以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照し、鉄道車両1の全体構成について説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態における鉄道車両1の側面図であり、図1(b)は、図1(a)のIb−Ib線における鉄道車両1の断面模式図である。尚、図1(a)及び図1(b)では、鉄道車両1の一部が省略して図示される。また、図1(b)では、説明の便宜上、座席20がロングシート及びクロスシートの配置に切り換えられた状態がそれぞれ図示されると共に、側構体11の厚みが省略して図示される。
図1(a)及び図1(b)に示すように、鉄道車両1は、車体10と、その車体10の内部における車体10の幅方向(図1(b)の上下方向)両端に配設される座席20と、その座席20を挟んで車体10の長手方向(図1(b)の左右方向)に一対が配設される袖仕切30とを主に備える。
車体10は、その車体10の幅方向の両端に一対が形成される側構体11と、その側構体11に開口される乗降口12と、車体10の幅方向において座席20の間に形成される通路13とを主に備える。
座席20は、背もたれ21とその背もたれ21に連設される座面22とを主に備え、側構体11の内壁面に沿って複数個(本実施形態では、一方の側構体11に3個が配設され、合計6個)が配設される。座席20には、背もたれ21及び座面22がそれぞれ2個ずつ並設される。背もたれ21は、車体10の高さ方向に立設されることで乗客の背もたれとなる部位であり、並設される2個の背もたれ21は、それぞれ独立して角度の調節が可能とされる。座面22は、車体10の床面と略平行に形成される面であり、乗客が着座するための部位である。
図1(b)に示すように、座席20は、車体10の高さ方向(図1(b)の紙面垂直方向)に沿った軸周りに図示しない駆動源によって回転することにより、座面22が車体10の長手方向に沿って並設されるロングシートの配置(図1(b)の下側の座席20の配置)又は座面22が車体10の幅方向に沿って並設されるクロスシートの配置(図1(b)の上側の座席20の配置)に切り換え可能に形成される。
乗客の混雑が予想される場合には座席20をロングシートの配置に切り換え、乗客の座る座席20が指定される場合にはクロスシートの配置に切り換える等、鉄道車両1の用途に応じて適宜切り換えられ、本実施形態では、乗客の降車が終了後、即ち、車体10内に乗客がいない状態でロングシート又はクロスシートに切り換えられる。
袖仕切30は、乗降口12とその乗降口12に最も近い座席20との間に配設され、側構体11の内壁面から車体10の幅方向に沿って通路13側(車体10の幅方向中央側)に向けて延設される板状部材である。この袖仕切30により、乗降口12とその乗降口12に最も近い座席20とが仕切られ、乗降口12で乗降する乗客と乗降口12に最も近い座席20に座る乗客とが干渉することが抑制される。
次いで、図2を参照し、袖仕切30の詳細構成について説明する。図2(a)は、図1(b)の矢印IIa方向から見た袖仕切30の側面図であり、図2(b)は、図2(a)の矢印IIb方向から見た袖仕切30の上面図であり、図2(c)は、図2(a)の矢印IIc方向から見た袖仕切30の正面図であり、図2(d)は、図2(b)の状態から張り出し部材32が張り出した状態を示す袖仕切30の上面図であり、図2(e)は、図2(c)の状態から張り出し部材32が張り出した状態を示す袖仕切30の正面図である。
尚、以下の説明において、各構成の車体10の高さ方向上側の面を上面とし、下側の面を下面と定義する。
図2(a)、図2(b)及び図2(c)に示すように、袖仕切30は、内部に空洞が形成される収納部材31と、その収納部材31の空洞内に収納される張り出し部材32と、収納部材31の空洞内に敷設されるレール33と、そのレール33よりも通路13側に配設されるロック機構34と、張り出し部材32を駆動させる駆動装置35とを主に備え、側構体11の内壁面から車体10の幅方向(図2(c)の左右方向)に沿って通路13に向けて延設される。
収納部材31は、側構体11の内壁面から車体10の幅方向に沿って延設される板状部材であり、車体10の長手方向視において略矩形状に形成される。収納部材31には通路13側の面(図2(c)の左側の面)に開口部を有する直方体状の空洞が形成され、その空洞内に張り出し部材32が収容可能とされる。
張り出し部材32は、その上面(図2(c)の上側の面)に刻設されるラック32aと、下面に(図2(c)の下側の面)に形成される係合部32bと、張り出し部材32の下面に凹設されるロック溝32cと、切欠き部32dとを主に備える板状部材であり、車体10の長手方向視において略矩形状に形成される。
