JP2017150997A - バイアスの低減が図られた振動型ジャイロ - Google Patents
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Abstract
【課題】90°位相の不要信号(クワドラチャーエラー)及び0°位相の不要信号(初期バイアス)の双方を低減する構造を備えた振動型ジャイロを提供する。【解決手段】左右の両方向に延びる駆動用櫛歯固定電極22a〜22dを基板2に設け、左右に延びる駆動用櫛歯可動電極を可動部4に一体的に設け、さらに櫛歯固定電極に対して差動化された駆動信号(差動信号)を供給することにより、駆動周波数の上下方向の駆動力の発生を抑制でき、その結果、可動部4が駆動周波数で上下方向に振動することを防止することができる。【選択図】図1
Description
本発明は、振動型ジャイロに関し、特には、MEMS技術によって製造された高感度の振動型ジャイロに関する。
1990年代から急速に発展したいわゆるマイクロマシニング技術によって、例えば、絶縁膜を有するシリコン基板やガラス基板上に接合されたバルクシリコンウェハを、湿式エッチングやドライエッチング等の化学的なエッチングにより処理し、メカニカルなセンサ構造体を形成して、一度のプロセスで大量のセンサ構造を製造する手法が確立されている。このような微小電気機械システム(MEMS)技術によるセンサとしては、加速度センサ及び振動型ジャイロ等があり、例えば自動車、慣性ナビゲーション、デジタルカメラ、ゲーム機他、多くの分野において利用されている。
中でも振動型ジャイロは、一方向に振動する可動物体が回転運動を受けるときに発生するコリオリ加速度を利用している。振動する可動質量体が回転運動を伴うとき、該可動質量体は振動方向及び回転軸方向の双方に直交する方向に作用するコリオリ力を受け、この結果該可動質量体はコリオリ力の作用方向に変位する。該可動質量体は、この方向の変位を可能にするばねにより支持され、該可動質量体の変位量からコリオリ力及びそれを生じさせる角速度の値を検出することができる。可動質量体の変位は、例えば、一方が固定されかつ他方が可動質量体と共に変位可能な一対の平行平板構造又は櫛歯構造を備えた、平行平板型コンデンサ又は櫛歯型コンデンサを使用し、その容量変化から求めることができる。
振動型ジャイロの出力安定性を向上させるための1つの手段として、直交バイアス値(クワドラチャーエラー、90°成分)や平行バイアス値(0°成分)を低減又は排除する手段を設けることが挙げられる。例えば特許文献1−3には、直交バイアス値の補正手段を有する振動型ジャイロが開示されており、駆動質量体の構造的・力学的非対称性に起因する回転変位振動に関し、検出質量体に隣接配置した補正用電極に適切な位相のAC電圧を印加するか、駆動質量体に隣接配置した補正用電極にDC電圧を印加することによって生じる静電力により、直交バイアス値の出力を低減でき、ジャイロとしての安定性を飛躍的に向上させることができる。
また特許文献4には、平行バイアス値の補正手段を有する振動型ジャイロが開示されており、複数の周波数を含む多重化駆動信号を用いて振動型ジャイロを駆動することにより、不要な駆動力による不要駆動力信号や、寄生容量によるカップリング信号等の不要信号のみを含む補正信号を生成することができるので、これをレート信号から減算することで極めて正確な角速度信号(レート出力)を得ることができる。
特許文献1−3に記載の振動型ジャイロはいずれも、角速度信号に対して位相が90°ずれている直交バイアス値(クワドラチャーエラー、90°成分)を抑制又は補正する手段を有するものであるが、振動型ジャイロから出力される信号には、クワドラチャーエラーのような角速度信号に対して位相が90°ずれた信号(90°成分)だけでなく、角速度信号と位相が等しい不要信号(0°成分)も含まれる。
一方、特許文献4に記載の振動型ジャイロは、角速度信号に対して位相が同相の平行バイアス値(0°成分)を補正する手段を有するものであるが、この手段は0°成分の発生量を検出した後にこれを減算するものであり、0°成分そのものの発生量を低減するものではない。このため、振動型ジャイロの構造に起因した0°成分の発生量が大きい場合、十分な補正効果が得られない可能性がある。
