JP2016212960A - ポリマー繊維導電線およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐屈曲性に優れ、屈曲使用されても長期間安定した特性を発揮する実用性の高いポリマー繊維導電線を得る。
【解決手段】ポリマー繊維導電線1は、引張強度が250kg/mm2以上の多数のフィラメント21の集合体からなる高強度ポリマー繊維2と、その表面に形成された金属めっき皮膜3からなり、フィラメント21の直径を20μm以下とし、各フィラメント21の表面を覆う無電解銅めっき膜31および電気銅めっき膜32からなる金属めっき皮膜3の平均膜厚を3μm以下とする。
【選択図】図1
【解決手段】ポリマー繊維導電線1は、引張強度が250kg/mm2以上の多数のフィラメント21の集合体からなる高強度ポリマー繊維2と、その表面に形成された金属めっき皮膜3からなり、フィラメント21の直径を20μm以下とし、各フィラメント21の表面を覆う無電解銅めっき膜31および電気銅めっき膜32からなる金属めっき皮膜3の平均膜厚を3μm以下とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、信号線用のポリマー繊維導電線およびその製造方法に関する。
従来の金属線に代わる電線材料として、合成高分子からなる繊維表面に銅めっきを施したポリマー繊維導電線が提案されている。一例として、特許文献1には、高強度繊維に金属めっき処理を行って得た素線を、複数本撚り合わせて導体部とし、絶縁性の被覆部で覆った電線が開示されている。
また、特許文献2には、高強度連続長繊維を含む複合電線の製造方法として、複数の高強度連続長繊維を、離間させつつその位置を保持するステップと、高強度連続長繊維に導電材料からなるめっきを施すステップと、高強度連続長繊維を束ねて連続的に回収するステップを含み、めっきした高強度連続長繊維を撚り合わせた繊維束を形成する方法が開示されている。
ポリマー繊維導電線は、体積当たりの重量が金属線に比べて軽いことから、自動車用機器をはじめ、介護用ロボット・作業支援用のロボットスーツ等、小型軽量化が要求される各種分野への利用が期待される。
しかしながら、ポリマー繊維を構成する多数のフィラメント表面の全体に、均一な金属めっき皮膜を形成することは容易でない。特に、ロボットのアームのような可動部を有する機器では、可動部が繰り返し動作することにより、屈曲部の金属めっき皮膜が劣化するおそれがある。このような用途において、実用上十分な耐久性を有するポリマー繊維導電線は、未だ得られていない。
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、耐屈曲性に優れ、長期に渡って安定した特性を維持できる、実用性の高いポリマー繊維導電線を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、高強度ポリマー繊維と、該高強度ポリマー繊維の表面に形成された金属めっき皮膜からなるポリマー繊維導電線であって、
上記高強度ポリマー繊維は、引張強度が250kg/mm2以上の合成ポリマー繊維からなる多数のフィラメントの集合体であり、上記金属めっき皮膜が、各フィラメントの表面を覆って形成された無電解銅めっき膜および電気銅めっき膜からなるとともに、上記フィラメントの直径が20μm以下かつ上記金属めっき皮膜の平均膜厚が3μm以下であることを特徴とする。
上記高強度ポリマー繊維は、引張強度が250kg/mm2以上の合成ポリマー繊維からなる多数のフィラメントの集合体であり、上記金属めっき皮膜が、各フィラメントの表面を覆って形成された無電解銅めっき膜および電気銅めっき膜からなるとともに、上記フィラメントの直径が20μm以下かつ上記金属めっき皮膜の平均膜厚が3μm以下であることを特徴とする。
