JP2016160341A - インクセット及びオパール加工布帛の製造方法 - Google Patents

インクセット及びオパール加工布帛の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】少なくとも2種類の繊維を含む生地(布帛)に対して、付与する模様及びすかしのデザインの制限を受にくく、高品位なオパール加工及び着色を施すことのできるインクセットを提供すること。【解決手段】本発明に係るインクセットは、第1繊維及び第2繊維を含む布帛に対してインクジェット法にてオパール加工及び着色を行うためのインクセットであって、第1繊維を溶脱させることができ、第2繊維を溶脱させることができない抜蝕剤を含有する抜蝕インクと、第1繊維及び前記第2繊維を染着可能な顔料を含有する顔料インクと、を備える。【選択図】なし

Description

本発明は、インクセット及びオパール加工布帛の製造方法に関する。
従来から、繊維を加工する技術として、生地(布帛)を構成する繊維の一部を破壊溶脱して部分的に透かし模様を作ったり、穴をあけたりする抜蝕加工が知られている。このような抜蝕加工は、インクジェット方式を利用して行うことが可能であり、記録ヘッドのノズルから抜蝕剤を含有する抜蝕インクを吐出して、布帛に付着させることで実施できる。また、互いに異なる複数種の繊維を用いて織られた生地(交織布帛)において、少なくとも一種の繊維を溶脱して部分的に透かし模様を作る加工はオパール加工と呼ばれ、同様にインクジェット方式を利用して行うことが可能である。
例えば、特許文献1には、ナイロン繊維からなる抜蝕部と、着色されたポリエステル系繊維層と、着色されていないナイロン繊維層からなる非抜蝕部と、で構成されたオパール加工布帛が開示されている。また特許文献2には、変性ポリエステル繊維の完全抜蝕部、部分抜蝕部、未抜蝕部にて柄を形成することが開示されている。そして、このようなオパール加工に染色の技術を組み合わせれば、意匠性の高い布帛を製造できると考えられる。
一方、従来のテキスタイルプリントは、版を用いてプリントする方法やスクリーン捺染法を用いて行われていたが、近年、版が不要で、かつ、少量多品種に対応可能であることから、インクジェット方式を利用した捺染の技術が注目され実用化されている。
インクジェット方式を利用して、これらの加工を連続的に行うことができれば、布帛の生産性が向上するので、利便性に優れる。例えば、特許文献3には、インクジェット法により、硫酸アンモニウムを含むセルロース系繊維のオパール加工用インクと、耐酸性繊維の染色用インクとを備えるオパール加工用インクセットを用いて、抜蝕された部分を染色することが開示されている。
特許第5006792号公報 特開平06−136674号公報 特許第5060235号公報
布帛に対するオパール加工と着色とを、オパール加工、洗浄、着色及び洗浄という順で逐次的に行うことは、工程数が増加する。また、洗浄後にいずれかのインクを付与することになるため、布帛の縮み等の影響により、インクを付着させる位置がずれてしまうことがある。そのためインクジェット法を用いたオパール加工及び着色は、その階調性や高精細性を活かすためにも、一度の印刷動作で行われることが望ましい。
ところが、交織布帛のオパール加工と着色とを同時に行うと、布帛の繊維の種類、及び用いるインクの組み合わせに依存して、オパール加工及び着色が不十分となる領域が予期せず生じることがあった。オパール加工に使用される抜蝕インクは通常、酸又はアルカリの性質を有し、着色に使用される染料インクは通常、化学反応を伴って繊維を着色(染色)する。そのため、抜蝕インクと、染料インクや染色用の前処理インクとが、中和等によ
り化学的に干渉を起こすと、オパール加工するために抜蝕インクを付与した領域と、着色するために染料インクを付与した領域との境界に、オパール加工及び着色が不十分となる領域が生じやすい。
特に、セルロース系繊維と他の繊維(ポリエステル、ナイロンなど)との交織布帛において、セルロース系繊維を酸性の抜蝕インクによって抜蝕してオパール加工するとともに、非抜蝕部のセルロース系繊維を反応性染料インクによって着色する場合には、反応性染料インクの反応のために非抜蝕部に塗布される前処理インクのアルカリ剤と、抜蝕部に塗布される抜蝕インクの抜蝕剤(酸)とが中和してしまうため、非抜蝕部と抜蝕部との境界部分にオパール加工及び着色が不十分となる領域が生じやすい。
そのため、交織布帛のオパール加工と着色とを同時に行う場合には、従来、そのような抜蝕も着色もされずに残る縁取りを、布帛のデザイン(模様)に取り入れる等により、係る現象を甘受していた。このように交織布帛のオパール加工と着色とを同時に行って、交織布帛に縁取りのないデザインを施すためには、抜蝕インクと染料インクとの組み合わせが制限され、布帛の自由なデザインが制限されていた。
本発明の幾つかの態様に係る目的の一つは、少なくとも2種類の繊維を含む生地(布帛)に対して、付与する模様及びすかしのデザインの制限を受にくく、高品位なオパール加工及び着色を同時に施すことのできるインクセットを提供することにある。また、本発明の幾つかの態様に係る目的の一つは、少なくとも2種類の繊維を含む生地(布帛)に対して、付与する模様及びすかしのデザインの制限を受にくく、高品位なオパール加工及び着色を同時に施すことのできるオパール加工布帛の製造方法を提供することにある。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
[適用例1]本発明に係るインクセットの一態様は、
第1繊維及び第2繊維を含む布帛に対してインクジェット法にてオパール加工及び着色を行うためのインクセットであって、
前記第1繊維を溶脱させることができ、前記第2繊維を溶脱させることができない抜蝕剤を含有する抜蝕インクと、
前記第1繊維及び前記第2繊維を染着可能な顔料を含有する顔料インクと、
を備える。
このようなインクセットによれば、抜蝕インクと顔料インクとが化学的に干渉しにくいため、オパール加工及び着色を同時に行っても、オパール加工及び着色が不十分となる領域を生じにくくすることができる。そのため、模様やすかしの配置(デザイン)の制限を緩和しデザインの自由度を高めることができる。
なお、本明細書において、「オパール加工及び着色を同時に行う」とは、抜蝕インク及び着色のためのインクが同じタイミングで布帛に付与される態様を指すだけでなく、抜蝕インクと着色のためのインクが異なるタイミングで布帛に付与されるものの、一方のインクが布帛から除去されない状態で他方のインクが布帛に付与される結果、両方のインクが布帛に存在している時間が含まれるような態様も含む。すなわち、オパール加工及び着色が行われる布帛が洗浄されるまでの間に、抜蝕インク及び着色のためのインクの両者が、布帛に存在していれば、オパール加工及び着色が同時に行われるものとする。
[適用例2]適用例1において、
前記第1繊維は、セルロース系繊維であってもよい。
このようなインクセットによれば、セルロース系繊維を含む布帛にさらに良好なオパール加工を施すことができる。
[適用例3]適用例2において、
前記抜蝕剤は、硫酸水素ナトリウム、硫酸アルミニウム及び硫酸アンモニウムの少なくとも一種であってもよい。
このようなインクセットによれば、セルロース系繊維をより効率よく溶脱することができ、布帛をさらに良好にオパール加工することができる。
[適用例4]適用例1ないし適用例3のいずれか一例において、
前記第2繊維を染色する染料を含有する染料インクをさらに備えてもよい。
このようなインクセットによれば、染料インクによって第2繊維を発色性よく着色することができる。抜蝕インクによって第1繊維が溶脱される部分を第1領域とし、抜蝕インクによって第1繊維が溶脱されず、かつ、顔料インクによって第1繊維及び第2繊維が染着される部分を第2領域とした場合、染料インクは、少なくとも第1領域に残存した第2繊維を着色することができる。染料インクによって、第1領域を染色すれば、第1領域の発色性がよりよいオパール加工布帛を製造することができる。また、この染料インクは、第1領域と第2領域の両方に付与することも可能であり、この場合は、染料インクによって第2領域の第2繊維をも染色することができる。第2領域の第2繊維に対して、顔料インクと染料インクの両方を付与することにより、顔料インクによって第2繊維の表面が染着されるだけでなく、染色インクによって第2繊維の内部も染色されるため、第2領域の発色性がより高いオパール加工布帛を製造することができる。
なお、本明細書において「着色」との文言は、対象(繊維)に対して色を付けることを指し、染着及び染色の上位概念を意図して用いる。また、顔料インクによる着色は、染着と称し、染料インクによる着色は、染色と称することがある。
[適用例5]適用例4において、
前記第2繊維はポリエステル系繊維であり、前記染料は分散染料又は昇華染料であってもよい。
このようなインクセットによれば、さらに容易に第2繊維を発色性よく着色することができる。
[適用例6]本発明に係るオパール加工布帛の製造方法の一態様は、
抜蝕剤によって溶脱する第1繊維と前記抜蝕剤によって溶脱しない第2繊維とを含む布帛を準備する工程と、
前記抜蝕剤を含有する抜蝕インクをインクジェット法により前記布帛の第1領域に付与する工程と、
顔料を含有する顔料インクをインクジェット法により前記布帛の少なくとも前記第1領域以外の第2領域に付与する工程と、
前記布帛を加熱する工程と、
前記布帛を洗浄する工程と、
を有する。
このような製造方法によれば、抜蝕インクと顔料インクとが化学的に干渉しにくいため
