JP2017155023A - Lat1阻害活性を有する芳香族アミノ酸誘導体を含有する注射剤 - Google Patents
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Abstract
【課題】強酸性水溶液でなくても、不溶性微粒子数が低減された式(I)で表される化合物を含む注射剤を提供する。【解決手段】(A)式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩と、[式中、R5は、アミノ基又はジメチルアミノ基であり、R6は、水素原子、塩素原子又はジメチルアミノ基であり、Xは、CH又はNである。](B)pH調整剤と、(C)シクロデキストリン類と、を含有する注射剤。【選択図】なし
Description
本発明は、LAT1阻害活性を有する芳香族アミノ酸誘導体を含有する注射剤に関する。
腫瘍細胞では、急速な細胞増殖や亢進した細胞内代謝を維持するため、糖やアミノ酸等の栄養を外部から取り入れるトランスポーターの発現が高まっている。とりわけLAT1(L型アミノ酸トランスポーター1)は、腫瘍細胞に特異的に発現しているトランスポーターで、シグナル因子でもあるロイシンを含む必須アミノ酸を輸送しており、腫瘍細胞に必須な栄養を供給するという重要な役割を担っている。これに対し、LAT2(L型アミノ酸トランスポーター2)は、正常細胞にも広く発現していることが知られている。このため、LAT1に対し選択的な阻害活性を有する化合物は、副作用の少ない抗腫瘍薬となりうる。
特許文献1には、式(I)で表される化合物を塩酸塩にすることで、水に対する溶解性を改善できることが記載されている。
しかしながら、式(I)で表される化合物は、強酸性ではない水溶液に対する溶解度が極めて低く、注射用蒸留水と混合した場合に不溶性微粒子が多数形成される等、注射剤として使用することが極めて困難であった。また、式(I)で表される化合物を含有する凍結乾燥製剤を作製した場合であっても、強酸性ではない水溶液に対する再溶解性が悪く、用時注射剤として使用することも困難であった。他方で、注射剤として強酸性水溶液を用いると、患者に静脈炎を生じさせる等、患者に与える負担が大きくなることも知られていた。
[式中、R5は、アミノ基又はジメチルアミノ基であり、R6は、水素原子、塩素原子又はジメチルアミノ基であり、Xは、CH又はNである。]
しかしながら、式(I)で表される化合物は、強酸性ではない水溶液に対する溶解度が極めて低く、注射用蒸留水と混合した場合に不溶性微粒子が多数形成される等、注射剤として使用することが極めて困難であった。また、式(I)で表される化合物を含有する凍結乾燥製剤を作製した場合であっても、強酸性ではない水溶液に対する再溶解性が悪く、用時注射剤として使用することも困難であった。他方で、注射剤として強酸性水溶液を用いると、患者に静脈炎を生じさせる等、患者に与える負担が大きくなることも知られていた。
[式中、R5は、アミノ基又はジメチルアミノ基であり、R6は、水素原子、塩素原子又はジメチルアミノ基であり、Xは、CH又はNである。]
そこで、本発明は、式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩を、強酸性ではない水溶液に溶解させた場合でも、形成される不溶性微粒子数が低減された注射剤を提供することを目的とする。また、本発明は、経時的安定性、及び、強酸性ではない水溶液に対する再溶解性、に優れた凍結乾燥製剤を提供することも目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩と、pH調整剤と、シクロデキストリン類と、を含有させることにより、強酸性ではない水溶液を用いた場合であっても、不溶性微粒子数が低減された注射剤、及び、再溶解性が改善された凍結乾燥製剤を提供できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[9]を提供する。
[1] (A)式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩と、
[式中、R5は、アミノ基、ジメチルアミノ基であり、R6は、水素原子、塩素原子又はジメチルアミノ基であり、Xは、CH又はNである。]
(B)pH調整剤と、
(C)シクロデキストリン類と、
を含有する注射剤。
[2] 式(I)で表される化合物がO−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イル)メチル−3,5−ジクロロ−L−チロシンである、[1]に記載の注射剤。
