JP2017132107A - 耐熱性合成樹脂微多孔フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】耐熱性及び耐メルトダウン性の双方に優れている耐熱性合成樹脂微多孔フィルム及びその製造方法を提供する。【解決手段】本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、合成樹脂微多孔フィルムと、上記合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成された重合性化合物の重合体を含む皮膜層と、上記合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成されたエンジニアリングプラスチックを含有する表面層と、を含み、TMA測定における最大熱収縮率が40%以下であり、TMA測定におけるフィルム溶断温度が190℃以上であることを特徴とする。【選択図】 なし
Description
本発明は、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムに関する。
従来から携帯用電子機器の電池としてリチウムイオン二次電池が用いられている。このリチウムイオン二次電池は、一般的に正極と、負極と、セパレータとを電解液中に配設することによって構成されている。正極は、アルミニウム箔の表面にコバルト酸リチウム又はマンガン酸リチウムが塗布されることで形成される。負極は、銅箔の表面にカーボンが塗布されることで形成される。そして、セパレータは、正極と負極とを仕切るように配設され、電極間の電気的な短絡を防止している。
リチウムイオン二次電池の充電時には、正極からリチウムイオンが放出されて負極内に移動する。一方、リチウムイオン二次電池の放電時には、負極からリチウムイオンが放出されて正極内に移動する。したがって、セパレータには、リチウムイオンなどのイオン透過性を有していることが必要とされている。
セパレータとしては、絶縁性及びコスト性に優れていることから、合成樹脂微多孔フィルムが用いられている。合成樹脂微多孔フィルムは、プロピレン系樹脂などの合成樹脂を含んでいる。
そして、合成樹脂フィルムを延伸することによって、合成樹脂微多孔フィルムが製造されている。延伸法によって製造された合成樹脂微多孔フィルムは、延伸による高い残留応力が発生している。そのため、このような合成樹脂微多孔フィルムは高温下で熱収縮し、その結果、正極と負極とが短絡する可能性が指摘されている。したがって、合成樹脂微多孔フィルムの耐熱性を向上させることにより、リチウムイオン二次電池の安全性を確保することが望まれている。
特許文献1には、電子線照射により処理され、100℃における熱機械分析(TMA)の値が、0%〜−1%である合成樹脂微多孔フィルムがリチウムイオン二次電池用セパレータとして開示されている。
しかしながら、電子線照射による処理だけでは合成樹脂微多孔フィルムの耐熱性が不十分であり、また、電池内が高温になった場合、合成樹脂微多孔フィルムが熱によって融けて電極にしみ込んでしまい、正極と負極との間の短絡を防止することができず、リチウムイオン二次電池の安全性を低下させることがある。したがって、耐熱性に優れていると共に、異常高温になっても融けにくく耐メルトダウン性に優れたセパレータが必要とされている。
そこで、本発明は、耐熱性及び耐メルトダウン性に優れた耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供する。
本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、
合成樹脂微多孔フィルムと、
上記合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成された重合性化合物の重合体を含む皮膜層と、
上記合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成されたエンジニアリングプラスチックを含有する表面層と、を含み、
TMA測定における最大熱収縮率が40%以下であり、TMA測定におけるフィルム溶断温度が180℃以上であることを特徴とする。
合成樹脂微多孔フィルムと、
上記合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成された重合性化合物の重合体を含む皮膜層と、
上記合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成されたエンジニアリングプラスチックを含有する表面層と、を含み、
TMA測定における最大熱収縮率が40%以下であり、TMA測定におけるフィルム溶断温度が180℃以上であることを特徴とする。
本発明によれば、耐熱性及び耐メルトダウン性に優れた耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、合成樹脂微多孔フィルムと、合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成された重合性化合物の重合体を含む皮膜層と、エンジニアリングプラスチックを含有する表面層とを含む。
(合成樹脂微多孔フィルム)
合成樹脂微多孔フィルムとしては、リチウムイオン二次電池などの従来の二次電池においてセパレータとして用いられている微多孔フィルムであれば、特に制限されずに用いることができる。合成樹脂微多孔フィルムとしては、オレフィン系樹脂微多孔フィルムが好ましい。
合成樹脂微多孔フィルムとしては、リチウムイオン二次電池などの従来の二次電池においてセパレータとして用いられている微多孔フィルムであれば、特に制限されずに用いることができる。合成樹脂微多孔フィルムとしては、オレフィン系樹脂微多孔フィルムが好ましい。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムはオレフィン系樹脂を含んでいる。オレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂及びプロピレン系樹脂が好ましく、プロピレン系樹脂がより好ましい。
プロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などが挙げられる。延伸法によって合成樹脂微多孔フィルムが製造される場合には、ホモポリプロピレンが好ましい。プロピレン系樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。又、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体の何れであってもよい。プロピレン系樹脂中におけるプロピレン成分の含有量は、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
なお、プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンなどが挙げられ、エチレンが好ましい。
エチレン系樹脂としては、超低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高密度ポリエチレン、及びエチレン−プロピレン共重合体などが挙げられる。また、エチレン系樹脂微多孔フィルムは、エチレン系樹脂を含んでいれば、他のオレフィン系樹脂を含んでいてもよい。エチレン系樹脂中におけるエチレン成分の含有量は、好ましくは50質量%を超え、より好ましくは80質量%以上である。
オレフィン系樹脂の重量平均分子量は、3万〜50万が好ましく、5万〜48万がより好ましい。プロピレン系樹脂の重量平均分子量は、25万〜50万が好ましく、28万〜48万がより好ましい。エチレン系樹脂の重量平均分子量は、3万〜40万が好ましく、5万〜40万がより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、製膜安定性に優れていると共に、微小孔部が均一に形成されているオレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
オレフィン系樹脂の分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、5.0〜30が好ましく、7.5〜25がより好ましい。プロピレン系樹脂の分子量分布は、7.5〜12が好ましく、8〜11がより好ましい。エチレン系樹脂の分子量分布は、5.0〜30が好ましく、8.0〜25がより好ましい。分子量分布が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、高い表面開口率を有しているオレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
ここで、オレフィン系樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、オレフィン系樹脂6〜7mgを採取し、採取したオレフィン系樹脂を試験管に供給した上で、試験管に0.05質量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含んでいるo−DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えてオレフィン系樹脂濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転数25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうさせてオレフィン系樹脂をo−DCB溶液に溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によってオレフィン系樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量を測定することができる。
オレフィン系樹脂における重量平均分子量及び数平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o−DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500〜8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o−DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500〜8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
オレフィン系樹脂の融点は、130〜170℃が好ましく、133〜165℃がより好ましい。プロピレン系樹脂の融点は、160〜170℃が好ましく、160〜165℃がより好ましい。エチレン系樹脂の融点は、130〜140℃が好ましく、133〜139℃がより好ましい。融点が上記範囲内であるオレフィン系樹脂によれば、製膜安定性及び耐メルトダウン性に優れているオレフィン系樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
なお、本発明において、オレフィン系樹脂の融点は、示差走査熱量計(例えば、セイコーインスツル社 装置名「DSC220C」など)を用い、下記手順に従って測定することができる。先ず、オレフィン系樹脂10mgを25℃から昇温速度10℃/分にて250℃まで加熱し、250℃にて3分間に亘って保持する。次に、オレフィン系樹脂を250℃から降温速度10℃/分にて25℃まで冷却して25℃にて3分間に亘って保持する。続いて、オレフィン系樹脂を25℃から昇温速度10℃/分にて250℃まで再加熱し、この再加熱工程における吸熱ピークの頂点の温度を、オレフィン系樹脂の融点とする。
合成樹脂微多孔フィルムは、微小孔部を含んでいる。微小孔部は、フィルム厚み方向に貫通していることが好ましく、これにより耐熱性合成樹脂微多孔フィルムに優れた透気性を付与することができる。このような耐熱性合成樹脂微多孔フィルムはその厚み方向にリチウムイオンなどのイオンを透過させることが可能となる。
合成樹脂微多孔フィルムの透気度は、50〜600sec/100mLが好ましく、70〜400sec/100mLがより好ましい。透気度が上記範囲内である合成樹脂微多孔フィルムによれば、イオン透過性に優れている耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
なお、合成樹脂微多孔フィルムの透気度は、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下でJIS P8117に準拠して、合成樹脂微多孔フィルムの長さ方向に10cm間隔で10箇所測定し、その相加平均値を算出することにより得られた値とする。