そこで本発明は、90°位相の不要信号(クワドラチャーエラー、90°成分)及び0°位相の不要信号(0°成分)の双方を低減する構造を備えた振動型ジャイロを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本願第1の発明は、検出支持梁により支持基板に固定され、角速度により発生するコリオリ力よって平面に直交する軸線回りに回転励振されるように構成された検出質量体と、前記平面内の一方向に駆動振動できるように、前記検出質量体の内側に駆動支持梁によって懸垂支持された左右の駆動質量体と、を備えた振動型ジャイロであって、前記左右の駆動質量体は、互いに逆相で振動する逆相振動モードを有するように、前記駆動振動の方向に弾性を有する連結ばねによって互いに連結され、前記検出質量体は、前記左右の駆動質量体の駆動振動によっては前記駆動振動の方向に励振されないように構成され、前記左右の駆動質量体の各々の内側に、前記左右の駆動質量体を駆動振動させるための駆動力を発生するように構成された駆動用櫛歯電極を設け、前記駆動用櫛歯電極は差動信号によって前記駆動力を発生するように構成された、振動型ジャイロを提供する。
第2の発明は、第1の発明において、前記駆動用櫛歯電極は、前記左右の駆動質量体の各々を駆動する駆動機能と、前記左右の駆動質量体の駆動振動により前記検出質量体に作用する回転トルクを打ち消すために、印加されたDC電圧によって静電力を前記駆動質量体に作用させるクワドラチャーエラー補正機能との双方を具備するように構成されている、振動型ジャイロを提供する。
第3の発明は、第2の発明において、AC信号とDC信号を加算し、加算された信号を前記駆動用櫛歯電極に供給する回路をさらに有する、振動型ジャイロを提供する。
本発明によれば、左右の駆動質量体の各々の内側に設けた駆動櫛歯電極を、左右両方向に延びる櫛歯構造とすることにより、各駆動質量体を差動信号で駆動させることができる。従って、対向する駆動櫛歯電極間のギャップ誤差に起因する、左右の駆動質量体の駆動周波数と同期した上下方向の不要な駆動力を低減させることができ、ジャイロの初期バイアスやバイアス変動量を低減することができる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る振動型ジャイロ1の基本構造を示す平面図であり、図2は、図1のI−I線に沿った切断面を示す断面図である。各図において、参照符号2はガラス等の絶縁材料からなる支持基板を示しており、振動型ジャイロ1の他の構造部材はシリコンの単結晶から作製される。図1に示す振動型ジャイロにおいて、支持基板2の上に、シリコンの単結晶からなる左右の駆動質量体4及び6(左側を4とする)の各々が、Y方向に延びる少なくとも1つ(図示例では4つ)の駆動支持梁8及び10に支持される。駆動支持梁8及び10は、駆動質量体4及び6が基板2の面内方向かつ左右方向である駆動方向(X方向)に可動となるように、その剛性が他方向の剛性に比べ低くなるように構成されている。また左右の駆動質量体4及び6は、弾性結合要素である中央連結ばね12により互いに結合されている。
駆動質量体4及び6に接続されていない駆動支持梁8及び10の他端は、駆動質量体4及び6を囲繞するように設けられた略リング形状の検出質量体14に接続されている。検出質量体14は、少なくとも1つ(図示例では4つ)の検出支持梁16に支持され、各支持梁16の他端は基板2に接合された周辺部アンカー18に接続されている。なお図中において、黒く塗り潰した部分は基板2に固定されている部分を示し、他の部分(白抜き部分等)は基板に直接固定されていない又は可動部分を示す。
検出質量体14を支持する検出支持梁16は、検出質量体14が基板2の面に垂直なZ方向回りに回転振動が可能となるように、その回転方向の剛性が他方向の剛性に比べ低くなるように構成されている。なお、断面図2からもわかるように、駆動質量体4及び6、駆動支持梁8及び10、中央連結梁12、検出質量体14、並びに検出支持梁16は、基板2と所定の間隔を有して対向配置されている。
図1の破線枠内の詳細構造を表した図3に示すように、左側の駆動質量体4は、略矩形の枠状部材であり、その内側に、左向きに延びる第1の駆動用櫛歯可動電極20と、右向きに延びる第2の駆動用櫛歯可動電極21とを有する。一方、基板2には、第1の櫛歯可動電極20及び第2の櫛歯可動電極21のいずれかに対向する第1〜第4の駆動用櫛歯固定電極22a〜22dが固定配置されており、このような構成によって左側の質量駆動体4を左右方向(X方向)に駆動振動させるとともに、可動部(左右の駆動質量体)が駆動周波数で上下方向に振動する現象も低減することができるが、これについては後述する。
