JP2016167570A - 有機発光素子 - Google Patents

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彰洋 佐野
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俊輔 上田
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Abstract

【課題】通電とともに、発光層内に注入される正孔と電子のバランスが向上し、通電直後における輝度の低下を防ぎ、長寿命化を図ることができる有機発光素子を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の有機発光素子は、陽極と陰極との間に、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層を有する有機発光素子であって、通電開始時における、前記発光層内に注入される正孔密度が電子密度よりも高く、前記正孔輸送層の電気抵抗が通電により上昇するように構成したことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、有機発光素子に関する。
有機発光素子は、厚さ数十nmの有機固体材料を用いることで、薄型、軽量、フレキシブルな照明やディスプレイを提供する素子として注目されている。また、自発光であるため、高視野角が可能で、発光体自体の応答速度も高く高速動画表示に適しているため、次世代のフラットパネルディスプレイやシートディスプレイとして期待されている。さらに、大面積からの均一発光が可能であるため、次世代照明としても注目されている。
有機発光素子では、陽極と陰極との間に電圧を印加すると、陽極から正孔が、陰極から電子が有機積層膜に導入され、電子と正孔が発光層で再結合することによって発光する。
有機発光素子は、陽極、陽極から発光層へ正孔を輸送するための正孔輸送層、発光層、陰極から発光層へ電子を輸送するための電子輸送層、及び陰極から構成される。電子及び正孔を発光層に効率的に注入するために、正孔輸送層及び電子輸送層として、それぞれ複数の異なる膜を積層する場合もある。
有機発光素子を作製する際に有機固体材料を積層する方法は、真空蒸着法等の乾式プロセスと湿式プロセスとに大別される。真空蒸着法と比較して、塗印刷法・インクジェット法に代表される湿式プロセスは、量産性、製造プロセスの低コスト化、大画面化の点で有利であり期待されている。一方、湿式プロセスでは、有機膜を積層すると、新たな層を製膜する際に既に製膜した層が溶ける問題がある。この対策として、硬化性の架橋基を有機分子に付加した主剤を含む硬化性溶液を用い、これを湿式プロセスで塗布した後に、熱や光で処理することによって硬化させる方法がある。硬化した膜(硬化性樹脂)は、溶媒に溶けにくい性質を持つので、湿式プロセスでの積層が容易になる。
従来の有機分子を硬化させる技術として、特許文献1には、正孔輸送層に架橋型高分子を用いることが開示され、さらに、従来のアクセプター材料を超える酸化力を有し、有機溶媒に可溶で湿式成膜に好適に用い得る芳香族ジヨードニウム塩、かかる芳香族ジヨードニウム塩を含有する電荷輸送膜用組成物及び電荷輸送膜用インクが開示されている。
特許文献2では、繰り返し単位中に3級アリールアミノ構造を有するアリールアミン高分子化合物を正孔注入輸送性化合物として含む組成物を用いて湿式成膜法により形成することにより得られる正孔注入輸送層が3層以上ある場合について、該高分子化合物に存在する、任意の2つの3級アリールアミノ構造における芳香族性を有さない3級窒素原子を結ぶ経路のうち、経路上にある原子の数が最も少ない経路における当該原子の数を「N:最小窒素間原子数」としたとき、各正孔注入輸送層におけるNを特定の状態とすることで、有機発光素子の低駆動電圧化が可能になるとしている。
特許文献3では、正孔輸送層を、陽極とは異なる補助配線と接続することで、画素間の輝度バラツキを大幅に低減できるとしている。さらに、湿式プロセスを用いる場合は、正孔輸送層は架橋基を有することが望ましいとされている。
特許文献4では、有機発光媒体層の少なくとも1層を凸版接触乾燥法により乾燥することで、各画素で均一な発光をし、且つ非発光箇所や電流リークが発生しない長寿命で高効率な有機EL素子を迅速に製造する方法及び表示装置が提供できるとされている。さらに、有機層が架橋基を有し、加熱処理で架橋を形成する方法が記載されている。
特許文献5では、第1モノマー及び第2モノマーにより形成される架橋構造を有するコポリマーを有機層に含有させることで、有機層の機械的強度、耐熱性、発光性ドーパントの分散均一性及び安定性の全てを高水準で達成することができるとしている。
特許文献6では、有機化合物が架橋基を有し、通電前に未架橋基を含むことで、高い発光効率を示し、且つ、長寿命である有機EL素子、照明装置及びディスプレイ装置を提供できるとしている。
特開2013−214565号公報 特開2013−128139号公報 特開2012−018938号公報 特開2008−204807号公報 特開2005−093135号公報 国際公開第07/114244号
上記のように、正孔輸送層等の有機層を架橋基を含む有機分子で形成した有機発光素子が知られている。しかし、特許文献1〜4に記載されているような高分子への添加物、高分子の構造、製造法あるいは素子の構造では、素子の初期輝度の向上は期待できるが、通電開始後は輝度が低下し、寿命特性が安定しないという問題がある。
