以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、本明細書に記載された発明の実施についての教示と出願時の技術常識とに基づいて当業者に理解され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を必ずしも正確に表したものではない。
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion : Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E*(1Hz)<107dyne/cm2を満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)であり得る。
<伸張性粘着シートの構成>
ここに開示される伸張性粘着シートは、熱伝導性フィラーを含有するフィラー含有粘着剤層を少なくとも1つ有する。上記粘着シートは、典型的には、フィラー含有粘着剤層を支持する基材をさらに備える形態の基材付き粘着シートである。基材(支持体)としては、フィルム状基材を好ましく採用し得る。ここに開示される粘着シートの好ましい一形態として、フィルム状基材の第一面および第二面にそれぞれ第一粘着剤層および第二粘着剤層を備え、上記第一粘着剤層および第二粘着剤層のうち少なくとも一方(好ましくは両方)がフィラー含有粘着剤層である基材付き両面粘着シートの形態が例示される。他の形態として、フィルム状基材の片面に粘着剤層を備え、該粘着シートがフィラー含有粘着剤層である基材付き片面粘着シートの形態や、フィラー含有粘着剤層を支持する基材を有しない基材レス両面粘着シートの形態が例示される。ここでいう粘着シートの概念には、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称されるものが包含され得る。なお、ここに開示される粘着シートは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。あるいは、さらに種々の形状に加工された形態の粘着シートであってもよい。
ここに開示される伸張性粘着シートは、例えば、図1に模式的に示される断面構造を有するものであり得る。図1に示す伸張性粘着シート1では、フィルム状基材10の各面(いずれも非剥離性)にそれぞれ粘着剤層21,22が設けられている。使用前の粘着シート1は、粘着剤層21,22の各表面(各粘着面)が剥離ライナー(図示せず)に保護された構成を有している。粘着剤層21,22の少なくとも一方はフィラー含有粘着剤層であり、好ましくは、粘着剤層21,22の両方がフィラー含有粘着剤層である。あるいは、ここに開示される粘着シートは、特に図示しないが、粘着剤層のみからなる基材レスの両面粘着シートであってもよい。
また、ここに開示される伸張性粘着シートは、引張り除去性の観点から、長尺状部分を有することが好ましい。これにより、被着体に貼り付けられた粘着シートにおいて、長尺状に形成された部分の長手方向の一端を把持して引くことで、粘着シートを被着体から好ましく除去することができる。上記長尺状部分の形状は、典型的には帯状である。引張り除去性の観点から、上記長尺状部分は、長手方向の一端に向かって先細りする形状を有していてもよい。より好ましい一態様では、粘着シートはその全体が長尺状に形成されている。引張り除去作業性の観点から、粘着シートの長手方向の一端にはタブ(把持部)が設けられていることが好ましい。タブの形状は特に限定されないが、指で把持することが可能な形状(例えば矩形状)であることが好ましい。
<伸張性粘着シートの特性>
ここに開示される伸張性粘着シートは、典型的には、熱抵抗値が凡そ12cm2・K/W未満である。このような熱特性を有する粘着シートは、熱伝導性がよく、該粘着シートが貼り付けられた被着体の放熱に有利に寄与し得る。また、上記粘着シートは伸張性を有するので引張り除去性がよい。したがって、携帯型電子機器に用いられる粘着シートとして有用である。例えば、携帯型電子機器の部材(バッテリー等)を固定するための粘着シートとして好適である。
被着体からの放熱効果を高める観点から、粘着シートの熱抵抗値(定常熱流法)は、好ましくは凡そ11cm2・K/W以下、より好ましくは凡そ10cm2・K/W以下(例えば凡そ9.5cm2・K/W以下)とすることができる。粘着シートの熱抵抗値の下限は特に制限されないが、良好な引張り除去性との両立を容易とする観点から、典型的には凡そ3cm2・K/W以上であり、通常は凡そ4cm2・K/W以上が適当であり、好ましくは凡そ5cm2・K/W以上(例えば凡そ5.5cm2・K/W以上)である。ここに開示される粘着シートは、例えば、熱抵抗値が凡そ5.5cm2・K/W以上凡そ10cm2・K/W未満である態様で好ましく実施され得る。
粘着シートの熱伝導率は特に限定されない。良好な熱伝導性と好適な引張り除去性との両立を容易とする観点から、粘着シートの熱伝導率(定常熱流法)は、通常、凡そ0.12W/m・Kより高いことが適当であり、凡そ0.13W/m・Kより高いことが好ましく、凡そ0.15W/m・K以上(例えば凡そ0.17W/m・K以上)であることがより好ましい。粘着シートの熱伝導率の上限は特に制限されないが、製造容易性等の観点から、通常は凡そ0.5W/m・K以下とすることが適当であり、典型的には凡そ0.4W/m・K以下、例えば凡そ0.3W/m・K以下である。
粘着シートの熱抵抗値および熱伝導率は、例えば、後述する実施例に記載の方法(定常熱流法)によって評価することができる。
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートは、ポリカーボネート(PC)に対する初期粘着力Aが凡そ1N/20mm以上(例えば3N/20mm以上)であることが好ましい。これにより、PC等の各種材料から形成された被着体に対して充分な接着機能を発揮することができる。また、上記初期粘着力Aを有する粘着シートを、例えば携帯型電子機器に適用した場合には、携帯型電子機器が落下したときにも被着部材の固定配置を保持し得る。上記初期粘着力Aの上限は特に限定されないが、引張り除去性や糊残り防止性を考慮して、凡そ15N/20mm未満(例えば凡そ12N/20mm未満、典型的には凡そ10N/20mm未満)とすることが好ましい。
初期粘着力Aの測定は、次の方法で行うことができる。幅20mm、長さ100mmのサイズにカットした粘着シートを用意する。23℃、50%RHの環境下にて、上記粘着シート(典型的には両面粘着シート)の粘着面を露出させ、該粘着面をPC板の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を用いて、JIS Z 0237:2000に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度[N/20mm幅]を測定する。粘着シートが両面粘着シートの場合には、他方の粘着面に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合わせた後、測定対象粘着面をPC板に圧着して測定を行えばよい。引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(製品名「TG−1kN」、ミネベア社製)を使用することができる。後述の実施例についても同様の方法が採用される。
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートは、PCに対する引張り剥離応力Bが凡そ25N/20mm以下であることが適当である。上記引張り剥離応力Bが所定値以下であることにより、接着面に対して0度方向(せん断方向)に作用する方向(典型的には、接着面に対して−90度〜+90度の方向。以下、単に「引張り剥離方向」ともいう。)に粘着シートを引っ張ることで、粘着シートを各種被着体からスムーズに除去することができる。上記引張り剥離応力Bは、好ましくは凡そ20N/20mm以下、より好ましくは凡そ18N/20mm以下、例えば凡そ15N/20mm以下である。引張り剥離応力Bの下限は特に限定されないが、初期粘着力Aとの関係性から、通常は凡そ2N/20mm以上(例えば5N/20mm以上)とすることが適当である。
引張り剥離応力Bの測定は、次の方法で行うことができる。粘着シートを幅20mm、長さ120mmのサイズにカットして測定サンプルを用意する。23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプル(典型的には両面粘着シート)の各粘着面を2枚のPC板(30mm×100mm×2mm厚)の表面にそれぞれ重ねて2kgのローラを1往復させて圧着する。測定サンプルの長手方向の一端から70mm分(すなわち20mm×70mm)を各PC板に圧着する。これを同環境下に30分間放置した後、引張試験機を用いて、2枚のPC板をそれぞれ固定し、引張速度300mm/分、剥離角度0度の条件で、剥離強度[N/20mm幅]を測定する。具体的には、図2に示すように、粘着シート測定サンプル100の各粘着面100A、100Bを2枚のPC板111,112にそれぞれ貼り合わせて圧着する。これを上述の速度で図2中の矢印方向(すなわち、引張り剥離方向)に引っ張り、剥離強度[N/20mm幅]を測定する。片面接着性の粘着シート(片面粘着シート)の場合は、その一の粘着面を一のPC板に固定する他は上記と同様にして剥離強度[N/20mm幅]を測定すればよい。引張試験機としては、万能引張圧縮試験機(製品名「TG−1kN」、ミネベア社製)を使用することができる。後述の実施例についても同様の方法が採用される。
好ましい一態様では、初期粘着力A[N/20mm]に対する引張り剥離応力B[N/20mm]の比(B/A)が3.0以下である。上記比(B/A)が小さいことは、所定値以上の初期粘着力Aを有する構成において、該初期粘着力Aとの相対的な関係で引張り剥離応力Bが低減されていることを意味する。これにより、使用時における充分な接着機能と、除去時における優れた引張り除去性とを好ましく両立することができる。上記比(B/A)は、好ましくは凡そ2.8以下(例えば凡そ2.6以下、典型的には凡そ2.4以下)である。上記比(B/A)は理想的には低ければ低いほどよく、例えば凡そ1.0以下であってもよい。一方、実用上の観点から、上記比(B/A)は、例えば凡そ0.5以上であってよく、あるいは凡そ1.2以上(典型的には凡そ1.5以上)であってもよい。
好ましい一態様では、粘着シートは、凡そ8MPa以上の破断強度を示す。これにより、所定以上の粘着力を示す構成において、粘着シートの除去時に千切れ等の損傷が生じ難い構成となり得る。また、加工性にも優れる傾向がある。上記破断強度は、より好ましくは凡そ10MPa以上であり、さらに好ましくは凡そ15MPa以上(例えば凡そ20MPa以上)である。特に限定するものではないが、粘着シートの弾性や伸長性等の観点から、通常、上記破断強度は100MPa以下(例えば80MPa以下、典型的には70MPa以下)程度とすることが好ましく、60MPa以下(例えば50MPa以下、典型的には40MPa以下)程度であってもよい。
上記破断強度は、JIS K 7311:1995に記載の「引張強さ」の測定方法に準拠して測定される。より具体的には、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で上記破断強度を測定することができる。引張試験機としては、島津製作所社製の製品名「Autograph AG−10G型引張試験機」を使用することができる。試験に際しては、粘着面にパウダーを塗して、粘着剤のべたつきによる影響を除去しておくことが好ましい。なお、上記試験における引張方向は、特に限定されないが、粘着シートが長尺状の場合には、その長手方向と一致させることが好ましい。上記破断強度は例えば基材材料の選択によって調整することができる。
ここに開示される粘着シートは、伸長性を有することが好ましい。これにより、引張り除去時に粘着シートは伸長変形して剥がれ得る。なお、この明細書において「伸長性を有する」とは、破断時伸びが20%以上であることと定義される。粘着シートの破断時伸びは、50%以上(例えば100%以上、典型的には200%以上)程度であり得る。好ましい一態様では、粘着シートは、凡そ300%以上の破断時伸びを示す。これにより、引張りと粘着シートの伸長変形とが相互に作用して、より優れた引張り除去性が実現される。上記特性を示す粘着シートは、除去の際に被着体の変形を防止する点でも好ましい。上記破断時伸びは、より好ましくは400%以上(例えば450%以上、典型的には500%以上)程度である。上記破断時伸びの上限は特に限定されないが、除去作業性等の観点から、例えば1000%以下(典型的には900%以下)程度であり得る。
上記破断時伸びは、JIS K 7311:1995に記載の「伸び」の測定方法に準拠して測定される。より具体的には、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm、標線間隔20mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で上記破断時伸びを測定することができる。引張試験機その他については、基本的に上述の破断強度の場合と同様である。なお、上記試験における引張方向は、特に限定されないが、粘着シートが長尺状の場合には、その長手方向と一致させることが好ましい。上記破断時伸びは例えば基材材料の選択によって調整することができる。
ここに開示される粘着シートは、10MPa未満の100%モジュラスを示すことが好ましい。粘着シートの100%モジュラスを所定値未満とすることにより、粘着シートを引っ張って伸長変形させることで被着体から除去する場合において、引っ張り始めの抵抗が小さくなり引張り除去性に優れる傾向がある。上記100%モジュラスは、より好ましくは5MPa未満である。上記100%モジュラスの下限は特に限定されないが、粘着シートの貼り付け作業性の観点から、通常は0.5MPa以上(例えば1MPa以上)とすることが適当である。100%モジュラスは、JIS K 7311:1995に記載の「引張応力」の測定方法に準拠して測定される。より具体的には、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm、標線間隔20mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で引っ張り、上記標線距離が100%伸びたときの応力[MPa]を100%モジュラスとする。引張試験機としては、島津製作所社製の製品名「Autograph AG−10G型引張試験機」を使用することができる。粘着シートの100%モジュラスは、例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)や成形方法等によって調整することができる。
