この発明に係る眼科用顕微鏡の実施形態の例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この明細書において引用された文献の記載内容や任意の公知技術を、以下の実施形態に援用することが可能である。
眼科用顕微鏡は、眼科分野における診療や手術において被検眼の拡大像を観察(撮影)するために使用される。観察対象部位は、患者眼の任意の部位であってよく、たとえば、前眼部においては角膜や隅角や硝子体や水晶体や毛様体などであってよく、後眼部においては網膜や脈絡膜や硝子体であってよい。また、観察対象部位は、瞼や眼窩など眼の周辺部位であってもよい。
以下では、実施形態に係る眼科用顕微鏡として手術用顕微鏡を例に説明するが、手術用顕微鏡以外の他の眼科用顕微鏡であってよい。
[構成]
図1〜図2に、実施形態に係る眼科用顕微鏡の構成例を示す。図1〜図2は、眼科用顕微鏡の光学系の構成例を示す。図1は後眼部を観察するときの光学系を示し、図2は前眼部を観察するときの光学系を示す。
眼科用顕微鏡1は、照明系10(10L、10R)と、受光系20(20L、20R)と、主接眼系30(30L、30R)と、副接眼系80(80L、80R)とを備える。後眼部(網膜等)を観察するときには、被検眼Eの直前に前置レンズ90が配置される。なお、図1に示すような非接触の前置レンズ90の代わりにコンタクトレンズ等を用いることが可能である。また、隅角を観察するときにはコンタクトミラー(三面鏡等)等を用いることができる。
(照明系10)
照明系10は、被検眼Eに照明光を照射する。図示は省略するが、照明系10は、照明光を発する光源や、照明野を規定する絞りや、レンズ系などを含む。照明系の構成は、従来の眼科装置(たとえばスリットランプ顕微鏡、眼底カメラ、レフラクトメータ等)と同様であってよい。
本実施形態の照明系10(10L及び10R)は、それぞれ受光系20(20L及び20R)と同軸に構成されている。具体的には、術者(観察者)の左眼E0Lに提示される像を取得するための受光系(左受光系)20Lには、たとえばハーフミラーからなるビームスプリッタ11Lが斜設されている。ビームスプリッタ11Lは、受光系20Lの光路に照明系(左照明系)10Lの光路を同軸に結合している。照明系10Lから出力された照明光は、ビームスプリッタ11Lにより反射され、受光系20Lと同軸で被検眼Eを照明する。同様に、術者の右眼E0Rに提示される像を取得するための受光系(右受光系)20Rには、受光系20Rの光路に照明系(右照明系)10Rの光路を結合するビームスプリッタ11Rが斜設されている。ビームスプリッタ11Rは、受光系20Rの光路に照明系10Rの光路を同軸に結合している。照明系10Rから出力された照明光は、ビームスプリッタ11Rにより反射され、受光系20Rと同軸で被検眼Eを照明する。
受光系20L(20R)の光軸に対する照明光の位置を変更可能に構成することができる。この構成は、たとえば、従来の眼科手術用顕微鏡と同様に、ビームスプリッタ11L(11R)に対する照明光の照射位置を変更するための手段を設けることにより実現される。
本例では、対物レンズ21L(21R)と被検眼Eとの間にビームスプリッタ11L(11R)が配置されているが、照明光の光路が受光系20L(20R)に結合される位置は、受光系20L(20R)の任意の位置でよい。
(受光系20)
本実施形態では、左右一対の受光系20(20L及び20R)が設けられている。受光系20Lは、術者の左眼E0Lに提示される像を取得するための構成を有し、受光系20Rは、右眼E0Rに提示される像を取得するための構成を有する。受光系20Lと受光系20Rは同じ構成を備える。受光系20L(20R)は、対物レンズ21L(21R)と、結像レンズ22L(22R)と、撮像素子23L(23R)とを含む。
なお、結像レンズ22L(22R)が設けられていない構成を適用することも可能である。本実施形態のように結像レンズ22L(22R)が設けられている場合、対物レンズ21L(21R)と結像レンズ22L(22R)との間をアフォーカルな光路(平行光路)とすることができる。それにより、フィルタ等の光学素子を配置することや、光路結合部材を配置して他の光学系からの光路を結合することが容易になる(すなわち、光学的構成の自由度や拡張性が向上される)。
符号AL1は、受光系20Lの対物レンズ21Lの光軸(対物光軸)を示し、符号AR1は、受光系20Rの対物レンズ21Rの光軸(対物光軸)を示す。撮像素子23L(23R)は、たとえばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等のエリアセンサである。
以上は、被検眼Eの後眼部(眼底)を観察するときの受光系20の構成である(図1)。一方、前眼部を観察するときには、図2に示すように、対物レンズ21L(21R)に対して被検眼E側の位置に、フォーカスレンズ24L(24R)とウェッジプリズム25L(25R)とが配置される。本例のフォーカスレンズ24L(24R)は凹レンズであり、対物レンズ21L(21R)の焦点距離を延長するように作用する。ウェッジプリズム25L(25R)は、受光系20L(20R)の光路(対物光軸AL1(AR1))を所定角度だけ外側に偏向する(符号AL2及びAR2で示す)。このように、フォーカスレンズ24L及びウェッジプリズム25Lが受光系20Lに配置され、かつ、フォーカスレンズ24R及びウェッジプリズム25Rが受光系20Rに配置される。それにより、後眼部観察用の焦点位置F1から前眼部観察用の焦点位置F2に切り替えられる。
フォーカスレンズとして凸レンズを用いることが可能である。その場合、フォーカスレンズは、後眼部観察時に光路に配置され、前眼部観察時に光路から退避される。フォーカスレンズの挿入/退避によって焦点距離を切り替える代わりに、たとえば光軸方向に移動可能なフォーカスレンズを設けることにより焦点距離を連続的又は段階的に変更できるように構成することが可能である。
