JP2017076531A - 固体高分子形燃料電池用の触媒粉末及びその製造方法、並びにこの触媒粉末を用いた固体高分子形燃料電池 - Google Patents
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Abstract
Description
H2 → 2H++2e−(E0=0V)……(1)
O2+4H++4e− → 2H2O(E0=1.23V)……(2)
例えば、特許文献1及び2においては、触媒金属成分、電解質材料(電解質樹脂)、及び炭素材料を含む触媒層に関して、前記炭素材料については触媒金属成分を担持した触媒金属担体炭素材料と触媒金属成分を担持していないガス拡散炭素材料とで構成し、また、これら触媒金属担体炭素材料とガス拡散炭素材料の保水性を最適化して、触媒層内で電子伝導経路が分断されることなく低加湿時及び高加湿時のあらゆる運転環境下において十分な発電特性を発揮する固体高分子型燃料電池が提案されている。
また、本発明の他の目的は、このような固体高分子形燃料電池用の触媒粉末の製造方法を提供することにある。
更に、本発明の他の目的は、このような固体高分子形燃料電池用の触媒粉末を用いて製造された固体高分子形燃料電池を提供することにある。
(1) 炭素材料であるカーボンブラックと、触媒金属からなり、前記カーボンブラックに担持された触媒金属粒子と、電解質樹脂からなり、前記カーボンブラック及び触媒金属粒子を被覆する触媒被覆部とからなる固体高分子形燃料電池用の触媒粉末であり、前記カーボンブラックは、BET比表面積が1000m2/g以上であって、このBET比表面積に対してN2吸着のT-plot解析で得られる外表面積の割合が20〜40%の範囲内であり、かつ、前記触媒被覆部を形成する電解質樹脂(I)と前記カーボンブラック(C)との質量比率(I/C: g-ionomer/g-carbon)が0.2〜0.6の範囲内であることを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒粉末。
(2) 炭素材料であるカーボンブラックに触媒金属からなる触媒金属粒子を担持させ、得られた触媒金属担持カーボンブラックの表面を電解質樹脂で被覆して触媒粉末を製造する方法であって、
前記カーボンブラックは、BET比表面積が1000m2/g以上であって、このBET比表面積に対してN2吸着のT-plot解析で得られる外表面積の割合が20〜40%の範囲内であり、
このカーボンブラックに前記触媒金属粒子を担持させて得られた触媒金属担持カーボンブラックと前記電解質樹脂とを、前記電解質樹脂(I)と前記カーボンブラック(C)との質量比率(I/C: g-ionomer/g-carbon)が0.2〜0.6の範囲内になるように分散媒中に分散させ、温度50〜100℃及び10〜20時間の条件で撹拌下に接触させ、前記触媒金属担持カーボンブラックの表面を前記電解質樹脂からなる触媒被覆部で被覆することを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒粉末の製造方法。
(3) プロトン伝導性電解質膜を挟んだ一対のアノード触媒層及びカソード触媒層を有する固体高分子形燃料電池であり、少なくとも前記カソード触媒層を形成する触媒粉末が、炭素材料であるカーボンブラックと、触媒金属からなると共に前記カーボンブラックに担持された触媒金属粒子と、電解質樹脂からなると共に前記カーボンブラック及び触媒金属粒子を被覆する触媒被覆部とを有し、前記触媒粉末を形成するカーボンブラックは、BET比表面積が1000m2/g以上であって、このBET比表面積に対してN2吸着のT-plot解析で得られる外表面積の割合が20〜40%の範囲内であり、かつ、前記触媒粉末を形成する触媒被覆部の電解質樹脂(I)とカーボンブラック(C)との質量比率(I/C: g-ionomer/g-carbon)が0.2〜0.6の範囲内であることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
また、本発明によれば、上記の如き固体高分子形燃料電池用の触媒粉末の製造方法を提供することができ、また、このような固体高分子形燃料電池用の触媒粉末を用いて製造され、白金原子の使用量を可及的に低減した固体高分子形燃料電池を提供することができる。
