JP2017179554A - 低パーティクル金属シリサイドスパッタリングターゲット及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Si母相中にMoSi2相が分散した構造のスパッタリングターゲットにおいて、スパッタリング中のパーティクル発生を効果的に抑制できるMoSi2相分散構造を有するスパッタリングターゲットを提供する。【解決手段】Si母相中に、MoSi2相を有するスパッタリングターゲットにおいて、MoSi2相が存在しない領域に存在できる円の最大直径が9.0μm以下、MoSi2相の最大径が15μm以下、MoSi2相の平均径が13μm以下となる組織構造とする。【選択図】図3

Description

本発明は、母相であるシリコン(Si)相中に、モリブデン(Mo)とSiとの化合物であるMoSi相が均一に分散したスパッタリングターゲット及びその製造方法に関し、特に、母相中に分散するMoSi相について微細かつ一様に、粗大な凝集体を形成することなく分散させることによってスパッタリング時におけるパーティクル数を低減したスパッタリングターゲットと、そのようなスパッタリングターゲットを製造するために有効な原料処理工程を含む製造方法に関するものである。
金属シリサイド材料は、電界効果トランジスタ(MOSFET)のゲート電極用材料、パワー半導体用材料、マスクブランクの遮光膜用材料等、様々な部分、用途において使用されている材料である。これらの用途においては、金属シリサイドを薄膜化したものが用いられるが、金属シリサイドは一般的に高融点材料であるため、目的の金属シリサイドの原料物質を目的の元素組成比で含むスパッタリングターゲットをスパッタリングして薄膜を形成することが多い。
このうち、相補型MOS(CMOS)回路のゲート電極等には、原子比でM/Si=2.0〜3.0(M:金属元素)程度の金属シリサイド材料が多く用いられるが、このようなシリサイド膜をスパッタリングによって形成する場合、原子比でM/Si=2.0〜3.0程度の組成を有する材料からなるスパッタリングターゲットが用いられる。特許文献1には、このようなスパッタリングターゲットの例として、ターゲットの組織がSi相とモリブデンとSiとのシリサイドであるMoSi相からなるスパッタリングターゲットが開示されているが、上記に示したような元素組成範囲ではMoSi相がスパッタ面の大部分を占め、それらの間にSi相が点在する形態の組織構造を有するものとなる。
上述したようなCMOS回路を含む半導体装置の大規模集積回路(LSI)等は、半導体基板に配線、電極、絶縁層等を順次積層パターニングして形成される。特定のパターン形状を有する層の形成は、パターンに対応したマスク層やパッシベーション層を形成するため、所望のパターン形状以外の不要部分をエッチングすることで形成されているが、このパターン形状は、対応した形状を有する露光マスクを用いたリソグラフィ技術を用いて形成されている。そして、リソグラフィに用いられる露光マスク(フォトマスク)は、露光に使用される光を透過する基板に、光を遮断(反射)する性質を有する薄膜をパターン形成して形成されている。
半導体製造のリソグラフィに使用される露光マスクのパターニングは、基板表面に形成した遮光性の薄膜をエッチングすることにより行われるが、所望のパターンを形成する基となり、表面の大部分に遮光性の薄膜を形成した状態のマスク用基板は、(フォト)マスクブランクと称されている。Moのシリサイドやタングステン(W)のシリサイド等の金属シリサイド材料は、ArFエキシマレーザ等の露光波長に対して適度な光学特性を有し、石英、ケイ酸塩ガラス等の基板材料に対して従来のCr系の薄膜材料よりも良好な密着特性を有することから、フォトマスク用の遮光性薄膜用材料としても好適に使用されている。特に、Moのシリサイドは、露光用光源に対して半透過性を有する膜として形成することで、薄膜部分を透過する光の位相をシフトさせて透過部と半透過部の境界部分を回折現象によって強調、つまり高解像度化するハーフトーン型マスクの位相シフト層として使用できる。また、Moのシリサイドは、組成、膜厚の調整や、他の積層膜等を組み合わせることにより、通常のバイナリマスクの遮光層としても使用できる。
このようなマスクブランク用のMoシリサイド膜も、シリサイドの原料物質を目的の元素組成比で含むスパッタリングターゲットをスパッタリングすることで形成されることが一般的であるが、マスクブランク用途では、原子比でMo/Si=3.0〜15.0程度のMoシリサイド材料が多く用いられている。Mo/Si組成がこのような範囲のものとしては、前述したゲート電極形成用のスパッタリングターゲットとは対照的にSi相を母相としてその間にMoSi相が点在して分散する形態の構造を有するものが公知である(特許文献2、特許文献3参照)。しかし、Moシリサイド層をスパッタリングによって形成する場合、如何なるターゲット構造であっても、スパッタリング時のパーティクル発生を抑制することが共通する技術課題となる。
