JP2016160226A - 動物の軟骨からプロテオグリカンを調製する方法 - Google Patents

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【課題】 調製の途中でのプロテオグリカンの分解や変性を抑制するとともに、夾雑タンパク質の混入を抑制して、動物の軟骨からプロテオグリカンを効率的に調製する方法を提供すること。【解決手段】 エタノール中で動物の軟骨を破砕した後、溶出溶媒として濃度が0.5M以上の塩化マグネシウム水溶液を用いて軟骨破砕物からプロテオグリカンを溶出させることによる。【選択図】 図1

Description

本発明は、動物の軟骨からプロテオグリカンを調製する方法に関する。
プロテオグリカンは、コラーゲンやヒアルロン酸とともに動物の軟骨を構成する主成分であり、保水性に優れるといった作用を有することから、近年、その需要が高まっている。従って、プロテオグリカンを化粧品や飲食品などの様々な製品の配合成分として安価で安定に供給するための、動物の軟骨からプロテオグリカンを効率的に調製する方法の確立が産業界において期待されている。しかしながら、動物の軟骨からプロテオグリカンを調製するためには、プロテオグリカンは軟骨中でコラーゲンやヒアルロン酸と相互作用し合っているので、こうした相互作用からプロテオグリカンを開放して溶出溶媒に溶出させる必要があるが、この際、プロテオグリカンの分解や変性を抑制するとともに、軟骨由来のタンパク質の混入を抑制するのは容易でない。例えば特許文献1では、溶出溶媒として酢酸を用いてサケの鼻軟骨からプロテオグリカンを溶出させる方法が提案されているが、この方法によっては、酢酸中へのプロテオグリカンの溶出量が少ないことに加え、調製の途中でプロテオグリカンの分解が起こることを本発明者らは確認している。また、動物の軟骨からプロテオグリカンを溶出させる標準的な方法として、溶出溶媒としてグアニジン塩酸水溶液を用いる方法が知られているが、この方法によっては、プロテオグリカンの変性を伴うことや、溶出されたプロテオグリカンとグアニジン塩酸の分離が困難であることが知られている。さらに、動物の軟骨からプロテオグリカンを溶出させる古典的な方法として、溶出溶媒として熱水を用いる方法も知られているが、この方法によっては、プロテオグリカンの分解が起こることや、溶出されたプロテオグリカンとの分離が困難な夾雑タンパク質が多量に混入することが知られている。
特許第3731150号公報
そこで本発明は、調製の途中でのプロテオグリカンの分解や変性を抑制するとともに、夾雑タンパク質の混入を抑制して、動物の軟骨からプロテオグリカンを効率的に調製する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは上記の点に鑑みて鋭意検討を行った結果、エタノール中で動物の軟骨を破砕した後、溶出溶媒として所定の濃度以上の塩化マグネシウム水溶液を用いて軟骨破砕物からプロテオグリカンを溶出させることで、調製の途中でのプロテオグリカンの分解や変性を抑制するとともに、夾雑タンパク質の混入を抑制して、プロテオグリカンを効率的に調製することができることを知見した。
以上の知見に基づいてなされた本発明のプロテオグリカンの調製方法は、請求項1記載の通り、エタノール中で動物の軟骨を破砕した後、溶出溶媒として濃度が0.5M以上の塩化マグネシウム水溶液を用いて軟骨破砕物からプロテオグリカンを溶出させることによるものである。
また、本発明の軟骨破砕物は、請求項2記載の通り、エタノール中で動物の軟骨を破砕することで得られるものである。
本発明によれば、調製の途中でのプロテオグリカンの分解や変性を抑制するとともに、夾雑タンパク質の混入を抑制して、動物の軟骨からプロテオグリカンを効率的に調製する方法を提供することができる。本発明の方法は、プロテオグリカンを調製するために用いる物質がエタノールと塩化マグネシウムだけであるので、プロテオグリカンの調製コストが安価である。
実施例1における、各種の溶出溶媒を用いて得たプロテオグリカンの溶出量と夾雑タンパク質の混入量を示すグラフである。 同、各種の溶出溶媒を用いて得たプロテオグリカンの平均分子量を示すグラフである。 同、各種の溶出溶媒を用いて得たプロテオグリカンに含まれるアグリカンのコアタンパクのG1ドメインとG3ドメインに対する抗体反応の結果である。 参考例1における、溶出溶媒として各種の濃度の塩化マグネシウム水溶液を用いて得たプロテオグリカンの溶出量と夾雑タンパク質の混入量を示すグラフである(溶出溶媒として緩衝液を用いて得たプロテオグリカンの溶出量と夾雑タンパク質の混入量に対する相対量)。
