A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態の駆動装置10を示す説明図である。駆動装置10は、駆動部20と、被駆動部30と、超音波受信部40と、位置検出部50と、を備えている。駆動部20と被駆動部30との配置関係を示すため、図1の紙面の左右方向をX方向、紙面の上下方向をY方向、紙面に垂直方向をZ方向とする。これらの方向は、他の図でも同様である。被駆動部30は、X方向に沿って延びるリニアガイド32に取り付けられて直線状の移動方向Dm(X方向)に沿って移動可能である。駆動部20は被駆動部30を移動させる駆動力を発生する圧電アクチュエーター22を有している。超音波受信部40は、被駆動部30の基準位置、すなわち本例では、移動方向Dmの左側の端部にあり、駆動部20の方向を向くように取り付けられている。
図2A及び図2Bは、圧電アクチュエーター22の一例を示す概略平面図である。図2Aは圧電アクチュエーター22の一方の平面(図1の紙面手前側の平面)を示しており、図2Bは図2Aの一方の平面側から透視した状態で他方の平面を示している。
圧電アクチュエーター22は、図2A及び図2Bに示すように、矩形状の振動板Pdの両面にそれぞれ面対称に設けられた5つの圧電素子PBa1,PBa2,PBb1,PBb2,PLを備えている。5つの圧電素子PBa1,PBa2,PBb1,PBb2,PLは、それぞれ、圧電体と、圧電体を挟持する2つの電極と、で構成されている。5つの圧電素子PBa1,PBa2,PBb1,PBb2,PLのうち、振動板Pdの短手(幅)方向(X方向)の中央にある第1の圧電素子PLは、振動板Pdの長手方向(Y方向)のほぼ全体に亘る長方形の平面形状を有している。他の4つの圧電素子PBa1,PBa2,PBb1,PBb2は、第1の圧電素子PLを挟んで振動板Pdの四隅の位置に配置され、同一の長方形の平面形状を有している。4つの圧電素子PBa1,PBa2,PBb1,PBb2のうち、第1の対角にある一対の第2の圧電素子PBa1,PBa2は圧電体を挟む電極同士が電気的に接続されて一体の圧電素子として機能する。第2の対角にある一対の第3の圧電素子PBb1,PBb2も同様である。
図3A及び図3Bは、圧電アクチュエーター22の動作を示す説明図である。図3Aに示すように、第1の圧電素子PLは、駆動回路から供給される高周波(超音波)の駆動信号に従って振動板Pdの長手方向(Y方向)に沿った縦振動を発生する。図3Bに示すように、第2の圧電素子PBa1,PBa2は、供給される高周波(超音波)の駆動信号に従って振動板Pdの短手方向(X方向)に屈曲する屈曲振動を発生する。第3の圧電素子PBb1,PBb2も同様である。従って、圧電アクチュエーター22は、第1の圧電素子PL、第2の圧電素子PBa1,PBa2、第3の圧電素子PBb1,PBb2によって、XY平面に沿った面内方向での超音波振動を発生する。なお、以下の説明において、第1の圧電素子PL、第2の圧電素子PBa1,PBa2、第3の圧電素子PBb1,PBb2、及び、振動板Pdを、「振動体」とも呼ぶ。
圧電アクチュエーター22には、図2A及び図2Bに示すように、振動板Pdの両側2つの長辺の中央部に、それぞれ固定部Fcが設けられている。圧電アクチュエーター22は、固定部Fcをネジ等によって不図示の固定枠に固定することによって駆動部20内に固定される。
また、圧電アクチュエーター22には、振動板Pdの一方の短辺の中央部に突起部PSが設けられている。圧電アクチュエーター22は、図1に示すように、突起部PSが被駆動部30に接触可能な向きで配置されている。
圧電アクチュエーター22は、上記した縦振動と屈曲振動との組み合わせにより、突起部PSを圧電アクチュエーター22のXY平面に沿った面内方向において楕円の軌道で運動させて被駆動部30を摺動し、これにより発生する駆動力によって被駆動部30を直線状の移動方向Dm(X方向)に移動させる。なお、被駆動部30を駆動する際に圧電素子PBa1,PBa2,PBb1,PBb2,PLに供給される駆動信号の周波数は、振動体の共振周波数あるいはその近傍周波数(以下、単に「共振周波数」と呼ぶ)に設定される。