本発明の他の態様は、引張強度が250kg/mm2以上の合成ポリマー繊維からなる多数のフィラメントの集合体である高強度ポリマー繊維と、該高強度ポリマー繊維の表面に形成された無電解銅めっき膜および電気銅めっき膜からなる金属めっき皮膜を有するポリマー繊維導電線の製造方法であって、
上記多数のフィラメントの集合体を、湯洗した後、カチオン系界面活性剤を含む溶液で処理する前処理工程と、
上記多数のフィラメントの集合体を、触媒付与液、活性化液および無電解銅めっき液の順に浸漬処理して、前処理した各フィラメントの表面を無電解銅めっき膜で被覆する無電解銅めっき工程と、
上記多数のフィラメントの集合体に、電気銅めっき液中で電気めっきを施して、上記無電解銅めっき膜上に電気銅めっき膜を形成する電気銅めっき工程と、
を備えることを特徴とする。
上記多数のフィラメントの集合体を、湯洗した後、カチオン系界面活性剤を含む溶液で処理する前処理工程と、
上記多数のフィラメントの集合体を、触媒付与液、活性化液および無電解銅めっき液の順に浸漬処理して、前処理した各フィラメントの表面を無電解銅めっき膜で被覆する無電解銅めっき工程と、
上記多数のフィラメントの集合体に、電気銅めっき液中で電気めっきを施して、上記無電解銅めっき膜上に電気銅めっき膜を形成する電気銅めっき工程と、
を備えることを特徴とする。
本発明のポリマー繊維導電線は、高強度の合成ポリマー繊維を用い、20μm以下の極細の各フィラメントの表面を3.0μm以下の極薄の金属めっき皮膜で覆った集合体とすることで、導電線の初期特性を確保しつつ、耐屈曲性を高めることができる。
したがって、長期使用による抵抗値の増大が抑制され、屈曲部や可動部を有する各種機器用の信号線にも好適に使用されて、実用上十分な耐久性を実現する。
このようなポリマー繊維導電線の製造方法として、金属めっき皮膜の形成に先立って、湯洗とカチオン系界面活性剤による前処理を行うと、各フィラメントの表面全体に無電解銅めっき膜を形成し、続く工程において電気銅めっき膜を均等に形成することができる。
よって、本発明によれば、ポリマー繊維導電線の金属めっき皮膜の耐屈曲性を改善し、屈曲部や繰り返し屈曲動作する可動部に使用可能な実用性の高い信号線材料が得られる。
(実施形態1)
図1は、本形態のポリマー繊維導電線1の概略構造を示しており、高強度ポリマー繊維2は、多数のフィラメント21の集合体からなる。合成ポリマーの単繊維である各フィラメント21は、その外周表面の全面が金属めっき皮膜3で被覆されており、これら被覆繊維を束状に多数集合させてポリマー繊維導電線1とする。金属めっき皮膜3は、フィラメント21側から、無電解銅めっき膜31と電気銅めっき膜32の2層構造となっている。
図1は、本形態のポリマー繊維導電線1の概略構造を示しており、高強度ポリマー繊維2は、多数のフィラメント21の集合体からなる。合成ポリマーの単繊維である各フィラメント21は、その外周表面の全面が金属めっき皮膜3で被覆されており、これら被覆繊維を束状に多数集合させてポリマー繊維導電線1とする。金属めっき皮膜3は、フィラメント21側から、無電解銅めっき膜31と電気銅めっき膜32の2層構造となっている。
高強度ポリマー繊維2を構成する繊維は、引張強度が250kg/mm2以上の合成ポリマー繊維であり、好適には、引張強度が300kg/mm2以上であることが好ましい。このような合成ポリマー繊維としては、例えば、ポリアリレート繊維、パラ系アラミド繊維等が挙げられる。ポリアリレート繊維およびパラ系アラミド繊維は、高強度・高弾性率の繊維であり、金属に対し低比重であることから、ポリマー繊維導電線1の軽量化と耐久性の向上に寄与する。合成ポリマー繊維からなる各フィラメント21は、微細径、特に直径20μm以下とし、ポリマー繊維導電線1の断面積に対する繊維表面積を大きくして、金属めっき皮膜3の膜厚を小さくしても、必要な抵抗値特性が確保できるようにする。