、第1領域と第2領域とが隣接していたとしても、第2領域の端まで着色され、未着色の領域が少ないオパール加工布帛を製造することができる。係る製造方法によれば、意図せぬ縁取りが生じにくいため、少なくとも2種類の繊維を含む生地(布帛)に対して、オパール加工及び着色のデザインの自由度を高めることができる。なお、顔料は、第2領域だけでなく、第1領域と第2領域の両方に付与するようにしても良い。
[適用例7]適用例6において、
前記第1繊維は、セルロース系繊維であってもよい。
このような製造方法によれば、セルロース系繊維を含むオパール加工布帛を容易に製造することができる。
[適用例8]適用例7において、
前記抜蝕剤は、硫酸水素ナトリウム、硫酸アルミニウム及び硫酸アンモニウムの少なくとも一種であってもよい。
このような製造方法によれば、セルロース系繊維をより安定して溶脱することができ、セルロース系繊維を含むオパール加工布帛をさらに容易に製造することができる。
[適用例9]適用例6ないし適用例8のいずれか一例において、
染料を含有する染料インクをインクジェット法により少なくとも前記第1領域に付与する工程をさらに有してもよい。
このような製造方法によれば、染料を含有する染料インクによって少なくとも第1領域の第2繊維を染色できるため、第1領域の発色性がよりよいオパール加工布帛を製造することができる。また、この染料インクを第1領域と第2領域の両方に付与することも可能であり、この場合は、染料インクによって第2領域の第2繊維をも染色することができる。第2領域の第2繊維に対して、顔料インクと染料インクの両方を付与すれば、顔料インクによって繊維表面が染着されるだけでなく、染色インクによって繊維の内部も染色されるため、第2領域の発色性がより高いオパール加工布帛を製造することができる。
[適用例10]適用例9において、
前記第2繊維はポリエステル系繊維であり、前記染料は分散染料又は昇華染料であってもよい。
このような製造方法によれば、さらに容易に発色性のよいオパール加工布帛を製造することができる。
実施形態に係る布帛のオパール加工及び着色の様子を模式的に表す平面図。 従来例に係るオパール加工及び着色の様子を模式的に表す平面図。
以下に本発明の実施の形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。なお以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
1.インクセット
本実施形態のインクセットは、第1繊維及び第2繊維を含む布帛に対してインクジェッ
ト法にてオパール加工及び着色を行うためのインクセットである。そして、第1繊維を溶脱する抜蝕剤を含有する抜蝕インクと、第1繊維及び第2繊維を染着可能な顔料を含有する顔料インクと、を備える。
1.1.布帛
本実施形態のインクセットを適用する布帛は、第1繊維と第2繊維とを含む。第1繊維は、後述する抜蝕インクに含まれる抜蝕剤で溶脱可能な繊維である。また、第2繊維は、抜蝕インクに含まれる抜蝕剤で溶脱しない繊維(あるいは、第1繊維よりも溶脱しにくい繊維)である。布帛は、第1繊維及び第2繊維以外の繊維を含んでもよい。布帛に含まれる第1繊維及び第2繊維の含有量は、特に限定されない。
抜蝕インクが酸性の抜蝕剤を含有する場合、これに溶脱しやすい繊維の具体例として、セルロース系繊維が挙げられる。一方、酸性の抜蝕剤によって溶脱しにくい繊維の具体例としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維(ウール、絹、羊毛、ナイロン(ε−カプロラクタム重合体、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮合体等)等)及びポリオレフィン系繊維等が挙げられる。
抜蝕インクが塩基性(アルカリ性)の抜蝕剤を含有する場合、これに溶脱しやすい繊維の具体例としては、ポリエステル系繊維や、ポリアミド系繊維(ウール、絹、羊毛、ナイロン(ε−カプロラクタム重合体、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮合体等)等)等が挙げられる。一方、塩基性の抜蝕剤に溶脱しにくい繊維の具体例としては、セルロース系繊維、ポリオレフィン系繊維などが挙げられる。
また、本実施形態に係る布帛は上述の第1繊維及び第2繊維を含むものであるが、これらの繊維は、交撚や混紡されたものであってもよい。また、布帛としては、上記の繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。また、布帛の厚みや繊維密度等は、特に限定されない。「布帛が第1繊維及び第2繊維を含む」態様としては、(1)布帛を構成する繊維が、第1繊維及び第2繊維が交撚又は混紡されたものである態様、(2)交織、交編等により複数種の繊維によって布帛が構成され、うち少なくとも1種の繊維が第1繊維であり、少なくとも1種の繊維が第2繊維である態様、(3)交織、交編等により複数種の繊維によって布帛が構成され、うち少なくとも1種の繊維が(1)の繊維である態様、並びに(4)前記(1)〜(3)の任意の組み合わせである態様等が挙げられる。
このような布帛の中でも、オパール加工用の布帛として広く使用されている、セルロース系繊維と、ポリエステル系繊維と、を含む布帛を用いることが好ましい。
セルロース系繊維のより具体的な例としては、天然セルロース繊維(例えば、綿、麻等の植物性繊維)、セルロース骨格を有する合成繊維(例えば、レーヨン、リヨセル、キュプラ、アセテート等)及びこれらの変成繊維が挙げられる。また、セルロース系繊維は、複数種が交撚、混紡されていてもよい。
ポリエステル系繊維のより具体的な例としては、エステル結合を有する高分子によって形成された繊維であれば限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリトリメチレンテレフタレート、それらの変成体等を例示することができる。また、ポリエステル系繊維は、複数種が交撚、混紡されていてもよいし複合繊維となっていてもよい。
本実施形態のインクセットを、セルロース系繊維及びポリエステル系繊維を含む布帛に適用する場合、抜蝕インクに酸性の抜蝕剤を含有させれば、セルロース系繊維を溶脱する
ことができ、塩基性の抜蝕剤を含有させれば、ポリエステル系繊維を溶脱させることができる。
このような布帛の市販品の例としては、商品名「E/C混オパールIII」(田中直染料店製、薄手の生地、素材:綿50%、ポリエステル50%)、商品名「E/C麻混オパール」(田中直染料店製、厚手の生地、素材:麻、ポリエステル、綿;混率不明)、商品名「麻混No.0801」(蝶理株式会社製、素材:ポリエステル22%、レーヨン56%、麻22%)、商品名「オパールサテンNo.9017」(蝶理株式会社製、素材:ポリエステル45%、レーヨン55%)等が挙げられる。
1.2.インクジェットオパール加工
本実施形態のオパール加工布帛は、インクジェット法によりオパール加工されて製造される。ここで、オパール加工とは、上述の布帛において、オパール模様に対応する部分のセルロース系繊維又はポリエステル系繊維(第1繊維又は第2繊維)を溶脱破壊して除去し、生地に透かし模様を形成する加工のことを指す。また本明細書では、布帛を洗浄した後にオパール加工が施される領域のことを「抜蝕部」といい、オパール加工が施されない領域のことを「非抜蝕部」ということがある。
また、本実施形態では、抜蝕加工にも適用可能な抜蝕インクを用いるが、係る抜蝕インクは、第1繊維及び第2繊維の一方は、溶脱しない又は相対的に溶脱しにくく、第1繊維と第2繊維とを含む布帛に適用するため布帛を貫通する孔は形成されにくい。したがって本明細書では「抜蝕インク」と称するが、抜蝕加工布帛(抜蝕により孔が形成された布帛)が形成されることを意味する呼称ではなく、抜蝕インクによってオパール加工布帛(抜蝕によりすかしが形成された布帛)が製造される。
セルロース系繊維又はポリエステル系繊維の溶脱は、布帛に対して、後述する抜蝕インクを、インクジェット方式にて付与することにより行われる。すなわち、本実施形態ではいわゆるインクジェット型の記録装置を用いて、抜蝕インクの液滴を布帛に対して吐出して付着させて行われる。
本実施形態で使用可能なインクジェット記録装置は、所定の模様に対応してノズルからの抜蝕インクの吐出タイミング及びノズルと布帛との相対位置を制御して、布帛の所定の位置に抜蝕インクを付着させることができるものであれば、特に限定されない。また、ノズルからの抜蝕インクの吐出方式も限定されず、例えば、静電吸引方式、ピエゾ方式、サーマルジェット方式等を適用できる。また、本実施形態のオパール加工においては、ノズルと布帛の相対位置を変化させる方式として、いわゆるシリアル型であってもライン型であってもよい。
なお典型的なインクジェット記録装置としては、インクジェット式記録ヘッド、本体、トレイ、ヘッド駆動機構、及びキャリッジを備えたものを例示できる。インクジェット式記録ヘッドは、複数のノズルを有しており、ノズルは所定のインク(カラーインク等)のインクカートリッジに連通して、係るインクを吐出する。そして、例えば少なくとも1つのインクカートリッジに、抜蝕インクを充填して使用してもよいし、抜蝕インク専用のカートリッジ及びこれに連通するノズルを形成して使用してもよい。また、インクジェット記録装置は、抜蝕インクの他に染料インク等の他のインクを吐出できるように構成してもよい。このようなインクジェット記録装置を用いれば、各インクを容易に布帛に吐出して付着(付与)させることができ、布帛に対して所定の模様を形成することができる。
本実施形態のオパール加工布帛(オパール加工された布帛)は、第1繊維(セルロース系繊維)又は第2繊維(ポリエステル系繊維)が溶脱された部分(抜蝕部)に、少なくと
