JP2016171081A - 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】有機エレクトロルミネッセンス素子(100)において、正孔輸送層(22)は、重合開始剤(b)の存在下、開環重合性基を含有する重合性化合物(a)が開環重合することにより得られた樹脂硬化物により形成されている。また、正孔輸送層(22)の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvは、いずれも14nm以下である。これにより、量産性に優れ、かつ高い発光効率を有する有機エレクトロルミネッセンス素子が実現される。
【選択図】図3
Description
塗布法は、有機薄膜の形成材料を溶媒に溶解させて得られた溶液を下地となる有機薄膜上に塗布する工程を有する。この工程において、塗布の下地となる有機薄膜の一部が上記溶媒に溶解すると、設計どおりの層構成が得られない。
本発明が解決しようとする課題には、上記した問題が一例として挙げられる。
前記有機層上に発光層を形成する工程と、
前記発光層上に、陰極を形成する工程と、
を備え、
前記有機層を形成する前記工程は、
開環重合性基を含有する重合性化合物(a)を含む第1溶液と、重合開始剤(b)を含む第2溶液と、を準備する工程と、
前記第1溶液と、前記第2溶液と、を混合させて塗布液を作製する工程と、
前記塗布液を塗布することにより、塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を乾燥する工程と、
を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法が提供される。
本明細書において、ある層の「上に」設けられているとは、当該層に接するように設けられている場合と、他の層を介して当該層の上方に設けられている場合の双方を含む。
図1(a)は正孔注入層を含まない場合を、図1(b)は正孔注入層21を含む場合を、それぞれ示している。本実施形態においては、特に図1(a)に示す有機エレクトロルミネッセンス素子100について説明する。
以下、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100の構成について詳細に説明する。
基板10を構成する材料としては、石英、ガラス、金属または金属酸化物、樹脂等が挙げられる。基板10を樹脂で構成する場合、樹脂材料としては、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、またはポリスルホン等が挙げられる。これらの樹脂材料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上の任意の組み合わせを用いてもよい。
基板10の厚さは、特に限定されないが、例えば1μm以上50mm以下、好ましくは50μm以上3mm以下である。基板10の厚さを当該範囲内とすることにより、有機エレクトロルミネッセンス素子の軽量化を図りつつ、十分な機械的強度を得ることができる。
陽極20を構成する材料は、陰極30よりも仕事関数の大きな導電性材料とすることが好ましい。
陽極20は、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、もしくは白金等の金属材料、インジウム、亜鉛、錫、もしくはこれらの合金等の金属材料を酸化した金属酸化物、ヨウ化銅等のハロゲン化金属、カーボンブラック、またはポリピロール、ポリアニリン、ポリ(3−メチルチオフェン)、もしくはPEDOT:PSS(Poly(3,4−ethylenedioxythiophene)poly(styrenesulfonate))等の導電性高分子等により構成される。この中でも、インジウム錫酸化物(ITO:Indium−Tin−Oxide)、インジウム亜鉛酸化物(IZO:Indium−Zinc−Oxide)、酸化亜鉛、または酸化錫が特に好ましい。これらの材料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上の任意の組み合わせを用いてもよい。なお、陽極20の材料は、例えば陽極20に求められる透明性により適宜選択することができる。
なお、陽極20を透明または半透明とする場合、陽極20の膜厚は、例えば5nm以上1000nm以下、好ましくは10nm以上500nm以下である。これにより、透明性を確保しつつ、膜厚が薄くなることに起因した電気抵抗の増大を抑制できる。
本実施形態において、正孔輸送層22は、重合開始剤(b)の存在下、開環重合性基を含有する重合性化合物(a)が開環重合することにより得られた樹脂組成物により形成されている。具体的には、上記重合性化合物(a)および重合開始剤(b)の両方を含有する層形成材料を塗布した後、上記成分(a)および(b)を反応させて正孔輸送層22を形成している。
