以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。
まず、実施形態に係るプリンタの基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係るプリンタを示す概略構成図である。同図において、実施形態に係るプリンタは、イエロー(Y),マゼンダ(M),シアン(C),ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kを備えている。また、転写装置としての転写ユニット30、光書込ユニット80、定着装置90、シート収容カセット100、レジストローラ対102なども備えている。
4つの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、画像形成物質として、互いに異なる色のY,M,C,Kトナーを用いるが、それ以外は同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための画像形成ユニット1Kを例にすると、これは、図2に示されるように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着されることで、同時に交換されるようになっている。
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成された外径60[mm]程度のドラム形状のものであって、駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製の芯金の表面に導電性弾性材料からなる導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、後述する光書込ユニットから発せられるレーザー光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、Kトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、後述する中間転写ベルト31上に1次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、1次転写工程(後述する1次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5Kなどを有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
上記除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像部材9Kを内包する現像部12Kと、K現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。そして、現像剤搬送部13Kは、第1スクリュウ部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュウ部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、これの周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュウ部材10Kを収容している第1搬送室と、第2スクリュウ部材11Kを収容している第2搬送室とは、仕切り壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュウ軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュウ部材10Kは、螺旋羽根内に保持しているK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュウ部材10Kと、後述する現像部材9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像部材9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュウ部材10Kは、現像部材9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュウ部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュウ部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュウ部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁にはトナー濃度センサが設けられており、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサからなるものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタには、Y,M,C,K用の現像装置の第2収容室内にY,M,C,Kトナーをそれぞれ個別に補給するためのY,M,C,Kトナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値であるY,M,C,K用のVtrefを記憶している。Y,M,C,Kトナー濃度検知センサからの出力電圧値と、Y,M,C,K用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけY,M,C,Kトナー補給手段を駆動する。これにより、Y,M,C,K用の現像装置における第2搬送室内にY,M,C,Kトナーが補給される。
現像部12K内に収容されている現像部材9Kは、第1スクリュウ部材10Kに対向しているとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。また、現像部材9Kは、回転駆動される非磁性パイプからなる筒状の現像スリーブと、これの内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備している。そして、第1スクリュウ部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面に向けて移動させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル及び非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
