以下、本発明を適用した画像形成装置として、中間転写方式のプリンタ(以下、単にプリンタという)の実施形態について説明する。冒頭に言及したように、本発明は、このような中間転写方式に限らず、像担持体たる感光体に現像されたトナー像を被転写材たる用紙に直接転写する画像形成装置にも適用され得るものである。また、以下に記述する部材の抵抗値は、特に限定しない限り、温度22℃、相対湿度50%の環境下での値である。
まず、本プリンタの基本的な構成について説明する。図1に示すプリンタは、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナー像を形成するための4つの画像形成ユニットを備えている。更に、転写ユニット30、光書込ユニット80、定着装置90、給紙カセット100等も備えている。
4つの画像形成ユニットは、Y、M、C、Kの各色トナーを用いるが、色以外の点では同様の構成になっており、寿命到達時に交換される。Kトナー像を形成するための画像形成ユニット1Kを例にすると、図2に示すように、潜像担持体たるドラム状の感光体2K、ドラムクリーニング装置3K、除電装置(不図示)、帯電装置6K、現像装置8K等を備えている。これらの装置が共通の保持体に保持されてプリンタ本体に対して一体的に脱着することで、それらを同時に交換できるようになっている。
感光体2Kは、ドラム基体の表面上に有機感光層が形成された外径60[mm]程度のドラム形状のものであって、不図示の駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動される。帯電装置6Kは、帯電バイアスが印加される帯電ローラ7Kを感光体2Kに接触あるいは近接させながら、帯電ローラ7Kと感光体2Kとの間に放電を発生させることで、感光体2Kの表面を一様帯電せしめる。本実施形態では、トナーの正規帯電極性と同じマイナス極性に一様帯電せしめる。帯電バイアスとしては、直流電圧に交流電圧を重畳したものを採用している。帯電ローラ7Kは、金属製芯金の表面に導電性弾性材料から成る導電性弾性層が被覆されたものである。帯電ローラ等の帯電部材を感光体2Kに接触あるいは近接させる方式に代えて、帯電チャージャーによる方式を採用してもよい。
一様帯電せしめられた感光体2Kの表面は、光書込ユニット80から発せられるレーザ光によって光走査されてK用の静電潜像を担持する。このK用の静電潜像は、不図示のKトナーを用いる現像装置8Kによって現像されてKトナー像になる。そして、中間転写ベルト31上に一次転写される。
ドラムクリーニング装置3Kは、一次転写工程(後述する一次転写ニップ)を経た後の感光体2K表面に付着している転写残トナーを除去する。回転駆動されるクリーニングブラシローラ4K、片持ち支持された状態で自由端を感光体2Kに当接させるクリーニングブレード5K等を有している。回転するクリーニングブラシローラ4Kで転写残トナーを感光体2K表面から掻き取ったり、クリーニングブレードで転写残トナーを感光体2K表面から掻き落としたりする。なお、クリーニングブレードについては、その片持ち支持端側を自由端側よりもドラム回転方向下流側に向けるカウンタ方向で感光体2Kに当接させている。
不図示の除電装置は、ドラムクリーニング装置3Kによってクリーニングされた後の感光体2Kの残留電荷を除電する。この除電により、感光体2Kの表面が初期化されて次の画像形成に備えられる。
現像装置8Kは、現像ロール9Kを内包する現像部12Kと、不図示のK現像剤を撹拌搬送する現像剤搬送部13Kとを有している。現像剤搬送部13Kは、第1スクリュー部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容する第2搬送室とを有している。それらスクリュー部材は、それぞれ、軸線方向の両端部がそれぞれ軸受けによって回転自在に支持される回転軸部材と、その周面に螺旋状に突設せしめられた螺旋羽根とを具備している。