ラック32aは、後述する駆動装置35のピニオン35aによって駆動力が伝達される部位である。ラック32aは、張り出し部材32の上面に車体10の幅方向に沿って延設され、後述するピニオン35aの歯のピッチに合わせた歯が複数形成される。
係合部32bは、レール33と係合することで張り出し部材32を直線的に案内するための部位である。係合部32bは、張り出し部材32の下面に車体10の幅方向に沿って延設され、車体10の幅方向視において断面略T字状に形成される。
ロック溝32cは、ロック機構34と嵌合可能に形成される溝である。ロック溝32cは、張り出し部材32の下面における側構体11側の一端に凹設される。切欠き部32dは、張り出し部材32の通路13側の面の下端を車体10の長手方向視においてL字状に切り欠くことで形成され、ロック機構34と面どうしで当接可能とされる。
レール33は、収納部材31の空洞内の下面に車体10の幅方向に沿って敷設され、車体10の幅方向視において断面視略T字状の溝が形成されることで、張り出し部材32の係合部32bと係合可能とされる。レール33の内部の図示しないボールが転動することで、係合部32b(張り出し部材32)は、レール33に沿って直線的に案内される。
ロック機構34は、収納部材31の空洞の開口側の一端において車体10の床面から上方(図2(c)の上方向)に向けて張り出す板状部材であり、図示しない駆動源によって上下に伸縮可能に形成される。ロック機構34は、張り出し部材32が収納された状態では張り出し部材32の通路13側の面と当接可能な位置に配設される。また、張り出し部材32が通路13側(図2(c)の左側)に張り出した際にロック機構34とロック溝32cとが嵌合することで、張り出し部材32が通路13側に張り出した状態を固定することが可能とされる。
駆動装置35は、張り出し部材32のラック32aと係合するピニオン35aと、そのピニオン35aを駆動させるための駆動源35bとを主に備える。駆動装置35は、収納部材31の通路13側の上部に配設され、ラック32aとピニオン35aとが係合する。
図2(d)及び図2(e)に示すように、駆動源35bの駆動力によってピニオン35aが回転運動することにより、張り出し部材32の車体10の幅方向に沿った張り出し運動、引き込み運動が可能とされる。
この場合、ロック機構34は、張り出し部材32が張り出した状態において、車体10の床面から上方に向けて伸長し、ロック溝32cと嵌合する。これにより、張り出し部材32が通路13側に張り出した状態を固定すると共に、張り出し部材32に対して、張り出し方向、引き込み方向(図2(e)の左右方向)やこじり方向(図2(e)の紙面垂直方向)から荷重が加わっても、その荷重をロック溝32cとロック機構34とによって受けることができる。更に、張り出し部材32は所定の引き残しを収納部材31によって保持される(図2(e)参照)ため、こじり方向からの荷重に対する剛性が向上する。よって、張り出し部材32の耐久性が向上する。
また、張り出し部材32が収納部材31に収納された状態では、ロック機構34が切欠き部32dと当接することで張り出し部材32の張り出し運動を規制するため、乗客が故意に張り出し部材32を張り出させることを抑制でき、張り出し部材32の耐久性が向上する。更に、ロック機構34は、張り出し部材32が張り出した状態におけるロックと収納部材31に収納された状態におけるロックとを兼用するため、部品点数を低減させることができる。
ここで、例えば、車体10の床面に沿って車体10の幅方向に平行な軸によって軸支された張り出し部材32を袖仕切30よりも通路13側、且つ座席20側に配設する構成では、張り出し部材32が回転するためのスペースが必要になる。即ち、座席20側に張り出し部材32を配設すると、張り出し部材32の回転に対して干渉しない位置まで座席20を袖仕切30から遠ざける必要がある。よって、座席20に座る乗客の乗車スペースを縮小しなければならない。一方、張り出し部材32を袖仕切30よりも通路13側、且つ乗降口12側に配設するのでは、乗客の荷重が加わる機会が増えるため、張り出し部材32の耐久性が低下する。
これに対して、本実施形態では、張り出し部材32は、車体10の幅方向と高さ方向とに平行な平面に沿って張り出すので、張り出し部材32が張り出す際のスペースを最小限に抑えることができ、その分、座席20に座る乗客の乗車スペースを大きく確保することができる。更に、張り出し部材32は、収納部材31に収納可能に形成されるので、乗客が触れることや、故意に動作させることを抑制できる。また、張り出し部材32が収納部材31に収納された状態では、袖仕切30に乗客の荷重が加わっても、その荷重を収納部材31によって受けることができる。よって、張り出し部材32に外力が加わることを抑制できるため、張り出し部材32の耐久性が向上する。
