JP2017202773A - 運転支援方法及び運転支援装置 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1に記載の車両用操舵制御装置は、車両が目標走行軌道から離れるほど、目標走行軌道から離れる方向へ付与される運転者の操舵操作に対する操舵反力を大きくする。
本発明は、目標走行軌道から離れるほど車両を目標走行軌道に戻す方向へステアリングホイールに付与する操舵反力を増加させる車両において、車両が目標走行軌道上を走行している間の運転者が意図しない操舵による転舵角の変動を抑制することを目的とする。
(構成)
図1を参照する。本実施形態に係る運転支援装置を搭載した車両は、操舵部1と、転舵部2と、バックアップクラッチ3と、SBWコントローラ4とを備える。車両は、運転者の操舵入力を受け付ける操舵部1と、転舵輪である左右前輪5FL、5FRを転舵する転舵部2とが機械的に切り離されたSBW式の転舵機構を備える。
ステアリングホイール1aは、運転者の操舵入力を受けて回転する。
コラムシャフト1bは、ステアリングホイール1aと一体に回転する。
操舵トルクセンサ1cは、ステアリングホイール1aからコラムシャフト1bに伝達する操舵トルクを検出する。この操舵トルクセンサ1cは、例えばトーションバーの捩れ角変位をポテンショメータで検出することで操舵トルクを検出する。操舵トルクセンサ1cは、検出した操舵トルクをSBWコントローラ4に出力する。
反力モータ駆動回路1eは、電流センサ1gが検出した反力モータ1dの電流値から推定される実際の操舵反力トルクと、SBWコントローラ4から出力される指令操舵反力トルクとを一致させるトルクフィードバックにより、反力モータ1dへ出力する指令電流を制御する。
操舵角センサ1fは、コラムシャフト1bの回転角、すなわち、ステアリングホイール1aの操舵角(ハンドル角度)を検出する。そして、操舵角センサ1fは、検出した操舵角をSBWコントローラ4に出力する。
ステアリングギア2bは、ピニオンシャフト2aの回転に応じて、左右前輪5FL、5FRを転舵する。ステアリングギア2bとして、例えば、ラック・アンド・ピニオン式のステアリングギア等を採用してよい。
転舵角センサ2eは、転舵モータ2cの回転角を検出し、検出した回転角に基づいて左右前輪5FL、5FRの転舵角を検出する。
転舵モータ駆動回路2dは、転舵角センサ2eにより検出される実際の転舵角とSBWコントローラ4からの指令転舵角とを一致させる角度フィードバックにより、転舵モータ2cへの指令電流を制御する。SBWコントローラ4から転舵モータ駆動回路2dに出力される指令転舵角は、SBWコントローラ4により制御される操向輪の転舵角の目標となる目標転舵角の一例である。
さらに車両は、カメラ6と、車速センサ7を備える。
カメラ6は、車両前方の走行路の画像を検出する。カメラ6は、検出した画像をSBWコントローラ4に出力する。
車速センサ7は、車両の車速を検出する。車速センサ7は、検出した車速をSBWコントローラ4に出力する。
SBWコントローラ4は、コントローラエリアネットワーク(CAN:Controller Area Network)バスを介して、操舵角、操舵トルク、反力モータ1dの電流値、走行路の画像、車速を受信してもよい。
なお、画像処理部11、車両状態設定部12、制御状態設定部13、転舵制御部14、及び反力制御部15は、はそれぞれ独立した回路又は装置であってもよい。
また、道路白線が存在しない又は検出し難い場合には、道路白線の代わりに、路肩や縁石、側溝、ガードレール、防護柵、防音壁、擁壁、中央分離帯等を、走行路区分線として検出するようにしてもよい。
画像処理部11は、走行車線の左右の走行路区分線の検出結果を車両状態設定部12及び反力制御部15に出力する。以下、走行車線の左右の走行路区分線の検出結果を「白線情報」と表記することがある。
また、画像処理部11は、走行路区分線の検出可否の判定結果を制御状態設定部13へ出力する。
車両状態設定部12は、操舵トルク、車速、ウインカ作動信号、白線情報に基づき、転舵制御部14による転舵制御、反力制御部15による操舵反力制御、車線維持(レーンキープ(LK:Lane Keep))支援制御に用いる下記変数を算出する。
