JP2017110101A - ポリアミド樹脂および成形品 - Google Patents
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例えば、特許文献1には、キシリレンジアミン単位を70モル%以上含むジアミン単位と直鎖脂肪族ジカルボン酸単位を70モル%以上含むジカルボン酸単位からなるポリアミド樹脂であって、キシリレンジアミン単位は、パラキシリレンジアミン50〜95モル%、メタキシリレンジアミン50〜5モル%からなり、直鎖脂肪族ジカルボン酸単位は、50〜100モル%のアジピン酸と、0〜50モル%未満の、セバシン酸またはその他の直鎖脂肪族ジカルボン酸からなり、反応したジカルボン酸単位に対する反応したジアミン単位のモル比(反応したジアミン単位のモル数/反応したジカルボン酸単位のモル数)が、0.994未満であり、数平均分子量が10,000〜25,000、融点が285℃以上であることを特徴とするポリアミド樹脂が開示されている。
本発明は、かかる課題を解決することを目的とするものであって、はんだリフロー性に優れたポリアミド樹脂を提供することを目的とする。
<1>ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、
前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、
前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂であって、
前記ポリアミド樹脂は、融点が270〜285℃であり、
前記ジアミン由来の構成単位を構成するキシリレンジアミンは、異性体モル比(メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミン)が、60/40〜43/57であり、
下記式で示されるX線回析法により算出した結晶化度が30%〜70%であるポリアミド樹脂;
結晶化度=結晶性ピークの面積/(結晶性ピークの面積+非晶性ピークの面積)×100。
<2>前記炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸である、<1>に記載のポリアミド樹脂。
<3>前記ポリアミド樹脂の数平均分子量が8000〜25000である、<1>または<2>に記載のポリアミド樹脂。
<4>前記ポリアミド樹脂のガラス転移温度が90℃以上である、<1>〜<3>のいずれかに記載のポリアミド樹脂。
<5>85℃、相対湿度85%で測定した吸水率が3.5%以下である、<1>〜<4>のいずれかに記載のポリアミド樹脂。
<6>前記ポリアミド樹脂の加熱結晶化温度が130℃以下であり、冷却結晶化温度が200℃以上である、<1>〜<5>のいずれかに記載のポリアミド樹脂。
<7>前記ポリアミド樹脂の冷却結晶化温度と加熱結晶化温度の差が100〜150℃である、<1>〜<6>のいずれかに記載のポリアミド樹脂。
<8><1>〜<7>のいずれかに記載のポリアミド樹脂を含む組成物を成形してなる成形品。
結晶化度=結晶性ピークの面積/(結晶性ピークの面積+非晶性ピークの面積)×100
このような構成とすることにより、優れたはんだリフロー性が達成できる。さらに、低い吸水率も達成可能になる。
本発明のポリアミド樹脂は、ジアミン由来の構成単位の、好ましくは80モル%以上が、より好ましくは90モル%以上が、さらに好ましくは95モル%以上が、一層好ましくは99モル%以上が、より一層好ましくは実質的に100モル%がキシリレンジアミンに由来する。実質的にとは、不純物など不可避的に混入する物を除き含まない趣旨である(以下、「実質的」について同じ)。
キシリレンジアミンは、異性体モル比(メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミン)が、60/40〜43/57であり、55/45〜43/57が好ましく、53/47〜44/56がより好ましく、52/48〜45/55がさらに好ましい。異性体モル比を、60/40〜43/57の範囲とすることにより、融点および結晶化度が高くなり、はんだリフロー性に優れたポリアミド樹脂が得られる。さらに、吸水率も低くすることができる。
本発明では、全キシリレンジアミン由来の構成単位のうち、オルトキシリレンジアミン由来の構成単位は、通常、全キシリレンジアミン由来の構成単位の10モル%以下であり、5モル%以下であることが好ましく、1モル%以下であることがさらに好ましく、実質的に0モル%以下であることが一層好ましい。
炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸は、炭素数6〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。α,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、アジピン酸、スベリン酸が挙げられ、アジピン酸が好ましい。
本発明のポリアミド樹脂は、融点(Tm)が270〜285℃である。融点は、272〜285℃が好ましく、274〜285℃がより好ましく、276〜285℃がさらに好ましい。
本発明のポリアミド樹脂は、ガラス転移温度(Tg)が90℃以上であることが好ましい。ガラス転移温度の下限値は、91℃以上がより好ましい。ガラス転移温度の上限値は、特に定めるものではないが、例えば、150℃以下、さらには130℃以下、特には120℃以下、より特には、115℃以下でもよく、100℃以下でも十分な性能を発揮する。
本発明のポリアミド樹脂は、加熱結晶化温度(Tch)が130℃以下であることが好ましく、128℃以下がより好ましい。加熱結晶化温度の下限値は、115℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、122℃以上がさらに好ましい。
本発明のポリアミド樹脂は、冷却結晶化温度(Tcc)が200℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましく、230℃以上であることがさらに好ましく、240℃以上であることが一層好ましく、245℃以上であることがより一層好ましい。冷却結晶化温度の上限値は、260℃以下であることが好ましく、258℃以下であることがより好ましい。