第1スクリュー部材10Kを収容する第1搬送室と、第2スクリュー部材11Kを収容する第2搬送室とは、仕切壁によって仕切られているが、仕切壁におけるスクリュー軸線方向の両端箇所には、それぞれ両搬送室を連通させる連通口が形成されている。第1スクリュー部材10Kは、螺旋羽根内に保持している不図示のK現像剤を、回転駆動に伴って回転方向に撹拌しながら、図の紙面に直交する方向の奥側から手前側に向けて搬送する。第1スクリュー部材10Kと、現像ロール9Kとは互いに向かい合う姿勢で平行配設されているため、このときのK現像剤の搬送方向は、現像ロール9Kの回転軸線方向に沿った方向でもある。そして、第1スクリュー部材10Kは、現像ロール9Kの表面に対してK現像剤をその軸線方向に沿って供給していく。
第1スクリュー部材10Kの図中手前側端部付近まで搬送されたK現像剤は、仕切壁の図中手前側端部付近に設けられた連通開口(図示せず)を通って、第2搬送室内に進入した後、第2スクリュー部材11Kの螺旋羽根内に保持される。そして、第2スクリュー部材11Kの回転駆動に伴って、回転方向に撹拌されながら、図中手前側から奥側に向けて搬送されていく。
第2搬送室内において、ケーシングの下壁には不図示のトナー濃度センサが設けられ、第2搬送室内のK現像剤のKトナー濃度を検知する。Kトナー濃度センサとしては、透磁率センサから成るものが用いられている。Kトナーと磁性キャリアとを含有するK現像剤の透磁率は、Kトナー濃度と相関関係があるため、透磁率センサは、Kトナー濃度を検知していることになる。
本プリンタには、各色用の現像装置の第2収容室内に各色トナーをそれぞれ個別に補給するための不図示の各色トナー補給手段が設けられている。そして、プリンタの制御部は、RAMに、各色トナー濃度検知センサからの出力電圧値の目標値である各色用のVtrefを記憶している。各色トナー濃度検知センサからの出力電圧値と、各色用のVtrefとの差が所定値を超えた場合には、その差に応じた時間だけ各色トナー補給手段を駆動する。これにより、各色用の現像装置における第2搬送室内に各色トナーが補給される。
現像部12K内に収容されている現像ロール9Kは、第1スクリュー部材10Kに対向するとともに、ケーシングに設けられた開口を通じて、感光体2Kにも対向している。現像ロール9Kは、回転駆動される非磁性パイプから成る筒状の現像スリーブと、この内部にスリーブと連れ回らないように固定されたマグネットローラとを具備する。そして、第1スクリュー部材10Kから供給されるK現像剤をマグネットローラの発する磁力によってスリーブ表面に担持しながら、スリーブの回転に伴って、感光体2Kに対向する現像領域に搬送する。
現像スリーブには、トナーと同極性であって、感光体2Kの静電潜像よりも大きく、且つ感光体2Kの一様帯電電位よりも小さな現像バイアスが印加されている。これにより、現像スリーブと感光体2Kの静電潜像との間には、現像スリーブ上のKトナーを静電潜像に向けて静電移動させる現像ポテンシャルが作用する。また、現像スリーブと感光体2Kの地肌部との間には、現像スリーブ上のKトナーをスリーブ表面へ指向させる非現像ポテンシャルが作用する。それら現像ポテンシャル、非現像ポテンシャルの作用により、現像スリーブ上のKトナーが感光体2Kの静電潜像に選択的に転移して、静電潜像をKトナー像に現像する。
先に示した図1において、Y、M、C用の画像形成ユニットにおいても、K用の画像形成ユニットと同様に、感光体2Y、2M、2C上にY、M、Cの各色トナー像が形成される。なお、以下では各部材の符号表記を、特に断らない限り、色を示すK、Y、M、Cを添えずに示す。
画像形成ユニットの上方には、潜像書込手段たる光書込ユニット80が配設されている。光書込ユニット80は、パーソナルコンピュータ等の外部機器から送られてくる画像情報に基づいてレーザダイオードから発したレーザ光により、各感光体2を光走査する。この光走査により、各感光体2上に各色用の静電潜像が形成される。具体的には、感光体2の一様帯電した表面の全域のうち、レーザ光が照射された箇所は、電位を減衰せしめる。これにより、レーザ照射箇所の電位が、それ以外の箇所(地肌部)の電位よりも小さい静電潜像となる。なお、光書込ユニット80は、光源から発したレーザ光Lを、不図示のポリゴンモータによって回転駆動したポリゴンミラーで主走査方向(用紙搬送方向と直交する方向)に偏光せしめながら、複数の光学レンズやミラーを介して感光体に照射するものである。LEDアレイの複数のLEDから発したLED光によって光書き込みを行うものを採用してもよい。
