JP2016216810A - 被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板及びその製造方法 - Google Patents

被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱間圧延−熱延板焼鈍の低コスト高炉一貫製造において、被切削性と焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板とその製造方法を提供する。【解決手段】成分組成が、質量%で、C:0.10〜0.40%、Si:0.01〜0.30%、Mn:0.30〜1.00%、P:0.0001〜0.020%、S:0.010〜0.10%、Al:0.001〜0.10%、N:0.0001〜0.020%、O:0.0001〜0.020%、Ti:0.0001〜0.010%、B:0〜0.0005%を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率が1を超え、フェライト粒径が5.0μm以上であり、ビッカース硬さが100HV以上180HV以下であることを特徴とする被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板。【選択図】図1

Description

本発明は、被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板及びその製造方法に関するものである。
質量%で、炭素を0.1〜0.4%含有する低炭素鋼板は、ブランク材にプレス成形、穴拡げ成形、曲げ成形、絞り成形、増肉及び減肉成形、及び、それらを組み合せた冷間鍛造を施して、自動車のギヤー、クラッチ等の駆動系部品を製造する素材として用いられる。
冷間鍛造のみで、部品の最終形状に高精度に成形することは難しいので、冷間鍛造後には切削が施される。また、自動車の駆動系部品として使用する際に発生する、ギヤー部品との相互の摩擦による摩耗を抑えるため、成形素材には、焼入れ及び焼戻しが施され、耐摩耗性が与えられる。
これまで、低炭素鋼板の被切削性と焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性を改善する技術について多くの提案がなされてきた(例えば、特許文献1〜5、参照)。
例えば、特許文献1には、被削性に優れた低炭硫黄系快削鋼として、重量で、C:0.05〜0.15%、Mn:0.5〜2.0%、S:0.1〜0.4%、P:0.05〜0.10%、O:0.005〜0.040%を基本成分とし、さらに、Siを0.1%以下、Alを0.009%以下に制限し、Nを20〜150ppmの範囲で含有し、さらに、Caを5〜60ppmの範囲で含有し、残部実質的にFeからなる低炭硫黄快削鋼が開示されている。しかし、特許文献1に、熱処理後の耐摩耗性の向上については何ら開示されていない。
特許文献2には、耐磨耗性に優れ、しかも、切削性にも優れた汎用及び高強度合金鋼が開示されている。しかし、特許文献2の鋼は、アトマイズ鉄粉を用いた焼結体の鋼であり、一般の熱延鋼板に比べ価格が高いという課題を抱えている。
特許文献3には、切削加工方法により全く快削性を示さない問題や材質劣化の問題を解消し、さらに、深穴あけ加工における切粉処理性を良好にし、鋼材の強度特性を大きく低下させることなく、広範な切削方法や切削条件において優れた被削性を有し、特に、耐超硬工具摩耗性及び切粉処理性に優れた熱間鍛造向け機械構造用鋼が開示されている。
しかし、特許文献3の鋼では、熱間鍛造での炉加熱ガスの放出による環境負荷の増大及び製造コストの増加を抑制することはできない。
特許文献4には、鍛造上がりの硬さ上昇を最小限に抑え、被削性、冷間加工性を確保しながら、非硬化部の疲労強度、硬化部の耐転がり強度、耐ピッチング強度、耐摩耗性、疲労強度等を向上させた鋼材が開示されている。
しかし、特許文献4の鋼材では、質量%で、C:0.40%以上0.50%未満、さらに、Si:0.5〜0.9%を含有するなど、合金元素の含有量が高いため、連続鋳造−熱間圧延−熱延板焼鈍の高炉一貫製造では歩留りが低下し、コストの増加を抑制することはできない。
特許文献5には、成形面に耐摩耗性が付与され、かつ、機械加工して成形面とするときの切削性にも優れる球状黒鉛鋳鉄製鋼管成形用ロールが開示されている。しかし、特許文献5のロールは、鋳造法にて成形されるため、生産性が低いという課題を抱えていて、広く普及する自動車の駆動系部品の製造には好適でない。
特開平07-252588号公報 特開平07-233402号公報 特開2000−87179号公報 特開2004−149928号公報 特開2013―094823号公報
本発明は、従来技術の実情に鑑み、熱間圧延−熱延板焼鈍の低コスト高炉一貫製造において、被切削性と焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板とその製造方法を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決する手法について鋭意研究した。その結果、鋼中のS濃度とともに、切削前の鋼板の組織における炭化物の分散状態を、熱延から焼鈍における製造条件を最適化して制御し、炭化物を、主に、フェライト粒界上に析出させ、かつ、粒界上の炭化物の個数を粒内の炭化物の個数よりも増加させると、優れた被切削性を確保でき、さらに、焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性も改善できることを知見した。
また、上記知見に基づく鋼板は、単に、熱延条件や焼鈍条件などを、単一にて工夫しても製造困難であり、熱延−焼鈍工程の一貫工程にて、工程条件を最適化することで製造できることを、種々の研究の積み重ねで知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、その要旨は、次の通りである。
(1)成分組成が、質量%で、
C :0.10〜0.40%、
Si:0.01〜0.30%、
Mn:0.30〜1.00%、
P :0.0001〜0.020%、
S :0.010〜0.10%、
Al:0.001〜0.10%、
N :0.0001〜0.020%、
O :0.0001〜0.020%
Ti:0.0001〜0.010%、
B :0〜0.0005%
を含み、残部がFe及び不純物からなり、
フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率が1を超え、
フェライト粒径が5.0μm以上であり、
ビッカース硬さが100HV以上180HV以下である
ことを特徴とする被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板。
(2)前記成分組成が、さらに、質量%で、
Cr:0.001〜0.50%、
Mo:0.001〜0.50%、
Nb:0.001〜0.10%、
V :0.001〜0.10%、
Cu:0.001〜0.10%、
W :0.001〜0.10%、
Ta:0.001〜0.10%、
Ni:0.001〜0.10%、
Sn:0.001〜0.050%、
Sb:0.001〜0.050%、
As:0.001〜0.050%、
Mg:0.0001〜0.050%、
Ca:0.001〜0.050%、
Y :0.001〜0.050%、
Zr:0.001〜0.050%、
La:0.001〜0.050%、
Ce:0.001〜0.050%の1種又は2種以上を含む
ことを特徴とする前記(1)に記載の被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板。
(3)前記(1)又は(2)に記載の被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板を製造する製造方法であって、
前記(1)又は(2)に記載の成分組成の鋼片を、直接、又は、一旦冷却後加熱して、熱間圧延に供し、650℃以上950℃以下の温度域で仕上げ熱延を完了し、400℃以上600℃以下で巻き取った熱延鋼板に、酸洗後、2つの温度域で保持する2段ステップ型の箱焼鈍を施す際、
(i-1)1段目の焼鈍において、熱延鋼板に、焼鈍温度まで30℃/時間以上150℃/時間以下の加熱速度で加熱し、650℃以上720℃以下の温度域に3時間以上60時間以下保持する焼鈍を施し、
(i-2)2段目の焼鈍において、熱延鋼板に、焼鈍温度まで1℃/時間以上80℃/時間以下の加熱速度で加熱し、725℃以上790℃以下の温度域に3時間以上50時間以下保持する焼鈍を施し、次いで、
(ii)焼鈍後の熱延鋼板を、650℃まで、冷却速度1℃/時間以上100℃/時間以下で冷却し、その後、室温まで冷却する