[3] シクロデキストリン類の濃度が5〜40重量%である、[1]又は[2]の注射剤。
[4] シクロデキストリン類がスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンである、[1]〜[3]の注射剤。
[5] 水溶性製剤であって、そのpHが3〜4.5である、[1]〜[4]の注射剤。
[6] 凍結乾燥製剤である[1]〜[4]の注射剤。
[7] 凍結乾燥製剤を水に溶解した時のpHが3〜4.5である、[6]に記載の注射剤。
[8] 膵癌、膀胱癌、乳癌又は胃癌の予防剤又は治療剤である[1]〜[7]の注射剤。
[1] (A)式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩と、
[式中、R5は、アミノ基、ジメチルアミノ基であり、R6は、水素原子、塩素原子又はジメチルアミノ基であり、Xは、CH又はNである。]
(B)pH調整剤と、
(C)シクロデキストリン類と、
を含有する注射剤。
[2] 式(I)で表される化合物がO−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イル)メチル−3,5−ジクロロ−L−チロシンである、[1]に記載の注射剤。
[3] シクロデキストリン類の濃度が5〜40重量%である、[1]又は[2]の注射剤。
[4] シクロデキストリン類がスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンである、[1]〜[3]の注射剤。
[5] 水溶性製剤であって、そのpHが3〜4.5である、[1]〜[4]の注射剤。
[6] 凍結乾燥製剤である[1]〜[4]の注射剤。
[7] 凍結乾燥製剤を水に溶解した時のpHが3〜4.5である、[6]に記載の注射剤。
[8] 膵癌、膀胱癌、乳癌又は胃癌の予防剤又は治療剤である[1]〜[7]の注射剤。
本発明は、式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩と、pH調整剤と、シクロデキストリン類と、を含有させることにより、強酸性ではない水溶液に溶解させた場合であっても、形成される不溶性微粒子数を低減できる。また、式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩と、pH調整剤と、シクロデキストリン類と、を含有させることにより、強酸性でない水溶液に対する再溶解性が改善された凍結乾燥製剤を提供することができる。式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩を含む凍結乾燥製剤とすることで、式(I)で表される化合物を長期にわたって安定化された状態で保存することが可能となる。
本明細書において、「注射剤」とは、最終の形態での注射液に限らず、用時に溶解液を用いて最終注射液を調製可能な注射液前駆体(例えば、液状注射剤(濃厚又は濃縮注射剤)又は固形状注射剤(凍結乾燥注射剤等))をも含む意味に用いる。
本実施形態に係る注射剤は、(A)式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩(以下、単に「(A)成分」と表記することもある。)を含有する。
[式中、R5は、アミノ基又はジメチルアミノ基であり、R6は、水素原子、塩素原子又はジメチルアミノ基であり、Xは、CH又はNである。]
[式中、R5は、アミノ基又はジメチルアミノ基であり、R6は、水素原子、塩素原子又はジメチルアミノ基であり、Xは、CH又はNである。]
本実施形態に係る式(I)で表される化合物又はその薬理学的に許容される塩は、特許文献1に記載された方法により製造することができる。
本実施形態に係る注射剤に用いられる式(I)で表される化合物として、強酸性ではない水溶液と混合した場合であっても形成される不溶性微粒子数が低減できるという観点及び凍結乾燥製剤の強酸性ではない水溶液に対する再溶解性を改善するという観点から、R5がアミノ基、R6が水素原子又は塩素原子、かつ、XがCHであることが好ましく、R5がアミノ基、R6が水素原子、かつ、XがCHであること、すなわちO−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イル)メチル−3,5−ジクロロ−L−チロシンであることがより好ましい。
