JP2016192294A - バナジウム系レドックス電池用イオン交換膜、複合体、及びバナジウム系レドックス電池 - Google Patents

バナジウム系レドックス電池用イオン交換膜、複合体、及びバナジウム系レドックス電池 Download PDF

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良平 岩原
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真佐子 吉岡
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Abstract

【課題】高エネルギー効率及び長期充放電サイクル耐久性に優れた、バナジウム系レドックス電池用イオン交換膜として際立った性能を示す材料を提供することにある。
【解決手段】イオン交換樹脂層及び親水化された多孔質材料層からなる複合イオン交換膜であって、前記イオン交換樹脂層が複合イオン交換膜の片面の最外層として配置され、かつその厚みが5〜50μmであり、イオン交換樹脂層を正極側、親水化された多孔質材料層を負極側に配置することを特徴とする、バナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、イオン交換樹脂と多孔質基材から成る複合イオン交換膜に関するものであり、特に、バナジウム系レドックス電池に有用である。
近年、エネルギー効率や環境性に優れた新しい二次電池が注目を集めている。特に、太陽光や風力などの自然エネルギーを貯蔵するため、大型の二次電池が強く求められている。中でも、レドックスフロー電池は充放電サイクル耐性や安全性に優れるため、大型の二次電池に最適である。
レドックスフロー電池は一般的に、ポンプの循環によって、硫酸バナジウム溶液中のバナジウムの酸化還元反応を起こし、エネルギーを得る電池である。このレドックスフロー電池は、両極間のイオンバランスを保つためにカチオン交換膜またはアニオン交換膜が用いられている。
アニオン交換膜には旭ガラス社製のセレミオンAPSが用いられている。しかしながら、アニオン交換膜は硫酸アニオンなどイオン半径の大きいイオンを通す必要があるため、抵抗が高いなどの問題点がある。
イオン交換膜には、イオン伝導性以外にも、電解液の透過防止や機械的強度などの特性が必要である。このようなイオン交換膜としては、例えば米国デュポン社製ナフィオン(登録商標)に代表されるようなスルホン酸基を導入したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含む膜や、トクヤマ社製ネオセプタに代表されるようなポリスチレンスルホン酸架橋体を含む膜が用いられている。
ナフィオンなどのパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含む膜は化学耐久性に優れ、プロトン伝導性が高く、セル抵抗を低くできる長所を有している。しかしながら、ナフィオンはイオン透過選択性に乏しいという問題点もある。具体的には、充放電中にバナジウムイオンも通してしまうため、電解液中の活物質量が減少し、充放電サイクルが著しく悪化してしまう。また、高コスト、廃棄時の環境負荷が大きいという問題点もある。
一方、ネオセプタなどのポリスチレンスルホン酸架橋体を含む膜は低コストで、バナジウムイオンを通しにくく、イオン透過選択性に優れるなどの長所を有している。しかしながら、加水分解や発熱時にスルホン酸基が脱離してしまうなど、化学耐久性や耐熱性にも課題を抱えている。
バナジウム系のレドックス電池において、充電時に正極側で5価バナジウムが生成する。この5価バナジウムは非常に酸化力が強いため、イオン交換膜や多孔質基材を著しく劣化させてしまう。一般的に、炭化水素系のイオン交換膜は初期エネルギー効率に優れるものの、耐酸化性に乏しく、5価バナジウムに対する耐性が低い問題点がある。一方、前述のナフィオンなどのパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーは5価バナジウムに対する耐性は非常に優れるものの、イオン透過選択性に乏しく、初期エネルギー効率が低い傾向にある。このように、初期エネルギー効率と耐酸化性を両立することは極めて困難であった。
そこで、バナジウム系レドックス電池用イオン交換膜において、高エネルギー効率と高耐久性を両立させるための手法がいくつか提案されている。例えば、特許文献1〜3では芳香族ポリマーにスルホン酸基を導入し、機械強度と耐熱性を向上している。しかしながら、これらの手法で作製した膜であっても、充放電のサイクルを重ねる毎に分子量が著しく低下し、バナジウム系のレドックス電池として用いるには耐酸化性が不十分であった。
また、特許文献4〜5では、イオン交換樹脂を多孔質基材中に含浸させることで複合化し、5価バナジウムによる劣化を補強材で補う手法が提案されている。しかしながら、含浸したイオン交換樹脂層によって高抵抗してしまうため、本手法では初期特性と耐久性の両立が容易ではない問題がある。
特許第3928611号公報 特表2004−509224号公報 特開2006−137792号広公報 特許第3729296号公報 特開平11−335473号公報