も他方の繊維が残存して布帛の一部を構成するとともに、第1繊維(セルロース系繊維)及び第2繊維(ポリエステル系繊維)が残存(溶脱されていない)している部分(非抜蝕部)が布帛の一部を構成する。そしていずれかの繊維が溶脱された部分のほうが両方の繊維が残存する部分よりも繊維の量が少ない(或いは厚みが小さい)ため、当該繊維が溶脱された部分が、繊維が残存する部分に比較して、光を透過しやすく、これにより所定の透かし模様が形成される。
1.3.インクジェット着色
本実施形態のオパール加工布帛は、インクジェット法により着色されて製造される。セルロース系繊維及びポリエステル系繊維の着色は、布帛に対して、後述する顔料インクを、インクジェット方式にて付与することにより行われる。すなわち、本実施形態ではインクジェット型の記録装置を用いて、顔料インクの液滴を布帛に対して吐出して付着させ、染着させて行われる。
本実施形態では、インクジェット法によって抜蝕インク及び顔料インクを布帛に付与するが、布帛に付与される順序は限定されず、両方のインクが布帛に存在する状態が形成されれば、オパール加工及び着色(染着)を同時に行うことができる。
ここで、染着とは、上述の布帛において、着色模様に対応する部分のセルロース系繊維及びポリエステル系繊維(第1繊維及び第2繊維)を顔料インクにより着色することをいう。顔料インクは、主に繊維の表面に固着することにより、繊維を着色するため、染料による繊維の染色とは着色の態様が相違する。したがって、本明細書では、染料インクによる繊維の染色とは異なるという意図で、顔料インクによる繊維の染着という表現を用いる。また本明細書では、染着が施された領域のことを「染着部」いい、染着が施されていない領域のことを「非染着部」ということがある。
インクジェット法の態様は、「1.2.インクジェットオパール加工」の項で述べたと同様であり同項の説明において「抜蝕インク」を「顔料インク」と適宜に読み替えることにより説明したものとし詳細な説明を省略する。
1.4.抜蝕インク
本実施形態のインクセットが備える抜蝕インクは、第1繊維を溶脱する抜蝕剤及び水を含有する。本実施形態のインクセットが備える抜蝕インクは、オパール加工に使用するインクジェット用のインクである。
<抜蝕剤>
本実施形態に係る抜蝕インクは、抜蝕剤を含有する。抜蝕剤は、布帛を構成する第1繊維を破壊溶脱(抜蝕)するという機能を備える。抜蝕剤には、溶脱したい繊維の種類に応じて、水中で酸あるいは塩基の性質を示すものを適宜選択して用いることができる。
水中で酸性を示す抜蝕剤(以下、単に「酸性の抜蝕剤」ともいう。)としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、ならびにこれらの塩が挙げられ、セルロース系繊維の抜蝕に優れているという点から、第1繊維がセルロース系繊維である場合には、硫酸および硫酸塩(例えば、硫酸水素ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸亜鉛、硫酸錫など)を用いることが好ましく、硫酸、硫酸水素ナトリウム、硫酸アルミニウムおよび硫酸アンモニウムを用いることがより好ましい。これらの酸性の抜蝕剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
水中で塩基性を示す抜蝕剤(以下、単に「塩基性の抜蝕剤」ともいう。)としては、グアニジンおよびこれの塩、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)の水酸化
物、アルカリ土類金属(カルシウム、バリウム等)の水酸化物などが挙げられ、ポリアミド系繊維やポリエステル系繊維の抜蝕に優れているという点から、第1繊維がポリアミド系繊維やポリエステル系繊維である場合には、アルカリ金属の水酸化物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなど)、グアニジン弱酸塩(例えば、グアニジン炭酸塩、グアニジン酢酸塩など)を用いることが好ましい。これらの塩基性の抜蝕剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
抜蝕インクにおける抜蝕剤の含有量は、抜蝕インクの全質量(100質量%)に対して、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、20質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。抜蝕剤の含有量が10質量%以上であることで、繊維を溶脱する能力が一層向上する。また、抜蝕剤の含有量が40質量%以下であることで、抜蝕インクの粘度をインクジェット方式に適した範囲にすることが容易になり、記録ヘッドの吐出安定性を良好にすることができる。また、抜蝕剤の含有量が40質量%以下であることで、抜蝕インクと、併用する溶剤や界面活性剤との共存が容易となる。
<水>
本実施形態に係る抜蝕インクは、水を含有する。水は、抜蝕インクの主となる液媒体である。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。水の含有量は、抜蝕インクの全質量に対して、例えば40質量%以上とすることができる。
<有機溶剤>
本実施形態に係る抜蝕インクは、保湿性を向上できたり、布帛に対する浸透性を向上できたりするという観点から、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤としては、例えば、1,2−アルカンジオール類、多価アルコール類、グリコールエーテル類、ピロリドン誘導体等が挙げられる。
1,2−アルカンジオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。1,2−アルカンジオール類は、布帛に対するインクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れている。1,2−アルカンジオール類を含有する場合の含有量は、抜蝕インクの全質量に対して、1質量%以上10質量%以下とすることができる。
多価アルコール類(上記の1,2−アルカンジオール類を除く)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、トリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール類は、インクの布帛に対する濡れ性を高めたり、ノズルの保湿性を高めたりする等の機能を備える。多価アルコール類を含有する場合の含有量は、抜蝕インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下とすることができる。
グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノイソヘキシルエーテル、エチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル
、トリエチレングリコールモノイソヘプチルエーテル、エチレングリコールモノオクチルエーテル、エチレングリコールモノイソオクチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソオクチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルペンチルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−2−メチルペンチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。グリコールエーテル類は、インクの布帛に対する濡れ性などを制御することできる。グリコールエーテル類を含有する場合の含有量は、抜蝕インクの全質量に対して、1質量%以上10質量%以下とすることができる。
ピロリドン誘導体としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。ピロリドン誘導体は、他の溶剤の溶解性やインクの保湿性を高めるという機能を備える。ピロリドン誘導体を含有する場合の含有量は、抜蝕インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下とすることができる。
<界面活性剤>
抜蝕インクは、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、インクの表面張力を低下させ布帛との濡れ性を調整する機能を備える。界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤、アニオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、およびフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、PD−005、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、ペレックスSS−H、SS−L、ラテムルWX、E−150、ネオペレックスGS、G−15、G−25、G−35(以上全て商品名、花王株式会社製)等が挙げられる。
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK−306、BYK−307、BYK−333、BYK−341、BYK−345、BYK−346、BYK−348(以上商品名、BYK社製)、KF−351A、KF−352A、KF−353、KF−354L、KF−3
55A、KF−615A、KF−945、KF−640、KF−642、KF−643、KF−6020、X−22−4515、KF−6011、KF−6012、KF−6015、KF−6017(以上商品名、信越化学工業社製)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
