JP2017002295A - 光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリカーボネート樹脂が本来有する耐熱性、機械的強度等の特性が損なわれることがなく、高温で成形加工した場合でも光線透過率と色相に優れ、さらに耐加水分解性にも優れる光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品を提供する。【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)と、ポリエーテル誘導体(B)と、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトを除く亜リン酸エステル系化合物(C)とを含有してなるポリカーボネート樹脂組成物であって、該ポリエーテル誘導体(B)の量が、該ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.1〜2.0重量部であり、該亜リン酸エステル系化合物(C)の量が、該ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.01〜2.5重量部であることを特徴とする、光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物およびそれからなる成形品。【選択図】なし
Description
本発明は、ポリカーボネート樹脂本来の特性、すなわち耐熱性、機械的強度等を損なうことなく、色相ならびに輝度が良好で、耐加水分解性に優れる光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品に関する。
例えば特許文献1に開示されているように、液晶表示装置に組み込まれている面状光源装置には、光学部品である導光板が備えられている。
導光板の材料として、従来、ポリメチルメタクリレート(以下、PMMAという)が用いられてきたが、耐熱性が高く、かつ機械的強度も高いという点で、PMMAからポリカーボネート樹脂への置換が進められている。
ポリカーボネート樹脂は、PMMAと比較して、機械的性質、熱的性質、電気的性質には優れるが、光線透過率にやや劣る。したがって、ポリカーボネート樹脂製の導光板を使用した面状光源装置は、PMMA製の導光板を使用したものと比べて輝度が低いという問題があった。
そこで、例えば特許文献2〜6に開示されているように、PMMAと同等以上の光線透過率を得て、導光板の輝度を向上させるべく、ポリカーボネート樹脂と他の材料とを併用した樹脂組成物が各種提案されている。
しかしながら、特許文献2〜6に開示の樹脂組成物は、近年の導光板の材料としての要求(高温高湿度条件下で長時間晒された場合でも積算透過率の低下、色相変化が少なく、長期信頼性の高いこと)を充分に満足し得るものではない。
本発明は、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐熱性、機械的強度等の特性が損なわれることがなく、高温で成形加工した場合でも光線透過率と色相に優れ、さらに耐加水分解性にも優れる光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物及びそれからなる成形品を提供する。
本発明者らは、かかる課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ポリカーボネート樹脂に特定のポリエーテル、およびスピロ環骨格を有する特定の亜リン酸エステル系化合物を除く亜リン酸エステル系化合物を特定量含有させることにより、高温で成形加工した場合でも色相ならびに輝度が良好で、耐加水分解性にも優れる樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明における光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐熱性、機械的強度等の特性が損なわれることがなく、高温で成形された場合でも光線透過率や色相に優れ、さらに得られる成形体の耐加水分解性にも優れるものである。よって、例えば厚さ0.3mm程度の薄型の導光板であっても、色相が変化して外観が低下することや、高温成形を経て樹脂そのものが劣化することが少なく、高温高湿度条件下で長時間さらされた場合でも積算透過率低下、色相変化の少ない、長期信頼性の高い製品を得ることが可能となり、極めて工業的利用価値が高い。
以下、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者らは当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
本発明にかかる光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、特定のポリエーテル誘導体(B)と、特定の亜リン酸エステル系化合物以外の亜リン酸エステル系化合物(C)とを含有したものである。
ポリカーボネート樹脂(A)は、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体である。代表例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
前記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4´−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´−ジヒドロキシ−3,3´−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類が挙げられ、これらは単独で又は2種類以上を混合して使用される。これらの他にも、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
さらに、前記ジヒドロキシジアリール化合物と、例えば以下に示す3価以上のフェノール化合物とを混合して使用してもよい。
前記3価以上のフェノール化合物としては、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4´−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、10000〜100000、さらには12000〜30000であることが好ましい。なお、このようなポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には、分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
