以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係る積層体は、金属複合体と、絶縁材料部とを備える。本発明に係る積層体では、上記金属複合体は、金属体と、上記金属体の表面上に配置された複数の(C)窒化ホウ素ナノチューブ(Boron Nitride NanotubeもしくはBNNT、もしくはBNNT(C)と記載することがある)とを有する。本発明に係る積層体では、上記絶縁材料部の表面上に、上記金属複合体が(C)窒化ホウ素ナノチューブ側から配置されている。本発明に係る積層体では、上記絶縁材料部が、(A)熱硬化性化合物及び(B)熱硬化剤を含む熱硬化性成分の硬化物部と、(D)ナノチューブ(NTと記載することがある)ではない絶縁性フィラー(単に、(D)絶縁性フィラーと記載することがある)とを含む。上記絶縁材料部は、硬化層である。
本発明では、上記の構成が備えられているので、高い放熱性と、高い機械的強度と、高い絶縁破壊特性とを両立することができる。金属体の表面上に(C)窒化ホウ素ナノチューブが配置されているので、放熱性をかなり高めることができる。また、金属体と絶縁材料部との接着界面において、(C)窒化ホウ素ナノチューブが存在するので、金属体の表面における熱抵抗が低くなる。また更に、金属体の表面上における配置物が、(C)窒化ホウ素ナノチューブであるので、配置物が、カーボンナノチューブ(CNT)等である場合と比べて、絶縁性が高くなる。絶縁材料部は、シート状の硬化物シートであってもよい。金属体は、基板であってもよく、基板の一部であってもよい。
また、本発明では、絶縁材料部の機械的強度も高めることができる。(C)窒化ホウ素ナノチューブは、機械的強度の向上に寄与する。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層体を模式的に示す断面図である。
図1に示す積層体1は、硬化物シート2(絶縁材料部)と、第1の金属複合体3と、第2の金属複合体4とを備える。
硬化物シート2は、硬化物部11と、窒化ホウ素ナノチューブ12と、絶縁性フィラー13とを含む。絶縁性フィラー13は、ナノチューブではない。硬化物部11は、熱硬化性化合物及び熱硬化剤を含む熱硬化性成分が硬化した部分であり、熱硬化性成分を硬化させることにより得られる。
第1の金属複合体3は、第1の金属体21と、第1の金属体21の表面上に配置された複数の窒化ホウ素ナノチューブ22とを有する。積層体1では、硬化物シート2の第1の表面上に、第1の金属複合体3が窒化ホウ素ナノチューブ22側から配置されている。
第2の金属複合体4は、第2の金属体31と、第2の金属体31の表面上に配置された複数の窒化ホウ素ナノチューブ32とを有する。積層体1では、硬化物シート2の上記第1の表面とは反対の第2の表面上に、第2の金属複合体4が窒化ホウ素ナノチューブ32側から配置されている。
第2の金属複合体4にかえて、第2の金属体31を用いてもよい。すなわち、硬化物シート2の第2の表面上に、窒化ホウ素ナノチューブを介さずに、第2の金属体を配置してもよい。
放熱性、機械的強度を効果的に高める観点からは、金属複合体において、(C)窒化ホウ素ナノチューブが、(C)窒化ホウ素ナノチューブの長さ方向の一端側において、上記金属体の表面上に接していることが好ましい。放熱性、絶縁性及び機械的強度を効果的に高める観点からは、(C)窒化ホウ素ナノチューブの長さ方向の他端は、上記金属体の表面から外側に向かって延びていることが好ましい。
金属複合体において、上記窒化ホウ素ナノチューブが、上記窒化ホウ素ナノチューブ全体で、上記金属体の表面から外側に向かって直線状に、上記金属体の表面上に配置されていることが好ましい。金属体から垂直方向に窒化ホウ素ナノチューブが配置されていることにより、窒化ホウ素ナノチューブを介して垂直方向に効率よく熱を伝搬させることができるので、放熱性が高くなる。また同時に、金属体から垂直方向に窒化ホウ素ナノチューブが配置されていることにより、窒化ホウ素ナノチューブ間に、硬化物シートにおける硬化物部を効果的に入り込ませることができ、金属体と硬化物シートの密着性を高め機械的強度が高くなる。
上記金属体の表面上に窒化ホウ素ナノチューブを配置させる方法としては、機械的にもしくは磁場等で窒化ホウ素ナノチューブを垂直に配向させる方法、並びに、窒化ホウ素ナノチューブを垂直に合成する方法等が挙げられる。窒化ホウ素ナノチューブの長さ方向の一端側において、上記金属体の表面上に付着させることができる観点からは、金属体上に直接、窒化ホウ素ナノチューブを合成させ、垂直に成長させる方法が好ましい。金属体上に直接、窒化ホウ素ナノチューブを合成する方法は、化学気相成長(CVD)法などが挙げられる。
放熱性、絶縁性及び機械的強度を効果的に高める観点からは、上記金属複合体における(C)窒化ホウ素ナノチューブの総体積の、上記硬化物シートにおける(D)絶縁性フィラーの総体積に対する比は、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.2以上、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.0以下である。
絶縁性及び機械的強度を効果的に高める観点からは、上記硬化物シートにおける上記硬化物部が、上記金属複合体における複数の上記窒化ホウ素ナノチューブの間に入り込んでいることが好ましい。
放熱性、絶縁性及び機械的強度を効果的に高める観点からは、第1の金属体の表面積100%中、上記窒化ホウ素ナノチューブにより覆われている表面積部分(被覆率)は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。放熱性、絶縁性及び機械的強度を効果的に高める観点からは、第2の金属体の表面積100%中、上記窒化ホウ素ナノチューブにより覆われている表面積部分は、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。また、所望の面積を窒化ホウ素ナノチューブで被覆する方法は、例えば、CVD法で合成する際に使用する金属触媒の密度や被覆処理回数等によって調整できる。
