以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
《実施形態1》
この実施形態1では、高圧蓄圧器として、オイルの貯留容量が異なる第1高圧蓄圧器及び第2高圧蓄圧器を備え、回生状態に依存するエンジン運転効率の高低に基づいて第1高圧蓄圧器のみを用いる第1モードと、第2高圧蓄圧器のみを用いる第2モードと、第1高圧蓄圧器及び第2高圧蓄圧器の両方を用いる第3モードとを使い分ける回生システムについて説明する。
−回生システムの構成−
図1に、この実施形態1に係る回生システム1を用いた車両としての自動車Cの一例を示す。回生システム1は、図1に示すように、エンジン3、第1クラッチ5、トランスミッション7、ディファレンシャルギア9、駆動輪11、連結機構13、第2クラッチ15、オイルポンプモータ17、低圧リザーバ19、第1高圧蓄圧器21、第2高圧蓄圧器23、及びVCM(Vehicle Control Module)と呼ばれる制御装置25などで構成されている。
エンジン3は、例えばレシプロエンジンである。エンジン3の吸気通路27には、スロットル29が設置されている。エンジン3の排気通路31には、上流側から順に、触媒装置33及びマフラー35が設置されている。エンジン3の出力軸4は、第1クラッチ5、トランスミッション7及びディファレンシャルギア9を介して駆動輪11に連結されている。図1は、エンジン3を動力源として走行している状態を表しており、駆動輪11は、エンジン3によって回転駆動される。
オイルポンプモータ17は、オイルポンプ及び油圧モータの両機能を有する装置であって、回生時及び力行時に、オイルの吐出口及び吸込口のいずれか一方として機能する第1オイル出入口17a及び第2オイル出入口17bを有する。図1に示すように、オイルポンプモータ17の回転軸は、第2クラッチ15、連結機構13、トランスミッション7及びディファレンシャルギア9を介して駆動輪11への出力軸に連結されると共に、第2クラッチ15、連結機構13及び第1クラッチ5を介してエンジン3の出力軸4にも連結される。図1では、第2クラッチ15は切られた状態となっている。
オイルポンプモータ17がオイルポンプとして機能するときには、第1オイル出入口17aは吸込口として機能し、第2オイル出入口17bは吐出口として機能する(図2参照)。また、オイルポンプモータ17が油圧モータとして機能するときには、第1オイル出入口17aは吐出口として機能し、第2オイル出入口17bは吸込口として機能する(図3参照)。
低圧リザーバ19は、耐圧性を有するリザーバ容器37と、このリザーバ容器37の内部にスライド自在に配置されたピストン39とを備える。リザーバ容器37の内部は、ピストン39によってそのスライドする方向にオイル室41とガス室43とに仕切られている。ガス室43には、例えば10〜30気圧レベルの低圧な空気が貯留されている。オイル室41には、ガス室43の空気と同じ気圧レベルで加圧されたオイルが貯留される。
第1高圧蓄圧器21は、耐圧性を有する蓄圧容器45と、この蓄圧容器45の内部にスライド自在に配置されたピストン47とを備える。蓄圧容器45の内部は、ピストン47によってそのスライドする方向にオイル室49とガス室51とに仕切られている。ガス室51には、例えば200〜400気圧レベルの高圧な空気が貯留されている。オイル室49には、ガス室51の空気と同じ気圧レベルで加圧されたオイルが貯留される。
第2高圧蓄圧器23の基本構成は、第1高圧蓄圧器21と同じである。すなわち、第2高圧蓄圧器23は、耐圧性を有する耐圧容器53と、この耐圧容器53の内部にスライド自在に配置されたピストン55とを備え、耐熱容器53の内部がピストン55によってオイル室57とガス室59とに仕切られた構成を有する。ガス室59には、例えば200〜400気圧レベルの高圧な空気が貯留されている。オイル室57には、ガス室59の空気と同じ気圧レベルで加圧されたオイルが貯留される。
第1高圧蓄圧器21でのオイルの貯留容量は、低圧リザーバ19でのオイルの貯留容量と同程度か又はそれよりもやや少ない程度の容量とされている。第2高圧蓄圧器23でのオイルの貯留容量は、第1高圧蓄圧器21でのオイルの貯留容量よりも小さく、例えば、第1高圧蓄圧器21でのオイルの貯留容量の20分の1から5分の1程度の容量とされている。
これら第1高圧蓄圧器21及び第2高圧蓄圧器23の各オイル室49,57と低圧リザーバ19のオイル室41とは、オイルポンプモータ17にそれぞれ接続されており、オイルポンプモータ17を介して互いに接続されている。
低圧リザーバ19及び第1高圧蓄圧器21には、オイル室41,49にオイルを出入りさせるためのオイル出入口19a,21aがそれぞれ設けられている。また、第2高圧蓄圧器23には、オイル室57にオイルを入れるためのオイル入口23aと、オイル室57からオイルを出すためのオイル出口23bとが設けられている。
低圧リザーバ19のオイル出入口19aは、オイルポンプモータ17の第1オイル出入口17aに低圧側オイル流路61を介して接続されている。また、第1高圧蓄圧器21のオイル出入口21aは、第2高圧蓄圧器23のオイル入口23a及びオイル出口23bと、オイルポンプモータ17の第2オイル出入口17bに、高圧側オイル流路63を介して接続されている。
高圧側オイル流路63は、第1流路65と、第2流路67とを備える。第1流路65は、第2高圧蓄圧器23を迂回する流路であって、第1高圧蓄圧器21のオイル出入口21aとオイルポンプモータ17の第2オイル出入口17bとを直接に接続している。他方、第2流路67は、第2高圧蓄圧器23を経由する流路であって、第1高圧蓄圧器21のオイル出入口21aとオイルポンプモータ17の第2オイル出入口17bとを第2高圧蓄圧器23のオイル室57を介して接続している。
第2流路67は、オイルポンプモータ17の第2オイル出入口17bと第2高圧蓄圧器23のオイル入口23aとを接続する第1部分流路73と、第2高圧蓄圧器23のオイル出口23bと第1高圧蓄圧器21のオイル出入口21aとを接続する第2部分流路75とによって構成されている。これら第1部分流路73及び第2部分流路75は、第1流路65と一部を共通化して構成されている。すなわち、高圧側オイル流路63は、オイルポンプモータ17側で第1流路65と第1部分流路73とに分岐され、第1高圧蓄圧器21側で第1流路65と第2部分流路75とに分岐されている。
高圧側オイル流路63における第1流路65と第1部分流路73との分岐部分には、第1切替弁77が設けられている。第1切替弁77は、第1流路65のうち当該第1切替弁77よりもオイルポンプモータ17側の部分と第1高圧蓄圧器21側の部分とを連通させる第1連通状態と、第1部分流路73のうち当該第1切替弁77よりもオイルポンプモータ17側の部分と第2高圧蓄圧器23側の部分とを連通させる第2連通状態と、高圧側オイル流路63を遮断する遮断状態とを切り替える。
高圧側オイル流路63における第1流路65と第2部分流路75との分岐部分には、第2切替弁79が設けられている。第2切替弁79は、第1流路65のうち当該第2切替弁79よりもオイルポンプモータ17側の部分と第1高圧蓄圧器21側の部分とを連通させる第1連通状態と、第2部分流路75のうち当該第2切替弁79よりも第2高圧蓄圧器23側の部分と第1高圧蓄圧器21側の部分とを連通させる第2連通状態と、高圧側オイル流路63を遮断する遮断状態とを切り替える。
また、低圧リザーバ19及び第1高圧蓄圧器21のオイル出入口19a,21aには、開閉弁81,83がそれぞれ設けられている。低圧リザーバ19の開閉弁81は、開状態のときに、オイル室41と低圧側オイル流路61とを連通させる。また、第1高圧蓄圧器21の開閉弁83は、開状態のときに、オイル室49と高圧側オイル流路63とを連通させる。これら両開閉弁81,83は、通常時は閉状態とされている。
