JP2016198894A - 液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法、及び、液体吐出装置の制御プログラム - Google Patents

液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法、及び、液体吐出装置の制御プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】吐出状態を判定できるか否か把握できる技術を提供する。
【解決手段】第1電極201の電位と第2電極202の電位との電位差に応じて変位する圧電素子200と、液体を充填可能であり、圧電素子の変位に応じて容積を変化させる圧力室と、圧力室に連通し、圧力室に液体が充填されている場合において、第1電極に駆動信号が供給された際に生じる圧力室の容積の変化に応じて、圧力室に充填された液体を吐出可能なノズルと、第1電極の電位を検出し、検出結果に基づいて検出信号Vdを生成可能な検出部33と、第1電極に駆動信号が供給された場合において、検出部が生成する検出信号の波形が、第1の特性を有するか否かを判定する第1の判定と、第2電極に検査信号が供給されている場合において、検出部が生成する検出信号の波形が、第2の特性を有するか否かを判定する第2の判定と、を実行する判定部10と、を備える液体吐出装置。
【選択図】図14

Description

本発明は、液体吐出装置、液体吐出装置の制御方法、及び、液体吐出装置の制御プログラムに関する。
インクジェットプリンター等の液体吐出装置は、記録ヘッドの吐出部に設けられた圧電素子を駆動信号により駆動して、当該圧電素子を変位させることにより、吐出部のキャビティ(圧力室)に充填されたインク等の液体を、吐出部のノズルから吐出させて、記録媒体上に画像を形成する印刷処理を実行する。このような液体吐出装置において、液体の増粘や、キャビティへの気泡混入等により、吐出部から液体を正常に吐出できなくなる吐出異常が生じる場合がある。そして、吐出異常が生じると、吐出部から吐出される液体により媒体に形成される予定のドットを正確に形成できなくなり、液体吐出装置が形成する画像の画質が低下する。
特許文献1には、駆動信号により圧電素子を駆動した後に吐出部に生じる残留振動を検出し、残留振動の周期や振幅等の残留振動の特性に基づいて、吐出部における液体の吐出状態を判定することで、吐出異常による画質の低下を予防する技術が提案されている。
特開2004−276544号公報
ところで、液体吐出装置において、残留振動を検出するための検出回路の故障等により、吐出状態を判定できなくなる場合がある。そして、吐出状態を判定できず、吐出異常を検出できない状態が継続する場合においては、吐出異常に起因して画質が低下した状態で印刷処理が実行される可能性が高くなる、という問題が存在した。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、吐出状態を判定可能か否かを把握し、吐出状態の判定できない状態の継続を防止することを可能とする技術の提供を、解決課題の一つとする。
以上の課題を解決するために、本発明に係る液体吐出装置は、第1電極及び第2電極を具備し、前記第1電極の電位と前記第2電極の電位との電位差に応じて変位する圧電素子と、液体を充填可能であり、前記圧電素子の変位に応じて容積を変化させる圧力室と、前記圧力室に連通し、前記圧力室に液体が充填されている場合において、前記第1電極に駆動信号が供給された際に生じる前記圧力室の容積の変化に応じて、前記圧力室に充填された液体を吐出可能なノズルと、前記第1電極の電位を検出し、検出結果に基づいて検出信号を生成可能な検出部と、前記第1電極に前記駆動信号が供給された場合において、前記検出部が生成する検出信号の波形が、第1の特性を有するか否かを判定する第1の判定と、前記第2電極に検査信号が供給されている場合において、前記検出部が生成する検出信号の波形が、第2の特性を有するか否かを判定する第2の判定と、を実行する判定部と、を備える、ことを特徴とする。
この発明によれば、判定部が、第1の判定を実行することにより、ノズルから液体を正常に吐出可能か否かを判定することができ、第2の判定を実行することにより、検出部が第1電極の電位を正常に検出可能か否かを判定することができる。このため、ノズルからの液体の吐出状態を判定することにより、吐出異常に起因する画質の低下の予防が可能となり、また、吐出状態を正確に判定できない状態であるか否かを判定することにより、吐出状態を正確に判定できない場合に印刷処理が継続されることを防止することが可能となる。
なお、この発明において、検出信号の波形が有する第1の特性とは、例えば、検出信号の1周期の時間長が予め定められた第1の基準範囲内であるという特性や、検出信号の振幅が予め定められた第1の基準振幅以上の振幅を有するという特性等である。また、この発明において、検出信号の波形が有する第2の特性とは、例えば、検出信号の1周期の時間長が予め定められた第2の基準範囲内であるという特性や、検出信号の振幅が予め定められた第2の基準振幅以上の振幅を有するという特性等である。
また、この発明において、第1の特性と、第2の特性とは、同一の特性であってもよいし、異なる特性であっていてもよい。第1の特性と第2の特性とが同一の特性である場合とは、例えば、第1の基準範囲と第2の基準範囲とが一致する場合や、第1の基準振幅と第2の基準振幅とが一致する場合等である。
また、本発明に係る液体吐出装置は、駆動信号を供給する駆動信号供給部と、検査信号を供給する検査信号供給部と、第1電極及び第2電極を具備し、前記第1電極の電位と前記第2電極の電位との電位差に応じて変位する圧電素子と、液体を充填可能であり、前記圧電素子の変位に応じて容積を変化させる圧力室と、前記圧力室に連通し、前記圧力室に液体が充填されている場合において、前記第1電極に駆動信号が供給された際に生じる前記圧力室の容積の変化に応じて、前記圧力室に充填された液体を吐出可能なノズルと、前記第1電極の電位を検出し、検出結果に基づいて検出信号を生成可能な検出部と、前記第1電極を前記駆動信号供給部に電気的に接続させる第1接続状態と、前記第1電極を前記検出部に電気的に接続させる第2接続状態と、を選択可能な選択部と、前記圧力室に液体が充填されている場合であり、且つ、前記選択部が前記第1接続状態を選択して前記駆動信号供給部が前記第1電極に前記駆動信号を供給した後に前記選択部が前記第2接続状態を選択する場合において、前記検出部が生成する検出信号の波形が、第1の特性を有するか否かを判定する第1の判定と、前記選択部が前記第2接続状態を選択して前記検査信号供給部が前記第2電極に前記検査信号を供給する場合において、前記検出部が生成する検出信号の波形が、第2の特性を有するか否かを判定する第2の判定と、を実行する判定部と、を備える、ことを特徴とする。
この発明によれば、判定部が、第1の判定を実行することにより、ノズルから液体を正常に吐出可能か否かを判定することができ、第2の判定を実行することにより、検出部が第1電極の電位を正常に検出可能か否かを判定することができる。このため、吐出部における吐出状態を判定して、吐出異常による画質の低下を予防することが可能となり、また、吐出状態を正確に判定できない状態であるか否かを判定して、吐出状態を正確に判定できない場合に印刷処理が継続されることを防止することが可能となる。
また、第1の判定において、検出部は、第1電極に駆動信号が供給された後に、圧力室、圧力室に充填された液体、及び、圧電素子を含む吐出部に生じる残留振動に応じて変動する第1電極の電位を検出する。よって、第2の判定として、検出部が第1の判定において第1電極の電位を正常に検出可能か否かを判定する場合には、第2の判定において検出部が検出する第1電極の電位の変動の態様と、第1電極に駆動信号が供給された後に吐出部に生じる残留振動に応じた第1電極の電位の変動の態様と、が同一であることが好ましい。このため、第2の判定として、検出部が第1の判定において第1電極の電位を正常に検出可能か否かを判定する場合には、圧力室に液体を充填したうえで、吐出部に残留振動を生じさせることが好ましい。しかし、通常、検出部が正常に動作するか否かの判定である第2の判定は、液体吐出装置の製造工程において実行されるため、圧力室に液体を充填することは、製造コストの増大を招く可能性が高い。
他方、圧力室に液体を充填せずに、吐出部に振動を生じさせる場合、吐出部に生じる振動の周波数は、圧力室に液体が充填されている場合に生じる残留振動の周波数よりも高くなる。よって、圧力室に液体を充填せずに吐出部に振動を生じさせる場合、当該振動に応じて変動する第1電極の電位に基づいて、第2の判定を実行しても、検出部が第1の判定において第1電極の電位を正常に検出可能か否かを判定できない可能性が高い。
これに対して本願発明に係る第2の判定では、検出部は、検査信号が第2電極に供給されているタイミングにおいて、当該検査信号の電位の変化を、圧電素子を介して検出する。よって、例えば、第2の判定において用いる検査信号の波形の有する周期や振幅等を、第1の判定において検出される第1電極の電位変化を表す波形の有する周期や振幅等の変動範囲内に定めることで、第1の判定で検出が予定される第1電極の電位を、第2の判定においても検出することができる。このため、本願発明においては、第2の判定により、検出部が第1の判定において第1電極の電位を正常に検出可能か否かを判定することができる。すなわち、本願発明においては、第2の判定において、圧力室に液体を充填せずに、検出部が第1の判定において第1電極の電位を正常に検出可能か否かを判定することが可能となる。
上述した液体吐出装置は、前記第2の判定の結果に基づいて、前記判定部が、前記第1の判定を実行可能か否かを検査する検査部を備える、ことが好ましい。
この態様によれば、第2の判定を実行することにより、検出部が第1の判定において第1の電極の電位を正常に検出可能か否かを判定するとともに、判定部が第1の判定を実行可能か否かを検査することができる。すなわち、第2の判定を実行することにより、第1の判定の全体が正常に実行可能か否かを判定することができる。
上述した液体吐出装置において、前記判定部は、前記圧力室に液体が充填されていない場合において、前記第2の判定を実行する、ことが好ましい。
この態様によれば、圧力室に液体を充填せずに第2の判定を実行するため、製造工程において第2の判定を実行する場合において、製造コストが増大することを抑制することが可能となる。
上述した液体吐出装置において、前記検出部は、検出した前記第1電極の電位のうち、所定の周波数よりも高い周波数成分を減衰させるローパスフィルターを備え、前記検査信号は、前記所定の周波数以下の周波数を有する、ことが好ましい。
この態様によれば、第2の判定で用いられる検査信号を、検出部で検出することができる。
上述した液体吐出装置において、前記所定の周波数は、前記圧力室に液体が充填されている場合において、前記第1電極に前記駆動信号が供給された後に前記圧力室に生じる残留振動の周波数よりも高い、ことが好ましい。
この態様によれば、第1の判定において、第1電極に駆動信号が供給された後に吐出部に生じる残留振動に応じた第1電極の電位変化を、検出部で検出することができる。
上述した液体吐出装置において、前記第2電極は、前記圧力室に液体が充填されている場合において、所定の基準電位に設定される、ことが好ましい。
この態様によれば、第1電極に駆動信号を供給する場合において、圧電素子の第1電極と第2電極との間に印加される電圧を、駆動信号の電位に応じた値とすることができ、駆動信号に応じて圧電素子を変位させることができる。
また、本発明に係る液体吐出装置の制御方法は、第1電極及び第2電極を具備し、前記第1電極の電位と前記第2電極の電位との電位差に応じて変位する圧電素子と、液体を充填可能であり、前記圧電素子の変位に応じて容積を変化させる圧力室と、前記圧力室に連通し、前記圧力室に液体が充填されている場合において、前記第1電極に駆動信号が供給された際に生じる前記圧力室の容積の変化に応じて、前記圧力室に充填された液体を吐出可能なノズルと、前記第1電極の電位を検出し、検出結果に基づいて検出信号を生成可能な検出部と、を備える液体吐出装置の制御方法であって、前記第1電極に前記駆動信号が供給された場合において、前記検出部が生成する検出信号の波形が、第1の特性を有するか否かを判定し、前記第2電極に検査信号が供給されている場合において、前記検出部が生成する検出信号の波形が、第2の特性を有するか否かを判定する、ことを特徴とする。
この発明によれば、検出信号の波形が第1の特性を有するか否かを判定することにより、ノズルから液体を正常に吐出可能か否かを判定することができ、検出信号の波形が第2の特性を有するか否かを判定することにより、検出部が第1電極の電位を正常に検出可能か否かを判定することができる。このため、吐出部における吐出状態を判定することで、吐出異常による画質の低下を予防することが可能となり、また、吐出状態を正確に判定できない状態であるか否かを判定することで、吐出状態を正確に判定できない場合に印刷処理が継続されることを防止することが可能となる。
