以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るチップフィルタ1の一部切欠斜視図である。図2は、図1に示すチップフィルタ1の模式的な平面図である。
図1を参照して、チップフィルタ1は、略直方体形状に形成されており、矩形の平面形状を有している。チップフィルタ1の長手方向の長さLは、たとえば0.5mm以上1.5mm以下(本実施形態では1.0mm程度)であってもよい。チップフィルタ1の短手方向の長さWは、たとえば0.4mm以上1.2mm以下(本実施形態では0.8mm程度)であってもよい。チップフィルタ1の厚さTは、たとえば0.1mm以上0.5mm以下(本実施形態では0.2mm程度)であってもよい。
チップフィルタ1は、略直方体形状の基板2を含む。基板2は、一対の主面2a,2bと、長手方向に沿う一対の側面2cと、短手方向に沿う一対の側面2dとを含む。一対の主面2a,2bのうちの一方(図1の上面側の主面2a)が素子形成面2aとされている。以下、主面2aを「素子形成面2a」といい、その反対側の主面2bを「裏面2b」という。
基板2の素子形成面2a上には、複数(本実施形態では5つ)の外部端子3が互いに間隔を空けて形成されている。複数の外部端子3には、一対の入力端子3aと、一対の出力端子3bと、グランド端子3cとが含まれる。一対の入力端子3aは、基板2の素子形成面2aの法線方向から見た平面視(以下、単に「平面視」という。)において、基板2の一端部(図1の左側端部)側において互いに間隔を空けて形成されている。
一対の出力端子3bは、平面視において基板2の他端部(図1の右側端部)側において互いに間隔を空けて形成されている。グランド端子3cは、平面視において、基板2の中央部に形成されている。各外部端子3は、略半球状に形成されている。各外部端子3の直径φは、たとえば0.1mm以上0.3mm以下(本実施形態では0.25mm程度)である。各外部端子3は、たとえば、半田ボールであってもよい。
図2を参照して、基板2の素子形成面2a上における各外部端子3に対応する位置には、パッド電極膜4が形成されるパッド電極膜形成領域5が設定されている。より具体的には、パッド電極膜形成領域5には、一対の入力側パッド電極膜形成領域5aと、一対の出力側パッド電極膜形成領域5bと、グランド側パッド電極膜形成領域5cとが含まれる。一対の入力側パッド電極膜形成領域5aには、入力端子3aが接続される入力側パッド電極膜4aが形成される。一対の出力側パッド電極膜形成領域5bには、出力端子3bが接続される出力側パッド電極膜4bが形成される。グランド側パッド電極膜形成領域5cには、グランド端子3cが接続されるグランド側パッド電極膜4cが形成される。
基板2の素子形成面2a上には、さらに、第1フィルタ回路FC1が形成される第1フィルタ回路形成領域12と、第2フィルタ回路FC2が形成される第2フィルタ回路形成領域13とが設定されている。第1フィルタ回路形成領域12および第2フィルタ回路形成領域13は、短手方向に沿う一対の側面2dと、当該一対の側面2dの中間部を横切る横断線TLと、長手方向に沿う一対の側面2cとによって矩形状に区画されている。
グランド側パッド電極膜形成領域5cは、横断線TLを横切っており、第1フィルタ回路FC1および第2フィルタ回路FC2に対して、共通のグランド側パッド電極膜4cを提供する。つまり、グランド端子3cは、第1フィルタ回路FC1および第2フィルタ回路FC2に対して、共通のグランド電位を提供する。これら第1フィルタ回路FC1および第2フィルタ回路FC2により、フィルタユニットFU1が形成されている。
第1フィルタ回路形成領域12において、複数のパッド電極膜形成領域5間の領域(つまり、複数の外部端子3間の領域)には、第1コンデンサ形成領域14と、第1ダイオード形成領域15と、第2コンデンサ形成領域16と、第2ダイオード形成領域17と、抵抗形成領域18とが設定されている。第1コンデンサ形成領域14、第2コンデンサ形成領域16および抵抗形成領域18は、本発明の受動素子形成領域の一例として形成されている。なお、第2フィルタ回路形成領域13の構成は、第1フィルタ回路形成領域12の構成と同様であるので、対応する構成に同一の参照符号を付して説明を省略する。
第1コンデンサ形成領域14、第1ダイオード形成領域15、第2コンデンサ形成領域16、第2ダイオード形成領域17および抵抗形成領域18には、第1電極膜20および第2電極膜21が互いに間隔を空けて形成されている。第1電極膜20には、第1接続電極膜22が電気的に接続されており、第2電極膜21には、第2接続電極膜23が電気的に接続されている。
以下では、各領域に形成された第1電極膜20を「第1電極膜20C1,20C2,20D1,20D2,20R」といい、第2電極膜21を「第2電極膜21C1,21C2,21D1,21D2,21R」という。また、各領域に形成された第1接続電極膜22を「第1接続電極膜22C1,22C2,22D1,22D2,22R」といい、第2接続電極膜23を「第2接続電極膜23C1,23C2,23D1,23D2,23R」という。
第1コンデンサ形成領域14は、入力側パッド電極膜形成領域5aと横断線TLとの間の領域に設定されている。第1電極膜20C1および第2電極膜21C1間には、第1コンデンサC1が形成されている。第1コンデンサC1は、第1電極膜20C1および第1接続電極膜22C1を介して入力側パッド電極膜4aに電気的に接続されており、第2電極膜21C1および第2接続電極膜23C1を介してグランド側パッド電極膜4cに電気的に接続されている。
第1ダイオード形成領域15は、入力側パッド電極膜形成領域5aとグランド側パッド電極膜形成領域5cとの間の領域に設定されている。第1電極膜20D1および第2電極膜21D1間には、第1ダイオードD1が形成されている。第1ダイオードD1は、第1電極膜20D1および第1接続電極膜22D1を介して入力側パッド電極膜4aに電気的に接続されており、第2電極膜21D1および第2接続電極膜23D1を介してグランド側パッド電極膜4cに電気的に接続されている。
第2コンデンサ形成領域16は、出力側パッド電極膜形成領域5bと横断線TLとの間の領域に設定されている。第1電極膜20C2および第2電極膜21C2間には、第2コンデンサC2が形成されている。第2コンデンサC2は、第1電極膜20C2および第1接続電極膜22C2を介して出力側パッド電極膜4bに電気的に接続されており、第2電極膜21C2および第2接続電極膜23C2を介してグランド側パッド電極膜4cに電気的に接続されている。
第2ダイオード形成領域17は、出力側パッド電極膜形成領域5bとグランド側パッド電極膜形成領域5cとの間の領域に設定されている。第1電極膜20D2および第2電極膜21D2間には、第2ダイオードD2が形成されている。第2ダイオードD2は、第1電極膜20D2および第1接続電極膜22D2を介して出力側パッド電極膜4bに電気的に接続されており、第2電極膜21D2および第2接続電極膜23D2を介してグランド側パッド電極膜4cに電気的に接続されている。
抵抗形成領域18は、第1ダイオード形成領域15、第2ダイオード形成領域17およびグランド側パッド電極膜形成領域5cにより区画された領域に設定されている。第1電極膜20Rおよび第2電極膜21R間には、抵抗Rが形成されている。抵抗Rは、第1電極膜20Rおよび第1接続電極膜22Rを介して入力側パッド電極膜4aに電気的に接続されており、第2電極膜21Rおよび第2接続電極膜23Rを介して出力側パッド電極膜4bに電気的に接続されている。図2では、第1接続電極膜22Rが第1接続電極膜22D1と一体を成す電極膜であり、第2接続電極膜23Rが第1接続電極膜22D2と一体を成す電極膜である例を示している。
図3は、図1に示すチップフィルタ1の電気回路図である。図3に示すように、第1フィルタ回路FC1および第2フィルタ回路FC2は、π型低域通過フィルタ24を含む。π型低域通過フィルタ24には、抵抗Rと、抵抗Rの両端部に並列接続された第1コンデンサC1および第2コンデンサC2とが含まれる。第1フィルタ回路FC1および第2フィルタ回路FC2は、さらに、π型低域通過フィルタ24と入力端子3aとの間、および、π型低域通過フィルタ24と出力端子3bとの間において、π型低域通過フィルタ24に並列接続された第1ダイオードD1および第2ダイオードD2を含む。第1ダイオードD1および第2ダイオードD2は、本実施形態では、双方向ツェナーダイオードである。このように、チップフィルタ1では、第1フィルタ回路FC1および第2フィルタ回路FC2により、一つのフィルタユニットFU1が形成されている。
以下、図4を参照しつつ、チップフィルタ1の具体的な構成について説明する。図4は、図1に示すチップフィルタ1の模式的な断面図である。以下では、第1コンデンサ形成領域14および第2コンデンサ形成領域16は略同様の構成であるので、第1コンデンサ形成領域14の構成を例に取って説明する。また、第1ダイオード形成領域15および第2ダイオード形成領域17は略同様の構成であるので、第1ダイオード形成領域15の構成を例に取って説明する。
図4を参照して、第1コンデンサC1、第1ダイオードD1および抵抗Rは、それぞれ異なる層に形成されている。より具体的には、基板2上には、複数の絶縁膜25〜28が積層された積層膜と、当該積層膜を被覆する封止樹脂30とを含む。複数の絶縁膜25〜28には、基板2の素子形成面2aからこの順に形成された第1絶縁膜25、第2絶縁膜26、第3絶縁膜27および第4絶縁膜28が含まれる(図1も併せて参照)。なお、チップフィルタ1は、図1に示すように、少なくとも基板2の側面2c、2dを被覆する第5絶縁膜29を含むが、図4ではその図示を省略している。
第1絶縁膜25は、シリコン酸化膜を含み、その厚さは、たとえば8000Å以上12000Å以下(本実施形態では10000Å程度)である。第2絶縁膜26は、表面(基板2とは反対側の表面)が平坦化されたシリコン酸化膜、より具体的にはUSG(Undoped Silica Glass)平坦膜またはSOG(Spin On Glass)平坦膜を含む。第2絶縁膜26の厚さは、たとえば15000Å以上25000Å以下(本実施形態では20000Å程度)である。
第3絶縁膜27は、窒化シリコン膜を含み、その厚さは、たとえば1000Å以上5000Å以下(本実施形態では3000Å程度)である。第4絶縁膜28は、窒化シリコン膜を含み、その厚さは、たとえば10000Å以上15000Å以下(本実施形態では12000Å程度)である。第5絶縁膜29は、窒化シリコン膜を含む。第3絶縁膜27、第4絶縁膜28および第5絶縁膜29は、パッシベーション膜として形成されている。
第1コンデンサC1および第1ダイオードD1は、基板2および第1絶縁膜25上に形成されている。抵抗Rは、第2絶縁膜26上に形成されている。第3絶縁膜27上には、パッド電極膜4、第1接続電極膜22および第2接続電極膜23が形成されている。パッド電極膜4、第1接続電極膜22および第2接続電極膜23は、互いに一体的に形成された電極膜からなっていてもよい。
パッド電極膜4、第1接続電極膜22および第2接続電極膜23は、アルミニウム(Al)およびCu(銅)の少なくとも一方を含む金属膜を含む。パッド電極膜4、第1接続電極膜22および第2接続電極膜23は、たとえばAuCu、AlSiCu等の合金膜であってもよい。パッド電極膜4、第1接続電極膜22および第2接続電極膜23は、たとえば5000Å以上12000Å以下(本実施形態では、8000Å程度)であってもよい。なお、パッド電極膜4、第1接続電極膜22および第2接続電極膜23は、同電位を形成する部分が選択的に一体化された電極膜として形成されていてもよい。以下、第1コンデンサ形成領域14、第1ダイオード形成領域15、抵抗形成領域18の具体的な構成について順に説明する。
<第1コンデンサ形成領域14>
図5は、図2に示す第1コンデンサ形成領域14の平面図である。
図4および図5を参照して、第1コンデンサ形成領域14における第1絶縁膜25上には、第1電極膜20C1と第2電極膜21C1とが互いに間隔を空けて形成されている。これら第1電極膜20C1と第2電極膜21C1との間の領域に第1コンデンサC1が形成されている。第1コンデンサC1は、基板2上に形成された誘電体膜35と、誘電体膜35を挟み込むように形成された下部電極36および上部電極37とを含む。
より具体的には、基板2は、たとえばp型不純物が導入された基板である。基板2の表面部には、n型不純物が導入された下部電極36としての不純物領域38が形成されている。不純物領域38は、たとえば平面視略矩形状に形成されている。第1絶縁膜25には、不純物領域38を被覆する部分が選択的に薄く形成された薄膜部25aが形成されている。薄膜部25aの厚さは、たとえば100Å以上500Å以下(本実施形態では200Å程度)である。この第1絶縁膜25の薄膜部25aには、不純物領域38を選択的に露出させる第1開口39および第2開口40が互いに間隔を空けて形成されている。