ここで、第1切替弁77と、第2切替弁79と、第1高圧蓄圧器21の開閉弁83とは、オイルポンプモータ17と第1高圧蓄圧器21のオイル室49との間で第1流路65を通じてオイルが流通可能な第1状態と、オイルポンプモータ17と第2高圧蓄圧器23との間で第1部分流路73を通じてオイルが流通可能な第2状態とを切り替える第1切替機構を構成している。
また、第2切替弁79と、第1高圧蓄圧器21の開閉弁83とは、第1高圧蓄圧器21のオイル室49と第2高圧蓄圧器23のオイル室57との間で第2部分流路75を通じてオイルが流通可能な第3状態と、それら両オイル室49,57の間でオイルが流通不能な第4状態とを切り替える第2切替機構を構成している。
低圧リザーバ19、第1高圧蓄圧器21及び第2高圧蓄圧器23の各オイル室41,49,57に貯留されたオイルは、第1切替弁77及び第2切替弁79によって設定された流路に従いオイルポンプモータ17の駆動によって3者の間を行き来する。そのため、これら各オイル室41,49,57のオイルの貯留量は、オイルポンプモータ17の作動に応じて変化する。そして、低圧リザーバ19、第1高圧蓄圧器21及び第2高圧蓄圧器23の各ガス室43,51,59の容積は、対応するオイル室41,49,57のオイルの貯留量に応じて変化する。
すなわち、低圧リザーバ19、第1高圧蓄圧器21及び第2高圧蓄圧器23においては、オイル室41,49,57にオイルが流入すると、その流入に伴ってピストン39,47,55がガス室43,51,59側にスライドし、そのスライドによってオイル室41,49,57の容積が大きくなり、それだけガス室43,51,59の容積が小さくなる。また、オイル室41,49,57からオイルが流出すると、その流出に伴ってピストン39,47,55がオイル室41,49,57側にスライドし、そのスライドによってオイル室41,49,57の容積が小さくなり、それだけガス室43,51,59の容積が大きくなる。
制御装置25は、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等のハードウェアと、制御プログラム等のソフトウェアとで構成されており、自動車Cの回生動作や力行動作を総合的に制御する機能を有している。例えば、エンジン3やオイルポンプモータ17の駆動制御、第1クラッチ5及び第2クラッチ15の接続制御、低圧リザーバ19及び第1高圧蓄圧器21の開閉弁81,83の開閉制御、第1切替弁77及び第2切替弁79の切替え制御などは制御装置25によって行われる。
また、自動車Cには、回生システム1を制御するために、各種センサが設けられている。
具体的には、第1高圧蓄圧器21に、ガス室51の内圧を検出する第1圧力センサ85が設けられている。第2高圧蓄圧器23には、ガス室59の内圧を検出する第2圧力センサ87が設けられている。オイルポンプモータ17には、高圧側オイル流路63に吐出するオイルの流量を検出するPM吐出量センサ89と、オイルポンプモータ17の回転数を検出するPM回転数センサ91とが設けられている。また、エンジン3には、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ93が設けられている。その他、自動車Cには、アクセルセンサ95やブレーキセンサ97、車速センサ99が設けられている。アクセルセンサ95は、アクセルペダルの操作量(踏込み量)を検出する。ブレーキセンサ97は、ブレーキペダルの操作量(踏込み量)を検出する。
自動車Cの運転中は、これらセンサの検出値が、制御装置25に出力されるようになっている。制御装置25は、これらの検出値に基づいて回生システム1を制御する。
−回生システムの制御−
次に、上記回生システム1の動作とその制御について説明する。
回生システム1は、基本的な動作として回生動作と力行動作とを行う。本実施形態の回生システム1は、回生動作としてエンジン出力回生と減速回生とを行う。これら回生動作及び力行動作について、以下に、図2〜図4を参照しながら説明する。図2は、自動車Cのエンジン出力回生時の状態を示す概念図である。図3は、自動車Cの減速回生時の状態を示す概念図である。図4は、自動車Cの力行時の状態を示す概念図である。ここでは、第1高圧蓄圧器21のみを用いる場合を例に挙げる。したがって、以下に説明するいずれの動作においても、第1切替弁77及び第2切替弁79は共に第1連通状態とされている。
<エンジン出力回生>
制御装置25は、定常走行時又は加速走行時に運転者の走行要求(アクセルペダルの踏み込み操作等)に対しエンジン運転効率の良好な動作点(後述する目標動作点)でエンジン3を運転しようとする場合において、当該走行要求に応じた走行状態を実現してもなお余剰トルクが生じるときには、その余剰トルクを回生するエンジン出力回生を行う。エンジン出力回生では、図2に示すように、低圧リザーバ19及び第1高圧蓄圧器21の開閉弁81,83が開かれると共に、第1クラッチ5及び第2クラッチ15の両方が繋げられ、エンジン3の動力の一部、つまり余剰トルクがオイルポンプモータ17に入力される。それによって、オイルポンプモータ17は、オイルポンプとして駆動され、低圧リザーバ19のオイルが第1高圧蓄圧器21へ送り込まれる。その結果、第1高圧蓄圧器21の内圧が上昇し、高圧に加圧されたオイルが第1高圧蓄圧器21に蓄積される。
<減速回生>
制御装置25は、自動車Cの走行中において、例えばアクセルペダルの踏み込みが無くなったりブレーキペダルが踏み込まれたりしたときに、制動トルクを回生する減速回生を行う。減速回生では、図3に示すように、低圧リザーバ19及び第1高圧蓄圧器21の開閉弁81,83が開かれると共に、第1クラッチ5が切られて第2クラッチ15が繋げられ、駆動輪11の動力、つまり制動トルクがオイルポンプモータ17に入力される。それによって、オイルポンプモータ17は、オイルポンプとして駆動され、低圧リザーバ19のオイルが第1高圧蓄圧器21へ送り込まれる。その結果、第1高圧蓄圧器21の内圧が上昇し、高圧に加圧されたオイルが第1高圧蓄圧器21に蓄積される。
<力行>
制御装置25は、自動車Cの発進時や減速走行又は定常走行からの加速時、さらには上り坂での定常走行時などに、油圧走行を行う力行を実行する。力行では、図4に示すように、低圧リザーバ19及び第1高圧蓄圧器21の開閉弁81,83が開かれると共に、第1クラッチ5が切られて第2クラッチ15が繋げられ、第1高圧蓄圧器21のオイルが低圧リザーバ19に向けて流出される。オイルポンプモータ17は、第1高圧蓄圧器21からのオイルの吐出圧により油圧モータとして駆動され、その動力が駆動輪11に出力される。その結果、自動車Cが油圧走行される。そして、第1高圧蓄圧器21から流出したオイルは、低圧リザーバ19に回収される。
<制御装置の機能構成>
図5に、制御装置25の機能ブロック図を示す。制御装置25は、機能的には、図5に示すように、目標動作点設定部101と、目標PM消費トルク算出部103と、予測PM消費トルク算出部105と、メモリからなる記憶部107とを備える。
目標動作点設定部101は、エンジン出力回生時に、エンジン3の運転状態に基づきエンジン運転効率を向上させる目標動作点P2(エンジン回転数とエンジン出力トルクとの組合せ)を設定する。目標動作点P2は、アクセルセンサ95及び車速センサ99の検出値などに基づく走行要求に応じた動作点(以下、「要求動作点」と称する)P1、つまり運転者から要求される運転状態を実現するために必要なエンジン回転数(以下、「要求エンジン回転数」と称する)N1及びエンジン出力トルク(以下、「要求エンジン出力トルク」と称する)T1に基づいて設定される。