画像形成ユニットの下方には、像担持体たる無端状の中間転写ベルト31を張架しながら図中時計回り方向に無端移動せしめる転写装置としての転写ユニット30が配設されている。転写ユニット30は、中間転写ベルト31の他に、これを巻回する駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34を有している。更に、4つの一次転写ローラ35、ニップ形成ローラ36、ベルトクリーニング装置37等が備えられている。
中間転写ベルト31は、そのループ内側に配設された駆動ローラ32、二次転写裏面ローラ33、クリーニングバックアップローラ34、及び4つの一次転写ローラ35によって張架されている。そして、不図示の駆動手段によって図中時計回り方向に回転駆動される駆動ローラ32の回転力により、同方向に無端移動せしめられる。中間転写ベルト31としては、次のような特性を有するものを用いている。即ち、厚みは20[μm]〜200[μm]、好ましくは60[μm]程度である。また、体積抵抗率は1e6[Ωcm]〜1e12[Ωcm]、好ましくは約1e9[Ωcm]程度である(三菱化学製ハイレスタ−UP MCP HT45にて、印加電圧100Vの条件で測定)。また、材料はカーボン分散ポリイミド樹脂である。
4つの一次転写ローラ35は、無端移動せしめられる中間転写ベルト31を、各感光体2との間で挟持する。これにより、中間転写ベルト31の外周面と、感光体2とが当接するY、M、C、K用の一次転写ニップが形成される。一次転写ローラ35には、不図示の転写バイアス電源によってそれぞれ一次転写バイアスが印加されている。これにより、感光体2上のトナー像と、一次転写ローラ35との間に転写電界が形成される。Y用の感光体2Y表面に形成されたYトナーは、感光体2Yの回転に伴ってY用の一次転写ニップに進入する。そして、転写電界やニップ圧の作用により、感光体2Y上から中間転写ベルト31上に一次転写される。このようにしてYトナー像が一次転写せしめられた中間転写ベルト31は、その後、M、C、K用の一次転写ニップを順次通過する。そして、感光体2上の各色トナー像が、Yトナー像上に順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト31上には色重ね合わせトナー像(フルカラートナー像)が形成される。
色重ね合わせトナー像を保持する一次転写ローラ35は、金属製の芯金と、この表面上に固定された導電性のスポンジ層とを具備する弾性ローラから成り、次のような特性を有している。即ち、外径は16[mm]で、心金径は10[mm]である。また、スポンジ層の抵抗Rは、約3E7[Ω]である。この値は、接地された外径30[mm]の金属ローラを10[N]の力でスポンジ層に押し当てた状態で、一次転写ローラ心金に1000[V]の電圧を印加したときに流れる電流Iから、オームの法則(R=V/I)に基づいて算出される。このような一次転写ローラ35に対して、一次転写バイアスを定電流制御で印加する。なお、一次転写ローラ35に代えて、転写ブラシや転写ブレード等を採用することも可能である。
転写ユニット30において、転写部材たるニップ形成ローラ36が、ループ内側の二次転写裏面ローラ33に対する対向位置で、中間転写ベルト31のループ外側に配設され、二次転写裏面ローラ33との間で中間転写ベルト31を挟持している。これにより、中間転写ベルト31の外周面とニップ形成ローラ36とが当接する二次転写ニップが形成される。ニップ形成ローラ36が接地されているのに対し、転写対向部材たる二次転写裏面ローラ33には、二次転写バイアス電源39によって二次転写バイアスが印加される。これにより、二次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36との間に、正規に帯電しているマイナス極性のトナーを二次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に向けて、即ち、転写方向に静電移動させる二次転写電界が形成される。
二次転写バイアス電源39は、直流電源と交流電源とを有しており、二次転写バイアスとして、直流電圧に交流電圧を重畳せしめたものを出力することができる。その際、二次転写バイアス電源39から二次転写裏面ローラ33に印加される電圧の、交流成分の周波数等の設定値が、中間転写ベルト31上の画像面積率に応じて制御される。周波数等の具体的な設定方法については後で説明する。