ことを特徴とする被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板の製造方法。
本発明によれば、被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板及びその製造方法を提供することができる。
フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率と被切削性の関係を示す図である。 フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率と被切削性の別の関係を示す図である。 鋼中のS含有量と耐摩耗特性の関係を示す図である。 鋼中のS含有量と耐摩耗特性の別の関係を示す図である。
本発明の被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板(以下「本発明鋼板」ということがある。)は、成分組成が、質量%で、
C :0.10〜0.40%、
Si:0.01〜0.30%、
Mn:0.30〜1.00%、
P :0.0001〜0.020%、
S :0.010〜0.10%、
Al:0.001〜0.10%、
N :0.0001〜0.020%、
O :0.0001〜0.020%
Ti:0.0001〜0.010%、
B :0〜0.0005%
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率が1を超え、
フェライト粒径が5.0μm以上であり、
ビッカース硬さが100HV以上180HV以下である
ことを特徴とする。
本発明の被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板の製造方法(以下「本発明製造方法」ということがある。)は、本発明鋼板を製造する製造方法であって、
本発明鋼板の成分組成の鋼片を、直接、又は、一旦冷却後加熱して、熱間圧延に供し、650℃以上950℃以下の温度域で仕上げ熱延を完了し、400℃以上600℃以下で巻き取った熱延鋼板に、酸洗後、2つの温度域で保持する2段ステップ型の箱焼鈍を施す際、
(i-1)1段目の焼鈍において、熱延鋼板に、焼鈍温度まで30℃/時間以上150℃/時間以下の加熱速度で加熱し、650℃以上720℃以下の温度域に3時間以上60時間以下保持する焼鈍を施し、
(i-2)2段目の焼鈍において、熱延鋼板に、焼鈍温度まで1℃/時間以上80℃/時間以下の加熱速度で加熱し、725℃以上790℃以下の温度域に3時間以上50時間以下保持する焼鈍を施し、次いで、
(ii)焼鈍後の熱延鋼板を、650℃まで、冷却速度1℃/時間以上100℃/時間以下で冷却し、その後、室温まで冷却する
ことを特徴とする。
以下、本発明鋼板及び本発明製造方法について説明する。
まず、本発明鋼板の成分組成の限定理由について説明する。以下、成分組成に係る「%」は「質量%」を意味する。
C:0.10〜0.40%
Cは、鋼中で炭化物を形成し、鋼の強化及びフェライト粒の微細化に有効な元素である。冷間加工における梨地の発生を抑制し、冷間鍛造部品の表面美観を確保するためには、フェライト粒径の粗大化を抑制することが必須である。0.10%未満では、炭化物の体積率が不足し、箱焼鈍中のフェライトの粗大化を抑制することができないので、Cは0.10%以上とする。好ましくは0.11%以上である。
一方、0.40%を超えると、炭化物の体積率が増加し、瞬時的に荷重を負荷した際に破壊の起点となるクラックが多量に生成し、耐摩耗特性が低下するので、Cは0.40%以下とする。好ましくは0.38%以下である。
Si:0.01〜0.30%
Siは、脱酸剤として作用し、また、炭化物の形態に影響を及ぼす元素である。フェライト粒内の炭化物の個数を減らし、フェライト粒界上の炭化物の個数を増やすためには、2段ステップ型の箱焼鈍により、焼鈍中に、オーステナイト相を生成させ、一旦、炭化物を溶解させた後、徐冷し、フェライト粒界への炭化物の生成を促進する必要がある。
0.30%を超えると、後述のトライボフィルムの形成を抑制し、焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性を低下させるので、Siは0.30%以下とする。好ましくは0.28%以下である。Siは、少ないほど好ましいが、0.01%未満に低減すると、精錬コストが増加するので、Siは0.01%以上とする。好ましくは0.04%以上である。
Mn:0.30〜1.00%
Mnは、2段ステップ型の箱焼鈍において、炭化物の形態を制御する元素である。0.30%未満では、2段目の焼鈍後の徐冷において、フェライト粒界上に炭化物を生成させることが困難となるので、Mnは0.30%以上とする。好ましくは0.33%以上である。一方、1.00%を超えると、焼入れ焼戻し後の靭性が低下するので、Mnは1.00%以下とする。好ましくは0.96%以下である。
P:0.0001〜0.020%
Pは、フェライト粒界に偏析し、粒界炭化物の生成を抑制する元素である。少ないほど好ましいが、精錬工程にて0.0001%未満に高純度化すると、精錬時間が長くなり、精錬コストが大幅に増加するので、Pは0.0001%以上とする。好ましくは0.0013%以上である。
一方、0.020%を超えると、粒界炭化物の個数比率が低下し、被切削性が低下するので、Pは0.020%以下とする。好ましくは0.018%以下である。
S:0.010〜0.10%
Sは、鋼の被切削性と耐摩耗性に大きな影響を及ぼす元素である。被切削性への影響については、Sは、フェライトとセメンタイトの界面に濃化して、その界面の剥離を促す元素であり、この界面剥離の効果によって、被切削性が向上する。
耐摩耗性への影響については、耐摩耗環境にて部品表層のSは、潤滑油/鋼界面にトライボフィルムが生成するのを促し、かつ、該フィルムの硬さは、鋼中のS濃度が高いほど増加するので、耐摩耗性が向上する。
0.010%未満では、添加効果が十分に得られないので、Sは0.010%以上とする。好ましくは0.015%以上である。一方、0.10%を超えると、後述の熱延鋼板の焼鈍工程において、フェライト/オーステナイト界面に顕著に濃化したSにより、粒界炭化物の生成が抑制され、被切削性が低下するので、Sは0.10%以下とする。好ましくは0.08%以下である。
Al:0.001〜0.10%
Alは、鋼の脱酸剤として作用し、フェライトを安定化する元素である。0.001%未満では、添加効果が十分に得られないので、Alは0.001%以上とする。好ましくは0.004%以上である。一方、0.10%を超えると、粒界上の炭化物の個数割合が低下し、被切削性が低下するので、Alは0.10%以下とする。好ましくは0.09%以下である。
N:0.0001〜0.020%
Nは、フェライト粒界に偏析し、粒界上の炭化物の生成を抑制する元素である。少ないほど好ましいが、0.0001%未満に低減すると、精錬コストが大幅に増加するので、Nは0.0001%以上とする。好ましくは0.0006%以上である。
一方、0.020%を超えると、2相域焼鈍及び徐冷を施しても、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界上の炭化物の個数の比が1以下となり、被切削性が低下するので、Nは0.020%以下とする。好ましくは0.017%以下である。
O:0.0001〜0.020%
Oは、鋼中に酸化物の生成を促す元素である。フェライト粒内に存在する酸化物は炭化物の生成サイトとなるので、Oは少ないほうが好ましいが、0.0001%未満に低減すると、精錬コストが大幅に増加するので、Oは0.0001%以上とする。好ましくは0.0006%以上である。
一方、0.020%を超えると、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界上の炭化物の個数の比が1以下となり、被切削性が低下するので、Oは0.020%以下とする。好ましくは0.017%以下である。
Ti:0.0001〜0.010%
Tiは、炭化物の形態の制御に重要な元素であり、多量の添加で、フェライト粒内の炭化物の生成を促す元素である。Tiは、少ないほど好ましいが、0.0001%未満に低減すると、精錬コストが大幅に増加するので、Tiは0.0001%以上とする。好ましくは0.0006%以上である。
一方、0.010%を超えると、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界上の炭化物の個数の比が1以下となり、被切削性が低下するので、Tiは0.010%以下とする。好ましくは0.017%以下である。
B:0〜0.0005%
Bは、フェライトと炭化物の界面に濃化し、フェライトと炭化物の界面へのSの偏析を抑制する元素である。Bは、少ないほど好ましいが、0.0001%未満の同定には分析に細心の注意を払う必要があるとともに、分析装置によっては検出下限に至るので、0%を下限とする。好ましくは0.0001%以上である。
