JP2017186654A - 耐硫化物応力腐食割れ性に優れた高強度熱間圧延線材 - Google Patents

耐硫化物応力腐食割れ性に優れた高強度熱間圧延線材 Download PDF

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将 高山
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Abstract

【課題】高強度で、耐SSC性に優れた熱間圧延線材を提供する。
【解決手段】所定の成分組成を満足し、下記式(1)で表されるK値が1.7〜10であり、水素量が0ppm超、1.0ppm以下である高強度熱間圧延線材。下記式(1)中、[ ]は、各元素の質量%での含有量を示す。
K値=1.2−4.0×[C]−0.9×[Si]+3.5×[Mn]+0.9×[Cr]+15.3×[V]−27.3×[Al] ・・・(1)
【選択図】なし

Description

本発明は、鋼線の製造に用いる熱間圧延線材に関する。詳細には、硫化水素を含むサワー環境で用いる部品またはフレキシブルライザーなどの補強材として有用な鋼線を製造するために用いる熱間圧延線材に関する。
石油の需要は、近年益々増大しており、海底油田の開発が行われている。油田開発では、原油を汲み上げるために、例えば、フレキシブルライザーが用いられる。フレキシブルライザーは、樹脂製パイプと鋼線を用いて製造され、鋼線は、樹脂製パイプの補強材として用いられる。そのため上記鋼線には、特に、降伏強さが900MPa以上の高強度であることが求められる。また、油田は、硫化水素を含むサワー環境下となるため、上記鋼線には、硫化物応力腐食割れ(Sulfide stress cracking;SSC)が抑制される特性(以下、耐SSC性ということがある)が求められる。耐SSC性は、硫化水素を含むサワー環境では、強度が低いほど向上することが知られているが、上記鋼線の素材となる熱間圧延線材には、高強度で、耐SSC性に優れることが要求される。
少量の硫化水素を含む環境においても優れた耐硫化物応力腐食割れ性を示し、高温での引張り特性にも優れたラインパイプ用のマルテンサイト鋼が特許文献1に提案されている。このラインパイプ用マルテンサイト鋼は、Crを10〜14%の範囲で含むいわゆる13%Cr鋼であり、C量を0.02%以下、およびN量を0.07%以下まで低減すると共に、Ni、Mo、さらには炭化物形成元素であるTi、ZrおよびTa等を適宜添加し、またNbおよび/またはVを適量添加するものである。
また、特許文献2には、降伏強さが900MPa以上の高強度で、耐SSC性に優れた熱間圧延線材が提案されている。この熱間圧延線材は、S量の平均値Save(質量%)とS量の最大値Smax(質量%)に基づいて算出される偏析度(Smax/Save)が適切に制御されているところに特徴がある。
特開平9−316611号公報 国際公開第2015/159650号公報
上記特許文献1に記載のラインパイプ用マルテンサイト鋼は、耐SSC性に優れているものの、C量が0.02%以下に抑えられているため、室温での降伏強さが低いと考えられる。一方、上記特許文献2では、Sの偏析度を制御するために、熱間圧延時における圧延条件を厳密に制御する必要がある。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、高強度で、耐SSC性に優れた熱間圧延線材を提供することにある。
上記課題を解決できた本発明に係る耐硫化物応力腐食割れ性に優れた高強度熱間圧延線材とは、
質量%で、
C:0.10〜0.7%、
Si:0%超、2.0%以下、
Mn:0.3〜2.0%、
Cr:0.05〜2.0%、
V:0.05〜0.5%、
P:0%超、0.02%以下、
S:0%超、0.008%以下、および
Al:0%超、0.05%以下を含有し、
残部が鉄および不可避不純物からなり、
下記式(1)で表されるK値が1.7〜10であり、
水素量が0ppm超、1.0ppm以下である点に要旨を有する。下記式(1)中、[ ]は、各元素の質量%での含有量を示す。
K値=1.2−4.0×[C]−0.9×[Si]+3.5×[Mn]+0.9×[Cr]+15.3×[V]−27.3×[Al] ・・・(1)
上記高強度熱間圧延線材は、更に、他の元素として、質量%で、下記(a)〜(d)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましい。