金属めっき皮膜3は、無電解銅めっき膜31と電気銅めっき膜32を合わせた平均膜厚が3.0μm以下、好適には、1.0〜2.0μmの範囲となるように、めっき条件等を調整する。平均膜厚が3.0μmを超えると、初期抵抗値は低くなるが繰り返し屈曲動作による抵抗値変化が大きくなり、耐屈曲性が低下する。平均膜厚が薄いほど耐屈曲性が向上する傾向にあり、2.0μm以下で顕著となるが、1.0μmを下回ると初期抵抗値が上昇し、均一なめっき膜の形成が容易でないので、好ましくない。
その理由は、必ずしも明らかではないが、極細のフィラメントは断面形状が均一ではないことから、一定膜厚のめっき膜を密着性よく形成することは容易でなく、めっき膜厚が大きくなると、屈曲時に内側と外側に加わる応力差の影響が大きくなるおそれがある。平均膜厚が3.0μmを超えると、柔軟性が低下し、ばらつきも大きくなって、屈曲時に荷重が一部に集中しやすくなると推測される。
ポリマー繊維導電線1は、多数のフィラメント21が繊維長手方向に整列する繊維束として、例えば信号線用電線の心線に使用される。具体的には、必要な抵抗値特性に応じて、通常数百本程度のフィラメント21を集合させ、適宜撚りを与えて、直径数mm程度のポリマー繊維導電線1としたものを心線とする。その外周全面をさらに絶縁性樹脂で被覆して信号線用電線とすればよい。
図2は、ポリマー繊維導電線1の製造工程の一例を示しており、前処理工程と、無電解銅めっき工程と、電気銅めっき工程と、後処理工程とを備える。後処理工程は、省略することもできる。
(前処理工程)
前処理工程は、高強度ポリマー繊維2となる繊維束を湯洗する処理と、カチオン系界面活性剤の溶液に浸漬する処理を含む。予め湯洗処理を行うことで、繊維を柔らかくして開繊を容易にし、多数のフィラメント21がほぐれた状態で、続くカチオン系界面活性剤処理を行うことができる。湯洗温度は、通常、40〜80℃の範囲で適宜選択することができる。
前処理工程は、高強度ポリマー繊維2となる繊維束を湯洗する処理と、カチオン系界面活性剤の溶液に浸漬する処理を含む。予め湯洗処理を行うことで、繊維を柔らかくして開繊を容易にし、多数のフィラメント21がほぐれた状態で、続くカチオン系界面活性剤処理を行うことができる。湯洗温度は、通常、40〜80℃の範囲で適宜選択することができる。
カチオン系界面活性剤は、特に制限されず、例えば、第四級アンモニウム塩等、公知のものが使用される。カチオン系界面活性剤を含む溶液は、湯洗温度と同等の温度に加温され、適度にpH調整されて使用される。
カチオン系界面活性剤で処理することの効果は、必ずしも明らかではないが、湯洗したフィラメント表面に吸着したカチオン系界面活性剤により、繊維表面の柔軟性、平滑性等が向上する。そのため、後工程において、多数のフィラメント21間に触媒溶液が侵入しやすくなり、繊維表面に均等に触媒付与されて、無電解銅めっきが良好に進行し、未着部分が生じるのを防止すると推測される。
(無電解銅めっき工程)
無電解銅めっき工程において、前処理したポリマー繊維導電線1は、触媒付与液、活性化液および無電解銅めっき液の順に浸漬処理される。触媒付与液は、Pd等の貴金属化合物を含む水溶液であり、各フィラメント21の表面に吸着担持された貴金属イオンは、次亜リン酸塩等の活性化液に浸漬されることで活性化(還元)される。その後、公知の無電解銅めっき液に浸漬することで、活性化された触媒により各フィラメント21の表面に銅が析出し、無電解銅めっき膜31が形成される。