界面活性剤を含有する場合の含有量は、抜蝕インクの全質量に対して、0.05質量%以上1.5質量%以下とすることができる。
<その他の成分>
本実施形態に係る抜蝕インクは、必要に応じて、尿素類、糖類、pH調整剤、キレート化剤、防腐剤、防かび剤、防錆剤等の各種の添加剤を含有してもよい。
1.5.顔料インク
本実施形態のインクセットが備える顔料インクは、第1繊維及び第2繊維を染着することが可能である。顔料インクは、水性顔料インクでも油性顔料インクでもよい。また、本実施形態のインクセットが備える顔料インクの色(カラー)についても何ら限定されず、顔料インクには、以下に例示する各色の顔料を用いることができる。顔料インクとしては、特に限定されないが、顔料及び樹脂エマルションを含むことが好ましく、顔料の定着性がより向上する等の理由からさらに水溶性溶剤を含むことがより好ましい。顔料インクに含まれるか又は含まれ得る添加剤(成分)について説明する。
<顔料>
顔料インクに含まれ得る顔料として、ブラック顔料としては、カーボンブラックが挙げられ、その種は特に限定されないが、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、及びチャンネルブラック(C.I.ピグメントブラック7)が挙げられる。また、カーボンブラックの市販品として、例えば、No.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B(以上全て商品名、三菱化学社(MitsubishiChemicalCorporation)製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリテックス35、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250(以上全て商品名、デグサ社(DegussaAG)製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700(以上全て商品名、コロンビアカーボン社(ColumbianCarbonJapanLtd)製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12(以上全て商品名、キャボット社(CabotCorporation)製)等が挙げられる。
またブラックの顔料として有機顔料も使用することができ、特に限定されないが、例えば、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料、及びアゾ系顔料等が挙げられる。有機顔料の具体例としては、下記のものが挙げられる。無機顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シアンの顔料としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15
:2、15:3、15:4、15:6、15:34、16、18、22、60、65、66、C.I.バットブルー4、60等が挙げられる。
マゼンタの顔料としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、254、264、C.I.ピグメントバイオレット19、23、32、33、36、38、43、50等が挙げられる。
イエローの顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、155、167、172、180、185、213等が挙げられる。
顔料インクは、白色の顔料を使用することも可能であり、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化アンチモン、及び酸化ジルコニウム等の白色無機顔料、白色の中空樹脂粒子及び高分子粒子などの白色有機顔料を含んでもよい。白色の顔料のカラーインデックス(C.I.)としては、特に限定されないが、例えば、C.I.PigmentWhite1(塩基性炭酸鉛)、4(酸化亜鉛)、5(硫化亜鉛と硫酸バリウムの混合物)、6(酸化チタン)、6:1(他の金属酸化物を含有する酸化チタン)、7(硫化亜鉛)、18(炭酸カルシウム)、19(クレー)、20(雲母チタン)、21(硫酸バリウム)、22(天然硫酸バリウム)、23(グロスホワイト)、24(アルミナホワイト)、25(石膏)、26(酸化マグネシウム・酸化ケイ素)、27(シリカ)、28(無水ケイ酸カルシウム)が挙げられる。
上記の顔料のうち、各種のカラー顔料、黒色顔料を含有する場合には、例えば、白色等の色の薄い布帛に対して、カラー模様、黒色模様を印捺(捺染)(染着)することができる。また、顔料インクが白色顔料を含む場合には、例えば、既に着色された布帛に対して、白色模様を印捺(捺染)(染着)することができる。本実施形態のインクセットは、互いに異なる顔料を含む顔料インクを複数含んでもよい。このようにすれば、より色彩豊かなオパール加工布帛を形成することができる。
<樹脂エマルション>
本実施形態で用いる顔料インクは、樹脂エマルションをさらに含むことが好ましい。樹脂エマルションは、顔料インクの乾燥に伴い、樹脂同士と、樹脂及び顔料と、がそれぞれ互いに融着して顔料を布帛に固着させるため、布帛の模様部分の耐擦性及び堅牢性を一層良好にすることができる。樹脂エマルションは、樹脂が微粒子として分散媒中に分散されたものであればよい。
樹脂エマルションの例としては、ウレタン樹脂エマルション、アクリル樹脂エマルションが挙げられる。ウレタン樹脂エマルションは、分子中にウレタン結合を有する樹脂エマルションである。さらに、ウレタン樹脂エマルションとしては、ウレタン結合に加えて、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、及び主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂なども使用可能である。
ウレタン樹脂エマルションの市販品としては、例えば、サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社(The Lubrizol Corporation)製商品名)、パーマリンUA−150(三洋化成工業社(Sanyo Chemical Industries, Ltd.)製商品名)、スーパーフレックス460,470,610,700(以上、第一工業製薬社(Dai-ichi Kogyo Seiyaku Co., Ltd.)製商品名)、NeoRezR−9660,R−9637,R−940(以上、楠本化成社(Kusumoto Chemicals, Ltd.)製商品名)、アデカボンタイターHUX−380,290K(以上、アデカ(Adeka)社製商品名)、タケラック(登録商標)W−605,W−635,WS−6021(以上、三井化学社(Mitsui Chemicals, Inc.)商品名)、ポリエーテル(大成ファインケミカル社(TAISEI FINECHEMICAL CO., LTD)商品名、Tg=20℃)が好ましく挙げられる。ウレタン樹脂エマルションは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本実施形態で用いる顔料インクは、ウレタン樹脂エマルション以外の樹脂エマルションを含んでもよい。ウレタン樹脂エマルション以外の樹脂エマルションとしては、公知の材料及び製造方法により得られるものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。当該市販品としては、特に限定されないが、例えば、モビニール966A(日本合成化学社(Nippon Synthetic Chemical Industry Co., Ltd.)製商品名、アクリル樹脂エマルション)、マイクロジェルE−1002、マイクロジェルE−5002(以上商品名、日本ペイント社(Nippon Paint Co., Ltd)製)、ボンコート4001、ボンコート5454(以上商品名、DIC社製)、SAE1014(商品名、日本ゼオン社(Zeon Corporation)製)、サイビノールSK−200(商品名、サイデン化学社(SAIDEN CHEMICAL INDUSTRY
CO., LTD.)製)、ジョンクリル7100、ジョンクリル390、ジョンクリル711、ジョンクリル511、ジョンクリル7001、ジョンクリル632、ジョンクリル741、ジョンクリル450、ジョンクリル840、ジョンクリル74J、ジョンクリルHRC−1645J、ジョンクリル734、ジョンクリル852、ジョンクリル7600、ジョンクリル775、ジョンクリル537J、ジョンクリル1535、ジョンクリルPDX−7630A、ジョンクリル352J、ジョンクリル352D、ジョンクリルPDX−7145、ジョンクリル538J、ジョンクリル7640、ジョンクリル7641、ジョンクリル631、ジョンクリル790、ジョンクリル780、ジョンクリル7610(以上商品名、BASF社製)、NKバインダーR−5HN(新中村化学社製商品名、アクリル樹脂エマルション、固形分44%)が挙げられる。ウレタン樹脂エマルション以外の樹脂エマルションは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂エマルションの樹脂の含有量の下限は、顔料インクの総質量(100質量%)に対して3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。上限は15質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、布帛の模様の堅牢性及び耐擦性が優れたものとなる傾向にあり、インクの長期安定性に優れ、特にインクを低粘度化することができる傾向にある。