図1において、Y,M,C用の画像形成ユニット1Y,1M,1Cにおいても、K用の画像形成ユニット1Kと同様にして、感光体2Y,2M,2C上にY,M,Cトナー像が形成される。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。この光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザーダイオードから発したレーザー光により、感光体2Y,2M,2C,2Kを光走査する。この光走査により、感光体2Y,2M,2C,2K上にY,M,C,K用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2Yの一様帯電した表面の全域のうち、レーザー光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザー照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。
なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザー光Lを、ポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書込を行うものを採用してもよい。
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの下方には、無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中反時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、像担持体たる中間転写ベルト31の他に、駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、4つの1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kなどを有している。また、ニップ形成ローラ36、ベルトクリーニング装置37なども有している。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、2次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kによって張架されている。そして、駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。
4つの1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を感光体2Y,2M,2C,2Kとの間に挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、感光体2Y,2M,2C,2Kとが当接するY,M,C,K用の1次転写ニップが形成されている。1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kには、転写バイアス電源によってそれぞれ1次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2Y,2M,2C,2K上のY,M,C,Kトナー像と、1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kとの間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の1次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に1次転写される。
このようにしてYトナー像が1次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M,C,K用の1次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2M,2C,2K上のM,C,Kトナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト31上には4色重ね合わせトナー像が形成される。
1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kは、金属製の芯金と、これの表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備している弾性ローラからなる。このような1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに対して、1次転写バイアスが定電流制御で印加される。なお、1次転写ローラ35Y,35M,35C,35Kに代えて、転写チャージャーや転写ブラシなどを採用してもよい。
転写ユニット30のニップ形成ローラ36は、中間転写ベルト31のループ外側に配設されており、ループ内側の2次転写裏面ローラ33との間に中間転写ベルト31を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト31のおもて面と、ニップ形成ローラ36とが当接する2次転写ニップが形成されている。ニップ形成ローラ36は接地されているのに対し、2次転写裏面ローラ33には、2次転写バイアス電源39によって2次転写バイアスが印加される。これにより、2次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて静電移動させる2次転写電界が形成される。
2次転写バイアス電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、2次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたものを出力することができる。2次転写バイアス電源39から2次転写裏面ローラ33に印加される電圧における交流電圧の周波数fなどの制御パラメータは、中間転写ベルト31上の画像面積率に応じて制御される。この制御については、後に詳述する。
転写ユニット31の下方には、記録シートPを複数枚重ねたシート束の状態で収容しているシート収容カセット100が配設されている。このシート収容カセット100は、シート束の一番上の記録シートPに給送コロ101を当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その記録シートPを給送路に向けて送り出す。給送路の末端付近には、レジストローラ対102が配設されている。このレジストローラ対102は、シート収容カセット100から送り出された記録シートPをローラ間に挟み込むとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、挟み込んだ記録シートPを2次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録シートPを2次転写ニップに向けて送り出す。2次転写ニップで記録シートPに密着せしめられた中間転写ベルト31上の4色重ね合わせトナー像は、2次転写電界やニップ圧の作用によって記録シートP上に一括2次転写されてフルカラートナー像となる。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された記録シートPは、2次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