第1開口39は、第1コンデンサ形成領域14に沿って延びるように平面視略長方形状に形成されている(図5の破線部参照)。一方、第2開口40は、第1開口39の開口面積よりも小さい開口面積で不純物領域38を露出させるように平面視略長方形状に形成されている(図5の破線部参照)。第1開口39から露出する基板2上には、不純物領域38に接する誘電体膜35と、誘電体膜35を挟んで不純物領域38に対向する上部電極37とが形成されている。一方、第2開口40から露出する基板2上には、コンタクト電極41が上部電極37から間隔を空けて形成されている。
誘電体膜35の一方表面および他方表面は、第1開口39から露出する基板2の素子形成面2aおよび第1絶縁膜25に沿って形成されており、第1コンデンサ形成領域14外の領域に選択的に引き出されている。誘電体膜35は、窒化シリコン膜およびシリコン酸化膜の少なくとも一方を含む。誘電体膜35は、シリコン酸化膜/窒化シリコン膜/シリコン酸化膜の順に積層されたONO膜であってもよい。誘電体膜35の厚さは、100Å以上1000Å以下(本実施形態では、500Å程度)であってもよい。
上部電極37は、第1電極膜20C1から引き出された引出し部として第1電極膜20C1と一体的に形成されており、少なくとも第1開口39内で、誘電体膜35を挟んで不純物領域38に対向するように形成されている。上部電極37の一方表面および他方表面は、第1開口39から露出する基板2の素子形成面2aおよび第1絶縁膜25に沿うように平面視略長方形状に形成されている。
コンタクト電極41は、第2電極膜21C1から引き出された引出し部として第2電極膜21C1と一体的に形成されており、第2開口40内で、不純物領域38に電気的に接続されるように形成されている。コンタクト電極41は、誘電体膜35を挟んで第1絶縁膜25上に形成されている。コンタクト電極41は、上部電極37およびコンタクト電極41の各周縁部を縁取るスリットSによって、上部電極37から電気的に分離されている。
第1電極膜20C1には、対応するコンタクト42および第1接続電極膜22C1を介して入力側パッド電極膜4aが電気的に接続されており、第2電極膜21C1には、対応するコンタクト42および第2接続電極膜23C1を介してグランド側パッド電極膜4cが電気的に接続されている。コンタクト42は、第2絶縁膜26および第3絶縁膜27を貫通するように形成されたコンタクト孔に埋設された導電体を含む。コンタクト42は、各パッド電極膜4および各接続電極膜22,23と同一の材料で一体的に形成されていてもよい。
入力端子3aおよび出力端子3bに所定の電圧が印加されると、下部電極36(不純物領域38)および上部電極37に挟まれた誘電体膜35に電荷が蓄積される。このようにして、第1コンデンサ形成領域14に第1コンデンサC1が形成されている。
<第1ダイオード形成領域15>
図6は、図2に示す第1ダイオード形成領域15の平面図である。
図4および図6を参照して、第1ダイオード形成領域15における第1絶縁膜25上には、第1電極膜20D1と第2電極膜21D1とが互いに間隔を空けて形成されている。これら第1電極膜20D1と第2電極膜21D1との間の領域に第1ダイオードD1が形成されている。より具体的には、第1ダイオードD1は、基板2の表面部にn型不純物が導入されて形成された、複数の第1拡散領域45および複数の第2拡散領域46を含む。
第1拡散領域45および第2拡散領域46は、同一の深さおよび同一のn型不純物濃度を有しており、基板2との間でpn接合を形成している。第1拡散領域45および第2拡散領域46は、第1電極膜20D1および第2電極膜21D1の対向方向中央部において、当該対向方向に直交する方向に沿って一列に並んで配置されている。第1拡散領域45および第2拡散領域46は、互いに間隔を空けて交互に配置されている。
第1絶縁膜25には、第1拡散領域45上の部分および第2拡散領域46上の部分が選択的に薄く形成された薄膜部25aが形成されている。この第1絶縁膜25の薄膜部25aには、第1拡散領域45および第2拡散領域46を選択的に露出させる第1コンタクト孔47および第2コンタクト孔48が形成されている。第1コンタクト孔47および第2コンタクト孔48は、平面視において第1拡散領域45および第2拡散領域46の周縁から間隔を空けた位置で第1拡散領域45および第2拡散領域46を露出させている。
第1電極膜20D1は、前述の誘電体膜35を挟んで第1絶縁膜25上に形成されており、各第1拡散領域45に向けて引き出された複数の第1引出し電極部49を含む。各第1引出し電極部49は、各第1拡散領域45の幅よりも広い幅で第1拡散領域45を覆うように引き出されている。つまり、第1引出し電極部49は、平面視において櫛歯形状に形成されている。
各第1引出し電極部49の先端部は、角部が切除された略矩形状に形成されている。第1引出し電極部49は、第1絶縁膜25上から第1コンタクト孔47に入り込み、第1拡散領域45との間でオーミック接合を形成している。本実施形態では、第1ダイオード形成領域15に形成された第1電極膜20D1は、前述の第1コンデンサ形成領域14に形成された第1電極膜20C1(上部電極37)と一体的に形成されている。
第2電極膜21D1は、前述の誘電体膜35を挟んで第1絶縁膜25上に形成されており、各第2拡散領域46に向けて引き出された複数の第2引出し電極部50を含む。各第2引出し電極部50は、各第2拡散領域46の幅よりも広い幅で第2拡散領域46を覆うように引き出されている。つまり、第2引出し電極部50は、平面視において第1引出し電極部49に噛合う櫛歯形状に形成されている。各第2引出し電極部50の先端部は、角部が切除された略矩形状に形成されている。第2引出し電極部50は、第1絶縁膜25上から第2コンタクト孔48に入り込み、第2拡散領域46との間でオーミック接合を形成している。
第1ダイオードD1の第1電極膜20D1には、対応するコンタクト42および第1接続電極膜22D1を介して入力側パッド電極膜4aが電気的に接続されている。第2電極膜21D1には、対応するコンタクト42および第2接続電極膜23D1を介してグランド側パッド電極膜4cが電気的に接続されている。これら複数の第1拡散領域45および複数の第2拡散領域46によって、1つの双方向ツェナーダイオードが形成されている。本実施形態では、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2により、たとえば10kV以上の静電気耐量(ESD耐量)が第1フィルタ回路FC1および第2フィルタ回路FC2に提供される。
<抵抗形成領域18>
図7は、図2に示す抵抗形成領域18の平面図である。図8は、図7に示す抵抗形成領域18の一部を拡大した平面図である。図9は、図8に示すIX-IX線に沿う断面図である。
図4、図7〜図9に示すように、抵抗形成領域18における第2絶縁膜26上には、第1電極膜20Rと第2電極膜21Rとが互いに間隔を空けて形成されている。これら第1電極膜20Rと第2電極膜21Rとの間の領域に抵抗Rが形成されている。抵抗Rは、第1電極膜20Rと第2電極膜21Rとの間に形成され、一端および他端が第1電極膜20Rおよび第2電極膜21Rに接続された抵抗導電体膜51を含む。抵抗導電体膜51は、複数周期に亘って折り返して形成されて葛折り状に引き回された部分を含む。
より具体的には、抵抗導電体膜51は、第1電極膜20Rおよび第2電極膜21Rの対向方向に沿って互いに間隔を空けて直線状に延びる複数の第1直線状パターン51aを含む。抵抗導電体膜51は、さらに、当該第1直線状パターン51aに連なり、前記対向方向に交わる方向(直交方向)に沿って直線状に延びる複数の第2直線状パターン51bを含む。抵抗導電体膜51は、これら複数の第1直線状パターン51aおよび複数の第2直線状パターン51bにより所定の折返し数で引き回されている。抵抗導電体膜51は、より具体的には、第2絶縁膜26上に形成され、葛折り状に引き回された抵抗膜ライン52と、抵抗膜ライン52上に積層された複数の導体膜53とを含む。
抵抗膜ライン52は、TiN、TiONおよびTiSiONを含む群から選択される1つまたは複数の金属種を含んでいてもよい。抵抗膜ライン52の厚さは、たとえば500Å以上3000Å以下(本実施形態では1000Å程度)であってもよい。図9に示すように、複数の導体膜53は、抵抗膜ライン52上に、一定の間隔を開けて配置されている。
導体膜53は、抵抗膜ライン52の導電率ρLよりも高い導電率ρFを有している(導電率ρL<導電率ρF)。導体膜53は、アルミニウム(Al)およびCu(銅)の少なくとも一方を含む。導体膜53は、たとえばAuCu、AlSiCu等の合金膜であってもよい。本実施形態では、導体膜53はAuCuである。導体膜53の厚さは、たとえば5000Å以上12000Å以下(本実施形態では8000Å程度)であってもよい。
以下、図10および図11を参照して、抵抗導電体膜51の構成を具体的に説明する。図10は、図9に示す部分を電気回路図に置き換えたものである。図11は、図10を簡略化した電気回路図である。
図10を参照して、互いに隣り合う導体膜53の間から露出する抵抗膜ライン52の露出部が1個の抵抗体54を形成している。複数の抵抗体54は、全て等しい形状および面積を有している。つまり、各抵抗体54は、等しい抵抗値rを有する単位抵抗として形成されている。一方、抵抗膜ライン52における導体膜53が配置された部分は、導体膜53により短絡されているので抵抗体54として機能しない。
抵抗膜ライン52には、このような抵抗体54が複数形成されている。複数の抵抗体54は、第1電極膜20Rおよび第2電極膜21Rの対向方向および当該対向方向に直交する方向に沿って、互いに間隔を空けて行列状に配列されている。本実施形態では、図8に示すように、対向方向に沿って8個の抵抗体54が配列され、対向方向に直交する方向に沿って44個の抵抗体54が配列されている。つまり、合計352個の抵抗体54が形成されている。
各抵抗膜ライン52上には、1個〜64個の抵抗体54を直列接続させた直列抵抗群が形成されている。各抵抗膜ライン52の抵抗値は、当該抵抗膜ライン52上に形成された複数の抵抗体54の合成抵抗により定まる。したがって、各抵抗膜ライン52は、複数種類の抵抗値を有する抵抗単位体として形成されており、抵抗Rの抵抗値は、複数の抵抗膜ライン52の合成抵抗により定まる。
抵抗導電体膜51は、さらに、複数の導体膜53と一体的に形成された接続用導体膜55と、接続用導体膜55と一体的に連なるように第2絶縁膜26上に形成されたヒューズ部56とを含む。つまり、複数の導体膜53は、接続用導体膜55およびヒューズ部56を介して、第1電極膜20Rに電気的に接続されている。
接続用導体膜55は、第1電極膜20Rおよび第2電極膜21Rの対向方向に沿って直線状に延びる複数の第1直線状パターン55aと、当該第1直線状パターン55aに連なり、前記対向方向に交わる方向(直交方向)に沿って直線状に延びる複数の第2直線状パターン55bとを含む。接続用導体膜55は、導体膜53と同一の材料で形成されている。
ヒューズ部56は、第1電極膜20と接続用導体膜55との間で、接続用導体膜55に一体的に連なるように形成されている。ヒューズ部56は、複数の抵抗体54の少なくとも一つを、第1電極膜20Rおよび第2電極膜21Rに電気的に接続し、または、第1電極膜20Rおよび第2電極膜21Rから電気的に切り離せるように切断(溶断)可能に設けられている。ヒューズ部56の切断(溶断)は、たとえばレーザ光で行われる。
ヒューズ部56は、第1電極膜20Rおよび第2電極膜21Rの対向方向に沿って、直線状に延びるように形成されている。ヒューズ部56は、接続用導体膜55よりも細く形成されている。ヒューズ部56は、導体膜53と同一の層に、同一材料で形成されている。ヒューズ部56は、抵抗体54(抵抗膜ライン52)の一部と抵抗膜ライン52上の導体膜53の一部とにより形成されていてもよい。
第1電極膜20Rには、コンタクト42および第1接続電極膜22Rを介して、入力側パッド電極膜4aが電気的に接続されている。第2電極膜21Rには、コンタクト42および第2接続電極膜23Rを介して前述の第2接続電極膜23Rが電気的に接続されている。
図12は、図8に示す部分に図11の電気回路図を適用したものである。図12を参照して、ヒューズ部56が接続されている場合、抵抗体54(抵抗膜ライン52)は、導体膜53および接続用導体膜55により短絡されている。たとえば、第1電極膜20および第2電極膜21に電圧が印加されると、接続用導体膜55を流れる電流は、抵抗膜ライン52および抵抗体54を迂回して、導体膜53および接続用導体膜55を流れる。つまり、ヒューズ部56が接続用導体膜55に接続されている場合、抵抗体54は、第1電極膜20および第2電極膜21から電気的に分離されるので、抵抗値は増加しない。
一方、ヒューズ部56が切断(溶断)された場合、抵抗体54(抵抗膜ライン52)は、第1電極膜20Rおよび第2電極膜21Rに電気的に接続される。したがって、第1電極膜20Rおよび第2電極膜21Rに電圧が印加されると、抵抗体54(抵抗膜ライン52)に電流が流れ込む電流経路が形成される。つまり、ヒューズ部56が切断(溶断)された場合、抵抗Rの抵抗値が増加する。このような抵抗導電体膜51を利用することにより、図13〜図15に示すような種々の抵抗回路を実現できる。
図13は、抵抗導電体膜51の一の例を示す電気回路図である。抵抗Rは、基準抵抗回路R8と、抵抗回路R64、2つの抵抗回路R32、抵抗回路R16、抵抗回路R8、抵抗回路R4、抵抗回路R2、抵抗回路R1、抵抗回路R/2、抵抗回路R/4、抵抗回路R/8、抵抗回路R/16、抵抗回路R/32とが直列接続された抵抗R直列回路を有している。