<その他の成分>
本実施形態で用いる顔料インクは、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、及びN−エチル−2−ピロリドン等の環状アミド化合物、水、有機溶剤(浸透剤、保湿剤)、界面活性剤等を含んでもよい。顔料インクに使用する水、有機溶剤、界面活性剤は、「1.4.抜蝕インク」の項で説明したと同様である。
<含有量>
顔料インクは、固形分含有量の上限が5質量%以上であることが好ましく、8質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。固形分含有
量の下限は25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲であることにより、得られる画像の隠蔽性、耐擦性、保存安定性、吐出安定性に優れる傾向にある。固形分はインクに含まれインクの乾燥によって揮発せず、インクの乾燥後、常温で固体として記録媒体に長期にわたり残る成分であり、水、有機溶剤などを除く成分であって、主に色材、樹脂などが該当する。また、顔料インクは、顔料を0.5〜15質量%含むことが好ましく、1〜10質量%含むことがより好ましく、1〜5質量%含むことがさらに好ましい。顔料の含有量が上記範囲であることにより、画像の発色、隠蔽性が得られやすい傾向にある。
1.6.作用効果等
本実施形態のインクセットは、抜蝕インクと顔料インクとを備え、該抜蝕インクと該顔料インクとが化学的に干渉しにくい。すなわち、顔料インクが化学反応を伴わずに繊維に染着するため、抜蝕インクが酸性又はアルカリ性であり両者が布帛上に隣接または重なった状態で共存しても、化学的な相互作用が生じにくい。したがって、意図したデザインにより忠実なオパール加工及び着色を行うことができる。
このような効果について、さらに図を用いて説明する。図1は、本実施形態のインクセットの効果を説明する模式図である。図1(a)は、第1繊維10及び第2繊維20を含む布帛100に対して抜蝕と着色とを行う前の状態を示す模式図である。図1(a)において、第1領域1Aは抜蝕インク1によって第1繊維10が抜蝕されるべき領域を、第2領域2Aは顔料インク2によって第1繊維10と第2繊維20とが着色されるべき領域を示している。図1(b)は、抜蝕領域1Aに抜蝕インク1を付与し、非抜蝕かつ染着領域2Aに顔料インク2を付与した状態を模式的に示している。図1(c)は、抜蝕インク1及び顔料インク2を付与した後、加熱、洗浄を行った状態を示す模式図である。図1(c)において領域1Bは抜蝕インク1によって第1繊維1が抜蝕された領域(抜蝕部)、領域2Bは顔料インク2によって第1繊維10と第2繊維20とが着色された領域(染着部かつ非抜蝕部)を示している。
図2は、従来のインクセットの例として、抜蝕インクと反応性染料インクとを備えたインクセットによる布帛のオパール加工及び着色を説明する模式図である。図2(a)は、第1繊維10及び第2繊維20を含む布帛100に対して抜蝕と着色とを行う前の状態を示す模式図である。図1(a)において、第1領域1Aは抜蝕インク1によって第1繊維10が抜蝕されるべき領域を、第2領域3Aは反応性染料インク3によって第2繊維が染色されるべき領域を示している。図2(b)は、第1領域1Aに抜蝕インク1を付与し、第2領域3Aに前処理及び反応性染料インク3を付与した状態を模式的に示している。図2(c)は、抜蝕インク1と、前処理及び反応性染料インク3とを付与した後、蒸熱、洗浄を行った状態を示す模式図である。図2(c)において、領域1Bは抜蝕インク1によって第1繊維10が抜蝕された領域(抜蝕部)、領域3Bは反応性染料インクによって第2繊維20が着色された領域(染色部かつ非抜蝕部)を模式的に示している。周知のとおり、反応性染料インクによって染色を行う場合には、アルカリ剤による前処理が必要である。つまり、第2領域3Aには、アルカリ性の前処理インクと反応性染料インクとがこの順に付与される。順番に付与されるアルカリ性の前処理インクと反応性染料インクとをまとめて、前処理及び反応性染料インク3と称する。
第1繊維10がセルロース系繊維であり第2繊維20がポリエステル系繊維である布帛100に対して、酸性の抜蝕インクを用いた場合、本実施形態のインクセットによれば、以下のような効果が得られる。図1(a)に示すように、第1領域1Aと第2領域2Aとが隣接する柄をデザインした場合に、図1(b)に示すように第1領域1Aに抜蝕インク1を、第2領域2Aに顔料インク2を付与しても、顔料インクが酸との相互作用をしにくいため、両インクの間に化学的な相互作用が生じにくい。そのため、図1(c)に示すよ
うに、オパール加工された領域1B(抜蝕部)と着色された領域2B(染着部かつ非抜蝕部)とを、図1(a)に示したデザイン通りに形成することができる。また、抜蝕インク1の付与及び顔料インク2の付与の間に洗浄等を行う必要がないため、布帛の縮みや変形等を考慮することなく、インクジェット法によって容易に、正確な位置に、インクを付与することができる。
これに対して、第1繊維10がセルロース系繊維であり第2繊維20がポリエステル系繊維である布帛100に対して、酸性の抜蝕インクを用いた場合であって、着色用のインクとして反応性染料インクを用い、セルロース系繊維を染色する場合には、以下のような不具合が生じる。先に説明したとおり、反応性染料インクによって染色を行う場合には、アルカリ剤による前処理が必要である。よって、図2(a)に示す第2領域3Aには、アルカリ性の前処理インクが付与される。一方、第1領域1Aには酸性の抜蝕インクが付与される。図2(a)に示すように、第1領域1Aと第2領域3Aとが隣接する柄をデザインした場合に、図2(b)に示すように第1領域1Aに抜蝕インク1を、第2領域3Aに前処理及び反応性染料インク3を付与すると、両インクの間に化学的な相互作用(主に酸とアルカリの中和)が生じる。そのため、加熱及び洗浄を行うと、図2(c)に示すように、第2領域3A(図2(a)参照)の端部、すなわち染着部かつ非抜蝕部3Bの抜蝕部側に、染色されない領域X(非染色でかつ非抜蝕の領域)が発生し、また、第1領域1A(図2(a)参照)の端部、すなわち抜蝕部1Bの染色部側に、抜蝕されない領域Y(非染色でかつ非抜蝕の領域)が発生する。そのため、図2(a)に示したデザイン通りに布帛をオパール加工及び着色することができない。なお、染色されない領域X及び抜蝕されない領域Yとを合わせて、本明細書では、「白縁部」(図中、白縁部Z)と称する場合がある。
ここでは、酸性の抜蝕インクと反応性染料インクとの中和による不具合を例示しているが、アルカリ性の抜蝕インク(第1繊維はポリエステル系繊維等となる)と酸性染料インク(第2繊維は羊毛や絹などのタンパク質繊維等となる)との組み合わせにおいても同様の現象が生じる。さらに中和反応だけでなく、使用するインクの種類に従って化学的な相互作用が生じる場合には、係る例に準じた不具合が生じる。なお、抜蝕と着色の工程を分離、すなわち、抜蝕の工程を実施した後にいったん洗浄や乾燥等を行い、その後に着色の工程を実施すれば、このような現象は生じにくいが、着色の工程を実施する際に、前工程の洗浄や乾燥による布帛の縮みや変形を考慮する必要が生じ、結果として生産性の低下等を招くことになる。
このように、本実施形態のインクセットによれば、非抜蝕かつ染着領域の端部まで着色を施すことができ、意図せぬ未着色部分の縁取りを生じにくくすることができる。そのため、少なくとも2種類の繊維を含む生地(布帛)に対して、オパール加工及び着色を施す際に、模様やすかしの配置(デザイン)の制限を緩和しデザインの自由度を高めることができる。
1.7.染料インク
本実施形態のインクセットは、染料インクを含んでもよい。染料インクは、インクジェット捺染用のインクである。染料インクとしては、第1繊維及び第2繊維のうち、抜蝕インクによって溶脱されずに残る繊維を染色し得る種のものを選択する。
そのような染料インクとしては、分散染料、昇華染料、直接染料、食用染料、建染染料、可溶性建染染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料等、通常のインクジェット捺染に使用する各種染料を含むインクが挙げられる。染料インクのカラーについては、特に限定されない。
例えば、布帛に含まれる第1繊維がセルロース系繊維であり第2繊維がポリエステル系繊維である場合であって、酸性の抜蝕インクによってセルロース系繊維を溶脱する場合には、ポリエステル系繊維を染色可能な分散染料や昇華染料を含む染料インクを、インクセットに含んでもよい。また、布帛に含まれる第1繊維がポリエステル系繊維であり第2繊維がセルロース系繊維である場合であって、アルカリ性の抜蝕インクによってポリエステル系繊維を溶脱する場合には、セルロース系繊維を染色可能な反応性染料を含む染料インクを、インクセットに含んでもよい。
インクセットが染料インクを含む場合には、第1繊維の抜蝕、第1繊維及び第2繊維の顔料による染着を同時に行うことに加えて、第2繊維の染色を同時に行うことができる。このような染料インクは、領域1B(抜蝕部)に残存した第2繊維の染色だけでなく、領域2B(染着部かつ非抜蝕部)の第2繊維の染色にも適用できる。領域2Bの第2繊維は、顔料インクによって染着されるが、これをさらに染料インクによって染色することにより、顔料インクによって繊維表面が染着されるだけでなく、染色インクによって繊維の内部も染色される。よって、第2領域の発色性をより高めることが可能となる。さらに第2繊維がポリエステル系繊維である場合には、染料インクとして分散染料インク又は昇華染料インクを利用することが可能である。分散染料インクや昇華染料インクは、抜蝕インクが酸性でもアルカリ性でも抜蝕や染色に支障が生じにくいため好適であり、容易に第2繊維を発色性よく着色(染色)することができる。
