以下に添付図面を参照して、この発明にかかる電源装置およびプラズマ処理装置の一実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態)
まず、スイッチングレギュレータの共振回路について例を挙げて説明する。図2は、スイッチングレギュレータの共振回路例を示す説明図である。この共振回路は、高電圧で交番される出力電圧(Vout)をトランスの出力インダクタンスLsとLs間に分布または寄生する静電容量Csからなる電圧共振回路である。
大気圧プラズマは、一般的に常圧6KV以上で発生するといわれている。また、大気圧プラズマは、誘電体バリヤ放電、無声放電ともいわれる。大気圧プラズマ2電極間の負荷は、パッシブ素子の静電容量C0でなり、共振回路の負荷容量Cがその合成で成立する回路は、共振定数Ls、Cs、C0でなる。このような共振回路では、電気経路上に強磁場がかかり、共振定数が温度や線間長のずれなどから完全に基本波のみとならず歪の入った出力波形となる。これをフーリエ展開すると高次数に交番され減衰されてゆく電圧に分解される。
ここで共振定数Ls、Csは、磁路が分離された複数個でなり、トランスの合成特性である。個々のトランスの出力インダクタンスは、トランスの数が2個の場合ほぼ1/2・Ls、出力容量(負荷容量除く)ほぼ2・Csとなる。出力電圧は、交番された電圧であり、その値は、数KVないし数十KV、平均出力電力は、数Wないし数十KWの範囲にある。
したがって、出力電圧は、Vout(t)=√2Vout sin(ωt)でなる基本波の場合において、正弦波でなる関数上にある。ここでVoutは、出力電圧値の実効値である。
交番された電圧の波高値を制御するには、その波高値を時間のずれがなく制御するのが望ましい。しかし、現実的には、数十KVとなる交番された高電圧(高低の差が大きい、変化時間が速い)のため波高値での検出は困難となる。さらには、仮に検出した信号を取り出せたとしても、電力変換するスイッチング素子をドライブするまでには少なくとも数msec程度の時間を要する。このため、スイッチング周波数ごとに繰り返される波高値は、少なくとも数msecごとの抑制が脈流ある出力電圧波形となってしまう。
出力電圧が直流のスイッチングレギュレータの場合には、その出力電圧を検出して、スイッチング素子をオン・オフ制御するスイッチングパルスをPWM制御することが可能である。また、出力の平滑回路の電解コンデンサなどによる保持時間があるため、制御の応答性が問題になることもない。
インバータの出力電圧の波高値が変動しないことは使用する機器において、当然のことながら必要である。しかし、インバータ装置の高電圧出力は交流であるために、全波であろうが半波であろうが、その波高値(ピーク電圧値)を一定に制御することは困難であった。
そこには、固定化された負荷があり、それに応じた回路内の時比率、スイッチング周波数、共振周波数、入力電圧など固定した状態では、出力電圧の波高値の変化は、環境変化、構成部品の経年変化のみになることが想定される。また、負荷が温度などで変化したり(温度制御)、または経過する時間で変化したりする場合でも波高値がほぼ一定に制御することが望ましい。また、入力電圧変化や、さらにダイナミックに負荷が変化したとしてもほぼ安定した出力電圧を得られることが望ましい。
上記波高値は、出力電圧の波高値の時間が1点であることや、高低さが大きい場合、素子耐量(電圧、電流)から接続する素子数が増大する。このため、寄生インダクタンスにより制御応答時間の遅延があり、出力電圧波形が繰り返される周波数が高くなればなるほどその遅延の影響が顕著になる。この結果、制御応答が遅れ波高値電圧が降下し過ぎたり上昇し過ぎたりすることになる。最悪の場合は出力電圧の共振周波数ずれが生じ、共振状態の電圧印加時に次のスイッチング周期のオン状態で電流が流れると残電圧分の行き場のないエネルギーが過剰な電流となり、スイッチング素子の電力耐量がオーバーで故障し、トランスが飽和する。
このように、出力が交流であって、スイッチング周波数が数十KHzと高く、電圧の共振を利用した出力電圧が十数KVのように過剰に高いコンバータの場合は、上述した制御の応答性の問題に加えて、出力電圧検出手段や部品の耐圧の問題、共振完了する時間などの課題が生じる。
