JP2016175895A - プラズマ化タンパク質水性溶液、及び、これを用いて生産される細胞・組織生着性に優れるタンパク質定着表面とその応用 - Google Patents

プラズマ化タンパク質水性溶液、及び、これを用いて生産される細胞・組織生着性に優れるタンパク質定着表面とその応用 Download PDF

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Abstract

【課題】医療用の器具や材料等の表面の生体親和性を飛躍的に向上させることを容易化する手段の提供。【解決手段】タンパク質水性溶液の導入場が設けられ、当該導入場においてタンパク質水性溶液に沿面放電体から発生する低温プラズマ放電を作用させることにより、細胞外マトリックスタンパク質を含むタンパク質に対して低温プラズマ放電によるプラズマ化を行い、これにより得られたタンパク質水性溶液を、ミスト又は液滴として、ステント等金属や疎水性ポリマーの表面に定着させることにより、当該定着部分における細胞や生体組織の生着性が飛躍的に向上する方法。【選択図】図3

Description

本発明は、プラズマ表面処理に関する発明であり、さらに詳細には、低温プラズマ放電を用いることにより生成されるタンパク質水性溶液、当該タンパク質水性溶液の生産に適した沿面放電装置、及び、これを用いて生産される生体親和性に優れるタンパク質定着表面とその応用に関する発明である。例えば、生体内にインプラントする器具や材料の表面に本発明を施すことにより、当該器具等の表面における細胞の生着が容易化され、その生体親和性を向上させることが可能となる。
生体親和性に優れた素材は、主に医療関連技術の発達に伴いその重要性を増している。
例えば高齢化社会において特に深刻な、心筋梗塞や脳梗塞等の虚血性疾患に伴う動脈硬化症の血管狭窄の再拡張には、ステントが一般的に用いられているが、生体親和性の低い金属ステントによる炎症反応に起因する内膜肥厚を原因とする再狭窄が数多く報告されている(非特許文献1,2)。炎症反応を抑制し、再狭窄を予防するために、臨床において抗癌剤や免疫抑制剤を用いた薬剤溶出ステントの使用が一旦は主流となったが、超遅発性のステント血栓症等が新たな問題として報告されている(非特許文献3)。これまでにステント素材の生体為害性は熟慮されてきたが、生体親和性については未だに十分な解決がなされていない。
生体親和性向上のために、造血幹細胞マーカーであるCD34や細胞間接着タンパク質であるVE-cadherinを修飾したステントに関する研究(非特許文献4,5)が行われており、いずれも細胞あるいは動物レベルの評価試験において良好な成績を示している。しかしながら、対象とする生体高分子が高価であるといった問題点が存在する。
特表2002−509010号公報 特開2010−240188号公報 特表平8−506741号公報 特表2006−501356号公報 特開2012−214815号公報 特開2013−75166号公報 特表2012−528612号公報 特開2009−268787号公報(特許第5178309号) 特開2010−75660号公報 特開2014−161804号公報 特表2012−509689号公報 特表2005−512778号公報(特許第4284187号) 特表2009−539431号公報 WO2010/082561号公報
Miki, K.,et al., Circulation journal,(2014),Article ID: CJ-13-1508 Park,C.B.,et al., Experimental and therapeutic medicine, Vol.6(2013),pp.840-846 Windecker,S., et al.,Circulation, Vol.116(2007),pp.68-75 Nakazawa,G.,et al.,Journal of the American College of Cardiology cardiovascular interventions,Vol.3(2010),pp.68-75 Lim,W.-H.,et al.,Arterioscrerosis,Thrombosis, and Vascular Biology, Vol.31(2011),pp.2798-2805
本発明は、医療用の器具や材料等の表面の生体親和性を飛躍的に向上させることを容易化する手段を提供することを目的とするものである。
本発明者らは上記の課題について検討を行い、タンパク質を含有する水性溶液を低温プラズマ放電によるプラズマ化を行うことによって得られるタンパク質水性溶液を対象物表面に接触させる表面処理を行うことによって、驚くべきことに当該タンパク質を対象物表面に密着した状態で定着させることが容易に可能であり、さらに、このようにして得られた処理表面における生体親和性が非常に優れていることを見出して、本発明を完成した。低温プラズマ放電には、沿面放電と誘電体バリア放電が含まれるが、本発明では、沿面放電が好適である。
本発明者らは、これらの本発明の基となるタンパク質水性溶液を生産するのに特に適した沿面放電装置を作製した。沿面放電は、一般的に「誘電体を挟んで印加電極と誘導電極が存在する場合に、印加電極から誘電体に沿ってなされる放電現象」として知られている。
A.本発明の水性溶液、生産方法、及び、沿面放電装置
本発明の水性溶液は、低温プラズマ放電によりプラズマ化がなされているタンパク質水性溶液である。
本発明の水性溶液に含有されるタンパク質は、細胞外マトリックスタンパク質を含むことが好適である。また、本発明の水性溶液中には、他の機能性物質を含有させることも可能である。当該機能性物質は、具体的な目的に応じて適宜選択されるべきものであり特に限定されないが、例えば、増殖因子、抗血栓因子、抗がん剤、免疫抑制剤、抗体、糖鎖、抗生物質等が挙げられる。
本発明の水性溶液には、(1)当該水性溶液がミスト化されている「ミスト型」、及び、(2)当該水性溶液が液滴である「液滴型」、の2通りの態様が有り、それぞれの態様の生産方法は異なっている(本発明の生産方法)。また、(3)本発明の生産方法を行うのに好適な沿面放電装置(本発明の装置)についての記載も行う。
ミスト型の水性溶液は、タンパク質水性溶液が低温プラズマ放電に接することにより、水に包まれたタンパク質分子の周りに過剰な電荷が供給され、電荷同士の反発力によって非常に細かい粒子(数十nm〜数百nm程度の径)に弾けてミスト化した状態であると考えられる。ミスト型の水性溶液のイメージ図を図1(1)に示した。
液滴型の水性溶液は、タンパク質分子を含有する水溶液中に、低温プラズマ放電により過剰に電荷が供給された状態であると考えられる。液滴型の水性溶液のイメージを図1(2)に示した。
(1)ミスト型の生産方法
本発明の生産方法のうち、ミスト型の水性溶液の生産方法は、プラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液を、特定の送り速度で沿面放電による低温プラズマに接触させることにより、当該タンパク質、又は、当該タンパク質と他の機能性物質の分子を荷電化することによって、当該分子同士を反発させるプラズマミスト化を、下記(a)〜(c)に従い行うことを特徴とする、プラズマミスト化されたタンパク質水性溶液の生産方法である。
(a) 上記の沿面放電を行うための交流電圧の周波数は5〜30kHz、印加電圧は2〜8Vである。
(b) 上記のプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液のタンパク質濃度は、25μg/ml〜5mg/mlである。
(c) 上記のプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液の特定の送り速度は、3.0〜36mm/分である。
この送り速度単位である「mm/分」は、「単位時間当たりのタンパク質水性溶液の送り容積(μl又はmm/分)」を、「タンパク質水性溶液の導入場(後述)の当該水性溶液の進行方向に対して垂直方向の断面積(mm)」で割って算出される値である。よって、この「送り速度」と「当該断面積」から、「単位時間当たりのタンパク質水性溶液の送り容積」を算出することも容易に可能である。
本発明のミスト型の生産方法における沿面放電の手段としては、後述する本発明の装置が好適である。この場合、タンパク質水性溶液の荷電化の場として用いられる導入場(後述)の、当該水性溶液の進行方向に対して垂直方向の断面積は、タンパク質水性溶液が歩留まり良くチャージされるために、好適な上限が定められる。例えば、当該導入場の形状が筒状の場合には、当該断面積は30mm以下であることが好適である。この筒状態様の場合の当該断面積の下限は特に限定されないが、1mm程度が好適である。また、当該導入場が、向かい合った板状の沿面放電体の間隙からなる場合は、当該向かい合った沿面放電体の印加電極板間の距離は6mm以下であることが好適であり、下限は特に限定されないが0.5mm程度であることが好適である。
沿面放電の発生機構である沿面放電体(後述)の印加電極と接地電極が重なり合っている部分の表面積も同様に、タンパク質水性溶液が歩留まり良くチャージされるために、ある程度は確保されていることが好適である。具体的には、タンパク質水性溶液の導入場の形状が筒状である場合は、上記断面積に対して好適には3〜30倍、特に好適には3〜10倍の当該表面積である。当該導入場が、向かい合った板状の沿面放電体の間隙からなる場合は、上記印加電極板間の距離に、好適には3〜30倍、特に好適には3〜10倍の距離を乗じて算出される表面積であることが好適である。
(2)液滴型の生産方法