合成樹脂微多孔フィルムの表面開口率は、25〜55%が好ましく、30〜50%がより好ましい。表面開口率が上記範囲内である合成樹脂微多孔フィルムによれば、イオン透過性に優れている耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
なお、合成樹脂微多孔フィルムの表面開口率は下記の要領で測定することができる。先ず、合成樹脂微多孔フィルム表面の任意の部分において、縦9.6μm×横12.8μmの平面長方形状の測定部分を定め、この測定部分を倍率1万倍にて写真撮影する。
次いで、測定部分内に形成された各微小孔部を、長辺と短辺の何れか一方が合成樹脂微多孔フィルムの長さ方向(延伸方向)に平行となる長方形で囲む。この長方形は、長辺及び短辺が共に最小寸法となるように調整する。長方形の面積を各微小孔部の開口面積とする。各微小孔部の開口面積を合計して微小孔部の総開口面積S(μm2)を算出する。この微小孔部の総開口面積S(μm2)を122.88μm2(9.6μm×12.8μm)で除して100を乗じた値を表面開口率(%)とする。なお、測定部分と、測定部分でない部分とに跨がって存在している微小孔部については、微小孔部のうち、測定部分内に存在している部分のみを測定対象とする。
合成樹脂微多孔フィルムの厚みは、5〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
なお、本発明において、合成樹脂微多孔フィルムの厚みの測定は、次の要領に従って行うことができる。すなわち、合成樹脂微多孔フィルムの任意の10箇所をダイヤルゲージを用いて測定し、その相加平均値を合成樹脂微多孔フィルムの厚みとする。
合成樹脂微多孔フィルムとしては、延伸法によって製造されたオレフィン系樹脂微多孔フィルムがより好ましい。延伸法によって製造されたオレフィン系樹脂微多孔フィルムは、延伸によって発生した残留歪みによって、高温時に特に熱収縮を生じやすい。一方、本発明の無機充填剤層によれば、オレフィン系樹脂微多孔フィルムの熱収縮を低減することができ、したがって、本発明による効果を特に発揮できる。
オレフィン系樹脂微多孔フィルムを延伸法により製造する方法として、具体的には、
(1)オレフィン系樹脂を押し出すことによりオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、このオレフィン系樹脂フィルム中にラメラ結晶を発生及び成長させる工程と、オレフィン系樹脂フィルムを延伸してラメラ結晶間を離間させることにより微小孔部が形成されてなるオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得る工程とを有する方法;
(2)オレフィン系樹脂と充填剤とを含んでいるオレフィン系樹脂組成物を押し出すことによりオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、このオレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸又は二軸延伸してオレフィン系樹脂と充填剤との界面を剥離させることにより微小孔部が形成されてなるオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得る工程とを有する方法;及び
(3)オレフィン系樹脂と抽出可能物(例えば、充填剤や可塑剤など)とを含んでいるオレフィン系樹脂組成物を押し出すことによりオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、オレフィン系樹脂フィルムから抽出可能物を溶剤によって抽出することにより微小孔部を形成する工程と、微小孔部を形成する前又は微小孔部を形成した後のオレフィン系樹脂フィルムを延伸することによりオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得る工程とを有する方法などが挙げられる。
(1)オレフィン系樹脂を押し出すことによりオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、このオレフィン系樹脂フィルム中にラメラ結晶を発生及び成長させる工程と、オレフィン系樹脂フィルムを延伸してラメラ結晶間を離間させることにより微小孔部が形成されてなるオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得る工程とを有する方法;
(2)オレフィン系樹脂と充填剤とを含んでいるオレフィン系樹脂組成物を押し出すことによりオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、このオレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸又は二軸延伸してオレフィン系樹脂と充填剤との界面を剥離させることにより微小孔部が形成されてなるオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得る工程とを有する方法;及び
(3)オレフィン系樹脂と抽出可能物(例えば、充填剤や可塑剤など)とを含んでいるオレフィン系樹脂組成物を押し出すことによりオレフィン系樹脂フィルムを得る工程と、オレフィン系樹脂フィルムから抽出可能物を溶剤によって抽出することにより微小孔部を形成する工程と、微小孔部を形成する前又は微小孔部を形成した後のオレフィン系樹脂フィルムを延伸することによりオレフィン系樹脂微多孔フィルムを得る工程とを有する方法などが挙げられる。
なかでも、微小孔部が均一に且つ多数形成されているオレフィン系樹脂微多孔フィルムが得られることから、(1)の方法が好ましい。
(皮膜層)
合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に、重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されており、皮膜層の形成によって、耐熱性及び耐メルトダウン性に更に優れ且つ機械的強度に優れた耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを構成することができる。
合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に、重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されており、皮膜層の形成によって、耐熱性及び耐メルトダウン性に更に優れ且つ機械的強度に優れた耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを構成することができる。
皮膜層と、後述する表面層とは馴染み性に優れているため、皮膜層上に表面層を形成することによって、合成樹脂微多孔フィルムの表面に皮膜層を介して表面層を強固に一体化することができる。
更に、合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部を通じて、微小孔部の壁面(合成樹脂微多孔フィルムの内部)にも皮膜層を形成することができ、合成樹脂微多孔フィルムは全体的に優れた耐熱性及び耐メルトダウン性を有している。
皮膜層は、重合性化合物の重合体を含んでいる。このような重合体を含んでいる皮膜層は、高い硬度を有していると共に、適度な弾性及び伸度を有している。したがって、上記重合体を含んでいる皮膜層を用いることによって、耐熱性及び耐メルトダウン性の双方に優れている耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
皮膜層は、合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成されていればよいが、合成樹脂微多孔フィルムの表面全面に形成されていることが好ましく、合成樹脂微多孔フィルムの表面、及び合成樹脂微多孔フィルム表面から連続する微小孔部の壁面にも形成されていることがより好ましい。
また、重合性化合物を用いることにより、合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部を閉塞しないように、合成樹脂微多孔フィルム表面に皮膜層を形成することができる。これによって、優れた透気性及びイオン透過性が確保されている耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
重合性化合物は、1分子中にラジカル重合性官能基を2個以上有していることが好ましい。ラジカル重合性官能基は、活性エネルギー線の照射によってラジカル重合可能なラジカル重合性不飽和結合を含んでいる官能基である。ラジカル重合性官能基としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリロイル基やビニル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
重合性化合物としては、1分子中にラジカル重合性官能基を2個以上有する多官能性アクリル系モノマー、1分子中にラジカル重合性官能基を2個以上有するビニル系オリゴマー、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能性(メタ)アクリレート変性物、(メタ)アクリロイル基を2個以上有する樹枝状ポリマー、及び(メタ)アクリロイル基を2個以上有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
なお、本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
多官能性アクリル系モノマーは、ラジカル重合性官能基を1分子中に2個以上有していればよいが、ラジカル重合性官能基を1分子中に3個以上有している3官能以上の多官能性アクリル系モノマーが好ましく、ラジカル重合性官能基を1分子中に3〜6個有している3官能〜6官能の多官能性アクリル系モノマーがより好ましい。
多官能性アクリル系モノマーとしては、
1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどの2官能の多官能性アクリル系モノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、及びエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートなどの3官能以上の多官能性アクリル系モノマー
などを例示することができる。
1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどの2官能の多官能性アクリル系モノマー;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−アクリロキシエチル)イソシアヌレート、及びエトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレートなどの3官能以上の多官能性アクリル系モノマー
などを例示することができる。
ビニル系オリゴマーとしては、特に限定されず、例えば、ポリブタジエン系オリゴマーなどを例示することができる。なお、ポリブタジエン系オリゴマーとは、ポリ(1,2−ブタジエン)オリゴマー、ポリ(1,3−ブタジエン)オリゴマーなどのブタジエン骨格を有するオリゴマーを意味する。
ポリブタジエン系オリゴマーは市販されている製品を用いることができる。ポリ(1,2−ブタジエン)オリゴマーとしては、日本曹達社製 商品名「B−1000」、「B−2000」及び「B−3000」などを例示することができる。
多官能性(メタ)アクリレート変性物としては、多官能性(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物、及び多官能性(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物が好ましく挙げられる。
多官能性(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド変性物は、好ましくは、多価アルコールとアルキレンオキサイドとの付加物を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる。また、多官能性(メタ)アクリレートのカプロラクトン変性物は、好ましくは、多価アルコールとカプロラクトンとの付加物を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得られる。