2次転写裏面ローラ33や、ニップ形成ローラ36は、芯金の表面に、導電性のゴム層が被覆されたものである。
ニップ形成ローラ36よりもシート搬送方向の下流側には、シート分離補助のための分離装置150が配設されている。この分離装置150は、2次転写ニップから送り出されてくる記録シートPに対して鋸歯状の除電針の先端を接触せながら、交流電圧に直流電圧を重畳した分離バイアスを印加することで、ニップ形成ローラ36からの記録シートPの分離を促す。
2次転写バイアス電源39の出力端子は、二次転写裏面ローラ33の芯金に接続されている。二次転写裏面ローラ33の芯金の電位は、2次転写バイアス電源39からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。また、ニップ形成ローラ36については、その芯金を接地(アース接続)している。なお、重畳バイアスを2次転写裏面ローラ33の芯金に印加しつつ、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、重畳バイアスをニップ形成ローラ36の芯金に印加しつつ、2次転写裏面ローラ33の芯金を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性をトナーの帯電極性とは反対の極性にすればよい。交流電圧としては、正弦波(サイン波)、矩形波、三角波、台形波など、様々な波形のものを用いることが可能である。
2次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、記録シートPに転写されなかった転写残トナーが付着している。これは、中間転写ベルト31のおもて面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトのクリーニングをループ内側からバックアップする。
2次転写ニップよりもシート搬送方向の下流側には、定着装置90が配設されている。この定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とによって定着ニップを形成している。定着装置90内に送り込まれた記録シートPは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップに挟まれる。そして、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラー画像が定着せしめられる。定着装置90内から排出された記録シートPは、定着後搬送路を経由した後、機外へと排出される。
図3は、2次転写バイアス電源39から出力される重畳バイアスからなる2次転写バイアスの波形の一例を示す波形図である。同図において、オフセット電圧Voffは直流成分の値である。この重畳バイアスの交流成分の波形は正弦波でそのデューティが50[%]であるので、時間平均値はオフセット電圧Voffと同じ値になる。2次転写裏面ローラ33に印加する2次転写バイアスのオフセット電圧Voffの極性をマイナスにすることで、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーを2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に相対的に押し出すことが可能になる。これにより、中間転写ベルト31上のトナーを記録シートP上に転移させる。一方、2次転写バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、2次転写ニップ内において、マイナス極性のトナーをニップ形成ローラ36側から2次転写裏面ローラ33側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、記録シートPに転移させたトナーを中間転写ベルト31側に再び引き寄せる。但し、2次転写バイアスの時間平均値(本例ではオフセット電圧Voffと同じ値)がマイナス極性であるので、相対的には、トナーは2次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出されるのである。なお、同図において、送りピーク値Vtは、2次転写ニップ内でトナーをベルト表面側から記録シート側に向けて送り出す極性であるマイナス極性のピーク値を示している。また、戻しピーク値Vrは、トナーを記録シート側からベルト表面側に向けて戻す極性であるプラス極性のピーク値を示している。図示のように、送りピーク値Ttの絶対値は、戻しピーク値Vrの絶対値よりも大きくなる。
このような2次転写バイアスを用いると、2次転写ニップ内で和紙等からなる記録シートPの凹部に転移させたトナー粒子を中間転写ベルト31表面に戻す際に、戻ったトナー粒子がベルト表面上に付着したままになっているトナー粒子を叩く。これにより、次にベルト表面から記録シートPの凹部内に転移するトナー粒子の数が増加する。二次転写バイアスの極性が二回切り替わる毎に、このような増加を繰り返すことで、記録シートPの凹部に十分量のトナー粒子が転移する。よって、表面凹凸に富んだ記録シートPの凹部における画像濃度不足の発生を抑えることができる。
図4は、本プリンタの電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御手段たる制御部60は、演算手段たるCPU60a(Central Processing Unit)を有している。また、不揮発性メモリたるRAM60c(Random Access Memory)、一時記憶手段たるROM60b(Read Only Memory)、フラッシュメモリ60d等も有している。装置全体の制御を司る制御部60には、様々な機器やセンサが接続されているが、同図では、主要な機器やセンサだけを示している。
1次転写電源81Y,M,C,Kは、1次転写ローラ35Y,M,C,Kに印加するための1次転写バイアスを出力するものである。また、2次転写電源39は、2次転写裏面ローラ33に印加するための2次転写バイスを出力するものである。
制御部60は,RAM60cやROM60b内に記憶している制御プログラムに基づいて、各手段の制御を行っている。また、オペレーションパネル50は、タッチパネルや複数のキーなどから構成され、タッチパネルの画面に画像を表示したり、タッチパネルやキーによって操作者の入力操作を受け付けたりする。制御部60から送られてくる制御信号に基づいて、タッチパネルに画像を表示することができる。また、2次転写電源39は、2次転写バイアスを定電流制御で出力するものである。