図2に示す例では、ウェッジプリズム25L(25R)の基底方向は外側である(つまりベースアウト配置である)が、ベースイン配置のウェッジプリズムを用いることができる。その場合、ウェッジプリズムは、後眼部観察時に光路に配置され、前眼部観察時に光路から退避される。ウェッジプリズムの挿入/退避によって光路の方向を切り替える代わりに、プリズム量(及びプリズム方向)が可変なプリズムを設けることにより光路の向きを連続的又は段階的に変更できるように構成することが可能である。
(主接眼系30)
本実施形態では、左右一対の主接眼系30(30L及び30R)が設けられている。主接眼系(左主接眼系)30Lは、受光系20Lにより取得された被検眼Eの像を術者の左眼E0Lに提示するための構成を有する。主接眼系(右主接眼系)30Rは、受光系20Rにより取得された被検眼Eの像を右眼E0Rに提示するための構成を有する。主接眼系30Lと主接眼系30Rは同じ構成を備える。主接眼系30L(30R)は、表示部31L(31R)と、表示部31L(31R)の表示面側に配置された接眼レンズ系32L(32R)とを含む。
表示部31L(31R)は、たとえばLCD等のフラットパネルディスプレイである。表示部31L(31R)の表示面のサイズは、たとえば(対角線長)7インチ以下とされる。左右一対の主接眼系30L及び30Rに設けられる表示デバイスの画面サイズは、術者(観察者)の眼幅(瞳孔間距離等)や、装置のサイズや、装置の設計(光学系や機構の配置等)などに制約を受ける。すなわち、このような制約条件と見掛け視野の広さはトレードオフの関係にある。このような観点から、表示部31L及び31Rの画面サイズの最大値は7インチ程度と考えられる。なお、接眼レンズ系32L及び32Rの構成や機構の配置を工夫することにより、7インチを超える画面サイズの表示部31L及び31Rを適用することができ、或いは、小サイズの表示部31L及び31Rを適用することができる。
主接眼系30Lと主接眼系30Rとの間隔を変更することが可能である。それにより、術者の眼幅に応じて主接眼系30Lと主接眼系30Rとの間隔を調整することができる。また、主接眼系30Lと主接眼系30Rとの相対的向きを変更することが可能である。つまり、主接眼系30Lの光軸と主接眼系30Rの光軸とがなす角度を変更することが可能である。それにより、両眼E0L及びE0Rの輻輳を誘発することができ、術者による立体視を支援することができる。
(副接眼系80)
本実施形態では、左右一対の副接眼系80(80L及び80R)が設けられている。副接眼系(左副接眼系)80Lは、撮像素子(左撮像素子)23L及び撮像素子(右撮像素子)23Rのいずれかの出力に基づく画像を助手の左眼E1Lに提示するための構成を有する。副接眼系(右副接眼系)80Rは、撮像素子23L及び撮像素子23Rのいずれかの出力に基づく画像を助手の右眼E1Rに提示するための構成を有する。副接眼系80Lと副接眼系80Rは同じ構成を備える。副接眼系80L(80R)は、表示部81L(81R)と、表示部81L(81R)の表示面側に配置された接眼レンズ系82L(82R)とを含む。
表示部81L(81R)は、たとえばLCD等のフラットパネルディスプレイである。表示部81L(81R)の表示面のサイズは、たとえば表示部31L(31R)と同様であってよい。
副接眼系80Lと副接眼系80Rとの間隔を変更することが可能である。それにより、助手の眼幅に応じて副接眼系80Lと副接眼系80Rとの間隔を調整することができる。
主接眼系30に対する副接眼系80の位置は変更可能である。たとえば、副接眼系80は、術部に対して略垂直な回動軸の回りに回動可能に保持される。回動軸と主接眼系30との相対的な位置は一定であってよい。回動軸は、受光系20の対物光軸、又は対物光軸AL1及びAR1の中間の軸であってよい。この実施形態では、主接眼系30に対する副接眼系80の位置は、この回動軸の回りの回動軌道上の位置として定義される。すなわち、主接眼系30に対して副接眼系80が正対する位置を180度の位置(後述の図4参照)とし、主接眼系30の正面方向に直交する左側の(回動軌道上の)副接眼系80の位置を90度の位置(図1、図2参照)とする。同様に、主接眼系30の正面方向に直交する右側の(回動軌道上の)副接眼系80の位置を270度の位置(図5参照)とする。
主接眼系30Lの表示部31Lには、撮像素子23Lにより取得された左画像Lが表示される。主接眼系30Rの表示部31Rには、撮像素子23Rにより取得された右画像Rが表示される。それにより、術者は、術部を立体的に観察することができる。図1及び図2では、表示部31L及び31Rのそれぞれに表示される画像の向きが「L」と「R」の向きで模式的に表されている。
これに対して、副接眼系80の表示部81L及び81Rには、主接眼系30の撮像素子23L及び23Rの少なくとも一方からの出力に基づく画像が主接眼系30に対する副接眼系80の位置に応じて回転されて表示される。
図3に、主接眼系30に対する副接眼系80の位置に応じて副接眼系80の表示部81L及び81Rに表示される画像を模式的に示す。図3は、被検眼Eを真上から見たときの主接眼系30の表示部31L及び31Rに表示される画像と、副接眼系80の表示部81L及び81Rに表示される画像とを模式的に表す。図3に示すように、主接眼系30の表示部31Lに左画像Lが表示され、表示部31Rに右画像Rが表示されている。図3では、図1及び図2と同様に、表示部81L及び81Rのそれぞれに表示される画像の向きが「L」と「R」の向きで模式的に表されている。なお、図3では、主接眼系30に対する副接眼系80の位置にかかわらず表示部81L及び81Rの配列方向が固定されて図示されている。
図4に、主接眼系30に対して180度の位置に副接眼系80が位置しているときの眼科用顕微鏡1の光学系の構成例を示す。図4において、図1及び図2と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
主接眼系30に正対する位置(180度)を含む所定の立体視範囲(既定範囲)に副接眼系80が位置されているとき、表示部81Lには、表示部31Rに表示された右画像Rが180度回転されて表示される。また、表示部81Rには、表示部31Lに表示された左画像Lが180度回転されて表示される。立体視範囲は、たとえば、主接眼系30に対する副接眼系80の位置が175度から180度の範囲とすることができる。それにより、立体視範囲に副接眼系80が位置するとき、助手は、術者と同様に術部を立体的に観察することが可能になる。