転写ユニット30の下方には、用紙Pを複数枚重ねた紙束の状態で収容している給紙カセット100が配設されている。給紙カセット100は、紙束の一番上の用紙Pに給紙ローラ100aを当接させており、これを所定のタイミングで回転駆動させることで、その用紙Pを給紙路に向けて送り出す。給紙路の下流側末端付近には、レジストローラ対101が配設されている。レジストローラ対101は、給紙カセット100から送り出された用紙Pが当接するとすぐに両ローラの回転を停止させる。そして、当接した用紙Pを二次転写ニップ内で中間転写ベルト31上の色重ね合わせトナー像に同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、用紙Pを二次転写ニップに向けて送り出す。二次転写ニップで用紙Pに密着せしめられた中間転写ベルト31上の色重ね合わせトナー像は、二次転写電界やニップ圧の作用によって用紙P上に一括二次転写される。このようにして表面にフルカラートナー像が形成された用紙Pは、二次転写ニップを通過すると、ニップ形成ローラ36や中間転写ベルト31から曲率分離する。
二次転写裏面ローラ33は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]で、芯金径は約16[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1e6[Ω]〜1e12[Ω]、好ましくは約4E7[Ω]である。抵抗Rは、一次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
ニップ形成ローラ36は、次のような特性を有している。即ち、外径は約24[mm]で、芯金径は約14[mm]である。芯金の表面には、導電性のNBR系ゴム層が被覆されており、その抵抗Rは1E6[Ω]以下である。抵抗Rは、一次転写ローラと同様の方法によって測定された値である。
二次転写バイアス電源39の出力端子は、二次転写裏面ローラ33の芯金に接続されている。二次転写裏面ローラ33の芯金の電位は、二次転写バイアス電源39からの出力電圧値とほぼ同じ値になる。また、ニップ形成ローラ36については、その芯金を接地(アース接続)している。なお、重畳バイアスを二次転写裏面ローラ33の芯金に印加しつつ、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、重畳バイアスをニップ形成ローラ36の芯金に印加しつつ、二次転写裏面ローラ33の芯金を接地してもよい。この場合、直流電圧の極性を異ならせる。具体的には、マイナス極性のトナーを用い且つニップ形成ローラ36を接地した条件で、二次転写裏面ローラ33に重畳バイアスを印加する場合には、直流電圧としてトナーと同じマイナス極性のものを用いる。また、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーと同じマイナス極性にする。これに対し、二次転写裏面ローラ33を接地し、且つ重畳バイアスをニップ形成ローラ36に印加する場合には、直流電圧としてトナーとは逆のプラス極性のものを用いて、重畳バイアスの時間平均の電位をトナーとは逆のプラス極性にする。重畳バイアスを二次転写裏面ローラ33やニップ形成ローラ36に印加する代わりに、直流電圧を何れか一方のローラに印加するとともに、交流電圧を他方のローラに印加してもよい。ニップ形成ローラ36の代わりに、ブラシやブレードを転写部材として採用することも可能である。
本実施形態では、直流電圧に重畳する交流電圧の波形としてサイン波を用いている。但し、後述するように、直流電圧に重畳する交流電圧の波形はサイン波でも、矩形波でも、三角波でも、台形波でも構わない。また、Dutyが50%でない波形を用いることも可能である。
二次転写ニップを通過した後の中間転写ベルト31には、用紙Pに転写されなかった転写残トナーが付着している。転写残トナーは、中間転写ベルト31の外周面に当接しているベルトクリーニング装置37によってベルト表面からクリーニングされる。中間転写ベルト31のループ内側に配設されたクリーニングバックアップローラ34は、ベルトクリーニング装置37によるベルトクリーニングをループ内側からバックアップする。
