以下、添付した図面を参照しながら、本願発明に係る実施形態を説明する。図面における各部材の大きさや比率は、説明の都合上誇張され実際の大きさや比率とは異なる場合がある。
図1〜図4は、実施形態に係る薬液投与装置300の各部の構成の説明に供する図であり、図5は、薬液投与装置300の送液モードの説明に供する図であり、図6は、送液本体部100の全体構成およびコントローラ200の全体構成を示すブロック図であり、図7〜図10は、コントローラ200が備える第1制御部260および送液本体部100が備える第2制御部50の動作処理を説明する図であり、図11および図12は、コントローラ200が備える表示部220の表示内容を示す図である。
本実施形態に係る薬液投与装置300は、使用者である糖尿病患者の生体内に薬液としてのインスリンを送液する携帯型のインスリン投与装置として構成されている。以下の説明においては、薬液投与装置300をインスリン投与装置300とも称する。
図1に示すように、インスリン投与装置300は、薬液であるインスリンを生体内へ送液する送液動作を行う送液本体部100と、送液本体部100に対して各種の動作指示を行うコントローラ200と、を備えている。
コントローラ200は、使用者からの指示内容を受け付け可能な受付部230を備えており、指示内容に基づいて所定量のインスリン(以下、「送液予定量のインスリン」とする)を送液すべき旨の送液指示を送液本体部100へ送信する。使用者は、自身の身体に送液本体部100を取り付けた状態で、送液本体部100とは別体のコントローラ200を操作することによって、送液本体部100に送液指示を行うことが可能になっている。
図5に示すように、インスリン投与装置300は、インスリンを一定量で経時的に送液するベーサルモードでの送液(図中のM1)と、単位時間当たりのインスリンの送液量を一時的に増加して送液するボーラスモードでの送液(図中のM2)とを使用者の指示に応じて選択的に実施可能に構成されている。一般的に、血糖値を上昇させる行動(例えば、食事の摂取)を行う直前または直後にボーラスモードでの送液が実施される。また、通常時は血糖値の上限値および下限値が所定の範囲内で安定して維持されるようにベーサルモードでの送液が実施される。
さらに、インスリン投与装置300は、未使用の送液本体部100を身体に取り付けて生体内への送液を行う前に、送液本体部100に設けられた送液管23(図4(A)参照)にインスリンを充填させるプライミング動作を実施可能に構成されている。プライミングを行うことによって、送液管23内の空気を予め除去してから生体内への送液を行うことが可能になる。このため、生体内へインスリンを送液する際に空気が送り込まれるのを防ぐことができ、かつ、より正確な量のインスリンを送液することが可能になる。なお、本明細書において単に「送液」という場合は、上述したベーサルモードおよびボーラスモードにおける生体内への薬液の送液だけでなく、プライミング動作時に行われる送液も含めるものとする。
インスリン投与装置300の各部の構成について詳述する。
まず、送液本体部100について説明する。
図2に示すように、送液本体部100は、使用者の身体に取り付けられ、使用者の生体内に留置するカニューレ11などを備える注入部10と、注入部10に連結・分離可能に構成され、インスリンが充填されたシリンジ22などを備える使い捨て可能な送液ディスポ部20と、送液ディスポ部20に連結・分離可能に構成され、送液動作を駆動する駆動部36などを備える再利用可能な送液リユース部30と、を有する。インスリン投与装置300は、シリンジ22内のインスリンが空になった場合などは、送液ディスポ部20を必要に応じて新しいものに交換することによって、インスリン投与装置300自体を繰り返し使用することが可能になっている。
注入部10について説明する。
図2に示すように、注入部10は、カニューレ11と、カニューレ11を支持する支持部材12と、平板状の載置部13aおよび載置部13aの外周縁部の一部から突設した縦壁部13bを備える注入部保持部材(クレードル)13と、注入部保持部材13の裏面側に設けられ、注入部10を使用者の身体に貼り付ける貼付部14と、を有する。
注入部保持部材13には、送液ディスポ部20との機械的な連結状態を維持するための係合部(図示省略)を設けている。この係合部は、例えば、送液ディスポ部20側に形成される突起や窪み等と嵌合自在な突起や窪みなどによって構成することが可能である。図3(B)、図3(C)に示すように、注入部保持部材13の載置部13aには、カニューレ11を挿通可能な挿通穴13cを設けている。
図2に示すように、支持部材12は、略円柱形状に形成された本体部12aを有している。また、本体部12aには、送液ディスポ部20が備える送液管23(図4(B)を参照)が連結される連結部12bが設けられている。
図3(B)、図3(C)に示すように、カニューレ11は、本体部12aの底面から突出自在に設けられている。本体部12a内には、カニューレ11を本体部12aから突出させた際に、連結部12bとカニューレ11の内部流路(ルーメン)とを連通させる流路12cが設けられている。なお、図3(B)、図3(C)は、本体部12aからカニューレ11を突出させる前後の様子を簡略的に示している。
貼付部14は、略矩形状のシート状の部材により構成している。貼付部14は、注入部保持部材13の裏面に向かい合わせて配置される側の面と反対側の面(裏面)に接着性が付加されている。貼付部14の接着性を利用して、使用者の身体に注入部10を貼り付けることが可能になっている。なお、貼付部14を覆って保護する取り外し可能な剥離紙などを使用して、貼付部14が不用意に貼り付けられるのを防止するようにしてもよい。
支持部材12の本体部12aに収納したカニューレ11を使用者の生体内に導入させる際の操作例を説明する。
インスリン投与装置300を使用する際、使用者は、貼付部14を介して注入部10を自身の身体(皮膚表面)に貼り付ける。この時点では、カニューレ11は本体部12a内に収容された状態にある。カニューレ11は、生体への導入に使用される専用の器具である穿刺具15を用いることによって、本体部12aから使用者の生体内へ向けて突出される。