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマーとは、(メタ)アクリロイル基を配置した枝分子を放射状に組み立てた球状の巨大分子を意味する。
(メタ)アクリロイル基を有する樹枝状ポリマーとしては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するデンドリマー、及び1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するハイパーブランチポリマーが挙げられる。
デンドリマーとは、(メタ)アクリレートを枝分子とし、(メタ)アクリレートを球状に集積することによって得られる球状高分子を意味する。
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するハイパーブランチポリマーとは、ABx型の多官能性モノマー(ここでAとBは互いに反応する官能基、Bの数Xは2以上)を重合させて得られる不規則な分岐構造を有する高分岐構造体の表面および内部を(メタ)アクロイル基によって修飾することによって得られる球状高分子を意味する。
ウレタンアクリレートオリゴマーは、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基またはイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートと、ポリオール化合物とを反応させることにより得られる。
本発明においては、上記した重合性化合物のうち、多官能性アクリル系モノマーが好ましく、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが好ましい。これらによれば、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムに優れた耐熱性及び耐メルトダウン性を付与することができる。
重合性化合物として多官能性アクリル系モノマーを用いる場合、重合性化合物中における多官能性アクリル系モノマーの含有量は、30質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。多官能性アクリル系モノマーを30質量%以上含んでいる重合性化合物を用いることにより、得られる耐熱性合成樹脂微多孔フィルムに、透気性を低下させることなく優れた耐熱性及び耐メルトダウン性を付与することができる。
なお、本発明においては、重合性化合物としては、上記した重合性化合物のうちの一種のみを用いてもよく、二種以上の重合性化合物を併用しても構わない。
皮膜層は、上述した重合性化合物の重合体を含んでいる。この重合体は、活性エネルギー線の照射によって重合性化合物が重合されてなる重合体であることが好ましい。即ち、上記重合体は、活性エネルギー線の照射による重合性化合物の重合体であることが好ましい。このような重合体を含んでいる皮膜層は高い硬度を有しており、これにより高温下における耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの熱収縮を低減して、耐熱性を向上させることができる。
活性エネルギー線としては、特に限定されず、例えば、電子線、プラズマ、紫外線、α線、β線、及びγ線などが挙げられる。なかでも、電子線及び紫外線が好ましく、電子線がより好ましい。
皮膜層中の重合体の一部と合成樹脂微多孔フィルム中のオレフィン系樹脂の一部とが化学的に結合していることが好ましい。このような重合体を含んでいる皮膜層を用いることによって、上述した通り、高温下における熱収縮が低減されて優れた耐熱性を有すると共に優れた耐メルトダウン性を有する耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。化学的な結合としては、特に制限されず、共有結合、イオン結合、及び分子間結合などが挙げられる。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルム中における皮膜層の含有量は、合成樹脂微多孔フィルム100質量部に対して、5〜80質量部が好ましく、5〜60質量部がより好ましく、10〜40質量部が特に好ましい。皮膜層の含有量を上記範囲内とすることによって、合成樹脂微多孔フィルム表面の微小孔部を閉塞させることなく皮膜層を均一に形成することができる。これにより、透気性を低下させることなく耐熱性及び耐メルトダウン性が向上されている耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
皮膜層の厚みは、特に制限されないが、1〜100nmが好ましく、5〜50nmがより好ましい。皮膜層の厚みを上記範囲内とすることによって、合成樹脂微多孔フィルム表面に微小孔部を閉塞させることなく皮膜層を均一に形成することができる。これにより、透気性を低下させることなく耐熱性及び耐メルトダウン性が向上されている耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
(表面層)
微小孔部を有する合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部には表面層が最外層として形成されている。表面層は、合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成されていればよい。表面層は、合成樹脂微多孔フィルムの片面側のみに形成されていても構わないし、合成樹脂微多孔フィルムの両面側に形成されていても構わない。合成樹脂微多孔フィルムの表面全面に形成されていることが好ましい。表面層には、その厚み方向に貫通する貫通孔が無数に形成されており、この貫通孔を通じて合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部が閉塞されないように構成されている。
微小孔部を有する合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部には表面層が最外層として形成されている。表面層は、合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成されていればよい。表面層は、合成樹脂微多孔フィルムの片面側のみに形成されていても構わないし、合成樹脂微多孔フィルムの両面側に形成されていても構わない。合成樹脂微多孔フィルムの表面全面に形成されていることが好ましい。表面層には、その厚み方向に貫通する貫通孔が無数に形成されており、この貫通孔を通じて合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部が閉塞されないように構成されている。
合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に皮膜層が形成されている場合、表面層が最外層となるように皮膜層が形成される。即ち、合成樹脂微多孔フィルムの表面のうち、表面層が形成されている部分に皮膜層が形成される場合は、合成樹脂微多孔フィルムの表面に皮膜層が形成され、この皮膜層の上に表面層が形成される。
合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に表面層を形成することによって、耐熱性及び耐メルトダウン性に更に優れ且つ機械的強度に優れた耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを構成することができる。
更に、合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部を通じて、微小孔部の壁面(合成樹脂微多孔フィルムの内部)にも表面層を形成することができ、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは全体的に優れた耐熱性及び耐メルトダウン性を有している。
表面層は、エンジニアリングプラスチックを含有している。エンジニアリングプラスチックを含んでいる表面層は、高い硬度及び耐熱性を有している。したがって、エンジニアリングプラスチックを含んでいる表面層を用いることによって、耐熱性及び耐メルトダウン性の双方に優れている耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
エンジニアリングプラスチックとしては、特に限定されず、例えば、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリ四フッ化エチレン、芳香族ポリエステル、ポリアミノビスマレイミド、トリアジン樹脂などが挙げられ、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミドイミドが好ましい。
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体中におけるフッ化ビニリデン単位の含有量は、50〜95モル%が好ましく、70〜95モル%がより好ましく、80〜90モル%が特に好ましい。フッ化ビニリデン単位の含有量が50モル%以上であると、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の耐溶剤性が高くなり、電解液中での皮膜層の長期安定性が向上できる。フッ化ビニリデン単位の含有量が95モル%以下であると、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの耐熱性及び耐メルトダウン性が向上する。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体中におけるヘキサフルオロプロピレン単位の含有量は、5〜50モル%が好ましく、5〜30モル%がより好ましく、10〜20モル%が特に好ましい。ヘキサフルオロプロピレン単位の含有量が5モル%以上であると、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの耐熱性及び耐メルトダウン性が向上する。ヘキサフルオロプロピレン単位の含有量が50モル%以下であると、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の耐溶剤性が高くなり、電解液中での表面層の長期安定性が向上できる。
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の重量平均分子量は、50000〜500000が好ましく、100000〜450000がより好ましく、100000〜400000が特に好ましい。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の数平均分子量が50000以上であると、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの耐熱性及び耐メルトダウン性が向上する。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の数平均分子量が500000以下であると、合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部の壁面に表面層を均一に形成することができる。
フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の重量平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 昭和電工製Shodex GPC−104
測定条件 キャリア:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.6ml/min
カラム温度:40℃
試料濃度:3%THF溶液
標準物質:ポリスチレン
測定装置 昭和電工製Shodex GPC−104
測定条件 キャリア:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.6ml/min
カラム温度:40℃
試料濃度:3%THF溶液
標準物質:ポリスチレン
ポリアミドイミドの数平均分子量は、5000〜40000が好ましく、5000〜35000がより好ましく、6000〜30000が特に好ましい。ポリアミドイミドの数平均分子量が5000以上であると、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの耐熱性及び耐メルトダウン性が向上する。ポリアミドイミドの数平均分子量が40000以下であると、合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部の壁面に表面層を均一に形成することができる。