そこで、本発明の目的は、かかる事情に鑑み、低抵抗かつ長期充放電サイクルに耐久性に優れたバナジウム系レドックス電池用イオン交換膜を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究したところ、イオン交換樹脂層及び親水化された多孔質材料層からなる複合イオン交換膜であって、前記イオン交換樹脂層が複合イオン交換膜の片面の最外層として配置され、かつその厚みが5〜50μmであり、イオン交換樹脂層を正極側、親水化された多孔質材料層を負極側に配置することにより、上記目的が達成されることを見いだすに至った。
本発明は、以下の構成からなる。
1.イオン交換樹脂層及び親水化された多孔質材料層からなる複合イオン交換膜であって、前記イオン交換樹脂層が複合イオン交換膜の片面の最外層として配置され、かつその厚みが5〜50μmであり、該イオン交換樹脂層をバナジウム系レドックス電池の正極側に、該親水化された多孔質材料層を該バナジウム系レドックス電池の負極側に配置して使用することを特徴とする、バナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜。
2.前記親水化された多孔質材料層は、合成繊維布帛、化学繊維布帛、天然繊維布帛、合成繊維不織布、化学繊維不織布、紙、多孔フィルム、多孔金属板、多孔セラミック板からなる群より選択されるいずれかの多孔質材料層が親水化処理されてなることを特徴とする、1.に記載のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜。
3.前記複合イオン交換膜のイオン交換膜樹脂層において、下記一般式(1)及び(2)で表される構成成分を含有することを特徴とする1.又は2.に記載のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜。

m、nは一般式(2)と一般式(3)の共重合比を示し、m+n=100であり、20≦m≦70、30≦n≦80の範囲にある。Yはスルホン基またはカルボニル基を、XはHまたは1価のカチオン種を、ZはO原子、S原子、直接結合のいずれかを、Wは2価の芳香族基を示す。
4.前記複合イオン交換膜のイオン交換膜樹脂層において、下記一般式(3)を、表される構成成分を有することを特徴とする1.又は2.に記載のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜。

ただし、Rはイミダゾール環を形成できる4価の芳香族ユニットを、Rは2価の芳香族基を表す。Xはスルホン酸基、ホスホン酸基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びこれらの金属塩、アンモニウム塩から選ばれる一種以上のイオン性基を表し、mは1から4の整数を表す。
5.前記1.〜4.のいずれかに記載の複合イオン交換膜と電極とを含有することを特徴とするバナジウム系レドックス電池用複合体。
6.前記5.に記載の複合体を含有することを特徴とするバナジウム系レドックス電池。
本発明のイオン交換樹脂層及び親水化された多孔質材料層からなる複合イオン交換膜であって、前記イオン交換樹脂層が複合イオン交換膜の片面の最外層として配置され、かつその厚みが5〜50μmであり、該イオン交換樹脂層をバナジウム系レドックス電池の正極側に、該親水化された多孔質材料層を該バナジウム系レドックス電池の負極側に配置して使用することにより、高エネルギー効率及び長期充放電サイクル耐久性に優れた、バナジウム系レドックス電池用イオン交換膜として際立った性能を示す材料を提供することができる。
バナジウム系レドックスフロー電池の概略図を示す。 実施例1の複合イオン交換膜の断面構造の写真である。 実施例2の複合イオン交換膜の断面構造の写真である。 実施例3の複合イオン交換膜の断面構造の写真である。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、高エネルギー効率かつ長期充放電サイクルに耐久性に優れた、バナジウム系レドックス電池用イオン交換膜を提供するものである。すなわち、イオン交換樹脂層及び親水化された多孔質材料層からなる複合イオン交換膜であって、前記イオン交換樹脂層が複合イオン交換膜の片面の最外層として配置され、かつその厚みが5〜50μmであり、該イオン交換樹脂層をバナジウム系レドックス電池の正極側に、該親水化された多孔質材料層を該バナジウム系レドックス電池の負極側に配置することによって、多孔質材料による補強効果とイオン交換樹脂層による抵抗低減効果を両立させることができる。