前述した特許文献1のターゲット構造では、MoSi相がスパッタ面の大部分を占め、点在するSi相がそのスパッタレートの速さから陥没する形でエロ―ジョン表面を形成するため、その凹凸段差部分に再デポした膜の剥離、マイクロアーキングによる破損などによりパーティクルが発生すると考えられている。この現象は、低密度焼結体の場合の空隙においても同様であるため、パーティクル発生を抑制するためにはターゲット自体が高密度であることが要求される。特許文献2または3のようなターゲット構造では、スパッタ面の大部分をSi相が占め、MoSi相が点在する形態をとっており、スパッタ速度の速いSi相が先に減肉し、スパッタ速度の遅いMoSi相が取り残されて点在する形でエロージョンが進行する。したがって、特許文献1の構造と同様の理由によるパーティクル発生要因の他、エロージョンにより取り残されたMoSi相の先端が鋭利になってこれがマイクロアーキングの起点となったり、MoSi相そのものが周囲のSi相から脱離してパーティクル発生源となったりする等、この構造特有のパーティクル発生要因も考慮した対策が必要となる。
特許文献2および3では、ターゲットを高密度化するとともに、ターゲット組織中に存在するMoSi相の最大粒子径を20μm以下とし、粗大なMoSi粒子を含まないようにすることで、上述した課題に対応している。それに加えて、特許文献2では、スパッタリング面における単位面積当たりのMoSi相粒子数を特定の数以上に、具体的には0.01mm当たり20〜120程度にすることで、パーティクルの発生を抑制しようとしている。
しかしながら、ターゲット中に粗大粒子を含まないようにし、単位面積当たり所定の数のMoSi相粒子を含むとしても、MoSi粒子がターゲット組織中に分散している均一さの程度までは実質的に特定していることにならない。Si母材相中にMoSi相粒子が偏って存在していると、その箇所でアーキングを誘発し易くなり、パーティクルの発生へとつながるだけでなく、成膜される層の組成均一性にも悪影響を及ぼす。したがって、さらなるパーティクル発生の抑制のためには、ターゲット組織中へMoSi相粒子をより均一に分散させることを考慮しなければならないが、前述した特許文献2の他、特許文献1や3にもこのような観点から詳細な検討を行ったことまでは記載されていない。
また、特許文献4および5には、マスクブランクに使用されるMoシリサイド層のスパッタリング成膜時のターゲット配置や、スパッタ放電に用いるガス等の、プロセス手段と条件を工夫することによって、スパッタ時におけるパーティクルの発生を防止する技術について開示されている。しかし、これらには、使用するスパッタリングターゲットの組織構造に関しての詳細は記載されていない。これらの文献の技術で使用するスパッタリングターゲットとして、ターゲットの組織構造の制御によりスパッタリング時のパーティクル発生が抑制できるものを使用すれば、さらに効果的にMoシリサイド層形成時のパーティクル発生を防止することができ、有用であると考えられる。
回路パターンの微細化、それを実現するための露光波長の短波長化とともに、マスクブランクの遮光層、位相シフト層へ要求されるパーティクル、ピンホールに関する特性は、近年ますます厳しいものとなっている。特に、粗大なパーティクルは、回路パターンをエッチングによって形成した後の回路パターンの遮光性や半透過光の位相に局所的な影響が及ぶため、Moシリサイド層にそのようなパーティクルを含むマスクブランクは近年の高度に微細化されたプロセスにおいて使用することはできない。したがって、マスクブランクの遮光層や位相シフト層のスパッタ形成に際しては、パーティクルの発生が可能な限り排除されなければならない。
特許第3707622号公報 特許第4135357号公報 特許第4509363号公報 特許第4336206号公報 特開2015−067884号公報
本発明は、上記の問題に鑑み、Si母相中にMoSi相が分散した構造のスパッタリングターゲットにおいて、スパッタリング中のパーティクル発生を効果的に抑制できるMoSi相分散構造を有するスパッタリングターゲットを提供することを目的とする。併せて、本発明は、そのようなスパッタリングターゲットの構造の実現に有効なターゲット製造方法を提供することも目的とする。
上記課題を解決するために、本発明者は鋭意研究を行った結果、ターゲットのSi母相中に分散して存在するMoSi相粒子の粒径、単位面積当たりに存在する個数の他、さらにMoSi相粒子間に介在している母相空間の広さを適切に特定することで、MoSi相粒子の分散の均一性も適切な範囲に制御し、これらを特定することでパーティクルの発生の少ないターゲットが得られることを見出した。
このような知見に基づき、本発明は、以下の発明を提供するものである。
1)Si母相中に、MoSi相を有するスパッタリングターゲットであって、前記MoSi相が存在しない領域に存在できる円の最大直径が9.0μm以下であり、前記MoSi相の最大径が15μm以下であり、前記MoSi相の平均径が13μm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット、
2)前記スパッタリングターゲットのスパッタリング面内において、粒子径0.35μm以上の前記MoSi相の個数密度が、1×10mm−2以上であることを特徴とする、請求項1に記載のスパッタリングターゲット、
3)相対密度が99%以上であることを特徴とする、前記1)または2)に記載のスパッタリングターゲット、
4)Al、Cu、Fe、K、Na、Ni、WおよびZrの合計が2000ppm以下であることを特徴とする、前記1)〜3)のいずれか一に記載のスパッタリングターゲット、