図5に、主接眼系30に対して270度の位置に副接眼系80が位置しているときの眼科用顕微鏡1の光学系の構成例を示す。図5において、図1及び図2と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
図5に示す位置は、図1及び図2に示す位置と同様に、上記の立体視範囲外の位置である。上記の立体視範囲外の位置に副接眼系80が位置されているとき、表示部81L及び81Rの双方に、表示部31L及び31Rのいずれか一方の表示部に表示された画像が主接眼系30に対する副接眼系80の位置に応じて回転されて表示される。表示部81L及び81Rの双方に表示される画像は、表示部31L及び31Rのうち副接眼系80の回動軌道に沿った距離が近い方の表示部に表示された画像が用いられる。たとえば、画像は、副接眼系80が回動される方向に回転される。
たとえば、図1及び図2に示すように、主接眼系30に対して90度の位置では、副接眼系80は表示部31Rより表示部31Lの方が近いため、表示部81L及び81Rの双方には、表示部31Lに表示された左画像Lが90°回転されて表示される。
また、たとえば、図5に示すように、主接眼系30に対して270度の位置では、副接眼系80は表示部31Lより表示部31Rの方が近いため、表示部81L及び81Rの双方には、表示部31Rに表示された右画像Rが270°回転されて表示される。
ここで、主接眼系30に対する副接眼系80の位置をP(Pは実数)度とする。0度<P(Pは実数)<175度の範囲では、副接眼系80は表示部31Rより表示部31Lの方が近いため、表示部81L及び81Rの双方には、表示部31Lに表示された左画像LがP度回転されて表示される。185度<P<360度の範囲では、副接眼系80は表示部31Lより表示部31Rの方が近いため、表示部81L及び81Rの双方には、表示部31Rに表示された右画像RがP度回転されて表示される。それにより、助手は、術者と同様に術部を両眼で観察することが可能になる。
なお、175度≦P≦185度の範囲では、前述のように、表示部81Lには、表示部31Rに表示された右画像Rが180度回転されて表示され、表示部81Rには、表示部31Lに表示された左画像Lが180度回転されて表示される。
図6に、実施形態に係る眼科用顕微鏡1の制御系の構成例を示す。図6において、図1〜図5と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
制御部100は、眼科用顕微鏡1の各部の制御を実行する。照明系10の制御の例として次のものがある:光源の点灯、消灯、光量調整;絞りの調整;スリット照明が可能な場合にはスリット幅の調整。撮像素子23の制御として、露光調整やゲイン調整や撮影レート調整などがある。
制御部100は、各種の情報を表示部31及び81に表示させる。制御部100は、主接眼系制御部101と、副接眼系制御部102とを含む。主接眼系制御部101は、撮像素子23Lにより取得された画像(又はそれを処理して得られた画像)を表示部31Lに表示させ、かつ、撮像素子23Rにより取得された画像(又はそれを処理して得られた画像)を表示部31Rに表示させる。副接眼系制御部102は、撮像素子23L及び23Rの少なくとも一方からの出力に基づく画像を主接眼系30に対する副接眼系80の位置に応じて回転させて表示部81L及び81Rに表示させる。
たとえば、副接眼系制御部102は、表示部31L及び31Rの少なくとも一方に出力される画像データをデータ処理部200に出力する。また、副接眼系制御部102は、主接眼系30に対する副接眼系80の位置を表す位置情報をデータ処理部200に出力する。データ処理部200は、副接眼系制御部102から受信した画像データに対して、位置情報に基づく公知の回転処理を施す。回転処理後の画像データは、副接眼系制御部102に送られる。副接眼系制御部102は、データ処理部200から受信した回転処理後の画像データを表示部81L及び81Rに送る。それにより、副接眼系制御部102は、主接眼系30に対する副接眼系80の位置に応じて回転させて画像を表示部81L及び81Rに表示させることができる。
また、副接眼系制御部102は、主接眼系30に対する副接眼系80の位置に応じて表示部81L及び81Rに対する表示制御を実行してもよい。たとえば、表示部31L及び31Rの少なくとも一方に出力される画像データは、フレームメモリに記憶されている。副接眼系制御部102は、主接眼系30に対する副接眼系80の位置に応じてフレームメモリに記憶されている画像データの読み出し順序を変更する。副接眼系制御部102は、主接眼系30に対する副接眼系80の位置に応じて変更された読み出し順序でフレームメモリから読み出された画像データを表示部81L及び81Rに順次に出力する。副接眼系制御部102から送られた画像データに基づくラスタ走査を行うことにより、表示部81L及び81Rには、主接眼系30に対する副接眼系80の位置に応じて回転された画像が表示される。
更に、制御部100は、各種の機構を制御する。そのような機構としては、ステレオ角変更部20A、合焦部24A、光路偏向部25A、間隔変更部30A、及び向き変更部30Bが設けられている。
ステレオ角変更部20A(第1機構)は、受光系20Lと受光系20Rとを相対的に回転移動する。すなわち、ステレオ角変更部20Aは、互いの対物光軸(たとえばAL1とAR1)がなす角度を変更するように受光系20Lと受光系20Rとを相対移動させる。この相対移動は、たとえば、受光系20Lと受光系20Rとを反対の回転方向に同じ角度だけ移動させるものである。この移動態様においては、互いの対物光軸(たとえばAL1とAR1)がなす角の二等分線の向きは一定である。一方、当該二等分線の向きが変化するように上記相対移動を行うことも可能である。