また、特許文献6では、通電開始後に未架橋の架橋基が反応することで、ガラス転移温度が向上し、有機発光素子の特性が向上するとしている。しかし、未架橋基を導入する形態として、(1)発光層内の発光母材と発光材とを架橋する形態、(2)発光層に加え、正孔輸送層、電子輸送層にも未架橋基を導入する形態が示されており、ガラス転移温度が通電とともに向上するが、発光層内の正孔と電子のバランスは変化しない。
本発明では、通電とともに、発光層内に注入される正孔と電子のバランスが向上し、通電直後における輝度の低下を防ぎ、長寿命化を図ることができる有機発光素子を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討を行った結果、有機発光素子における発光層への電荷注入特性を、電子に比べて正孔が優勢になるように調整し、正孔輸送層に、通電開始により抵抗が上昇する機能を持たせることによって上記課題が解決されることを見い出し、発明を完成した。
すなわち、本発明の有機発光素子は、陽極と陰極との間に、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層を有する有機発光素子であって、通電開始時における、前記発光層内に注入される正孔密度が電子密度よりも高く、前記正孔輸送層の電気抵抗が通電により上昇するように構成したことを特徴とする。
本発明に係る有機発光素子によれば、初期輝度の確保と寿命特性の向上が達成される。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明に係る有機発光素子の原理を説明するための図である。 本発明の有機発光素子の一実施形態を示す断面図である。 樹脂Aのモジュラス虚部の周波数依存性を示す図である。 有機発光素子の回路モデルを示す図である。 モジュラス虚部及びインピーダンス実部の周波数依存性を示す図である。 モジュラス虚部の周波数依存性を示す図である。 インピーダンス実部の周波数依存性を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の有機発光素子は、陽極と陰極との間に、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層を有し、通電開始時における、発光層内に注入される正孔密度が電子密度よりも高く、その正孔輸送層の電気抵抗が通電により上昇することを特徴とする。このような正孔輸送層は、通電前に未架橋基を有する硬化性樹脂を含むことが好ましい。以下、このような硬化性樹脂の構成について説明する。
(硬化性樹脂)
本明細書において「硬化性樹脂」とは、基材に塗布した後に、熱又は光等による硬化処理によって分子の架橋反応が開始され、分子間及び/又は分子内架橋が形成されることによって硬化する樹脂をいう。
有機発光素子の作製においては、下地の有機層の上に、次の有機層を湿式プロセスを用いて積層すると、下地の有機層が溶解してしまう。これに対して、硬化性樹脂を湿式プロセスで塗布した後、熱もしくは光による硬化処理によって硬化させた層は、次の層を湿式プロセスで塗布しても溶解せずに残る。
一方、電気絶縁を目的とした硬化性樹脂の層においては、予め、硬化不足とした硬化性樹脂に対し高電圧を長時間印加すると、電圧印加開始直後に電気抵抗が上昇し、所定の時間経過後に、電気抵抗が低下して部分放電等が起こり、絶縁破壊が生じることが知られている。これにより絶縁寿命が向上する。
有機発光素子においては、陽極と発光層との間に正孔輸送層、発光層と陰極との間に電子輸送層を備える。正孔輸送層もしくは電子輸送層からの正孔もしくは電子の発光層への注入が他方に対して優勢であると、発光輝度は低下する。
正孔輸送層の発光層への正孔輸送性能が高い場合、正孔輸送性能を低下させる(例えば、発光層とのイオン化エネルギーの差が大きくなる分子構造への改良)ことにより、発光輝度を向上させることができる。その一方、向上した輝度は、通電とともに単調に減少し、劣化することとなる。
本発明者は、硬化性樹脂の上記の特性を活用することで、有機発光素子を長寿命化できることを見出した。すなわち、有機発光素子の構成に関して、通電開始時において、正孔輸送層の発光層への正孔注入性が電子輸送層からの電子注入性よりも高い構成とする。また、正孔輸送層が硬化性樹脂を含み、通電前の正孔輸送層を硬化不足の状態とする。硬化不足の状態においては、正孔輸送層の電気抵抗は低く、正孔が発光層に注入されやすい。通電を開始し、未架橋基の架橋反応が進行すると、正孔輸送層の電気抵抗が上昇する。通電開始時に正孔注入性が高い素子構成であるので、架橋反応が進行すると、正孔注入性が低下し、発光層内の正孔と電子のバランスが向上し、通電開始後に発光効率がむしろ向上する。そして、最高輝度に到達後に劣化が始まるため、素子が全体として長寿命となる。