好ましい一態様では、粘着シートは、凡そ50%を超える引張り回復率を示すことが適当である。上記引張り回復率は凡そ70%以上であることがより好ましい。上記引張り回復率は、さらに好ましくは80%以上(例えば90%以上、典型的には93%以上100%以下)程度である。これにより、粘着シート除去時における千切れ等の損傷がより高度に防止され得る。この点について説明する。例えば、粘着シートをせん断方向に引っ張って除去する場合、接着面積等に応じて、通常はある程度の時間を要する。そのため、除去作業を途中で中断することもあり得る。そのような場合に、粘着シートの引張り回復率が所定値以下であると、作業中断前の引張りにより機械的特性(強度、弾性等)が低下した状態から除去作業が再開されることとなり得る。そのとき、粘着シートは除去作業再開時の引張りに耐えられず、千切れる等の損傷が生じやすい。上記引張り回復率を示す粘着シートは、上記のように一度中断が入るような態様で除去される場合においても、引張り後の回復によって機械的特性の低下が抑制されているので、損傷がより高度に防止されたものとなり得る。
引張り回復率の測定は、下記の方法で行われる。
[引張り回復率の測定]
粘着シートにつき、該粘着シートの特定区間距離L0を100%引き伸ばす引張試験を行う。該粘着シートを100%引き伸ばした後、解放して5分経過後における上記特定区間の長さをL1としたときに、式:引張り回復率(%)=L0/L1×100;より引張り回復率を求める。
より具体的には、JIS K 7311:1995に準拠して、3号形ダンベル状の試験片(幅5mm、標線間隔20mm)を用いて引張速度300mm/分の条件で100%引き伸ばす。換言すると、標線間隔が20mm延伸するまで引っ張る。そして、引張りから解放して5分経過後における長さL1(標線間隔:mm)を計測し、式:引張り回復率(%)=L0/L1×100;より引張り回復率を求める。この方法において、L0は初期の標線間隔20mmである。引張試験機その他については、基本的に上述の破断時伸びの場合と同様である。なお、上記試験における引張方向は、特に限定されないが、粘着シートまたはその長尺部の長手方向と一致させることが好ましい。上記引張り回復率は例えば基材材料の選択によって調整することができる。
<粘着剤層>
(ベースポリマー)
ここに開示される粘着剤層(基材付き両面粘着シートの場合は、第一粘着剤層および第二粘着剤層を包含する。以下同じ。)は、粘着剤の分野において公知のアクリル系ポリマー、ゴム系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、フッ素系ポリマー等の各種ゴム状ポリマーの1種または2種以上をベースポリマーとして含むものであり得る。詳しくは後述するが、ここに開示される粘着剤層は、好ましくは、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤層、ゴム系ポリマーをベースポリマーとして含むゴム系粘着剤層、ウレタン系ポリマーをベースポリマーとして含むウレタン系粘着剤層である。あるいは、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーとゴム系ポリマーとを併用した粘着剤層であってもよい。
(アクリル系ポリマー)
好ましい一態様では、上記粘着剤層は、粘着特性(典型的には粘着力)や分子設計、経時安定性等の観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとして含むアクリル系粘着剤層である。なお、この明細書において粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるポリマー成分の主成分(典型的には、50重量%を超えて含まれる成分)をいう。
上記アクリル系ポリマーとしては、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを主モノマーとして含み、該主モノマーと共重合性を有する副モノマーをさらに含み得るモノマー原料の重合物が好ましい。ここで主モノマーとは、上記モノマー原料における全モノマー成分の50重量%超を占める成分をいう。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH2=C(R1)COOR2 (1)
ここで、上記式(1)中のR1は水素原子またはメチル基である。また、R2は炭素原子数1以上20以下の鎖状アルキル基(以下、このような炭素原子数の範囲を「C1−20」と表すことがある。)である。粘着剤の貯蔵弾性率等の観点から、R2がC1−14(例えばC2−10、典型的にはC4−8)の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、R1が水素原子でR2がC4−8の鎖状アルキル基であるアルキルアクリレートがより好ましい。
R2がC1−20の鎖状アルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらアルキル(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましいアルキル(メタ)アクリレートとして、n−ブチルアクリレート(BA)および2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。粘着特性や糊残り防止等の観点から、BAがより好ましい。
全モノマー成分中における主モノマーの配合割合は70重量%以上(例えば85重量%以上、典型的には90重量%以上)程度であることが好ましい。主モノマーの配合割合の上限は特に限定されないが、99.5重量%以下(例えば99重量%以下)程度とすることが好ましい。また、モノマー成分としてC4−8アルキルアクリレートを使用する場合、該モノマー成分中に含まれるアルキル(メタ)アクリレートのうちC4−8アルキルアクリレートの割合は、70重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましく、95重量%以上(典型的には99重量%以上100重量%以下)程度であることがさらに好ましい。ここに開示される技術は、全モノマー成分の凡そ50重量%以上(例えば凡そ60重量%以上)がBAである態様で好ましく実施され得る。好ましい一態様において、上記全モノマー成分は、BAより少ない割合で2EHAをさらに含み得る。
主モノマーであるアルキル(メタ)アクリレートと共重合性を有する副モノマーは、アクリル系ポリマーに架橋点を導入したり、アクリル系ポリマーの凝集力を高めたりするために役立ち得る。副モノマーとして、例えばカルボキシ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、窒素原子含有環を有するモノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等の官能基含有モノマーの1種または2種以上を使用することができる。例えば、凝集力向上の観点から、上記副モノマーとしてカルボキシ基含有モノマーおよび/または水酸基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが好ましい。上記カルボキシ基含有モノマーの好適例としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸(MAA)等が例示される。上記水酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や不飽和アルコール類等が挙げられる。なかでも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、4−ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)がより好ましい。
上記副モノマーの量は、所望の凝集力が実現されるように適宜選択すればよく、特に限定されない。通常は、接着力と凝集力とをバランスよく両立させる観点から、副モノマーの量は、アクリル系ポリマーの全モノマー成分中の凡そ0.5重量%以上とすることが適当であり、好ましくは1重量%以上である。また、副モノマーの量は、全モノマー成分中の凡そ30重量%以下が適当であり、好ましくは凡そ10重量%以下(例えば凡そ5重量%以下)である。アクリル系ポリマーにカルボキシ基含有モノマーが共重合されている場合、接着力と凝集力との両立の観点から、カルボキシ基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ0.1重量%以上(例えば凡そ0.2重量%以上、典型的には凡そ0.5重量%以上)であることが好ましく、また、凡そ10重量%以下(例えば凡そ8重量%以下、典型的には凡そ5重量%以下)であることが好ましい。アクリル系ポリマーに水酸基含有モノマーが共重合されている場合、接着力と凝集力との両立の観点から、水酸基含有モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ0.001重量%以上(例えば凡そ0.01重量%以上、典型的には凡そ0.02重量%以上)であることが好ましく、また、凡そ10重量%以下(例えば凡そ2重量%以下)であることが好ましい。
ここに開示されるアクリル系ポリマーには、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、上記以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。上記その他のモノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのガラス転移温度の調整、粘着性能(例えば剥離性)の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力を向上させ得るモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。上記その他モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なかでも、ビニルエステル類が好適例として挙げられる。ビニルエステル類としては、具体的には、酢酸ビニル(VAc)、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が例示される。なかでも、VAcが好ましい。上記その他モノマーの含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用する全モノマー成分中、凡そ30重量%以下(例えば凡そ10重量%以下)とすることが好ましく、また、例えば凡そ0.01重量%以上(典型的には凡そ0.1重量%以上)とすることができる。
上記アクリル系ポリマーの共重合組成は、耐衝撃性等の観点から、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)が−15℃以下(典型的には−25℃以下、例えば−40℃以下)程度となるように設計されていることが適当である。上記アクリル系ポリマーのTgは、通常、凡そ−70℃以上、例えば凡そ−60℃以上であることが適当である。上記アクリル系ポリマーのTgは、典型的には凡そ−70℃以上凡そ−15℃以下であり、好ましくは凡そ−60℃以上凡そ−25℃以下であり、例えば凡そ−60℃以上凡そ−40℃以下である。
アクリル系ポリマーのTgは、モノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。ここで、アクリル系ポリマーのTgとは、該ポリマーを構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの重量分率(重量基準の共重合割合)に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。Foxの式とは、以下に示すように、共重合体のTgと、該共重合体を構成するモノマーのそれぞれを単独重合したホモポリマーのガラス転移温度Tgiとの関係式である。
1/Tg=Σ(Wi/Tgi)
なお、上記Foxの式において、Tgは共重合体のガラス転移温度(単位:K)、Wiは該共重合体におけるモノマーiの重量分率(重量基準の共重合割合)、Tgiはモノマーiのホモポリマーのガラス転移温度(単位:K)を表す。ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。
ここに開示される技術では、上記ホモポリマーのTgとして、具体的には以下の値を用
いるものとする。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
ブチルアクリレート −55℃
酢酸ビニル 32℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート −15℃
4−ヒドロキシブチルアクリレート −40℃
上記で例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons, Inc., 1989)に記載の数値を用いるものとする。上記Polymer Handbookにも記載されていない場合には、特開2007−51271号公報に記載の測定方法により得られる値を用いるものとする。
アクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく用いることができる。溶液重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃以上(典型的には40℃以上)程度とすることができ、また、170℃以下(典型的には140℃以下)程度とすることができる。あるいは、UV等の光を照射して行う光重合(典型的には、光重合開始剤の存在下で行われる。)や、β線、γ線等の放射線を照射して行う放射線重合等の活性エネルギー線照射重合を採用してもよい。
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類)や、酢酸エチル等の酢酸エステル類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類等が好ましく用いられる。
重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、従来公知の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等のアゾ系重合開始剤の1種または2種以上を好ましく使用し得る。重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、過酸化水素等の過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。このような重合開始剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して0.005重量部以上1重量部以下(典型的には0.01重量部以上1重量部以下)程度の範囲から選択することができる。
ここに開示されるベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば10×104以上500×104以下の範囲であり得る。凝集力と接着力とを高レベルでバランスさせる観点から、ベースポリマー(好適にはアクリル系ポリマー)のMwは、好ましくは10×104以上、より好ましくは20×104以上、さらに好ましくは35×104以上であり、また、好ましくは150×104以下、より好ましくは110×104以下、さらに好ましくは90×104以下(典型的には75×104以下、例えば65×104以下)である。一態様において、ベースポリマーのMwは、好ましくは10×104以上150×104以下、より好ましくは20×104以上110×104以下(例えば20×104以上75×104以下)、さらに好ましくは35×104以上90×104以下(例えば35×104以上65×104以下)であり得る。ここでMwとは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。GPC装置としては、例えば機種名「HLC−8320GPC」(カラム:TSKgelGMH−H(S)、東ソー社製)を使用すればよい。後述の実施例においても同様である。