一方、0.0005%を超えると、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界上の炭化物の個数の比が1を超えるように組織を最適化しても、フェライトと炭化物の界面へのSの濃化が抑制され、被切削性が向上しないので、Bは0.0005%以下とする。好ましくは0.0002%以下である。
本発明鋼板の成分組成は、上記元素の他、本発明鋼板の被切削性及び他の特性の向上のため、Cr:0.001〜0.50%、Mo:0.001〜0.50%、Nb:0.001〜0.10%、V:0.001〜0.10%、Cu:0.001〜0.10%、W:0.001〜0.10%、Ta:0.001〜0.10%、Ni:0.001〜0.10%、Sn:0.001〜0.050%、Sb:0.001〜0.050%、As:0.001〜0.050%、Mg:0.0001〜0.050%、Ca:0.001〜0.050%、Y:0.001〜0.050%、Zr:0.001〜0.050%、La:0.001〜0.050%、Ce:0.001〜0.050%の1種又は2種以上を含んでもよい。
Cr:0.001〜0.50%
Crは、2相域焼鈍時における炭化物の安定化に有効な元素である。0.001%未満では、添加効果が十分に得られないので、Crは0.001%以上とする。好ましくは0.010%以上である。一方、0.50%を超えると、摩耗環境に鋼部品を投じた際に、潤滑油/鋼表面へのSを主体としたトライボフィルムの生成が抑制され、耐摩耗性が低下するので、Crは0.50%以下とする。好ましくは0.30%以下である。
Mo:0.001〜0.50%
Moは、Crと同様に、2相域焼鈍時における炭化物の安定化に有効な元素である。0.001%未満では、添加効果が十分に得られないので、Moは0.001%以上とする。好ましくは0.010%以上である。一方、0.50%を超えると、炭化物中へのMoの濃化により炭化物の硬さが増加し、被切削性が低下するので、Moは0.50%以下とする。好ましくは0.30%以下である。
Nb:0.001〜0.10%
Nbは、炭化物の形態制御に有効な元素であり、その添加により、組織を微細化し、靭性の向上に寄与する元素である。0.001%未満では、添加効果が十分に得られないので、Nbは0.001%以上とする。好ましくは0.002%以上である。
一方、0.10%を超えると、微細で硬質なNb炭化物が多数析出し、強度が上昇しすぎるとともに、粒界炭化物の個数比率が低下し、被切削性が低下するので、Nbは0.10%以下とする。好ましくは0.09%以下である。
V:0.001〜0.10%
Vも、Nbと同様に、炭化物の形態制御に有効な元素であり、その添加により、組織を微細化し、靭性の向上に寄与する元素である。0.001%未満では、添加効果が十分に得られないので、Vは0.001%以上とする。好ましくは0.004%以上である。
一方、0.10%を超えると、微細なV炭化物が多数析出し、強度が上昇しすぎるとともに、粒界炭化物の個数比率が低下し、被切削性が低下するので、Vは0.10%以下とする。好ましくは0.09%以下である。
Cu:0.001〜0.10%
Cuは、フェライトの結晶粒界に偏析する元素であるとともに、微細な析出物を形成し、強度の向上に寄与する元素である。0.001%未満では、強度向上効果が十分に得られないので、Cuは0.001%以上とする。好ましくは0.008%以上である。一方、0.10%を超えると、赤熱脆性を招き、熱延での生産性が低下するので、Cuは0.10%以下とする。好ましくは0.09%以下である。
W:0.001〜0.10%
Wも、Nb、Vと同様に、炭化物の形態制御に有効な元素である。0.001%未満では、添加効果が十分に得られないので、Wは0.001%以上とする。好ましくは0.003%以上である。一方、0.10%を超えると、微細なW炭化物が多数析出し、強度が上昇しすぎるとともに、粒界炭化物の個数比率が低下し、被切削性が低下するので、Wは0.10%以下とする。好ましくは0.08%以下である。
Ta:0.001〜0.10%
Taも、Nb、V、Wと同様に、炭化物の形態制御に有効な元素である。0.001%未満では、添加効果が十分に得られないので、Taは0.001%以上とする。好ましくは0.007%以上である。一方、0.10%を超えると、微細なW炭化物が多数析出し、強度が上昇しすぎるとともに、粒界炭化物の個数比率が低下し、被切削性が低下するので、Taは0.10%以下とする。好ましくは0.09%以下である。
Ni:0.001〜0.10%
Niは、部品の耐摩耗特性の向上に有効な元素である。0.001%未満では、添加効果が十分に得られないので、Niは0.001%以上とする。好ましくは0.002%以上である。一方、0.10%を超えると、粒界炭化物の個数比率が低下し、被切削性が低下するので、Niは0.10%以下とする。好ましくは0.09%以下である。
Sn:0.001〜0.050%
Snは、鋼原料(スクラップ)から鋼中に混入して粒界に偏析し、粒界炭化物の個数比率を低下させる元素である。少ないほど好ましいが、0.001%未満へ低減すると、精錬コストが大幅に増加するので、Snは0.001%以上とする。好ましくは0.002%以上である。一方、0.050%を超えると、フェライトが脆化し、耐摩耗性が低下するので、Snは0.050%以下とする。好ましくは0.048%以下である。
Sb:0.001〜0.050%
Sbは、Snと同様に、鋼原料(スクラップ)から鋼中に混入して粒界に偏析し、粒界炭化物の個数比率を低下させる元素である。少ないほど好ましいが、0.001%未満へ低減すると、精錬コストが大幅に増加するので、Sbは0.001%以上とする。好ましくは0.002%以上である。一方、0.050%を超えると、フェライトが脆化し、耐摩耗性が低下するので、Sbは0.050%以下とする。好ましくは0.048%以下である。
As:0.001〜0.050%
Asは、Sn、Sbと同様に、鋼原料(スクラップ)から鋼中に混入して粒界に偏析し、粒界炭化物の個数比率を低下させる元素である。少ないほど好ましいが、0.001%未満へ低減すると、精錬コストが大幅に増加するので、Asは0.001%以上とする。好ましくは0.002%以上である。一方、0.050%を超えると、粒界炭化物の個数比率が低下し、被切削性が低下するので、Asは0.050%以下とする。好ましくは0.045%以下である。
Mg:0.0001〜0.050%
Mgは、微量の添加で硫化物の形態を制御できる元素である。0.0001%未満では、添加効果が十分に得られないので、Mgは0.0001%以上とする。好ましくは0.0008%以上である。一方、0.050%を超えると、粗大な介在物が生成し、耐摩耗性が低下するので、Mgは0.050%以下とする。好ましくは0.049%以下である。
Ca:0.001〜0.050%
Caは、Mgと同様に、微量の添加で硫化物の形態を制御できる元素である。0.001%未満では、添加効果が十分に得られないので、Caは0.001%以上とする。好ましくは0.003%以上である。一方、0.050%を超えると、粗大なCa酸化物が生成し、摩耗環境下で割れ発生の起点となるので、Caは0.050%以下とする。好ましくは0.043%以下である。
Y:0.001〜0.050%
Yは、Mg、Caと同様に、微量の添加で硫化物の形態を制御できる元素である。0.001%未満では、添加効果が十分に得られないので、Yは0.001%以上とする。好ましくは0.003%以上である。一方、0.050%を超えると、粗大なY酸化物が生成し、耐摩耗性が低下するので、Yは0.050%以下とする。好ましくは0.031%以下である。
Zr:0.001〜0.050%
Zrは、Mg、Ca、Yと同様に、微量の添加で硫化物の形態を制御できる元素である。0.001%未満では、添加効果が十分に得られないので、Zrは0.001%以上とする。好ましくは0.004%以上である。一方、0.050%を超えると、粗大なZr酸化物が生成し、耐摩耗性が低下するので、Zrは0.050%以下とする。好ましくは0.045%以下である。
La:0.001〜0.050%
Laは、微量の添加で硫化物の形態制御に有効な元素であるが、粒界に偏析し、粒界炭化物の個数比率を低下させる元素でもある。0.001%未満では、形態制御効果が十分に得られないので、Laは0.001%以上とする。好ましくは0.003%以上である。一方、0.050%を超えると、粒界炭化物の個数比率が低下し、被切削性が低下するので、Laは0.050%以下とする。好ましくは0.047%以下である。
Ce:0.001〜0.050%
