm以下であることをいい、微量の不活性ガス雰囲気下とは、不活性ガス濃度が20体積ppm以下であることをいう。用いる不活性ガスの種類は、上述したとおりである。
熱分解の温度は、350〜600℃であることが好ましく、380〜550℃であることがより好ましい。熱分解の温度が350℃未満である場合、安定化繊維の熱分解は抑えられるものの、熱可塑性樹脂の熱分解を十分行うことができない場合がある。一方、600℃を超える場合、熱可塑性樹脂の熱分解は十分行うことができるものの、安定化繊維までが熱分解される場合があり、その結果、炭素化時の収率が低下し易い。熱分解の時間としては、0.05〜5時間であることが好ましく、0.05〜3時間であることがより好ましい。
本発明の製造方法では、安定化工程及び熱可塑性樹脂除去工程は、樹脂複合繊維又は樹脂複合安定化繊維を、支持基材上に目付け2kg/m以下で保持して行うことが好ましい。支持基材に保持することによって、安定化処理時又は熱可塑性樹脂除去時の加熱処理による樹脂複合繊維又は樹脂複合安定化繊維の凝集を抑制することができ、通気性を保つことが可能となる。
支持基材の材質としては、溶剤や加熱によって変形や腐食を生じないことが必要である。また、支持基材の耐熱温度としては、上記の熱可塑性樹脂除去工程の熱分解温度で変形しないことが必要であることから、600℃以上の耐熱性を有していることが好ましい。このような材質としては、ステンレスなどの金属材料やアルミナ、シリカなどのセラミックス材料を挙げることができる。
また、支持基材の形態としては、面垂直方向への通気性を有する形状であることが好ましい。このような形状としては網目構造が好ましい。網目の目開きは0.1〜5mmであることが好ましい。目開きが5mmよりも大きい場合、加熱処理によって網目の線上に繊維が凝集し易くなり、メソフェーズピッチの安定化や熱可塑性樹脂の除去が不十分となる場合があり好ましくない。一方、網目の目開きが0.1mm未満である場合、支持基材の開孔率の減少により、支持基材の面垂直方向への通気性が低下する場合があり好ましくない。
<炭化焼成工程>
上記安定化繊維を不活性ガス雰囲気下で炭素化及び/又は黒鉛化することにより、本発明の極細炭素繊維が得られる。その際に使用する容器としては、黒鉛製のルツボ状のものが好ましい。ここで、炭素化とは比較的低温(好ましくは1000℃程度)で加熱することをいい、黒鉛化とはさらに高温(好ましくは3000℃程度)で加熱することにより黒鉛の結晶を成長させることをいう。
上記安定化繊維の炭素化及び/又は黒鉛化時に使用される不活性ガスとしては、窒素、アルゴン等が挙げられる。不活性ガス中の酸素濃度は、20体積ppm以下であることが好ましく、10体積ppm以下であることがより好ましい。炭素化及び/又は黒鉛化時の焼成温度は、500〜3500℃が好ましく、800〜3000℃がより好ましい。特に黒鉛化の際の焼成温度としては、1500〜3200℃が好ましく、2000〜3000℃がより好ましい。焼成時間は、0.1〜24時間が好ましく、0.2〜10時間がより好ましい。
<粉砕処理>
本発明の炭素繊維の製造方法は、粉砕処理工程を有していても良い。粉砕処理は、熱可塑性樹脂除去工程、及び/又は、炭化焼成工程において実施するのが好ましい。粉砕方法としては、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、インペラーミル、カッターミル等の微粉砕機を適用することが好ましく、粉砕後に必要に応じて分級を行ってもよい。湿式粉砕の場合、粉砕後に分散媒体を除去するが、この際に2次凝集が顕著に生じるとその後の取り扱いが非常に困難となる。このような場合は、乾燥後、ボールミルやジェットミル等を用いて解砕操作を行うことが好ましい。
<極細炭素繊維>
本発明の製造方法によって製造される極細炭素繊維は、例えば非水電解質二次電池用の電極を構成する導電助剤として有用である。
本発明の製造方法によって製造される極細炭素繊維は、実質的に分岐構造を有さない直線構造であって、かつ、10〜900nm、好ましくは100〜600nmの平均繊維径を有する。ここで、分岐構造を実質的に有さないとは、分岐度が0.01個/μm以下であることをいう。
本発明の製造方法によって製造される極細炭素繊維の平均繊維長(L)と平均繊維径(D)との比(アスペクト比L/D)は30以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましい。比(L/D)を30以上とすることにより、電極内において導電パスが効率的に形成され、得られる電池のサイクル特性を高くすることができる。30未満の場合、電極内において導電パスの形成が不十分になり易く、電極の膜厚方向の抵抗値が十分に低下しない場合がある。比(L/D)の上限値は特に限定されないが、一般に10000以下であり、1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましい。