ポリアミドイミドの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定されたポリエチレンオキシド(PEO)換算した値である。例えば、下記の条件で測定することができる。
GPC装置:製品名「HLC−8120GPC」(東ソー製)
カラム:「TSKgel superAWM−H」+「TSKgel super
AW4000」+「TSKgel superAW2500」(東ソー
製)
流量:0.4ml/min
濃度:1.0g/L
注入量:20μL
カラム温度:40℃
溶離液:10mM−LiBr+NMP
GPC装置:製品名「HLC−8120GPC」(東ソー製)
カラム:「TSKgel superAWM−H」+「TSKgel super
AW4000」+「TSKgel superAW2500」(東ソー
製)
流量:0.4ml/min
濃度:1.0g/L
注入量:20μL
カラム温度:40℃
溶離液:10mM−LiBr+NMP
耐熱性合成樹脂微多孔フィルム中における表面層の含有量は、合成樹脂微多孔フィルム100質量部に対して、2〜40質量部が好ましく、3〜30質量部がより好ましく、4〜25質量部が特に好ましい。表面層の含有量を上記範囲内とすることによって、合成樹脂微多孔フィルム表面の微小孔部を閉塞させることなく表面層を均一に形成することができる。これにより、透気性を低下させることなく耐熱性及び耐メルトダウン性が向上されている耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
表面層の厚みは、0.01〜10μmが好ましく、0.1〜5μmがより好ましく、1〜3μmが特に好ましい。表面層の厚みが上記範囲内にあると、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、電極に対する優れた貼着性を維持しながら優れた透気性を有する。
(耐熱性合成樹脂微多孔フィルム)
本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、上述した通り、上記合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成された重合性化合物の重合体を含む皮膜層と、上記合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成されたエンジニアリングプラスチックを含有する表面層と、を含んでいる。
本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、上述した通り、上記合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成された重合性化合物の重合体を含む皮膜層と、上記合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成されたエンジニアリングプラスチックを含有する表面層と、を含んでいる。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムについて、TMA測定における25〜250℃の最大収縮率は、40%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下が特に好ましい。耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、皮膜層及び表面層によって高温下における熱収縮が低減されており、優れた耐熱性を有している。
なお、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムのTMA測定における25〜250℃の最大熱収縮率の測定は、次の通りに行うことができる。先ず、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを切断することにより、平面長方形状の試験片(幅3mm×長さ30mm)を得る。この時、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの長さ方向(押出方向)と試験片の長さ方向とを平行にする。試験片の長さ方向の両端部をつかみ具により把持して、TMA測定装置(例えば、セイコーインスツル社製 商品名「TMA−SS6000」など)に取り付ける。この時、つかみ具間の距離を10mmとし、つかみ具は試験片の熱収縮に伴って移動可能とする。そして、試験片に長さ方向に19.6mN(2gf)の張力を加えた状態で、空気中で試験片を25℃から250℃まで5℃/分の昇温速度にて加熱し、5℃間隔ごとにつかみ具間の距離L(mm)を測定し、下記式に基づいて熱収縮率を算出する。熱収縮率の最大値を最大熱収縮率とする。
熱収縮率(%)=100×(10−L)/10
熱収縮率(%)=100×(10−L)/10
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの透気度は、特に限定されないが、50〜600sec/100mLが好ましく、70〜400sec/100mLがより好ましい。
なお、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの透気度の測定方法としては、合成樹脂微多孔フィルムの透気度の上述した測定方法と同じ方法が用いられる。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの表面開口率は、特に限定されないが、30〜55%が好ましく、30〜50%がより好ましい。表面開口率が上記範囲内である耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、機械的強度とイオン透過性の双方に優れている。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの表面開口率の測定方法としては、合成樹脂微多孔フィルムの表面開口率の上述した測定方法と同じ方法が用いられる。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムにおいて、TMA測定におけるフィルム溶断温度は、180℃以上であるが、190℃以上が好ましく、210℃以上がより好ましく、210〜250℃が更に好ましく、230〜250℃が特に好ましい。フィルム溶断温度が上記範囲内にあると、高温下における形状安定性が向上し、電池内の異常発熱下においても融けることがなく、電極間の短絡を抑制した耐熱性合成樹脂微多孔フィルムとすることができる。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムにおいて、TMA測定におけるフィルム溶断温度は下記の要領で測定される。先ず、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを切断することにより、平面長方形状の試験片(幅3mm×長さ30mm)を得る。この時、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの長さ方向(押出方向)と試験片の長さ方向とを平行にする。試験片の長さ方向の両端部をつかみ具により把持して、TMA測定装置(例えば、セイコーインスツル社製 商品名「TMA−SS6000」など)に取り付ける。この時、つかみ具間の距離を10mmとし、つかみ具は試験片の熱収縮に伴って移動可能とする。そして、試験片に長さ方向に19.6mN(2gf)の張力を加えた状態で、空気中で試験片を25℃から250℃まで5℃/分の昇温速度にて加熱する、5℃間隔にてつかみ具間の距離L(mm)を測定し、下記式に基づいて熱収縮率を算出する。
熱収縮率(%)=100×(10−L)/10
熱収縮率(%)=100×(10−L)/10
昇温につれて試験片が収縮すると熱収縮率は増加していくが、一定温度以上に加熱されると、試験片は軟化し始め、張力により伸張する。即ち、熱収縮率が低下していき、やがて溶断し、TMA測定は終了する。TMA測定の終了時点において、熱収縮率が0%を超えている場合は、TMA測定の終了した時点における温度をフィルム溶断温度とする。一方、TMA測定が終了した時点において、収縮率が0%以下である場合は、収縮率が0%となった時点の温度をフィルム溶断温度とする。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムについて、動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Erは0.1MPa以上が好ましく、0.1〜100MPaがより好ましく、0.1〜50MPaが特に好ましい。動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Erが0.1MPa以上であると、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、耐熱性及び耐メルトダウン性により優れている。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルムについて、動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Erは下記の要領で測定される。耐熱性合成樹脂微多孔フィルムから平面長方形状(横35mm×縦30mm)の試験片を切り出す。試験片の長辺方向が、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの長さ方向に合致するように切り出す。試験片を縦方向に折り畳んで、横35mm×縦5mmのサイズとする。動的粘弾性測定装置(例えば、アイ・ティー計測制御社製の「DVA−200」など)を用いて空気中にて下記条件にて貯蔵弾性率Erの温度分散の測定を行った。
変形様式:引張、つかみ長間:25mm、測定開始温度:40℃、測定終了温度:345℃、測定終了の下限弾性率:10Pa、測定終了の下限動ちから:0.01cN、昇温速度:10℃/min、データ取込間隔:1℃毎、測定周波数:1Hz、歪:0.1%、静/動力比:1、上限伸び率:50%、最小荷重:1cN
変形様式:引張、つかみ長間:25mm、測定開始温度:40℃、測定終了温度:345℃、測定終了の下限弾性率:10Pa、測定終了の下限動ちから:0.01cN、昇温速度:10℃/min、データ取込間隔:1℃毎、測定周波数:1Hz、歪:0.1%、静/動力比:1、上限伸び率:50%、最小荷重:1cN
(耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの製造方法)
合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に皮膜層及び表面層を形成することによって耐熱性合成樹脂微多孔フィルムが製造される。
合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に皮膜層及び表面層を形成することによって耐熱性合成樹脂微多孔フィルムが製造される。
合成樹脂微多孔フィルムの表面及び微小孔部に皮膜層を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、
合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に、重合性化合物を塗布する塗布工程と、
上記重合性化合物を塗布した合成樹脂微多孔フィルムの重合性化合物に活性エネルギー線を照射する照射工程とを有する方法が好ましい。
合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に、重合性化合物を塗布する塗布工程と、
上記重合性化合物を塗布した合成樹脂微多孔フィルムの重合性化合物に活性エネルギー線を照射する照射工程とを有する方法が好ましい。
(塗布工程)
合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を塗布することによって、合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を付着させることができる。この時、重合性化合物をそのまま合成樹脂微多孔フィルム表面に塗布してもよい。しかしながら、重合性化合物を溶媒中に分散又は溶解させて塗布液を得、この塗布液を合成樹脂微多孔フィルム表面に塗布することが好ましい。このように重合性化合物を塗布液として用いることによって、微小孔部の閉塞を低減しながら、合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を均一に付着させることができる。これにより皮膜層が均一に形成され、透気性を低下させることなく、耐熱性及び耐メルトダウン性が向上された耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを製造することが可能となる。