図2、図3(B)に示すように、穿刺具15は、使用者が手指で把持することが可能な把持部15aと、鋭利な針先を備える穿刺針15bと、を有している。穿刺具15が未使用の状態においては、穿刺針15bは、把持部15aの内部に収納される。
図3(B)に示すように、本体部12aの上面部分に穿刺具15を装着した状態とし、穿刺具15を本体部12aに対して回転させると、図3(C)に示すように穿刺針15bがカニューレ11のルーメンを挿通して、カニューレ11とともに本体部12aの下面側(裏面側)から突出する。
穿刺針15bおよびカニューレ11において本体部12aから突出した部分は、挿通穴13cを介して生体の表皮を貫通して生体内へ導入される。穿刺針15bおよびカニューレ11が生体内に導入されたのを確認した後、把持部15aを持ち上げて、穿刺針15bをカニューレ11から抜去する。この操作により、カニューレ11は、穿刺針15bが抜去された状態で、生体内に留置される(図4(B)参照)。
図2に示すように、穿刺具15を取り外した後、送液ディスポ部20および送液リユース部30を注入部10に取付けることが可能になる。なお、本体部12aの上面部分には、穿刺針15bを取り外した後においても、外部とのシール性が確保されるように、穿刺針15bが挿通される部位に弾性材料等からなるシール材12dを設置している。
次に、送液ディスポ部20および送液リユース部30について説明する。なお、図4(A)には、注入部10、送液ディスポ部20、および送液リユース部30を連結させた状態の送液本体部100を示している。破線Xで囲まれた部分は、送液ディスポ部20内に収納されており、破線Yで囲まれた部分は、送液リユース部30内に収納されている。
図2、図4(A)に示すように、送液ディスポ部20は、注入部保持部材13上に載置される送液ディスポ部保持部材21と、インスリンが充填されたシリンジ22と、注入部10に設けた連結部12bとシリンジ22とを連通させる送液管23と、を有している。
送液ディスポ部20は、さらに、シリンジ22内を摺動して当該シリンジ22内のインスリンを送液管23に送液する押し子24と、押し子24に形成された雌ねじ部24dと噛合って押し子24をシリンジ22内へ送り込む送りねじ25と、送りねじ25に送液リユース部30の駆動部36からの回転力を伝える歯車26と、駆動部36などに電力を供給する電池27と、を有している。
図4(A)に示すように、押し子24は、シール性を保ちつつシリンジ22内を摺動する押し板24aと、雌ねじ部24dを有する送り板24bと、押し板24aおよび送り板24bに連接する連結板24cと、を有している。
送りねじ25は、その一部が送り板24bの雌ねじ部24dに噛み合わされる。また、送りねじ25の基端部は、歯車26に固定されている。送りねじ25が歯車26の回転に伴って回転すると、送り板24bが送りねじ25上を移動する。連結板24cを介して送り板24bに連接された押し板24aは、送り板24bの移動に伴ってシリンジ22内を摺動する。
送液管23は、シリンジ22の内部と注入部10の連結部12bとの間に配設された金属製の細管により構成している。図2に示すように、送液ディスポ部保持部材21を注入部保持部材13にスライドさせながら連結させると、図4(B)に示すように、送液管23の先端が注入部10の連結部12b内に差し込まれる。連結部12bの送液管23が差し込まれる部位には弾性部材等からなる不図示のシール材を設置し、これにより、連結部12bと送液管23とを液密に連結することができる。
電池27は、送液ディスポ部20を送液リユース部30に連結させる際に、送液リユース部30内の駆動部36(モータ32)に電気的に接続される。これにより、電池27から駆動部36へ電力を供給することが可能になる。また、電池27は、送液リユース部30に収納されている第2通信部40、第2制御部50、および送液量検出部34にも電気的に接続されており、それぞれに対して電力を供給する。
図2、図4(A)に示すように、送液リユース部30は、送液ディスポ部保持部材21に連結される送液リユース部保持部材31と、電池27に電気的に接続されるモータ32と、モータ32により回転駆動される回転軸33と、回転軸33の回転量に基づいて送液量を検出する送液量検出部34と、回転軸33の回転を送りねじ25に伝達する複数の歯車35と、を有している。なお、送液本体部100の送液動作を駆動する駆動部36は、モータ32、回転軸33、および歯車35によって構成している。
図2に示すように、送液リユース部保持部材31は、送液ディスポ部保持部材21を覆うケース(筐体)として構成している。送液ディスポ部保持部材21の内部には、上述した送液リユース部30の各構成部材を収納している。
図4(A)に示すように、モータ32は、送液リユース部30を送液ディスポ部20に連結させた際に、送液ディスポ部20の電池27に電気的に接続可能な位置に配置される。複数の歯車35には、モータ32の回転軸33に連結される第1の歯車と、送液ディスポ部20が備える歯車26に噛み合わされる第2の歯車と、第1および第2の歯車の間に配置され、各歯車と噛み合わされる第3の歯車とが含まれている。なお、本実施形態では簡易的に歯車35は、第1および第2の2つの歯車により構成されたものを例示している。
送液量検出部34は、モータ32の回転軸33に取り付けられた回転板34aと、回転板34aを間に挟んで対向するように配置された発光部および受光部を備える透過型の光センサ34bと、を有している。
回転板34aは、一定の角度間隔で設けられた複数の切り欠き部を有する。光センサ34bの発光部から出射された光線が回転板34aの切り欠き部を通過すると、受光部が光線を受光する。一方、光センサ34bの発光部から出射された光線が回転板34aにより遮られると、受光部が光線を受光しない。切り欠き部は、一定の角度間隔で回転板34aに設けられているため、送液量検出部34は、光センサ34bが受光部において光線を受光(検知)した回数に基づいてモータ32の回転軸33の回転量を検出する。モータ32の回転軸33の回転量によって押し子24の押し込み量、つまりインスリンの送液量が定まるため、モータ32の回転量によって送液量を検出することができる。