また、本発明に係る液体吐出装置の制御プログラムは、第1電極及び第2電極を具備し、前記第1電極の電位と前記第2電極の電位との電位差に応じて変位する圧電素子と、液体を充填可能であり、前記圧電素子の変位に応じて容積を変化させる圧力室と、前記圧力室に連通し、前記圧力室に液体が充填されている場合において、前記第1電極に駆動信号が供給された際に生じる前記圧力室の容積の変化に応じて、前記圧力室に充填された液体を吐出可能なノズルと、前記第1電極の電位を検出し、検出結果に基づいて検出信号を生成可能な検出部と、コンピューターと、を備える液体吐出装置の制御プログラムであって、前記コンピューターを、前記第1電極に前記駆動信号が供給された場合において、前記検出部が生成する検出信号の波形が、第1の特性を有するか否かを判定する第1の判定と、前記第2電極に検査信号が供給されている場合において、前記検出部が生成する検出信号の波形が、第2の特性を有するか否かを判定する第2の判定と、を実行する判定部として機能させる、ことを特徴とする。
この発明によれば、判定部が、第1の判定を実行することにより、ノズルから液体を正常に吐出可能か否かを判定することができ、第2の判定を実行することにより、検出部が第1電極の電位を正常に検出可能か否かを判定することができる。このため、吐出部における吐出状態を判定することで、吐出異常による画質の低下を予防することが可能となり、また、吐出状態を正確に判定できない状態であるか否かを判定することで、吐出状態を正確に判定できない場合に印刷処理が継続されることを防止することが可能となる。
本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンター1の斜視図である。 インクジェットプリンター1の構成を示すブロック図である。 ヘッドユニット30の構成を説明するための説明図である。 記録ヘッド20の概略的な断面図である。 吐出部Dの断面形状の変化を説明するための説明図である。 吐出部Dにおける残留振動を表す単振動のモデルを示す回路図である。 吐出部Dにおける残留振動の実験値と計算値との関係を示すグラフである。 吐出部D内部に気泡が混入した場合の吐出部Dの状態を示す説明図である。 吐出部Dにおける残留振動の実験値と計算値とを示すグラフである。 インクが固着した場合の吐出部Dの状態を示す説明図である。 吐出部Dにおける残留振動の実験値と計算値とを示すグラフである。 紙粉が付着した場合の吐出部Dの状態を示す説明図である。 吐出部Dにおける残留振動の実験値と計算値とを示すグラフである。 ヘッドユニット30及び吐出状態判定部10の構成を示すブロック図である。 接続状態切替部32及び残留振動検出部33の構成を示す回路図である。 残留振動検出部33の構成を示す回路図である。 集積回路300の動作を示すタイミングチャートである。 集積回路300の動作を説明するための説明図である。 集積回路300の動作を説明するための説明図である。 集積回路300の動作を説明するための説明図である。 計測部12の動作を示すタイミングチャートである。 判定情報RS1を説明するための説明図である。 検査処理を示すフローチャートである。 検査処理における集積回路300の動作を説明するための説明図である。 判定情報RS2を説明するための説明図である。 第2実施形態に係る集積回路300の構成を示す回路図である。 第2実施形態に係る集積回路300の構成を示す回路図である。 第3実施形態に係る集積回路300の構成を示す回路図である。 第3実施形態に係る集積回路300の動作を示すタイミングチャートである。 第4実施形態に係る集積回路300の構成を示す回路図である。
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
<<A.第1実施形態>>
本実施形態では、インク(「液体」の一例)を吐出して記録用紙P(「媒体」の一例)に画像を形成するインクジェットプリンターを例示して、液体吐出装置を説明する。
<<1.インクジェットプリンターの全体構成>>
図1は、本発明の第1実施形態における液体吐出装置の一種であるインクジェットプリンター1の構成を示す概略図である。以下、図1を参照しつつ、インクジェットプリンター1の構成について説明する。
なお、本実施形態では、インクジェットプリンター1が、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック(CMYK)の4色のインクを吐出可能である場合を想定する。また、以下の説明では、図1において、+Z側(上側)を「上部」、−Z側(下側)を「下部」と称することがある。
図1に示すように、インクジェットプリンター1は、記録用紙Pを設置するためのトレイ91と、記録用紙Pを図において+X方向に排出する排紙口92と、操作パネル93とが設けられている。
操作パネル93は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDランプ等で構成され、エラーメッセージ等を表示する表示部(図示省略)と、各種スイッチ等で構成される操作部(図示省略)とを備えている。
また、インクジェットプリンター1は、図において+Y方向または−Y方向(以下、+Y方向及び−Y方向を、「Y軸方向」と総称する)に往復動する移動体3を具備する印刷手段4と、記録用紙Pを印刷手段4に対し供給・排出する給紙手段5と、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御する制御部6と、を備える。
制御部6の制御により、給紙手段5は、記録用紙Pを+X方向に一枚ずつ間欠送りする。記録用紙Pが移動体3の下部(−Z側)を通過するとき、移動体3が記録用紙Pの送り方向である+X方向と交差するY軸方向に往復移動しつつ、記録用紙Pに対してインクを吐出することで、記録用紙Pへの印刷が行われる。すなわち、移動体3の往復動の方向であるY軸方向が印刷における主走査方向であり、記録用紙Pが搬送される方向である+X方向が印刷における副走査方向である。
移動体3は、4色のインクと1対1に対応する4個のインクカートリッジ81と、4色のインクと1対1に対応する4個のヘッドユニット30と、4個のインクカートリッジ81及び4個のヘッドユニット30を搭載するキャリッジ82と、を備える。各インクカートリッジ81には、当該インクカートリッジ81に対応する色のインクが充填されている。各ヘッドユニット30には、当該ヘッドユニット30に対応する色のインクを充填するインクカートリッジ81からインクが供給される。なお、インクカートリッジ81は、キャリッジ82に搭載される代わりに、キャリッジ82の外部に設けられるものであってもよい。
印刷手段4は、移動体3の他に、移動体3を主走査方向に往復動させる駆動源となるキャリッジモーター41と、キャリッジモーター41の回転を受けて移動体3を往復動させる往復動機構42と、を備えている。往復動機構42は、その両端をフレーム(図示省略)に支持されたキャリッジガイド軸422と、キャリッジガイド軸422と略平行に延在するタイミングベルト421と、を備える。
キャリッジ82は、キャリッジガイド軸422に往復動自在に支持されるとともに、タイミングベルト421の一部に固定されている。そして、キャリッジ82は、キャリッジモーター41がプーリを介してタイミングベルト421を正逆走行させると、キャリッジガイド軸422に案内されてY軸方向に往復動する。この往復動の際に、ヘッドユニット30が備える記録ヘッド20に設けられる複数の吐出部Dの各々からインクを吐出することで、記録用紙Pに画像を形成する印刷処理が実行される。なお、記録ヘッド20及び吐出部Dについては、後述する。
給紙手段5は、給紙手段5の駆動源である給紙モーター51と、給紙モーター51の作動により回転する給紙ローラ52とを有している。
給紙ローラ52は、記録用紙Pの搬送経路を挟んで上下に対向する従動ローラ52aと駆動ローラ52bとを含み、駆動ローラ52bは給紙モーター51に連結されている。このため、給紙ローラ52は、トレイ91に配置された記録用紙Pを印刷手段4に向かって1枚ずつ送り込み、また、印刷手段4から記録用紙Pを1枚ずつ排出することができる。なお、インクジェットプリンター1は、トレイ91に代えて、記録用紙Pを収容する給紙カセットを着脱自在に装着し得るような構成であってもよい。
制御部6は、例えば、パーソナルコンピューターやデジタルカメラ等のホストコンピューター100から入力された印刷データImgに基づいて、インクジェットプリンター1の各部を制御して、インクジェットプリンター1に印刷処理を実行させる。
図2は、インクジェットプリンター1を概略的に示すブロック図である。インクジェットプリンター1は、上述したように、制御部6、操作パネル93、ヘッドユニット30、キャリッジモーター41、及び、給紙モーター51を備えるのに加えて、ホストコンピューター100から入力された印刷データImg等の各種データを受け取るインターフェース部IFと、インクジェットプリンター1の制御プログラムや印刷データImg等の各種データを記憶する記憶部62と、キャリッジモーター41を駆動するためのキャリッジモータードライバー43と、給紙モーター51を駆動するための給紙モータードライバー53と、ヘッドユニット30を駆動するための駆動信号COMを生成する駆動信号供給部71と、ヘッドユニット30に対して後述する基準電位信号SVを供給する基準信号供給部72と、ヘッドユニット30が備える吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定する吐出状態判定処理を実行するための吐出状態判定部10と、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が異常である場合に当該吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正常な状態に回復させるための回復処理を実行する回復機構24と、を備える。
回復機構24は、ヘッドユニット30が備える吐出部Dからインクを正常に吐出できなくなった場合、つまり、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が異常となった場合に、当該吐出部Dが正常にインクを吐出できる状態に回復させるための回復処理を実行する。
ここで、インクの吐出状態が異常である場合とは、吐出部Dからインクを吐出できない場合や、吐出部Dが印刷データImgの示す画像を形成するために必要な量のインクを吐出できない場合、吐出部Dが本来吐出すべき方向とは異なる方向にインクを吐出する場合、等を含む。
また、回復処理とは、吐出部Dに付着した紙粉等の異物をワイパーで拭き取るワイピング処理、吐出部Dからインクを予備的に吐出させるフラッシング処理、吐出部D内の増粘したインクや気泡等をチューブポンプ(図示省略)により吸引するポンピング処理等、吐出部Dのインクの吐出状態を正常に戻すための処理の総称である。
記憶部62は、ホストコンピューター100から供給される印刷データImgを格納する不揮発性半導体メモリーの一種であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)と、印刷処理等の各種処理を実行する際に必要なデータを一時的に格納し、あるいは印刷処理等の各種処理を実行するための制御プログラムを一時的に展開するRAM(Random Access Memory)と、インクジェットプリンター1の各部を制御するための制御プログラムを格納する不揮発性半導体メモリーの一種であるPROMと、を備える。
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)やFPGA(field-programmable gate array)等を含んで構成され、当該CPU等が記憶部62に記憶されている制御プログラムに従って動作することで、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御する。
具体的には、制御部6は、ホストコンピューター100から供給される印刷データImgを記憶部62に格納する。次に、制御部6は、印刷データImg等の記憶部62に格納されている各種データに基づいて、各種制御信号を生成し、生成した制御信号を、キャリッジモータードライバー43、給紙モータードライバー53、ヘッドユニット30、駆動信号供給部71、基準信号供給部72等、インクジェットプリンター1の各部に供給することで、インクジェットプリンター1の各部を制御し、これにより印刷処理、吐出状態判定処理、回復処理、及び、後述する検査処理等の各種処理の実行を制御する。なお、制御部6は、制御部6のCPUが、制御プログラムに従い、検査処理を実行することで、検査部60として機能する。
ヘッドユニット30は、複数の吐出部Dを備える。当該ヘッドユニット30には、各吐出部Dからのインクの吐出の有無、及び、各吐出部Dが吐出すべきインク量を指定する印字データSIが、制御部6から供給される。なお、図2では、図示の都合上、1個のヘッドユニット30のみを図示しているが、本実施形態に係るインクジェットプリンター1の移動体3は、4色のインクに対応した4個のヘッドユニット30を具備することとする。詳細は後述するが、各吐出部Dは、駆動信号供給部71から供給される駆動信号COMに応じて変位する圧電素子200と、内部にインクを充填し圧電素子200の変位により当該内部の圧力が増減されるキャビティ220(「圧力室」の一例)と、キャビティ220に充填されたインクを吐出するノズルNZと、を備える。
<<2.ヘッドユニットの構成>>
次に、図3及び図4を参照しつつ、ヘッドユニット30と、ヘッドユニット30に設けられる吐出部Dと、について説明する。
図3は、ヘッドユニット30を概略的に示した斜視図である。この図に示すように、ヘッドユニット30は、複数の吐出部Dが設けられた記録ヘッド20と、フレキシブルケーブルFC上にCOF(Chip On Film)技術を用いて実装されたIC(Integrated Circuit)チップ301と、を備える。