超音波受信部40は、圧電アクチュエーター22の振動によって圧電アクチュエーター22から発信されて空中を伝播する超音波信号Suを受信する。超音波受信部40には、圧電アクチュエーター22から発信される共振周波数の超音波信号Suを受信可能な受波器が用いられる。
位置検出部50は、制御回路52と、駆動回路54と、超音波検出回路56と、位置演算回路58と、を備えている。制御回路52は駆動回路54の動作を制御する。
駆動回路54は、制御回路52の制御に従って通常の駆動動作のための駆動信号Sdvと、位置検出動作のための位置検出信号Spdを出力可能に構成されている。通常の駆動動作において、駆動回路54は、圧電アクチュエーター22が上記の駆動動作によって被駆動部30を移動させるように高い電圧で大きな振幅の信号を駆動信号Sdvとして出力する。これに対して、位置検出動作においては、駆動信号Sdvの出力を一旦停止して被駆動部30の移動を停止させた状態で、被駆動部30を移動させるまでには至らない程度の低い電圧で小さな振幅の信号を一定の期間においてのみ位置検出信号Spdとして出力する。
超音波検出回路56は、超音波受信部40で受信した超音波信号Suを表す超音波検出信号Srを検出する。位置演算回路58は、超音波検出回路56から出力される超音波検出信号Sr及び駆動回路54から出力される位置基準信号Ssに基づいて、駆動部20の圧電アクチュエーター22と超音波受信部40との相対距離Lr[m]を求める。この位置基準信号Ssは、位置検出信号Spdと等価な信号である。相対距離Lrは下式(1)で表される。
Lr=C・Δt ・・・(1)
ここで、C[m/s]は音速である。Δt[s]は圧電アクチュエーター22から発信された超音波信号Suを超音波受信部40が受信するまでに要した伝播時間である。
位置演算回路58は、圧電アクチュエーター22が超音波信号Suの発信を開始した時間として、位置基準信号Ssの変化開始時間tsを検出するとともに、超音波受信部40が超音波信号Suの受信を開始した時間として、超音波検出信号Srの変化開始時間trを検出し、その差分(tr−ts)を伝播時間Δtとして求める。そして、求めた伝播時間Δtを用いて上記(1)式から相対距離Lrを求める。なお、音速Cは、厳密には、音を伝える媒体、温度、湿度によって変化するので、不図示の温度センサーで検出された温度に応じて補正することが好ましい。
制御回路52は、位置演算回路58で求めた相対距離Lrから駆動部20と被駆動部30との相対位置を求めることができる。そして、制御回路52は、求めた相対的な位置関係に応じて駆動部20の圧電アクチュエーター22を動作させて被駆動部30を移動方向Dmに移動させることにより、駆動部20と被駆動部30との相対位置を制御することができる。
以上説明したように、第1実施形態の駆動装置10では、被駆動部30を駆動する駆動力を出力する駆動源としての圧電アクチュエーター22を超音波信号の送波器として利用することにより、圧電アクチュエーター22と超音波受信部40との間の相対距離Lrを求めることができる。これにより、圧電アクチュエーター22を有する駆動部20と超音波受信部40が取り付けられた被駆動部30との相対位置を求めることができる。すなわち、第1実施形態の駆動装置10は、被駆動部30を駆動する駆動源としての圧電アクチュエーター22を超音波信号の送波器として利用することにより、駆動装置の小型化を図ることが可能である。
なお、第1実施形態の駆動装置10では、1つの圧電アクチュエーター22と1つの超音波受信部40を備える構成を例に説明したが、複数の圧電アクチュエーター22で被駆動部30を駆動する構成とし、複数の圧電アクチュエーター22から発信される超音波信号を1つの超音波受信部40で受信する構成としてもよい。また、複数の圧電アクチュエーター22にそれぞれ対応する複数の超音波受信部40を備える構成とし、各圧電アクチュエーター22から発信される超音波信号を、各圧電アクチュエーター22に対応する各超音波受信部40でそれぞれ受信する構成としてもよい。この場合は、それぞれの圧電アクチュエーター22と対応する超音波受信部40の組み合わせ毎に伝播時間Δtを求めて、それぞれにおいて相対距離Lrを求め、求められた複数の相対距離Lrから、相対距離Lrを決定するようにしてもよい。例えば、求められた複数の相対距離Lrの平均値を相対距離Lrとするようにしてもよい。