本発明にて使用されるポリエーテル誘導体(B)は、例えば、ポリオキシアルキレングリコールから誘導される炭素数が3以上の単独エーテル重合体でも共重合体(ブロックまたはランダム共重合体の何れでもよい)でもよいが、例えば、下記一般式(1)で表される共重合体が好ましく用いられる。
一般式(1):
RO−(X−O)m(Y−O)n−R’ (1)
(式中、RおよびR’は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜30のアルキル基を示し、Xは、炭素数2〜4のアルキレン基を、Yは、炭素数3〜5の分岐アルキレン基を、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
一般式(1):
RO−(X−O)m(Y−O)n−R’ (1)
(式中、RおよびR’は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜30のアルキル基を示し、Xは、炭素数2〜4のアルキレン基を、Yは、炭素数3〜5の分岐アルキレン基を、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
また、このようなポリエーテル誘導体の中でもとりわけ、テトラメチレングリコール誘導体が好適であり、さらに下記一般式(2−1)で表されるポリオキシテトラメチレン−ポリオキシプロピレン−グリコールが好適である。
一般式(2−1):
HO−(CH2CH2CH2CH2O)m(CH2CH(CH3)O)n−H
(2−1)
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
一般式(2−1):
HO−(CH2CH2CH2CH2O)m(CH2CH(CH3)O)n−H
(2−1)
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
上記テトラメチレングリコール誘導体としては、ポリオキシテトラメチレン−ポリオキシプロピレン−グリコールの他にも、ポリオキシテトラメチレン−ポリオキシブチレン−グリコール、テトラメチレングリコールユニットと2-メチルテトラメチレングリコールユニットからなる変性テトラメチレングリコール誘導体(例えば、HO−(CH2CH2CH2CH2O)22(CH2CH2CH(CH3)CH2O)5−H等)等が好適である。商業的に入手可能なポリエーテル誘導体として、ポリオキシテトラメチレン−ポリオキシプロピレン−グリコールとしては、例えば、日油(株)製の、ポリセリンDCB−2000(重量平均分子量2000)、ポリセリンDCB−1000(重量平均分子量1000)等(「ポリセリン」は登録商標)、ポリオキシテトラメチレン−ポリオキシブチレン−グリコールとして、日油(株)製の、ポリセリンDCD−2000(重量平均分子量2000)、変性テトラメチレングリコール誘導体として、保土谷化学工業(株)製のPTG−L1000、PTG−L2000、又はPTG−L3000等が挙げられる。その中でも、特に、ポリセリンDCB−2000、ポリセリンDCB−1000等が好適に使用され得る。
また、上記一般式(2−1)以外のポリエーテル誘導体としては、下記一般式(2−2)または一般式(2−3)で表されるポリエーテル誘導体を好適に使用できる。
一般式(2−2):
C4H9O−(CH2CH2)m(CH2CH(CH3)O)n−H (2−2)
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
C4H9O−(CH2CH2)m(CH2CH(CH3)O)n−H (2−2)
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
一般式(2−2)で表されるポリエーテル誘導体としては、エチレングリコールユニットとプロピレングリコールユニットからなる変性グリコール(例えば、C4H9O−(CH2CH2O)21(CH2CH(CH3)O)14−HやC4H9O−(CH2CH2O)30(CH2CH(CH3)O)30−H等)が好適であり、例えば、ユニルーブ60MB−26I(重量平均分子量1700)やユニルーブ50MB−72(重量平均分子量3000)等が商業的に入手可能である。
一般式(2−3):
HO−(CH2CH2O)m(CH2CH(CH3)O)n−H (2−3)
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
HO−(CH2CH2O)m(CH2CH(CH3)O)n−H (2−3)
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
一般式(2−3)で表されるポリエーテル誘導体としては、エチレングリコールユニットとプロピレングリコールユニットからなる変性グリコール(例えば、HO−(CH2CH2O)17(CH2CH(CH3)O)17−Hが好適であり、例えば、ユニルーブ50DE−25(重量平均分子量1750)等が商業的に入手可能である。
本発明にて使用されるポリエーテル誘導体(B)の重量平均分子量は、1000〜4000、さらには2000〜3000であることが好ましい。ポリエーテル誘導体の重量平均分子量が1000未満の場合は、光線透過率の充分な向上効果が望めない恐れがあり、逆に重量平均分子量が4000を超える場合も、曇化率が上昇して光線透過率が低下する恐れがある。
ポリエーテル誘導体(B)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.1〜2.0重量部であり、さらに0.5〜1.8重量部であることが好ましい。ポリエーテル誘導体の量が0.1重量部未満の場合は、光線透過率及び耐加水分解性の向上効果が不充分である。逆にポリエーテル誘導体の量が2.0重量部を超える場合は、曇化率が上昇して光線透過率が低下してしまう。
これまで、炭素数が少ないポリオキシアルキレングリコール単独重合体を添加してポリカーボネート樹脂の光線透過率を向上させることが試みられてきたが、該ポリオキシアルキレングリコール単独重合体は、耐熱性が不充分であるので、該ポリオキシアルキレングリコールを配合したポリカーボネート樹脂組成物を高温で成形すると、成形品の輝度や光線透過率が低下してしまう。これに対して、前記一般式(1)で表される特定のポリエーテル誘導体(B)は、2官能性のランダム共重合体であり、耐熱性が高く、該一般式(1)で表される特定のポリエーテル誘導体(B)を配合したポリカーボネート樹脂組成物を高温で成形した成形品は、輝度や光線透過率が高い。
