JP2017166947A - ガス検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】極低濃度のガス成分の選択的かつ高感度な検出を繰り返し行うことを可能にしたガス検出装置を提供する。【解決手段】実施形態のガス検出装置1は、被検出ガス分子2を含む検出対象ガス3を捕集する捕集部10と、センサー部と、センサー部に設けられた有機物プローブとをそれぞれ有する複数の検出セルを備え、捕集部で捕集された被検出ガス分子を有機物プローブで捕捉する検出器20と、被検出ガス分子2が複数の検出セルの有機物プローブに捕捉されることにより生じる検出信号の強度差に基づく信号パターンにより被検出ガス分子を識別する識別器30と、被検出ガス分子を捕捉した有機物プローブに熱を印加し、有機物プローブから被検出ガス分子を脱離させる再生部40とを具備する。【選択図】図1

Description

本発明の実施形態は、ガス検出装置に関する。
近年、大気汚染による地球環境問題が顕在化し、工場や車からの排出ガスの規制強化を背景とし、ガス検出機器の高感度化が求められている。大気汚染にかかわる環境基準では、例えばNOについては40ppb(parts per billion)以下であることが基準とされていることから、ppbオーダーの極微量ガス成分の検出が求められている。また、環境問題とは別に、防衛の世界ではNBC(核:N、バイオ:B剤、化学剤:C剤)物質に対する正確で迅速な分析手法の開発が課題となっている。その中でも、C剤については地下鉄サリン事件に見られるように、人体への影響が極めて強い有毒ガスを迅速に察知することが必要とされ、二次被害を防ぐには極低濃度のガス成分をリアルタイムに検出する必要がある。比較的濃度が高いガス成分の検出方法としては種々の方法が知られているが、極低濃度に相当するppb(十億分の1)からppt(parts per trillion)(一兆分の1))の濃度では検出方法が限られている。
例えば、災害現場やテロ行為が行われた現場等においては、極めて微量のガス成分を検出することで、事前に危険性を察知することが望まれている。極低濃度のガス成分は、研究施設内の大型機器を利用して検出する場合が多い。このような場合、ガスクロマトグラフィーや質量分析計のような高価で重量と容積の大きな設置型装置が必要となる。出先で直接測定したい場合、生物的な反応機構を利用して検出する簡易測定法に頼ることになるが、保存期限や温度管理、ガス成分の有無の判定に限られる等、多くの問題点がある。このような点から、極低濃度のガス成分をリアルタイムに検出することが可能な装置、すなわち重量や容積が小さくて携帯性に優れると共に、pptからppbオーダーの極低濃度のガス成分を選択的にかつ高感度に検出することが可能な装置が求められている。
低濃度のガス成分の検出素子としては、例えばカーボンナノ構造体の表面を特定物質と選択的に反応または吸着する有機物質等で表面修飾した導電層を有し、カーボンナノ構造体の表面に付着したガス成分により変化する電位差等を測定する素子が知られている。このような検出素子では、例えば空気中から取得したガス中に検出対象のガス成分と類似の成分等が不純物として混入している場合に、検出対象のガス成分を正確に検出できないおそれがある。さらに、検出プローブとして機能する有機物質が検出対象のガス成分を強く吸着すると、その後にガス成分の検出を行うことができない。すなわち、検出素子を繰り返し使用することができなくなる。そこで、極低濃度のガス成分の選択的かつ高感度な検出を繰り返し行うことが可能な装置が求められている。
特開2010−019688号公報 特開2010−139269号公報 特開2015−515622号公報 米国特許出願公開第2013/0018559号明細書
本発明が解決しようとする課題は、極低濃度のガス成分の選択的かつ高感度な検出を繰り返し行うことを可能にしたガス検出装置を提供することにある。
実施形態のガス検出装置は、被検出ガス分子を含む検出対象ガスを捕集する捕集部と、センサー部と、前記センサー部に設けられた有機物プローブとをそれぞれ有する複数の検出セルを備え、前記捕集部で捕集された前記被検出ガス分子を前記有機物プローブで捕捉する検出器と、前記被検出ガス分子が前記複数の検出セルの前記有機物プローブに捕捉されることにより生じる検出信号の強度差に基づく信号パターンにより前記被検出ガス分子を識別する識別器と、前記被検出ガス分子を捕捉した前記有機物プローブに熱を印加し、前記有機物プローブから前記被検出ガス分子を脱離させる再生部とを具備する。
実施形態のガス検出装置を示すブロック図である。 実施形態のガス検出装置における検出器の構成を示す図である。 実施形態のガス検出装置による複数の検出セルの一例を示す図である。 図3に示す複数の検出セルによる被検出ガス分子の検出結果の一例を示す図である。 図2に示す検出器における検出セルの構成例を示す図である。 実施形態のガス検出装置の有機物プローブによる被検出ガス分子の吸着および脱離を確認するドレイン電流を説明するための図である。