基準抵抗回路R8および抵抗回路R64〜R2は、それぞれ末尾の数(R64の場合には「64」)と同数の直列接続された抵抗体54を含む。抵抗回路R/2〜R/32は、それぞれ自身の末尾の数(R/32の場合には「32」)と同数の並列接続された抵抗体54を含む。基準抵抗回路R8以外の抵抗回路R64〜抵抗回路R/32のそれぞれに、ヒューズ部56が並列接続されている。
ヒューズ部56が溶断されていない状態では、基準抵抗回路R8以外の抵抗回路R64〜抵抗回路R/32がヒューズ部56により短絡されている。したがって、電流は、基準抵抗回路R8を通過した後、抵抗回路R64〜抵抗回路R/32を迂回するようにヒューズ部56を流れる。基準抵抗回路R8では、8個の抵抗体54が直列接続されている。1つの抵抗体54の抵抗値rが、たとえば8Ωであれば、抵抗Rの抵抗値は、64Ωとなる。したがって、ヒューズ部56を選択的に溶断することにより、抵抗R全体の抵抗値を、細かく、かつデジタル的に、任意の抵抗値となるように調節できる。
図14は、抵抗導電体膜51の他の例を示す電気回路図である。抵抗Rは、基準抵抗回路R/16と、基準抵抗回路R/16に直列接続された12種類の抵抗回路R/16、R/8、R/4、R/2、R1、R2、R4、R8、R16、R32、R64、R128を含む並列回路とを含む。基準抵抗回路R/16以外の12種類の抵抗回路R/16〜R128には、それぞれ、ヒューズ部56が直列接続されている。このような構成であっても、ヒューズ部56を選択的に溶断することにより、抵抗Rの抵抗値を、細かく、かつデジタル的に、任意の抵抗値となるように調節できる。
図15は、抵抗導電体膜51のさらに他の例を示す電気回路図である。抵抗Rは、直列接続された複数の直列抵抗回路R12n(n=0,1,2・・・)と、並列接続された複数の並列抵抗回路R22n(n=0,1,2・・・)とを含む。直列抵抗回路R12nおよび並列抵抗回路R22nは、直列接続されている。直列抵抗回路R12nには、図13の回路と同様、抵抗回路毎に、ヒューズ部56が並列接続されている。
並列抵抗回路R22nには、図14の回路と同様、抵抗回路毎に、ヒューズ部56が直列接続されている。この回路によれば、高抵抗回路(たとえば、1kΩ以上の抵抗回路)を直列抵抗回路R12n側で実現でき、低抵抗回路(たとえば、1kΩ以下の抵抗回路)を並列抵抗回路R22n側で実現できる。したがって、数Ω〜数kΩの抵抗値までの広範な範囲の抵抗回路を含む抵抗Rを容易に実現できる。
このように、チップフィルタ1は、第1フィルタ回路FC1および第2フィルタ回路FC2を含む一つのフィルタユニットFU1を有している(図3も併せて参照)。このフィルタユニットFU1は、抵抗値調整可能な抵抗Rを含む。このチップフィルタ1の抵抗値を測定した結果が下記表1に示されている。
表1に示されるように、チップフィルタ1における抵抗Rの抵抗値を測定したところ、目標とする抵抗Rの抵抗値(=10Ω)に対して、測定により得られた実際の抵抗値は9.9Ω以上10.1Ω以下であり、±1%以下の誤差で抵抗Rの抵抗値を合せ込むことができた。つまり、チップフィルタ1によれば、抵抗Rに関して、許容誤差が±1%以下の抵抗値を実現できることが分かった。
本発明者らは、参考例として、第1電極膜20Rおよび第2電極膜21R間を一直線状の抵抗導電体膜51で結んだいわゆるベタ構造の抵抗Rを有するチップフィルタについても抵抗値を調べた。参考例に係るチップフィルタの場合、目標とする抵抗Rの抵抗値(=10Ω)に対して、測定により得られた実際の抵抗値は9.7Ω以上10.3Ω以下であり、抵抗値の誤差は±10%以上±30%以下であった。したがって、本実施形態に係るチップフィルタ1では抵抗Rの抵抗値の合せ込み精度が格段に向上していることが分かった。
チップフィルタ1の周波数特性を実験により測定した結果が図16に示されている。図16は、図1に示すチップフィルタ1の周波数特性を示すグラフである。図16における横軸は周波数(Hz)であり、縦軸は挿入損失(dB)である。この実験では、下記表2に示すように、2つのチップフィルタ1を用意して、それぞれについて周波数特性を測定した。一方のチップフィルタ1は、第1コンデンサC1および第2コンデンサC2の各容量値が100pFである。他方のチップフィルタ1は、第1コンデンサC1および第2コンデンサC2の各容量値が10pFである。
以下では、高容量値のチップフィルタ1をチップフィルタ1Aといい、低容量値のチップフィルタ1をチップフィルタ1Bという。図16において、チップフィルタ1Aの周波数特性がグラフAであり、チップフィルタ1Bの周波数特性がグラフBである。
表2および図16のグラフAを参照して、チップフィルタ1Aでは、理論上の通過域での挿入損失が−0.83dBであるところ、実際の通過域での挿入損失は−0.82dBであった。したがって、チップフィルタ1Aにおいて、通過域での挿入損失のずれが低減されていることが確認できた。また、グラフAでは、高周波領域における挿入損失の増加が小さいことから、チップフィルタ1Aが良好な減衰特性を有していることが分かった。
表2および図16のグラフBを参照して、チップフィルタ1Bでは、理論上の通過域での挿入損失が−0.83dBであるところ、実際の通過域での挿入損失は−0.82dBであった。したがって、チップフィルタ1Bにおいても、通過域での挿入損失のずれが低減されていることが確認できた。また、グラフBでは、高周波領域における挿入損失の増加が殆どないことから、チップフィルタ1Bが良好な減衰特性を有していることが分かった。
以上、本実施形態では、少なくとも抵抗体54の1つを、入力端子3aおよび出力端子3bに電気的に接続し、または、入力端子3aおよび出力端子3bから電気的に切り離すことによって、抵抗Rの抵抗値を調整できる。これにより、抵抗Rの抵抗値を所望の抵抗値に合せ込むことができるから、要求される抵抗Rの抵抗値に対する誤差を低減できる。とりわけ、本実施形態では、互いに等しい抵抗値を有する複数の抵抗体54によって抵抗Rの抵抗値を調整できるので、抵抗値の合せ込み精度をより一層向上できる。これにより、本実施形態では、目標とする抵抗Rの抵抗値を、±1%の誤差の範囲で合せ込むことができる。その結果、図16に示すように、良好な周波数特性を実現できるチップフィルタ1を提供できる。
また、本実施形態では、抵抗導電体膜51は、葛折り状に引き回された部分を含む。したがって、葛折り状を成す部分の折返し数を調整することにより、抵抗導電体膜51の寄生インダクタンスの値を調整できる。これにより、ヒューズ部56の切断によって、寄生インダクタンスの値も所望の値に合せ込むことができる。その結果、より一層良好な周波数特性を実現できる。
<製造方法>
図17〜図23は、図1に示すチップフィルタ1の製造方法の一例を説明するための断面図である。図17〜図23は、前述の図4に対応する領域を示す断面図である。
チップフィルタ1を形成するに当たり、まず、図17に示すように、たとえば円板状のベース基板60が用意される。ベース基板60には、チップフィルタ1となる平面視略長方形状のチップ形成領域61がたとえば行列状に設定されている。チップ形成領域61には、第1コンデンサ形成領域14、第1ダイオード形成領域15、第2コンデンサ形成領域16、第2ダイオード形成領域17および抵抗形成領域18が設定されている(図2も併せて参照)。このベース基板60に対して必要な工程を行った後、チップ形成領域61に沿ってベース基板60を切断することにより、チップフィルタ1の個片が切り出される。
より具体的には、ベース基板60の表面に第1絶縁膜25が形成される。第1絶縁膜25は、たとえば熱酸化により形成されたシリコン酸化膜であってもよい。次に、レジストマスク(図示せず)を介するウェットエッチングにより、第1コンデンサ形成領域14および第1ダイオード形成領域15における第1絶縁膜25に、ベース基板60の表面を選択的に露出させる開口62が形成される。
次に、開口62から露出するベース基板60の表面上に、薄い絶縁膜が第1絶縁膜25の薄膜部25aとして形成される。この薄い絶縁膜は、たとえば熱酸化により形成されてもよい。次に、n型不純物が、ベース基板60の表面部に薄膜部25aを貫通して導入される。次に、n型不純物がドライブイン処理によりベース基板60の表面部に拡散される。これにより、不純物領域38、第1拡散領域45および第2拡散領域46(図6参照)がベース基板60の表面部に形成される。
次に、図18に示すように、たとえばレジストマスク(図示せず)を介するウェットエッチングにより、薄膜部25aに第1開口39が形成される。次に、たとえばCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法により、第1開口39から露出するベース基板60の表面および第1絶縁膜25の表面に沿って、窒化シリコン膜からなる誘電体膜35が形成される。
次に、図19に示すように、たとえばレジストマスク(図示せず)を介するドライエッチングにより誘電体膜35の不要な部分が除去される。次に、たとえばレジストマスク(図示せず)を介するドライエッチングにより、薄膜部25aが選択的に除去されて、第2開口40、第1コンタクト孔47および第2コンタクト孔48(図6参照)が形成される。ドライエッチングは、たとえばRIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)であってもよい。
次に、たとえばスパッタ法により、AlSiCu合金を含むファーストメタル膜63が、第1絶縁膜25上に形成される。次に、たとえばレジストマスク(図示せず)を介するドライエッチングにより、ファーストメタル膜63が所定の形状にパターニングされる。ドライエッチングは、RIEであってもよい。これにより、第1電極膜20C1,20C2,20D1,20D2および第2電極膜21C1,21C2,21D1,21D2が形成されると共に、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2が形成される。
次に、図20に示すように、たとえばCVD法により、第1絶縁膜25上に厚いUSG膜64が形成される。次に、たとえばCMP(Chemical Mechanical Polishing:化学的機械研磨)法により、USG膜64の表面が平坦化される。平坦化後のUSG膜64の厚さは、たとえば20000Åであってもよい。これにより、平坦な表面を有する第2絶縁膜26が第1絶縁膜25上に形成される。なお、第2絶縁膜26は、USG膜64の形成とCMP法による平坦化工程とを所定の厚さになるまで複数回に亘って行うことにより形成されてもよい。また、USG膜64に代えてまたはこれに加えてSOG膜を形成して、平坦な表面を有する第2絶縁膜26を形成してもよい。
SOG膜の形成工程では、ベース基板60が所定の回転速度で回転された状態で、SiO2を含む無機溶剤、またはSiO2を含む有機溶剤がベース基板60上に塗布される。ベース基板60に塗布された溶剤は、ベース基板60の回転による遠心力を受けて、当該ベース基板60の全面に拡がる。これにより、ベース基板60の表面上に略均一な厚さの溶剤膜が形成される。その後、熱処理が施されて、溶剤膜が硬化(ガラス化)される。これにより、平坦な表面を有する第2絶縁膜26が形成される。
次に、第2絶縁膜26上に、抵抗Rが形成される。抵抗Rを形成する工程では、まず、たとえばスパッタ法により、セカンドメタル膜65の一部としてのTIONからなる抵抗膜66が第2絶縁膜26上に形成される。次に、たとえばスパッタ法により、セカンドメタル膜65の一部としてのAlCuからなる導体膜67が抵抗膜66上に形成される。次に、レジストマスク(図示せず)を介するドライエッチングにより抵抗膜66および導体膜67がパターニングされる。ドライエッチングは、RIEであってもよい。
次に、たとえばレジストマスク(図示せず)を介するウェットエッチングにより抵抗膜ライン52を被覆する導体膜67が選択的にパターニングされる。これにより、複数の導体膜53が抵抗膜ライン52上に一定の間隔を空けて形成される。このようにして、第1電極膜20R、第2電極膜21Rおよび抵抗導電体膜51が形成される。抵抗導電体膜51は、抵抗膜ライン52、導体膜53、接続用導体膜55およびヒューズ部56を含む(図7および図8参照)。
次に、図21に示すように、第2絶縁膜26上に、たとえばCVD法により、窒化シリコン膜からなる第3絶縁膜27が形成される。次に、レジストマスク(図示せず)を介するドライエッチングにより、第2絶縁膜26および第3絶縁膜27の不要な部分が除去される。これにより、第2絶縁膜26および第3絶縁膜27を貫通してファーストメタル膜63を選択的に露出させるコンタクト孔68と、第3絶縁膜27を貫通してセカンドメタル膜65を選択的に露出させるコンタクト孔69とが形成される。
次に、たとえばスパッタ法により、コンタクト孔68,69を埋めて第3絶縁膜27を被覆するように、AlCu電極膜からなるサードメタル膜70が第3絶縁膜27上に形成される。次に、レジストマスク(図示せず)を介するウェットエッチングによりサードメタル膜70が所定の形状にパターニングされる。これにより、各パッド電極膜4および各接続電極膜22,23が形成される。