図3に示すように、記録ヘッド20は、複数のノズルNZが設けられたノズルプレート240を備える。すなわち、ノズルプレート240には、記録ヘッド20に設けられる複数の吐出部Dと1対1に対応するように、複数のノズルNZが形成されている。
ICチップ301には、集積回路300が実装されている(図14参照)。集積回路300は、記録ヘッド20が備える複数の吐出部Dの各々に対して、駆動信号供給部71が生成する駆動信号COMを供給するか否かを選択することで、各吐出部D(厳密には吐出部Dが備える圧電素子200)を駆動するか否かを決定する。
ICチップ301が実装されるフレキシブルケーブルFCは、インクジェットプリンター1の本体側(例えば、制御部6、駆動信号供給部71、基準信号供給部72等)から供給される、印字データSI、駆動信号COM、基準電位信号SVを含む各種信号を、ヘッドユニット30に伝送するための配線基板であり、ポリイミド等から形成された可撓性のベースフィルムと、当該ベースフィルム上に形成された配線パターンと、を備える。フレキシブルケーブルFCの一端部は、記録ヘッド20の端子部(図示省略)に接続され、フレキシブルケーブルFCの他端部は、インクジェットプリンター1の本体側からの信号を中継する基板(図示省略)の端子部に接続されている。
図4は、記録ヘッド20の概略的な一部断面図の一例である。なお、この図では、記録ヘッド20のうち、当該記録ヘッド20が有する複数の吐出部Dの中の1個の吐出部Dと、当該1個の吐出部Dにインク供給口260を介して連通するリザーバ250と、インクカートリッジ81からリザーバ250にインクを供給するためのインク取り入れ口270と、を示している。
図4に示すように、吐出部Dは、圧電素子200と、内部にインクを充填することが可能なキャビティ220と、キャビティ220に連通するノズルNZと、振動板210と、を備える。吐出部Dは、キャビティ220にインクが充填されている場合において、圧電素子200が駆動信号COMにより駆動されて変位することにより、キャビティ220内のインクをノズルNZから吐出させる。
吐出部Dのキャビティ220は、凹部を有するような所定の形状に成形されたキャビティプレート230と、ノズルNZが形成されたノズルプレート240と、振動板210と、により区画される空間である。キャビティ220は、インク供給口260を介してリザーバ250と連通している。リザーバ250は、インク取り入れ口270を介して1つのインクカートリッジ81と連通している。
本実施形態では、圧電素子200として、例えば、図4に示すようなユニモルフ(モノモルフ)型を採用する。圧電素子200は、上部電極201(「第1電極」の一例)と、下部電極202(「第2電極」の一例)と、上部電極201及び下部電極202の間に設けられた圧電体203と、を有する。上部電極201には、駆動信号供給部71から駆動信号COMが供給され、下部電極202には、基準信号供給部72から基準電位信号SVが供給される。下部電極202に供給される基準電位信号SVの電位が所定の基準電位VBSに設定された状態で、上部電極201に駆動信号COMが供給されると、上部電極201及び下部電極202の間に印加された電圧に応じて圧電素子200が図において上下方向に撓み、その結果、圧電素子200が振動する。
キャビティプレート230の上面開口部には、振動板210が設置され、振動板210には、下部電極202が接合されている。このため、圧電素子200が駆動信号COMにより振動すると、振動板210も振動する。振動板210の振動によりキャビティ220の容積が変化する。そして、キャビティ220にインクが充填されている場合、キャビティ220の容積の変化に応じてキャビティ220内の圧力も変化し、その結果として、キャビティ220内に充填されたインクがノズルNZより吐出される。インクの吐出によりキャビティ220内のインクが減少した場合、リザーバ250からインクが供給される。また、リザーバ250へは、インクカートリッジ81からインク取り入れ口270を介してインクが供給される。
<<3.吐出部の動作と残留振動>>
次に、吐出部Dからのインク吐出動作と、吐出部Dに生じる残留振動と、について、図5乃至図13を参照しながら説明する。
図5は、吐出部Dからのインク吐出動作を説明するための説明図である。図5(a)に示す状態において、吐出部Dが備える圧電素子200に対して、駆動信号供給部71から集積回路300を介して駆動信号COMが供給されると、当該圧電素子200において、上部電極201及び下部電極202の間に印加された電界に応じた歪が発生し、当該吐出部Dの振動板210は図において上方向へ撓む。これにより、図5(a)に示す初期状態と比較して、図5(b)に示すように、当該吐出部Dのキャビティ220の容積が拡大する。図5(b)に示す状態において、駆動信号COMの示す電位を変化させると、振動板210は、その弾性復元力によって復元し、初期状態における振動板210の位置を越えて図において下方向に移動し、図5(c)に示すようにキャビティ220の容積が急激に収縮する。このときキャビティ220内に発生する圧縮圧力により、キャビティ220を満たすインクの一部が、このキャビティ220に連通しているノズルNZからインク滴として吐出される。
吐出部Dの振動板210は、図5に示す場合のように、駆動信号COMにより駆動されて上方向または下方向に変位した後に、振動する。この振動は、駆動信号COMによる吐出部Dの駆動後も残留する。このような、駆動信号COMによる吐出部Dの駆動後に吐出部Dに残留する残留振動は、ノズルNZやインク供給口260の形状あるいはインクの粘度等による音響抵抗Resと、流路内のインク重量によるイナータンスIntと、振動板210のコンプライアンスCmと、によって決定される固有振動周波数を有するものと想定される。以下、当該想定に基づく吐出部Dの振動板210に生じる残留振動の計算モデルについて説明する。
図6は、振動板210の残留振動を想定した単振動の計算モデルを示す回路図である。この図に示すように、振動板210の残留振動の計算モデルは、音圧Prsと、イナータンスInt、コンプライアンスCm、及び、音響抵抗Resで表せる。そして、図6の回路に音圧Prsを与えた時のステップ応答を体積速度Uvについて計算すると、次式が得られる。
Uv={Prs/(ω・Int)}e−γt・sin(ωt)
ω={1/(Int・Cm)−γ}1/2
γ=Res/(2・Int)[0]
この式から得られた計算結果(計算値)と、別途行った吐出部Dの残留振動の実験における実験結果(実験値)とを比較する。なお、残留振動の実験とは、インクの吐出状態が正常である吐出部Dからインクを吐出させた後に、当該吐出部Dの振動板210において生じる残留振動を検出する実験である。
図7は、残留振動の実験値と計算値との関係を示すグラフである。図7に示すグラフからも分かるように、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が正常である場合、実験値と計算値の2つの波形は、概ね一致している。
さて、吐出部Dがインク吐出動作を行ったにもかかわらず、当該吐出部Dにおけるインクの吐出状態が異常であり、当該吐出部DのノズルNZからインク滴が正常に吐出されない場合、即ち吐出異常が発生する場合がある。この吐出異常が発生する原因としては、(1)キャビティ220内への気泡の混入、(2)キャビティ220内のインクの乾燥等に起因するキャビティ220内のインクの増粘または固着、(3)ノズルNZの出口付近への紙粉等の異物の付着、等が挙げられる。
上述のとおり、吐出異常とは、典型的にはノズルNZからインクを吐出できない状態となること、即ちインクの不吐出現象が現れ、その場合、記録用紙Pに印刷した画像における画素のドット抜けを生じることである。また、上述のとおり、吐出異常の場合には、ノズルNZからインクが吐出されたとしても、インクの量が過少であったり、吐出されたインク滴の飛行方向(弾道)がずれたりして適正に着弾しないので、やはり画素のドット抜けとなって現れる。
以下においては、図7に示す比較結果に基づいて、吐出部Dにおいて生じる吐出異常の原因別に、残留振動の計算値と実験値が概ね一致するように、音響抵抗Res及びイナータンスIntのうち少なくとも一方の値を調整する。
まず、吐出異常の原因の1つである、(1)キャビティ220内への気泡の混入について検討する。図8は、キャビティ220内に気泡が混入した場合を説明するための概念図である。図8に示すように、キャビティ220内に気泡が混入した場合には、キャビティ220内を満たすインクの総重量が減り、イナータンスIntが低下するものと考えられる。また、図8に例示するように、気泡がノズルNZ付近に付着している場合には、その径の大きさだけノズルNZの径が大きくなったと看做される状態となり、音響抵抗Resが低下するものと考えられる。
したがって、図7に示すようなインクの吐出状態が正常である場合と比較して、音響抵抗Res及びイナータンスIntを小さく設定して、気泡混入時の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図9のような結果(グラフ)が得られた。図7及び図9に示すように、キャビティ220内に気泡が混入して吐出異常が生じた場合には、吐出状態が正常である場合と比較して、残留振動の周波数が高くなる。なお、音響抵抗Resの低下などにより、残留振動の振幅の減衰率も小さくなり、残留振動は、その振幅をゆっくりと下げていることも確認することができる。
次に、吐出異常の原因の1つである、(2)キャビティ220内のインクの増粘または固着について検討する。図10は、キャビティ220のノズルNZ付近のインクが乾燥により固着した場合を説明するための概念図である。図10に示すように、ノズルNZ付近のインクが乾燥して固着した場合、キャビティ220内のインクは、キャビティ220内に閉じこめられたような状況となる。このような場合、音響抵抗Resが増加するものと考えられる。
したがって、図7に示すようなインクの吐出状態が正常である場合と比較して、音響抵抗Resを大きく設定して、ノズルNZ付近のインクが固着または増粘した場合の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図11のような結果(グラフ)が得られた。なお、図11に示す実験値は、数日間図示しないキャップを装着しない状態で吐出部Dを放置し、ノズルNZ付近のインクが固着した状態における振動板210の残留振動を測定したものである。図7及び図11に示すように、キャビティ220内のノズルNZ付近のインクが固着した場合には、吐出状態が正常である場合と比較して、残留振動の周波数が極めて低くなるとともに、残留振動が過減衰となる特徴的な波形が得られる。これは、インクを吐出するために振動板210が+Z方向(上方)に引き寄せられることによって、キャビティ220内にリザーバからインクが流入した後に、振動板210が−Z方向(下方)に移動するときに、キャビティ220内のインクの逃げ道がないために、振動板210が急激に振動できなくなるため(過減衰となるため)である。
次に、吐出異常の原因の1つである、(3)ノズルNZの出口付近への紙粉等の異物の付着について検討する。図12は、ノズルNZの出口付近に紙粉が付着した場合を説明するための概念図である。図12に示すように、ノズルNZの出口付近に紙粉が付着した場合、キャビティ220内から紙粉を介してインクが染み出してしまうとともに、ノズルNZからインクを吐出することができなくなる。ノズルNZの出口付近に紙粉が付着し、ノズルNZからインクが染み出している場合には、振動板210から見てキャビティ220内から染み出した分のインクが、吐出状態が正常の場合よりも増えることにより、イナータンスIntが増加するものと考えられる。また、ノズルNZの出口付近に付着した紙粉の繊維によって音響抵抗Resが増大するものと考えられる。
従って、図7に示すようなインクの吐出状態が正常である場合と比較して、イナータンスInt及び音響抵抗Resを大きく設定して、ノズルNZの出口付近への紙粉付着時の残留振動の実験値とマッチングすることにより、図13のような結果(グラフ)が得られた。図7及び図13のグラフから分かるように、ノズルNZの出口付近に紙粉が付着した場合には、吐出状態が正常である場合と比較して、残留振動の周波数が低くなる。
なお、図11及び図13に示すように、一般的に、(3)ノズルNZの出口付近への紙粉付着の場合は、(2)キャビティ220内のインクの増粘の場合と比較して、残留振動の周波数が高くなる。
ここで、(2)インクの増粘の場合と、(3)ノズルNZの出口付近への紙粉付着の場合とでは、いずれも、インクの吐出状態が正常である場合に比べて残留振動の周波数が低くなっている。これら2つの吐出異常の原因は、残留振動の波形、具体的には、残留振動の周波数または周期を、予め定められた閾値を持って比較することで、区別することができる。
以上の説明から明らかなように、各吐出部Dを駆動したときに生じる残留振動の波形、特に、残留振動の周波数または周期に基づいて、各吐出部Dの吐出状態を判定することができる。より具体的には、残留振動の周波数または周期に基づいて、各吐出部Dにおける吐出状態が正常であるか否かについて、及び、各吐出部Dにおける吐出状態が異常である場合に当該吐出異常の原因が上述した(1)〜(3)のうち何れに該当するかについて、判定することができる。本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、残留振動を解析して吐出状態を判定する吐出状態判定処理を実行する。