上記窒化ホウ素ナノチューブにより覆われている表面積部分の割合は、エネルギー分散型X線分析付き走査型電子顕微鏡SEM−EDSで、評価することができる。即ち、金属体の断面観察において元素分析を行い、窒化ホウ素ナノチューブが被覆されている部分を同定し、全体の面積比から被覆の割合を計算できる。
上記硬化物シートは、熱硬化性材料の硬化物であり、熱硬化性材料を硬化させることにより得られる。熱硬化性材料は、熱硬化性ペーストであってもよく、熱硬化性シートであってもよい。上記熱硬化性材料は、熱硬化性シートであることが好ましい。放熱性及び機械的強度を効果的に高める観点からは、本発明に係る硬化物シート及び上記熱硬化性材料は、(C’)窒化ホウ素ナノチューブを含むことが好ましい。なお、金属複合体における(C)窒化ホウ素ナノチューブと区別するために、硬化物シート及び熱硬化性材料においては、(C’)窒化ホウ素ナノチューブ(もしくは(C’)BNNT)と呼ぶ。
上記積層体は、放熱性及び機械的強度などが高いことが求められる様々な用途に用いることができる。上記積層体は、例えば、電子機器において、発熱部品と放熱部品との間に硬化物シートが配置するように用いられる。
上記第1の金属複合体における金属体の材質は銅又はアルミニウムであることが好ましい。但し、他の材質であってもよく、第1の金属複合体の材質は限定されない。上記第2の金属複合体における金属体の材質は銅又はアルミニウムであることが好ましい。但し、他の材質であってもよく、第2の金属複合体の材質は限定されない。
((C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブ)
(C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブは、ナノチューブである。(C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブの材質は、窒化ホウ素である。(C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブの形状は、チューブ状である。理想的な形状としては、6角網目の面がチューブ軸に平行に管を形成し、単管又は多重管になっている形状である。
放熱性、絶縁性及び機械的強度を効果的に高める観点からは、(C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブの平均直径は好ましくは2nm以上、より好ましくは6nm以上、更に好ましくは10nm以上、特に好ましくは30nm以上、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。
平均直径とは、単管の場合には平均外径を示し、多重管の場合には最も外側に位置する管の平均外径を意味する。
放熱性、絶縁性及び機械的強度を効果的に高める観点からは、(C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブの平均長さは、好ましくは1μm以上、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下、特に好ましくは80μm以下である。
(C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブの直径や長さは、合成手法、合成時の温度や時間等を変更することで適宜変えることができる。例えばアーク放電法では小直径、化学気相成長法では大直径のナノチューブが得られる。
(C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブのアスペクト比は好ましくは3以上である。(C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブのアスペクト比の上限は特に限定されない。(C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブのアスペクト比は100000以下であってもよい。
放熱性、絶縁性及び機械的強度を効果的に高める観点からは、(C)窒化ホウ素ナノチューブの平均長さの、(D)絶縁性フィラーの平均粒子径に対する比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.2以上、好ましくは200以下、より好ましくは100以下である。放熱性及び機械的強度を効果的に高める観点からは、(C’)窒化ホウ素ナノチューブの平均長さの、(D)絶縁性フィラーの平均粒子径に対する比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.2以上、好ましくは200以下、より好ましくは100以下である。
上記平均直径、上記平均長さ及び上記アスペクト比は、電子顕微鏡による観察から求めることができる。例えばTEM(透過型電子顕微鏡)による測定を行い、得られた画像から直接、(C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブの直径、長さを測定することが可能である。また熱硬化性材料中の(C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブの形態は、例えば軸と平行に切断した繊維断面のTEM(透過型電子顕微鏡)測定により把握することができる。上記平均直径、上記平均長さ及び上記アスペクト比は、電子顕微鏡の画像中の任意の50個の算術平均により求めることが好ましい。