重合性化合物(a)は、開環重合性基を有するため、架橋反応により三次元網目構造の樹脂を形成する。このため、有機溶媒に不溶な化学的安定性に優れる正孔輸送層22を形成することができる。
開環重合性基は、重合開始剤(b)により開環し、これにより、重合性化合物(a)の重合が進行し、三次元網目構造の樹脂硬化物を形成する。こうした重合様式を採用しているため、重合反応時に水が発生せず、重合反応に起因した発光効率の低下を抑制することが可能となる。
ここで、2官能または多官能(3官能以上)の重合性化合物を用いた場合、一般に、樹脂硬化物の化学的、機械的物性が向上する一方、重合性化合物(a)の反応性が高まり、層形成材料の可使時間が短くなる傾向がある。このため、架橋密度の向上と反応性とのバランスをとる観点から、重合性化合物(a)として種々の化合物を混合して用いることもできる。例えば、
単官能と2官能の重合性化合物の混合物、
単官能と多官能の重合性化合物の混合物、
2官能と多官能の重合性化合物の混合物、
単官能、2官能、多官能の重合性化合物の混合物
のいずれも、使用可能である。
なお、正孔輸送層22を構成する樹脂材料として、上述の重合性化合物(a)以外の重合性化合物を併用してもかまわない。
重合性化合物(a)が繰り返し単位を有さない化合物である場合、重合性化合物(a)の重量平均分子量は、例えば300以上5000以下であり、好ましくは500以上2500以下である。これにより、十分な電荷輸送性を実現しつつ、溶媒に対する溶解性を確保することができる。
また、重合性化合物(a)が重合性オリゴマーである場合、重合性化合物(a)の重量平均分子量は、例えば500以上200万以下であり、好ましくは2000以上50万以下であり、さらに好ましくは4000以上20万以下である。上記下限値以上とすることにより、正孔輸送層22の成膜性を良好とすることができる。また、ガラス転移温度、融点、および気化温度の低下を抑制し、耐熱性を確保することもできる。一方、上記上限値以下とすることにより、重合性化合物(a)の精製を容易とすることができる。
なお、重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて測定されるポリスチレン等の標準ポリマーとの比較による換算値から得られる。
アニオンおよびカチオンを生成する化合物としては、有機オニウム塩が挙げられる。本実施形態においては、以下の式(1)〜(3)で表される有機オニウム塩が好適に用いられる。
R11、R21、およびR31を構成するアルケニル基の炭素数は、例えば2以上12以下であり、好ましくは2以上6以下である。本実施形態における当該アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、または1−ブテニル基等が挙げられる。
R11、R21、およびR31を構成するアルキニル基の炭素数は、例えば2以上12以下であり、好ましくは2以上6以下である。本実施形態における当該アルキニル基としては、エチニル基、またはプロパルギル基等が挙げられる。
また、R11、R21、およびR31を構成する芳香族複素環基としては、例えば5または6員環の単環または2〜4縮合環由来の1価の基であり、正電荷を当該基上により非局在化させられるものが挙げられる。本実施形態における当該芳香族複素環基としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、またはアズレン環等に由来の一価の基が挙げられる。
R12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアルキルアミノ基は、炭素数が1以上12以下、好ましくは1以上6以下であるアルキル基を1つ以上有するアルキルアミノ基が挙げられる。本実施形態における当該アルキルアミノ基としては、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、またはジベンジルアミノ基等が挙げられる。
R12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアシルアミノ基としては、炭素数が2以上25以下、好ましくは2以上15以下のアシル基を1つ以上有するアシルアミノ基が挙げられる。本実施形態におけるアシルアミノ基としては、アセチルアミノ基、またはベンゾイルアミノ基等が挙げられる。
R12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアリールオキシ基としては、炭素数が3以上25以下、好ましくは4以上15以下の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を有するアリールオキシ基が挙げられる。本実施形態におけるアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基、ナフチルオキシ基、ピリジルオキシ基、例えばチエニルオキシ基等が挙げられる。