二次転写ニップの用紙搬送下流には、定着装置90が配設されている。定着装置90は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ91と、これに所定の圧力で当接しながら回転する加圧ローラ92とを備え、それらローラの当接によって定着ニップが形成される。定着装置90内に送り込まれた用紙Pは、その未定着トナー像担持面を定着ローラ91に密着させる姿勢で、定着ニップを通過する。その際、加熱や加圧の影響によってトナー像中のトナーが軟化さしめられて、フルカラートナー画像が定着せしめられる。
定着装置90内から排出された用紙Pは、片面印字の場合は第一搬送経路に従って機外へと排出され、通常は、不図示のフィニッシャによって画像面が下向きになるような形で排紙トレイに排出される。フィニッシャによって画像面を下向きにするのは、セキュリティやプライバシに対する配慮である。
図3は、二次転写バイアス電源39から出力される重畳バイアスからなる二次転写バイアスの、サイン波形の場合を説明する図である。
図3において、二次転写バイアスは、上述したように、二次転写裏面ローラ33の芯金に印加される。また、上述したように、二次転写裏面ローラ33の芯金に二次転写バイスが印加されると、第1部材たる二次転写裏面ローラ33の芯金と、第2部材たるニップ形成ローラ36の芯金との間に、電位差が発生する。よって、二次転写バイアス電源39は、電位差発生手段としても機能している。なお、電位差は、絶対値として取り扱われることが一般的であるが、本明細書では、極性付きの値として取り扱うものとする。より詳しくは、二次転写裏面ローラ33の芯金の電位から、ニップ形成ローラ36の芯金の電位を差し引いた値を、電位差として取り扱うことにする。かかる電位差の時間平均値は、トナーとしてマイナス極性のものを用いる本例では、その極性がマイナスになった場合に、ニップ形成ローラ36の電位を二次転写裏面ローラ33の電位よりもプラス側に大きくする。つまり、ニップ形成ローラ36の電位を二次転写裏面ローラ33の電位よりもトナーの帯電極性とは逆極性側に大きくする。よって、トナーを二次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電移動させることになる。
図3において、オフセット電圧Voffは、二次転写バイアスの直流成分の値である。また、ピークツウピーク電圧Vppは、二次転写バイアスの交流成分のピーク間電圧である。即ち、印加電圧の交流バイアス成分の最大値と最小値の差の絶対値である。本実施形態においては、既に述べたように、二次転写バイアスは、オフセット電圧Voffとピークツウピーク電圧Vppとを重畳したものであり、その時間平均値Vaveはオフセット電圧Voffと同じ値になる。また、本実施形態においては、既に述べたように、二次転写バイアスを二次転写裏面ローラ33の芯金に印加し、且つニップ形成ローラ36の芯金を接地している(0V)。よって、二次転写裏面ローラ33の芯金の電位は、そのまま両芯金の電位差となる。そして、両芯金の電位差は、オフセット電圧Voffと同じ値の直流成分(Vave)と、ピークツウピーク電圧Vppと同じ値の交流成分(Epp)とから構成される。なお、Vaveは時間平均電圧である。
図3に示すように、本実施形態では、オフセット電圧Voffとして、マイナス極性のものを採用している。二次転写裏面ローラ33に印加される二次転写バイアスのオフセット電圧Voffの極性をマイナスにすることで、二次転写ニップにおいて、マイナス極性のトナーを二次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に相対的に押し出すことが可能になる。二次転写バイスの極性がトナーと同じマイナス極性になっているときには、二次転写ニップにおいて、マイナス極性のトナーを二次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出す。これにより、中間転写ベルト31上のトナーを用紙P上に転移させる。一方、二次転写バイアスの極性がトナーとは逆のプラス極性になっているときには、二次転写ニップにおいて、マイナス極性のトナーをニップ形成ローラ36側から二次転写裏面ローラ33側に向けて静電的に引き寄せる。これにより、用紙Pに転移させたトナーを中間転写ベルト31側に再び引き寄せる。但し、二次転写バイアスの時間平均値(本例ではオフセット電圧Voffと同じ値)がマイナス極性であるので、相対的には、トナーは二次転写裏面ローラ33側からニップ形成ローラ36側に静電的に押し出されるのである。なお、図3において、戻り電位ピーク値Vrは、トナーとは逆極性であるプラス側のピーク値を示している。