また、通路13側に張り出す前の張り出し部材32は、収納部材31の内部に形成される空間に収納されるので、張り出し部材32を配設するためのスペースを別途設ける必要がなく、乗客の乗車スペースを広く確保できる。
次いで、図3及び図4を参照し、座席20がロングシート又はクロスシートの配置に切り換えられた場合の袖仕切30の動作について説明する。図3(a)は、図1(a)のIIIa−IIIa線における鉄道車両1の断面模式図であり、図3(b)は、図3(a)の状態から座席20がクロスシートの配置に切り換えられた状態を示す鉄道車両1の断面模式図であり、図3(c)は、座席20がロングシート及びクロスシートの配置に切り換えられた状態を示す鉄道車両1の内部の透視図である。
図4(a)は、図3(b)の状態から張り出し部材32が張り出した状態を示す鉄道車両1の断面模式図であり、図4(b)は、図4(a)の状態から座席20がロングシートの配置に切り換えられた状態を示す鉄道車両1の断面模式図であり、図4(c)は、図3(c)の状態から張り出し部材32が張り出した状態を示す鉄道車両1の内部の透視図である。尚、図3及び図4では、鉄道車両1の一部が省略して図示される。また、図3(c)及び図4(c)では、座席20がロングシート及びクロスシートの配置に切り換えられた状態が図示される。
図3(a)に示すように、座席20がロングシートの配置に切り換えられた場合には、張り出し部材32が収納部材31に収納された状態で乗降口12とその乗降口12に最も近い座席20とが仕切られる。
収納部材31は、車体10の長手方向視において、側構体11の内壁面から座面22の中央までの長さよりも長く形成される(図3(a)参照)。これにより、乗降口12とその乗降口12に最も近い座席20とが仕切られ、座席20に座る乗客と乗降口12で乗降する乗客とが干渉することが抑制される。また、座席20と乗降口12とを仕切ることにより、座席20に座る乗客のスペースを確保し、乗客の緊張を緩めることができる。
図3(b)及び図3(c)に示すように、図3(a)の状態から座席20がクロスシートの配置に切り換えられた場合、張り出し部材32が張り出さない状態では、乗降口12に最も近く、且つ通路13側に位置する座席20は、車体10の長手方向視において、一部が収納部材31に仕切られずに露出する。
図4(a)に示すように、本実施形態では、座席20がクロスシートの配置に切り換えられた場合、張り出し部材32が通路13側(車体10の幅方向中央側)に張り出すことで、車体10の長手方向視において、座席20の一部が露出することを抑制できる。これにより、乗降口12に最も近く、且つ通路13側に位置する座席20に座る乗客とその他の乗客とが干渉することを抑制できる。また、座席20と乗降口12とを仕切ることにより、座席20に座る乗客のスペースを確保し、乗客の緊張を緩めることができる。
ここで、車体10の長手方向視において、張り出し部材32を座面22の通路13側の一端よりも通路13側に突出して張り出させる場合は、その突出長さを150mm以下とすることが好ましい。これにより、座席20がクロスシートの配置の場合における乗降客の流れを阻害することを抑制できる。また、張り出し部材32を側構体11側に位置させる(即ち、通路13側に突出して張り出させない)ことがより好ましい。これにより、乗降客の流れを確保できる。
また、張り出し部材32は、車体10の長手方向視において、背もたれ21の上部から車体10の床面近くまで仕切ることができる面積で形成される(図4(a)参照)。これにより、乗客の頭部から足元までを、車体10の長手方向視において張り出し部材32によって仕切ることができる。よって、座席20がクロスシートの配置に切り換えられた場合の乗客の利便性が向上する。
また、本実施形態の張り出し部材32よりも面積を縮小させて張り出し部材を形成する場合は、少なくとも座面22を含む高さに張り出すことが可能に形成されることが好ましく、この場合、乗降口12に最も近い座席20に座る乗客の膝元を張り出し部材によって仕切ることができる。よって、座席20をクロスシートの配置に切り換えた場合の乗客の利便性が向上する。
ここで、上述した通り、例えば、車体10の床面に沿って車体10の幅方向に平行な軸によって軸支された張り出し部材32が回転して通路13側に張り出す構成では、張り出し部材32が張り出す際のスペースや耐久性を考慮しなければならないため、張り出し部材32の面積を大きく確保することが困難である。
これに対して、本実施形態では、袖仕切30は、収納部材31の空洞内に敷設されるレール33を備え、張り出し部材32は、そのレール33に沿って通路13側にスライドして張り出すので、張り出し部材32が張り出す際のスペースを考慮する必要がない。更に、背もたれ21の上部から車体10の床面近くまで仕切ることができる面積で張り出し部材32が形成される場合であっても、張り出し部材32の収納時に通路13側に過剰に張り出すことを抑制できる。即ち、収納部材31に収納される張り出し部材32の面積を大きく確保できる。