無電解銅めっき工程において、前処理したポリマー繊維導電線1は、触媒付与液、活性化液および無電解銅めっき液の順に浸漬処理される。触媒付与液は、Pd等の貴金属化合物を含む水溶液であり、各フィラメント21の表面に吸着担持された貴金属イオンは、次亜リン酸塩等の活性化液に浸漬されることで活性化(還元)される。その後、公知の無電解銅めっき液に浸漬することで、活性化された触媒により各フィラメント21の表面に銅が析出し、無電解銅めっき膜31が形成される。
(電気銅めっき工程)
電気銅めっき工程において、ポリマー繊維導電線1を硫酸等の活性化液に浸漬して、表面を活性化処理し、さらに、公知の電気銅めっき液中にて通電する電気めっきを行う。これにより、無電解銅めっき工程で析出した銅を核として、電気銅めっき膜32が形成され、高強度ポリマー繊維2の各フィラメント21がそれぞれ金属めっき皮膜3で覆われたポリマー繊維導電線1が得られる。活性化液による処理は、無電解銅めっき工程後に引き続いて電気銅めっき工程を実施し、繊維表面と空気の接触時間が短い場合には、省略することもできる。
電気銅めっき工程において、ポリマー繊維導電線1を硫酸等の活性化液に浸漬して、表面を活性化処理し、さらに、公知の電気銅めっき液中にて通電する電気めっきを行う。これにより、無電解銅めっき工程で析出した銅を核として、電気銅めっき膜32が形成され、高強度ポリマー繊維2の各フィラメント21がそれぞれ金属めっき皮膜3で覆われたポリマー繊維導電線1が得られる。活性化液による処理は、無電解銅めっき工程後に引き続いて電気銅めっき工程を実施し、繊維表面と空気の接触時間が短い場合には、省略することもできる。
(後処理工程)
好適には、得られたポリマー繊維導電線1を、さらに加熱処理することで、耐屈曲性をより高めることができる。加熱温度は、高強度ポリマー繊維2の強度低下を抑制するために、使用する合成ポリマー繊維に応じて適宜設定される。例えば、ポリアリレート繊維であればその軟化点(320℃)より低い温度とする。好適には、加熱処理時の表面酸化による抵抗値の上昇を抑制可能な温度、例えば250℃以下とするのがよい。
好適には、得られたポリマー繊維導電線1を、さらに加熱処理することで、耐屈曲性をより高めることができる。加熱温度は、高強度ポリマー繊維2の強度低下を抑制するために、使用する合成ポリマー繊維に応じて適宜設定される。例えば、ポリアリレート繊維であればその軟化点(320℃)より低い温度とする。好適には、加熱処理時の表面酸化による抵抗値の上昇を抑制可能な温度、例えば250℃以下とするのがよい。
後処理工程は、大気中で加熱することで実施されるが、還元性雰囲気中で行うこともできる。還元性雰囲気、例えば、水素または窒素ガス雰囲気中で加熱することで、後処理による金属めっき皮膜3の表面酸化を防止できる。
図2の製造工程に従って、高強度ポリマー繊維2の表面に金属めっき皮膜3を形成し、得られたポリマー繊維導電線1に、屈曲耐久試験を行って、その特性の評価を行った。
(試験例1)
図2の製造工程に従って、高強度ポリマー繊維2のフィラメント21の表面を金属めっき皮膜3で覆ったポリマー繊維導電線1を製造した。高強度ポリマー繊維2として、市販のポリアリレート繊維(株式会社クラレ製 ベクトラン(登録商標);引張強度330kg/mm2、フィラメント直径16〜17μm、1670dtex、600〜601本)を用い、各工程は、表2、3に示す処理条件で行った。
図2の製造工程に従って、高強度ポリマー繊維2のフィラメント21の表面を金属めっき皮膜3で覆ったポリマー繊維導電線1を製造した。高強度ポリマー繊維2として、市販のポリアリレート繊維(株式会社クラレ製 ベクトラン(登録商標);引張強度330kg/mm2、フィラメント直径16〜17μm、1670dtex、600〜601本)を用い、各工程は、表2、3に示す処理条件で行った。
まず、前処理工程として、高強度ポリマー繊維2を60℃で10分間湯洗した後、カチオン系界面活性剤(日華化学株式会社製 ネオフィックスR−800)の溶液(濃度40g/L、pH11、60℃)に、5分間浸漬処理した。