以下、実施形態のガス検出装置およびガス検出方法について、図面を参照して説明する。なお、各実施形態において、実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、その説明を一部省略する場合がある。図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各部の厚さの比率等は現実のものとは異なる場合がある。
図1は第1の実施形態のガス検出装置を示すブロック図である。図1に示すガス検出装置1は、例えばガス発生元から発生した被検出ガス分子(被検出物)2を含む検出対象ガス3から被検出ガス分子2を検出する装置であり、捕集部10と検出器20と識別器30とを備えている。検出器20は、再生部40を有している。被検出ガス分子2を含む検出対象ガス3は、まずガス検出装置1の捕集部10で捕集される。捕集部10は、検出対象ガス3の捕集口を有し、ガス流路11を介して検出器20に接続されている。捕集部10は、検出対象ガス3中に含まれる不純物を除去するフィルタ等を備えていてもよい。
検出対象ガス3は、被検出ガス分子2に類似する分子量や分子構造等を有する物質を不純物として含んでいる場合がある。また、空気中に漂う被検出ガス分子2は、におい成分や微粒子等の様々な夾雑物と混ざった状態で存在することが多い。このような点から、検出対象ガス3は予めフィルタ装置、吸収管、分子分配装置等で前処理した後に、ガス検出装置1に送るようにしてもよい。フィルタ装置には、一般的な中高性能フィルタ等が用いられる。分子分配装置としては、検出対象ガスをイオン化してイオン化物質群とし、イオン化物質群に電圧を印加して質量に比例する速度で飛行させ、この質量差による飛行速度およびそれに基づく飛行時間を利用して、イオン化物質群から被検出ガス分子のイオン化物質を分離する装置が挙げられる。
被検出ガス分子2を含む検出対象ガス3は、直接もしくはフィルタ装置や分子分配装置等の装置で前処理された後に捕集部10で捕集される。捕集部10で捕集された被検出ガス分子2は、ガス流路11を介して検出器20に送られる。検出器20は、図2に示すように、複数の検出セル201に区画された検出面20Aを備えている。複数の検出セル201は、それぞれセンサー部21およびセンサー部21に設けられた有機物プローブ22を有する検出素子23を備えている。図2はセンサー部21にグラフェン電界効果トランジスタ(GFET)を用いた検出素子23を示している。
センサー部21としてのGFETは、ゲート電極として機能する半導体基板24と、半導体基板24上にゲート絶縁層として設けられた絶縁膜25と、絶縁膜25上にチャネルとして設けられたグラフェン層26と、グラフェン層26の一端に設けられたソース電極27と、グラフェン層26の他端に設けられたドレイン電極28とを備え、バックゲート型FETセンサー構造を形成している。GFET21のグラフェン層26上には、有機物プローブ22が設けられている。検出器20に導かれた被検出ガス分子2は、グラフェン層26上の有機物プローブ22に捕捉される。有機物プローブ22に捕捉された被検出ガス分子2からGFET31に電子が移動することで電気的な検出が行われる。このようにして、目的とする被検出ガス分子2が選択的に検出される。
有機物プローブ22を構成する有機物は溶剤に溶ける性質を有するため、溶剤に溶かした溶液として塗布することでグラフェン層26に有機物プローブ22を設置することができる。有機物プローブ22はグラフェンと相互作用を得られやすくするために、ピレン環のような構造を有した部位を有することが好ましい。ピレン環のような構造を持つ分子はグラフェンの炭素が構成する六角形状のπ電子系と相互作用を持ち、いわゆるπ―πスタッキングと呼ばれる相互作用状態を形成する。低濃度のプローブ分子を溶媒に溶かしてグラフェンに塗布すると、ピレン環とグラフェンとの間でπ―πスタッキングが形成され、グラフェン上にプローブ分子が整列して固定化される。このような自己配列作用を利用してグラフェン層26上に有機物プローブ22を設置することができる。
グラフェン層26上に設けられた有機物プローブ22に被検出ガス分子2が捕捉(吸着)されると、GFET31の出力が変化する。グラフェンが1層の場合にはゼロギャップとなっているため、通常はソース電極27とドレイン電極28との間に電気が流れ続けている。グラフェンの層数が2層、3層と増えるとバンドギャップが生じるが、厳密な理論値から考えられるよりも実際の系ではバンドギャップが比較的小さい。ゲート絶縁層25がシリコン酸化膜程度の誘電率の場合には、ソース電極27とドレイン電極28との間に電気が流れ続けることが多い。グラフェン層26はグラフェンの単層構造に限らず、5層以下程度のグラフェンの積層体で構成してもよい。グラフェン層26は、例えばグラファイトからの剥離法による基板への転写により形成したり、また化学気相成長法(CVD)を利用して金属の表面に成長させた後に基板へ転写することにより形成される。
有機物プローブ22の近傍に飛来した被検出ガス分子2は、水素結合の力等により有機物プローブ22に引き付けられ、場合によっては接触する。被検出ガス分子2の接触が起こると、有機物プローブ22との間で電子のやり取りが発生し、有機物プローブ22が接するグラフェン層26に電気的変化を伝える。有機物プローブ22からグラフェン層26に伝えられた電気的な変化は、ソース電極27とドレイン電極28との間の電気の流れを乱すため、GFET21がセンサーとして機能する。グラフェン層26をチャネルとして用いたGFET21によれば、極僅かな電気変化であっても顕著に出力として現れる。従って、高感度な検出素子23を構成することができる。