本発明のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜のイオン交換樹脂層を構成するポリマー又は組成物としては、特にポリマー構造に制限はない。ポリマー構造とは、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基などのイオン性基を含有するポリマー構造であり、これらのポリマーとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン12などのポリアミド類、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリル酸エステル類、ポリメチルアクリレート、ポリアクリル酸エステル類などのアクリレート系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンやジエン系ポリマーを含む各種ポリオレフィン、ポリウレタン系樹脂、酢酸セルロース、エチルセルロースなどのセルロース系樹脂、ポリアリレート、アラミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールなどの芳香族系炭化水素系ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリドなどのフッ素系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ベンゾオキサジン樹脂などに前記のようなイオン性基を導入したポリマーであれば、特に制限はない。イオン性基の中でも、酸解離度の最も高いスルホン酸基が好ましい。また、これらの組成物中には、必要に応じて、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤などの各種添加剤を含んでいても良い。
より好ましくは、高電流効率、低抵抗、耐熱性、高機械強度を示す芳香族系炭化水素系ポリマーである。具体的には、ポリアリレート、アラミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールが好ましく例示される。これらのポリマーをスルホン化したポリマー又は組成物であることがより好ましい。
さらに好ましくは、ポリアリレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリベンズイミダゾールなどをスルホン化したポリマー又は組成物である。これらのポリマー又は組成物である場合、ポリマー構造がより剛直であるため、より優れた耐熱性や機械強度を示す。
低抵抗かつバナジウムイオン透過を抑制するには、ポリマー構造間の微小な空隙をできるだけ小さくすることが好ましい。そのため、ポリマー構造間に立体障害を引き起こしてしまう嵩高い構造、例えば、t−ブチル基などの長鎖脂肪族基やフルオレニル基などを導入することは好ましくなく、ポリマー構造間に物理相互作用をもたらすような官能基を導入することが好ましい。物理相互作用をもたらす官能基としては、イオン性基以外の極性官能基や酸塩基相互作用を発現できる2種以上の官能基及び構造が好ましい。
イオン性基以外の極性官能基としては、中でもニトリル基、アミド基、エステル基、カルボキシル基であることが好ましい。さらに、耐加水分解性や物理相互作用の強さから、ニトリル基であることが最も好ましい。従って、炭化水素系ポリマーにおいて好ましいのは、下記一般式(1)及び(2)で表される構成成分を含むものである。ポリマー構造中にベンゾニトリル構造を有していることにより電解液中での寸法安定性に優れるとともに、フィルムの強靱性も高いものとなり、高電流効率と低抵抗を両立できる。

m、nは一般式(2)と一般式(3)の共重合比を示し、m+n=100であり、20≦m≦70、30≦n≦80の範囲にある。Yはスルホン基またはカルボニル基を、XはHまたは1価のカチオン種を、ZはO原子、S原子、直接結合のいずれかを、Wは2価の芳香族基を示す。
酸塩基相互作用を発現できる2種以上の官能基及び構造として、酸性イオン性基を有するポリマーと、イミダゾールやアミンなど塩基性を示す構造を含むポリマーとの混合物や、同一ポリマー中に酸性イオン性基と塩基性を示す構造を有するポリマーを用いることが好ましい。従って、炭化水素系ポリマーにおいて好ましいのは、下記一般式(3)を、表される構成成分を有するものである。ポリマー構造中にイミダゾール構造と酸性イオン性酸基を有していることにより、ポリマー中に非常に強固な酸塩基相互が発現し、耐酸化性と低抵抗を両立させることができる。

ただし、Rはイミダゾール環を形成できる4価の芳香族ユニットを、Rは2価の芳香族基を表す。Xはスルホン酸基、ホスホン酸基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びこれらの金属塩、アンモニウム塩から選ばれる一種以上のイオン性基を表し、mは1から4の整数を表す。
また、本発明のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜においては上記一般式(1)および一般式(2)とスルホン酸基含有成分以外の構造単位が含まれていてもかまわない。このとき、上記一般式(1)および一般式(2)で示される以外の構造単位はスルホン酸基含有成分の50質量%以下であることが好ましい。50質量%以下とすることにより、本発明のバナジウム系レドックス電池用イオン交換膜の特性を活かすことができる。
また、本発明のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜においては上記一般式(3)とスルホン酸基含有成分以外の構造単位が含まれていてもかまわない。このとき、上記一般式(3)で示される以外の構造単位はスルホン酸基含有成分の50質量%以下であることが好ましい。50質量%以下とすることにより、本発明のバナジウム系レドックス電池用イオン交換膜の特性を活かすことができる。