本発明における硬化性樹脂は、正孔輸送性のモノマー及び架橋基を有するモノマーを含むことが好ましい。正孔輸送性のモノマー及び架橋基を有するモノマーは、それぞれ2種以上のモノマーを用いても良い。正孔輸送性のモノマーとしては、有機素子の製造、例えば有機発光素子の正孔輸送層を形成する樹脂を製造するために使用されるモノマーであれば適用可能である。前記モノマーとしては、限定するものではないが、例えば、アリールアミン、スチルベン、ヒドラゾン、カルバゾール、アニリン、オキサゾール、オキサジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾオキサジアゾール、ベンゾキノン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、チオフェン、ベンゾチオフェン、チアジアゾール、ベンゾジアゾール、ベンゾチアジアゾール、トリアゾール、ペリレン、キナクリドン、ピラゾリン、ルブレン、クマリン、ナフタレン、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、アントラセン、テトラセン、フルオレン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ピリジン、ピラジン、アクリジン、フェナントロリン、フラン及びピロール並びにこれらの誘導体を骨格として有する化合物を挙げることができる。
好ましくは、下記式I〜IIIからなる群から選択される骨格を有する化合物が好ましく用いられる。
Figure 2016167570
上記式I〜III中、R〜Rは、互いに独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル、炭素数2〜22の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルケニル、炭素数2〜22の直鎖状、分岐状又は環状のアルキニル、炭素数6〜21のアリール、炭素数12〜20のヘテロアリール、炭素数7〜21のアラルキル及び炭素数13〜20のヘテロアリールアルキルからなる群より選択されることが好ましく、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル、炭素数6〜21のアリール、炭素数12〜20のヘテロアリール及び炭素数7〜21のアラルキルからなる群より選択されることがより好ましく、水素、ハロゲン、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル及び炭素数6〜10のアリールからなる群より選択されることがさらに好ましく、水素、臭素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル及びフェニルからなる群より選択されることが特に好ましい。
上記の基は、非置換であるか又は1もしくは複数のハロゲンで置換されていても良く、非置換であることがより好ましい。
m1〜m3は、互いに独立して0〜5の整数であり、0又は1であることがより好ましい。また、n1及びn2は、互いに独立して0〜4の整数であり、0又は1であることがより好ましい。
本明細書において、「アラルキル」は、アルキルの水素原子の1個がアリールに置換された基を意味する。好適なアラルキルとしては、限定するものではないが、例えばベンジル、1−フェネチル及び2−フェネチル等を挙げることができる。
本明細書において、「ヘテロアリール」は、アリールの1個以上の炭素原子が、それぞれ独立して窒素原子(N)、硫黄原子(S)及び酸素原子(O)から選択されるヘテロ原子により置換された基を意味する。例えば、「炭素数12〜20のヘテロアリール」は、少なくとも12個、多くても20個の炭素原子を含む芳香族基の1個以上の炭素原子が、それぞれ独立して上記のヘテロ原子により置換された基を意味する。この場合において、N又はSによる置換は、それぞれN−オキシド又はS−オキシドもしくはジオキシドによる置換を包含する。好適なヘテロアリールとしては、限定するものではないが、例えばフラニル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピラジニル、ピリミジニル、キノリニル、イソキノリニル及びインドリル等を挙げることができる。
本明細書において、「ヘテロアリールアルキル」は、アルキルの水素原子の1個が前記ヘテロアリールにより置換された基を意味する。
本明細書において、「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。
特に好ましい正孔輸送性のモノマーとして、トリフェニルアミン、N−(4−ブチルフェニル)−N’,N’’−ジフェニルアミン、9,9−ジオクチル−9H−フルオレン、N−フェニル−9H−カルバゾール、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン及びN,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ビス(2−ナフチル)−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン並びにこれらの誘導体を骨格として有する化合物が挙げられる。
正孔輸送層として、上記の骨格を有する化合物からなる正孔輸送性のモノマーを主鎖に含む高分子組成物を用いることで、発光層材料のイオン化エネルギーに応じて、正孔輸送層のイオン化エネルギーを適正値に調整することができる。通常は、発光層材料のイオン化エネルギーを陽極の仕事関数と発光層のイオン化エネルギーの間の値とすることが好ましい。