本発明のポリアミド樹脂は、冷却結晶化温度と加熱結晶化温度の差(Tcc−Tch)が100〜150℃であることが好ましい。Tcc−Tchの差の下限値は、110℃以上であることが好ましく、115℃以上であることがより好ましく、118℃以上であることがさらに好ましく、119℃以上であることが一層好ましく、120℃以上であることがより一層好ましい。Tcc−Tchの差の上限値は、145℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、137℃以下であることがさらに好ましく、135℃以下であることが一層好ましい。冷却結晶化温度と加熱結晶化温度の差を上記範囲とすることにより、結晶化速度を速くでき、射出成形時の成形時の成形サイクルを短く出来る。
本発明のポリアミド樹脂は、融点と冷却結晶化温度の差(Tm−Tcc)が20〜40℃であると、成形性が優れる傾向にある。
本発明のポリアミド樹脂は、結晶融解エンタルピー(ΔHm)が50J/g以上であることが好ましく、55J/g以上であることがより好ましく、57J/g以上であることがさらに好ましい。本発明では、高融点ポリアミド樹脂において、さらに、結晶融解エンタルピーを大きくすることにより、はんだリフロー性を効果的に向上させることが可能となる。結晶融解エンタルピー(ΔHm)の上限値は特に定めるものではないが、例えば、70J/g以下とすることもでき、さらには、68J/g以下とすることもでき、特には65J/g以下とすることもできる。
結晶化度(%)=結晶性ピークの面積/(結晶性ピークの面積+非晶性ピークの面積)×100
結晶化度の下限値は、35%以上が好ましく、40%以上がより好ましく、42%以上がさらに好ましく、50%以上とすることもできる。結晶化度の上限値は、65%以下が好ましく、60%以下とすることもでき、さらには58%以下とすることもできる。
本発明では、上記Tm、Tg、Tch、Tcc、Tcc−Tch、Tm−Tccおよび結晶化度の好ましい範囲について、いずれか2つ以上を組み合わせて満たすことがより好ましい。具体的には、上記Tcc−Tchの好ましい範囲を満たしつつ、Tm−Tccの好ましい範囲を満たす態様等が挙げられる。
ポリアミド樹脂の分子量分布は、例えば、重合時に使用する開始剤や触媒の種類、量及び反応温度、圧力、時間等の重合反応条件などを適宜選択することにより調整できる。また、異なる重合条件によって得られた平均分子量の異なる複数種のポリアミド樹脂を混合したり、重合後のポリアミド樹脂を分別沈殿させることにより調整することもできる。
他の成分としては、本発明のポリアミド樹脂以外の他のポリアミド樹脂、ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂、充填剤、艶消剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色防止剤、ゲル化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加することができる。これらの添加剤は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
他のポリアミド樹脂としては、具体的には、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド46、ポリアミド6/66(ポリアミド6成分およびポリアミド66成分からなる共重合体)、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12が例示される。これらの他のポリアミド樹脂は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
ポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂を例示できる。これらのポリアミド樹脂以外の熱可塑性樹脂は、それぞれ、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
成形品の利用分野としては、自動車等輸送機部品、一般機械部品、精密機械部品、電子・電気機器部品、OA機器部品、建材・住設関連部品、医療装置、レジャースポーツ用品、遊戯具、医療品、食品包装用フィルム等の日用品、塗料やオイルの容器、防衛および航空宇宙製品等が挙げられる。特に、本発明のポリアミド樹脂は、高い融点を有し、かつ、はんだリフロー性に優れていることから、プリンター転写ベルト等に好ましく用いられる。
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽及びポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精怦したアジピン酸(Solvay製)10106g(69.22mol)、次亜リン酸カルシウム(関東化学製)1.8g(0.011mol)、酢酸ナトリウム(関東化学製)1.2g(0.015mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaGに保ちながら撹拌下200℃まで昇温した。200℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたキシリレンジアミン(異性体モル比:メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミン=45/55)(三菱ガス化学製)9421g(69.22mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaGに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を293℃まで昇温した。キシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽及びポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精怦したアジピン酸(Solvay製)10106g(69.22mol)、次亜リン酸カルシウム(関東化学製)1.8g(0.011mol)、酢酸ナトリウム(関東化学製)1.2g(0.015mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaGに保ちながら撹拌下200℃まで昇温した。200℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたキシリレンジアミン(異性体モル比:メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミン=50/50)(三菱ガス化学製)9421g(69.22mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaGに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を285℃まで昇温した。キシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽及びポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精怦したアジピン酸(Solvay製)10106g(69.22mol)、次亜リン酸ナトリウム(関東化学製)7.0g(0.064mol)、酢酸ナトリウム(関東化学製)3.8g(0.047mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaGに保ちながら撹拌下200℃まで昇温した。200℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたキシリレンジアミン(異性体モル比:メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミン=70/30)(三菱ガス化学製)9421g(69.22mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaGに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を270℃まで昇温した。キシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽及びポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精怦したアジピン酸(Solvay製)10106g(69.22mol)、次亜リン酸カルシウム(関東化学製)1.8g(0.011mol)、酢酸ナトリウム(関東化学製)1.2g(0.015mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaGに保ちながら撹拌下200℃まで昇温した。200℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めた1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4−BAC、異性体モル比:シス/トランス=50/50)(三菱ガス化学製)9846g(69.22mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaGに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を290℃まで昇温した。キシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽及びポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精怦したアジピン酸(Solvay製)10106g(69.22mol)、次亜リン酸カルシウム(関東化学製)1.8g(0.011mol)、酢酸ナトリウム(関東化学製)1.2g(0.015mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaGに保ちながら撹拌下200℃まで昇温した。200℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたキシリレンジアミン(異性体モル比:メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミン=42/58)(三菱ガス化学製)9421g(69.22mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaGに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を300℃まで昇温した。キシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
しかしながら、抜出は合成中に発泡してしまったことから困難であった。
撹拌機、分縮器、全縮器、圧力調整器、温度計、滴下槽及びポンプ、アスピレーター、窒素導入管、底排弁、ストランドダイを備えた内容積50Lの耐圧反応容器に、精怦したアジピン酸(Solvay製)10106g(69.22mol)、次亜リン酸カルシウム(関東化学製)1.8g(0.011mol)、酢酸ナトリウム(関東化学製)1.2g(0.015mol)を入れ、十分に窒素置換した後、反応容器内を密閉し、容器内を0.4MPaGに保ちながら撹拌下200℃まで昇温した。200℃に到達後、反応容器内の原料へ滴下槽に貯めたキシリレンジアミン(異性体モル比:メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミン=65/35)(三菱ガス化学製)9421g(69.22mol)の滴下を開始し、容器内を0.4MPaGに保ちながら生成する縮合水を系外へ除きながら反応槽内を275℃まで昇温した。キシリレンジアミンの滴下終了後、反応容器内を徐々に常圧に戻し、次いでアスピレーターを用いて反応槽内を80kPaに減圧して縮合水を除いた。減圧中に撹拌機の撹拌トルクを観察し、所定のトルクに達した時点で撹拌を止め、反応槽内を窒素で加圧し、底排弁を開け、ストランドダイからポリマーを抜き出してストランド化したのち、冷却してペレタイザーによりペレット化することにより、ポリアミド樹脂を得た。