左側の駆動質量体4は、その中央寄りの側から反中央側に向けて延びる櫛歯状の電極24を有し、これに対向する左側駆動モニタ用櫛歯固定電極26が基板2に固定配置されており、これにより左側の駆動質量体4の変位量を測定できる。また右側の駆動質量体は、その中央寄りの側に設けられたフレーム28(図1参照)の反中央側から中央側に向けて延びる櫛歯状の電極(図示せず)を有し、これに対向する右側駆動モニタ用櫛歯固定電極(図示せず)が基板2に固定配置されており、これにより右側の駆動質量体6の変位量を測定できる。
図1に示すように、検出質量体14は径方向外側に延びる櫛歯状の検出モニタ用櫛歯可動電極30を有し、これに対向する検出モニタ用櫛歯固定電極32及び34が基板2に固定配置されている。詳細には、X−Y平面の左側(−X方向側)の領域に、櫛歯電極30に対向する検出モニタ用櫛歯固定電極32が固定配置され、X−Y平面の右側(+X方向側)の領域に、櫛歯電極30に対向する検出モニタ用櫛歯固定電極34が固定配置される。さらに、検出モニタ用櫛歯固定電極32及び34は、差動式モニタ機構を構成しており、具体的に言えば、検出質量体14がZ軸回りに時計方向に回転したときは、左側では対向する櫛歯間の距離が縮小し、逆に右側では対向する櫛歯間の距離が拡大する。これら2つの櫛歯間の容量変化の差を利用する差動構成により、検出質量体自体に発生している同相のノイズを相殺することができ、より高精度の測定を行うことができる。
本発明に係る振動型ジャイロは、以下のようなマイクロマシニングプロセスを適用して作製することができる。
先ず、ガラス支持基板2とジャイロの可動部材との間に所定の間隙(図2参照)が形成されるように、フッ酸等を利用したウェットエッチング処理をガラス基板に施す。但し、エッチングされてはいけない領域として、間隙を形成する部分以外については、半導体フォトリソグラフィ技術等を適用して、例えばレジストマスクを予め形成しておく。
次に、ガラス支持基板とシリコン基板とを陽極接合手法等により接合する。この段階で、シリコン基板側から研磨を行い、該シリコン基板を所定の厚さにするとともに、ボンディング用パッドとして必要とされる領域に、Cr&Au等の導電性メタルの選択的スパッタリング等で、電極パッド(図示せず)を形成する。
さらに、接合されたシリコン基板の表面側(研磨側)に、フォトレジスト等のマスク材料を利用して、図1の平面図で示されるレジストパターンを、フォトリソグラフィ技術を利用して作製する。この場合も、エッチングされてはいけない領域がレジストマスクにより保護される。
次に、RIE装置等を利用したドライエッチングにより、シリコン基板の厚さ方向に貫通エッチングを行う。以上のようなマイクロマシニング技術を適用した製造プロセスにより、振動型ジャイロの基本構造を作製することができる。
このようにジャイロを構成する材料として必要なものはシリコン基板及びガラス基板のみであり、シリコン基板とほぼ同一の線膨張係数を有するガラス材料を使用することで、温度変化に対して構造的ひずみ(熱ひずみ)や応力(熱応力)が発生しにくくなり、構造的に安定かつ特性的にも優れた振動型ジャイロが提供可能となる。
次に、振動型ジャイロの動作について説明する。例えば、X軸方向に速度Vxで振動する質量Mの検出質量体にZ軸回りの回転(回転角速度Ωz)が加わった場合に生じるY軸方向のコリオリ力Fyの絶対量は、以下の式(1)で表される。
Fy=2ΩzMVx (1)
Fy=2ΩzMVx (1)
このため、コリオリ力Fyによる該検出質量体の変位を検出することで角速度を検出する振動型ジャイロでは、駆動質量体を速度Vxで励振させる必要がある。このための方式として、例えば静電力によるコームドライブ方式が利用される。