図4は、本実施形態のプリンタの制御ブロック図である。図4において制御手段たる制御部200は、演算手段たるCPU200a、不揮発性メモリたるRAM200c、一時記憶手段たるROM200b等を有している。制御部200は、装置全体の制御を司るものであり、様々な機器やセンサが接続されているが、同図では、本プリンタの特徴に関連する機器やセンサだけを示している。制御部200は、RAM200cやROM200bに記憶している制御プログラムに基づいて、各手段の機能を実現している。具体的には、画像データに基づいて、各色(Y,C,M,K)のトナーの、LD露光の各副走査位置における、感光体上の画像面積率と、それらの和である中間転写ベルト上の画像面積率を演算する機能を有している。
また、制御部200は、演算した画像面積率に基づいて、二次転写バイアスの交流成分の周波数を演算し、演算した二次転写バイアス波形になるように、二次転写バイアス電源39を制御する制御手段としての機能も有している。
本実施形態のプリンタでは、中間転写ベルト上のトナー像の主走査方向に対する画像面積率の、副走査方向(中間転写ベルト移動方向、用紙搬送方向)600[dpi]の50画素単位(約7.5ms毎)の平均値を基に、周波数が設定される。
図5は二次転写ニップ通過時のA3用紙を例とし、画像面積率の定義を説明した図である。プリンタ内において図中矢印A方向に用紙が搬送される。二次転写ニップ内では、この矢印A方向が副走査方向と同じ方向になる。縦長においた場合のA3用紙の幅は297[mm]である。用紙には、副走査方向に延在する帯状の画像(斜線で示す)が形成されており、この画像の主走査方向(図中左右方向)における長さは29.7[mm]である。例えば図5の左側の場合は、用紙における副走査方向全域に渡って延在している(二次転写ニップで中間転写ベルトから転写される)ので、副走査方向の位置にかかわらず、画像面積率は10[%]で一定である。つまり、図5の左側のような画像を出力する際は、二次転写ニップ出口に進入している50ライン区画における平均画像面積率は10%となる。
ところで、直流電圧に交流電圧を重畳した転写バイアスによって転写する場合は、交流電圧による周期的な画像ムラを発生させないように配慮する必要がある。本実施形態のプリンタのプロセス線速vが282[mm/s]のとき、ピッチムラの発生を回避し得る周波数fの下限値は400[Hz]であることが分かっている。表2は、一般的な普通紙にKの全ベタ画像を出力して、ピッチムラの有無を目視評価した結果で、○はムラが確認されない場合、×はムラが確認される場合を示している。
一方、先の表1に示されるように、基本的にトナーの往復運動回数を増やせば、トナーの転写性が良くなる。表3は、本実施形態のプリンタを用いて、K単色全ベタ画像を特殊製紙株式会社製のレザック66 260kgというエンボス紙に転写した際の、用紙の凹部の画像濃度を1.0〜5.0の10段階のランク(数値が大きいほど画質が良い)で評価した結果である。なお、評価時は、Voff −1.2[kV]、Vpp 7[kV]の交流バイアスを使用した。またDC(−3kV)の結果も併せて示す。周波数を大きくするほど、凹部の濃度が高くなることが確認された。
但し、画像が1by1等の、個々のドット当たりの付着量が少ないハーフトーン画像の場合は、表1に関連して述べたように交流電界の効果が弱くなり、周波数を高くしても転写性はほとんど向上しない。表4は表3と同じ電圧条件でハーフトーン画像を出力した場合の用紙の凸部の画像濃度の評価結果である。単純なDCバイアスの方が、画像濃度が高くなっている。更に表5から分かるように、チリについては、周波数が高くなるほど、悪化する。