(C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブは、アーク放電法、レーザー加熱法及び化学気相成長法等を用いて合成できる。また、ホウ化ニッケルを触媒として使用し、ボラジンを原料として合成する方法も知られている。また、カーボンナノチューブを鋳型として利用して、酸化ホウ素と窒素を反応させて合成する方法も知られている。(C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブは、これらの合成方法により得られるものに限定されない。(C)窒化ホウ素ナノチューブ及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブは、強酸処理又は化学修飾された窒化ホウ素ナノチューブであってもよい。
熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤を除く成分100体積%中、及び硬化物100体積%中、(C’)窒化ホウ素ナノチューブの含有量は好ましくは0.5体積%以上、より好ましくは5体積%以上、好ましくは40体積%以下、より好ましくは20体積%以下である。(C’)窒化ホウ素ナノチューブの含有量が上記下限以上であると、放熱性、機械的強度、圧縮性、絶縁破壊特性及び加工性が効果的に高くなる。(C’)窒化ホウ素ナノチューブの含有量が上記上限以下であると、熱硬化性材料を充分に硬化させることが容易である。(C’)窒化ホウ素ナノチューブの含有量が上記上限以下であると、硬化物による熱伝導率及び接着性がより一層高くなる。
熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤を除く成分は、熱硬化性材料が溶剤を含まない場合には、熱硬化性材料であり、熱硬化性材料が溶剤を含む場合には、溶剤を除く成分である。
放熱性及び機械的強度を効果的に高める観点からは、熱硬化性材料100体積%中での(C’)窒化ホウ素ナノチューブの含有量の、熱硬化性材料100体積%中での(D)絶縁性フィラーの含有量に対する比は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.02以上、好ましくは1.6以下、より好ましくは1.0以下である。
((A)熱硬化性化合物)
(A)熱硬化性化合物としては、スチレン化合物、フェノキシ化合物、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。(A)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(A)熱硬化性化合物として、(A1)10000未満の分子量を有する熱硬化性化合物(単に、(A1)熱硬化性化合物と記載することがある)を用いてもよく、(A2)10000以上の分子量を有する熱硬化性化合物(単に、(A2)熱硬化性化合物と記載することがある)を用いてもよく、(A1)熱硬化性化合物と、(A2)熱硬化性化合物との双方を用いてもよい。(A)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、(C’)窒化ホウ素ナノチューブ、(D)絶縁性フィラーを除く成分100重量%中、(A)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下、最も好ましくは50重量%以下である。(A)熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上であると、硬化物の接着性及び耐熱性がより一層高くなる。(A)熱硬化性化合物の含有量が上記上限以下であると、熱硬化性材料の作製時の塗工性が高くなる。
熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、(C’)窒化ホウ素ナノチューブ、(D)絶縁性フィラーを除く成分は、熱硬化性材料が溶剤を含まず、かつ(C’)窒化ホウ素ナノチューブを含まない場合には、熱硬化性材料であり、熱硬化性材料が溶剤を含まず、かつ(C’)窒化ホウ素ナノチューブを含む場合には、(C’)窒化ホウ素ナノチューブを除く成分であり、熱硬化性材料が溶剤及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブを含む場合には、溶剤、及び(C’)窒化ホウ素ナノチューブを除く成分である。
(A1)10000未満の分子量を有する熱硬化性化合物:
(A1)熱硬化性化合物としては、環状エーテル基を有する熱硬化性化合物が挙げられる。上記環状エーテル基としては、エポキシ基及びオキセタニル基等が挙げられる。上記環状エーテル基を有する熱硬化性化合物は、エポキシ基又はオキセタニル基を有する熱硬化性化合物であることが好ましい。(A1)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
(A1)熱硬化性化合物は、(A1a)エポキシ基を有する熱硬化性化合物(単に、(A1a)熱硬化性化合物と記載することがある)を含んでいてもよく、(A1b)オキセタニル基を有する熱硬化性化合物(単に、(A1b)熱硬化性化合物と記載することがある)を含んでいてもよい。
硬化物の耐熱性及び耐湿性をより一層高める観点からは、(A1)熱硬化性化合物は芳香族骨格を有することが好ましい。
上記芳香族骨格としては特に限定されず、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びビスフェノールA型骨格等が挙げられる。硬化物の耐冷熱サイクル特性及び耐熱性をより一層高める観点からは、ビフェニル骨格又はフルオレン骨格が好ましい。