(ゴム系ポリマー)
他の好ましい一態様では、上記粘着剤層はゴム系粘着剤により構成されている。さらに好ましい一態様に係るゴム系粘着剤は、ベースポリマーとして、モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体を含有する。上記モノビニル置換芳香族化合物とは、ビニル基を有する官能基が芳香環に1つ結合した化合物を指す。上記芳香環の代表例として、ベンゼン環(ビニル基を有しない官能基(例えばアルキル基)で置換されたベンゼン環であり得る。)が挙げられる。上記モノビニル置換芳香族化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられる。上記共役ジエン化合物の具体例としては、1,3−ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。このようなブロック共重合体は、1種を単独で、または2種以上を併用してベースポリマーに用いることができる。
上記ブロック共重合体におけるAセグメント(ハードセグメント)は、上記モノビニル置換芳香族化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が70重量%以上(より好ましくは90重量%以上であり、実質的に100重量%であってもよい。)であることが好ましい。上記ブロック共重合体におけるBセグメント(ソフトセグメント)は、上記共役ジエン化合物(2種以上を併用し得る。)の共重合割合が70重量%以上(より好ましくは90重量%以上であり、実質的に100重量%であってもよい。)であることが好ましい。かかるブロック共重合体によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。
上記ブロック共重合体は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(radial)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体および放射状体においては、ポリマー鎖の末端にAセグメント(例えばスチレンブロック)が配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたAセグメントは、集まってドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上するためである。ここに開示される技術におけるブロック共重合体としては、被着体に対する粘着力(剥離強度)や耐反撥性の観点から、例えば、ジブロック体比率が30重量%以上(より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、典型的には65重量%以上、例えば70重量%以上)のものを好ましく用いることができる。また、継続的に加わる応力に対する耐性の観点から、ジブロック体比率が90重量%以下(より好ましくは85重量%以下、例えば80重量%以下)のものを好ましく用いることができる。例えば、ジブロック体比率が60重量%以上85重量%以下のブロック共重合体の使用が好ましい。
(スチレン系ブロック共重合体)
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記ベースポリマーがスチレン系ブロック共重合体である。例えば、上記ベースポリマーがスチレンイソプレンブロック共重合体およびスチレンブタジエンブロック共重合体の少なくとも一方を含む態様で好ましく実施され得る。粘着剤に含まれるスチレン系ブロック共重合体のうち、スチレンイソプレンブロック共重合体の割合が70重量%以上であるか、スチレンブタジエンブロック共重合体の割合が70重量%以上であるか、あるいはスチレンイソプレンブロック共重合体とスチレンブタジエンブロック共重合体との合計割合が70重量%以上であることが好ましい。好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95重量%以上100重量%以下)がスチレンイソプレンブロック共重合体である。他の好ましい一態様では、上記スチレン系ブロック共重合体の実質的に全部(例えば95重量%以上100重量%以下)がスチレンブタジエンブロック共重合体である。このような組成によると、耐反撥性に優れ、かつ他の粘着特性とのバランスの良い粘着シートが好適に実現され得る。
上記スチレン系ブロック共重合体は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(radial)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体および放射状体においては、ポリマー鎖の末端にスチレンブロックが配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたスチレンブロックは、集まってスチレンドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集性が向上するためである。ここに開示される技術において用いられるスチレン系ブロック共重合体としては、被着体に対する粘着力(剥離強度)や耐反撥性の観点から、例えば、ジブロック体比率が30重量%以上(より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上、典型的には65重量%以上)のものを好ましく用いることができる。ジブロック体比率が70重量%以上(例えば75重量%以上)のスチレン系ブロック共重合体であってもよい。また、保持力等の観点から、ジブロック体比率が90重量%以下(より好ましくは85重量%以下、例えば80重量%以下)のスチレン系ブロック共重合体を好ましく用いることができる。例えば、ジブロック体比率が60重量%以上85重量%以下のスチレン系ブロック共重合体を好ましく採用し得る。
上記スチレン系ブロック共重合体のスチレン含有量は、例えば、5重量%以上40重量%以下であり得る。耐反撥性や保持力の観点から、通常は、スチレン含有量が10重量%以上(より好ましくは10重量%よりも大、例えば12重量%以上)のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。また、被着体に対する粘着力の観点から、スチレン含有量が35重量%以下(典型的には30重量%以下、より好ましくは25重量%以下、例えば20重量%未満)のスチレン系ブロック共重合体が好ましい。例えば、スチレン含有量が12重量%以上20重量%未満のスチレン系ブロック共重合体を好ましく採用し得る。
(ウレタン系ポリマー)
さらに他の好ましい一態様では、上記粘着剤層はウレタン系粘着剤により構成されている。ここでウレタン系粘着剤(層)とは、ウレタン系ポリマーをベースポリマーとして含む粘着剤(層)のことをいう。上記ウレタン系粘着剤は、典型的には、ポリオールとポリイソシアネート化合物とを反応させて得られるウレタン系ポリマーをベースポリマーとして含むウレタン系樹脂からなるものである。ウレタン系ポリマーとしては、特に限定されず、粘着剤として機能し得る各種ウレタン系ポリマー(エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等)のなかから適切なものを採用し得る。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
(熱伝導性フィラー)
ここに開示される粘着シートは、熱伝導性フィラーを含むフィラー含有粘着剤層を有することによって特徴づけられる。このようなフィラー含有粘着剤層を有する構成とすることにより、伸張性粘着シートにおいて、良好な熱伝導性(典型的には、12cm2・K/W以下の熱抵抗値)が好適に実現され得る。
熱伝導性フィラー(以下、「フィラー」と略記することもある。)としては、特に制限されず、粘着剤層に含有させることで粘着シートの熱伝導性を向上させ得るものを使用することができる。例えば、粒子状や繊維状のフィラーを用いることができる。
フィラー(典型的には粒子状フィラー)の構成材料は、例えば、銅、銀、金、白金、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、ステンレス等の金属;酸化アルミニウム、酸化ケイ素(二酸化ケイ素)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化銅、酸化ニッケル等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、珪酸、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化バリウム、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ドウソナイト、硼砂、ホウ酸亜鉛等の金属水酸化物および水和金属化合物;炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化窒素、炭化カルシウム等の炭化物;窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ガリウム等の窒化物;炭酸カルシウム等の炭酸塩;チタン酸バリウム、チタン酸カリウム等のチタン酸塩;カーボンブラック、カーボンチューブ(カーボンナノチューブ)、カーボンファイバー、ダイヤモンド等の炭素系物質;ガラス;等の無機材料;等であり得る。あるいは、火山シラス、クレイ、砂等の天然原料粒子を用いてもよい。繊維状フィラーとしては、各種合成繊維材料や天然繊維材料を使用することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。通常は、粘着剤層への含有量を比較的多くしても粘着面の平滑性を損ないにくく、また引張り除去性の向上に効率よく寄与し得ることから、粒子状フィラーを好ましく採用し得る。なかでも無機材料(例えば、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物や水和金属化合物)から構成された粒子状フィラーの使用が好ましい。
フィラーの平均粒径は、当該フィラーが含まれている粘着剤層の厚さの50%未満であることが好ましい。なお、この明細書中において、フィラーの平均粒径とは、篩分け法に基づく測定により得られた粒度分布において、重量基準の累積粒度が50%となる粒径(50%メジアン径)をいう。粘着剤層に含まれるフィラーの平均粒径が該粘着剤層の50%未満であれば、粘着剤層に含まれるフィラーの50重量%以上が当該粘着剤層の厚さよりも小さい粒径を有するといえる。粘着剤層に含まれるフィラーの50重量%以上が該粘着剤層の厚さよりも小さい粒径を有することにより、粘着剤層の表面(粘着面)において良好な表面状態(例えば平滑性)が維持される傾向が大きくなる。このことは、被着体との密着性向上による熱伝導性向上や粘着性(例えば初期粘着力A)の向上の観点から好ましい。また、粘着剤層表面の外観も良好に維持され得る。
フィラーの平均粒径は、当該フィラーが含まれている粘着剤層の厚さの15%より大きいことが好ましい。このような平均粒径のフィラーを含有する粘着剤層(フィラー含有粘着剤層)によると、伸張性粘着シートの引張り除去性が効果的に向上する傾向にある。より高い効果を得る観点から、フィラーの平均粒径は、当該フィラーが含まれている粘着剤層の厚さの20%以上とすることができ、25%以上としてもよく、さらには30%以上(例えば35%以上)としてもよい。
この点について説明する。粘着剤層に含まれたフィラーは、粘着面に露出した状態または該粘着剤層内に内包された状態で存在し得る。粘着面に露出したフィラーは、粘着面における粘着剤面積を減少させ、接着界面のせん断方向へのスリップ性を向上させる。これにより、引張り剥離応力Bは低減するが、この粘着面における粘着剤面積の減少は、初期粘着力Aの低下ももたらす。一方、粘着剤層内部に存在するフィラーは、初期粘着力Aを低下させることなく、引張り剥離応力Bの低減に大きく寄与すると考えられる。その主たる理由としては、特に限定して解釈されるものではないが、粘着シートの変形にともなう粘着剤層の状態変化が考えられる。具体的には、引張り剥離は、粘着剤を接着面に平行する方向(引張り剥離方向。せん断方向ともいう。)に引き剥がす態様であるため、引張り剥離の際に粘着シートは当該方向に変形する。伸長性の粘着シートは上記の引張りに対して伸長し、それにともない粘着剤層も変形する。例えば、粘着剤層を支持するフィルム状基材が引張りに対して伸長性を有する場合、該基材の伸長にともなって粘着剤層も大きく変形する。この粘着剤層の変形によって、該粘着剤層に含まれるフィラーの粘着面への露出量が増大し、接着界面におけるせん断方向へのスリップ性が向上すると考えられる。また、粘着剤層内において粘着剤(粘着成分)は引張り剥離により変形するのに対し、フィラーは粘着剤層内において粘着剤と異なる挙動を示すことも考慮される。この引張り剥離に対する粘着剤とフィラーの挙動の違いが引張り剥離応力の低減に寄与していることも考えられる。そして、上述の粘着剤層表面状態の変化や、粘着剤層構成成分の挙動は、剥離態様の違いから例えば90度剥離や180度剥離では顕在化せず、あるいは無視し得る程度であると考えられる。しかし、典型的には引張り剥離時には応力変化に大きく影響していると考えられる。その結果、粘着剤層に含まれたフィラーは、初期粘着力Aの維持および引張り剥離応力Bの低減の両立に大きく寄与するものと考えられる。このフィラー含有の効果は、伸長性を有する粘着シートにおいて特に顕著に発現する。また、基材を有する伸長性粘着シートでは、典型的には基材の機械的性質が粘着力(典型的には180度剥離強度)に大きく寄与し得るため、粘着剤組成(例えば、粘着付与剤や架橋剤等の添加成分等)の粘着力への寄与は相対的に小さいと考えられる。このような粘着シートにおいて、その粘着剤層にフィラーを含有させることにより、初期粘着力Aを維持しつつ引張り剥離応力Bだけを選択的に低減する作用が好ましく実現される。
好ましい一態様では、上記粘着剤層に含まれるフィラーの60重量%以上(例えば70重量%以上、典型的には80重量%以上)が、上記粘着剤層の厚さよりも小さい粒径を有する。上記粘着剤層に含まれるフィラーの実質的に全量(典型的には99重量%以上100重量%以下)が、上記粘着剤層の厚さよりも小さい粒径を有していることがより好ましい。他の好ましい一態様では、粘着面の表面状態をより良好にする観点から、上記粘着剤層に含まれるフィラーの40重量%以上(例えば50重量%以上、典型的には55重量%以上)が、上記粘着剤層の厚さTの2/3(すなわち2/3T。より好ましくは1/2、すなわち1/2T)よりも小さい粒径を有する。なお、フィラーのX重量%以上がYより小さい粒径を有するとは、篩分け法に基づく測定により得られた粒度分布において粒径Y(μm)までの累積粒度(重量基準)がX(重量%)未満であることをいう。所定の粒径を有するフィラーの割合(重量%)は、上記粒度分布に基づいて求めることができる。