また、第1実施形態の駆動装置10では、固定された駆動部20に対して被駆動部30が移動方向Dmに沿って移動する構成を例に説明したが、被駆動部30が固定され、駆動部20が被駆動部30に対して移動方向Dmに沿って移動する構成としてもよく、以下の第2及び第3実施形態においても同様である。
また、上記した圧電アクチュエーター22(図2A,図2B)の構造に限定されるものではなく、圧電素子を用いた種々の圧電アクチュエーターを利用することができ、以下の実施形態においても同様である。
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態の駆動装置10Bを示す説明図である。駆動装置10Bは、第1実施形態の駆動装置10(図1)の被駆動部30に取り付けられていた超音波受信部40の位置に反射部42を設けて、駆動部20に超音波受信部40を設けた点、及び、位置演算回路58を有する位置検出部50を、位置演算回路58Bを有する位置検出部50Bに変更した点、が第1実施形態の駆動装置10と異なっている。駆動装置10Bは、圧電アクチュエーター22から発信され、反射部42で反射された超音波信号Suを駆動部20に設けられた超音波受信部40で受信し、反射部42と圧電アクチュエーター22との間の相対距離Lr[m]を求める。この場合の相対距離Lrは下式(2)で表される。
Lr=(C・Δt−Lc)/2 ・・・(2)
ここで、C[m/s]は音速である。Δt[s]は圧電アクチュエーター22から発信され反射部42で反射された超音波信号Suを超音波受信部40が受信するまでに要した伝播時間である。Lc[m]は駆動部20に配置された圧電アクチュエーター22の位置に対する超音波受信部40の位置の被駆動部30の移動方向Dm(X方向)でのズレ量である。
位置演算回路58は、第1実施形態では、求めた伝播時間Δtを用いて上記(1)式から相対距離Lrを求めるのに対して、第2実施形態では、上記(2)式から相対距離Lrを求めることができる。なお、反射部42で反射する超音波信号の反射角に応じて、上記(2)式から求められる相対距離Lrに誤差が発生する場合がある。この反射角は、伝播時間Δtに応じてほぼ一意に決まる値となる。この誤差を無視できない場合には、あらかじめ伝播時間Δt(及びこれに対応する反射角)に応じた補正値を求めておいて、補正するようにしてもよい。
以上説明したように、第2実施形態の駆動装置10Bにおいても、被駆動部30を駆動する駆動力を出力する駆動源としての圧電アクチュエーター22を超音波信号の送波器として利用することにより、圧電アクチュエーター22と反射部42との間の相対距離Lrを求めることができる。これにより、圧電アクチュエーター22を有する駆動部20と反射部42が取り付けられた被駆動部30との相対位置を求めることができる。すなわち、第2実施形態の駆動装置10Bでも、被駆動部30を駆動する駆動源としての圧電アクチュエーター22を超音波信号の送波器として利用することにより、駆動装置の小型化を図ることが可能である。
なお、第2実施形態の駆動装置10Bは、1つの圧電アクチュエーター22と1つの反射部42と1つの超音波受信部40とを備える構成を例に説明したが、複数の圧電アクチュエーター22で被駆動部30を駆動する構成とし、複数の圧電アクチュエーター22から発信される超音波信号をそれぞれに対応して被駆動部30に設けられた複数の反射部42でそれぞれ反射し、それぞれの圧電アクチュエーター22に対応して設けられた複数の超音波受信部40でそれぞれ受信する構成としてもよい。この場合は、それぞれの圧電アクチュエーター22と対応する反射部42と超音波受信部40の組み合わせ毎に伝播時間Δtを求めて、それぞれにおいて相対距離Lrを求め、求められた複数の相対距離Lrから、最終的な相対距離Lrを決定するようにしてもよい。例えば、求められた複数の相対距離Lrの平均値を最終的な相対距離Lrを決定するようにしてもよい。
