特許文献1に記載のショーケースによれば、ダンパの開閉操作と、ヒータのオンオフ操作とを伴う冷温蔵室の運転モードの切換え操作を、レバーの移動操作だけで行うことができるので、冷温蔵室の運転モードの切換えを簡易かつ確実に行うことができる。しかし、特許文献1に記載のショーケースでは、温蔵モードにおいて冷温蔵室内を冷却することができず、その点に改良の余地がある。
つまり、この種のショーケースにおける冷温蔵室の温蔵モードにおける庫内の温度制御としては、単純にヒータのオンオフ動作を伴う加熱制御に限られず、冷温蔵室に対して冷却制御が必要となる場合もある(例えば、冬季においてエアコンの暖気が冷温蔵室内に侵入することで、不用意に庫内温度が上昇したような場合である)。しかしながら、特許文献1に記載のショーケースでは、温蔵モードにおいて冷温蔵室に対する冷却制御を行うことが想定されておらず、その点に改良の余地があった。
尤も、上記のような温蔵モードにおける冷温蔵室の冷却制御は、冷蔵室と冷温蔵室のそれぞれに個別の冷却器を設置するとともに、検出された冷温蔵室の庫内温度を設定温度と比較しながら冷却器をオンオフ制御することで完全に解消できる。しかし、上記のような構成を採った場合には、各室内に冷却器を設置する分だけ、ショーケースの製造コストが大幅に上昇することが避けられず、さらにコンプレッサーから冷却器に至る冷媒の送給経路が複雑化する点でもショーケースの製造コストが大幅に上昇することが避けられない。
本発明の目的は、冷蔵室と冷蔵温室との間が仕切壁に仕切られており、該仕切壁に設けられたモード選択レバーの切換え操作だけで、冷温蔵室を冷蔵モードと温蔵モードとに切換えることができるショーケースにおいて、製造コストの大幅な上昇を招くことなく、冷蔵モードのみならず、温蔵モードにおいても冷温蔵室内を冷却することができるようにすることにある。
本発明は、冷蔵室3と、冷温蔵室4と、両室3・4を仕切る仕切壁2とを備え、該仕切壁2に設けられたモード選択レバー36を切換え操作することで、該冷温蔵室4を冷蔵モードと温蔵モードとの間で切換えることができるショーケース1を対象とする。前記仕切壁2に、前記冷蔵室3内の冷気を前記冷温蔵室4内に流入させる冷気用の開口22と、該冷気用の開口22を開閉するダンパ24と、前記モード選択レバー36の操作を受けて該ダンパ24を開閉操作する開閉機構25と、前記冷温蔵室4に向けて暖気を送るための加熱構造26と、前記冷蔵室3内の冷気を前記冷温蔵室4内に強制的に送給するための強制送給構造27とが設けられている。前記冷蔵モードが選択されると、前記ダンパ24が開操作されて、前記冷気用の開口22を介して前記冷蔵室3内の冷気が前記冷温蔵室4内に流入される。そして、前記温蔵モードが選択されると、閉操作された前記ダンパ24により前記冷気用の開口22が閉じられた状態で、前記冷温蔵室4内が所定温度となるように、前記加熱構造26による該冷温蔵室4に向けた暖気の送給制御と、前記強制送給構造27による該冷温蔵室4に向けた冷気の送給制御とが行われるように構成されていることを特徴とする。
冷温蔵室4の設定温度(Tc)よりも低温に設定された第1の低温閾値(Tc−P1)と、第1の低温閾値(Tc−P1)よりもさらに低温に設定された第2の低温閾値(Tc−P2)の二種の低温閾値が規定されており、庫内温度センサ45により検出された冷温蔵室4の庫内温度(T1)が、第1の低温閾値(Tc−P1)よりも低温である状態が数分間継続する第1の加熱条件と、庫内温度センサ45により検出された庫内温度(T1)が、第2の低温閾値(Tc−P2)よりも低温である状態が数秒間継続する第2の加熱条件とが規定されており、これら第1、第2のいずれか一方の加熱条件が満たされたときに、加熱構造26による冷温蔵室4に向けた暖気の送給制御が行われるような構成を採ることができる。
冷温蔵室4の設定温度(Tc)よりも高温に設定された第1の高温閾値(Tc+P3)と、第1の高温閾値(Tc+P3)よりもさらに高温に設定された第2の高温閾値(Tc+P4)の二種の高温閾値が規定されており、庫内温度センサ45により検出された冷温蔵室4の庫内温度(T1)が、第1の高温閾値(Tc+P3)よりも高温である状態が数分間継続する第1の冷却条件と、庫内温度センサ45により検出された庫内温度(T1)が、第2の高温閾値(Tc+P4)よりも高温である状態が数秒間継続する第2の冷却条件とが規定されており、これら第1、第2のいずれか一方の冷却条件が満たされたときに、強制送給構造27による前記冷温蔵室4に向けた冷気の送給制御が行われるような構成を採ることができる。