<<4.集積回路の構成>>
以下、図14乃至図16を参照しつつ、集積回路300の構成と、集積回路300の周辺回路と、について説明する。
図14は、インクジェットプリンター1の要部を示すブロック図である。
この図に示すようにヘッドユニット30は、記録ヘッド20と、ICチップ301に設けられた集積回路300と、を備える。上述のとおり、記録ヘッド20には、複数の吐出部Dが設けられる。つまり、記録ヘッド20は、複数の圧電素子200を備える。以下では、各ヘッドユニット30が備える記録ヘッド20に設けられる圧電素子200の個数(吐出部Dの個数)をn個として説明する(nは2以上の自然数)。
図14に示すように、集積回路300は、制御信号生成部31と、接続状態切替部32と、残留振動検出部33と、を備える。
制御信号生成部31は、制御部6から供給される印字データSIやクロック信号等に基づいて、制御信号Sと、制御信号Aとを、生成する。詳細は後述するが、制御信号Sは、制御信号S1、S2、…、Snを含む。また、制御信号Aは、制御信号A1、A2、…、Anを含む。
接続状態切替部32は、制御信号生成部31が生成する制御信号Aに基づいて、圧電素子200の上部電極201と、駆動信号供給部71とを、電気的に接続するか否かを切り替える。つまり、接続状態切替部32は、制御信号Aに基づいて、駆動信号COMを圧電素子200に供給するか否かを切り替える。また、接続状態切替部32は、制御信号生成部31が生成する制御信号Sに基づいて、圧電素子200の上部電極201と、残留振動検出部33とを、電気的に接続するか否かを切り替える。
上述の通り、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、駆動信号COMにより駆動された吐出部Dに生じる残留振動を、当該吐出部Dが備える圧電素子200の起電力の変化として検出し、検出結果に基づいて、当該吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定する、吐出状態判定処理を実行する。
具体的には、まず、基準信号供給部72が供給する基準電位信号SVの電位を基準電位VBSとした状態において、駆動信号供給部71が、吐出状態判定処理の対象となる一の吐出部Dに対して、接続状態切替部32を介して、駆動信号COMを供給する。次に、駆動信号COMにより駆動された一の吐出部Dに残留振動が生じているタイミングにおいて、接続状態切替部32が、制御信号Sに基づいて、一の吐出部Dの上部電極201と残留振動検出部33とを電気的に接続する。そして、残留振動検出部33が、接続状態切替部32を介して、一の吐出部Dの上部電極201の電位Voutを検出し、検出結果に基づいて検出信号Vdを生成する。すなわち、残留振動検出部33は、第1電極である上部電極201の電位を検出して検出信号を生成する「検出部」の一例である。その後、吐出状態判定部10が、残留振動検出部33の出力する検出信号Vdに基づいて、一の吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定し、判定結果を示す判定情報RS1を生成する。
詳細は後述するが、本実施形態に係る吐出状態判定部10は、吐出状態判定処理において、各吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定して、当該判定の結果を示す判定情報RS1を生成するのに加え、後述する検査処理において、各吐出部Dの上部電極201の電位Voutを残留振動検出部33が検出して検出信号Vdを生成可能か否かを判定して、当該判定の結果を示す判定情報RS2を生成することができる。以下では、判定情報RS1及びRS2を、判定情報RSと総称する場合がある。
図14に示すように、吐出状態判定部10は、計測部12と、判定情報生成部14と、を備える。
計測部12は、検出信号Vdの1周期分の時間長Tcを計測して、当該時間長Tcを示す周期情報NTcを生成する。また、計測部12は、検出信号Vdの振幅が、時間長Tcの計測に有効な所定の振幅以上の振幅を有しているか否かを示す、有効性フラグFlagを生成する。
判定情報生成部14は、周期情報NTcと有効性フラグFlagとに基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定し、判定結果を示す判定情報RS1を生成する。
以上において説明したように、インクジェットプリンター1は、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定する、吐出状態判定処理を実行する。
なお、駆動信号COMは、吐出部Dを駆動するため、例えば42Vの電源電圧で動作する。これに対して、残留振動検出部33のうち後述するハイパスフィルターHPF1よりも後段部分や、吐出状態判定部10は、例えば3.3Vの電源電圧で動作する。
図15及び図16は、接続状態切替部32と、残留振動検出部33と、n個の圧電素子200との、電気的な構成を示す回路図である。以下、図15及び図16を参照しつつ、接続状態切替部32、残留振動検出部33、及び、圧電素子200の、電気的な構成について説明する。
図15に示すように、接続状態切替部32は、駆動信号供給部71に電気的に接続され、駆動信号供給部71から駆動信号COMが供給される配線L1と、残留振動検出部33のハイパスフィルターHPF1に電気的に接続される配線L2と、各吐出部Dの圧電素子200を配線L1に対して電気的に接続するか否かを選択し、また、各吐出部Dの圧電素子200を配線L2に対して電気的に接続するか否かを選択する選択回路UXと、配線L1及び配線L2の間に設けられた抵抗R3と、を備える。
図15に示すように、選択回路UXは、n個の圧電素子200と1対1に対応するn個の選択ユニットU(U1〜Un)を備える。各圧電素子200の上部電極201は、当該圧電素子200に対応する選択ユニットUに電気的に接続される。また、各圧電素子200の下部電極202は、共通電極Lvに電気的に接続される。共通電極Lvには、基準信号供給部72から基準電位信号SVが供給される。
図15に示すように、各選択ユニットUは、トランスファーゲートで構成されたスイッチSW1と、トランスファーゲートで構成されたスイッチSW2と、を備える。なお、図15では、便宜上、選択ユニットU1〜Unのうち、選択ユニットU1を例示して説明するが、当該説明は、選択ユニットU2〜Unについても同様に該当することとする。
スイッチSW1は、制御信号A1がハイレベルのときにオン状態となり、圧電素子200に駆動信号COMを供給する一方、制御信号A1がローレベルのときにオフ状態となり、圧電素子200への駆動信号COMの供給を停止する。すなわち、スイッチSW1は、圧電素子200に対して駆動信号COMを供給するか否かを切替可能に配置される。
スイッチSW2は、制御信号S1がハイレベルのときにオン状態となり、上部電極201と、残留振動検出部33のハイパスフィルターHPF1とを、配線L2を介して電気的に接続する一方、制御信号S1がローレベルのときにオフ状態となり、上部電極201と、残留振動検出部33のハイパスフィルターHPF1との電気的な接続を切断する。すなわち、スイッチSW2は、残留振動検出部33が、吐出部Dに設けられた圧電素子200の上部電極201の電位Voutを検出可能な状態とするか否かを切替可能に配置される。
なお、詳細は後述するが、本実施形態において、スイッチSW1がオン状態になる期間と、スイッチSW2がオン状態になる期間は、一部重複するが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、スイッチSW1とスイッチSW2とは、排他的にオン状態になるものであってもよい。
図15に示すように、圧電素子200の上部電極201と、スイッチSW1と、スイッチSW2とは、ノードN1において電気的に接続されている。また、配線L1及び抵抗R3の一方の端子は、ノードN2において電気的に接続され、配線L2及び抵抗R3の他方の端子は、ノードN3において電気的に接続されている。抵抗R3は、ノードN3に駆動信号COMの電圧を供給するバイアス抵抗として機能する。なお、接続状態切替部32は、ノードN3をバイアスする抵抗R3を備えているが、この抵抗R3は設けられなくてもよい。
図15及び図16に示すように、残留振動検出部33は、ハイパスフィルターHPF1と、ゲイン調整部36と、ローパスフィルター37と、バッファ38と、を備える。
ハイパスフィルターHPF1は、キャパシターC1と、抵抗R1と、抵抗R1と並列に設けられたスイッチSW3と、を備え、上部電極201の電位Voutに応じた出力信号OUT1を出力する。キャパシターC1の一方の端子は配線L2と電気的に接続され、他方の端子は抵抗R1の一方の端子と電気的に接続される。抵抗R1の他方の端子には固定電位であるアナロググランドAGNDが供給される。アナロググランドAGNDの電位は、例えば、残留振動検出部33の高電源電位と低電源電位との中心電位に設定されている。
スイッチSW3は、スイッチSW1やスイッチSW2と同様に、トランスファーゲートで構成される。スイッチSW3は、制御信号生成部31から供給される制御信号Scがハイレベルでオン状態となり、制御信号Scがローレベルでオフ状態となる。
圧電素子200の起電力の変化は、キャビティ220容積の変化を示す。このため、残留振動の周波数帯域は、駆動信号COMの周波数帯域と比較して狭い。また、残留振動にはノイズが重畳することがある。ハイパスフィルターHPF1は、残留振動よりも低域の周波数成分を減衰させる。このため、残留振動検出部33における残留振動の検出精度を向上させることができる。
ところで、本実施形態では、駆動信号COMの最大電位は42Vであるのに対し、残留振動検出部33のうちハイパスフィルターHPF1よりも後段部分であるゲイン調整部36、ローパスフィルター37、及び、バッファ38は、高電源電位は3.3V、低電源電位は0Vとしている。これは、圧電素子200を駆動するためには大振幅の駆動信号COMが必要となる一方、残留振動検出部33のうちハイパスフィルターHPF1よりも後段部分はアナログ信号の処理回路であり、大きなダイナミックレンジが不要だからである。すなわち、駆動信号COMの最大電位と比較して、残留振動検出部33のハイパスフィルターHPF1よりも後段部分の高電源電位は低い。このため、本実施形態では、ハイパスフィルターHPF1のキャパシターC1によって、残留振動検出部33が検出する上部電極201の電位Voutの直流成分をカットしている。
また、詳細は後述するが、ハイパスフィルターHPF1のスイッチSW3は、残留振動を検出する期間を除いてオン状態となりゲイン調整部36の入力端子はアナロググランドAGNDにクランプされる。すなわち、本実施形態において、ノードN3の電位が大きく変化する期間において、スイッチSW3はオン状態となる。キャパシターC1によって直流成分がカットされても、ノードN3の電位が大きく変化すると、ゲイン調整部36の入力端子の電位が高電源電位を超えて大きく変化する。電子回路において、このようにダイナミックレンジを超える大振幅の信号が供給されると、回路要素の各部に電荷が充電され、正常に動作するまでに長時間を要することがある。また、ダイナミックレンジを超える大振幅の信号が供給される場合、電子回路を構成するトランジスターなどの部品の耐圧を高くする必要がある。
これに対して、本実施形態では、ノードN3の電位が大きく変化する期間においてスイッチSW3をオン状態として、ゲイン調整部36の入力端子の電位をアナロググランドAGNDにクランプする。このため、残留振動の検出期間において直ちに残留振動の検出を開始することができ、さらに残留振動検出部33のうちハイパスフィルターHPF1よりも後段部分を構成する部品の耐圧を下げることが可能となる。
図16に示すように、ゲイン調整部36は、オペアンプを用いた負帰還型のアンプであり、その出力信号を分圧する可変抵抗器Vrの中点を調整することによって、出力信号OUT1の振幅を調整することができる。
ローパスフィルター37は、出力信号OUT1のうち、所定の周波数よりも高い高域周波数成分を減衰させる。そして、吐出部Dに生じる残留振動は、当該所定の周波数以下の周波数を有する。このため、ローパスフィルター37によって、検出する周波数範囲を限定することで、ノイズ成分を除去した残留振動の検出が可能となる。この例のローパスフィルター37は、オペアンプを用いた多重帰還型であるが、残留振動の周波数帯域よりも高域周波数成分を減衰させるのであれば、どのような形式であってもよい。
バッファ38は、インピーダンスを変換してローインピーダンスの検出信号Vdを出力する。この例のバッファ38は、オペアンプを用いたボルテージフォロアで構成されている。
以上において説明したように、残留振動検出部33は、検出する上部電極201の電位Voutから、直流成分をカットして出力信号OUT1を生成し、出力信号OUT1からノイズ成分を取り除き且つ振幅を増幅させることで検出信号Vdを生成する。このため、検出信号Vdに基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を正確に判定することが可能となる。
<<5.集積回路の動作>>
次に、図17乃至図20を参照しつつ、集積回路300の動作について説明する。図17は集積回路300の動作を示すタイミングチャートであり、図18〜図20は、各期間におけるスイッチSW1、SW2及びSW3のオン状態及びオフ状態を示す説明図である。なお、図18〜図20に示す例は、選択ユニットU1に対応する吐出部Dにおけるインクの吐出状態を検出する場合を想定している。