操舵反力制御では、操舵角又は転舵角に応じてステアリングホイール1aへ付与する操舵反力が制御される。
LK支援制御では、転舵制御部14が、運転者により操舵操作されるステアリングホイール1aの操舵角及び操舵角速度に加えて、車両の横位置及びヨー角に応じて転舵角を制御し、車両を目標走行軌道に戻す方向へ操向輪を転舵させる。目標走行軌道は、例えば車両が走行する走行車線の中央であってもよく、中央から所定距離だけ離れた軌道であってもよい。
以下の説明において、車両が所定の遅延時間だけ前方に走行した場合の移動距離を「予定走行距離」と表記することがある。また、車両が現在位置から所定の遅延時間だけ前方へ走行した場合、すなわち現在位置から予定走行距離だけ走行した場合に到達する予定位置を「予定到達位置」と表記することがある。また、予定到達位置との目標走行軌道との間の横方向距離を単に「横位置」と表記する。
車両が目標走行軌道上を走行しており運転者による操舵操作がない場合には、LK操舵反力が小さくなる。このため、例えば車両が路面の凹凸や小石などの上を走行する等により車体が揺れ、運転者の姿勢の変化により運転者が意図しない操舵がステアリングホイール1aに入力されると操舵角が変動しやすくなる可能性がある。このため、操舵角の変動に応じて左右前輪5FL、5FR操向輪が転舵されて目標走行軌道から逸れやすくなる可能性がある。
このように目標走行軌道からの逸脱量が小さい場合に操舵に対する転舵の応答性を低減することにより、車両が目標走行軌道付近を走行しLK操舵反力が小さい状態で運転者が意図しない操舵操作が行われても、転舵角の変動を抑制できる。
ゲイン算出部12aは、第1車速感応ゲイン、第2車速感応ゲイン、第3車速感応ゲイン、第4車速感応ゲイン、ウインカ作動に応じたゲイン、第1車速感応レートリミッタ、及び第2車速感応レートリミッタを算出する。
第1車速感応ゲインは、LK支援制御において車両の横位置に応じて変化させる転舵角の変化量を、車速に応じて増減させるゲインである。
第3車速感応ゲインは、ステアリングホイール1aの操舵角速度に応じて変化させる転舵角の変化量を、車速に応じて増減させるゲインである。
第4車速感応ゲインは、LK支援制御において車両の横位置及び車線到達時間の少なくとも一方に応じてステアリングホイール1aに与える操舵反力を、車速に応じて増減させるゲインである。
ゲイン算出部12aは、予め定めた車速と第1〜4車速感応ゲインとの間の関係をそれぞれ定める車速感応ゲインマップに基づいて、第1〜4車速感応ゲインをそれぞれ算出する。例えば、車速感応ゲインマップは、車速がゼロから第1車速閾値の間でゲインが最大値となり、第1車速閾値から第2車速閾値まで車速が大きくなるほど減少し、車速が第2車速閾値で最小値(例えば0)となるマップであってよい。
ウインカ作動に応じたゲインは、例えばウインカが作動を開始してから一定時間(例えば3秒)経過後に0になる。
ゲイン算出部12aは、第1〜3車速感応ゲイン、ウインカ作動に応じたゲイン、及び第1車速感応レートリミッタを転舵制御部14へ出力する。
ゲイン算出部12aは、第4車速感応ゲイン、ウインカ作動に応じたゲイン、及び第2車速感応レートリミッタを反力制御部15へ出力する。
横位置演算部12cは、車両の横位置を演算する。横位置演算部12cは、所定の遅延時間に車速を乗じて予定走行距離を算出する。横位置演算部12cは、予定走行距離にヨー角を乗じて、目標走行軌道からの距離に加算することにより横位置を算出する。横位置演算部12cは、演算した横位置を転舵制御部14及び反力制御部15へ出力する。
操舵意図判定部12eは、操舵トルクセンサ1cが検出した操舵トルクに応じて運転者の操舵意図の有無を判定する。例えば操舵意図判定部12eは、操舵トルクが閾値以上である場合に操舵意図があると判定し、操舵トルクが閾値未満である場合に操舵意図がないと判定する。操舵意図判定部12eは、操舵意図の判定結果を制御状態設定部13に出力する。
制御状態設定部13は、下記のLK支援制御許可条件(A1)〜(A10)が全て満たされる場合にLK支援制御フラグをオンに設定する。制御状態設定部13は、下記のLK支援制御許可条件(A1)〜(A10)のいずれかが満たされない場合にLK支援制御フラグをオフに設定する。