左側駆動質量体4と左側の櫛歯固定電極22a〜22dとの間、及び右側駆動質量体6と右側駆動用櫛歯電極との間に、DC電圧VDCとAC電圧VACとの和を印加すると、VACの電圧周期と等しい駆動力が発生する。一方、左右の駆動質量体4及び6は弾性の中央連結ばね12により互いに連結されているので、互いにX方向に近づき又は離れる、いわゆる逆相振動の共振モードを有する。従って、VACの周波数をこの逆相振動モードの共振周波数と一致させて振動させることで、駆動質量体4及び6は、互いに接離する逆相振動を呈する。この振動の速度Vxは、左右の駆動モニタ用櫛歯電極(左側のみ参照符号26で図示)により、静電容量変化として電気回路を通じて検出され、駆動振動振幅を一定にするためのAGC制御(Auto Gain Control)に利用される。なお、図4及び図5に示すように、駆動用櫛歯可動電極20及び21には上述のDC電圧VDCを印加し、櫛歯固定電極22a〜22dには純粋なAC電圧VACのみを印加する構成とすることができる。
左右の駆動質量体4及び6が上記のようにX方向に逆相振動する場合、角速度Ωzが図1の紙面に垂直な方向(Z方向)に作用すると、左右の駆動質量体には逆相のコリオリ力FyがY方向に生じる。このコリオリ力によって検出質量体14にはZ軸回りの回転トルクが作用し、検出質量体14はZ軸回りに回転変位振動する。この結果、検出質量体14に設けた櫛歯電極30と左右の検出モニタ用櫛歯固定電極32及び34との間の静電容量が差動で変化し、その差動容量変化を電気的に読み出すことで、角速度Ωzを検出することができる。
図1に示す振動型ジャイロでは、左右の駆動質量体の駆動振動によって検出質量体が類似の振幅で振動(励振)するものではなく、駆動振動と検出振動とは実質的に分離されているため、角速度入力がないときの漏れ出力を大きく低減することができ、漏れ出力によるバイアス値やその変動を抑制することができる。
再び図3を参照すると、左側駆動質量体4の内側でかつ検出質量体4の回転中心Cよりも上側に、第1の櫛歯可動電極20に対向する第1の櫛歯固定電極22aが固定配置され、左側駆動質量体4の内側でかつ検出質量体4の回転中心Cよりも上側に、第2の櫛歯可動電極21に対向する第2の櫛歯固定電極22bが固定配置される。さらに、左側駆動質量体4の内側でかつ検出質量体4の回転中心Cよりも下側に、第2の櫛歯可動電極21に対向する第3の櫛歯固定電極22cが固定配置され、左側駆動質量体4の内側でかつ検出質量体4の回転中心Cよりも下側に、第1の櫛歯可動電極20に対向する第4の櫛歯固定電極22dが固定配置される。なお図1からわかるように、左右の駆動質量体4及び6は、中央線Bに対して互いに概ね対称となっているので、右側の駆動質量体6の内部構造については説明を省略する。
図4は、本発明の基本的概念に基づく駆動用櫛歯電極の構成を模式的に示す図であり、図5は、図4との比較例として従来技術の駆動用櫛歯電極の構成を模式的に示す図である。図5に示すように、従来は櫛歯固定電極(固定部)に供給される駆動信号が単相であり、櫛歯固定電極の延びる方向も一方向であったため、櫛歯固定電極に対する櫛歯可動電極(可動部)の上下方向のずれ(g1≠g2)に従って駆動周波数と同期した上下方向の不要な駆動力が発生し、可動部が駆動周波数で上下方向に振動する場合があった。
これに対し本発明では、左右の両方向に延びる駆動用櫛歯固定電極(図3の櫛歯電極22a〜22d)を基板2に設け、左右に延びる櫛歯可動電極(図3の櫛歯電極20及び21)を可動部(駆動質量体)4に一体的に設け、さらに櫛歯固定電極に対して差動化された駆動信号(差動信号)を供給することにより、可動部を駆動振動させる左右方向の駆動力が発生する。このような構成により、仮に櫛歯可動電極が櫛歯固定電極に対して上下方向にずれてしまっても、駆動周波数の上下方向の駆動力の影響を低減できる。具体的には、図4において櫛歯可動電極が上下方向にずれている場合(g1≠g2)に、差動化された駆動信号を与えると、櫛歯固定電極22a及び22dによって発生する上下方向の不要な駆動力と、櫛歯固定電極22b及び22cによって発生する上下方向の不要な駆動力とでは、大きさが等しくかつ位相が180°ずれており、実質的に櫛歯可動電極20及び21には駆動周波数の2倍の周波数の上下方向の力が加わる。その結果、可動部が駆動周波数で上下方向に振動することを防止することができる。従って本発明によれば、初期バイアスの低減が期待でき、また初期バイアスの発生原因である櫛歯電極の上下方向のずれに対する感度が小さくなるので、外部応力等によって櫛歯電極の上下方向のずれ量が変化することで生じるバイアス変動の低減も期待できる。