薬理学的に許容される塩は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このような塩として具体的には、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩、有機塩基との塩、酸性又は塩基性アミノ酸との塩等が挙げられる。
無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えば酢酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、ステアリン酸、安息香酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。
無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばジエチルアミン、ジエタノールアミン、メグルミン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン等との塩が挙げられる。
酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチン等との塩が挙げられる。
薬理学的に許容される好ましい塩は、無機酸との塩、特に塩酸塩である。
本実施形態に係る注射剤において、(A)成分の含有量は特に限定されず、(A)成分の種類、該注射剤の用途、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。(A)成分の含有量として、例えば、本実施形態に係る注射剤の総量を基準に、(A)成分の総含有量が、0.1mg/mL〜25mg/mLであることが好ましく、0.5mg/mL〜20mg/mLであることがより好ましく、1.0mg/mL〜15mg/mLであることがさらに好ましい。上記(A)成分の含有量は、酸性条件下でなくても注射用蒸留水と混合した場合に発生する不溶性微粒子数が低減されるという観点及び凍結乾燥製剤の強酸性水溶液以外の水溶液に対する再溶解性を改善できるという観点から好適である。
本実施形態に係る注射剤は、(B)pH調整剤(以下、単に「(B)成分」と表記することもある。)を含有する。これにより、本実施形態に係る注射剤のpHを調整できる。
本実施形態に係る注射剤に配合することができるpH調整剤は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このようなpH調整剤として、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムエトキシド、カリウムブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物、水素化ナトリウム、水素化カリウムのようなアルカリ金属水素化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、アルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。
本実施形態に係る注射剤に配合されるpH調整剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。本実施形態に係る注射剤に配合されるpH調整剤としては、水酸化ナトリウム及び炭酸ナトリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。
本実施形態に係る注射剤は、pH調整剤を用いて適当なpHに適宜調整されうる。本実施形態に係る注射剤のpHは、強酸性ではない水溶液を用いた場合であっても形成される不溶性微粒子数を低減するという観点及び強酸性ではない水溶液に対する再溶解性を改善するという観点から、3〜6であることが好ましく、3〜5であることがより好ましく、3〜4.5であることがさらに好ましく、3.5〜4.5であることが特に好ましい。
本実施形態に係る注射剤は、(C)シクロデキストリン類(以下、単に「(C)成分」と表記することもある。)を含有していてもよい。