また、一般式(1)で表されるポリエーテル誘導体(B)は、適度な親油性を有することから、ポリカーボネート樹脂(A)との相溶性にも優れるので、該ポリエーテル誘導体(B)を配合したポリカーボネート樹脂組成物から得られる成形品の透明性も向上する。
さらに、一般式(1)で表されるポリエーテル誘導体(B)を配合することにより、ポリカーボネート樹脂組成物を成形する際に、せん断熱が必要以上に発生するのを抑制することができるほか、ポリカーボネート樹脂組成物に離型性を付与することもできるので、例えばポリエーテルガノシロキサン化合物といった離型剤を別途添加しなくてもよい。
一般式(1)において、RおよびR’は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜30のアルキル基を示し、Xは、炭素数2〜4のアルキレン基を、Yは、炭素数3〜5の分岐アルキレン基を、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。)
本発明におけるポリカーボネート樹脂組成物には、前記一般式(1)で表される特定のポリエーテル誘導体(B)と共に、下記式で表される、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトを除く亜リン酸エステル系化合物(C)が配合されている。このように、特定のポリエーテル誘導体(B)と、下記式で表される亜リン酸エステル系化合物を除く亜リン酸エステル系化合物(C)とを同時に配合することにより、ポリカーボネート樹脂(A)が本来有する耐熱性、機械的強度等の特性が損なわれることがなく、光線透過率や色相、さらには耐加水分解性が向上した光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、亜リン酸エステル系化合物の中でもビス(2,4−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトを使用すると、高温成形した場合に得られる成形品を高温高湿度条件下にて長期間暴露したときに当該成形品の耐加水分解性が著しく低下することを新規に知見しており、この点に鑑み当該化合物をリン酸エステル系化合物(C)から除いている。
前記一般式(3)において、R1は、炭素数1〜20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルフォスファイト、トリクレジルフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製のイルガフォス168(「イルガフォス」はビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの登録商標)として商業的に入手可能である。
前記亜リン酸エステル系化合物(C)としては、前記一般式(3)で表される化合物の他にも、例えば、下記一般式(4)で表される化合物が挙げられる。
一般式(4):
(式中、R2、R3、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。R4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR7−(ここで、R7は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR8−(ここで、R8は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す.)
一般式(4):
一般式(4)において、R2、R3、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
前記R2、R3及びR5は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、R2及びR5は、それぞれ独立して、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基又は1−メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、R3は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t−ブチル基又はt−ペンチル基であることがさらに好ましい。
前記R6は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることがさらに好ましい。
一般式(4)において、R4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、R4は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
一般式(4)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR7−で表される基を示す。ここで、式:−CHR7−中のR7は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれ前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
一般式(4)において、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR8−で表される基を示す。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*−COR8−におけるR8は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。R8を示す炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。R8は、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*−COR8−における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
一般式(4)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、前記R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。これらの中でも、特に光学特性が求められる分野に、得られるポリカーボネート樹脂組成物を用いる場合には、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが好適であり、例えば、住友化学(株)製のスミライザーGP(「スミライザー」は登録商標)として商業的に入手可能である。