Ceは、Laと同様に、微量の添加で硫化物の形態を制御できる元素であるが、粒界に偏析し、粒界炭化物の個数比率を低下させる元素でもある。0.001%未満では、形態制御効果が十分に得られないので、Ceは0.001%以上とする。好ましくは0.004%以上である。一方、0.050%を超えると、粒界炭化物の個数比率が低下し、被切削性が低下するので、Ceは0.050%以下とする。好ましくは0.046%以下である。
本発明鋼板の成分組成の残部は、Fe及び不可避的不純物である。
前述の成分組成の鋼板に、最適条件で熱延及び焼鈍を施し、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率を1超とし、フェライト粒径を5μm以上とし、ビッカース硬さを100HV以上180HV以下とすることにより、絞り、増肉成形を組み合せた冷間鍛造における冷間鍛造性が向上し、さらに、被切削性及び焼入れ焼戻し後の部材の耐摩耗特性が向上することは、本発明者らが見いだした新規な知見である。
本発明鋼板は、実質的に、フェライトと炭化物で構成し、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率が1を超える組織とする。なお、炭化物は、鉄と炭素の化合物であるセメンタイト(Fe3C)に加え、セメンタイト中のFe原子をMn、Cr等で置換した化合物、合金炭化物(M236、M6C、MC等であり、Mは、Fe及びその他の添加金属元素)である。
次に、上記規定の理由について説明する。
軟質な中炭素鋼板を素材として、素材よりも硬質な工具を用いて素材を切削する際、素材から切り出される切削屑が細かく分断されると、工具に切削屑が絡まり難くなるため、鋼の被切削性が向上する。切削工程をミクロの視点で捉えると、工具の刃が素材に対して食い込み、さらに掬いあげて、素材から切削屑を切り離す工程で分けることができ、細かな切削屑を得るためには、素材から切削屑を切り離す工程を早期に起こす必要がある。
従来は、MnS等の形成によって素材から切削屑を切り離す効果を促進できることが知られているが、その切り離し効果は、工具の刃先がMnSの存在する場所に届いた場合においてのみに限定されるという課題がある。
そこで、本発明者らは、上記課題の解決に向けて、前述の切削屑を早期に素材から切り離す技術の開発を進めた。具体的には、MnSよりも微細でかつ均一に分散する炭化物に着目し、工具の刃が、素材に食い込むような高い歪を受ける加工において、炭化物とフェライトの界面が早期に剥離してボイドを生成すれば、被切削性が向上することを見出した。
つまり、炭化物がフェライトの粒界上に多く存在するように、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率が1を超える組織を形成し、さらに、フェライトと炭化物の界面にSを偏析させ、炭化物とフェライトの剥離を促進させることによって、切削時に、切削屑が細かく分散し、さらに、切削に要する力も低下し、被切削性が著しく向上することを明らかにした。
理論及び原則に基づくと、被切削性は、フェライト粒界の炭化物の被覆率の影響を強く受けると考えられ、その高精度な測定が求められるが、3次元空間におけるフェライト粒界への炭化物の被覆率の測定には、走査型電子顕微鏡内にて、FIBによるサンプル切削と観察を繰り返し行うことによる、シリアルセクショニングSEM観察、又は、3次元EBSP観察が必須となり、膨大な測定時間を要するとともに、技術ノウハウの蓄積が不可欠となることうを本発明者らは明らかにし、一般的な分析手法には値しないと結論付けた。
このため、より簡易的で精度の高い評価指標を探索した。その結果、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率を指標とすれば、被切削性を評価することが可能となり、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率が1を超えると、被切削性が著しく向上することを本発明者らは見出した。
炭化物の平均粒子径は、0.1μm以上2.0μm以下が好ましい。炭化物の粒子径が0.1μm未満であると、鋼板の硬さが顕著に増加して、脆性的な破壊が起き易くなり、被切削性が低下するので、炭化物の平均粒子径は0.1μm以上が好ましい。より好ましくは0.17μm以上である。一方、炭化物の平均粒子径が2.0μmを超えると、冷間鍛造時に粗大な炭化物を起点として亀裂が発生し、被切削性が低下するので、炭化物の平均粒子径は2.0μm以下が好ましい。より好ましくは1.95μm以下である。
続いて、上記組織の観察方法及び測定方法について説明する。
炭化物の観察は、走査型電子顕微鏡で行なう。観察に先立ち、組織観察用のサンプルを、エメリー紙による湿式研磨及び1μmの平均粒子サイズをもつダイヤモンド砥粒により研磨し、観察面を鏡面に仕上げ。その後、飽和ピクリン酸−アルコール溶液にて組織をエッチングしておく。
観察の倍率を3000倍とし、板厚1/4層における30μm×40μmの視野をランダムに8枚撮影する。得られた組織画像において、三谷商事株式会社製(Win ROOF)に代表される画像解析ソフトにより、画像領域中に含まれる各炭化物の面積を詳細に測定する。各炭化物の面積から円相当直径(=2×√(面積/3.14))を求め、その平均値を炭化物平均粒子径とする。
なお、ノイズによる測定誤差の影響を抑えるため、面積が0.01μm2以下の炭化物は、評価の対象から除外する。
フェライト粒界上に存在する炭化物の個数をカウントし、全炭化物数から粒界上の炭化物数を引算して、フェライト粒内の炭化物数を算出する。測定した個数に基づいて、フェライト粒内の炭化物に対する粒界の炭化物の個数比率を算出する。
熱延鋼板の焼鈍後の組織において、フェライト粒径は5.0μm以上とする。フェライト粒径が5.0μm未満であると、硬さが増加して、冷間鍛造時に亀裂やクラックが発生し易くなるので、フェライト粒径は5.0μm以上とする。フェライト粒径を5.0μm以上とすることで、被切削性を改善することができる。好ましくは7.5μm以上である。
フェライト粒径の上限は、特に限定しないが、50.0μm以下が好ましい。50.0μmを超えると、すべりの伝播を抑制する結晶粒界上の炭化物の個数が減少し、被切削性が低下するので、フェライト粒径は50.0μm以下が好ましい。より好ましくは38.0μm以下である。
フェライト粒径は、前述の手順で観察面を鏡面に研磨した後、3%硝酸−アルコール溶液でエッチングした組織を、光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡で観察し、撮影した画像に対し線分法を適用して測定する。
本発明鋼板においては、ビッカース硬さを、100HV以上180HV以下とすることで、被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性を改善することができる。
ビッカース硬さが100HV未満であると、冷間鍛造中に座屈が発生し易くなり、座屈部の折込み及びたたみ込みが発生して、耐摩耗特性が低下するので、ビッカース硬さは100HV以上とする。好ましくは110HV以上である。一方、ビッカース硬さが180HVを超えると、延性が低下し、冷間鍛造時に内部割れが起き易くなり、耐摩耗特性が悪化するので、ビッカース硬さは180HV以下とする。好ましくは170HV以下である。
続いて、被切削性の評価方法について説明する。
通常、鋼材の被切削性を評価する場合は、タイトな酸化層又はTi−N等の超硬コーティングを施したドリル刃を用いて、摩耗によるドリルの減量、及び/又は、鋼材から切削される切粉片の形状などを調べて評価する。
ただし、この評価方法では、摩耗過程での発熱に伴う被切削鋼材及びドリル刃の材質変化を防ぐことはできず、真に被切削性に影響を及ぼす鋼材の組織因子の明確化はできない。このため、本発明鋼板の被切削性の評価に際しては、切削中の鋼板の発熱を極力抑えることを目的とし、マイクロカッターを用いる被切削性の評価方法を開発した。
評価には、リファインテック製のマイクロカッター(RCA−134型)を用い、被切削性を評価する鋼板に対して、回転砥石を0.5mm/秒の水平移動速度で接近させて切断し、その際、モーターにかかる電流量を読み取った。
切断に際し、大きな電流量(15アンペア超え)を要するほど、モーターには負荷がかかり、被切削性は劣位であると判断した。評価試験時は、電源として200V、60Hzの電源を用い、回転砥石を2670rpmの速度で回転させた。なお、回転砥石は、日本プラスチック製砥(株)のWA120NA9C−403249を用い、空転時に要する電流量は5.5アンペアであった。
次に、本発明製造方法について説明する。
本発明製造方法の技術的思想は、前述の成分組成の鋼板を用いて、熱間条件と焼鈍条件の一貫した管理により、被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性を向上させることを特徴とする。