図2に示す状態からステレオ角が拡大された状態の例を図7に示す。なお、ステレオ角は、受光系20Lの対物光軸AL1と受光系20Rの対物光軸AR1とがなす角として定義されてもよいし、受光系20Lの対物光軸AL2と受光系20Rの対物光軸AR2とがなす角として定義されてもよい。ステレオ角変更部20Aによりステレオ角が変更されても、左右の主接眼系30L及び30Rの相対位置(間隔、相対的向き)は変化しない。また、ステレオ角の変化に対応して、被検眼Eに対する左右の受光系20L及び20Rの距離を調整したり、左右の受光系20L及び20Rの焦点距離を変更したりすることにより、焦点位置が移動しないように制御を行うことができる。
合焦部24Aは、左右のフォーカスレンズ24L及び24Rを光路に対して挿入/退避させる。合焦部24Aは、左右のフォーカスレンズ24L及び24Rを同時に挿入/退避させるように構成されていてよい。他の例において、合焦部24Aは、左右のフォーカスレンズ24L及び24Rを(同時に)光軸方向に移動させることによって焦点位置を変更するように構成されてよい。或いは、合焦部24Aは、左右のフォーカスレンズ24L及び24Rの屈折力を(同時に)変更することによって焦点距離を変更するように構成されてよい。
光路偏向部25Aは、左右のウェッジプリズム25L及び25Rを光路に対して挿入/退避させる。光路偏向部25Aは、左右のウェッジプリズム25L及び25Rを同時に挿入/退避させるように構成されていてよい。他の例において、光路偏向部25Aは、左右のウェッジプリズム25L及び25Rのプリズム量(及びプリズム方向)を(同時に)変更することによって左右の受光系20L及び20Rの光路の向きを変更するように構成されてよい。
間隔変更部30Aは、左右の主接眼系30L及び30Rの間隔を変更する。間隔変更部30Aは、互いの光軸の相対的向きを変化させずに左右の主接眼系30L及び30Rを相対的に移動するように構成されてよい。
向き変更部30Bは、左右の主接眼系30L及び30Rの相対的向きを変更する。向き変更部30Bは、互いの光軸がなす角度を変更するように主接眼系30Lと主接眼系30Rとを相対移動させる。この相対移動は、たとえば、主接眼系30Lと主接眼系30Rとを反対の回転方向に同じ角度だけ移動させるものである。この移動態様においては、互いの光軸がなす角の二等分線の向きは一定である。一方、当該二等分線の向きが変化するように上記相対移動を行うことも可能である。
位置検出部110は、主接眼系30に対する副接眼系80の位置を検出する。位置検出部110は、たとえば、副接眼系80の回動軸の回りの回動位置(たとえば、90度の位置、180度の位置、270度の位置など)に対応して配置された1以上のマイクロスイッチなどにより構成される。各マイクロスイッチは、当該マイクロスイッチに対応した回動位置に副接眼系80が回動されたときに押下される。このような位置検出部110により得られた検出信号は、制御部100に送られる。副接眼系制御部102は、位置検出部110による検出結果に基づいて前述のように撮像素子23L及び23Rの少なくとも一方からの出力に基づく画像を回転させて表示部81L及び81Rの双方に表示させる。
また、位置検出部110は、RFID(Radio Frequency Identifier)や磁気センサ等により構成されてもよい。
なお、主接眼系30に対する副接眼系80の位置が固定されているときには、眼科用顕微鏡1は、位置検出部110が不要な構成を有していてもよい。
(データ処理部200)
データ処理部200は、各種のデータ処理を実行する。このデータ処理には、画像を形成する処理や、画像を加工する処理などが含まれる。また、データ処理部200は、画像や検査結果や測定結果の解析処理や、被検者に関する情報(電子カルテ情報等)に関する処理を実行可能であってよい。データ処理部200には、変倍処理部210が含まれる。
変倍処理部210は、撮像素子23により取得された画像を拡大する。この処理は、いわゆるデジタルズーム処理であり、撮像素子23により取得された画像の一部を切り取る処理と、その部分の拡大画像を作成する処理とを含む。画像の切り取り範囲は、術者(観察者)により又は制御部100により設定される。変倍処理部210は、受光系20Lの撮像素子23Lにより取得された画像(左画像)と、受光系20Rの撮像素子23Rにより取得された画像(右画像)とに対して、同じ処理を施す。それにより、術者の左眼E0Lと右眼E0Rとに同じ倍率の画像が提示される。
なお、このようなデジタルズーム機能に加えて、又はそれの代わりに、いわゆる光学ズーム機能を設けることが可能である。光学ズーム機能は、左右の受光系20L及び20Rのそれぞれに変倍レンズ(変倍レンズ系)を設けることにより実現される。具体例として、変倍レンズを(選択的に)光路に対して挿入/退避する構成や、変倍レンズを光軸方向に移動させる構成がある。光学ズーム機能に関する制御は制御部100によって実行される。
(ユーザインターフェイス300)
ユーザインターフェイス(UI)300は、術者等と眼科用顕微鏡1との間で情報のやりとりを行うための機能を備える。ユーザインターフェイス300は、表示デバイスと操作デバイス(入力デバイス)とを含む。表示デバイスは、表示部31を含んでよく、それ以外の表示デバイスを含んでもよい。操作デバイスは、各種のハードウェアキー及び/又はソフトウェアキーを含む。操作デバイスの少なくとも一部と表示デバイスの少なくとも一部とを一体的に構成することが可能である。タッチパネルディスプレイはその一例である。
(通信部400)
通信部400は、他の装置に情報を送信する処理と、他の装置から送られた情報を受信する処理とを行う。通信部400は、既定のネットワーク(LAN、インターネット等)に準拠した通信デバイスを含んでいてよい。たとえば、通信部400は、医療機関内に設けられたLANを介して、電子カルテデータベースや医用画像データベースから情報を取得する。また、外部モニタが設けられている場合、通信部400は、眼科用顕微鏡1により取得される画像(受光系20により取得される画像等)を、実質的にリアルタイムで外部モニタに送信することができる。
なお、副接眼系80は、制御部100から無線通信により制御信号や画像データの受信が可能であってよい。