先ず、本発明の固体高分子形燃料電池用の触媒粉末は、図1及び図2に示すように、炭素材料であるカーボンブラック1と、前記カーボンブラック1に担持された触媒金属からなる触媒金属粒子2と、電解樹脂であって前記カーボンブラック1及び触媒金属粒子2を被覆する触媒被覆部3とからなり、これらカーボンブラック1と触媒金属粒子2と触媒被覆部3との間には、前記触媒金属粒子2が前記カーボンブラック1及び触媒被覆部3の電解質樹脂に接触する界面(三相界面)4が形成され、この三相界面における触媒金属粒子2の表面が燃料電池における反応場として機能する。なお、図2において、「e-」は触媒金属粒子2からカーボンブラック1へと電子が移動する様子を示し、また、「H+」は触媒金属粒子2の表面で生成した水素イオンが電解質樹脂からなる触媒被覆部3中へと拡散する様子を示している。
なお、従来においては、事前に炭素材料であるカーボンブラックに電解質樹脂を被覆することが無いため、本発明の電解質樹脂量と比べ使用量が少ない状態で触媒層を構成することとなる。具体的には、従来技術では触媒層を構成している全体の電解質樹脂(Ica)とカーボンブラック(Cca)とのIca/Cca質量比が0.7〜1.5程度である。これに対して、本発明においては、触媒粉末での電解質樹脂(I)とカーボンブラック(C)との質量比(I/C)が0.2〜0.6であり、その後に、触媒層形成時に添加される電解質樹脂を加えた触媒層を構成している全体の電解質樹脂(Ica)とカーボンブラック(Cca)とのIca/Cca質量比は2.2〜3.1程度となり、従来の触媒層に比べて電解質樹脂量が多くなる。
すなわち、先ず、本発明で用いるカーボンブラックとして、BET比表面積が1000m2/g以上であって外表面積割合が20〜40%のカーボンブラックを用意する。このようなカーボンブラックについては、上記のBET比表面積1000m2/g以上及び外表面積割合20〜40%の条件を満たせば、市販品をそのまま用いてもよく、また、必要により下記に示す方法で賦活処理して調製してもよい。
また、下記の賦活処理を行うことにより上記の条件を満たすカーボンブラックを調製することができるカーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック(ライオンスペシャリティーケミカルズ社製商品名:EC300J)、ケッチェンブラック(ライオンスペシャリティーケミカルズ社製商品名:ライオナイトEC200L)等を挙げることができる。そして、このようなカーボンブラックを賦活処理する方法としては、例えば、空気、酸素等の酸化性雰囲気中での酸化処理する方法、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)等を用いて500〜800℃の温度で反応させるアルカリ賦活の方法、水蒸気を用いて750〜1100℃の温度で反応させる水蒸気賦活の方法、炭酸ガスを用いて750〜1100℃の温度で反応させる炭酸ガス賦活の方法、塩化亜鉛を用いて400〜1000℃の温度で処理し反応させる塩化亜鉛賦活の方法等を挙げることができる。更に、このような賦活処理の後に、不活性ガス、還元性ガス、アンモニアガス、酸化性ガス等のガスを各々単独で用い、あるいは、複数のガスの混合ガスとして用い、ガス雰囲気中常圧又は加圧下に熱処理を行い、カーボンブラックの表面における官能基の種類やその量を選択的に付与しまた制御し、水蒸気吸着特性や窒素ガス吸着特性を制御してもよい。
〔BET比表面積とN2吸着のT-plot解析で得られる外表面積の割合〕
BET比表面積(m2/g)の測定は、試料約50mgを測り採り、これを90℃で真空乾燥し、得られた乾燥後の試料について、自動比表面積測定装置(日本ベル製、BELSORP36)を使用し、窒素ガスを用いたガス吸着法にて測定し、BET法に基づく1点法にて比表面積を決定した。
また、N2吸着のT-plot解析で得られる外表面積の割合(以下、「外表面積割合」という。)については、BET比表面積の測定で得られた吸着等温線を用い、T-plot解析を実施して外表面積を求め、先に求められたBET比表面積に対する外表面積割合〔%:(外表面積/BET比表面積)×100〕として求めた。
DBP吸油量(cm3/100g)は、アブソープトメーター(Brabender社製)を用いて、最大トルクの70%の時のDBP添加量を試料100g当りのDBP吸油量に換算して決定した。
以下に示す各実験例では、カーボンブラックとして、ライオンスペシャリティーケミカルズ株式会社製商品名:ケッチェンブラックEC600JD(試料名:A)、ライオンスペシャリティーケミカルズ株式会社社製商品名:EC300(試料名:B)、ライオンスペシャリティーケミカルズ社製商品名ライオナイトEC200L(試料名:C)、及び電気化学工業製商品名:デンカブラック粒状品(試料名:D)の市販のカーボンブラックを用いた。