好ましい一態様において、粘着剤層に含まれるフィラーは、粒径が30μm未満の粒子が50重量%以上(例えば70重量%以上)を占める。このようなフィラーを含む粘着剤層は、フィラーの含有量を比較的多くしても粘着面の平滑性が損なわれにくい。したがって熱伝導性の向上に適している。また、粘着剤層に含まれるフィラーは、粒径が20μm以上の粒子が10重量%以上(好ましくは25重量%以上、例えば40重量%以上、典型的には70重量%以下)を占めていてもよい。このことによって、引張り剥離応力Bを低下させる作用が効率よく発揮され得る。
好ましい一態様では、粘着剤層に含まれるフィラーのうち、1μm未満の粒径を有する粒子の割合は50重量%以下である。引張り剥離応力低減の観点から、フィラーの粒径はある程度の大きさを有することが望ましい。また、微小粒子の量が制限されていることは、例えば粘着剤組成物の調製において過度の粘度上昇が起こらないなど、生産性の点で好ましい。上記粘着剤層に含まれるフィラーのうち、1μm未満(例えば2μm未満、典型的には5μm未満)の粒径を有する粒子の割合が30重量%以下(例えば10重量%以下、典型的には3重量%以下)であることがより好ましい。
粘着剤層に含まれるフィラーの平均粒径は、通常、1μm以上とすることが適当であり、好ましくは3μm以上(典型的には5μm以上、例えば10μm以上)である。平均粒径が大きくなると、引張り剥離応力低減効果が向上する傾向がある。平均粒径を所定以上にすることは、組成物の粘度や分散性を良好に保持する点でも好ましい。上記平均粒径の上限は、通常は50μm以下とすることが適当であり、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、例えば25μm以下である。平均粒径の小さいフィラーは、粘着剤層への含有量を比較的多くしても粘着面の平滑性を損ないにくい。したがって、伸張性粘着シートにおける熱抵抗の低減に適している。
フィラーの形状は特に限定されず、例えば、バルク状、針形状、板形状(例えば六角板状)、層状、繊維状等であり得る。バルク形状の概念には、例えば、球形状、直方体形状、破砕状またはそれらの異形形状が含まれる。フィラーの形状は、バルク形状が好ましく、そのなかでも球形状がより好ましい。
フィラーの平均アスペクト比は特に限定されない。引張り剥離応力低減の観点から、凡そ100未満が適当であり、好ましくは50未満、より好ましくは10未満(例えば5未満、典型的には2未満)であり得る。ここで、フィラーの平均アスペクト比は、該フィラーを構成する各粒子の短径に対する長径の比(長径/短径)により表されるアスペクト比の平均値として求められる。長径とは典型的には測定対象粒子の最大差渡し長さをいい、短径とは典型的には測定対象粒子の最小差渡し長さをいうものとする。平均アスペクト比は、透過型電子顕微鏡観察を通じて把握することができる。
粘着剤層におけるフィラー(例えば無機材料粒子、典型的には金属酸化物や金属水酸化物)の含有量は特に限定されず、この粘着剤層を含む粘着シートにおいて適切な熱伝導性(例えば、所定以下の熱抵抗値)が実現されるように設定することができる。フィラーの含有量は、重量基準で、粘着剤層全体の例えば10重量%以上とすることができる。熱伝導性と良好な引張り除去性とを両立する観点から、通常は、フィラーの含有量を粘着剤層全体の15重量%以上とすることが適当であり、18重量%以上とすることが好ましく、20重量%以上とすることがより好ましい。粘着剤層におけるフィラーの含有量は、この粘着剤層を含む粘着シートにおいて適切な粘着特性が得られるように設定することが好ましい。かかる観点から、フィラーの含有量は、通常、粘着剤層の60重量%以下とすることが適当であり、50重量%以下(より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下、例えば32重量%以下)とすることが好ましい。
また、粘着剤層におけるフィラーの含有量は、熱伝導性向上の観点から、重量基準で、ベースポリマー100重量部に対し、20重量部以上とすることが適当であり、好ましくは25重量部以上、より好ましくは30重量部以上、さらに好ましくは40重量部以上であり、例えば45重量部以上であってもよい。フィラーの粒径と含有量とを適切に調整することにより、粘着面の平滑性を維持しつつ熱伝導性を好ましく向上させることができる。粘着剤層におけるフィラーの含有量は、通常、ベースポリマー100重量部に対して200重量部以下とすることが適当であり、150重量部以下としてもよく、例えば100重量部以下としてもよい。
なお、ここに開示される技術における粘着剤層(粘着剤組成物)は、フィラーの分散性を向上する成分(分散剤)を実質的に含まなくてもよく、あるいは上記分散剤を含んでもよい。
粘着剤層におけるフィラーの含有量C(体積基準の含有量)は、50体積%以下とすることが適当である。フィラーの粒径と含有量とを適切に調整することにより、初期粘着力Aの低下を抑制しつつ引張り剥離応力Bを好ましく低減することができる。粘着剤層におけるフィラーの含有量Cは、45体積%以下とすることができ、好ましくは40体積%以下であり、より好ましくは30体積%以下(例えば25体積%以下)である。また、引張り剥離応力低減の観点から、上記含有量Cは、3体積%以上とすることが適当であり、好ましくは5体積%以上であり、より好ましくは10体積%以上であり、12体積%以上であってもよく、さらには15体積%以上であってもよい。フィラーの含有量C[体積%]は、粘着剤層におけるフィラー以外の成分(典型的には粘着成分)の重量割合および密度と、フィラーの重量割合および密度に基づいて求められる。例えば、後述の実施例においては、水酸化アルミニウムの密度として2.42g/cm3を採用して、粘着剤層におけるフィラーの含有量C[体積%]を求めることができる。
(アクリル系オリゴマー)
ここに開示される粘着剤組成物は、アクリル系オリゴマーを含んでもよい。アクリル系オリゴマーを採用することによって、耐衝撃性と耐反撥性とをバランスよく改善することができる。また、粘着剤組成物を活性エネルギー線照射(例えばUV照射)により硬化させる態様の場合には、アクリル系オリゴマーは、例えばロジン系やテルペン系等の粘着付与樹脂に比べて硬化阻害(例えば、未反応モノマーの重合阻害)を起こしにくいという利点を有する。なお、アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分としてアクリル系モノマーを含む重合体であり、上記アクリル系ポリマーよりもMwの小さい重合体として定義される。
アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占めるアクリル系モノマーの割合は、典型的には50重量%超であり、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上(例えば80重量%以上、さらには90重量%以上)である。好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーは、実質的にアクリル系モノマーのみからなるモノマー組成を有する。
アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分としては、上記アクリル系ポリマーに利用され得るモノマーとして例示した鎖状アルキル(メタ)アクリレート、官能基含有モノマー、その他モノマーを用いることができる。また、上記構成モノマーは脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含んでもよい。アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分としては、上記で例示した各種モノマーの1種または2種以上を用いることができる。
上記鎖状アルキル(メタ)アクリレートとしては、上記式(1)においてR2がC1−12(例えばC1−8)であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく使用される。その好適例としては、メチルメタクリレート(MMA)、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート(BA)、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)が挙げられる。なかでもMMAがより好ましい。
上記官能基含有モノマーの好適例としては、N−ビニル−2−ピロリドン、N−アクリロイルモルホリン等の窒素原子含有環(典型的には窒素原子含有複素環)を有するモノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;AA、MAA等のカルボキシ基含有モノマー;HEA等の水酸基含有モノマー;が挙げられる。
上記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、脂環式炭化水素基の炭素原子数が4以上20以下の範囲内にある脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの1種または2種以上を使用することができる。上記脂環式炭化水素基の炭素原子数は、好ましくは5以上(例えば6以上、典型的には8以上)であり、また好ましくは16以下(例えば12以下、典型的には10以下)である。上記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの好適例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)がより好ましい。
上記アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める上記脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの割合(すなわち共重合割合)は、粘着性や凝集性の観点から、凡そ30重量%以上(例えば50重量%以上、典型的には55重量%以上)とすることが好ましく、また、90重量%以下(例えば80重量%以下、典型的には70重量%以下)とすることが好ましい。
好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分として鎖状アルキル(メタ)アクリレートおよび/または脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートを含む。この態様において、上記アクリル系オリゴマーを構成する全モノマー成分に占める上記鎖状アルキル基含有および脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル酸エステルの割合が、凡そ80重量%以上(例えば90重量%以上100重量%以下、典型的には95重量%以上100重量%以下)であることが好ましい。上記アクリル系オリゴマーを構成するモノマー成分は、実質的に鎖状アルキル(メタ)アクリレートおよび/または脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートからなることがより好ましい。
アクリル系オリゴマーが、鎖状アルキル(メタ)アクリレートと脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとを含むモノマー混合物の共重合物である場合、鎖状アルキル(メタ)アクリレートと脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートとの比率は、特に限定されない。好ましい一態様では、アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分における鎖状アルキル(メタ)アクリレートの重量割合(WA)と脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリレートの重量割合(WB)との重量比率(WA:WB)は、通常1:9以上、好ましくは2:8以上、例えば3:7以上、典型的には3:7超であり、また、通常9:1以下、好ましくは7:3以下、例えば6:4以下、典型的には5:5以下である。上記重量比率(WA:WB)は、通常、1:9以上9:1以下であり、好ましくは2:8以上7:3以下(例えば3:7以上6:4以下、典型的には3:7以上5:5以下)である。
特に限定するものではないが、アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分の組成(すなわち重合組成)は、該アクリル系オリゴマーのTgが10℃以上300℃以下となるように設定され得る。ここで、アクリル系オリゴマーのTgとは、該アクリル系オリゴマーの構成モノマー成分の組成に基づいて、上記アクリル系ポリマーの構成モノマー組成に基づくTgと同様にして求められる値をいう。アクリル系オリゴマーのTgは、初期接着性の観点から、180℃以下(例えば160℃以下)であることが好ましい。また上記Tgは、粘着剤の凝集性の観点から、60℃以上(例えば100℃以上、典型的には120℃以上)であることが好ましい。
アクリル系オリゴマーのMwは、特に限定されないが、典型的には0.1×104以上3×104以下程度である。粘着特性(例えば粘着力や耐反撥性)を向上する観点から、アクリル系オリゴマーのMwは、1.5×104以下が好ましく、1×104以下がより好ましく、0.8×104以下(例えば0.6×104以下)がさらに好ましい。また粘着剤の凝集性等の観点から、上記Mwは、0.2×104以上(例えば0.3×104以上)が好ましい。アクリル系オリゴマーの分子量は、重合に際して必要に応じて連鎖移動剤を用いるなどして調節することができる。
アクリル系オリゴマーは、その構成モノマー成分を重合することにより形成され得る。重合方法や重合態様は特に限定されず、従来公知の各種重合方法(例えば、溶液重合、エマルション重合、塊状重合、光重合、放射線重合等)を、適宜の態様で採用することができる。必要に応じて使用し得る重合開始剤(例えば、AIBN等のアゾ系重合開始剤)の種類や使用量についても概ね上述のとおりであるので、ここでは説明は繰り返さない。
ここに開示される粘着剤組成物におけるアクリル系オリゴマーの含有量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して例えば0.5重量部以上とすることが適当である。アクリル系オリゴマーの効果をよりよく発揮させる観点からは、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、1重量部以上(例えば1.5重量部以上、典型的には2重量部以上)とすることが好ましい。また、粘着剤組成物の硬化性やアクリル系ポリマーとの相溶性等の観点から、上記アクリル系オリゴマーの含有量は、50重量部未満(例えば10重量部未満)とすることが適当であり、8重量部未満(例えば7重量部未満、典型的には5重量部以下)とすることが好ましい。このような少量添加でも、アクリル系オリゴマー使用による耐衝撃性および耐反撥性の改善は実現され得る。
(粘着付与剤)