そのため、このような高電圧インバータ装置では、人手によるつまみ操作で入力供給電圧を設定し、他の要素が変化しないようにして、設定した入力電圧で出力電圧を合わせこむだけで、出力電圧値は常時監視していないのが一般的であった。
図3は、高電圧インバータの構成例を示す回路図である。図3に示す高電圧インバータは、直流電圧または直流成分に脈流が重畳されたVinを、スイッチング素子QによってスイッチッグしてトランスT1,T2の一次側の励磁巻線に励磁電流を流す。そして、そのトランスT1,T2の二次側の出力巻線から交流高電圧の出力電圧Voutを出力する。
図3の高電圧インバータは、電圧を変換するトランスT1,T2を、同一の特性をもつ個別の複数の(図示の例では2個)のトランスT1,T2によって構成したことである。そして、その複数のトランスT1,T2の各励磁巻線を並列に接続して同時に励磁させるようにし、各励磁巻線を直列に接続して、その各出力電圧を積み上げるように加算して出力する。そのため、各励磁巻線の出力電圧の波形の時間軸が同期するようにしている。
図4は、図3の高電圧インバータの動作を示す波形図である。この図4では、高電圧インバータにおけるスイッチング信号Vgs(Q)、FETによるスイッチング素子Qのソース・ドレイン間に流れる電流Id(Q)、出力電圧Voutおよび負荷に流す出力電流Ioの各波形を示している。
スイッチング信号Vgs(Q)は、制御回路(不図示)で発生するパルス幅変調(PWM)された矩形波パルスの信号であり、スイッチング素子Qのゲートに印加される。スイッチング信号Vgs(Q)が、1周期のうちハイ(High)の期間にスイッチング素子Qをオンにし、ロー(Low)の期間はスイッチング素子Qをオフにする。
スイッチング素子Qがオンの期間には電流Id(Q)が流れ、トランスT1,T2の各励磁巻線に同時に励磁電流を流す。この期間にトランスT1,T2にエネルギーを蓄積する。そして、スイッチング素子QがオフになるとトランスT1,T2が蓄えたエネルギーを放出して、トランスT1,T2の各出力巻線に発生する高電圧が加算されて出力電圧Voutとなる。
図3に示した高電圧インバータもフライバック型電圧共振インバータである。したがって、上述したように、スイッチング素子Qがオンの期間にトランスT1,T2の励磁巻線に励磁エネルギーを蓄積し、オフの期間に、出力巻線から交流高電圧の出力電圧Voutを、負荷である例えば放電器の電極間に印加する。なお、上記「交流高電圧」とは正負均等な正弦波交流の高電圧ではなく、トランスT1,T2の励磁電流の断続によって、その出力巻線に発生するフライバックパルスによるパルス状または脈流状の交番波形の高電圧である。
出力電圧Voutは、出力巻線の総合インダクタンスと、総合分布容量および負荷である放電器の等価容量(負荷容量)Cとの合成容量とによる並列共振回路によって発生する。そのため、出力電圧Voutは、トランスT1,T2の励磁巻線と出力巻線の巻数にもよるが、それよりはるかに大きい昇圧比の高電圧になる。
高電圧インバータをこのように構成することによって、トランスT1,T2の励磁巻線に偏磁が生じることがなく、共振トランス(トランスT1,T2)全体として、出力巻線の巻数を多くすることができる。そのため、昇圧比が高い高電圧を連続して安定、しかも安全に得ることができる。
また、前述の特許文献1では、出力電圧値の代わりに出力電流を検出して、それを負帰還してスイッチング素子に対するPWM制御を行うようにしたものであり、定電流制御(制御帯域幅)、最大で数msec程度であった。応答周波数が最大1KHZ、スイッチング周波数200KHZの場合の出力電圧は、スイッチング周波数が、30KHZになると制御特性が、位相余裕、利得余裕がなくなり約半分以下と制御帯域幅が狭くなる。当然のことながら、出力電圧の波高値を監視して、それを制御することはできないので常時変動することになる。
そこで、本実施の形態では、出力が交流でその波高値電圧が十数KVの高電圧インバータ装置において、その波高値電圧がほぼ一定になるように制御できる回路状態を実現する例について以下に説明する。
まず、本実施の形態の電源装置の前提となる各要素特性およびその特性などについて説明する。