GFET21を用いたセンサーは、グラフェンがゼロギャップ半導体としての性質を有することから、ゲート電極24に電圧を加えなくともソース電極27とドレイン電極28との間に電流が流れる傾向もみられる。従って、このままでもセンサーとして機能するが、通常はゲート電極24に電圧を加えた状態でソース電極27とドレイン電極28との間に電流を流し、有機物プローブ22で被検出ガス分子2を捕捉した際のゲート電極24の電気的変化を観測する。検出器20は、バックゲート電圧やソース電極27とドレイン電極28との間の電圧および電流を任意に制御し得る回路を備えており、さらにそれら電圧や電流を検知することが可能な回路や検知器を備えている。
上記した検出素子23による被検出ガス分子2の検出において、有機物プローブ22に捕捉された被検出ガス分子2からGFET31への電子の移動が高いほどセンサーとしての機能が高くなる。GFET21を用いたセンサーは、最も高感度なFETセンサーとされており、カーボンナノチューブを用いたセンサーと比べて3倍ほど感度を向上させることができる。従って、GFET21と有機物プローブ22とを組み合わせた検出素子23を用いることによって、被検出ガス分子2の高感度な検出が可能になる。
図2は複数の検出セル201を格子状(アレイ状)に配列した検出面20Aを示しているが、必ずしもこれに限定されるものではない。複数の検出セル201は直線状に配列されていてもよい。複数の検出部201のグラフェン層26にそれぞれ設けられた有機物プローブ22のうち、少なくとも一部は被検出ガス分子2との結合強度が異なっている。すなわち、複数の検出セル201は被検出ガス分子2との結合強度が異なる複数の有機物プローブ22を備えている。全ての有機物プローブ22が被検出ガス分子2との結合強度が異なっていてもよいし、一部が被検出ガス分子2との結合強度が異なっていてもよい。被検出ガス分子2との結合強度が異なる有機物プローブ22に代えて、グラフェン層26上における有機物プローブ22の密度を変えるようにしてもよい。
図3は検出器20の検出面20Aを6つの検出セル201、すなわち検出セルA、検出セルB、検出セルC、検出セルD、検出セルE、および検出セルFに分割した格子状センサーを示している。検出セルA〜Fのうち、少なくとも一部には種類が異なる有機物プローブ22、すなわち被検出ガス分子2との結合強度が異なる複数の有機物プローブ22が設けられている。複数の有機物プローブ22は、それぞれ被検出ガス分子2と相互作用を有するが、被検出ガス分子2との作用強度(結合強度)が異なるため、検出信号の強度が異なる。図4は検出セルA〜Fによる検出信号の一例を示している。検出セルA〜Fからの検出信号は、図4に示すように、それぞれ有機物プローブ22の被検出ガス分子2との結合強度により信号強度が異なっている。
グラフェン層26上に設けられる有機物プローブ22としては、反応基としてヒドロキシ基(−OH)やアミノ基(−NH)を有する有機化合物が用いられる。ただし、このような反応基のみではほとんどガス成分と反応しない。水素結合性を高めるために、反応基の隣接部位に誘起効果に優れる官能基(隣接基)を導入した有機化合物を使用する。反応基であるヒドロキシ基(−OH)に対する隣接基としては、トリフルオロメチル基(−CF)やヘキサフルオロエチル基(−C)等のフッ素原子で置換したアルキル基、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO)、−CHN基等の窒素を含む官能基、メチル基(−CH)やエチル基(−C)等のアルキル基が挙げられる。反応基であるアミノ基(−NH)に対する隣接基としては、エーテル結合基(−O−)が挙げられる。
有機物プローブ22は、ヒドロキシ基やアミノ基等の反応基と上述したような隣接基とを有するヘッド部HSと、グラフェン層26に対する設置部位となるベース部BSと、ヘッド部HSとベース部BSとを結合する結合部CSとを有する有機化合物で構成することが好ましい。ヘッド部HSは、反応基と隣接基を有する1価の芳香族炭化水素基であることが好ましく、さらに反応基と隣接基が同一の炭素に結合したアルキル基(炭素数:1〜5程度)を有するフェニル基であることがより好ましい。
ベース部BSは、ピレン環、アントラセン環、ナフタセン環、フェナントレン環等の多環構造を有する1価の置換または非置換の多環芳香族炭化水素基であることが好ましく、さらに置換または非置換のピレン基であることがより好ましい。結合部CSは2価基であり、メチレン基やエチレン基等のアルキレン基であってもよいが、エーテル結合(−O−)、エステル結合(−C(=O)O−)、カルボニル結合(−CO−)、アミド結合(−NH−CO−)、イミド結合(−CO−NH−CO−)等を有することが好ましく、さらにアミド結合を有することがより好ましい。