また、張り出し部材32が回転して張り出す場合に比べ、小さい駆動力で張り出させることができるので、張り出し部材32を駆動させる機構を簡素化できる。
図4(b)に示すように、図4(a)の状態から座席20がロングシートの配置に切り換えられた場合、張り出し部材32が張り出した状態では、乗降口12に最も近い座席20に対し、張り出し部材32が過剰に張り出してしまう。
図3(a)及び図3(c)に示すように、本実施形態では、座席20がロングシートの配置に切り換えられた場合、張り出し部材32が収納部材31に収納されることで、車体10の長手方向視において、座席20に対して張り出し部材32が過剰に張り出すことを抑制でき、乗降客の流れを確保できる。
次いで、図5を参照して、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、張り出し部材32がスライドして通路13側に張り出す場合を説明したが、第2実施形態における張り出し部材232は、車体10の高さ方向に沿った軸に軸支され、その軸周りに回転して通路13側に張り出す構成とされる。尚、上記した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図5(a)は、第2実施形態における袖仕切230の上面図であり、図5(b)は、図5(a)の矢印Vb方向から見た袖仕切230の正面図であり、図5(c)は、図5(a)の状態から張り出し部材232が張り出した状態を示す袖仕切230の上面図であり、図5(d)は、図5(b)の状態から張り出し部材232が張り出した状態を示す袖仕切230の正面図である。
図5(a)及び図5(b)に示すように、第2実施形態における袖仕切230は、乗降口12側の面に凹溝が形成される収納部材231と、その収納部材231の凹溝に収納される張り出し部材232と、収納部材231の凹溝の上下の面から突設される回転軸233と、収納部材231の凹溝の下面における側構体11側の一端に凹設されるロック溝234とを主に備え、側構体11の内壁面から車体10の幅方向(図5の左右方向)に沿って通路13に向けて延設される。
収納部材231は、側構体11の内壁面から車体10の幅方向に沿って延設される板状部材であり、車体10の長手方向視において略矩形状に形成される。収納部材231には車体10の長手方向視において直方体状の凹溝が乗降口12側の面に形成され、その凹溝に張り出し部材232が収容可能とされる。
張り出し部材232は、収容部232aと、その収容部232aに収容される嵌合ピン232bとを主に備える板状部材であり、車体10の長手方向視において略矩形状に形成される。張り出し部材232の板厚は、収納部材231の凹溝の溝深さと略同一に形成され、収納部材231に収納された状態において、収納部材231の乗降口12側の面と面一になるように形成される。張り出し部材232は、その上下の面(図5(b)の上側の面と下側の面)のそれぞれの面における車体10の幅方向一端側が回転軸233によって軸支され、車体の10の高さ方向(図5(b)の上下方向)に沿った軸周りに回転可能に形成される。
収容部232aは、張り出し部材232の下面における回転軸233によって軸支される一端とは反対側の他端と、張り出し部材232の車体10の幅方向で対向する面における回転軸233によって軸支される側とは反対側の面の下端とに開口部を備えて形成される空洞である。
嵌合ピン232bは、張り出し部材232が収納された状態と張り出した状態とにおいて張り出し部材232をロックするためのピンであり、L字状の棒状部材として形成される。嵌合ピン232bは、収容部232aに収容されることにより、収容部232aの開口部から突出すると共に、張り出し部材232の上下方向に変位可能に収容される。即ち、嵌合ピン232bは、手動で上下動させることができる。
回転軸233は、収納部材231に形成される凹溝の上下の面における通路13側の一端から突設され、この回転軸233によって張り出し部材232が軸支される。
ロック溝234は、収納部材231の下面における側構体11側の一端に形成される溝である。ロック溝234は、嵌合ピン232bと嵌合可能に形成される。
また、回転軸233を挟んでロック溝234とは反対側の車体10の床面には、嵌合ピン232bと嵌合可能に形成されるロック溝213が形成される。ロック溝213は、張り出し部材232が張り出した状態において嵌合ピン232bと嵌合可能な位置に凹設される。