次に、図22に示すように、たとえばCVD法によって、第3絶縁膜27の全域を覆うカバー膜71が形成される。カバー膜71は、窒化シリコン膜であってもよい。次に、抵抗形成領域18における第1電極膜20Rの一部および第2電極膜21Rの一部を露出させるように、カバー膜71が選択的にエッチングされる。次に、抵抗測定装置のプローブが第1電極膜20Rおよび第2電極膜21Rに接触されて、抵抗Rの抵抗値が測定される。
次に、レーザ光がカバー膜71越しに照射されて、任意のヒューズ部56(図7および図8参照)が溶断される。このとき、第1電極膜20および第2電極膜21が露出する部分以外の領域は、カバー膜71により覆われているので、溶断の際に生じた破片などが他の領域に付着して生じる短絡等の接続不良を抑制できる。次に、たとえばCVD法によって第3絶縁膜27上に窒化シリコン膜を再度形成し、カバー膜71が厚くされる。これにより、第3絶縁膜27上に第4絶縁膜28が形成される。
次に、図23に示すように、第4絶縁膜28上に、感光性ポリイミドが塗布されて、封止樹脂30が形成される。封止樹脂30は、各パッド電極膜4(図2も併せて参照)に対応するパターンで露光された後、現像される。これにより、封止樹脂30に各パッド電極膜4に対応する開口が形成される。その後、必要に応じて、封止樹脂30をキュアするための熱処理が行われる。次に、封止樹脂30をマスクとして、第3絶縁膜27の不要な部分がドライエッチングによって除去される。これにより、第3絶縁膜27に各パッド電極膜4を露出させる開口が形成される。次に、外部端子3(図1参照)が各パッド電極膜4に接続される。
次に、たとえばプラズマエッチングにより、ベース基板60が表面側から裏面側に向かって所定深さまで選択的にハーフエッチングされる。このプラズマエッチングにより、平面視においてチップフィルタ1となる形状に区画する溝がベース基板60に形成される。次に、たとえばCVD法により、溝の内面に第5絶縁膜29(図1参照)が形成される。その後、たとえばCMP法により、ベース基板60の裏面が溝に連通するまで研削される。これにより、ベース基板60からチップフィルタ1の個片が切り出される。
<第2実施形態>
図24は、本発明の第2実施形態に係るチップフィルタ81の模式的な平面図である。図25は、図24に示すチップフィルタ81の電気回路図である。図24および図25は、前述の図2および図3に対応している。図24および図25において、前述の図2および図3等に示された部分に対応する部分については同一の参照符号を付して、説明を省略する。
チップフィルタ81は、第1フィルタ回路FC11を含む第1フィルタ回路形成領域82と、第2フィルタ回路FC12を含む第2フィルタ回路形成領域83とを有している。これら第1フィルタ回路FC11および第2フィルタ回路FC12により、一つのフィルタユニットFU2が形成されている。第1フィルタ回路形成領域82および第2フィルタ回路形成領域83は、前述の抵抗形成領域18に代えてコイルLが形成されるコイル形成領域84を含む。本実施形態では、第1コンデンサ形成領域14、第2コンデンサ形成領域16およびコイル形成領域84が、本発明の受動素子形成領域の一例として形成されている。
コイル形成領域84には、前述の第1電極膜20Rおよび第2電極膜21Rに代えて、第1電極膜20Lおよび第2電極膜21Lが互いに間隔を空けて形成されている。コイルLは、第1電極膜20Lおよび第1接続電極膜22Lを介して、入力側パッド電極膜4aに電気的に接続されており、第2電極膜21Lおよび第2接続電極膜23Lを介して、出力側パッド電極膜4bに電気的に接続されている。図24では、第1接続電極膜22Lが、第1接続電極膜22D1と一体を成す電極膜であり、第2接続電極膜23Lが、第1接続電極膜22D2と一体を成す電極膜である例を示している。
図25を参照して、第1フィルタ回路FC11および第2フィルタ回路FC12は、π型低域通過フィルタ85を含む。π型低域通過フィルタ85は、コイルLと、コイルLの両端部に並列接続された第1コンデンサC1および第2コンデンサC2とを含む。このように、チップフィルタ81では、第1フィルタ回路FC11および第2フィルタ回路FC12により、一つのフィルタユニットFU2が形成されている。以下、図26および図27を参照しつつ、コイル形成領域84の具体的な構成について説明する。
<コイル形成領域84>
図26は、図24に示すチップフィルタ81の断面図である。図27は、図24に示すコイル形成領域84の平面図である。図26は、前述の図4に対応している。図26において、前述の図4等に示された部分に対応する部分については同一の参照符号を付して、説明を省略する。
図26および図27を参照して、コイル形成領域84における第1絶縁膜25上には、第1電極膜20Lと第2電極膜21Lとが互いに間隔を空けて形成されている。これら第1電極膜20Lと第2電極膜21Lとの間の領域にコイルLが形成されている。より具体的には、コイルLは、平面視螺旋状のコイル導体86を含む。コイル導体86は、平面視において、四角の螺旋形に形成されており、基板2の各側面2c、2dにそれぞれ平行な直線状部分を複数有している。なお、コイル導体86は、平面視において円形の螺旋状であってもよいし、平面視八角形の螺旋状等のように四角形以外の平面視多角形の螺旋状であってもよい。
コイル導体86は、より具体的には、基板2の素子形成面2aから所定の深さまで掘り下げて形成された平面視螺旋状のトレンチ87に埋め込まれている。トレンチ87の螺旋方向に直交する方向の断面に関して、トレンチ87の断面は、基板2の厚さ方向に細長い矩形状である。トレンチ87の幅X1は、たとえば3μm以上10μm以下であってもよい。また、トレンチ87の深さX2は、たとえば10μm以上100μm以下であってもよい。基板2におけるトレンチ87の内面には、内面絶縁膜88が形成されている。内面絶縁膜88は、たとえば、酸化シリコンを含む。本実施形態では、少なくとも基板2におけるトレンチ87によって挟まれた壁の全体が内面絶縁膜88とされ、絶縁体部89が形成されている。
コイル導体86は、タングステン(W)膜を含んでいてもよい。また、コイル導体86は、窒化チタン(TiN)膜およびタングステン膜を含む積層膜であってもよい。この場合、窒化チタン(TiN)膜は、トレンチ87の内壁面に沿って形成されている。窒化チタン(TiN)膜の厚さは、300Å以上500Å以下であってもよい。一方、タングステン膜は、トレンチ87内において、窒化チタン膜により区画された凹状の空間を埋めるように形成されている。
コイル形成領域84における第1絶縁膜25には、薄膜部25aが選択的に形成されている。第1絶縁膜25の薄膜部25aには、平面視において螺旋状のコイル導体86の異なる部分を第1電極膜20L側の端部として選択的に露出させる複数の入力側コンタクト孔90が形成されている。また、第1絶縁膜25の薄膜部25aには、コイルLの第2電極膜21L側の端部を露出させる出力側コンタクト孔91が形成されている。
第1電極膜20Lは、各入力側コンタクト孔90に向けて引き出された複数の第1引出し電極92と、第1引出し電極92に一体的に設けられ、コイル導体86と第1電極膜20とを電気的に切り離せるように切断(溶断)可能に設けられたヒューズ部93とを一体的に含む。各第1引出し電極92は、第1絶縁膜25上から各入力側コンタクト孔90内に入り込み、当該入力側コンタクト孔90内においてコイル導体86に電気的に接続されている。
一方、第2電極膜21Lは、出力側コンタクト孔91に向けて引き出された第2引出し電極94を一体的に含む。第2引出し電極94は、第1絶縁膜25上から出力側コンタクト孔91内に入り込み、当該出力側コンタクト孔91内においてコイル導体86に電気的に接続されている。
第1電極膜20Lおよび第2電極膜21Lは、第1コンデンサ形成領域14および第1ダイオード形成領域15における第1電極膜20C1,D1および第2電極膜21C2,D2等と同一の材料により形成されている。第1電極膜20Lには、第1接続電極膜22Lおよびコンタクト42を介して入力側パッド電極膜4aが電気的に接続されており、第2電極膜21Lには、第2接続電極膜23Lおよびコンタクト42を介して出力側パッド電極膜4bが電気的に接続されている。
図28は、図27に示すコイルLの構成を説明するための電気回路図である。図28を参照して、選択された1つのヒューズ部93以外を切断することにより、コイルLの巻き数が調整される。これにより、コイルLのインダクタンスの値を所望のインダクタンスの値に合せ込むことが可能となる。
以上、本実施形態では、ヒューズ部93を選択的に切断することにより、コイルLの巻き数を調整できる。これにより、コイルLのインダクタンスの値を所望の値に合せ込むことができるから、要求されるコイルLのインダクタンスの値に対する誤差を低減できる。
また、コイルLの性能(品質)を表すパラメータとして、コイルLのQ値(Quality Factor)がある。Q値が高いほど損失が小さく、高周波用インダクタンスとして優れた特性を有する。コイルLのQ値は、次式(1)によって表される。
Q=2πfL/RL・・・(1)
上記式(1)において、fはコイルLに流れる電流の周波数、LはコイルLのインダクタンス、RLはコイルLの内部抵抗である。コイルLは、基板2に形成された平面視螺旋状のトレンチ87にコイル導体86が埋設された構成を有している。したがって、コイルLは、基板2の素子形成面2a上のコイル導体86でコイルLを形成する場合に比較して、大きな断面積を有することができるので、コイルLの内部抵抗RLを低減できる。これにより、コイルLのQ値を向上できる。その結果、良好な周波数特性を実現できるチップフィルタ81を提供できる。
以上のようなチップフィルタ81を形成するには、第1絶縁膜25をベース基板60上に形成する工程(図17に示す工程)に先立って、たとえばレジストマスクを介するエッチングにより、ベース基板60に平面視螺旋状のトレンチ87が形成される。次に、たとえば熱酸化法によりトレンチ87の内面に内面絶縁膜88(絶縁体部89)が形成される。次に、たとえばスパッタ法により、トレンチ87を埋めて、基板2の素子形成面2aを被覆するコイル導体86が形成される。
次に、コイル導体86の不要な部分がエッチバックされる。これにより、トレンチ87内にコイル導体86が埋め込まれる。次に、第1絶縁膜25をおよびファーストメタル膜63等が順に形成される。次に、ファーストメタル膜63がパターニングされて、第1電極膜20Lおよび第2電極膜21Lが形成される。次に、前述のヒューズ部56の切断工程(図22)と同様の工程を経て、ヒューズ部93が選択的に切断されてインダクタンスの値が調整される。これにより、コイルLが形成される。その後、チップフィルタ1と同様の工程を経てチップフィルタ81が形成される。
<第3実施形態>
図29は、本発明の第3実施形態に係るチップフィルタ101の第1コンデンサ形成領域14を示す平面図である。図29は、前述の図5に対応している。図29において、前述の図5等に示された部分に対応する部分については同一の参照符号を付して、説明を省略する。また、チップフィルタ101における第2コンデンサ形成領域16の構成は、第1コンデンサ形成領域14の構成と略同一であるので、以下では、第1コンデンサ形成領域14の構成についてのみ説明する。
図29に示すように、チップフィルタ101の第1コンデンサ形成領域14には、第1コンデンサC11が形成されている。第1コンデンサC11は、2つ以上(本実施形態では6つ)の電極膜部分102〜107に分割された上部電極37と、各電極膜部分102〜107に一体的に形成されたヒューズ部108とを含む。各電極膜部分102〜107は、第1電極膜20C1から第2電極膜21C1に向けて帯状に延びる平面視矩形状に形成されている。
各電極膜部分102〜107は、誘電体膜35を挟んで互いに異なる対向面積で不純物領域38に対向している。各電極膜部分102〜107の対向面積は、公比を1以上とする等比数列を成していてもよい。本実施形態では、各電極膜部分102〜107の対向面積が1:2:4:8:16:32(公比が2の等比数列)である例を示している。これら電極膜部分102〜107により、複数のキャパシタ要素CE1〜CE6が形成されている。
ヒューズ部108は、各電極膜部分102〜107と第1電極膜20C1との間に設けられ、各電極膜部分102〜107と第1電極膜20C1とを電気的に接続している。ヒューズ部108は、第1電極膜20C1に接続された第1幅広部109と、電極膜部分102〜107に接続された第2幅広部110と、第1幅広部109および第2幅広部110に接続された幅狭部111とを一体的に含む。幅狭部111は、第1幅広部109および第2幅広部110よりも幅狭に構成されている。幅狭部111を選択的に切断(溶断)することにより、電極膜部分102〜107を、第1電極膜20C1および第2電極膜21C1から電気的に切り離すことができる。