次いで、無電解銅めっき工程として、Pdイオンを含む触媒付与液(奥野製薬工業株式会社製 OPC−50インデューサーA;濃度50ml/L、OPC−50インデューサーC;濃度50ml/L、pH12、40℃)を調整し、前処理した高強度ポリマー繊維2を、5分間浸漬した後、次亜塩酸ナトリウム溶液(濃度50g/L、60℃)に、5分間浸漬して活性化処理した。その後、無電解銅めっき液(奥野製薬工業株式会社製 OPCカッパー−AF−M;濃度150ml/L、OPCカッパー−AF−1;濃度100ml/L、OPCカッパー−AF−2;濃度40ml/L、pH9.5、50℃)中に、10分間浸漬し、無電解銅めっき膜31を形成した。
さらに、電気銅めっき工程として、硫酸溶液(濃度3%、常温)に、5分間浸漬して活性化処理した後、25℃の電解銅めっき液(硫酸銅70g/L、硫酸200g/L、塩素イオン50mg/L、奥野製薬工業株式会社製 トップルチナメークアップ5ml/L、トップルチナLS−A2.5ml/L、トップルチナLS−B1.0ml/L)中に投入して10分間通電、電気銅めっき膜32を形成した。
電気銅めっき工程の通電量を調整することにより、金属めっき皮膜3の平均膜厚を、1.6μm(試料2、5)、3.0μm(試料3、6)、6.0μm(試料4、7)と変更したポリマー繊維導電線1を得た。ここで、平均膜厚は、金属めっき皮膜3の形成前後の重量と、高強度ポリマー繊維2の表面積から算出される数値とする。このうち、試料2〜4には、撚り線加工を施しており(50回/m)、試料5〜7は撚り線加工無しとした。
これら試料2〜7をそれぞれ複数用意し(n=3〜4)、MIT型耐折度試験機を用いた屈曲耐久試験を行った。図3に示すように、50cm長さの試料Sを吊り下げて上端を固定し、下端を回転板100に設けたチャック部101で両側から把持して、回転板100を所定角度で回転往復動作させ、所定の荷重を加えた状態で試料Sを左右に折り曲げる動作を繰り返した。試験条件は、以下の通りとした。
荷重:250g
折り曲げ角度:90°
折り曲げ回数:90回/分
チャック幅:1.0mm
各試料2〜7について、試験中の抵抗値変化を測定し、銅線の電気抵抗が1Ω/50cmを超えるまでの屈曲回数で評価した。結果を、初期抵抗値(Ω/50cm)とともに表1に示す。また、試料2、3、5、6、7の抵抗値変化を、図5〜9に示した。
荷重:250g
折り曲げ角度:90°
折り曲げ回数:90回/分
チャック幅:1.0mm
各試料2〜7について、試験中の抵抗値変化を測定し、銅線の電気抵抗が1Ω/50cmを超えるまでの屈曲回数で評価した。結果を、初期抵抗値(Ω/50cm)とともに表1に示す。また、試料2、3、5、6、7の抵抗値変化を、図5〜9に示した。
(比較例1)
比較のため、従来の電線材料である銅線(直径400μm×7本)について、試験例1と同様にして、MIT型耐折度試験機を用いた屈曲耐久試験を行った(試料1)。結果を、初期抵抗値(Ω/50cm)とともに表1に示す。
比較のため、従来の電線材料である銅線(直径400μm×7本)について、試験例1と同様にして、MIT型耐折度試験機を用いた屈曲耐久試験を行った(試料1)。結果を、初期抵抗値(Ω/50cm)とともに表1に示す。
(評価)
表1に明らかなように、試料1(n=3)の屈曲回数は260〜458といずれも500回以下で抵抗値が1Ω/50cmを超えた。また、試料1の7本の銅線全てが断線した。図4に示すように、いずれも断線する直前までは、ほぼ初期抵抗値と同等であり、その後、抵抗値が急上昇して断線に至っている。
