JP2016210914A - 重合体、及び、該重合体の製造方法 - Google Patents
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Description
ここで得られる硬化物の物理的性質は、架橋密度に大きく影響される。該架橋密度は、架橋性官能基を有する重合体中の架橋性官能基同士の距離(架橋点間距離)に大きく依存する。即ち、架橋点間距離が大きいと架橋密度が低い硬化物が得られ、架橋点間距離が小さい架橋密度の高い硬化物が得られる。従って、架橋性官能基を有する重合体における架橋点間距離は、得られる硬化物の物理的性質を決める重要な要素である。
このように従来の架橋性官能基を有する重合体では、架橋点間距離が硬化物の物理的性質を決める重要な要素であるにもかかわらず、架橋点間距離を制御することが困難であるという問題があった。
Y1乃至Yn+1は、有っても無くてもよく、有る場合は目的とする官能基を含まない(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する重合成分を表し、
R1乃至Rnは、目的とする官能基を含む基を表し(R1乃至Rnに含まれる目的とする官能基は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい)、
Raは、水素又はメチル基を表し、
mは、1以上の整数を表し、
nは、1以上の整数を表す。
Y1乃至Yn+1は、有っても無くてもよく、有る場合は目的とする官能基を含まない(メタ)アクリル酸エステルモノマーに由来する重合成分を表し、
R1乃至Rnは、目的とする官能基を含む基を表し(R1乃至Rnに含まれる目的とする官能基は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい)、
Raは、水素又はメチル基を表し、
Rbは、塩素原子を含まない基を表し、
mは、1以上の整数を表し、
nは、1以上の整数を表す。
本発明者らは、鋭意検討の結果、このような反応を利用することにより、目的とする官能基を任意の位置に配置した重合体が得られることを見出し、本発明を完成した。
上記一般式(1)においてmは、原料となる上記重合開始点に重合開始剤に含まれる塩素原子を有する重合開始点の数に対応する数であり、1以上の整数を表す。
なお、Zは塩素原子を含まない基であれば特に限定されず、目的とする官能基を含んでいてもよく、含まなくてもよい。また、Rc、Rd、Re、Rfは、目的とする官能基を含んでいてもよく、含まなくともよい。
Y1乃至Yn+1が無い、又は、有っても目的とする官能基を含まないことにより、重合体中に含まれる目的とする官能基は、R1乃至Rn中のみ、又は、中央のXとR1乃至Rn中のみに含まれることとなる。従って、Y1乃至Yn+1の鎖長を調整したりすることにより、重合体中の目的とする官能基の位置を容易に制御することができる。
上記(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
上記官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーや、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーや、ヒドロキシエチルアクリルアミド、イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等のアミド基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリル酸エステルモノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、α−クロロエステルの反応性の観点から、アクリル酸エステルモノマーを用いることが好ましい。(即ち、上記一般式(1)においてRaは、水素であることが好ましい。)
なお、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。具体的には例えば、重合体をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルターで濾過し、得られた濾液を用いてGPC法によりポリスチレン換算分子量として測定することができる。GPC法では、例えば、2690 Separations Model(Waters社製)等を使用できる。
本発明1の重合体は、末端に塩素原子が結合した構造を有するが、用途によっては塩素が悪影響を及ぼす可能性がある。本発明2の重合体は、本発明1の重合体の末端の塩素原子を、塩素原子を含まない基であるRbで置換した構造を有するものである。