本発明の生産方法のうち、液滴型の水性溶液の生産方法は、プラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液を、特定の送り速度で沿面放電による低温プラズマに接触させることにより、当該タンパク質、又は、当該タンパク質と他の機能性物質の分子の荷電化を、下記(a)〜(c)に従い行うことを特徴とする、プラズマ化されたタンパク質水性溶液の生産方法である。
(a) 上記の沿面放電を行うための交流電圧の周波数は5〜30kHz、印加電圧は7.5〜18kVである。
(b) 上記のプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液のタンパク質濃度は、25μg/ml〜255mg/mlである。
(c) 上記のプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液の特定の送り速度は、36〜180mm/分である。
本発明の液滴型の生産方法における沿面放電の手段としては、後述する本発明の装置が好適である。この場合、タンパク質水性溶液の荷電化の場として用いられる導入場(後述)の、当該水性溶液の進行方向に対して垂直方向の断面積は、タンパク質水性溶液が歩留まり良くチャージされるために、好適な上限が定められる。例えば、当該導入場の形状が筒状の場合には、当該断面積は30mm以下であることが好適である。この筒状態様の場合の当該断面積の下限は特に限定されないが、1mm程度が好適である。また、当該導入場が、向かい合った板状の沿面放電体の間隙からなる場合は、当該向かい合った沿面放電体の印加電極板間の距離は6mm以下であることが好適であり、下限は特に限定されないが0.5mm程度であることが好適である。
沿面放電の発生機構である沿面放電体(後述)の印加電極と接地電極が重なり合っている部分の表面積も同様に、タンパク質水性溶液が歩留まり良くチャージされるために、ある程度は確保されていることが好適である。具体的には、タンパク質水性溶液の導入場の形状が筒状である場合は、上記断面積に対して好適には3〜30倍、特に好適には3〜10倍の当該表面積である。当該導入場が、向かい合った板状の沿面放電体の間隙からなる場合は、上記印加電極板間の距離に、好適には3〜30倍、特に好適には3〜10倍の距離を乗じて算出される表面積であることが好適である。
(3)本発明の装置
前述の本発明の装置は、タンパク質水性溶液の導入場が設けられ、当該導入場においてタンパク質水性溶液に沿面放電体から発生する低温プラズマ放電を作用させることにより、プラズマ化したタンパク質を生産するための沿面放電装置であって、当該沿面放電体は、面状の誘電体の表裏の一方において印加電極が、他方において接地電極がそれぞれ当該誘電体と接触状態で設けられており、当該誘電体の面上の当該印加電極の端部と当該接地電極の端部の一部又は全部が揃っているか、あるいは、当該接地電極の端部が当該印加電極の端部の一部又は全部からはみ出すように設けられている沿面放電体であって、当該沿面放電体の1個又は2個以上が、タンパク質水性溶液の導入場の雰囲気に対する接触面を印加電極面として設けられていることを特徴とする、沿面放電装置である。なお、「沿面放電体から発生する低温プラズマ放電」は、性質的には「誘電体バリア放電」と同様の低温プラズマ放電(大気圧で電子温度のみが高い非平衡プラズマ(後述))である。
上記した「タンパク質水性溶液の導入場」とは、プラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液に、沿面放電体から発生する低温プラズマ放電を作用させるための場である。当該作用を行う前提として、プラズマ化がなされる前のタンパク質溶液を当該場に導入する必要がある。「導入」とは、当該場にプラズマ化がなされる前のタンパク質溶液を入れる行為であり、具体的な手段を問わず、例えば、進入、注入等を含む。「タンパク質水性溶液の導入場」の構造は、導入されたプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液に対して、沿面放電による低温プラズマ放電を作用させることができる構造である限り、特に限定されないが、プラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液を導入するための「導入口」と、プラズマ化したタンパク質を導出するための「導出口」が設けられていることが好適である。具体的な形状としては、筒状、中空平板状(当該導入場が、向かい合った板状の沿面放電体の間隙からなる)、ハニカム状、中空積層板状が例示できるが、筒状が好適である。筒状は、円筒状、多角筒状を含み、複数の筒状単位の長さ方向が揃った集合筒(ハニカム状等)であってもよいが、特に円筒状であることが好適である。
「沿面放電体」は、「タンパク質水性溶液の導入場」の雰囲気に対して沿面放電作用により低温プラズマ放電を行う単位である。具体的には、当該沿面放電体は、面状の誘電体の表裏の一方において印加電極が、他方において接地電極がそれぞれ当該誘電体と接触状態で設けられており、当該誘電体の面上の当該印加電極の端部と当該接地電極の端部の一部又は全部が揃っているか、あるいは、当該接地電極の端部が当該印加電極の端部の一部又は全部からはみ出すように設けられていることを特徴とする、沿面放電を行う単位である。沿面放電は、この「揃っているか、又は、はみ出している端部の沿面の印加電極側」において発生する。以下、この印加電極側への沿面放電が行われる領域を「沿面放電部」ともいう。後述するように、印加電極側が接地電極側よりもはみ出している領域では、接地側に沿面放電が発生するが、この領域は「沿面放電部」からは除外される。誘電体の形状を示す「面状」とは、平面状であっても、曲面状であってもよい。曲面は、円柱曲面等の柱曲面、錐面等の可展面、球曲面、回転面等、特に限定されない。印加電極と接地電極がこのような誘電体の表裏にそれぞれ接触状態で設けられて、「沿面放電体」が構成される。
上記のように「沿面放電体」においては、面状の誘電体の表裏の一方において印加電極が、他方において接地電極がそれぞれ当該誘電体と接触状態で設けられており、当該誘電体の面上の当該印加電極の端部と当該接地電極の端部の一部又は全部が揃っているか、あるいは、当該接地電極の端部が当該印加電極の端部の一部又は全部からはみ出すように設けられている。「印加電極と接地電極の端部と接地電極の端部が揃っているか、又は、接地電極の端部がはみ出している」における「はみ出し」の程度、すなわち、「接地電極端部が印加電極端部からはみ出す距離」は特に限定されず、本発明の装置における「タンパク質水性溶液の導入場」の形状等に応じて自由に設定できるが、一般的には当該距離をdとすると、好ましくは0<d≦5mm、特に好ましくは0<d≦1mmである。ただし、dが5mmを超えて、10mmや20mm、さらにそれ以上であっても「沿面放電による低温プラズマの発生」という機能を発揮させることは可能である。このような沿面放電体の接地電極端部と印加電極端部が揃っているか、又は、接地電極端部がはみ出している「沿面放電体端部」において、「端部が揃っている、又は、接地電極端部がはみ出している」割合は、100%であることが最も好ましいが、設計等によっては80%程度でも実用的であり、好適範囲内である。
1個又は2個以上の「沿面放電体」の印加電極面が、「タンパク質水性溶液の導入場」の雰囲気と接触する面である。当該導入場の雰囲気に接するように設けられる「沿面放電体」の数は、自由に設計することができる。「沿面放電体」の数を増減することによって、沿面放電による低温プラズマの発生箇所を、「タンパク質水性溶液の導入場」内において増減することができる。
例えば、タンパク質水性溶液の導入場が筒状体の内部となっており、「沿面放電体」の1個又は2個以上が当該筒状体の全部又は一部を構成する態様が挙げられる。「沿面放電体」が1個の態様については後述する。例えば、筒状の誘電体の筒側面の2箇所以上に、印加電極(筒の内側)と接地電極(筒の外側)を接触状態で、上記の端部における条件を満たした状態で相対して設けることにより、2個以上の沿面放電体が設けられた、筒内部をタンパク質水性溶液の導入場とする筒状構造の本発明の装置を構成することができる。当該2個以上の沿面放電体の配置としては、例えば、筒状体の長さ方向(両開口部を結ぶ方向)に間隔を設けて、複数の長さの短い筒状の沿面放電体を設けること等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、単一の沿面放電体の中に複数箇所の沿面放電部を設けることも可能である。
なお、「タンパク質水性溶液の導入場」を構成する一部を誘電体とする場合は、当該誘電体以外の構造部分は、絶縁物質であるか、又は、絶縁処理が施されることで、電気的に絶縁状態が保たれていなければならない。本発明の装置の誘電体の内側面又は印加電極が形成する筒状構造の内側空間に向けての送液機構が設けられていることが好適である。
前述のように、本発明の生産方法において、本発明の装置を沿面放電手段として用い、かつ、当該沿面放電装置の「タンパク質水性溶液の導入場」に向けて、プラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液を特定の送り速度で送液して、当該導入場の内部に発生させた沿面放電の低温プラズマと接触させることにより、本発明の水性溶液の生産を効率的に行うことができる。この処理前のタンパク質水性溶液の送りは、上記の送液機構を介して行うことが好適である。
B.本発明の定着方法、表面、及び対象物等