まず、時刻t0から時刻t1までの期間T1では、駆動信号COMに微振動パルスP1が含まれている。微振動パルスP1が圧電素子200に印加されると、圧電素子200は微振動する。この場合、インクがノズルNZから吐出することはないが、キャビティ220内のインクを撹拌してその増粘を抑制することができる。期間T1では、制御信号A1及びS1がローレベルとなるので、スイッチSW1及びSW2がオフ状態となる。一方、期間T1では、制御信号Scがハイレベルとなるので、スイッチSW3がオン状態となる。この結果、図18(A)に示すように、ノードN4の電位はアナロググランドAGNDにクランプされる。
なお、期間T1において、制御信号A2〜Anはハイレベル、制御信号S2〜Snはローレベルになるので、吐出状態判定処理において判定の対象となる吐出部D以外の吐出部Dに対応する圧電素子200に微振動パルスP1が印加され、判定対象以外の吐出部Dに対応するキャビティ220内のインクについて増粘が抑制される。
次に、時刻t1から時刻t2までの期間T2は、駆動信号COMに判定用パルスP2が含まれている。期間T2は、制御信号A1がハイレベルとなり、スイッチSW1がオン状態となる点を除いて、期間T1と同様である。すなわち、期間T2において、図18(B)に示すように、スイッチSW1及びSW3がオン状態となる。
スイッチSW1がオン状態となって判定用パルスP2が圧電素子200に印加されると、圧電素子200は、判定用パルスP2の立ち下がりに同期してインクをキャビティ220内に引き込む方向に撓み、判定用パルスP2の立ち上がりに同期してインクをキャビティ220から押し出す方向に撓む。
ここで、判定用パルスP2は、インクがノズルNZから吐出しないように振幅、位相及び立ち上がり時間が調整されていてもよいし、あるいは、判定用パルスP2によってインクがノズルNZから吐出されてもよい。判定用パルスP2が非吐出に対応する波形である場合には、印刷処理を実行している期間に吐出状態判定処理を実行し残留振動を検出することができる。一方、判定用パルスP2が吐出に対応する波形である場合には、例えば、ヘッドユニット30を記録用紙Pからはずれた位置に移動させたうえで、吐出状態判定処理を実行すればよい。
次に、時刻t2から時刻t3までの期間T3においては、駆動信号COMは、所定電位Vxとなっている。期間T3では、制御信号A1、S1及びScがハイレベルとなるので、スイッチSW1、SW2及びSW3がオン状態となる。この結果、図19に示すようにノードN2の電位は所定電位Vxとなり、また、ノードN3の電位も所定電位Vxとなる。
次に、時刻t3から時刻t4までの期間T4においては、駆動信号COMは、所定電位Vxとなっている。期間T4では、制御信号S1がハイレベルを維持するので、スイッチSW2がオン状態となる。一方、制御信号A1及びScがローレベルとなるので、スイッチSW1及びSW3がオフ状態となる。この結果、図20に示すようにノードN2の電位は所定電位Vxとなり、また、ノードN3の電位は抵抗R3によってバイアスされた状態で、圧電素子200に発生する起電力に応じて変動する上部電極201の電位VoutがハイパスフィルターHPF1を介して出力信号OUT1として取り出される。
なお、図18(B)に示すような、スイッチSW1がオン状態となり、スイッチSW2がオフ状態となることで、上部電極201と駆動信号供給部71とが電気的接続されている状態は、「第1接続状態」の一例である。 なお、図20に示すような、スイッチSW2がオン状態となり、スイッチSW1がオフ状態となることで、上部電極201と残留振動検出部33とが電気的接続されている状態は、「第2接続状態」の一例である。
そして、スイッチSW1とスイッチSW2とを備え、上部電極201と駆動信号供給部71とが電気的接続された第1接続状態と、上部電極201と残留振動検出部33とが電気的接続された第2接続状態と、を含む複数の接続状態から、第1接続状態または第2接続状態を選択可能な選択ユニットUは、「選択部」の一例である。
次に、時刻t4から時刻t5までの期間T5において、駆動信号COMは、所定電位Vxとなっている。期間T5では、期間T3と同様に、制御信号A1、S1及びScがハイレベルとなるので、スイッチSW1、SW2及びSW3がオン状態となる。この結果、図19に示すようにノードN2の電位は所定電位Vxとなり、また、ノードN3の電位も所定電位Vxとなる。
次に、時刻t5から時刻t6までの期間T6は、期間T2と同様に、制御信号A1及びScがハイレベルとなるので、スイッチSW1及びSW3がオン状態となる。一方、制御信号S1がローレベルとなるので、スイッチSW2がオフ状態となる。この結果、図18(B)に示すように駆動信号COMがスイッチSW1を介して圧電素子200に印加される。また、スイッチSW3がオン状態となるので、ノードN4の電位はアナロググランドAGNDにクランプされる。
<<6.吐出状態判定部の動作>>
次に、図21及び図22を参照しつつ、吐出状態判定部10の動作について説明する。
上述のとおり、吐出状態判定部10は、計測部12と、判定情報生成部14と、を備える。
計測部12には、残留振動検出部33において上部電極201の電位Voutの変化を示す信号を整形した検出信号Vdと、制御部6が生成するマスク信号Mskと、検出信号Vdの振幅中心レベルの電位に定められた閾値電位Vth_cと、閾値電位Vth_cよりも高電位に定められた閾値電位Vth_oと、閾値電位Vth_cよりも低電位に定められた閾値電位Vth_uと、が供給される。計測部12は、これらの信号等に基づいて、残留振動の1周期の時間長Tcを示す周期情報NTcと、当該周期情報NTcが有効な値であるか否かを示す有効性フラグFlagと、を出力する。
図21は、計測部12の動作を示すタイミングチャートである。
この図に示すように、計測部12は、検出信号Vdの示す電位と閾値電位Vth_cとを比較して、検出信号Vdの示す電位が閾値電位Vth_c以上となる場合にハイレベルとなり、検出信号Vdの示す電位が閾値電位Vth_c未満となる場合にローレベルとなる比較信号Cmp1を生成する。
また、計測部12は、検出信号Vdの示す電位と閾値電位Vth_oとを比較して、検出信号Vdの示す電位が閾値電位Vth_o以上となる場合にハイレベルとなり、検出信号Vdの示す電位が閾値電位Vth_o未満となる場合にローレベルとなる比較信号Cmp2を生成する。
また、計測部12は、検出信号Vdの示す電位と閾値電位Vth_uとを比較して、検出信号Vdの示す電位が閾値電位Vth_u未満となる場合にハイレベルとなり、検出信号Vdの示す電位が閾値電位Vth_u以上となる場合にハイレベルとなる比較信号Cmp3を生成する。
マスク信号Mskは、残留振動検出部33からの検出信号Vdの供給が開始されてから所定の期間Tmskの間だけハイレベルとなる信号である。本実施形態では、検出信号Vdのうち、期間Tmskの経過後の検出信号Vdのみを対象として周期情報NTcを生成することで、残留振動の開始直後に重畳するノイズ成分を除去した精度の高い周期情報NTcを得ることができる。
計測部12は、カウンタ(図示省略)を備える。当該カウンタは、マスク信号Mskがローレベルに立ち下がった後、検出信号Vdの示す電位が最初に閾値電位Vth_cと等しくなるタイミングである時刻t11において、クロック信号(図示省略)のカウントを開始する。そして、当該カウンタは、カウントを開始した後において、検出信号Vdの示す電位が、2度目に閾値電位Vth_cとなるタイミングである時刻t12においてクロック信号のカウントを終了させて、得られたカウント値を周期情報NTcとして出力する。このように、計測部12は、時刻t11から時刻t12までの時間長を、検出信号Vdの1周期分の時間長Tcとして計測することで、周期情報NTcを生成する。
ところで、図21において破線Vd´で示すように、検出信号Vdの振幅が小さい場合には、正確に検出信号Vdの周期を計測できない可能性が高くなる。また、検出信号Vdの振幅が小さい場合には、仮に周期情報NTcの結果のみに基づいて吐出部Dの吐出状態が正常であると判断される場合であっても、実際には吐出異常が生じている可能性が存在する。例えば、検出信号Vdの振幅が小さい場合、キャビティ220にインクが注入されていないことによりインクを吐出できない状態であること等が考えられる。そこで、本実施形態は、検出信号Vdの振幅が、周期情報NTcの計測のために十分な大きさを有しているか否かを判定し、当該判定の結果を有効性フラグFlagとして出力する。具体的には、計測部12は、カウンタによりカウントが実行されている期間、つまり、時刻t11から時刻t12までの期間において、検出信号Vdの示す電位が、閾値電位Vth_oを超え、且つ、閾値電位Vth_uを下回る場合に、有効性フラグFlagの値を、周期情報NTcが有効であることを示す値「1」に設定し、それ以外の場合には「0」に設定したうえで、この有効性フラグFlagを出力する。
このように本実施形態において、計測部12は、検出信号Vdの1周期分の時間長Tcを示す周期情報NTcを生成するのに加え、検出信号Vdが時間長Tcの計測のために十分な大きさの振幅を有しているか否かを判定するため、より正確に吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定することが可能となる。
判定情報生成部14は、周期情報NTc及び有効性フラグFlagに基づいて、吐出部Dにおけるインクの吐出状態を判定し、当該判定結果を示す判定情報RS1を生成する。
図22は、判定情報生成部14における判定の内容を説明するための説明図である。この図に示すように、判定情報生成部14は、周期情報NTcの示す時間長Tcを、閾値Tth1、閾値Tth1よりも長い時間長を表す閾値Tth2、及び、閾値Tth2よりも更に長い時間長を表す閾値Tth3の3つの閾値(または、これら3つの閾値うちの一部の閾値)と比較する。
ここで、閾値Tth1は、キャビティ220内部に気泡が発生して残留振動の周波数が高くなる場合における残留振動の1周期分の時間長と、吐出状態が正常である場合における残留振動の1周期分の時間長との境界を示すための値である。また、閾値Tth2は、ノズルNZ出口付近に紙粉等の異物が付着して残留振動の周波数が低くなる場合における残留振動の1周期分の時間長と、吐出状態が正常である場合における残留振動の1周期分の時間長との境界を示すための値である。また、閾値Tth3は、ノズルNZ付近におけるインクの固着または増粘により、紙粉が付着する場合よりもさらに残留振動の周波数が低くなる場合における残留振動の1周期分の時間長と、ノズルNZ出口付近に紙粉が付着した場合における残留振動の1周期分の時間長との境界を示すための値である。
図22に示すように、判定情報生成部14は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、時間長Tcが「Tth1≦Tc≦Tth2」を満たす場合には、吐出部Dにおけるインクの吐出状態が正常であると判定し、判定情報RS1に対して、吐出状態が正常であることを示す値「1」を設定する。
一方、判定情報生成部14は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、時間長Tcが「Tc<Tth1」を満たす場合には、キャビティ220に生じた気泡により吐出異常が発生していると判定し、判定情報RS1に対して、気泡による吐出異常が発生していることを示す値「2」を設定する。
また、判定情報生成部14は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、時間長Tcが「Tth2<Tc≦Tth3」を満たす場合には、ノズルNZ出口付近に付着した紙粉等の異物により吐出異常が発生していると判定し、判定情報RS1に対して、異物付着による吐出異常が発生していることを示す値「3」を設定する。
また、判定情報生成部14は、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、時間長Tcが「Tth3<Tc」を満たす場合には、インクの増粘により吐出異常が発生していると判定し、判定情報RS1に対して、インク増粘による吐出異常が発生していることを示す値「4」を設定する。
また、判定情報生成部14は、有効性フラグFlagの値が「0」である場合には、判定情報RS1に対して、インクが注入されていない等のなんらかの原因により吐出異常が発生していることを示す値「5」を設定する。
以上のように、判定情報生成部14では、吐出部Dにおける吐出状態を判定し、判定結果を示す判定情報RS1を生成する。このため、制御部6は、判定情報RS1に基づいて、各ヘッドユニット30に設けられたn個の吐出部Dの各々において吐出異常が生じているか否かを把握することが可能となる。そして、制御部6は、吐出異常が生じている場合には、印刷処理を中断して回復処理を実行するようにインクジェットプリンター1の動作を制御することができる。これにより、吐出異常に起因する印刷品質の低下を最小限に留めることができる。
<<7.検査処理>>
次に、本実施形態に係るインクジェットプリンター1が実行する検査処理について説明する。
検査処理とは、残留振動検出部33及び吐出状態判定部10が、正常に動作可能か否かを判定する処理である。換言すれば、検査処理とは、残留振動検出部33及び吐出状態判定部10が、吐出状態判定処理を実行可能であるか否かを判定する処理である。