合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を塗布することによって、合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を付着させることができる。この時、重合性化合物をそのまま合成樹脂微多孔フィルム表面に塗布してもよい。しかしながら、重合性化合物を溶媒中に分散又は溶解させて塗布液を得、この塗布液を合成樹脂微多孔フィルム表面に塗布することが好ましい。このように重合性化合物を塗布液として用いることによって、微小孔部の閉塞を低減しながら、合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を均一に付着させることができる。これにより皮膜層が均一に形成され、透気性を低下させることなく、耐熱性及び耐メルトダウン性が向上された耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを製造することが可能となる。
更に、塗布液は合成樹脂微多孔フィルムにおける微小孔部の壁面にも円滑に流動することができ、これにより合成樹脂微多孔フィルムの表面だけでなく、この表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面にも皮膜層を形成することができる。これにより皮膜層を合成樹脂微多孔フィルムの表面に強固に一体化させることができる。
また、2官能以上のラジカル重合性官能基を有する重合性化合物は合成樹脂微多孔フィルムに対する馴染み性に優れていることから、合成樹脂微多孔フィルムに微小孔部を閉塞させることなく重合性化合物を塗布することができる。これにより、合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部に対応する箇所に、厚み方向に貫通する貫通孔を有している皮膜層を形成することができる。したがって、このような皮膜層によれば、透気性を低下させることなく、耐熱性及び耐メルトダウン性が向上された耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
塗布液に用いられる溶媒としては、重合性化合物を溶解又は分散させることができれば、特に限定されず、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、酢酸エチル、クロロホルムなどが挙げられる。なかでも、酢酸エチル、エタノール、メタノール、アセトンが好ましい。これらの溶媒は、塗布液を合成樹脂微多孔フィルム表面に塗布した後に円滑に除去することができる。さらに、上記溶媒は、リチウムイオン二次電池などの二次電池を構成している電解液との反応性が低く、安全性にも優れている。
塗布液中における重合性化合物の含有量は、3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。重合性化合物の含有量を上記範囲内とすることによって、合成樹脂微多孔フィルム表面に微小孔部を閉塞させることなく皮膜層を均一に形成することができ、したがって、透気性を低下させることなく耐熱性及び耐メルトダウン性が向上されている耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを製造することができる。
合成樹脂微多孔フィルム表面への重合性化合物の塗布方法としては、特に制限されず、例えば、(1)合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を塗布する方法;(2)重合性化合物中に合成樹脂微多孔フィルムを浸漬して、合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を塗布する方法;(3)重合性化合物を溶媒中に溶解又は分散させて塗布液を作製し、この塗布液を合成樹脂微多孔フィルムの表面に塗布した後、合成樹脂微多孔フィルムを加熱して溶媒を除去する方法;及び(4)重合性化合物を溶媒中に溶解又は分散させて塗布液を作製し、この塗布液中に合成樹脂微多孔フィルムを浸漬して、塗布液を合成樹脂微多孔フィルム中に塗布した後、合成樹脂微多孔フィルムを加熱して溶媒を除去する方法が挙げられる。なかでも、上記(3)(4)の方法が好ましい。これらの方法によれば、重合性化合物を合成樹脂微多孔フィルム表面に均一に塗布することができる。
上記(3)及び(4)の方法において、溶媒を除去するための合成樹脂微多孔フィルムの加熱温度は、用いられる溶媒の種類や沸点によって設定することができる。溶媒を除去するための合成樹脂微多孔フィルムの加熱温度は、50〜140℃が好ましく、70〜130℃がより好ましい。加熱温度を上記範囲内とすることによって、合成樹脂微多孔フィルムの熱収縮や微小孔部の閉塞を低減しつつ、塗布された溶媒を効率的に除去することができる。
上記(3)及び(4)の方法において、溶媒を除去するための合成樹脂微多孔フィルムの加熱時間は、特に制限されず、用いられる溶媒の種類や沸点によって設定することができる。溶媒を除去するための合成樹脂微多孔フィルムの加熱時間は、0.02〜60分が好ましく、0.1〜30分がより好ましい。
上述の通り、合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物又は皮膜層用塗布液を塗布することによって、合成樹脂微多孔フィルム表面に重合性化合物を付着させることができる。
(照射工程)
次に、重合性化合物を塗布した上記合成樹脂微多孔フィルムに、活性エネルギー線を照射する照射工程を実施する。これにより重合性化合物を重合させて、重合性化合物の重合体を含む皮膜層を、合成樹脂微多孔フィルム表面の少なくとも一部、好ましくは表面全面に一体的に形成することができる。
次に、重合性化合物を塗布した上記合成樹脂微多孔フィルムに、活性エネルギー線を照射する照射工程を実施する。これにより重合性化合物を重合させて、重合性化合物の重合体を含む皮膜層を、合成樹脂微多孔フィルム表面の少なくとも一部、好ましくは表面全面に一体的に形成することができる。
活性エネルギー線を照射することで、合成樹脂微多孔フィルム中に含まれているオレフィン系樹脂の一部が分解して、合成樹脂微多孔フィルムの機械的強度及び耐メルトダウン性が低下する可能性がある。しかしながら、重合性化合物の重合体を含む皮膜層によれば、上述した通り、合成樹脂微多孔フィルムの機械的強度及び耐メルトダウン性の低下を補うことができ、これにより機械的強度、耐熱性及び耐メルトダウン性に優れている耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することが可能となる。
合成樹脂微多孔フィルムにエチレン系樹脂が含有されている場合には、活性エネルギー線の照射によって、エチレン系樹脂同士が架橋して合成樹脂微多孔フィルム全体の機械的強度、耐熱性及び耐メルトダウン性が向上し、よって、得られる耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、優れた機械的強度、耐熱性及び耐メルトダウン性を有している。
そして、合成樹脂微多孔フィルムは架橋構造が付与されることによって、電池内部が高温となってエチレン系樹脂の融点以上となった場合にあっても、合成樹脂微多孔フィルムは、その架橋構造によってフィルムの形態を維持し、正負極間の電気的な短絡を効果的に防止する。
しかも、合成樹脂微多孔フィルムにエチレン系樹脂が含有されている場合には、合成樹脂微多孔フィルムの一部が溶融を開始し、電池内の異常昇温の初期段階において微小孔部が閉塞して優れたシャットダウン効果を発揮し、イオンの通過を阻止して二次電池の放電を停止させて電池内の昇温を阻止し、安全性に優れた二次電池を構成することができる。
合成樹脂微多孔フィルムに対する活性エネルギー線の照射線量は、合成樹脂微多孔フィルムがプロピレン系樹脂を含む場合は、20〜100kGyが好ましく、30〜80kGyがより好ましく、40〜70kGyが特に好ましい。また、合成樹脂微多孔フィルムがエチレン系樹脂を含む場合は、20〜300kGyが好ましく、40〜200kGyがより好ましく、60〜150kGyが特に好ましい。活性エネルギー線の照射線量を上記範囲内とすることによって、合成樹脂微多孔フィルム中のオレフィン系樹脂の劣化を低減しながら重合性化合物を重合させることができ、これにより耐熱性及び耐メルトダウン性の双方に優れている耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを提供することができる。
活性エネルギー線としては、特に限定されず、例えば、電子線、プラズマ、紫外線、α線、β線、及びγ線などが挙げられる。なかでも、電子線及び紫外線が好ましく、電子線がより好ましい。
活性エネルギー線として電子線を用いる場合、合成樹脂微多孔フィルムに対する電子線の加速電圧は特に限定されないが、50〜300kVが好ましく、100〜250kVがより好ましい。電子線の加速電圧を上記範囲内とすることによって、合成樹脂微多孔フィルム中のオレフィン系樹脂の劣化を低減しながら皮膜層を形成することができる。
活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、合成樹脂微多孔フィルムに対する紫外線の積算光量は、1000〜5000mJ/cm2が好ましく、1000〜4000mJ/cm2がより好ましく、1500〜3700mJ/cm2が特に好ましい。なお、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、上記塗布液に光重合開始剤が含まれていることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、及びアントラキノンなどが挙げられる。
活性エネルギー線としてプラズマを用いる場合、合成樹脂微多孔フィルムに対するプラズマのエネルギー密度は特に限定されないが、5〜100J/cm2が好ましく、10〜60J/cm2がより好ましく、20〜45J/cm2が特に好ましい。
照射工程において、酸素濃度が15ppm以下の雰囲気下で、重合性化合物を塗布した合成樹脂微多孔フィルムに活性エネルギー線を照射することが好ましい。照射工程における雰囲気中の酸素濃度は、15ppm以下が好ましいが、12〜0ppmがより好ましく、10〜0ppmが特に好ましい。このような酸素濃度の雰囲気下で照射工程を実施することにより、照射工程において、合成樹脂微多孔フィルムに含まれているオレフィン系樹脂の酸化劣化を低減することができると共に、皮膜層の架橋密度を高くすることができる。これにより、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの耐熱性及び耐メルトダウン性を向上させることができる。
照射工程は、不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。これにより、照射工程における雰囲気中の酸素濃度を容易に調整することができる。不活性ガスとしては、特に制限されず、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン、及びこれらの混合ガスなどが挙げられる。
合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に表面層を最外層として形成することによって耐熱性合成樹脂微多孔フィルムが製造される。
合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に表面層を最外層として形成する方法は、特に限定されず、例えば、エンジニアリングプラスチックを含有するエンジニアリングプラスチック溶液を合成樹脂微多孔フィルムの表面に塗布し、エンジニアリングプラスチック溶液を合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部に含浸させて微小孔部の壁面にも塗布した後、エンジニアリングプラスチック溶液中に含まれている溶媒を除去することによって皮膜層を形成する方法が挙げられる。