ここに開示される粘着剤層は、粘着付与剤を含む組成であり得る。粘着付与剤としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂等の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与樹脂は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ロジン系粘着付与樹脂の具体例としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等。以下同じ。);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジンを不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシ基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを採用する場合、ロジン系粘着付与樹脂を用いることが好ましい。接着力等の粘着特性向上の観点から、上記ロジン系粘着付与樹脂のなかから、1種を単独で選択するか、あるいは種類、特性(例えば軟化点)等の異なる2種または3種以上を併用することがより好ましい。
テルペン系粘着付与樹脂の例としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体等のテルペン樹脂;これらのテルペン樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン樹脂;等が挙げられる。上記変性テルペン樹脂の例としては、テルペン変性フェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを採用する場合、テルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペン変性フェノール樹脂)を用いることが好ましい。特に、接着力等の粘着特性向上の観点から、上記テルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペン変性フェノール樹脂)のなかから、種類、特性(例えば軟化点)等の異なる1種または2種以上を併用することが好ましい。
炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。
ここに開示される技術では、上記粘着付与樹脂として、軟化点(軟化温度)が凡そ70℃以上(好ましくは凡そ100℃以上、より好ましくは凡そ110℃以上)であるものを好ましく使用し得る。上述した下限値以上の軟化点をもつ粘着付与樹脂を含む粘着剤によると、より接着力に優れた粘着シートが実現され得る。上記で例示した粘着付与樹脂のうち、上記軟化点を有するテルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペン変性フェノール樹脂)、ロジン系粘着付与樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)等を好ましく用いることができる。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、例えば凡そ200℃以下(典型的には凡そ180℃以下)とすることができる。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K 5902およびJIS K 2207のいずれかに規定する軟化点試験方法(環球法)によって測定された値として定義される。
粘着付与剤の使用量は特に制限されず、目的とする粘着性能(接着力等)に応じて適宜設定することができる。例えば、固形分基準で、アクリル系ポリマー100重量部に対して、粘着付与剤を凡そ10重量部以上(より好ましくは20重量部以上、さらに好ましくは30重量部以上)、100重量部以下(より好ましくは80重量部以下、さらに好ましくは60重量部以下)の割合で使用することが好ましい。アクリル系ポリマー100重量部に対する粘着付与剤の使用量は、例えば、凡そ10重量部以上100重量部以下(より好ましくは20重量部以上80重量部以下、さらに好ましくは30重量部以上60重量部以下)とすることができる。ここに開示される技術は、粘着付与剤を実質的に含まない粘着剤層を備える態様で実施してもよい。
粘着剤層をゴム系粘着剤で構成する場合には、上記ゴム系粘着剤は、粘着付与樹脂として、軟化点120℃以上の高軟化点樹脂を含有することが好ましい。かかる態様の粘着シートは、耐反撥性や保持力等の観点から好ましい。好ましい一態様において、上記高軟化点樹脂は、軟化点が125℃以上(より好ましくは130℃以上、さらに好ましくは135℃以上、例えば140℃以上)の粘着付与樹脂を含み得る。また、被着体に対する粘着力等の観点から、上記高軟化点樹脂の軟化点は、通常、200℃以下が適当であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下(例えば160℃以下)である。
上記高軟化点樹脂としては、テルペンフェノール樹脂、重合ロジン、重合ロジンのエステル化物等を好ましく採用することができる。これらの高軟化点樹脂は、1種を単独で、あるいは2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。好ましい一態様として、上記高軟化点樹脂が1種または2種以上のテルペンフェノール樹脂を含む態様が挙げられる。テルペンフェノール樹脂の軟化点は特に限定されないが、通常は、軟化点が120℃以上(例えば125℃以上)、200℃以下(典型的には180℃以下、例えば170℃以下)のものを用いることが適当である。例えば、軟化点が120℃以上200℃以下(典型的には120℃以上180℃以下、例えば125℃以上170℃以下)のテルペンフェノール樹脂を好ましく採用することができる。
上記テルペンフェノール樹脂としては、軟化点が120℃以上であって、水酸基価(OH価)が40mgKOH/g以上(典型的には40mgKOH/g以上200mgKOH/g以下、例えば40mgKOH/g以上160mgKOH/g以下)のものを好ましく採用し得る。かかる水酸基価を有するテルペンフェノール樹脂によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。この明細書における水酸基価の値としては、JIS K 0070:1992に規定する電位差滴定法により測定される値を採用することができる。具体的な測定方法としては、特開2014−55235号公報に記載される方法が採用される。
ここに開示される技術は、例えば、上記ゴム系粘着剤が、水酸基価40mgKOH/g以上80mgKOH/g未満の高軟化点樹脂(H1)と、水酸基価80mgKOH/g以上(典型的には80mgKOH/g以上160mgKOH/g以下、例えば80mgKOH/g以上140mgKOH/g以下)の高軟化点樹脂(H2)とを組み合わせて含む態様で好ましく実施され得る。この場合において、上記高軟化点樹脂(H1)と高軟化点樹脂(H2)との使用量の関係は、通常、重量比(H1:H2)が1:5以上、典型的には1:3以上、例えば1:2以上となり、また、5:1以下、典型的には3:1以下、例えば2:1以下となるように設定することが適当である。例えば、重量比(H1:H2)が1:5以上5:1以下の範囲となるように設定することができ、通常は1:3以上3:1以下(例えば1:2以上2:1以下)の範囲となるように設定することが適当である。好ましい一態様として、高軟化点樹脂(H1)および高軟化点樹脂(H2)がいずれもテルペンフェノール樹脂である態様が挙げられる。
耐反撥性や保持力等の観点から、高軟化点樹脂の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば20重量部以上とすることができ、30重量部以上(例えば35重量部以上)とすることが好ましい。また、粘着力や低温特性等の観点から、ベースポリマー100重量部に対する高軟化点樹脂の含有量は、通常、100重量部以下とすることが適当であり、好ましくは80重量部以下、より好ましくは70重量部以下である。高軟化点樹脂の含有量が60重量部以下(例えば50重量部以下)であってもよい。
ここに開示される技術は、上記ゴム系粘着剤が、上記高軟化点樹脂に代えて、あるいは上記高軟化点樹脂に加えて、軟化点が120℃未満の低軟化点樹脂を含有する態様で実施され得る。好ましい一態様として、上記ゴム系粘着剤が、軟化点120℃以上の高軟化点樹脂と軟化点120℃未満の低軟化点樹脂とを含む態様が挙げられる。
上記低軟化点樹脂としては、軟化点が例えば40℃以上(典型的には60℃以上)のものを用いることができる。耐反撥性や保持力等の観点から、通常は、軟化点が80℃以上(より好ましくは100℃以上)120℃未満のものを好ましく採用することができる。軟化点が110℃以上120℃未満の低軟化点樹脂を用いてもよい。
ここに開示される技術は、上記ゴム系粘着剤が、石油樹脂およびテルペン樹脂(典型的には未変性テルペン樹脂)の少なくとも一方を上記低軟化点樹脂として含む態様で好ましく実施され得る。例えば、低軟化点樹脂の主成分(すなわち、低軟化点樹脂のうちの50重量%超を占める成分)が、石油樹脂である組成、テルペン樹脂である組成、石油樹脂とテルペン樹脂との組み合わせである組成、等を好ましく採用し得る。粘着力および相溶性の観点から、低軟化点樹脂の主成分がテルペン樹脂(例えば、β−ピネン重合体)である態様が好ましい。低軟化点樹脂の実質的に全部(例えば95重量%以上)がテルペン樹脂であってもよい。
好ましい一態様では、上記低軟化点樹脂は、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満の粘着付与樹脂(低水酸基価粘着付与樹脂)であり得る。低水酸基価粘着付与樹脂としては、上述した各種の粘着付与樹脂のうち水酸基価が上記範囲にあるものを、単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。例えば、水酸基価が0以上80mgKOH/g未満のテルペンフェノール樹脂、石油樹脂(例えば、C5系石油樹脂)、テルペン樹脂(例えば、β−ピネン重合体)、ロジン系樹脂(例えば、重合ロジン)、ロジン誘導体樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)等を用いることができる。
被着体に対する粘着力の観点から、低軟化点樹脂の含有量は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば10重量部以上とすることができ、通常は15重量部以上(例えば20重量部以上)とすることが適当である。また、耐反撥性等の観点から、通常は、低軟化点樹脂の含有量を120重量部以下とすることが適当であり、好ましくは90重量部以下、より好ましくは70重量部以下(例えば60重量部以下)である。低軟化点樹脂の含有量を50重量部以下(例えば40重量部以下)としてもよい。
上記粘着付与樹脂が低軟化点樹脂と高軟化点樹脂とを含む場合、それらの使用量の関係は、低軟化点樹脂:高軟化点樹脂の重量比が1:5以上3:1以下(より好ましくは1:5以上2:1以下)となるように設定することが好ましい。ここに開示される技術は、上記ゴム系粘着剤が、粘着付与樹脂として低軟化点樹脂よりも高軟化点樹脂を多く含む態様(例えば、低軟化点樹脂:高軟化点樹脂の重量比が1:1.2以上1:5以下である態様)で好ましく実施され得る。かかる態様によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。
ここに開示される技術では、ベースポリマー(典型的にはゴム系ポリマー)100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、通常、20重量部以上とすることが適当であり、好ましくは30重量部以上、より好ましくは40重量部以上(例えば50重量部以上)である。また、低温特性(例えば、低温条件下における粘着力や耐衝撃性)等の観点から、ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量は、通常、200重量部以下とすることが適当であり、好ましくは150重量部以下である。ベースポリマー100重量部に対する粘着付与樹脂の含有量が100重量部以下(例えば80重量部以下)であってもよい。
(架橋剤)
ここに開示される粘着剤層を形成するために用いられる粘着剤組成物は、必要に応じて架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤の種類は特に制限されず、従来公知の架橋剤から適宜選択して用いることができる。そのような架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。架橋剤は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なかでも、凝集力向上の観点から、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤の使用が好ましく、イソシアネート系架橋剤がより好ましい。
架橋剤の使用量は特に制限されず、例えば、ベースポリマー(例えばアクリル系ポリマー)100重量部に対して凡そ10重量部以下(例えば凡そ0.005重量部以上、好ましくは凡そ0.01重量部以上、典型的には5重量部以下)の範囲から選択することができる。ここに開示される技術は、架橋剤の使用量を低減することなく、所望の引張り剥離応力Bを実現し得ることから、架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ0.1重量部以上(例えば0.8重量部以上、典型的には1.2重量部以上)であってもよい。また、凝集力を制限して引張り剥離応力Bを低減する観点からは、架橋剤の使用量は、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ5重量部以下(例えば3重量部以下、典型的には2重量部以下)としてもよい。
(その他の成分)
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、着色剤(染料、顔料)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、分散剤等の、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤を含有するものであり得る。また、例えば粘着剤組成物(典型的にはアクリル系粘着剤組成物)に対してシリコーン系オリゴマー等の粘着力調整剤を添加してもよい。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
また、上記粘着剤組成物は、引張り除去性の向上等を目的として、熱伝導性フィラー以外の固形粒子を含んでもよい。このような固形粒子としては、例えば、ポリスチレン、アクリル樹脂(例えばポリメチルメタクリレート)、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド(例えばナイロン等)、ポリイミド、ポリ塩化ビニリデン等のポリマーの粒子を使用し得る。上記固形粒子の粒径や粒度分布は、例えば、上述した熱伝導性フィラーと概ね同様であり得る。熱伝導性フィラー以外の固形粒子の使用量は、重量基準で、例えば、熱伝導性フィラーの使用量の1/2以下(典型的には1/100以上1/2以下)とすることが適当であり、1/4以下(典型的には1/100以上1/4以下)とすることが好ましい。ここに開示される技術は、熱伝導性フィラー以外の固形粒子を実質的に含有しない構成で好ましく実施され得る。