加熱構造26が、冷温蔵室4内の庫内空気を仕切壁2内に設けられた加熱用のバイパス路42に取り込むための第1の送風機43と、該第1の送風機43により加熱用のバイパス路42に取り込まれた庫内空気を加熱して暖気とするヒータ44とを含み、強制送給構造27が、冷蔵室3内の冷気を仕切壁2内に設けられた冷却用のバイパス路52に取り込むための第2の送風機53を含み、温蔵モードが選択されると、ヒータ44のオンオフ制御、および強制送給構造27を構成する第2の送風機53のオンオフ制御とは無関係に、第1の送風機43が常態的にオン制御され、該第1の送風機43による送風により冷温蔵室4の庫内空気が循環されるような構成を採ることができる。
本発明に係るショーケース1においては、冷蔵室3と冷温蔵室4とを仕切る仕切壁2に、冷温蔵室4に向けて暖気を送るための加熱構造26と、冷蔵室3内の冷気を冷温蔵室4に向けて強制的に送給するための強制送給構造27とを設けて、温蔵モードが選択されると、加熱構造26により冷温蔵室4に暖気が送給され、或いは強制送給構造27により冷温蔵室4に冷気が送給されるようにした。以上のような構成からなるショーケース1によれば、温蔵モードが選択された状態で冷温蔵室4の庫内温度が所定の設定温度よりも低い場合には、加熱構造26により暖気を冷温蔵室4内に送給することで冷温蔵室4内を加熱制御できることは勿論のこと、冷温蔵室4内の庫内温度が所定の設定温度よりも高い場合には、強制送給構造27により冷蔵室3内の冷気を送給することで冷温蔵室4内を冷却制御することができる。
以上のように本発明では、温蔵モードにおける冷却制御に、冷蔵室3内の冷気を利用して冷温蔵室4内を冷却する構造を採ったため、冷蔵室3と冷温蔵室4のそれぞれに冷却器を設置する構成に比べて、冷温蔵室4の冷却構造が格段に簡素に済み、製造コストを抑えて、温蔵モードにおける冷却能力を備えたショーケースをより安価に提供できる。また、このような構成からなるショーケース1は、特に冷温蔵室4の室内温度が15〜20℃の範囲に設定される弁当用のショーケース1として好適であり、例えば冬季においてエアコンで暖められた外部空気が冷温蔵室4内に侵入して、冷温蔵室4内の温度が上昇した場合であっても、強制送給構造27により、冷温蔵室4内に冷気を送り込んで冷却し、庫内および収納物を最適温度に保つことができる。
また、本発明によれば、仕切壁2に、モード選択レバー36、ダンパ24、開閉機構25のみならず、加熱構造26と強制送給構造27とを設けて、モードの切換構造の全てを仕切壁2に集約配置したので、冷蔵室3、或いは冷温蔵室4のそれぞれに切換構造を設ける場合に比べて、冷蔵室3および冷温蔵室4の収容スペースのロスを小さくして、より大きな収容スペースを確保できる。
庫内温度センサ45により検出された庫内温度(T1)が、第1の低温閾値(Tc−P1)よりも低温である状態が数分間継続する第1の加熱条件と、前記庫内温度センサ45により検出された庫内温度(T1)が、第2の低温閾値(Tc−P2)よりも低温である状態が数秒間継続する第2の加熱条件とが規定されており、これら第1、第2のいずれか一方の加熱条件が満たされたときに、加熱構造26による冷温蔵室4に向けた暖気の送給制御が行われるようにすることができる。このように二つの加熱条件に基づいて加熱制御を行うようにしていると、例えば一つの閾値と庫内温度(T1)との比較に基づいて加熱制御を行う形態に比べて、急激な温度変化に適切に対応しながら、より効率的な加熱制御が可能となる。
すなわち、一つの閾値と庫内温度(T1)との比較に基づいて加熱制御を行う形態では、例えば庫内温度センサ45に部分的に冷気が当たり、突発的に庫内温度センサ45による検出温度が閾値を下回ったような場合でも、冷温蔵室4の庫内全体の温度が低温になっていると判断されて加熱制御が実行されることとなる。このため、一つの閾値と庫内温度(T1)との比較に基づいて加熱制御を行う形態では、不必要な加熱制御が頻繁に行われ、結果としてショーケースの加熱効率や冷却効率が低下するおそれがある。