(A1a)熱硬化性化合物としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマー、ナフタレン骨格を有するエポキシモノマー、アダマンタン骨格を有するエポキシモノマー、フルオレン骨格を有するエポキシモノマー、ビフェニル骨格を有するエポキシモノマー、バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマー、キサンテン骨格を有するエポキシモノマー、アントラセン骨格を有するエポキシモノマー、及びピレン骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。これらの水素添加物又は変性物を用いてもよい。(A1a)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマーとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型又はビスフェノールS型のビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマーとしては、ジシクロペンタジエンジオキシド、及びジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシモノマー等が挙げられる。
上記ナフタレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1−グリシジルナフタレン、2−グリシジルナフタレン、1,2−ジグリシジルナフタレン、1,5−ジグリシジルナフタレン、1,6−ジグリシジルナフタレン、1,7−ジグリシジルナフタレン、2,7−ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、及び1,2,5,6−テトラグリシジルナフタレン等が挙げられる。
上記アダマンタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン、及び2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)アダマンタン等が挙げられる。
上記フルオレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−ブロモフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−フルオロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3−メトキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジクロロフェニル)フルオレン、及び9,9−ビス(4−グリシジルオキシ−3,5−ジブロモフェニル)フルオレン等が挙げられる。
上記ビフェニル骨格を有するエポキシモノマーとしては、4,4’−ジグリシジルビフェニル、及び4,4’−ジグリシジル−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル等が挙げられる。
上記バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,1’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(2,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’−バイ(3,7−グリシジルオキシナフチル)メタン、及び1,2’−バイ(3,5−グリシジルオキシナフチル)メタン等が挙げられる。
上記キサンテン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3,4,5,6,8−ヘキサメチル−2,7−ビス−オキシラニルメトキシ−9−フェニル−9H−キサンテン等が挙げられる。
(A1b)熱硬化性化合物の具体例としては、例えば、4,4’−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4−ベンゼンジカルボン酸ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メチル]エステル、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、及びオキセタン変性フェノールノボラック等が挙げられる。(A1b)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化物の耐熱性をより一層良好にする観点からは、(A1)熱硬化性化合物は、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
硬化物の耐熱性をより一層良好にする観点からは、(A1)熱硬化性化合物100重量%中、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、100重量%以下である。(A1)熱硬化性化合物100重量%中、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物の含有量は10重量%以上、100重量%以下であってもよい。また、(A1)熱硬化性化合物の全体が、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物であってもよい。
(A1)熱硬化性化合物の分子量は、10000未満である。(A1)熱硬化性化合物の分子量は、好ましくは200以上、好ましくは1200以下、より好ましくは600以下、更に好ましくは550以下である。(A1)熱硬化性化合物の分子量が上記下限以上であると、硬化物の表面の粘着性が低くなり、硬化性組成物の取扱性がより一層高くなる。(A1)熱硬化性化合物の分子量が上記上限以下であると、硬化物の接着性がより一層高くなる。さらに、硬化物が固くかつ脆くなり難く、硬化物の接着性がより一層高くなる。