使用者は、インスリン投与装置300を使用するに際して、まず、送液ディスポ部20と送液リユース部30とを連結して一体化させる。そして、カニューレ11が生体内に留置された状態で使用者の身体に装着された注入部10に対して、一体化させた送液ディスポ部20および送液リユース部30を連結させる。
なお、使用者は、一体化された送液ディスポ部20および送液リユース部30を注入部10に対して連結させる前に、送液ディスポ部20の送液管23内にインスリンを充填するプライミングを行う。具体的には、駆動部36を動作させて、押し子24を所定量だけ移動させることにより、シリンジ22内に収容されたインスリンを送液管23に送液し、送液管23内にインスリンを充填させる。
次に、コントローラ200について説明する。
図1に示すように、コントローラ200は、コントローラ本体部210と、コントローラ本体部210に設けられる表示部220と、使用者からの指示内容を受付可能な受付部230と、コントローラ200の各部に電力を供給する電源部240と、を有している。
表示部220は、例えば、液晶ディスプレイにより構成することができる。表示部220には、使用者がインスリン投与装置300の操作に必要な情報や、送液動作の進行状況などを表示することが可能になっている。
受付部230は、複数のボタンを有しており、ボタン操作によって使用者からの指示内容を受け付ける。受付部230には、例えば、ベーサルモード、ボーラスモード、およびプライミング動作などを選択するためのボタンや、表示部220の表示内容を切り替えるボタンなどが備えられる。使用者が目的に応じてこれらのボタンを選択して押すことにより、送液指示の送信、送液モードの選択、各種の動作の指定などを行うことが可能になっている。
次に、図6を参照して、コントローラ200および送液本体部100の制御系統および通信機能について説明する。図6は、送液本体部100およびコントローラ200の全体構成を示すブロック図である。
コントローラ200は、送液本体部100と無線通信可能な第1通信部250と、インスリン投与装置300を統括して制御する第1制御部260と、を有している。
送液本体部100の送液リユース部30は、コントローラ200と無線通信可能な第2通信部40と、第1制御部260の指示を受けて送液本体部100の動作を統括して制御する第2制御部50と、を有している。なお、第2通信部40は、コントローラ200が送信する送液指示を受信する本体部側受信部と、単位送液量のインスリンを送液する送液動作を完了する度にコントローラ200へ送液完了通知を送信する送信部としての機能を有している。
コントローラ200の第1通信部250および送液本体部100の第2通信部40は、低電力で通信を行うことが可能な近距離無線通信技術であるBLE(Bluetooth Low Energy)通信を用いて、互いに情報の送受信を行うことが可能になっている。
コントローラ200の第1制御部260および送液本体部100の第2制御部50は、CPU、RAM、ROM等を含む公知のマイクロコンピュータにより構成している。第1制御部260および第2制御部50がそれぞれ備えるCPUがROMに予め格納されている各種プログラムをそれぞれRAMに読み出して実行することにより、後述する所定の動作制御が実施される。
次に、図6、図7を参照して、送液本体部100およびコントローラ200間における通信内容を説明する。図7は、動作内容を示すシーケンス図である。
図6に示すように、コントローラ200の備える第1制御部260は、受付部230、第1通信部250、表示部220および電源部240に接続されており、これらの各部の動作を制御する。送液本体部100が備える第2制御部50は、第2通信部40、モータ32、送液量検出部34、および電池27に接続されており、第1制御部260の指示を受けてこれらの各部の動作を制御する。
図7に示すように、コントローラ200が備える第1制御部260は、受付部230が、使用者からボーラスモードまたはプライミング動作における送液指示を受け付けると、所定の送液予定量を送液すべき旨の送液指示を、第1通信部250を介して送液本体部100の備える第2通信部40へ送信する。
上記の「送液予定量」とは、送液本体部100によって送液すべきインスリンの送液量であり、送液モードに合わせて適宜設定することができる。本実施形態では、ボーラスモードでの送液時においては、ボーラスモードでの送液を開始する直前に使用者が摂取した炭水化物量、食事前の測定血糖値、前回のボーラスモードにおいて投与されたインスリンのうち生体内に残存する量(残存インスリン量)等を考慮して第1制御部260により計算される値を送液予定量に設定している。また、プライミング動作時においては、送液本体部100内の送液管23の容積に基づいて定められる量を送液予定量に設定している。
送液本体部100が備える第2制御部50は、第1制御部260からの送液指示を第2通信部40を介して受信すると、送液予定量分のインスリンが送液されるようにモータ32を制御する。そして、送液本体部100が備える第2制御部50は、送液量検出部34の出力信号に基づいて、送液予定量よりも少ない量に定められた単位送液量の送液を完了したことを検知する度に、第2通信部40を介して第1制御部260へ送液完了通知を送信する。