本実施形態に係る注射剤に配合することができるシクロデキストリン類は、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限されない。このようなシクロデキストリン類として、例えば、未修飾シクロデキストリン、修飾シクロデキストリン等が挙げられる。未修飾シクロデキストリンとして、例えば、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等が挙げられる。また修飾シクロデキストリンとして、例えば、アルキル化シクロデキストリン(例えば、ジメチル−α−シクロデキストリン、ジメチル−β−シクロデキストリン、ジメチル−γ−シクロデキストリン等)、ヒドロキシアルキル化シクロデキストリン(例えば、ヒドロキシプロピル−α−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−γ−シクロデキストリン等)、スルホアルキルエーテルシクロデキストリン(例えば、スルホブチルエーテル−α−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン、スルホブチルエーテル−γ−シクロデキストリン)、分岐シクロデキストリン(例えば、マルトシル−α−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリン、マルトシル−γ−シクロデキストリン等)等が挙げられる。
本実施形態に係る注射剤に配合されるシクロデキストリン類は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。本実施形態に係る注射剤に配合されるシクロデキストリン類は、強酸性ではない水溶液に溶解した場合でも形成される不溶性微粒子数を低減できるという観点及び凍結乾燥製剤の強酸性でない水溶液に対する再溶解性を改善するという観点から、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、又は、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンが好ましく、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリンがより好ましい。
本実施形態に係る注射剤において、(C)成分の含有量は特に限定されず、(C)成分の種類、該注射剤の用途、使用方法等に応じて適宜設定される。(C)成分の含有量として、例えば、本実施形態に係る注射剤の総量を基準に、(C)成分の総含有量が、5〜50重量%であることが好ましく、10〜40重量%であることがより好ましく、10〜30重量%であることがさらに好ましい。上記(C)成分の含有量は、強酸性条件下でなくても注射用蒸留水と混合した場合に不溶性微粒子数が低減されるという観点及び凍結乾燥製剤の強酸性水溶液以外の水溶液に対する再溶解性を改善できるという観点から好適である。
また、本実施形態に係る注射剤において、(A)成分に対する(C)成分の含有比率は、特に限定されず、(A)成分及び(C)成分の種類、該注射剤の用途、使用方法等に応じて適宜設定される。(A)成分に対する(C)成分の含有比率として、例えば、本実施形態に係る注射剤に含まれる(A)成分の総含有量1質量部に対し、(C)成分の総含有量が、0.01〜500質量部であることが好ましく、0.1〜100質量部であることがより好ましく、1〜50質量部であることがさらに好ましい。上記(A)成分に対する(C)成分の含有比率は、(A)成分を含有する注射剤において、不溶性微粒子数を低減するとともに、凍結乾燥製剤の再溶解性を向上させるという観点から好適である。
本実施形態に係る注射剤を調製する場合には、必要により緩衝剤、懸濁化剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤等を添加し、常法により静脈、皮下、筋肉内注射剤、点滴静注剤とすることができる。
懸濁化剤としては、例えば、メチルセルロース、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アラビアゴム、トラガント末、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートなどが挙げられる。
溶解補助剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、グリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
安定化剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどが挙げられる。保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどが挙げられる。
緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、トリス緩衝剤、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩、イプシロン−アミノカプロン酸等が挙げられる。