本発明製造方法の具体的な特徴は以下の通りである。
所定の成分組成を有する連続鋳造スラブを、常法通り、そのまま、又は、一旦冷却後加熱して、熱間圧延し、650℃以上950℃以下の温度域で仕上げ熱延を完了する。仕上げ圧延後の鋼帯をROT(Run Out Table)上で冷却し、400℃以上600℃以下の温度域で巻き取り熱延コイルとする。
熱延コイルに、酸洗後、2つの温度域で保持する2段ステップ型の箱焼鈍を施すが、この際、1段目の焼鈍においては、熱延鋼板に、焼鈍温度まで30℃/時間以上150℃/時間以下の加熱速度で加熱し、650℃以上720℃以下の温度域に3時間以上60時間以下保持する焼鈍を施し、さらに、2段目の焼鈍においては、熱延鋼板を、焼鈍温度まで1℃/時間以上80℃/時間以下の加熱速度で加熱し、725℃以上790℃以下の温度域に3時間以上50時間以下保持する焼鈍を施し、次いで、650℃まで、冷却速度1℃/時間以上100℃/時間以下で冷却し、その後、室温まで冷却することにより、被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板を製造することができる。
以下に、本発明製造方法について具体的に説明する。
熱間圧延
所定の成分組成を有する連続鋳造スラブを、そのまま、又は、一旦冷却後加熱して、熱間圧延に供し、650℃以上950℃未以下の温度域で仕上げ熱延を完了し、熱延鋼板を、400℃以上600℃以下の温度域で巻き取る。
スラブの加熱温度は1300℃以下が好ましい。スラブ表層の温度が1000℃以上に保持される加熱時間は、7時間以下が好ましい。加熱温度が1300℃を超え、又は、加熱時間が7時間を超えると、スラブ表層からの脱炭が顕著になり、焼入れ前の加熱時に表層のオーステナイト粒が異常に成長し、耐摩耗特性が低下するので、加熱温度は1300℃以下、加熱時間は7時間以下が好ましい。より好ましくは、加熱温度は1280℃以下、加熱時間は6時間以下である。
仕上げ熱延は、650℃以上950℃以下の温度域で完了する。仕上げ熱延温度が650℃未満であると、鋼材の変形抵抗が増加し、圧延負荷が顕著に高まり、さらに、ロール磨耗量が増大して、生産性が低下するので、仕上げ熱延温度は650℃以上とする。好ましくは680℃以上である。
一方、仕上げ熱延温度が950℃を超えると、ROTを通過中に分厚いスケールが生成し、該スケールに起因した疵が鋼板表面に発生し、冷間鍛造時及び/又は焼入れ焼戻し後に衝撃荷重が加わった際、疵を起点として亀裂が発生して耐摩耗特性が低下するので、仕上げ熱延温度は950℃以下とする。好ましくは920℃以下である。
仕上げ熱延後のROT上での冷却速度は10℃/秒以上100℃/秒以下が好ましい。冷却速度が10℃/秒未満であると、冷却途中に分厚いスケールが生成し、該スケールに起因する疵が鋼板表面に発生するのを防ぐことができず、耐摩耗特性が低下するので、冷却速度は10℃/秒以上が好ましい。より好ましくは20℃/秒以上である。
一方、鋼板の表層から内部にわたり100℃/秒を超える冷却速度で鋼板を冷却すると、最表層部が過剰に冷却されて、ベイナイトやマルテンサイトなどの低温変態組織が生じる。巻き取り後に、100℃〜室温まで冷却された熱延コイルを払い出す際、上記低温変態組織に微小クラックが発生し、続く酸洗工程及び冷延工程で微小クラックを取り除くことは難しく、冷間鍛造時及び/又は焼入れ焼戻し後に衝撃荷重が加わった際、クラックを起点に亀裂が進展して、耐摩耗特性が低下するので、冷却速度は100℃/秒以下が好ましい。より好ましくは90℃/秒以下である。
なお、上記冷却速度は、仕上げ熱延後の鋼帯が無注水区間を通過後に注水区間で水冷却を受ける時点から、捲取の目標温度までROT上で冷却される時点において、各注水区間の冷却設備から受ける冷却能を指しており、注水開始点から巻取機により巻き取られる温度までの平均冷却速度を示すものではない。
巻取温度は、400℃以上600℃以下とする。巻取温度が400℃未満であると、巻き取る前に未変態であったオーステナイトが硬いマルテンサイトに変態し、熱延コイルの払い出し時に、表層にクラックが発生し、耐摩耗特性が低下するので、巻取温度は400℃以上とする。好ましくは430℃以上である。
一方、巻取温度が600℃を超えると、ラメラー間隔の大きなパーライトが生成し、熱的安定性の高い分厚い針状の炭化物が生成し、2段ステップ型の箱焼鈍後にも、針状の炭化物が残留し、この針状の炭化物を起点として、冷間鍛造時に亀裂が生成するので、巻取温度は600℃以下とする。好ましくは570℃以下である。
前述の条件で製造した熱延コイルに、酸洗後、2つの温度域で保持する2段ステップ型の箱焼鈍を施す。2段ステップ型の箱焼鈍により、炭化物の安定性を制御し、フェライト粒界への炭化物の生成を促進する。
まず、1段目の焼鈍を、Ac1点以下の温度域で実施し、炭化物を粗大化するとともに、合金元素を濃化させ、炭化物の熱的安定性を高める。その後、Ac1点以上の温度域に昇温し、オーステナイトを組織中に生成させ、微細なフェライト粒内の炭化物をオーステナイト中に溶解させ、粗大な炭化物をオーステナイト中に残存させる。その後の徐冷により、オーステナイトをフェライトに変態させ、オーステナイト中の炭素濃度を高める。
徐冷を進めることで、オーステナイト中に残存する炭化物に炭素原子が吸着し、炭化物とオーステナイトがフェライトの粒界を覆うようになり、最終的に、フェライトの粒界に炭化物が多量に生成した組織を形成することが可能となる。それ故、本発明鋼板で規定する組織形態が単純な焼鈍のみでは獲得し得ないことは明白である。
以下、具体的な工程条件について説明する。
1段目の焼鈍
焼鈍温度への加熱速度:30℃/時間以上150℃/時間以下
焼鈍温度:650℃以上720℃以下
保持時時:3時間以上60時間以下
1段目の焼鈍において、焼鈍温度までの加熱速度(1段目の加熱速度)を30℃/時間以上150℃/時間以下とする。1段目の加熱速度が30℃/時間未満であると、昇温に時間を要し、生産性が低下するので、1段目の加熱速度は30℃/時間以上とする。好ましくは40℃/時間いじょうである。
一方、1段目の加熱速度が150℃/時間を超えると、コイルの外周部と内部の温度差が増大して、熱膨張差に起因するすり疵や焼付きが発生し、鋼板表面に凹凸が生成する。冷間鍛造時、この凹凸を起点として亀裂が発生し、被切削性が低下し、また、焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性が低下するので、1段目の加熱速度は150℃/時間以下とする。好ましくは120℃/時間以下である。
1段目の焼鈍における焼鈍温度(1段目の焼鈍温度)は650℃以上720℃以下とする。1段目の焼鈍温度が650℃未満であると、炭化物の安定度が不足し、2段目の焼鈍において、オーステナイト中に炭化物を残存させることが困難となるので、1段目の焼鈍温度は650℃以上とする。好ましくは670℃以上である。
一方、1段目の焼鈍温度が720℃を超えると、炭化物の安定度が高まる前に、オーステナイトが生成し、前述の組織変化を制御できなくなるので、1段目の焼鈍温度は720℃以下とする。好ましくは700℃以下である。
1段目の焼鈍における保持時間(1段目の保持時間)は3時間以上60時間以下とする。1段目の保持時間が3時間未満であると、炭化物の安定化が充分でなく、2段目の焼鈍時に炭化物を残存させることが困難となるので、1段目の保持時間は3時間以上とする。好ましくは10時間以上である。
一方、1段目の保持時間が60時間を超えると、一層の炭化物の安定度向上は見込めず、さらに、生産性が低下するので、1段目の保持時間は60時間以下とする。好ましくは50時間以下である。
2段目の焼鈍
焼鈍温度までの加熱速度:1℃/時間以上80℃/時間以下
焼鈍温度:725℃以上790℃以下
保持時間:3時間以上50時間以下
1段目の焼鈍における保持が完了した後の2段目の焼鈍において、焼鈍温度までの加熱速度(2段目の加熱速度)は1℃/時間以上80℃/時間以下とする。2段目の焼鈍時には、フェライト粒界からオーステナイトが生成し成長する。この時、2段目の加熱速度を小さく制御することで、オーステナイトの核生成を抑えることができ、徐冷後に得られる組織において炭化物の粒界被覆率を高めることが可能となる。
このため、2段目の加熱速度は遅い方が好ましいが、1℃/時間未満であると、昇温に時間を要し、生産性が低下するので、2段目の加熱速度は1℃/時間以上とする。好ましくは10℃/時間以上である。
一方、2段目の加熱速度が80℃/時間を超えると、コイルの外周部と内部の温度差が増大して、変態による大きな熱膨張差に起因するすり疵や焼付きが発生し、鋼板表面に凹凸が生成する。冷間鍛造時、この凹凸を起点として亀裂が生成し、被切削性が低下し、また、焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性が低下するので、2段目の加熱速度は80℃/時間以下とする。好ましくは70℃/時間以下である。