5)前記スパッタリングターゲット全体として、3.0〜15.0のSi/Mo原子数比を有することを特徴とする、前記1)〜4)のいずれか一に記載のスパッタリングターゲット、
6)マスクブランクの遮光膜、または位相シフト膜の製造に用いられることを特徴とする、前記1)〜5)のいずれか一に記載のスパッタリングターゲット、
7)前記1)〜6)のいずれか一に記載のスパッタリングターゲットの製造方法であって、平均粒径1〜50μmのSi原料粉を用意する工程、平均粒径1〜50μmのMoSi原料粉を用意する工程、前記Si粉と前記MoSi粉を多重撹拌翼回転式媒体撹拌ミルにて0.5〜6時間粉砕、混合する工程、前記粉砕、混合した混合原料粉をホットプレスにより焼結する工程、を含むことを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法、
8)前記多重撹拌翼回転式媒体撹拌ミルにて粉砕、混合する工程を、回転速度50〜400rpmで、0.5〜10時間実施することを特徴とする、前記7)に記載のスパッタリングターゲットの製造方法、
9)前記1)〜6)のいずれか一に記載のスパッタリングターゲットの製造方法であって、平均粒径1〜50μmのSi原料粉を用意する工程、平均粒径1〜50μmのMoSi原料粉を用意する工程、前記MoSi粉のみをジェットミルにて粉砕する工程、前記粉砕したMoSi粉と前記Si粉を振動ミルにて粉砕、混合する工程、前記粉砕、混合した混合原料粉をホットプレスにより焼結する工程、を含むことを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法、
10)前記焼結を真空雰囲気中、温度800〜1400℃、面圧150〜400kgf/cmのホットプレスにより実施することを特徴とする、前記7)〜9)のいずれか一に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
本発明のスパッタリングターゲットは、Si母相中にMoSi相の粒子が分散した組織構造において、粗大なMoSi相粒子や凝集体を含まず、組織内にMoSi相粒子が均一に分散した構造を有しているため、スパッタリング時におけるパーティクルの発生を効果的に抑制することが可能であり、薄膜特性の高い均一性も期待できるものである。さらに、本発明のスパッタリングターゲットの製造方法によれば、上述した構造のスパッタリングターゲットの構造を効果的に実現することができる。これらは、マスクブランク等の高精細な薄膜パターンが要求される分野における薄膜製造用スパッタリングターゲットとして有用である。
ターゲット組織内のシリサイド相が存在しない領域に設定できる円とシリサイド相粒径の模式的概略図 本発明においてターゲットの組織観察を行う箇所 実施例1のSEM観察組織像の例 実施例2のSEM観察組織像の例 比較例1のSEM観察組織像の例 比較例2のSEM観察組織像の例
本発明のスパッタリングターゲットは、ターゲットの組織構造として、Si母相中に、MoSi相を有するものである。このような構造は、走査電子顕微鏡(SEM)や、金属顕微鏡等を用いたターゲットの表面の拡大像によって容易に識別することが可能である。ここで、「Si母相中に、MoSi相を有する」とは、典型的にはマトリックスとなるSi母相中に、MoSi相の粒子が分散点在して存在する形態をいうものであるが、本発明では、この分散点在の形態として、まず、シリサイド相が存在しない領域に存在できる円の最大直径が6.5μm以下であることを特定している。
上述した「シリサイド相が存在しない領域に存在できる円の最大直径」とは、図1に概略的に示すように、ターゲット表面の観察箇所において、観察像中の所定のSi母相領域101において、この領域内で最も近接するMoSi相粒子102の外縁に接する円を設定した場合、設定できる円の直径として最大のもの(Rmax)をいうものである。観察箇所については、MoSi相粒子の分散の均一性を考慮した上でターゲットのスパッタ面上で均等に多数設定すべきであるが、ターゲットのスパッタ面の全域にわたって漏れなく拡大像を観察することは現実的に不可能であるため、本発明では図2に示すように、ターゲットの中心部と、ターゲット半径をrとした場合にr/5の位置と4r/5の位置で周方向に90°間隔で均等に分割した8点の、計9箇所の位置で観察を行い、9箇所それぞれにおいて円の最大直径を求めて、それらのうち最大のものを本発明における「シリサイド相が存在しない領域に存在できる円の最大直径」とする。
その際の観察視野は、上述した9箇所のそれぞれで、視野内に十分な数の粒子が確認でき、かつ観察像から適切な精度で上記円の直径が評価できる適正な範囲に設定されるべきことは明らかである。観察視野が狭すぎる場合、視野内にターゲット内の粒子の分散構造が十分反映されない恐れがあり、観察視野が広すぎる場合、個々の粒子や粒子間空間の観察像が小さくなって粒子間空間の広さを正確に評価することが難しくなる。好ましい評価視野範囲として50〜500μm×50〜500μmの矩形領域を挙げることができ、本発明では評価値の算出に十分適正と考えられる190×190μmの視野を設定して観察を行っているが、これに制限されるものではない。