本実施形態に係る注射剤は、凍結乾燥製剤であってもよい。本実施形態に係る凍結乾燥製剤は、用時に、例えば、注射用蒸留水、輸液[電解質液(生理食塩水、リンゲル液等)、栄養輸液、蛋白アミノ酸注射液、ビタミン注射液等]、電解液や栄養輸液(糖液等)を組み合わせた代用血液、脂肪を乳化した脂肪乳剤など]の1種又はこれら2種以上の溶媒に溶解して用時溶解型注射剤として使用することができる。
本実施形態に係る凍結乾燥製剤を水に溶解した時のpHとして、3〜6であることが好ましく、3〜5であることがより好ましく、3〜4.5であることがさらに好ましく、3.5〜4.5であることが特に好ましい。上記pHは、強酸性ではない水溶液に対する凍結乾燥製剤の再溶解性を改善するという観点から好適である。
本実施形態に係る凍結乾燥製剤は、公知の凍結乾燥製剤の製造方法により作製することができ、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではない。凍結乾燥の方法としては、例えば、−25℃以下の温度で凍結後、乾燥庫ない真空度を約20Pa以下に保ちながら、棚温を25〜40度に到達するまで昇温させつつ乾燥させる方法等が挙げられる。
本実施形態に係る注射剤の治療対象となる腫瘍の種類は、特に限定されず、例えば、線維腫、脂肪腫、粘液腫、軟骨腫、骨腫、血管腫、血管内皮腫、リンパ腫、骨髄腫、骨髄肉腫、細網腫、細網肉腫、黒色腫、筋腫、神経腫、神経膠腫、神経鞘腫、肉腫、骨肉種、筋種、線維肉腫、乳頭腫、腺腫、嚢腫、脳腫瘍、頚癌、舌癌、咽頭癌、喉頭癌、甲状腺癌、食道癌、肺癌、乳癌、膵癌、胃癌、十二指腸・空腸・回腸等の小腸癌、結腸・盲腸・直腸等の大腸癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、胆嚢癌、前立腺癌、子宮体癌、子宮頸癌、卵巣癌、等の癌腫、およびこれらの混合腫瘍や転移腫瘍等を挙げることができる。本実施形態に係る注射剤は、LAT1が癌細胞上に高度に発現しているという観点から、膵癌、膀胱癌、乳癌および胃癌の予防剤又は治療剤であることが好ましい。
(A)成分の投与量は、症状の程度、患者の年齢、性別、体重、感受性差、投与時期、投与間隔等に応じて、適宜選択することができる。通常、成人(体重60kg)に対して注射投与する場合、例えば、(A)成分を、一回の投与につき0.01〜1000mg/Kg投与することができ、0.01〜100mg/Kgであることが好ましく、0.1〜100mg/Kgであることが更に好ましい。一日一回から数回に分けて静脈投与してもよいし、点滴により連続投与してもよい。
以下に、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
実施例で用いた主な材料を以下に示す。
化合物A:O−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イル)メチル−3,5−ジクロロ−L−チロシン塩酸塩
スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(商品名:Captisol(TM)、サイデックス社製)
日局注射用蒸留水:大塚蒸留水(大塚製薬社製)
日局生理食塩水:大塚製薬社製
水酸化ナトリウム:関東化学社製
化合物A:O−(5−アミノ−2−フェニルベンズオキサゾール−7−イル)メチル−3,5−ジクロロ−L−チロシン塩酸塩
スルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン(商品名:Captisol(TM)、サイデックス社製)
日局注射用蒸留水:大塚蒸留水(大塚製薬社製)
日局生理食塩水:大塚製薬社製
水酸化ナトリウム:関東化学社製
実施例で用いた主な機器を以下に示す。
電子天秤:AUW220(島津製作所社製)、PB3002−L(Mettler Toledo製)
pHメーター:F−52(HORIBA製)
乾燥滅菌器: FSP−63(Toyo)
凍結乾燥機:A−04 Triomaster(共和真空技術株式会社製)
巻締機:RE−7391(三洋製作所)
不溶性微粒子計測器:System9703+「Model 9703+」(HIAC社製)
超純水製造装置:Milli−Q Gradient(MILLIPORE社製)
電子天秤:AUW220(島津製作所社製)、PB3002−L(Mettler Toledo製)
pHメーター:F−52(HORIBA製)
乾燥滅菌器: FSP−63(Toyo)
凍結乾燥機:A−04 Triomaster(共和真空技術株式会社製)
巻締機:RE−7391(三洋製作所)