図5(c)及び図5(d)に示すように、張り出し部材232は、収納部材231に収納された状態から、ロック溝234と嵌合した嵌合ピン232bを引き上げることにより、回転軸233を軸に回転可能となり、通路13側(車体10の幅方向中央側)に張り出すことが可能とされる。これにより、第1実施形態と同様に、座席20がクロスシートの配置に切り換えられた場合は、乗降口12に最も近い座席20に座る乗客とその他の乗客とが干渉することを抑制し、ロングシートの配置に切り換えられた場合は、乗降客の流れを確保できる。
また、張り出し部材232が袖仕切230の乗降口12側で回転して張り出すため、座席20と袖仕切230との間のスペースを縮小させることができ、その分、座席20に座る乗客の乗車スペースを広く確保できる。
ここで、クロスシートの配置の場合、ロングシートの配置に比べて乗客の収容力が小さいため、座席20がクロスシートの配置に切り換えられるのは、乗客が少ない時間帯であることが想定される。この場合には、張り出し部材232の耐久性を必要以上に考慮する必要はない。しかしながら、張り出し部材232が袖仕切230の乗降口12側に収納される場合、乗客の荷重が加わる機会が増加し、張り出し部材232に対して乗降口12側から荷重が加わると、回転軸233にせん断力が作用する。
これに対して、本実施形態では、張り出し部材232の板厚は、収納部材231の凹溝の溝深さと略同一に形成され、収納部材231に収納された状態において、収納部材231の乗降口12側の面と面一になるように形成される。即ち、収納時において収納部材231と張り出し部材232とが面どうしで当接するので、回転軸233にせん断力が作用することを抑制でき、張り出し部材232の耐久性が向上する。また、収納部材231の乗降口12側の面と面一になるように収納されるので、収納部材231の乗降口12側の面と平行な方向から荷重が加わることも抑制できる。
また、張り出し部材232及び嵌合ピン232bを手動で動作させることができるので、例えば、障害者の乗車時に、乗務員が張り出し部材232を操作して収納部材231に収納させることができる。よって、乗務員が張り出し部材232を適宜操作することにより、乗客の利便性が向上する。
次いで、図6を参照し、第3実施形態について説明する。第1実施形態では、張り出し部材32がスライドして通路13側に張り出す場合を説明したが、第3実施形態における張り出し部材332は、車体10の長手方向に沿った軸に軸支され、その軸周りに回転して通路13側に張り出す構成とされる。尚、上記した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図6(a)は、第3実施形態における袖仕切330の上面図であり、図6(b)は、図6(a)の矢印VIb方向から見た袖仕切330の正面図であり、図6(c)は、図6(a)の状態から張り出し部材332が張り出した状態を示す袖仕切330の上面図であり、図6(d)は、図6(b)の状態から張り出し部材332が張り出した状態を示す袖仕切330の正面図である。
図6(a)および図6(b)に示すように、第3実施形態における袖仕切330は、内部に空洞が形成される収納部材331と、その収納部材331の空洞内に収納される張り出し部材332と、収納部材331の空洞内に架設される回転軸333と、収納部材331の座席20側の面に形成される案内溝334とを主に備え、側構体11の内壁面から車体10の幅方向(図6の左右方向)に沿って通路13に向けて延設される。
収納部材331は、側構体11の内壁面から車体10の幅方向に沿って延設される板状部材であり、車体10の長手方向視において略矩形状に形成される。収納部材331にはその上面および通路13側の面に開口部を備える直方体状の空洞が形成され、その空洞に張り出し部材332が収容可能とされる。
張り出し部材332は、座席20側の面にハンドル332aを備える板状部材である。張り出し部材332は、座席20側の面および乗降口12側の面における車体10の幅方向一端側、且つ張り出し部材332の上下方向における略中央部分で回転軸333によって軸支され、車体の10の長手方向(図6(b)の紙面垂直方向)に沿った軸周りに回転可能に形成される。
また、張り出し部材332は、車体10の長手方向視において略矩形状の3箇所の頂点をR状に切り欠いた形状で形成される。即ち、後述する回転軸333に軸支されて回転可能に形成されると共に、収納部材331に収納された状態および張り出した状態それぞれにおいて、車体10の床面と張り出し部材332の上下の面とが当接可能に形成される。
ハンドル332aは、張り出し部材332の座席20側の面における回転軸333によって軸支される一端側とは反対側の他端、且つ張り出し部材332が張り出した状態(収納された状態)における上下方向略中央部分に形成される。