図30は、図29に示す第1コンデンサC11の構成を説明するための電気回路図である。図30に示すように、第1電極膜20C1および第2電極膜21C1の間に複数のキャパシタ要素CE1〜CE6が並列接続されている。各キャパシタ要素CE1〜CE6には、ヒューズ部108が直列に接続されている。全てのヒューズ部108が切断されていない状態では、第1コンデンサC11の容量値は、全キャパシタ要素CE1〜CE6の合成容量の値となる。一方、ヒューズ部108が選択的に切断(溶断)された状態では、第1コンデンサC11の容量値は、切り離されたキャパシタ要素CE1〜CE6の容量値の分だけ減少する。
以上、本実施形態では、電極膜部分102〜107を外部端子3から選択的に電気的に切り離すことによって、第1コンデンサC11の容量値を調整できる。とりわけ、本実施形態では、複数の電極膜部分102〜107の下部電極36に対する対向面積が等比数列を成すように設定されているので、最小の容量値(等比数列の初項の値)に対応する精度で目標の容量値へと合わせ込むことができる。
これにより、第1コンデンサC11の容量値を所望の容量値に合せ込むことができるから、要求される第1コンデンサC11の容量値に対する誤差を低減できる。その結果、良好な周波数特性を実現できるチップフィルタ101を提供できる。このようなチップフィルタ101は、たとえば図19におけるファーストメタル膜63のパターニング時に使用するマスクのレイアウトを変更し、前述のヒューズ部56の切断工程と同様の工程を追加するだけで形成できる。
以上、本発明の複数の実施形態について説明したが、本発明はさらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の各実施形態では、チップフィルタ1,81,101が、1つのフィルタユニットFU1,FU2を含む例について説明した。しかし、チップフィルタ1,81,101は、2つ以上のフィルタユニットを含んでいてもよい。この場合、図31に示すように、2つのチップフィルタ1,81,101がそれらの長手方向に沿う側面2c同士が一体的に形成された、2つのフィルタユニットFU1,FU2を含むチップフィルタ121が採用されてもよい。むろん、2つのチップフィルタ1が、それらの短手方向に沿う側面2d同士が一体的に形成された、2つのフィルタユニットFU1,FU2を含むチップフィルタが採用されてもよい。
また、図32に示すように、2つのチップフィルタ121が、それらの短手方向に沿う側面同士が一体的に形成され、4つのフィルタユニットFU1,FU2を含むチップフィルタ122が採用されてもよい。また、図33に示すように、2つのチップフィルタ121が、それらの長手方向に沿う側面同士が一体的に形成され、4つのフィルタユニットFU1,FU2を含むチップフィルタ123が採用されてもよい。
図1および図31〜図33に示したサイズの異なる各チップフィルタ1,81,101,121,122,123は、前述の図17〜図23に示した工程と同一工程で同時に製造できる。つまり、ベース基板60をプラズマエッチングによりハーフエッチングする際に、溝によって区画されるチップ形成領域61の数を調整すればよい。これにより、ベース基板60の裏面研削を経て、図1および図31〜図33に示したサイズの異なる各チップフィルタ1,81,101,121,122,123が同時に形成される。
また、前述の第1実施形態では、抵抗Rが、第2絶縁膜26上に形成された例について説明した。しかし、抵抗Rは、基板2に接するように基板2上に形成されていてもよいし、第1絶縁膜25に接するように第1絶縁膜25上に形成されていてもよい。
また、前述の第2実施形態では、コイルLが、トレンチ87に埋設されたコイル導体86を含む例について説明した。しかし、コイル導体86は、基板2に接するように基板2上に形成されていてもよいし、第1絶縁膜25に接するように第1絶縁膜25上に形成されていてもよい。コイル導体86は、第2絶縁膜26に接するように第2絶縁膜26上に形成されていてもよい。
また、前述の各実施形態では、第1コンデンサC1,C11および第2コンデンサC2が、下部電極36としての不純物領域38を含む例について説明した。しかし、第1コンデンサC1および第2コンデンサC2は、不純物領域38に代えて、金属膜からなる下部電極36を含んでいてもよい。下部電極36は、たとえば上部電極37と同一材料で形成されていてもよい。
この場合、第1コンデンサC1,C11および第2コンデンサC2は、基板2に接することなく、第1絶縁膜25に接するように第1絶縁膜25上に形成されていてもよいし、第2絶縁膜26に接するように第2絶縁膜26上に形成されていてもよい。さらに、この場合、第1コンデンサC1,C11および第2コンデンサC2において、図29に示した上部電極37と同様の複数の電極膜部分を含む下部極膜36を形成してもよい。
また、前述の第1実施形態では、第1フィルタ回路FC1および第2フィルタ回路FC2が、抵抗Rの両端部に第1コンデンサC1および第2コンデンサC2が並列接続されたπ型低域通過フィルタ24を含む例について説明した。しかし、一つのコンデンサC1(C2)の両端部に抵抗Rをそれぞれ並列接続することによりπ型高域通過フィルタとしてもよい。
また、前述の第2実施形態では、第1フィルタ回路FC11および第2フィルタ回路FC12が、コイルLの両端部に第1コンデンサC1および第2コンデンサC2が並列接続されたπ型低域通過フィルタ85を含む例について説明した。しかし、一つのコンデンサC1(C2)の両端部にコイルLをそれぞれ並列接続することによりπ型高域通過フィルタとしてもよい。
また、各チップフィルタ1,81,101,121,122,123に適用されるフィルタ回路は、π型低域通過フィルタ24,85や、前記π型高域通過フィルタを含む第1フィルタ回路FC1,FC11および第2フィルタ回路FC2,FC12に限定されない。各チップフィルタ1,81,101,121,122,123には、図34〜図37に示す種々のフィルタ回路が適用され得る。図34〜図37は、各チップフィルタ1,81,101,121,122,123に適用されるフィルタ回路の一例を示す電気回路図である。
図34〜図37に示す各フィルタ回路131〜134は、第1受動素子135、第2受動素子136および第3受動素子137を有するフィルタを含む。なお、「受動素子」とは、ここでは、前述の抵抗R、コンデンサC1,C2,C11およびコイルLを意味する。第1受動素子135、第2受動素子136および第3受動素子137には、抵抗R、コンデンサC1,C2,C11およびコイルLを含む群から選択される少なくとも2種以上の受動素子が適用される。
図34に示すフィルタ回路131では、第1受動素子135の両端部に第2受動素子136および第3受動素子137が並列接続されたπ型低域通過フィルタまたはπ型高域通過フィルタが実現され得る。
図35に示すフィルタ回路132では、第1受動素子135および第3受動素子137の接続部に対して第2受動素子136が並列接続されたT型低域通過フィルタまたはT型高域通過フィルタが実現され得る。
図36に示すフィルタ回路133では、第1受動素子135および第2受動素子136の直列回路に対して第3受動素子137が並列接続されたL型低域通過フィルタまたはL型高域通過フィルタが実現され得る。むろん、フィルタ回路133では、第1受動素子135および第2受動素子136の直列回路に代えて、第1受動素子135のみに第3受動素子137が並列接続されたL型低域通過フィルタまたはL型高域通過フィルタとしてもよい。
図37に示すフィルタ回路134では、第1受動素子135に対して第2受動素子136および第3受動素子137の直列回路が並列接続されたL型低域通過フィルタまたはL型高域通過フィルタが実現され得る。
むろん、図34〜図37において、第1受動素子135、第2受動素子136および第3受動素子137には、複数の受動素子により形成される直列回路、複数の受動素子により形成される並列回路、またはこれら直列回路および並列回路が組み合わさった回路網を適用することもできる。つまり、複数の受動素子の直列回路や並列回路等を含むことにより、所定の周波数帯域のみを通過させる帯域通過フィルタや、所定の周波数帯域のみを遮断する帯域遮断フィルタを有するチップフィルタを実現できる。
また、前述の各実施形態において、基板2は、シリコン基板(半導体基板)であってもよい。シリコン基板であれば、セラミック基板と異なり加工(トレンチの形成やベース基板60の切断)を容易に行うことができる。たとえば、シリコン基板であれば、プラズマエッチングによりチップフィルタの個片をベース基板60から容易に切り出すことができる。とりわけ、プラズマエッチングであれば、チップサイズの微細化を図りつつ、図31〜図33に示したような種々のサイズのチップフィルタを一枚のベース基板60から容易に切り出すことができる。
前述のチップフィルタ1,81,101,121,122,123は、たとえば、電源回路用、高周波回路用、デジタル回路用等のフィルタとして、電子機器、携帯電子機器等のモバイル端末に組み込むことができる。この場合、電子機器は、チップフィルタ1,81,101,121,122,123が実装された回路アセンブリを収容した筐体を含む。
図38は、第4変形例に係るチップフィルタ200の第1絶縁膜25上の構成を示す模式的な平面図である。図39は、図38の一点鎖線XXXIXにより取り囲まれた領域の拡大図である。図38および図39において、前述の第1実施形態において説明した構成と対応する構成については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
図38を参照して、本変形例に係るチップフィルタ200は、前述の第1実施形態と同様に、第1フィルタ回路FC1および第2フィルタ回路FC2を有するフィルタユニットFU1を含むチップ部品である。
本変形例に係るチップフィルタ200において、基板2上に形成された前述の第1絶縁膜25上には、前述の一対の入力端子3aに電気的に接続される一対の第1入力電極膜201(第1電極膜)と、前述の一対の出力端子3bに電気的に接続される一対の第1出力電極膜202(第2電極膜)と、前述のグランド端子3cに電気的に接続される第1グランド電極膜203(基準電位電極膜)とが形成されている。一対の第1入力電極膜201は、一対の入力端子3aの直下にそれぞれ配置されており、一対の第1出力電極膜202は、一対の出力端子3bの直下にそれぞれ配置されており、第1グランド電極膜203は、グランド端子3cの直下に配置されている。
一対の第1入力電極膜201は、本変形例では基板2の長手側面2cおよび短手側面2dに平行な4辺を有する平面視四角形状に形成されており、基板2の一端部側(図38の左側の端部側)において短手側面2dに沿って間隔を空けて形成されている。第1出力電極膜202は、本変形例では基板2の長手側面2cおよび短手側面2dに平行な4辺を有する平面視四角形状に形成されており、基板2の他端部側(図38の右側の端部側)において短手側面2dに沿って間隔を空けて形成されている。第1入力電極膜201および第1出力電極膜202は、基板2の長手側面2cに沿って、基板2の素子形成面2aに沿う方向に対向するように互いに間隔を空けて形成されている。
以下では、第1入力電極膜201および第1出力電極膜202が対向する方向を単に「対向方向」といい、当該対向方向の直交方向を単に「直交方向」という。なお、「対向方向」は基板2の長手側面2cに沿う方向でもあり、「直交方向」は基板2の短手側面2dに沿う方向でもある。
第1グランド電極膜203は、本変形例では、第1入力電極膜201および第1出力電極膜202の間の領域を被覆するように、第1入力電極膜201および第1出力電極膜202の間の領域に配置された第1部分203aを含む。また、第1グランド電極膜203は、第1入力電極膜201および第1出力電極膜202の間の領域外の領域を被覆するように、第1部分203aから直交方向にずれて配置された第2部分203bを含む。第1グランド電極膜203の第1部分203aは、本変形例では、第1グランド電極膜203の第2部分203bから第1入力電極膜201および第1出力電極膜202の間に引き出された引き出し部として形成されている。
より具体的には、第1グランド電極膜203の第2部分203bは、本変形例では、グランド端子3cの直下の領域、すなわち基板2の中央領域に配置されており、基板2の長手側面2cおよび短手側面2dに平行な4辺を有する平面視四角形状に形成されている。第1グランド電極膜203の第2部分203bは、その一部が、対向方向に沿って第1入力電極膜201の一部および第1出力電極膜202の一部と対向している。そして、第1グランド電極膜203の第1部分203aは、第2部分203bから第1入力電極膜201および第1出力電極膜202の間の領域に向けて直交方向に沿って平面視四角形状に引き出されている。第1部分203aは、本変形例では、第2部分203bから引き出された単一の電極膜である。
第1グランド電極膜203の第1部分203aは、第1入力電極膜201および第1出力電極膜202と間隔を空けて形成されており、対向方向に沿って第1入力電極膜201および第1出力電極膜202と対向している。第1グランド電極膜203の第1部分203aの長手方向の幅は、第1グランド電極膜203の第2部分203bと長手方向の幅と略同一であり、これにより、第1グランド電極膜203全体の平面視形状が長方形状とされている。