本発明は、上記の水性溶液(ミスト型であっても液滴型であってもよい)を、対象物の表面に接触させて付着させた後、当該対象物表面の乾燥を行い、当該接触及び乾燥の過程を1回又は2回以上行うことにより、水性溶液中のタンパク質、又は、当該タンパク質と他の機能性物質を対象物表面に定着させることを特徴とする定着方法(以下、本発明の定着方法ともいう)、及び、当該対象物表面(以下、本発明の表面ともいう)を提供する発明である。本発明の定着方法の対象物の表面は特に限定されないが、代表的には、金属性表面、ポリマー表面、セラミック表面、炭素繊維表面が例示される。当該ポリマーは疎水性ポリマーであってもよい。また、当該対象物の表面は、未処理であっても、エッジング処理等の処理がなされていてもよいが、未処理の表面であっても所望の定着が妨げられないことが本発明の定着方法の特徴の一つである。また、本発明の表面における、タンパク質、又は、当該タンパク質と他の機能性物質の定着層を積層化することも可能であり、多くの場合、積層化は好適な態様である。
本発明の表面を伴う対象物(以下、本発明の対象物ともいう)は、生体親和性又は細胞親和性が要求されるものであれば特に限定されない。代表的な態様として、生体内インプラントが挙げられる。
さらに本発明は、上記の表面に細胞又は生体組織を接触させて、当該表面にこれらを生着させることを特徴とする、細胞又は生体組織の生着方法(以下、本発明の生着方法ともいう)を提供する発明である。
C.先行特許文献
上記した先行特許文献について簡単に説明する。
(1) 特許文献1には、医用インプラントのプラズマ技術を用いた表面改質が開示されている。しかしながら、当該表面改質はプラズマによるエッチングであり、低温プラズマ処理を行った水性溶液との接触により表面改質を行う、本発明とは異なっている。
(2) 特許文献2、8には、共に生体の内部に薬液を投入して、生体内の所定の部位に薬液を確実に投与することができる薬液噴霧装置が開示され、その際、薬液には電圧が印加される。しかしながら、開示されている薬液は実質的にはタンパク質溶液ではなく、しかも薬液の到達地点は、本発明とは異なり生体内であり、本発明において求められるような密着性に富んだ強固な定着性は必要無い。また、電源はこれらの文献中の記載から、周波数が関係しない直流電源だと考えられ、交流電源を用いる本発明とは異なり、さらに、電極同士が直接相対していることから、誘電体バリア放電や沿面放電とは異なる、単なるチャージだと考えられる。またミストの噴出は、プランジャによる押出し機構から霧吹きノズルにより実現されるものであり、低温プラズマと接触させることにより、ミスト形成や液滴形成を自在に行う本発明とは異なっている。
(3) 特許文献3には、低圧プラズマでの処理により変性された医療目的のための膜が開示されている。しかしながら、当該プラズマは酸素やアルゴン等のガスを基にしたプラズマであり、タンパク質の水性溶液を基とする本発明とは異なる。
(4) 特許文献4には、細胞接着に抵抗する表面が開示されている。当該表面の性質は本発明が付与する性質とは正反対であり、かつ、プラズマ処理は当該表面上の窒素含有基の生成のために用いられているという点においても異なる。
(5) 特許文献5には、生体分子が親和的かつ特異的に結合する均一なプラズマ重合表面が開示されている。しかしながら、当該プラズマの基となる物質は炭素原子数20以下の炭化水素等であり、本発明とは異なる。さらに、本発明はプラズマ重合を主な効果とするものではない。
(6) 特許文献6には、プラズマ処理された透析カテーテルカフが開示されている。しかしながら、当該プラズマはイオン化酸素とメタン等を基にするプラズマであり、本発明とは異なっている。
(7) 特許文献7には、ナノ銀を用いたコーティング技術について開示されており、被処理表面処理にプラズマを用いる。しかしながら、当該プラズマは酸化物膜形成を目的とするものであり、本発明とは異なっている。
(8) 特許文献9には、マイクロプラズマ放電を用いて長時間安定したイオンを発生させることができるイオン吐出装置が開示されている。しかしながら、本発明のタンパク質水性溶液に関連する開示は全く認められない。
(9) 特許文献10には、オゾンの発生が抑制されたミストの生成手段が開示されている。しかしながら、本発明のタンパク質水性溶液に関連する開示は全く認められない。
(10) 特許文献11には、創傷治療用の非熱的プラズマとその応用についての開示がなされている。本技術は、創傷治療用であり、本発明のように素材表面の生体適合性を向上させる技術ではない。また、搬送気体に対する添加物にタンパク質が含まれ得るといっても、本来イオン化させる対象は搬送気体であり、当該添加物はイオン化させる対象外である旨が記載されている(例えば、特許文献11段落[0043])。
(11) 特許文献12には、プラズマを用いた表面コーティングを医療用デバイス等に施す技術が開示されている。しかしながら、当該表面コーティングにおいて素材に接触させるプラズマは、キャリアガスと酸素、水、アンモニア、有機アミン、アルデヒド等であり、本発明で低温プラズマ処理を施す対象であるタンパク質は、特許文献12の技術においては当該プラズマにより活性化された表面に施すものとして規定されている。
(12) 特許文献13には、生体分解性ステント・コーティングの形成におけるプラズマの使用について開示されている。しかしながら、特許文献13の技術におけるプラズマは、主にポリマーを表面上に堆積させるためのプラズマ重合を行うためのものである。
(13) 特許文献14には、プラズマ生成装置が開示されているが、本発明のタンパク質水性溶液に関連する開示は全く認められない。
本発明により、タンパク質の対象物表面におけるタンパク質の優れた定着性と共に、細胞等との優れた生着性を、簡便な工程で得ることが可能な手段が提供される。
本発明のプラズマ化タンパク質水性溶液のイメージ図であり、(1)はミスト型、(2)は液滴型である。 本発明に用いられる沿面放電の解説図である。 本発明の水性溶液の発生装置における、縦断面を主体とした解説図である。 本発明の水性溶液の発生装置の本体部分の縦断面図と横断面図である。 本発明の装置の実施例における、導出口近傍の沿面放電がなされる部分の拡大解説図である。 本発明の表面の生体親和性を評価するために、試験表面に細胞外マトリックスタンパク質を定着させた結果を示す、蛍光顕微鏡像である。 本発明の表面の生体親和性を評価するために、血管内皮細胞の接着性を指標に検討した結果を示すグラフである。 コラーゲンを定着させた本発明の表面における血管内皮細胞の接着性を検討した結果を示している。 細胞播種後24時間経過後のプラズマ化コラーゲンでコーティングした表面を、10倍の対物レンズで撮影を行った結果を示している。 細胞播種後24時間経過後の無処理のカバーガラスの表面を、10倍の対物レンズで撮影を行った結果を示している。 細胞播種後24時間経過後の無処理のコラーゲンでコーティングした表面を、10倍の対物レンズで撮影を行った結果を示している。
本発明の水性溶液
本発明の水性溶液は、タンパク質水性溶液が低温プラズマ放電によりプラズマ化がなされたプラズマ化水性溶液である。
(1)低温プラズマ
既に言及している「低温プラズマ」とは、電子温度(T)が気体温度(T)よりも明らかに大きく(T/T>100)、TとTとが平衡に達していないプラズマであり、別名で非平衡プラズマとして知られている。低温プラズマ放電とは、この低温プラズマを得るための放電であり、グロー放電、コロナ放電、誘電体バリア放電、沿面放電等が該当する。これらの中でも、沿面放電又は誘電体バリア放電を用いることが好ましい。
(1)−1:沿面放電
沿面放電においては、交流電源から適切な周波数の交流電圧を、印加電極に印加することにより、印加電極において交流周期に同期して強い電界が形成され、当該電界から放出された電子が誘電体の表面に付与される現象と、それらが再び印加電極に戻る現象が繰り返し起こることによりグロー状の低温プラズマ放電を得ることができる。
沿面放電を発生させて、本発明の水性溶液を生産するための装置は、沿面放電を発生させるための本質的な設備、具体的には、交流電源、接地電極、誘電体、及び、印加電極が備わっていれば特に制限は認められず、具体的な処理目的に応じて自由に設計し、作製することができる。接地電極、誘電体、及び、印加電極は、互いに接しており、印加電極に交流電源から給電がなされ、接地電極にはアース線が接続されて接地がなされている。
図2は、本発明で用いる沿面放電の原理の説明断面図である。この図面において、最も大きな面面積を有する板状の誘電体2の一方の面に、それよりも面面積の小さな、印加電極3と、他方の面に同接地電極4が、共に接触状態で維持されている。印加電極3は、交流電源5と電気的に接続されており、交流電圧をこれらの印加電極に供給可能である。接地電極4は、アース線6が接続されて接地がなされている。図2に示した沿面放電では、接地電極4の誘電体2との接触面積の方が、印加電極3の誘電体2との接触面積よりも大きい。これが、上記の「沿面放電体」である。
図2に示す沿面放電体は、印加電極3の辺縁部に低温プラズマ放電7を生成するもので、接地電極4の面面積が印加電極3の面面積よりも明らかに大きくなっているが、あくまでも低温プラズマ放電7は、印加電極3の辺縁部において発生する。上述したように、接地電極4と印加電極3の端部が重なり合っている場合と、接地電極4がはみ出している場合、当該はみ出し部分においては、低温プラズマ放電7は当該端部の辺縁の印加電極3側に発生する。逆に、印加電極3が接地電極4の端部からはみ出している部分においては、低温プラズマ放電7は当該端部の辺縁の接地電極4側に発生する。この接地側の低温プラズマ放電は、電荷が接地に流れてしまうため十分な荷電を行えず、タンパク質水性溶液のプラズマ化効果が薄れるので、本発明におけるタンパク質水性溶液に対するプラズマ化手段としては用いない。
