JP2017079980A - シートの製造方法 - Google Patents

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Yoshifumi Okano
圭央 岡野
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Abstract

【課題】薬液を加圧したり、モールドに貫通孔を開けて吸引したりすることなくして薬液を針状凹部に充填でき、且つモールドの捲れ上がりのないシートの製造方法を提供する。【解決手段】ノズル34のリップ面32の上流側に薬液22を吐出する吐出口42を設け、下流側に針状凹部15内の空気を吸引する吸引口43を設け、ノズル34をモールド13表面に押し付けた状態で吸引口43と大気とを連通する吸引口大気連通構造44を有し、薬液充填工程では、吸引口43が針状凹部15上に位置するようにノズル34を移動させて針状凹部15内の空気を吸引し、針状凹部15と吐出口42とを連通させることにより、薬液22を針状凹部15内に充填する工程と、を順に行う。【選択図】図12A

Description

本発明は、針状凸部を有するシートの製造方法に関する。
針状凸部を有するシートの一例として、近年、薬剤を含有する複数の針状凸部(微小針又はマイクロニードルとも称する。)を有する経皮吸収シートが、薬剤を皮膚内に送達するために用いられている。一般的には、経皮吸収シートを皮膚に押し付けて、針状凸部を皮膚内に挿入することにより、針状凸部の薬剤が皮膚内に送達される。
このような経皮吸収シートの製造に対して、種々の提案がなされている。例えば、特許文献1には、液供給装置から薬剤を含む溶解液(薬液)をモールドに供給し、針状凹部の上に位置調整されたノズルをモールドの表面に所望の押し付け力で押し付けて接触させた状態で、1つ以上の針状凹部に薬液を充填する充填工程と、ノズルをモールドの表面に接触させた状態で、ノズルをモールドに対して相対的に移動させる移動工程と、を繰り返すことで、配列された針状凹部に薬液を充填する。これにより、ノズルをモールドの表面に押し付けて、ノズルから針状凹部に必要な溶解液量だけ吐出することで、針状凹部に薬液を効率良く充填することができる。この結果、薬剤を針状凸部に集中させることができ、しかも高い生産効率で経皮吸収シートを製造できるとされている。
また、経皮吸収シートの製造における針状凹部への薬液の充填ではないが、基板に設けられた微細な非貫通孔にペーストを充填する充填装置として特許文献2がある。
特許文献2には、供給口が形成されるとともにペースト供給管に接続されたペースト供給部と、供給口に隣接して排気口が形成されるとともに排気管に接続された排気部とを備えたペースト充填装置によって、基板に形成された非貫通孔の内部の気体を排気口から排気して真空状態にする排気工程と、真空状態の非貫通孔にペーストを加圧しながら加圧充填する充填工程を行うことが開示されている。
WO2014/077242A1 特開2003−37360号公報
しかしながら、経皮吸収シートを製造するためのモールドに形成されている針状凹部は一般的に、薬液が充填される凹部入口が微細(例えば500μm程度)の逆円錐状又は逆四角錐状である。
したがって、特許文献1は、薬液を加圧して針状凹部に充填する加圧充填か、又はモールドの針状凹部先端に貫通孔を開けて貫通孔を介して吸引することで薬液を針状凹部に充填する吸引充填かの少なくとも一方を行うが、次の問題がある。
(加圧充填の問題)
ノズル先端部をモールドの表面に押し付けた状態で薬液を加圧して針状凹部に充填する加圧充填は、ノズルとモールドの表面との接触部分から薬液が漏れ出し易く高価な薬剤を含む薬液が針状凹部以外の表面平坦部やノズル先端周面に付着し易い。
(針状凹部先端の貫通孔の問題)
モールドの針状凹部先端に貫通孔を開けて貫通孔を介して吸引することで薬液を針状凹部に充填する吸引充填は、モールドの貫通孔の部分が、製造される経皮吸収シートの針状凸部の先端となる。これにより、モールドの針状凹部先端に貫通孔を開けると、針状凸部の先端がシャープ(尖鋭)にならずに皮膚内に挿入されにくくなる。さらには、複数の針状凹部に形成する貫通孔の孔径にバラツキがあると、経皮吸収シートの針状凸部の先端形状にバラツキが生じる。
また、供給口(又は吐出口)及び排気口(又は吸引口)を備えた特許文献2のノズルを、経皮吸収シートを製造に適用した場合には次の問題がある。
(モールドの捲れ上がりの問題)
モールドは材質としてシリコーン等の弾性体や薄い金属板を使用することが多く、ノズル先端部をモールドの表面に押し付けた状態で吸引口に吸引力を与えると、モールドの表面が吸引口に強く吸い付いてしまう。これにより、モールドが捲れ上がってノズルに対する針状凹部位置がズレ易くなる。この結果、吐出口から針状凹部に薬液を充填する際の充填精度が悪くなる。この問題は特に、モールドがシリコーン等の弾性体の場合に生じ易い。
そして、上記した加圧充填の問題、針状凹部先端の貫通孔の問題、及びモールドの捲れ上がりの問題は、経皮吸収シートの製造に限らず、針状凸部を有するシートの製造に共通する問題である。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、液を加圧したり、モールドに貫通孔を開けて吸引したりすることなくして液を針状凹部に充填でき、しかもモールドが吸引によって捲れ上がってノズルに対する針状凹部が位置ズレして充填精度が悪化したりすることがないシートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様によると、針状凸部を有するシートの製造方法において、針状凹部を有するモールドと、針状凹部に液を充填するノズルを有する液供給装置を備えた液充填装置と、を準備する装置準備工程と、液供給装置から液をモールドに供給し、ノズルをモールドの表面に押し付けて接触させた状態で、1つ以上の針状凹部に液を充填する動作と、ノズルとモールドの表面とを接触させた状態で、ノズルをモールドに対して相対的に移動させる動作と、を有し、針状凹部に液を充填する液充填工程と、を備え、ノズルは、ノズル先端部にモールドの表面に対向して形成されたリップ面と、該リップ面のノズル移動方向から見た下流側に形成され液を吐出するスリット状の吐出口と、上流側に形成され針状凹部内の空気を吸引する吸引口と、ノズルをモールドの表面に押し付けた状態で吸引口と大気とを連通する吸引口大気連通構造とを有し、液充填工程では、吸引口が針状凹部上に位置するようにノズルを移動させて針状凹部内の空気を吸引する吸引工程と、吐出口が針状凹部上に位置するようにノズルを移動させて液を針状凹部内に充填する充填工程と、を順に行う。