(粘着剤組成物)
ここに開示される粘着剤層は、水系粘着剤組成物、溶剤型粘着剤組成物、ホットメルト型粘着剤組成物、活性エネルギー線硬化型粘着剤組成物から形成された粘着剤層であり得る。水系粘着剤組成物とは、水を主成分とする溶媒(水系溶媒)中に粘着剤(粘着剤層形成成分)を含む形態の粘着剤組成物のことをいい、典型的には、水分散型粘着剤組成物(粘着剤の少なくとも一部が水に分散した形態の組成物)等と称されるものが含まれる。また、溶剤型粘着剤組成物とは、有機溶媒中に粘着剤を含む形態の粘着剤組成物のことをいう。ここに開示される技術は、粘着力等の粘着特性を好適に実現する観点から、溶剤型粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える態様で好ましく実施される。
(粘着剤層の形成方法)
ここに開示される粘着剤層は、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法を採用することができる。あるいは、フィルム状基材に粘着剤組成物を直接付与(典型的には塗布)して乾燥させることにより粘着剤層を形成する方法(直接法)を採用することができる。また、剥離性を有する表面(剥離面)に粘着剤組成物を付与して乾燥させることにより該表面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層をフィルム状基材に転写する方法(転写法)を採用してもよい。上記剥離面としては、剥離ライナーの表面や、剥離処理された基材背面等を利用し得る。なお、ここに開示される粘着剤層は典型的には連続的に形成されるが、このような形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。
粘着剤組成物の塗布は、例えば、グラビアロールコーター、ダイコーター、バーコーター等の、従来公知のコーターを用いて行うことができる。あるいは、含浸やカーテンコート法等により粘着剤組成物を塗布してもよい。また、粘着剤組成物の乾燥は、架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、加熱下で行うことが好ましい。乾燥温度は、例えば凡そ40℃以上(好ましくは凡そ60℃以上)、凡そ150℃以下(好ましくは凡そ130℃以下)とすることができる。粘着剤組成物を乾燥させた後、さらに、粘着剤層内における成分移行の調整、架橋反応の進行、基材や粘着剤層内に存在し得る歪の緩和等を目的としてエージングを行ってもよい。
(粘着剤層の厚さ)
ここに開示される粘着剤層の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。通常は、粘着剤層の厚さは、乾燥効率等の生産性や粘着性能等の観点から、凡そ5μm以上(より好ましくは凡そ12μm以上、さらに好ましくは凡そ18μm以上)とすることが適当であり、凡そ25μmを超える厚さであってもよい。また、粘着剤層の厚さは、通常、凡そ200μm以下(好ましくは凡そ150μm以下、さらに好ましくは凡そ100μm以下)とすることが適当であり、凡そ90μm以下であってもよい。フィルム状基材の第一面および第二面にそれぞれ第一粘着剤層および第二粘着剤層を備える両面粘着シートの場合、それらの粘着剤層の厚さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
ここに開示される粘着シートは、厚さ30μm以上のフィラー含有粘着剤層を少なくとも1つ含む態様で好ましく実施され得る。このような態様の例には、基材の一方の表面に厚さ30μm以上のフィラー含有粘着剤層を有する基材付き片面粘着シート、基材の少なくとも一方の表面に厚さ30μm以上のフィラー含有粘着剤層を有する基材付き両面粘着シート(基材の他方の表面が有する粘着剤層は、厚さ30μm未満のフィラー含有粘着剤層であってもよく、フィラーを含まない任意の厚さの粘着剤層であってもよい。)や、厚さ30μm以上のフィラー含有粘着剤層を有する基材レス両面粘着シートが含まれる。このように、厚さ30μm以上(より好ましくは35μm以上、典型的には40μm以上、例えば42μm以上)のフィラー含有粘着剤層を少なくとも1つ含む構成によると、熱伝導性がよく、かつ引張り除去性のよい粘着シートが好適に実現され得る。なかでも、フィルム状基材の両面に上記厚さのフィラー含有粘着剤層を有する粘着シートが好ましい。
粘着シートに含まれるフィラー含有粘着剤層の合計厚さ(1つのフィラー含有粘着剤層のみを含む粘着シートでは、当該フィラー含有粘着剤層の厚さ)は、例えば25μm超とすることができ、通常は30μm以上が適当であり、好ましくは50μm超、より好ましくは60μm以上であり、70μm以上(例えば80μm以上)であってもよい。また、引張り除去性等の観点から、フィラー含有粘着剤層の合計厚さの上限は、通常、400μm以下が適当であり、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下(例えば200μm以下)である。
<フィルム状基材>
ここに開示されるフィルム状基材は、8MPa以上の破断強度を示すことが好ましい。上記破断強度を示すフィルム状基材を使用することで、粘着シートはより千切れにくくなり、優れた引張り除去性を発揮し得る。上記破断強度を示すフィルム状基材によると、加工性も向上する傾向がある。上記破断強度は、典型的には10MPa以上であり、より好ましくは15MPa以上(例えば20MPa以上)である。またフィルム状基材の弾性や伸長性等の観点から、上記破断強度は100MPa以下(例えば90MPa以下、典型的には80MPa以下)程度とすることが好ましい。上記破断強度は、粘着シートの場合と同様の方法により測定される。上記基材の破断強度は例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)や成形方法等によって調整することができる。
ここに開示されるフィルム状基材は、伸長性を有することが好ましい。伸長性の基材を用いることにより、伸長性粘着シートが好ましく実現される。伸長性基材を用いることで、その柔軟性ゆえ比較的低い応力でフィルムの形状を変形させることができる。フィルム状基材の破断時伸びは50%以上(例えば100%以上、典型的には200%以上)であり得る。好ましい一態様では、フィルム状基材は、300%以上の破断時伸びを示す。上記破断時伸びを示す基材は、粘着シート除去時の引張りに対して伸長する。この伸長により粘着シートは変形して被着体から剥がれる。このように、引張りと基材の変形とが相互に作用して、粘着シートの引張り除去性はより向上する。上記破断時伸びは、より好ましくは400%以上(例えば450%以上、典型的には500%以上)である。上記破断時伸びの上限は特に限定されないが、除去作業性等の観点から、例えば1000%以下(典型的には900%以下)程度であり得る。上記破断時伸びは、粘着シートの場合と同様の方法により測定される。上記基材の破断時伸びは、例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)や成形方法等によって調整することができる。
ここに開示されるフィルム状基材は、50%を超える引張り回復率を示すことが適当であり、上記引張り回復率は70%以上であることが好ましい。上記引張り回復率は、より好ましくは80%以上(例えば90%以上、典型的には93%以上100%以下)である。これにより、粘着シート除去時における千切れ等の損傷がより高度に防止され得る。上記引張り回復率の測定は、粘着シートの引張り回復率の測定方法と同様の方法により測定される。上記基材の引張り回復率は、例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)や成形方法等によって調整することができる。
ここに開示されるフィルム状基材は、10MPa未満の100%モジュラスを示すことが好ましい。フィルム状基材の100%モジュラスを所定値未満とすることにより、粘着シートを引っ張って伸長変形させることで被着体から除去する場合において、引っ張り始めの抵抗が小さくなり引張り除去性に優れる傾向がある。上記100%モジュラスは、より好ましくは5MPa未満である。上記100%モジュラスの下限は特に限定されないが、粘着シートの貼り付け作業性の観点から、通常は0.5MPa以上(例えば1MPa以上)とすることが適当である。上記100%モジュラスは、粘着シートの場合と同様の方法により測定される。基材の100%モジュラスは、例えば基材材料種の選択(硬質成分、軟質成分の配合比の選定等)や成形方法等によって調整することができる。
粘着剤層を支持(裏打ち)するフィルム状基材(支持基材)としては、各種のフィルム状基材を使用することができる。上記基材として、例えば、織布フィルム、不織布フィルム、樹脂フィルムを使用することができる。なかでも、樹脂フィルムが好ましい。上記樹脂フィルムは、非発泡の樹脂フィルム、ゴム状フィルム、発泡体フィルム等であり得る。なかでも、非発泡の樹脂フィルム、ゴム状フィルムが好ましく、非発泡の樹脂フィルムがより好ましい。非発泡の樹脂フィルムは、機械的強度の点で弱点となり得る気泡(ボイド)が実質的に存在せず、発泡体と比べて引張強度等の機械的強度に優れる傾向がある。非発泡の樹脂フィルムはまた、加工性や寸法安定性、厚み精度、経済性(コスト)等の点にも優れる。したがって、非発泡の樹脂フィルムを基材として用いることで、優れた引張り除去性が好ましく実現され得る。
なお、この明細書における「樹脂フィルム」は、実質的に非多孔質のフィルムであって、いわゆる不織布や織布とは区別される概念(すなわち、不織布や織布を除く概念)である。また、非発泡の樹脂フィルムとは、発泡体とするための意図的な処理を行っていない樹脂フィルムのことを指す。非発泡の樹脂フィルムは、具体的には、発泡倍率が1.1倍未満(例えば1.05倍未満、典型的には1.01倍未満)の樹脂フィルムであり得る。非発泡の樹脂フィルムには、例えば、軟質ポリオレフィン、軟質ポリウレタン、軟質ポリエステル、軟質ポリ塩化ビニル等と称される軟質樹脂フィルムが包含される。
ここに開示される樹脂フィルムを構成する樹脂材料の好適例としては、エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタン、カーボネート系ポリウレタン等のポリウレタン;ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマー;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル;ポリカーボネート;等が挙げられる。上記ポリエステルとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートがより好ましい。上記樹脂材料は、スチレンブタジエン共重合体、スチレンイソプレン共重合体、スチレンエチレンブチレン共重合体、スチレンエチレンプロピレン共重合体、スチレンブタジエンスチレン共重合体、スチレンイソプレンスチレン共重合体等のスチレン系共重合体(典型的にはスチレン系エラストマー)であってもよく、アクリルゴムと称されるアクリル系共重合体であってもよく、軟質ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系樹脂(PVC)であってもよい。上記樹脂材料は、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、上記樹脂材料には、一般にゴムや熱可塑性エラストマーと称されるものが包含される。
好ましい一態様では、フィルム状基材はポリウレタン系樹脂フィルムである。ここでポリウレタン系樹脂フィルムとは、樹脂成分の主成分(最も配合割合の高い成分、典型的には50重量%を超えて含まれる成分。以下同じ。)としてポリウレタンを含む樹脂フィルムのことをいう。ポリウレタン系樹脂フィルムは、典型的には降伏点を実質的に示さない材料から構成されており、所定の破断強度や伸び、さらに必要であれば引張り回復率を示す粘着シートを実現しやすいフィルム材料である。ポリウレタン系樹脂フィルムはまた、例えば可塑剤等の添加成分を添加しなくても良好な物性を実現し得るため、上記添加成分のブリードアウトを防止する点でも、ここに開示される技術において好ましい基材となり得る。
ポリウレタン系樹脂フィルムに含まれる樹脂成分に占めるポリウレタンの割合は、好ましくは70重量%以上(例えば80重量%以上、典型的には90重量%以上100重量%以下)である。ここに開示されるポリウレタン系樹脂フィルムは、ポリウレタンとその他の樹脂とのポリマーブレンドからなるフィルムであってもよい。上記他の樹脂は、例えばアクリル系樹脂、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート等の1種または2種以上であり得る。あるいは、ここに開示される技術は、ポリウレタン以外の樹脂成分を実質的に含まない基材を用いる態様でも実施することができる。
上記ポリウレタンは、ポリオール(例えばジオール)とポリイソシアネート(例えばジイソシアネート)とを所定の割合で重付加反応させることにより合成される高分子化合物である。なお、ポリウレタンのNCO/OH比は、所望の機械的特性(例えば破断強度、破断時伸び、引張り回復率)となるよう当業者の技術常識に基づき、適宜設定すればよい。
上記ポリウレタンの合成に用いられ得るポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ポリオキシテトラメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジオール;上記ジオールとジカルボン酸(例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸)との重縮合物であるポリエステルポリオール;ポリアルキレンカーボネートジオール等のカーボネートジオール;等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
上記ポリウレタンの合成に用いられ得るポリイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートや、これらのジイソシアネートの多量体(例えば2量体、3量体)等が挙げられる。上記ジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、芳香族ジイソシアネートが好ましい。
上記ポリウレタンには、ポリオールおよびポリイソシアネートに加えて、他の共重合成分が導入されていてもよい。他の共重合成分として、モノカルボン酸やジカルボン酸、三官能以上のポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、アルコキシカルボン酸、それらの誘導体等の1種または2種以上を使用することができる。これら他の共重合成分の割合は、ポリウレタン中の30重量%未満(例えば10重量%未満、典型的には5重量%未満)程度とすることが適当である。ここに開示される技術は、他の共重合成分を含まないポリウレタンを主成分とするポリウレタン系樹脂フィルム基材を備える態様でも好ましく実施され得る。