合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に表面層を最外層として形成する方法は、特に限定されず、例えば、エンジニアリングプラスチックを含有するエンジニアリングプラスチック溶液を合成樹脂微多孔フィルムの表面に塗布し、エンジニアリングプラスチック溶液を合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部に含浸させて微小孔部の壁面にも塗布した後、エンジニアリングプラスチック溶液中に含まれている溶媒を除去することによって皮膜層を形成する方法が挙げられる。
エンジニアリングプラスチック溶液は、エンジニアリングプラスチックを溶媒に溶解させてなる。溶媒としては、エンジニアリングプラスチックを溶解させることができれば、特に限定されないが、エンジニアリングプラスチック溶液を合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部の壁面に均一に塗布することができるので、合成樹脂微多孔フィルムに含まれている合成樹脂に対して親和性の高い溶媒を用いることが好ましい。合成樹脂微多孔フィルムにオレフィン系樹脂が含有されている場合、合成樹脂に対して親和性の高い溶媒としては、酢酸エチル、N-メチルピロリドン、エタノール 、キシレン及びトルエンからなる群から選ばれた一種以上の溶媒が好ましい。なお、溶媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
エンジニアリングプラスチック溶液を構成している溶媒中において、合成樹脂微多孔フィルムに含まれている合成樹脂に対して親和性の高い溶媒の含有量は10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。
エンジニアリングプラスチック溶液を構成している溶媒中において、合成樹脂微多孔フィルムに含まれている合成樹脂に対して親和性の高い溶媒以外の溶媒が含有されていてもよい。このような溶媒としては、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミドなどが挙げられる。
エンジニアリングプラスチック溶液中におけるエンジニアリングプラスチックの含有量は、エンジニアリングプラスチック及び溶剤の合計量を100質量%としたとき、1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましく、2〜3質量%が特に好ましい。エンジニアリングプラスチック溶液中におけるエンジニアリングプラスチックの含有量を上記範囲とすることによって、合成樹脂微多孔フィルムの表面及び微小孔部の壁面に、微小孔部のイオン透過性を良好に維持しながら、表面層を均一に形成することができる。よって、合成樹脂微多孔フィルムは、優れた耐熱性及び耐メルトダウン性に優れている。
本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、非水電解液二次電池用セパレータとして好適に用いられる。非水電解液二次電池としては、リチウムイオン二次電池などが挙げられる。本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは耐熱性及び耐メルトダウン性に優れていることから、このような耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを用いることによって、電池内部が、例えば100〜200℃、特に130〜150℃の高温となった場合であっても、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの収縮及び融けによる電極間の電気的な短絡が低減することができる。
非水電解液二次電池は、本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムをセパレータとして含んでいれば特に制限されず、正極と、負極と、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムを含むセパレータと、非水電解液とを含んでいる。耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは正極及び負極の間に配設され、これにより電極間の電気的な短絡を防止することができる。また、非水電解液は、耐熱性合成樹脂微多孔フィルムの微小孔部内に少なくとも充填され、これにより充放電時に電極間をリチウムイオンが移動することができる。
正極は、特に制限されないが、正極集電体と、この正極集電体の少なくとも一面に形成された正極活物質層とを含んでいることが好ましい。正極活物質層は、正極活物質と、この正極活物質間に形成された空隙とを含んでいることが好ましい。正極活物質層が空隙を含んでいる場合には、この空隙中にも非水電解液が充填される。正極活物質はリチウムイオンなどを吸蔵放出することが可能な材料であり、正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム又はマンガン酸リチウムなどが挙げられる。正極に用いられる集電体としては、アルミニウム箔、ニッケル箔、及びステンレス箔などが挙げられる。正極活物質層は、バインダーや導電助剤などをさらに含んでいてもよい。
負極は、特に制限されないが、負極集電体と、この負極集電体の少なくとも一面に形成された負極活物質層とを含んでいることが好ましい。負極活物質層は、負極活物質と、この負極活物質間に形成された空隙とを含んでいることが好ましい。負極活物質層が空隙を含んでいる場合には、この空隙中にも非水電解液が充填される。負極活物質はリチウムイオンなどを吸蔵放出することが可能な材料であり、負極活物質としては、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック及びケチェンブラックなどが挙げられる。負極に用いられる集電体としては、銅箔、ニッケル箔、及びステンレス箔などが挙げられる。負極活物質層は、バインダーや導電助剤などをさらに含んでいてもよい。
非水電解液とは、水を含まない溶媒に電解質塩を溶解させた電解液である。リチウムイオン二次電池に用いられる非水電解液としては、例えば、非プロトン性有機溶媒に、リチウム塩を溶解した非水電解液が挙げられる。非プロトン性有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、及びエチレンカーボネートなどの環状カーボネートと、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、及びジメチルカーボネートなどの鎖状カーボネートとの混合溶媒などが挙げられる。また、リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、及びLiN(SO2CF3)2などが挙げられる。
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
[実施例1]
(押出工程)
ホモポリプロピレン(PP、重量平均分子量413000、分子量分布9.3、融点163℃、融解熱量96mJ/mg)を押出機に供給して、樹脂温度200℃にて溶融混練し、押出機先端に取り付けられたTダイからフィルム状に押出し、表面温度が30℃となるまで冷却してホモポリプロピレンフィルム(厚み30μm)を得た。なお、押出量は9kg/時間、成膜速度は22m/分、ドロー比は83であった。
(押出工程)
ホモポリプロピレン(PP、重量平均分子量413000、分子量分布9.3、融点163℃、融解熱量96mJ/mg)を押出機に供給して、樹脂温度200℃にて溶融混練し、押出機先端に取り付けられたTダイからフィルム状に押出し、表面温度が30℃となるまで冷却してホモポリプロピレンフィルム(厚み30μm)を得た。なお、押出量は9kg/時間、成膜速度は22m/分、ドロー比は83であった。
(養生工程)
得られたホモポリプロピレンフィルムを雰囲気温度150℃の熱風炉中に24時間に亘って静置して養生した。
得られたホモポリプロピレンフィルムを雰囲気温度150℃の熱風炉中に24時間に亘って静置して養生した。
(第1延伸工程)
養生後のホモポリプロピレンフィルムを押出方向(長さ方向)に300mm、幅方向に160mmの短冊状に裁断した。このホモポリプロピレンフィルムを一軸延伸装置を用いて表面温度が23℃となるようにして50%/分の延伸速度にて延伸倍率1.20倍に押出方向にのみ一軸延伸した。
養生後のホモポリプロピレンフィルムを押出方向(長さ方向)に300mm、幅方向に160mmの短冊状に裁断した。このホモポリプロピレンフィルムを一軸延伸装置を用いて表面温度が23℃となるようにして50%/分の延伸速度にて延伸倍率1.20倍に押出方向にのみ一軸延伸した。
(第2延伸工程)
続いて、ホモポリプロピレンフィルムを一軸延伸装置を用いて表面温度が120℃となるようにして42%/分の延伸速度にて延伸倍率2倍に押出方向にのみ一軸延伸した。
続いて、ホモポリプロピレンフィルムを一軸延伸装置を用いて表面温度が120℃となるようにして42%/分の延伸速度にて延伸倍率2倍に押出方向にのみ一軸延伸した。
(アニーリング工程)
しかる後、ホモポリプロピレンフィルムをその表面温度が130℃となるように且つホモポリプロピレンフィルムに張力が加わらないようにして10分間に亘って静置して、ホモポリプロピレンフィルムにアニールを施した。これにより、微小孔部を有するホモポリプロピレン微多孔フィルム(厚み25μm)を得た。なお、アニール時のホモポリプロピレンフィルムの収縮率は20%とした。
しかる後、ホモポリプロピレンフィルムをその表面温度が130℃となるように且つホモポリプロピレンフィルムに張力が加わらないようにして10分間に亘って静置して、ホモポリプロピレンフィルムにアニールを施した。これにより、微小孔部を有するホモポリプロピレン微多孔フィルム(厚み25μm)を得た。なお、アニール時のホモポリプロピレンフィルムの収縮率は20%とした。
得られたホモポリプロピレン微多孔フィルムは、厚みが25μm、透気度が110sec/100mLであり、表面開口率が40%であった。
(塗布工程)
溶媒として酢酸エチル90質量%、及び重合性化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、共栄化学社製 商品名「ライトアクリレートTMP−A」)10質量%を含んでいる皮膜層用塗布液を用意した。次に、皮膜層用塗布液をホモポリプロピレン微多孔フィルム表面に塗工した後、ホモポリプロピレン微多孔フィルムを80℃で2分間加熱することにより溶媒を除去した。これによりホモポリプロピレン微多孔フィルム表面全面に重合性化合物を付着させた。
溶媒として酢酸エチル90質量%、及び重合性化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、共栄化学社製 商品名「ライトアクリレートTMP−A」)10質量%を含んでいる皮膜層用塗布液を用意した。次に、皮膜層用塗布液をホモポリプロピレン微多孔フィルム表面に塗工した後、ホモポリプロピレン微多孔フィルムを80℃で2分間加熱することにより溶媒を除去した。これによりホモポリプロピレン微多孔フィルム表面全面に重合性化合物を付着させた。
(照射工程)
次に、重合性化合物を付着させたホモポリプロピレン微多孔フィルムを、酸素濃度10ppm以下に調整したグローブボックス(M Braun社製 「Labmaster130」)中で、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)からなる袋に入れて、袋の開口部を気密的に密閉した。密閉した袋中の酸素濃度は10ppm以下となっていた。この密閉された袋中に入れられているホモポリプロピレン微多孔フィルムに、加速電圧110kVで吸収線量が50kGyとなるように電子線を照射し、重合性化合物を重合させた。これにより、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されているホモポリプロピレン微多孔フィルムを得た。
次に、重合性化合物を付着させたホモポリプロピレン微多孔フィルムを、酸素濃度10ppm以下に調整したグローブボックス(M Braun社製 「Labmaster130」)中で、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み25μm)からなる袋に入れて、袋の開口部を気密的に密閉した。密閉した袋中の酸素濃度は10ppm以下となっていた。この密閉された袋中に入れられているホモポリプロピレン微多孔フィルムに、加速電圧110kVで吸収線量が50kGyとなるように電子線を照射し、重合性化合物を重合させた。これにより、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されているホモポリプロピレン微多孔フィルムを得た。