ターゲットのシリサイド相が存在しない領域に存在できる円の最大直径は、ターゲットのスパッタ面におけるMoSi相粒子の分散の均一性の程度の指標となる一つの評価値である。この数値が大きくなると、MoSi相粒子が存在せず母相のSi相のみが広く存在している領域がターゲットのスパッタ面上に存在し、そのことはMoSi相粒子が凝集または偏在していることを示す一つの目安ともなる。そのため、本発明のスパッタリングターゲットは、この数値が9.0μm以下であることを特定している。この数値が9.0μmを超えると、凝集または偏在したMoSi相粒子の影響でアーキングや異常放電が生じやすくなり、スパッタリング中に発生するパーティクルが増大する要因となる。このターゲットのシリサイド相が存在しない領域に存在できる円の最大直径は、8.0μm以下であることが好ましく、6.5μm以下であることがより好ましい。
上述したように、ターゲットのシリサイド相が存在しない領域に存在できる円の最大直径は、ターゲットのスパッタ面におけるMoSi相粒子の分散の均一性の程度の指標の一つとなるものではあるが、それのみでは、ターゲットのスパッタ面上のMoSi相粒子の分散の均一性を評価する値として十分でない。そこで、本発明では、MoSi相の最大径の範囲と、MoSi相の平均径の範囲とを併せて特定している。ここでいう「MoSi相の最大径」とは、周囲をSi母相によって囲まれたMoSi相粒子の面積について、同面積の円を想定した場合の直径として定義されるMoSi相粒子径のうち、観測された視野の中で最大のものを指していう値である。なお、MoSi相粒子の面積は、画像解析ソフトのピクセル解析によって行うことができる。また、「MoSi相の平均径」とは、上記で定義されるMoSi相粒子径の積算分布を取った場合に、分布が50%となる粒子径(メジアン径)を指していう値である。
ターゲットにおけるMoSi相の最大径は、ターゲット組織中に存在するMoSi相粒子の粗大な凝集体の有無の指標となるものであり、本発明ではこれが15μm以下であることを特定している。この値を超えるMoSi相粒子は、微細なMoSi相粒子が凝集して形成された粗大な凝集体であると考えられ、スパッタリング中に発生するパーティクルが増大する要因となるものである。MoSi相の最大径は10μm以下であることが好ましく、8.5μm以下であることがより好ましい。
さらに、ターゲット組織中ではMoSi相粒子の粗大な凝集体が存在しない上で、個々のMoSi相粒子の径も平均して微細なものであることが必要である。ターゲットにおけるMoSi相の平均径は、個々のMoSi相粒子の径が平均して微細であることの一つの指標となるものであり、本発明ではこれが13μm以下であることを特定している。この値を超えると、母相中に存在するMoSi相粒子が平均的に粗大であるということになり、スパッタリング中に発生するパーティクルが増大する要因となる。MoSi相の平均径は8μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましい。なお、MoSi相粒子の最大径、平均とも、これらを評価する場合の観察箇所は、MoSi相が存在しない領域に存在できる円の最大直径を評価する際の箇所と同様である。
本発明のスパッタリングターゲットのスパッタリング面内におけるMoSiシリサイド相の個数密度は、1×10mm−2以上であることが好ましい。この「シリサイド相の個数密度」とは、単位面積中において、粒子径が0.35μm以上のMoSi相粒子の個数を表すものであり、この値が少ないとMo組成が極端に少なくなり、良好な特性を有するシリサイド層を形成できなくなる恐れがある。MoSiシリサイド相の個数密度は、2×10mm−2以上であることよりが好ましい。MoSiシリサイド相の個数密度の評価もターゲット表面の拡大観察像から行われるが、この場合も視野内に十分な数の粒子が確認でき、かつ観察像から適切な精度でMoSiシリサイド相の個数が認識評価できる観察視野を設定して観察を行うべきことは明らかである。前述したとおり、好ましい評価視野範囲として50〜500μm×50〜500μmの矩形領域を挙げることができるが、本発明では190×190μmの視野を設定して観察を行っているが、これに制限されるものではない。
また、本発明のスパッタリングターゲットは、相対密度が99.0%以上であることが好ましい。前述したとおり、ターゲットの相対密度が低いとターゲット組織内に存在する空隙部分がエロージョンの進行とともにスパッタ表面に露出し、この部分でアーキングや異常放電が生じてスパッタリング中のパーティクル発生が増加する要因となる。したがって、ターゲットの相対密度は高い方が好ましく、99.5%以上、さらには99.9%以上であることがより好ましい。本発明における相対密度は、以下の式で表されるように、アルキメデス法によって評価されるSi−Moの測定評価密度の、Si−Moの理論密度に対する割合で示すものである。
式:相対密度=(アルキメデス密度/理論密度)×100(%)
ここで、Si−Moの理論密度は、ターゲット中のMo原子の割合をX(%)とし、さらにSiの密度と原子量をそれぞれρSiとZSi、MoSiの密度と分子量をそれぞれρMoSi2とZMoSi2とした場合、以下の式によって表される。
式:理論密度={ZSi×(100−3X)+ZMoSi2×X}/{(100−3X)×ZSi/ρSii+X×ZMoSi2/ρMoSi2