(A2)走行車線の左右の走行路区分線が検出されている。
(A3)車速が閾値以上である。
(A4)ウインカが作動していない。
(A5)SBWシステムの異常が検知されていない。
(A6)道路曲率が閾値よりも小さい。
(A7)横加速度が閾値より小さい。
(A8)VDC及びABSのいずれも動作していない。
(A9)ブレーキランプが点灯していない。
(A10)運転者の操舵意図がある。
制御状態設定部13は、LK支援制御フラグを転舵制御部14及び反力制御部15へ出力する。
LK支援制御フラグがオフである場合、転舵制御部14は、操舵角と操舵角速度に基づき算出した基本指令転舵角を指令転舵角として転舵モータ駆動回路2dへ出力する。すなわち、転舵制御部14は、運転者によるステアリングホイール1aの操舵操作に応じて操向輪である左右前輪5FL、5FRを転舵する。また、転舵制御部14は、操舵角速度に基づく微分ステアリング制御を行っている。
すなわち、転舵制御部14は、運転者によるステアリングホイール1aの操舵操作に応じて左右前輪5FL、5FRを転舵するとともに、車両を目標走行軌道に戻す方向へ左右前輪5FL、5FRを転舵する。
LK支援制御フラグがオフである場合、反力制御部15は、操舵角又は転舵角に応じてラック軸力を演算し、ラック軸力に基づいて演算した目標反力トルクを指令操舵反力トルクとして反力モータ駆動回路1eに出力する。
また、LK支援制御フラグがオンである場合、反力制御部15は、横位置、車線到達時間に応じて目標反力トルクを補正することにより、車両を目標走行軌道に戻す方向のLK操舵反力を発生させる。
ここで、反力制御部15は、車両の横位置及び車線到達時間の少なくとも一方に応じて、車両が目標走行軌道から外れる逸脱量が増加するほど操舵反力を増大させる。したがって、車両が目標走行軌道上を走行しており運転者による操舵操作がない場合には、LK操舵反力が小さくなる。
このため、例えば車両が路面の凹凸や小石などの上を走行する等により車体が揺れ、運転者の姿勢の変化により運転者が意図しない操舵がステアリングホイール1aに入力されると操舵角が変動しやすくなる可能性がある。
このため、LK支援制御フラグがオンである場合には、逸脱量が大きい場合よりも逸脱量が小さい場合には、微分ステアリング制御により付加される転舵量も低減することにより、転舵角の変動を抑制する。すなわち、逸脱量が大きい場合よりも逸脱量が小さい場合には、同一の操舵角速度に対して演算される前記転舵量を小さくする。言い換えれば、逸脱量が小さい場合に操舵角速度に対して演算される転舵量を、逸脱量が大きい場合にこの操舵角速度と同一の操舵角速度に対して演算される転舵量よりも小さくする。
ゲイン乗算部20は、操舵角センサ1fが検出した操舵角にゲインを乗じて加算器25へ出力する。
操舵角速度演算部21は、操舵角センサ1fが検出した操舵角に基づきステアリングホイール1aの操舵角速度を演算し、微分ステアゲイン乗算部22へ出力する。微分ステアゲイン乗算部22は、微分ステアゲイン設定部12fにより設定された微分ステアゲインを操舵角速度に乗じて乗算器24へ出力する。
一方でLK支援制御フラグがオンである場合、微分ステアゲイン設定部12fは、微分ステアゲインを横位置に応じた値に設定する。
図3を参照する。微分ステアゲイン設定部12fは、横位置演算部12cが出力する横位置と、操舵角センサ1fが出力する操舵角を受信する。微分ステアゲイン設定部12fは、微分ステアゲイン演算部30と、操舵角速度演算部31と、ゲイン更新部32を備える。
また、例えば最小値Kminは0であってもよい。微分ステアゲインが0になると、微分ステアリング制御により付加される転舵量が0になる。すなわち、横位置がd1〜(−d2)の範囲で微分ステアリング制御により付加される転舵量が0になる。
横位置がd1〜d3の範囲及び横位置が(−d2)〜(−d3)の範囲では、横位置の絶対値が増加するのに応じて、微分ステアゲインは漸増する。例えば、微分ステアゲインは横位置の絶対値に比例して増加してもよい。