本発明のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜において、多孔質材料による補強効果とイオン交換樹脂層による抵抗低減効果を発現させるためには、前記イオン交換樹脂層が複合イオン交換膜の片面の最外層として配置され、かつその厚みが5〜50μmであることが好ましい。電解液とイオン交換膜との界面抵抗を十分に下げることができる。
イオン交換樹脂層において、各層の厚みについては、5〜50μmであることが好ましく、10〜30μmであることがより好ましい。イオン交換樹脂層の厚みを上記範囲内にすることで、複合イオン交換膜の低抵抗化、バナジウムイオンの透過抑制、長期充放電サイクルに対する耐久性をすべて満たすことができる。イオン交換樹脂層の厚みが50μmを超える場合、バナジウムイオンの透過抑制と長期充放電サイクル耐久性は向上するが、複合イオン交換膜の膜抵抗が著しく上昇してしまう。5μm未満でも上記の性能をすべて満たすこともできるが、厚み制御の容易さから、5μm以上であると好ましい。
多孔質材料中のイオン交換樹脂の充填率については、0〜40%であることが好ましく、より好ましくは0〜20%である。多孔質材料中のイオン交換樹脂の充填率を上記範囲内とすることで、イオン交換樹脂を充填した層の高抵抗化の影響を小さくすることが出来る。
イオン交換樹脂が充填された多孔質材料層の厚みとしては、0〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0〜5μmである。イオン交換樹脂が充填された多孔質材料層の厚みを上記範囲内とすることで、複合イオン交換膜の低抵抗化、バナジウムイオンの透過抑制、長期充放電サイクルに対する耐久性をすべて満たすことができる。上記の範囲外にした場合、一方の特性は良くなるが、他方の特性を著しく低下させることになる。
イオン交換樹脂層のIEC(イオン交換容量)は、1.0mmeq/g以上4.5mmeq以下であることが好ましく、1.5mmeq/g以上、4.0mmeq以下であることがより好ましい。イオン交換樹脂層のIECが1.0meq/g以下である場合は、複合イオン交換膜の膜抵抗が高くなる傾向がある。IECが4.5meq/g以上である場合は、電解液に対する膨潤性及びバナジウムイオン透過性が大きくなりすぎて使用に適さなくなる傾向がある。
また、本発明の複合イオン交換膜に用いられるイオン交換樹脂は、後で述べる方法により測定した各層のポリマー対数粘度が0.5dl/g以上であることが好ましい。対数粘度が0.5dl/gよりも小さいと、イオン交換膜として成形したときに、イオン交換樹脂層が脆くなりやすくなる。対数粘度は、0.8dl/g以上であることがさらに好ましい。なお、対数粘度を測定する溶媒としては、一般にN−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒を使用することができるが、これらに溶解性が低い場合には濃硫酸を用いて測定することもできる。
本発明のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜を製造する方法としては、公知の任意の方法で行うことができる。まず、多孔質材料中とイオン交換樹脂層を接着させる方法として特に限定されないが、任意のポリマー溶液またはその溶融物をキャスト後、残溶媒量や温度を制御し、多孔質材料を置くまたは押し当てる方法でも良く、任意のポリマー溶液またはその溶融物をキャスト後にラミネートや熱プレスで接着させる方法などでも良い。
本発明のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜を成形する手法として最も好ましいのは、溶液からのキャストであり、キャストした溶液から溶媒を除去してバナジウム系レドックス電池用イオン交換膜を得ることができる。前述のように多孔質材料にイオン交換樹脂を接着させることで、複合イオン交換膜を得ることができる。溶液キャストにおける溶媒として、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなどの非プロトン性極性溶媒や、メタノール、エタノール等のアルコール類から適切なものを選ぶことができるがこれらに限定されるものではない。これらの溶媒は、可能な範囲で複数を混合して使用してもよい。溶液中の化合物濃度は0.1〜50質量%の範囲であることが好ましい。溶液中の化合物濃度が0.1質量%未満であると良好な成形物を得るのが困難となる傾向にあり、50質量%を超えると加工性が悪化する傾向にある。溶液から成形体を得る方法は従来から公知の方法を用いて行うことができる。溶媒が、有機溶媒の場合には、加熱又は減圧乾燥によって溶媒を留去させることが好ましい。この際、必要に応じて他の化合物と複合された形で繊維状、フィルム状、ペレット状、プレート状、ロッド状、パイプ状、ボール状、ブロック状などの様々な形状に成形することもできる。溶解挙動が類似する化合物と組み合わせた場合には、良好な成形ができる点で好ましい。このようにして得られた成形体中のスルホン酸基はカチオン種との塩の形のものを含んでいても良いが、必要に応じて酸処理することによりフリーのスルホン酸基に変換することもできる。