ここで、液充填工程は、ノズルを相対的に連続移動しながら吸引工程と充填工程とを行う態様と、ノズルの相対的な移動中に針状凹部の上でノズルを一旦停止して吸引工程を行い再度相対的に移動して充填工程を行う間欠移動の態様との両方を含む。ただし、いずれの場合も、ノズル先端部のリップ面はモールドの表面に接触した状態を有している。
また、ノズルをモールドに対して相対的に移動させるとは、モールドを固定してノズルを移動させる場合と、ノズルを固定してモールドを移動させる場合の両方を含む。
本発明の別態様によれば、リップ面は、吸引口よりも上流側の上流側リップ面と、吐出口よりも下流側の下流側リップ面と、吸引口と吐出口との間の中間リップ面とで構成され、吸引口大気連通構造は、上流側リップ面よりも中間リップ面をモールド側に突出させて段差をつけることによって、ノズルをモールドの表面に押し付けたときに上流側リップ面とモールドの表面との間に形成される隙間である。
ここで、ノズルと針状凹部との相対的な移動で見たときに、上流側とは充填する針状凹部とノズルとが近づく方向の側を言い、下流側とは、充填した針状凹部とノズルとが離れていく方向の側を言うことにする。
本発明の別態様によれば、吸引口大気連通構造は、吸引口のノズル幅方向端部からノズルの幅方向側面に貫通する吸引口貫通孔であることが好ましい。
本発明の別態様によれば、液の粘度は10Pa・s以下であることが好ましい。液の粘度は1Pa・s以下であることがさらに好ましい。
本発明の別態様によれば、シートは、薬剤を含む針状凸部を有する経皮吸収シートであることが好ましい。
本発明のシートの製造方法によれば、液を加圧したり、モールドに貫通孔を開けて吸引したりすることなくして液を針状凹部に充填でき、しかもモールドが吸引によって捲れ上がってノズルに対する針状凹部が位置ズレして充填精度が悪化したりすることがない。
針状凸部を有する経皮吸収シートの一部拡大図 別の形状の針状凸部を有する経皮吸収シートの一部拡大図 図1,2に示す経皮吸収シートの針状凸部の縦断面図 経皮吸収シートの全体斜視図 モールドの製造方法の工程図 液充填装置の概略構成図 ノズルを下方から見た斜視図 ノズルの縦断面図 吸引口大気連通構造の一態様である吸引口貫通孔を説明する部分斜視図 経皮吸収シートの製造方法のフロー図 薬液充填工程を開始する前の斜視図 薬液充填工程における吸引工程の説明図 薬液充填工程におけるノズル移動の説明図 薬液乾燥工程における充填工程の説明図 薬液乾燥工程、基材液塗布工程、基材液乾燥工程の工程図 剥離工程の説明図 別の剥離工程を示す説明図 原版の平面図及び側面図 実施例の試験Aの結果を示す表図
以下、添付図面にしたがって本発明のシートの製造方法の好ましい実施の形態について説明する。
本発明のシートの製造方法は、針状凸部を有するシートの製造全てに適用できるが、本実施の形態では、シートの一例として、薬剤を含む針状凸部を有する経皮吸収シートの場合で以下に説明する。
本発明は以下の好ましい実施の形態により説明される。本発明の範囲を逸脱することなく、多くの手法により変更を行うことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ 〜 ”を用いて表す場合は、“ 〜 ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
先ず、本実施の形態のシートの製造方法により製造される経皮吸収シートの一例について説明する。
図1、図2は、経皮吸収シート100の一例を示す一部拡大図であり、針状凸部110(微小針、マイクロニードルとも称する)を示している。
経皮吸収シート100は、皮膚に貼付することにより、皮膚内に薬剤を送達する。図1に示すように、経皮吸収シート100は、先細り形状のニードル部112と、ニードル部112と接続された錐台部114と、錐台部114と接続されたシート状のシート部116とを有している。先細り形状のニードル部112と錐台部114とにより針状凸部110が構成される。シート状とは、面積の広い2つの対向する主面(第1主面と第2主面)に対して厚みの薄い、全体として平たい形状を意味し、主面が完全に平坦である必要はない。
シート部116の表面には複数個の錐台部114が形成される(図1においては一つの錐台部114のみ表示)。錐台部114は、2つの底面を有し、錐体面で囲まれた立体構造を有している。錐台部114の2つの底面のうち面積の広い底面(下底)がシート部116と接続される。錐台部114の2つの底面のうち面積の狭い底面(上底)がニードル部112と接続される。つまり、錐台部114の2つの底面のうち、シート部116と離れる方向にある底面の面積が小さくなっている。
ニードル部112は先細り形状を有しており、ニードル部112は、面積の広い底面と、底面から離れた先端が最も狭い面積となる形状を有している。ニードル部112の面積の広い底面が、錐台部114の面積の狭い底面と接続されているので、ニードル部112は錐台部114と離れる方向に先細り形状となる。したがって、ニードル部112は錐台部114とで構成される針状凸部110は、全体としてシート部116から先端に向けて先細り形状を有している。シート部116の上には4〜2500本の複数の針状凸部110が設けられる。但し、この本数に限定されない。