図3を参照する。微分ステアゲイン演算部30は、演算した微分ステアゲインをゲイン更新部32へ出力する。
ゲイン更新部32は、操舵角速度が所定値以下である場合又は前回受信した操舵角速度と今回受信した操舵角速度の符号が異なる場合に、微分ステアゲイン乗算部22へ出力する微分ステアゲインを、微分ステアゲイン演算部30から受信している値に更新する。例えば、ゲイン更新部32は、操舵角速度が0である場合又は前回受信した操舵角速度と今回受信した操舵角速度の符号が異なる場合に、微分ステアゲイン乗算部22へ出力する微分ステアゲインを更新してもよい。
ここで、操舵角速度が0である場合には微分ステアリング制御により付加される転舵量は0となる。また、操舵角速度の符号が変わった場合には操舵角速度が小さく、微分ステアリング制御により付加される転舵量も小さい。このように微分ステアリング制御により付加される転舵量が小さい期間でのみ微分ステアゲインを更新することにより、微分ステアゲインの変化によって転舵角が変わり運転者が違和感を覚えるのを防止できる。
LK指令転舵角演算部23は、車速、車両の横位置、所定の遅延時間経過時のヨー角、ウインカ作動に応じたゲイン、第1及び第2車速感応ゲイン、並びに第1車速感応レートリミッタを受信する。LK指令転舵角演算部23は、受信したこれらの情報に基づいて車両を目標走行軌道に戻す方向へ転舵させるLK指令転舵角を演算する。LK指令転舵角演算部23は、LK指令転舵角を加算器25へ出力する。
LK支援制御フラグがオンである場合、加算器25は、ゲイン乗算部20の演算結果、乗算器24の演算結果及びLK指令転舵角を加えて指令転舵角を算出し、転舵モータ駆動回路2dへ出力する。
第1反発力演算部40は、車両の横位置、第1車速感応ゲイン、ウインカ作動に応じたゲインを受信する。第1反発力演算部40は、受信したこれら情報に基づいて横位置フィードバック制御を行う。
図6を参照する。第1反発力演算部40は、ゲイン乗算部40aと乗算器40bを備える。ゲイン乗算部40aは、車両の横位置に基本ゲインを乗じて演算結果を乗算器40bへ出力する。
乗算器40bは、ゲイン乗算部40aの演算結果と、第1車速感応ゲインと、ウインカ作動に応じたゲインを乗じて、横位置に応じた反発力を演算する。
乗算器41bは、ゲイン乗算部41aの演算結果と、第2車速感応ゲインと、ウインカ作動に応じたゲインを乗じて、ヨー角に応じた反発力を演算する。
目標ヨーモーメント演算部43は、加算器42が出力した横方向反発力に基づいて、目標ヨーモーメントを算出する。具体的には、目標ヨーモーメント演算部43は、横方向反発力、ホイールベースWHEELBASE、後輪軸重、及び前輪軸重に基づき、下記の式(1)式に従って目標ヨーモーメントM*を算出する。そして、目標ヨーモーメント演算部43は、算出結果を目標ヨー加速度演算部44に出力する。
M*=横方向反発力×(後輪軸重/(前輪軸重+後輪軸重))×WHEELBASE ……(1)
目標ヨーレート演算部45は、目標ヨー加速度演算部44が出力した目標ヨー加速度に基づいて、ヨー角の変化速度である目標ヨーレートを算出する。具体的には、目標ヨーレート演算部45は、目標ヨー加速度に所定の遅延時間を乗算する。そして、目標ヨーレート演算部45は、乗算結果を目標ヨーレートとして指令転舵角演算部46に出力する。
δst*=(φ*×WHEELBASE×(1+(V/Vch)2)×180)/(V×MPI) ……(2)
なお、MPIは、予め定めた係数である。
ラック軸力演算部60は、操舵角と車速に基づき、操舵角−軸力変換マップ(MAP)を参照してラック軸力を推定する。すなわち、ラック軸力演算部60は、操舵角及び車速と、操舵角−軸力変換マップとに基づいてラック軸力を推定する。
例えば、操舵角−軸力変換マップは、予め実験等で算出したコンベンショナルな操舵装置における車速毎の操舵角とラック軸力との関係を表すマップである。ラック軸力演算部60は、演算結果を減算器62に出力する。
軸力オフセット量は、道路曲率に応じて操舵角を保持するための操舵反力が発生するように、ラック軸力演算部60により演算されたラック軸力をオフセットするためのオフセット量である。ラック軸力をオフセットすることにより、ステアリングホイール1aの操舵角と、この操舵角に応じてステアリングホイール1aに付与すべき操舵反力との関係を示す操舵反力特性曲線がオフセットされる。