回転軸333は、収納部材331の空洞内における座席20側の面と乗降口12側の面との間に架設されると共に、収納部材331の通路13側の一端、且つ収納部材331の上下方向における略中央部分に形成され、この回転軸333によって張り出し部材332が軸支される。
案内溝334は、張り出し部材332が回転軸333を中心に回転する際に、ハンドル332aが通るための溝である。案内溝334は、回転軸333を中心に円弧を描いて収納部材331の座席20側の面に切り欠いて形成される。
図6(c)及び図6(d)に示すように、張り出し部材332は、収納部材331に収納された状態から、ハンドル332aが回転軸333を中心に回転されることにより、回転軸333を軸に回転し、通路13側に張り出すことが可能とされる。これにより、第1実施形態と同様に、座席20がクロスシートの配置に切り換えられた場合は、乗降口12に最も近い座席20に座る乗客とその他の乗客とが干渉することを抑制し、ロングシートの配置に切り換えられた場合は、乗降客の流れを確保できる。
また、張り出し部材332が収納された状態および通路13側に張り出した状態において、張り出し部材332の上下の面と車体10の床面とが当接するため、張り出し部材332を固定するための部品を設ける必要がなく、部品点数を低減できる。
次いで、図7を参照し、第4実施形態について説明する。第1実施形態では、1枚の張り出し部材32がスライドして通路13側に張り出す場合を説明したが、第4実施形態における張り出し部材432は、2枚の張り出し部材(第1張り出し部材432a及び第2張り出し部材432c)が2段階にスライドして張り出す構成とされる。尚、上記した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
図7(a)は、第4実施形態における袖仕切430の上面図であり、図7(b)は、図7(a)の矢印VIIb方向から見た袖仕切430の正面図であり、図7(c)は、図7(a)の状態から張り出し部材432が張り出した状態を示す袖仕切430の上面図であり、図7(d)は、図7(b)の状態から張り出し部材432が張り出した状態を示す袖仕切430の正面図である。
図7(a)および図7(b)に示すように、第4実施形態における袖仕切430は、内部に空洞が形成される収納部材431と、その収納部材431の空洞内に収納される張り出し部材432と、収納部材431の空洞内の上下の面に車体10の幅方向に沿って延設されるレール33とを主に備え、側構体11の内壁面から車体10の幅方向(図7の左右方向)に沿って通路13に向けて延設される。
収納部材431は、側構体11の内壁面から車体10の幅方向に沿って延設される板状部材であり、車体10の長手方向視において略矩形状に形成される。収納部材431には通路13側の面に開口部を有する直方体状の空洞が形成され、その空洞内に張り出し部材432が収容可能とされる。また、収納部材431の空洞内の上下の面にはレール33が車体10の幅方向に沿って延設される。
張り出し部材432は、第1張り出し部材432aと、その第1張り出し部材432aの乗降口12側の面に車体10の幅方向に沿って延設されるレール432bと、そのレール432bと係合可能に形成される第2張り出し部材432cと、その第2張り出し部材432cの下端、且つ通路13側の一端に形成される収容部432dと、その収容部432dに収容される嵌合ピン432eとを主に備える。
第1張り出し部材432aは、その上下の面がレール33と係合可能に形成される板状部材であり、車体10の長手方向視において略矩形状に形成される。第1張り出し部材432aの乗降口12側の面には上下に一対のレール432bが車体10の幅方向に沿って延設される。
第2張り出し部材432cは、座席20側の面が一対のレール432bと係合可能に形成され、第1張り出し部材432aに対して相対変位可能に形成される板状部材であり、車体10の長手方向視において略矩形状に形成される。尚、レール432bとの係合は、第1実施形態のレール33と係合部32bとの係合と同様の構成であるので、その説明は省略する。
収容部432dは、第2張り出し部材432cの下面における通路13側の一端と、第2張り出し部材432cの通路13側の面における下側の一端とに開口部を備えて形成される空洞であり、嵌合ピン432eが収容される。尚、嵌合ピン432eは、第2実施形態と同様の構成であるので、その説明は省略する。
また、車体10の床面には、2箇所のロック溝413a,413bが形成され、ロック溝413aは、張り出し部材432が収納された状態において第2張り出し部材432cの嵌合ピン432eと嵌合可能な位置に凹設され、ロック溝413bは、張り出し部材432が張り出した状態において第2張り出し部材432cの嵌合ピン432eと嵌合可能な位置に凹設される。即ち、第2張り出し部材432cは、収納部材431の開口部から所定の幅が突出した状態で収納される(図7(b)参照)。