図1は、本発明に係る有機発光素子の原理を説明するための図である。本発明の有機発光素子は、陽極と発光層の間に正孔輸送層を、発光層と陰極の間に電子輸送層を、それぞれ少なくとも一層含む。発光層からの電子の通過を防ぐために、電子ブロッキング層を設けても良いが、本発明では、電子ブロッキング層等を含めて、陽極と発光層の間に設けた層を正孔輸送層と呼ぶこととする。同様に、電子輸送層は、正孔ブロッキング層も含むこととする。
本発明では、正孔輸送層は、硬化性樹脂から構成することが好ましい。図1の左(通電開始時の状態)に示すように、正孔輸送層には、未架橋の架橋基が含まれる。未架橋基を含有させるためには、硬化性樹脂を作製する際に、硬化処理時間を短くすることで達成することができる。熱処理で硬化させる場合には、硬化温度を低く、光処理で硬化させる場合には、光量を低くすることによっても未架橋基を含む状態を形成することができる。
さらに、本発明の有機発光素子においては、通電開始時における、発光層への正孔注入性が電子注入性よりも優勢である。すなわち、発光層内に注入される正孔密度が電子密度よりも高い状態となっている。
本発明の有機発光素子は、通電とともに、正孔輸送層の未架橋基の架橋反応が進行する。硬化の進行により、正孔輸送層の電気抵抗が上昇し、発光層に注入される正孔が抑制され、発光層内の正孔と電子の密度のバランスが改良される(図1の右)。これにより、通電開始直後の輝度の低下が抑制され、素子の長寿命化を達成することができる。
(硬化性樹脂の製造)
本発明の有機発光素子に用いる硬化性樹脂は、上記で説明した正孔輸送性のモノマーのいずれかと、架橋基を有するモノマーを、当該技術分野で公知の方法によって重合させることにより製造することができる。架橋基としては、環状エーテル又は芳香環、あるいはその両方を含むことが好ましい。このような環状エーテル又は芳香環の具体例としては、エポキシ基、オキセタン基、スチレン基、ピロール基、チオフェン基等が挙げられ、これらの架橋基を有するモノマーとしては、フェニレンに代表される共役環を有するモノマーが、クロスカップリングにより正孔輸送性のモノマーの共役環と架橋基とを結合させるため好適である。また、架橋基を有するモノマーとしては、架橋基の異なる2種類以上のモノマーを組み合わせて用いても良いし、あるいは、分子中に種類の異なる2種以上の架橋基を有するモノマーを用いても良い。好ましくは、それらの2種以上の架橋基は硬化条件が相異なる。硬化条件の相異なる2種以上の架橋基の組み合わせの例として、環状エーテルと芳香環、オキセタン基とチオフェン基、オキセタン基とスチレン基、エポキシ基とオキセタン基等の組み合わせを挙げることができる。
架橋基を有するモノマーが、例えば架橋基と芳香族基とが結合したモノマーであれば、硬化性樹脂を構成する全てのモノマーが芳香環を有することとなる。この場合、例えば、スズキの方法を用い、各モノマーに含まれる芳香環同士をクロスカップリングさせて、該モノマーを重合させることができる。スズキの方法は、芳香族ボロン酸誘導体と芳香族ハロゲン化物との間で、Pd触媒クロスカップリング反応(以下「鈴木反応」とも記載する)を起こさせるものである。鈴木反応を用いて、正孔輸送性のモノマーの少なくとも1種と、架橋基及び芳香族基が結合したモノマーの芳香環とを結合させ、該モノマーを重合させて正孔輸送層を形成するための重合性塗布液に含まれる硬化性樹脂を製造することができる。
上記の重合性塗布液には、架橋基を有するモノマーを用いないことで、重合性架橋基を有さない高分子組成物も製造し、含有させることができる。
鈴木反応は、通常、Pd(II)塩又はPd(0)錯体の形態である可溶性Pd化合物を触媒として必要とする。鈴木反応の基質となる芳香族化合物、すなわち上記で説明したモノマーを基準として、0.01〜5モルパーセントのPd(PhP)、3級ホスフィンリガンドとのPd(OAc)錯体又はPdCl(dppf)錯体をPd触媒として用いることが好ましい。また、鈴木反応は塩基も必要とする。水性アルカリカーボネート又はバイカーボネートを用いることが好ましく、炭酸カリウムを用いることがより好ましい。溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、トルエン、アニソール、ジメトキシエタン又はテトラヒドロフラン等を用いることが好ましく、トルエンを用いることがより好ましい。トルエンのような非極性溶媒を用いる場合、トリスカプリリルメチルアンモニウムクロリド(Aliquat336(商標))のような相間移動触媒を用いて反応を促進することが好ましい。
上記の条件で各モノマーを重合させることにより、高収率で本発明における硬化性樹脂を製造することが可能となる。
(硬化性樹脂によって形成される樹脂)
図1の左(通電開始時)に示すように、硬化性樹脂を基材に塗布後、硬化処理することで、硬化性樹脂の側鎖に含まれる架橋基による分子間及び/又は分子内架橋を形成することができる。その際、硬化時間を通常よりも短くすること等により、未架橋基を残す。
本明細書において、「硬化処理」は、上記で説明したように架橋基を反応させて、分子間及び/又は分子内架橋を形成させる処理を意味する。本発明における硬化性樹脂に適用される硬化処理としては、例えば、加熱、並びに光、マイクロ波、放射線及び電子線等の照射を挙げることができる。その中でも加熱処理がより好ましい。