具体的には、目標動作点P2は、エンジン運転効率マップを用いて設定される。エンジン運転効率マップは、記憶部107に予め記憶されている。このエンジン運転効率マップには、エンジン回転数及びエンジン出力トルクに応じたエンジン運転効率が規定されている。図6に、エンジン運転効率マップのイメージ図を示す。図6に示す複数の実線Lは、等効率線であって、エンジン運転効率が同じ動作点を示している。目標動作点設定部101は、要求エンジン回転数N1及び要求エンジン出力トルクT1をエンジン運転効率マップに照らし合わせ、要求エンジン回転数N1と同じエンジン回転数N2で要求動作点よりもエンジン運転効率が高くなるエンジン出力トルク(以下、「目標エンジン出力トルク」と称する)T2での動作点を目標動作点P2に設定する。
なお、エンジン運転効率マップは、エンジン3毎に固有のものであり、実測等によって予め求められる。そのため、図6に示すエンジン運転効率マップは、一例に過ぎず、エンジン3によっては異なる特性となり得る。
目標PM消費トルク算出部103は、エンジン3を目標動作点P2で運転するために必要なオイルポンプモータ17の駆動にかかるエンジン負荷、つまりオイルポンプモータ17での消費が必要なエンジン出力トルクTAR(以下、「目標PM消費トルクTAR」と称する)を算出する。この目標PM消費トルクTARは、目標エンジン出力トルクT2から要求エンジン出力トルクT1を差し引くこと(TAR=T2−T1)によって算出される。
予測PM消費トルク算出部105は、第1流路65経由でエンジン出力回生を行った場合にオイルポンプモータ17で消費されるエンジン出力トルク(以下、「予測PM消費トルク」と称する)TPMを算出する。この予測PM消費トルクTPMは、目標エンジン回転数N2でエンジン出力回生を行ったときにオイルポンプモータ17が吐出するオイルの吐出流量(以下、「予測オイル吐出流量」と称する)に基づいて算出される。予測オイル吐出流量は、第1圧力センサ85の検出値に基づいて算出される。
制御装置25は、回生動作時に、上述した目標PM消費トルクTAR及び予測PM消費トルクTPMに基づき判断される回生状態に応じて、高圧側オイル流路63でオイルが流通可能な流路を第1流路65と第2流路67とで切り替え、第1高圧蓄圧器21のみを用いる第1モードと、第2高圧蓄圧器23のみを用いる第2モードと、第1高圧蓄圧器21及び第2高圧蓄圧器23の両方を用いる第3モードとを使い分ける。
この制御装置25による回生制御について、以下に、図7を参照しながら一例を挙げて説明する。図7は、本実施形態に係る回生システム1の制御の一例を示すフローチャート図である。
回生制御では、図7に示すように、まず、ステップST001において、制御装置25は、回生指令が発せられているか否かを判定する。回生指令は、第1高圧蓄圧器21のオイル室49へのオイルの追加が可能な場合において、目標動作点P2で走行要求に応じたエンジン3の運転状態を実現すると余剰トルクが生じるときや、アクセルペダルの踏み込みが無くなったりブレーキペダルが踏み込まれたりしたとき等に発せられる。
この回生指令には、エンジン出力回生のための指令であるか減速回生のための指令であるかの情報が含まれる。このステップST001で回生指令が発せられていない場合には、ステップST001を再び行う。すなわち、回生指令が発せられるまでは、ステップST001を繰り返し行う。また、回生指令が発せられている場合には、ステップST002に進む。
ステップST002では、制御装置25は、回生指令により実行される回生動作がエンジン出力回生であるか否かを判定する。この判定は、回生指令がエンジン出力回生のための指令であるか否かによって行う。このとき、回生指令がエンジン出力回生のための指令である場合には、実行される回生動作がエンジン出力回生であるとして、ステップST003に進む。また、回生指令がエンジン出力回生のための指令でない、つまり減速回生のための指令である場合には、実行される回生動作が減速回生であるとして、ステップST010に進む。
ステップST003では、制御装置25は、第1流路65経由でエンジン出力回生を行う場合に、目標動作点設定部101により設定される目標動作点P2でのエンジン運転効率(以下、「高エンジン運転効率」と称する)が達成される第1回生状態にあるか、又は高エンジン運転効率が達成されない第2回生状態にあるかを判定する。高エンジン運転効率が実現されるか否かは、予測PM消費トルクTPMが目標PM消費トルクTARを上回っているかどうかによって決定される。
具体的には、予測PM消費トルクTPMが目標PM消費トルクTAR以上である場合は、目標動作点P2でのエンジン3の運転を実現するのに必要なエンジン出力トルクT2を得ることができるため、高エンジン運転効率が達成される第1回生状態にあると判定する。この場合には、ステップST004に進む。また、予測PM消費トルクTPMが目標PM消費トルクTARよりも小さい場合は、目標動作点P2でのエンジン3の運転を実現するのに必要なエンジン出力トルクT2を得ることができないため、高エンジン運転効率が達成されない第2回生状態にあると判定する。この場合には、ステップST005に進む。
ステップST004では、制御装置25は、第1切替弁77及び第2切替弁79を共に第1連通状態とすることにより、高圧側オイル流路63を第1流路65に切り替える。そのことで、オイルポンプモータ17と第1高圧蓄圧器21のオイル室49とは、第1流路65を介して直接に連通され、互いの間でオイルの流通が可能な状態(第1状態)とされる。この状態においては、第1高圧蓄圧器21のオイル室49に貯留されたオイルの圧力がオイルポンプモータ17に負荷としてかかり、その圧力に抗して回生動作でオイルポンプモータ17により送られるオイルが第1高圧蓄圧器21のオイル室49に流入される。こうして第1モードでの回生動作が行われる。このステップST004を終えると、ステップST009に進む。
ステップST005では、制御装置25は、第1切替弁77を第2接続状態とすることにより、高圧側オイル流路63を第2流路67に切り替える。そのことで、オイルポンプモータ17と第2高圧蓄圧器23のオイル室57とは、第1部分流路73を介して連通され、互いの間でオイルの流通が可能な状態(第2状態)とされる。この状態においては、第2高圧蓄圧器23のオイル室57に貯留されたオイルの圧力がオイルポンプモータ17に負荷としてかかり、その圧力に抗して回生動作でオイルポンプモータ17(オイルポンプとして機能)により送られるオイルが第2高圧蓄圧器23のオイル室57に流入される。
その後に行われるステップST006,ST007,ST008は、第2高圧蓄圧器23のガス室59の圧力を所定の高圧域に維持しながら、第2高圧蓄圧器23のオイル室57に貯留されたオイルを第1高圧蓄圧器21のオイル室51に移すためのステップである。
ステップST006では、制御装置25は、第2高圧蓄圧器23のガス室59の圧力、つまり第2圧力センサ87の検出値が所定の設定圧以上であるか否かを判定する。所定の設定圧には、例えば1つの値が設定されている。このステップST006において、第2圧力センサ87の検出値が所定の設定圧未満である場合には、第2高圧蓄圧器23のガス室59の圧力を高める必要があるとして、ステップST007に進む。また、第2圧力センサ87の検出値が所定の設定圧以上である場合には、第2高圧蓄圧器23のガス室59の圧力を下げる必要があるとして、ステップST008に進む。
ステップST007では、制御装置25は、第1切替弁77を第2連通状態としたまま第2切替弁79を遮断状態とする。そのことにより、第1高圧蓄圧器21のオイル室49と第2高圧蓄圧器23のオイル室57との間、つまり第2部分流路75でオイルが流通不能な状態(第4状態)とされ、回生動作でオイルポンプモータ17により送られるオイルが第2高圧蓄圧器23のオイル室57に流入されるが出ていかずに貯留されていく。こうして第2モードでの回生動作が行われる。この第2モードでの回生動作により第2高圧蓄圧器23のオイル室57にオイルが流入されると、その分だけ第2高圧蓄圧器23のガス室59の圧力が高められる。このステップST007を終えると、ステップST009に進む。