C.第3実施形態:
図5は、第3実施形態の駆動装置10Cの位置検出部50Cを示す説明図である。駆動装置10Cは、第1実施形態の駆動装置10(図1)の位置検出部50を位置検出部50Cに変更した点が、第1実施形態の駆動装置10と異なっている。位置検出部50Cは、位置検出部50の駆動回路54が駆動回路54Cに、及び位置演算回路58が位置演算回路58Cに変更されている。
第1実施形態の駆動装置10は、駆動部20の圧電アクチュエーター22による被駆動部30の移動を停止させた状態で、駆動部20の圧電アクチュエーター22と被駆動部30の超音波受信部40との間の相対距離Lrを求める構成であった。これに対して、第3実施形態の駆動装置10Cは、駆動部20の圧電アクチュエーター22による被駆動部30の移動を継続させている状態で、以下で説明するように、駆動部20の圧電アクチュエーター22と被駆動部30の超音波受信部40との間の相対距離Lrを求める構成である。
駆動回路54Cは、通常の駆動動作のための駆動信号Sdvに、短いパルス状の検出波形Sspを重畳した駆動信号Sdwを出力する。この際、圧電アクチュエーター22は、供給された駆動信号Sdwに応じて振動して、被駆動部30を移動させる。この時、圧電アクチュエーター22から駆動信号Sdwに応じて発信され、超音波受信部40で受信された超音波信号Suを表す超音波検出信号Srが超音波検出回路56で検出される。駆動回路54Cは、位置演算回路58Cに対して、駆動信号Sdwと等価な位置基準信号Ssを供給する。
位置演算回路58Cは、駆動回路54Cから出力される位置基準信号Ssに重畳されている検出波形Sspが検出される時間tsから、超音波検出回路56から出力される超音波検出信号Srに重畳されている検出波形Sspが検出される時間trまでの差分(tr−ts)を伝播時間Δtとして求める。そして、求めた伝播時間Δtを用いて上記(1)式から相対距離Lrを求めることができる。
以上説明したように、第3実施形態の駆動装置10Cにおいても、被駆動部30を駆動する駆動力を出力する駆動源としての圧電アクチュエーター22を超音波信号の送波器として利用することにより、圧電アクチュエーター22と超音波受信部40との間の相対距離Lrを求めることができる。これにより、圧電アクチュエーター22を有する駆動部20と超音波受信部40が取り付けられた被駆動部30との相対位置を求めることができる。第3実施形態の駆動装置10Cでも、被駆動部30を駆動する駆動源としての圧電アクチュエーター22を超音波信号の送波器として利用することにより、駆動装置の小型化を図ることが可能である。
第3実施形態の駆動装置10Cは、第1実施形態の駆動装置10の位置検出部50を位置検出部50Cに変更して、駆動部20による被駆動部30の移動動作中において駆動部20と被駆動部30との間の相対位置を求める場合を例に説明したが、第2実施形態の駆動装置10Bの位置検出部50Bを位置検出部50Cと同様に変更してもよい。
また、第3実施形態では、駆動信号Sdvに短いパルス状の検出波形Sspを重畳する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、第1実施形態で説明した位置検出信号Spdを共振周波数とは異なる共振しない周波数の信号とし、駆動信号Sdvに重畳するようにしてもよい。この場合には、位置検出信号Spdの周波数は共振周波数ではないので、圧電アクチュエーター22による被駆動部30の駆動には影響を与えない。この位置検出信号Spdに応じて発信される超音波信号を超音波受信部40で受信することにより伝播時間Δtを求め、求めた伝播時間Δtを用いて上記(1)式あるいは(2)式から相対距離Lrを求めることができる。
なお、第3実施形態では、超音波信号の伝播時間Δtから相対距離Lrを求める構成を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、超音波受信部40で受信する超音波信号の振幅(音量)の大きさに基づいて相対距離Lrを求めることも可能である。また、ドップラー効果を利用して相対的な移動速度を求めることも可能である。