本発明のプロテオグリカンの調製方法は、エタノール中で動物の軟骨を破砕した後、溶出溶媒として濃度が0.5M以上の塩化マグネシウム水溶液を用いて軟骨破砕物からプロテオグリカンを溶出させることによるものである。
本発明のプロテオグリカンの調製方法においては、まず、エタノール中で動物の軟骨を破砕して軟骨破砕物を得る。原料として用いる動物の軟骨は、サケやマスやサメなどの魚類の軟骨(例えば頭部由来のもの)が、天然資源の有効利用の観点などから好適であるが、ウシやクジラなどの哺乳類の軟骨を原料として用いてもよい。エタノール中での軟骨の破砕は、例えば、軟骨に対して1〜50倍量のエタノールを用い、1〜40℃の温度条件下、ホモジナイザーを用いて軟骨を10秒間〜3分間ホモジナイズすることにより、軟骨が50μm以下の大きさの粒子になるまで行うことが望ましい。軟骨に含まれるプロテオグリカンに対して分解や変性を引き起こすおそれがない温度条件下で、軟骨をこうした大きさの粒子になるまでエタノール中で破砕することで、プロテオグリカンを含む軟骨の表面積が全体として増加し、後の工程でプロテオグリカンを効率的に溶出させることができる(即ち、この工程はエタノールを溶出溶媒として用いて軟骨からプロテオグリカンを溶出させることを目的とするものではない)。また、エタノール中で軟骨の破砕を行うことには、水分を含む軟骨を脱水することができることで、プロテオグリカンが軟骨に含まれる加水分解酵素によって分解されることを抑制することができるといった利点や、軟骨を脱脂することができるといった利点もある。また、エタノールは、プロテオグリカンに対して分解や変性を引き起こすおそれがなく、食品衛生上の問題もない。水中で軟骨を破砕した場合、軟骨が溶けて、後の工程でプロテオグリカンを効率的に溶出させるためのプロテオグリカンを保持した粒子が得られず、プロテオグリカンと夾雑タンパク質が混在する溶液が得られる、プロテオグリカンが軟骨に含まれる加水分解酵素によって分解される、軟骨を脱脂できないといった問題や不都合がある。以上の点に鑑みれば、この工程において用いるエタノールは、無水である必要は必ずしもないが、その含水量はできる限り少ないことが望ましい(最大で5%。3%以下が望ましく、2%以下がより望ましく、1%以下がさらに望ましい)。なお、エタノール中での軟骨の破砕は、軟骨破砕物に含まれる粒子の50%以上(望ましくは70%以上)が2〜10μmの大きさになるまで行うのがよい。この工程で得られた軟骨破砕物は、乾燥させることで保存安定性を高めることができる。
次に、溶出溶媒として濃度が0.5M以上の塩化マグネシウム水溶液を用い、上記の工程で得られた軟骨破砕物からプロテオグリカンを溶出させる。塩化マグネシウムは中性の金属塩であるので、水溶液中でプロテオグリカンに対して分解や変性を引き起こすおそれがない。溶出溶媒として用いる塩化マグネシウム水溶液の濃度を0.5M以上と規定するのは、0.5M未満であると夾雑タンパク質の混入量が増加するからである。塩化マグネシウム水溶液の濃度は1M以上が望ましく、2M以上がより望ましい。なお、塩化マグネシウムの水への溶解度を考慮すれば、塩化マグネシウム水溶液の濃度の上限は5Mが望ましい。塩化マグネシウム水溶液は、プロテオグリカンの溶出効率に鑑みれば、軟骨破砕物に対して10〜1000倍量用いることが望ましく、また、pHが6.5〜8.0であって、温度が1〜40℃であることが、酸やアルカリ、熱といった要因でプロテオグリカンが分解や変性することを抑制することができる点において望ましい。軟骨破砕物から塩化マグネシウム水溶液中へのプロテオグリカンの溶出は、例えば、1時間〜5日間、振盪撹拌することを、1〜複数回行えばよい。
以上の方法によって得られたプロテオグリカンの溶出液は、エタノール沈殿を行って塩化マグネシウムを脱塩した後、沈殿したプロテオグリカンを水に溶解し、水溶液の形態でプロテオグリカンを各種の用途に供することができる。塩化マグネシウムはエタノールによく溶けるので、プロテオグリカンとの分離を効果的に行うことができる。また、プロテオグリカンの水溶液を例えば凍結乾燥して脱水することで、粉末の形態でプロテオグリカンを各種の用途に供してもよい。なお、プロテオグリカンを精製するため、イオン交換樹脂や非イオン性吸着樹脂などを用いたクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、活性炭やアルミナやシリカゲルなどの吸着剤によるクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィーなどの自体公知の精製操作を適宜用いてもよい。