ステップST008では、制御装置25は、第1切替弁77を遮断状態とすると共に第2切替弁79を第2連通状態とする。そのことにより、第1高圧蓄圧器21のオイル室49と第2高圧蓄圧器23のオイル室57との間でオイルが流通可能な状態(第3状態)とされ、第2高圧蓄圧器23のオイル室57に貯留されたオイルが第2部分流路75を介して第1高圧蓄圧器21のオイル室49に送り込まれる。こうして第3モードでの回生動作が行われる。この第3モードでの回生動作により第2高圧蓄圧器23のオイル室57からオイルが流出すると、その分だけ第2高圧蓄圧器23のガス室59の圧力が下がる。このステップST008を終えると、ステップST009に進む。
ステップST010では、制御装置25は、第1流路65経由で減速回生を行う場合に、ブレーキセンサ97の検出値に応じた制動力を得ることができるか、つまり所要の制動力を得るために必要なオイルポンプモータ17の作動効率(以下、「高PM作動効率」と称する)が達成される第1回生状態にあるか、又は高PM作動効率が達成されない第2回生状態にあるかを判定する。高PM作動効率が達成されるか否かは、第1圧力センサ85、エンジン回転数センサ93及び車速センサ99の検出値などに基づいて決定される。
このとき、高PM作動効率が達成されない場合には、ステップST005に進み、上述したそれ以降のステップを行う。また、高PM作動効率が達成される場合には、ステップST011に進み、ステップST004と同様に高圧側オイル流路63を第1流路65に切り替える。そのことで、第1高圧蓄圧器21のオイル室49に貯留されたオイルの圧力がオイルポンプモータ17に負荷としてかかり、その圧力に抗して回生動作でオイルポンプモータ17により送られるオイルが第1高圧蓄圧器21のオイル室49に流入される。このステップST011を終えると、ステップST009に進む。
ステップST009では、制御装置25は、回生指令が継続しているか否かを判定する。このとき、回生指令が継続していると判定した場合には、ステップST002に戻ってそれ以降のステップを繰り返す。また、回生指令が継続していないと判定した場合には、リターンする。
以上の回生制御に従えば、エンジン出力回生において高エンジン運転効率が達成される第1回生状態にある場合と、減速出力回生において高PM作動効率が達成される第1回生状態にある場合には、第1モードで回生動作が行われる。また、エンジン出力回生において高エンジン運転効率が達成されない第2回生状態にある場合と、減速出力回生において高PM作動効率が達成されない第2回生状態にある場合には、第2モードで行う回生動作と、第3モードで行う回生動作とが繰り返し行われる。
−実施形態1の効果−
この実施形態1に係る回生システム1によると、第1モードでの回生動作では目標動作点P2でのエンジン運転効率を達成できない場合に、第2高圧蓄圧器23の圧力を一定の高圧域に保持しながら第2モードでの回生動作と第3モードでの回生動作とを繰り返すようにしたので、必要に応じてオイルポンプモータ17が第1高圧蓄圧器21にオイルを送り出すのにかかる負荷、ひいてはその負荷を担うエンジン出力トルクを大きくすることができる。それにより、エンジン運転効率を高めて、燃費を向上させることができる。また、オイルポンプモータ17を駆動させるのに消費されるエンジン出力トルクが大きくなるに連れてオイルポンプモータ17から吐出されるオイルの圧力も高められるので、余剰トルクの回生効率を向上させることができる。
《発明の実施形態2》
この実施形態2では、高圧蓄圧器として、オイルの貯留容量が異なる第1高圧蓄圧器及び第2高圧蓄圧器を備え、減速回生とエンジン出力回生とで、第1高圧蓄圧器のみを用いる第1モードと第2高圧蓄圧器のみを用いる第2モードとを使い分ける回生システム1について説明する。
−回生システムの構成−
図8に、この実施形態2に係る回生システム1の構成の概念図を示す。なお、この実施形態2では、上記実施形態1の回生システム1と同一の構成箇所については、同一符号を付し、その詳細な説明を、図1〜図7に基づく上記実施形態1の説明に譲ることにして省略する。
回生システム1は、エンジン3、クラッチ6、トランスミッション7、ディファレンシャルギア9、駆動輪11、第1オイルポンプモータとしてのオイルポンプモータ17、低圧リザーバ19、第1高圧蓄圧器21、第2高圧蓄圧器23、及び制御装置25などで構成されている。
エンジン3の出力軸4は、クラッチ6、トランスミッション7、オイルポンプモータ17及びディファレンシャルギア9を介して駆動輪11に連結されている。本実施形態のエンジン3は、オイルポンプモータの機能を兼ね備え、第2オイルポンプモータを構成している。
オイルポンプモータ17は、トランスミッション7と駆動輪11との間に設けられている。オイルポンプモータ17の回転軸は、ディファレンシャルギア9を介して駆動輪11に連結されている。このオイルポンプモータ17は、回生動作(減速回生)を行わないときにはオイルを内部で循環させる図示しないオイル循環機構を備えている。
低圧リザーバ19のオイル出入口19aは、オイルポンプモータ17の第1オイル出入口17aに低圧側オイル流路61を介して接続されている。また、低圧リザーバ19のオイル出入口19aは、低圧側オイル流路61を介してエンジン3にも接続されている。第1高圧蓄圧器21のオイル出入口21aは、オイルポンプモータ17の第2オイル出入口17bに第1高圧側オイル流路109を介して接続されている。
第2高圧蓄圧器23には、オイル室59にオイルを出入りさせるためのオイル出入口23cが設けられている。この第2高圧蓄圧器23のオイル出入口23cは、第2高圧側オイル流路111を介してエンジン3に接続されている。すなわち、低圧リザーバ19のオイル室41と第2高圧蓄圧器23のオイル室57とは、エンジン3を介して接続されている。第2高圧蓄圧器23のオイル出入口23cには、開閉弁24が設けられている。
第1高圧蓄圧器21でのオイルの貯留容量は、低圧リザーバ19でのオイルの貯留容量よりもやや少ない程度の容量とされている。第2高圧蓄圧器23でのオイルの貯留容量は、第1高圧蓄圧器21でのオイルの貯留容量よりも小さく、例えば、第1高圧蓄圧器21でのオイルの貯留容量の5分の1から2分の1程度の容量とされている。
図9に、エンジン3の構成の概念図を示す、図10に、図9のX−X線におけるエンジン3の断面構成の概念図を示す。エンジン3は、図9及び図10に示すように、第1燃焼用気筒113a、第2燃焼用気筒113b、第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bを有する。第1燃焼用気筒113a及び第2燃焼用気筒113bと、第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bとは、エンジン3の出力軸4の長手方向において交互に配置されている。
第1燃焼用気筒113a、第2燃焼用気筒113b、第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bの内部には、エンジン3の出力軸4の回転動作と連動して往復動可能なピストン117がそれぞれ嵌め入れられている。第1燃焼用気筒113a及び第2燃焼用気筒113bとそれらの内部にあるピストン117とは、混合気を燃焼させる燃焼室119を形成している。他方、第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bとそれらの内部にあるピストン117とは、オイルの吸入及び吐出を行うオイル室121を形成している。