(a)Cu:0%超、0.5%以下。
(b)B :0%超、0.01%以下。
(c)Ti:0%超、0.01%以下、およびNb:0%超、0.2%以下から選択される少なくとも1種。
(d)Mo:0%超、1%以下。
本発明によれば、熱間圧延線材の成分組成および熱間圧延線材に含まれる水素量を適切に制御することによって、高強度で、耐SSC性に優れた熱間圧延線材を提供できる。
本発明者らは、鋼線の素材となる熱間圧延線材の強度を確保したうえで、耐SSC性を高めるために、鋭意検討を重ねた。その結果、成分組成を厳密に制御することによって線材の強度を確保したうえで、上記K値が所定の関係を満足するようにC、Si、Mn、Cr、V、およびAl量を制御し、且つ線材に含まれる水素量を所定値以下に低減すれば、線材の耐SSC性を改善できることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明の線材の成分組成について説明した後、上記K値および上記水素量について説明する。以下、%は、質量%を意味する。
本発明の熱間圧延線材は、C:0.10〜0.7%、Si:0%超、2.0%以下、Mn:0.3〜2.0%、Cr:0.05〜2.0%、V:0.05〜0.5%、P:0%超、0.02%以下、S:0%超、0.008%以下、およびAl:0%超、0.05%以下を含んでいる。
Cは、熱間圧延線材の強度を確保するために必要な元素であり、0.10%以上含有する。C量は、好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.25%以上である。しかし、C量が過剰になると、割れ感受性が高まり、耐食性が低下するため、耐SSC性が低下する。従って本発明では、C量は、0.7%以下、好ましくは0.65%以下、より好ましくは0.6%以下とする。
Siは、脱酸および固溶強化のために必要な元素であり、こうした効果を有効に発揮させるには、Si量は、0.05%以上とすることが好ましい。Si量は、より好ましくは0.06%以上、更に好ましくは0.07%以上である。しかし、Si量が増加するにつれて、不純物元素が粒界に偏析しやすくなるため、水素脆化を起こし、亀裂の進展を促進し、耐SSC性が低下する。従って本発明では、Si量は、2.0%以下とする。Si量は、好ましくは1.95%以下、より好ましくは1.90%以下、更に好ましくは1.85%以下である。
Mnは、焼入れ性を向上させ、熱間圧延線材の強度を高め、耐食性も向上させる元素である。Mn量が少なくなると、耐食性が劣るため、耐SSC性を改善できない。従って本発明では、Mn量は、0.3%以上とする。Mn量は、好ましくは0.40%以上、より好ましくは0.5%以上である。しかし、Mn量が過剰になると、靱性が低下し、割れ感受性が高まり、耐SSC性が低下する。従って本発明では、Mn量は、2.0%以下とする。Mn量は、好ましくは1.80%以下、より好ましくは1.6%以下である。
Crは、焼入れ性を高め、熱間圧延線材の強度を高めるために必要な元素である。また、Crは、耐食性を改善し、耐SSC性を向上させる作用も有している。従って本発明では、Cr量は、0.05%以上含有させる必要がある。Cr量は、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.3%以上である。しかし、Cr量が過剰になると熱間圧延線材の靱延性が低下し、過剰に生成したCr系炭窒化物を起点に亀裂進展しやすくなり、耐SSC性が劣化する。従って本発明では、Cr量は、2.0%以下とする。Cr量は、好ましくは1.95%以下、より好ましくは1.9%以下、更に好ましくは1.6%以下である。
Vは、鋼中のCと結合し、水素のトラップサイトとなる微細なVCを形成し、耐SSC性を改善する元素である。V量が少な過ぎると、VCの析出量が少なくなるため、水素トラップ能力が不足し、耐SSC性を改善できない。従って本発明では、V量は、0.05%以上含有させる必要がある。V量は、好ましくは0.08%以上、より好ましくは0.10%以上である。しかし、Vを過剰に含有すると熱間圧延線材の靱延性が低下し耐SSC性が低下する。従って本発明では、V量は、0.5%以下とする。V量は、好ましくは0.48%以下、より好ましくは0.45%以下である。