不溶性微粒子計測器:System9703+「Model 9703+」(HIAC社製)
超純水製造装置:Milli−Q Gradient(MILLIPORE社製)
試験1:不溶性微粒子数の測定試験(1)
表1の「注射用蒸留水秤取量」に従い、所定量の注射用蒸留水を300mLビーカーに秤量した。また、表1の「Captisol秤取量」に従い、Captisolを100mLビーカーに秤量した。上記注射用蒸留水を秤量したビーカーを30〜40℃に設定した水浴に入れ加温し、そこに秤量したCaptisolを撹拌しながら投入した。Captisolを秤量したビーカーを約10mLの注射用蒸留水で洗いこんだ後、撹拌してCaptisolを溶解させた(以下、「Captisol水溶液」ともいう。)。
表1の「化合物A秤取量」に従い、所定量の化合物Aを秤量した。これを上記Captisol水溶液に攪拌しながらゆっくりと投入し、化合物Aの秤量容器を10mLの注射用蒸留水で洗いこんだ。
化合物Aを溶解すると、pHは2.0〜2.3の値をとったため、表1の「最終pH」に従い、所定のpHになるようにpH調整剤を用いて調整した。pH調整剤として1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いた。
pH調整後、表1の「最終調製液重量」に従い、注射用蒸留水を加えて所定の重量にした。最終調製液のpHが表1の「最終pH」を示すことを確認した。pHが「最終pH」の値と異なった場合は、pHを適宜調整した。
表1の「注射用蒸留水秤取量」に従い、所定量の注射用蒸留水を300mLビーカーに秤量した。また、表1の「Captisol秤取量」に従い、Captisolを100mLビーカーに秤量した。上記注射用蒸留水を秤量したビーカーを30〜40℃に設定した水浴に入れ加温し、そこに秤量したCaptisolを撹拌しながら投入した。Captisolを秤量したビーカーを約10mLの注射用蒸留水で洗いこんだ後、撹拌してCaptisolを溶解させた(以下、「Captisol水溶液」ともいう。)。
表1の「化合物A秤取量」に従い、所定量の化合物Aを秤量した。これを上記Captisol水溶液に攪拌しながらゆっくりと投入し、化合物Aの秤量容器を10mLの注射用蒸留水で洗いこんだ。
化合物Aを溶解すると、pHは2.0〜2.3の値をとったため、表1の「最終pH」に従い、所定のpHになるようにpH調整剤を用いて調整した。pH調整剤として1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いた。
pH調整後、表1の「最終調製液重量」に従い、注射用蒸留水を加えて所定の重量にした。最終調製液のpHが表1の「最終pH」を示すことを確認した。pHが「最終pH」の値と異なった場合は、pHを適宜調整した。
最終調製液を、さらに化合物Aの濃度が1.8mg/mLになるように生理食塩水で希釈し、希釈後の調製液の不溶性微粒子数を測定した。表2〜表4にバイアルあたり(化合物A50mg相当)の不溶性微粒子数に換算した数値を示す。
第十六改正日本薬局方(以下、「日本薬局方」ともいう。)の「注射剤の不溶性微粒子試験法」に記載の基準では、100mL未満の注射剤について、容器当たり10μm以上の不溶性微粒子数が6000個以下、25μmの不溶性微粒子数が600個以下と規定されている。
これに従うと、処方1、12、14、24及び26が基準外となった。不溶性微粒子数と、pHおよびCaptisol量の相関関係を見ると、pHが高い処方、またCaptisol量が少ない処方で、不溶性微粒子数が増加する傾向があった。他方で、pH3.5〜4.5の間では、10μm以上の不溶性微粒子数、及び、25μm以上の不溶性微粒子数が低減されることが分かった。
これに従うと、処方1、12、14、24及び26が基準外となった。不溶性微粒子数と、pHおよびCaptisol量の相関関係を見ると、pHが高い処方、またCaptisol量が少ない処方で、不溶性微粒子数が増加する傾向があった。他方で、pH3.5〜4.5の間では、10μm以上の不溶性微粒子数、及び、25μm以上の不溶性微粒子数が低減されることが分かった。
pHが3.0の場合には、不溶性微粒子数は低減されるものの、酸性輸液が患者に与える負担(静脈炎等)等を考慮すると、pH3.0より強酸性条件の水溶液は注射剤として好ましくない。他方で、pHが3.5〜4.5の間にあるときにも不溶性微粒子数が低減されており、強酸性の輸液に比べて患者に対する負担の少ない注射剤を調製できることが分かった。
試験2−1:凍結乾燥製剤の再溶解性