この式に表されるとおり、理論密度の計算では、ターゲットがSiとMoSiの2相からなる理想的な組織構造を想定している。本発明では、各々の相の密度と原子・分子量に、ρSi=2.33g/cm、ZSi=28.09、ρMoSi2=6.24g/cm、ZMoSi2=152.12という値を用いる。
ターゲット内に不純物元素が残存していると、成膜されるシリサイド層に不純物として取り込まれるため好ましくないことはいうまでもない。本発明のスパッタリングターゲットでは、Si、MoSiにおける主要な不純物である、Al、Cu、Fe、K、Na、Ni、WおよびZrの合計が2000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。
本発明のスパッタリングターゲットは、好ましくはターゲット全体で3.0〜15.0のSi/Mo原子数比を有しており、そのようなSi/Mo組成範囲を有するMoシリサイド層を、スパッタリング時のパーティクル発生を低減しつつ形成できるものである。前述したとおり、マスクブランクにおける遮光膜、または位相シフト膜として、Si/Mo原子数比が3.0〜15.0の範囲のMoシリサイド層が多く用いられている。また、マスクブランクの遮光膜や位相シフト膜は、パーティクルの混入が極力排除されたものでなければならない。したがって、本発明のスパッタリングターゲットは、マスクブランクの遮光膜や位相シフト膜の形成用途に好適に使用できる。実用上の観点から、Si/Mo原子数比は15以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましい。下限についても、Si/Mo原子数比は3以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
本発明のスパッタリングターゲットは、製造方法を特段限定するものでなく、上述した特性をターゲットに与えられるものであれば如何なる手段を適用したものであっても良い。しかし、上述したターゲット特性を効果的に達成できる方法として、以下に示すように、原料相を強力に粉砕、攪拌する工程を含む、焼結による製造方法を好適に適用することができる。
まず、スパッタリングターゲットの原料として、平均粒径1〜50μmのSi原料粉、平均粒径1〜50μmのMoSi原料粉を用意する。Si原料粉は、焼結後のスパッタリングターゲットにおいてSi母相の基となり、MoSi原料粉はその中で分散するMoSi相粒子の基となる。そして、Si母相中にMoSi相粒子が均一に微細分散した焼結体構造とするために、これらの原料粉を、多重攪拌翼回転式媒体攪拌ミルにて粉砕、混合することが好ましい。この形式の媒体撹拌ミルは、アトライターとも称され、容器内に充填した原料粉と粉砕媒体とを、回転軸から突出する複数の攪拌翼(攪拌ピン)を容器内で回転させることによって強力に粉砕、混合するものであり、ドラム状の容器が回転することで内部の原料粉を媒体によって粉砕混合する一般的なボールミルよりも微細で均一な混合粉を得る効果が高いものである。
多重攪拌翼回転式媒体攪拌ミルによってSi原料粉とMoSi原料粉を粉砕、混合する場合、セラミック製の媒体を用い、回転速度50〜400ppm、処理時間0.5〜10時間といった条件で処理を行うことが好ましい。また、上述した粉砕、混合工程は、所望の粉砕、混合状態が得られるものであれば、他の手段を用いたものであっても良い。例えば、振動ミルによる原料粉末の粉砕と混合を適切な条件によって行い、さらに適切な混合粉の分級処理を行うことで焼結用の混合原料粉を得ても良い。
次に、得られた混合原料粉を、所定の形状の型に充填し、ホットプレスを行って焼結体を形成する。ホットプレスは、真空雰囲気中、温度800〜1400℃、面圧150〜400kgf/cmといった条件で行うことができる。温度や圧力がこれよりも低いと十分な密度を有する焼結体を形成し難くなり、これよりも高いと焼結中に粗大な粒成長が生じ、MoSi相粒子が均一で微細に分散した組織構造を得難くなるため好ましくない。得られた焼結体は型から取り出し、スパッタリングターゲットとするために、必要に応じて切削等の加工を行っても良い。
上述した技術手段や製造条件の範囲、または後述する実施例における具体例も併せて参照すれば、必要に応じて適宜製造条件等を調整することにより、本発明の特性を具備したスパッタリングターゲットを過度の試行錯誤を伴うことなく製造できることは、当業者にとって明らかである。
本発明を実施例、比較例に基づいて具体的に説明する。以下の実施例、比較例の記載は、あくまで本発明の技術的内容の理解を容易とするための具体例であり、本発明の技術的範囲はこれらの具体例によって制限されるものでない。
(実施例1)
Si原料粉として、純度5N、平均粒径7μmのSi粉末を用意し、MoSi原料粉として、純度4N、平均粒径9μmのMoSi粉を用意した。これら二者の原料粉を、原子比でMo/Si=6.7となるように、ジルコニア製の媒体とともに媒体攪拌ミルの攪拌容器内へ投入して4時間の処理を行った。得られた混合原料粉をグラファイト製の型に充填し、真空雰囲気下、温度1300℃、面圧300kgf/cmにてホットプレスして焼結体を得た。型から取り出した焼結体を、直径164mm、厚さ5mmの円板状スパッタリングターゲットとした。