これに対して本発明のように、庫内温度センサ45により検出された庫内温度(T1)が第1の低温閾値(Tc−P1)よりも低温である状態が数分間継続する第1の加熱条件、或いは庫内温度センサ45により検出された庫内温度(T1)が、第2の低温閾値(Tc−P2)よりも低温である状態が数秒間継続する第2の加熱条件により、加熱制御を行うようにしていると、例えば、第1の加熱条件における低温閾値(Tc−P1)を設定温度に近い温度に設定した場合であっても、その継続時間を「5分」などの長時間に設定することで、上記のように頻繁に加熱制御が行われることを確実に防ぐことができる。また、第2の加熱条件における低温閾値(Tc−P2)を設定温度よりも極端に低く設定しておけば、その継続時間を「2秒」のように短時間に設定した場合であっても、上記のように頻繁に加熱制御が行われることはない。さらに、上記のような第2の加熱条件を設定しておくことにより、冷温蔵室4の庫内に急激に大量の冷気が流れ込むような突発的な状況に陥った場合にも、当該状況に適正に対応して加熱制御を行うことが可能となり、急激な温度変化にも適切に対応できる。
二つの冷却条件に基づいて冷却制御を行う場合においても、先の加熱制御と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、二つの冷却条件に基づいて冷却制御を行うようにしていると、例えば一つの閾値と庫内温度(T1)との比較に基づいて冷却制御を行う形態に比べて、急激な温度変化に適切に対応しながら、より効率的な冷却制御が可能となる。
温蔵モードが選択されると、加熱構造26を構成する第1の送風機43が常態的にオン制御され、該送風機43による送風により冷温蔵室4の庫内空気が循環されるような構成を採ることができる。これによれば、温蔵モード時において、冷温蔵室4内を強制対流方式で冷却或いは加熱することができるので、より効率的に冷温蔵室4内を冷却等することができる。
図1ないし図9に、本発明を駅ホームの有人販売所に設置されるショーケースに適用した実施例を示す。本実施例における前後、左右、上下とは、図1、図2、および図6に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2に示すように、ショーケース1は、縦長の断熱箱体を基体として、仕切壁2によって区画された下方側の冷蔵室3と、上方側の冷温蔵室4の二つの収納室を備える。図1および図6に示すように、冷蔵室3と冷温蔵室4のそれぞれの前後には開口部が設けられており、これら開口部には引き違い開閉される引戸式のガラス扉5・5が装着されている。このように前後に開口部を設けることで、各室3・4の前方から商品を販売するとともに、各室3・4の後方から商品を補充することができる。各室3・4には、高さ位置を変更可能な商品陳列棚6が設けられている。
図2に示すように、冷蔵室3の下方には機械室7が配されており、機械室7内には、熱交換して冷気を生成する冷却器9と、冷蔵室3内の空気を吸い込んで冷却器9を介して冷蔵室3内に冷気を供給するための送風機10とが設けられている。符号11は、圧縮機12と凝縮器13と凝縮器13用の送風機14とを備え、冷媒を機械室7内の冷却器9に送る室外機を示す。
図2および図8に示すように、冷蔵室3の左側面には、冷気用の下ダクト15が設けられており、送風機10により冷蔵室3の底壁に開設された吸込口16から吸い込まれた冷蔵室3内の庫内空気は、冷却器9により冷却されたのち、下ダクト15に設けられた冷気吹出口17から冷蔵室3内に吹出される。また、後述する冷却モードが選択された場合には、冷温蔵室4の左側面に設けられて、下ダクト15に連通する上ダクト18を介して冷温蔵室4にも冷気が送給される。符号19は、上ダクト18に設けられた吹出口を示しており、上ダクト18に送給された冷気、および後述する加熱構造26により生成された暖気は吹出口19から冷温蔵室4内に吹出される。
図3、および図4に示すように仕切壁2は、冷蔵室3に臨む下方側の下板20と、冷温蔵室4に臨む上方側の上板21と備える中空状に形成されており、その左右両端には冷蔵室3内の冷気を冷温蔵室4内に流入させるための左右一対の開口(冷気用の開口)22(22a・22b)が設けられている。仕切壁2の内部には、各開口22a・22bを開閉する左右一対のダンパ24(24a・24b)と、モード選択レバー36の操作を受けてこれらダンパ24a・24bを開閉操作するダンパ開閉機構(開閉機構)25と、冷温蔵室4に向けて暖気を送るための加熱構造26と、冷蔵室3内の冷気を冷温蔵室4内に強制的に送給するための強制送給構造27とが設けられている。
