JP2017008449A - 複合ナノ繊維の製造方法 - Google Patents
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ナノ金属構造として、その形状からナノスフィア(球)、ナノキューブ(立方体)、ナノロッド(棒)、ナノフラワー(花弁)、ナノフレーク(薄片)等と呼称されるものが知られている。ナノ金属構造は、金属の性質と上記のような微細構造とを有するため、エネルギー分野や生医学分野での応用、センサーとしての活用、触媒としての活用が可能であると考えられている。
図1は、実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法のフローチャートである。
実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法は、ナノ繊維と当該ナノ繊維の表面に形成された金属ナノスフィアとを有する複合ナノ繊維を製造するためのものである。
本明細書において「金属ナノスフィア」とは、ナノ金属構造の一種であり、直径80nm〜1000nmの球(スフィア)状微細構造を有するもののことをいう。なお、金属ナノスフィアの内部は、基本的に詰まっている(中空ではない)。金属ナノスフィアは、いわゆる金属ナノ粒子(直径数十nm程度又はそれ以下の金属粒子)の球状集合体と考えることもできる。
第1工程S10は、ナノ繊維としてアニオン化可能なナノ繊維を準備する工程である。アニオン化可能なナノ繊維としては、セルロースからなるナノ繊維を挙げることができる。
すなわち、第1工程S10では、まず、アセチルセルロースからなるナノ繊維を形成し、その後、アセチルセルロースからなるナノ繊維を脱アセチル化することにより、セルロースからなるナノ繊維を形成する(後述する実験例も参照。)。脱アセチル化は、例えば、アルカリ性の溶液を用いた加水分解により行うことができる。当該方法におけるアセチルセルロースのアセチル化度及び平均分子量は、製造する複合ナノ繊維の用途や溶媒への溶解度等に応じて選択することができる。なお、アセチルセルロースは、後述する実験例に示すようにアセトンとDMFとの混合溶媒(アセトン:DMF=3:2)に溶解することが可能であるが、当該混合溶媒以外の溶媒に溶解させてもよい。
ナノ繊維を形成する方法としては任意の方法を用いることができるが、品質等の観点から電界紡糸法を好適に用いることができる。
また、本発明に用いるアニオン化可能なナノ繊維は、後述する浸漬を行う際に用いる溶媒に溶けない材料からなるものを好適に用いることができる。なお、材料であるポリマー自体は上記溶媒に溶けるものであっても、繊維化後の不溶化処理等により、ナノ繊維としたときに十分な不溶性を得られるものであれば、本発明の複合ナノ繊維の製造方法に用いることができる。
第2工程S20は、アニオン化可能なナノ繊維の全部又は一部をアニオン化してアニオン化ナノ繊維とする工程である。
本明細書において「アニオン化」とは、ある物質(本明細書ではアニオン化可能なナノ繊維)にマイナスの電荷を帯びさせることをいう。
第3工程S30は、金属ナノスフィアに対応する金属塩を溶解させた金属塩溶液にアニオン化ナノ繊維を浸漬して、アニオン化ナノ繊維の表面に金属イオンを付着させる工程である。
実施形態1に係る複合ナノ繊維の製造方法においては、金属ナノスフィアを構成する金属として、アルミニウムよりもイオン化傾向が小さい金属を用いる。当該金属の具体例としては、銅、銀、金、白金、パラジウム、鉄、ニッケルを挙げることができる。
なお、金属塩溶液中に金属イオンを存在させるため、銅以外の金属を用いる場合であっても、溶媒としては極性溶媒、特に水を用いることが好ましい。この場合、金属塩としては水に可溶なもの、例えば、多くの金属の塩化物や銀の硝酸塩(AgNO3)を用いることができる。金属塩溶液中に金属イオンが存在するようになるならば、水以外の溶媒を用いてもよい。また、金属のイオン化を促進する物質や金属イオンを安定化させる物質を、溶媒とともに用いてもよい。
第4工程S40は、アニオン化ナノ繊維に付着した金属イオンを還元することにより金属ナノスフィアを形成して、複合ナノ繊維を製造する工程である。
第4工程S40では、金属アルミニウムからなる還元剤を用いて金属イオンを還元する。具体的には、還元剤として、アルミニウム箔を用いる。
なお、本発明において「アルミニウム箔」とは、金属アルミニウムからなる薄紙状のもののことをいう。本発明には、アルミニウム部分が露出しているものであれば、種々の厚さ、大きさのアルミニウム箔を用いることができる。アルミニウム箔は、特殊なものを用いる必要はなく、一般的な市販品を用いることができる。
本明細書における「金属イオンが付着したアニオン化ナノ繊維と還元剤とを水分が存在する状態で共存させる」とは、「金属イオンが付着したアニオン化ナノ繊維と還元剤とを水分が存在する状態で接触させる」ことを含む。本明細書において「共存」とは、「同じ場所に置く」というような意味で用いている。
上記のようにするのは、後述するように乾燥時間短縮や異物混入抑制の観点から有利なためであるが、乾燥時間や異物混入が問題とならないのであれば、自然乾燥や加熱乾燥により金属イオンが付着したアニオン化ナノ繊維を乾燥させてもよい。