また、炭素材料として用いたカーボンブラックのBET比表面積及び外表面積割合の調整については、炭酸ガス(CO2)を用い850〜1000℃の範囲での温度と処理時間とを調節する炭酸ガス賦活方法により実施した。この賦活処理をして得られたカーボンブラックについては試料名の前に「賦活」の文字を付して示す。
カーボンブラックとして用意され、あるいは、調製されたカーボンブラックの試料名と、BET比表面積、外表面積割合及びDBP吸油量についての測定結果を下記の表1に示す。
以上のようにして用意され、あるいは、調製されたカーボンブラックを蒸留水中に分散させ、この分散液にホルムアルデヒドを加え、40℃に設定したウォーターバスにセットし、分散液の温度がバスと同じ40℃になってから、撹拌下にこの分散液中にジニトロジアミンPt錯体硝酸水溶液をゆっくりと注ぎ入れた。その後、約2時間撹拌を続けた後、濾過し、得られた固形物の洗浄を行った。このようにして得られた固形物を90℃で真空乾燥した後、乳鉢で粉砕し、触媒金属粒子として白金粒子を担持した各白金粒子担持カーボンブラック(Pt担持カーボンブラック)を作製した。
なお、各Pt担持カーボンブラックの白金担持量については、カーボンブラックと白金粒子の合計質量に対して白金粒子の質量が40質量%となるように調整し、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES: Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)により測定して確認した。
このようにして作製された上記の各Pt担持カーボンブラックをエタノール(分散媒)中に分散させ、超音波ホモジナイザー(株式会社エスエムテ―社製UH-50)を用いて分散液中に超音波を5分間照射(パワーコントローラーのボリュームを10とし、振動子の先端から最も気泡が出ている状態で)し、その後、直径1mmの硝子ビーズと撹拌子とを分散溶液中に入れ、また、表2〜表5に示す触媒粉末形成時の電解質樹脂としてDupont社製ナフィオン〔登録商標「Nafion」:パースルホン酸系イオン交換樹脂DE2020CS(スルホン酸基当量EW:1050)、DE2021CS(スルホン酸基当量EW:1100)〕及び旭硝子社製フレミオン(スルホン酸基当量EW:900)(触媒被覆部の樹脂)を、この電解質樹脂(I)とPt担持カーボンブラック中のカーボンブラック(C)との質量比率(I/C)が表2〜表5に示す割合になるように前記分散溶液中に加え、マグネチックスターラ―で撹拌子を600rpmの速度で回転させて撹拌し、表2〜表5に示す触媒粉末調製時の条件〔調製時の条件(温度及び時間)〕で撹拌下に保持した。その後、エバポレータ―を用いて80℃に保持しながら分散媒のエタノールを蒸発させ、乾固物を得た。その後、得られ乾固物を90℃に保持して真空(減圧)下に乾燥させ、表面が電解質樹脂で被覆されて触媒被覆部を有する各実験例の固体高分子形燃料電池用の触媒粉末を得た。
以上のようにして調製された各実験例の触媒粉末を用い、また、触媒層形成時の電解質樹脂としてDupont社製ナフィオン〔登録商標「Nafion」:パースルホン酸系イオン交換樹脂DE2020CS(スルホン酸基当量EW:1050)、DE2021CS(スルホン酸基当量EW:1100)〕及び旭硝子社製フレミオン(スルホン酸基当量EW:900)を用い、Ar雰囲気下でこれら各触媒粉末とナフィオンとを表1に占示す割合で配合し、軽く撹拌した後、得られた固形分を超音波で解砕し、更にエタノールを加えて各実験例の触媒粉末と新たに添加された電解質樹脂とを合わせた合計の固形分濃度が1.1質量%となるように調整し、各実験例の触媒粉末と新たに添加された電解質樹脂とが混合した各実験例の触媒層インクを調製した。
このようにして調製された各実験例の触媒層インクを用い、白金の触媒層単位面積当りの質量(以下、「白金目付量という。)が0.2mg/cm2となるようにスプレー条件を調節し、上記スプレー塗布用触媒層インクをテフロン(登録商標)シート上にスプレーした後、アルゴン中120℃で60分間の乾燥処理を行い、各実験例の触媒層を作製した。
以上のようにして作製した上記各実験例の触媒層を用い、以下の方法でMEA(膜電極複合体)を作製した。
ナフィオン膜(Dupont社製NR211)から一辺6cmの正方形状の電解質膜を切り出した。また、テフロン(登録商標)シート上に塗布されたアノード及びカソードの各触媒層については、それぞれカッターナイフで一辺2.5cmの正方形状に切り出した。