R12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアルコキシカルボニル基の炭素数は、2以上10以下であり、好ましくは2以上7以下である。本実施形態における当該アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、またはエトキシカルボニル基等が挙げられる。
R12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアルキルカルボニルオキシ基の炭素数は、2以上10以下であり、好ましくは2以上7以下である。本実施形態におけるアルキルカルボニルオキシ基としては、アセトキシ基、またはトリフルオロアセトキシ基等が挙げられる。
R12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するアリールチオ基の炭素数は、3以上25以下であり、好ましくは4以上14以下である。本実施形態における当該アリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基、またはピリジルチオ基等が挙げられる。
R12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するスルホニルオキシ基としては、メシルオキシ基、またはトシルオキシ基等が挙げられる。
R12、R22、R23、R32、R33、およびR34を構成するシリル基としては、トリメチルシリル基、またはトリフェニルシリル基など挙げられる。
上記式(6)中、Ar61〜Ar64は、それぞれ独立に、芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。本実施形態におけるAr61〜Ar64としては、5または6員環の単環または2〜5縮合環由来の1価の基等、R11、R21、およびR31と同様のものを表す。なお、Ar61〜Ar64は、電子吸引性の基等を含む任意の基により置換されていてもよい。
本実施形態においては、重合開始材(b)として、以下の式(7)に示す有機オニウム塩を特に好適に使用することができる。下記式(7)の重合開始材(b)を使用することにより、形成される正孔輸送層22の膜質を良好なものとすることができる。
当該金属錯体を構成する金属としては、モリブデン、チタン、またはバナジウム等が挙げられる。また、アセチルアセトナートを構成するメチル基は、他のアルキル基であってもよい。他のアルキル基としては、tert−ブチル基等が挙げられる。これによりバルキー性を上げ、溶媒への溶解性を向上させることができる。
本実施形態においては、以下に示す金属錯体を重合開始材(b)として使用することができる。
重合開始材(b)の分子量は、例えば100以上10000以下であり、好ましくは200以上3000以下である。これにより、塗布膜形成時における揮発性を抑えつつ、溶媒への溶解性を十分に確保することができる。
正孔輸送層22の上面の最大山高さRpおよび最大谷深さRvは、例えばアルファステップIQ(KLA−Tencor社製)、SEM(Scanning Electron Microscope)、またはAFM(Atomic Force microscope)等の方法を用いて測定することができる。
すなわち、本実施形態では、正孔輸送層22の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvを上記上限値以下とする。これにより、正孔輸送層22の上面における凹凸を、発光特性へ影響を与えない程度に微小なものとすることができる。したがって、良好な発光特性を実現することが可能となる。
また、正孔輸送層22の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvを上記上限値以下とすることにより、正孔輸送層22上に形成される各有機層の上面の凹凸についても、発光特性に影響を与えない程度に微小なものとすることができる。
なお、最大山高さRpおよび最大谷深さRvの下限値は、特に限定されないが、例えば0.1nmである。この場合、正孔輸送層22上に設けられる発光層24との密着性を向上させることができる。
正孔注入層21を構成する芳香族アミン化合物としては、芳香族三級アミン化合物等が用いられる。これにより、高い正孔輸送性を実現することができる。なお、芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物を含む。
また、この場合、正孔輸送層22は、特に限定されないが、例えば正孔注入層21と同様に上述した重合性化合物(a)と重合開始剤(b)を含む材料により構成される。
燐光発光材料としては、イリジウム、白金、オスミウム、レニウム、金、タングステン、ルテニウム、ハフニウム、ユウロビウム、テルビウム、ロジウム、パラジウム、または銀等から選択される、原子量が100以上200以下である重原子を一種または二種以上含む、燐光性有機金属錯体等が用いられる。