本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、検査処理を、インクジェットプリンター1の製造工程であって、当該インクジェットプリンター1において吐出状態判定処理が最初に実行されるよりも前のタイミングにおいて実行する。また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、検査処理を、吐出部Dのキャビティ220にインクが充填されていない状態で実行する。
図23乃至図25を参照しつつ、検査処理の詳細を説明する。
図23は、検査処理が実行される場合におけるインクジェットプリンター1の動作の一例を示すフローチャートである。
この図に示すように、検査処理が開始されると、制御部6は、配線L1の電位が所定電位Vxに設定されるように、駆動信号供給部71を制御する(S100)。すなわち、検査処理が実行される期間において、駆動信号供給部71は、配線L1に対する駆動信号COMの供給を停止して、配線L1の電位を所定電位Vxに設定する。
また、制御部6は、共通電極Lvに対して、検査波形PTを有する基準電位信号SVが供給されるように、基準信号供給部72を制御する(S110)。すなわち、検査処理において、基準信号供給部72は、共通電極Lvに対して、信号レベルが基準電位VBSに固定された基準電位信号SVを供給する代わりに、検査波形PTを有する基準電位信号SVを供給する。
以下では、検査波形PTに設定された基準電位信号SV等の、検査波形PTを有する信号を、「検査信号」と称する場合がある。つまり、基準信号供給部72は、検査信号を供給する「検査信号供給部」の一例である。
なお、本実施形態において、基準信号供給部72は、検査波形PTを、残留振動検出部33を通過できるような波形に定める。つまり、本実施形態に係る検査波形PTは、検査波形PTを有する信号が、ハイパスフィルターHPF1及びローパスフィルター37を通過することができるように定められる。
具体的には、本実施形態に係る検査波形PTは、検査波形PTの周期PTcが、閾値TthA以上であり、且つ、閾値TthB以下となるるように定められる。ここで、閾値TthAとは、ハイパスフィルターHPF1の通過帯域の下限の周波数に対応する周期の時間長を示す値である。また、閾値TthBとは、ローパスフィルター37の通過帯域の上限の周波数に対応する周期の時間長を示す値である。つまり、残留振動検出部33は、閾値TthA以上で且つ閾値TthB以下の周期を有する信号を通過させて、検出信号Vdを出力する。
また、本実施形態において、基準信号供給部72は、検査波形PTを有する信号に基づいて残留振動検出部33が検出信号Vdを生成し、当該検出信号Vdが計測部12に供給された場合において、計測部12の生成する有効性フラグFlagの値が「1」となるような振幅を有すように、検査波形PTを定める。
具体的には、本実施形態に係る検査波形PTは、検査波形PTを有する信号に基づいて残留振動検出部33が生成した検出信号Vdの振幅が、閾値電位Vth_oと閾値電位Vth_cとの差分よりも大きく、且つ、閾値電位Vth_cと閾値電位Vth_uとの差分よりも大きくなるように定められる。
図23に示すように、制御部6は、変数qを「1」に設定する(S120)。なお、変数qは、1≦q≦nを満たす自然数であり、n個の吐出部Dの中から一の吐出部Dを指定するための変数である。
その後、制御部6は、n個の吐出部Dのうち、q番目の吐出部Dに設けられる圧電素子200の上部電極201の電位Voutを、残留振動検出部33が検出するように、集積回路300の動作を制御する(S130)。
具体的には、ステップS130において、制御部6は、制御信号生成部31が、制御信号Aqをローレベルとし、制御信号A1〜Anのうち制御信号Aq以外をハイレベルとし、制御信号Sqをハイレベルとし、制御信号S1〜Snのうち制御信号Sq以外をローレベルとするような、印字データSIを、制御信号生成部31に供給する。制御信号生成部31は、印字データSIに従って、制御信号Aqをローレベルとし、制御信号Sqをハイレベルとする。
この結果、図24に示すように、選択ユニットUqにおいて、スイッチSW1はオフ状態となり、スイッチSW2はオン状態となる。また、選択ユニットU1〜Unのうち、選択ユニットUq以外の選択ユニットUにおいて、スイッチSW1がオン状態となり、スイッチSW2はオフ状態となる。これにより、ノードN3の電位は、q番目の吐出部Dの上部電極201の電位Voutとなり、残留振動検出部33は、q番目の吐出部Dの上部電極201の電位Voutを検出することになる。この場合、残留振動検出部33は、q番目の吐出部Dの下部電極202に供給される、検査波形PTを有する基準電位信号SVの示す電位の変化を、q番目の吐出部Dの圧電素子200を介して検出する。そして、残留振動検出部33は、q番目の吐出部Dの上部電極201の電位Voutを検出すると、検出した電位Voutに基づいて検出信号Vdを生成する。
次に、制御部6は、図23に示すように、q番目の吐出部Dに対応して吐出状態判定部10が生成した判定情報RS2を取得し、取得した判定情報RS2を記憶部62に記憶させる(S140)。
具体的には、第1に、ステップS130において残留振動検出部33が生成した検出信号Vdに基づいて、計測部12が、当該検出信号Vdの有する周期の時間長Tcを示す周期情報NTcと、当該検出信号Vdの有する振幅が周期情報NTcに必要な所定の振幅以上であるか否かを示す有効性フラグFlagと、を生成する。第2に、判定情報生成部14が、計測部12の生成した周期情報NTcと有効性フラグFlagとに基づいて、残留振動検出部33において、q番目の吐出部Dの上部電極201の電位Voutに応じた検出信号Vdが生成されたか否かを判定し、当該判定結果を示す判定情報RS2を生成する。換言すれば、判定情報生成部14において、残留振動検出部33が正常に動作するか否かを判定し、当該判定の結果を示す判定情報RS2を生成する。第3に、制御部6が、判定情報生成部14の生成した判定情報RS2を取得し、取得した判定情報RS2を吐出部Dの番号「q」と関連付けて、記憶部62に記憶させる。
図25は、検査処理において判定情報生成部14が実行する判定の内容を説明するための説明図である。この図に示すように、判定情報生成部14は、検査処理において、閾値Tth1よりも短い時間長を示す閾値TthA、及び、閾値Tth3よりも長い時間長を示す閾値TthBの少なくとも一方と、周期情報NTcの示す時間長Tcと、を比較する。
より具体的には、判定情報生成部14は、検査処理において、有効性フラグFlagの値が「1」であり、且つ、時間長Tcが「TthA≦Tc≦TthB」を満たす場合には、判定情報RS2に対して、残留振動検出部33が正常に動作することを示す値「1」を設定する。
また、判定情報生成部14は、検査処理において、時間長Tcが「Tc<TthA」を満たす場合、時間長Tcが「TthB<Tc」を満たす場合、または、有効性フラグFlagの値が「0」の場合には、判定情報RS2に対して、残留振動検出部33が正常に動作しないことを示す値「0」を設定する。すなわち、残留振動検出部33が、q番目の吐出部Dの上部電極201の電位Voutの検出をできない場合、または、残留振動検出部33が、q番目の吐出部Dの上部電極201の電位Voutの検出結果に基づいて検出信号Vdを生成できない場合、において、q番目の吐出部Dに対応する判定情報RS2に対して「0」が設定される。
なお、判定情報RS2の示す値が「1」である場合とは、吐出状態判定部10が、ステップS110において設定された検査波形PTに対応した内容の判定情報RS2を生成したことを意味する。つまり、判定情報RS2の示す値が「1」である場合には、「0」である場合と比較して、吐出状態判定部10が正常に動作している可能性が高いことになる。換言すれば、検査処理により、残留振動検出部33が正常に動作可能か否かを判定するとともに、吐出状態判定部10が正常に動作可能か否かを所定の精度で判定することができる。
なお、制御部6は、ステップS140において、計測部12の生成する周期情報NTcの示す時間長Tcと、検査波形PTの有する周期PTcとの差分が、所定の閾値以下であるか否かを判定してもよい。この場合、計測部12が、検出信号Vdの有する時間長Tcを正確に検出可能か否かについて、判定することができる。
また、制御部6は、検査波形PTの周期PTcを、「PTc<TthA」、「TthA≦PTc≦TthB」、及び、「TthB<PTc」の3パターンに変化させたうえで、各パターン毎に判定情報RS2を取得してもよい。つまり、制御部6は、各吐出部Dに対して、ステップS110を、周期PTcを3パターンに変化させて3回実行し、3パターンの周期PTcと1対1に対応して3回実行されるステップS140の処理において、3パターンの周期PTcと1対1に対応する3個の判定情報RS2を取得してもよい。この場合、制御部6は、ステップS110において設定した検査波形PTの周期PTcと、ステップS140において取得した判定情報RS2の内容と、が整合が取れているか否かを、判定してもよい。具体的には、周期PTcが「PTc<TthA」である場合に判定情報RS2が「0」を示し、周期PTcが「TthA≦PTc≦TthB」である場合に判定情報RS2が「1」を示し、且つ、周期PTcが「TthB<PTc」である場合に判定情報RS2が「0」を示すか否かを判定してもよい。この場合、判定情報生成部14が、図25に示す判定を正確に実行可能か否かについて、検査することができる。
説明を図23に戻す。
図23に示すように、制御部6は、n個の吐出部Dに1対1に対応するn個の判定情報RS2の取得が完了したか否かを判定する(S150)。
制御部6は、ステップS150における判定の結果が否定である場合、変数qに「1」を加算したうえで、処理をステップS130に進める(S160)。
他方、制御部6は、ステップS150における判定の結果が肯定である場合、検査処理において取得したn個の判定情報RS2に基づいて、検査処理の結果を示す情報を生成し、当該情報を操作パネル93の表示部に表示させたうえで(S170)、検査処理を終了させる。ここで、検査処理の結果を示す情報とは、例えば、残留振動検出部33が正常に動作するか否かを表す情報である。
なお、制御部6は、図23に示すステップS100〜S170のうち、一部または全部の処理を実行することで、検査部60として機能する。
<<8.第1実施形態の結論>>
以上において説明したように、本実施形態では、インクジェットプリンター1の製造工程において、検査処理を実行する。
このため、吐出状態判定処理において、吐出部Dの吐出状態の判定を正確に判定可能か否かを、吐出状態判定処理が実行される前に事前に把握することができる。つまり、例えば、吐出状態判定処理において誤判定が発生する可能性が高い場合には、誤判定が発生する危険性の存在を事前に把握することができる。これにより、吐出状態判定処理において誤判定がなされる状態が継続することに起因して、回復処理や、ヘッドユニット30の交換等が為されず、この結果、印刷処理において形成される画像の画質が低下する、という事態の招来を防止することができる。
また、本実施形態では、検査処理において用いられる検査波形PTが、キャビティ220にインクが充填された吐出部Dに生じる残留振動と同様の特性を有するように定められる。つまり、検査波形PTが、インクが充填された吐出部Dに生じる残留振動と同様に、周期が、閾値TthA以上で且つ閾値TthB以下であり、振幅が、周期情報NTcの計測に必要な所定の振幅以上の振幅を有するような波形に定められる。
このため、検査処理において、キャビティ220にインクを充填することなく、吐出状態判定処理と同様の状況、つまり、キャビティ220にインクが充填された吐出部Dに残留振動が生じている状況を、擬似的に作出できる。
これにより、本実施形態では、検査処理を実行することにより、残留振動検出部33及び吐出状態判定部10が、吐出状態判定処理において正常に動作するか否かを検査することができる。また、本実施形態では、キャビティ220にインク充填することなく検査処理を実行できるため、検査処理に要する処理負荷を低減し、ひいては、インクジェットプリンター1の製造コストを低減させることが可能となる。
また、本実施形態では、検査処理において、共通電極Lvに供給される基準電位信号SVに検査波形PTを設定することで、下部電極202に対して検査信号を供給する。つまり、印刷処理や吐出状態判定処理においては、共通電極Lvに対して、基準電位VBSに設定された基準電位信号SVを供給する一方で、検査処理においては、共通電極Lvに対して、検査波形PTを有する検査信号を供給する。
ところで、例えば、駆動信号COMに検査波形PTを設定することで、上部電極201に対して直接に検査信号を供給するという態様(以下、当該態様を「対比例1」と称する)も想定される。
しかし、対比例1では、配線L1に供給される駆動信号COMが、ノードN2、抵抗R3、及び、ノードN3を介して、残留振動検出部33に検出される。この場合、残留振動検出部33の検出する電位が、上部電極201の電位Voutであるのか、または、配線L1に供給される駆動信号COMの電位であるのか、の区別が困難となることがある。つまり、対比例1に係る残留振動検出部33は、検査波形PTを有する上部電極201の電位Voutを検出できない場合であっても、検査波形PTを有する駆動信号COMを、電位Voutと誤認して検出してしまうことがある。このため、対比例1では、残留振動検出部33が、各吐出部Dの上部電極201の電位Voutを検出可能か否かを正確に判定することはできない。