図1において、錐台部114は円錐台の形状を有し、ニードル部112は円錐の形状を有している。ニードル部112の皮膚への挿入の程度に応じて、ニードル部112の先端の形状を、0.01μm以上50μm以下の曲率半径の曲面や、平坦面等に適宜変更することができる。
図2は、別の形状を有する針状凸部110を示している。図2においては、錐台部114は四角錐台の形状を有し、ニードル部112は四角錐の形状を有している。
図3は、図1、図2に示される経皮吸収シート100の断面図である。図3に示されるように、経皮吸収シート100は薬剤を含む第1層120と、薬剤を含まない第2層122とにより構成されている。
ここで、薬剤を含むとは、体表に穿刺した際に薬効を発揮する量の薬剤を含むことを意味する。また、薬剤を含まないとは、薬効を発揮する量の薬剤を含んでいないことを意味し、薬剤の量の範囲が、全く含まない0から薬効を発揮しない量までの範囲を含んでいる。薬剤を含む第1層120は針状凸部110の先端(ニードル部112の先端)に形成されている。第1層120を針状凸部110の先端に形成することにより、皮膚内に効率よく薬剤を送達することができる。以下、「所定量の薬剤を含む」を「薬剤を含む」と、「所定量の薬剤を含まない」を「薬剤を含まない」と必要に応じて称する場合がある。
ニードル部112の第1層120を除く部分には、薬剤を含まない第2層122が形成されている。錐台部114は第2層122により構成されている。シート部116は第2層122により構成されている。すなわちシート部116と第2層122とは同一材料で構成されている。ニードル部112、錐台部114、及びシート部116を構成する第1層120、及び第2層122の配分は、適宜設定することができる。
シート部116の厚みTは、好ましくは10μm〜2000μmの範囲であり、より好ましくは10μm〜1000μmの範囲である。錐台部114とシート部116との接する底面(下底)の幅W1は、好ましくは100μm〜1500μmの範囲であり、より好ましくは100μm〜1000μmの範囲である。錐台部114とニードル部112との接する底面(上底)の幅W2は、好ましくは100μm〜1500μmの範囲であり、より好ましくは100μm〜1000μmの範囲である。幅W1と幅W2は、上記の数値範囲内で、W1>W2を満たすことが好ましい。
針状凸部110の高さHは、好ましくは100μm〜2000μmの範囲であり、より好ましくは200μm〜1500μmの範囲である。また、ニードル部112の高さH1と錐台部114の高さH2との比であるH1/H2は、好ましくは1〜10の範囲であり、より好ましくは1.5〜8の範囲である。また、錐台部114の高さH2は10μm〜1000μmの範囲であることが好ましい。
錐台部114の傾斜面とシート部116の表面に平行な面とのなす角度αは、好ましくは10°〜60°の範囲であり、より好ましくは20°〜50°の範囲である。また、ニードル部112の傾斜面と錐台部114の上底に平行な面とのなす角度βは、好ましくは45°〜85°の範囲であり、より好ましくは60°〜80°の範囲である。
角度βは角度αと等しくても良いが、角度βは角度α以上であることが好ましい。針状凸部110を皮膚に穿刺しやすくなるからである。
本実施の形態では、図1、2に示す針状凸部110を有する経皮吸収シート100を示したが、経皮吸収シート100は、これらの形状に限定されない。
図4は、経皮吸収シートの全体斜視図である。図4に示すように、経皮吸収シート100は、第1主面と第2主面とを有するシート部116と、シート部116の第1主面の上に配置された複数の針状凸部110とで構成されている。シート部116は、端部116Cを有し、複数の針状凸部110が配置される領域である中心部116Aと、中心部116Aから端部116Cまでの領域である外縁部116Bとにより構成されている。シート部116は、端部116Cにより平面視における形状が画定される。図4のシート部116は平面視で矩形であるが、多角形、円形、楕円形等でも良い。複数の針状凸部110を配置できる中心部116A、及び外縁部116Bを備えることができればシート部116の形状は限定されない。本実施形態の経皮吸収シート100は、外縁部116Bにおいて厚み部分116Dを有している。厚み部分116Dはシート部116の外縁部116Bの中で膜厚の厚い部分である。
針状凸部110はシート部116から突出している部分であり、シート部116の第1主面に接する仮想の補助面を規定することで、針状凸部110を特定することができる。
次に、本発明の実施の形態の経皮吸収シートの製造方法において、薬液充填工程を実施するために使用されるモールド13とモールド13に薬液を充填する液充填装置48の好ましい態様を説明する。
[モールド]
図5は、モールド(型)13の作製を示す工程図である。
図5(A)に示すように、最初に、経皮吸収シートを製造するためのモールド13を作製するための原版を作製する。
この原版11の作製方法は2種類あり、1番目の方法は、Si基板上にフォトレジストを塗布した後、露光、現像を行う。そして、RIE(リアクティブイオンエッチング:Reactive Ion Etching)等のエッチングを行うことにより、原版11の表面に、経皮吸収シートの針状凸部110と同形状である複数の凸部12をアレイ状に作製する。尚、原版11の表面に凸部12を形成するためにRIE等のエッチングを行う際には、Si基板を回転させながら斜め方向からのエッチングを行うことにより、凸部12を形成することが可能である。
2番目の方法は、ステンレス、アルミニウム合金、Ni等の金属基板に、ダイヤモンドバイト等の切削工具を用いた加工により、原版11の表面に複数の凸部12をアレイ状に作製する方法がある。