トランスを励磁する電流Ipは、Vin(t)=Lp・i(t)/dtにより、ごく短い時間においては、その微分係数となるから、
Ip∝Vin
となる。
上記の関係から、トランスに蓄えられる励磁エネルギーは、使用するトランスの数をたとえば4個とした場合、4個のトランス(1個のトランスの励磁インダクタンスLp)に蓄積される励磁エネルギーは、トランス4個の励磁電流の最終値(Id(Q))で決まり、
ε=1/2・Lp/4・Id(Q)^2 ・・・・・式(1)
となる。
また、スイッチング素子がオンし初めてから、オフするまでの時間をTon時間とすると、ごく小さい時間軸では微分となり励磁巻線の励磁電流の最終値Id(Q)は、
Id(Q)=Vin/Lp・Ton ・・・・・式(2)
となる。
したがって、式(1)に式(2)を代入すると
ε=1/8・Lp・(Vin・Ton/Lp)^2
=(Vin・Ton)^2/8Lp ・・・・・式(3)
となる。これが1周期における4個のトランスに印加するエネルギー量になる。
よって、n個のトランスにおいては、
ε=(Vin・Ton)^2/(2n・Lp) ・・・・・式(4)
となる。
したがって、出力電力は、式(4)にあるトランスに如何にエネルギーを溜め込むかにかかっており、Tonが一定であれば、直角三角形の斜辺の傾きである式(2)のVin/Lpとなる。
このLpは、直流重畳特性NI(N:巻数、I:電流の積)の直線的な部分のみに依存される。また、Vinが、ACになれば、交流の時間ごとの電圧変化にも依存し、DCであれば、電圧偏差に依存される。このように出力電力、電圧を決定しているのは、Ipである。電圧Vin、負荷が固定であれば、Ipは、VinとTonの積に応じた変化が強いられる。
図5は、図3の出力電圧Voutと負荷Cloadに流れる電流とトランスに励磁する電流(Ip)を相対的値で見たもので、それに沿い説明していく。
ファラデーの法則から、磁束密度Bは、印加電圧V(t)の積分値に比例する。このため、下記式が成立する。
φ=B・S=(1/N)V(t)dt
φ:磁束
B:磁束密度
S:鉄心断面積
N:巻数
上記式から積み上げた吐き出し回路のBHループ(磁気ヒステリシス曲線)は、相対的に図5のようになる。実線が、出力(トランスの出力側)の電圧、電流、一点鎖線が入力(トランスの入力側でトランスに励磁エネルギー)を印加する側である。まず、図5の0点でTonすると出力電力に応じて、式(2)にしたがい直線的に電流が増加する。決められたOn Duty(オン時間比率)または、Ton(オン時間)に達すると[1]、Toffの領域にはいる。入力側から見て、電流が0になり、電流が不連続になっているように思われるが、実際は、すぐに出力に電流がながれ[2]、出力電圧Vが頂点まで達すると出力電流が0Aとなる[3]。
共振状態は継続され、電流は負の領域となり[4]に達する。出力電圧が0Vとなると、出力電流がいったん0Aとなるが、出力電圧が共振状態のため、減衰された電圧が継続される。
この減衰分は、出力の消費電力による抵抗成分の量だけになる。その減衰された出力の過渡電圧は、Toffの間継続され、入力側に戻り[5]、[6]、[0]の部分で励磁電流が負の領域となる。この負の領域Bでオンしても励磁電流の向き(正から0)と共振電流(負から0)が逆向きのため相殺されトランスに励磁エネルギーが印加されない(BHの第三象限)。この電流が[0]に戻るまで、逆方向の励磁電流は、トランスに与える励磁エネルギーとしての時間は意味を成さない。
したがって、式(4)は、この期間は役に立たない領域(B)となる。さらにToffが継続すると、その過渡電圧は継続され正の領域のCとなる。その領域でオンすると、トランスの励磁電流は、電圧があるところを短絡することを意味しているため、過剰な電流が流れ過ぎ、その量によりトランス飽和するため、式(2)上から外れる(図6参照)。
出力電圧の過渡電圧、図7ではOV近辺が電圧レンジが異なる(Vds(実線で示す))、図5のC、Eの領域でオンすると、その電圧が短絡する。このため、Id(励磁電流)が過剰の電流となって、リンギング状の電流が繰り返され、トランスに印加する励磁エネルギーをリニアにできない。なお、図7では、励磁電流を一点鎖線、Vdsを実線、出力電圧(オン)を破線で示している。