単位送液量は、送液予定量よりも少ない量に定められる所定量であり、任意の量に設定することが可能である。ただし、単位送液量を過度に小さい値に設定してしまうと、コントローラ200と送液本体部100との間で頻繁に通信が行われ、電力を多量に消費することになる。一方で、単位送液量を過度に大きい値に設定すると、送液完了通知に基づいて計算される既送液量(総送液量)と、実際に生体内に送液された送液量との差が大きくなる。このため、単位送液量は、コントローラ200と送液本体部100の間の通信回数、既送液量の計算精度などを考慮して適生な値に設定することが好ましい。一般的に、インスリンの投与量の表記にはインスリン1[ml]を100単位とするインスリン単位を用いる。そこで本実施形態では、一例として、単位送液量を1単位に設定している。通常の送液量は、ベーサルモード時においては1〜2単位/時間であるのに対し、ボーラスモード時においては、1回に十数単位のインスリンの投与が行われる。また、インスリンを充填させる送液管23の容積は、0.05〜0.1ml程度であるため、プライミング時においては、インスリン単位に換算すると5〜10単位に相当するインスリンが送液される。
図6に示すように、第1制御部260は、第1通信部250の受信結果に基づいて単位送液量のインスリンを送液する送液動作の完了の有無を確認する確認部261と、第1制御部260が受信した送液完了通知に基づいて送液本体部100が実際に送液したインスリンの既送液量を計算する演算部262と、第1通信部250が予め定められた所定時間内に送液完了通知を受信しなかった場合に送液本体部100の送液動作が停止したと判断する判断部263と、送液に関する各種データを記憶する記憶部264としての各機能を備える。
上記の判断部263が送液動作の停止を判断する際に基準とする「所定時間」とは、送液を開始してから送液完了通知を受信するまでの時間、または送液完了通知を一旦受信してから次の送液完了通知を受信するまでの時間よりも長い時間に設定している。本実施形態では、ボーラスモードおよびプライミングにおける単位時間あたりのインスリンの送液量を一定とみなして、所定時間を一定の時間に設定している。ただし、この所定時間は、送液流量が経時的に変化するように送液動作を実施するような場合には、所定時間が経時的に変化するように設定してもよい。また、ボーラスモードにおける所定時間とプライミングにおける所定時間を異なる時間に設定することも可能である。
図7に示すように、第1制御部260は、第1通信部250を介して第2制御部50からの送液完了通知を受信する。そして、上述した各機能に基づいて各種の処理を実施し、その実施結果を必要に応じて表示部220に出力する。例えば、判断部263により、送液動作が停止したと判断された場合には、その旨をコントローラ200の表示部220に表示させる。
次に、図8、図9を参照して、インスリン投与装置300の動作処理例を説明する。図8は、コントローラ200が備える第1制御部260の動作処理例である。図9は送液本体部100が備える第2制御部50の動作処理例である。
図8に示すように、コントローラ200が備える第1制御部260は、受付部230を介して使用者からの送液指示を受け付けた場合、その送液指示がベーサルモードにおける送液指示であるかどうかを判定する(S11)。
ステップ(S11)において、使用者からの送液指示がベーサルモードにおける送液指示であると判定された場合(S11;Yes)、第1制御部260は第1通信部250を介して、送液本体部100の備える第2制御部50にベーサルモードでの送液動作を実施する旨の指示を送信する(S12)。
ステップ(S12)の処理完了後、第1制御部260は、使用者からの指示を再び受け付けるまで待機する。
次に、使用者からの送液指示が、ボーラスモードにおける送液指示であった場合におけるコントローラ200の動作処理を説明する。
ステップ(S11)において、使用者からの送液指示がベーサルモードにおける送液指示ではないと判定された場合、第1制御部260は、その指示がボーラスモードにおける送液指示であるかどうかを判定する(S21)。
ステップ(S21)において、使用者からの送液指示がボーラスモードにおける送液指示であると判定された場合(S21;Yes)、第1制御部260は、ボーラスモードにおいて送液予定量のインスリンを送液すべき旨の送液指示を、第1通信部250を介して送液本体部100の第2制御部50に送信する(S22)。
なお、送液予定量は、上述したように、演算部262によって、炭水化物量、測定血糖値、残存インスリン量等を考慮して計算した値としている。
測定血糖値および炭水化物量は、受付部230を介して使用者に入力させることによって取得する。残存インスリン量は、記憶部264に記憶している前回のボーラスモード時に送液したインスリンの量および投与時刻と、使用者毎に設定される生体内に投与されたインスリンの消費速度に関する情報と、に基づいて計算する。
ステップ(S22)の処理完了後、第1制御部260は、第1通信部250が所定時間内に送液完了通知を受信したかどうかを判定する(S23)。
ステップ(S23)において、所定時間内に第1通信部250が送液完了通知を受信することによって、確認部261が単位送液量のインスリンが送液されたことを確認した場合(S23;Yes)、演算部262において既送液量、および送液動作を完了するまでに要する送液残り時間の計算を行う(S24)。
既送液量は、第1通信部250が送液完了通知を受信する毎に単位送液量を積算することによって計算する。送液残り時間は、送液予定量と既送液量との差を単位時間当たりの送液量によって除算することによって計算する。
続いて、第1制御部260は、ステップ(S24)において計算した既送液量および送液残り時間を表示部220に表示する(S25)。なお、本実施形態では、図11(A)に示すように、既送液量および送液残り時間に加えて、ボーラス送液中である旨、送液予定量、送液予定量を100%とした場合に既送液量は何%であるかを視覚的に示す割合表示バーなどを表示部220に表示する。このように、表示部220は、送液残り時間や送液動作の進行度を示す視覚的表示など、送液本体部100が送液予定量のインスリンを送液する送液動作を完了するタイミングに関する送液完了情報が表示されるように構成している。
続いて、第1制御部260は、ステップ(S24)において計算した既送液量が送液予定量と等しいかどうか判定する(S26)。
ステップ(S26)において、既送液量が送液予定量と等しくないと判定された場合(S26;No)、第1制御部260は、ステップ(S23)からステップ(S26)にかけての動作処理を再び行う。