本発明にて使用される亜リン酸エステル系化合物(C)としては、一般式(5−1)で表される、スピロ環骨格を有する亜リン酸エステル系化合物を利用できる。ただし、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトは除くものとする。当該化合物を使用すると、前記特定のエーテル誘導体と作用する結果、樹脂組成物の耐加水分解性を低下させる虞が高いためである。
一般式(5−1):
(式中、R9及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基又はアルキル基で置換されていてもよいアリール基を示し、b及びcは、それぞれ独立して、0〜3の整数を示す)
一般式(5−1):
一般式(5−1)で表される化合物の具体例としては、例えばビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトは、ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP−24G」として商業的に入手可能である。
また、亜リン酸エステル系化合物(C)として、一般式(5−2)で表される、スピロ環骨格を有する亜リン酸エステル系化合物も利用できる。
一般式(5−2):
(式中、R11〜R18は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基またはアルケニル基を示す。R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18とは、互いに結合して環を形成していても良い。R19〜R22は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示す。d〜gは、それぞれ独立して、0〜5の整数である。X1〜X4は、それぞれ独立に、単結合または炭素原子を示す。X1〜X4が単結合である場合、R11〜R22のうち、当該単結合に繋がった官能基は一般式(4)から除外される)
一般式(5−2):
一般式(5−2)で表される化合物の具体例としては、例えばビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトが挙げられる。これは、Dover Chemical社製、商品名「Doverphos(登録商標) S−9228」、ADEKA社製、商品名「アデカスタブPEP−45」(ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト)として商業的に入手可能である。
本発明にて使用される亜リン酸エステル系化合物(C)の量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜2.5重量部であり、0.01〜0.5重量部、さらに0.05〜0.1重量部であることが好ましい。亜リン酸エステル系化合物(C)の量が0.01重量部未満の場合は、光線透過率及び色相の向上効果が不充分である。逆に亜リン酸エステル系化合物(C)の量が2.5重量部を超える場合も、光線透過率及び色相の向上効果が不充分である。
なお、亜リン酸エステル系化合物(C)として前記一般式(3)で表される化合物を用いる場合、その量はポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.01〜1.0重量部であることが、光線透過率及び色相の向上効果がより大きいという点で好ましい。
また、亜リン酸エステル系化合物(C)として前記一般式(4)で表される化合物を用いる場合、その量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して0.05〜2.0重量部であることが、光線透過率及び色相の向上効果がより大きいという点で好ましい。
本発明においては、本発明のポリカーボネート樹脂組成物から射出成形された試験片(全長168mm×厚さ4mm)について、85℃、90%RH条件の恒温恒湿槽に1000時間放置する加水分解試験を実施し、波長380〜780nmの領域における積算透過率の該加水分解試験前後の変化量が2000未満であり、かつ黄色度の試験前後の変化量が10未満であることが好ましい。Δ積算透過率が2000以上であると、所望の透明度が得られない。また、Δ黄色度(△YI)が10以上であっても透明度は得られない。
さらに、本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤、衝撃性改良剤等の各種添加剤、ポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等が適宜配合されていてもよい。
ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法には特に限定がなく、ポリカーボネート樹脂(A)、ポリエーテル(B)及び亜リン酸エステル系化合物(C)、並びに必要に応じて前記各種添加剤やポリカーボネート樹脂(A)以外のポリマー等について、各成分の種類及び量を適宜調整し、これらを、例えばタンブラー、リボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法が挙げられる。
本発明の光学部品用成形品は、前記のごとく得られる光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物を成形してなるものである。
光学部品用成形品の製造方法には特に限定がなく、例えば、公知の射出成形法、圧縮成形法等によりポリカーボネート樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。
前記のごとく得られる光学部品用成形品は、例えば、導光板、面発光体材料、導光フィルム、車両用ライトガイド、銘板等として好適である。
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
原料として以下のものを使用した。
1.ポリカーボネート樹脂(A)
ビスフェノールAと塩化カルボニルとから合成されたポリカーボネート樹脂
カリバー200−80
(商品名、住化スタイロンポリカーボネート(株)製、「カリバー」はスタイロン ユーロップ ゲーエムベーハーの登録商標、粘度平均分子量:15000、以下「PC」という)