上記の硬化処理は、硬化性樹脂と架橋開始剤とを混合した混合物に対して実施することが好ましい。本明細書において、「架橋開始剤」は、上記の硬化処理によって活性化され、架橋基の架橋反応を促進する化合物を意味する。架橋開始剤の密度を少量にすることで、未架橋基を部分的に残すことができるとともに、正孔輸送層を構成する樹脂に、正孔キャリアを化学ドーピングすることができる。
硬化性樹脂の硬化処理に適用される架橋開始剤としては、例えば、ヨードニウム塩、スルホニウム塩及びフェロセン誘導体を挙げることができる。上記の架橋開始剤は、反応性が高いため好ましい。
特に好ましい架橋開始剤は、下記式XI〜XIIIで表される化合物から選択される。
Figure 2016167570
式中、R11〜R15は、互いに独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル、炭素数2〜22の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルケニル、炭素数2〜22の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキニル、炭素数6〜21のアリール、炭素数12〜20のヘテロアリール、炭素数7〜21のアラルキル及び炭素数13〜20のヘテロアリールアルキルからなる群より選択されることが好ましく、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル、炭素数6〜21のアリール、炭素数12〜20のヘテロアリール及び炭素数7〜21のアラルキルからなる群より選択されることがより好ましく、水素であることがさらに好ましい。
s1、s2、t1、t2及びt3は、互いに独立して、0〜5の整数であることが好ましい。
特に好ましくは、硬化性樹脂と上記で説明した架橋開始剤とを混合した混合物を加熱処理することによって架橋基を反応させ、分子間及び/又は分子内架橋を形成させる。この場合、加熱処理の温度は、100℃〜250℃の範囲であることが好ましい。また、加熱処理の時間は、10分〜180分の範囲であることが好ましい。
硬化性樹脂によって形成される樹脂は、通常、仕事関数が4eV〜7eVの範囲であり、典型的には4.7eV〜5.8eVの範囲である。前記仕事関数は、硬化性樹脂に含まれるモノマーの構成比率を適宜設定することによって調整することができる。結果として得られる樹脂の仕事関数は、有機発光素子に通常使用される発光層の仕事関数及び酸化インジウムスズ(ITO)電極の仕事関数の中間の値となる。それゆえ、本発明において硬化性樹脂によって製造される樹脂は、有機発光素子の正孔輸送層に適した電荷輸送効率を発現することが可能となる。
なお、本発明において、硬化性樹脂によって形成される樹脂の仕事関数は、限定するものではないが、例えば、理研計器製表面分析装置AC−1を用い、照射光量50nWの条件で測定することができる。
(未架橋基を有する硬化性樹脂)
通電前の状態である未架橋基を有する硬化性樹脂の作製方法について説明する。通常、十分に長い硬化時間と十分に高い硬化温度の条件下で架橋基を反応させた場合においても、極微量の未架橋基が残存するが、本発明では、予め意図的に未架橋基を通電前の硬化性樹脂中に残存させる。
本発明において、残存している未架橋基の密度は、以下のように計測することができる。赤外線分光法を用いて、未架橋基に由来する周波数と架橋した構造に由来する周波数における吸収強度の比から、未架橋基と架橋した構造との比率を計測することができる。例えば、十分に架橋反応が進んだと判断される硬化時間に対して、半分の硬化時間においては、全体の架橋基に対して、10%〜20%程度の未架橋基が残存する。より短い硬化時間においては、未架橋基がさらに多くなる。
例えば、後述する実施例における硬化性樹脂に関しては、硬化温度180℃で、硬化時間を10分以上として形成した樹脂をトルエン溶液に浸すと、90%以上の膜厚が残り、架橋反応が十分に進んだものと判断される。一方、硬化時間を5分以下にした場合には、形成した樹脂膜をトルエン溶液に浸すと80%程度の膜厚となる。これは、架橋反応が十分に進行せずに、未架橋基が残存しているためである。したがって、以下の実施例では、硬化時間を5分〜10分の間とすることで、十分な硬化性を確保しつつ、10%〜20%程度の未架橋基を残存させることができる。
通電前の状態において、残存する架橋基の密度の上限値及び下限値は、特に限定されるものではない。下限値としては、予め含まれる全架橋基に対して未架橋基の割合が0.01%以上であることが望ましい。通電により、未架橋基の架橋反応が進行した場合に、樹脂の抵抗が数%以上変化するためには、通電前における未架橋基の割合は1%以上であることが特に望ましい。上限値は、樹脂の硬化性を満たす範囲であれば、特に限定するものではない。
(有機発光素子)
図2は、本発明の有機発光素子の一実施形態を示す断面図である。本発明の有機発光素子201は、陽極22と、陰極26と、該陽極22及び陰極26の間に配置された発光層24と、該陽極22及び発光層24の間に配置された正孔輸送層23と、陰極26及び発光層24の間に配置された電子輸送層25とから概略構成される。陽極22は、例えば、ガラス基板21上に酸化インジウムスズ(ITO)をパターニングすることによって形成される。陰極26は、例えば、ガラス基板21の陽極22の上に、正孔輸送層23、発光層24及び電子輸送層25を順次形成させた後、該電子輸送層25の上にアルミニウム(Al)等を蒸着させることによって形成することができる。本発明の有機発光素子201は、陽極22、正孔輸送層23、発光層24、電子輸送層25及び陰極26を、ガラス基板21及び封止ガラス板27で挟持した後、ガラス基板21と封止ガラス板27とを、例えば光硬化性エポキシ樹脂のような硬化性樹脂を用いて貼り合わせることによって封止することが好ましい。