図3に示すように仕切壁2の内部は、下板20と上板21の間に配された隔壁29により、下室30と上室31の二室に区画されている。仕切壁2の左右端には、前後方向に長く開口22a・22bが開設されており、下室30の内部には、これら開口22a・22bをそれぞれ開閉する前後方向に長いダンパ24a・24bと、これらダンパ24a・24bを同時に開閉操作するダンパ開閉機構25と、冷温蔵室4の運転モードを冷蔵モードと温蔵モードとの間で変更するためのモード切換スイッチ32とが配置されている。モード切換スイッチ32は磁気型近接センサで構成されており、マグネットの有無によりスイッチの状態が切換わり、マグネットを近接させると出力がオンとなる。
図3に示すように、左側のダンパ24aは、ダンパ開閉機構25に連結された連結片60と、閉姿勢(図7(b)、図8(b))において開口22aを閉じる四角柱状のダンパ本体61と、ダンパ本体61から上方に向かって伸びて、開姿勢(図7(a)、図8(a))において後述の暖気送出口41と冷気送出口51とを閉じる上片62と、開姿勢において下ダクト15の最上端に位置する冷気吹出口17(17a)を閉じる下片63とを備える。右側のダンパ24bは、上片62の上下方向の長さ寸法が、左側のダンパ24aのそれよりも短い点を除いて、概ね左側のダンパ24aの形状と共通する。
ダンパ開閉機構25は、図1、図4、および図7(a)(b)に示すように、仕切壁2内の下室30の中央に前後方向に移動可能に構成された移動体33と、移動体33とダンパ24a・24bとをそれぞれ連結する計4本のダンパアーム34と、移動体33から左方向に片持ち状に伸びて、モード切換スイッチ32をオンオフ操作する先端にマグネットを備えたスイッチバー35とからなる。移動体33には、操作部としてのモード選択レバー36が連結されている。モード選択レバー36は、仕切壁2の下板20の左右方向中央部で前後方向に長く穿設されたスリット37から仕切壁2の外下方に突出しており、図7(a)に示すようにスリット37に沿ってモード選択レバー36を後方向に移動させて、冷温蔵室4を冷蔵モードとすると、ダンパ開閉機構25を構成する移動体33とダンパアーム34とを介して両ダンパ24a・24bを開口22a・22bを開く開姿勢とすることができる。また、図7(b)に示すようにモード選択レバー36を前方向に移動させて、冷温蔵室を温蔵モードとすると、ダンパ24a・24bを開口22a・22bを閉じる閉姿勢とすることができる。
図4および図7において、符号39は、前端位置、或いは後端位置に移動された移動体33を位置保持することを目的として下室30内の前後二ケ所に配置されたマグネットからなるキャッチャーを示す。このようにキャッチャー39・39が設けられていると、モード選択レバー36の操作を受けて前端、或いは後端の位置に移動された移動体33を吸着保持することができるので、不用意に移動体33が移動して、冷温蔵室4のモードが変更されることを防ぐことができる。
図3に示すように、仕切壁2の左側の開口22aは、上下のダクト15・18の連結部に形成されており、左側のダンパ24aはこれら上下のダクト15・18の開閉要素として機能する。具体的には、モード選択レバー36を後方向へ移動させて、左側のダンパ24aを開姿勢とすると(図7(a)参照)、開口22aを開くとともに上下のダクト15・18を連通状態とすることで、下ダクト15から上ダクト18に向かって冷気を流して、冷温蔵室4内に冷気を送給することができる(図8(a))。このとき、左側のダンパ24aに同調して右側のダンパ24bも開姿勢となることで、仕切壁2の右端に設けられた開口22bを開いて、冷温蔵室4と冷蔵室3とを連通状態として、冷温蔵室4から冷蔵室3へ空気を流入させることができる。
レバー36を前方向へ移動させて、左右のダンパ24a・24bを閉姿勢とした場合には、開口22a・22bを閉じることができる。従って、ダンパ24a・24bを閉姿勢とした状態では、開口22a・22bを介して空気が流通することはない。