1.ポリカーボネート樹脂(A)
ビスフェノールAと塩化カルボニルとから合成されたポリカーボネート樹脂
カリバー200−80
(商品名、住化スタイロンポリカーボネート(株)製、「カリバー」はスタイロン ユーロップ ゲーエムベーハーの登録商標、粘度平均分子量:15000、以下「PC」という)
2.ポリエーテル誘導体(B)
ポリオキシテトラメチレンポリオキシプロピレングリコール(ランダムタイプ)
ポリセリンDCB−2000
(商品名、日油(株)製、重量平均分子量:2000、以下「化合物B」という)
ポリオキシテトラメチレンポリオキシプロピレングリコール(ランダムタイプ)
ポリセリンDCB−2000
(商品名、日油(株)製、重量平均分子量:2000、以下「化合物B」という)
3−2.以下の式で表される、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(IUPAC名:3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン)
アデカスタブPEP−36(商品名、ADEKA製、以下「化合物C2」という)
3−3.以下の式で表される、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(IUPAC名:3,9−ビス[2,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン)
Doverphos S−9228(商品名、Dover Chemical社製、以下「化合物C3」という)
実施態様
実施例1〜4、比較例1及び2
前記各原料を、表1に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX30α)を用いて、溶融温度220℃にて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
実施例1〜4、比較例1及び2
前記各原料を、表1に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX30α)を用いて、溶融温度220℃にて溶融混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
得られたペレットを用い、以下の方法にしたがって、各評価用試験片を作製して評価に供した。その結果を表1に示す。
(試験片の作製方法)
得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック(株)製、ROBOSHOT S2000i100A)を用い、成形温度360℃、金型温度80℃にて、JIS K 7139「プラスチック−試験片」にて規定の多目的試験片A型(全長168mm×厚さ4mm)を作製した。この試験片の端面を切削し、切削端面について、樹脂板端面鏡面機(メガロテクニカ(株)製、プラビューティーPB−500)を用いて鏡面加工した。
得られたペレットを120℃で4時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック(株)製、ROBOSHOT S2000i100A)を用い、成形温度360℃、金型温度80℃にて、JIS K 7139「プラスチック−試験片」にて規定の多目的試験片A型(全長168mm×厚さ4mm)を作製した。この試験片の端面を切削し、切削端面について、樹脂板端面鏡面機(メガロテクニカ(株)製、プラビューティーPB−500)を用いて鏡面加工した。
(積算透過率の評価方法)
分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)に長光路測定付属装置を設置し、光源として50Wハロゲンランプを用いて、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で、波長380〜780nmの領域で1nm毎の、試験片各々の分光透過率を、試験片の全長方向について測定した。測定した分光透過率を積算し、十の位を四捨五入することにより、各々の積算透過率を求めた。なお、積算透過率が30000以上を良好(表中、○で示す)、30000未満を不良(表中、×で示す)とした。
分光光度計((株)日立製作所製、UH4150)に長光路測定付属装置を設置し、光源として50Wハロゲンランプを用いて、光源前マスク5.6mm×2.8mm、試料前マスク6.0mm×2.8mmを使用した状態で、波長380〜780nmの領域で1nm毎の、試験片各々の分光透過率を、試験片の全長方向について測定した。測定した分光透過率を積算し、十の位を四捨五入することにより、各々の積算透過率を求めた。なお、積算透過率が30000以上を良好(表中、○で示す)、30000未満を不良(表中、×で示す)とした。
(黄色度の評価方法)
前記積算透過率の評価方法において測定した分光透過率に基づき、標準光源D65を用い、10度視野にて各々の黄色度(以下、YI)を求めた。なお、YIが20以下を良好(表中、○で示す)、20を超えると不良(表中、×で示す)とした。
前記積算透過率の評価方法において測定した分光透過率に基づき、標準光源D65を用い、10度視野にて各々の黄色度(以下、YI)を求めた。なお、YIが20以下を良好(表中、○で示す)、20を超えると不良(表中、×で示す)とした。
(成形品の耐加水分解性の評価)
上記で作製した試験片を恒温恒湿槽(ADVANTEC社製恒温恒湿器AG-327)の中に設置し、85℃、90%RH条件下で1000時間、加水分解試験を行った。試験前後の試験片の積算透過率および黄色度(以下、YI)を測定し、Δ積算透過率(積算透過率の差)およびΔYI(YIの差)を求めた。Δ積算透過率およびΔYIとは、試験前後の積算透過率および黄色度の変化の程度を表し、Δ積算透過率および△YIが小さい程、透過率の低下および変色が少なく、耐加水分解性に優れている。Δ積算透過率の評価基準としては、Δ積算透過率の値が2000未満であるものを良好(○)、2000以上であるものを不合格(×)とした。△YIの評価基準としては、△YIの値が10.0未満であるものを合格(○)、10.0以上であるものを不良(×)とした。
上記で作製した試験片を恒温恒湿槽(ADVANTEC社製恒温恒湿器AG-327)の中に設置し、85℃、90%RH条件下で1000時間、加水分解試験を行った。試験前後の試験片の積算透過率および黄色度(以下、YI)を測定し、Δ積算透過率(積算透過率の差)およびΔYI(YIの差)を求めた。Δ積算透過率およびΔYIとは、試験前後の積算透過率および黄色度の変化の程度を表し、Δ積算透過率および△YIが小さい程、透過率の低下および変色が少なく、耐加水分解性に優れている。Δ積算透過率の評価基準としては、Δ積算透過率の値が2000未満であるものを良好(○)、2000以上であるものを不合格(×)とした。△YIの評価基準としては、△YIの値が10.0未満であるものを合格(○)、10.0以上であるものを不良(×)とした。