Pは、結晶粒界に偏析し、粒界強度を低下させ、水素による粒界破断を起こしやすくする元素であり、P量が過剰になると、耐SSC性が劣化する。従って本発明では、P量は、0.02%以下とする。P量は、好ましくは0.019%以下、より好ましくは0.018%以下である。P量は、できるだけ低減することが好ましいが、P量を0.0001%未満にするにはコスト高となるため、好ましくは0.0001%以上であればよい。
Sは、結晶粒界に偏析し、粒界強度を低下させ、水素による粒界破断を起こしやすくする元素である。また、Sは、MnSを生成し、破壊起点となるため、耐SSC性を低下させる元素である。特に、硫化水素を含むサワー環境下では、水素は熱間圧延線材に侵入しやすくなるため、MnSに水素が集中し、熱間圧延線材を脆化させるため、耐SSC性が低下する。従って本発明では、S量は、0.008%以下とする。S量は、好ましくは0.007%以下、より好ましくは0.006%以下である。S量は、できるだけ低減することが好ましいが、S量を0.0001%未満にするにはコスト高となるため、好ましくは0.0001%以上であればよい。
Alは、Siと同様、脱酸剤として作用し、熱間圧延線材の溶存酸素量を低下させるのに寄与する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、Al量は、0.001%以上含有することが好ましい。Al量は、より好ましくは0.002%以上であり、更に好ましくは0.003%以上である。しかし、Al量が過剰になると、腐食の要因となるAlNなどの介在物を生成し、耐食性が低下し耐SSC性が劣化する。従って本発明では、Al量は、0.05%以下とする。Al量は、好ましくは0.04%以下、より好ましくは0.03%以下である。
本発明に係る熱間圧延線材の成分組成は、上記の通りであり、残部は、鉄および不可避不純物である。
上記熱間圧延線材は、更に他の元素として、(a)Cu:0%超、0.5%以下、(b)B:0%超、0.01%以下、(c)Ti:0%超、0.01%以下、およびNb:0%超、0.2%以下から選択される少なくとも1種、(d)Mo:0%超、1%以下、
等を含有してもよい。
(a)Cuは、熱間圧延線材の表面に皮膜を形成し、水素の侵入を防ぎ、耐SSC性を向上させる元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、Cu量は、0.05%以上とすることが好ましい。Cu量は、より好ましくは0.10%以上、更に好ましくは0.12%以上である。しかし、Cuを過剰に含有させても添加効果は飽和するため、Cu量は0.5%以下とすることが好ましい。Cu量は、より好ましくは0.47%以下、更に好ましくは0.45%以下である。
(b)Bは、焼入れ性を向上させ、強度を高めるのに寄与する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、B量は、0.001%以上含有させることが好ましい。B量は、より好ましくは0.0015%以上、更に好ましくは0.002%以上である。しかし、B量が過剰になると、熱間圧延時に割れが発生しやすくなる。従って本発明では、B量は、0.01%以下が好ましい。B量は、より好ましくは0.0080%以下、更に好ましくは0.0070%以下である。
(c)TiおよびNbは、結晶粒を微細化し、亀裂の進展を抑制し、耐SSC性を改善する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、Ti量は、0.010%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.015%以上であり、更に好ましくは0.020%以上である。しかし、Tiを過剰に含有すると、粗大なTiNが生成し、水素脆化の起点となるため、Ti量は、0.01%以下が好ましい。Ti量は、より好ましくは0.095%以下、更に好ましくは0.090%以下である。NbもTi同様に結晶粒を微細化し、亀裂進展を抑制するため耐SSC性を向上させるのに寄与する。こうした効果を有効に発揮させるには、Nb量は、0.05%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.08%以上、更に好ましくは0.10%以上である。しかし、Nbを過剰に含有すると、靱性が低下し、亀裂が進展しやすくなり、耐SSC性が劣化することがある。従って本発明では、Nb量は、0.2%以下が好ましく、より好ましくは0.19%以下、更に好ましくは0.18%以下である。