溶媒の除去は、乾燥によることがバナジウム系レドックス電池用イオン交換膜の均一性からは好ましい。また、化合物や溶媒の分解や変質を避けるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することもできる。また、溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱して高温でキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜1000μmであることが好ましい。より好ましくは50〜500μmである。溶液の厚みが10μmよりも薄いとバナジウム系レドックス電池用イオン交換膜としての形態を保てなくなる傾向にあり、1000μmよりも厚いと不均一なイオン交換膜ができやすくなる傾向にある。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどの塗布手段を用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度を調整して厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一な膜を得ることができる。例えば、加熱して溶媒を除去する場合には最初の段階では低温にして蒸発速度を下げることができる。また、水などの非溶媒に浸漬して溶媒を除去する場合には、キャストした溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度を調整することができる。
本発明のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜に用いる親水化された多孔質材料の空孔率は20〜90%であることが好ましく、より好ましくは40〜90%である。空孔率が上記範囲内にある多孔質材料を用いることで、膜抵抗を十分に下げることができる。また、親水化された多孔質材料の強度については、5MPa以上であることが必要であり、10MPa以上であることがより好ましい。これにより、親水化された多孔質材料にポリマーを充填した際に十分な強度を得ることができる。厚みについては、5〜150μmであることが好ましく、10〜100μmであることがより好ましい。厚みを上記範囲内に設定することで、親水化された多孔質材料とイオン交換膜層を接着した際の膜抵抗を下げることができると共に、製造時の取り扱い性も良好となる。
本発明のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜に用いる親水化された多孔質材料の空孔サイズは、0.05μm以上10μm以下であることが好ましく、0.1μm以上7μm以下であることがより好ましい。空孔サイズを上記範囲内に設定することで、親水化した多孔質材料とイオン交換膜層を接着した際の膜抵抗を下げることができると共に、多孔質材料の補強効果が十分発揮できる。
本発明のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜に用いる親水化された多孔質材料の形態としては、合成繊維布帛、化学繊維布帛、天然繊維布帛、合成繊維不織布、化学繊維不織布、紙、多孔フィルム、多孔金属板、多孔セラミック板であることが好ましく、合成繊維布帛、合成繊維不織布、化学繊維不織布、多孔フィルムであることがより好ましい。これらの形態の多孔質材料を用いることで、イオン交換膜層への接着が効率よく行えると共に、製造時の取り扱い性が良好となる。
本発明のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜に用いる親水化された多孔質材料の構成成分としては、バナジウム系レドックス電池の使用環境に耐えうるものであれば特に制限はない。具体的には、耐酸性及び耐酸化性を有する構成成分であることが好ましい。より好ましくは、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレンやポリビニリデンフルオリドなどのフッ素樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールなどからなる多孔質材料である。
本発明のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜に用いる親水化された多孔質材料の親水化法として、公知の任意の方法であれば特に制限はない。例えば、ポリビニルアルコールを多孔質材料表面にコーティング後、グルタルアルデヒドなどで化学架橋を施したものが挙げられる。また、多孔質材料表面にプラズマ、UV、電子線、オゾン照射することで、多孔質材料表面に親水性官能基を導入するなど、物理的な親水化手法であっても良い。