よって、C、Eの正電圧が発生している期間は、オンできない時間の期間であり、負の期間のB、D、Fは、トランスに励磁エネルギーを貯められない領域となる。特に[5]、[6]、[0]の領域Bは出力電圧を制御する面での阻害条件(この部分は使用できない)となっている。理想状態では共振状態により、無損失のLCが、入出力間でエネルギーのやり取りの往復が収束することなく繰り返されるからである。
図5の細線の一点鎖線で示す部分は、理想状態:減衰がない部分を示している。しかし実際は、放電等により負荷の誘電体損失などによって熱、光、プラズマ、音となる損失になって出力電圧は、徐々に減衰された波となる。
次に、総合的にみると、電流も不連続の様にみえて実際は、図5に示すように相対的にはH=αNI(α:定数、N:巻数、I:Nに流れる電流)となり、連続されたほぼ三角波の連続電流である。このように、共振状態は、エネルギーのやり取りが入出力間(Lp、Cp、Ls、Csなど)で発生する。
このような状態での有効なTonは、[0]、[1]の部分のみであり、消費した電力分だけ、次のスイッチング周期に印加することで十分になる。このとき[0]、[5]、[6]は共振から必然的に発生したものでTonを制御する面では不要なものとなる。100%のエネルギーがAで消費されれば、Bは発生しない。なお、LP、CPは、一次回路の励磁インダクタンス、浮遊容量であり、LS、CSは、二次回路のインダクタンス、負荷容量分含んだ浮遊容量である。
図6において、出力電圧の過渡電圧(OV近辺が図7では電圧レンジが異なるため、Vds(実線)でみた)について注目する。図5のC、Eの領域でオンすると、その電圧が短絡となり、Id(励磁電流)が過剰の電流となって、リンギング状の電流が繰り返されるためトランスに印加する励磁エネルギーをリニアにできない。
図7において、出力電圧の過渡電圧が、図5のCの領域にオンすると、その電圧が短絡となり、過剰の電流とリンギング状の電流が繰り返されるためトランスに印加する励磁エネルギーをリニアにできない。なお、図7において、出力電力を一点鎖線、出力電圧を破線、励磁電流を実線で示している。
また、スイッチング素子のオンによりトランスに励磁するエネルギーの部分は、図5の[0]−[1]までの直角三角形のみになり、これは、BHの第一象限上にある。1周期後には、そのBHの軌跡が、始点((0)、これは、B=0、H=0)にもどる必要がある。なぜなら、B=Br(残留磁束)があると、オン時、ファラデーの法則上では電圧が残っていることを意味しており急峻な電流が流れてしまう。
よって、共振により、第二象限、第三象限を得て完了し、次の周期に移行する。その励磁するときの傾きは、式(2)上にある。BH上は、電圧が共振なのでBの正弦波変化で円の軌跡上を動くが、矩形波であれは、透磁率は、μ=ΔB/ΔH上を動くことになる(ただし、飽和を除く領域)。図5の破線部分がそれにあたる。
さて、本実施の形態では、以上説明してきたことを踏まえ、下記に示す回路構成で上述した不具合の解消を図る。本実施の形態では、商用入力電圧を全波整流した後、またはそれに相当した整流平滑した電圧にて、昇圧、または降圧、または昇降圧(絶縁、非絶縁)することによって生成された電圧を入力源(A)とする。コンバータにおいて、出力電圧のピーク電圧を検出し、その電圧を負帰還した信号によって、入力源(A)の電圧を上下に電圧を変化させることによって、所定の出力電圧が一定になるようにする。すなわち、出力電圧が、低くなったときには、入力源(A)の電圧を上げ、高くなったときには下げるように、負帰還の信号によって、入力源(A)を生成するコンバータの制御信号にいれることによって、交番される出力電圧のピーク電圧を一定になるように制御する構成とする。この具体例については図1において後述する。
上述のピーク電圧を検出する手段についてはいくつか挙げられる。例えば、第三次巻線間電圧を一旦整流に平滑することでその電圧を基準と比較して検出する、または交番された出力電圧を複数の抵抗に分割にて電圧値を検出し、基準電位(筐体など)につながっている分割抵抗に流れる電流値と基準とを比較して検出する、などがある。なお、この場合、出力電圧の状態を設定したい電圧に対してどれくらいずれているのかを検出することができればよい。