なお、本明細書において、(A1)熱硬化性化合物における分子量とは、(A1)熱硬化性化合物が重合体ではない場合、及び(A1)熱硬化性化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味し、(A1)熱硬化性化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、(C’)窒化ホウ素ナノチューブ、(D)絶縁性フィラーを除く成分100重量%中、(A1)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下、最も好ましくは50重量%以下である。(A1)熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上であると、硬化物の接着性及び耐熱性がより一層高くなる。(A1)熱硬化性化合物の含有量が上記上限以下であると、熱硬化性材料の作製時の塗工性が高くなる。
(A2)10000以上の分子量を有する熱硬化性化合物:
(A2)熱硬化性化合物は、分子量が10000以上である熱硬化性化合物である。(A2)熱硬化性化合物の分子量は10000以上であるので、(A2)熱硬化性化合物は一般にポリマーであり、上記分子量は、一般に重量平均分子量を意味する。
硬化物の耐熱性及び耐湿性をより一層高める観点からは、(A2)熱硬化性化合物は、芳香族骨格を有することが好ましい。(A2)熱硬化性化合物がポリマーであり、(A2)熱硬化性化合物が芳香族骨格を有する場合には、(A2)熱硬化性化合物は、芳香族骨格をポリマー全体のいずれかの部分に有していればよく、主鎖骨格内に有していてもよく、側鎖中に有していてもよい。硬化物の耐熱性をより一層高くし、かつ硬化物の耐湿性をより一層高くする観点からは、(A2)熱硬化性化合物は、芳香族骨格を主鎖骨格内に有することが好ましい。(A2)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
上記芳香族骨格としては特に限定されず、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びビスフェノールA型骨格等が挙げられる。ビフェニル骨格又はフルオレン骨格が好ましい。この場合には、硬化物の耐冷熱サイクル特性及び耐熱性がより一層高くなる。
(A2)熱硬化性化合物としては特に限定されず、スチレン樹脂、フェノキシ樹脂、オキセタン樹脂、エポキシ樹脂、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
硬化物の酸化劣化を抑え、硬化物の耐冷熱サイクル特性及び耐熱性をより一層高め、更に硬化物の吸水率をより一層低くする観点からは、(A2)熱硬化性化合物は、スチレン樹脂、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂であることが好ましく、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂であることがより好ましく、フェノキシ樹脂であることが更に好ましい。特に、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂の使用により、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。また、フェノキシ樹脂の使用により、硬化物の弾性率がより一層低くなり、かつ硬化物の耐冷熱サイクル特性がより一層高くなる。なお、(A2)熱硬化性化合物は、エポキシ基などの環状エーテル基を有していなくてもよい。
上記スチレン樹脂として、具体的には、スチレン系モノマーの単独重合体、及びスチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体等が使用可能である。スチレン−メタクリル酸グリシジルの構造を有するスチレン重合体が好ましい。
上記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン及び3,4−ジクロロスチレン等が挙げられる。
上記フェノキシ樹脂は、具体的には、例えばエピハロヒドリンと2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格又はジシクロペンタジエン骨格を有することが好ましい。上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格又はビフェニル骨格を有することがより好ましく、フルオレン骨格及びビフェニル骨格の内の少なくとも1種の骨格を有することが更に好ましい。これらの好ましい骨格を有するフェノキシ樹脂の使用により、硬化物の耐熱性が更に一層高くなる。
上記エポキシ樹脂は、上記フェノキシ樹脂以外のエポキシ樹脂である。上記エポキシ樹脂としては、スチレン骨格含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
(A2)熱硬化性化合物の分子量は10000以上である。(A2)熱硬化性化合物の分子量は、好ましくは30000以上、より好ましくは40000以上、好ましくは1000000以下、より好ましくは250000以下である。(A2)熱硬化性化合物の分子量が上記下限以上であると、硬化物が熱劣化し難い。(A2)熱硬化性化合物の分子量が上記上限以下であると、(A2)熱硬化性化合物と他の成分との相溶性が高くなる。この結果、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、(C’)窒化ホウ素ナノチューブ、(D)絶縁性フィラーを除く成分100重量%中、(A2)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。(A2)熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上であると、熱硬化性材料の取扱性が良好になる。(A2)熱硬化性化合物の含有量が上記上限以下であると、(C’)窒化ホウ素ナノチューブ及び(D)絶縁性フィラーの分散が容易になる。