作製した各実験例のMEAについては、それぞれセルに組み込み、燃料電池測定装置にセットして、次の手順で燃料電池の性能評価を行った。
ガスについては、カソードに空気を、また、アノードに純水素を、それぞれ利用率が35%と70%となるように、0.2メガパスカルに加圧して供給した。また、セル温度は80℃に設定した。供給するガスについては、高加湿条件での評価ではカソード、アノードの相対湿度が100%に、また、低加湿条件での評価ではカソード、アノードの相対湿度が50%になるように、蒸留水を用いた加湿器中でバブリングし、改質水素相当の水蒸気を含ませてセルに供給した。
得られた燃料電池の性能評価については、高加湿条件下及び低加湿条件下での測定結果について、それぞれ“200mA/cm2での出力電圧0.80V以上”及び“500mA/cm2での出力電圧0.75V以上”を満たす場合を「◎」とし、また、“200mA/cm2での出力電圧0.75V以上0.80V未満”及び“500mA/cm2での出力電圧0.70V以上0.75V未満”を満たす場合を「〇」とし、更に、上記以外の場合を不合格の「×」として評価した。
そして、これら高加湿条件下及び低加湿条件下での4つの評価結果を基に、総合評価として、◎が3個以上である場合を「◎」とし、○が2個以上であって×がない場合を「○」とし、×が1つでもある場合を不合格の「×」とした。
また、カーボンブラックとして試料名「賦活C」、「B」、「C」、「D」、及び「賦活D」を用い、また、触媒粉末調製時の電解質樹脂(I)とカーボンブラック(C)との質量比率(I/C)を0.2、0.4、又は0.6とした場合の結果を表5に示す。
Claims (3)
- 炭素材料であるカーボンブラックと、触媒金属からなり、前記カーボンブラックに担持された触媒金属粒子と、電解質樹脂からなり、前記カーボンブラック及び触媒金属粒子を被覆する触媒被覆部とからなる固体高分子形燃料電池用の触媒粉末であり、
前記カーボンブラックは、BET比表面積が1000m2/g以上であって、このBET比表面積に対してN2吸着のT-plot解析で得られる外表面積の割合が20〜40%の範囲内であり、かつ、
前記触媒被覆部を形成する電解質樹脂(I)と前記カーボンブラック(C)との質量比率(I/C: g-ionomer/g-carbon)が0.2〜0.6の範囲内であることを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒粉末。 - 炭素材料であるカーボンブラックに触媒金属からなる触媒金属粒子を担持させ、得られた触媒金属担持カーボンブラックの表面を電解質樹脂からなる触媒被覆部で被覆して触媒粉末を製造する方法であって、
前記カーボンブラックは、BET比表面積が1000m2/g以上であって、このBET比表面積に対してN2吸着のT-plot解析で得られる外表面積の割合が20〜40%の範囲内であり、
このカーボンブラックに前記触媒金属粒子を担持させて得られた触媒金属担持カーボンブラックと前記電解質樹脂とを、前記電解質樹脂(I)と前記カーボンブラック(C)との質量比率(I/C: g-ionomer/g-carbon)が0.2〜0.6の範囲内になるように分散媒中に分散させ、温度50〜100℃及び10〜20時間の条件で撹拌下に接触させ、前記触媒金属担持カーボンブラックの表面を前記電解質樹脂からなる触媒被覆部で被覆することを特徴とする固体高分子形燃料電池用の触媒粉末の製造方法。 - プロトン伝導性電解質膜を挟んだ一対のアノード触媒層及びカソード触媒層を有する固体高分子形燃料電池であり、
少なくとも前記カソード触媒層を形成する触媒粉末が、炭素材料であるカーボンブラックと、触媒金属からなると共に前記カーボンブラックに担持された触媒金属粒子と、電解質樹脂からなると共に前記カーボンブラック及び触媒金属粒子を被覆する触媒被覆部とを有し、
前記触媒粉末を形成するカーボンブラックは、BET比表面積が1000m2/g以上であって、このBET比表面積に対してN2吸着のT-plot解析で得られる外表面積の割合が20〜40%の範囲内であり、また、
前記触媒粉末を形成する触媒被覆部の電解質樹脂(I)とカーボンブラック(C)との質量比率(I/C: g-ionomer/g-carbon)が0.2〜0.6の範囲内であることを特徴とする固体高分子形燃料電池。
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