なお、この極細炭素繊維は、全体として繊維状の形態を有していればよく、例えば、上記アスペクト比の好ましい範囲未満のものが接触したり結合したりして一体的に繊維形状を持っているもの(例えば、球状炭素が数珠状に連なっているもの、極めて短い少なくとも1本または複数本の繊維が融着等によりつながっているものなど)も含む。
また、本発明の製造方法によって製造される極細炭素繊維は、X線回折法により測定した(002)面の平均面間隔d002が、0.335〜0.340nmの範囲である。このように、本発明の極細炭素繊維は結晶性が非常に高いので、電気伝導性や熱伝導性に優れている。
本発明の製造方法によって製造される極細炭素繊維は、残炭が生じ難い。具体的には、残炭率が極細炭素繊維の質量に対してまたは安定化繊維の質量に対して0.1質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以下である。
本発明の製造方法によって製造される極細炭素繊維を導電助剤として用いる場合は、単独で用いてもよく、アセチレンブラック等の公知の導電助剤とを併用して複合化したもの等であってもよい。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例中の各種測定や分析は、それぞれ以下の方法に従って行った。
(1)安定化繊維及び極細炭素繊維の形状の確認
走査型電子顕微鏡(株式会社JEOL製 JCM−6000)を用いて観察及び写真撮影を行った。
炭素繊維等の平均繊維径は、得られた電子顕微鏡写真から無作為に300箇所を選択して繊維径を測定し、それらすべての測定結果(n=300)の平均値を平均繊維径とした。平均実効繊維長についても同様に算出した。これらの値より平均L/D(平均アスペクト比)を算出した。
(2)炭素繊維のX線回折測定
X線回折測定はリガク社製RINT−2100を用いてJIS R7651法に準拠し、格子面間隔(d002)を測定した。
[参考例1](メソフェーズピッチの製造方法)
キノリン不溶分を除去した軟化点80℃のコールタールピッチを、Ni−Mo系触媒存在下、圧力13MPa、温度340℃で水添し、水素化コールタールピッチを得た。この水素化コールタールピッチを常圧下、480℃で熱処理した後、減圧して低沸点分を除き、メソフェーズピッチを得た。このメソフェーズピッチを、フィルターを用いて温度340℃でろ過を行い、ピッチ中の異物を取り除き、精製されたメソフェーズピッチを得た。
[参考例2]
熱可塑性樹脂として直鎖状低密度ポリエチレン(EVOLUE(登録商標)SP−1510、(株)プライムポリマ−製、MFR=1g/10min)80質量部、及び参考例1で得られたメソフェーズピッチ(メソフェーズ率90.9%、軟化点303.5℃)20質量部を同方向二軸押出機(東芝機械(株)製「TEM−26SS」、バレル温度300℃、窒素気流下)で溶融混練してメソフェーズピッチ組成物を調製した。上記メソフェーズピッチ組成物を、シリンダー式単孔紡糸機を用いて、330℃の紡糸口金より紡糸し、樹脂複合繊維(メソフェーズピッチ繊維を島成分とする海島型複合繊維)を作製した。
[実施例1]
参考例2で得られた樹脂複合繊維249.45gを反応容器(容積2L)に仕込み、室温下、ポンプを用いて反応容器内におけるガスの流通速度が0.165m/sになるように循環させながら、反応容器系内に二酸化窒素を60分間かけて導入した。これにより、メソフェーズピッチを安定化させ、樹脂複合安定化繊維を得た。その際の酸化反応による発熱に起因して反応系内の最大到達温度は55.8℃となった。反応容器内に導入した二酸化窒素の量は0.455モルであった。
次に、上記樹脂複合安定化繊維を、真空ガス置換炉中で窒素置換を行った後に1kPaまで減圧し、該減圧状態下で、5℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、500℃で1時間保持することにより、熱可塑性樹脂を除去して安定化繊維を得た。この安定化繊維の電子顕微鏡写真を図1に示した。
ついで、この安定化繊維を窒素雰囲気下、1000℃で30分間保持して炭素化し、さらにアルゴンの雰囲気下、3000℃に加熱し30分間保持して黒鉛化した。得られた極細炭素繊維の平均繊維径は270nm、平均繊維長は14.6μm、結晶性の程度を示すd002は0.3370nmであった。
[実施例2]
参考例2で得られた樹脂複合繊維250.1gを反応容器(容積2L)に仕込み、室温下、ポンプを用いて反応容器内におけるガスの流通速度が0.165m/sになるように循環させながら、反応容器内に二酸化窒素と酸素とから成る混合ガスを45分間かけて導入した。この混合ガスの二酸化窒素と酸素とモル比(NO/O)は5.1であった。また、反応容器内に導入した二酸化窒素の量は0.341モルであった。その後、外部からのガスの供給を止め、反応容器内におけるガスの流通速度を0.165m/sとして30分間循環させた。これにより、メソフェーズピッチを安定化させ、樹脂複合安定化繊維を得た。その際の反応系内の最大到達温度は46.4℃であった。