第1グランド電極膜203の第1部分203aには、当該第1部分203aの電極材料の一部が取り除かれた平面視四角形状の除去領域205が選択的に形成されている。除去領域205は、本変形例では、第1部分203aの幅方向中央部において、直交方向に沿って延びる開口を含む。平面視において、除去領域205が第1グランド電極膜203の第1部分203a内に占める面積の割合は、除去領域205以外の領域が第1グランド電極膜203の第1部分203a内に占める面積の割合よりも小さい。この除去領域205の具体的な機能については後に詳述する。
本変形例に係るチップフィルタ200では、前述の第1実施形態と同様、短手方向に沿う一対の側面2dの各中間部を横切る横断線TLを挟んで第1フィルタ回路形成領域12および第2フィルタ回路形成領域13が設定されている。第1フィルタ回路形成領域12側の構成および第2フィルタ回路形成領域13側の構成は略同様である。以下では、第1フィルタ回路形成領域12側の構成を例にとって説明し、第2フィルタ回路形成領域13側の各構成については第1フィルタ回路形成領域12側の各構成と同一の参照符号を付して説明を省略する。
図39を参照して、前述の第1ダイオードD1は、第1入力電極膜201と第1グランド電極膜203との間において基板2の表層部に形成されており、第1入力電極膜201および第1グランド電極膜203に電気的に接続されている。また、前述の第2ダイオードD2は、第1出力電極膜202と第1グランド電極膜203との間において基板2の表層部に形成されており、第1出力電極膜202および第1グランド電極膜203に電気的に接続されている。第1ダイオードD1および第2ダイオードD2は、いずれも前述の第1実施形態と同様に、第1フィルタ回路FC1において、π型低域通過フィルタ24を過電圧から保護するための過電圧保護回路を形成している(図3等も併せて参照)。
第1ダイオードD1は、本変形例では、第1入力電極膜201と第1グランド電極膜203との間において、第1グランド電極膜203の第2部分203bの一部と第1入力電極膜201の一部とが対向する領域、および、第1グランド電極膜203の第1部分203aと第1入力電極膜201の一部とが対向する領域に形成されている。
第1ダイオードD1は、p型不純物を含む拡散領域(第1不純物領域)としての基板2と、基板2の表層部に形成されたn型不純物を含む複数のn型拡散領域206A,206B(第2不純物領域)とを含む。複数のn型拡散領域206A,206Bは、直交方向に沿って互いに間隔を空けて形成されている。複数のn型拡散領域206A,206Bは、第1入力電極膜201(入力端子3a)に電気的に接続される複数の第1拡散領域206Aと、第1グランド電極膜203(グランド端子3c)に電気的に接続される複数の第2拡散領域206Bとを含む。複数の第1拡散領域206Aおよび複数の第2拡散領域206Bは、直交方向に沿って交互に配列されている。
複数のn型拡散領域206A,206Bは、いずれも第1入力電極膜201と第1グランド電極膜203との間で、第1入力電極膜201および第1出力電極膜202の対向方向に沿って延びる平面視帯状に形成されている。複数のn型拡散領域206A,206Bは、それぞれ、ほぼ同一の深さおよびほぼ同一の不純物濃度で形成されている。また、複数のn型拡散領域206A,206Bは、それぞれ、ほぼ等しい平面視形状で形成されている。
つまり、複数のn型拡散領域206A,206Bの対向方向に沿う幅は、それぞれ等しい値に設定されていると共に、直交方向に沿う幅も、それぞれ等しい値に設定されている。なお、複数の第1拡散領域206Aおよび複数の第2拡散領域206Bは、前述の第1実施形態に係る複数の第1拡散領域45および複数の第2拡散領域46に対応する構成要素でもある。
第1入力電極膜201は、複数の第1拡散領域206Aを1つずつ被覆するように、第1グランド電極膜203側に向けて引き出された複数の第1帯状部分207を含む。また、第1グランド電極膜203は、複数の第2拡散領域206Bを1つずつ被覆するように、第1入力電極膜201側に向けて引き出された複数の第2帯状部分208を含む。第1入力電極膜201の第1帯状部分207および第1グランド電極膜203の第2帯状部分208は、互いに噛合う櫛歯形状に形成されている。
第1入力電極膜201の各第1帯状部分207は、角部が切除された先端部を有する平面視四角形状に形成されており、第1絶縁膜25に形成された第1コンタクト孔209を介して第1拡散領域206Aに電気的に接続されている。また、第1グランド電極膜203の各第2帯状部分208は、角部が切除された先端部を有する平面視四角形状に形成されており、第1絶縁膜25に形成された第2コンタクト孔210を介して第1拡散領域206Aに電気的に接続されている。
このように、第1ダイオードD1は、直交方向に沿って形成された複数個の双方向ツェナーダイオード要素Delを一体的に含む1つの双方向ツェナーダイオードを有している。双方向ツェナーダイオード要素Delは、より具体的には、直交方向に互いに隣り合って形成された第1ツェナーダイオードDz1および第2ツェナーダイオードDz2を含む。第1ツェナーダイオードDz1は、基板2および第1拡散領域206Aのpn接合によって形成されている。第2ツェナーダイオードDz2は、基板2および第2拡散領域206Bのpn接合によって形成されている。第1ツェナーダイオードDz1および第2ツェナーダイオードDz2は、基板2を介して互いに電気的に接続されている。
一方、第2ダイオードD2は、変形例では、第1出力電極膜202と第1グランド電極膜203との間において、第1グランド電極膜203の第2部分203bの一部と第1出力電極膜202の一部とが対向する領域、および、第1グランド電極膜203の第1部分203aと第1出力電極膜202の一部とが対向する領域に形成されている。
第2ダイオードD2は、p型の拡散領域としての基板2と、基板2の表層部に形成されたn型不純物を含む複数のn型拡散領域211A,211Bとを含む。複数のn型拡散領域211A,211Bは、直交方向に沿って互いに間隔を空けて形成されている。複数のn型拡散領域211A,211Bは、第1出力電極膜202(出力端子3b)に電気的に接続される複数の第1拡散領域211Aと、第1グランド電極膜203(グランド端子3c)に電気的に接続される複数の第2拡散領域211Bとを含む。複数の第1拡散領域211Aおよび複数の第2拡散領域211Bは、直交方向に沿って交互に配列されている。複数のn型拡散領域211A,211Bは、いずれも前述の第1ダイオードD1に係る複数のn型拡散領域206A,206Bと略同様の構成で形成されている。
第1出力電極膜202は、複数の第1拡散領域211Aを1つずつ被覆するように、第1グランド電極膜203側に向けて引き出された複数の第1帯状部分212を含む。また、第1グランド電極膜203は、複数の第2拡散領域211Bを1つずつ被覆するように、第1出力電極膜202側に向けて引き出された複数の第2帯状部分213を含む。第1出力電極膜202の第1帯状部分212および第1グランド電極膜203の第2帯状部分213は、互いに噛合う櫛歯形状に形成されている。
第1出力電極膜202の各第1帯状部分212は、角部が切除された先端部を有する平面視四角形状に形成されており、第1絶縁膜25に形成された第1コンタクト孔214を介して第1拡散領域211Aに電気的に接続されている。また、第1グランド電極膜203の各第2帯状部分213は、角部が切除された先端部を有する平面視四角形状に形成されており、第1絶縁膜25に形成された第2コンタクト孔215を介して第1拡散領域211Aに電気的に接続されている。
このように、第2ダイオードD2は、前述の第1ダイオードD1と同様に、直交方向に沿って形成された複数個の双方向ツェナーダイオード要素Delを一体的に含む1つの双方向ツェナーダイオードを有している。双方向ツェナーダイオード要素Delは、より具体的には、直交方向に互いに隣り合って形成された第1ツェナーダイオードDz1および第2ツェナーダイオードDz2を含む。第1ツェナーダイオードDz1は、基板2および第1拡散領域211Aのpn接合によって形成されている。第2ツェナーダイオードDz2は、基板2および第2拡散領域211Bのpn接合によって形成されている。第1ツェナーダイオードDz1および第2ツェナーダイオードDz2は、基板2を介して互いに電気的に接続されている。
なお、第1入力電極膜201の第1帯状部分207、第1出力電極膜202の第1帯状部分212、および第1グランド電極膜203の第2帯状部分208,213は、前述の第1実施形態に係る第1引出し電極部49および第2引出し電極部50に対応する構成要素でもある。また、第1コンタクト孔209,214および第2コンタクト孔210,215は、前述の第1実施形態に係る第1コンタクト孔47および第2コンタクト孔48に対応する構成要素でもある。図示はしないが、前述の第1実施形態と同様に、第1コンタクト孔209および第2コンタクト孔210を形成する部分において、第1絶縁膜25は薄膜部25a(図4参照)を有している。
本変形例に係るチップフィルタ200では、第1入力電極膜201および第1出力電極膜202間の領域に比較的に幅広な第1グランド電極膜203の第1部分203aが配置されている。本変形例に係るチップフィルタ200では、このような構成によって、第1グランド電極膜203において電界が集中するのが抑制されて、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2の各静電破壊耐量が高められている。本変形例に係るチップフィルタ200の第1ダイオードD1および第2ダイオードD2の各静電破壊耐量と比較するため、図40に示されるように、本変形例に係るチップフィルタ200の第1グランド電極膜203とは異なる形状の第1グランド電極膜203を有するチップフィルタ220を用意した。
図40は、図39に対応する領域の拡大図であって、参考例に係るチップフィルタ220の第1グランド電極膜203を示す平面図である。参考例に係るチップフィルタ220では、第1グランド電極膜203が、第1部分203aに代えて、第1グランド電極膜203の第2部分203bから、第1入力電極膜201および第1出力電極膜202間の領域に引き出された第1引き出し部221および第2引き出し部222を含む。
第1引き出し部221は、第2部分203bの第1入力電極膜201側の端部から直交方向に沿って帯状に引き出されている。第1引き出し部221の対向方向に沿う幅は、第1グランド電極膜203の1つの第2帯状部分208の直交方向に沿う幅よりも小さい値に設定されている。一方、第2引き出し部222は、第2部分203bの第1出力電極膜202側の端部から直交方向に沿って帯状に引き出されている。第2引き出し部222の対向方向に沿う幅は、第1グランド電極膜203の1つの第2帯状部分213の直交方向に沿う幅よりも小さい値に設定されている。
参考例に係るチップフィルタ220では、第1入力電極膜201と第1引き出し部221と電気的に接続されるように、第1入力電極膜201と第1引き出し部221との間の基板2の表層部に第1ダイオードD1が形成されている。また、第1出力電極膜202と第2引き出し部222と電気的に接続されるように、第1出力電極膜202と第2引き出し部222との間の基板2の表層部に、第2ダイオードD2が形成されている。
第1入力電極膜201および第1出力電極膜202の間の領域には、第1グランド電極膜203の第2部分203b、第1引き出し部221および第2引き出し部222によって、平面視四角形状の比較的に広い空き領域223が区画されている。空き領域223が第1入力電極膜201および第1出力電極膜202の間の領域内に占める平面視面積の割合は、第1グランド電極膜203が第1入力電極膜201および第1出力電極膜202の間の領域内に占める平面視面積よりも大きい。参考例に係るチップフィルタ220におけるその他の構成は、本変形例に係るチップフィルタ200と同様であるので、説明を省略する。
図41は、本変形例に係るチップフィルタ200および参考例に係るチップフィルタ220において、双方向ツェナーダイオード要素Delの個数を変化させたときの第1ダイオードD1の静電破壊耐量のシミュレーション結果を示すグラフである。なお、図41は、第1ダイオードD1の静電破壊耐量のシミュレーション結果を示しているが、当該結果は、第2ダイオードD2にも適用される点、補足しておく。
図41において、縦軸は静電破壊耐量であり、横軸は、双方向ツェナーダイオード要素Delの個数である。図41には、二つの折れ線L1,L2が示されている。折れ線L1は、参考例に係るチップフィルタ220の双方向ツェナーダイオード要素Delの個数および静電破壊耐量の関係を示している。折れ線L2は、本変形例に係るチップフィルタ200の双方向ツェナーダイオード要素Delの個数および静電破壊耐量の関係を示している。
折れ線L1,L2を参照して、双方向ツェナーダイオード要素Delの個数を増加させることによって静電破壊耐量を高めることができることがわかる。また、本変形例に係るチップフィルタ200であれば、参考例に係るチップフィルタ220の静電破壊耐量よりも高い静電破壊耐量を達成できることがわかる。