(表面層形成工程)
ジメチルアセトアミド(DMAc)97質量部にフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(ELF Atochem社製 商品名「Kynar flex 2801」、重量平均分子量:380000、フッ化ビニリデン単位の含有量:88モル%)3質量部を添加して溶解させ、更に、酢酸エチル25質量部を添加してフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液を作製した。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液中のフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の含有量は2.4質量%であった。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液の溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)80質量%及び酢酸エチル20質量%から構成されていた。
ジメチルアセトアミド(DMAc)97質量部にフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(ELF Atochem社製 商品名「Kynar flex 2801」、重量平均分子量:380000、フッ化ビニリデン単位の含有量:88モル%)3質量部を添加して溶解させ、更に、酢酸エチル25質量部を添加してフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液を作製した。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液中のフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の含有量は2.4質量%であった。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液の溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)80質量%及び酢酸エチル20質量%から構成されていた。
皮膜層が形成されているホモポリプロピレン微多孔フィルムの一面全面にワイヤバーコーター(番線番号No.8)を用いてフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液を塗布した。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液は、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの微小孔部に含浸し、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの他面全面に滲出した。その結果、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面及び微小孔部の壁面の全面にフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液が均一に塗布された。
しかる後、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液中の溶媒を80℃の真空環境下にて蒸発、除去することによって、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面及び微小孔部の壁面の全面に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体から構成された表面層を形成して耐熱性ホモポリプロピレン微多孔フィルムを作製した。
[実施例2]
実施例1と同様の要領で、表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されているホモポリプロピレン微多孔フィルムを作製した。
実施例1と同様の要領で、表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されているホモポリプロピレン微多孔フィルムを作製した。
(表面層形成工程)
ジメチルアセトアミド(DMAc)96質量部にフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(ELF Atochem社製 商品名「Kynar flex 2751」、重量平均分子量:287000、フッ化ビニリデン単位の含有量:85モル%)4質量部を添加して溶解させ、更に、酢酸エチル25質量部を添加してフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液を作製した。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液中のフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の含有量は3.2質量%であった。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液の溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)79質量%及び酢酸エチル21質量%から構成されていた。
ジメチルアセトアミド(DMAc)96質量部にフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(ELF Atochem社製 商品名「Kynar flex 2751」、重量平均分子量:287000、フッ化ビニリデン単位の含有量:85モル%)4質量部を添加して溶解させ、更に、酢酸エチル25質量部を添加してフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液を作製した。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液中のフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の含有量は3.2質量%であった。フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液の溶媒は、ジメチルアセトアミド(DMAc)79質量%及び酢酸エチル21質量%から構成されていた。
実施例1と同様の要領で、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面及び微小孔部の壁面の全面にフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液を均一に塗布した。しかる後、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体溶液中の溶媒を80℃の真空環境下にて蒸発、除去することによって、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面及び微小孔部の壁面の全面に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体から構成された表面層を形成して耐熱性ホモポリプロピレン微多孔フィルムを作製した。
[実施例3]
実施例1と同様の要領で、表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されているホモポリプロピレン微多孔フィルムを作製した。
実施例1と同様の要領で、表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されているホモポリプロピレン微多孔フィルムを作製した。
(表面層形成工程)
エタノール50質量%及びトルエン50質量%を含有する溶媒に、ポリアミドイミド(東洋紡社製 商品名「バイロマックスHR15ET」、数平均分子量:6000)を固形分濃度が3質量%となるように添加して溶解させ、更に、酢酸エチルを添加してポリアミドイミド溶液を作製した。ポリアミドイミド溶液中のポリアミドの含有量は2.4質量%であった。ポリアミドイミド溶液の溶媒は、エタノール40質量%、トルエン40質量%及び酢酸エチル20質量%から構成されていた。
エタノール50質量%及びトルエン50質量%を含有する溶媒に、ポリアミドイミド(東洋紡社製 商品名「バイロマックスHR15ET」、数平均分子量:6000)を固形分濃度が3質量%となるように添加して溶解させ、更に、酢酸エチルを添加してポリアミドイミド溶液を作製した。ポリアミドイミド溶液中のポリアミドの含有量は2.4質量%であった。ポリアミドイミド溶液の溶媒は、エタノール40質量%、トルエン40質量%及び酢酸エチル20質量%から構成されていた。
実施例1と同様の要領で、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面及び微小孔部の壁面の全面にポリアミドイミド溶液を塗布した。しかる後、ポリアミドイミド溶液中の溶媒を80℃の真空環境下にて蒸発、除去することによって、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面及び微小孔部の壁面の全面に、ポリアミドイミドから構成された表面層を形成して耐熱性ホモポリプロピレン微多孔フィルムを作製した。
[実施例4]
実施例1と同様の要領で、表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されているホモポリプロピレン微多孔フィルムを作製した。
実施例1と同様の要領で、表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されているホモポリプロピレン微多孔フィルムを作製した。
(表面層形成工程)
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に、ポリアミドイミド(東洋紡社製 商品名「バイロマックスHR16NN」、数平均分子量:30000)を固形分濃度が1.5質量部となるように添加し、更に、酢酸エチル20質量部を添加してポリアミドイミド溶液を作製した。ポリアミドイミド溶液中のポリアミドの含有量は1.25質量%であった。ポリアミドイミド溶液の溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン83質量%及び酢酸エチル17質量%から構成されていた。
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に、ポリアミドイミド(東洋紡社製 商品名「バイロマックスHR16NN」、数平均分子量:30000)を固形分濃度が1.5質量部となるように添加し、更に、酢酸エチル20質量部を添加してポリアミドイミド溶液を作製した。ポリアミドイミド溶液中のポリアミドの含有量は1.25質量%であった。ポリアミドイミド溶液の溶媒は、N−メチル−2−ピロリドン83質量%及び酢酸エチル17質量%から構成されていた。
実施例1と同様の要領で、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面及び微小孔部の壁面の全面にポリアミドイミド溶液を均一に塗布した。しかる後、ポリアミドイミド溶液中の溶媒を80℃の真空環境下にて蒸発、除去することによって、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面及び微小孔部の壁面の全面に、ポリアミドイミドから構成された表面層を形成して耐熱性ホモポリプロピレン微多孔フィルムを作製した。
[実施例5]
(押出工程)
ホモポリエチレン(PE、重量平均分子量143000、分子量分布20.5、融点136℃、融解熱量225mJ/mg)を押出機に供給して、樹脂温度200℃にて溶融混練し、押出機先端に取り付けられたTダイからフィルム状に押出し、表面温度が30℃となるまで冷却してホモポリエチレンフィルム(厚み25μm)を得た。なお、押出量は6kg/時間、成膜速度は16m/分、ドロー比は90であった。
(押出工程)
ホモポリエチレン(PE、重量平均分子量143000、分子量分布20.5、融点136℃、融解熱量225mJ/mg)を押出機に供給して、樹脂温度200℃にて溶融混練し、押出機先端に取り付けられたTダイからフィルム状に押出し、表面温度が30℃となるまで冷却してホモポリエチレンフィルム(厚み25μm)を得た。なお、押出量は6kg/時間、成膜速度は16m/分、ドロー比は90であった。