オペレーションパネル50は、使用される記録シートPの種類情報を取得する種類情報取得手段として機能している。操作者による入力操作に基づいて種類情報を取得するのである。制御手段としての制御部60は、オペレーションパネル50によって取得された種類情報が和紙のような表面凹凸に富んだ凹凸シートを示すものである場合には、プリントジョブ中に2次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを2次転写電源39から出力させる。これにより、凹凸シートからなる記録シートPの表面の凹凸にならった画像の濃度ムラ(凹部の濃度不足)の発生を抑えることができる。
また、制御部60は、種類情報が凹凸シートを示すものでない場合には、基本的には、プリントジョブ中に2次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを出力させる。これにより、白点画像や転写チリの発生を抑えることができる。具体的には、一般に、表面凹凸がない記録シートPは、凹凸シートに比べて体積抵抗率が低いことから、2次転写ニップ内での放電開始電圧が低くなる。そして、2次転写ニップ内でベルト表面との間に放電が生じることで、白点画像が発生し易くなる。また、重畳電圧からなる2次転写バイアスを用いると、2次転写の際に、画像部の周囲にトナー粒子を飛散させる転写チリという減少が発生し易くなる。凹凸シートが用いられる場合には、白点よりも、凹凸にならった画像濃度ムラの方が遙かに目立って画像劣化が著しいので、白点画像よりも、凹凸にならった画像濃度ムラの抑制を優先するために、重畳電圧からなる2次転写バイアスを採用する。しかし、凹凸シートでない場合には、凹凸にならった画像濃度ムラが発生しないので、直流電圧だけからなる2次転写バイアスを採用して白点画像の発生を抑えることができる。なお、凹凸シートでない場合であっても、種類によっては、重畳バイアスからなる2次転写バイアスを採用することがある。
次に、実施形態に係るプリンタの特徴的な構成について説明する。
図5は給送コロ跡を発生させた黒ベタ画像を示す模式図である。同図において、黒ベタ画像には、短冊状の低画像濃度部が3つ発生している。それらが給送コロ跡である。近年、普通紙の他に、様々な種類の記録シートPが用いられるようになっている。その一つとして、プラスチック等の合成樹脂を含む材料からなる樹脂シートが挙げられる。樹脂シートは、含水量が非常に少なく、電荷を逃がし難いために摩擦帯電し易い性質をもっている。このような樹脂シートを用いると、図5に示されるような給送コロ跡が発生し易くなる。
図6は、給送コロ101を示す斜視図である。給送コロ101は、金属製の回転軸部材101aと、自らの回転軸部材101aを貫通させて回転軸部材101aと一体になって回転するゴムからなるコロ部101bとを具備している。コロ部101bは、ローラのローラ部のように回転軸部材の長手方向の大部分を覆うものではなく、回転軸部材101aのごく一部を覆う短いものになっている。このようなコロ部101bが、回転軸線方向に間隔をあけて3つ設けられている。このように、複数のコロ部101bを設けることで、グリップ力を向上させて小サイズ紙でも良好に搬送することができる。
樹脂シートにおける表面方向の全域のうち、給送コロ101のコロ部101bに接触する領域(以下、コロ接触領域という)は、コロ部101bとの接触位置を通過する際に摩擦帯電する。これにより、樹脂シートにおいて、コロ接触領域と他の領域とで、電位差が生じる。この電位差により、図5に示されるような給送コロ跡が発生してしまうことがわかった。図示の例では、コロ接触領域の画像濃度が他の領域よりも低くなった例を示しているが、樹脂シートの材質によっては、帯電極性の違いからコロ接触領域の画像濃度が他の領域よりも高くなる場合もある。
本発明者は、給送コロ101によってシート収容カセット100から送り出された直後の記録シートPの電位を測定する実験を行った。記録シートPとしては、普通紙である株式会社リコー社製のType6000(70W)、及び樹脂シートである日清紡ポスタルケミカル社製のレーザーピーチを用いた。
図7は、この実験によって得られた電位とシート位置との関係を示すグラフである。横軸は、記録シートPの搬送方向の位置を先端側から示している。図示のように、普通紙であるType6000では、電位がシート全体に渡ってほぼ同じ値になっている。これに対し、樹脂シートであるレーザーピーチでは、コロ接触領域の電位がその他の領域(同グラフで電位が立ち上がっている位置よりも左側の領域)よりも高くなっている。これは、レーザーピーチのコロ接触領域がコロ部101bとの接触に伴って帯電したからである。
本発明者は、記録シーPトの種類と、2次転写バイアスの種類と、給送コロ跡の発生のし易さとの関係を調べる実験を行った。記録シートとしては、普通紙であるType6000、特殊東海製紙社製の凹凸紙であるレザック66(175g)、樹脂シートであるレーザーピーチ、及び日清紡ペーパープロダクツ株式会社製の樹脂シートであるNTパイルの4種類を用いた。これら4種類の記録シートPに対して、直流電圧だけからなる2次転写バイアスを用いて黒ベタ画像を2次転写したり、重畳電圧からなる2次転写バイアスを用いて黒ベタ画像を2次転写したりして、給送コロ跡の有無を調べた。なお、4種類のうち、唯一の表面凹凸シートであるレザック66については、給送コロ跡の他に、表面凹部の画像濃度の有無も調べた。また、全ての実験において、2次転写ニップ内で発生する放電に起因する白点の発生の有無も調べた。この実験の結果を、次の表1に示す。
表1において、給送コロ跡は、◎=全く発生していない、◎=僅かに発生しているが殆ど目立たない、×=顕著に発生している、の三段階で評価されている。また、表1において、実験番号1〜5では、2次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いているのに対し、実験番号6〜15では、2次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いている。交流成分のVppは、ピークツウピーク電位を表す記号である。なお、交流成分としては、何れの実験番号においても波形が正弦波であるものを用いた。
普通紙であるType6000、凹凸紙であるレザック66は、何れもパルプからなり、樹脂成分を含んでいない。これに対し、樹脂シートであるレーザーピーチ、NTパイルは、何れも樹脂成分を含んでいる。
記録シートPとして普通紙であるType6000を用い、且つ2次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いた実験番号1では、給送コロ跡が全く発生していない(◎)。パルプからなるType6000は、給送コロ101との接触部において帯電し難いからである。また、放電に起因する白点も発生していないが、これは、−1[kV]という比較的小さな値の直流電圧の印加では、2次転写ニップ内で放電が発生しないからである。なお、普通紙には表面凹部が存在しないので、普通紙については表面凹部の画像濃度不足の調査を実施していない。