本実施形態における電子輸送層26を構成する材料としては、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(トリフェニルシラノラト)アルミニウム、もしくはトリス(8−キノリノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体、またはバソクプロイン等のフェナントロリン誘導体が挙げられる。
電子輸送層26の厚さは、例えば0.5nm以上100nm以下、好ましくは1nm以上50nm以下である。これにより、陽極20から注入される正孔を十分に抑制できる厚さを確保して発光効率の低下を抑制しつつ、有機エレクトロルミネッセンス素子の駆動効率を向上させることができる。
本実施形態において、電子注入層28を構成する材料としては、リチウム、ナトリウム、もしくはセシウム等のアルカリ金属、バリウム、もしくはカルシウム等のアルカリ土類金属、またはCsF、Cs2CO3、Li2O、もしくはLiF等の化合物が挙げられる。これらの材料は、一種を単独で使用してもよく、二種以上の任意の組み合わせで併用してもよい。
また、電子注入層28の厚さは、例えば0.1nm以上5nm以下であり、好ましくは0.5nm以上2nm以下である。
本実施形態において、陰極30を構成する材料は、陽極20よりも仕事関数が小さい導電性材料であれば特に限定されない。陰極30は、錫、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、もしくは銀、またはこれらの合金等により構成される。これらの材料は、一種を単独で用いてもよく、二種以上の任意の組み合わせを用いてもよい。
なお、陰極30の膜厚は、例えば5nm以上1000nm以下、好ましくは10nm以上500nm以下である。これにより、膜厚を薄くして製造コストの低減を図りつつ、膜厚が薄くなることに起因した電気抵抗の増大を抑制できる。
なお、陰極30の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvの下限値は、特に限定されない。しかしながら、例えば0.1nm以上の範囲とすることで、十分に有機エレクトロルミネッセンス素子の発光効率の向上を図ることができる。
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100は、例えば金属製またはガラス製の封止缶40により封止されている。封止缶40は、例えば基板10上に設けられている。また、封止缶40は、例えばシール材44により基板10に接着される。このシール材44により、封止缶40内を密閉することができる。また、封止缶40内は、例えば窒素ガス等の不活性ガスが充填されている。これにより、封止缶40内の有機エレクトロルミネッセンス素子100が、酸素により劣化してしまうことを抑制することができる。
封止缶40内には、例えば乾燥剤42が配置される。これにより、封止缶40内に残存した水分により有機エレクトロルミネッセンス素子100の素子特性が劣化してしまうことを抑制できる。
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子100の製造方法は、陽極20上に正孔輸送層22を形成する工程と、正孔輸送層22上に発光層24を形成する工程と、発光層24上に陰極30を形成する工程と、を備える。正孔輸送層22を形成する工程は、開環重合性基を含有する重合性化合物(a)を含む第1溶液と、重合開始剤(b)を含む第2溶液と、を準備する工程と、第1溶液と第2溶液を混合させて塗布液を作製する工程と、塗布液を塗布することにより、塗布膜を形成する工程と、重合開始剤(b)の存在下、重合性化合物(a)を開環重合させて塗布膜を硬化させる工程と、を含む。
以下、有機エレクトロルミネッセンス素子100の製造方法について詳細に説明する。
また、陽極20として金属微粒子、ハロゲン化金属の微粒子、炭素材料の微粒子、金属酸化物の微粒子、または導電性高分子の微粉末等を使用する場合、例えばこれらの材料をバインダー樹脂溶液に分散させて基板10上に塗布することにより陽極20が形成される。さらに、陽極20の材料として導電性高分子を使用する場合、陽極20は、電解重合、または塗布法等を用いて形成される。
図3は、図1(a)に示す正孔輸送層22の形成方法を説明するフロー図である。
まず、開環重合性基を含有する重合性化合物(a)を含む第1溶液と、重合開始剤(b)を含む第2溶液と、を準備する(S01、S02)。すなわち、第1溶液と第2溶液は、それぞれ別個に準備されることとなる。第1溶液は、第1溶媒中に重合性化合物(a)を溶解して作製される。また、第2溶液は、第2溶媒中に重合開始剤(b)を溶解して作製される。本実施形態においては、第1溶液と第2溶液のいずれを先に作製してもよい。