(養生工程)
得られたホモポリエチレンフィルムを雰囲気温度125℃の熱風炉中に24時間に亘って静置して養生した。
得られたホモポリエチレンフィルムを雰囲気温度125℃の熱風炉中に24時間に亘って静置して養生した。
(第1延伸工程)
養生後のホモポリエチレンフィルムを押出方向(長さ方向)に300mm、幅方向に160mmの短冊状に裁断した。このホモポリエチレンフィルムを一軸延伸装置を用いて表面温度が23℃となるようにして50%/分の延伸速度にて延伸倍率1.20倍に押出方向にのみ一軸延伸した。
養生後のホモポリエチレンフィルムを押出方向(長さ方向)に300mm、幅方向に160mmの短冊状に裁断した。このホモポリエチレンフィルムを一軸延伸装置を用いて表面温度が23℃となるようにして50%/分の延伸速度にて延伸倍率1.20倍に押出方向にのみ一軸延伸した。
(第2延伸工程)
続いて、ホモポリエチレンフィルムを一軸延伸装置を用いて表面温度が90℃となるようにして42%/分の延伸速度にて延伸倍率2倍に押出方向にのみ一軸延伸した。
続いて、ホモポリエチレンフィルムを一軸延伸装置を用いて表面温度が90℃となるようにして42%/分の延伸速度にて延伸倍率2倍に押出方向にのみ一軸延伸した。
(アニーリング工程)
しかる後、ホモポリエチレンフィルムをその表面温度が120℃となるように且つホモポリエチレンフィルムに張力が加わらないようにして10分間に亘って静置して、ホモポリエチレンフィルムにアニールを施した。これにより、微小孔部を有するホモポリエチレン微多孔フィルム(厚み20μm)を得た。なお、アニール時のホモポリエチレンフィルムの収縮率は25%とした。
しかる後、ホモポリエチレンフィルムをその表面温度が120℃となるように且つホモポリエチレンフィルムに張力が加わらないようにして10分間に亘って静置して、ホモポリエチレンフィルムにアニールを施した。これにより、微小孔部を有するホモポリエチレン微多孔フィルム(厚み20μm)を得た。なお、アニール時のホモポリエチレンフィルムの収縮率は25%とした。
得られたホモポリエチレン微多孔フィルムは、厚みが20μm、透気度が150sec/100mLであり、表面開口率が38%であった。
照射工程において、グローブボックス内の酸素濃度を調整せずに、加速電圧110kVで吸収線量が150kGyとなるように電子線を照射し、重合性化合物を重合させた。これにより、ホモポリエチレン微多孔フィルムの表面及びこの表面に連続する微小孔部の開口端部の壁面に重合性化合物の重合体を含む皮膜層が形成されているホモポリエチレン微多孔フィルムを得た。上記以外は、実施例1と同様の要領で、皮膜層及び表面層を形成して耐熱性ホモポリエチレン微多孔フィルムを得た。
[実施例6]
実施例5で得られたホモポリエチレン微多孔フィルムを用いて、照射工程において、グローブボックス内の酸素濃度を調整しなかったこと、電子線の吸収線量を150kGyとしたこと以外は実施例2と同様の要領で、皮膜層及び表面層を形成して耐熱性ホモポリエチレン微多孔フィルムを得た。
実施例5で得られたホモポリエチレン微多孔フィルムを用いて、照射工程において、グローブボックス内の酸素濃度を調整しなかったこと、電子線の吸収線量を150kGyとしたこと以外は実施例2と同様の要領で、皮膜層及び表面層を形成して耐熱性ホモポリエチレン微多孔フィルムを得た。
[実施例7]
実施例5で得られたホモポリエチレン微多孔フィルムを用いて、照射工程において、グローブボックス内の酸素濃度を調整しなかったこと、電子線の吸収線量を150kGyとしたこと以外は実施例3と同様の要領で、皮膜層及び表面層を形成して耐熱性ホモポリエチレン微多孔フィルムを得た。
実施例5で得られたホモポリエチレン微多孔フィルムを用いて、照射工程において、グローブボックス内の酸素濃度を調整しなかったこと、電子線の吸収線量を150kGyとしたこと以外は実施例3と同様の要領で、皮膜層及び表面層を形成して耐熱性ホモポリエチレン微多孔フィルムを得た。
[実施例8]
実施例5で得られたホモポリエチレン微多孔フィルムを用いて、照射工程において、グローブボックス内の酸素濃度を調整しなかったこと、電子線の吸収線量を150kGyとしたこと以外は実施例4と同様の要領で、皮膜層及び表面層を形成して耐熱性ホモポリエチレン微多孔フィルムを得た。
実施例5で得られたホモポリエチレン微多孔フィルムを用いて、照射工程において、グローブボックス内の酸素濃度を調整しなかったこと、電子線の吸収線量を150kGyとしたこと以外は実施例4と同様の要領で、皮膜層及び表面層を形成して耐熱性ホモポリエチレン微多孔フィルムを得た。
[実施例9]
(押出工程)
超高分子量ポリエチレン(重量平均分子量500,000、分子量分布7.8、融点135℃)35質量部及び流動パラフィン65質量部をサイドフィーダーを用いて二軸押出機に供給して樹脂温度165℃にて溶融混練し、押出機の先端に取り付けられたTダイからシート状に押出し、表面温度を25℃に設定した冷却ロールで引き取って冷却し、超高分子量ポリエチレンのゲル状シート(厚み950μm)を得た。なお、製膜速度は5m/分、ドロー比は3であった。
(押出工程)
超高分子量ポリエチレン(重量平均分子量500,000、分子量分布7.8、融点135℃)35質量部及び流動パラフィン65質量部をサイドフィーダーを用いて二軸押出機に供給して樹脂温度165℃にて溶融混練し、押出機の先端に取り付けられたTダイからシート状に押出し、表面温度を25℃に設定した冷却ロールで引き取って冷却し、超高分子量ポリエチレンのゲル状シート(厚み950μm)を得た。なお、製膜速度は5m/分、ドロー比は3であった。
(延伸工程)
超高分子量ポリエチレンのゲル状シートを押出方向(長さ方向)に70mm、幅方向に70mmの平面正方形状に裁断した。このゲル状シートを表面温度が115℃となるようにして二軸延伸装置を用いて押出方向及び幅方向のそれぞれに延伸倍率5倍にて同時二軸延伸して延伸シートを得た。
超高分子量ポリエチレンのゲル状シートを押出方向(長さ方向)に70mm、幅方向に70mmの平面正方形状に裁断した。このゲル状シートを表面温度が115℃となるようにして二軸延伸装置を用いて押出方向及び幅方向のそれぞれに延伸倍率5倍にて同時二軸延伸して延伸シートを得た。
(洗浄工程)
次に、延伸シートを一辺が20cmの平面正方形状のアルミニウム製フレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレンの洗浄浴に3分間浸漬し、延伸シート中の流動パラフィンを除去した。洗浄後の延伸シートを室温で空気乾燥させた。
次に、延伸シートを一辺が20cmの平面正方形状のアルミニウム製フレームに固定し、25℃に制御された塩化メチレンの洗浄浴に3分間浸漬し、延伸シート中の流動パラフィンを除去した。洗浄後の延伸シートを室温で空気乾燥させた。
(アニーリング工程)
しかる後、延伸シートを二軸延伸装置に固定して10分間115℃で熱固定してポリエチレン微多孔フィルムを得た。
しかる後、延伸シートを二軸延伸装置に固定して10分間115℃で熱固定してポリエチレン微多孔フィルムを得た。
得られたポリエチレン微多孔フィルムは、厚みが18μm、透気度が290sec/100mLであり、表面開口率が41%であった。
照射工程において、吸収線量が100kGyとなるように調整したこと以外は、実施例7と同様の要領で、皮膜層及び表面層を形成して耐熱性ポリエチレン微多孔フィルムを得た。
[比較例1]
実施例1と同様の要領でホモポリプロピレン微多孔フィルムを得た。実施例1と同様の要領で、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面及び微小孔部の壁面の全面に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体から構成された表面層を形成した。なお、皮膜層は形成しなかった。
実施例1と同様の要領でホモポリプロピレン微多孔フィルムを得た。実施例1と同様の要領で、ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面及び微小孔部の壁面の全面に、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体から構成された表面層を形成した。なお、皮膜層は形成しなかった。
[比較例2]
実施例1と同様の要領でホモポリプロピレン微多孔フィルムを得た。ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面に表面層を形成することなく、実施例1と同様の要領で、皮膜層のみを形成した。
実施例1と同様の要領でホモポリプロピレン微多孔フィルムを得た。ホモポリプロピレン微多孔フィルムの表面に表面層を形成することなく、実施例1と同様の要領で、皮膜層のみを形成した。
[評価]
耐熱性合成樹脂微多孔フィルム及びホモポリプロピレン微多孔フィルムについて、TMA測定における最大熱収縮率、フィルム溶断温度、動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Er及び透気度を上述した手順に従って測定した。これらの結果を表1及び表2に示した。
耐熱性合成樹脂微多孔フィルム及びホモポリプロピレン微多孔フィルムについて、TMA測定における最大熱収縮率、フィルム溶断温度、動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Er及び透気度を上述した手順に従って測定した。これらの結果を表1及び表2に示した。
耐熱性ホモポリプロピレン微多孔フィルムについて、合成樹脂微多孔フィルム100質量部に対する皮膜層及び表面層の含有量を表1及び表2に示した。
本発明の耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、耐熱性及び耐メルトダウン性の双方に優れている。したがって、この耐熱性合成樹脂微多孔フィルムは、非水電解液二次電池用セパレータとして好適に用いられる。
Claims (5)
- 合成樹脂微多孔フィルムと、
上記合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成された重合性化合物の重合体を含む皮膜層と、
上記合成樹脂微多孔フィルムの表面の少なくとも一部に形成されたエンジニアリングプラスチックを含有する表面層と、を含み、
TMA測定における最大熱収縮率が40%以下であり、TMA測定におけるフィルム溶断温度が180℃以上であることを特徴とする耐熱性合成樹脂微多孔フィルム。 - エンジニアリングプラスチックが、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体又はポリアミドイミドを含有していることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性合成樹脂微多孔フィルム。
- 動的粘弾性による250℃における貯蔵弾性率Erが0.1MPa以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の耐熱性合成樹脂微多孔フィルム。
- 合成樹脂微多孔フィルムがオレフィン系樹脂を含有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の耐熱性合成樹脂微多孔フィルム。
- 重合性化合物が、1分子中にラジカル重合性官能基を2個以上有する重合性化合物を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱性合成樹脂微多孔フィルム。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US11804619B2 (en) * | 2017-09-18 | 2023-10-31 | Blue Solutions | Solid polymer electrolyte including solvating polymer, lithium salt, and PVdF-HFP copolymer and battery including same |
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- 2016-01-27 JP JP2016013063A patent/JP2017132107A/ja not_active Withdrawn
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