撮像素子23Lは、実施形態に係る「左撮像素子」の一例である。撮像素子23Rは、実施形態に係る「右撮像素子」の一例である。表示部31Lは、実施形態に係る「左表示部」の一例である。接眼レンズ系32Lは、実施形態に係る「左接眼レンズ系」の一例である。表示部31Rは、実施形態に係る「右表示部」の一例である。接眼レンズ系32Rは、実施形態に係る「右接眼レンズ系」の一例である。表示部81L及び81Rは、実施形態に係る「一対の表示部」の一例である。接眼レンズ系82L及び82Rは、「一対の接眼レンズ系」の一例である。
[効果]
実施形態の眼科用顕微鏡の効果について説明する。
実施形態の眼科用顕微鏡(眼科用顕微鏡1)は、照明系(照明系10)と、受光系(受光系20)と、主接眼系(主接眼系30)と、副接眼系(副接眼系80)と、制御部(制御部100、主接眼系制御部101、副接眼系制御部102)とを含む。照明系は、被検眼(被検眼E)に照明光を照射する。受光系は、左撮像素子(撮像素子23L)及び右撮像素子(撮像素子23R)を含み、被検眼に照射された照明光の戻り光を左撮像素子及び右撮像素子のそれぞれに導く。主接眼系は、左表示部(表示部31L)と、左表示部の表示面側に配置された左接眼レンズ系(接眼レンズ系32L)と、右表示部(表示部31R)と、右表示部の表示面側に配置された右接眼レンズ系(接眼レンズ系32R)とを含む。副接眼系は、一対の表示部(表示部81L及び81R)と、一対の表示部のそれぞれの表示面側に配置された一対の接眼レンズ系(接眼レンズ系82L及び82R)とを含む。制御部は、左撮像素子からの出力に基づく画像を左表示部に表示させ、右撮像素子からの出力に基づく画像を右表示部に表示させる。制御部は、左撮像素子及び右撮像素子の少なくとも一方からの出力に基づく画像を主接眼系に対する副接眼系の位置に応じて回転させて一対の表示部に表示させる。
このような構成によれば、主接眼系の左撮像素子及び右撮像素子のそれぞれからの出力に基づく画像、主接眼系の左表示部及び右表示部、並びに副接眼系の一対の表示部に表示させることができる。それにより、簡素な構成で光学的な損失を伴うことなく主接眼系を用いる観察者(たとえば、術者)と副接眼系を用いる観察者(たとえば、助手)とが同軸に観察部位の像を観察することが可能になる。また、主接眼系に対する副接眼系の位置に応じて回転させた画像を副接眼系の一対の表示部に表示させるようにしたので、副接眼系を用いる観察者は、主接眼系を用いる観察者と同様に観察部位の像を双眼で観察することができる。
また、実施形態の眼科用顕微鏡は、位置検出部(位置検出部110)を含んでもよい。位置検出部は、主接眼系に対する副接眼系の位置を検出する。制御部は、位置検出部による検出結果に基づいて左撮像素子及び右撮像素子の少なくとも一方からの出力に基づく画像を回転させる。
このような構成によれば、副接眼系の一対の表示部には、左撮像素子及び右撮像素子の少なくとも一方からの出力に基づく画像が主接眼系に対する副接眼系の位置に応じて回転されて表示される。それにより、主接眼系に対する副接眼系の位置にかかわらず、副接眼系を用いる観察者は、主接眼系を用いる観察者と同様に観察部位の像を双眼で観察することができる。
また、実施形態の眼科用顕微鏡では、制御部は、主接眼系に正対する位置を含む既定範囲(立体視範囲)に副接眼系が位置されているとき、一対の表示部の右眼側に左表示部に表示された画像を180度回転させて表示させ、一対の表示部の左眼側に右表示部に表示された画像を180度回転させて表示させてもよい。
このような構成によれば、既定範囲に副接眼系が位置されているとき、副接眼系を用いる観察者は、主接眼系を用いる観察者と同様に観察部位を立体的に観察することができる。
また、実施形態の眼科用顕微鏡では、制御部は、既定範囲外に副接眼系が位置されているとき、左表示部及び右表示部のうち副接眼系に近い表示部に表示された画像を一対の表示部の双方に表示させてもよい。
このような構成によれば、既定範囲外に副接眼系が位置されているとき、副接眼系を用いる観察者は、主接眼系を用いる観察者と同様に観察部位の像を双眼で観察することができる。
[変形例]
上記の実施形態は、本発明を実施するための例示に過ぎない。本発明を実施しようとする者は、本発明の要旨の範囲内において任意の変形、省略、追加、置換等を施すことが可能である。以下、上記の実施形態における図面を適宜に参照する。
(変形例1)
上記の実施形態において、フォーカスレンズ24L及び24R並びにウェッジプリズム25L及び25Rは、眼底観察時には光路から退避され、前眼部観察時には光路に挿入される。このような動作を自動化することが可能である。実施形態では、被検眼の観察部位を変更するための補助光学部材が使用される。たとえば、眼底観察時には光路に前置レンズ90が配置され、前眼部観察時には光路から退避される。
本変形例の眼科用顕微鏡は、補助光学部材の状態(つまり観察部位の選択)に応じてフォーカスレンズ24L及び24Rの状態を変更する。つまり、制御部100は、補助光学部材による観察部位の変更に応じて、フォーカスレンズ24L及び24Rを連係動作するための第2機構を制御する。同様に、制御部100は、補助光学部材による観察部位の変更に応じて、ウェッジプリズム25L及び25Rを連係動作させるための第3機構を制御する。
具体例を説明する。制御部100は、前置レンズ90が光路から退避されたことを受けて、フォーカスレンズ24L及び24R並びにウェッジプリズム25L及び25Rを光路に挿入するように合焦部24A及び光路偏向部25Aを制御する。逆に、制御部100は、前置レンズ90が光路に挿入されたことを受けて、フォーカスレンズ24L及び24R並びにウェッジプリズム25L及び25Rから退避させるように合焦部24A及び光路偏向部25Aを制御する。
本変形例の眼科用顕微鏡は、補助光学部材の状態(たとえば、前置レンズ90が光路に挿入されているか否か)を示す情報を生成する構成を備えてよい。たとえば、前置レンズ90を保持するアームの配置状態をマイクロスイッチ等のセンサを用いて検出することができる。或いは、前置レンズ90の挿入/退避を制御部100からの信号に基づき行う構成の場合、制御の履歴を参照することによって前置レンズ90の現在の状態を認識することができる。