第1燃焼用気筒113aのピストン117と第2燃焼用気筒113bのピストン117との往復動作は、同じ動作とされ、エンジン3の出力軸4の回転に連動して同時に昇降するようになっている。そして、これら第1燃料用気筒113aと第2燃焼用気筒113bとでは、吸気行程、圧縮行程、燃焼行程及び排気行程からなる燃焼サイクルの位相が180度異なっている。
また、第1回生用シリンダ115aのピストン117と第2回生用シリンダ115bのピストン117との往復動作は、往復サイクルでの互いの位相が180度ずれた反対動作とされ、エンジン3の出力軸4の回転に連動して一方のピストン117が上昇すると他方のピストン117が下降するようになっている。本実施形態では、第2回生用シリンダ115bのピストン117が、第1燃焼用気筒113a及び第2燃焼用気筒113bの両ピストン117と同時に昇降するようになっている。
エンジン3には、第1燃焼用気筒113a及び第2燃焼用気筒113bのそれぞれに対し吸気ポート123及び排気ポート125が形成され、且つこれら吸気ポート123及び排気ポート125の燃焼室119側の開口を開閉する吸気バルブ127及び排気バルブ129がそれぞれ設けられている。これら吸気バルブ127及び排気バルブ129は、エンジン3の出力軸4に連動して吸気ポート123及び排気ポート125をそれぞれ所定のタイミングで開閉するように往復駆動される。
また、エンジン3には、第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bのそれぞれに対し、第1オイルポート131及び第2オイルポート133が形成されている。第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bの各第1オイルポート131は、低圧側オイル流路61に接続されている。第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bの各第2オイルポート133は、第2高圧側オイル流路111に接続されている。
低圧側オイル流路61におけるエンジン3側の部分は、第1分岐路61aと第2分岐路61bとに分岐している。第1分岐路61aは、第1回生用シリンダ115aの第1オイルポート131のエンジン3外側に臨む開口に接続されている。第2分岐路61bは、第2回生用シリンダ115bの第1オイルポート131のエンジン3外側に臨む開口に接続されている。
第1分岐路61aには第1開閉弁135が、第2分岐路61bには第2開閉弁136がそれぞれ設けられている。第1開閉弁135は、第1分岐路61aでのオイルの流通を可能とする開状態と、第1分岐路61aでのオイルの流通を不能とする閉状態とで切り替えられる。第2開閉弁136は、第2分岐路61bでのオイルが流通を可能とする開状態と、第2分岐路61bでのオイルの流通を不能とする閉状態とで切り替えられる。
第2高圧側オイル流路111におけるエンジン3側の部分は、第1分岐路111aと第2分岐路111bとに分岐している。第1分岐路111aは、第1回生用シリンダ115aの第2オイルポート133のエンジン3外側に臨む開口に接続されている。第2分岐路111bは、第2回生用シリンダ115bの第2オイルポート133のエンジン3外側に臨む開口に接続されている。
第1分岐路111aには第3開閉弁137が、第2分岐路111bには第4開閉弁138がそれぞれ設けられている。第3開閉弁137は、第1分岐路111aでのオイルの流通を可能にする開状態と、第1分岐路111aでのオイルの流通を不能にする閉状態とで切り替えられる。第4開閉弁138は、第2分岐路111bでのオイルの流通を可能にする開状態と、第2分岐路111bでのオイルの流通を不能にする閉状態とで切り替えられる。
エンジン3にはさらに、第1回生用シリンダ115aのオイル室121と第2回生用シリンダ115bのオイル室121との間でオイルを流通させる循環流路139が設けられている。この循環流路139は、第1循環流路141と第2循環流路143とによって構成されている。これら第1循環流路141と第2循環流路143とは、一部を共通化して構成されている。
第1循環流路141は、第1回生用シリンダ115aの第1オイルポート131と、第2回生用シリンダ115bの第2オイルポート133とを接続している。第2循環流路143は、第1回生用シリンダ115aの第2オイルポート133と第2回生用シリンダ115bの第1オイルポート131とを接続している。
第1回生用シリンダ115aの第1オイルポート131と第1循環流路141との接続部分には、第1切替弁145が設けられている。この第1切替弁145は、第1回生用シリンダ115aのオイル室121と低圧側オイル流路61の第1分岐路61aとを第1オイルポート131を介して連通させる第1連通状態と、第1回生用シリンダ115aのオイル室121と第1循環流路141とを第1オイルポート131の一部を介して連通させる第2連通状態とを切り替える。
第1回生用シリンダ115aの第2オイルポート133と第2循環流路143との接続部分には、第2切替弁147が設けられている。この第2切替弁147は、第1回生用シリンダ115aのオイル室121と第2高圧側オイル流路111の第1分岐路111aとを第2オイルポート133を介して連通させる第1連通状態と、第1回生用シリンダ115aのオイル室121と第2循環流路143とを第2オイルポート133の一部を介して連通させる第2連通状態とを切り替える。
第2回生用シリンダ115bの第1オイルポート131と第2循環流路143との接続部分には、第3切替弁149が設けられている。この第3切替弁149は、第2回生用シリンダ115bのオイル室121と低圧側オイル流路61の第2分岐路61bとを第1オイルポート131を介して連通させる第1連通状態と、第2回生用シリンダ115bのオイル室121と第2循環流路143とを第1オイルポート131の一部を介して連通させる第2連通状態とを切り替える。
第2回生用シリンダ115bの第2オイルポート133と第1循環流路141との接続部分には、第4切替弁151が設けられている。この第4切替弁151は、第2回生用シリンダ115bのオイル室121と第2高圧側オイル流路111の第2分岐路111bとを第2オイルポート133を介して連通させる第1連通状態と、第2回生用シリンダ115bのオイル室121と第1循環流路141とを第2オイルポート133の一部を介して連通させる第2連通状態とを切り替える。
第1開閉弁135及び第1切替弁145は、第1回生用シリンダ115aのオイル室121と低圧リザーバ19との間でオイルが流通可能な第1状態と、第1回生用シリンダ115aのオイル室121と低圧リザーバ19との間でオイルが流通不能な第2状態とを切り替える第1切替機構を構成している。
第3開閉弁137及び第2切替弁147は、第1回生用シリンダ115aのオイル室121と第2高圧蓄圧器23との間でオイルが流通可能な第3状態と、第1回生用シリンダ115aのオイル室121と第2高圧蓄圧器23との間でオイルが流通不能な第4状態とを切り替える第2切替機構を構成している。
第2開閉弁136及び第3切替弁149は、第2回生用シリンダ115bのオイル室121と低圧リザーバ19との間でオイルが流通可能な第5状態と、第2回生用シリンダ115aのオイル室121と低圧リザーバ19との間でオイルが流通不能な第6状態とを切り替える第3切替機構を構成している。
第4開閉弁138及び第4切替弁151は、第2回生用シリンダ115bのオイル室121と第2高圧蓄圧器23との間でオイルが流通可能な第7状態と、第2回生用シリンダ115bのオイル室121と第2高圧蓄圧器23との間でオイルが流通不能な第8状態とを切り替える第4切替機構を構成している。
また、第1〜第4切替弁145,147,149,151は、第1回生用シリンダ115aのオイル室121と第2回生用シリンダ115bのオイル室121との間で循環流路139を介してオイルが流通可能な第9状態と、これら両オイル室121の間でオイルが流通不能な第10状態とを切り替える第5切替機構を構成している。