得られたスパッタリングターゲットのスパッタ表面について、走査電子顕微鏡を用いて組織像観察を行った。図3は、実施例1で観察されたSEM観察による組織像の例である。この組織像に見られるように、ターゲットの組織は、黒く観察されるSiからなる母相中に、白く観察されるMoSi相粒子が、粗大な凝集体を形成することなく、均一で微細に分散した構造を示している。なお、組織像において黒く観察される部分がSi、白く観察される部分がMoSi相粒子からなることは、エネルギー分散型X線分光法(EDX)による分析にて確認している。組織像の観察は、ターゲットの中心部と、ターゲット半径をrとした場合にr/5の位置と4r/5の位置で周方向に90°間隔で均等に分割した8点の、計9箇所の位置で行った。これらの結果から、MoSi相が存在しない領域に存在できる円の最大直径は6.5μm、MoSi相の最大径は8.5μm、MoSi相の平均径は7.1μmであった。さらに、シリサイド相の個数密度は2×10mm−2、ターゲットの相対密度は99.9%であった。また、ターゲットの元素分析を行ったところ、ガス成分以外の不純物量は合計1000ppm以下であり、良好な結果が得られた。
次に、上述した実施例1のスパッタリングターゲットについて、スパッタリング性能に関する評価試験を行った。得られたスパッタリングターゲットをスパッタリング装置のカソードに装着し、0.3Paのアルゴン(Ar)雰囲気中で1kWの電力をターゲットへ印加することにより、スパッタリングを実施した。スパッタリングは3.5kWhの間連続的に行い、その間、一定の間隔毎に20秒間の成膜を試料基板に対して行い、得られた試料基板上に形成されたMoシリサイド薄膜中に観測される粒径0.25〜3.0μmのパーティクル数を評価することで、ターゲットのスパッタリング性能の判断を行った。
この評価結果から、バーンイン後、スパッタリングが安定した後に恒常的に発生するパーティクル数の平均値の目安として、1.5kWh以降のターゲットライフにおいて発生したパーティクルの数として評価された値は10個以下であり、ターゲットライフを通じて良好な性能が得られることが確認できた。
(実施例2)
Si原料粉として、純度5N、平均粒径7μmのSi粉末を用意し、MoSi原料粉として、純度4N、平均粒径9μmのMoSi粉を用意した。このうち、MoSi粉についてはジェットミルを用いて平均粒径4.5μmまで粉砕した。Si粉末と前記粉砕処理後のMoSiの両原料粉を、原子比でMo/Si=6.7となるように、モリブデン製の媒体と共に振動ミルの撹拌容器内へ投入し、振動ミルにより周波数800cpmで1時間混合した。次いで、得られた混合原料粉を#200の篩で分級した上でグラファイト製の型に充填し、真空雰囲気下にてホットプレスして焼結体を得た。型から取り出した焼結体を、直径164mm、厚さ5mmの円板状スパッタリングターゲットとした。
得られたスパッタリングターゲットについて、実施例1と同様にして組織像の観察を行った。図4は、実施例2で観察されたSEM観察による組織像の例である。この組織像では、一部で凝集した組織と見られるMoSi相が観察されるものの、全体としてはMoSi相粒子が微細に分散した組織構造を示している。この実施例2におけるMoSi相が存在しない領域に存在できる円の最大直径は8.1μm、MoSi相の最大径は9.8μm、MoSi相の平均径は8.2μmであった。また、シリサイド相の個数密度は1.5×10mm−2、ターゲットの相対密度は99.9%であり、ターゲットの元素分析によるガス成分以外の不純物量は合計100ppmであり、良好な結果が得られた。そして、この実施例2のスパッタリングターゲットについても実施例1と同様にスパッタリング性能に関する評価を行ったところ、パーティクル数は20個以下という結果となった。
(実施例3)
Si原料粉として、純度5N、平均粒径7μmのSi粉末を用意し、MoSi原料粉として、純度4N、平均粒径9μmのMoSi粉を用意した。これら二者の原料粉を、原子比でMo/Si=6.7となるように、ジルコニア製の媒体とともに媒体攪拌ミルの攪拌容器内へ投入して1時間の処理を行った。得られた混合原料粉をグラファイト製の型に充填し、真空雰囲気下、温度1300℃、面圧300kgf/cmにてホットプレスして焼結体を得た。型から取り出した焼結体を、直径164mm、厚さ5mmの円板状スパッタリングターゲットとした。
得られたスパッタリングターゲットについて、実施例1と同様にして組織像の観察を行ったところ、この実施例では、微細に解砕・粉砕されたMoSi相が均一に分散した形態の組織が観察されたが、実施例2と類似した凝集部分も散見された。この実施例3におけるMoSi相が存在しない領域に存在できる円の最大直径は8.1μm、MoSi相の最大径は9.9μm、MoSi相の平均径は8.0μmであった。また、シリサイド相の個数密度は1.5×10mm−2、ターゲットの相対密度は99.9%であり、ターゲットの元素分析によるガス成分以外の不純物量は合計1000ppm以下であり、良好な結果が得られた。そして、この実施例3のスパッタリングターゲットについても実施例1と同様にスパッタリング性能に関する評価を行ったところ、パーティクル数は20個以下という結果となった。
(実施例4)