他の例として、撮像素子23L及び/又は23Rにより取得される画像と、フォーカスレンズ24L及び24R並びにウェッジプリズム25L及び25Rの現在の状態とに基づいて、前置レンズ90が光路に配置されているか否か判定することができる。たとえば、フォーカスレンズ24L等が光路に配置されている状態において取得された画像をデータ処理部200にて解析することにより当該画像のボケ状態を示す量を求める。このボケ量が閾値以上である場合、前置レンズ90が光路に配置されていると判定する。逆に、ボケ量が閾値未満である場合、前置レンズ90は光路から退避されていると判定する。フォーカスレンズ24L等が光路から退避されている状態において取得された画像を解析する場合についても、同様にして前置レンズ90の状態を判定することが可能である。
本変形例によれば、焦点位置を変更するためのレンズ(フォーカスレンズ24L及び24R)の状態や、光路を偏向するための偏向部材(ウェッジプリズム25L及び25R)の状態を、観察部位の切り替えに応じて自動で変更することができる。したがって、操作性の更なる向上を図ることができる。
(変形例2)
上記の実施形態の照明系(10L及び10R)は、一対の受光系(20L及び20R)と同軸に配置されている。本変形例では、一対の受光系に対して非同軸に照明系が配置された構成、つまり、一対の受光系の対物光軸と異なる方向から照明光を照射可能な構成について説明する。本変形例の光学系の構成例を図8に示す。眼科用顕微鏡1Aの照明系10Sは、たとえばスリット光を被検眼に照射可能である。このような眼科用顕微鏡の典型的な例としてスリットランプ顕微鏡がある。本変形例では、スリットランプ顕微鏡のように、照明系10Sと、受光系20L及び20Rとの相対位置を変更可能である。つまり、照明系10Sと、受光系20L及び20Rとが、同一の軸周りに回動可能に構成される。それにより、スリット光で照明されている角膜等の断面を斜め方向から観察することが可能である。
眼科用顕微鏡は、上記実施形態のような同軸照明系と、本変形例のような非同軸照明系との一方又は双方を備えていてよい。双方の照明系を備える場合、たとえば観察部位の切り替えに応じて、使用される照明系の切り替えを行うことができる。
(変形例3)
上記の実施形態では、単一の主接眼系30に対して単一の副接眼系80が設けられていた。本変形例では、単一の主接眼系30に対して2以上の副接眼系80が設けられている構成について説明する。本変形例の光学系の構成例を図9に示す。2以上の副接眼系80のそれぞれの構成は同様である。図9は、単一の主接眼系30に対して2つの副接眼系80(801及び802)が設けられている場合の構成例を表す。眼科用顕微鏡1Bの主接眼系30の表示部31L及び31Rのそれぞれには左画像L及び右画像Rが表示される。それにより、術者は術部を立体的に観察することが可能である。本変形例に係る副接眼系制御部は、2以上の副接眼系80(801及び802)のそれぞれの表示部81L及び81R(811L及び811R、並びに812L及び812R)に主接眼系30に対する当該副接眼系の位置に応じて回転された画像を表示させる。図9では、表示部811L及び811Rには図1及び図2と同様に回転された画像が表示され、表示部812L及び812Rには図4と同様に回転された画像が表示される。
[効果]
実施形態の変形例の眼科用顕微鏡(眼科用顕微鏡1B)は、2以上の副接眼系(副接眼系801及び802)を含んでもよい。制御部(副接眼系制御部102)は、2以上の副接眼系のそれぞれの一対の表示部に主接眼系に対する当該副接眼系の位置に応じて回転された画像を表示させる。
このような構成によれば、簡素な構成で光学的な損失を伴うことなく主接眼系を用いる観察者(たとえば、術者)と2以上の副接眼系のそれぞれを用いた複数の観察者(たとえば、複数の助手)とが同軸に像を観察することが可能になる。また、主接眼系に対する副接眼系の位置に応じて回転させた画像を副接眼系の一対の表示部に表示させるようにしたので、2以上の副接眼系のそれぞれを用いた複数の観察者は、主接眼系を用いる観察者と同様に観察部位の像を双眼で観察することができる。
(変形例4)
上記の実施形態に係る眼科用顕微鏡1は、被検眼を拡大観察するための顕微鏡としての機能に加え、他の眼科装置としての機能を有してもよい。他の眼科装置としての機能の例として、OCT(Optical Coherence Tomography)、レーザ治療、眼軸長測定、屈折力測定、高次収差測定などがある。他の眼科装置は、被検眼の検査や測定や画像化を光学的手法で行うことが可能な任意の構成を備える。本変形例に係る眼科用顕微鏡1Cは、OCT機能を顕微鏡に組み合わせた構成を有する。本変形例の光学系の構成例を図10に示す。眼科用顕微鏡1Cは、照明系10と、受光系20と、主接眼系30と、副接眼系80と、照射系40と、OCT系60とを備える。
照射系40は、前述した「他の眼科装置」としての機能を実現するための光を、受光系20の対物光軸(AL1及びAR1、並びにAL2及びAR2)と異なる方向から被検眼Eに照射する。本例の照射系40は、OCTのための光(測定光)を被検眼Eに照射する。
照射系40は、光スキャナ41と、フォーカスレンズ42と、偏向ミラー43と、OCT対物レンズ44とを含む。光スキャナ41には、OCT系60からの光が導かれる。フォーカスレンズ42は、OCT系60からの光の光路に沿って移動可能である。たとえば、図示しない移動機構は、後述の制御部100aから制御信号を受け、当該制御信号により指定された移動方向に、指定された移動量だけフォーカスレンズ42を移動させる。
OCT系60からの光(測定光)は、光ファイバ51により導かれ、そのファイバ端面から出射する。このファイバ端面に臨む位置には、コリメートレンズ52が配置されている。コリメートレンズ52は、ファイバ端面から出射した測定光を平行光束にする。コリメートレンズ52により平行光束とされた測定光は、光スキャナ41に導かれる。なお、コリメートレンズ52は、フォーカスレンズ(或いはフォーカスレンズを構成するレンズ群の1つ)として測定光の光路に沿って移動可能であってもよい。この場合、図示しない移動機構は、コリメートレンズ52を測定光の光路に沿って移動させることが可能である。コリメートレンズ52を移動させる移動機構もまた、制御部100aにより制御される。フォーカスレンズ42及びコリメートレンズ52の双方が、移動機構により連動して又は独立に移動されてもよい。