示差走査熱量の測定はJIS K7121およびK7122に準じて行った。示差走査熱量計を用い、上記で得られたポリアミド樹脂ペレットを砕いて示差走査熱量計の測定パンに仕込み、窒素雰囲気下にて昇温速度10℃/分で300℃まで昇温し、急冷する前処理を行った後に測定を行った。測定条件は、昇温速度10℃/分で、300℃で5分保持した後、降温速度−5℃/分で100℃まで測定を行い、ガラス転移温度(Tg)、加熱結晶化温度(Tch)、冷却結晶化温度(Tcc)、融点(Tm)および結晶融解エンタルピー(ΔHm)を求めた。
示差走査熱量計としては、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)製「DSC−60」を用いた。
上記で得られたポリアミド樹脂ペレットを砕いて、フェノールとエタノールとの混合溶媒(フェノール/エタノール=4/1(体積比))及びベンジルアルコール溶媒にそれぞれ溶解させ、カルボキシル末端基濃度とアミノ末端基濃度を塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液の中和滴定により求めた。数平均分子量は、アミノ末端基濃度及びカルボキシル末端基濃度の定量値から次式により求めた。
数平均分子量=2×1,000,000/([NH2]+[COOH])
[NH2]:アミノ末端基濃度(μeq/g)
[COOH]:カルボキシル末端基濃度(μeq/g)
<<フィルムの製造>>
上記で得られたポリアミド樹脂ペレットをTダイ付き二軸押し出し機に供給し、融点+15℃で溶融混練を行いTダイを通じて厚さ100μmのフィルムを得た。
<<結晶化度の測定>>
上記で得られたポリアミド樹脂フィルムをX線回析装置(XRD)にて測定を行い、得られた結晶性ピークの面積と非晶状態でのピーク面積より以下の計算式に基づき結晶化度を算出した。
結晶化度(%)=[結晶性ピークの面積/(結晶性ピークの面積+非晶性ピークの面積)]×100
尚、本実施例では、X線回析装置として、リガク製、品番:SmartLabを用いた。
<<試験片の製造>>
上記の製造方法で得られたペレットを150℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製射出成形機、SE130−DUを用いて、シリンダー温度は各ポリアミド樹脂の融点+15℃、金型温度30℃の条件で、60mm×60mm×2mm厚の試験片を射出成形した。得られた試験片を150℃1時間の条件でアニール処理を行った。
<<吸水率の測定>>
85℃85%相対湿度の環境下に試験片を静置させ150時間静置した後の重量を測定し、静置前後の重量から吸水率を算出した。
吸水率(%)=[(試験後の試験片の重量−試験前の試験片の重量)/試験前の試験片の重量]×100
上記吸水率の所で述べた試験片と同様の試験片を製造し、はんだリフロー槽(アンベエスエムティ卓上リフロー炉FT−02)に以下の条件で浸漬させ、外観の様子を目視で観察した。
試験条件:180℃30秒間加熱後、270℃5分間加熱
A:試験前後で試験片に変化なし。
B:試験後に試験片に膨れが少しあり。
C:試験後に試験片に膨れがあり、実用レベル外である。
これに対し、ポリアミド樹脂を構成するキシリレンジアミンの異性体モル比(メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミン)が60/40を超えてメタキシリレンジアミンリッチの場合(比較例1、比較例4)、融点および結晶化度が低くなってしまい、はんだリフロー性に劣っていた。さらに、吸水率も高かった。
一方、ポリアミド樹脂を構成するキシリレンジアミンの異性体モル比(メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミン)が43/57を超えてパラキシリレンジアミンリッチの場合(比較例3)、融点の高いものが得られたが、結晶化度が低くなってしまい、はんだリフロー性に劣っていた。さらに、吸水率も高かった。
また、ジアミン成分として、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを用いた場合(比較例2)、融点の高いものが得られたが、結晶化度が低くなってしまい、はんだリフロー性に劣っていた。さらに、吸水率も高かった。
Claims (8)
- ジアミン由来の構成単位とジカルボン酸由来の構成単位から構成され、
前記ジアミン由来の構成単位の70モル%以上が、キシリレンジアミンに由来し、
前記ジカルボン酸由来の構成単位の70モル%以上が、炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するポリアミド樹脂であって、
前記ポリアミド樹脂は、融点が270〜285℃であり、
前記ジアミン由来の構成単位を構成するキシリレンジアミンは、異性体モル比(メタキシリレンジアミン/パラキシリレンジアミン)が、60/40〜43/57であり、
下記式で示されるX線回析法により算出した結晶化度が30%〜70%であるポリアミド樹脂;
結晶化度=結晶性ピークの面積/(結晶性ピークの面積+非晶性ピークの面積)×100。 - 前記炭素数4〜8のα,ω−直鎖脂肪族ジカルボン酸がアジピン酸である、請求項1に記載のポリアミド樹脂。
- 前記ポリアミド樹脂の数平均分子量が8000〜25000である、請求項1または2に記載のポリアミド樹脂。
- 前記ポリアミド樹脂のガラス転移温度が90℃以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂。
- 85℃、相対湿度85%の条件で測定した吸水率が3.5%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂。
- 前記ポリアミド樹脂の加熱結晶化温度が130℃以下であり、冷却結晶化温度が200℃以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂。
- 前記ポリアミド樹脂の冷却結晶化温度と加熱結晶化温度の差が100〜150℃である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂。
- 請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂を含む組成物を成形してなる成形品。
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