これは、次の理由により説明できる。すなわち、図40を参照して、参考例に係るチップフィルタ220の場合、第1引き出し部221の対向方向に沿う幅および第2引き出し部222の対向方向に沿う幅は、第1グランド電極膜203の第2部分203bの対向方向に沿う幅よりも小さく、かつ、第1グランド電極膜203の第2帯状部分208,213の直交方向の幅よりも小さい値に設定されている。そのため、複数の第2帯状部分208を分流した状態で流れる電流が第1引き出し部221に合流した際には、第1引き出し部221において電流密度が急激に高まる。また、複数の第2帯状部分213を分流した状態で流れる電流が第2引き出し部222に合流した際には、第2引き出し部222において電流密度が急激に高まる。
その結果、第1引き出し部221および/または第2引き出し部222において、電界集中が生じて静電破壊耐量が低下する。このような電界の集中は、特に、第1グランド電極膜203の第2部分203bと第1引き出し部221との接続部、および、第1グランド電極膜203の第2部分203bと第2引き出し部222との接続部で生じやすい傾向にある。
したがって、本変形例に係るチップフィルタ200のように、比較的幅広の第1部分203aによって比較的に広い電流経路を確保することにより、第1グランド電極膜203に電流が局所的に集中するのを抑制できる。これにより、第1グランド電極膜203において、第1部分203aおよび第2部分203bの接続部に電界集中が生じるのを抑制でき、静電破壊耐量を高めることができる。
図39を参照して、本変形例に係るチップフィルタ200に係る第1グランド電極膜203の寸法について具体的に説明する。本変形例に係る第1グランド電極膜203において、第1部分203aの対向方向に沿う幅Xは、少なくとも、第1グランド電極膜203の第2帯状部分208,213の直交方向の幅Y以上の値に設定されていることが好ましい。
より具体的には、第1部分203aの対向方向に沿う幅Xは、少なくとも、当該第1部分203aと第1入力電極膜201との間に配置された複数の第2帯状部分208の直交方向の幅Yの合計値以上の値、または、当該第1部分203aと第1出力電極膜202との間に配置された複数の第2帯状部分213の直交方向の幅Yの合計値以上の値に設定されることが好ましい。
さらに具体的には、第1部分203aの対向方向に沿う幅Xは、当該第1部分203aと第1入力電極膜201との間に配置された複数の第2帯状部分208の直交方向の幅Y、および、当該第1部分203aと第1出力電極膜202との間に配置された複数の第2帯状部分213の直交方向の幅Yの合計値以上の値に設定されることが好ましい。
このように、対向方向の幅Xが、少なくとも各第2帯状部分208,213の直交方向の幅Y以上の値に設定された第1部分203aを形成することによって、複数の第2帯状部分208,213を流れる電流が第1部分203aに合流した際に、当該第1部分203aにおいて電流密度が急激に高まるのを効果的に抑制できる。これにより、第1グランド電極膜203において、第1部分203aおよび第2部分203bの接続部に電界集中が生じるのを効果的に抑制でき、静電破壊耐量を効果的に高めることができる。
なお、本変形例では、第1グランド電極膜203の第1部分203aが、単一の電極膜からなる例について説明したが、第1グランド電極膜203の第1部分203aは、前述の除去領域205等によって複数の電極膜部分に分割された構成とされていてもよい。この場合、各電極膜部分の対向方向に沿う方向の幅をXとすると、各電極膜部分の幅Xは、前述の第1部分203aの幅Xと同様に、少なくとも第2帯状部分208,213の直交方向の幅Y以上の値、または、複数の第2帯状部分208,213の直交方向の幅Yの合計値以上の値に設定されていることが好ましい。
本変形例では、図42に示されるように、第1ダイオードD1において、複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長を変化させたときの当該第1ダイオードD1の静電破壊耐量の変化を調べた。図42は、図38に示す第4変形例に係るチップフィルタ200において、複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長を変化させたときの第1ダイオードD1の静電破壊耐量のシミュレーション結果を示すグラフである。なお、図42は、第1ダイオードD1の静電破壊耐量のシミュレーション結果を示しているが、当該結果は、第2ダイオードD2にも適用される点、補足しておく。
図42において、縦軸は静電破壊耐量であり、横軸は複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長である。ここでは、双方向ツェナーダイオード要素Delの個数を変化させることによって、複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長を変化させている。なお、複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長とは、基板2の素子形成面2aに対する各n型拡散領域206A,206Bの周囲長の合計値で定義される。
図42から、複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長が500μm以上2000μm以下の範囲であれば、8kV以上30kV以下の静電破壊耐量を達成できることがわかる。より具体的には、複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長が500μm以上であれば、8kV以上の静電破壊耐量を達成でき、当該総周囲長が1000μm以上であれば、15kV以上の静電破壊耐量を達成でき、当該総周囲長が1500μm以上であれば、25kV以上の静電破壊耐量を達成できる。
図43は、図38に示す第4変形例に係るチップフィルタ200において、双方向ツェナーダイオード要素Delの個数を固定した状態で、複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長を変化させたときの静電破壊耐量のシミュレーション結果を示すグラフである。なお、図43は、第1ダイオードD1の静電破壊耐量のシミュレーション結果を示しているが、当該結果は、第2ダイオードD2にも適用される点、補足しておく。
図43において、縦軸は静電破壊耐量であり、横軸は複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長である。図43では、双方向ツェナーダイオード要素Delの個数が8個である場合において複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長を変化させたときの静電破壊耐量が示されている。また、図43では、双方向ツェナーダイオード要素Delの個数が12個である場合において複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長を変化させたときの静電破壊耐量が示されている。
図43を参照して、双方向ツェナーダイオード要素Delの個数が8個で、かつ複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長が550μm程度のとき、静電破壊耐量は11kVであった。そして、複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長を550μm程度から1100μm程度まで増加させると、静電破壊耐量が11kVから19kVに増加した。
また、双方向ツェナーダイオード要素Delの個数が12個で、かつ複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長が600μm程度のとき、静電破壊耐量は12kVであった。そして、複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長を600μm程度から1800μm程度まで増加させると、静電破壊耐量が12kVから27kVに増加した。
双方向ツェナーダイオード要素Delの個数が8個でかつ複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長が550μm程度であるときと、双方向ツェナーダイオード要素Delの個数が12個でかつ複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長が600μm程度であるときとを比較すると、それらの静電破壊耐量間に比較的大きな差は存在しない。
その一方で、複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長を増加させると、双方向ツェナーダイオード要素Delの個数が8個および12個のいずれの場合においても、静電破壊耐量が増加している。このことから、第1ダイオードD1の静電破壊耐量は、双方向ツェナーダイオード要素Delの個数よりも複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長に依存していることが理解される。
図41〜図43のシミュレーション結果から、第1ダイオードD1において、複数のn型拡散領域206A,206Bの総周囲長が500μm以上、1000μm以上または1500μm以上であり、双方向ツェナーダイオード要素Delの個数が8個以上または12個以上であることが好ましいことが理解される。この構成によれば、良好な静電破壊耐量を実現できる。
以上のように、本変形例に係るチップフィルタ200では、第1入力電極膜201および第1出力電極膜202の間の領域を被覆するように、これらの間の領域に第1グランド電極膜203が形成されている。したがって、第1グランド電極膜203によって、第1入力電極膜201および第1出力電極膜202の間の領域において比較的広い電流経路を形成できるから、第1ダイオードD1および第2ダイオードD2の一方または双方から第1グランド電極膜203に電流が流れ込んだとしても、当該第1グランド電極膜203で電流が局所的に密になるのを抑制できる。よって、第1グランド電極膜203での電界集中の発生を良好に抑制できるから、耐圧を向上できるチップフィルタ200を提供できる。
次に、図44および図45を参照して、第1絶縁膜25を被覆する第2絶縁膜26上の構成について説明する。図44は、図38に示すチップフィルタ200の第2絶縁膜26上の構成を示す模式的な平面図である。図45は、図44の一点鎖線XLVにより取り囲まれた領域の拡大図である。
図44および図45を参照して、本変形例に係る第2絶縁膜26は、第1入力電極膜201、第1出力電極膜202および第1グランド電極膜203の全域を被覆するように第1絶縁膜25上に形成されている。第2絶縁膜26上には、前述の一対の入力端子3aに電気的に接続される一対の第2入力電極膜231(第3電極膜)と、前述の一対の出力端子3bに電気的に接続される一対の第2出力電極膜232(第4電極膜)と、前述のグランド端子3cに電気的に接続される第2グランド電極膜233とが形成されている。一対の第2入力電極膜231は、一対の入力端子3aの直下にそれぞれ配置されており、一対の第2出力電極膜232は、一対の出力端子3bの直下にそれぞれ配置されており、第2グランド電極膜233は、グランド端子3cの直下に配置されている。
一対の第2入力電極膜231は、本変形例では基板2の長手側面2cおよび短手側面2dに平行な4辺を有する平面視四角形状に形成されており、基板2の一端部側(図38の左側の端部側)において短手側面2dに沿って間隔を空けて形成されている。各第2入力電極膜231は、前述の第1入力電極膜201の直上に配置されている。一対の第2出力電極膜232は、本変形例では基板2の長手側面2cおよび短手側面2dに平行な4辺を有する平面視四角形状に形成されており、基板2の他端部側(図38の右側の端部側)において短手側面2dに沿って間隔を空けて形成されている。各第2出力電極膜232は、前述の第1出力電極膜202の直上に配置されている。
第2グランド電極膜233は、本変形例では基板2の長手側面2cおよび短手側面2dに平行な4辺を有する平面視四角形状に形成されている。第2グランド電極膜233は、本変形例では、平面視において基板2の中央領域、つまり、前述の第1グランド電極膜203の第2部分203bの直上に配置されている。第2グランド電極膜233は、基板2の素子形成面2aに沿う方向に第2入力電極膜231および第2出力電極膜232と対向している。
各第2入力電極膜231は、第2絶縁膜26に形成された第1コンタクト孔234を介してその直下の第1入力電極膜201と電気的に接続されている。また、各第2出力電極膜232は、第2絶縁膜26に形成された第2コンタクト孔235を介してその直下の第1入力電極膜201と電気的に接続されている。また、第2グランド電極膜233は、第2絶縁膜26に形成された第3コンタクト孔236を介してその直下の第1グランド電極膜203と電気的に接続されている。
第2絶縁膜26上においても、第1フィルタ回路形成領域12側の構成および第2フィルタ回路形成領域13側の構成は略同様である。以下では、第1フィルタ回路形成領域12側の構成を例にとって説明し、第2フィルタ回路形成領域13側の各構成については第1フィルタ回路形成領域12側の各構成と同一の参照符号を付して説明を省略する。