D.第4実施形態:
図6は、第4実施形態の駆動装置10Dを示す説明図である。駆動装置10Dは、駆動部20と、被駆動部30Dと、2つの超音波受信部40a,40bと、位置検出部50Dと、を備えている。被駆動部30Dは、仮想の中心軸CXを中心として回転する回転体(ローター)である。駆動部20の圧電アクチュエーター22は、被駆動部30Dの回転面33上に配置されており、回転面33を摺動することにより発生する駆動力(回転力)によって被駆動部30Dを中心軸CXの回りに回転移動させる。なお、図6には、駆動部20のうち圧電アクチュエーター22のみが示されている。
2つの超音波受信部40a,40bは、被駆動部30Dの外周端部に中心軸CXの方向を向くように取り付けられている。第2の超音波受信部40bは、中心軸CXを中心として第1の超音波受信部40aに対して位相φd[rad]だけずれた位置に配置されている。2つの超音波受信部40a,40bは、それぞれ、圧電アクチュエーター22から発信される超音波信号を受信する。
位置検出部50Dは、制御回路52と、駆動回路54Dと、超音波検出回路56Dと、回転位置演算回路58Dと、を備えている。制御回路52は駆動回路54D及び回転位置演算回路58Dの動作を制御する。駆動回路54Dは、駆動回路54,54C(図1,図5)と同様に、制御回路52からの制御に従って駆動動作に応じた駆動信号を出力する。
超音波検出回路56Dは、第1の超音波受信部40aから出力される第1の超音波検出信号Sra及び第2の超音波受信部40bから出力される第2の超音波検出信号Srbを検出する。回転位置演算回路58Dは、超音波検出回路56Dから出力される超音波検出信号Sra,Srbに基づいて、被駆動部30Dの回転の角度θp[rad]を求める。なお、駆動部20の角度θpは、中心軸CXを中心とする第1の超音波受信部40aの配置方向が、中心軸CXを中心とする圧電アクチュエーター22の配置方向に対してなす角度を示すものとする。また、角度θpは時計回りの回転方向を正方向として説明する。
図7は、第1の超音波受信部40aから出力される第1の超音波検出信号Sraを示す説明図である。図7に示すように、角度θpに応じて第1の超音波検出信号Sraの振幅の第1のエンベロープSeaが変化する。第1のエンベロープSeaは第1の超音波検出信号Sraの強度、すなわち、音量の変化を示している。角度θpが0rad、すなわち、第1の超音波受信部40aの方向が圧電アクチュエーター22の方向と一致する状態で受信する音量が最も大きい。そして、角度θpが0radからπradへ変化するのに応じて受信する音量は小さくなり、角度θpがπrad、すなわち、第1の超音波受信部40aの方向が圧電アクチュエーター22の方向と逆向きの状態で、受信する音量が最も小さくなる。さらに、角度θpがπradから2πrad(=0rad)へ変化するのに応じて受信量は大きくなり、角度θpが2πradで再び受信量は最も大きくなる。第2の超音波受信部40bで受信される第2の超音波検出信号Srbの第2のエンベロープSebも同様である。但し、第2の超音波受信部40bは第1の超音波受信部40aに対して位相φdだけずれた位置に配置されているので、位相φdだけずれた信号の変化となる。なお、位相φdは、第2のエンベロープSeb(図示せず)が第1のエンベロープSeaに対して逆位相とならないように設定される。位相φdは、通常、(m+1)・π/2[rad](mは0以上の整数)に設定され、本例では、π/2[rad]に設定されている。
回転位置演算回路58Dは、被駆動部30Dの角度θpに応じて変化する第1の超音波検出信号Sraの第1のエンベロープSeaの大きさ及び第2の超音波検出信号Srbの第2のエンベロープSebの大きさから、対応する角度θp及び回転方向を求めることができる。例えば、あらかじめ、角度θpとエンベロープSea,Sebの大きさの関係を求めておき、この関係に基づいて、検出したエンベロープSea,Sebの大きさに対応する角度θp及び回転方向を求めることができる。なお、エンベロープSea,Sebは、超音波検出信号Sra,Srbをローパスフィルターでフィルタリングすることによって得ることができる。