試験1で調製した処方14〜30の最終調製液を、直径30mm、高さ60mmのバイアルに充填し、凍結乾燥機にて凍結乾燥した。表5の凍結乾燥条件に従って凍結乾燥を実施した。
まずバイアルを蒸留水で洗浄し、乾熱滅菌し、それぞれのバイアルに処方No.を記入したラベルを貼付した。また、ゴム栓V10−F8Wを蒸留水で洗浄し、高圧蒸気滅菌した。試験1で得られた最終調製液を無菌ろ過フィルターでろ過し、無菌ろ過液を得た。初流は約5mL廃棄した。無菌ろ過液を洗浄滅菌済みバイアルに所定量充填し、洗浄滅菌済みゴム栓を半打栓した(各処方14本)。充填量は、処方14〜30を8.30mLとした。充填半打栓済みバイアルを凍結乾燥トレイに並べ、これを凍結乾燥機(上段、中段、下段の計3段)に仕込み、任意のバイアルに品温センサーを取り付けた。表1に示す凍結乾燥条件にて、凍結乾燥した。凍結乾燥終了後、窒素にて庫内を660Torrまで復圧し、バイアルを全打栓し、その後、庫内を760Torr(大気圧)まで復圧し、バイアルを取り出した。取り出したバイアルをアルミキャップで巻締めて、凍結乾燥製剤とした。
試験1で調製した処方14〜30の最終調製液を、直径30mm、高さ60mmのバイアルに充填し、凍結乾燥機にて凍結乾燥した。表5の凍結乾燥条件に従って凍結乾燥を実施した。
まずバイアルを蒸留水で洗浄し、乾熱滅菌し、それぞれのバイアルに処方No.を記入したラベルを貼付した。また、ゴム栓V10−F8Wを蒸留水で洗浄し、高圧蒸気滅菌した。試験1で得られた最終調製液を無菌ろ過フィルターでろ過し、無菌ろ過液を得た。初流は約5mL廃棄した。無菌ろ過液を洗浄滅菌済みバイアルに所定量充填し、洗浄滅菌済みゴム栓を半打栓した(各処方14本)。充填量は、処方14〜30を8.30mLとした。充填半打栓済みバイアルを凍結乾燥トレイに並べ、これを凍結乾燥機(上段、中段、下段の計3段)に仕込み、任意のバイアルに品温センサーを取り付けた。表1に示す凍結乾燥条件にて、凍結乾燥した。凍結乾燥終了後、窒素にて庫内を660Torrまで復圧し、バイアルを全打栓し、その後、庫内を760Torr(大気圧)まで復圧し、バイアルを取り出した。取り出したバイアルをアルミキャップで巻締めて、凍結乾燥製剤とした。
処方14〜30の再溶解性の試験結果を表6に示す。4mL又は8mLの注射用蒸留水で再溶解したところ、処方14、16、20及び26〜29において再溶解にかかる時間が短かった。とりわけ処方27では、他の処方と異なり1分で溶解した上に、澄明な溶状を示した。
試験2−2:不溶性微粒子数(2)
処方15、16及び処方18〜23の計8処方のバイアルを2本ずつ準備し、8mLの注射用蒸留水に再溶解した。完全に溶解したことを確認した後、化合物Aの濃度が1.8mg/mLになるように再溶解液を生理食塩水で希釈し、これを輸液とした。輸液のpHを確認した後、調整した各処方の輸液を室温で5時間静置し、約25mLをサンプリングし、これらの不溶性微粒子数を測定した。その結果を表7に示す。
pHが中性に近づくにつれ、またCaptisolの量が少なくなるにつれて、不溶性微粒子数が増加する傾向が見られた。いずれの処方においても、日本薬局方の基準(容器当たりの10μm以上の不溶性微粒子数が6000個以下、25μmの不溶性微粒子数が600個以下)を満たすことが分かった。
処方15、16及び処方18〜23の計8処方のバイアルを2本ずつ準備し、8mLの注射用蒸留水に再溶解した。完全に溶解したことを確認した後、化合物Aの濃度が1.8mg/mLになるように再溶解液を生理食塩水で希釈し、これを輸液とした。輸液のpHを確認した後、調整した各処方の輸液を室温で5時間静置し、約25mLをサンプリングし、これらの不溶性微粒子数を測定した。その結果を表7に示す。
pHが中性に近づくにつれ、またCaptisolの量が少なくなるにつれて、不溶性微粒子数が増加する傾向が見られた。いずれの処方においても、日本薬局方の基準(容器当たりの10μm以上の不溶性微粒子数が6000個以下、25μmの不溶性微粒子数が600個以下)を満たすことが分かった。
試験3:再溶解性及び安定性試験
処方18〜21の凍結乾燥製剤について再溶解性及び安定性試験を行った。
それぞれの凍結乾燥製剤について、凍結乾燥製剤作製直後の時点(イニシャル)での再溶解性、純度、および化合物Aの含量を測定した。また凍結乾燥製剤を、25℃、60%RH(相対湿度:Relative humidity)で2週間保存したものについて再溶解性を測定し、40℃、75%RHで2週間保存したものについて再溶解性、純度および化合物Aの含量を測定した。さらに、凍結乾燥製剤を、25℃、60%RHで4週間保存したものについて再溶解性を測定し、40℃、75%RHで4週間保存したものについて再溶解性、純度および化合物Aの含量の測定を行った。