上述したような有機物プローブ22を構成する有機化合物において、反応基の種類、反応基に対する隣接基の種類や数等によって、被検出ガス分子2との結合強度を調整することができる。例えば、隣接基としてCH基を有する有機化合物と、隣接基としてCF基を有する有機化合物とを比較した場合、トリフルオロメチル基は電気陰性度が高いフッ素により反応基(OH基)の活性を高める効果を有するのに対し、メチル基はそのような効果が低い。従って、被検出ガス分子2との結合強度を異ならせることができる。隣接基としてのCF基等の数が違う場合にも、被検出ガス分子2との結合強度を異ならせることができる。さらに、反応基を含む官能基の種類が異なる場合にも、被検出ガス分子2との結合強度を異ならせることができる。
このように、有機物プローブ22を構成する有機化合物の種類に応じて、被検出ガス分子2との結合強度を調整することができる。また、検出セル201に設置する有機物プローブ22の密度を調整することによっても、被検出ガス分子2との結合強度を調整することができる。有機物プローブ22の被検出ガス分子2との結合強度の違いに基づいて、検出セルA〜Fからの検出信号の信号強度が異なる。
検出セルA〜Fで検出された信号は、識別器30に送られて信号処理される。識別器30は、検出セルA〜Fからの検出信号を強度に変換し、これら検出信号の強度差に基づく信号パターン(例えば図4に示す6つの検出信号のパターン)を解析する。識別器30には、検出する物質に応じた信号パターンが記憶されており、これら信号パターンと検出セルA〜Fで検出された信号パターンとを比較することで、検出器20で検出された被検出ガス分子2の識別が行われる。このような信号処理法を、パターン認識法と呼ぶ。パターン認識法によれば、例えば指紋検査のように被検出物特有の信号パターンにより被検出ガス分子2を検出および識別することができる。従って、pptからppbオーダーの極低濃度のガス成分(被検出ガス分子2)を選択的にかつ高感度に検出することができる。
上述したパターン認識法を適用することによって、検出器20に導かれる検出対象ガス3に不純物が混入しているような場合においても、被検出ガス分子2を選択的にかつ高感度に検出および識別することができる。例えば、被検出ガス分子2が有毒な有機リン化合物の代表的な材料であるメチルホスホン酸ジメチル(DMMP、分子量:124)の場合、化学的な構造が近いジクロルボスのようなリン酸を持つ農薬、さらにマラチオン、クロルピリホス、ダイアジノンのような使用例が多い有機リン系農薬が存在する。これらの物質の誤検知を防ぐためには、図4に示すような信号パターンにより識別するのが有効である。すなわち、上述した各物質により検出セルA〜Fで検出される信号パターンが異なるため、パターン認識法を適用することで、分子量が近く、構成元素も似通っている不純物が混入していても、検出対象の物質を選択的にかつ高感度に検出することができる。
上述したような有機物プローブ22で被検出ガス分子2を捕捉することにより被検出ガス分子2の識別を実施すると、有機物プローブ22は被検出ガス分子2を吸着した状態となる。このような状態の有機物プローブ22は、それ以上被検出ガス分子2を捕捉できないため、再度被検出ガス分子2の検出を行うことができない。有機物プローブ22による被検出ガス分子2の吸着力が強いほど、有機物プローブ22からの被検出ガス分子2の脱離が困難になるため、有機物プローブ22の再生処理が必要になる。そこで、実施形態のガス検出装置1においては、被検出ガス分子2の捕捉(吸着)およびそれに基づく被検出ガス分子2の識別を実施した後に、有機物プローブ22の再生処理を行う。
前述したように、検出器20は再生部40を有している。再生部40による有機物プローブ22の再生処理(リフレッシュ処理)を実施するにあたって、検出セル201のGFET21と有機物プローブ22とを有する検出素子23は、図5に示すように、ガス導入管42(42A、42B)とガス排出管43とを有し、雰囲気制御が可能なチャンバ41で覆われていることが好ましい。チャンバ41は、有機物プローブ22を有するGFET21の部分のみを覆うように設置されていることが好ましい。なお、図5ではチャンバ41で1つのGFET21を覆った状態を示しているが、チャンバ41は複数の検出セル201を構成する複数のGFET21を覆うように配置されていてもよい。
チャンバ41は、被検出ガス分子2を含む検出対象ガス3が導入される第1のガス導入管42Aと、チャンバ41内のガスを排出するガス排出管43とを有している。第1のガス導入管42Aには、必要に応じて妨害成分を除去するフィルタやバルブ等が設置される。ガス排出管43は、必要に応じてバルブや排気ポンプを備えている。さらに、チャンバ41は、有機物プローブ22の再生処理を行うにあたって、チャンバ41内を所定の雰囲気に調整する不活性ガス等を供給する第2のガス導入管42Bを有することが好ましい。これらによって、チャンバ41内のガス雰囲気や圧力等が制御される。チャンバ41内に配置されたGFET21に対して導通をとるために、GFET21の電極27、28にはチャンバ41外から配置されたプローブ44が接続されている。