他の好ましい一態様では、フィルム状基材は、ウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーを含む樹脂フィルムである。ここに開示されるウレタン(メタ)アクリレート系ポリマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含む重合体を用いることができる。ここでウレタン(メタ)アクリレートとは、一分子中にウレタン結合と(メタ)アクリロイル基を有する化合物のことをいい、かかる化合物を特に制限なく用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、好ましくは2つ以上のウレタン結合と2つ以上の(メタ)アクリロイル基とを有する。ウレタン(メタ)アクリレートの有する(メタ)アクリロイル基の数は、2以上5以下が好ましく、2以上3以下がより好ましい。例えば、(メタ)アクリロイル基を2つ有するウレタン(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタンアクリレートであることが好ましい。ここで「ウレタンアクリレート」とは、ウレタン(メタ)アクリレートに含まれる(メタ)アクリロイル基のうちアクリロイル基の個数割合が50%を超えるものをいう。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、市販されている各種ウレタン(メタ)アクリレートを用いることができる。例えば、日本合成化学工業社製の商品名「UV−3300B」、荒川化学工業社製の商品名「ビームセット505A−6」等を好ましく用いることができる。
他の好ましい一態様では、フィルム状基材はPVC系樹脂フィルムである。上記PVC系樹脂フィルムは、PVC系樹脂を含むPVC系樹脂組成物(成形材料)をフィルム状に成形することにより作製される。ここでPVC系樹脂組成物とは、樹脂成分(ポリマー成分)のうちの主成分(すなわち50重量%以上)がPVC系樹脂(典型的にはPVC)である樹脂組成物をいう。該PVC系樹脂組成物に含まれる樹脂成分全量のうち凡そ80重量%以上(より好ましくは凡そ90重量%以上)がPVC系樹脂であることが好ましい。樹脂成分の実質的に全量がPVCであってもよい。かかるPVC系樹脂組成物によると、粘着シートの基材として好適な物性を示すPVC系樹脂フィルムが形成され得る。
フィルム状基材(例えば樹脂フィルム基材)には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、着色剤(顔料、染料)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、安定剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。例えば、フィルム状基材として軟質のPVC系樹脂フィルムを使用する場合、可塑剤の配合量はPVC系樹脂100重量部当たり凡そ20重量部以上(より好ましくは凡そ30重量部以上)、100重量部以下(より好ましくは凡そ70重量部以下)とすることが適当である。各種添加剤の配合割合は、通常は30重量%未満(例えば20重量%未満、典型的には10重量%未満)程度が適当である。
フィルム状基材の表面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、従来公知の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、フィルム状基材と粘着剤層との密着性、言い換えると粘着剤層の基材への投錨性を向上させるための処理であり得る。なお、フィルム状基材がポリウレタン系樹脂フィルムの場合には、その表面エネルギーの高さにより、上述のような表面処理が施されていなくても良好な投錨性を得ることができる。
フィルム状基材は、単層構造であってもよく、2層、3層またはそれ以上の多層構造であってもよい。多層構造の場合、少なくとも1つの層(好ましくは全ての層)は上記樹脂(より好ましくはポリウレタン)の連続構造を有する層であることが好ましい。フィルム状基材の製造方法は従来公知の方法を適宜採用すればよく特に限定されない。フィルム状基材として樹脂フィルム基材を採用する場合には、例えば、押出成形、インフレーション成形、Tダイキャスト成形、カレンダーロール成形等の従来公知の一般的なフィルム成形方法を適宜採用して作製した樹脂フィルム基材を使用することができる。
フィルム状基材の厚さは特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、フィルム状基材の厚さを1mm以下とすることができる。粘着シートの熱抵抗を低減しやすくする観点から、通常、フィルム状基材の厚さは、300μm以下とすることが有利であり、150μm以下(典型的には100μm未満、例えば80μm未満)とすることがより好ましい。また、引張り除去性の観点から、フィルム状基材の厚さは、通常、10μm以上とすることが適当であり、20μm以上(典型的には30μm以上、例えば40μm以上)程度とすることが好ましい。例えば、非発泡の樹脂フィルム基材に対して上記厚さが好ましく適用される。
<剥離ライナー>
剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、樹脂フィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナーや、フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)の低接着性材料からなる剥離ライナー等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
<伸張性粘着シートのサイズ等>
ここに開示される伸張性粘着シートが長尺形状を有する場合、その幅は30mm以下(例えば20mm以下、典型的には15mm以下)程度に構成され得る。例えば、粘着シートを携帯型電子機器内において用いる場合、上記幅が好ましく採用され得る。引張り除去の際に千切れる等の損傷を防止する観点から、粘着シートの幅は1mm以上(例えば3mm以上、典型的には5mm以上)であることが好ましい。一態様において、粘着シートの幅は、8mm以上であってもよく、10mm以上(例えば12mm以上)であってもよい。なお、粘着シート全体が長尺状である場合、上述の幅は粘着シートの幅となる。
ここに開示される伸張性粘着シートが長尺形状を有する場合、その長さは、引張りによる除去作業性の観点から、1cm以上(例えば3cm以上、典型的には5cm以上)とすることが好ましい。除去作業性の観点から、粘着シートの長さは30cm以下(例えば15cm以下)とすることが好ましい。一態様において、粘着シートの長さは、10cm以下であってもよく、6cm以下であってもよい。
伸長性粘着シートの幅Wに対する長さLの比(L/W)は、1以上であることが好ましい。このような形状を有する伸長性粘着シートは、長方形状の被着体(例えばバッテリー等)に対して良好な接着機能を発揮し得る。また、伸長性粘着シートは、上記実施形態のように帯形状(典型的には長方形状)を有することがより好ましい。その場合、被着体の形状やサイズ、貼り付け箇所にもよるが、上記比(L/W)が凡そ2以上(典型的には3以上、例えば5以上)の伸長性粘着シートは、除去性および取扱い性に優れる傾向がある。上記比(L/W)の上限は特に限定されないが、強度や取扱い性等の観点から、上記比(L/W)は凡そ50以下(例えば30以下、典型的には20以下)であり得る。
ここに開示される伸張性粘着シート(粘着剤層と基材とを含むが、剥離ライナーは含まない。)の総厚は特に限定されない。通常は、上記総厚を凡そ20μm以上1.5mm以下(例えば30μm以上600μm以下)の範囲とすることが適当である。粘着シートの総厚は、粘着特性等を考慮して50μm以上(例えば70μm以上)程度とすることが好ましく、また、熱抵抗低減の観点から300μm以下(例えば200μm以下)程度とすることが好ましい。粘着シートの総厚を所定値以下とした場合には、製品の薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の点で有利となり得る。他の好ましい一態様では、粘着シートの総厚は80μm以上(例えば100μm以上、典型的には130μm以上)であってもよく、150μm超(例えば300μm超、典型的には500μm超)であってもよい。このような総厚を有する粘着シートは、例えば壁面等に貼り付けられ、所定期間使用された後、貼り換えられる被着体を固定する用途に好ましく利用され得る。
好ましい一態様に係る粘着シートでは、該粘着シートの総厚のうち35%以上の厚さがフィラー含有粘着剤層により構成されている。このような構成の粘着シートによると、接着信頼性と良好な熱伝導性とを好適に両立し得る。ここで、粘着シートの総厚のうち35%以上の厚さのフィラー含有粘着剤層により構成されているとは、例えば基材の両面にフィラー含有粘着剤層(第一粘着剤層、第二粘着剤層)を有する基材付き両面粘着シートにおいては、それらのフィラー含有粘着剤層の合計厚さが粘着シートの総厚の35%以上であることをいう。また、フィラー含有粘着剤層からなる基材レス両面粘着シートでは、該フィラー含有粘着剤層の厚さは上記粘着シートの総厚の100%である。
基材付きの粘着シート(典型的には基材付きの両面粘着シート)の態様において、より熱伝導性を向上しやすくする観点から、粘着シートの総厚のうちフィラー含有粘着剤層の厚さを40%以上とすることができ、50%以上(例えば55%以上)としてもよい。また、上記態様では、引張り除去性の観点から、通常、粘着シートの総厚のうちフィラー含有粘着剤層の厚さを90%以下とすることが適当であり、80%以下(例えば70%以下)とすることが好ましい。
特に限定するものではないが、ここに開示される粘着シートの重量に占める熱伝導性フィラーの重量の割合は、例えば1%以上とすることができ、より高い熱伝導性を得る観点から、通常は3%以上(例えば5%以上)とすることが適当であり、10%以上(例えば15%以上)とすることが好ましい。また、接着信頼性の観点から、粘着シートの重量に占める熱伝導性フィラーの重量の割合は、通常、50%以下とすることが適当であり、40%以下(例えば35%以下)とすることが好ましく、例えば30%以下としてもよい。ここに開示される粘着シートは、該粘着シートの重量に占める熱伝導性フィラーの重量の割合が3%以上50%以下(より好ましくは5%以上40%以下、例えば10%以上35%以下)である態様で好ましく実施することができる。
ここに開示される技術は、1m2の伸張性粘着シートに含まれる熱伝導性フィラーの重量が6g以上である態様で好ましく実施され得る。すなわち、粘着剤の面積当たりの熱伝導性フィラーの含有量が6g/m2以上である粘着シートが好ましい。このように構成することにより、熱伝導性に優れた伸張性粘着シートを好適に実現することができる。より高い熱伝導性を得る観点から、上記熱伝導性フィラーの含有量は、例えば8g/m2以上とすることができ、10g/m2以上とすることが好ましく、12g/m2以上(例えば15g/m2以上、さらには20g/m2以上)とすることがより好ましい。また、熱伝導性と引張り作業性とを高レベルで両立しやすくする観点から、熱伝導性フィラーの含有量は、通常、100g/m2以下とすることが適当であり、80g/m2以下とすることが好ましい。
ここに開示される粘着シートは、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料;ガラス、セラミックス等の無機材料;ナイロン、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体樹脂(ABS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、PC−ABSブレンド樹脂、PC−HIPSブレンド樹脂等の樹脂材料;天然ゴム、ブチルゴム等のゴム材料;およびこれらの複合素材等からなる表面を有する被着体に貼り付けられて用いられ得る。
<用途>
ここに開示される伸張性粘着シートは、フィラー含有粘着剤層を有することから熱伝導性がよく、かつ使用時には充分な接着機能を発揮し、除去時には引張り除去性に優れる。この特長を生かして、貼り付け後に再剥離され得る各種用途の粘着シートとして好ましく利用される。例えば、電子機器用途の表示部を保護する保護パネル(レンズ)固定用、ディスプレイ(例えばテレビのディスプレイ)のデコレーションパネル固定用、パソコンのバッテリーパック固定用、デジタルビデオカメラのレンズ防水等の用途に、ここに開示される粘着シートを適用することができる。なかでも、使用時には所定以上の接着力が求められる一方、構成部材の修理や交換、検査、リサイクル等の際にスムーズな除去が求められる携帯型電子機器用粘着シートとして好ましく利用することができる。例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノート型パソコン、各種ウェアラブル機器(例えば、腕時計のように手首に装着するリストウェア型、クリップやストラップ等で体の一部に装着するモジュラー型、メガネ型(単眼型や両眼型。ヘッドマウント型も含む。)を包含するアイウェア型、シャツや靴下、帽子等に例えばアクセサリの形態で取り付ける衣服型、イヤホンのように耳に取り付けるイヤウェア型等)、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、音響機器(携帯音楽プレーヤー、ICレコーダー等)、計算機(電卓等)、携帯ゲーム機器、電子辞書、電子手帳、電子書籍、車載用情報機器、携帯ラジオ、携帯テレビ、携帯プリンター、携帯スキャナ、携帯モデム等の携帯型電子機器において、表示部を保護する保護パネル(レンズ)固定、キーモジュール部材固定、リムシート固定、デコレーションパネル固定、バッテリー固定、その他各種部材(回路基板、各種パネル用部材、ボタン、照明機器部材、内部カメラ部材、放熱材、グラファイトシート)の固定、ロゴ(意匠文字)や各種デザイン等の表示物(各種標章を含む。)の固定等の用途に好ましく適用され得る。なお、この明細書において「携帯」とは、単に携帯することが可能であるだけでは充分ではなく、個人(標準的な成人)が相対的に容易に持ち運び可能なレベルの携帯性を有することを意味するものとする。
また、ここに開示される伸張性粘着シート(典型的には両面粘着シート)は、物体間から引き抜くようにして除去する性能(引き抜き除去性)に優れる。ここで引き抜き除去性とは、伸長性粘着シートを挟んで固定された2つの物体から該粘着シートのタブを露出させておき、この露出タブを引っ張って伸長性粘着シートを引き抜くことで物体の固定(典型的には接合)の解除を行うような除去のしやすさのことをいう。なお、上記2つの物体は、一部材の2箇所であり得る。また、上記2つの物体は、1つの伸張性粘着シートを介して接着している3つ以上の物体のうちの2つであり得る。以下、図3,4を参照してより具体的に説明する。
図3は、引張り除去(典型的には引き抜き除去)の一態様を説明するための模式的側面図であって、(a)は伸長性粘着シートの引張り除去を開始する状態を示す図であり、(b)はタブを引っ張って除去を行っている状態を示す図であり、(c)は伸長性粘着シートの引張り除去が完了した状態を示す図である。図4は、引張り除去(典型的には引き抜き除去)の一態様を説明するための模式的上面図であって、(a)〜(c)はそれぞれ図3の(a)〜(c)に対応する図である。