処方18〜21の凍結乾燥製剤について再溶解性及び安定性試験を行った。
それぞれの凍結乾燥製剤について、凍結乾燥製剤作製直後の時点(イニシャル)での再溶解性、純度、および化合物Aの含量を測定した。また凍結乾燥製剤を、25℃、60%RH(相対湿度:Relative humidity)で2週間保存したものについて再溶解性を測定し、40℃、75%RHで2週間保存したものについて再溶解性、純度および化合物Aの含量を測定した。さらに、凍結乾燥製剤を、25℃、60%RHで4週間保存したものについて再溶解性を測定し、40℃、75%RHで4週間保存したものについて再溶解性、純度および化合物Aの含量の測定を行った。
表8は、処方18〜21の凍結乾燥製剤を、25℃、60%RHで保存した場合の再溶解性を示す。また、表9は、処方18〜21の凍結乾燥製剤を、40℃、75%RHで保存した場合の再溶解性を示す。
25℃、60%RHで凍結乾燥製剤を保存した場合には、イニシャル、2週間保存した後も、処方20を凍結乾燥した製剤の再溶解性が良いことが分かった。他方で、4週間保存した後は、処方18〜21を凍結乾燥した製剤間で再溶解性に大きな差は認められなかった。
40℃、75%RHで凍結乾燥製剤を保存した場合には、イニシャル、2週間保存、4週間保存のいずれにおいても処方20の凍結乾燥製剤の再溶解性が優れていた。
25℃、60%RHで凍結乾燥製剤を保存した場合には、イニシャル、2週間保存した後も、処方20を凍結乾燥した製剤の再溶解性が良いことが分かった。他方で、4週間保存した後は、処方18〜21を凍結乾燥した製剤間で再溶解性に大きな差は認められなかった。
40℃、75%RHで凍結乾燥製剤を保存した場合には、イニシャル、2週間保存、4週間保存のいずれにおいても処方20の凍結乾燥製剤の再溶解性が優れていた。
表10は、処方18〜21の凍結乾燥製剤を、40℃、75%RHで保存した場合の凍結乾燥製剤の純度(類縁物質の含量)を示す。
いずれの凍結乾燥製剤においても高速液体クロマトグラフ装置(測定装置:Waters社製 Alliance e2695システム、検出器:Waters社製 UV検出器 2489UV/Vis検出器)で解析したところ、化合物Aとは異なる二つの類縁物質のピークが認められた。類縁物質の含量について、各凍結乾燥製剤間で大きな差は認められず、またイニシャルから4週間後までの類縁物質の含量の推移をみても、経時的に類縁物質が増大する傾向は認められなかった。
いずれの凍結乾燥製剤においても高速液体クロマトグラフ装置(測定装置:Waters社製 Alliance e2695システム、検出器:Waters社製 UV検出器 2489UV/Vis検出器)で解析したところ、化合物Aとは異なる二つの類縁物質のピークが認められた。類縁物質の含量について、各凍結乾燥製剤間で大きな差は認められず、またイニシャルから4週間後までの類縁物質の含量の推移をみても、経時的に類縁物質が増大する傾向は認められなかった。
表11は、処方18〜21の凍結乾燥製剤を、40℃、75%RHで保存した場合の凍結乾燥製剤中の化合物Aの残存率を示す。
いずれの凍結乾燥製剤においても良好な化合部Aの残存率を示しており、処方間で大きな差は認められなかった。
いずれの凍結乾燥製剤においても良好な化合部Aの残存率を示しており、処方間で大きな差は認められなかった。
処方18〜21を凍結乾燥製剤とすることで、40℃/75%RHの高温・高湿度下で保存した場合であっても、化合物Aが安定化された状態で保存可能な注射剤を提供できることが分かった。
Claims (8)
- シクロデキストリン類の濃度が5〜40重量%である、請求項1又は2に記載の注射剤。
- シクロデキストリン類がスルホブチル−β−シクロデキストリンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の注射剤。
- 水溶性製剤であって、そのpHが3〜4.5である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の注射剤。
- 凍結乾燥製剤である請求項1〜4のいずれか一項に記載の注射剤。
- 凍結乾燥製剤を水に溶解した時のpHが3〜4.5である、請求項6に記載の注射剤。
- 膵癌、膀胱癌、乳癌又は胃癌の予防剤又は治療剤である請求項1〜7のいずれか一項に記載の注射剤。
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