再生部40は、GFET21のソース電極27とドレイン電極28との間に電圧または電流を印加する制御回路を有している。制御回路は、例えばGFET21のソース電極27、ドレイン電極28、およびゲート電極24間におけるガスセンシング工程と、ソース電極27とドレイン電極28との間への電圧または電流の印加による有機物プローブ22の再生工程とを切り替えることが可能なように構成されている。検出面20Aに複数の検出セル201が配置されている場合、各々のセル毎にソース電極27とドレイン電極28との間に電圧の印加または通電を実施することによって、ソース電極27とドレイン電極28との間に存在するグラフェン層26にジュール熱を発生させる。グラフェン層26に発生させた熱で、グラフェン層26上に設けられた有機物プローブ22を加熱することによって、有機物プローブ22に吸着された被検出ガス分子2を脱離させる。電極27、28間に印加する電圧または電流は、各セルが有する有機物プローブ22およびそれによる被検出ガス分子2の吸着力等に応じて設定することが好ましい。
ガスセンシング特性は、被検出ガス分子の吸着前後において、一定のドレイン電圧下にてバックゲート電圧を−100〜+100V間で掃引した際のドレイン電流と、一定のドレイン電圧および一定のバックゲート電圧下でのドレイン電流の時間応答を測定することにより確認される。グラフェン層26の場合、一定のドレイン電圧下でバックゲート電圧を掃引すると、図6に示すように、ドレイン電流の変化はディラックポイントで偏極する。ディラックポイントのドレイン電流値がガス分子の吸着によるグラフェン層26の電子状態変化に伴って変化するため、ディラックポイントのドレイン電流値、もしくは一定のバックゲート電圧下でのドレイン電流値の大小によって、有機物プローブ22による被検出ガス分子2の吸着および脱離を確認することができる。
再生部40による有機物プローブ22の加熱は、有機物プローブ22の温度が被検出ガス分子2を脱離する温度以上でグラフェン層26の酸化温度または分解温度未満となるように設定される。有機物プローブ22が被検出ガス分子2を脱離する温度は、有機物プローブ22を構成する有機化合物の種類や被検出ガス分子2の吸着力等によって異なるため、有機物プローブ22に応じて設定することが好ましい。有機物プローブ22の加熱は、ソース電極27とドレイン電極28との間に電圧または電流を印加することに代えて、GFET21の下部に設置したヒータ等により実施してもよい。
有機物プローブ22の再生処理は、例えば以下のようにして実施される。被検出ガス分子2の捕捉およびそれに基づく被検出ガス分子2の識別を実施した後に、まずチャンバ41内に存在する検出対象ガス3をガス排出管43を介して排出すると共に、チャンバ41内に第2のガス導入管42Bを介して不活性ガスを導入する。上述したように、再生処理はグラフェン層26を介して有機物プローブ22に熱を印加することにより行われる。有機物プローブ22に熱を印加する際に、GFET21のチャネルを構成するグラフェン層26を、酸素を含む雰囲気中で高温に晒すと、グラフェン層26の酸化や分解等が起こり、チャネルとしての機能が損なわれるおそれがある。
そこで、チャンバ41内に第2のガス導入管42Bから酸素含有量が1体積%以下の窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを導入する。チャンバ41内を酸素含有量が1体積%以下の不活性ガス雰囲気とした後に、ソース電極27とドレイン電極28との間に電圧または電流を印加し、グラフェン層26にジュール熱を発生させることによって、グラフェン層26上に設けられた有機物プローブ22を所定の温度まで加熱する。このような有機物プローブ22の加熱工程によって、グラフェン層26の機能を損なうことなく、有機物プローブ22に吸着された被検出ガス分子2を脱離させる。有機物プローブ22から脱離させた被検出ガス分子2は、ガス排出管43を介してチャンバ41内から排出される。有機物プローブ22から被検出ガス分子2を脱離させ、有機物プローブ22をリフレッシュすることによって、有機物プローブ22で被検出ガス分子2を捕捉することによるガス成分の検出工程および識別工程を再度実施することが可能になる。
実施形態のガス検出装置1においては、パターン認識法を適用することによって、pptからppbオーダーの極低濃度のガス分子を選択的にかつ高感度に検出することができる。さらに、再生工程で有機物プローブ22に吸着された被検出ガス分子2を脱離させることによって、ガス分子の検出を繰り返し実施することができる。また、検出器20および識別器30で検出感度および検出精度を高めることによって、ガス検出装置1を小型化することができる。従って、携帯性と検出精度とを両立させ、かつ繰り返し使用可能なガス検出装置1を提供することが可能になる。このようなガス検出装置1は、災害現場やテロ行為が行われた現場等、各種の現場でその機能を有効に発揮する。
次に、具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
[実施例1]
(検出器の作製)
GFETと有機物プローブとを組み合わせた検出素子を、以下のようにして用意する。まず、銅箔表面に1000℃程度の条件でメタン等の炭化水素系物質を含むガスをフローしたCVDによってグラフェンを形成する。次に、ポリメチルメタクリレート膜をスピンコート法により4000rpmで塗布し、逆面の銅箔を0.1Mの過硫酸アンモニウム溶液でエッチングすることによって、溶液に浮遊したグラフェン膜を回収する。これでグラフェンはポリメチルメタクリレート膜側へ転写される。