図1、および図3に示すように、加熱構造26は、仕切壁2の前方寄りに設けられており、冷温蔵室4側に開口して該冷温蔵室4の庫内空気を取り入れる空気取入口40と、冷温蔵室4側に開口して該冷温蔵室4に向けて暖気を送り出す暖気送出口41と、空気取入口40から取り入れられた空気を暖気送出口41に導く加熱用のバイパス路42と、加熱用のバイパス路42に設けられて、空気取入口40を介して加熱用のバイパス路42内に庫内空気を取り込むための第1の送風機43と、空気取入口40から取り入れられた庫内空気を加熱して暖気とするヒータ44とで構成される。図3において符号45は、空気取入口40から吸い込まれた庫内空気の温度(冷温蔵室4の庫内温度)を測定するための庫内温度センサを、符号46は、ヒータ44による加熱後の暖気の温度を測定する暖気センサを示す。図8(a)(b)において、符号47は、機械室7内に配されて吸込口16から吸い込まれた庫内空気の温度(冷蔵室3の庫内温度)を測定するための庫内温度センサを示す。これらセンサ45・46・47はサーミスタである。
加熱用のバイパス路42は上室31と下室30とを跨ぐように構成されている。具体的には、図3に示すように、加熱用のバイパス路42は、空気取入口40を有する上室31側の第1室42aと、第1室42aに連通して下室30側に形成された第2室42bと、第2室42bに連通して上室31側に形成された第3室42cとで構成されている。第2室42bと第3室42cとの間に第1の送風機43が配置され、第3室42cにヒータ44が配置されている。以上より、第1の送風機43により、仕切壁2の右端に設けられた空気取入口40から上室31側の第1室42a内に吸い込まれた空気は、下室30側の第2室42b内に送られたのち、再び上室31側の第3室42cに送られて、ヒータ44により加熱されて暖気とされたのち、上室31の左端に設けられた暖気送出口41から冷温蔵室4に吹出されるようになっている。暖気送出口41は上ダクト18の下端に連通しており、暖気は上ダクト18を介して吹出口19から冷温蔵室4内に吹出される。
加熱用のバイパス路42は、ダンパ開閉機構25を避けるように形成されている。具体的には、図7(a)(b)に示すように、加熱用のバイパス路42を構成する第2室42bは、右方側の前後のダンパアーム34・34の間に形成されており、ダンパ24a・24bの開閉操作に伴うダンパアーム34の前後方向の移動軌跡に干渉しないように構成されている。また、第1の送風機43は、そのファン軸が斜め上方を向く傾斜姿勢で第2室42bと第3室42cとの間に配置されている。
このように、仕切壁2の内部を上室31と下室30とに分割して、加熱用のバイパス路42を上下の室31・30に跨るように配置するとともに、第1の送風機43を傾斜姿勢で配置してあると、仕切壁2内のデッドスペースを少なくして、仕切壁2の小スペース化、および薄肉化を図ることできる。これにより、ショーケース1において仕切壁2が占める割合を小さくして、ショーケース1の冷蔵室3或いは冷温蔵室4の収納スペースを大きく取ることができる。
図1、および図5に示すように、冷蔵室3内の冷気を冷温蔵室4内に強制的に送給するための強制送給構造27は、仕切壁2の左後方に配置されており、冷蔵室3側に開口して該冷蔵室3の庫内空気(冷気)を取り込む冷気取入口50と、冷温蔵室4側に開口して冷気を送り出す冷気送出口51と、冷気取入口50と冷気送出口51との間に形成された冷気用のバイパス路52と、該冷気用のバイパス路52に設けられた第2の送風機53とで構成される。冷気取入口50は、下板20に開設されており、該冷気取入口50に臨むように第2の送風機53が配置され、冷気用のバイパス路52は、下室30と上室31とを跨ぐように構成されている。冷気送出口51は、上室31側に設けられて、上ダクト18の下端に連通しており、冷気送出口51から上ダクト18に送られた冷気は、吹出口19から冷温蔵室4内に吹出される。図1に示すように、暖気送出口41と冷気送出口51とは、上室31の左側面に開設されている。
強制送給構造27は、ダンパ開閉機構25を避けるように形成されている。具体的には、図7(a)(b)に示すように、冷気用のバイパス路52は、左後方のダンパアーム34よりも後方側に配置されており、ダンパ24a・24bの開閉操作に伴うダンパアーム34の前後方向の移動軌跡に干渉しないようになっている。