以上の表3〜表5の結果より、画像面積率の小さいハーフトーンのような画像の場合は、周波数を低くすることによって、ドットのチリを抑えたほうが画質上のメリットが高いため、本実施形態のプリンタでは、画像面積率に応じて周波数を制御している(図6)。即ち、画像面積率が低くなるほど、周波数を小さく設定する。但し、交流成分の周波数の下限は、ピッチムラが発生しないようにする必要があるため、本実施形態のプリンタでは400[Hz]に設定される。
また、画像面積率に応じて周波数を制御するだけでなく、転写バイアスにおける交流成分のピーク間電圧Vppや直流成分Voffも制御するよう電圧又は電流を制御してよい(図7)。これによりドット画像でより高い質の画像濃度を確保できる。このようにVpp(ピーク間電圧)やVoff(オフセット電圧)も制御する構成を以下では第2実施形態と称し、これまでの構成を第1実施形態と称する。
基本的に付着量が多くなるほど、必要なVppやVoffは大きくなるため、周波数だけでなく、VppやVoffも制御することによって、より良好な転写画像を実現できる。但し、先に述べたように画像面積率が低い場合は交流電界の効果が期待できないため、第2実施形態(図7の例)ではチリ抑制を優先してVppを小さく設定している。つまり、Voffの絶対値に対するVppの比率を、画像面積率が小さくなるほど、小さくするように制御して、トナーの往復運動を弱める。これによって、画像面積率の低いハーフトーン画像等でのチリの抑制と、全ベタ等の高付着量画像の転写性の確保を両立する。一方、画像面積率が高いベタ画像等の場合は、トナーの往復運動を十分に発生させる必要がある。そのため、例えば画像面積率が100%を超えるような画像に対しては、VoffとVppの関係が必ずVpp>4×|Voff|を満たすように電圧を設定する。つまり、ピーク間電圧Vppが、二次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36の各極性付き電位の差Voffの絶対値の4倍よりも大きくなるように電圧設定して、大きな交番電界を形成する。
更に、図8、図9のように、一定値以下(閾値以下)の画像面積率に対しては、交流成分を重畳せずに、単純な直流成分のみを印加するやり方もドットのチリ抑制と画像濃度の確保を両立する上で有効である(このような制御構成を第3実施形態とする)。単純な直流成分を印加することによって、ハーフトーン画像等に対して、用紙の凸部での濃度を確保できる。直流成分のみを印加する領域については、交流を重畳する領域で用いられる直流成分の絶対値に比べて、直流電圧の絶対値を大きくすることで、ドット画像の濃度を向上できる。即ち、第3実施形態の場合も、Voffの絶対値に対するVppの比率を、画像面積率が小さくなるほど、小さくするように制御する。
なお、直流成分のみが印加される領域に関しては、図9のように電圧で制御するのではなく、電流で制御しても構わない。電流で制御すれば、転写部材や用紙の抵抗変動の影響を受け難くなるメリットを有するためである。特に、直流電流の値を画像面積率に応じて制御すれば、より良好な転写画像を得ることが可能となる。
ところで、第2実施形態、第3実施形態のように電圧制御を行うプリンタでは、先に述べたようにVoffとVppは中間転写ベルト上の画像面積率に応じて変更される。これらの目標制御値も、周波数と同じく、中間転写ベルト上のトナー像の主走査方向に対する画像面積率の、副走査方向600[dpi]の50画素単位(約7.5ms毎)の平均値を基に設定される。図10は、第3実施形態での電圧制御を説明するためのイメージ図である。
Voff、Vppとも、画素情報を取得した副走査方向に50画素の領域が、二次転写ニップの出口を通過する間は、設定したVoff、Vppが印加される。Vppはトナーの往復運動を起こすことによってトナーの転写性を向上するために用いられるため、本来は、対象となる領域が二次転写ニップの入口に進入するタイミングに合わせて印加すべきである。しかしながら、第3実施形態のように高い直流電圧が印加される状態で、高いVppを有する交流成分を重畳すると、放電が発生するため、本例ではVoffとVppを制御するタイミングを揃えている。