(d)Moは、焼入れ性を向上させ、熱間圧延線材の強度を高めるのに作用する元素である。こうした効果を有効に発揮させるには、Mo量は、0.03%以上が好ましく、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.1%以上である。しかし、Mo量が過剰になると、靱性が低下し、割れが発生しやすくなり、耐SSC性が劣化する。従って本発明では、Mo量は、1%以下が好ましい。
以上、本発明の熱間圧延線材の成分組成について説明した。
本発明の熱間圧延線材は、成分組成を制御するだけでは不充分であり、下記式(1)で表されるK値が1.7〜10を満足する必要がある。下記式(1)中、[ ]は、各元素の質量%での含有量を示す。
K値=1.2−4.0×[C]−0.9×[Si]+3.5×[Mn]+0.9×[Cr]+15.3×[V]−27.3×[Al] ・・・(1)
上記K値は、熱間圧延線材に含まれる合金元素量と耐SSC性との関係を考慮して設定した値であり、各合金元素量の係数は、耐SSC性改善への寄与度を意味している。即ち、耐SSC性を改善するには、硫化水素を含むサワー環境下における耐食性と耐水素脆性を高めることが重要である。そして、本発明者らが検討したところ、熱間圧延線材に含まれる合金元素のうち、Mn、Cr、およびVは、いずれも耐SSC性を改善するのに寄与し、C、Si、およびAlは、いずれも耐SSC性を劣化させるのに作用することが分かった。具体的には、MnとCrは、熱間圧延線材の耐食性を向上させる作用を有し、Vは、水素トラップ効果によって水素をとらえて無害化させ、いずれも耐SSC性の改善に寄与する。Cは、耐食性を低下させ、Siは、不純物元素の粒界偏析を助長して亀裂の進展を促進し、Alは、破断の要因となるAlNなどの介在物を生成させる元素であり、いずれも耐SSC性を劣化させるのに作用する。
上記K値が1.7を下回ると、耐食性および水素トラップ能力が不足するため、硫化水素を含むサワー環境下では腐食によるピットが生成し、破壊起点となる。また、水素トラップ能力が不足すると水素脆化により早期に破断に至る。その結果、耐SSC性を改善できない。従って本発明では、上記K値を1.7以上とする。上記K値は、好ましくは2.5以上、より好ましくは3.3以上、更に好ましくは4.1以上である。しかし、上記K値が大きくなり過ぎると、Mn、CrおよびVの過剰添加による靱性の低下によって耐SSC性が低下する。従って本発明では、上記K値を10以下とする。上記K値は、好ましくは9.7以下であり、より好ましくは9.5以下である。
また、本発明の熱間圧延線材は、水素量が0ppm超、1.0ppm以下であることも重要である。即ち、硫化物応力腐食割れ(SSC)の発生原因の一つは水素であり、熱間圧延線材中に多量の水素が侵入すると、脆化し、破断する。ところで、熱間圧延線材は、必要により、金属組織をマルテンサイトにするため、焼入れ、焼戻しの熱処理が施される。そのため、この熱処理の過程で、水素は熱間圧延線材からある程度抜ける。しかし、水素は熱間圧延線材から全て抜けるわけではないため、熱間圧延線材に水素が多く含まれると、熱処理後の熱間圧延線材、および熱処理後の熱間圧延線材を伸線して得られる鋼線にも多くの水素が残存するため、硫化水素を含むサワー環境下では早期に破断に至る。従って熱間圧延線材に含まれる水素量が少ないほど、熱処理後の熱間圧延線材、および熱処理後の熱間圧延線材を伸線して得られる鋼線に残存する水素量が少なくなるため、耐SSC性を向上できる。こうした観点から、本発明では、熱間圧延線材に含まれる水素量を1.0ppm以下とする。水素量は、好ましくは0.9ppm以下、より好ましくは0.8ppm以下である。水素量は少ないほど好ましいが、0ppmに近づけるにはコストがかかるため、0.01ppm以上が好ましい。
次に、本発明の熱間圧延線材を製造する方法について説明する。
本発明の熱間圧延線材は、常法により上記成分組成を満足する鋼を溶製し、分塊圧延して得られた鋼片を加熱し、熱間圧延することにより製造できる。