図7(c)及び図7(d)に示すように、張り出し部材432は、収納部材431に収納された状態から、ロック溝413aと嵌合した嵌合ピン432eを引き上げることにより、通路13側にスライド可能となり、第2張り出し部材432cが第1張り出し部材432aに対して相対変位しつつ、通路13側にスライドし、通路13側(車体10の幅方向中央側)に張り出すことが可能とされる。これにより、第1実施形態と同様に、座席20がクロスシートの配置に切り換えられた場合は、乗降口12に最も近い座席20に座る乗客とその他の乗客とが干渉することを抑制し、ロングシートの配置に切り換えられた場合は、乗降客の流れを確保できる。
また、張り出し部材432を2段階にスライドさせる構成であるので、張り出し部材432を、収納部材431の車体10の幅方向の長さよりも長く張り出させることができる。よって、例えば、ロングシートの配置における側構体11の内壁面から座席20の通路13側の一端までの車体10の幅方向の長さに対し、クロスシートの配置における側構体11の内壁面から座席20の通路13側の一端までの車体10の幅方向の長さが2倍以上の長さで形成される場合であっても、ロングシート及びクロスシートの双方の配置において最適な張り出し代を確保することができる。
また、第2張り出し部材432cは、収納部材431から所定の幅が突出した状態で収納されるので、手動で張り出し部材432を張り出させる場合であっても、その作業性が向上する。
以上、上記実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変形改良が可能であることは容易に推察できるものである。
上記第1実施形態では、鉄道車両1が先頭車両である場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、中間車両であっても良い。
上記第1実施形態では、ラック32aが張り出し部材32の上面に形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、車体10の幅方向に延設される直方体状の凹溝を張り出し部材32の座席20側(乗降口12側)の面に形成し、その凹溝の上面にラック32aを形成する構成でも良い。これにより、ラック32aに埃が溜まることや、乗客がラック32aに触れることを抑制できる。
上記第1実施形態では、係合部32bが張り出し部材32に延設され、レール33が収納部材31の内部に敷設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、係合部32bが収納部材31の内部に敷設され、レール33が張り出し部材32に延設される構成でも良い。
上記第1実施形態では、ロック機構34が、車体10の床面から上方(図2(c)の上方向)に向けて張り出すことで、張り出し部材32がロックされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、駆動源35bに電磁ロックを設ける構成や、収納部材31の内部に車体10の長手方向にデッドボルトが突出する電磁錠を設け、張り出し部材32をロックする構成でも良い。
上記第1実施形態では、ラック32a及びピニオン35aを用いて張り出し部材32をスライドさせる場合を説明し、上記2実施形態から第4実施形態では、手動で張り出し部材232,332,432をスライド又は回転させる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、公知の技術であるボールねじタイプのシリンダ、エアシリンダ、ベルト又はリニアモータよって張り出し部材32,232,332,432をスライド又は回転させる構成でも良い。
特に、第2実施形態では、張り出し部材232が袖仕切230の乗降口12側に収納されるので、乗客の降車が終了した後に上記の公知の技術によって回転させる構成にすることで、張り出し部材232の回転が乗客と干渉することを抑制できる。
上記各実施形態では、張り出し部材32,232,332,432が板状部材で形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、張り出し部材32,232,432の上面側の一部を残し、張り出し部材32,232,432に布で形成されるカーテンや、アコーディオンカーテンを垂下させる構成でも良い。
上記各実施形態では、座席20が電動でロングシート又はクロスシートで配置の切り換えられる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、手動で切り換える構成でも良い。