染料インクは、公知の成分及び組成のものを用いることができ、必要に応じて上述した抜蝕インクの抜蝕剤以外の成分を適宜に含有することができる。なお染料インクにおける染料の含有量についても、適宜設定することができ特に限定されないが、例えば、染料インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下とすることができる。
1.8.その他のインク
本実施形態のインクセットは、上述の抜蝕インク、顔料インク、染料インク等のインクをそれぞれ複数含んでもよい。また、着色用のインクにあっては、各色のインクをそれぞれ含んでもよい。さらにインクセットには、必要に応じて括りインク、オーバーコート用のインク、前処理インク等、適宜のインクを含めてもよい。
1.9.インクの調製
本実施形態のインクセットに含まれる各インク(上述した抜蝕インク、顔料インク、染料インク等)は、所定の成分を混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
1.10.インクの物性
本実施形態のインクセットの各インクは、インクジェット用に用いることのできる物性を有する。インクジェット用のインクとしての観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上40mN/mであることが好ましく、23mN/m以上38mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、例えば、自動表面張力計CBVP−Z(商品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
また、同様の観点から、各インクの20℃における粘度は、1.5mPa・s以上20mPa・s以下であることが好ましく、2mPa・s以上10mPa・s以下であることがより好ましい。なお、粘度の測定は、例えば、粘弾性試験機MCR−300(商品名、
Pysica社製)を用いて、20℃の環境下での粘度を測定することができる。
2.オパール加工布帛の製造方法
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、抜蝕剤によって溶脱する第1繊維(溶脱繊維)と、前記抜蝕剤によって溶脱しない第2繊維(非溶脱繊維)とを含む布帛に適用される。本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、布帛を準備する工程と、抜蝕インクを布帛の第1領域に付与する工程と、顔料インクを布帛の第2領域に付与する工程と、布帛を加熱する工程と、布帛を洗浄する工程と、を有する。係る製造方法で製造されるオパール加工布帛は、布帛の一部に、オパール加工が行われることによって形成された第1領域と、顔料インクによって染着された第2領域を有する。以下、本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法について、各工程を説明する。なお、本実施形態では、顔料インクを第2領域に付与しているが、顔料インクを第1領域と第2領域の両方に付与しても良い。顔料インクは、第1繊維及び第2繊維の両方を染着することが可能である。よって、第1領域と第2領域の両方に顔料インクを付与すれば、顔料インクによって染着された第1及び第2領域を有するオパール加工布帛を得ることができる。
2.1.布帛準備工程
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、布帛準備工程を有する。布帛準備工程は、オパール加工及び染着が実施されていない上述した布帛を準備する工程である。以下では、第1繊維としてセルロース系繊維、第2繊維としてポリエステル系繊維を含む布帛である場合について述べる。
2.2.抜蝕インクを布帛の第1領域に付与する工程
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、上述の抜蝕インクを布帛の第1領域に付与する工程を有する。本工程は、抜蝕インクを布帛の一部の領域である第1領域にインクジェット法により付着させる工程である。本工程を経た後、加熱工程、洗浄工程を経ることにより、第1領域の第1繊維が溶脱されてオパール加工される。したがって、最終的に得られるオパール加工布帛の第1領域には、抜蝕剤で溶脱しない第2繊維が存在することとなる。第1領域の形状等は何ら限定されず、所定のデザインに従って適宜設定される。
2.3.顔料インクを布帛の第2領域に付与する工程
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、上述の顔料インクをインクジェット法により布帛の第1領域以外の第2領域に付与する工程を有する。本工程は、第1領域以外の第2領域に上述の顔料インクを付着させる工程である。本工程を経た後、加熱工程、洗浄工程を経ることにより、第2領域の第1繊維及び第2繊維が染着されて着色される。
したがって、最終的に得られるオパール加工布帛の第2領域は、第1繊維及び第2繊維が共に染着され、着色されることとなる。第2領域の形状等は何ら限定されず、所定のデザインに従って適宜設定される。なお、先に説明したとおり、この工程において、顔料インクを第1領域と第2領域の両方に付与しても良い。第1領域と第2領域の両方に顔料インクを付与すれば、第2領域の第1及び第2繊維と、第1領域の第2繊維とが染着されて着色される。
抜蝕インクを付与する工程と、顔料インクを付与する工程とは、例えば、インクジェット記録装置の記録ヘッドの異なるノズル列のノズルからそれぞれ吐出され、一度のキャリッジの走査によりほぼ同時に布帛に付与されてもよい。また、抜蝕インクを付与する工程と、顔料インクを付与する工程とは、時間的に間隔をおいて行われてもよい。さらに工程の順序も限定されない。
また、抜蝕インクを付与する工程及び顔料インクを付与する工程は、洗浄工程の前に行われる。そのため、加工する布帛の第1領域に抜蝕インクが存在し、かつ、布帛の少なくとも第2領域に顔料インクが存在する状態が形成される。第1領域及び第2領域は、隣接している必要はないが、第1領域と第2領域とが隣接したデザインであっても、本実施形態の製造方法によれば、抜蝕インクと顔料インクとが化学的に干渉しにくいため、第2領域の端まで着色され、未着色の領域が少ないオパール加工布帛を製造することができる。したがって、本実施形態の製造方法によれば、意図せぬ縁取りが生じにくいため、少なくとも2種類の繊維を含む生地(布帛)に対して、オパール加工及び着色のデザインの自由度を高めることができる。
2.4.布帛を加熱する工程
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、布帛を加熱する工程(加熱工程)を含む。加熱工程は、布帛に付着させた抜蝕インク及び顔料インクに対して加熱処理を行う工程である。これにより、第1領域に存在する第1繊維の破壊が進行して繊維の灰化が生じ、かつ、第2領域(第1領域にも顔料インクを付与した場合は第1及び第2領域)において顔料インクの定着が生じる。
布帛を加熱する工程は、例えば、熱源を布帛に接触させて布帛に直接熱を加える手段、温風を吹きつける手段、さらにそれらを組み合わせる手段等を用いて行うことができる。具体的には、アイロンがけ、ヒートプレスによる加熱、強制空気加熱、輻射加熱、電導加熱、高周波乾燥、マイクロ波加熱等が好ましく用いられる。
加熱工程の温度や時間は、第1繊維の灰化の進行及び布帛のダメージの低減を両立可能とする観点及び顔料インクの定着が達成される範囲に適宜に設定される。また、加熱工程の温度や時間は、布帛に含まれる繊維の種類、抜蝕剤の種類、抜蝕剤の添加量、顔料インクの種類等によって適宜に調節され得る。
布帛を加熱する工程(加熱工程)は、布帛を水蒸気に曝す処理を含む湿熱処理工程であることが好ましい。湿熱処理工程は、特に、抜蝕加工を行う際、及び、分散染料、反応性染料、酸性染料による染色を行う際に大変有効である。湿熱処理工程は、従来公知の方法を用いることができ、例えば、HT法(高温スチーミング法)、HP法(高圧スチーミング法)等にて行うことができる。湿熱処理工程の温度や時間は、溶脱の進行および布帛のダメージの低減を両立可能な範囲に設定される。また湿熱処理工程の温度や時間は、布帛に含まれる繊維の種類、染料の種類、添加量等によって適宜に調節され得る。
2.5.布帛を洗浄する工程
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、加熱工程の後に、布帛を洗浄する洗浄工程を有する。洗浄工程では灰化した第1繊維を除去することができる。また、洗浄工程で未染着の顔料の洗浄を兼ねてもよい。洗浄工程は、水を用いて行ってもよいし(以下、「水洗処理」ともいう。)、水および界面活性剤(熱石鹸等)を含有する水溶液を用いて行ってよいし(以下、「ソーピング処理」ともいう。)、両処理を併用してもよい。
また、洗浄工程は、溶脱した第1繊維を一層効果的に除去することを目的として、ウォータージェット処理を含んでもよい。ウォータージェット処理は、水圧で強制的に溶脱した繊維を除去するものであって、公知の方法で実施できる。
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法では、洗浄工程の後に、布帛を乾燥させる布帛乾燥工程を有していてもよい。布帛乾燥工程は、例えば、上述した加熱工程で例示した手段を用いて加熱して行うことができるので、その説明を省略する。