表1に明らかなように、試料1(n=3)の屈曲回数は260〜458といずれも500回以下で抵抗値が1Ω/50cmを超えた。また、試料1の7本の銅線全てが断線した。図4に示すように、いずれも断線する直前までは、ほぼ初期抵抗値と同等であり、その後、抵抗値が急上昇して断線に至っている。
従来の銅線を用いた試料1に対し、ポリマー繊維導電線1を用いた試料2〜7では、抵抗値が1Ωを超えるまでの屈曲回数がいずれも5000回以上と、試料1の10倍以上の耐久性を示した。また、平均膜厚6.0μmの試料4(4−1〜4−4;撚り有)の屈曲回数5799〜8370に対し、平均膜厚3.0μmの試料3(3−1〜3−4;撚り有)は、屈曲回数8278〜11164、1.6μmの試料2(2−1〜2−3;撚り有)は、屈曲回数11939〜16669と、金属めっき皮膜3の平均膜厚が薄くなるほど、屈曲回数が増加している。
この傾向は、撚り無しの試料5〜7でも同様であり、平均膜厚1.6μmの試料5(5−1〜5−3)は、屈曲回数26318〜115419、平均膜厚3.0μmの試料6(6−1〜6−3)は、屈曲回数11318〜15796、6.0μmの試料7(7−1〜7−3)は、屈曲回数5573〜5995と、特に、金属めっき皮膜3の平均膜厚が3.0μm以下であると、屈曲回数が10000回前後ないしそれ以上となり、耐屈曲性が大幅に向上する。
また、平均膜厚3.0μm以下では(図5〜8参照)、平均膜厚6.0μmの試料7(図9参照)において、抵抗値が急増する屈曲回数5000前後となっても、初期抵抗値からの抵抗変化やばらつきが小さく、良好な抵抗値特性が得られる。なお、平均膜厚3.0μm以下において、撚り無の試料5、6の方がやや屈曲回数が多くなる傾向が見られ、撚り有の試料2、3では撚りによる応力の影響で屈曲回数が低下したものと推察される。
図10は、試料5(平均膜厚1.6μm)のポリマー繊維導電線1を樹脂に埋設して作成したサンプルの切断面(SEM像)であり、高強度ポリマー繊維2の各フィラメント21外周全体を覆って、金属めっき皮膜3が均一に形成されていることがわかる。
(試験例2)
次に、試料2、3と同様にして、高強度ポリマー繊維2に金属めっき皮膜3を形成した後に、後処理工程として、加熱処理(200℃、3時間)を行い、ポリマー繊維導電線1を得た(試料8、9)。複数の試料8、9(n=3〜5)について、それぞれ同様の屈曲耐久試験による評価を行い、結果を表4に示した。また、試料9の抵抗値変化を、図11に示した。
次に、試料2、3と同様にして、高強度ポリマー繊維2に金属めっき皮膜3を形成した後に、後処理工程として、加熱処理(200℃、3時間)を行い、ポリマー繊維導電線1を得た(試料8、9)。複数の試料8、9(n=3〜5)について、それぞれ同様の屈曲耐久試験による評価を行い、結果を表4に示した。また、試料9の抵抗値変化を、図11に示した。
(評価)
表4、図11に明らかなように、熱処理工程を付加することで、試料8(8−1〜8−3;平均膜厚1.6μm)の屈曲回数は12920〜35680、試料9(9−1〜9−5;平均膜厚3.0μm)の屈曲回数は14259〜34098と、熱処理しない試料2、3よりも増加しており、耐屈曲性が向上している。
表4、図11に明らかなように、熱処理工程を付加することで、試料8(8−1〜8−3;平均膜厚1.6μm)の屈曲回数は12920〜35680、試料9(9−1〜9−5;平均膜厚3.0μm)の屈曲回数は14259〜34098と、熱処理しない試料2、3よりも増加しており、耐屈曲性が向上している。
なお、屈曲耐久試験において、試料2〜9のポリマー繊維導電線1の抵抗値の測定を続けたところ、いずれも1Ω/50cmを超えた後、徐々に増加を続けるものの、比較例1の銅線のように断線することはなかった。
(比較例2)