Si原料粉として、純度5N、平均粒径7μmのSi粉末を用意し、MoSi原料粉として、純度4N、平均粒径9μmのMoSi粉を用意した。これら二者の原料粉を、原子比でMo/Si=6.7となるように、ジルコニア製の媒体とともに媒体攪拌ミルの攪拌容器内へ投入して10時間の処理を行った。得られた混合原料粉をグラファイト製の型に充填し、真空雰囲気下にてホットプレスして焼結体を得た。型から取り出した焼結体を、直径164mm、厚さ5mmの円板状スパッタリングターゲットとした。
得られたスパッタリングターゲットについて、実施例1と同様にして組織像の観察を行ったところ、この実施例では、実施例1と類似したMoSiが微細均一に分散した組織が見られた。この比較例5におけるMoSi相が存在しない領域に存在できる円の最大直径は6.2μm、MoSi相の最大径は8.4μm、MoSi相の平均径は7.0μmであった。また、シリサイド相の個数密度は2×10mm−2、ターゲットの相対密度は99.9%であった。しかしながら、ターゲットの元素分析の結果は、媒体攪拌ミル内壁または媒体成分が由来と考えられるZrやFe等の不純物が比較的多く観測され、ガス成分を除くそれら不純物の合計が3000ppmを超えるものとなった。そして、この比較例2のスパッタリングターゲットについて実施例1と同様にスパッタリング性能に関する評価を行ったところ、パーティクル数については10個以下という結果であった。
(比較例1)
Si原料粉として、純度5N、平均粒径7μmのSi粉末を用意し、MoSi原料粉として、純度4N、平均粒径9μmのMoSi粉を用意した。次に、これらの原料を熱処理して脱酸し、次いで、得られた両原料粉を、原子比でMo/Si=6.7となるように、モリブデン製の媒体と共に振動ミルの撹拌容器内へ投入し、振動ミルにより周波数800cpmで1時間混合した。得られた混合原料粉をグラファイト製の型に充填し、真空雰囲気下にてホットプレスして焼結体を得た。型から取り出した焼結体を、直径164mm、厚さ5mmの円板状スパッタリングターゲットとした。
得られたスパッタリングターゲットについて、実施例1と同様にして組織像の観察を行った。図5は、比較例1で観察されたSEM観察による組織像の例である。この組織像では、Si母相中のMoSi相粒子が全般に平均して粗大であり、多数の凝集体を形成して分散している傾向を示している。この比較例1におけるMoSi相が存在しない領域に存在できる円の最大直径は10.5μm、MoSi相の最大径は19.7μm、MoSi相の平均径は18.7μmであった。また、シリサイド相の個数密度は1×10mm−2、ターゲットの相対密度は99.9%であり、ターゲットの元素分析によるガス成分以外の不純物量は合計50ppm以下であった。そして、この比較例1のスパッタリングターゲットについて実施例1と同様にスパッタリング性能に関する評価を行ったところ、パーティクル数は60個以上となった。
(比較例2)
Si原料粉として、純度5N、平均粒径7μmのSi粉末を用意し、MoSi原料粉として、純度4N、平均粒径9μmのMoSi粉を用意した。これらのうち、MoSi原料粉についてセラミックス製の媒体とともに媒体攪拌ミルの容器内へ投入し、媒体攪拌ミルによる粉砕処理を1時間行った。次いで、得られたMoSi原料粉とSi原料粉とを原子比でMo/Si=6.7となるように、十分な時間手混合した。得られた混合原料粉をグラファイト製の型に充填し、真空雰囲気下にてホットプレスして焼結体を得た。型から取り出した焼結体を、直径164mm、厚さ5mmの円板状スパッタリングターゲットとした。
得られたスパッタリングターゲットについて、実施例1と同様にして組織像の観察を行った。図6は、比較例2で観察されたSEM観察による組織像の例である。この組織像では、Si母相中に無数のMoSi相の一次粒子が連続的に凝集して形成される粒径数100μmを超える巨大な凝集体が観察される。この比較例2におけるMoSi相が存在しない領域に存在できる円の最大直径は15.7μm、MoSi相の最大径は120μm、MoSi相の平均径は25μmであった。また、シリサイド相の個数密度は1×10mm−2、ターゲットの相対密度は99.9%であり、ターゲットの元素分析によるガス成分以外の不純物量は合計50ppm以下であった。そして、この比較例2のスパッタリングターゲットについて実施例1と同様にスパッタリング性能に関する評価を行ったところ、パーティクル数は2500個以上となった。
(比較例3)
Si原料粉として、純度5N、平均粒径7μmのSi粉末を用意し、MoSi原料粉として、純度4N、平均粒径9μmのMoSi粉を用意し、これらをそのまま原子比でMo/Si=6.7となるように、十分な時間手混合した。得られた混合原料粉をグラファイト製の型に充填し、真空雰囲気下にてホットプレスして焼結体を得た。型から取り出した焼結体を、直径164mm、厚さ5mmの円板状スパッタリングターゲットとした。
得られたスパッタリングターゲットについて、実施例1と同様にして組織像の観察を行ったところ、この実施例では、視野内に存在するMoSiのサイズが大きく、さらに非常に大きな凝集粒も確認でき、その内部にはMoSi粒で埋まらなかったポア状の部分が観察された。この比較例3におけるMoSi相が存在しない領域に存在できる円の最大直径は20.1μm、MoSi相の最大径は100μm、MoSi相の平均径は25μmであった。また、シリサイド相の個数密度は1×10mm−2、ターゲットの相対密度は99.9%であり、ターゲットの元素分析によるガス成分以外の不純物量は合計50ppm以下であった。そして、この比較例2のスパッタリングターゲットについて実施例1と同様にスパッタリング性能に関する評価を行ったところ、パーティクル数は300個以上となった。