なお、第2実施形態、第3実施形態では50画素毎に制御するが、制御間隔はこれに限られず、もっと細かくても粗くてもよい。細かくする場合は、交流成分の周期より、大きな間隔で制御する。例えば、第2実施形態、第3実施形態では、重畳される交流波形のうち、最も周波数の低いものは400[Hz]である。即ち、この周期は0.0025[s]で、この間に用紙が移動する距離は7.05E−4[m]である。この距離は600[dpi]の16.7画素に相当するため、最も細かく周波数や電圧を制御する場合の間隔は17画素となる。一方、粗くする場合は、最大で1ページ毎の画像面積率情報に基づいて制御する。
ところで、既に説明しているように、第1実施形態〜第3実施形態のプリンタにおいては、二次転写裏面ローラ33の芯金に対して二次転写バイアスを印加するとともに、ニップ形成ローラ36の芯金を接地している。そのため、両ローラ間における電位差の時間平均値であるVaveが、二次転写バイアスの直流成分であるオフセット電圧Voffと同じ値になる。ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりにこの芯金に直流電圧を印加する場合、二次転写裏面ローラ33の芯金に印加する直流電圧とニップ形成ローラ36の芯金に印加する直流電圧との重畳値をオフセット電圧Voffとして取り扱うこととする。つまり、ニップ形成ローラ36の芯金を接地する代わりに、ニップ形成ローラ36の芯金に直流電圧を印加した場合であっても、Vaveとオフセット電圧Voffとは同じ値になる。
ニップ形成ローラ36等のニップ形成部材と、二次転写裏面ローラ33等の裏面当接部材との間に、直流成分と交流成分を含む電位差を発生させる方法としては、次の6通りを例示することができる:
(1)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材をアース接続する;
(2)ニップ形成部材に重畳バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に直流バイアスを印加する;
(3)ニップ形成部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に直流バイアスを印加する;
(4)ニップ形成部材をアース接続し、且つ、裏面当接部材に重畳バイアスを印加する;
(5)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に重畳バイアスを印加する;
(6)ニップ形成部材に直流バイアスを印加し、且つ、裏面当接部材に交流成分だけからなる交流バイアスを印加する。
また、交流バイアスの波形はサイン波に限定されるものではない。サイン波の場合は、二次転写裏面ローラ33とニップ形成ローラ36における電位差の時間平均値であるVaveが、二次転写バイアスの直流成分であるオフセット電圧Voffと等しくなる(図3参照)。しかしながら、このような交流電圧では、往復運動に必要なVrに対して、必然的にVtが大きくなり、特にトナーの付着量が多い場合や用紙の抵抗が高い場合、放電跡が発生し易い問題が生じるので、Voffを小さくする等して調整する必要がある。
このような問題に対しては、直流成分のVoffを挟んで、トナーを戻す側の波形の面積を、トナーを転写する側の波形の面積より小さくすることで、必要以上に高いVtが印加されることがないようにする(図11〜図17)。ここで「転写時間」と「戻し時間」という用語を導入し、これらを以下のように定義する。
転写時間:交流バイアスの波形の1周期において、中心電圧(Voff)からトナーが用紙に転写される側の時間;
戻し時間:交流バイアスの波形の1周期において、中心電圧(Voff)からトナーが中間転写体へ戻される側の時間。
戻し時間の割合を転写時間より小さくして、必要以上にVtが高くなることを防ぐとともに、Vaveを大きくでき、サイン波より良好な画像を実現できる。例えば、第1実施形態の構成のプリンタの場合、Vt −3[kV]、Vr +2.0[kV]、Duty 16%の矩形波のバイアスを用いることにより、白抜けのない画像を得ることができる。
周波数や電圧、電流の制御は、単純に画像面積率を考慮するだけでも十分高い効果を発揮する。しかしながら、画像の構造も考慮して制御を行ってもよい。同じ画像面積率でも、ベタ画像かハーフーン画像かを考慮すれば、より良好な画像を得ることが可能となる。