上記熱間圧延は、熱間圧延後の載置温度が、850〜1000℃となるように行う。載置温度が850℃を下回ると、熱間圧延線材に含まれる水素量が多くなる傾向があり、耐SSC性を改善できない。従って上記載置温度は、850℃以上とする。上記載置温度は、好ましくは870℃以上、より好ましくは880℃以上である。しかし載置温度が高温になるほど、熱間圧延線材から水素が抜けやすくなるが、載置温度が高すぎると、脱炭が起こりやすくなる。従って上記載置温度は、1000℃以下とする。上記載置温度は、好ましくは990℃以下、より好ましくは980℃以下である。
載置後は、常法に従って巻取ることによって熱間圧延線材が得られる。熱間圧延線材の線径φは、例えば、10〜16mm程度である。
熱間圧延して得られた熱間圧延線材は、必要により、焼入れ、焼戻しなどの熱処理を行い、金属組織をマルテンサイトにすることが好ましい。焼入れは、例えば、850〜1000℃に加熱し、5〜15分間保持した後、室温まで冷却して行えばよい。冷却時の平均速度は、例えば、30〜100℃/秒とすることが好ましい。焼戻しは、例えば、400〜650℃で、15〜45分間加熱保持して行えばよい。
熱処理して得られた熱間圧延線材は、特に、硫化水素を含むサワー環境で用いられる部品またはフレキシブルライザーなどの補強材のように、耐SSC性が求められる鋼線を製造するための素材として用いることができる。
以上に説明した本発明の実施形態に係る熱間圧延線材の製造方法に接した当業者であれば、試行錯誤により、上述した製造方法と異なる製造方法により本発明に係る熱間圧延線材を得ることができる可能性がある。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前記および後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す成分組成を満足し、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼を溶製し、得られた溶鋼を鋳造し、鋼片を製造した。下記表1に示した成分組成と上記式(1)に基づいて、K値を算出し、算出結果を下記表1に示す。
なお、表1で線(−)を記載したものは、その成分組成が検出されなかったことを意味する。また、表1で「0.00」が記載された合金元素の成分量(例えば、鋼種SのCr量)は、当該合金元素が0.01%未満で含有されていることを示している。また、表1および後述の表2において、下線を伏した数値は、本発明の範囲から外れていることを示している。ただし、「−」については、本発明の範囲から外れていても下線を付していないことに留意されたい。
得られた鋼片を分塊圧延し、得られたビレットを、熱間圧延後の載置温度が下記表2に示す温度となるように熱間圧延して熱間圧延線材を製造した。得られた熱間圧延線材は、直径φ12mmである。
得られた熱間圧延線材に含まれる水素量を次の手順で測定した。
[水素量の分析]
上記熱間圧延線材を長さ150mmに切断した試験片を、ガスクロマトグラフィーで、室温から600℃まで昇温し、放出されたガスを分析し、放出ガスに含まれる水素量を測定した。測定結果を下記表2に示す。
次に、得られた熱間圧延線材に、焼入れ、焼戻しの熱処理を施して供試材を得た。焼入れは、850〜1000℃に加熱し、5〜15分間保持した後、平均冷却速度を30℃/秒以上で室温まで冷却して行った。焼戻しは、400〜650℃に加熱し、15〜45分間保持して行った。
熱処理して得られた供試材の強度および耐SSC性を次の手順で評価した。
[強度]
上記供試材から、JIS 14A号試験片を採取し、JIS Z2241(2011年)に基づいて引張試験を行い、降伏強さ(Yield Stress;YS)を測定した。測定結果を下記表2に示す。
本発明では、降伏強さが900MPa以上を高強度と判定し、合格とした。
[耐SSC性]
上記供試材から、NACE Standard TM0177−2005で規定されるMethod A法用の試験片を採取し、Method A法で供試材の耐SSC性を評価した。即ち、採取した試験片を、NaClを5.0質量%およびCH3COOHを0.5質量%含むSolution Aに浸漬し、該Solution AにH2Sガスを飽和させ、上記で測定した降伏強さ(YS)の80%の応力を付与し、破断までの時間を測定し、測定した時間に基づいて耐SSC性を評価した。測定結果を下記表2に示す。
本発明では、破断時間が720時間以上を耐SSC性に優れると判定し、合格とした。
なお、No.18は、降伏強さ(YS)が900MPa未満であったため、耐SSC性の評価は行わなかった。
下記表2から次のように考察できる。