また、例えば、検査処理において、吐出状態判定処理と同様に、吐出部Dに生じる残留振動を残留振動検出部33に検出させることで、残留振動検出部33が、吐出部Dの上部電極201の電位Voutを検出して検出信号Vdを生成可能か否かを判定する態様(以下、当該態様を、「対比例2」と称する)も想定される。
しかし、キャビティ220にインクが充填されていない状態において吐出部Dに生じる残留振動は、キャビティ220にインクが充填されている場合と比較して周波数が高くなり、残留振動検出部33のローパスフィルター37を通過することができなくなる。このため、対比例2では、キャビティ220にインクを充填することが必要となる。この場合、検査処理において、キャビティ220にインクを充填する作業が生じるため、検査処理を実行するための負荷が増大し、ひいては、インクジェットプリンター1の製造コストの増加に繋がる。
これに対して、本実施形態では、下部電極202に対して検査信号を供給し、検査信号が供給されるタイミングにおいて、残留振動検出部33が上部電極201の電位Voutを検出する。このため、検査処理において、キャビティ220にインクを充填することなく、残留振動検出部33が上部電極201の電位Voutを検出して検出信号Vdを生成可能か否かを判定することができる。すなわち、本実施形態は、上述した対比例1と比較して、残留振動検出部33を正確に検査することが可能となり、また、上述した対比例2と比較して、検査処理に係る負荷を軽減することが可能となる、という利点を有する。
なお、吐出状態判定処理において吐出状態判定部10が実行する判定、すなわち、吐出状態判定処理において残留振動検出部33が検出する検出信号Vdの1周期の時間長Tcが、「Tth1≦Tc≦Tth2」を充足するか否かの判定は、上部電極201に駆動信号COMが供給された場合に残留振動検出部33が出力する検出信号Vdの波形が、第1の特性を有するか否かを判定する「第1の判定」の一例である。すなわち、本実施形態では、信号の1周期の時間長Tcが「Tth1≦Tc≦Tth2」を充足することを、「第1の特性」として例示している。
また、検査処理において吐出状態判定部10が実行する判定、すなわち、検査処理において残留振動検出部33が検出する検出信号Vdの1周期の時間長Tcが、「TthA≦Tc≦TthB」を充足するか否かの判定は、下部電極202に検査信号が供給された場合に残留振動検出部33が出力する検出信号Vdの波形が、第2の特性を有するか否かを判定する「第2の判定」の一例である。すなわち、本実施形態では、信号の1周期の時間長Tcが「TthA≦Tc≦TthB」を充足することを、「第2の特性」として例示している。
また、吐出状態判定部10は、第1の判定と第2の判定とを実行する「判定部」の一例である。
<<B.第2実施形態>>
第2実施形態に係るインクジェットプリンター1は、残留振動検出部33の替わりに残留振動検出部33Aを用いる点を除いて、第1実施形態のインクジェットプリンター1と同様に構成されている。
なお、以下に例示する第2実施形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する(以下で説明する実施形態及び変形例についても同様)。
図26及び図27は、接続状態切替部32、残留振動検出部33A、及び、n個の圧電素子200の構成を示す回路図である。残留振動検出部33Aは、ハイパスフィルターHPF1、ゲイン調整部36、ローパスフィルター37、及び、バッファ38は、第1実施形態の残留振動検出部33と同様であるが、ハイパスフィルターHPF2を備える点と、差動増幅部39を備える点と、残留振動検出部33と相違する。ハイパスフィルターHPF2は、ノードN2とノードN5との間に設けられたキャパシターC2と、一方の端子がノードN5に接続され他方の端子にアナロググランドAGNDが供給される抵抗R2と、抵抗R2に並列に接続されたスイッチSW4と、を備える。スイッチSW4は、スイッチSW1、スイッチSW2、及び、スイッチSW3と同様に、トランスファーゲートで構成される。また、スイッチSW4には制御信号Scが供給され、スイッチSW3と同じタイミングでオン状態とオフ状態とが切り替わる。ハイパスフィルターHPF2からは、出力信号OUT2が出力される。そして、差動増幅部39には、ハイパスフィルターHPF1から出力される出力信号OUT1と、ハイパスフィルターHPF2から出力される出力信号OUT2と、が差動形式で供給される。差動増幅部39は、3個のオペアンプを用いて構成されたインスツルメンテーションアンプである。差動増幅部39のゲインGは以下の式で与えられる。
G=OUT3/(OUT1−OUT2)
=(1+2*R4/R3)*(R6/R5)
差動増幅部39は、高い同相除去比を有するので、配線L1と配線L2に同相ノイズが混入しても当該同相ノイズを抑圧して、シングルエンド形式の出力信号OUT3を生成することができる。出力信号OUT3は、ローパスフィルター37において高域周波数成分が減衰され、ゲイン調整部36においてゲインが調整され、バッファ38においてインピーダンスが変換されて、検出信号Vdとして吐出状態判定部10に供給される。
なお第2実施形態において、検査処理が実行される場合、制御信号生成部31、接続状態切替部32、及び、吐出状態判定部10は、第1実施形態と同様に動作すればよい。また、駆動信号供給部71は、配線L1の電位を所定電位Vxに固定し、基準信号供給部72は、共通電極Lvに検査波形PTを有する基準電位信号SVを供給すればよい。
<<C.第3実施形態>>
第3実施形態に係るインクジェットプリンター1は、接続状態切替部32の替わりに接続状態切替部32Aを用いる点、並びに、駆動信号供給部71が駆動信号COMa及び駆動信号COMbを生成する点を除いて、第1実施形態に係るインクジェットプリンター1と同様に構成されている。
図28は、接続状態切替部32Aと、n個の圧電素子200と、残留振動検出部33に設けられるハイパスフィルターHPF1と、の構成を示す回路図である。
この図に示すように接続状態切替部32Aは、n個の選択ユニットUA(選択ユニットUA1〜UAn)を有する選択回路UXAと、抵抗R3と、を備える。また、接続状態切替部32Aは、配線L1が、配線L1aと配線L1bと、を含み、配線L1aには駆動信号COMaが供給され、配線L1bには駆動信号COMbが供給される。また、接続状態切替部32Aは、配線L1aと抵抗R3との間に電気的に接続されるスイッチSW5と、配線L1bと抵抗R3との間に電気的に接続されるスイッチSW6と、を備える。
選択ユニットUA1は、スイッチSW1の代わりに、駆動信号COMa用のスイッチSW1aと、駆動信号COMb用のスイッチSW1bと、が設けられている点を除き、第1実施形態に係る選択ユニットU1と同様に構成されている。スイッチSW1aは、制御信号生成部31が生成する制御信号A1に基づいてオンオフが制御され、スイッチSW1bは、制御信号生成部31が生成する制御信号B1に基づいてオンオフが制御される。なお、他の選択ユニットUA2〜UAnも選択ユニットUA1と同様に構成されている。
スイッチSW5は、制御信号Saがハイレベルになるとオン状態となり、制御信号Saがローレベルになるとオフ状態になる。スイッチSW6は、制御信号Sbがハイレベルになるとオン状態となり、制御信号Sbがローレベルになるとオフ状態になる。
第3実施形態では、2種類の駆動信号COMa及びCOMbを用いて圧電素子200を駆動する。このため、多様な駆動パルスを圧電素子200に印加して、大きさの異なるインク滴をノズルNZから吐出させることが可能である。
図29は、接続状態切替部32Aの動作の一例を示すタイミングチャートである。この図に示すように、駆動信号COMaは、期間T10に判定用パルスP2を含み、期間T11〜期間T13において所定電位Vxとなり、期間T14において所定電位Vxから基準電位Vrefに下降し、期間T15において基準電位Vrefを維持し、期間T16に微振動パルスP1を含み、期間T17〜期間T21において基準電位Vrefを維持する。一方、駆動信号COMbは、期間T10に微振動パルスP1を含み、期間T11〜期間T15において基準電位Vrefを維持し、期間T16に判定用パルスP2を含み、期間T17〜期間T19において所定電位Vxを維持し、期間T20において所定電位Vxから基準電位Vrefに下降し、期間T21において基準電位Vrefを維持する。すなわち、期間T10〜期間T15からなる単位期間Taにおける駆動信号COMaの波形は、期間T16〜期間T21からなる単位期間Tbにおける駆動信号COMbの波形と略同じであり、単位期間Tbにおける駆動信号COMaの波形は、単位期間Taにおける駆動信号COMbの波形と略同じである。
図29に示す例では、単位期間Taにおいて、選択ユニットUA1に接続される圧電素子200に判定用パルスP2を印加し、単位期間Taのうち期間T12において当該圧電素子200における残留振動を検出する。また、単位期間Tbにおいて、選択ユニットUA2に接続される圧電素子200に判定用パルスP2を印加し、単位期間Tbのうち期間T18において当該圧電素子200における残留振動を検出する。また、他の選択ユニットUA3〜UAnに対応する圧電素子200には、単位期間Ta及び単位期間Tbにおいて微振動パルスP1が印加される。
図29に示す例のうち、期間T10について説明する。期間T10では、選択ユニットUA1において、制御信号A1がハイレベルとなるため駆動信号COMa用のスイッチSW1aがオン状態となり、駆動信号COMaの判定用パルスP2が圧電素子200−1に供給される。また、選択ユニットUA2において、制御信号B2がハイレベルとなるため駆動信号COMb用のスイッチSW1bがオン状態となり、駆動信号COMbの微振動パルスP1が圧電素子200−2に供給される。また、選択ユニットUA3〜UAnにおいて、制御信号B3〜Bnがハイレベルとなるため駆動信号COMb用のスイッチSW1bがオン状態となり、微振動パルスP1が圧電素子200−3〜200−nに供給される。
次に、この図に示す例でにおいて、期間T12について説明する。期間T12には、制御信号S1、Saがハイレベルとなり、選択ユニットUA1のスイッチSW2と、スイッチSW5と、がオン状態になる。また、制御信号Sc、A1、B1はローレベルとなるので、選択ユニットUA1のスイッチSW1a及びSW1bと、スイッチSW3がオフ状態になる。このため、圧電素子200−1に発生する起電力が、スイッチSW2→配線L2→キャパシターC1→ノードN4の経路で伝送され、出力信号OUT1として出力される。この際、ノードN3の電位は、抵抗R3によって駆動信号COMaの所定電位Vxにバイアスされる。
また、この図に示す例では、期間T11及び期間T13において、制御信号Sa、Sc、A1、S1がハイレベルとなる。このため、選択ユニットUA1のスイッチSW1a及びSW2がオン状態となり、スイッチSW3及びSW5がオン状態となる。このように、スイッチSW1a及びSW2を同時にオン状態にすることにより、ノードN3の電位が変動して、スイッチングノイズが発生するのを抑制することができる。また、スイッチSW3がオン状態となるので、ノードN4の電位がアナロググランドAGNDにクランプされる。これにより、スイッチングノイズが出力信号OUT1に重畳しないようにできる。
次に、この図に示す例では、期間T14において、制御信号A1がハイレベルとなり、スイッチSW1aがオン状態となるので、駆動信号COMaが圧電素子200−1に供給される。この結果、圧電素子200−1の上部電極122の電位が基準電位Vrefに戻される。
このように、図29に示す例では、単位期間Taにおいて、駆動信号COMaを用いて、圧電素子200−1に対応するヘッドの残留振動が計測される。この際、選択ユニットUA2の駆動信号COMb用のスイッチSW1bはオン状態となるので、圧電素子200−2には駆動信号COMbが供給される。
次に、図29に示す例では、単位期間Tbの期間T16〜T21の各々は、単位期間Taの期間T10〜T15の各々に対応している。具体的には、単位期間Tbの制御信号Saは単位期間Taの制御信号Sbと同じであり、単位期間Tbの制御信号Sbは単位期間Taの制御信号Saと同じであり、単位期間Tbの制御信号Scは単位期間Taの制御信号Scと同じであり、単位期間Tbの制御信号A1は単位期間Taの制御信号B2と同じであり、単位期間Tbの制御信号B1は単位期間Taの制御信号B1と同じであり、単位期間Tbの制御信号S1は単位期間Taの制御信号S2と同じであり、単位期間Tbの制御信号A2は単位期間Taの制御信号A2と同じであり、単位期間Tbの制御信号B2は単位期間Taの制御信号A1と同じであり、単位期間Tbの制御信号S2は単位期間Taの制御信号S1と同じである。
従って、単位期間Tbでは、選択ユニットUA2において駆動信号COMbを選択して、判定用パルスP2を圧電素子200−2に印加し、圧電素子200−2の残留振動を検出する。
なお、第3実施形態では、期間T10では、駆動信号COMaに判定用パルスP2を含ませ、駆動信号COMbに微振動パルスP1を含ませたが、微振動パルスP1の替わりにインクを吐出させる吐出パルスを含ませてもよい。この場合には、インクを吐出させるノズルNZとインクを非吐出として残留振動を検出するノズルNZとを混在させることが可能となる。