2段目の焼鈍における焼鈍温度(2段目の焼鈍温度)は725℃以上790℃以下とする。2段目の焼鈍温度が725℃未満であると、オーステナイトの生成量が少なく、フェライト粒界上の炭化物の個数比率が低下するので、2段目の焼鈍温度は725℃以上とする。好ましくは735℃以上である。
一方、2段目の焼鈍温度が790℃を超えると、炭化物をオーステナイト中に残存させることが困難となり、前述の組織変化に制御することが難しくなるので、2段目の焼鈍温度は790℃以下とする。好ましくは770℃以下である。
2段目の焼鈍において、焼鈍温度での保持時間(2段目の保持時間)は3時間以上50時間以下とする。2段目の保持時間が1時間未満であると、オーステナイト量の生成量が少なく、かつ、フェライト粒内の炭化物の溶解が充分でなく、粒界上の炭化物の個数比率を増加させることが困難となるので、2段目の保持時間は1時間以上とする。好ましくは5時間以上である。
一方、2段目の保持時間が50時間を超えると、炭化物をオーステナイト中に残存させることが困難となるので、2段目の保持時間は50時間以下とする。好ましくは45時間以下である。
焼鈍後の冷却
冷却停止温度:650℃
冷却速度:1℃/時間以上100℃/時間以下
2段目の焼鈍における保持が完了した後、650℃まで冷却速度1℃/時間以上100℃/時間以下で冷却する。
2段目の焼鈍において生成したオーステナイトを徐冷によりフェライトに変態させるとともに、オーステナイト中に残存した炭化物へ炭素を吸着させるために、冷却速度は遅い方が好ましいが、冷却速度が1℃/時間未満であると、冷却のために要する時間が増大し、生産性が低下するので、冷却速度は1℃/時間以上とする。好ましくは10℃/時間以上である。
一方、冷却速度が100℃/時間を超えると、オーステナイトがパーライトに変態し、鋼板の硬さが増加して、被切削性が低下し、またあ、焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性が低下するので、冷却速度は100℃/時間以下とする。好ましくは90℃/時間以下である。
箱焼鈍の雰囲気は、特定の雰囲気に限定されない。例えば、95%以上窒素の雰囲気、95%以上水素の雰囲気、大気雰囲気のいずれの雰囲気でもよい。
以上、本発明製造方法によれば、実質的にフェライトと炭化物の組織であり、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率が1を超え、フェライト粒径が5.0μm以上であり、ビッカース硬さが100HV以上180HV以下の、絞り、増肉成形を組み合わせた冷間鍛造における冷間鍛造性及び被切削性に優れ、さらに、焼入れ焼戻し後の部材の耐摩耗特性にも優れる低炭素鋼板を製造することができる。
次に、実施例により本発明の効果を説明するが、実施例の水準は、本発明の実施可能性ならびに効果を確認するために採用した実行条件の一例であり、本発明はこの一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明要旨を逸脱せず、本発明目的を達する限りにおいては、種々の条件を採用可能とするものである。
表1に示す成分組成を有する連続鋳造鋳片(鋼塊)を、1250℃で1.5時間加熱した後に熱間圧延に供し、870℃で仕上げ熱延を完了した後、ROT上で40℃/秒の冷却速度で520℃まで冷却し、520℃で巻き取り、板厚4.4mmの熱延コイルを製造した。
Figure 2016216810
熱延コイルを、酸洗後、箱型焼鈍炉内に装入し、雰囲気を95%水素−5%窒素に制御した後、室温から700℃までを80℃/時間の加熱速度で加熱し、700℃で24時間保持して、コイル内の温度分布を均一化し、その後、10℃/時間の加熱速度で745℃まで加熱し、さらに、745℃で6時間保持した後、650℃まで8℃/時間の冷却速度で冷却し、次いで、室温まで炉冷して、特性評価用のサンプルを作製した。なお、サンプルの組織は、前述の方法で観察し、被切削性は、前述の手法で評価した。
サンプルの焼入れ及び焼戻しは、下記の条件で実施した。窒素95%の雰囲気に制御した炉内にて、880℃で60分保持する処理を施し、60℃の油中に焼入れた。焼入れサンプルに、180℃で45分保持後に空冷する焼戻し処理を施し、焼入れ焼戻しサンプルを作製した。
熱処理後のサンプルの耐摩耗性は、ブロックオンリング試験にて評価した。SUJ2を、Φ35mm×巾8.8mmのリング試験片の形状に加工し、さらに、前述の熱処理を施して、リング試験片を作製した。各評価用サンプルを、板厚×幅15.8mm×長さ10.2mmに切り出し、板厚方向に2枚を重ねる際に、その合計厚みが6.3mmとなるように板厚の表裏面を切削し、2枚の板をネジ止めにより締結して、ブロック試験片を作製した。
ブロック試験片の6.3mm×幅15.8mmの面がリング表面に接するように、試験機にサンプルをセットして、すべり速度0.4m/秒、油温140℃、荷重2000N、すべり距離10000mの条件にて試験し、ブロック試験片の試験前後における重量変化を測定し、減量が5mg以内の場合は、耐摩耗性に優れると評価し、減少量が5mgを超える場合は、耐摩耗性に劣位であると評価した。
表2に、炭化物径、フェライト粒径、ビッカース硬さ、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率、切削時のモーター電流、及び、摩耗量の測定結果及び評価結果を示す。
Figure 2016216810
表2に示すように、発明鋼のA−1、B−1、C−1、D−1、E−1、F−1、G−1、H−1、I−1、J−1、K−1、L−1、及び、M−1は、いずれも、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率が1を超え、フェライト粒径が5.0μm以上で、ビッカース硬さが100HV以上180HV以下であり、被切削性と焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れていることが解る。
これに対し、比較鋼N−1は、C量が低く、焼鈍後の硬さが100HV未満であるため、冷間鍛造性が低下するとともに、焼入れ焼戻し後に高強度化されず、耐摩耗特性が低下している。比較鋼O−1、Q−1、S−1、Y−1は、S、P、Al、Nを過剰に含有し、2段目の焼鈍時に、γ/α界面への偏析量が大きくなるため、フェライト粒界における炭化物の生成が抑制されている。
比較鋼P−1は、Siを過剰に含有し、耐摩耗特性が低下している。比較鋼R−1は、Mn量が少なく、焼入れ焼戻し後に硬さの低下を抑えることが困難であったため、焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性が低下している。比較鋼T−1は、S量が少ないため、フェライトと炭化物の界面に濃化するS量が不足し、被切削性及び耐摩耗特性が低下している。
比較鋼U−1は、Mnを過剰に含有するため、ビッカース硬さが180HVを超え、被切削性が低下している。比較鋼V−1は、Cを過剰に含有するため、焼鈍後のフェライト粒径が微細化し、被切削性が低下することに加え、焼入れ焼戻し後にも粗大な炭化物が残存して、耐摩耗特性が低下している。
比較鋼W−1は、Bを過剰に含有するため、フェライトと炭化物界面へのSの濃化が抑制され、被切削性が低下している。比較鋼X−1、Z−1は、O、Tiを過剰に含有するため、フェライト粒内に存在する酸化物、TiCが2相域焼鈍後の徐冷において炭化物の生成サイトとなり、フェライト粒界における炭化物の生成が抑制され、被切削性が低下している。
続いて、製造条件の影響を調べるため、表1に示すA、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、及び、Mの成分組成を有するスラブを用いて、表3に示す熱延条件及び焼鈍条件にて、板厚5.2mmの熱延鋼板焼鈍サンプルを作製し、炭化物径、フェライト粒径、ビッカース硬さ、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率、切削時のモーター電流、及び、摩耗量を測定し評価した。
表4に、炭化物径、フェライト粒径、ビッカース硬さ、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率、切削時のモーター電流、及び、摩耗量の測定結果及び評価結果を示す。
Figure 2016216810
Figure 2016216810
比較鋼E−3は、仕上げ熱延温度が低く、圧延荷重が増加して生産性が低下した。比較鋼D−2は、仕上げ熱延温度が高くて、鋼板表面にスケール疵が生成し、焼入れ焼戻し後に耐摩耗試験に供した際に、スケール疵を起点として亀裂及び剥離が発生して、耐摩耗特性が低下した。