第1フィルタ回路形成領域12において、第2入力電極膜231および第2出力電極膜232は、基板2の長手側面2cに沿って、基板2の素子形成面2aに沿う方向に対向するように互いに間隔を空けて形成されている。
図45を参照して、第2入力電極膜231および第2出力電極膜232の間に位置する第2絶縁膜26上には、第2入力電極膜231および第2出力電極膜232と電気的に接続されるように抵抗導電体膜240を含む抵抗Rが形成されている。本変形例では、抵抗導電体膜240は、第2入力電極膜231および第2出力電極膜232の間の領域において、第2入力電極膜231、第2出力電極膜232および第2グランド電極膜233によって区画された領域に形成されている。
抵抗導電体膜240は、平面視で第1グランド電極膜203と重なる位置に形成されている。抵抗導電体膜240は、第2絶縁膜26上に引き回された複数の第1抵抗膜ライン241と、複数の第1抵抗膜ライン241上に間隔を空けて形成された複数の第1導体膜242とを有する第1パターン243を含む。また、抵抗導電体膜240は、第2絶縁膜26上に引き回された複数の第2抵抗膜ライン244と、複数の第2抵抗膜ライン244上に間隔を空けて形成された複数の第2導体膜245とを有する第2パターン246を含む。
さらに、本変形例に係る抵抗導電体膜240は、当該抵抗導電体膜240の一部を第2入力電極膜231および第2出力電極膜232に電気的に接続し、または、当該抵抗導電体膜240の一部を第2入力電極膜231および第2出力電極膜232から電気的に切り離せるように切断可能に設けられたヒューズ部247を含む。より具体的には、ヒューズ部247は、第1パターン243および第2パターン246の間において、これら第1パターン243および第2パターン246同士を切り離し可能に互いに接続させている。第1パターン243および第2パターン246は、ヒューズ部247を介して互いに直列接続されている。
なお、第1パターン243に係る第1抵抗膜ライン241および第1導体膜242の構成、ならびに、第2パターン246に係る第2抵抗膜ライン244および第2導体膜245は、前述の第1実施形態の抵抗膜ライン52および導体膜53に対応する構成要素である。第1パターン243に係る第1抵抗膜ライン241および第1導体膜242の各構成、ならびに、第2パターン246に係る第2抵抗膜ライン244および第2導体膜245の各構成は、引き回し態様や接続態様が異なる点を除いて、前述の第1実施形態の抵抗膜ライン52および導体膜53の各構成と略同様の構成であるので、その具体的な説明は省略する。
抵抗導電体膜240では、ヒューズ部247を選択的に切断することによって、第1パターン243の一部を第2入力電極膜231および第2出力電極膜232に電気的に接続し、または、第1パターン243の一部を第2入力電極膜231および第2出力電極膜232から電気的に切り離すことができる。また、抵抗導電体膜240では、ヒューズ部247を選択的に切断することによって、第2パターン246の一部を第2入力電極膜231および第2出力電極膜232に電気的に接続し、または、第2パターン246の一部を第2入力電極膜231および第2出力電極膜232から電気的に切り離すことができる。このようにして、抵抗導電体膜240は、前述の第1実施形態と同様に、数Ω〜数kΩの抵抗値までの広範な範囲の抵抗値を容易に実現できる構成とされている。
次に、図46および図47を併せて参照して、抵抗導電体膜240のヒューズ部247の配置についてより具体的に説明する。図46は、図45のXLVI−XLVI線に沿う縦断面図であって、ヒューズ部247が切断されていない状態を示す図である。図47は、図46に対応する部分の縦断面図であってヒューズ部247が切断されている状態を示す図である。
図46を参照して、第2絶縁膜26は、第1グランド電極膜203の第1部分203aに形成された除去領域205を埋めて、当該第1グランド電極膜203の第1部分203aを被覆するように形成されている。そして、抵抗導電体膜240のヒューズ部247は、平面視において、前述の第1グランド電極膜203の第1部分203aに形成された除去領域205と重なる位置に配置されている。
図47を参照して、ヒューズ部247がレーザ照射によって溶断される場合には、ヒューズ部247の直下の領域に第1グランド電極膜203の第1部分203aが存在していないので、当該第1部分203aがレーザ照射によって溶断されるのを効果的に抑制できる。これにより、第1グランド電極膜203の第1部分203aの平面視面積が溶断によって小さくなるのを効果的に抑制できるから、当該第1部分203aを流れる電流の密度の不所望な増加を良好に回避できる。また、ヒューズ部247の溶断の後には、ヒューズ部247の溶断部248を埋めるように、前述の第3絶縁膜27が第2絶縁膜26上に形成されるので、第1パターン243および第2パターン246の間の絶縁状態を良好に保つことができる。これにより、抵抗導電体膜240の抵抗値を所望の値に良好に合わせ込むことができる。
なお、本変形例に係る第1入力電極膜201は、前述の第1実施形態に係る第1電極膜20D1に対応する構成要素であり、本変形例に係る第1出力電極膜202は、前述の第1実施形態に係る第1電極膜20D2に対応する構成要素であり、本変形例に係る第1グランド電極膜203は、前述の第1実施形態に係る第2電極膜21D1,21D2に対応する構成要素でもある。また、本変形例に係る第2入力電極膜231は、前述の第1実施形態に係る第1電極膜20Rに対応する構成要素であり、本変形例に係る第2出力電極膜232は、前述の第1実施形態に係る第2電極膜21Rに対応する構成要素でもある。
また、本変形例では、前述の第1コンデンサC1は、第1電極膜20C1および第2電極膜21C1を介して第1入力電極膜201および第1グランド電極膜203と電気的に接続されるように、第1入力電極膜201および第1グランド電極膜203の間の基板2の素子形成面2aに形成されている。また、前述の第2コンデンサC2は、第1電極膜20C2および第2電極膜21C2を介して第1出力電極膜202および第1グランド電極膜203と電気的に接続されるように、第1出力電極膜202および第1グランド電極膜203の間の基板2の素子形成面2aに形成されている。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。この明細書および図面(図38〜図47)から抽出される特徴を以下に示す。
項1:基板と、前記基板の表面に沿う方向に対向するように互いに間隔を空けて前記基板上に形成された第1電極膜および第2電極膜と、前記第1電極膜および前記第2電極膜の間の領域を被覆し、かつ前記基板の表面に沿う方向に前記第1電極膜および前記第2電極膜と間隔を空けて対向するように前記基板上に形成された基準電位電極膜と、前記第1電極膜および前記第2電極膜の少なくとも一方の電極膜と前記基準電位電極膜との間において前記基板の表層部に形成され、当該一方の電極膜および前記基準電位電極膜に電気的に接続されたダイオードとを含む、チップ部品。
このチップ部品では、第1電極膜および第2電極膜の間の領域を被覆するように、第1電極膜および第2電極膜の間の領域に基準電位電極膜が形成されている。したがって、この基準電位電極膜によって、第1電極膜および第2電極膜の間の領域において比較的広い電流経路を形成できるから、ダイオードから基準電位電極膜に電流が流れ込んだとしても、当該基準電位電極膜で電流が局所的に密になるのを抑制できる。よって、基準電位電極膜での電界集中の発生を良好に抑制できるから、耐圧を向上できるチップ部品を提供できる。
項2:前記基準電位電極膜は、前記第1電極膜および前記第2電極膜の間の領域に加えて、前記第1電極膜および前記第2電極膜の間の領域外の領域も被覆している、項1に記載のチップ部品。
項3:前記基準電位電極膜は、前記第1電極膜および前記第2電極膜の間の領域を被覆するように、前記第1電極膜および前記第2電極膜の間の領域に配置された第1部分と、前記第1部分から前記第1電極膜および前記第2電極膜の間の領域外の領域に配置された第2部分とを含み、前記ダイオードは、前記一方の電極膜と前記基準電位電極膜の前記第1部分との間において前記基板の表層部に形成されている、項1または2に記載のチップ部品。
項4:前記ダイオードは、前記基板の表層部に形成された第1導電型の第1不純物領域と、前記第1不純物領域の表層部に形成され、前記第1電極膜および前記第2電極膜の対向方向の直交方向に沿って互いに間隔を空けて配置された第2導電型の複数の第2不純物領域とを含む、項1〜3のいずれか一項に記載のチップ部品。
項5:前記一方の電極膜は、前記複数の第2不純物領域の内の少なくとも1つを被覆するように前記基準電位電極膜側に向けて平面視帯状に引き出された第1帯状部分を含み、前記基準電位電極膜は、前記第1帯状部分が被覆していない少なくとも1つの前記第2不純物領域を被覆するように前記一方の電極膜側に向けて引き出された第2帯状部分を含む、項4に記載のチップ部品。
項6:前記一方の電極膜は、前記複数の第2不純物領域のうちの一部を被覆するように引き出された前記第1帯状部分を複数含み、前記基準電位電極膜は、前記複数の第2不純物領域のうちの一部を被覆するように引き出された前記第2帯状部分を複数含み、前記一方の電極膜の前記第1帯状部分および前記基準電位電極膜の前記第2帯状部分が、互いに噛合う櫛歯形状に形成されている、項5に記載のチップ部品。
項7:前記ダイオードは、前記第1不純物領域および前記一方の電極膜に電気的に接続された前記第2不純物領域のpn接合によって形成される第1ツェナーダイオードと、前記第1不純物領域および前記基準電位電極膜に電気的に接続された前記第2不純物領域のpn接合によって形成され、かつ前記第1不純物領域を介して前記第1ツェナーダイオードに電気的に接続された第2ツェナーダイオードとを含む、項4〜6のいずれか一項に記載のチップ部品。
項8:前記ダイオードは、前記直交方向に沿って形成された双方向ツェナーダイオード要素を含み、前記双方向ツェナーダイオード要素は、前記直交方向に互いに隣り合って形成された一対の前記第1ツェナーダイオードおよび前記第2ツェナーダイオードを含む、項7に記載のチップ部品。
項9:8個以上の前記双方向ツェナーダイオード要素が、前記直交方向に沿って形成されている、項8に記載のチップ部品。
項10:前記ダイオードにおいて、前記基板の表面に対する各前記第2不純物領域の周囲長の合計値で定義される前記複数の第2不純物領域の総周囲長が、500μm以上である、項4〜9のいずれか一項に記載のチップ部品。
項11:前記ダイオードの静電破壊耐量が、8kV以上である、項1〜10のいずれか一項に記載のチップ部品。
項12:前記第1電極膜と前記第2電極膜との間に低域通過フィルタ回路が形成されており、前記ダイオードは、前記低域通過フィルタ回路を過電圧から保護するための過電圧保護回路を形成している、項1〜11のいずれか一項に記載のチップ部品。
項13:少なくとも前記基準電位電極膜を被覆するように前記基板上に形成された絶縁膜と、前記基板の表面に沿う方向に対向するように互いに間隔を空けて前記絶縁膜上に形成された第3電極膜および第4電極膜と、前記第3電極膜および前記第4電極膜と電気的に接続されるように、前記絶縁膜上に形成された抵抗導電体膜とをさらに含む、項1〜12のいずれか一項に記載のチップ部品。
項14:前記抵抗導電体膜は、平面視で前記基準電位電極膜と重なるように形成されている、項13に記載のチップ部品。
項15:前記抵抗導電体膜は、当該抵抗導電体膜の一部を前記第3電極膜および前記第4電極膜に電気的に接続し、または、当該抵抗導電体膜の一部を前記第3電極膜および前記第4電極膜から電気的に切り離せるように切断可能に設けられたヒューズ部を含む、項13または14に記載のチップ部品。
項16:前記基準電位電極膜には、当該基準電位電極膜の電極材料の一部が取り除かれた除去領域が選択的に形成されており、前記絶縁膜は、前記除去領域を埋めて前記基準電位電極膜を被覆しており、前記抵抗導電体膜の前記ヒューズ部は、平面視において前記基準電位電極膜の前記除去領域と重なる位置に配置されている、項15に記載のチップ部品。
項17:平面視において、前記除去領域が前記基準電位電極膜内に占める面積の割合は、前記除去領域以外の領域が前記基準電位電極膜内に占める面積の割合よりも小さい、項16に記載のチップ部品。
項18:前記抵抗導電体膜は、前記絶縁膜上に引き回された第1抵抗膜と、前記第1抵抗膜上に間隔を空けて形成された複数の第1導体膜とを含む第1パターンと、前記絶縁膜上に引き回された第2抵抗膜と、前記第2抵抗膜上に間隔を空けて形成された複数の第2導体膜とを含む第2パターンとを含み、前記第1パターンおよび前記第2パターンが、前記ヒューズ部を介して互いに電気的に接続されている、項15〜17のいずれか一項に記載のチップ部品。
項19:前記第3電極膜は、前記絶縁膜に形成された第1コンタクト孔を介して前記第1電極膜と電気的に接続されており、前記第4電極膜は、前記絶縁膜に形成された第2コンタクト孔を介して前記第2電極膜と電気的に接続されており、前記ダイオードおよび前記抵抗導電体膜が互いに電気的に接続されている、項13〜18のいずれか一項に記載のチップ部品。