図2に示すような本発明で用いる沿面放電を行う場合の印加電圧として2〜18kV、周波数は1〜30kHzが好適であり、特に3〜10kHzが好適である。周波数が1kHz未満であるとナノ秒オーダーのパルス性のマイクロ放電が持続出来ずに低温プラズマ放電が安定せず、結果として極度に高い電圧をかける必要があり、低温プラズマ自体の生成が困難な場合も想定される。また、30kHzを超えると、分極電界生成に至るまでに十分に必要な電圧の供給をさせ難くなり、その結果として低温プラズマの生成は困難となる。ただし、これらの印加電圧と周波数の条件は、あくまでも本発明への具体的な適用を考慮しない条件であり、本発明の適切な実施のための条件は、これらの条件とは若干異なっている。例えば、周波数が低すぎると低温プラズマ発生のために要求される電圧は高くなるが、特にミスト型の場合は印加電圧が高電圧になるとタンパク質の燃焼が顕在化してくる。
また、沿面放電を行うための気圧は、大気圧が最も好適であるが、それより低い気圧下でも可能である。ただし、大気圧より低い気圧で沿面放電を行う場合には、特殊な密閉容器が必要であり、化学種の生成効率の低下、紫外線の放出が問題となる。大気圧より高い気圧で沿面放電を行う場合には、圧力容器が必要であり、低温プラズマの生成自体が困難となる傾向がある。よって、大気圧以外の環境下において本発明を行う実益は乏しいといえる。あえて気圧の範囲を挙げれば、0.02MPa〜大気圧程度である。
誘電体の厚さ(接地電極が接した面と印加電極が接した面との距離)は、用いた交流電圧の周波数と電圧、さらに気圧や誘電体の素材等を勘案して、技術常識に従って選択することが可能であるが、概ね0.5〜2.5mmが好適である。特にこの厚さが薄すぎると誘電体が焼き切れてしまう傾向が認められ、ガラスでは0.2mm、ポリマー類では0.5mm程度が厚さの下限として例示される。また、この厚さが厚すぎると、パッシェンの法則に従い低温プラズマ発生に必要な電圧が大きくなる。
沿面放電における誘電体は、比誘電率が100以下程度の常誘電体が該当し、素材としては、ガラス類、フォルステライト、酸化アルミニウム(アルミナ)、ニオブ酸マグネシウム酸バリウム、チタン酸ネオジウム酸バリウム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−三フッ化エチレン共重合体(VDF/TrFE)、シアン化ビニリデン酢酸ビニル共重合体(VDCN/Vac)等を例示できるが、これらに限定されるものではない。また、印加電極と接地電極は、同一であっても異なっても良く、アルミニウム電極、ステンレス電極、銅電極、マグネシウム電極、鉄電極、タングステン電極、白金電極等の金属電極等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。適宜素材を複合化された電極を用いることも可能である。
(1)−2:誘電体バリア放電
誘電体バリア放電は、無声放電、オゾナイザ放電、バリア放電、誘電体バリア交流放電等とも呼ばれる放電形態である。誘電体バリア放電は、電極間に誘電体を介在させ、交流電圧を印加したときのギャップで生じる放電である。放電が生じても誘電体の存在により電極に電荷が流れ込むことができず、誘電体上に電荷が蓄積するために逆電界が発生して、放電はグロー放電の形態で停止し、放電の最終段階であるアーク放電には移行しない。よって誘電体バリア放電では、グロー放電のような安定で持続的な放電を維持させることが可能である。特に誘電体バリア放電は、誘電体の存在により大気圧以上でも拡散したグロー状の放電を安定して得ることができる。
誘電体バリア放電を発生させて、本発明の水性溶液を生産するための装置は、誘電体バリア放電を発生させるための本質的な設備、具体的には、交流電源、給電電極、誘電体、及び、接地電極が備わっていれば特に制限は認められず、具体的な処理目的に応じて自由に設計し、作製することができる。
誘電体バリア放電においては、交流電源から適切な周波数の交流電圧を、誘電体を介し、給電電極と接地電極との間で印加することにより、これらの電極の間に形成されたギャップにおいてグロー状の低温プラズマ放電を得ることができる。上記の交流電圧の周波数は、10〜100Hzのオーダーから30kHz程度の間が好適であり、特に1〜10kHzが好適である。10〜100Hzのオーダーよりも小さくなると低温プラズマの生成に極度に高い電圧が必要となり、低温プラズマの生成自体が困難な場合も想定される。30kHzを超えると低温プラズマの生成が困難になる。誘電体バリア放電の印加電圧は、数kV〜数十kVであり、好適には大気圧下で5〜30kVである。
また、誘電体バリア放電における気圧は、大気圧が最も好適であるが、それより低い気圧下でも可能である。ただし、大気圧より低い気圧で誘電体バリア放電を行う場合には、特殊な密閉容器が必要であり、化学種の生成効率の低下、紫外線の放出が問題となる。大気圧より高い気圧で誘電体バリア放電を行う場合には、圧力容器が必要であり、低温プラズマの生成自体が困難となる傾向がある。よって、大気圧以外の環境下において本発明を行う実益は乏しいといえる。あえて気圧の範囲を挙げれば、0.02MPa〜大気圧程度である。
上記の誘電体バリア放電において用いられる本質的な設備のうち、「給電電極」と「接地電極」は、同一であっても異なっても良く、具体的には、上述した沿面放電の「接地電極」と「印加電極」と同様である。さらに誘電体も、上述した沿面放電と同様である。
(2)水性溶液
上記のようにして発生する低温プラズマに水性溶液を接触させて、当該溶液分子を荷電させることにより、本発明の水性溶液を生産することができる。
低温プラズマに接触させる「水性溶液」とは、水を主体とする水性溶媒に、溶質としてタンパク質を溶解した溶液である。水性溶媒は、タンパク質が容易に溶解するのであれば水であっても良いが、タンパク質の種類によっては水に対して難溶性である場合もあり、そのような場合に適宜塩等を添加することによって、目的のタンパク質の溶解度を向上させることが可能となる場合が認められる。どのような塩等をどの程度の量添加するかについては、溶解させるタンパク質の種類に応じた常法に従うことで行うことができる。プラズマ化がなされる前の水性溶液におけるタンパク質濃度の下限は25μg/ml程度であることが好適であり、さらに好適には50μg/ml程度である。25μg/mlよりもタンパク質濃度が小さいと対象物表面におけるタンパク質の定着密度も小さくなってしまい、所望するような生体親和性を十分に発揮させることが難しくなる。例えばタンパク質が水性溶媒に対して難溶性であり、大きなタンパク質濃度を確保することが難しい場合には、重複して定着処理を行うことにより単回の定着密度の薄さを補うことも可能である。上限値は、所望する本発明の水性溶液の形態により異なる。すなわち、当該形態がミスト型である場合にはタンパク質の濃度が高すぎるとミスト化が困難になるため、3mg/ml程度が上限となる。これに対して液滴型の場合には特に限定されず、溶解可能限度までタンパク質濃度を設定することが可能であり、多くの場合255mg/ml以下程度であることが好適である。
「タンパク質」には、ペプチドを含み、さらに糖タンパク質も含まれる。用いるタンパク質の種類は特に限定されないが、細胞外マトリックスタンパク質を含むことが好ましい。また、細胞外マトリックスタンパク質以外であっても、ポリリジン等の天然由来のポリアミノ酸も好適である。
細胞外マトリックスタンパク質としては、例えば、コラーゲン、エラスチン、プロテオグリカン、グルコサミノグリカン等のタンパク質;フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン等の糖タンパク質;ゼラチン等の加工タンパク質が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
さらに、本発明の水性溶液中には、「他の機能性物質」を含有させることも可能であり、当該機能性物質として、例えば、増殖因子、抗血栓因子、抗がん剤、免疫抑制剤、抗体、糖鎖、抗生物質等が挙げられることは、上述した通りである。
本発明の生産方法
上述したように、本発明の水性溶液には、(1)ミスト型、及び、(2)液滴型、の2通りの態様が存在し、これらの態様は、印加電圧等の印加条件、さらに水性溶液のタンパク質濃度と送り速度をコントロールすることにより峻別して生産することができる。以下、沿面放電を行う本発明の装置の一実施態様を、図面を用いて開示を行い、当該装置を用いる本発明の生産方法について、これらの2種類の態様毎に説明する。
(1)ミスト型の生産方法
図3は、沿面放電を行う本発明の装置1における、縦断面を主体としたミスト型の水性溶液を生産する場合の解説図であり、図4(1)は、その本体部分10である。図4(2)は、(1)の実線A−A’での横断面図である。さらに、図5は本発明の装置1の沿面放電がなされる、本体部分10の導出口108近傍の壁断面の拡大解説図である。
本体部分10は、誘電体管101、印加電極102、及び、接地電極103で構成されており、印加電極102は、誘電体管101内側面の最下部近傍を残して当該内側面全面に密着しており、接地電極103は、その端部が印加電極102と誘電体管101の重なり合っている部分をはみ出さないように、誘電体管101の外側面の最下部近傍を残して当該外側面の下領域の一部の側面を取り巻き密着し、アース線105を介して電気的な接地がなされている。「タンパク質水性溶液の導入場」107は、このような筒状の本体部分10の内部である。当該導入場107の雰囲気に、印加電極102が接触している。当該導入場107には、導入場107と外部の雰囲気が流通可能な導出口108が設けられている。導出口108は、本例では導入場107の筒口である。