オフセット量演算部61は、道路が曲がる方向へ転舵する転舵角の方向と同じ方向へ操舵反力特性曲線をオフセットし、道路白線の曲率が大きいほど軸力オフセット量の絶対値を大きくする。
上下限リミッタ61aは、車速センサ7が出力した車速に上下限リミッタ処理を行う。上下限リミッタ処理では、例えば、車速が0〜V(>0)の範囲で車速が大きくなるほど増大し、車速がV以上の範囲で最大値とする。そして、上下限リミッタ61aは、上下限リミッタ処理後の車速をSATゲイン演算部61bに出力する。
曲率演算部61cは、画像処理部11が出力した白線情報に基づいて、予定到達位置での道路白線の曲率(所定の遅延時間(0.5秒)経過後の車両の位置の道路白線の曲率)を算出する。そして、曲率演算部61cは、算出結果を乗算器61dに出力する。
リミッタ処理部61eは、乗算器61dが出力した軸力オフセット量の最大値及び変化率の上限を制限する。軸力オフセット量の最大値は、1000Nとする。また、軸力オフセット量の変化率の上限は、600N/sとする。そして、リミッタ処理部61eは、制限後の軸力オフセット量を減算器62に出力する。
目標反力トルク演算部63は、減算器62が出力した算出結果に基づき、軸力−操舵反力変換マップを参照して、オフセット後のラック軸力によって発生する操舵反力トルクを算出する。すなわち、目標反力トルク演算部63は、オフセット後のラック軸力と、軸力−操舵反力変換マップとに基づいて、オフセット後のラック軸力によって発生する操舵反力トルクを算出する。
目標反力トルク演算部63は、操舵反力トルクを加算器65に出力する。
反力トルク補正値は、車両を目標走行軌道に戻す方向へ付与するLK操舵反力を発生させる補正値である。
図10を参照する。反力トルク補正値演算部64は、第1反力演算部64aと、第2反力演算部64bと、選択部64cと、乗算器64dと、リミッタ処理部64eを備える。
図11に、横位置−反力マップ64iの一例を示す。ここでは、車両が目標走行軌道の右側に逸脱しているときプラスとなり、左側に逸脱しているときにマイナスとなるように横位置Δxの符号が定められている。また、左に転舵する方向に(すなわち反時計回り方向に)加える反力の符号がプラスに定められ、右に転舵する方向に(すなわち時計回り方向に)加える反力の符号がマイナスに定められている。
図示のとおり、横位置に応じた反力N_THWの符号は、横位置Δxの符号がプラスであるときにプラスになり、横位置Δxの符号がマイナスであるときにマイナスになる。
また、横位置Δxの絶対値が大きいときは小さいときよりも横位置Δxの変化量に対する横位置に応じた反力N_THWの変化量を大きくする。
したがって、横位置に応じた反力N_THWは、目標走行軌道からの車両の逸脱量が増加するほど増加するとともに、車両を目標走行軌道に戻す方向へ付与されるLK操舵反力の一例である。
図10を参照する。第1反力演算部64aは、横位置に応じた反力N_THWを選択部64cに出力する。
図12に、車線到達時間−反力マップ64jの一例を示す。ここでは、車両が目標走行軌道の右側に逸脱しているときプラスとなり、左側に逸脱しているときにマイナスとなるように車線到達時間TLCの符号が定められている。また、左に転舵する方向に(すなわち反時計回り方向に)加える反力の符号がプラスに定められ、右に転舵する方向に(すなわち時計回り方向に)加える反力の符号がマイナスに定められている。
図示のとおり、横位置に応じた車線到達時間に応じた反力N_TLCは、車線到達時間TLCの符号がプラスであるときにプラスになり、車線到達時間TLCの符号がマイナスであるときにマイナスになる。
また、車線到達時間TLCの絶対値が小さいときは大きいときよりも車線到達時間TLCの変化量に対する車線到達時間に応じた反力N_TLCの変化量を大きくする。
したがって、車線到達時間に応じた反力N_TLCは、目標走行軌道からの車両の逸脱量が増加するほど増加するとともに、車両を目標走行軌道に戻す方向へ付与されるLK操舵反力の一例である。