上記一般式(2)中のRbは、塩素原子を含まない基であれば特に限定されず、水素、アルキル基、アリール基等が挙げられる。なおRbは、目的とする官能基を含んでいてもよく、含まなくてもよい。
このような重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
リビングラジカル重合法は、重合反応が停止反応又は連鎖移動反応等の副反応で妨げられることなく分子鎖が生長していく重合方法である。リビングラジカル重合法によれば、例えばフリーラジカル重合法等と比較してより均一な分子量及び組成を有する重合体が得られることから、より精密に反応点間距離を制御することができる。
上記金属塩化物触媒は、必要に応じてビピリジン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン等の配位子と組み合わせて用いてもよい。
上記リビングラジカル重合法において重合溶媒を用いる場合、該重合溶媒は特に限定されず、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、トルエン、キシレン等の非極性溶媒や、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド等の高極性溶媒を用いることができる。これらの重合溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、重合温度は、重合速度の観点から−40〜110℃が好ましい。
このように、重合鎖の伸長と選択的アミド化反応を繰り返すことにより、目的とする官能基を複数、任意の位置に有する重合体を得ることができる。
即ち、重合体(n−1)に、目的とする官能基を含まない(メタ)アクリル酸エステルモノマーをフッ素系アルコールを含有する溶媒の存在下で、金属塩化物触媒を用いて重合して重合体前駆体(n)を得る工程と、得られた重合体前駆体(n)の末端の塩素が結合したエステル単位のみにRnNH2を反応させて重合体(n)を得る工程を行うことにより、本発明1の重合体を製造することができる。
なお、重合体の端部付近にYn+1を有する重合体を得る場合には、重合体前駆体(n+1)を得た後、該重合体前駆体(n+1)に対して末端の塩素が結合したエステル単位をRn+1NH2と反応させる工程を省略すればよい。
充分乾燥させたガラス製コック付フラスコに、触媒として塩化銅(I)(アルドリッチ社製)0.233g(2.36mmol)、配位子としてトリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン(東京化成工業社製)0.63mL(2.36mmol)、脱水したヘキサフルオロイソプロパノール(和光純薬工業社製)13.2mLを加え、0℃で60分間撹拌した。
反応容器を−20℃に冷却し、蒸留精製した2−メトキシエチルアクリレート(東京化成工業社製)15.1mL(118mmol)、及び、開始剤として2−クロロ−N−イソプロピルプロパンアミド0.353g(2.36mmol)を窒素気流下で加えて重合を開始した。
重合溶液をトルエンで希釈し、0.1N塩酸水溶液で洗浄することで触媒を除去し、有機相の溶媒を減圧留去した後、ヘキサンに再沈後、充分に乾燥して、開始末端にN−イソプロピルアミド、生長末端に塩素原子を有する2−メトキシエチルアクリレート重合体(A1)を6.2g得た。
得られたMALDI−TOF−MSスペクトルをもとに決定した2−メトキシエチルアクリレート重合体(A1)の構造を表1に示した。
実施例1で得られた2−メトキシエチルアクリレート重合体(A1)1.5gに、0℃でベンジルアミン65mLを加えることで、α−クロロエステルのみをN−ベンジルアミド化した。90時間反応後の反応率は100%であった。
反応溶液をトルエンで希釈後、0.1N塩酸水溶液及び蒸留水で洗浄することで、過剰のベンジルアミンを除去した後、有機相の溶媒を減圧留去した後、ヘキサンに再沈後、充分に乾燥して、開始末端にN−イソプロピルアミド、生長末端にN−ベンジルアミドを有する2−メトキシエチルアクリレート重合体(A2)を1.27g得た。
また、得られた2−メトキシエチルアクリレート重合体(A2)のMALDI−TOF−MSスペクトルを図1に示し、該MALDI−TOF−MSスペクトルをもとに決定した2−メトキシエチルアクリレート重合体(A2)の構造を表1に示した。
実施例1において、重合温度を0℃に変更した以外は、実施例1と同様にして反応を行った。3.5時間反応後、2−メトキシエチルアクリレートの反応率は42%であった。
重合溶液をトルエンで希釈し、0.1N塩酸水溶液で洗浄することで触媒を除去、有機相の溶媒を減圧留去した後、ヘキサンに再沈後、充分に乾燥して、開始末端にN−イソプロピルアミド、生長末端に塩素原子を有する2−メトキシエチルアクリレート重合体(A3)を6.8g得た。