複合ナノ繊維は製造後そのままのナノ繊維として用いてもよいし、さらなる加工(例えば、糸や布とする加工)を実施してから用いてもよい。
実験例においては、本発明の複合ナノ繊維の製造方法により複合ナノ繊維を実際に製造し、当該複合ナノ繊維の観察及び分析を行った。
実験例では、ナノ繊維の原料としてアセチルセルロース(アセチル化度39.8%、平均分子量30kDa)を用いた。
アセチルセルロース、N,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFという。)及びアセトンは、シグマアルドリッチ社を通じて購入したものをそのまま用いた。
塩化第二銅(CuCl2)、塩化ナトリウム及びモノクロロ酢酸ナトリウムは、和光純薬工業株式会社を通じて購入したものをそのまま用いた。
還元剤であるアルミニウム箔は、住軽アルミ箔株式会社を通じて購入したものをそのまま用いた。
透過型電子顕微鏡(TEM)としては、日本電子株式会社(JEOL)のmodel2010 FasTEMを用いた。また、スパッタ用の金属として白金及びプラチナを用いた。
エネルギー分散型X分析(EDS)用の走査型電子顕微鏡(SEM−EDS)としては、日立製作所の3000H SEMを用いた。
フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)としては、株式会社島津製作所のIR Prestage−21を用いた。
X線光電子分光装置(XPS)としては、クラトス・アナリティカルリミテッド(販売は株式会社島津製作所)のKratos Axis−Ultra DLDを用いた。
実験例に係る複合ナノ繊維の製造方法は、基本的には実施形態に係る複合ナノ繊維の製造方法と同様であり、第1工程〜第4工程を含む。以下、各工程について説明する。
なお、以下の実験例に示す製造条件はあくまで一例であり、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、3.6gのアセチルセルロースをアセトンとDMFとの混合溶媒(アセトン:DMF=3:2)20mLに溶解させて18wt%ポリマー溶液を調製した。
上記ポリマー溶液を、0.6mmチップを取り付けた5mLプラスチックシリンジに入れ、チップ・コレクター間距離(TCD)12cm、電圧10kV、25℃(室温。以下、25℃の記載は室温を表す。)の条件で電界紡糸を行い、アセチルセルロースからなるナノ繊維を得た。以下、実験例において、このようにして得たアセチルセルロースからなるナノ繊維を「アセチルセルロースからなるナノ繊維A」ということにする。
まず、第1工程で準備したアニオン化可能なナノ繊維Bを1.5M水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した。浸漬時間は30秒、温度は25℃とした。浸漬後のナノ繊維を0.05M水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、その後空気中で乾燥させ、続いて1.0Mモノクロロ酢酸ナトリウム水溶液に浸漬した。浸漬時間は6時間、温度は25℃とした。その後、アニオン化ナノ繊維となったナノ繊維をモノクロロ酢酸ナトリウム水溶液から取り出して蒸留水で洗浄し、空気中で乾燥させた。以下、実験例において、このようにして得たアニオン化ナノ繊維を「アニオン化ナノ繊維C」ということにする。
なお、第3工程後の金属イオンが付着したアニオン化ナノ繊維Dの色は、ライトブルーであった。これは、アニオン化ナノ繊維Cに付着した金属イオン(Cu2+)及び塩化第二銅の色に由来すると考えられる。
まず、第1工程〜第3工程が想定どおり進行しているか確認するため、アセチルセルロースからなるナノ繊維A、アニオン化可能なナノ繊維B、アニオン化ナノ繊維C及び金属イオンが付着したアニオン化ナノ繊維Dについて、SEM写真による観察を行った。
なお、各ナノ繊維の平均直径は、図2に示した各SEM写真を画像処理ソフトウェアであるImageJで処理して算出したものである。算出した平均直径の最大偏差は、0.5nmである。
図4は、実験例におけるアセチルセルロースからなるナノ繊維A、アニオン化可能なナノ繊維B及びアニオン化ナノ繊維CのFT−IRスペクトルのグラフである。図4のグラフの縦軸は透過率(単位:%)を表し、横軸は波数(単位:cm−1)を表す。図4において、符号Aのグラフはアセチルセルロースからなるナノ繊維Aの分析結果を表し、符号Bのグラフはアニオン化可能なナノ繊維Bの分析結果を表し、符号Cのグラフはアニオン化ナノ繊維Cの分析結果を表す。
図6は、実験例における金属イオンが付着したアニオン化ナノ繊維Dの元素マッピング図である。図6(a)は銅についての元素マッピング図であり、図6(b)は塩素についての元素マッピング図である。
図7は、実験例における金属イオンが付着したアニオン化ナノ繊維DのTEM写真である。図7(a),(b)はそれぞれ撮影位置及び倍率が異なるTEM写真である。
図8は、実験例における複合ナノ繊維EのSEM写真である。図8(a)〜(d)は、それぞれ撮影位置又は倍率が異なるSEM写真である。