図10を参照する。第2反力演算部64bは、車線到達時間に応じた反力N_TLCを選択部64cに出力する。
乗算器64dは、反力指令値に、第4車速感応ゲインとウインカ作動に応じたゲインを乗じて反力トルク指令値を演算し、リミッタ処理部64eへ出力する。
図8を参照する。加算器65は、目標反力トルク演算部63が演算した操舵反力トルクに、反力トルク補正値演算部64が演算した反力トルク補正値を加えて指令操舵反力トルクを算出し、反力モータ駆動回路1eへ出力する。
次に、本実施形態に係る運転支援装置の動作を説明する。図13を参照する。
ステップS1においてSBWコントローラ4は、CANバスを経由して、操舵角センサ1f、操舵トルクセンサ1c、電流センサ1g、カメラ6、車速センサ7からそれぞれ出力された操舵角、操舵トルク、反力モータ1dの電流値、車両前方の走行路の画像、車速を受信する。
ステップS2において車両状態設定部12は、SBWコントローラ4が有する記憶装置から、各種ゲイン定数やゲインを決定するためのマップを読み込む。
また、車両状態設定部12は、第1車速感応ゲイン、第2車速感応ゲイン、第3車速感応ゲイン、第4車速感応ゲイン、ウインカ作動に応じたゲイン、第1車速感応レートリミッタ及び第2車速感応レートリミッタを算出する。
ステップS4において制御状態設定部13は、上記のLK支援制御許可条件(A1)〜(A10)が全て満たされる場合にLK支援制御フラグをオンに設定する。制御状態設定部13は、LK支援制御許可条件(A1)〜(A10)のいずれかが満たされない場合にLK支援制御フラグをオフに設定する。
LK支援制御フラグがオフである場合、反力トルク補正値演算部64は、反力トルク補正値を演算しない。
ステップS8において反力制御部15は、コラムシャフト1bに付与する操舵反力トルクを制御する指令操舵反力トルクを算出する。LK支援制御フラグがオフである場合、反力制御部15は、操舵角又は転舵角に応じてラック軸力を演算し、ラック軸力に基づいて演算した目標反力トルクを指令操舵反力トルクとして演算する。
ステップS9において転舵制御部14は、指令転舵角を転舵モータ駆動回路2dへ出力して転舵制御を行う。また、反力制御部15は、指令操舵反力トルクを反力モータ駆動回路1eに出力して反力制御を行う。その後に処理は終了する。
ステップS20において微分ステアゲイン演算部30は、横位置、すなわち目標走行軌道からの逸脱量に応じて新たな微分ステアゲインを算出する。
ステップS21において操舵角速度演算部31は、ステアリングホイール1aの操舵角速度を演算する。ゲイン更新部32は、操舵角速度の符号が変化したか否かを判断する。
ステップS22においてゲイン更新部32は、操舵角速度が所定値以下であるか否かを判断する。操舵角速度が所定値以下である場合(ステップS22:Y)に処理はステップS23に進む。
ステップS23においてゲイン更新部32は、微分ステアゲイン乗算部22へ出力する微分ステアゲインを、ステップS20の算出結果に更新する。その後に処理は終了する。操舵角速度が所定値以下でない場合(ステップS22:N)にはステップS23を実行せずに処理が終了する。したがってゲイン更新部32は、微分ステアゲイン乗算部22へ出力する微分ステアゲインを更新せず、前回出力した値を保持する。
(1)SBW式の転舵機構を備える車両において、転舵制御部14は、運転者によるステアリングホイール1aの操舵操作に応じて操向輪を転舵する。横位置演算部12c及び車線到達時間演算部12dは、車両が目標走行軌道から外れる逸脱量を検出する。第1反力演算部64a、第2反力演算部64b、選択部64c、乗算器64d、及びリミッタ処理部64eは、目標走行軌道からの車両の逸脱量が増加するほど、車両を目標走行軌道に戻す方向へステアリングホイールに付与するLK操舵反力を増加させる。
微分ステアゲイン設定部12f及び転舵制御部14は、逸脱量が大きい場合よりも逸脱量が小さい場合にはステアリングホイール1aの操舵に対する操向輪の転舵の応答性を低減する。
このように目標走行軌道からの逸脱量が小さい場合に操舵に対する転舵の応答性を低減することにより、運転者による操舵操作がなくLK操舵反力が小さい状態で運転者が意図しない操舵操作が行われても転舵角の変動を抑制できる。