記録シートPとして凹凸紙であるレザック66を用い、且つ2次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いた実験番号2においても、給送コロ跡が全く発生していない(◎)。パルプからなるレザック66も、給送コロ101との接触部において帯電し難いからである。但し、シート表面凹部の画像濃度不足が発生している。なお、放電に起因する白点が発生していないのは、直流電圧が−2[kV]という比較的小さな値であることに加えて、レザック66は肉厚で体積固有抵抗率の比較的大きなシートであるが故に放電開始電圧が比較的大きくなるためである。
レザック66を用いた場合であっても、実験番号15のように2次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いれば、シート表面凹部の画像濃度不足の発生を抑えることが可能である。2次転写ニップ内において、シート表面凹部とベルト表面との間でトナーの往復移動を繰り返す過程で、シート表面凹部内に転移するトナー粒子の数を徐々に増加させるからである。なお、重畳電圧からなる2次転写バイアスでは、戻しピーク値Vrよりも送りピーク値Vtの絶対値が大きくなる。この送りピーク値Vtがある程度大きくなると、放電に起因する白点が発生する。実験番号15では、送りピーク値Vtの絶対値が5.5[kV]という比較的大きな値になる。普通紙であれば、5.5[kV]の直流電圧をかければ白点を発生させる可能性が非常に高くなるが、レザック66は体積抵抗率が普通紙に比べてかなり大きいために、白点が発生していないと考えられる。
記録シートPとして樹脂シートであるレーザーピーチを用い、且つ2次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いた実験番号3や4においては、白点は発生しないが、給送コロ跡が発生している(×)。白点が発生しないのは、直流電圧が比較的小さな値であることに加えて、レーザーピーチは体積固有抵抗率の比較的大きなシートであるが故に放電開始電圧が比較的大きくなるからである。給送コロ跡が発生したのは、レーザーピーチが給送コロ101との接触部で摩擦帯電し易い樹脂シートだからである。
記録シートPとして樹脂シートであるNTパイルを用い、且つ2次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いた実験番号5においても、白点は発生しないが、給送コロ跡が発生している(×)。白点が発生していないのは、直流電圧が比較的小さな値であることに加えて、レーザーピーチは体積固有抵抗率の比較的大きなシートであるが故に放電開始電圧が比較的大きくなるからである。給送コロ跡が発生したのは、NTパイルが給送コロ101との接触部で摩擦帯電し易い樹脂シートだからである。
記録シートPとして普通紙であるType6000を用い、且つ2次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いた実験番号6〜9においては、何れも給送コロ跡が発生していない。Type6000は、給送コロ101との接触部で摩擦帯電し難いシートだからである。実験番号6では、白点の度合いがギリギリ許容範囲に収まったが、実験番号7、8、9では、許容範囲を超える白点が発生してしまった。送りピーク値Vtの絶対値が5.0[kV]、5.5[kV]、6.0[kV]というように比較的大きな値になって、2次転写ニップ内で放電を発生させてしまったからである。なお、重畳電圧からなる2次転写バイアスを用いる場合には、直流電圧に対して交流成分の振幅を重畳する分だけ、送りピーク値Vtが直流電圧だけからなる2次転写バイアスを用いる場合よりも大きくなるので、放電に起因する白点を発生させ易くなってしまう。
記録シートPとして樹脂シートであるレーザーピーチを用い、且つ2次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いた実験番号10においては、給紙コロ跡が僅かに発生したものの、その度合いが許容範囲内に収まった。また、同じく記録シートPとして樹脂シートであるレーザーピーチを用い、且つ2次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いた実験番号11、12においては、給紙コロ跡が発生しなかった。このように給紙コロ跡の発生が有効に抑えられたのは、2次転写ニップ内でレーザーピーチに交流電流を流すことでレーザーピーチを除電してレーザーピーチにおける給紙コロ101との接触箇所と被接触箇所との電位差を解消したからである。実験番号10と、実験番号11、12との違いは、前者における交流成分のピークツウピーク電位Vppが、後者よりも小さい点だけである。これは、重畳電圧の戻しピーク値Vrの絶対値をある程度大きな値にすることで、給紙コロ跡の発生をほぼ無くすことができることを意味している。
なお、実験番号10、11、12では、何れも白点が発生していない。実験番号12では、送りピーク値Vtが5.0[kV]という比較的大きな値になっているにもかかわらず、白点が発生していないのであるが、これは、レーザーピーチの体積固有抵抗率が比較的高いことで放電開始電圧が比較的高くするからである。
記録シートPとして樹脂シートであるNTパイルを用い、且つ2次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いた実験番号13においては、給紙コロ跡が僅かに発生したものの、その度合いが許容範囲内に収まった。また、同じく記録シートPとして樹脂シートであるNTパイルを用い、且つ2次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いた実験番号14においては、給紙コロ跡が発生しなかった。このように給紙コロ跡の発生が有効に抑えられた理由は、実験番号10や実験番号11と同様である。実験番号13、14の何れにおいても白点が発生していないのは、送りピーク値Vtが比較的小さな値であることに加えて、NTパイルの体積固有抵抗率が比較的低いからである。
以上の実験結果から、樹脂シートのように樹脂を含む記録シートPであっても、2次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いれば、給送コロの発生を抑え得ることがわかった。
次に、本発明者は、凹凸紙を用いる場合における重畳バイアスの適性と、樹脂シートを用いる場合における重畳バイアスの適性との違いを調べる実験を行った。凹凸紙としてはレザック66(175g)を用いた。また、樹脂シートとしてはレーザーピーチを用いた。それらの記録シートPに対し、重畳バイアスの波形、戻しピーク値Vr[kV]、Duty[%]、戻し面積比[%]を異ならせた条件で黒ベタ画像を2次転写して、給送コロ跡の発生度合いや表面凹部の濃度不足を調べた。なお、戻し面積比[%]は、交流成分波形のゼロを境にした戻し側(本例ではプラス側)の箇所の面積の戻し側及び送り側の合計面積に対する割合である。この実験の結果を次の表2に示す。