制御回路52は、回転位置演算回路58Dから得られる回転の角度θpから被駆動部30の回転位置P(θp)を求めることができる。また、回転の角度θpの変化から回転方向及び回転速度を求めることができる。
なお、第4実施形態の駆動装置10Dでは、被駆動部30Dが駆動部20の圧電アクチュエーター22に対して中心軸CX回りに回転移動する構成を例に説明したが、被駆動部30Dに対して、駆動部20の圧電アクチュエーター22が中心軸CX回りに回転移動する構成とてもよい。この場合には、駆動部20の圧電アクチュエーター22と被駆動部30の超音波受信部40aとの間の相対的な回転の角度θpを求め、相対的な回転位置P(θp)を求めることができる。
被駆動部30Dには、超音波を通しにくい遮蔽部と、超音波を通し易い放音部と設け、受音部が被駆動部30Dの回転面33を挟んで圧電アクチュエーター22と反対側に配置されていてもよい。また放音部は離散的ではなく超音波の音量が連続的に変化する形状であってもよい。さらに、放音部の数量や大きさにより、計測される角度の分解能を向上させることが可能である。
回転面33の中心部に反射部があってよい。反射部の反射面は回転面33に対して傾斜していたり、または離散的に凹凸があってもよい。
以上説明したように、第4実施形態の駆動装置10Dでは、被駆動部30Dを駆動する駆動力を出力する駆動源としての圧電アクチュエーター22を超音波信号の送波器として利用することにより、圧電アクチュエーター22を有する駆動部20と超音波受信部40a,40bを有する被駆動部30Dとの間の相対的な回転の角度θpを求めることができる。これにより、圧電アクチュエーター22を有する駆動部20と超音波受信部40a,40bを有する被駆動部30Dとの相対的な回転位置P(θp)を求めることができる。すなわち、第4実施形態の駆動装置10Dは、被駆動部30Dを駆動する駆動源としての圧電アクチュエーター22を超音波信号の送波器として利用することにより、駆動装置の小型化を図ることが可能である。
E.第5実施形態:
図8は、第5実施形態の駆動装置10Eの一部を示す説明図である。駆動装置10Eは、第4実施形態の駆動装置10D(図6)に対して、駆動部20Eの複数の圧電アクチュエーター22a〜22jを、被駆動部30Dの回転面33上に周方向に沿って中心軸CX回りに一定の配置角度φpで配置したものである。この例ではφp=(π/5)radである。駆動装置10Eの位置検出部は、第4実施形態の駆動装置10Dと同様であり、図示を省略している。駆動装置10Eは、複数の圧電アクチュエーター22a〜22jが同時に動作することにより、大きな駆動力で被駆動部30Dを回転移動させる。
図9は、第1の超音波受信部40aから出力される第1の超音波検出信号Sraを示す説明図である。図9に示すように、角度θpに応じて第1の超音波検出信号Sraの第1のエンベロープSeaが変化する。但し、本実施形態の場合には、上記したように、10個の圧電アクチュエーター22a〜22jが一定の配置角度φp(=π/5rad)で配置されているので、第4実施形態の場合(図6)とは異なり、10個の圧電アクチュエーター22a〜22jの超音波信号が重畳される。このため、第1の超音波検出信号Sraの大きさ(音量)の変化を示す第1のエンベロープSeaは、角度θpが配置角度φp変化する周期で最大と最小を繰り返す。第2の超音波検出信号Srbの第2のエンベロープSebも同様である。但し、本例では、第2の超音波受信部40bの第1の超音波受信部40aに対する配置の位相φdは、2つの超音波受信部40a,40bの緩衝を緩和するため、(φp+φp/4)[rad]に設定されている。
第5実施形態においても、回転位置演算回路58D(図6)は、被駆動部30Dの角度θpに応じて変化する第1の超音波検出信号Sraの第1のエンベロープSeaの大きさ及び第2の超音波検出信号Srbの第2のエンベロープSebの大きさから、角度θp及び回転方向を求めることができる。