グラフェンの表面を十分に洗浄した後、これを表面にSiO膜を形成したシリコン基板上に再度転写する。余分なポリメチルメタクリレート膜を除去した後、シリコン基板に転写されたグラフェンにレジストを塗布してパターニングし、酸素プラズマによって電極パターンを形成する。ソース−ドレイン間隔が10nmになるように電極材料を蒸着することによって、ソース電極とドレイン電極とを有するFET構造を形成する。このようにして、シリコン基板表面に形成されている酸化膜上にグラフェンが配置され、グラフェンをソース電極とドレイン電極とで挟むと共に、シリコン基板側をゲート電極とするバックゲート型GFETを有するセンサー構造が形成される。
さらに、グラフェンの表面に有機物プローブを設ける。有機物プローブはメタノール溶液に10nMの濃度で溶解させて、この中にグラフェンセンサー面を数分間浸漬して設置する。実施例1では、図3に示したように、検出器の検出面に6つの検出セルA〜Fを設け、各々に異なる有機物化合物を有機プローブとして設置する。これらの有機化合物は、それぞれ被検出ガス分子との結合強度が異なる。有機物プローブを有するGFETをチャンバで覆うことによって検出器を構成する。
(ガス分子の検出)
被検出ガス分子としては、有毒な有機リン系材料であるメチルホスホン酸ジメチル(DMMP、分子量124)を用いる。被検出物であるDMMPは、常温において液体であり、引火点が69℃、沸点が181℃である。蒸気圧は79Pa(20℃)である。常温では液体として安定な性質を持っている。このような液体を気化させるためには、温度を上げて気化を促すのが一般的であるが、より簡便な方法としては液体の表面積を上げるために液体中に不活性な気体を通気する、いわゆるバブリングを行ったり、液体表面に気体を吹き付けて気化を促す方法等が採られる。このようにして得られる気体の濃度はppm(百万分の1)からppb(十億分の1)程度であり、これを不活性気体と混ぜることにより気体濃度をさらに低下させることができる。
実施例1においては、窒素(N)ガスを用いた吹き付け方式によって、DMMPの濃度を80ppbとしたDMMP含有ガスを調製する。検出器の有機物プローブを有するGFETを覆うように設置されたチャンバ内をポンプで排気した後、DMMP含有ガスをチャンバ内に導入する。DMMP含有ガスの導入前後において、一定のドレイン電圧下にてバックゲート電圧を−100〜+100V間で掃引した際のドレイン電流と、一定のドレイン電圧および一定のバックゲート電圧下でのドレイン電流の時間応答を測定する。なお、6個の検出セルによる認識結果としては、図4に示した相対的な信号強度パターンが得られる。図4に示した信号強度パターンからDMMPの検出が確認される。
(有機物プローブの再生)
上記したガス分子の検出工程にて、ドレイン電流の時間応答に変化がなくなったことによって、有機物プローブ全体を被検出ガス分子であるDMMPが吸着したことを確認する。この後、チャンバ内のガスをポンプにより排気することによって、チャンバ内を酸素濃度が1%以下の雰囲気に制御する。このような条件下において、ソース電極とドレイン電極間に4Vの電圧を5分間印加し、有機物プローブをリフレッシュする。
(ガス分子の再検出)
上記した有機物プローブの再生後の検出器において、ガス分子の吸着工程と同様に、窒素(N)ガスを用いた吹き付け方式によりDMMPの濃度を80ppbに調整したDMMP含有ガスを、ポンプにより排気した検出器のチャンバ内に導入する。DMMP含有ガスの再導入前後において、一定のドレイン電圧下にてバックゲート電圧を−100〜+100V間で掃引した際のドレイン電流と、一定のドレイン電圧および一定のバックゲート電圧下でのドレイン電流の時間応答を測定する。表1にガス分子の吸着前、ガス分子の吸着後、再生工程後、ガス分子の再吸着後におけるドレイン電流を示す。
[実施例2]
(検出器の作製およびガス分子の検出)
実施例1と同様にして、GFETと有機物プローブとを組み合わせた検出素子を用意する。有機物プローブを有するGFETをチャンバで覆うことによって検出器を構成する。次いで、実施例1と同様に、チャンバ内にDMMP含有ガスを導入し、DMMP分子を有機物プローブに吸着させることによって、DMMP分子の検出を行う。チャンバ内へのDMMP含有ガスの導入前後において、電気信号の測定を行う。
(有機物プローブの再生)
上記したガス分子の検出工程にて、ドレイン電流の時間応答に変化がなくなったことによって、有機物プローブ全体が被検出ガス分子であるDMMPを吸着したことを確認する。この後、チャンバ内に酸素濃度が1%以下の窒素ガスを導入し、チャンバ内を酸素濃度が1%以下の不活性ガス雰囲気に制御する。このような条件下において、ソース電極とドレイン電極間に4Vの電圧を5分間印加し、有機物プローブをリフレッシュする。
(ガス分子の再検出)