表2において、実験番号16では、重畳バイアスからなる2次転写バイアスとして、交流成分波形が図3のような正弦波であるものを用いた。また、実験番号17、19、20では、重畳バイアスからなる2次転写バイアスとして、交流成分波形が矩形波であって且つDutyが50[%]であるものを用いた。ここで言うDutyは、一周期内で転写方向とは逆方向の静電気力を発揮する極性(本例ではプラス)になっている時間(以下、戻し時間という)の一周期における割合である。つまり、実験番号17、19、20では、一周期内において、戻し時間(本例ではプラス極性になっている時間)と、転写方向の静電気力を発揮する送り時間(本例ではマイナス極性になっている時間)とが等しい矩形波からなる交流成分を採用している。
実験番号18、21では、重畳バイアスからなる2次転写バイアスとして、交流成分波形が矩形波であって且つDutyが15[%]であるものを用いた。このような2次転写バイアスは、図8に示されるように、戻し時間が送り時間よりも短くなる。同図において、オフセット電圧Voffは、直流成分の値である。戻し時間が送り時間よりも短い波形では、図示のように、オフセット電圧Voffよりも平均電位Vaveの方が大きくなる。
樹脂シートであるレーザーピーチを用いた実験番号16〜18に着目すると、実験番号16、17において給送コロ跡が発生していないのに対し、実験番号18ではごく僅か(殆ど目に付かないレベル)の給送コロ跡が発生している。このことから、樹脂シートを用いた場合には、Dutyを50[%]に近づけた方が給送コロ跡をより良好に抑え得ることがわかる。これは、Dutyを50[%]に近づけるほど、樹脂シートを良好に除電できるからだと考えられる。
凹凸紙であるレザック66を用いた実験番号19〜21に着目すると、レザック66が樹脂シートに比べて帯電し難いシートであることから、何れの実験番号においても給紙コロ跡を発生させていない。但し、シート表面凹部の画像濃度に差が生じている。実験番号19では、シート表面凹部の画像濃度が凸部の画像濃度よりも低くなったが、その濃度差がギリギリ許容範囲内に収まった(△)。これに対し、実験番号20では、シート表面凹部の画像濃度が凸部の画像濃度よりも低くなったが、その濃度差が目立たないほど僅かなものであった(○)。また、実験番号21では、シート表面凹部の画像濃度低下が全く生じていなかった(◎)。それら実験番号の間で異なる条件は、戻しピーク値Vr、Duty、及び戻し面積比である。本発明者が別の実験を行ったところ、それらのうち、戻しピーク値Vrがシート表面凹部の画像濃度に大きな影響を及ぼしていることがわかった。実験番号19〜21の比較からわかるように、戻しピーク値Vrを大きくするほど、シート表面凹部の画像濃度低下を抑えることができる。
戻し面積比を50[%]以上にすると、2次転写ニップ内でトナーをベルト表面からシート表面に相対移動させて転移させることができなくなる。よって、戻し面積比については、50[%]未満にする必要がある。そして、実験番号16〜18により、樹脂シートを用いる場合に、戻しピーク値Vrを比較的小さな1[kV]にしても、戻し面積比を小さくし過ぎなければ(7.5%以上)、樹脂シートの給送コロ跡の発生を抑え得ることがわかる。これに対し、実験番号19からわかるように、凹凸紙を用いる場合に、戻しピーク値Vrを比較的小さな1[kV]にすると、シート表面凹部の画像濃度低下を有効に抑えることができなくなる。また、凹凸紙の場合には、戻しピーク値Vrをある閾値以上にしないと、トナーをベルト側に戻すことができず紙面凹部とベルト表面との間のトナー往復運動を発生させることができなくなるため、戻しピーク値Vrを閾値以上に設定する必要がある。これに対し、樹脂シートの表面は、ほぼ全域に渡って中間転写ベルト31表面上のトナーと良好に密着していることから、トナー往復運動を発生させる必要がない。このような条件では、転写チリの発生を抑える狙いで、戻しピーク値Vrを比較的小さな値に留めることが望ましい。
表面凹凸の非常に少ない樹脂シートでは、2次転写ニップ内におけるシート表面とベルト表面との間のトナーの往復移動が殆ど起こらないことから、戻し面積比がトナーの転写性に大きな影響を及ぼす。具体的には、戻し面積比を比較的小さな値にして送り方向の静電気量を多くしないと、トナーを樹脂シート表面に良好に転写することができなくなる。この一方で、凹凸紙を用いる場合には、戻し面積比をある程度大きく確保しないと、シート表面凹部内に転移したトナー粒子をベルト表面に良好に引き戻すことができなくなって、凹部の画像濃度不足を引き起こしてしまう。よって、樹脂シートを用いる場合には、凹凸紙を用いる場合に比べて、戻し面積比を小さくすることが望ましい。これにより、樹脂シートに対するトナー像の転写不良の発生を抑えつつ、凹凸紙のシート表面凹部における画像濃度不足の発生を抑えることができる。
また、表面凹凸の非常に少ない樹脂シートでは、トナーの往復移動が殆ど起こらないことから、重畳電圧の平均電位もトナーの転写性に大きな影響を及ぼす。具体的には、平均電位を比較的大きな値にして送り方向の静電気量を多くしないと、トナーを樹脂シート表面に良好に転写することができなくなる。この一方で、凹凸紙を用いる場合には、平均電位を大きくし過ぎると、トナーを良好に往復移動させることができずに、凹部の画像濃度不足を引き起こしてしまう。よって、樹脂シートを用いる場合には、凹凸紙を用いる場合に比べて、平均電位を大きくすることが望ましい。これにより、樹脂シートに対するトナー像の転写不良の発生を抑えつつ、凹凸紙のシート表面凹部における画像濃度不足の発生を抑えることができる。
また、凹凸紙を用いる場合には、重畳電圧からなる2次転写バイアスとして、次のようなものを用いることが望ましい。即ち、Dutyが50[%]未満であるもの、即ち、一周期内で転写方向とは逆方向の静電気力を発揮する極性になっている時間が転写方向の静電気力を発揮する極性になっている時間よりも短いものである。これは次に説明する理由による。即ち、上述したように、レザック66などの凹凸紙は、一般に普通紙に比べて体積固有抵抗率が高いことから、放電に起因する白点が発生し難い。但し、送りピーク値Vtが大きくなり過ぎると、凹凸紙であっても放電に起因する白点が発生してしまう。このため、白点を抑えるという観点からすると、送りピーク値Vtをできるだけ小さくすることが望ましい。この一方で、送り方向の静電気量をある程度確保しないと、トナーをベルト側からシート側に相対移動させることができなくなってしまう。送り方向の静電気量を大きくする方法としては、交流成分のピークツウピーク電位Vppを大きくする方法や、Dutyを小さくして送り時間を大きくする方法がある。しかし、前者の方法では、白点を発生させてしまうおそれがある。これに対し、後者の方法では、送りピーク値を大きくすることがないので、白点の発生を助長することなく、トナーをシートに静電移動させるのに必要な静電気量を確保することができる。