次に、図5(B)に示すように、原版11を利用してモールド13を作製する。通常のモールド13の作製には、Ni電鋳などによる方法が用いられる。原版11は、先端が鋭角な円錐の形状又は角錐の形状(例えば四角錐)の形状の凸部12を有しているため、モールド13に形状が正確に転写され、モールド13を原版11から剥離することができる。しかも安価に製造することが可能な4つの方法が考えられる。
1番目の方法は、原版11にPDMS(polydimethylsiloxane:ポリジメチルシロキサン、例えば、ダウコーニング社製シルガード184)に硬化剤を添加したシリコーン樹脂を流し込み、100℃で加熱処理し硬化した後に、原版11からモールド13を剥離する方法である。2番目の方法は、紫外線を照射することにより硬化する紫外線硬化樹脂を原版11に流し込み、窒素雰囲気中で紫外線を照射した後に、原版11からモールド13を剥離する方法である。3番目の方法は、ポリスチレンやPMMA(polymethyl methacrylate:ポリメチルメタクリレート)等のプラスチック樹脂を有機溶剤に溶解させたものを剥離剤の塗布された原版11に流し込み、乾燥させることにより有機溶剤を揮発させて硬化させた後に、原版11からモールド13を剥離する方法である。4番目の方法は、Ni電鋳により反転品を作成する方法である。
これにより、原版11の凸部12の反転形状である針状凹部15を配列したモールド13が作製される。このようにして作製されたモールド13を図5(C)に示す。原版11の凸部12は経皮吸収シートの針状凸部110の形状と同じであるので、図5(C)に示すように、経皮吸収シートの針状凸部110の反転型である複数の針状凹部15を有するモールド13が製造される。尚、上記3つのいずれの方法においてもモールド13は、何度でも容易に作製することが可能である。
モールド13に用いる材料としては、弾性のある素材、金属製の素材を用いることができる。中でも弾性のある素材であることが好ましく、気体透過性の高い素材であることが更に好ましい。
気体透過性の代表である酸素透過性は、1×10−12(mL/s・m・Pa)より大きいことが好ましく、1×10−10(mL/s・m・Pa)より大きいことがさらに好ましい。モールド13を気体透過性の高い素材で製作することにより、モールド13の裏面から吸引することで薬剤を含む溶解液吸引でき、針状凹部15内への充填を促進させることができる。また、モールド13の針状凹部15に存在する空気をモールド13側から追い出すことができる。欠陥の少ない経皮吸収シートを製造することができる。
このような材料として、具体的には、シリコーン樹脂(例えば、ダウコーニング社製のシルガード184(商標登録)、信越化学工業社製の1310ST(品番))、紫外線硬化樹脂、ポリスチレン樹脂、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、エポキシ樹脂、PET樹脂(ポリエチレンテレフタレート)、POM樹脂(ポリオキシメチレン)、テフロン(登録商標):PTFE樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)、PS樹脂(ポリスチレン)、PE樹脂(ポリエチレン)、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、などの一般的なエンジニアリングプラスチックを溶融、又は溶剤に溶解させたものなどを挙げることができる。
これらの中でもシリコーンゴム系の素材は繰り返し加圧による転写に耐久性があり、且つ、素材との剥離性がよいため、好適に用いることができる。
また、金属製の素材としては、Ni、Cu、Cr、Mo、W、Ir、Tr、Fe、Co、MgO、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、α−酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム、ステンレス(スタバックス材)などやその合金を挙げることができる。枠14の材質としては、モールド13の材質と同様の材質のものを用いることができる。
(薬剤)
針状凹部15に充填する液としての溶解液に含有させる薬剤は、生理活性を有する物質であればよく、特に限定されない。薬剤として、ペプチド、タンパク質、核酸、多糖類、ワクチン、医薬化合物、又は化粧品成分から選択することが好ましい。また、医薬化合物は水溶性低分子化合物に属するものであることが好ましい。ここで、低分子化合物とは数百から数千の分子量の範囲の化合物である。
薬剤を含む層に含有させる水溶性の高分子物質は、該層に含有させる薬剤と相互作用しないものを用いることが好ましい。例えば、タンパク質を薬剤として用いる場合、荷電性の高分子物質を混合すると、タンパク質と高分子物質とが静電相互作用によって会合体を形成して凝集、沈殿してしまう。したがって、薬剤に荷電性の物質を用いる場合には、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラ等の荷電をもたない水溶性高分子物質を用いることが好ましい。
また、薬剤を含む液の粘度は10Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1Pa・s以下である。溶解液の粘度を適切に調整することにより、モールド13の針状凹部15に容易に溶解液を注入することが容易となる。例えば、ポリマー樹脂の溶解液の粘度は、細管式粘度計、落球式粘度計、回転式粘度計、又は振動式粘度計で測定することができる。
[液充填装置]
図6は、押し付け力、及び/又は押し込み距離を制御することができる液充填装置48の概略構成図である。また、図7は、ノズルを下方から見た斜視図、図8はノズルの縦断面図である。
図6に示すように、液充填装置48は、薬液を貯留する送液タンク30と送液タンク30に配管31を介してノズル34の吐出側スリット部33(図8参照)に連結された液供給装置36と、減圧ポンプ39と減圧ポンプ39に配管37を介してノズル34の吸引側スリット部38(図8参照)に連結された減圧装置41と、液供給装置36及び減圧装置41とをZ軸方向に駆動するZ軸駆動部50と、モールド13を載置するための吸引台52と、吸引台52をX軸方向に駆動するX軸駆動部54と、上記装置を支持する架台56と、制御機構58と、を有している。