(比較例4)
Si原料粉として、純度5N、平均粒径7μmのSi粉末を用意し、MoSi原料粉として、純度4N、平均粒径9μmのMoSi粉を用意し、これらを原子比でMo/Si=6.7となるように、V型混合機のそれぞれの投入口へ投入して混合した。得られた混合原料粉をグラファイト製の型に充填し、真空雰囲気下にてホットプレスして焼結体を得た。型から取り出した焼結体を、直径164mm、厚さ5mmの円板状スパッタリングターゲットとした。
得られたスパッタリングターゲットについて、実施例1と同様にして組織像の観察を行ったところ、この実施例では、比較例3と類似した組織が観察された。この比較例4におけるMoSi相が存在しない領域に存在できる円の最大直径は20.3μm、MoSi相の最大径は80μm、MoSi相の平均径は20μmであった。また、シリサイド相の個数密度は1×10mm−2、ターゲットの相対密度は99.9%であり、ターゲットの元素分析によるガス成分以外の不純物量は合計50ppm以下であった。そして、この比較例2のスパッタリングターゲットについて実施例1と同様にスパッタリング性能に関する評価を行ったところ、パーティクル数は200個以上となった。)
これらの結果を表1にまとめて示す。
本発明は、Si母相中にMoSi相の粒子が分散した構造において、粗大なMoSi相粒子や凝集体を含まず、組織内にMoSi相粒子が均一に分散した構造を有し、スパッタリング時におけるパーティクルの発生を効果的に抑制することが可能なスパッタリングターゲットを提供するものである。このようなスパッタリングターゲットは、高精細でパーティクルの混入が許されない半導体装置製造時の回路パターン露光用フォトマスクブランクの遮光層、または位相シフト層のスパッタリング成膜等に好適である。

Claims (10)

  1. Si母相中に、MoSi相を有するスパッタリングターゲットであって、前記MoSi相が存在しない領域に存在できる円の最大直径が9.0μm以下であり、前記MoSi相の最大径が15μm以下であり、前記MoSi相の平均径が13μm以下であることを特徴とするスパッタリングターゲット。
  2. 前記スパッタリングターゲットのスパッタリング面内において、粒子径0.35μm以上の前記MoSi相の個数密度が、1×10mm−2以上であることを特徴とする、請求項1に記載のスパッタリングターゲット。
  3. 相対密度が99%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のスパッタリングターゲット。
  4. Al、Cu、Fe、K、Na、Ni、WおよびZrの合計が2000ppm以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
  5. 前記スパッタリングターゲット全体として、3.0〜15.0のSi/Mo原子数比を有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
  6. マスクブランクの遮光膜、または位相シフト膜の製造に用いられることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットの製造方法であって、
    平均粒径1〜50μmのSi原料粉を用意する工程、
    平均粒径1〜50μmのMoSi原料粉を用意する工程、
    前記Si粉と前記MoSi粉を多重撹拌翼回転式媒体撹拌ミルにて粉砕、混合する工程、
    前記粉砕、混合した混合原料粉をホットプレスにより焼結する工程、
    を含むことを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
  8. 前記多重撹拌翼回転式媒体撹拌ミルにて粉砕、混合する工程を、回転速度50〜400rpmで、0.5〜10時間実施することを特徴とする、請求項7に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
  9. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットの製造方法であって、
    平均粒径1〜50μmのSi原料粉を用意する工程、
    平均粒径1〜50μmのMoSi原料粉を用意する工程、
    前記MoSi粉のみをジェットミルにて粉砕する工程、
    前記粉砕したMoSi粉と前記Si粉を振動ミルにて粉砕、混合する工程、
    前記粉砕、混合した混合原料粉をホットプレスにより焼結する工程、
    を含むことを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
  10. 前記焼結を真空雰囲気中、温度800〜1400℃、面圧150〜400kgf/cmのホットプレスにより実施することを特徴とする、請求項7〜9のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
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