上記構成のエンジン3では、後に詳述するが、第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bにおいて、第1オイルポート131及び第2オイルポート133のうち一方のポートから流入したオイルを他方のポートから吐出する動作が行われる。それによって、当該エンジン3がオイルポンプ又は油圧モータとして機能する。
−回生システムの制御−
次に、上記回生システム1の動作とその制御について説明する。
回生システム1は、基本的な動作として回生動作と力行動作とを行い、回生動作としてエンジン出力回生と減速回生とを行う。エンジン出力回生には、第2高圧蓄圧器23のみが用いられる(第2モード)。他方、減速回生には、第1高圧蓄圧器21のみが用いられる(第1モード)。なお、本実施形態の回生システム1による減速回生については、基本的な動作が上記実施形態1と同様であるので、その詳細な説明を省略する。また、本実施形態の回生システム1におけるエンジン出力回生及び力行動作において、上記実施形態1と同様に、低圧リザーバ及び第2高圧蓄圧器23の両開閉弁81,24が共に制御装置25により開かれた状態とされる。
<エンジン出力回生>
制御装置25は、上記実施形態1と同様に、エンジン運転効率の良好な動作点でエンジン3を運転しようとする場合において、運転者の走行要求に応じた走行状態を実現してもなお余剰トルクが生じるときにエンジン出力回生を行う。制御装置25は、エンジン出力回生として、全出力回生と部分出力回生とを行う。これら全出力回生と部分出力回生とは、余剰トルクの大きさに応じて切り替えられる。
全出力回生及び部分出力回生について、以下に、図11〜図20を参照しながら説明する。図11は、全出力回生時の第1行程図である。図12は、図11のXII−XII線におけるエンジン3の状態を示す概念図である。図13は、全出力回生時の第2行程図である。図14は、図13のXIV−XIV線におけるエンジン3の状態を示す概念図である。図15は、全出力回生時の第3行程図である。図16は、図15のXVI−XVI線におけるエンジン3の状態を示す概念図である。図17は、全出力回生時の第4行程図である。図18は、図17のXVIII−XVIII線におけるエンジン3の状態を示す概念図である。図19は、部分出力回生時の第5行程図である。図20は、部分出力回生時の第6行程図である。
<全出力回生>
全出力回生は、エンジン出力回生時にエンジン3のオイルポンプ機能によって送られるオイルの油圧エネルギを全て回生する処理である。この全出力回生は、第1行程、第2行程、第3行程及び第4行程を含む。これら第1〜第4行程では、エンジン3の第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115b及びそれらの内部にあるピストン117がオイルポンプとして機能する。
全出力回生の第1行程では、図11及び図12に示すように、第1燃焼用気筒113aが圧縮行程にあり、且つ第2燃焼用気筒113bが排気行程にある。この第1行程において、制御装置25は、第1〜第4切替弁145,147,149,151をそれぞれ第1連通状態とする。そして、制御装置25は、第1開閉弁135を開状態とし(第1状態)、第2開閉弁136を閉状態とし(第4状態)、第3開閉弁137を閉状態とし(第6状態)、第4開閉弁を開状態とする(第7状態)。この第1行程では、第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bの両オイル室121と循環流路139とは遮断された状態となる(第10状態)。
このとき、第1回生用シリンダ115のピストン117は、下降移動しているため、低圧リザーバ19のオイルが第1ポート131を介して当該第1回生用シリンダ115aのオイル室121に流入される。他方、第2回生用シリンダ115bのピストン117は、上昇移動しているため、当該第2回生用シリンダ115bのオイル室121からオイルが第2ポート133を介して低圧側オイル流路111に吐出され、第2高圧蓄圧器23に送り込まれる。その結果、第2高圧蓄圧器23の内圧が上昇し、加圧されたオイルが第2高圧蓄圧器23に蓄積される。
全出力回生の第2行程では、図13及び図14に示すように、第1燃焼用気筒113aが燃焼行程にあり、且つ第2燃焼用気筒113bが吸気行程にある。この第2行程においても、制御装置25は、第1〜第4切替弁145,147,149,151をそれぞれ第1連通状態とする。そして、制御装置25は、第1開閉弁135を閉状態とし(第2状態)、第2開閉弁136を開状態とし(第3状態)、第3開閉弁137を開状態とし(第5状態)とし、第4開閉弁を閉状態とする(第8状態)。この第2行程でも、第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bの両オイル室121と循環流路139とは遮断された状態となる(第10状態)。
このとき、第1回生用シリンダ115aのピストン117は、上昇移動しているため、当該第1回生用シリンダ115aのオイル室121からオイルが第2ポート133を介して低圧側オイル流路111に吐出され、第2高圧蓄圧器23に送り込まれる。その結果、第2高圧蓄圧器23の内圧が上昇し、加圧されたオイルが第2高圧蓄圧器23に蓄積される。他方、第2回生用シリンダ115bのピストン117は、下降移動しているため、低圧リザーバ19のオイルが第1ポート131を介して当該第2回生用シリンダ115bのオイル室121に流入される。
全出力回生の第3行程では、図15及び図16に示すように、第1燃焼用気筒113aが排気行程にあり、且つ第2燃焼用気筒113bが圧縮行程にある。この第3行程において、制御装置25は、第1〜第4開閉弁135,136,137,138及び第1〜第4切替弁145,147,149,151を全出力回生の第1行程と同じ状態とする。
このとき、第1回生用シリンダ115aのピストン117は下降移動し、第2回生用シリンダ115bのピストン117は上昇移動しているため、全出力回生の第1行程と同様に、第1回生用シリンダ115aのオイル室121に低圧リザーバ19からのオイルが流入されると共に、第2回生用シリンダ115bのオイル室121からオイルが第2高圧蓄圧器23に送り込まれて、加圧されたオイルが第2高圧蓄圧器23に蓄積される。
全出力回生の第4行程では、図17及び図18に示すように、第1燃焼用気筒113aが吸気行程にあり、且つ第2燃焼用気筒113bが燃焼行程にある。この第4行程において、制御装置25は、第1〜第4開閉弁135,136,137,138及び第1〜第4切替弁145,147,149,151を全出力回生の第2行程と同じ状態とする。
このとき、第1回生用シリンダ115aのピストン117は上昇移動し、第2回生用シリンダ115bのピストンは下降移動しているため、第2行程と同様に、第1回生用シリンダ115aのオイル室121からオイルが第2高圧蓄圧器23に送り込まれて、加圧されたオイルが第2高圧蓄圧器23に蓄積されると共に、第2回生用シリンダ115bのオイル室121に低圧リザーバ19からのオイルが流入される。
この第4行程を終えると第1行程に戻る。全出力回生の実行中は、これら第1〜第4行程が繰り返し行われる。そうすることで、車両走行中の余剰トルクが、油圧エネルギとして第2高圧蓄圧器23に蓄積される。
<部分出力回生>
部分出力回生は、エンジン出力回生時にエンジン3のオイルポンプ機能によって送られるオイルの油圧エネルギを部分的に回生する処理である。この部分出力回生は、全出力回生の第1〜第4行程に加え、第5行程及び第6行程を含む。これら第5行程及び第6行程においても、エンジン3の第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115b及びそれらの内部にあるピストン117はオイルポンプとして機能する。