ただし、第1のエンベロープSeaは、角度θpが0rad〜2πradに変化するまでの間に配置角度φp(=π/5rad)の単位で周期変化を繰り返すので、いずれの周期の最大値が、角度θpが0radである回転位置P(θp)=P(0)に対応するのか特定することはできない。そこで、図8に示すように、第1の圧電アクチュエーター22aの位置を破線の位置よりも外周方向にずらして、他の圧電アクチュエーター22b〜22jに比べて超音波受信部40a,40bに近くなるように配置している。これにより、図9に示すように、超音波受信部40a,40bが第1の圧電アクチュエーター22aに近付く場合に受信する超音波信号の強度(音量)は、他の圧電アクチュエーター22b〜22jに近付く場合に比べて大きくなり、第1のエンベロープSea及び第2のエンベロープSebは大きくなる。従って、他の圧電アクチュエーター22b〜22jにより発生するエンベロープ(音量)のピークよりも大きくなったピーク値を検出することにより、角度θpが0rad、すなわち、第1の圧電アクチュエーター22aが配置された方向に一致する特定位置を検出することができる。
第5実施形態においても、被駆動部30Dに対して、駆動部20Eの複数の圧電アクチュエーター22a〜22jが中心軸CX回りに回転移動する構成とてもよい。この場合には、駆動部20Eの第1の圧電アクチュエーター22aと被駆動部30Dの超音波受信部40aとの間の相対的な回転の角度θpを求め、相対的な回転位置P(θp)を求めることができる。
以上説明したように、第5実施形態の駆動装置10Eも、被駆動部30Dを駆動する駆動力を出力する駆動源としての複数の圧電アクチュエーター22a〜22jを超音波信号の送波器として利用することにより、駆動部20Eの第1の圧電アクチュエーター22aと超音波受信部40aを有する被駆動部30Dとの間の相対的な回転の角度θpを求めることができる。これにより、複数の圧電アクチュエーター22a〜22jを有する駆動部20Eと超音波受信部40a,40bを有する被駆動部30Dとの相対的な回転位置P(θp)を求めることができる。すなわち、第5実施形態の駆動装置10Eは、被駆動部30Dを駆動する駆動源としての複数の圧電アクチュエーター22a〜22jを超音波信号の送波器として利用することにより、駆動装置の小型化を図ることが可能である。
なお、第5実施形態では、10個の圧電アクチュエーター22a〜22jを用いた場合を例に説明しているが、圧電アクチュエーター22の個数に限定はなく、複数の圧電アクチュエーター22を用いた駆動装置とすることができる。
F.圧電アクチュエーターの他の実施形態:
第4実施形態及び第5実施形態では、圧電アクチュエーター22が被駆動部30Dを回転移動させている際に圧電アクチュエーター22から発信される超音波信号を超音波受信部40a,40bで受信している。すなわち、圧電アクチュエーター22は図3A,図3Bを用いて説明したように、圧電アクチュエーター22の面内方向での縦振動及び屈曲振動により発生する超音波信号である。圧電アクチュエーター22と超音波受信部40a,40bは、図6,図8に示すように、中心軸CXに対して圧電アクチュエーター22よりも外周側に配置されている。従って、圧電アクチュエーター22の面内方向での振動による超音波信号よりも、これに交わる面外方向を向く振動による超音波信号のほうが受信感度の点で好ましい。そこで、以下に示すような面外方向を向く振動を発生させることができる圧電アクチュエーターを用いるようにしてもよい。
図10A及び図10Bは、面外方向を向く振動による超音波信号を発生可能な圧電アクチュエーター22Vの一例を示す概略平面図である。図10Cは、圧電アクチュエーター22Vの面外方向の振動動作を示す説明図である。
図10A及び図10Bに示すように、圧電アクチュエーター22Vは、圧電アクチュエーター22(図2A,図2B)と同様の、矩形状の振動板Pdの両面にそれぞれ面対称に設けられた5つの圧電素子PBa1,PBa2,PBb1,PBb2,PLに加えて、一方の面にのみ、第1の圧電素子PLの長手方向(Y方向)の端部に、面外振動用の圧電素子Pvを備えている。