なお第3実施形態において、検査処理が実行される場合、駆動信号供給部71は、配線L1a及び配線L1bの電位を所定電位Vxに固定し、基準信号供給部72は、共通電極Lvに検査波形PTを有する基準電位信号SVを供給すればよい。また、制御信号生成部31は、残留振動検出部33が、各吐出部Dの上部電極201の電位Voutを検出できるような、制御信号Sを、接続状態切替部32Aに供給すればよい。
<<D.第4実施形態>>
第4実施形態に係るインクジェットプリンター1は、接続状態切替部32の替わりに接続状態切替部32Aを用い、残留振動検出部33の替わりに残留振動検出部33Aを用いる点を除いて、第1実施形態のインクジェットプリンター1と同様に構成されている。
図30は、接続状態切替部32A、残留振動検出部33A、及び、n個の圧電素子200の構成を示す回路図である。この図に示すように、本実施形態では、差動増幅部39に対して、ハイパスフィルターHPF1から出力される出力信号OUT1と、ハイパスフィルターHPF2から出力される出力信号OUT2と、が差動形式で供給される。そして、差動増幅部39は、図27に示すように、差動形式の出力信号OUT1及び出力信号OUT2に含まれる同相ノイズを除去しつつ、シングルエンド形式の出力信号OUT3を生成する。
なお第4実施形態において、検査処理が実行される場合、駆動信号供給部71は、配線L1a及び配線L1bの電位を所定電位Vxに固定し、基準信号供給部72は、共通電極Lvに検査波形PTを有する基準電位信号SVを供給すればよい。また、制御信号生成部31は、残留振動検出部33Aが、各吐出部Dの上部電極201の電位Voutを検出できるような、制御信号Sを、接続状態切替部32Aに供給すればよい。
<<E.変形例>>
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に述べる各種の変形例が可能である。また、各変形例は、変形例同士を適宜組み合わせてもよく、更に、上述した各実施形態と適宜組み合わせてもよい。
<変形例1>
上述した実施形態では、検出信号Vd等の信号の1周期の時間長Tcが「Tth1≦Tc≦Tth2」を充足することを、第1の特性とし、検出信号Vd等の信号の1周期の時間長Tcが「TthA≦Tc≦TthB」を充足することを、第2の特性としたが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、第1の特性は、信号の1周期の時間長Tcが、閾値Tth1、Tth2、及び、Tth3の中から選択した2つの閾値の間の値を示すという条件を充足するものであればよく、第2の特性は、信号の1周期の時間長Tcが、閾値TthA、Tth1、Tth2、Tth3、及び、TthBの中から選択した2つの閾値の間の値を示すという条件を充足するものであればよい。この場合、吐出状態判定部10は、検査処理において、判定情報RS2に加えて判定情報RS1を生成することが好ましい。
また、本変形例において、第1の特性と、第2の特性とは、同一の特性であってもよい。例えば、第1の特性及び第2の特性を、共に、「Tth1≦Tc≦Tth2」という条件を充足する特性として規定してもよい。
また、本変形例においても、制御部6は、検査処理において、検査波形PTの周期PTcを複数回変化させて、図23のステップS110に係る処理と、ステップS140に係る処理とを、複数回実行してもよい。
具体的には、制御部6は、検査処理において、検査波形PTの周期PTcを、例えば、「PTc<TthA」、「TthA≦PTc<Tth1」、「Tth1≦PTc≦Tth2」、「Tth2<PTc≦Tth3」、「Tth3<PTc≦TthB」、「TthB<PTc」の、6パターンのうち、2以上のパターンに変化させたうえで、当該2以上のパターンのそれぞれにおいて、判定情報RS1及び判定情報RS2を取得してもよい。そして、この場合、制御部6は、例えば、周期PTcが「PTc<TthA」である場合に、判定情報RS1が「2」を示し且つ判定情報RS2が「0」を示すという第1条件、周期PTcが「TthA≦PTc<Tth1」である場合に、判定情報RS1が「2」を示し且つ判定情報RS2が「1」を示すという第2条件、周期PTcが「Tth1≦PTc≦Tth2」である場合に、判定情報RS1が「1」を示し且つ判定情報RS2が「1」を示すという第3条件、周期PTcが「Tth2<PTc≦Tth3」である場合に、判定情報RS1が「3」を示し且つ判定情報RS2が「1」を示すという第4条件、周期PTcが「Tth3<PTc≦TthB」である場合に、判定情報RS1が「4」を示し且つ判定情報RS2が「1」を示すという第5条件、及び、周期PTcが「TthB<PTc」である場合に、判定情報RS1が「4」を示し且つ判定情報RS2が「0」を示すという第6条件、のうち、一部または全部の条件を充足するか否かを判定してもよい。この場合、判定情報生成部14が、吐出状態判定処理における第1の判定を正確に実行可能か否かを検査することができる。
<変形例2>
上述した実施形態及び変形例において、第1の特性及び第2の特性は、信号の1周期の時間長Tcが所定の範囲にあるという、信号の周波数に係る特性であるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、第1の特性及び第2の特性は、信号の振幅が所定の範囲であること、または、信号の位相が所定の範囲であること、等、信号の波形に関する特性であれば、どのようなものであってもよい。
<変形例3>
上述した実施形態及び変形例において、検査処理は、インクジェットプリンター1の製造工程であって、インクジェットプリンター1において吐出状態判定処理が最初に実行される前のタイミングにおいて、キャビティ220にインクが充填されていない状態で実行されるが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、検査処理は、インクジェットプリンター1の製造工程が完了した後に実行されてもよいし、インクジェットプリンター1において吐出状態判定処理が最初に実行された後に実行されてもよいし、キャビティ220にインクが充填されている状態で実行されてもよい。
<変形例4>
上述した実施形態及び変形例では、インクジェットプリンター1としてヘッドの主走査方向と紙送りの副走査方向が異なるシリアルプリンターを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ヘッドの幅が用紙の幅となるラインプリンターであってもよい。
<変形例5>
上述した実施形態及び変形例において、液体吐出装置としてCMYKの4色のインクを吐出可能なインクジェットプリンターを例示して説明したが、1色以上のインクを吐出可能であればよい。つまり、上述した実施形態及び変形例では、4個のヘッドユニット30を備える場合を例示して説明したが、ヘッドユニット30の個数は1以上であればよい。
1…インクジェットプリンター、6…制御部、10…吐出状態判定部、12…計測部、14…判定情報生成部、20…記録ヘッド、30…ヘッドユニット、31…制御信号生成部、32…接続状態切替部、33…残留振動検出部、60…検査部、62…記憶部、71…駆動信号供給部、72…基準信号供給部、200…圧電素子、201…上部電極、202…下部電極、220…キャビティ、300…集積回路、D…吐出部、NZ…ノズル、U…選択ユニット。

Claims (9)

  1. 第1電極及び第2電極を具備し、前記第1電極の電位と前記第2電極の電位との電位差に応じて変位する圧電素子と、
    液体を充填可能であり、前記圧電素子の変位に応じて容積を変化させる圧力室と、
    前記圧力室に連通し、前記圧力室に液体が充填されている場合において、前記第1電極に駆動信号が供給された際に生じる前記圧力室の容積の変化に応じて、前記圧力室に充填された液体を吐出可能なノズルと、
    前記第1電極の電位を検出し、検出結果に基づいて検出信号を生成可能な検出部と、
    前記第1電極に前記駆動信号が供給された場合において、前記検出部が生成する検出信号の波形が、第1の特性を有するか否かを判定する第1の判定と、
    前記第2電極に検査信号が供給されている場合において、前記検出部が生成する検出信号の波形が、第2の特性を有するか否かを判定する第2の判定と、
    を実行する判定部と、
    を備える、
    ことを特徴とする液体吐出装置。
  2. 駆動信号を供給する駆動信号供給部と、
    検査信号を供給する検査信号供給部と、
    第1電極及び第2電極を具備し、前記第1電極の電位と前記第2電極の電位との電位差に応じて変位する圧電素子と、
    液体を充填可能であり、前記圧電素子の変位に応じて容積を変化させる圧力室と、
    前記圧力室に連通し、前記圧力室に液体が充填されている場合において、前記第1電極に駆動信号が供給された際に生じる前記圧力室の容積の変化に応じて、前記圧力室に充填された液体を吐出可能なノズルと、
    前記第1電極の電位を検出し、検出結果に基づいて検出信号を生成可能な検出部と、
    前記第1電極を前記駆動信号供給部に電気的に接続させる第1接続状態と、前記第1電極を前記検出部に電気的に接続させる第2接続状態と、を選択可能な選択部と、
    前記圧力室に液体が充填されている場合であり、且つ、前記選択部が前記第1接続状態を選択して前記駆動信号供給部が前記第1電極に前記駆動信号を供給した後に前記選択部が前記第2接続状態を選択する場合において、前記検出部が生成する検出信号の波形が、第1の特性を有するか否かを判定する第1の判定と、
    前記選択部が前記第2接続状態を選択して前記検査信号供給部が前記第2電極に前記検査信号を供給する場合において、前記検出部が生成する検出信号の波形が、第2の特性を有するか否かを判定する第2の判定と、
    を実行する判定部と、
    を備える、
    ことを特徴とする液体吐出装置。
  3. 前記第2の判定の結果に基づいて、前記判定部が、前記第1の判定を実行可能か否かを検査する検査部
    を備える、
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の液体吐出装置。
  4. 前記判定部は、
    前記圧力室に液体が充填されていない場合において、前記第2の判定を実行する、
    ことを特徴とする、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
  5. 前記検出部は、
    検出した前記第1電極の電位のうち、所定の周波数よりも高い周波数成分を減衰させるローパスフィルターを備え、
    前記検査信号は、
    前記所定の周波数以下の周波数を有する、
    ことを特徴とする、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
  6. 前記所定の周波数は、
    前記圧力室に液体が充填されている場合において、前記第1電極に前記駆動信号が供給された後に前記圧力室に生じる残留振動の周波数よりも高い、
    ことを特徴とする、請求項5に記載の液体吐出装置。
  7. 前記第2電極は、
    前記圧力室に液体が充填されている場合において、所定の基準電位に設定される、
    ことを特徴とする、請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の液体吐出装置。
  8. 第1電極及び第2電極を具備し、前記第1電極の電位と前記第2電極の電位との電位差に応じて変位する圧電素子と、
    液体を充填可能であり、前記圧電素子の変位に応じて容積を変化させる圧力室と、
    前記圧力室に連通し、前記圧力室に液体が充填されている場合において、前記第1電極に駆動信号が供給された際に生じる前記圧力室の容積の変化に応じて、前記圧力室に充填された液体を吐出可能なノズルと、
    前記第1電極の電位を検出し、検出結果に基づいて検出信号を生成可能な検出部と、
    を備える液体吐出装置の制御方法であって、
    前記第1電極に前記駆動信号が供給された場合において、
    前記検出部が生成する検出信号の波形が、第1の特性を有するか否かを判定し、
    前記第2電極に検査信号が供給されている場合において、
    前記検出部が生成する検出信号の波形が、第2の特性を有するか否かを判定する、
    ことを特徴とする液体吐出装置の制御方法。
  9. 第1電極及び第2電極を具備し、前記第1電極の電位と前記第2電極の電位との電位差に応じて変位する圧電素子と、
    液体を充填可能であり、前記圧電素子の変位に応じて容積を変化させる圧力室と、
    前記圧力室に連通し、前記圧力室に液体が充填されている場合において、前記第1電極に駆動信号が供給された際に生じる前記圧力室の容積の変化に応じて、前記圧力室に充填された液体を吐出可能なノズルと、
    前記第1電極の電位を検出し、検出結果に基づいて検出信号を生成可能な検出部と、
    コンピューターと、
    を備える液体吐出装置の制御プログラムであって、
    前記コンピューターを、
    前記第1電極に前記駆動信号が供給された場合において、
    前記検出部が生成する検出信号の波形が、第1の特性を有するか否かを判定する第1の判定と、
    前記第2電極に検査信号が供給されている場合において、
    前記検出部が生成する検出信号の波形が、第2の特性を有するか否かを判定する第2の判定と、
    を実行する判定部として機能させる、
    ことを特徴とする液体吐出装置の制御プログラム。
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