そして、ノズル34をモールド13の表面に押し付ける押し付け力を一定に制御して薬液22を針状凹部15内に充填するには、所望の押し付け力、例えば1.4N/cm(0.14kgf/cm)となるZ座標までZ軸駆動部50によりノズル34をモールド13に近づける。次に、モールド13に接触したノズル34をX軸駆動部54により移動(走査)させながら、押し付け力が一定となるようにZ軸座標を制御しつつ薬液22を吐出する。
押し付け力測定の方式は特に限定はしないが、例えばロードセル53を、例えば吸引台52の下に、又は吸引台52に代えて用いることができる。ロードセルとは厚み方向に圧縮する力を測定できる測定器具を意味する。押し付け力は、モールド13に対して1〜1000kPaの範囲内の任意の圧力で一定に制御可能であることが好ましい。
また、押し込み距離を一定に制御して薬液22を針状凹部15内に充填するには、ノズル34をモールド13表面に接触する前に、モールド13の表面形状をあらかじめ測定する。モールド13に接触したノズル34をX軸駆動部54により移動(走査)させながら、モールド13の表面形状に対して所望の押し込み距離になるようにZ軸座標をオフセットさせた値をZ軸駆動部50にフィードバックしつつ薬液22を吐出する。
形状測定の方式は特に限定はしないが、例えば非接触式のレーザー変位計60などの光学測定機器、接触式の触針式段差計等を用いることができる。さらに、ノズル34のスリット方向の姿勢をモールド13の表面形状に合わせて制御してもよい。押し込み距離は、モールド13の厚みに対して1〜15%の範囲で制御されることが好ましい。モールド13の形状に合わせてノズル34とモールド13と距離を、Z軸駆動部50によりZ軸方向に制御しながら動作することで、圧縮変形率が均一化され、充填量精度を向上できる。
押し付け力、及び押し込み距離の制御に関して、押し込み距離が小さい場合は押し付け力を制御することが好ましく、押し込み距離が大きい場合は、押し込み距離を直接制御することが好ましい。
図7及び図8に示すように、ノズル34には、下流側ノズル先端部35Aと上流側先端部35Bとで構成されるノズル先端部35を有する。また、ノズル先端部35には、モールド13の表面に対向して形成されたリップ面32が形成され、リップ面32から離れる方向に広がる2つの傾斜面34C、34Dを有する。2つの傾斜面34C、34Dのうち、ノズル移動方向から見て下流側の傾斜面を下流側傾斜面34C、上流側の傾斜面を上流側傾斜面34Dという。換言すると、ノズル34とモールド13の針状凹部15との相対的な移動で見たときに、上流側とは充填する針状凹部15とノズル34とが近づく方向の側を言い、下流側とは、充填した針状凹部15とノズル34とが離れていく方向の側を言う。
図8に示すように、リップ面32には、矢印Fで示すノズル移動方向から見た下流側に、吐出側スリット部33の先端に開口し、針状凹部15内に薬液22を充填するスリット状の吐出口42が設けられる。また、ノズル移動方向から見た上流側に、吸引側スリット部38の先端に開口し、針状凹部15内の空気を吸引する吸引口43が設けられる。そして、リップ面32は、吸引口43よりも上流側に形成される上流側リップ面32Bと、吐出口42よりも下流側に形成される下流側リップ面32Cと、吸引口43と吐出口42との間の中間リップ面32Aとで構成される。
スリット形状の吸引口43及び吐出口42により、例えば、1列を構成する複数の針状凹部15から同時に空気を吸引することが可能となり、針状凹部15へ同時に薬液22を充填することが可能となる。吸引口43及び吐出口42のノズル幅方向の長さと、吸引口43の幅(吸引口43の間隙)及び吐出口42の幅(吐出口42の間隙)は、一度に吸引や充填すべき針状凹部15の数に応じて適宜選択される。
また、吸引口43及び吐出口42のノズル幅方向の長さを長くすることで、より多くの針状凹部15から一度に空気を吸引でき、また一度に薬液22を充填することができる。これにより生産性を向上させることが可能となる。
ここで、ノズル幅方向とは、図7にMで示す方向であり、図8の表裏方向を言う。また、図7のNの方向をノズル移動方向又は吐出口42、吸引口43の幅方向(隙間方向)を言う。
さらには、吸引口43の下流側リップ面32Bに、リップ面32をモールド13の表面に押し付けた状態で吸引口43と大気とを連通する吸引口大気連通構造44が形成される。
図7及び図8には、吸引口大気連通構造44は、上流側リップ面32Bよりも中間リップ面32Aをモールド13側に突出させて段差L1(図8参照)をつけ、上流側リップ面32Bとモールド13の表面との間に形成される隙間44Aにより構成される。この場合、段差L1は、50μm以上、1mm以下であることが好ましい。
段差L1が50μm以上であれば、モールド13表面の表面粗さ、ノズル34のリップ面32の真直度、あるいはモールド13を載せる吸引台52の真直度等の因子によって、上流側リップ面32Bがモールド13の表面に部分的であっても接触しにくくなる。これにより、上流側リップ面32Bとモールド13の表面との間に隙間44Aを確実に形成できる。また、段差L1が1mm以下であれば、隙間44Aから空気が入り込み易くなり過ぎて、針状凹部15内の空気を吸引する吸引力が小さくなり過ぎてしまうこともない。
図9は、吸引口大気連通構造44の別態様であり、上流側リップ面32Bと中間リップ面32Aとを段差Lのない面一とし、吸引口43のノズル幅方向端部からノズル34の幅方向側面に貫通することにより、吸引口43を大気に連通させる吸引口貫通孔44Bを形成したものである。吸引口貫通孔44Bの孔径は、吸引口貫通孔44Bから吸引口43側に空気が入り込み過ぎて、針状凹部15内の空気を吸引する吸引力が小さくなり過ぎてしまわない大きさに形成される。吸引口貫通孔44Bは、ノズル幅方向の片側に形成してもよいが、両側に形成することがより好ましい。また、吸引口43からノズル先端部35の上流側傾斜面34Dに貫通させることで吸引口貫通孔44Bを形成することも可能である。