本発明のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜をセルに組み込む場合、イオン交換樹脂層をバナジウム系レドックス電池の正極側、親水化された多孔質材料層を該バナジウム系レドックス電池の負極側に配置することが好ましい。これによって、親水化された多孔質材料の親水化剤が耐酸化性に劣っている場合でも、バナジウム系レドックス電池の使用環境において問題なく使用することができる。前述の配置を逆とした場合、多孔質材料の親水化剤が著しく劣化してしまい、イオン交換膜の抵抗が増大してしまう可能性がある。
バナジウム系レドックス電池とは、価数の異なるバナジウムの酸化還元反応によって充放電を行う電池である。イオン交換膜は正極・負極内のイオンバランスを調製すると共に、価数の異なるバナジウムの混合を防ぐための隔膜として用いる。本発明の2層以上の構造からなるバナジウム系レドックス電池用炭化水素系イオン交換膜は、水溶液系電解液をポンプの循環によって充放電を行うレドックスフロー電池に用いてもよく、または水溶液系電解液の代わりにバナジウム水和物を炭素電極に含浸したレドックス電池として用いても良い。水溶液系電解液をポンプの循環によって充放電を行うレドックスフロー電池は、例えば間隙を介した状態で対向して配設された一対の集電板間に隔膜が配設され、該集電板と隔膜との間に少なくとも一方に電極材が圧接挟持され、電極材は活物質を含んだ水溶液からなる電解液を含んだ構造を有する電解槽を備える。電池複合体とは、イオン交換膜と電極材からなることを指す(図1の3及び5)。
水溶液系電解液としては、前述の如きバナジウム系電解液の他、鉄−クロム系、チタン−マンガン−クロム系、クロム−クロム系、鉄−チタン系などが挙げられるが、バナジウム系電解液が好ましい。本発明の炭素電極材集合体は、特に、粘度が25℃にて0.005Pa・s以上であるバナジウム系電解液、あるいは1.5mol/l以上のバナジウムイオンを含むバナジウム系電解液を使用するレドックスフロー電池に用いるのが有用である。
以下本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
溶液粘度:ポリマー粉末を0.5g/dlの濃度でメタンスルホン酸またはN−メチル−2−ピロリドンに溶解し、30℃の恒温槽中でウベローデ型粘度計を用いて粘度測定を行い、対数粘度ln[ta/tb]/c)で評価した(taは試料溶液の落下秒数、tbは溶媒のみの落下秒数、cはポリマー濃度)。
TGA:島津製作所製熱重量測定計(TGA-50)を用い、アルゴン雰囲気中、昇温速度10℃/minで測定を行った(途中、150℃で30分保持して水分を十分除去する)。3%重量減少温度は、200℃まで昇温した後の重量に対して3%重量減少した時の温度とした。
イオン交換容量(IEC):乾燥した試料100mgを、0.01NのNaOH水溶液50mlに浸漬し、25℃で一晩攪拌した。その後、0.05NのHCl水溶液で中和滴定した。中和滴定には、平沼産業(株)製、電位差滴定装置COMTITE−980を用いた。イオン交換当量は下記式で計算して求めた。
イオン交換容量[meq/g]=(10−滴定量[ml])/2
電池特性:上下方向(通液方向)に10cm、幅方向に1cmの電極面積10cm を有する小型のセルを作り、定電流密度で充放電を繰り返し、電流効率、セル抵抗、エネルギー効率、電圧効率を下記の通りに算出した。また、正極電解液には1.7mol/lのオキシ硫酸バナジウムの2.5mol/l硫酸水溶液を用い、負極電解液には1.7mol/lの硫酸バナジウムの2.5mol/l硫酸水溶液を用いた。電解液量はセル、配管に対して大過剰とした。液流量は毎分6.2mlとし、30℃で測定を行った。
(a)電流効率:η
充電に始まり、放電で終わる1サイクルのテストにおいて、電流密度を電極幾何面積当たり80mA/cm2(1260mA)として、1.6Vまでの充電に要した電気量をQクーロン、1.0Vまでの定電流放電で取りだした電気量をQクーロンとし、数式1で電流効率ηI を求める。
(b)セル抵抗:R
負極液中のV3+をV2+に完全に還元するのに必要な理論電気量Qthに対して、放電により取りだした電気量の比を充電率とし、数式2で充電率を求める。
充電率が50%のときの電気量に対応する充電電圧VC50、放電電圧VD50を電気量−電圧曲線からそれぞれ求め、数式3より電極幾何面積に対するセル抵抗R(Ω・cm )を求める。
(c)電圧効率:η
上記の方法で求めたセル抵抗Rを用いて数式4の簡便法により電圧効率ηを求める。
ここで、Eは充電率50%のときのセル開回路電圧1.432V(実測値)、Iは定電流充放電における電流値1.260Aである。
(d)エネルギー効率:η
前述の電流効率ηと電圧効率ηを用いて、数式5によりエネルギー効率ηを求める。
NMR測定:ポリマーを溶媒に溶解し、VARIAN社製UNITY−500を用いてH−NMRは室温で測定を行った。溶媒には重ジメチルスルホキシドを用いた。ポリマー重合例1,2においては構造式(1)に由来するピーク面積値と構造式(2)に由来するピーク面積値から、構成成分のmol比を算出し、nの値を算出した
長期充放電サイクル耐久性:1.0Vのセルに対し電流密度を電極幾何面積当たり100mA/cm2(全体で1600mA)として1.6Vまでの定電流充電を行い、次に1.6Vから電流密度を電極幾何面積当たり100mA/cm2(全体で1600mA)とした定電流放電を行って1.