次に、以上のような構成からなるショーケース1の使用方法について説明する。まず、冷温蔵室4を冷蔵モードで使用する場合は、冷蔵室3の後側のガラス扉5を開け、図4に仮想線で示すように、仕切壁2から下方に突出するモード選択レバー36を後方に引く。これにより、図7(a)に示すように、ダンパ開閉機構25を構成する移動体33が後方に移動し、これに伴いダンパアーム34を介してダンパ24a・24bが左右方向内側に移動し、開口22a・22bが開かれ、下ダクト15を流れる冷気は、左側の開口22aを介して上ダクト18に流入し、吹出口19から冷温蔵室4内へ供給される。このとき、右側の開口22bを介して冷温蔵室4内の庫内空気が冷蔵室3に戻され、これによって、冷気が冷蔵室3と冷温蔵室4とを循環し、冷蔵室3内の商品が冷蔵される。
なお、図8(a)に示すように、ダンパ24a・24bが左右方向内側に移動された状態では、下ダクト15の最上端に位置する冷気吹出口17(17a)が、左側のダンパ24aを構成する下片63により閉じられるため、より多くの冷気を上ダクト18を介して冷温蔵室4に向けて送ることができる。また、ダンパ24a・24bが左右方向内側に移動された状態では、上ダクト18に臨む暖気送出口41と冷気送出口51とが、左側のダンパ24aを構成する上片62により閉じられるため、上ダクト18内に送られた冷気がこれら暖気送出口41等に流れ込むことはなく、より多くの冷気を冷温蔵室4に送ることができる。
以上のように、冷蔵モードでは、冷蔵室3と冷温蔵室4とは、ともに冷却器9から供給される冷気によって冷却制御される。すなわち、冷蔵モードにおいては、冷蔵室3と冷温蔵室4とは、一つの室のように、同一温度となるように冷却制御される。より具体的には、機械室7内に設置された庫内温度センサ47により測定された庫内空気温度(検出温度)と、予め設定された設定温度の閾値とを比較し、庫内温度センサ47による検出温度が閾値内にあるように、冷却器9をオンオフ制御する。なお、図7(a)に示すように、冷蔵モードにおいては、スイッチバー35は、モード切換スイッチ32から離間して、当該スイッチ32を切っており、従って、加熱構造26を構成するヒータ44等がオンとなることはない。また、図7(a)に示すように、後方側に位置するキャッチャー39により移動体33が保持されるため、不用意な移動体33の変位は阻止される。
冷温蔵室4を温蔵モードで使用する場合には、図4において実線で示すように、モード選択レバー36を前方に押す。これにより、ダンパ開閉機構25を構成する移動体33が前方に移動し、これに伴いダンパアーム34を介してダンパ24a・24bが左右方向外側に移動し、開口22a・22bが閉じられる(図8(b)参照)。以上より、開口22a・22bを介した冷蔵室3から冷温蔵室4への冷気の流通が遮断される。また、モード選択レバー36の移動に伴い、スイッチバー35の先端のマグネットがモード切換スイッチ32に近接してこれをオンとし、加熱構造26、強制送給構造27などが稼働状態となる。
図9のフローチャートに、温蔵モードにおけるショーケース1の制御動作を示す。まず、先に述べたようなモード選択レバー36の操作により、温蔵モードが選択されると(S1でYES)、加熱構造26を構成する第1の送風機43を起動し、冷温蔵室4の庫内空気を強制的に循環させる(S2)。なお、この第1の送風機43による冷温蔵室4に対する強制循環は、温蔵モードが終了するまで(S9でNO、S14でNO)継続される(S15)。
温蔵モードが選択されると(S1でYES)、ショーケース1は庫内温度センサ45により検出された庫内温度(T1)と、設定温度(Tc(例えば18℃))とを比較し(S3)、庫内温度(T1)が設定温度(Tc)以上である場合には(S3で≧)、さらに庫内温度センサ45により検出された庫内温度(T1)を、設定温度の上限値を規定するための第1閾値(Tc+d1)と比較する(S4)。ここでのd1としては、例えば0.5℃であり、第1閾値としては「18.5℃」を挙げることができる。庫内温度(T1)が第1閾値(Tc+d1)以上である場合には(S4でYES)、庫内温度は高く、冷却制御が必要であると判断して、強制送給構造27を構成する第2の送風機53を起動して、冷蔵室3側の冷気を冷温蔵室4内に送り込む(S5)。一方、庫内温度(T1)が第1閾値(Tc+d1)を下回る場合には(S4でNO)、庫内温度は高くなく、冷却制御は不要であると判断して、S3に戻る。