ステップ(S26)において、既送液量が送液予定量に等しいと判断された場合(S26;Yes)、第1制御部260は、ボーラスモードにおける送液動作が完了した旨を表示部220に表示する(S27)。本実施形態では、図11(B)に示すように、図11(A)において示す表示部220の「ボーラス中」の表示を「ボーラス完了」に変更し、さらに既送液量および割合表示バーにおける既送液量の割合を更新する。
ステップ(S23)において、第1通信部250が所定時間内に送液完了通知を受信せず、判断部263により送液動作が停止したと判断された場合(S23;No)、第1制御部260はボーラスモードにおける送液が未完了である旨を表示部220に表示する(S28)。本実施形態では、図11(C)に示すように、図11(A)に示す表示部220の「ボーラス中」の表示を「ボーラス停止」に変更し、既送液量および割合表示バーにおける既送液量の割合を更新し、さらに送液が中断されたことを報知する警告を表示する。なお、この際に使用者にボーラスモードにおける送液が中断されたことを音声等で報知する報知機能をコントローラ200に設けることも可能である。
ステップ(S27)またはステップ(S28)の動作が完了した場合、第1制御部260は、計算した既送液量の値をリセットし、使用者からの指示を再び受け付けるまで待機する。
ここで、図10を参照して、送液動作の停止判断について説明する。
図10は、縦軸をインスリン投与装置300の単位時間当たりのインスリン送液量、横軸を時間としたインスリン投与装置300の送液量を時系列で示す図である。説明の簡略化のため、送液予定量Vtを4単位、単位送液量ΔVを1単位、送液動作の停止判断のための所定時間をT、単位送液量ΔVの送液に係る時間をΔt、既送液量をVとしている。また、所定時間Tは、時間Δtよりも長い時間に設定した例を説明する。
図10(A)は、ボーラスモードにおける送液の途中段階であり、既送液量Vが3単位の状態を示す。第2制御部50は、ΔV分の送液が完了するごとに(Δt経過するごとに)、第2通信部40を介して第1制御部260に送液完了通知を送信する。図示例においては、3単位分の送液が完了しているため、第1制御部260は全部で3回送液完了通知を受信している。この通知を受信する度に、前述したステップ(S23)からステップ(S26)の処理が実施されたことになる(図8を参照)。
図10(B)は、図10(A)に示す段階から、単位送液量ΔVの送液がさらに行われ、送液予定量Vtの送液が完了し、ボーラスモードにおける送液を行うために中断していたベーサルモードにおける送液を再開したことを示す図である。この場合は、ボーラスモードにおける送液予定量Vtの送液が完了した時点でボーラスモードにおける送液が完了した旨が表示部220に表示される。
例えば、図10(C)に示すように、図10(A)の状態から、所定時間Tが経過しても送液完了通知をコントローラ200が受信しなかった場合、判断部263は送液動作が停止したと判断する。この場合、既送液量Vは3単位である。表示部220には、送液予定量Vtの送液が完了する前に送液が停止した旨および既送液量Vが3単位であることを表示部220に表示する。
なお、本実施形態では、ステップ(S24)において計算された既送液量が送液予定量と等しいかどうかをステップ(S26)において判定する構成としている。しかし、例えば、単位送液量が送液予定量を割り切ることができる値ではない場合は、実際に送液予定量分の送液が行われたとしても、既送液予定量は送液予定量と等しくはならない。この様な場合、既送液量が、送液予定量を基準とした所定の割合の範囲(例えば、送液予定量の95〜100%内の範囲)に含まれていれば、送液が完了したものと判断するように動作処理を設定することが可能である。
次に、使用者からの送液指示が、プライミングモードにおける送液指示であった場合のコントローラ200の動作処理を説明する。
ステップ(S21)において、使用者からの送液指示がボーラスモードにおける送液指示ではないと判定された場合(S21;No)、第1制御部260は、その送液指示がプライミングにおける送液指示であるかどうか判定する(S31)。
ステップ(S31)において、使用者からの送液指示がプライミングにおける送液指示であると判定された場合は、第1制御部260は、プライミングにおける送液予定量のインスリンを送液すべき旨の送液指示を、第1通信部250を介して送液本体部100の備える第2制御部50に送信する(S32)。なお、プライミングモードにおける送液予定量は、前述したように記憶部264に予め記憶されている所定の値を用いる。
続いて、第1制御部260は、第1通信部250が所定時間内に送液完了通知を受信したかどうかを判定する(S33)。
ステップ(S33)において、第1通信部250が所定時間内に送液完了通知を受信し、確認部261が単位送液量のインスリンが送液されたことを確認した場合(S33;Yes)、演算部262は、既送液量および送液動作を完了するまでに要する送液残り時間の計算を行う(S34)。既送液量および送液残り時間の計算は、ボーラスモードにおける既送液量および送液残り時間の計算と同じ方法によって行う。
続いて、第1制御部260は、ステップ(S34)において計算した送液残り時間を表示部220に表示する(S35)。本実施形態では、図12(A)に示すように、送液残り時間に加えて、プライミング送液中である旨、および送液予定量を100%とした場合に既送液量は何%であるかを視覚的に示す割合表示バーを表示部220に表示する。
続いて、第1制御部260は、ステップ(S34)において計算した既送液量が送液予定量と等しいかどうかを判定する(S36)。
ステップ(S36)において、既送液量が送液予定量と等しくないと判定された場合(S36;No)、再びステップ(S33)からステップ(S36)にかけての一連の処理を行う。