また、第2溶液を準備する工程(S02)においても、例えば第2溶媒の沸点+30℃以下の温度条件下において、重合開始剤(b)を第2溶媒に溶解させる。第2溶媒としてキシレンを用いる場合、165℃以下の温度条件下で、重合開始剤(b)を第2溶媒中に溶解させる。これにより、第2溶媒が揮発して第2溶液中の固形分濃度が変化してしまうことを抑制することができる。したがって、後述する塗布液の調製が容易となる。
第2溶媒としては、例えば第1溶媒と同様のものを用いることができる。
なお、第1溶媒と第2溶媒は、互いに異なっていてもよい。この場合、重合性化合物(a)と重合開始剤(b)の溶媒に対する溶解度を、それぞれ制御することができる。また、第1溶媒と第2溶媒の沸点の差を調整することで、成膜性を向上させることもできる。
本実施形態において、第1溶液と第2溶液は、例えば60℃以下、好ましくは40℃以下まで冷却される。こうすることにより、第1溶液と第2溶液を混合する工程において、重合性化合物(a)の重合の進行をより確実に抑制できる。
第一に、塗布液の作製段階において、重合開始材(b)の存在下で重合性化合物(a)の開環重合が一定程度進行すると、得られる有機層が可視光領域中に吸収帯を有するようになる。この場合、有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性が損なわれてしまう。
重合性化合物(a)と重合開始材(b)の両方を同一溶媒中に溶解させて塗布液を調整する方法をとった場合、溶解温度を高くし溶解時間を長くすると、重合性化合物(a)の開環重合が進み、塗布液がわずかに着色することがある。この場合、上述したように、得られる有機層が可視光領域中に吸収帯を有することとなる。一方、塗布液が着色するほどではなく、一見、無色のものであっても、重合がある程度進めば、やはり可視光領域中に吸収帯を有することとなる。
第二に、重合性化合物(a)と重合開始材(b)の両方を同一溶媒中に溶解させた塗布液を塗布、乾燥、硬化して有機層を形成すると、nmレベルのサイズの微小な凹凸が生じる。この微小凹凸が発光特性の低下をもたらすため、良好な発光特性を安定的に実現することが困難となる。
また、上記本実施形態によれば、重合性化合物(a)と重合開始剤(b)を含む塗布液により形成される正孔輸送層22の上面における凹凸を発光効率に影響を与えない程度に微小なものとすることができる。したがって、有機層上面に形成される凹凸に起因して有機エレクトロルミネッセンス素子の発光特性が低下してしまうことを抑制することもできる。
本実施形態によりこのような効果が得られることについては後述する実施例により示す。
本実施形態では、塗布膜を形成する工程(S04)の後であって、重合開始剤(b)の存在下、重合性化合物(a)を開環重合させて塗布膜を硬化させる工程の前(S05)において、当該塗布膜を乾燥させることができる。塗布膜の乾燥は、例えば真空乾燥機を用いて2Pa未満の圧力雰囲気下にて行われる。塗布膜を乾燥させることにより、重合開始剤(b)の存在下、重合性化合物(a)を重合させる際に、溶媒の極性によって不要な反応が促進されてしまうことを抑制することができる。したがって、塗布膜により形成される有機層の透明性を確保することが可能となる。
本実施形態では、例えば塗布膜を加熱することにより、重合開始剤(b)の存在下、重合性化合物(a)を重合させる。この際の加熱条件は、例えば200℃以上250℃以下、5分以上60分以下の条件で行われる。本実施形態では、重合性化合物(a)と重合開始剤(b)が一つの塗布液中に含まれる。このため、上記のような短時間による焼成でも、十分な反応が可能となる。したがって、有機エレクトロルミネッセンス素子の製造コストを低減することが可能となる。
本実施形態において、発光層24は、例えば次のように形成される。まず、発光層24を構成する材料を溶媒に溶解し、塗布液を作製する。溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が用いられる。次いで、この塗布液を正孔輸送層22上に塗布して、正孔輸送層22上に塗布膜を形成する。塗布液の塗布は、例えばスピンコートまたはインクジェット等の塗布法により行われる。次いで、この塗布膜を乾燥させる。塗布膜の乾燥は、例えば真空乾燥機を用いて2Pa未満の圧力雰囲気下にて行われる。これにより、発光層24が形成される。
本実施形態によれば、正孔輸送層22の上面における凹凸を微小な範囲に制御することができる。このため、正孔輸送層22の上に形成される有機層、および陰極30の上面における凹凸についても、微小な範囲に制御されることとなる。したがって、陰極30に形成される凹凸に起因した発光特性の低下を抑制することも可能となる。
このようにして、図1(a)に示す有機エレクトロルミネッセンス素子100が形成される。