0Vに到達した時点を1サイクルとする。
(ポリマー重合例1)
3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(略号:S−DCDPS)を4.3220g(0.00875mole)、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)を4.1847g(0.02426mole)、4,4’−ビフェノール6.1494g(0.03300mole)、炭酸カリウム5.0171g(0.03630mole)を100ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。30mlのNMPを入れて、150℃で一時間撹拌した後、反応温度を195−200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約5時間)。放冷の後、水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、沸騰水中で1時間洗浄した後、乾燥した。上記構造式において、m=26.5、n=73.5のポリマーを得た。ポリマーの対数粘度は、1.58dl/gを示した。ポリマー構造式を下記に示す(以下構造をポリマー1と称する)。ポリマー2を2M−硫酸で処理後、滴定で求めたIECは1.33meq/gを示した。
(ポリマー重合例2)
3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩(略号:S−DCDPS)を2.4450g(0.00495mole)、2,6−ジクロロベンゾニトリル(略号:DCBN)を0.6983g(0.00405mole)とする以外は、重合例1と同様にして重合を行い、下記構造式のポリマーを得た。ポリマー構造式を下記に示す。下記ポリマーをポリマー2と称する。本ポリマーの熱重量測定による3%重量減少温度(200℃での試料重量を基準にして測定)は393℃であった。ポリマー3の対数粘度は、1.35dl/gを示した。滴定で求めたIECは2.41meq/gを示した。
(ポリマー重合例3)
3,3’,4,4‘−テトラアミノジフェニルスルホン(略号:TAS)1.500g(5.389x10-3mole)、2,5−ジカルボキシベンゼンスルホン酸モノナトリウム(略号:STA、純度99%)1.445g(5.389x10-3mole)、ポリリン酸(五酸化リン含量75%)20.48g、五酸化リン16.41gを重合容器に量り取る。窒素を流し、オイルバス上ゆっくり撹拌しながら100℃まで昇温 する。100℃で1時間保持した後、150℃に昇温 して1時間、200℃に昇温 して4時間重合した。重合終了後放冷し、水を加えて重合物を取り出し、家庭用ミキサーを用いてpH試験紙中性になるまで水洗を繰り返した。得られたポリマーは80℃で終夜減圧乾燥した。ポリマーの対数粘度は、1.71dl/gを示した。得られたポリマーをポリマー3と称し、構造式を下記に示す。滴定で求めたIECは2.19meq/gを示した。本ポリマーの熱重量測定による3%重量減少温度(200℃での試料重量を基準にして測定)は453℃であった。
(実施例1)
得られたポリマー1について、それぞれ10gをNMP67mlに溶解した。調製したポリマー1の溶液をホットプレート上ガラス板に約200μm厚にキャストした。60℃で20分加熱乾燥した。乾燥後、キャスト後の膜に住友電工社製ポアフロンHPW−045−30(厚み30μm、空孔率60%、親水化PTFEの多孔膜に、ポリビニルアルコール架橋体をコーティング)を置き、ガラス板でサンドイッチした状態で30分間静置した。その後、100℃で2時間乾燥させた後、複合イオン交換膜をガラス板から剥がし、水中に一晩以上浸漬した。得られたフィルムは、希硫酸(濃硫酸6ml、水300ml)中で1時間沸騰水処理して塩をはずし酸に変換した後、純水でさらに1時間煮沸することで遊離した酸成分を除去した後に乾燥した。断面観察により、イオン交換樹脂層が多孔質材料層の片面に配置され、かつ両者が良好に接着した複合イオン交換膜であることを確認した(図2)。イオン交換樹脂層の厚みは10μm、多孔質材料層の厚みは25μmであった。
(実施例2)
ポリマー2を1g計量し、これをNMP10mlに溶解した(溶液A)。また、ポリマー3を1g計量し、これをNMP10mlに溶解した(溶液B)。重量比が溶液A:溶液B=4:6となるように両溶液を混合した溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして複合イオン交換膜を得た。イオン交換樹脂層の厚みは20μm、多孔質材料層の厚みは25μmであった(図3)。
(実施例3)
親水化された多孔質基材を、住友電工社製ポアフロンHPW−100−30(厚み30μm、空孔率80%、親水化PTFEの多孔膜に、ポリビニルアルコール架橋体をコーティング)を用いた以外は、実施例1と同様にして複合イオン交換膜を得た。イオン交換樹脂層の厚みは11μm、多孔質材料層の厚みは25μmであった(図4)。
実施例1〜3で作製した複合イオン交換膜において、イオン交換膜層を正極側に、親水化された多孔質材料層を負極側に配置して炭素電極材料(東洋紡社製XF30A)で挟み込み、図1で示したようなセルを組み立てた。上下方向(通液方向)に10cm、幅方向に1.6mの電極面積16cm を有する小型のセルを作り、定電流密度で充放電を繰り返し、イオン交換膜性能の評価を行った。正極電解液には1.7mol/lのオキシ硫酸バナジウムの2.5mol/l硫酸水溶液を用い、負極電解液には1.7mol/lの硫酸バナジウムの2.5mol/l硫酸水溶液を用いた。電解液量はセル、配管に対して大過剰とした。液流量は毎分6.2mlとし、30℃で測定を行った。