印加電極102は、導電線14’等を介して交流電源と電気的に接続されている。誘電体間101の外側面の残りの上部分には絶縁体104が取り巻き密着しており、接地電極103についての電気的遮断が、本体部分10の上部に向けてなされている。
交流電源には、印加電圧、周波数等を調整可能とするために、ファンクションジェネレーター13と増幅器14、さらにモニター用のオシロスコープ15が備わっており、それぞれは導電線13’、14’、及び、15’で連結されて、印加電極102と電気的に接続されている。
当該交流電源に基づく交流電圧は、印加電極102に向けて印加される。そして、特に印加電極102における接地電極103と向かい合っている部分の辺縁部に交流周期に同期して強い電界が形成され、その部分から放出された電子が誘電体101に付与される現象と、それらが再び印加電極102に戻る現象が繰り返し起こり、当該辺縁部において低温プラズマ106が発生する。図5において、外側面おいて誘電体管101の側壁と密着している接地電極103の端部1031と、内側面において誘電体管101の側壁と密着している印加電極102の端部1021は重なり合うか、又は、僅かに接地電極103の端部1031がはみ出している。そして、接地電極103の反対側の端部1032は、筒の長さ方向において接地電極102よりも明らかに長い印加電極102の他端1021からは大きく引っ込んでいる。このような状態で通電を行うと、低温プラズマ106は、導出口108近傍の印加電極の端部1021の辺縁に大きく発生し、その一部により印加電極102の表面の導出口108側の一部が覆われる。反対側の端部1032の辺縁部には低温プラズマ106’が発生するが、前述のようにこれは、タンパク質水性溶液のプラズマ化に用いられない。
次に送液機構についての説明を行う。管状の本体部分10の2カ所の開口部のうち、絶縁体104が設けられている側、すなわち上部に封止栓17が挿入され、本体部分10の内側面の印加電極102を圧した状態で封止がなされている。さらに当該封止栓17においては、T字型の中空の導管16における腕の一つ(162)が、封止栓17の素材による圧力を受けた状態で貫通固定されている。導管16の他の2つの腕のうち、一方161は、導管114を介してシリンジポンプ11の注射器110の外筒111に気密状態で連結されており、他方はエアポンプ12と気密状態で連結されている。
シリンジポンプ11は、注射器110及び支持台115からなっている。注射器110は、一端がつば部1112を伴って開放し、他端に液体導出部1111が設けられている外筒111、及び、一端には気密性を保った状態で外筒111の内部を長さ方向に摺動可能な摺動体1121が設けられ、好ましくは他端に押圧部1122が設けられた内部棒112、からなっており、外筒111の中にプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液113が適量入った状態で、内部棒112の一端が差し込まれている。この状態から内部棒112を矢印Bの方向に押し込むと、外筒内の水性溶液113は、液体導出部1111を介して、導管114へと押し出される。一方、支持台115の台座1151には、案内棒1152の固定部1153と1153’が設けられ、押し込み部1154は棒上を移動可能な状態で、案内棒1152で貫通されて案内支持されている。固定部1153は、注射器110の外筒111を安定な状態で載置可能な凹部1155が設けられている。注射器110の外筒111を当該凹部に載置し、内部棒112の他端の押圧部1122を押し込み部1154に宛がって、当該押し込み部1154を案内棒1142で案内させつつ矢印B方向に押し込むことにより、安定して上記の水性溶液113の導管114への導出を行うことができる。無論のこと、このような支持台を用いずに注射器110を直接手に持って上記の導出を行うことも可能であり、さらに、他のポンプ機構を用いることも可能である。
このようにして、シリンジポンプ11に封入されたプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液113が内部棒112の押圧による矢印B方向への圧力によりT字型の導管16に向けて押し出され、さらにエアポンプ12による矢印C方向への圧力により、導管16の開口部162に向けて押し出される。そして本体10内に押し出されたプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液113’は、ほぼ印加電極102により形成される筒状構造の内側空間に向けて送液され、印加電極102の露出表面から当該内側空間に向けて周回状に形成される低温プラズマ106と接触し、所望するミスト状の本発明の水性溶液18が生成し、導入場107の導出口108から外部に向けて吐き出される。
上記の例示された設備等に基づき、ミスト型の生産方法は前述のように、下記(a)〜(c)に従い行うことを特徴とするものである。
(a) 沿面放電を行うための交流電圧の周波数は5〜30kHz、好適には5〜10kHzである。この周波数が5kHz未満であると低温プラズマ生成に必要な電圧値が過度に大きくなってしまい、タンパク質自体の燃焼が問題となる傾向が強くなり、30kHzを超えると低温プラズマの生成が困難となる。また、印加電圧は2〜8V、好適には2〜4kVである。この印加電圧が2kV未満であると荷電が不十分となってしまいタンパク質溶液のミスト化が困難となる。8kVを超えると、上記のようにタンパク質等が燃えてしまう比率が多くなり過ぎてミスト化が非効率となる。
(b) プラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液のタンパク質濃度は、上述した通りに25μg/ml〜5mg/mlであり、好適には50μg/ml〜3mg/mlである。
(c) 上記のプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液の送り速度は、3.0〜36mm/分である。この送り速度の意味については上記した。
その他の条件としては、場の圧力は大気圧が好適であり、ガスは、空気の他、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス等を選択することが可能であるが、空気が好適である。また、誘電体の厚さ(接地電極が接した面と印加電極が接した面との距離)については、上述した通りである。
(2)液滴型の生産方法
液滴型の水性溶液の生産方法について繰り返せば、当該方法は、上述したプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液を、特定の条件で低温プラズマに接触させることにより、当該タンパク質、又は、当該タンパク質と他の機能性物質の分子の荷電化をする、タンパク質水性溶液の生産方法である。
液滴型の水性溶液は、上述したミスト型の水性溶液の生産に用いられる装置を用いて生産することが可能であり、周波数と印加電圧についての条件(a)は、印加電圧の範囲がミスト型と異なり、7.5〜18kV、好適には7.5〜16kVである。
このような印加電圧の下限値と上限値を規定した理由は、特に(c)の送り速度がミスト型よりも大きいことにより、印加電圧の範囲がミスト型よりも高くなるからである。プラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液のタンパク質濃度(b)についての条件は、上述した通りにミスト型のような濃度上限の制約は認められず、敢えて示せば上限は255mg/ml程度である。(c)のプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液の送り速度は、36〜180mm/分である。
場の圧力、ガスの種類、誘電体の厚さの条件は、ミスト型と同様である。
本発明の定着方法、表面、対象物等
本発明の定着方法は、上記の本発明の水性溶液(ミスト型であっても液滴型であってもよい)を対象物の表面に定着させる方法である。ここで「定着」とは、確りと着いて容易には離れないことを意味するものである。そして、特に本発明においては、当該水性溶液の溶質、すなわち、水性溶液中のタンパク質、又は、当該タンパク質と他の機能性物質、を対象物表面へ定着させることを発明の内容としている。
本発明の定着方法における対象物表面への本発明の水性溶液の接触のさせ方は特に限定されず、対象物又はその表面の形状、大きさ等に応じて自由に選択することができる。代表的な態様として、ミスト型であれば、対象物表面への吹き付け、ミスト雰囲気との接触等が挙げられる。この接触として、対象物のミスト雰囲気内への静置の他、対象物の動きを伴ったミスト雰囲気との接触を行うこともできる。液滴型であれば、対象物表面への流し掛け、水性溶液への対象物の浸漬、対象物表面への水性溶液の塗布等が挙げられる。いずれの態様においても本発明の水性溶液は、低温プラズマによる構成分子の荷電のために表面張力が極端に低くなっており、接触により容易に対象物表面に水性溶液を均等平坦に付着させることができる。1回の接触量の目安は、本発明の水性溶液のタンパク質濃度に依存するが、ミスト型の場合は2μl/cm以上の接触表面の単位面積当たりの水性溶液の残存量となるように設定することが好適である。液滴型の場合は48μl/cm以上の接触表面の単位面積当たりの水性溶液の残存量となるように設定することが好適である。