次に、上記樹脂複合安定化繊維を、真空ガス置換炉中で窒素置換を行った後に1kPaまで減圧し、該減圧状態下で、5℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、500℃で1時間保持することにより、熱可塑性樹脂を除去して安定化繊維を得た。この安定化繊維の電子顕微鏡写真を図2に示した。
ついで、実施例1と同様に炭素化、黒鉛化をしたところ得られた極細炭素繊維の黒鉛結晶性は実施例1と同等であった。
[実施例3]
参考例2で得られた樹脂複合繊維249.3gを反応容器(容積2L)に仕込み、室温下、ポンプを用いて反応容器内におけるガスの流通速度が0.165m/sになるように循環させながら、反応系内に二酸化窒素を65分間かけて導入した。反応容器内に導入した二酸化窒素の量は0.295モルであった。これにより、メソフェーズピッチを安定化させ、樹脂複合安定化繊維を得た。その際の反応系内の最大到達温度は41.7℃であった。最終的に得られた安定化繊維は実施例1で得られたものと同様のものであった。なお、二酸化窒素投入開始から30分後に、反応系内の二酸化窒素と酸素との存在モル比(NO/O)が2.7になるように酸素を追加投入した。
[実施例4]
混合ガスにおける二酸化窒素と酸素とのモル比(NO/O)を2.9とし、ガスの導入時間を40分、循環時間を30分にしたこと以外は実施例2と同様に行った。その際の反応系内の最大到達温度は50.1℃であった。得られた安定化繊維は実施例2と同様に良好であった。
[比較例1]
混合ガスにおける二酸化窒素と酸素とのモル比(NO/O)を1.52とし、混合ガスの流通速度を0.00074m/sとし、ガスの導入時間を300分間としたこと以外は実施例1と同様に操作を行った。その際の反応系内の最大到達温度は61.3℃であった。最終的に得られた安定化繊維は実施例1で得られたものと同様のものであったが、反応時間が非常に長くかかってしまった。
[実施例5]
流通速度を0.033m/s、ガスの導入時間を40分、循環時間を20分にしたこと以外は実施例1と同様に行った。その際の反応系内の最大到達温度は45.2℃であった。最終的に得られた安定化繊維は実施例1で得られたものと同様のものであった。
10・・・安定化装置
11・・・反応容器
11a・・・ガス導入口
11b・・・ガス導出口
13・・・ガス循環管
15・・・熱交換器
17・・・送風機
19・・・ガス供給口
21・・・ガス排出口
23・・・樹脂複合繊維


Claims (7)

  1. (1)熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂100質量部に対して1〜150質量部のメソフェーズピッチと、からなる組成物を溶融状態で成形することにより前記メソフェーズピッチを繊維化して樹脂複合繊維を得る工程と、
    (2)気相状態の窒素酸化物を含むガスが流通速度0.010〜10.0m/sで流通する反応系内で、前記樹脂複合繊維に前記窒素酸化物を接触させて樹脂複合安定化繊維を得る安定化工程と、
    (4)前記樹脂複合安定化繊維中の安定化繊維を不活性雰囲気下で加熱して炭素化乃至黒鉛化し、極細炭素繊維を得る炭化焼成工程と、
    を含むことを特徴とする極細炭素繊維の製造方法。
  2. 前記ガスが、さらに酸素を含む請求項1に記載の極細炭素繊維の製造方法。
  3. 前記ガスが、酸素に対する窒素酸化物のモル比(NOモル/Oモル)が1〜7である請求項2に記載の極細炭素繊維の製造方法。
  4. 前記安定化工程が、前記反応系内に前記ガスを前記流通速度で循環させる工程である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の極細炭素繊維の製造方法。
  5. 前記熱可塑性樹脂が、JIS K 7210に準拠して測定されるメルトマスフローレート(MFR)が0.1〜25g/10min.のポリエチレンである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の極細炭素繊維の製造方法。
  6. 前記メソフェーズピッチのメソフェーズ率が、90%以上である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の極細炭素繊維の製造方法。
  7. 前記安定化工程の後であって前記炭化焼成工程の前に、
    (3)前記樹脂複合安定化繊維から前記熱可塑性樹脂を除去する熱可塑性樹脂除去工程
    をさらに含む請求項1乃至6のいずれか1項に記載の極細炭素繊維の製造方法。

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