部分出力回生の第5行程では、図19に示すように、全出力回生の第1行程と同じく、第1燃焼用気筒113aが排気行程にあり、且つ第2燃焼用気筒113bが圧縮行程にある。この第5行程において、制御装置25は、第1〜第4開閉弁135,136,137,138をそれぞれ閉状態とする。そして、制御装置25は、第2切替弁147及び第3切替弁149をそれぞれ第1連通状態とし、第1切替弁145及び第4切替弁151をそれぞれ第2連通状態とする(第9状態)。
このとき、第2回生用シリンダ115bのピストン117は上昇移動しているため、第2回生用シリンダ115bのオイル室121からオイルが第2ポート133の一部を介して第1循環流路141に吐出される。また、第1回生用シリンダ115aのピストン117は下降移動しているため、第1循環流路141を流れるオイルが第1ポート131の一部を介して第1回生用シリンダ115aのオイル室121に流入する。こうして、第2回生用シリンダ115bのオイル室121から第1回生用シリンダ115aのオイル室121にオイルが送られる。
部分出力回生の第6行程は、図20に示すように、全出力回生の第4行程と同じく、第1燃焼用気筒113aが吸気行程にあり、且つ第2燃焼用気筒113bが燃焼行程にある。この第6行程においても、制御装置25は、第1〜第4開閉弁135,136,137,138をそれぞれ閉状態する。そして、制御装置25は、第1切替弁145及び第4切替弁151をそれぞれ第1連通状態とし、第2切替弁147及び第3切替弁149をそれぞれ第2連通状態とする(第9状態)。
このとき、第1回生用シリンダ115aのピストン117は上昇移動しているため、第1回生用シリンダ115aのオイル室121からオイルが第2ポート133の一部を介して第2循環流路143に吐出される。また、第2回生用シリンダ115bのピストン117は下降移動しているため、第2循環流路143を流れるオイルが第1ポート131の一部を介して第2回生用シリンダ115bのオイル室121に流入する。こうして、第1回生用シリンダ115aのオイル室121から第2回生用シリンダ115bのオイル室121にオイルが送られる。
部分出力回生では、制御装置25は、第5行程及び第6行程を第1行程〜第4行程と適宜組み合わせて行う。上述のような部分出力回生と全出力回生とを切り替えながら回生動作を行えば、エンジン3のオイルポンプ機能により第2高圧蓄圧器23にオイルを送り出すのにかかるエンジン負荷、つまりはその負荷を担うエンジン出力トルクを調節し、エンジン運転効率を高めることができる。
<力行>
また、この実施形態2の回生システム1は、力行として、全負荷力行と部分負荷力行とを行う。これら全負荷力行及び部分負荷力行について、以下に、図21〜図26を参照しながら説明する。
図21は、全負荷力行時の第1行程図である。図22は、図21のXXII−XXII線におけるエンジン3の状態を示す概念図である。図23は、全負荷力行時の第2行程図である。図24は、図23のXXIV−XXIV線におけるエンジン3の状態を示す概念図である。図25は、部分負荷力行時の第3行程図である。図26は、部分負荷力行時の第4行程図である。
制御装置25は、上記実施形態1と同様に、自動車Cの発進時や減速走行又は定常走行からの加速時、さらには上り坂での定常走行時などに力行を行う。本実施形態の力行では、車両走行に必要とされる駆動力の大きさに応じて全負荷力行と部分負荷力行とに切り替えられる。
<全負荷力行>
全負荷力行は、第2高圧蓄圧器23から吐出されるオイルの吐出圧を全てエンジン3に負荷し、その油圧エネルギを全て力行に利用する処理である。この全負荷力行は、第1行程及び第2行程を含む。これら第1行程及び第2行程では、図21〜図24に示すように、第1燃焼用気筒113a及び第2燃焼用気筒113bは共に休止状態とされ、それら両気筒113a,113bで吸気バルブ127及び排気バルブ129の両方が開状態とされる。
全負荷力行の第1行程は、第1回生用シリンダ115aのピストン117を下降移動させると共に、第2回生用シリンダ115bのピストン117を上昇移動させる行程である。この第1行程において、制御装置25は、第1〜第4切替弁145,147,149,151をそれぞれ第1連通状態とする。そして、制御装置25は、第1開閉弁135を閉状態とし(第2状態)、第2開閉弁136を開状態とし(第3状態)、第3開閉弁137を開状態とし(第5状態)、第4開閉弁138を閉状態とする(第8状態)。この第1行程では、第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bの両オイル室121と循環流路139とは遮断された状態となる(第10状態)。
そうすると、第2高圧蓄圧器23に蓄積されたオイルの圧力が第2高圧側オイル流路111及び第2ポート133を介して第1回生用シリンダ115aのピストン117にかかり、図21及び図22に示すように、第2高圧蓄圧器23から吐出されたオイルが第1回生用シリンダ115aのオイル室121に流入する。そして、そのオイルの流入圧で第1回生用シリンダ115aのピストン117が下降移動し、その下降移動を以てエンジン3の出力軸4が回転される。この出力軸4の回転により第2回生用シリンダ115bのピストン117が上昇移動し、その上昇移動を以て第2回生用シリンダ115bのオイル室121から第1ポート131及び低圧側オイル流路61を介して低圧リザーバ19にオイルが送られる。
全負荷力行の第2行程は、第1回生用シリンダ115aのピストン117を上昇移動させると共に、第2回生用シリンダ115bのピストン117を下降移動させる行程である。この第2行程においても、制御装置25は、第1〜第4切替弁145,147,149,151はそれぞれ第1連通状態とする。そして、制御装置25は、第1開閉弁135を開状態とし(第1状態)、第2開閉弁136を閉状態とし(第4状態)、第3開閉弁137を閉状態とし(第6状態)、第4開閉弁138を開状態とする(第7状態)。この第2行程でも、第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bの両オイル室121と循環流路139とは遮断された状態となる(第10状態)。
そうすると、第2高圧蓄圧器23に蓄積されたオイルの圧力が第2高圧側オイル流路111及び第2ポート133を介して第2回生用シリンダ115bのピストン117にかかり、図23及び図24に示すように、第2高圧蓄圧器23から吐出されたオイルが第2回生用シリンダ115bのオイル室121に流入する。そして、そのオイルの流入圧で第2高圧蓄圧器23のピストン117が下降移動し、その下降移動を以てエンジン3の出力軸4が回転される。この出力軸4の回転により第1回生用シリンダ115aのピストン117が上昇移動し、その上昇移動を以て第1回生用シリンダ115aのオイル室121から第1ポート131及び低圧側オイルポート61を介して低圧リザーバ19にオイルが送られる。
この第2行程を終えると第1行程に戻る。全負荷力行の実行中は、これら第1行程及び第2行程が繰り返し行われる。そうすることで、第2高圧蓄圧器23に蓄積された油圧エネルギが自動車Cの油圧走行に利用される。
<部分負荷力行>
部分負荷力行は、第2高圧蓄圧器23から吐出されるオイルの吐出圧の一部をエンジン3に負荷し、その油圧エネルギを部分的に力行に利用する処理である。この部分負荷力行は、全負荷力行の第1行程及び第2行程に加え、第3行程及び第4行程を含む。これら第3行程及び第4行程でも、図25及び図26に示すように、第1燃焼用気筒113a及び第2燃焼用気筒113bは共に休止状態とされ、それら両気筒113a,113bで吸気バルブ127及び排気バルブ129の両方が開状態とされる。