本実施形態では、正孔輸送層22(有機層)を、重合開始剤(b)の存在下、開環重合性基を含有する重合性化合物(a)を開環重合させて得られた樹脂硬化物により形成している。このため、正孔輸送層22を、塗布法を用いて形成することができる。したがって、量産性および製造安定性に優れた有機エレクトロルミネッセンス素子を実現することができる。
本発明者は、この原因について鋭意検討した結果、正孔輸送層22の上面のミクロな平滑性が発光特性に影響を及ぼしていることを見いだした。
塗布法では、重合性化合物(a)および重合開始剤(b)を含む層形成材料を有機溶剤中に溶解させて得られる溶液を、基板上に塗布する。溶液は、塗布工程における作業に問題ない程度に低粘度であるため、塗布直後の表面は平滑である。しかし、有機溶剤が乾燥しつつ樹脂の反応が進行し、さらに、加熱等により架橋を進行させると、有機層の表面に微小な凹凸が生じる。このように、塗布法で形成された薄層の表面は、一見、十分な平滑性を有しているようにみえるが、nmレベルの微小な凹凸が存在する。従来、こうした微小凹凸の存在は知られておらず、また問題にもされていなかった。本発明者は、このような微小凹凸が発光特性の低下をもたらす原因であることを究明した。
有機層上面に形成された微小凹凸が発光特性の低下をもたらす理由は必ずしも明らかではないが、次のように推測される。すなわち、有機層上面に微小凹凸が形成された場合、発光面内に電界強度分布が生じてしまう。この電界強度分布に起因して発光むらが生じると、発光特性が低下してしまう。また、有機層上面に形成された微小凹凸により、発光層から発生する光が散乱してしまい、これにより、発光特性が低下する。
本実施形態では、このような知見に基づき、正孔輸送層22(有機層)の上面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvを、いずれも14nm以下としている。これにより、十分に良好な発光特性を安定的に実現している。
透明なガラス基板上に厚さ110nmのITO(Indium−Tin−Oxide)からなる陽極を形成した。陽極は、真空蒸着法により形成した。
次に、この陽極上に、正孔輸送層を形成した。正孔輸送層は次の方法により形成した。
まず、下記式(8)に示す重合性化合物(a)を含む第1溶液を作製した。第1溶液は、キシレン溶媒中に重合性化合物(a)を、160℃、10分の条件下で溶解させて得た。次いで、作製した第1溶液を室温(25℃。以下、特にことわりがない限り「室温」とは25℃をいうものとする)まで冷却した。
次いで、塗布膜を、真空乾燥機を用いて2Pa未満の圧力雰囲気下で乾燥した。次いで、正孔輸送層上に形成された塗布膜に対し、加熱処理を行った。このようにして、発光層を形成した。
このようにして、陽極と陰極との間に複数の有機層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子を得た。
正孔輸送層の形成方法を除き、実施例1と同様に有機エレクトロルミネッセンス素子、および発光デバイスを得た。正孔輸送層は、以下のように形成した。
まず、キシレン溶媒中に、上記式(8)で示す重合性化合物(a)および上記式(7)で示す重合開始材(b)を入れた。次いで、重合性化合物(a)と重合開始材(b)を含む当該キシレン溶媒を160℃、2分の条件下で加熱して、重合性化合物(a)および重合開始材(b)をキシレン溶媒に溶解させた。これにより、重合性化合物(a)と重合開始材(b)を含む塗布液を得た。なお、溶媒を除く固形分全体のうちの重合開始材(b)の含有量が7.6重量%となるよう塗布液を調製した。
次いで、塗布膜を、真空乾燥機を用いて2Pa未満の圧力雰囲気下で乾燥した。次いで、塗布膜に対し、230℃、15分、常圧下で加熱処理を行った。これにより、塗布膜内において、重合開始剤(b)の存在下、重合性化合物(b)の開環重合を進行させ、3次元架橋構造を有する樹脂硬化物からなる正孔輸送層を形成した。
重合性化合物(a)と重合開始材(b)を含む塗布液の調製方法を除き、比較例1と同様に有機エレクトロルミネッセンス素子、および発光デバイスを得た。塗布液は、以下のように調製した。
まず、キシレン溶媒中に、上記式(8)で示す重合性化合物(a)および上記式(7)で示す重合開始材(b)を入れた。次いで、重合性化合物(a)と重合開始材(b)を含む当該キシレン溶媒を160℃、10分の条件下で加熱して、重合性化合物(a)および重合開始材(b)をキシレン溶媒に溶解させた。これにより、重合性化合物(a)と重合開始材(b)を含む塗布液を得た。なお、溶媒を除く固形分全体のうちの重合開始材(b)の含有量が7.6重量%となるよう塗布液を調製した。
正孔輸送層の表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvを測定した。