ここでまとめると、以下のようになる。すなわち、インバータ(INV)出力の周波数は、前述した共振定数Ls、Cs、C0の並列共振(***振)であるから、この3つの定数で固定される。同時に損失R(出力負荷)は、並列間にあることになるので、その状態で波高値も変化する。また、トランスの励磁エネルギーは、式(4)で決まるから、スイッチング周波数が固定されるとオン時間は、ほぼ固定される。
以上のことから、周期が一定でオン・オフ時間比が変動するPWM(パルス幅変調)制御は難しく、オン時間が一定でオフ時間が変動(周期も変動)するPFM(パルス周波数変調)制御になるのがふさわしい。
大気圧プラズマを紙の表面改質に使用する場合は、通紙するときの速度で、印加する時間でプラズマ印加時間が少なくなる。プラズマ量が少ないからといって、オン時間を延ばし出力電力をあげることで制御にすると、出力電圧のピーク電圧が一定であっても、スイッチング周波数による出力周波数が遅くなるのでプラズマ量は増加しない。つまり、共振の周波数は変わらないが、スイッチング周波数を落とすことで、オン時間を延ばすことになるので、不連続になって、出力の波は変わらないが、波と波の共振の間隔が広がる、という弊害が起きる。
負荷Rが大きくなると(抵抗値で考えると小さい方向)、出力電圧の波高値が低くなるので、その不足分を補うことで、出力電圧を一定にするようにしている。
そこで、本実施の形態の電源装置は、このような状況においても、共振の状態をくずさず、確実に出力電圧を一定にするために式(4)にある入力電圧Vinを制御することでインバータ部分のコンバータによらず定電圧制御を行う構成とする。
すなわち、回路は、前段のコンバータに出力電圧の状態の信号をフィードバックする2段構成とすることで、その信号の状態で入力電圧Vinを決定する。この回路では、共振の弊害がなくなり確実に出力電圧を一定にする。これにより、出力が交流でその波高値電圧が十数KVの高電圧インバータ装置において、その波高値電圧がほぼ一定になるように制御できる回路状態を実現する。
図1は、本実施の形態にかかる電圧共振型インバータの構成例を示す回路図である。この電圧共振型インバータは、大きくは、前段のコンバータに入力電圧生成回路10を配置し、入力電圧生成回路10の出力側に共振回路20を配置した2段構成の回路を有する。また、入力電圧生成回路10には制御回路30が配置されている。制御回路30は発振回路を含み、たとえばIC(Integrated Circuit)によって構成する。共振回路20は、スイッチング素子Q1を駆動する駆動回路21を有し、この駆動回路21は制御回路30によって制御される。制御回路30は、駆動回路21に対してスイッチング素子Q1のスイッチング周波数を固定、かつオン時間固定として、スイッチッグ素子Q1を駆動する制御を行う。
入力電圧生成回路10は、入力電圧Vinを生成する。共振回路20は、入力電圧生成回路10で生成される電圧により容量性の出力負荷とトランスの出力インダクタンスを共振させる。制御回路30は、共振回路20の出力電圧の状態信号(たとえば、ピーク電圧)を入力し、当該状態信号に基づいて入力電圧Vinを制御し、共振回路20の出力電圧の波高値を所定値に制御する。
入力電圧生成回路10は、商用電源(50/60Hz)を直流電圧または直流成分に脈流が重畳されたSELV(安全特別低電圧)以内の入力電圧Vinを入力端子1a,1bから入力する。さらに、入力電圧生成回路10は、上記入力電圧Vinをスイッチング素子Q2によりスイッチングしてトランスT0に供給して、トランスT0により電圧を出力する。
共振回路20は、入力電圧生成回路10から供給される入力電圧Vinを、スイッチング素子Q1によってオン・オフし、トランスT1,T2に励磁エネルギーを印加し、容量性出力負荷とトランスT1,T2の出力インダクタンスを共振させる。すなわち、共振回路20は、上記共振状態の高電圧を出力端子2a,2bを介して負荷に対して出力する。
図1に示す電源回路では、入力電圧Vinに対して出力電圧(INV出力)が比例する関係にある。出力電圧が所定の値より下がった場合は、入力電圧Vinを上げる制御を行なう。図1の入力電圧生成回路10においては、PWM制御ではオン比率を上げ、またはPFM制御ではオン幅の比率のみを上げるように周波数を下げる。一方、出力電圧が所定の値より上がった場合には、入力電圧を下げる制御を行う。