ステップ(S36)において、既送液量が送液予定量と等しいと判断された場合(S36;Yes)、プライミングにおける送液が完了した旨を表示部220に表示する(S37)。本実施形態では、図12(B)に示すように、図12(A)における表示部220の「プライミング中」の表示を「プライミング完了」に変更し、さらに割合表示バーにおける既送液量の割合を更新する。
ステップ(S33)において、第1制御部260が所定時間内に送液完了通知を受信せず、判断部263により送液動作が停止したと判断された場合(S33;No)、プライミングにおける送液が未完了である旨を表示部220に表示する(S38)。本実施形態では、図12(C)に示すように、図12(A)における表示部220の「プライミング中」の表示を「プライミング停止」に変更し、さらに送液が中断されたことを使用者に報知する警告を表示する。なお、この際に使用者にボーラスモードにおける送液が中断されたことを音声等で報知する報知機能をコントローラ200に設けることも可能である。
ステップ(S37)およびステップ(S38)の動作処理が完了した場合、第1制御部260は、計算した既送液量の値をリセットし、使用者からの指示を再び受け付けるまで待機する。
なお、ステップ(S31)において、使用者からの送液指示がプライミングにおける送液指示ではないと判断された場合(S31;No)、第1制御部260は、表示部220に指示内容が不明瞭である旨のエラー表示を行う(S39)。ステップ(S39)の動作処理が完了した場合、第1制御部260は、使用者からの指示を再び受け付けるまで待機する。
続いて、図9を参照して、コントローラ200から送液指示があった場合の送液本体部100の動作処理を説明する。
送液本体部100の備える第2制御部50は、第2通信部40を介してコントローラ200からの送液指示を受信した場合、その送液指示がベーサルモードにおける送液指示であるかどうか判定する(S41)。
ステップ(S41)において、コントローラ200からの送液指示がベーサルモードにおける送液指示であると判定された場合(S41;Yes)、第2制御部50は、所定量のインスリンが送液されるようにモータ32を制御して、ベーサルモードにおける送液を行う(S42)。
ステップ(S42)の処理完了後、第2制御部50は、コントローラ200から再び指示があるまで待機する。
次に、コントローラ200からボーラス送液指示があった場合の動作処理を説明する。
ステップ(S41)において、コントローラ200からの送液指示がベーサルモードにおける送液指示ではないと判定された場合(S41;No)、第2制御部50は、その送液指示がボーラスモードにおける送液指示であるかどうかを判定する(S51)。
ステップ(S51)において、コントローラ200からの送液指示がボーラスモードにおける送液指示であると判定された場合(S51;Yes)、第2制御部50は、ベーサルモードにおける送液を実施している最中ならば、ベーサルモードにおける送液動作を一旦中断する(S52)。
続いて、第2制御部50は、送液予定量分の送液が行われるようにモータ32の動作を制御して、ボーラスモードにおける送液を行う(S53)。
続いて、第2制御部50は、送液量検出部34の出力信号に基づいて単位送液量分の送液が完了したかどうかを判定する(S54)。
ステップ(S54)において、単位送液量分の送液が完了していないと判定された場合(S54;No)、第2制御部50は、ステップ(S53)からステップ(S54)にかけての一連の処理を引き続き行う。
ステップ(S54)において、単位送液量分の送液が完了したと判定された場合(S54;Yes)、第2制御部50は、第2通信部40を介してコントローラ200の備える第1制御部260に送液完了通知を送信する(S55)。
続いて、第2制御部50は既送液量の計算を行い、計算した既送液量が送液予定量に等しいかどうか判定する(S56)。
ステップ(S56)において、既送液量が送液予定量と等しくないと判定された場合(S56;No)、第2制御部50は、ステップ(S53)からステップ(S56)までの一連の処理を引き続き行う。
ステップ(S56)において、既送液量が送液予定量に等しいと判断された場合(S56;Yes)、第2制御部50は、ボーラスモードにおける送液を停止する。この際、ステップ(S52)においてベーサルモードにおける送液が一旦中断されていたときは、ベーサルモードにおける送液を再開する(S57)。
ステップ(S57)の処理完了後は、第2制御部50は、計算した既送液量の値をリセットし、コントローラ200から再び指示があるまで待機する。
次に、コントローラ200からの送液指示がプライミングにおける送液指示であった場合の送液本体部100の動作処理について説明する。
ステップ(S51)において、コントローラ200からの送液指示がボーラスモードにおける送液指示ではないと判断された場合(S51;No)、第2制御部50は、その送液指示がプライミング指示か否かを判定する(S61)。
ステップ(S61)において、コントローラ200からの送液指示がプライミングモード指示であると判定された場合(S61;Yes)、第2制御部50は、送液予定量のインスリンが送液されるようにモータ32を制御して、プライミングを行う(S62)。
続いて、第2制御部50は、送液量検出部34の出力信号に基づいて単位送液量分の送液が完了したかどうかを判定する(S63)。
ステップ(S63)において、単位送液量分の送液が完了していないと判定された場合(S63;No)、第2制御部50は、ステップ(S62)からステップ(S63)にかけての一連の処理を引き続き行う。
ステップ(S63)において、単位送液量分の送液が完了したと判定された場合(S63;Yes)、第2制御部50は、第2通信部40を介して第1制御部260に送液完了通知を送信する(S64)。
続いて、第2制御部50は既送液量の計算を実施し、既送液量が送液予定量に等しいかどうか判定する(S65)。
ステップ(S65)において、既送液量が送液予定量と等しくないと判断された場合(S65;No)、第2制御部50は、ステップ(S62)からステップ(S65)までの一連の処理を引き続き行う。