測定は、次のように行った。まず、正孔輸送層を成膜した後、ガラス基板上に成膜された膜の数箇所を、ガラス基板面が露出するようカッターにより削った。次いで、ガラス基板面のうち露出した各箇所から、当該各箇所の近傍に位置する正孔輸送層の表面までの高さをそれぞれ測定した。測定された上記各箇所からの高さに基づいて、ガラス基板上に成膜された膜の数箇所における膜厚を算出した。そして、算出された膜厚から、正孔輸送層の表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvを求めた。ガラス基板の露出面から、その近傍に位置する正孔輸送層の表面までの高さは、アルファステップIQ(KLA−Tencor社製)を使用して、針圧3.0±0.2mg、スキャン範囲300μm、スキャン回数1回の条件下で測定された。
なお、表1では、測定範囲における最大山高さRpまたは最大谷深さRvのいずれか大きい方を示している。表1に示す測定値の単位は、nmである。
陰極の表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvを測定した。
測定は、次のように行った。まず、陰極を成膜した後、ガラス基板上に成膜された膜の数箇所を、ガラス基板面が露出するようカッターにより削った。次いで、ガラス基板面のうち露出した各箇所から、当該各箇所の近傍に位置する陰極の表面までの高さをそれぞれ測定した。測定された上記各箇所からの高さに基づいて、ガラス基板上に成膜された膜の数箇所における膜厚を算出した。そして、算出された膜厚から、陰極の表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvを求めた。ガラス基板の露出面から、その近傍に位置する陰極の表面までの高さは、アルファステップIQ(KLA−Tencor社製)を使用して、針圧3.0±0.2mg、スキャン範囲300μm、スキャン回数1回の条件下で測定された。
なお、表1では、測定範囲における最大山高さRpまたは最大谷深さRvのいずれか大きい方を示している。表1に示す測定値の単位は、nmである。
得られた発光デバイスの相対輝度を測定した。輝度計(LS−110、コニカミノルタホールディングス株式会社製)と電流電源(236型ソース−メジャー−ユニット、Keithley製)を使用した電流−電圧−輝度測定により、各実施例および各比較例における発光デバイスの輝度を算出した。表1では、実施例1における輝度を基準(100%)とした場合の、各実施例および各比較例における相対輝度を示している。
得られた発光デバイスの相対寿命を測定した。約20mA/cm2の一定電流密度下における相対輝度の変化から、相対寿命を算出した。表1では、実施例1における寿命を基準(100%)とした場合の、各実施例および各比較例における相対寿命を示している。
得られた有機エレクトロルミネッセンス素子を発光させながら、Eclipse L150(株式会社ニコン製)を用いた光顕微観察により発光ムラの有無を観察した。入力電圧は、有機エレクトロルミネッセンス素子が発光する3〜4Vであった。
一方、比較例1では、正孔輸送層表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvが14nmを超えている。また、陰極表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvが10nmを超えている。このような比較例1では、実施例1と比較して発光ムラが生じた。すなわち、発光特性の低下が見られた。
また、比較例2では、正孔輸送層表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvが14nmを超えている。また、陰極表面における最大山高さRpおよび最大谷深さRvが10nmを超えている。このような比較例2では、実施例1と比較して発光効率が低下し、かつ発光ムラが生じた。すなわち、発光特性の低下が見られた。
Claims (2)
- 陽極上に有機層を形成する工程と、
前記有機層上に発光層を形成する工程と、
前記発光層上に、陰極を形成する工程と、
を備え、
前記有機層を形成する前記工程は、
開環重合性基を含有する重合性化合物(a)を含む第1溶液と、重合開始剤(b)を含む第2溶液と、を準備する工程と、
前記第1溶液と、前記第2溶液と、を混合させて塗布液を作製する工程と、
前記塗布液を塗布することにより、塗布膜を形成する工程と、
前記塗布膜を乾燥する工程と、
を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。 - 請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法において、
前記塗布膜を乾燥する前記工程の後において、
前記重合開始剤(b)の存在下、前記重合性化合物(a)を開環重合させて前記塗布膜を硬化させる工程、
を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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