このように高圧インバータ(電圧共振型インバータ)において、その入力電圧Vinを変化させることで出力電圧を一定にするために、出力電圧の状態に基づいて入力電圧Vinを生成するようにコンバータ(入力電圧生成回路10)の制御回路30に負帰還する。
図1では、高電圧のために安全上絶縁型としたオン・オフ回路とした1例を記載した。この回路は、入力電圧Vinを生成するものであるので、回路方式等の特定は必要ない。しかし、商用周波数の入力である場合は、高調波電流の抑制回路機能を備えることが法規制上求められるため必須となる。前段に上述したような機能が入っているなどの場合は、AC電源またはDC電源が供給では、不要となる。それを入力源とする2段のコンバータの構成となる。
上記図1においては、入力電圧Vinを決定する回路の1例として、商用電力をチョッパ回路で直流の出力電圧を出力する構成について示した。また、この電源回路をプラズマ処理装置に利用するには、プラズマ処理装置への出力が制御回路30に入力することで実現する。
したがって、図1の構成では、共振の影響(継続する減衰状態)を回避させる必要がない。このため、回路が簡単容易な構成となる。また、入力電圧Vinを変更するので、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数は固定、かつオン時間固定にすることができる。このようにすると、高圧インバータ部分の制御は、停止(保護)する安全上の機能のみで十分となる。また、表面改質に使用する場合の単位面積あたりのプラズマ印加量は、入力電圧Vinで比例するので、インバータの出力電力を増大させるために周波数を落とす必要もない。なお、表面改質の状況によっては、前段のコンバータの出力は、理想は直流がよいが、直流のみならず、直流に脈流を重畳させたものでもよいため、コンバータの方式、入力段の種類(AC、DC)は何れであってもよい。
上述した本実施の形態にかかる電源装置は、半導体ウエハー接着装置、画像処理機器、塗装、蛍光ランブなどの照明機器、空気清浄機、放電機器、液晶TVのバックライト、除菌などに用いられる。さらに本実施の形態にかかる電源装置は、種々の装置に高電圧を供給する高電圧電源装置に用いられるスイッチングレギュレータ、インバータ等の高電圧インバータ装置によって負荷にプラズマが発生するインバータ回路に利用される。
たとえば、大気圧プラズマは、表面処理の一つの手段として、表面の改質や汚染物の除去等、様々な工業製品に応用されている。樹脂等の接着や印刷、コーティング等を施す場合に、大気圧プラズマにより前処理を行うと、濡れ性を向上させることが可能になる。
本実施の形態の電源装置は、電子写真方式による画像形成装置にも用いられる。たとえば、樹脂トナーが印刷された印刷物に、紫外線硬化型のニスをコーティングしようとすると、樹脂トナーに含まれるワックス成分により、樹脂トナー印刷部分のニスを弾いてしまう場合がある。しかし、大気圧プラズマによる表面処理を行うと、濡れ性が向上するため、ニスコーティングが可能になり、印刷物の付加価値が向上する。その大気圧プラズマを発生させるためには高電圧が必要となり、インバータ装置によって効率よく高電圧をかけ、発生するラジカル種を安定に負荷に供給する必要がある。
一般的に出力電力値が数W程度のものが多く使用されているが、プラズマ発生装置などには、出力電圧が十数KVで電力値が数十W以上の交流出力を持つ高電圧インバータ装置が使用される。ごく一般のスイッチングレギュレータ(ACまたはDC−DCコンバータ)は、電圧変換用トランスの一次側の励磁巻線に直流電圧をスイッチング素子でスイッチングして断続的に印加し、二次側の出力巻線に発生する交流電流を整流及び平滑して直流電圧を出力する。その出力電圧を一定電圧に維持するために、出力電圧を検出してフィードバック電圧を生成し、それによってスイッチング素子のオン時間とオフ時間の比率(デューティ比)を制御するパルス幅変調(PWM)制御を行なっている。
これは、出力電圧が下がったときには、スイッチングパルスのオン幅を広げて出力電力不足を補い、反対に出力電圧が上がったときには、オン幅を狭くして過剰な出力電力を制限することによって、出力電圧を一定に制御するものである。