図9は、実験例における複合ナノ繊維EのTEM写真である。図9(a),(b)は、それぞれ撮影位置及び倍率が異なるTEM写真である。
なお、図8,9においては、大きい球体とナノ繊維の表面を覆うように付着している小さい球体とが確認できる(特に図8(d)参照。)が、大きい球体が金属ナノスフィアである。小さい球体は、いわゆる金属ナノ粒子(直径10〜50nm)である。
SEM写真及びTEM写真にて確認したところ、金属ナノスフィアの平均直径は412nmであった。また、ナノ繊維の(金属ナノスフィアを含まない)平均直径は324nmであった。
Claims (9)
- ナノ繊維と当該ナノ繊維の表面に形成された金属ナノスフィアとを有する複合ナノ繊維を製造するための複合ナノ繊維の製造方法であって、
前記ナノ繊維としてアニオン化可能なナノ繊維を準備する第1工程と、
前記アニオン化可能なナノ繊維の全部又は一部をアニオン化してアニオン化ナノ繊維とする第2工程と、
前記金属ナノスフィアに対応する金属塩を溶解させた金属塩溶液に前記アニオン化ナノ繊維を浸漬して、前記アニオン化ナノ繊維の表面に金属イオンを付着させる第3工程と、
前記アニオン化ナノ繊維に付着した前記金属イオンを還元することにより前記金属ナノスフィアを形成して、前記複合ナノ繊維を製造する第4工程とをこの順序で含むことを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項1に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記金属ナノスフィアを構成する金属として、アルミニウムよりもイオン化傾向が小さい金属を用い、
前記第4工程では、アルミニウムからなる還元剤を用いて前記金属イオンを還元することを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項2に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記第4工程では、まず、前記金属イオンが付着した前記アニオン化ナノ繊維と前記還元剤とを水分が存在する状態で共存させ、その後、前記金属イオンが付着した前記アニオン化ナノ繊維と前記還元剤とが共存した状態で前記金属イオンが付着した前記アニオン化ナノ繊維を乾燥させることを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項3に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記還元剤として、アルミニウム箔を用い、
前記第4工程では、まず、前記アルミニウム箔で前記金属イオンが付着した前記アニオン化ナノ繊維を水分が存在する状態で包み、その後、前記金属イオンが付着した前記アニオン化ナノ繊維を乾燥させることを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項3又は4に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記第4工程では、真空条件下又は減圧条件下で前記金属イオンが付着した前記アニオン化ナノ繊維を乾燥させることを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項1〜5に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記第1工程では、前記アニオン化可能なナノ繊維としてセルロースからなるナノ繊維を準備することを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項6に記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記第1工程では、まずアセチルセルロースからなるナノ繊維を形成し、その後、前記アセチルセルロースからなるナノ繊維を脱アセチル化することにより、前記セルロースからなるナノ繊維を形成することを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項1〜7のいずれかに記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記第2工程では、前記アニオン化可能なナノ繊維を、水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した後にモノクロロ酢酸ナトリウム水溶液に浸漬することにより、前記ナノ繊維を前記アニオン化ナノ繊維とすることを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。 - 請求項1〜8のいずれかに記載の複合ナノ繊維の製造方法において、
前記金属ナノスフィアは、銅からなる金属ナノスフィアであり、
前記第3工程では、前記金属塩として塩化第二銅を用い、溶媒として水を用いることを特徴とする複合ナノ繊維の製造方法。
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