本発明の有機発光素子において、前記正孔輸送層は、当該技術分野で慣用される手段を用いて製造することができる。例えば、ガラス基板上にパターニングされた陽極の上に、スピンコート法、印刷法、インクジェット法等の湿式プロセスによって硬化性樹脂を含む重合性塗布液を塗布した後、上記で説明した硬化処理により樹脂を形成させることによって製造すれば良い。重合性塗布液によって形成される樹脂は、硬化性が高く、有機溶媒耐性に優れる。このため、前記樹脂を用いて製造された正孔輸送層の表面に、例えば上記の湿式プロセスによって発光層を積層させる場合、発光層の塗布溶液に含まれる有機溶媒によって正孔輸送層が溶解することを抑制することができる。例えば、本発明における硬化性樹脂によって形成される樹脂を用いて製造される正孔輸送層は、通常、有機溶媒に対する残膜率は60%〜100%の範囲であり、典型的には80%〜99%の範囲である。上記の残膜率で表される有機溶媒耐性を有する樹脂は硬化性が高い。それゆえ、本発明における硬化性樹脂を正孔輸送層に用いることにより、湿式プロセスによる有機発光素子の生産性を向上させることが可能となる。
なお、残膜率の評価は、例えば以下の手順で実施することができる。ITOガラス基板の陽極の上に、硬化性樹脂によって形成される樹脂を用いて正孔輸送層を作製する。正孔輸送層が形成されたITOガラス基板を、有機溶媒(例えばトルエン)に20℃〜250℃、10秒〜60秒間の条件で浸漬させる。その後、ITOガラス基板を有機溶媒中から取り出し、浸漬前後の薄膜の吸光度を測定する。吸光度の比より薄膜の残存率(残膜率)を求めることができる。吸光度は、膜厚に比例するので、吸光度の比(浸積あり/浸積なし)は、正孔輸送層の残膜率(浸積あり/浸積なし)に一致する。残膜率が高い程、有機溶媒耐性が高いと評価される。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
(硬化性樹脂Aの調製)
正孔輸送性のモノマーとして直鎖状トリフェニルアミンモノマー(1)及び分岐状トリフェニルアミンモノマー(2)と、架橋基を有するモノマーとしてオキセタン架橋モノマー(3)とを、鈴木反応で重合して、硬化性樹脂Aを合成した。直鎖状トリフェニルアミンモノマー(1)及び分岐トリフェニルアミンモノマー(2)は、鈴木反応の反応点をそれぞれ2及び3個有しており、重合によって主鎖を形成する。架橋性のオキセタン架橋モノマー(3)は、鈴木反応の反応点を1個有しており、重合によって側鎖を形成する。架橋性のオキセタン架橋モノマー(3)は、フェニレン及びオキシメチレンの組み合わせからなる二価の架橋基に、1−エチルオキセタン−1−イル基が結合した構造を有するモノマーである。
Figure 2016167570
丸底フラスコに、4,4’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−4’’−n−ブチルトリフェニルアミン(1)(0.4mmol)、4,4’,4’’−トリブロモトリフェニルアミン(2)(1.0mmol)、3−(4−ブロモフェノキシメチル)3−エチルオキセタン(3)(1.2mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.008mmol)、2M炭酸カリウム水溶液(5.3mmol)、Aliquat336(商標)(0.4mmol)及びアニソール(4ml)を入れ、窒素雰囲気下、90℃で2時間撹拌した。
上記の方法で、直鎖状トリフェニルアミンモノマー(1):分岐状トリフェニルアミンモノマー(2):オキセタン架橋モノマー(3)=20:50:40のモル比で合成したところ、分子量40kDaの架橋基を有する硬化性樹脂Aを得た。分子量は、ポリスチレン換算で測定したときの数平均分子量であり、ゲル浸透クロマトグラフィーを用いて決定した。
(硬化性樹脂Bの調製)
上記の硬化性樹脂Aの調製手順において、直鎖状トリフェニルアミンモノマー(1)を、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジオクチル−9H−フルオレン(4)に変更した以外は、上記と同様の手順で分子量が約40kDaの硬化性樹脂Bを得た。
Figure 2016167570
(硬化性樹脂Cの調製)
上記の硬化性樹脂Aの調製手順において、直鎖状トリフェニルアミンモノマー(1)を、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−N−フェニル−9H−カルバゾール(5)に変更した以外は、上記と同様の手順で分子量が約40kDaの硬化性樹脂Cを得た。
Figure 2016167570
(架橋基を側鎖に有さない高分子組成物の合成)
上記の硬化性樹脂Aの調製手順において、直鎖状トリフェニルアミンモノマー(1)を、側鎖に炭素数4のアルキル鎖を付加したモノマー(6)で置換し、オキセタン架橋モノマー(3)を含まない条件で、上記と同様の手順で高分子組成物を調製したところ、分子量が約80kDaの架橋基を有さない高分子組成物Dを得た。
Figure 2016167570