なお、図4では本発明の概念を簡単に説明するため、櫛歯可動電極20及び21が単純に左右方向に延びるように図示して上下方向の力を説明したが、第1の実施形態のような回転トルクを検出するタイプのジャイロにおいて、実際に駆動質量体の内側に駆動用櫛歯電極を形成する場合は、櫛歯固定電極22a及び22dに発生する回転トルクと、櫛歯固定電極22b及び22cに発生する回転トルクとが同等(大きさが等しくかつ位相が180°異なる)となるように配置する必要がある。このため、図3に示す櫛歯可動電極20及び21と駆動用櫛歯固定電極22a〜22dは、各櫛歯により発生するトルクT(櫛歯間に働く静電力Fと回転中心までの距離Laとの積で表される(すなわちT=F×La))が等しくなるように、Y方向に(A−A線に沿って)整列配置されることが好ましい。
なお図示はしていないが、図4のような駆動用櫛歯電極を左右の駆動質量体の各々の内側に形成し、さらに、左右の駆動質量体の駆動振動により検出質量体に作用する回転トルクを打ち消すために、印加されたDC電圧によって静電力を駆動質量体に作用させるように構成されたクワドラチャーエラー補正用櫛歯電極を、検出質量体に隣接させて駆動質量体に設けてもよい。なおクワドラチャーエラー補正用櫛歯電極としては例えば、特許文献3の図10に記載されたものと同様の構成を有するものが使用可能である。
次に、本発明の第2の実施形態を、図6を参照しつつ説明する。なお第2の実施形態は、左右の駆動質量体の内側に設けた駆動用櫛歯電極の構造のみが第1の実施形態と異なり、他の部分については第1の実施形態と同様でよい。
特許文献3の図10に記載されるような、クワドラチャーエラーを補正するための補正電極を各駆動質量体の内側に設けようとすると、各駆動質量体の寸法がさらに大きくなり、結果としてジャイロ全体の大型化につながる。
そこで図6に示す実施形態では、駆動用の櫛歯電極にさらに、上述のクワドラチャーエラー補正用電極としての機能も付与する(換言すれば、電極22a〜22dの各々を、クワドラチャーエラー補正用櫛歯電極と駆動用櫛歯電極とが一体化された櫛歯電極として構成する)ことにより、ジャイロの小型化を図ることができる。具体的には、上側の駆動用櫛歯固定電極22aと駆動質量体の櫛歯電極20との間のギャップは、これらの電極間に電位差を有する場合において、左側の駆動質量体4に対して−Y方向の静電力を発生させるように、一方のギャップが狭く設計されている。また上側の駆動用櫛歯固定電極22bと駆動質量体の櫛歯電極21との間のギャップは、これらの電極間に電位差を有する場合において、駆動質量体4に対して+Y方向の静電力を発生させるように、一方のギャップが狭く設計されている。
一方、下側の駆動用櫛歯固定電極22cと駆動質量体の櫛歯電極21との間のギャップは、これらの電極間に電位差を有する場合において、左側の駆動質量体4に対して−Y方向の静電力を発生させるように、一方のギャップが狭く設計されている。また下側の駆動用櫛歯固定電極22dと駆動質量体の櫛歯電極20との間のギャップは、これらの電極間に電位差を有する場合において、駆動質量体4に対して+Y方向の静電力を発生させるように、一方のギャップが狭く設計されている。
このような櫛歯電極構造において、各電極のDC電圧差(補正信号)を調整することにより、クワドラチャーエラー変位の原因となっている回転トルクを打ち消す補正トルクを、駆動質量体の左右方向の動きに応じて発生させることができる。また、第2の実施形態における櫛歯電極構造に、第1の実施形態と同様の差動化された駆動信号を印加することにより、駆動質量体を駆動することが可能である。具体的には、図6において、第1の櫛歯固定電極22aには正の駆動信号と正の補正信号の双方を供給し、第2の櫛歯固定電極22bには負の駆動信号と正の補正信号の双方を供給し、第3の櫛歯固定電極22cには負の駆動信号と負の補正信号の双方を供給し、第4の櫛歯固定電極22dには正の駆動信号と負の補正信号の双方を供給する。このように、駆動用と補正用の機能が統合された櫛歯電極構造を用いることにより、図4に示した差動信号を利用することの長所を有しつつ、クワドラチャーエラーの補正も行え、かつ小型化が図られたジャイロが得られる。