発明鋼F−2は、ROTでの冷却速度が遅く、生産性が低下するとともに、スケール疵が発生した。発明鋼C−4は、ROTでの冷却速度が100℃/秒で、鋼板の最表層部が過剰に冷却されたことにより、最表層部に微細なクラックが生成した。比較鋼K−4は、巻取温度が低く、ベイナイトやマルテンサイト等の低温変態組織が多く生成して脆化したため、熱延コイル払い出し時に割れが頻発し生産性が低下した。さらに、割れ片から採取したサンプルにおける耐摩耗特性は低い。
比較鋼L−2は、巻取温度が高く、熱延組織においてラメラー間隔の分厚いパーライトが生成するとともに、針状の粗大な炭化物の熱的安定性が高く、該炭化物が、2段ステップ型の箱焼鈍後においても、鋼板中に残存するため、被切削性が低下した。比較鋼B−2は、2段ステップ型の箱焼鈍の1段目の焼鈍において、焼鈍温度への加熱速度が遅いため、生産性が低下した。
比較鋼B−3は、1段目の焼鈍において、焼鈍温度への加熱速度が速いため、コイルの内部と外周部の温度差が大きくなり、熱膨張差に起因したスリ疵及び焼付きが発生し、焼入れ焼戻し後に耐摩耗特性の評価試験に供した際に、疵部から亀裂及び剥離が発生し、耐摩耗特性が低下した。
比較鋼A−4は、1段目の焼鈍における保持温度(焼鈍温度)が低く、Ac1点以下での炭化物の粗大化処理が不十分であり、炭化物の熱的安定度が不十分であることにより、2段目の焼鈍において残存する炭化物が減少し、徐冷後の組織において、パーライト変態を抑制できないため、被切削性が低下した。
比較鋼F−4は、1段目の焼鈍における保持温度(焼鈍温度)が高く、焼鈍中にオーステナイトが生成し、炭化物の安定度を高めることができないため、焼鈍後にパーライトが生成し、ビッカース硬さが180HVを超えて、被切削性が低下した。
比較鋼C−3は、1段目の焼鈍における保持時間が短く、炭化物の安定度を高めることができず、被切削性が低下した。比較鋼L−4は、1段目の焼鈍における保持時間が長く、生産性が低下することに加え、焼付き疵が発生し、耐摩耗特性が低下した。比較鋼J−2は、2段ステップ型の箱焼鈍の2段目の焼鈍において、保持温度(焼鈍温度)への加熱速度が遅いため、生産性が低下した。
比較鋼K−3は、2段目の焼鈍における加熱速度が速いため、コイルの内部と外周部の温度差が大きくなり、変態による大きな熱膨張差に起因するスリ疵及び焼付きが発生して、焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性が低下した。比較鋼H−4は、2段目の焼鈍における保持温度(焼鈍温度)が低く、オーステナイトの生成量が少なくて、フェライト粒界における炭化物の個数割合を増やすことができず、被切削性が低下した。
比較鋼G−3は、2段目の焼鈍における保持温度(焼鈍温度)が高く、焼鈍中に炭化物の溶解が促進したため、徐冷後に、粒界炭化物を生成させることが難しくなり、さらに、パーライトが生成し、ビッカース硬さが180HVを超えて、被切削性が低下した。
比較鋼E−2は、2段目の焼鈍における保持時間が短く、微細な炭化物を残した状態で徐冷を開始したため、フェライト粒界への炭化物の生成が抑えられ、粒内の炭化物の割合が高くなって、被切削性が低下した。比較鋼M−2は、2段目の焼鈍における保持時間が長く、炭化物の溶解が促進したため、被切削性が低下した。
比較鋼I−3は、2段目の焼鈍から650℃までの冷却速度が遅く、生産性が低下するとともに、徐冷後の組織に粗大な炭化物が生成して、焼入れ焼戻し後に残存する粗大な炭化物を起点として亀裂が発生し、耐摩耗特性が低下した。比較鋼G−2は、2段目の焼鈍から650℃までの冷却速度が速く、冷却時にパーライト変態が起こり、硬さが増加して、被切削性が低下した。
次に、その他元素の影響を調べるため、表5及び表6(表5の続き)に示す成分組成を有する連続鋳造鋳片(鋼塊)を、1250℃で1.5時間加熱した後、熱間圧延に供し、870℃で仕上げ熱延を完了後、ROT上で40℃/秒の冷却速度で520℃まで冷却し、520℃で巻き取り、板厚4.4mmの熱延コイルを製造した。
熱延コイルを、酸洗後、箱型焼鈍炉内に装入し、雰囲気を95%水素−5%窒素に制御した後、室温から700℃までを80℃/時間の加熱速度で加熱し、700℃で24時間保持して、コイル内の温度分布を均一化し、その後、10℃/時間の加熱速度で745℃まで加熱し、さらに、745℃で6時間保持した後、650℃までを8℃/時間の冷却速度で冷却し、その後、室温まで炉冷して、特性評価用のサンプルを作製した。サンプルの組織は、前述の観察方法で観察し、被切削性は、前述の測定手法によって評価した。
Figure 2016216810
Figure 2016216810
表7に、炭化物径、フェライト粒径、ビッカース硬さ、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率、切削時のモーター電流、及び、摩耗量の測定結果及び評価結果を示す。
Figure 2016216810
表7に示すように、発明鋼AA−1、AB−1、AC−1、AD−1、AE−1、AF−1、AG−1、AH−1、AI−1、AJ−1、AK−1、AL−1、AM−1、AN−1、AO−1、AP−1、AQ−1、AR−1、AS−1、及び、AT−1は、いずれも、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率が1を超え、フェライト粒径が5.0μm以上で、ビッカース硬さが100HV以上180HV以下であり、被切削性と焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れていることが解る。
これに対し、比較鋼AU−1は、C量が低く、焼鈍後の硬さが100HV未満であるため冷間鍛造性が低いとともに、焼入れ焼戻し後に高強度化されず、耐摩耗特性が低い。比較鋼BF−1は、Mn量が少なく、焼入れ焼戻し時に硬さの低下を抑えることが困難であったため、被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性が低下した。比較鋼BG−1は、S量が少ないため、フェライトと炭化物の界面に濃化するS量が不足し、被切削性及び耐摩耗特性が低下した。
比較鋼BL−1、BJ−1、BO−1、BH−1、AW−1、BS−1、BC−1、AY−1、及び、BK−1は、それぞれ、S、P、Al、La、As、Cu、Ni、Sb、Ceを過剰に含有し、2段目の焼鈍において、γ/α界面への偏析量が大きくなるため、フェライト粒界における炭化物の生成が抑制されている。
比較鋼BP−1は、Siを過剰に含有し、耐摩耗特性が低下した。比較鋼AZ−1、BQ−1、BE−1、BN−1、AX−1、及び、BR−1は、それぞれ、Mo、Nb、Cr、Ta、W、Vを過剰に含有するため、被切削性が低下した。比較鋼BM−1は、Mnを過剰に含有するため、焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性が顕著に低下した。
比較鋼BD−1、BB−1、AV−1、及び、BA−1は、それぞれ、Zr、Ca、Mg、Yを過剰に含有し、鋼中に粗大な酸化物又は非金属介在物が生成したことにより、耐摩耗特性の評価試験時に、粗大酸化物又は粗大非金属介在物を起点として亀裂及び剥離が発生し、耐摩耗特性が低下した。
比較鋼BI−1は、Snを過剰に含有し、鋼が脆化したため、耐摩耗特性が低下した。比較鋼BT−1は、Cを過剰に含有するため、焼鈍後のフェライト粒径が微細化し、被切削性が低下することに加え、焼入れ焼戻し後にも粗大な炭化物が残存して、耐摩耗特性が低下した。
続いて、製造条件の影響を調べるため、表5に示すAA、AB、AC、AD、AE、AF、AG、AH、AI、AJ、AK、AL、AM、AN、AO、AP、AQ、AR、AS、及び、ATの成分組成を有するスラブを用いて、表8に示す熱延条件及び焼鈍条件にて板厚5.2mmの熱延鋼板焼鈍サンプルを作製した。
Figure 2016216810
表9に、炭化物径、フェライト粒径、ビッカース硬さ、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率、切削時のモーター電流、及び、摩耗量の測定結果及び評価結果を示す。
Figure 2016216810
比較鋼AC−3は、仕上げ熱延温度が低く、圧延荷重が増加して生産性が低下した。比較鋼AC−2は、仕上げ熱延温度が高く、鋼板表面にスケール疵が生成し、焼入れ焼戻し後に耐摩耗試験に供した際に、スケール疵を起点として亀裂及び剥離が発生して、耐摩耗特性が低下した。
発明鋼AO−2は、ROTでの冷却速度が遅く、生産性が低下し、また、スケール疵が発生した。発明鋼AJ−4は、ROTでの冷却速度が100℃/秒であり、鋼板の最表層部が過剰に冷却されて、最表層部に微細なクラックが生成した。