硬化性樹脂A〜Cにおいては、オキセタン架橋モノマーの鈴木反応の反応点は1点であり、高分子の末端となる。モノマー(6)において、側鎖に炭素数4のアルキルを付加したのは、作製された高分子組成物の溶媒(トルエン)への溶解性を向上させるためである。
(硬化性樹脂Aを用いた樹脂Aの製造)
合成した硬化性樹脂A(4.2g)を1.2mlのトルエンに溶解させ、塗布液を調製した。
酸化インジウムスズ(ITO)を、1.6mm幅でガラス基板上にパターンニングした。このITOガラス基板上に、上記の塗布液を300回転/分の条件でスピンコートした。その後、硬化性樹脂AをコートしたITOガラス基板を、ホットプレート上で180℃、7分間加熱することで硬化処理し、硬化性樹脂Aを加熱重合させた。得られた樹脂を、樹脂Aとする。
(硬化性樹脂Aを用いた樹脂A’の製造)
比較用の樹脂として、硬化性樹脂AをコートしたITOガラス基板を、ホットプレート上で180℃、10分間加熱することで硬化処理し、硬化性樹脂Aを加熱重合させた。得られた樹脂を、樹脂A’とする。
(高分子組成物Dを用いた及び樹脂Dの製造)
もうひとつの比較用の樹脂として、高分子組成物DをITO基板上にコートした。得られた樹脂を、樹脂Dとする。
(残膜率の評価)
樹脂A、樹脂A’及び樹脂Dの薄膜を、ガラス板と一緒にトルエン中でリンスし、リンス前後の薄膜の吸光度を測定し、リンス前後の吸光度の比より薄膜の残存率(残膜率)を求めた。樹脂A及び樹脂A’は、残膜率は90%以上だった。一方、樹脂Dの残膜率は、20%であった。
(ホールオンリー素子の評価)
上記の樹脂A、樹脂A’、樹脂Dの試料の上に100nmの膜厚のAl電極を蒸着させた。ITOとAl電極間に直流電圧を印加したところ、印加電圧1Vにおける電流値は、樹脂Aでは85A/cm、樹脂A’では79A/cm、樹脂Dでは98A/cmであった。樹脂Aと比較して、樹脂Dは、架橋基を有しないため電気抵抗が低い。さらに、樹脂Aは、樹脂A’と比較して、硬化処理における硬化時間が短く、未架橋基を含むため電気抵抗が低くなった。
さらに、樹脂Aのインピーダンススペクトルを測定した。図3は、樹脂Aのモジュラス虚部の周波数依存性を示す図である。図3に示すとおり、2Hzに樹脂A由来のピークを確認した。
(インピーダンススペクトル評価)
ここで、インピーダンススペクトルの測定方法について説明する。本明細書においては、有機発光素子もしくはホールオンリー素子のインピーダンスの周波数依存性をLCRメータ(NF回路ブロックZM2376)を用いて0.1Hz〜100kHzの領域で測定した。有機発光素子もしくはホールオンリー素子を構成する各積層材料の電気抵抗及び静電容量に応じて、インピーダンスが変化する周波数が現れる。
インピーダンスの周波数依存性の結果は、図4に示す回路モデルを用いて評価できる。図4は、有機発光素子の各層を抵抗Rと静電容量Cで表した回路モデルであり、添え字1、2・・は、正孔輸送層、発光層、電子輸送層等を表わす。
i番目の層のインピーダンスは、
Figure 2016167570
で与えられる。式中、Z’はインピーダンスの実部、Z’’は虚部を表わす。ωは角周波数であり、周波数fとの間に、f=2πωの関係がある。
インピーダンスにjωを乗じて定義されるモジュラス(jは虚数単位)は、以下で表される。
Figure 2016167570
M’はモジュラスの実部、M’’は虚部を表わす。
図5に、R=7.8×10[Ω]、静電容量3.6×10[F]における、モジュラス虚部M’’及びインピーダンス実部Z’の周波数依存性を示す。図5に示すように、
Figure 2016167570
において、
Figure 2016167570
のピークが得られる。
i番目の層の厚さをd、面積をSとすると、RとCは、
Figure 2016167570
で与えられる。ここで、ρは電気抵抗率、εは比誘電率、εは真空の誘電率である。このとき、ピーク周波数は、
Figure 2016167570
となる。これは、i番目の層に固有の物理量である。図5から判るように、fmaxよりも低周波側のインピーダンス値が、i番目の層の抵抗を表わす。
(硬化性樹脂Bを用いた樹脂Bの製造、及び硬化性樹脂Cを用いた樹脂Cの製造)
樹脂Aの製造手順において、硬化性樹脂Aを、硬化性樹脂B又はCに変更した以外は、上記と同様の手順で樹脂を形成させた。樹脂の形成において、硬化性樹脂B及びCから、硬化時間7分として作製した樹脂をそれぞれ樹脂B及びC、硬化時間10分として作製した樹脂をそれぞれ樹脂B’及びC’とする。
得られた各樹脂について、上記と同様の手順で評価した。残膜率は、樹脂B、B’、C、C’ともに90%以上であった。印加電圧1Vにおける電流値は、樹脂B’と比較して樹脂Bが、樹脂C’と比較して樹脂Cがそれぞれ大きいことを確認した。
(仕事関数の評価)
光電子収量分光装置(理研計器製表面分析装置AC−1)を用い、照射光量50nWとして、上記の各樹脂の仕事関数を決定した。
樹脂Aの仕事関数は5.0eVであったのに対し、樹脂B及びCの仕事関数は、それぞれ5.2及び5.3eVであった。この結果から、硬化性樹脂を合成する際に使用される正孔輸送性のモノマー及び架橋基を有するモノマーの種類を変更することによって、発光層及びITOの中間の仕事関数を有する樹脂を形成して、有機発光素子を作製可能と考えられる。
(実施例1:樹脂Aを用いた有機発光素子)
[発光層材料の作製]