光スキャナ41は、2次元光スキャナであり、水平方向(x方向)へ光を偏向するxスキャナ41Hと、垂直方向(y方向)へ光を偏向するyスキャナ41Vとを含む。xスキャナ41H及びyスキャナ41Vは、それぞれ任意の形態の光スキャナであってよく、たとえばガルバノミラーが使用される。光スキャナ41は、たとえば、コリメートレンズ52の射出瞳位置又はその近傍位置に配置される。更に、光スキャナ41は、たとえば、フォーカスレンズ42の入射瞳位置又はその近傍位置に配置される。
本例のように2つの1次元光スキャナを組み合わせて2次元光スキャナを構成する場合、2つの1次元光スキャナは所定距離(たとえば10mm程度)だけ離れて配置される。それにより、たとえば、いずれかの1次元光スキャナを上記射出瞳位置及び/又は上記入射瞳位置に配置することができる。
フォーカスレンズ42は、光スキャナ41を通過した平行光束(測定光)を一旦結像させる。フォーカスレンズ42を通過した光は、偏向ミラー43によりOCT対物レンズ44に向けて反射される。OCT対物レンズ44を通過した光は、被検眼Eに照射される。
照射系40により導かれてきた光が受光系20の対物光軸(AL1及びAR1、並びにAL2及びAR2)と異なる方向から被検眼Eに照射されるように、偏向ミラー43の位置は予め決定されている。本例では、互いの対物光軸が非平行に配置された受光系20Lと受光系20Rとの間の位置に偏向ミラー43が配置されている。
OCT系60は、OCTを実行するための干渉光学系を含む。OCT系60の構成の例を図11に示す。図11に示す光学系は、スウェプトソースOCTの例であり、波長走査型(波長掃引型)光源からの光を測定光と参照光とに分割し、被検眼Eからの測定光の戻り光と参照光路を経由した参照光とを干渉させて干渉光を生成し、この干渉光を検出する。干渉光学系による干渉光の検出結果(検出信号)は、干渉光のスペクトルを示す信号であり、制御部100aに送られる。
光源ユニット61は、一般的なスウェプトソースタイプのOCT装置と同様に、出射光の波長を走査(掃引)可能な波長走査型(波長掃引型)光源を含む。光源ユニット61は、人眼では視認できない近赤外の波長帯において、出力波長を時間的に変化させる。
光源ユニット61から出力された光L0は、光ファイバ62により偏波コントローラ63に導かれてその偏光状態が調整され、光ファイバ64によりファイバカプラ65に導かれて測定光LSと参照光LRとに分割される。
参照光LRは、光ファイバ66Aによりコリメータ67に導かれて平行光束に変換され、光路長補正部材68及び分散補償部材69を経由し、コーナーキューブ70に導かれる。光路長補正部材68は、参照光LRの光路長(光学距離)と測定光LSの光路長とを合わせるための遅延手段として作用する。分散補償部材69は、参照光LRと測定光LSとの間の分散特性を合わせるための分散補償手段として作用する。
コーナーキューブ70は、参照光LRの進行方向を逆方向に折り返す。コーナーキューブ70は、参照光LRの入射光路及び出射光路に沿う方向に移動可能とされ、それにより参照光LRの光路の長さが変更される。なお、測定光LSの光路の長さを変更するための手段と、参照光LRの光路の長さを変更するための手段のうちのいずれか一方が設けられていればよい。
コーナーキューブ70を経由した参照光LRは、分散補償部材69及び光路長補正部材68を経由し、コリメータ71によって平行光束から集束光束に変換されて光ファイバ72に入射し、偏波コントローラ73に導かれて参照光LRの偏光状態が調整される。更に、参照光LRは、光ファイバ74によりアッテネータ75に導かれて、制御部100の制御の下で光量が調整される。光量が調整された参照光LRは、光ファイバ76によりファイバカプラ77に導かれる。
一方、ファイバカプラ65により生成された測定光LSは、光ファイバ51により導かれてファイバ端面から出射され、コリメートレンズ52により平行光束とされる。平行光束にされた測定光LSは、光スキャナ41、フォーカスレンズ42、偏向ミラー43及びOCT対物レンズ44を経由して被検眼Eに照射される。測定光LSは、被検眼Eの様々な深さ位置において反射・散乱される。被検眼Eからの測定光LSの戻り光は、反射光や後方散乱光を含み、往路と同じ経路を逆向きに進行してファイバカプラ65に導かれ、光ファイバ66Bを経由してファイバカプラ77に到達する。
ファイバカプラ77は、光ファイバ66Bを介して入射された測定光LSと、光ファイバ76を介して入射された参照光LRとを合成して(干渉させて)干渉光を生成する。ファイバカプラ77は、所定の分岐比(たとえば1:1)でこの干渉光を分割することにより、一対の干渉光LCを生成する。ファイバカプラ77から出射した一対の干渉光LCは、それぞれ光ファイバ78A及び78Bにより検出器79に導かれる。
検出器79は、たとえば一対の干渉光LCをそれぞれ検出する一対のフォトディテクタを含み、これらによる検出結果の差分を出力するバランスドフォトダイオード(Balanced Photo Diode)である。検出器79は、その検出結果(検出信号)を制御部100aに送る。
本例ではスウェプトソースOCTが適用されているが、他のタイプのOCT、たとえばスペクトラルドメインOCTを適用することが可能である。
図12に、本変形例に係る眼科用顕微鏡1Cの制御系の構成例を示す。図12において、図6と同様の部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。制御部100aは、眼科用顕微鏡1Cの各部の制御を実行する(図12参照)。
制御部100aは、制御部100が実行する制御に加えて、光スキャナ41やOCT系60に対する制御を実行することが可能である。光スキャナ41の制御として、たとえば、予め設定されたOCTスキャンパターンに応じた複数の位置に測定光LSが照射されるように、測定光LSを順次に偏向する。この実施形態では、制御部100aは、光スキャナ41によりCスキャンを実行させる。OCT系60に含まれる制御対象としては、光源ユニット61、偏波コントローラ63、コーナーキューブ70、偏波コントローラ73、アッテネータ75、検出器79などがある。