上記接触後の乾燥の方法は、特に限定されない。人工乾燥、自然乾燥のいずれも選択することができるが、接触させた溶質成分のみならず、対象物やその表面に、変質、劣化等を可能な限り及ぼさない方法を選択することが好適である。
上記の接触及び乾燥の過程は、1回とすることも可能であるが、2回以上として積層化することも可能である。むしろ対象物表面における、より優れた生体親和性の付与効果を上げるためには、2回以上の過程による積層化を行うことが好適であり、3〜5回の過程を行うことが特に好適である。
上述したように、本発明の定着方法を行う対象である対象物表面は特に限定されず、金属表面、ポリマー表面、木材表面、セラミックス表面、炭素繊維表面等、あるいはこれらを複合化した表面が挙げられる。金属表面の材質としては、例えば、ニッケル、銅、鉄、ステンレス、チタン、クロム、タンタル、コバルト合金、貴金属等、さらにこれらの金属の合金が挙げられる。これらの金属表面は、対象物表面の材質そのものであってもよいが、メッキによるものであってもよい。合金としてチタン合金が好適であり、チタンと組み合わせが可能な金属として、例えば、アルミニウム、アルミナ、モリブデン、マグネシウム、鉄、バナジウム、ニッケル等である。貴金属としては、金、白金、銀、パラジウム等、さらにこれらの合金が挙げられる。
ポリマーとしては、疎水性、親水性いずれも用いることが可能であり、例えば、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリ(ビニルクロリド)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(アクリロニトリル)/ポリ(ビニルクロリド)、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ(L−乳酸)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
セラミックスとしては、水酸アパタイト、リン酸三カルシウム、結晶化ガラス、ジルコニア等が挙げられる。また、セラミックスと有機物との複合体も例示される。
いずれにしても、本発明の定着方法を行うにあたり、既存の表面に対して本発明の定着方法を行うために、例えば、サンドブラスト、フライス盤による機械加工、熱処理等の物理的処理;酸エッチング等の化学的処理;鏡面・めっき処理等の電気化学的処理;各種塗装処理、プラズマエッチング処理等の事前処理を行う必要は無く、親水性素材、疎水性素材のいずれをもそのまま用いることができる。例えば、ポリマーであれば、疎水性のシリコーン樹脂の表面も、本発明の定着方法の適用対象である。なお、上記したのは、敢えて本発明の定着方法を適切に行うための事前処理が不必要であることであり、対象物表面に例示した表面処理が行われたものを本発明の定着方法の適用から除外することを意図するものではない。特に、積極的に事前処理を行うことにより特定の機能を付与することが、本発明の定着方法を行う前提である場合も想定される。そのような場合は、当該事前処理により付与される機能と本発明の定着方法を行った場合の相性、すなわち、当該事前処理により本発明の定着方法により設けられる表面の十分に検討することが好ましく、当業者であるならば、両処理の相性の検討を行い、本発明の適用の適不適を判断することは可能である。
本発明の表面を伴った対象物(本発明の対象物)は、上述したように、生体親和性又は細胞親和性が要求されるものであれば特に限定されない。代表的な態様として、生体内インプラントが挙げられる。
「生体内インプラント」とは、生体組織と継続的に接触させる機器、器具等を意味するものである。生体組織との接触時間は特に限定されないが、通常は1日以上であり、無期限の接触時間を理想とするものも存在する。具体的には、人工心臓、人工心臓弁、人工骨、人工関節、人工血管、縫合糸、注射針、心臓ペースメーカー、カテーテル、外科用ステープル、プロテーゼ、インプラントワイヤ、歯科用インプラント、生体内部組織の足場等が挙げられるが、生体組織と接触するものであれば、これらに限定されるものではない。また、本発明の対象となる生体内インプラントは、現在提供されているもののみならず、将来において提供されるものも含有される。「生体内インプラントの表面」とは、当該生体内インプラントの全部又は一部における表面部であり、当該表面部は生体組織と接触することにより生体反応を惹起することが知られている。例えば、生体内インプラントの人工材料が血液と接触することによる血栓の形成、骨内や皮下等の結合組織と接触することによるカプセル化等が、当該生体反応の代表的な例として挙げられる。本発明を生体内インプラント等の対象物の表面に施す主要な効果の一つが、生体組織と生体内インプラントの接触による生体反応の惹起の抑制である。すなわち本発明を当該表面部に施すことにより、当該表面部の生体親和性を向上させることが可能となる。
ここで上記例示した生体内インプラントのうち、いくつかの典型例に関してやや具体的に述べる。
ステントとは、人体の管状の部分、例えば、血管、気管、食道、十二指腸、大腸、胆道等を、管腔内部から広げる医療機器である。多くの場合は、金属等の網目の筒状の部材であり、治療する部位に応じて使用する。冠動脈や脳血管では、狭窄部位又はその近傍にステントを留置して血管内部から支え、狭窄を改善して十分な血流を得るための治療が行われている。例えば、先端にステントを載せたバルーンを持つカテーテルを、大腿動脈や腕の動脈から血管に挿入し、バルーンを狭窄部に進め、そこでバルーンを広げるとステントも広がり、狭窄が改善される。そして広がったステントを残してバルーンカテーテルを抜き取っても、ステントは血管内に残り、狭窄部分を内側から支え続ける。
以下、背景技術の欄において言及したことを繰り返せば、上述のようなステントを用いた治療を行った場合、ステントと血管壁の接触による炎症反応に起因する内膜肥厚による再狭窄の発症例が数多く報告され、かかる炎症反応を抑制し、再狭窄を予防するために、ステロイド剤や免疫抑制剤を用いた薬剤溶出ステント(DES)が用いられている。しかしながら、これについては超遅発性のステント血栓症等の問題が報告されている。さらに、生体吸収材料を用いることにより経時的に生体に吸収されるステントが提案されているが、生体吸収が不均一である場合には当初の形状とは異なるものになって均等な拡張が維持できなくなり、力学的なストレスによる組織の裂傷や肥厚化等の問題が挙げられている。また、金属ステントであっても、薬剤溶出ステントであっても、その使用者は永続的にアスピリン、ワルファリン等の抗血栓剤の服用を義務付けられるところ、次に血管裂傷による出血をした場合の止血が困難になる場合が認められる。そこで、内皮細胞のモノレイヤー形成を促進して、生体親和性を飛躍的に向上させるために、造血幹細胞マーカーであるCD34や細胞間接着タンパク質であるVE-cadherinを修飾したステントに関する研究が行われているが、これらの物質は非常に高価である。
このような問題に対して、従来のステントを構成する素材、例えば、ステンレス、タンタル、コバルト合金、チタン、ニッケル・チタン合金等の金属類、さらには、各種のポリマー等の表面に対して本発明の定着方法を施すことによって、細胞内マトリックスタンパク質等を容易、かつ、強固に当該表面に定着させることが可能となり、しかも、生体親和性を著しく向上させることが可能である。また、本発明を適用したステント表面に早期に内皮細胞のモノレイヤーを正常に造り上げることにより、上記の抗血栓剤の服用を減量、さらには中止させることも可能になると考えられる。
人工心臓は、完全置換型に対しても、補助型に対しても、さらには人工心臓弁や心臓ペースメーカーに対しても、本発明の定着方法を、必要に応じてそれらの表面に対して適用することにより、当該表面の生体親和性を高め、血栓等の生体反応を抑制することができる。また、歯科用インプラントや人工骨(関節を含む)に、必要に応じて本発明の定着方法を適用することにより、これらの生体適合性を向上させることができる。
人工血管は、本発明の定着方法を適用するべき好例の一つである。人工血管は、例えば、動脈瘤が認められる動脈の代替や、虚血性心疾患に伴う狭窄の酷い動脈の代替として用いられている。さらに、人工透析のシャントを行う場合にも、内シャントの一部(人工血管動静脈瘻(AVG))、さらには、グラフトと呼ばれる外シャントにおいて用いられる。これらの場合、血栓が形成されることを可能な限り抑制する必要があるが、本発明の定着方法を、最低限人工血管の内腔面に施すことにより、そのリスクを減ずることが可能である。人工血管の外側面への本発明の定着方法の適用は、特に、人工血管を体内に埋め込む場合の生体適合性を向上させることが可能である。
プロテーゼは、主に整形手術において用いる補綴を意味するもので、生体組織に長期間接触することを前提とするものであり、可能な限り生体親和性を伴うことが好ましく、本発明の定着方法の適用対象である。
縫合糸、注射針、カテーテル、外科用ステープル、インプラントワイヤは、その使用態様により、生体組織と接触している時間又は期間が様々であるが、当該時間又は期間の長短にかかわらずに可能な限り生体親和性を伴うことが好適であり、長期間にわたる接触を前提とする製品に対しては本発明の定着方法により生体親和性の向上を確保することが特に好ましい。
生体内部組織の足場は、これを生体内に埋設することにより、例えば障害臓器の修復のための生体細胞成長の足場となる場のことを意味するものであり、織布、不織布、微小球、微小チューブ、クモの巣様構成物、泡若しくはスポンジ様構成物等が挙げられる。これらについても、本発明の定着方法を適用して生体適合性を確保することが好ましい。