強制送給構造27による冷気の送給は、冷温蔵室4の庫内温度が所定温度まで下がるまで続けられる。具体的には、庫内温度センサ45により検出された庫内温度(T1)が、第2閾値(Tc−d2)以下となると(S6でYES)、強制送給構造27の第2の送風機53の駆動を停止する(S7)。一方、庫内温度(T1)が第2閾値(Tc−d2)を上回る場合には(S6でNO)、第2の送風機53の駆動を継続する。ここでのd2としては、例えば2℃を挙げることができ、第2閾値としては「16℃」を挙げることができる。
冷温蔵室4内が過冷却状態に陥った場合には、加熱構造26による加熱制御を行う。具体的には、庫内温度センサ45により検出された庫内温度(T1)が第1の低温閾値(Tc−P1)よりも低い状態が5分間続いた場合(第1の加熱条件)、或いは庫内温度(T1)が、第2の低温閾値(Tc−P2)よりも低い状態が2秒間続いた場合(第2の加熱条件)には(S8でYES)、温蔵モードが継続されていることを確認し(S9)、温蔵モードが継続されている場合には(S9でYES)、ヒータ44に通電して(S10)、ヒータ44により生成された暖気を冷温蔵室4に送り込む。ここでのP1としては、例えば2℃を挙げることができ、第1の低温閾値としては「16℃」を挙げることができる。また、P2としては、例えば「5℃」を挙げることができ、第2の低温閾値としては「13℃」を挙げることができる。すなわち、本実施例では、庫内温度センサ45により捉えられた庫内温度(T1)が16℃以下である状態が5分間継続した場合、或いは庫内温度(T1)が13℃以下である状態が2秒間継続した場合には(S8でYES)、ヒータ44に通電して加熱制御を行う(S10)。一方、庫内温度(T1)が上述の第1の低温閾値に基づく第1の加熱条件、或いは第2の低温閾値に基づく第2の加熱条件を満たさなかった場合には(S8でNO)、加熱制御は行われず、S3に戻る。
以上のように、このショーケース1では、庫内温度センサ45により捉えられた庫内温度(T1)が設定温度(Tc)以上である場合(S3で≧)には、S4〜S7に至る強制送給構造27による冷却制御を行う。尤も、庫内温度センサ45により捉えられた庫内温度(T1)が設定温度(Tc)以上である場合であっても(S3で≧)、それが第1閾値(Tc+d1)を下回る場合には、冷却制御は行われない(S4でNO)。同様に、庫内温度センサ45により捉えられた庫内温度(T1)が設定温度(Tc)よりも低い場合であっても(S3で<)、当該庫内温度(T1)が第1の低温閾値に基づく第1の加熱条件、或いは第2の低温閾値に基づく第2の加熱条件を満たさなかった場合には(S8でNO)、加熱制御は行われない。
ヒータ44に対する通電が始まると(S10)、該ヒータ44の下流側に配された暖気センサ46により、暖気の温度を測定し(S11)、当該センサ46による検出温度(T2)が、第3閾値(Tc+d3)未満(S11でNO)ではヒータ44に対する通電を継続し、検出温度(T2)が第3閾値(Tc+d3)以上となると(S11でYES)、ヒータ44に対する通電を中止する(S12)。ここでのd3としては、例えば5℃を挙げることができ、第3閾値としては「23℃」を挙げることができる。
冷温蔵室4内が過昇温状態に陥った場合には、強制送給構造27による冷却制御を行う。具体的には、庫内温度センサ45により検出された庫内温度(T1)が第1の高温閾値(Tc+P3)よりも高い状態が5分間続いた場合(第1の冷却条件)、或いは庫内温度(T1)が、第2の高温閾値(Tc+P4)よりも高い状態が2秒間続いた場合(第2の冷却条件)には(S13でYES)、温蔵モードが継続されていることを確認し(S14)、温蔵モードが継続されている場合には(S14でYES)、S3に戻る。ここでのP3としては、例えば2℃を挙げることができ、第1の高温閾値としては「20℃」を挙げることができる。また、P4としては、例えば5℃を挙げることができ、第2の高温閾値としては「23℃」を挙げることができる。すなわち、本実施例では、庫内温度センサ45により捉えられた庫内温度(T1)が20℃以上である状態が5分間継続した場合、或いは庫内温度(T1)が23℃以上である状態が2秒間継続した場合には(S13でYES)、S3に戻って、強制送給構造27の第2の送風機53を起動させて冷気を冷温蔵室4に送り込む。一方、庫内温度(T1)が上述の第1の高温閾値に基づく第1の冷却条件、或いは第2の高温閾値に基づく第2の冷却条件を満たさなかった場合には(S13でNO)、冷却制御は行われず、S10に戻る。温蔵モードが終了している場合には(S14でNO)、第1の送風機43を停止して、冷却モードに戻る。