データ処理部200aは、変倍処理部210と、OCT画像形成部220とを含み、データ処理部200が実行する処理に加えて、OCT画像を形成する処理を実行することが可能である。
OCT画像形成部220は、OCT系60の検出器79により得られる干渉光LCの検出結果に基づいて、被検眼EのCスキャン画像(OCT画像)を形成する。制御部100aは、検出器79から順次に出力される検出信号をOCT画像形成部220に送る。OCT画像形成部220は、たとえば一連の波長走査毎に(Aライン毎に)、検出器79により得られた検出結果に基づくスペクトル分布にフーリエ変換等を施すことにより、各Aラインにおける反射強度プロファイルを形成する。更に、OCT画像形成部220は、各Aラインプロファイルを画像化することにより画像データを形成する。それにより、Bスキャン像(断面像)やボリュームデータ(3次元画像データ)が得られる。
データ処理部200aは、OCT画像形成部220により形成された画像(OCT画像)を解析する機能を備えていてよい。この解析機能としては、網膜厚解析や、正常眼との比較解析などがある。このような解析機能は、公知のアプリケーションを用いて実行される。また、データ処理部200は、受光系20により取得された画像を解析する機能を備えていてよい。また、データ処理部200は、受光系20により取得された画像の解析とOCT画像の解析とを組み合わせた解析機能を備えていてもよい。
外部モニタが設けられている場合、通信部400は、眼科用顕微鏡1Cにより取得される画像(受光系20により取得される画像、OCT画像等)を、実質的にリアルタイムで外部モニタに送信することができる。
制御部100aは、主接眼系制御部101aと、副接眼系制御部102aとを含む。主接眼系制御部101aは、OCT画像形成部220により形成されたOCT画像を上記の実施形態と同様に表示部31L及び31Rの少なくとも一方に表示させる。本変形例では、副接眼系制御部102aは、OCT画像形成部220により形成されたOCT画像に対して、表示部31L及び31Rに表示された画像と同様の制御を行い、副接眼系80の表示部81L及び81Rに表示させる。すなわち、副接眼系制御部102aは、主接眼系30に対する副接眼系80の位置に応じてOCT画像を回転させて表示部81L及び81Rの少なくとも一方に表示させる。それにより、助手は、術者と同様に術部のOCT画像を両眼で観察することが可能になる。
データ処理部200a(又は制御部100a)は、予め設定された測定光LSによるスキャン位置示すスキャン位置画像を形成してもよい。主接眼系制御部101aは、形成されたスキャン位置画像を、表示部31L及び31Rの少なくとも一方に表示された画像にオーバーレイ表示させることが可能である。それにより、術者は、術部の観察像における測定光LSによるスキャン位置を確認しつつ、術部を立体的に観察することができる。
また、副接眼系制御部102aは、主接眼系30に対する副接眼系80の位置に応じてスキャン位置画像を回転させ、表示部81L及び81Rの少なくとも一方に表示された画像にオーバーレイ表示させることが可能である。それにより、助手は、術者と同様に、術部の観察像における測定光LSによるスキャン位置を確認しつつ、術部を両眼で観察することができる。特に、図4に示す180度の位置では、助手は、術者と同様に、術部の観察像における測定光LSによるスキャン位置を確認しつつ、術部を立体的に観察することができる。
OCT系60は、本変形に係る「干渉光学系」の一例である。OCT画像形成部220は、本変形例に係る「画像形成部」の一例である。
[効果]
実施形態の変形例の眼科用顕微鏡(眼科用顕微鏡1C)は、干渉光学系(OCT系60)と、光スキャナ(光スキャナ41)と、画像形成部(OCT画像形成部220)とを含んでもよい。干渉光学系は、OCT光源(光源ユニット61)からの光(光L0)を測定光(測定光LS)と参照光(参照光LR)とに分割し、被検眼に照射された測定光の戻り光と参照光との干渉光(干渉光LC)を検出する。光スキャナは、被検眼を測定光でスキャンするために用いられる。画像形成部は、光スキャナによってCスキャンを行うことにより得られた干渉光学系による干渉光の検出結果に基づいてOCT画像を形成する。制御部(主接眼系制御部101a)は、OCT画像を左表示部及び右表示部の少なくとも一方に表示させる。制御部(副接眼系制御部102a)は、主接眼系に対する副接眼系の位置に応じてOCT画像を回転させて一対の表示部の少なくとも一方に表示させる。
このような構成によれば、OCT画像についても、副接眼系を用いる観察者は、主接眼系を用いる観察者と同様に観察部位を双眼で観察することができる。
また、実施形態の変形例の眼科用顕微鏡では、制御部(主接眼系制御部101a)は、測定光によるスキャン位置を示すスキャン位置画像を、左表示部及び右表示部の少なくとも一方に表示された画像にオーバーレイ表示させる。制御部(副接眼系制御部102a)は、主接眼系に対する副接眼系の位置に応じてスキャン位置画像を回転させ、一対の表示部の少なくとも一方に表示された画像にオーバーレイ表示させる。
このような構成によれば、副接眼系を用いる観察者は、主接眼系を用いる観察者と同様に、観察部位の画像にオーバーレイ表示されたスキャン位置画像を観察することができる。また、副接眼系を用いる観察者は、主接眼系を用いる観察者と同様に、術部の像における測定光によるスキャン位置を確認しつつ、術部を両眼で観察することができる。
上記の実施形態又はその変形例において、副接眼系は、助手の頭部に装着可能な頭部装着ディスプレイ(Head Mounted Display:HMD)や可搬式の装置に含まれていてもよい。この場合、副接眼系には制御部100により無線通信路を介して画像データが送られ、受信された画像データに基づく画像が表示部81L及び81Rに表示されてもよい。位置検出部110は、RFIDや磁気センサ等を用いた公知の位置検出手法により手術室などの室内における副接眼系80の位置を検出するようにしてもよい。
上記の実施形態又はその変形例において説明した構成を任意に組み合わせることが可能である。