No.2〜17は、本発明で規定する要件を満足する例であり、成分組成および水素量が適切に制御されているため、降伏強さが900MPa以上の高強度で、且つ硫化水素含む腐食環境で降伏強さの80%応力を負荷された条件下で、破断までの時間が720時間以上となり、優れた耐SSC性を有している。
これに対し、No.1、18〜30は、本発明で規定する要件を満足しない例であり、強度または耐SSC性のいずれか一方が劣っている。以下、詳細に説明する。
No.1は、熱間圧延後の載置温度が低かったため、熱間圧延線材に含まれる水素量が多くなった例であり、耐SSC性を改善できなかった。
No.18は、Cが少なく、降伏強さを確保できなかった。
No.19は、Cが多く、割れ感受性が高まったため、耐SSC性を改善できなかった。
No.20は、Siが多すぎた例であり、偏析が悪化したため、耐SSC性を改善できなかった。
No.21は、Mnが少なく、K値が小さすぎた例であり、耐食性が劣ったため、耐SSC性を改善できなかった。
No.22は、Mnが多く、K値が大きすぎた例であり、靱性が低下したため、耐SSC性を改善できなかった。
No.23は、Sが多く、粒界が脆化したため、耐SSC性を改善できなかった。
No.24は、Pが多く、粒界が脆化したため、耐SSC性を改善できなかった。
No.25は、Crが少なく、耐食性が低下したため、耐SSC性を改善できなかった。
No.26は、Crが多すぎた例であり、靱延性が低下し、過剰に生成したCr系炭窒化物を起点に亀裂が進展したため、耐SSC性を改善できなかった。
No.27は、Vが少なく、水素トラップ効果が得られなかったため、耐SSC性を改善できなかった。
No.28は、Alが多く、K値が小さすぎた例であり、腐食の要因となるAlNなどが多く生成したため耐食性が悪化し、耐SSC性を改善できなかった。
No.29は、K値が小さすぎた例であり、耐食性が劣化し、また水素トラップ効果が得られなかったため、耐SSC性を改善できなかった。
No.30は、K値が大きく、また熱間圧延線材に含まれる水素量が多くなった例であり、靱性が低下したため、耐SSC性を改善できなかった。
No.1〜6、11は、いずれも鋼種Eを用いた例であり、熱間圧延後の載置温度を変えている。これらの結果から明らかなように、熱間圧延後の載置温度を高くするほど、熱間圧延線材に含まれる水素量は少なくなることが分かる。
Figure 2017186654
Figure 2017186654

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C :0.10〜0.7%、
    Si:0%超、2.0%以下、
    Mn:0.3〜2.0%、
    Cr:0.05〜2.0%、
    V :0.05〜0.5%、
    P :0%超、0.02%以下、
    S :0%超、0.008%以下、および
    Al:0%超、0.05%以下を含有し、
    残部が鉄および不可避不純物からなり、
    下記式(1)で表されるK値が1.7〜10であり、
    水素量が0ppm超、1.0ppm以下であることを特徴とする耐硫化物応力腐食割れ性に優れた高強度熱間圧延線材。
    K値=1.2−4.0×[C]−0.9×[Si]+3.5×[Mn]+0.9×[Cr]+15.3×[V]−27.3×[Al] ・・・(1)
    [式(1)中、[ ]は、各元素の質量%での含有量を示す。]
  2. 更に、他の元素として、質量%で、
    Cu:0%超、0.5%以下を含有する請求項1に記載の高強度熱間圧延線材。
  3. 更に、他の元素として、質量%で、
    B :0%超、0.01%以下を含有する請求項1または2に記載の高強度熱間圧延線材。
  4. 更に、他の元素として、質量%で、
    Ti:0%超、0.01%以下、および
    Nb:0%超、0.2%以下から選択される少なくとも1種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の高強度熱間圧延線材。
  5. 更に、他の元素として、質量%で、
    Mo:0%超、1%以下を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の高強度熱間圧延線材。
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