以上のように本実施例に係るショーケースでは、冷蔵室3と冷温蔵室4とを仕切る仕切壁2に、冷温蔵室4に向けて暖気を送るための加熱構造26と、冷蔵室3内の冷気を冷温蔵室4に向けて強制的に送給するための強制送給構造27とを設けて、温蔵モードが選択されると、加熱構造26により冷温蔵室4に暖気が送給され、或いは強制送給構造27により冷温蔵室4に冷気が送給されるようにしたので、温蔵モードが選択された状態で冷温蔵室4の庫内温度が所定の設定温度よりも低い場合には、加熱構造26により暖気を冷温蔵室4内に送給することで冷温蔵室4内を加熱制御できることは勿論のこと、冷温蔵室4内の庫内温度が所定の設定温度よりも高い場合には、強制送給構造27により冷蔵室3内の冷気を送給することで冷温蔵室4内を冷却制御することができる。
このように、本実施例に係るショーケースでは、温蔵モードにおける冷却制御に、冷蔵室3内の冷気を利用して冷温蔵室4内を冷却する構造を採ったため、冷蔵室3と冷温蔵室4のそれぞれに冷却器を設置する構成に比べて、冷温蔵室4の冷却構造が格段に簡素に済み、製造コストを抑えて、温蔵モードにおける冷却能力を備えたショーケースをより安価に提供できる。また、このような構成からなるショーケース1は、特に冷温蔵室4の室内温度が15〜20℃の範囲に設定される弁当用のショーケース1として好適であり、例えば冬季においてエアコンで暖められた外部空気が冷温蔵室4内に侵入して、冷温蔵室4内の温度が上昇した場合であっても、強制送給構造27により、冷温蔵室4内に冷気を送り込んで冷却し、庫内および収納物を最適温度に保つことができる。
また、仕切壁2に、モード選択レバー36、ダンパ24、開閉機構25のみならず、加熱構造26と強制送給構造27とを設けて、モードの切換構造の全てを仕切壁2に集約配置したので、冷蔵室3、或いは冷温蔵室4のそれぞれに切換構造を設ける場合に比べて、冷蔵室3および冷温蔵室4の収容スペースのロスを小さくして、より大きな収容スペースを確保できる。
また、庫内温度センサ45により検出された庫内温度(T1)が第1の低温閾値(Tc−P1)よりも低温である状態が数分間継続する第1の加熱条件、或いは庫内温度センサ45により検出された庫内温度(T1)が、第2の低温閾値(Tc−P2)よりも低温である状態が数秒間継続する第2の加熱条件により、加熱制御を行うようにしたので、第1の加熱条件における低温閾値(Tc−P1)を設定温度に近い温度に設定した場合であっても、その継続時間を「5分」などの長時間に設定することで、上記のように頻繁に加熱制御が行われることを確実に防ぐことができる。また、第2の加熱条件における低温閾値(Tc−P2)を設定温度よりも極端に低く設定しておけば、その継続時間を「2秒」のように短時間に設定した場合であっても、上記のように頻繁に加熱制御が行われることはない。さらに、上記のような第2の加熱条件を設定しておくことにより、冷温蔵室4の庫内に急激に大量の冷気が流れ込むような突発的な状況に陥った場合にも、当該状況に適正に対応して加熱制御を行うことが可能となり、急激な温度変化にも適切に対応できる。二つの冷却条件に基づいて冷却制御を行う場合においても同様の作用効果を得ることができる。
温蔵モードが選択されると、加熱構造26を構成する第1の送風機43が常態的にオン制御され、該送風機43による送風により冷温蔵室4の庫内空気が循環されるような構成としたので、冷温蔵室4内を強制対流方式で冷却或いは加熱して、より効率的に冷温蔵室4内を冷却等することができる。
本発明における高温閾値や低温閾値などの閾値温度は、上記の実施例に記載したものに限られない。尤も、本発明における閾値温度は、収容対象物の種別に応じて、使用者が適宜に変更できるように構成されていることが好ましい。ヒータ44等の構成は、上記実施例に示したものに限定されない。