図10Cに示すように、面外振動用の圧電素子Pvは、供給される高周波(超音波)の信号に従って第1の圧電素子PLと同様に振動板Pdの長手方向(Y方向)に沿って縦振動を発生する。この際、面外振動用の圧電素子Pvは一方の面(図10A)にしか設けられていないので、反対側の面(図10B)では縦振動が発生しない。これにより、圧電アクチュエーター22Vは、面外振動用の圧電素子Pvの縦振動に従って面外方向(Z方向)の振動を発生させることができる。なお、面外振動用の圧電素子Pvに供給する信号は、共振周波数とは異なる共振しない周波数の信号とすることが好ましい。この場合、共振周波数ではないので、圧電アクチュエーター22Vによる被駆動部30Dの駆動には影響を与えずに、面外方向の振動を発生させることができる。ただし、駆動信号と同じ周波数としてもよいが、その場合には、被駆動部30Dを移動させるまでには至らない程度の大きさの振動に対応する低い電圧で小さな振幅の信号とすることが好ましい。
なお、面外方向の振動を発生する手段として、面外振動用の圧電素子Pvが設けられた圧電アクチュエーター22Vについて説明したが、図2A及び図2Bに示した圧電アクチュエーター22においても面外方向の振動を発生させることができる。例えば、圧電アクチュエーター22の両側の面に設けられた圧電素子には、通常同じ駆動信号を供給するが、一方の面と他方の面で異なった大きさの駆動信号を供給すればよい。この場合、それぞれの面の振動の大きさに偏りが生ずることになり、この結果、面外方向の振動を発生させることができる。
G.駆動装置を用いたロボットの実施形態:
図11は、上述の駆動装置10を利用したロボット2000の一例を示す説明図である。ロボット2000は、アーム2100と、アーム2100の先端に取り付けられるエンドエフェクターとしてのロボットハンド3000と、を備えている。
アーム2100(「腕部」とも呼ぶ)は、複数本のリンク部2012(「リンク部材」とも呼ぶ)と、それらリンク部2012の間を回動又は屈曲可能な状態で接続する複数の関節部2020と、基台2010と、を有している。それぞれの関節部2020には、各回動軸X1〜X6についてそれぞれ駆動装置が設けられており、関節部2020を各回動軸X1〜X6の周りに任意の角度さけ回動又は屈曲させることが可能である。なお、図11には、回動軸X5に対して上述した駆動装置10E(図8)が設けられている例が示されている。アーム2100の先端には、ロボットハンド3000が接続されている。ロボットハンド3000は、一対の把持部3003を備えている。ロボットハンド3000にも駆動装置10(不図示)が内蔵されており、駆動装置10を用いて把持部3003を開閉して物を把持することが可能である。
図12は、図11に示したロボット2000の手首部分の説明図である。手首の関節部2020は、手首回動部2022を挟持しており、手首回動部2022に手首のリンク部2012が、手首回動部2022の回動軸X6周りに回動可能に取り付けられている。手首回動部2022は、上述した駆動装置10E(図8)の駆動部20Eの複数の圧電アクチュエーター22を備えており、手首のリンク部2012には駆動装置10Eの被駆動部30Dを備えている。駆動装置10Eは、手首のリンク部2012及びロボットハンド3000を回動軸X6周りに回動させる。ロボットハンド3000には、複数本の把持部3003が立設されている。把持部3003の基端部はロボットハンド3000内で移動可能となっており、この把持部3003の根元の部分に駆動装置10(図1)の駆動部20の圧電アクチュエーター22が搭載されている。把持部3003の基端部が駆動装置10の被駆動部30に相当する。駆動装置10を動作させることで、把持部3003を移動させて対象物を把持することができる。
以上説明したように、本実施形態のロボット2000は、上記実施形態の駆動装置10や駆動装置10Eを用いて、装置の小型化や軽量化を図ることができる。なお、ロボットとしては、単腕のロボットに限らず、腕の数が2以上の多腕ロボットにも上述した実施形態の駆動装置を適用可能である。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。