さらに、前処理工程の効果を確認するため、カチオン系界面活性剤による処理を実施しない以外は、試料5と同様にして、高強度ポリマー繊維2に金属めっき皮膜3を形成したポリマー繊維導電線1を得た(試料10)。図12のように、試料10の表面を観察したところ、部分的に金属めっき皮膜3が形成されていない部位(白抜き)があり、カチオン系界面活性剤を使用しない場合、無電解銅めっき時に未着部分が生じ、電気銅めっきが良好になされないことが判明した。
さらに、前処理工程の効果を確認するため、カチオン系界面活性剤による処理を実施しない以外は、試料5と同様にして、高強度ポリマー繊維2に金属めっき皮膜3を形成したポリマー繊維導電線1を得た(試料10)。図12のように、試料10の表面を観察したところ、部分的に金属めっき皮膜3が形成されていない部位(白抜き)があり、カチオン系界面活性剤を使用しない場合、無電解銅めっき時に未着部分が生じ、電気銅めっきが良好になされないことが判明した。
以上により、本発明によるポリマー繊維導電線1は、微細な合成ポリマー繊維フィラメント21の表面に、均質な薄膜の金属めっき皮膜3が形成されることにより、高い強度と耐屈曲性を備え、従来の電線材料にない耐久性を実現する。合成ポリマー繊維としては、実施例で使用したポリアリレート繊維や、パラ系アラミド繊維(例えば、東レ・デュポン株式会社製 ケブラー(登録商標)等)の他、同等の物性を有する繊維であれば、いずれも好適に用いることができる。
1 ポリマー繊維導電線
2 高強度ポリマー繊維
21 フィラメント
3 金属めっき皮膜
31 無電解銅めっき膜
32 電気銅めっき膜
2 高強度ポリマー繊維
21 フィラメント
3 金属めっき皮膜
31 無電解銅めっき膜
32 電気銅めっき膜
Claims (6)
- 高強度ポリマー繊維と、該高強度ポリマー繊維の表面に形成された金属めっき皮膜からなるポリマー繊維導電線であって、
上記高強度ポリマー繊維は、引張強度が250kg/mm2以上の合成ポリマー繊維からなる多数のフィラメントの集合体であり、上記金属めっき皮膜が、各フィラメントの表面を覆って形成された無電解銅めっき膜および電気銅めっき膜からなるとともに、上記フィラメントの直径が20μm以下かつ上記金属めっき皮膜の平均膜厚が3μm以下であることを特徴とするポリマー繊維導電線。 - 上記高強度ポリマー繊維は、ポリアリレート繊維からなる請求項1に記載のポリマー繊維導電線。
- 上記金属めっき皮膜は、無電解銅めっき膜上に電気銅めっき膜を形成したものを、加熱処理してなる請求項1または2に記載のポリマー繊維導電線。
- 上記高強度ポリマー繊維は、カチオン系界面活性剤で前処理されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載のポリマー繊維導電線。
- 引張強度が250kg/mm2以上の合成ポリマー繊維からなる多数のフィラメントの集合体である高強度ポリマー繊維と、該高強度ポリマー繊維の表面に形成された無電解銅めっき膜および電気銅めっき膜からなる金属めっき皮膜を有するポリマー繊維導電線の製造方法であって、
上記多数のフィラメントの集合体を、湯洗した後、カチオン系界面活性剤を含む溶液で処理する前処理工程と、
上記多数のフィラメントの集合体を、触媒付与液、活性化液および無電解銅めっき液の順に浸漬処理して、前処理した各フィラメントの表面を無電解銅めっき膜で被覆する無電解銅めっき工程と、
上記多数のフィラメントの集合体に、電気銅めっき液中で電気めっきを施して、上記無電解銅めっき膜上に電気銅めっき膜を形成する電気銅めっき工程と、
を備えることを特徴とするポリマー繊維導電線の製造方法。 - 上記電気銅めっき工程の後に、上記多数のフィラメントの集合体を、250℃以下の温度で加熱処理する後処理工程を備える請求項5に記載のポリマー繊維導電線の製造方法。
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