((B)熱硬化剤)
(B)熱硬化剤は特に限定されない。(B)熱硬化剤として、(A)熱硬化性化合物を硬化させることができる適宜の熱硬化剤を用いることができる。また、本明細書において、(B)熱硬化剤には、硬化触媒が含まれる。(B)熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
硬化物の耐熱性をより一層高める観点からは、(B)熱硬化剤は、芳香族骨格又は脂環式骨格を有することが好ましい。(B)熱硬化剤は、アミン硬化剤(アミン化合物)、イミダゾール硬化剤、フェノール硬化剤(フェノール化合物)又は酸無水物硬化剤(酸無水物)を含むことが好ましく、アミン硬化剤を含むことがより好ましい。上記酸無水物硬化剤は、芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物を含むか、又は、脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物を含むことが好ましい。
上記アミン硬化剤としては、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物、ジアミノジフェニルメタン及びジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。硬化物の接着性をより一層高める観点からは、上記アミン硬化剤は、ジシアンジアミド又はイミダゾール化合物であることがより一層好ましい。硬化性組成物の貯蔵安定性をより一層高める観点からは、(B)熱硬化剤は、融点が180℃以上である硬化剤を含むことが好ましく、融点が180℃以上であるアミン硬化剤を含むことがより好ましい。
上記イミダゾール硬化剤としては、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2−フェニル−4−メチル−5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
上記フェノール硬化剤としては、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック、p−クレゾールノボラック、t−ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ−o−ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ−m−ヒドロキシフェニル)メタン、及びポリ(ジ−p−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。硬化物の柔軟性及び硬化物の難燃性をより一層高める観点からは、メラミン骨格を有するフェノール樹脂、トリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂が好ましい。
上記フェノール硬化剤の市販品としては、MEH−8005、MEH−8010及びMEH−8015(以上いずれも明和化成社製)、YLH903(三菱化学社製)、LA−7052、LA−7054、LA−7751、LA−1356及びLA−3018−50P(以上いずれもDIC社製)、並びにPS6313及びPS6492(以上いずれも群栄化学社製)等が挙げられる。
上記芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては、例えば、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、フェニルエチニルフタル酸無水物、グリセロールビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及びトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
上記芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、SMAレジンEF30、SMAレジンEF40、SMAレジンEF60及びSMAレジンEF80(以上いずれもサートマー・ジャパン社製)、ODPA−M及びPEPA(以上いずれもマナック社製)、リカシッドMTA−10、リカシッドMTA−15、リカシッドTMTA、リカシッドTMEG−100、リカシッドTMEG−200、リカシッドTMEG−300、リカシッドTMEG−500、リカシッドTMEG−S、リカシッドTH、リカシッドHT−1A、リカシッドHH、リカシッドMH−700、リカシッドMT−500、リカシッドDSDA及びリカシッドTDA−100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにEPICLON B4400、EPICLON B650、及びEPICLON B570(以上いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物は、多脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物、又はテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られる脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物であることが好ましい。これらの硬化剤の使用により、硬化物の柔軟性、並びに硬化物の耐湿性及び接着性がより一層高くなる。