ここで、一般に駆動信号は交流(AC)であり、補正信号は直流(DC)であることから、各櫛歯固定電極に供給される信号は、AC信号とDC信号を含む複雑なものとなる。そこで、図7に示すような、AC信号とDC信号を加算して出力する信号加算回路40を設けることにより、簡単な構成で各櫛歯固定電極に所望の信号を供給することができる。具体的には、駆動信号(AC)の供給源はコンデンサ42a〜42dを介して、補正信号(DC)の供給源は抵抗44a〜44dを介して、櫛歯固定電極22a〜22dとそれぞれ接続することにより、必要帯域の信号を選択的に取出して加算することによって得られる信号を、各櫛歯固定電極に供給することができる。このような回路40を使用すれば、AC信号とDC信号は別々に生成できるので、回路構成がシンプルになり、ジャイロの低コスト化につながる。
なお上述の実施形態に係る振動型ジャイロに適用可能なフィードバック系回路については、特許文献1−3に記載されるような周知のものが適用可能であるので、詳細な説明は省略する。
上述の実施形態によれば、左右の駆動質量体の各々に設ける駆動用櫛歯構造を、従来の片方向に延びるものから左右両方向に延びるものとし、駆動信号を差動化することにより、0°位相の不要信号(0°成分)を大幅に低減することができる。また、従来から用いていた90°位相の不要信号(クワドラチャーエラー)低減のための補正電極の機能を駆動用櫛歯電極に統合することにより、駆動機能及び補正機能、さらにはジャイロの面積効率の向上も図ることができる。さらに、AC信号とDC信号とを加算して各駆動用櫛歯固定電極に供給する回路を用いることにより、AC+DC信号を直接生成する装置等が不要となる。
本発明は、特許文献2及び3に記載のような周波数調整用電極を備えた振動型ジャイロや、特許文献3に記載のようなAC補正電極を備えた振動型ジャイロにも適用可能である。すなわち、本発明に係る差動駆動機能及び補正機能と、検出質量体の共振周波数の調整機能や検出質量体に関するクローズドループ制御とは、同時に行うことが可能である。
1 振動型ジャイロ
2 基板
4、6 駆動質量体
12 中央連結ばね
14 検出質量体
20、21 駆動用櫛歯可動電極
22a〜22d 駆動用櫛歯固定電極
26 駆動モニタ用櫛歯固定電極
30 検出モニタ用櫛歯可動電極
32、34 検出モニタ用櫛歯固定電極
36 周波数調整用櫛歯固定電極
40 信号加算回路
42a〜42d コンデンサ
44a〜44d 抵抗
2 基板
4、6 駆動質量体
12 中央連結ばね
14 検出質量体
20、21 駆動用櫛歯可動電極
22a〜22d 駆動用櫛歯固定電極
26 駆動モニタ用櫛歯固定電極
30 検出モニタ用櫛歯可動電極
32、34 検出モニタ用櫛歯固定電極
36 周波数調整用櫛歯固定電極
40 信号加算回路
42a〜42d コンデンサ
44a〜44d 抵抗
Claims (3)
- 検出支持梁により支持基板に固定され、角速度により発生するコリオリ力よって平面に直交する軸線回りに回転励振されるように構成された検出質量体と、
前記平面内の一方向に駆動振動できるように、前記検出質量体の内側に駆動支持梁によって懸垂支持された左右の駆動質量体と、を備えた振動型ジャイロであって、
前記左右の駆動質量体は、互いに逆相で振動する逆相振動モードを有するように、前記駆動振動の方向に弾性を有する連結ばねによって互いに連結され、
前記検出質量体は、前記左右の駆動質量体の駆動振動によっては前記駆動振動の方向に励振されないように構成され、
前記左右の駆動質量体の各々の内側に、前記左右の駆動質量体を駆動振動させるための駆動力を発生するように構成された駆動用櫛歯電極を設け、前記駆動用櫛歯電極は差動信号によって前記駆動力を発生するように構成された、振動型ジャイロ。 - 前記駆動用櫛歯電極は、前記左右の駆動質量体の各々を駆動する駆動機能と、前記左右の駆動質量体の駆動振動により前記検出質量体に作用する回転トルクを打ち消すために、印加されたDC電圧によって静電力を前記駆動質量体に作用させるクワドラチャーエラー補正機能との双方を具備するように構成されている、請求項1に記載の振動型ジャイロ。
- AC信号とDC信号を加算し、加算された信号を前記駆動用櫛歯電極に供給する回路をさらに有する、請求項2に記載の振動型ジャイロ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2016034808A JP2017150997A (ja) | 2016-02-25 | 2016-02-25 | バイアスの低減が図られた振動型ジャイロ |
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