ステップ(S65)において、既送液量が送液予定量と等しいと判断された場合(S65;Yes)、第2制御部50は送液動作を停止する(S66)。
ステップ(S66)の動作が完了した場合、第2制御部50は、計算した既送液量の値をリセットし、コントローラ200から再び指示があるまで待機する。
なお、ステップ(S61)において、コントローラ200からの送液指示がプライミングにおける送液指示ではないと判定された場合(S61;No)、第2制御部50は、第1制御部260に対して指示内容の確認を行う(S67)。ステップ(S67)の処理完了後は、第2制御部50は、コントローラ200から再び指示があるまで待機する。
以上説明したように、送液本体部100は、ボーラスモードおよびプライミングでの送液動作時に送液完了通知をコントローラ200へ送信する。コントローラ200は、受信した送液完了通知に基づいて、既送液量および送液残り時間等の計算を行う。そして、送液モードに応じて、表示部220に送液動作の進行状況などの情報を適宜表示する。
上述したように、本実施形態に係るインスリン投与装置300によれば、送液本体部100は、コントローラ200から指示された所定量の薬液(送液予定量)よりも少ない量に定められた単位送液量の薬液を送液する送液動作を完了する度に、コントローラ200へ送液完了通知を送信する。コントローラ200は、送液完了通知を受信することにより単位送液量の薬液が送液されたことを確認する。そして、コントローラ200は、単位送液量分の薬液が実際に送液されたことを確認することにより、その確認結果に基づいて、例えば、送液本体部100が適正な送液量での送液動作を実施するように各種の動作処理を行ったり、送液動作の進捗状況を外部に出力したりすることが可能になる。これにより、送液動作中に送液本体部100の動作の停止が発生するような場合においても、適正な送液量での送液を再開することが可能となり、また使用者が送液動作の進捗状況を把握することができるようになるため、使用者の利便性が向上されたものとなる。
また、コントローラ200が、コントローラ側受信部(第1通信部250)が受信した送液完了通知に基づいて送液本体部100が送液を完了した薬液の既送液量を計算する演算部262と、演算部262により計算された既送液量を出力可能な出力部(表示部220)と、を有するにように構成されている。このため、使用者は既送液量を容易に把握することができ、確認した既送液量を、例えば、送液動作が中断した後で送液動作を再開するときに、既送液量を考慮した量の薬液の送液を行うために利用することが可能になる。
また、コントローラ200が、予め定められた所定時間内にコントローラ側受信部(第1通信部250)が送液完了通知を受信しなかった場合、送液本体部100の送液動作が停止したと判断する判断部263をさらに有し、表示部220が、判断部263によって送液本体部による送液動作が停止したと判断された場合において、既送液量が送液予定量未満であるとき、送液本体部100の送液動作が停止するまでの間に送液された既送液量を出力するように構成されている。このため、使用者は、送液本体部100の送液動作が途中で停止してしまった場合に、停止するまでに送液された既送液量を出力部の出力内容に基づいて容易に把握することが可能になる。
また、表示部220が、送液本体部100が所定量の薬液を送液する送液動作を完了するタイミングに関する送液完了情報を出力するため、使用者は、出力部の出力内容に基づいて送液動作が完了するタイミングを容易に把握することが可能になる。
また、演算部262が、既送液量に基づいて送液動作を完了するまでに要する送液残り時間を計算し、表示部220が、送液完了情報として送液残り時間を出力するように構成されているため、使用者は、出力部の出力内容に基づいて送液動作が完了するまでの時間を容易に把握することができる。
また、インスリン投与装置300が、生体内へインスリンを投与するインスリン投与装置として構成されているため、コントローラ200側でインスリンの投与量を逐次把握することができ、使用者にとって安全性および利便性がより一層向上されたインスリン投与装置を提供することが可能になる。
また、送液本体部100が、一定量のインスリンを継続的に送液するベーサルモードに対して単位時間当たりのインスリンの送液量を一時的に増加して送液するボーラスモードでの送液動作を実施可能に構成されており、送液本体部100の送信部が、ボーラスモードにおいてインスリンの送液を実施している最中にコントローラ200へ送液完了通知を送信するように構成されている。このため、コントローラ200は、ボーラスモードにおいて送液本体部100が実際に送液したインスリンの量を把握することが可能になる。その結果、例えば、ボーラスモード中において誤作動や動作トラブルなどが発生して送液本体部100による送液動作が意図せずに停止してしまった場合、送液動作が停止する前までに生体内に送液された既送液量を考慮した適切な量での送液が再開されるように、コントローラ200側から送液本体部100へ適切な指示を送信することが可能になる。
また、送液本体部100が、当該送液本体部100に設けられた送液流路(送液管23)内にインスリンを充填させるプライミング動作を実施可能に構成されており、送液本体部100の送信部が、プライミング動作においてインスリンの送液が実施されている最中にコントローラ200へ送液完了通知を送信するように構成されている。このため、コントローラ200は、プライミング動作時において送液本体部100が実際に送液したインスリンの量を把握することが可能になる。
<変形例>
次に、図13を参照して、インスリン投与装置300の変形例に係る動作処理例を説明する。
前述した実施形態では、ボーラスモードにおける送液中において単位送液量の送液を行う度に演算部262が既送液量の計算を行うように動作処理が実施された。一方、本変形例では、ボーラスモードにおける送液動作中に、判断部263により送液動作が停止したと判断された際に、演算部262が既送液量の計算を行うように動作処理が実施される。