上述した「生体内インプラント」は、本発明の定着方法を適用する好適な対象であるが、当該適用対象が生体内インプラントに限定される訳ではなく、本発明の定着方法の効果を活用できるのであれば他の対象物であってもよい。
例えば、細胞培養用器具が他の好適対象として挙げられる。すなわち、マイクロタイタープレートのプレート表面(凹部、又は、全体)に、本発明の定着方法を施し、その表面上に所望する細胞外マトリックスタンパク質をコートすることにより、当該プレートの生体親和性を向上させることにより培養細胞の生着性を向上させ、又は、特定機能を有するタンパク質をコートすることにより、当該プレートを特殊機能プレートとして供することが可能になる。
このように、本発明の定着方法を施した細胞培養用器具において、上述した本発明の生着方法を特に好適に行うことができる。
以下、本発明の実施例を開示する。%は、特に断らない限りは対象に対する質量%である。
(1)低温プラズマ発生装置の作製と本発明の水性溶液の調製
低温プラズマ発生装置を図3、4に基づいて作製した。
誘電体管101としては、両端が開放したガラス管(外径8mm、内径6mm)を用い、印加電極102及び接地電極103は、共にアルミニウムシートテープ(厚さ90μm)を金属棒でガラス管壁面にこすりつけるように延ばして用いた。よって、印加電極103の厚みを考慮した管の内径も6mmに近似される(以下、同様である)。絶縁体104としては絶縁テープ(カプトン(登録商標)・ポリイミドテープ:東レ・デュポン社)を用いて、本体部分10を構築した。T字型の導管16としてはガラス管を用い、封止栓17はゴム栓を用いた。その他の部品や装置は、市販されている製品を、多少の細工をしつつ用いて、低温プラズマ発生装置を作製した。上記した本装置の印加電極には、ミスト型の場合のピーク電圧2kV、3kV、3.5kV又は6kV;液滴型の場合のピーク電圧7.5kV、8kV又は16kV、周波数5kHzを印加して、当該低温プラズマ発生装置の本体部分の接地電極103の誘電体101に対する接触面積に相当する、印加電極102の内周回面における沿面放電を行い、低温プラズマを発生させ、これに対して0.3質量%のゼラチン(シグマ・アルドリッチ社)水溶液、又は、50μg/mlコラーゲン(Life Technologies社)水溶液を、シリンジポンプによる押圧により、T字型導管を介して本体部分に送液して流入させ、上記の低温プラズマと接触させて、ミスト型、又は、液滴型の本発明のタンパク質水性溶液の調製を行った。ミスト型の場合は調製後、エアポンプからの空気の気流により対象に吹き付けた。ミスト型調製の場合の送り容積は250μl/分(コラーゲン水溶液の進行方向に垂直の断面積を28mmとして計算した場合の送り速度は、8.9mm/分)であり、液滴型調製の場合の送り容積は1000μl/分(同じく、送り速度は35.6mm/分)としたところ、所望する形態のミスト型、又は、液滴型のタンパク質の水性溶液が得られることが確認された。なお、低温プラズマが発生する沿面放電体の表面積(沿面放電体の印加電極と接地電極が重なり合っている面面積)は接地電極103の誘電体101に対する接触面積として近似され、94mmであった。
(2)細胞外マトリックスタンパク質の表面への定着
ミスト型に関しては、上記の低温プラズマ発生装置の下部開口部近傍に、本発明の定着方法を施すための表面素材を載置して、本発明の表面の作製を行った。
具体的には、未処理の(a)ジメチルポリシロキサン(PDMS)膜、及び、(b)ニッケル・チタン(NiTi)合金平板、に向けて低温プラズマによってミスト化したタンパク質(ゼラチン又はコラーゲン)の水性溶液の「吹き付けと乾燥」を1回行った。その結果、NiTi合金平板と、疎水性のPDMS膜でさえも吹き付けたミストが全く撥水することなく、吹き付け表面上に定着することが確認された。
また、液滴型に関しては、1mlの低温プラズマによって液滴化したタンパク質(ゼラチン又はコラーゲン)の水性溶液を、ディッシュ上に載置した上記膜((a)及び(b))表面に垂らして、そのまま30分間浸漬を行った後、当該水性溶液のディッシュからの除去を行った。その結果ミスト型と同様に、NiTi合金平板と、疎水性のPDMS膜でさえも接触を行った水性溶液が全く撥水することなく、浸漬表面上に定着することが確認された。
対照は、1mlの未処理のタンパク質(ゼラチン又はコラーゲン)の水性溶液を、ディッシュ上に載置した上記膜((a)及び(b))表面に垂らして、そのまま30分間浸漬を行った後、当該水性溶液のディッシュからの除去を行った。対照においては、上記のようなタンパク質の表面上への定着は認められなかった。
これらの結果より本発明の表面においては、大気圧環境下における沿面放電で発生するオゾンの影響や、荷電によるゼラチン分子やコラーゲン分子の表面電位の変化等により、撥水性表面に対しても撥水することなく、これらのタンパク質の定着が維持されることが可能になったと考えられる。
(3)生体親和性の評価
本発明の表面の生体親和性を、細胞接着性を指標にして評価試験を行った。具体的には、継代数5〜9代目のヒト頸動脈内皮細胞(Cell Application社)を、表面上で培養することにより、その接着性を評価した。培養液は、20%のウシ胎児血清(Gibco社)、1%のペニシリン−ストレプトマイシン(Gibco社)、10μg/lのヒト塩基性線維芽細胞増殖因子(AUSTRAL Biologicals社)を含む、Medium 199(Gibco社)を用いた。上記の要領で本発明の定着方法を施したPDMS膜とNiTi合金平板(対照品を含む)を、それぞれφ35mmディッシュ(Iwaki社)に入れ、PDMS膜については4×10細胞、NiTi合金平板については、1×10細胞を播種した。なお、細胞播種の直前に、37℃のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で各播種を行う表面の洗浄を行った。
本発明の定着方法を施したPDMS膜については24時間、同NiTi合金平板については3日間細胞を静置培養した後、培養液を除去し、4%パラホルムアルデヒド・リン酸緩衝液(和光純薬工業株式会社)を用いて、細胞を室温で15分間架橋固定を行った。その後、Triton−X100(和光純薬工業株式会社)を用いて5分間透析膜処理を行い、細胞間接着タンパク質のVE−cadherin、細胞骨格に含まれるアクチンフィラメント、細胞核を染色し、蛍光顕微鏡(Axio Observer, Carl Zeiss)で細胞の蛍光画像を取得した(倍率:×63)。
ゼラチンを用いて3kVのミスト処理を行った例についての結果を、図6に示す。図6の上側3枚の写真図がPDMSについてのものであり、下側3段の写真図がNiTi合金平板についてのものである。「処理無し」と「プラズマ処理無し0.3%ゼラチン液滴」を直接塗布したものを比較対象として、本発明の定着方法を施した例において疎水性表面であるPDMS膜での細胞接着性の向上が確認できた。NiTi合金平板では、本発明の定着方法を施した例と「プラズマ処理無し0.3%ゼラチン液滴」を直接塗布したものとの間におけるPDMSほどの目視上の顕著な差は認められなかったが、「処理無し」のものと比較して、細胞接着性の明らかな向上が確認された。
図7は、ゼラチン又はコラーゲンを定着させた上記の表面における血管内皮細胞の接着性を疎水性膜上の接着細胞数を指標にして検討した結果を示す図面である。印加電圧を変化させて、かつ、1×10細胞を播種後、6時間培養と24時間培養の2通りで検討した。対象は、無処理と印加電圧無し、さらに、ミスト型と液滴型の2通りで印加電圧の影響を含めて検討した。縦軸は、500μm四方の領域内に接着した細胞数を示している。横軸のVppは「ピークtoピーク電圧」であり、V0pは「0 to ピーク電圧」である。両者ともに、表示されている数値の絶対値が印加電圧の大きさを示している。
その結果、無処理群に比べて、特に、3kV近傍の交流電圧の印加を行って得た、ミスト型の本発明のタンパク質水性溶液を用いた場合が、最も細胞接着性の向上が認められた。液滴型においては、16kV印加よりも7.5kV印加の方が細胞の接着性が勝っていた。また、全体的にゼラチン処理よりも、コラーゲン処理の方が高い効果を示す傾向にあることが認められた。
(4)生体親和性の評価2
シリコーンコートカバーガラス(松浪硝子工業株式会社;C2240)を用いて、タンパク質水性溶液としてコラーゲン水溶液を用いた細胞接着の評価試験を行った。このカバーガラスは疎水性のため、そのままでは、細胞は殆ど接着しないことが知られている。
コラーゲン水溶液(50μg/mLコラーゲンType I (from rat tail; Thermo Fisher Scientific社製,20mM酢酸を含む)を準備し、(a)プラズマ化処理無し(対照)当該コラーゲン水溶液1ml、及び、(b)上記(1)の低温プラズマ発生装置を用いたプラズマ化処理(ミスト処理・液滴処理)を施した当該コラーゲン水溶液1mlを、それぞれ上記シリコーンコートカバーガラスに塗布し、その後すぐに余分な当該コラーゲン水溶液を除去し、風乾させたものを用いた。ミスト型のプラズマ化の処理の印加電圧は6kV(送り容積:100μl/分)であり、液滴型のプラズマ化処理の印加電圧は8kV(送り容積:1500μl/分)で行った。なお、液滴型のプラズマ化処理に関しては、沿面放電体の表面積(沿面放電体の印加電極と接地電極が重なり合っている面面積)は188mmと565mmの2種類を用いた。ミスト型のプラズマ化処理は、188mmのみで行った。また、両端が開放したガラス管(外径8mm、内径6mm)を誘電体管101として用い、コラーゲン水溶液の進行方向に垂直の断面積は、上記と同様に28mmに近似される。