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては、メチルナジック酸無水物、ジシクロペンタジエン骨格を有する酸無水物又は該酸無水物の変性物等も挙げられる。
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、リカシッドHNA及びリカシッドHNA−100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにエピキュアYH306、エピキュアYH307、エピキュアYH308H及びエピキュアYH309(以上いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
(B)熱硬化剤は、メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸であることも好ましい。メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸の使用により、硬化物の耐水性が高くなる。
熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤、(C’)窒化ホウ素ナノチューブ、(D)絶縁性フィラーを除く成分100重量%中、(B)熱硬化剤の含有量は好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。(B)熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、熱硬化性材料を充分に硬化させることが容易である。(B)熱硬化剤の含有量が上記上限以下であると、硬化に関与しない余剰な(B)熱硬化剤が発生し難くなる。このため、硬化物の耐熱性及び接着性がより一層高くなる。
((D)ナノチューブではない絶縁性フィラー)
(D)絶縁性フィラーは、有機フィラーであってもよく、無機フィラーであってもよい。放熱性を効果的に高める観点からは、(D)絶縁性フィラーは、無機フィラーであることが好ましい。放熱性を効果的に高める観点から、(D)絶縁性フィラーは、10W/m・K以上の熱伝導率を有することが好ましい。(D)絶縁性フィラーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。絶縁性とは、フィラーの体積抵抗率が106Ω・cm以上であることを意味する。
硬化物の放熱性をより一層高める観点からは、(D)絶縁性フィラーの熱伝導率は好ましくは10W/m・K以上、より好ましくは15W/m・K以上、更に好ましくは20W/m・K以上である。(D)絶縁性フィラーの熱伝導率の上限は特に限定されない。熱伝導率が300W/m・K程度である無機フィラーは広く知られており、また熱伝導率が200W/m・K程度である無機フィラーは容易に入手できる。
(D)絶縁性フィラーの材質は、アルミナ、合成マグネサイト、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛又は酸化マグネシウムであることが好ましく、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛又は酸化マグネシウムであることがより好ましい。これらの好ましい絶縁性フィラーの使用により、硬化物の放熱性がより一層高くなる。
(D)絶縁性フィラーは、球状粒子、又は、独立した絶縁性フィラーが凝集した球状粒子であることが好ましい。これら絶縁性フィラーの使用により、硬化物の放熱性がより一層高くなる。球状粒子のアスペクト比は、2以下である。
(D)絶縁性フィラーの材質の新モース硬度は、好ましくは12以下、より好ましくは9以下である。(D)絶縁性フィラーの材質の新モース硬度が9以下であると、硬化物の加工性がより一層高くなる。
硬化物の加工性をより一層高める観点からは、(D)絶縁性フィラーの材質は、合成マグネサイト、結晶シリカ、酸化亜鉛、又は酸化マグネシウムであることが好ましい。これらの無機フィラーの材質の新モース硬度は9以下である。
放熱性を効果的に高める観点からは、(D)絶縁性フィラーの平均粒子径は、好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下である。平均粒子径が上記下限以上であると、(D)絶縁性フィラーを高密度で容易に充填できる。平均粒子径が上記上限以下であると、硬化物の耐電圧性がより一層高くなる。
上記「平均粒子径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒子径である。
熱硬化性材料に含まれる成分のうち、溶剤を除く成分100体積%中、(D)絶縁性フィラーの含有量は好ましくは40体積%以上、より好ましくは50体積%以上、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。(D)絶縁性フィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の放熱性が効果的に高くなる。
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。本発明は以下の実施例に限定されない。
(実施例1〜9)
熱硬化性材料の調製:
ポリマーとしてビスフェノールA型フェノキシ樹脂44重量部と、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂33重量部と、硬化剤として脂環式骨格酸無水物とジシアンジアミド17重量部と、添加剤としてエポキシシランカップリング剤16重量部とを配合してペースト(熱硬化性材料)を得た。
第1及び第2の金属複合体の作製:
銅基板の片表面をポリイミドのフィルムで保護し、もう片表面をアセトンで脱脂した。次に、5%硫酸水溶液で1分間超音波でエッチングすることで銅表面を洗浄及び粗化した。次に、硫酸パラジウム0.01重量%を含有する水溶液に、上記銅基板を浸漬し、更にジメチルアミンボランを加えパラジウムを析出させ、ろ過、洗浄を行い、片表面のみにパラジウムを担持した銅基板を得た。
次に、コハク酸ナトリウム1重量%を含むイオン交換水500mLに、パラジウムを担持した銅基板10gを入れた。銅基板が入れられた水溶液に硫酸を添加して、銅基板が入れられた水溶液をpH5に調整した。
ニッケルメッキ液として、硫酸ニッケル20重量%、次亜リン酸ナトリウム30重量%、及び水酸化ナトリウム5重量%を含むニッケルメッキ液を調製した。
80℃に加熱した銅基板が入れられた水溶液にニッケルメッキ液を連続的に滴下し、5分間攪拌することによりナノサイズのニッケルを担持した銅基板を得た。
次に、ホウ素粉末(純度99.995%)及び酸化マグネシウム粉末(純度99%)の混合物(モル比1:1)をボールミルで6時間かけて微粉化した。得られた微粉化物を窒化ホウ素製ボートの中に離して配置させ、ボートをグラファイト製の支持台に載置した。
高周波誘導加熱炉を用いて、ホウ素粉末及び酸化マグネシウム粉末の混合物を1300℃に加熱し、発生した酸化ホウ素の蒸気とマグネシウムの混合蒸気をアルゴンガスで銅基板の方へ移送した。加熱温度が1300℃に達した時点で、アンモニアガスを銅基板に流入させ、200分間混合蒸気の酸化ホウ素と反応させた後、加熱炉を30℃以下の室温まで徐々に冷却し、金属複合体(銅基板の片表面上に垂直方向に成長した窒化ホウ素ナノチューブで被覆された銅基板)を作製した。得られたBNNTでは、平均直径が10nm、平均長さが5μmであった。
金属複合体に、熱硬化性材料を含浸させ、90℃のオーブン内で30分乾燥して、第1金属複合体及び第2金属複合体を得た。
絶縁材料シートの作製:
窒化ホウ素ナノチューブの製造:
窒化ホウ素製のるつぼに、2:1:1のモル比でホウ素、酸化マグネシウム及び酸化鉄を入れ、るつぼを高周波誘導加熱炉で1300℃に加熱した(加熱工程1)。生成物にアンモニアガスを導入して、1200℃で2時間加熱した(加熱工程2)。得られた白色固体を濃塩酸で洗浄し、イオン交換水で中性になるまで洗浄した後、乾燥させ、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)を得た。得られたBNNTは、平均直径が10nm、平均長さが50μmであった。
熱硬化性材料に窒化ホウ素ナノチューブ及び絶縁性フィラーを下記表1に示す配合比(単位は体積%)で添加し、ホモディスパー型攪拌機で混練して、ペースト(熱硬化性材料)を得た。
厚み50μmの離型PETシートに、上記熱硬化性材料を表1に示す厚みになるように塗工し、90℃のオーブン内で30分乾燥して、PETシート上に絶縁材料シートを作製した。
積層体の作製:
絶縁材料シートを第1の金属複合体と第2の金属複合体との間に挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間、絶縁材料シートをプレス硬化し、絶縁材料部を形成し、積層体を作製した。
(比較例1)
熱硬化性材料の調製:
ポリマーとしてビスフェノールA型フェノキシ樹脂44重量部と、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂33重量部と、硬化剤の脂環式骨格酸無水物(新日本理化社製「リカシッドMH−700」)及びジシアンジアミドを合計で17重量部と、添加剤としてエポキシシランカップリング剤16重量部とを配合してマトリックス樹脂を作製した。マトリックス樹脂に、絶縁性フィラーを下記表1に示す割合(配合単位は体積%)で添加し、ホモディスパー型攪拌機で混練して、ペースト(熱硬化性材料)を得た。
絶縁材料部の作製:
厚み50μmの離型PETシートに、上記熱硬化性材料を表1に示す厚みになるように塗工し、90℃のオーブン内で30分乾燥して、PETシート上に絶縁材料部を作製した。
積層体の作製:
絶縁材料部を第1の金属複合体と第2の金属複合体との間に挟み、真空プレス機で4MPaの圧力を保持しながら120℃で1時間、更に200℃で1時間、絶縁材料部をプレス硬化させ、積層体を作製した。
(比較例2)
絶縁材料部における窒化ホウ素ナノチューブをカーボンナノチューブに変更したこと以外は実施例1と同様にして、積層体を作製した。
(評価)
(1)放熱性
得られた積層体の銅箔面を、同じサイズの60℃に制御された表面平滑な発熱体に196N/cm2の圧力で押し付けた。アルミニウム板の表面の温度を熱電対により測定した。放熱性を下記の基準で判定した。
[放熱性の判定基準]
◎:発熱体とアルミニウム板との表面の温度差が3℃以下
○:発熱体とアルミニウム板との表面の温度差が3℃を超え、6℃以下
△:発熱体とアルミニウム板との表面の温度差が6℃を超え、10℃以下
×:発熱体をアルミニウム板との表面の温度差が10℃を超える
(2)機械的強度
得られた積層体を用いて、3点支点法により曲げ試験を実施した。試験片を1秒間に1回、深さ20μm曲げる条件で1000サイクル実施した後、硬化物シートが基板から剥がれているか否かを観察した。機械的強度を以下の基準で判定した。
[機械的強度の判定基準]
◎:面積の5%未満で剥離の発生又は剥離の発生なし
○:面積の5%以上、10%未満で剥離の発生
△:面積の10%以上、20%未満で剥離の発生
×:面積の10%未満で剥離の発生
(3)絶縁破壊電圧(耐電圧性)
耐電圧試験器(EXTECH Electronics社製「MODEL7473」)を用いて、積層体間に1kV/秒の速度で電圧が上昇するように、交流電圧を印加した。絶縁材料部が破壊した電圧を絶縁破壊電圧とした。絶縁破壊電圧を以下の基準で判定した。
[絶縁破壊電圧の判定基準]
◎:90kV/mm以上
〇:60kV/mm以上、90kV/mm未満
△:30kV/mm以上、60kV/mm未満
×:30kV/mm未満