以上の結果に鑑みて、制御部60は、以下のような制御を実施するように構成されている。即ち、制御部60は、Type6000、レザック66、レーザーピーチ、NTパイルなどといった種類の情報として機能するシート銘柄と、2次転写バイアスの種類とを関連付けるデータテーブルを記憶している。このデータテーブルは、数百種類の銘柄と、2次転写バイアスの種類とを関係付けている。2次転写バイアスの種類は、直流電圧、凹凸シート用重畳電圧、及び樹脂シート用重畳電圧の3種類である。
上記データテーブルは、凹凸紙の銘柄に対しては、凹凸シート用重畳電圧を関連付けている。また、樹脂シートの銘柄に対しては、樹脂シート用重畳電圧を関連付けている。また、凹凸紙でも樹脂シートでもない銘柄に対しては、直流電圧を関連付けている。
制御部60は、シート収容カセット100の脱着操作を検知すると、オペレーションパネル50のタッチパネルに、銘柄選択表を表示させるとともに、「カセットにセットした記録シートの銘柄を選択してく下さい」というメッセージを表示させる。そのメッセージに従って操作者がタッチ操作で選択した銘柄を、使用される記録シートPの種類として記憶する。そして、プリントジョブを開始すると、予め記憶していた銘柄に対応する2次転写バイアスの種類を上記データテーブルから特定し、特定結果と同じ種類の2次転写バイアスを2次転写電源39から出力させる。これにより、凹凸紙が用いられる場合には、2次転写バイアスとして凹凸シート用重畳電圧からなるものが2次転写電源39から出力される。また、樹脂シートが用いられる場合には、2次転写バイアスとして樹脂シート用重畳電圧からなるものが2次転写電源39から出力される。また、凹凸紙でも樹脂シートでもない記録シートPが用いられる場合には、2次転写バイアスとして直流電圧だけからなるものが2次転写電源39から出力される。
かかる構成では、樹脂シートが用いられる場合に、樹脂シート用重畳電圧からなる2次転写バイアスを用いることで、樹脂シートにおける給送コロ跡の発生を抑えることができる。また、凹凸紙が用いられる場合に、凹凸シート用重畳電圧からなる2次転写バイアスを用いることで、凹凸シートの表面凹部における画像濃度不足の発生を抑えることができる。また、樹脂シートでも凹凸紙でもない記録シートPが用いられる場合に、直流電圧だけからなる2次転写バイアスを用いることで、重畳電圧からなる2次転写バイアスを用いる場合に比べて、白点や転写チリの発生を抑えることができる。
2次転写電源39は、制御部60から直流電圧だけからなる2次転写バイアスを出力する旨の制御信号が送られてきた場合には、直流電圧だけからなる2次転写バイアスを定電流制御で出力する。これに対し、重畳電圧からなる2次転写バイアスを出力する旨の制御信号が送られてきた場合には、重畳電圧の直流成分を定電流制御又は定電圧制御で出力する。
また、2次転写電源39は、凹凸シート用重畳電圧からなる2次転写バイアスとして、樹脂シート用重畳電圧からなる2次転写バイアスに比べて、平均電位の高いものを出力する。かかる構成では、樹脂シートが用いられる場合には、凹凸紙が用いられる場合に比べて、平均電位を大きくすることで、樹脂シートに対するトナー像の転写不良の発生を抑えつつ、凹凸紙のシート表面凹部における画像濃度不足の発生を抑えることができる。なお、凹凸シート用、樹脂シート用の何れの重畳電圧も一周期内で極性が切り替わるものである。
また、2次転写電源39は、凹凸シート用重畳電圧からなる2次転写バイアスとして、樹脂シート用重畳電圧からなる2次転写バイアスに比べて、戻しピーク値Vrが大きいものを出力する。かかる構成では、凹凸紙が用いられる場合にトナーをシート表面凹部からベルト表面に十分に戻すことができないことによる凹部の画像濃度不足の発生を抑えつつ、樹脂シートを用いる場合に戻しピーク値Vrを大きくすることによる転写チリの発生を抑えることができる。
また、2次転写電源39は、重畳電圧からなる2次転写バイアスとして、戻し面積比が50[%]よりも小さいものを出力することで、トナーをベルト側からシート側に相対移動させる。また、樹脂シート用重畳電圧からなる2次転写バイアスとして、凹凸シート用重畳電圧からなる2次転写バイアスに比べて、戻し面積比の小さいものを出力する。かかる構成では、樹脂シートが用いられる場合には、凹凸紙が用いられる場合に比べて、戻し面積比を小さくすることで、樹脂シートに対するトナー像の転写不良の発生を抑えつつ、凹凸紙のシート表面凹部における画像濃度不足の発生を抑えることができる。
また、2次転写電源39は、凹凸シート用重畳電圧からなる2次転写バイアスとして、戻し時間が送り時間よりも短いものを出力する。かかる構成では、戻し時間を送り時間以上にする場合に比べて、シート凹凸にトナーを良好に転写しつつ、白点の発生を抑えることができる。なお、戻し時間については、0.03[msec]以上にしている。本出願人の実験により、0.03[msec]未満では、シート表面凹部内のトナー粒子をベルト表面に引き戻す前に極性が切り替わってしまうことが判明したからである。
本プリンタにおいては、重畳電圧の交流成分の周波数f[Hz]と、2次転写ニップのベルト移動方向の長さであるニップ幅d[mm]と、2次転写ニップにおける中間転写ベルト31の表面移動速度v[mm/s]とについて、次の条件を具備させている。即ち、「f>(4/d)×v」という条件である。この条件であれば、2次転写ニップ内でトナー粒子をシート表面凹部とベルト表面との間で4回以上往復移動させることが可能である。
なお、給送コロ跡の発生を抑える方法としては、2次転写ニップよりも上流側で樹脂シートを除電する方法も考えられる。しかしながら、この方法では、除電手段を設けることでコストアップを招来してしまう。これに対し、樹脂シートが用いられる場合に2次転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いて給送コロ跡の発生を抑える方法では、除電手段を設ける必要がないので、コストアップを回避することができる。特に、凹凸紙の凹部内にトナーを十分に転写するために、2次転写バイアスを直流電圧と重畳電圧とで切り替える構成を採用した市販機では、ソフトウエアの更新だけで、樹脂シートが用いられる場合にも重畳電圧を採用することが可能になる。
また、転写前接触部材との摩擦に起因する画像濃度ムラとして給送コロ跡について説明したが、給送コロ跡の他にも、前記画像濃度ムラは発生し得る。例えば、シート搬送方向における2次転写ニップよりも上流側で、記録シートPに対して幅方向(搬送方向と直交する方向)に部分的に接触しながら回転する転写前接触部材たる搬送コロによる搬送コロ跡も発生し得る。また、記録シートPに対して幅方向の全域に接触する転写前接触部材であっても、何らかの理由により、搬送方向において接触ムラがある場合には、その転写前接触部材と記録シートとの摩擦に起因する画像濃度ムラも発生し得る。本発明は、それらの画像濃度ムラの発生も抑えることができる。