上記した有機物プローブの再生後の検出器において、実施例1と同様に、DMMP含有ガスを導入する。チャンバ内へのDMMP含有ガスの再導入前後において、電気信号の測定を行う。表1にガス分子の吸着前、ガス分子の吸着後、再生工程後、ガス分子の再吸着後におけるドレイン電流を示す。
[比較例1]
(検出器の作製およびガス分子の検出)
実施例1と同様にして、GFETと有機物プローブとを組み合わせた検出素子を用意する。有機物プローブを有するGFETをチャンバで覆うことによって検出器を構成する。次いで、実施例1と同様に、チャンバ内にDMMP含有ガスを導入し、DMMP分子を有機物プローブに吸着させることによって、DMMP分子の検出を行う。チャンバ内へのDMMP含有ガスの導入前後において、電気信号の測定を行う。
(ガス分子の再検出)
上記したガス分子の検出工程において、ドレイン電流の時間応答に変化がなくなったことによって、有機物プローブ全体が被検出ガス分子であるDMMPを吸着したことを確認する。次いで、チャンバ内のガスをポンプで排気した後に、チャンバ内にDMMP含有ガスを再度導入する。チャンバ内へのDMMP含有ガスの再導入前後において、電気信号の測定を行う。表1にガス分子の吸着前、ガス分子の吸着後、ガスの排出後、ガス分子の再吸着後におけるドレイン電流を示す。比較例1では、チャンバ内のガスをポンプで排気するのみで、有機物プローブの再生工程を実施していない。
[参考例1]
(検出器の作製およびガス分子の検出)
実施例1と同様にして、GFETと有機物プローブとを組み合わせた検出素子を用意する。有機物プローブを有するGFETをチャンバで覆うことによって検出器を構成する。次いで、実施例1と同様に、チャンバ内にDMMP含有ガスを導入し、DMMP分子を有機物プローブに吸着させることによって、DMMP分子の検出を行う。チャンバ内へのDMMP含有ガスの導入前後において、電気信号の測定を行う。
(有機物プローブの再生)
上記したガス分子の検出工程にて、ドレイン電流の時間応答に変化がなくなったことによって、有機物プローブ全体が被検出ガス分子であるDMMPを吸着したことを確認する。この後、チャンバ内のガスをポンプにより排気することによって、チャンバ内を酸素濃度が1%以下の雰囲気に制御する。このような条件下において、ソース電極とドレイン電極間に3Vの電圧を5分間印加する。
(ガス分子の再検出)
上記した有機物プローブの再生後の検出器において、実施例1と同様に、DMMP含有ガスを導入する。チャンバ内へのDMMP含有ガスの再導入前後において、電気信号の測定を行う。表1にガス分子の吸着前、ガス分子の吸着後、再生工程後、ガス分子の再吸着後におけるドレイン電流を示す。
[参考例2]
(検出器の作製およびガス分子の検出)
実施例1と同様にして、GFETと有機物プローブとを組み合わせた検出素子を用意する。有機物プローブを有するGFETをチャンバで覆うことによって検出器を構成する。次いで、実施例1と同様に、チャンバ内にDMMP含有ガスを導入し、DMMP分子を有機物プローブに吸着させることによって、DMMP分子の検出を行う。チャンバ内へのDMMP含有ガスの導入前後において、電気信号の測定を行う。
(有機物プローブの再生)
上記したガス分子の検出工程にて、ドレイン電流の時間応答に変化がなくなったことによって、有機物プローブ全体が被検出ガス分子であるDMMPを吸着したことを確認する。この後、チャンバ内のガスをポンプにより排気し、さらにチャンバ内に大気を導入する。このような条件下で、ソース電極とドレイン電極間に4Vの電圧を5分間印加する。
(ガス分子の再検出)
上記した有機物プローブの再生後の検出器において、実施例1と同様に、DMMP含有ガスを導入する。チャンバ内へのDMMP含有ガスの再導入前後において、電気信号の測定を行う。表1にガス分子の吸着前、ガス分子の吸着後、再生工程後、ガス分子の再吸着後におけるドレイン電流を示す。
[参考例3]
(検出器の作製およびガス分子の検出)
実施例1と同様にして、GFETと有機物プローブとを組み合わせた検出素子を用意する。有機物プローブを有するGFETをチャンバで覆うことによって検出器を構成する。次いで、実施例1と同様に、チャンバ内にDMMP含有ガスを導入し、DMMP分子を有機物プローブに吸着させることによって、DMMP分子の検出を行う。チャンバ内へのDMMP含有ガスの導入前後において、電気信号の測定を行う。
(有機物プローブの再生)
上記したガス分子の検出工程にて、ドレイン電流の時間応答に変化がなくなったことによって、有機物プローブ全体が被検出ガス分子であるDMMPを吸着したことを確認する。この後、チャンバ内に酸素濃度が2%の窒素ガスを導入し、チャンバ内を酸素濃度が2%のガス雰囲気に制御する。このような条件下において、ソース電極とドレイン電極間に4Vの電圧を5分間印加する。
(ガス分子の再検出)
上記した有機物プローブの再生後の検出器において、実施例1と同様に、DMMP含有ガスを導入する。チャンバ内へのDMMP含有ガスの再導入前後において、電気信号の測定を行う。表1にガス分子の吸着前、ガス分子の吸着後、再生工程後、ガス分子の再吸着後におけるドレイン電流を示す。
Figure 2017166947