また、本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法は、括りインク付与工程を有していてもよい。括りインク付与工程とは、括りバインダーを含有する括りインクを付与する工程であり、第1繊維が残存する領域(非抜蝕部)の縁の第1繊維のほつれを抑制することができる。括りバインダーとしては、従来公知の成分を用いることができる。括りインクの付与は、パッド法、コーティング法、スプレー法、インクジェット法等のいずれの方法も使用できる。
2.6.その他の工程
本実施形態に係るオパール加工布帛の製造方法では、染料インクを布帛の少なくとも第1領域に付与する工程を含んでもよい。本工程は、上述の染料インク(抜蝕インクとの化学的相互作用の少ない染料インク)を布帛の少なくとも第1領域にインクジェット法により付着させる工程である。本工程を経た後、加熱工程(必要に応じてスチームを付与)、洗浄工程を経ることにより、第2繊維が染色されて着色される。染料インクを付与する工程を含む場合には、最終的に得られるオパール加工布帛の少なくとも第1領域に、抜蝕剤で溶脱しない第2繊維が染色された状態で存在することとなる。
染料インクを付与する工程は、抜蝕インクを付与する工程や顔料インクを付与する工程と同様に、例えば、インクジェット記録装置の記録ヘッドの異なるノズル列のノズルから染料インクを吐出し、一度のキャリッジの走査により他のインクとほぼ同時に布帛に付与されてもよい。また、染料インクを付与する工程は、抜蝕インクを付与する工程や顔料インクを付与する工程と同様に、互いに時間的に間隔をおいて行われてもよい。さらに工程の順序も限定されない。
また、染料インクを付与する工程を行う場合に、該工程は、洗浄工程の前に行われる。そのため、加工する布帛に抜蝕インク、顔料インク及び染料インクのいずれもが存在する状態が形成される。本実施形態の製造方法が染料インクを付与する工程を含む場合には、少なくとも第1領域の第2繊維が染料インクによって染色され、第1領域の発色性が良好なオパール加工布帛を製造することができる。また、染料インクは、第1領域だけでなく、第2領域にも付与することが可能である。この場合は、染料インクによって第2領域の第2繊維をも染色することができる。第2領域の第2繊維に対して、顔料インクと染料インクの両方を付与すれば、顔料インクによって繊維表面が染着されるだけでなく、染色インクによって繊維の内部も染色されるため、第2領域の発色性がより高いオパール加工布帛を製造することができる。
2.7.作用効果等
本実施形態のオパール加工布帛の製造方法によれば、抜蝕インクと顔料インクとが化学的に干渉しにくいため、第1領域と第2領域とが隣接していたとしても、第2領域の端まで着色され、未着色の領域が少ないオパール加工布帛を製造することができる。また係る製造方法によれば、意図せぬ縁取りが生じにくいため、少なくとも2種類の繊維を含む生地(布帛)に対して、オパール加工及び着色のデザインの自由度を高めることができる。
3.実施例
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
3.1.インクの調製
実施例、比較例に用いた抜蝕インク、顔料インク、分散染料インク、昇華染料インク、反応性染料インク、及び前処理インク(アルカリ剤)は、以下のように作製した。
表1の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合
および攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過することで、抜蝕インク、顔料インク、染料インクを得た。なお、表5中の数値は、質量%を示し、イオン交換水は各インクの質量がそれぞれ100質量%となるように添加した。
表1中、化合物名で記載した成分は、試薬として入手し、商品名は、下記の通りである
。SBラテックス0568(JSR株式会社製、スチレン・ブタジエン系定着剤)、オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製、アセチレングリコール系界面活性剤)プロキセルXL2(ゼネカ社製、1,2−ジベンゾイソチアゾリン−3−オン)、顔料(Pigment Blue 15:3)、分散染料(C.I.Disperse Blue 60)、昇華染料(Disperse Blue 359)、反応性染料(C.I.Reactive Blue 15:1)。
3.2.評価試験
以下の評価試験には、次のように調整したインクジェットプリンターを用いて行った。まず、表1に示す各インクをインクジェットプリンターPM−G800(商品名、セイコーエプソン株式会社製)の専用カートリッジのインク室にそれぞれ充填した。そして、カートリッジを上記プリンターに装着して、ノズルに各インクを供給した。評価に用いた布帛は、商品名「オパールサテンNo.9017」(蝶理株式会社製、素材:ポリエステル45%、レーヨン55%)である。そして上記のプリンターを用いて、表2に示すように、実施例1〜5、比較例1〜4のオパール加工布帛を作製した。なお各実施例、各比較例において、第1領域1Aと第2領域2A,3Aは、図1(a)、及び図2(a)に示すような態様で、隣接するように配置した。
実施例1のオパール加工布帛は、次のようにして作製した。まず、上記プリンターのノズルから吐出させた顔料インクを第2領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた抜蝕インクを第1領域に付着させた。その後、170℃で10分間ヒートプレスを行った後(加熱工程)、界面活性剤(ラッコールSTA)を含有する水溶液を用いて85℃で10分間洗浄して(洗浄工程)、60℃で30分間乾燥させた。このようにして、第1領域のオパール加工と、第2領域の着色(染着)とが施されたオパール加工布帛を得た。
実施例2のオパール加工布帛は、次のようにして作製した。まず、上記プリンターのノズルから吐出させた抜蝕インクを第1領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた顔料インクを第1領域及び第2領域に付着させた。その後、170℃で10分間ヒートプレスを行った後(加熱工程)、界面活性剤(ラッコールSTA)を含有する水溶液を用いて85℃で10分間洗浄して(洗浄工程)、60℃で30分間乾燥させた。このようにして、第1領域のオパール加工と、第2領域及び第1領域の着色(染着)とが施されたオパール加工布帛を得た。
実施例3のオパール加工布帛は、次のようにして作製した。まず、上記プリンターのノズルから吐出させた顔料インクを第2領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた抜蝕インクを第1領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた分散染料インクを第1領域に付着させた。その後、170℃で10分間スチーミングを行った後(加熱工程にスチームを追加)、還元剤(ハイドロサルファイトナトリウム)とアルカリ剤(水酸化ナトリウム)と界面活性剤(ラッコールSTA)を含有する水溶液を用いて85℃で10分間洗浄して(還元洗浄工程)、60℃で30分間乾燥させた(乾燥工程)。このようにして、第1領域のオパール加工と、第2領域の着色(染着)と、第1領域の着色(染色)とが施されたオパール加工布帛を得た。
実施例4のオパール加工布帛は、次のようにして作製した。まず、上記プリンターのノズルから吐出させた顔料インクを第2領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた抜蝕インクを第1領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた昇華染料インクを第1領域に付着させた。その後、170℃で10分間ヒートプレスを行った後(加熱工程)、還元剤(ハイドロサルファイトナトリウム)とアルカリ剤(水酸化ナトリウム)と界面活性剤(ラッコールSTA)を含有する水溶液を用いて85℃で10分間洗浄して(還元洗浄工程)、60℃で30分間乾燥させた。このようにして、第1領域のオパール加工と、第2領域の着色(染着)と、第1領域の着色(染色)とが施されたオパール加工布帛を得た。
実施例5のオパール加工布帛は、次のようにして作製した。まず、上記プリンターのノズルから吐出させた抜蝕インクを第1領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた顔料インクを第2領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた顔料インクを第1領域に付着させた。その後、170℃で10分間ヒートプレスを行った後(加熱工程)、界面活性剤(ラッコールSTA)を含有する水溶液を用いて85℃で10分間洗浄して(洗浄工程)、60℃で30分間乾燥させた。このようにして、第1領域のオパール加工と、第2領域及び第1領域の着色(染着)とが施されたオパール加工布帛を得た。
比較例1のオパール加工布帛は、次のようにして作製した。まず、上記プリンターのノズルから吐出させた前処理インクを第2領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた反応性染料インクを第2領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた抜蝕インクを第1領域に付着させた。その後、170℃で10分間ス
チーミングを行った後(加熱工程にスチームを追加)、界面活性剤(ラッコールSTA)を含有する水溶液を用いて85℃で10分間洗浄して(還元洗浄工程)、60℃で30分間乾燥させた(乾燥工程)。このようにして、第1領域のオパール加工と、第2領域の着色(染色)とを意図したオパール加工布帛を得た。