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
態様Aは、像担持体(例えば中間転写ベルト31)の表面にトナー像を形成するトナー像形成手段(例えば画像形成ユニット1Y〜K、転写ユニット30、光書込ユニット80などからなるもの)と、前記像担持体から記録シートにトナー像を転写する転写手段(例えば転写ユニット30)と、前記転写手段に供給する転写バイアス(例えば2次転写バイアス)を出力する電源(例えば2次転写電源39)と、使用される記録シートの種類に基づいて、前記電源から出力させる転写バイアスを、直流電圧に交流電圧を重畳した重畳電圧からなるものと直流電圧だけからなるものとで切り替える制御を実施する制御手段(例えば制御部60)とを備える画像形成装置(例えばプリンタ)において、前記種類が樹脂を含む材料からなるものである場合には、転写バイアスとして重畳電圧からなるものを前記電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
かかる構成とは異なり、記録シートの種類が樹脂を含む材料からなるものである場合に、転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを用いると、次に説明する理由により、転写前接触部材との摩擦に起因する画像濃度ムラを記録シートに発生させ易くなってしまう。即ち、画像形成装置においては、回転駆動する給送コロなどの転写前接触部材を記録シート表面に押し当てながら、トナー像の転写のために記録シートを転写ニップ等の転写部に向けて搬送することが一般的に行われる。この際、記録シートが樹脂を含む材料からなるものであると、転写前接触部材との接触箇所を摩擦帯電させて、接触箇所と非接触箇所との間に電位差を発生させる。この電位差により、前述の接触箇所と非接触箇所とで画像の転写性に差が生じて画像内に濃度ムラを発生させ、画像濃度ムラとして視認されてしまうのである。
そこで、態様Aにおいては、記録シートの種類が樹脂を含む材料からなるものである場合には、転写バイアスとして重畳電圧からなるものを用いる。これにより、トナー像を像担持体から記録シートに転写する転写部において、樹脂を含む材料からなる記録シートに対して交流電流を付与して記録シートを除電しながら、トナー像を像担持体から記録シートに転写する。このように記録シートを除電することで、記録シートにおける転写前接触部材に対する接触領域と非接触領域との電位差を低減して、電位差によるトナー転写性の差を少なくする。これにより、樹脂を含む材料からなる記録シートにおける転写前接触部材との摩擦に起因する画像濃度ムラの発生を抑えることができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aにおいて、前記種類が表面凹凸の比較的大きいものである場合には、転写バイアスとして重畳電圧からなるものを前記電源から出力させる一方で、前記種類が表面凹凸の比較的大きいものでなく且つ樹脂を含む材料からなるものでもない場合には、転写バイアスとして直流電圧だけからなるものを前記電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、表面凹凸の比較的大きい記録シートが用いられる場合に、重畳電圧からなる転写バイアスを用いることで、シート表面凹部の画像濃度不足の発生を抑えることができる。使用される記録シートが、樹脂を含む材料からなるもの、表面凹凸の比較的大きいもの、の何れでもない場合に、直流電圧だけからなる転写バイアスを用いる。これにより、重畳電圧からなる転写バイアスを用いる場合に比べて、転写チリや白点の発生を抑えることができる。
[態様C]
態様Cは、態様Bにおいて、前記重畳電圧からなる転写バイアスとして極性が交互に切り替わるものを出力させるように、前記電源を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、樹脂を含む材料からなる記録シートを確実に除電したり、表面凹凸の比較的大きな記録シートの凹部画像濃度不足の発生を確実に抑えたりすることができる。
[態様D]
態様Dは、態様Cにおいて、前記種類が樹脂を含む材料からなるものである場合に用いる重畳電圧からなる転写バイアスとして、前記種類が表面凹凸の比較的大きいものである場合に用いる重畳電圧からなる転写バイアスよりも、平均電位の高いものを前記電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、樹脂シートが用いられる場合には、凹凸シートが用いられる場合に比べて、平均電位を大きくすることで、樹脂シートに対するトナー像の転写不良の発生を抑えつつ、凹凸シートの表面凹部における画像濃度不足の発生を抑えることができる。
[態様E]
態様Eは、態様C又はDの画像形成装置において、前記種類が表面凹凸の比較的大きいものである場合に用いる重畳電圧からなる転写バイアスとして、前記種類が樹脂を含む材料からなるものである場合に用いる重畳電圧からなる転写バイアスよりも、転写方向とは逆方向の静電気力を発揮する極性のピーク値が大きいものを前記電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、凹凸紙が用いられる場合にトナーをシート表面凹部からベルト表面に十分に戻すことができないことによる凹部の画像濃度不足の発生を抑えつつ、樹脂シートが用いられる場合に前記ピーク値を大きくすることによる転写チリの発生を抑えることができる。
[態様F]
態様Fは、態様C〜Eの何れかにおいて、重畳電圧からなる転写バイアスとして、一周期分の波形における転写方向とは逆方向の静電気力を発揮する極性側の箇所の面積が全面積の50[%]よりも小さいものを出力するように前記電源を構成し、前記種類が樹脂を含む材料からなるものである場合に用いる重畳電圧からなる転写バイアスとして、前記種類が表面凹凸の比較的大きい種類である場合に用いる重畳電圧からなる転写バイアスよりも、前記箇所の面積が小さいものを前記電源から出力させる制御を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、樹脂シートが用いられる場合には、凹凸紙が用いられる場合に比べて、戻し面積比を小さくすることで、樹脂シートに対するトナー像の転写不良の発生を抑えつつ、凹凸紙のシート表面凹部における画像濃度不足の発生を抑えることができる。
[態様G]
態様Gは、態様C〜Fの何れかにおいて、前記種類が表面凹凸の比較的大きい種類である場合に用いる重畳電圧からなる転写バイアスとして、一周期内で転写方向とは逆方向の静電気力を発揮する極性になっている時間が転写方向の静電気力を発揮する極性になっている時間よりも短いものを出力するように前記電源を構成したことを特徴とするものである。かかる構成では、戻し時間を送り時間以上にする場合に比べて、シート凹凸にトナーを良好に転写しつつ、白点の発生を抑えることができる。