このようにして作製した各コラーゲン接着カバーガラス(対照として用いる処理無しのカバーガラスを含む)に対して、前記の頸動脈内皮細胞(Cell Application社)を1.0×10 cells/cmで播種し、播種後16時間と24時間で500μm四方の領域内の細胞数を数えた。同じカバーガラスから任意の3箇所で細胞数を評価し、同一の条件で独立3回の試行を行った。
データの有意差は、無処理のコラーゲンを用いたカバーガラスの結果との比較により行い、各条件のデータ同士が等分散であることを確認した上で両側t検定を行った。
図8は、コラーゲンを定着させた上記のカバーガラス表面における血管内皮細胞の接着性を検討した結果を示している。
その結果、プラズマ処理を行ったコラーゲン水溶液を用いた本発明の表面が、ミスト型、液滴型共に、未処理の表面よりも優れていることが「定着細胞数」により明らかになった。特に細胞播種後24時間経過後の接着性は、5%の有意差が認められた。
図9は、細胞播種後24時間経過後の各被験カバーガラスの表面を、10倍の対物レンズで撮影を行った結果を示している。
ミスト型、液滴型共に、プラズマ処理を行ったコラーゲン水溶液を用いた表面においては、頸動脈内皮細胞がスプレッドした状態で接着していることが確認される(図9(1))のに対して、無処理の場合(図9(2))、又は無処理のコラーゲンを塗布した場合(図9(3))、については細胞の接着性が悪く、細胞同士が塊状になるスフェロイドや管状構造の形成が認められた。
1: 本発明の装置
2: 原理図における誘電体
3: 原理図における印加電極
4: 原理図における接地電極
5: 原理図における交流電源
6: 原理図におけるアース線
7: 原理図における低温プラズマ放電
10: 本発明の装置の本体部分
101: 誘電体管
102: 印加電極
1021:印加電極の導出口側の端部
1022:印加電極の非導出口側の端部
103: 接地電極
1031:接地電極の導出口側の端部
1032:接地電極の非導出口側の端部
104: 絶縁体
105: アース線
106: 低温プラズマ放電
106’: 接地電極側の低温プラズマ放電
107: タンパク質水性溶液の導入場
108: 導出口
11: シリンジポンプ
110: 注射器
111: 外筒
1111: 液体導出部
1112: つば部
112: 内部棒
1121: 摺動体
1122: 押圧部
113、113’: プラズマ化がなされる前の水性溶液
114: 導管
115: 支持台
1151: 台座
1152: 案内棒
1153、1153’: 案内棒の固定部set
1154: 押し込み部
1155: 外筒の載置部
12: エアポンプ
13: ファンクションジェネレーター
14: 増幅器
15: オシロスコープ
13’、14’、15’: 導電線
16: T字型導管
161、162: T字型導管の腕
17: 封止栓
18: プラズマ化がなされたミスト状の水性溶液

Claims (23)

  1. 低温プラズマ放電によりプラズマ化がなされている、タンパク質水性溶液。
  2. 前記タンパク質水性溶液に含有されるタンパク質は、細胞外マトリックスタンパク質を含むことを特徴とする、請求項1に記載のタンパク質水性溶液。
  3. さらに他の機能性物質が含有されていることを特徴とする、請求項2に記載のタンパク質水性溶液。
  4. 他の機能性物質は、増殖因子、抗血栓因子、抗がん剤、免疫抑制剤、抗体、糖鎖、又は、抗生物質であることを特徴とする、請求項3に記載のタンパク質水性溶液。
  5. 前記タンパク質水性溶液がミスト化されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質水性溶液。
  6. 前記タンパク質水性溶液が液滴であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のタンパク質水性溶液。
  7. タンパク質水性溶液の導入場が設けられ、当該導入場においてタンパク質水性溶液に沿面放電体から発生する低温プラズマ放電を作用させることにより、プラズマ化したタンパク質を生産するための沿面放電装置であって、当該沿面放電体は、面状の誘電体の表裏の一方において印加電極が、他方において接地電極がそれぞれ当該誘電体と接触状態で設けられており、当該誘電体の面上の当該印加電極の端部と当該接地電極の端部の一部又は全部が揃っているか、あるいは、当該接地電極の端部が当該印加電極の端部の一部又は全部からはみ出すように設けられている沿面放電体であって、当該沿面放電体の1個又は2個以上が、タンパク質水性溶液の導入場の雰囲気に対する接触面を印加電極面として設けられていることを特徴とする、沿面放電装置。
  8. タンパク質水性溶液の導入場において、プラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液を導入するための導入口、及び、プラズマ化したタンパク質の導出口が設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の沿面放電装置。
  9. タンパク質水性溶液の導入場が筒状体の内部となっており、沿面放電体の1個又は2個以上が当該筒状体の全部又は一部を構成することを特徴とする、請求項7又は8に記載の沿面放電装置。
  10. 筒状体の全部又は一部を構成する沿面放電体の数は1個であることを特徴とする、請求項9に記載の沿面放電装置。
  11. 上記の沿面放電装置のタンパク質水性溶液の導入場に向けての送液機構が設けられていることを特徴とする、請求項7〜10のいずれかに記載の沿面放電装置。
  12. 請求項5に記載のミスト化されたタンパク質水性溶液の生産方法であって、プラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液を、特定の送り速度で沿面放電による低温プラズマに接触させることにより、当該タンパク質、又は、当該タンパク質と他の機能性物質の分子を荷電化することによって、当該分子同士を反発させるプラズマミスト化を、下記(1)〜(3)に従い行うことを特徴とする、プラズマミスト化されたタンパク質水性溶液の生産方法。
    (1) 上記の沿面放電を行うための交流電圧の周波数は5〜30kHz、印加電圧は2〜8kVである。
    (2) 上記のプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液のタンパク質濃度は、25μg/ml〜5mg/mlである。
    (3) 上記のプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液の特定の送り速度は、3.0〜36mm/分である。
  13. 請求項6に記載の液滴のタンパク質水性溶液の生産方法であって、プラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液を、特定の送り速度で沿面放電による低温プラズマに接触させることにより、当該タンパク質、又は、当該タンパク質と他の機能性物質の分子の荷電化を、下記(1)〜(3)に従い行うことを特徴とする、プラズマ化されたタンパク質水性溶液の生産方法。
    (1) 上記の沿面放電を行うための交流電圧の周波数は5〜30kHz、印加電圧は7.5〜18kVである。
    (2) 上記のプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液のタンパク質濃度は、25μg/ml〜255mg/mlである。
    (3) 上記のプラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液の特定の送り速度は、36〜180mm/分である。
  14. 前記のプラズマ化されたタンパク質水性溶液の生産方法において、請求項7〜11のいずれかに記載された沿面放電装置、を沿面放電手段として用い、かつ、当該沿面放電装置のタンパク質水性溶液の導入場に向けて、プラズマ化がなされる前のタンパク質水性溶液を特定の送り速度で送液して、筒状構造の内部に発生させた沿面放電による低温プラズマと接触させることを特徴とする、請求項12又は13に記載の生産方法。
  15. 請求項1〜6のいずれかに記載のタンパク質水性溶液を、対象物の表面に接触させて付着させた後、当該対象物表面の乾燥を行い、当該接触及び乾燥の過程を1回又は2回以上行うことにより、水性溶液中のタンパク質、又は、当該タンパク質と他の機能性物質を対象物表面に定着させることを特徴とする、定着方法。
  16. 対象物表面が金属性表面であることを特徴とする、請求項15に記載の定着方法。
  17. 対象物表面がポリマー表面であることを特徴とする、請求項15に記載の定着方法。
  18. ポリマーは疎水性ポリマーであることを特徴とする、請求項15に記載の定着方法。
  19. 請求項15〜18のいずれかに記載の定着方法に従い、タンパク質、又は、当該タンパク質と他の機能性物質を定着させたことを特徴とする、対象物表面。
  20. 前記対象物表面における、タンパク質、又は、当該タンパク質と他の機能性物質の定着層が積層されていることを特徴とする、請求項19に記載の対象物表面。
  21. 請求項19又は20に記載の対象物表面に細胞又は生体組織を接触させて、当該表面にこれらを生着させることを特徴とする、細胞又は生体組織の生着方法。
  22. 請求項19又は20に記載の対象物表面を伴う対象物。
  23. 生体内インプラントであることを特徴とする、請求項22に記載の対象物。
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