ノズル34の製作加工上の観点で、上流側リップ面32Bと中間リップ面32Aとの間の段差L1を均一に形成させにくい場合や、モールド13とノズル34の設置時の平行出し精度の観点で、モールド13とノズル34がわずかにでも斜めになってしまうような場合には、吸引口大気連通構造44としてノズル幅方向端部に吸引口貫通孔44Bを設けるほうが良い。例えば、ノズル34を複数個加工する場合のノズル加工のバラツキや、ノズル34をその都度設置する際の設置バラツキを低減でき、安定的に製造することに有利な場合があるためである。
一方、上流側リップ面32Bと中間リップ面32Aとの段差L1によって吸引口大気連通構造44を設けるほうがモールド13を擦っている幅が短くなる。これにより、ノズル34によってわずかに潰されてしまう針状凹部15の体積変化への影響が少なくなり、針状凹部15ごとの充填量のバラツキの軽減が期待できる。また、モールド13を痛めたり、擦れによる発塵したりする懸念が少ない。
したがって、吸引口大気連通構造44を、上流側リップ面32Bとモールド13の表面との間に隙間44Aで形成するか、吸引口貫通孔44Bで形成するかは適宜使い分けることが好ましい。
ノズル34に用いる材料としては、弾性のある素材、金属製の素材を用いることができる。例えば、テフロン(登録商標)、ポリアセタール、ポリエチレン、ステンレス鋼(SUS)、チタン等が挙げられる。
[経皮吸収シートの製造方法]
次に、本発明の実施の形態の一態様である経皮吸収シートの製造方法を説明する。
経皮吸収シートの製造方法は、上記したモールド13及び液充填装置48を準備する装置準備工程を行った後、図10に示すように、薬液充填工程と、薬液乾燥工程と、基材液充填工程と、基材液乾燥工程と、剥離工程との5つの工程をこの順で行う。図10は薬液基材液との2層構造の一例であり、形成したい針形状の必要に応じて工程を変えることができる。
図11に示すように、配列された針状凹部15を有するモールド13が、基台20の上に配置される。モールド13には、5×5に配列された、3組の複数の針状凹部15が形成されている。また、液供給装置36と減圧装置41とを有する液充填装置48が準備され、ノズル34が配列された針状凹部15の1列目手前位置の上方に針状凹部15の1列目と平行になるように位置調整される。そして、ノズル34が、モールド13の表面に所定の押し付け力で押し付けられた後、矢印Fで示すノズル移動方向に移動し、吸引工程と充填工程とを順に行う薬液充填工程が行われる。この場合、ノズル34をモールド13に対して相対的に移動させればよく、ノズル34を固定して、モールド13を移動させてもよい。
図12A〜図12Cは、薬液充填工程における吸引工程、吸引工程から充填工程へのノズル移動、及び充填工程の各ステップを図示したものである。また、図12A〜図12Cの符号Sは、ノズル34のリップ面32とモールド13の表面との接触部分を示す。
図12Aに示すように、吸引口43が1列目の針状凹部15上に位置するようにノズル34を移動(走査)させて針状凹部15内の空気を吸引する吸引工程を行う。この吸引工程において、ノズル34には、リップ面32をモールド13の表面に押し付けた状態で吸引口43と大気とを連通可能な吸引口大気連通構造44が形成されている。図12Aでは、吸引口大気連通構造44として、上流側リップ面32Bとモールド13の表面との間に形成された隙間44Aで例示している。
これにより、針状凹部15内の空気を吸引口43から吸引する際に、モールド13の表面が吸引口43に強く吸い付いてしまうことがない。したがって、モールド13が基台20から捲れ上がってノズル34に対する針状凹部15の位置にズレが生じるということがなくなる。これにより、吐出口42から針状凹部15内に薬剤を充填する際の充填精度が良くなる。
図12Bでは、ノズル34がモールド13に対して相対的に上流側に移動することによって、内部の空気が吸引された針状凹部15上から吸引口43が離れて吐出口42が近づく。これにより、ノズル34と針状凹部15との関係が吸引工程から充填工程に進む。
そして、図12Cに示す充填工程では、吐出口42が1列目の針状凹部15上に位置するようにノズル34を移動させて針状凹部15と吐出口42とを連通させることにより、薬液22を針状凹部15内に充填する。
これにより、薬液を加圧したり、モールド13に貫通孔を開けて吸引したりすることなくして薬液を針状凹部15に充填でき、しかもモールド13が吸引によって捲れ上がってノズル34に対する針状凹部15が位置ズレして充填精度が悪化したりすることがない。
また、モールド13に貫通孔を開ける必要がないので、製造された経皮吸収シートの針状凸部110をシャープ(尖鋭)することができるとともに、先端形状のバラツキをなくすことができる。また、針先形状を自由にデザインすることができるだけでなく、貫通孔を開ける工程や設備が必要なく、安価な設備とすることができる。
本発明の実施の形態における薬液充填工程は、特に、薬液22の粘度が10Pa・s以下であることが好ましく、このような低粘度の薬液22の充填は、ペースト状物の充填(例えば特許文献2)とは異なる。即ち、低粘度の薬液22を加圧充填したり吸引充填したりすると容易に勢いよく流動し、リップ面32とモールド13の表面との接触部分Sから外に漏れ出し易い。したがって、本発明の実施の形態における薬液充填工程は、10Pa・s以下の低粘度の薬液22を針状凹部15内に充填する際に一層効果を発揮する。1Pa・s以下の低粘度の薬液22であれば、一層効果を発揮する。
また、モールド13に吸引のための貫通孔を開ける必要がないので、製造された経皮吸収シートの針状凸部110の先端形状をシャープにすることができるとともに、先端形状のバラツキをなくすことができる。