表1の結果から明らかなように、実施例1および実施例2においては、検出器の雰囲気制御チャンバ内の酸素分圧を1%以下とした場合に、4V以上のドレイン電圧の印加および5分間以上の印加時間で、有機物プローブからガス分子を脱離させるのに十分なジュール熱を発生させることができ、有機物プローブから被検出ガス分子が脱離することが確認される。さらに、リフレッシュされた有機物プローブは、再度ガス分子を吸着し得ることから、チャンネルとしてのグラフェン層や有機物プローブにダメージを与えることなく、有機物プローブをリフレッシュすることが可能であることが確認される。従って、被検出ガス分子の測定を繰り返し行うことが可能であることが分かる。
一方、比較例1においては、チャンバ内のガスの排気前後でドレイン電流に変化は見られない。このことから、有機物プローブが被検出ガス分子を吸着した状態が維持され、被検出ガス分子の再検出を行うことができないことが分かる。また、参考例1における3Vのドレイン電圧の印加では、再生工程の前後でドレイン電流に変化が見られないことから、有機物プローブと被検出ガス分子を脱離させるのに十分なジュール熱が発生せず、被検出ガス分子を脱離させることができていないことが分かる。参考例2および参考例3の条件では、チャンバ内の酸素分圧が高いため、再生工程で発生したジュール熱によりグラフェンが酸化されてダメージを受け、グラフェン膜がFETのチャンネルとして機能しなくなってしまい、電気信号を得ることができない。これらの結果から、繰り返し測定可能なガス検出装置を構成するためには、検出器のチャンバ内を酸素濃度が1%以下の雰囲気に制御し、4V、5分間以上のドレイン電圧を印加することが好ましい。
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施し得るものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
1…ガス検出装置、2…被検出ガス分子、3…検出対象ガス、10…捕集部、11…ガス流路、20…検出器、201…検出セル、21…センサー部(GFET)、22…有機物プローブ、23…検出素子23、24…半導体基板、25…絶縁膜、27…ソース電極、28…ドレイン電極、30…識別器、40…再生部、41…チャンバ、42A,42B…ガス導入管、43…ガス排出管。

Claims (9)

  1. 被検出ガス分子を含む検出対象ガスを捕集する捕集部と、
    センサー部と、前記センサー部に設けられた有機物プローブとをそれぞれ有する複数の検出セルを備え、前記捕集部で捕集された前記被検出ガス分子を前記有機物プローブで捕捉する検出器と、
    前記被検出ガス分子が前記複数の検出セルの前記有機物プローブに捕捉されることにより生じる検出信号の強度差に基づく信号パターンにより前記被検出ガス分子を識別する識別器と、
    前記被検出ガス分子を捕捉した前記有機物プローブに熱を印加し、前記有機物プローブから前記被検出ガス分子を脱離させる再生部と
    を具備するガス検出装置。
  2. 前記センサー部は、グラフェン層と、前記グラフェン層に接続されたソース電極およびドレイン電極とを有する電界効果トランジスタを備え、
    前記有機物プローブは、前記グラフェン層に設けられている、請求項1に記載のガス検出装置。
  3. 前記再生部は、前記有機物プローブの再生時に前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に電圧または電流を印加する回路を備え、前記グラフェン層にジュール熱を発生させて前記有機物プローブを加熱する、請求項2に記載のガス検出装置。
  4. 前記再生部は、前記複数の検出セルが備える複数の前記有機物プローブに応じた条件で、前記複数の検出セルの前記グラフェン層のそれぞれにジュール熱を発生させる、請求項3に記載のガス検出装置。
  5. 前記再生部は、前記有機物プローブの温度が前記被検出ガス分子を脱離する温度以上で前記グラフェン層の酸化温度または分解温度未満となるように、前記有機物プローブに熱を印加する、請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のガス検出装置。
  6. 前記複数の検出セルは、前記被検出ガス分子との結合強度が異なる複数の前記有機物プローブを有する、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のガス検出装置。
  7. 前記複数の検出セルは、ガス導入管とガス排出管とを有し、雰囲気制御が可能なチャンバで覆われている、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のガス検出装置。
  8. 前記ガス導入管は、前記検出対象ガスを前記チャンバ内に導入する第1のガス導入管と、前記有機物プローブの再生時に酸素含有量が1体積%以下の不活性ガスを前記チャンバ内に導入する第2のガス導入管とを備える、請求項7に記載のガス検出装置。
  9. 前記被検出ガス分子はリンを含有する化合物分子である、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のガス検出装置。
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