このとき、車両が目標走行軌道上を走行していると、車両を目標走行軌道に戻す方向へステアリングホイール1aに付与するLK操舵反力が小さいので、運転者が意図しない操舵によるステアリングホイール1aの操舵角が変動しやすくなり、左右前輪5FL、5FRが転舵されて直進性が低下する虞がある。
このため、運転者による操舵操作がないと判断された場合には、その後に行われる操舵操作は運転者が意図していない操作であることがあると想定して、この操舵操作に対する操向輪の転舵の応答性を低減する。これにより、運転者が意図しない操舵操作による転舵角の変動を抑制できる。
例えば、転舵制御部14は、操舵角速度に微分ステアゲインを乗ずることにより上記の転舵量を算出してもよい。微分ステアゲイン設定部12fは、逸脱量が大きい場合よりも逸脱量が小さい場合の微分ステアゲインを小さくしてもよい。
このように、逸脱量が小さい場合に操舵角速度に対して演算される転舵量を、逸脱量が大きい場合よりも小さくすることによって、運転者が意図しない操舵に対する微分ステアリング制御を抑制することができる。これにより、運転者が意図しない操舵に転舵角が敏感に反応して車両の直進性が低下するのを防ぐことができる。
(1)微分ステアゲイン設定部12fは、横位置の代わりに又は横位置に加えて車線到達時間を用いて微分ステアゲインを算出してもよい。例えば、微分ステアゲイン設定部12fは、車線到達時間が短い場合よりも車線到達時間が長い場合の微分ステアゲインが小さくなるように微分ステアゲインを設定してもよい。
(2)微分ステアゲインを乗じる代わりに、操舵角速度と操舵量との関係を予め定めた計算式又はマップを参照して、微分ステアリング制御により付加する操舵量、すなわち操舵角に応じて定めた転舵角に付加する操舵量を決定してもよい。この場合、操舵角速度と操舵量との関係を予め定めた計算式又はマップを切り替えることにより、同一の操舵角速度に対して演算される転舵量を、逸脱量が大きい場合に比べて逸脱量が小さい場合に低減してもよい。
Claims (5)
- ステアバイワイヤ式の転舵機構を備える車両の運転支援方法であって、
ステアリングホイールの操舵操作に応じて操向輪を転舵し、
前記車両が目標走行軌道から外れる逸脱量を検出し、
前記逸脱量が増加するほど、前記車両を前記目標走行軌道に戻す方向へ前記ステアリングホイールに付与する操舵反力を増加させ、
前記逸脱量が大きい場合よりも前記逸脱量が小さい場合には、前記ステアリングホイールの操舵に対する前記操向輪の転舵の応答性を低減する、
ことを特徴とする運転支援方法。 - 前記ステアリングホイールの操舵角に応じて演算した転舵角に、前記ステアリングホイールの操舵角速度に応じて演算した転舵量を加えて得られる目標転舵角に応じて前記操向輪を転舵し、
前記逸脱量が大きい場合よりも前記逸脱量が小さい場合には、同一の操舵角速度に対して演算される前記転舵量を小さくする、
ことを特徴とする請求項1に記載の運転支援方法。 - 前記操舵角速度に可変ゲインを乗じて前記転舵量を算出し、
前記逸脱量が大きい場合よりも前記逸脱量が小さい場合には、前記可変ゲインを小さくすることを特徴とする請求項2に記載の運転支援方法。 - 前記操舵角速度が所定値以上であり且つ前記操舵角速度の符号が変化しない場合に前記可変ゲインの値を保持し、
前記操舵角速度が所定値より小さい場合又は前記操舵角速度の符号が変化した場合に、前記可変ゲインの値を更新することを特徴とする請求項3に記載の運転支援方法。 - ステアバイワイヤ式の転舵機構を備える車両の運転支援装置であって、
前記車両が目標走行軌道から外れる逸脱量を検出する走行状態センサと、
ステアリングホイールの操舵操作に応じて操向輪を転舵し、前記逸脱量が増加するほど前記車両を前記目標走行軌道に戻す方向へ前記ステアリングホイールに付与する操舵反力を増加させ、前記逸脱量が大きい場合よりも前記逸脱量が小さい場合には、前記ステアリングホイールの操舵に対する前記操向輪の転舵の応答性を低減するコントローラと、を備えることを特徴とする運転支援装置。
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