また、上記した薬液充填工程において、下流側リップ面32Cと中間リップ面32Aとは、モールド13の表面に接触した状態で移動する必要がある。したがって、モールド13との摩擦を軽減するため、下流側リップ面32Cと中間リップ面32Aには、潤滑性の表面処理や表面改質剤を塗布することが好ましい。例えば、下流側リップ面32Cと中間リップ面32Aにフッ素樹脂をコーティングしたり、DLC(Diamond-Like Carbon)膜を成膜したりすることができる。
また、ノズル34への薬液22付着による汚れを抑制するために、下流側リップ面32Cから下流側傾斜面34Cにかけて撥水性や非粘着性のコーティングを施すことにより、充填時に薬液22の濡れ上りを抑制することが好ましい。
また、充填時に薬液22がノズル幅方向に均一に濡れ広がるように、吐出側スリット部33の内壁面には親水性のコーティングを施すことが好ましい。
また、吸引口大気連通構造44を、上流側リップ面32Bとモールド13の表面との間に形成される隙間44Aにより構成する場合、工程上のゴミや空気中のゴミや水分等の流入により吸引口43や吸引側スリット部38が詰まったり、汚れたりしないように、上流側リップ面32Bにフィルタ(図示せず)や気体透過性のフィルム(図示せず)を貼り合わせて隙間44Aを埋めることが好ましい。同様に、吸引口大気連通構造44を吸引口貫通孔44Bで形成した場合にも、吸引口貫通孔44Bにフィルタ(図示せず)や気体透過性のフィルム(図示せず)を設けることが好ましい。
そして、図13(A)に示した薬液充填工程が完了すると、形成したい針形状の必要に応じて、薬液乾燥工程と2層目以降の充填工程とを繰り返し行った後、剥離工程に進む。例えば、薬液22を乾燥固化して薬剤を含む第1層120を針状凹部15内に形成する薬液乾燥工程(図13(B))、薬剤を含む第1層120の上に薬剤を含まない基材液24を塗布して基材液24を針状凹部15に充填する基材液充填工程(図13(C))、及び基材液24を乾燥個化して第2層122を形成する基材液乾燥工程(図13(D))を行い、その後に図14又は図15の剥離工程に進む。図14又は図15における符号40は、粘着性の粘着層が形成され、製造された経皮吸収シートをモールド13から剥離する剥離用のシート状基材である。
以下に、本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[試験A]
試験Aでは、ノズル34の吸引口大気連通構造44の有り無しによって、モールドに10列×10行に配列された針状凹部15(合計100個)への「充填精度」、及び「モールドの捲れ上がりの問題」にどのように影響するかを試験した。吸引口大気連通構造44は、下流側リップ面32Bとモールド13の表面との間に形成される隙間44Aの態様とした。
(モールド)
一辺40mmの平滑なNi板の表面に、図16に示すような、底面が500μmの直径D1で、150μmの高さH1の円錐台12B上に、300μmの直径D2で,500μmの高さH2の円錐12Aが形成された針状構造の凸部12を、1000μmのピッチPにて10列×10行の配列に研削加工することで、原版11を作製した。
この原版11の上に、シリコーンゴム(ダウコーニング社製SILASTIC−MDX4−4210)を0.750mmの厚みで膜を熱硬化させて形成し、剥離して、シリコーンゴム製の反転品を作成した。
このシリコーンゴム反転品の、中央部に10列×10行に配列された針状凹部が形成された、一辺30mmの平面部外を切り落としたものをモールド13として用いた。針状凹部15の開口部が広い方をモールド13の表面とし、逆側の面をモールド13の裏面とした。
(薬液の調製)
ヒドロキシエチルスターチ(Fresenius Kabi社製)を水で溶解し、8%の水溶液に調液したものに、薬剤としてヒト血清アルブミン(和光純薬社製)を2質量%、添加し、薬剤を含むポリマー溶解液、つまり薬液22とした。調液後、3kPaの減圧環境下で4分間晒し、十分な脱気を行った。
(液充填装置)
液充填装置48は、モールド13と、ノズル34の充填移動方向(X軸方向)における相対位置を座標制御するX軸駆動部54、ノズル34をモールド13の表面に対して上下動させるZ軸駆動部50、ノズル34を取り付け可能な液供給装置36(武蔵エンジニアリング社製超微量定量ディスペンサーSMP−3)、モールド13を固定する吸引台52、モールド13の表面形状を測定するレーザー変位計60(パナソニック社製HL−C201A)、ノズル34の押し付け力を測定するロードセル53(共和電業製LCX−A−500N)、モールド13の表面形状及びノズル34の押し付け力の測定値を基にZ軸駆動部50を制御する制御機構58を備えたものを使用した。そして、水平な吸引台52上にモールド13を設置し、モールド13の裏面からゲージ圧90kPaで吸引して、モールド13を吸引台52に固定した。
ノズル34は、図7で示したような形状のステンレス鋼(SUS)であって、ノズル幅方向Mの長さが20mm、ノズル移動方向Nの幅が幅2mmのリップ面32を有するものを準備した。このノズル34のリップ面32には、ノズル移動方向上流側と下流側とにノズル幅方向の長さが12mm、ノズル移動方向の幅が0.2mmのスリット状の吐出口42と吸引口43とを有する。そして、このノズル34の吐出側スリット部33を薬液タンク(3mLの薬液貯留)に連結し、吸引側スリット部38を減圧装置41に連結した。
また、吸引口大気連通構造は、図7及び図8に示すように、上流側リップ面32Bよりも中間リップ面32Aをモールド13側に突出させて段差をつけることによって、ノズル34をモールド13の表面に押し付けたときに上流側リップ面32Bとモールド13の表面との間に形成される隙間である態様のものを用いた。
図11に示すように、ノズル34が、配列された針状凹部15の1列目手前位置(1列目に対して2mm離れた位置)の上方に針状凹部15の1列目と平行になるようにノズル34を位置調整した。次に、ノズル34を1.4N/cmの押し付け力でモールド13の表面に押し付けた。