実施例1〜4のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)に、特定のポリエーテル誘導体(B)と、亜リン酸エステル系化合物(C)とが、各々特定の割合で配合されたものである。
実施例1〜4のポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)が本来有する耐熱性が損なわれることがなく、しかも成形温度360℃と高温で成形加工した場合でも光線透過率に優れている。そして、このようなポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品は、高温で成形加工した場合でも黄色度が小さく色相に優れている。
なお、これら実施例1〜4のポリカーボネート樹脂組成物には、亜リン酸エステル系化合物(C)として、特に、一般式(3)または式(5−2)で表される化合物が配合されているので、亜リン酸エステル系化合物(C)と特定のポリエーテル(B)との相乗効果により、可視領域での光線透過率、高温で成形加工した場合の光線透過率及び高温で成形加工した場合の色相の向上効果がより大きい。
また、これら実施例1〜4のポリカーボネート樹脂組成物には、一般式(5−1)で表される亜リン酸エステル系化合物(C2)を含まないため、加水分解試験後においても光線透過率の低下および黄色度の変化が小さく、耐加水分解性に優れている。
これに対して、比較例1のポリカーボネート樹脂組成物は、特定のポリエーテル(B)の量が少ないので、積算透過率が低く、かつ、黄色度が大きい。比較例1のポリカーボネート樹脂組成物は、可視領域での光線透過率が低く、高温で成形加工した場合の光線透過率も低い。そして、このようなポリカーボネート樹脂組成物を成形した成形品は、高温で成形加工した場合の色相にも劣る。
比較例2のポリカーボネート樹脂組成物は、亜リン酸エステル系エステル化合物(C1)に加え亜リン酸エステル系化合物(C2)を含むもので、加水分解試験後の積算透過率が低下し、黄色度の変化量も大きく、耐加水分解性に劣っている。
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明を提供した。
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
本発明における光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂が本来有する耐熱性、機械的強度等の特性が損なわれることがなく、高温で成形加工した場合でも光線透過率および色相にも優れ、しかも耐加水分解性にも優れたものである。よって、例えば厚さ0.3mm程度の薄型の導光板であっても、色相が変化して外観が低下することや、高温成形を経て樹脂そのものが劣化することが少なく、高温高湿度条件下で長時間さらされた場合でも透過率低下、色相変化の少ない、長期信頼性の高い製品を得ることが可能となり極めて工業的利用価値が高い。
また、亜リン酸エステル系化合物(C)として、一般式(5−2)で表される、スピロ環骨格を有する亜リン酸エステル系化合物も利用できる。
一般式(5−2):
(式中、R11〜R18は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基またはアルケニル基を示す。R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18とは、互いに結合して環を形成していても良い。R19〜R22は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を示す。d〜gは、それぞれ独立して、0〜5の整数である。X1〜X4は、それぞれ独立に、単結合または炭素原子を示す。X1〜X4が単結合である場合、R11〜R22のうち、当該単結合に繋がった官能基は一般式(5−2)から除外される)
一般式(5−2):
Claims (8)
- ポリエーテル誘導体(B)が、下記一般式(1)で表される化合物である、請求項1記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物。
一般式(1):
RO−(X−O)m(Y−O)n−R’ (1)
(式中、RおよびR’は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1〜30のアルキル基を示し、Xは、炭素数2〜4のアルキレン基を、Yは、炭素数3〜5の分岐アルキレン基を、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。) - 前記ポリエーテル誘導体(B)が、下記一般式(2−1)で表されるテトラメチレングリコール誘導体である、請求項1記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物。
一般式(2−1):
HO−(CH2CH2CH2CH2O)m(CH2CH(CH3)O)n−H (2)
(式中、m及びnは、それぞれ独立して、3〜60の整数を示し、m+nは、8〜90の整数を示す。) - 前記亜リン酸エステル系化合物(C)が、下記一般式(5−2)で表される化合物である、請求項1記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物。
一般式(5−2):
- 前記ポリカーボネート樹脂組成物から射出成形された試験片(全長168mm×厚さ4mm)について、85℃、90%RH条件の恒温恒湿槽に1000時間放置する加水分解試験を実施し、波長380〜780nmの領域における積算透過率の該加水分解試験前後の変化量が2000未満であり、かつ黄色度の該加水分解試験前後の変化量が10未満である、請求項1記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学部品用ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品。
- 前記成形品が導光板である、請求項7記載の成形品。
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