また、得られた2−メトキシエチルアクリレート重合体(A3)のMALDI−TOF−MSスペクトルを図2に示し、該MALDI−TOF−MSスペクトルをもとに決定した2−メトキシエチルアクリレート重合体(A3)の構造を表1に示した。
実施例3で得られた2−メトキシエチルアクリレート重合体(A3)1.5gに、0℃でプロパルギルアミン29mLを加えることで、α−クロロエステルのみをN−プロパルギルアミド化した。70時間反応後の反応率は100%であった。
反応溶液をトルエンで希釈後、0.1N塩酸水溶液及び蒸留水で洗浄することで、過剰のプロパルギルアミンを除去した後、有機相の溶媒を減圧留去した後、ヘキサンに再沈後、充分に乾燥して、開始末端にN−イソプロピルアミド、生長末端にN−プロパルギルアミドを有する2−メトキシエチルアクリレート重合体(A4)を1.27g得た。
また、得られた2−メトキシエチルアクリレート重合体(A4)のMALDI−TOF−MSスペクトルを図2に示し、該MALDI−TOF−MSスペクトルをもとに決定した2−メトキシエチルアクリレート重合体(A4)の構造を表1に示した。
充分乾燥させたガラス製コック付フラスコに、触媒として塩化銅(I)(アルドリッチ社製)0.041g(0.41mmol)、配位子としてトリス[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミン(東京化成工業社製)0.11mL(0.41mmol)、脱水したヘキサフルオロイソプロパノール(和光純薬工業社製)1.0mLを加え、0℃で60分撹拌した。
反応容器を0℃に冷却し、実施例4で得られた2−メトキシエチルアクリレート重合体(A4)1.24g(0.37mmol)、及び、蒸留精製した2−メトキシエチルアクリレート(東京化成工業社製)2.37mL(18.5mmol)を窒素気流下で加えて重合を開始した。
重合溶液をトルエンで希釈し、0.1N塩酸水溶液で洗浄することで触媒を除去、有機相の溶媒を減圧留去した後、ヘキサンに再沈後、充分に乾燥して、開始末端にN−イソプロピルアミド、高分子鎖中にN−プロパルギルアミド、生長末端に塩素原子を有する2−メトキシエチルアクリレート重合体(A5)を1.2g得た。
また、得られた2−メトキシエチルアクリレート重合体(A5)のMALDI−TOF−MSスペクトルを図3に示し、該MALDI−TOF−MSスペクトルをもとに決定した2−メトキシエチルアクリレート重合体(A5)の構造を表1に示した。
実施例5で得られた2−メトキシエチルアクリレート重合体(A5)0.16gに、0℃でベンジルアミン5.2mLを加えることで、α−クロロエステルのみをN−ベンジルアミド化した。350時間反応後の反応率は100%であった。
反応溶液をトルエンで希釈後、0.1N塩酸水溶液及び蒸留水で洗浄することで、過剰のベンジルアミンを除去した後、有機相の溶媒を減圧留去した後、ヘキサンに再沈後、充分に乾燥して、開始末端にN−イソプロピルアミド、高分子鎖中にN−プロパルギルアミド、生長末端にN−ベンジルアミドを有する2−メトキシエチルアクリレート重合体(A6)を1.27g得た。
また、得られた2−メトキシエチルアクリレート重合体(A6)のMALDI−TOF−MSスペクトルを図3に示し、該MALDI−TOF−MSスペクトルをもとに決定した2−メトキシエチルアクリレート重合体(A6)の構造を表1に示した。
Claims (5)
- 請求項1記載の重合体を製造する方法であって、少なくとも、
目的とする官能基を含まない(メタ)アクリル酸エステルモノマーを、目的とする官能基を含む又は含まない、重合開始点に塩素原子を有する重合開始剤と金属塩化物触媒を用いて重合して重合体前駆体(1)を得る工程と、
得られた重合体前駆体(1)の末端の塩素が結合したエステル単位のみにR1NH2を反応させて重合体(1)を得る工程を有する
ことを特徴とする重合体の製造方法。 - 重合体(n−1)に、目的とする官能基を含まない(メタ)アクリル酸エステルモノマーを、フッ素系アルコールを含有する溶媒の存在下で、金属塩化物触媒を用いて重合して重合体前駆体(n)を得る工程と、
得られた重合体前駆体の末端の塩素が結合したエステル単位のみにRnNH2を反応させて重合体(n)を得る工程を有する(ただし重合体前駆体(n+1)に対しては、末端の塩素が結合したエステル単位をRn+1NH2と反応させる工程を省略してもよい)
ことを特徴とする請求項3記載の重合体の製造方法。 - 請求項2記載の重合体を製造する方法であって、
請求項3又は4記載の重合体の製造方法により得られた重合体の末端の塩素原子を、塩素原子を含まない基に置換する工程を有する
ことを特徴とする重合体の製造方法。
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