丸底フラスコに、4,4’−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−4’’−n−ブチルトリフェニルアミン(1)(0.4mmol)、4,4’−ジブロモトリフェニルアミン(2)(0.08mmol)、4,7−ジブロモ−2,1,3−ベンゾチアジアゾール(0.32mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0.004mmol)、2M炭酸カリウム水溶液(10.6mmol)、Aliquat336(0.4mmol)及びトルエン(7ml)を入れ、窒素雰囲気下、80℃で48時間撹拌した。反応溶液をメタノール/水混合溶媒(9:1)に注ぎ、析出した重合体をろ別した。再沈殿を2回繰り返し行って精製し、黄色発光重合体を得た。
[有機発光素子の作製]
上述の手順で作製した樹脂Aからなる正孔輸送層、及び黄色発光重合体からなる発光層を有するITOガラス基板を、真空蒸着機に入れ、発光層の上に膜厚100nmのAl電極を蒸着させた。電極形成後、大気開放することなく、乾燥窒素環境中に基板を移動させた。前記ITO基板と、0.7mmの無アルカリガラスに深さ0.4mmのザグリ(封止ガラスを貼り合わせる際に、構成物がつぶれないようにガラスに溝を形成したスペーサ)を入れた封止ガラスとを、光硬化性エポキシ樹脂を用いて貼り合わせることにより封止して、多層構造の有機発光素子を作製した。本有機発光素子を、有機発光素子Aとする。ここでは、発光層内に注入される正孔密度が電子密度に比べて高い条件とするため、電子輸送層は設けなかった。
(比較例1:樹脂A’を用いた有機発光素子)
樹脂A’を正孔輸送層とした以外は、上記と同一の方法で有機発光素子を作製した。この有機発光素子を有機発光素子A’とする。
(有機発光素子の性能評価)
実施例1の有機発光素子A、並びに比較例1の有機発光素子A’の性能評価を、大気中、室温(25℃)において行った。
その結果、3000cd/mの輝度を維持するための電圧は、有機発光素子Aにおいては9.5Vであったのに対して、有機発光素子A’では9.3Vであった。しかし、初期輝度3000cd/mとなる電圧一定の条件で、輝度の変化を測定したところ、輝度が1500cd/mとなる時間は、有機発光素子A’では45時間であったのに対して、有機発光素子Aでは60時間となり、寿命特性が向上した。
有機発光素子Aの通電開始前と通電開始後10時間後のインピーダンススペクトルの変化を比較した。その結果を図6に示す。図6は、モジュラス虚部の周波数依存性を示している。黒線が、通電開始前、グレー線が通電開始後10時間後のスペクトルである。通電開始後10時間後に、樹脂Aに起因する2Hz近傍のスペクトルが変化することが確認された。
図7に、インピーダンス実部の周波数依存性を示す。黒線が、通電開始前、グレー線が通電開始後10時間後のスペクトルである。通電開始後10時間後に、樹脂Aに起因する2Hzよりも低周波側で、抵抗が増加していることが判る。以上の結果から、通電により、樹脂Aの抵抗が増加していることを確認した。
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
201 有機発光素子
21 ガラス基板
22 陽極
23 正孔輸送層
24 発光層
25 電子輸送層
26 陰極
27 封止ガラス板

Claims (6)

  1. 陽極と陰極との間に、正孔輸送層、発光層及び電子輸送層を有する有機発光素子であって、
    通電開始時における、前記発光層内に注入される正孔密度が電子密度よりも高く、前記正孔輸送層の電気抵抗が通電により上昇する前記有機発光素子。
  2. 前記正孔輸送層が、通電前に未架橋基を有する硬化性樹脂を含む請求項1に記載の有機発光素子。
  3. 前記正孔輸送層が、正孔輸送性のモノマー及び架橋基を有するモノマーを含む請求項2に記載の有機発光素子。
  4. 前記架橋基を有するモノマーが、架橋基が異なる2種以上のモノマーの組み合わせ、又は2種以上の架橋基を分子中に有するモノマーである請求項3に記載の有機発光素子。
  5. 前記架橋基が、環状エーテル基及び/又は芳香環を含む請求項3又は4に記載の有機発光素子。
  6. 前記正孔輸送性のモノマーが、下記式I〜III:
    Figure 2016167570
    (式中、R〜Rは、互いに独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、炭素数1〜22の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル、炭素数2〜22の直鎖状、分岐状もしくは環状アルケニル、炭素数2〜22の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキニル、炭素数6〜21のアリール、炭素数12〜20のヘテロアリール、炭素数7〜21のアラルキル又は炭素数13〜20のヘテロアリールアルキルであり、これらの基は非置換であるか又は1もしくは複数のハロゲンで置換されており、m1〜m3は、互いに独立して0〜5の整数であり、n1及びn2は、互いに独立して0〜4の整数である)
    からなる群から選択される骨格を有する化合物である請求項3〜5のいずれかに記載の有機発光素子。
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