比較鋼AH−3は、巻取温度が低く、ベイナイトやマルテンサイト等の低温変態組織が多量に生成して脆化し、熱延コイル払出し時に割れが頻発し、生産性が低下した。さらに、割れ片から採取したサンプルにおける耐摩耗特性は低かった。
比較鋼AS−2は、巻取温度が高く、熱延組織において、ラメラー間隔の分厚いパーライトが生成するとともに、針状の粗大な炭化物の熱的安定性が高く、2段ステップ型の箱焼鈍後においても、上記炭化物が鋼板中に残存するため、被切削性が低下した。比較鋼AN−3は、2段ステップ型の箱焼鈍の1段目の焼鈍における保持温度(焼鈍温度)への加熱速度が遅いため、生産性が低下した。
比較鋼AR−3は、1段目の焼鈍における加熱速度が速いため、コイルの内部と外周部の温度差が大きくなり、熱膨張差に起因するスリ疵及び焼付きが発生し、焼入れ焼戻し後に耐摩耗特性の評価試験に供した際に、該疵部から亀裂及び剥離が発生し、耐摩耗特性が低下した。
比較鋼AG−2は、1段目の焼鈍における保持温度(焼鈍温度)が低く、Ac1点以下での炭化物の粗大化処理が不十分であり、炭化物の熱的安定度が不十分であることにより、2段目の焼鈍時に残存する炭化物が減少し、徐冷後の組織において、パーライト変態を抑制できず、被切削性が低下した。
比較鋼AQ−4は、1段目の焼鈍における保持温度(焼鈍温度)が高く、焼鈍中にオーステナイトが生成し、炭化物の安定度を高めることができないため、焼鈍後にパーライトが生成し、ビッカース硬さ180HVを超えて、被切削性が低下した。比較鋼AF−4は、1段目の焼鈍における保持時間が短く、炭化物の安定度を高めることができず、被切削性が低下した。比較鋼AM−2は、1段目の焼鈍における保持時間が長く、生産性が低下することに加え、焼付き疵が発生し、耐摩耗特性が低下した。
比較鋼AG−4は、2段ステップ型の焼鈍の2段目の焼鈍において、保持温度(焼鈍温度)への加熱速度が遅いため、生産性が低下した。比較鋼AF−2は、2段目の焼鈍における加熱速度が速いため、コイルの内部と外周部の温度差が大きくなり、変態による大きな熱膨張差に起因するスリ疵及び焼付きが発生して、焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性が低下した。
比較鋼AB−2は、2段目の焼鈍における保持温度(焼鈍温度)が低く、オーステナイトの生成量が少なく、粒界における炭化物の個数割合を増やすことができず、被切削性が低下した。比較鋼AK−4は、2段目の焼鈍における保持温度(焼鈍温度)が高く、焼鈍中に炭化物の溶解が促進したため、徐冷後に粒界炭化物を形成させることが難しくなり、さらに、パーライトが生成し、ビッカース硬さが180HVを超えて、被切削性が低下した。
比較鋼AT−2は、2段目の焼鈍における保持時間が短く、微細な炭化物を残した状態で徐冷を開始したため、フェライト粒界への炭化物の生成が抑えられ、粒内の炭化物の割合が高くなり、被切削性が低下した。比較鋼AP−2は、2段目の焼鈍における保持時間が長く、炭化物の溶解が促進したため、被切削性が低下した。
比較鋼AI−3は、2段目の焼鈍から650℃までの冷却速度が遅く、生産性が低下するとともに、徐冷後の組織に粗大な炭化物が生成して、焼入れ焼戻し後に残存する粗大な炭化物を起点として亀裂が発生し、耐摩耗特性が低下した。比較鋼AT−4は、2段目焼鈍から650℃までの冷却速度が速く、冷却時にパーライト変態が起こり、硬さが増加して、被切削性が低下した。
ここで、図1に、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率と被切削性の関係を示す。被削性は、被切削性評価時のモーター電流量(A)で評価した。個数比率(=粒界炭化物の個数/粒内炭化物の個数)が1を超えると、モーター電流量は15アンペアを下回り、鋼板の切断に要するエネルギーが低下し、被切削性が向上することが解る。
図2に、フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率と被切削性の別の関係を示す。図2に示す関係は、種々の添加元素を有した鋼板サンプルにおける関係である。被削性は、被切削性評価時のモーター電流量(A)で評価した。図2から、図1と同様に、個数比率(=粒界炭化物の個数/粒内炭化物の個数)が1を超えると、モーター電流量は15アンペアを下回り、鋼板の切断に要するエネルギーが低下し、被切削性が向上することが解る。
図3に、鋼中のS含有量と耐摩耗特性の関係を示す。摩耗量は、ブロックオンリング試験後のブロック試験片の重量減少量である。図3から、S量が0.01%を超えると、潤滑油/鋼板表面に硬いトライボフィルムが形成されて、耐摩耗性が顕著に向上することが解る。
図4に、鋼中のS含有量と耐摩耗特性の別の関係を示す。図4に示す関係は、種々の添加元素を有した鋼板サンプルにおける関係である。摩耗量は、ブロックオンリング試験後のブロック試験片の重量減少量である。図4から、図3と同様に、S量が0.01%を超えると、潤滑油/鋼材表面に硬いトライボフィルムが形成されて、耐摩耗性が顕著に向上することが解る。
前述したように、本発明によれば、被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板及びその製造方法を提供することができる。本発明の低炭素鋼板は、例えば、自動車のギヤー、クラッチ等の駆動系部品を冷間鍛造と切削で製造する際の素材として好適であるので、本発明は、産業上の利用可能性が高いものである。

Claims (3)

  1. 成分組成が、質量%で、
    C :0.10〜0.40%、
    Si:0.01〜0.30%、
    Mn:0.30〜1.00%、
    P :0.0001〜0.020%、
    S :0.010〜0.10%、
    Al:0.001〜0.10%、
    N :0.0001〜0.020%、
    O :0.0001〜0.020%、
    Ti:0.0001〜0.010%、
    B :0〜0.0005%
    を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなり、
    フェライト粒内の炭化物の個数に対するフェライト粒界の炭化物の個数の比率が1を超え、
    フェライト粒径が5.0μm以上であり、
    ビッカース硬さが100HV以上180HV以下である
    ことを特徴とする被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板。
  2. 前記成分組成が、さらに、質量%で、
    Cr:0.001〜0.50%、
    Mo:0.001〜0.50%、
    Nb:0.001〜0.10%、
    V :0.001〜0.10%、
    Cu:0.001〜0.10%、
    W :0.001〜0.10%、
    Ta:0.001〜0.10%、
    Ni:0.001〜0.10%、
    Sn:0.001〜0.050%、
    Sb:0.001〜0.050%、
    As:0.001〜0.050%、
    Mg:0.0001〜0.050%、
    Ca:0.001〜0.050%、
    Y :0.001〜0.050%、
    Zr:0.001〜0.050%、
    La:0.001〜0.050%、
    Ce:0.001〜0.050%の1種又は2種以上を含む
    ことを特徴とする請求項1に記載の被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板。
  3. 請求項1又は2に記載の被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板を製造する製造方法であって、
    請求項1又は請求項2に記載の成分組成の鋼片を、直接、又は、一旦冷却後加熱して、熱間圧延に供し、650℃以上950℃以下の温度域で仕上げ熱延を完了し、400℃以上600℃以下で巻き取った熱延鋼板に、酸洗後、2つの温度域で保持する2段ステップ型の箱焼鈍を施す際、
    (i-1)1段目の焼鈍において、熱延鋼板に、焼鈍温度まで30℃/時間以上150℃/時間以下の加熱速度で加熱し、650℃以上720℃以下の温度域に3時間以上60時間以下保持する焼鈍を施し、
    (i-2)2段目の焼鈍において、熱延鋼板に、焼鈍温度まで1℃/時間以上80℃/時間以下の加熱速度で加熱し、725℃以上790℃以下の温度域に3時間以上50時間以下保持する焼鈍を施し、次いで、
    (ii)焼鈍後の熱延鋼板を、650℃まで、冷却速度1℃/時間以上100℃/時間以下で冷却し、その後、室温まで冷却する
    ことを特徴とする被切削性及び焼入れ焼戻し後の耐摩耗特性に優れる低炭素鋼板の製造方法。
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