図3の(a)、図4の(a)に示すように、伸長性粘着シート(両面粘着シート)200には、物体A,Bを接合する際に外部に露出するタブTが設けられている。この伸長性粘着シート200を用いて物体Aに物体Bを接合する。そして、修理、交換等を目的として物体Aと物体Bとの接合状態を解除したい場合に、伸長性粘着シート200を物体Aと物体Bとの間から引き抜く。具体的には、タブTを指でつまんで物体A,B間から引き抜くように伸長性粘着シート200を引っ張る。すると、伸長性を有する粘着シート200は伸び始め、引張り方向に直交する方向が収縮し、物体A,Bから剥がれ始める(図3の(b)、図4の(b)参照)。そして、最終的に伸長性粘着シート200の全接着領域が剥がれて、伸長性粘着シート200の物体A,B間からの引き抜きは完了する(図3の(c)、図4の(c)参照)。物体Aに接合されていた物体Bの取外しも同時に完了する。
上述のような引張り除去性に優れる粘着シートは、携帯型電子機器においてバッテリー(一次電池および二次電池を包含する。例えばポリマーバッテリー)を固定する目的で用いられる粘着シートとして好適である。バッテリーは、充電(特に、急速充電)等の際に発熱し、その熱を効率よく逃すことはバッテリーの劣化抑制(長寿命化)のために有益である。携帯型電子機器に組み込まれるバッテリーのように、急速充電されることが想定され、かつ周囲に十分な放熱スペース(空気の通路等)を確保し難いバッテリーでは、ここに開示される粘着シートを用いて該バッテリーを固定(例えば、携帯型電子機器の筐体に固定)することが特に有意義である。
また、バッテリーは通常、携帯型電子機器の構成部材(バッテリーを含む。)の修理や交換、検査等の際に、取外しを要する箇所に配置されていることが多い。そのため、当該バッテリー固定用の粘着シートは、除去を要する頻度が高い。しかし、バッテリーの取外しを、取外し具の使用や手剥がし、加熱等の物理的手段で行うことは、バッテリーを損傷するおそれがあり、安全性の面で好ましくない場合がある。光硬化による剥離力低減も粘着シートの適用部位の関係上、バッテリー越しの照射となるため有効ではない。ここに開示される粘着シートは、バッテリーを良好に固定する機能を発揮しつつ、使用期間を終えたバッテリーを取り外す際には、上述の引張り除去(典型的には引き抜き除去)方法を利用して、その取外しを簡易に行うことができる。上記粘着シートは、特にポリマーバッテリーを固定する目的で用いられる粘着シートとして好ましい。ポリマーバッテリーは他種のバッテリー(典型的には金属ケースを備えるバッテリー)と比べて変形しやすい傾向があるため、従来の引き剥がし方法ではバッテリーが変形してしまい、機能が損なわれてしまう場合があった。ここに開示される粘着シートによると、上述の引張り除去(典型的には引き抜き除去)方法を利用して、ポリマーバッテリーの変形を抑制しつつ、粘着シートを良好に除去することができる。
しかも、携帯型電池機器のバッテリー固定に用いられる粘着シートは、バッテリー周辺に存在する他の部品や、バッテリーの配置等により、除去の際に、せん断方向に平行して引くことができない場合が多い。そのような場合、粘着シートは、接着面に対して非平行の角度(例えば45度以上90度以下の角度、典型的には70度以上90度未満の角度)で引っ張って除去することとなり、除去の際に、被着体(バッテリー)や障害物との接触等により損傷するおそれがあった。ここに開示される技術によると、そのような除去態様においても、粘着シートを損傷することなく好ましく除去することができる。
さらに、上記引張り除去性(典型的には引き抜き除去性)に優れる粘着シートは、壁面や柱、家具、家電製品、ガラス面等に貼り付けられ、所定期間使用された後、貼り換えられる被着体(被固定物、被貼り付け物等)を固定する目的で用いられる粘着シート(典型的には両面粘着シート)としても好適である。この用途においても、被着体固定中は、粘着シートは良好な固定機能を発揮しつつ、被着体の取外しの際には、粘着シートに設けたタブ等を掴んで該粘着シート全体を引き抜くことにより、該粘着シートの除去(例えば図3の(c)中の矢印方向への除去)を効率よく行うことができる。
この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1) 携帯型電子機器に用いられる伸長性粘着シートであって、
熱伝導性フィラーを含有するフィラー含有粘着剤層を備える、粘着シート。
(2) 12cm2・K/Wより低い熱抵抗値を有する、上記(1)に記載の粘着シート。
(3) 0.12W/m・Kより高い熱伝導率を有する、上記(1)または(2)に記載の粘着シート。
(4) 厚さが凡そ30μm以上の上記フィラー含有粘着剤層を有する、請求項1または2に記載の粘着シート。
(5) 上記粘着シートの重量に占める上記熱伝導性フィラーの重量の割合が凡そ3%以上凡そ40%以下(例えば凡そ5%以上40%以下)である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の粘着シート。
(6) 上記熱伝導性フィラーの平均粒径は、当該熱伝導性フィラーが含まれているフィラー含有粘着剤層の厚さの凡そ15%より大きく凡そ50%未満である、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の粘着シート。
(7) 上記粘着シート1m2に含まれる熱伝導性フィラーの重量が凡そ6g以上凡そ100g以下である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の粘着シート。
(8) 上記熱伝導性フィラーは、水酸化アルミニウム、ベーマイト、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、珪酸、水酸化鉄、水酸化銅、水酸化バリウム、酸化ジルコニウム水和物、酸化スズ水和物、塩基性炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、ドウソナイト、硼砂およびホウ酸亜鉛からなる群から選択される少なくとも1種である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の粘着シート。
(9) 総厚が凡そ100μmより大きい、上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載の粘着シート。
(10) 上記粘着シートの総厚のうち凡そ35%以上の厚さが上記フィラー含有粘着剤層により構成されている、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の粘着シート。
(11) 上記フィラー含有粘着剤層を支持するフィルム状基材を備える、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の粘着シート。
(12) 上記フィルム状基材は、非発泡の樹脂フィルム基材である、上記(11)に記載の粘着シート。
(13) 上記フィルム状基材は、ポリウレタンを凡そ70重量%以上の割合で含み、
上記ポリウレタンは、エーテル系ポリウレタン、エステル系ポリウレタンまたはカーボネート系ポリウレタンである、上記(11)または(12)に記載の粘着シート。
(14) 上記フィルム状基材の第一面に設けられた第一粘着剤層と、該フィルム状基材の第二面に設けられた第二粘着剤層とを備え、上記第一粘着剤層および上記第二粘着剤層の少なくとも一方は上記フィラー含有粘着剤層である、上記(11)〜(13)のいずれかに記載の粘着シート。
(15) 上記第一粘着剤層および上記第二粘着剤層がいずれも上記フィラー含有粘着剤層である、上記(14)に記載の粘着シート。
(16) 長尺状部分を有しており、少なくともその長手方向に伸長性を有する、上記(1)〜(15)のいずれかに記載の粘着シート。
(17) 被着体に貼り付けられた状態にて、上記長尺状部分の一端から引っ張ることで、該被着体に対する貼り付け状態が解除されるものである、上記(16)に記載の粘着シート。
(18) 一の物体(被着体)と他の物体(被着体)とを接合するために用いられ、それらの物体の間から引き抜くようにして該物体から除去される、上記(1)〜(17)のいずれかに記載の粘着シート。
(19) さらにタブが設けられている、上記(1)〜(18)のいずれかに記載の粘着シート。
(20) バッテリーを固定するために使用される、上記(1)〜(19)のいずれかに記載の粘着シート。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明を実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
<例1>
(アクリル系粘着剤組成物の調製)
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応容器に、BA100部と、VAc5部と、AA3部と、HEA0.1部と、重合開始剤としてAIBN0.2部と、重合溶媒としてのトルエンとを仕込み、60℃で6時間溶液重合してアクリル系ポリマーAのトルエン溶液を得た。このアクリル系ポリマーAのMwは55×104であった。
上記トルエン溶液に含まれるアクリル系ポリマーA100部に対し、粘着付与樹脂としての重合ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製、製品名「ペンセルD−125」、軟化点125℃)40部と、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、製品名「コロネートL」)2部と、熱伝導性フィラーとしての水酸化アルミニウム粒子(昭和電工社製、商品名「ハイジライト H−31」)40部とを添加、混合して、本例に係るアクリル系粘着剤組成物を調製した。本例で使用した熱伝導性フィラーは、平均粒径が18μm、30μm未満の粒径を有する粒子の割合が70%以上、1μm未満の粒径を有する粒子の割合が1%である。また、重量基準で、上記アクリル系粘着剤組成物に含まれる固形分(粘着剤層形成成分)における上記熱伝導性フィラーの含有量は22.0%である。
(両面粘着シートの作製)
市販の剥離ライナー(商品名「SLB−80W3D」、住化加工紙社製)を2枚用意した。それらの剥離ライナーのそれぞれ一方の面(剥離面)に上記粘着剤組成物を、乾燥後の厚さが45μmとなるように塗布し、100℃で2分間乾燥させた。このようにして、上記2枚の剥離ライナーの剥離面上にフィラー含有粘着剤層(第一粘着剤層および第二粘着剤層)をそれぞれ形成した。
フィルム状基材として、厚さ60μmの非発泡エーテル系ポリウレタン樹脂フィルム(日本マタイ社製、商品名「エスマーURS ET−N」)を用意した。このフィルム状基材の両面に、上記2枚の剥離ライナー上に形成された粘着剤層をそれぞれ貼り合わせた。上記剥離ライナーは、そのまま粘着剤層上に残し、該粘着剤層の表面(粘着面)の保護に使用した。得られた構造体を80℃のラミネータ(0.3MPa、速度0.5m/分)に1回通過させた後、50℃のオーブン中で1日間エージングした。このようにして、本例に係る両面粘着シートを得た。この両面粘着シートの総厚は150μmであり、総厚に占めるフィラー含有粘着剤層の厚さ(第一粘着剤層および第二粘着剤層の合計厚さ)の割合は60%である。また、粘着シートの重量に占める熱伝導性フィラーの割合は13重量%である。この粘着シートには、該粘着シート1m2当たり25gの熱伝導性フィラーが含まれている。
<例2>
厚さ150μmの粘着剤層からなる市販の両面粘着シートを用意した。この両面粘着シートの総厚は150μmである。上記粘着剤層は、フィラーを含まないゴム系粘着剤層である。
<評価>
各例に係る粘着シートについて、厚み方向に対する熱伝導性を、図5に示す熱特性評価装置を用いて実施した。図5(a)は熱特性評価装置の正面概略図であり、図5(b)は該熱特性評価装置の側面概略図である。なお、測定の際に剥離ライナーは除かれている。
具体的には、1辺が20mmの立方体となるように形成されたアルミニウム製(A5052、熱伝導率:140W/m・K)の一対のブロック(「ロッド」と称する場合もある。)L間に、粘着シートS(縦20mm、横20mmの正方形状)を挟み込み、一対のブロックLを粘着シートSで貼り合わせた。そして、一対のブロックLが上下となるように、発熱体(ヒーターブロック)Hと放熱体(冷却水が内部を循環するように構成された冷却ベース板)Cとの間に配置した。具体的には、上側のブロックLの上に発熱体Hを配置し、下側のブロックLの下に放熱体Cを配置した。
このとき、粘着シートSで貼り合わされた一対のブロックLは、発熱体Hおよび放熱体Cを貫通する一対の圧力調整用ネジJの間に位置している。なお、圧力調整用ネジJと発熱体Hとの間にはロードセルRが配置されており、圧力調整用ネジJを締めこんだ際の圧力が測定されるように構成されている。この圧力を粘着シートSに加わる圧力として用いた。具体的には、この試験において、圧力調整用ネジJを、粘着シートSに加わる圧力が25N/cm2(250kPa)となるように締め込んだ。
また、下側のブロックLおよび粘着シートSを放熱体C側から貫通するように接触式変位計の3本のプローブP(直径1mm)を設置した。この際、プローブPの上端部は、上側のブロックLの下面に接触した状態になっており、上下のブロックL間の間隔(粘着シートSの厚み)を測定可能に構成されている。
発熱体Hおよび上下のブロックLに温度センサーDを取り付けた。具体的には、発熱体Hの1箇所に温度センサーDを取り付けた。また、各ブロックLの5箇所に、上下方向に5mmの間隔で、温度センサーDをそれぞれ取り付けた。
測定にあたっては、まず圧力調整用ネジJを締めこんで粘着シートSに圧力を加え、発熱体Hの温度を80℃に設定するともに、放熱体Cに20℃の冷却水を循環させた。
そして、発熱体Hおよび上下のブロックLの温度が安定した後、上下のブロックLの温度を各温度センサーDで測定し、上下のブロックLの熱伝導率(W/m・K)と温度勾配から粘着シートSを通過する熱流束を算出するとともに、上下のブロックLと粘着シートSとの界面の温度を算出した。そして、これらを用いて上記圧力における熱伝導率(W/m・K)および熱抵抗値(cm2・K/W)を、下記の熱伝導率方程式(フーリエの法則)を用いて算出した。
Q=−λgradT
R=L/λ
Q:単位面積あたりの熱流速
gradT:温度勾配
L:シートの厚み
λ:熱伝導率
R:熱抵抗
さらに、例1,2の両面粘着シートにつき、上述の方法により初期粘着力A[N/20mm]、引張り剥離応力B[N/20mm]を測定した。
結果を表1に示す。
表1に示されるように、フィラー含有粘着剤層を有する例1の粘着シートは、フィラー含有粘着剤層を有しない例2の粘着シートに比べて明らかに熱伝導率が高く、顕著に低い熱抵抗値を示した。また、表1に示す結果から、例1の粘着シートは、伸張性粘着シートとしても好適な性能(接着信頼性および引張り除去性)を示すことがわかる。なお、上述の方法により例1の両面粘着シートの初期粘着力Aおよび引張り剥離応力Bを測定したところ、初期粘着力Aは12.0N/20mm、引張り剥離応力Bは9.8N/20mmであり、引き抜き除去に適した特性を示すことが確認された。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を
限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々
に変形、変更したものが含まれる。