(比較例1)
ポリマー1からなる単層イオン交換膜(30μm)を炭素電極材料(東洋紡社製XF30A)で挟み込んだ以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜性能を評価した。
(比較例2)
実施例1で作製した複合イオン交換膜を、イオン交換膜層を負極側に、親水化された多孔質材料層を正極側に配置した以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜性能を評価した。
(比較例3)
実施例2で作製した複合イオン交換膜を、イオン交換膜層を負極側に、親水化された多孔質材料層を正極側に配置した以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜性能を評価した。
(比較例4)
米国デュポン社製Nafion212CSを炭素電極材料(東洋紡社製XF30A)で挟み込んだ以外は、実施例1と同様にしてイオン交換膜性能を評価した。
実施例1〜3及び比較例1〜4で作製したイオン交換膜を用いて、100mA/cm2で充放電を繰り返し実施し、その初期性能と充放電サイクル耐久性の測定を行った。その結果、表1のようになった。
表1の結果から明らかなように、本発明の複合イオン交換膜(実施例1〜3)は、非常に高い電流効率を示すと共に、抵抗も低く、優れたエネルギー効率を示すことがわかった。さらに、長期の充放電サイクル耐久性も非常に優れていた。このように、20μm程度の薄いイオン交換膜層により高エネルギー効率を達成できたと共に、親水化された多孔質材料によって高いサイクル耐久性も両立することができた。
一方で、ポリマー1単独からなる膜は、エネルギー効率が低いだけでなく、耐久性も実施例1〜3よりも劣る結果となった。これは、膜の厚みが厚いことと、ポリマー単独からなる膜は酸化劣化による強度低下が著しいためと考えられる。また、比較例2及び3は、セルを組み立て時において、裏表を逆に配置したものである。その結果、エネルギー効率は実施例1〜3と同様であるのに対し、耐久性に大きく劣る結果となった。これは、親水化された多孔質基材の劣化が著しいたためである。この結果からも、実施例で記載した配置にした時、多孔質基材の劣化が抑制され、高い耐久性を発現できることがわかる。比較例4は、抵抗が低く、耐久性も優れているが、電流効率が低いためエネルギー効率に劣る結果であった。
本発明は、イオン交換樹脂層及び親水化された多孔質材料層からなる複合イオン交換膜であって、前記イオン交換樹脂層が複合イオン交換膜の片面の最外層として配置され、かつその厚みが5〜50μmであり、該イオン交換樹脂層をバナジウム系レドックス電池の正極側に、親水化された多孔質材料層を該バナジウム系レドックス電池の負極側に配置して使用することにより、高エネルギー効率及び長期充放電サイクル耐久性に優れた、バナジウム系レドックス電池用イオン交換膜として際立った性能を示す材料を提供することができる。
1…集電板、2…スペーサ、3…イオン交換膜、4a,b…通液路、5…電極
材、6…正極液タンク、7…負極液タンク、8,9…ポンプ

Claims (6)

  1. イオン交換樹脂層及び親水化された多孔質材料層からなる複合イオン交換膜であって、前記イオン交換樹脂層が複合イオン交換膜の片面の最外層として配置され、かつその厚みが5〜50μmであり、該イオン交換樹脂層をバナジウム系レドックス電池の正極側に、該親水化された多孔質材料層を該バナジウム系レドックス電池の負極側に配置して使用することを特徴とする、バナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜。
  2. 前記親水化された多孔質材料層は、合成繊維布帛、化学繊維布帛、天然繊維布帛、合成繊維不織布、化学繊維不織布、紙、多孔フィルム、多孔金属板、多孔セラミック板からなる群より選択されるいずれかの多孔質材料層が親水化処理されてなることを特徴とする、請求項1に記載のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜。
  3. 前記複合イオン交換膜のイオン交換膜樹脂層において、下記一般式(1)及び(2)で表される構成成分を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜。

    m、nは一般式(2)と一般式(3)の共重合比を示し、m+n=100であり、20≦m≦70、30≦n≦80の範囲にある。Yはスルホン基またはカルボニル基を、XはHまたは1価のカチオン種を、ZはO原子、S原子、直接結合のいずれかを、Wは2価の芳香族基を示す。
  4. 前記複合イオン交換膜のイオン交換膜樹脂層において、下記一般式(3)を、表される構成成分を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のバナジウム系レドックス電池用複合イオン交換膜。

    ただし、Rはイミダゾール環を形成できる4価の芳香族ユニットを、Rは2価の芳香族基を表す。Xはスルホン酸基、ホスホン酸基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びこれらの金属塩、アンモニウム塩から選ばれる一種以上のイオン性基を表し、mは1から4の整数を表す。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の複合イオン交換膜と電極とを含有することを特徴とするバナジウム系レドックス電池用複合体。
  6. 請求項5に記載の複合体を含有することを特徴とするバナジウム系レドックス電池。
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