また、コントローラ200の記憶部264は、送液指示を送液本体部100に送信した後に受信した送液完了通知の受信回数(または受信時刻)を記憶するように構成している。
以下、図13を参照して、変形例に係る動作処理例を説明する。なお、前述した実施形態と同様の処理内容については、同様の符号を付して説明を省略する。また、ここでは、ボーラスモードによる送液を行うべき旨の指示があった場合のコントローラ200の動作処理を説明する。
ステップ(S22)の処理完了後、コントローラ200が備える第1制御部260は、第1通信部250が所定時間内に送液完了通知を受信したかどうかを判定する(S71)。
ステップ(S71)において、第1通信部250が所定時間内に送液完了通知を受信したことによって、確認部261が単位送液量の送液が完了したことを確認した場合(S71;Yes)、記憶部264は、記憶している送液完了通知の受信回数(または受信時刻)を更新する(S72)。ステップ(S72)の処理完了後は、再びステップ(S71)の処理を行う。
ステップ(S71)において、第1通信部250が所定時間内に送信完了通知を受信せず、判断部263が、送液動作が停止したと判断した場合(S71;No)、演算部262は既送液量を計算する(S73)。
演算部262は、記憶部264が記憶している送液完了通知の受信回数と、単位送液量とを掛け合わせることによって既送液量を計算する。また、演算部262は、記憶部264に記憶された送液完了通知の受信時刻の情報に基づいて既送液量を計算することも可能である。具体的には、図10(C)に示すように、コントローラ200が送液指示を送信した時刻(t0)から確認部261が最新の送液完了通知を受信した時刻(t1)までの経過時間を算出し、経過時間と単位時間あたりのインスリンの送液量を掛け合わせることによって算出する。
ステップ(S73)の処理完了後、第1制御部260は、既送液量が送液予定量と等しいかどうか判定する(S74)。
ステップ(S74)において、既送液量が送液予定量と等しいと判定された場合(S74;Yes)、表示部220に送液動作が完了した旨および既送液量を表示する(S75)。この際、既送液量が送液予定量未満である場合、ボーラスモードにおける送液が中断した旨、および既送液量を表示部220に表示する(S76)。
ステップ(S75)またはステップ(S76)の処理完了後は、記憶部264は記憶していた送液完了通知の受信回数(または受信時刻)をリセットし、第1制御部260は使用者から再び送液指示があるまで待機する。
このように本変形例では、判断部263において送液動作が停止したと判断された場合に、演算部262が既送液量を計算し、計算された既送液量を表示部220に表示する構成としている。このため、送液動作が停止するような緊急事態に既送液量を迅速に報知することが可能になる。また、演算部262の計算回数を減少させることが可能になるため、電力消費等を抑えることができる。
以上のように実施形態および変形例を通じて本発明に係る薬液投与装置を説明したが、本発明に係る薬液投与装置は説明した構成のみに限定されることはなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々改変することが可能である。
実施形態では、送液する薬液としてインスリンを用いた例を説明したがこれに限定されない。例えば、抗生物質、栄養剤、鎮痛剤、ホルモン剤などの薬液の投与に用いることも可能である。また、薬液の種類および投与方法を考慮して、送液予定量、所定時間、送液完了通知を行う場合の送液モードなどの条件を適宜変更することが可能である。
また、実施形態では、送液本体部100を注入部10、送液ディスポ部20および送液リユース部30を組合せる構成としたが、これに限定されない。例えば、注入部10、送液ディスポ部20および送液リユース部30が予め一体化された薬液投与装置として構成することも可能である。
また、実施形態では、薬液を送液する駆動手段としてモータ32および送りねじ25により構成した機構を説明したがこれに限定されない。例えば、ポンプなどを駆動手段として用いることも可能である。駆動手段とともに、送液量検出部34の構成も適宜変更することが可能である。
また、実施形態では、受付部230は複数のボタンを有する構成としたが、これに限定されない。例えば、タッチパネルや音声認識などを用いて使用者の指示内容を受け付け可能に構成することも可能である。
また、実施形態では、送液本体部100の第2通信部40に送液指示を受信する受信部および送液完了通知を送信する送信部としての機能を備えさせたがこれに限定されない。例えば、送信部および受信部をそれぞれ別備えさせることも可能である。また、本実施形態では、第1通信部および第2通信部の通信方式として、BLE通信を採用した例を説明したが、これに限定されない。例えば、Wi−Fi、無線LAN、有線ケーブルを用いた有線通信などによって通信を行う構成にすることも可能である。
また、実施形態では、演算部262により計算された既送液量を出力可能な出力部を、ディスプレイを備えた表示部220としたがこれに限定されない。例えば、出力部にスピーカ等の音声出力が可能な構成を付加して、音声によって既送液量の値等を使用者に報知するように構成することも可能である。
また、送液動作が完了または停止した場合の最終の既送液量を、記憶部264に記憶する構成としてもよい。そして、使用者が、送液動作が完了または停止してから、しばらく時間が経過した後で最終の既送液量を確認したい場合に、その数値を表示部220に表示するように構成することも可能である。
また、実施形態では、送液量検出部34によりモータ32の回転量を検出して送液量を求めたがこれに限定されない。例えば、駆動部36にステッピングモータを採用し、ステッピングモータを制御する第2制御部50からのパルス数やパルス間隔を検出することで送液量を求めることも可能である。また、第2制御部50が実行するステッピングモータを制御するプログラム内に単位送液量に相当する回転制御を実行する毎にその旨を報知するプログラムを組み込むことも可能である。