部分負荷力行の第3行程は、第2回生用シリンダ115bのオイル室121から第1回生用シリンダ115aのオイル室121に第2循環流路143を介してオイルを送る行程である。この第3行程において、制御装置25は、第1〜第4開閉弁135,136,137,138をそれぞれ閉状態とする。そして、制御装置25は、第1切替弁145及び第4切替弁151をそれぞれ第1連通状態とし、第2切替弁147及び第3切替弁149をそれぞれ第2連通状態とする(第9状態)。
そうすると、第2高圧蓄圧器23に蓄積されたオイルの圧力は、第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bのいずれのピストン117にもかからない状態となるが、エンジン3の出力軸4の慣性力による回転により、第1回生用シリンダ115aのピストン117が下降移動すると共に、第2回生用シリンダ115bのピストン117が上昇移動する。そのことで、図25に示すように、第2回生用シリンダ115bのオイル室121からオイルが第1ポート131の一部を介して第1循環流路141に吐出され、その吐出されたオイルが第2ポート133の一部を介して第1回生用シリンダ115aのオイル室121に流入する。こうして、第2回生用シリンダ115bのオイル室121から第1回生用シリンダ115aのオイル室121にオイルが送られる。
部分負荷力行の第4行程は、第1回生用シリンダ115aのオイル室121から第2回生用シリンダ115bのオイル室121に第1循環流路141を介してオイルを送る行程である。この第4行程においても、制御装置25は、第1〜第4開閉弁135,136,137,138をそれぞれ閉状態とする。そして、制御装置25は、第2切替弁147及び第3切替弁149をそれぞれ第1連通状態とし、第1切替弁145及び第4切替弁151をそれぞれ第2連通状態とする(第9状態)。
この第4行程においても、第2高圧蓄圧器23に蓄積されたオイルの圧力は、第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bのいずれのピストン117にもかからない状態となるが、エンジン3の出力軸4の慣性力による回転により、第1回生用シリンダ115aのピストン117が上昇移動すると共に、第2回生用シリンダ115bのピストン117が下降移動する。そのことで、図26に示すように、第1回生用シリンダ115aのオイル室121からオイルが第1ポート131の一部を介して第1循環流路141に吐出され、その吐出されたオイルが第2ポート133の一部を介して第2回生用シリンダ115bのオイル室121に流入する。こうして、第1回生用シリンダ115aのオイル室121から第2回生用シリンダ115bのオイル室121にオイルが送られる。
部分負荷力行では、制御装置25は、これら第3行程及び第4行程を第1行程及び第2行程と適宜組み合わせて行う。このような部分負荷力行と全負荷力行とを切り替えながら力行動作を行えば、力行によって得られるエンジン3の駆動力を調節し、運転要求に見合った発進や加速走行を実現することができる。
−実施形態2の効果−
この実施形態2に係る回生システム1によると、減速回生においては第1高圧蓄圧器21のみを用いる回生動作を、エンジン出力回生においては第2高圧蓄圧器23のみを用いる回生動作を行うようにしたので、減速回生時には、オイルの貯留容量が相対的に大きな第1高圧蓄圧器21で回生動作により回生可能なエネルギ量を確保しつつ、エンジン出力回生時には、オイルの貯留容量が相対的に小さな第2高圧蓄圧器23を用いて比較的短期間に回生動作及び力行動作を繰り返し行うといった細かな回生及び力行制御を実行することができる。それによって、車両走行中に回生可能なエネルギ量を稼いで燃費を向上させることができる。
また、この実施形態2に係る回生システム1によると、エンジン3にオイルポンプモータを一体に構成するようにしたので、エンジン3とは別個にエンジン出力回生用のオイルポンプモータを設ける場合に比べて、回生システム1のコンパクト化を図ることができる。
そのようなオイルポンプモータを兼ねたエンジン3では、エンジン3の余剰トルクが第1回生用シリンダ115a及び第2回生用シリンダ115bのピストン117の往復動を以て油圧エネルギに直接変換されるし、第2高圧蓄圧器23から吐出されたオイルの油圧エネルギがそれら両回生用シリンダ115a,115bのピストン117の往復動を以て出力トルクに直接変換されるので、エンジン出力回生時及び力行時の動力伝達における機械損失を抑制することができ、余剰トルクの回生効率を向上させることができる。
以上のように、ここに開示する技術の例示として、好ましい実施形態について説明した。しかし、ここに開示する技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、上記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須でない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることを以て、直ちにそれらの必須でない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
例えば、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態1では、回生状態に依存するエンジン運転効率の高低に基づいて第1高圧蓄圧器21のみを用いる第1モードと、第2高圧蓄圧器23のみを用いる第2モードと、第1高圧蓄圧器21及び第2高圧蓄圧器23の両方を用いる第3モードとを使い分ける回生システム1について説明したが、これに限らず、エンジン運転効率などを向上させるように、第1モード及び第3モードの2つのモードのみを使い分けてもよいし、第2モード及び第3モードのみを使い分けるようにしてもよい。
また、上記実施形態2では、減速回生とエンジン出力回生とで、第1高圧蓄圧器21のみを用いる第1モードと第2高圧蓄圧器23のみを用いる第2モードとを使い分ける回生システム1について説明したが、これに限らず、第1高圧蓄圧器21に目一杯のオイルが貯留されてそれ以上は第1モードでの減速回生が行えない場合に、クラッチ6を接続することにより減速走行時の制動力をエンジン3に伝え、エンジン3のオイルポンプ機能によって低圧リザーバ19のオイルを第2高圧蓄圧器23に送るようにして減速回生を行ってもよい。
また、上記実施形態2では、第1〜第4切替弁145〜151が第1〜第5切替機構を兼ねている構成、つまり第1〜第5切替機構の一部が共通化された構成を例に挙げたが、これに限らず、第1〜第5切替機構は、全く独立した別個の装置や構造によって構成されていてもよい。
図27に、上記実施形態2の変形例に係る回生システム1の部分構成を示す。上記実施形態2では、オイルポンプモータ17がトランスミッション7の駆動輪側に備えられている構成を例に挙げて説明したが、これに限らず、エンジン出力回生による回生効率を減速回生による回生効率よりも重視する場合には、オイルポンプモータ17は、図27に示すように、トランスミッション7とエンジン3との間に備えられていてもよい。
この場合、クラッチとしては、エンジン3の出力軸4との接続状態を切り替えるクラッチ6と、トランスミッション7のクラッチ7aとを備えており、大きな駆動力を発生していないコースティング時にはクラッチ6を切断してエンジン3を停止状態とし、そこから加速要求があった場合にはモータと駆動輪11との間にあるクラッチ7aを接続してエンジン走行に移行する。そのようにすれば、車両加速度への影響が少なく、エンジン走行への速い移行が可能となる。特に、油圧エネルギの回生量が小さい場合に有効であり、自動車Cの駆動力には大きく寄与できなくてもエンジン3の素早い始動を実現することができる。