比較例2のオパール加工布帛は、次のようにして作製した。まず、上記プリンターのノズルから吐出させた前処理インクを第2領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた反応性染料インクを第2領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた抜蝕インクを第1領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた分散染料インクを第2領域に付着させた。その後、170℃で10分間スチーミングを行った後(加熱工程にスチームを追加)、界面活性剤(ラッコールSTA)を含有する水溶液を用いて85℃で10分間洗浄して(還元洗浄工程)、60℃で30分間乾燥させた(乾燥工程)。このようにして、第1領域のオパール加工と、第2領域の着色(染色)とを意図したオパール加工布帛を得た。
比較例3のオパール加工布帛は、次のようにして作製した。まず、上記プリンターのノズルから吐出させた前処理インクを第2領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた反応性染料インクを第2領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた抜蝕インクを第1領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた分散染料インクを第1領域に付着させた。その後、170℃で10分間スチーミングを行った後(加熱工程にスチームを追加)、界面活性剤(ラッコールSTA)を含有する水溶液を用いて85℃で10分間洗浄して(還元洗浄工程)、60℃で30分間乾燥させた(乾燥工程)。このようにして、第1領域のオパール加工及び着色(染色)と、第2領域の着色(染色)とを意図したオパール加工布帛を得た。
比較例4のオパール加工布帛は、次のようにして作製した。まず、上記プリンターのノズルから吐出させた前処理インクを第2領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた反応性染料インクを第2領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた抜蝕インクを第1領域に付着させた。次に、上記プリンターのノズルから吐出させた分散染料インクを第1領域及び第2領域に付着させた。その後、170℃で10分間スチーミングを行った後(加熱工程にスチームを追加)、界面活性剤(ラッコールSTA)を含有する水溶液を用いて85℃で10分間洗浄して(還元洗浄工程)、60℃で30分間乾燥させた(乾燥工程)。このようにして、第1領域のオパール加工及び着色(染色)と、第2領域の着色(染色)とを意図したオパール加工布帛を得た。
このようにして得られた各例のオパール加工布帛を目視にて観察して、第1領域及び第2領域の境界部分の白縁部の有無、第2領域の発色性、第2領域の表面と裏面における色の違い(色ズレ)の有無を判定して、表2に記載した。
3.3.評価結果
実施例のオパール加工布帛は、いずれも白縁部を生じなかった。これは、第2領域に付与された顔料インクが第1領域に付与された抜蝕インクと化学的に相互作用しないためと考えられる。すなわち、実施例のオパール加工布帛に使用した顔料インクは、抜蝕インクに接触しても、抜蝕インクの溶脱能力を低下させることがなく、かつ、顔料インクの染着能力も低下しないためと考えられる。
一方、反応性染料インク(前処理インク)を使用した比較例のオパール加工布帛は、いずれも、白縁部が生じた。これは、第2領域に付与された反応性染料インクのための前処理インクが第1領域に付与された抜蝕インクと化学的に相互作用したためと考えられる。すなわち、実施例のオパール加工布帛に使用した前処理インクは、アルカリ剤を含むため
、抜蝕インクに接触して中和反応が生じたものと考えられる。そのため、抜蝕インクの溶脱能力が低下し、かつ、反応性染料インクの染色能力も低下したためと考えられる。
実施例3のオパール加工布帛では、第1領域のポリエステル系繊維を分散染料インクによって染色しているため、スチーム処理を施したが、他の実施例では、いずれもスチームを必要とすることなく第2領域を良好に着色できた。これに対して、比較例のオパール加工布帛は、いずれもスチーム処理が必要である。
なお、実施例1、2、4、及び5では、スチーム処理を行わなかったが、スチーム処理を行っても良いと考えられる。スチーム処理を行えば、加熱工程を、より低温あるいはより短時間で行うことができると考えられる。
また、実施例1〜5では、布帛の表面と裏面とで、色の違いが認められなかった。これに対し、比較例2及び4では、布帛の表面と裏面とで、色の違いが認められた。実施例1〜5では、第2領域のセルロース系繊維及びポリエステル系繊維を、同じ顔料インクによって着色(染着)しているのに対し、比較例2及び4では、第2領域のセルロース系繊維を反応性染料インクで染色し、ポリエステル系繊維を分散染料インクによって染色している。同一箇所の繊維に対して、ほぼ同じ色の染料インクを使用したとしても、反応性染料インクと分散染料インクとでは染料の構造が大きく異なるため、布帛の表面と裏面とで色の違いが生じたと考えられる。なお、比較例1及び3では第2領域のセルロース系繊維を反応性染料インクで染色しているだけである。よって、比較例2及び4のように、第2領域における布帛表裏の色ずれは生じなかった。しかし、比較例1及び3では第2領域のポリエステル系繊維を染色しなかったため、第2領域の着色が不十分となり、その結果、第2領域の発色性が不足した。
実施例5のオパール加工布帛は、白縁部の発生は無く、第2領域の発色性が良好で、かつ、表面と裏面での色ズレもなく、実施例2と同様に優れた評価結果となった。その上、第1領域と第2領域の境界のキレ(シャープさ)(目視による比較)が他の実施例2よりも良好であった。これは、実施例2では、抜蝕インクを第1領域に付着、顔料インクを第1及び第2領域に付着、の順であったのに対し、実施例5では、抜蝕インクを第1領域に付着、顔料インクを第2領域に付着、顔料インクを第1領域に付着、の順であったことが一因であると考えられる。
すなわち、実施例2では、第1領域に対して連続して抜蝕インクと顔料インクとが付与されるのに対し、実施例5では、第1領域に対して抜蝕インクを付与する工程と、第1領域に対して顔料インクを付与する工程との間に、第2領域に対して顔料インクを付与する工程が設けられている。つまり、実施例5では、第1領域に対して抜蝕インクが付与された後、暫く時間をおいてから、第1領域に対して顔料インクが付与される。実施例2では、抜蝕インクが第1領域に十分浸透しきらないうちに、顔料インクが付与されたことで、インクの滲みが生じた可能性がある。一方、実施例5では、抜蝕インクが第1領域に十分浸透し、ある程度乾燥した後に、顔料インクが付与されたことで、滲みが軽減され、第1領域と第2領域の境界がよりシャープな印象となったと考えられる。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
100…布帛、1…抜蝕インク、2…顔料インク、3…反応性染料インク、10…第1繊維(溶脱繊維)、20…第2繊維(非溶脱繊維)、1A…第1領域、2A,3A…第2領域、1B…抜蝕部、2B,3B…染着部かつ非抜蝕部、X…染色されない領域、Y…抜蝕されない領域、Z…白縁部

Claims (10)

  1. 第1繊維及び第2繊維を含む布帛に対してインクジェット法にてオパール加工及び着色を行うためのインクセットであって、
    前記第1繊維を溶脱させることができ、前記第2繊維を溶脱させることができない抜蝕剤を含有する抜蝕インクと、
    前記第1繊維及び前記第2繊維を染着可能な顔料を含有する顔料インクと、
    を備えた、インクセット。
  2. 請求項1において、
    前記第1繊維は、セルロース系繊維である、インクセット。
  3. 請求項2において、
    前記抜蝕剤は、硫酸水素ナトリウム、硫酸アルミニウム及び硫酸アンモニウムの少なくとも一種である、インクセット。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
    前記第2繊維を染色する染料を含有する染料インクをさらに備えた、インクセット。
  5. 請求項4において、
    前記第2繊維はポリエステル系繊維であり、前記染料は分散染料又は昇華染料である、インクセット。
  6. 抜蝕剤によって溶脱する第1繊維と前記抜蝕剤によって溶脱しない第2繊維とを含む布帛を準備する工程と、
    前記抜蝕剤を含有する抜蝕インクをインクジェット法により前記布帛の第1領域に付与する工程と、
    顔料を含有する顔料インクをインクジェット法により前記布帛の少なくとも前記第1領域以外の第2領域に付与する工程と、
    前記布帛を加熱する工程と、
    前記布帛を洗浄する工程と、
    を有する、オパール加工布帛の製造方法。
  7. 請求項6において、
    前記第1繊維は、セルロース系繊維である、オパール加工布帛の製造方法。
  8. 請求項7において、
    前記抜蝕剤は、硫酸水素ナトリウム、硫酸アルミニウム及び硫酸アンモニウムの少なくとも一種である、オパール加工布帛の製造方法。
  9. 請求項6ないし請求項8のいずれか一項において、
    染料を含有する染料インクをインクジェット法により少なくとも前記第1領域に付与する工程をさらに有する、オパール加工布帛の製造方法。
  10. 請求項9において、
    前記第2繊維はポリエステル系繊維であり、前記染料は分散染料又は昇華染料である、オパール加工布帛の製造方法。
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