次に、ノズル34をモールド13の表面に押し付けた状態で、押し付け力の変動が±0.5N/cmに収まるようにZ軸駆動部50を制御しつつ、ノズル34をノズル移動方向に1mm/秒の移動速度で移動させながら、吸引工程、充填工程を順番に行った。
先ず、吸引口43が1列目の針状凹部15上に位置するようにノズル34を移動させて針状凹部15内の空気を吸引した。
そして、吐出口42から薬液22を0.31μL/秒で10秒間吐出し、針状凹部15内に薬液22を充填した。
1列目から10列目の針状凹部15について上記の吸引及び充填を繰り返して、全ての針状凹部15に薬液22を充填した後、10列目の針状凹部15からノズル移動方向に2mm移動した位置でノズル34の移動を停止した。そして、ノズル34をモールド13の表面から離した。
(試験の評価方法)
「充填個数」は上記試験の後、モールド13の上方から顕微鏡で10列×10行に配列された針状凹部15(合計100個)を観察し、針状凹部15の容積全体に薬液22が充填されている針状凹部15の個数(図17の表の「充填個数」)を数えた。
「モールドの捲れ上がり」は、上記試験の後、薬液充填工程の開始前のモールド13の初期位置と、薬液充填工程の終了後のモールド13の試験終了位置とを対比し、初期位置からの位置ズレがあるかを目視で判定した。そして、位置ズレがない場合をA、位置ずれがある場合をBとした。
(試験結果)
図17の表に示すように、ノズルに吸引口43を有しない試験1(比較例1)は、針状凹部15に薬液22が充填されている針状凹部15の充填個数が0個であった。
また、吸引口大気連通構造を有しない試験2(比較例2)は、ノズル先端部35をモールド13の表面に押し付けた状態で吸引口43に吸引力を与えると、モールド13表面が吸引口43に強く吸い付いてしまい、モールド13が捲れ上がる現象が観察された。この結果、モールド13に初期位置から500μm〜2mm程度の位置ズレが発生し、モールド13の針状凹部15以外の表面平坦部分に薬液22の付着が部分的に見られた。
このように吸引口大気連通構造を有しない試験2は、充填個数は100個であったが、モールド13が吸引によって捲れ上がってノズル34に対する針状凹部15が位置ズレしてモールド13の針状凹部15以外の表面平坦部分に薬液22の付着が発生したことにより充填精度が悪化した。
これに対して、ノズルに吸引口43を有し且つ吸引口大気連通構造を有する試験3(実施例)は、充填個数が100個であり、全ての針状凹部15に充填することができ、しかも位置ズレも発生しなかったことにより、モールド13の針状凹部15以外の表面平坦部分に薬液22の付着が認められず、充填精度の悪化もなかった。
なお、図17には示さなかったが、吸引口大気連通構造44を吸引口貫通孔44Bとしたノズル34を使用した場合も、位置ズレが発生しなかった。
1…ポリマーシート、11…原版、12…凸部、13…モールド、15…針状凹部、20…基台、22…薬液、24…基材液、30…送液タンク、31…配管、32…リップ面、32A…中間リップ面、32B…上流側リップ面、32C…下流側リップ面、33…吐出側スリット部、34…ノズル、35…ノズル先端部、36…液供給装置、37…配管、38…吸引側スリット部、39…減圧ポンプ、41…減圧装置、42…吐出口、43…吸引口、44…吸引口大気連通構造、48…液充填装置、50…Z軸駆動部、52…吸引台、53…ロードセル、54…X軸駆動部、56…架台、58…制御機構、S…接触部分、F…ノズル移動方向

Claims (5)

  1. 針状凸部を有するシートの製造方法において、
    針状凹部を有するモールドと、前記針状凹部に液を充填するノズルを有する液供給装置を備えた液充填装置と、を準備する装置準備工程と、
    前記液供給装置から液を前記モールドに供給し、前記ノズルを前記モールドの表面に押し付けて接触させた状態で、1つ以上の前記針状凹部に液を充填する動作と、前記ノズルと前記モールドの表面とを接触させた状態で、前記ノズルを前記モールドに対して相対的に移動させる動作と、を有し、前記針状凹部に前記液を充填する液充填工程と、を備え、
    前記ノズルは、ノズル先端部に前記モールドの表面に対向して形成されたリップ面と、該リップ面のノズル移動方向から見た下流側に形成され前記液を吐出するスリット状の吐出口と、上流側に形成され前記針状凹部内の空気を吸引する吸引口と、前記ノズルを前記モールドの表面に押し付けた状態で前記吸引口と大気とを連通する吸引口大気連通構造とを有し、
    前記液充填工程では、
    前記吸引口が前記針状凹部上に位置するように前記ノズルを移動させて針状凹部内の空気を吸引する吸引工程と、
    前記吐出口が前記針状凹部上に位置するように前記ノズルを移動させて前記液を前記針状凹部内に充填する充填工程と、を順に行うシートの製造方法。
  2. 前記リップ面は、前記吸引口よりも上流側の上流側リップ面と、前記吐出口よりも下流側の下流側リップ面と、前記吸引口と前記吐出口との間の中間リップ面とで構成され、
    前記吸引口大気連通構造は、前記上流側リップ面よりも前記中間リップ面を前記モールド側に突出させて段差をつけることによって、前記ノズルを前記モールドの表面に押し付けたときに前記上流側リップ面と前記モールドの表面との間に形成される隙間である請求項1に記載のシートの製造方法。
  3. 前記吸引口大気連通構造は、前記吸引口のノズル幅方向端部から前記ノズルの幅方向側面に貫通する吸引口貫通孔である請求項1に記載のシートの製造方法。
  4. 前記液の粘度は10Pa・s以下である請求項1から3の何れか1項に記載のシートの製造方法。
  5. 前記シートは、薬剤を含む針状凸部を有する経皮吸収シートである請求項1から4の何れか1項に記載のシートの製造方法。
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