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は以下の記載に限定して解釈されるものではない。
実施例1:
(1)サケの鼻軟骨を原料として用いてその破砕物を得る工程
生のサケの頭部から摘出した鼻軟骨を5〜10mm程度の大きさに切り刻んだ後、10倍容のエタノール(含水量は約1%、以下同じ)に投入し、4℃で3時間、撹拌することで脱水及び脱脂した。この操作をもう一度繰り返した後、得られた軟骨片を乾燥させた。次に、この乾燥軟骨片2gを15mLのエタノールに投入し、ローターステーター型ホモジナイザー(ヒスコトロンNS−100:マイクロテック・ニチオン社)を用い、4℃で1000rpmで60秒間ホモジナイズした後、濾紙で濾過し、濾紙上の軟骨破砕物を乾燥させた。得られた乾燥軟骨破砕物(乳白色粉末)を顕微鏡で観察したところ、2〜35μmの大きさの粒子からなり、平均の大きさは7μmであって、粒子の大部分(約80%)が2〜10μmの大きさであった。この乾燥軟骨破砕物1gに含まれるウロン酸量(カルバゾール−硫酸法による、以下同じ)は150mgであった。なお、15mLの蒸留水を用いて乾燥軟骨片2gを上記と同じ条件でホモジナイズしたところ、乾燥軟骨片が溶けてしまい、15mLのエタノールを用いて乾燥軟骨片2gをホモジナイズすることで得られた大きさの粒子からなる乾燥軟骨破砕物は得られず、プロテオグリカンと大量のコラーゲンを含む夾雑タンパク質が混在する溶液が得られた。
(2)軟骨破砕物からプロテオグリカンを溶出させる工程
工程(1)で得たサケの鼻軟骨の乾燥破砕物300mgを、溶出溶媒としての4Mの塩化マグネシウム水溶液(0.1M Tris−HCl緩衝液(pH7.3)に溶解、以下同じ)20mLに投入し、37℃で振盪撹拌することで軟骨破砕物からプロテオグリカンを溶出させた。24時間後に遠心分離によって上清を回収し、残渣に対して4Mの塩化マグネシウム水溶液20mLを加え、37℃で振盪撹拌することで残渣からプロテオグリカンを溶出させた。この操作をもう一度繰り返した後、24時間ごとに回収した上清(溶出液)について、ウロン酸量とタンパク質量(ブラッドフォード法による、以下同じ)を測定した。結果を図1に示す。なお、図1には、溶出溶媒として、緩衝液(0.1M Tris−HCl緩衝液(pH7.3)、以下同じ)、4%の酢酸水溶液、6Mの尿素水溶液(0.1M Tris−HCl緩衝液(pH7.3)に溶解、以下同じ)、4Mのグアニジン塩酸水溶液(0.1M Tris−HCl緩衝液(pH7.3)に溶解、以下同じ)のそれぞれを用いて同じ条件で実験を行った結果をあわせて示す。図1から明らかなように、溶出溶媒として4Mの塩化マグネシウム水溶液を用いた場合、溶出溶媒として6Mの尿素水溶液と4Mのグアニジン塩酸水溶液を用いた場合に匹敵する量のプロテオグリカンを溶出させることができた(ウロン酸量の比較による)。一方、溶出溶媒として4Mの塩化マグネシウム水溶液を用いた場合における夾雑タンパク質の混入量は、溶出溶媒として6Mの尿素水溶液と4Mのグアニジン塩酸水溶液を用いた場合に比較して遥かに少なかった(タンパク質量の比較による。但しブラッドフォード法を採用しているためこの方法で検出することができないコラーゲン量は反映されていない)。溶出溶媒として4%の酢酸水溶液を用いた場合、溶出溶媒として4Mの塩化マグネシウム水溶液を用いた場合に比較して、夾雑タンパク質の混入量は遥かに少なかったが、プロテオグリカンの溶出量も少なかった。溶出溶媒として緩衝液を用いた場合、溶出溶媒として4Mの塩化マグネシウム水溶液を用いた場合に比較して、プロテオグリカンの溶出量も夾雑タンパク質の混入量も少なかった。なお、溶出溶媒として4Mの塩化マグネシウム水溶液を用いて得たプロテオグリカンの溶出液は、エタノール沈殿を行って脱塩した後、50mMのTris−HCl緩衝液(pH7.4)で平衡化した陰イオン交換カラム(DEAE Sepharose,2.7×30cm,GE Healthcare Japan社)に供し、0〜1Mの塩化ナトリウムの直線濃度勾配によりプロテオグリカン画分を溶出させ(およそ0.5Mの塩化ナトリウムでプロテオグリカン画分が溶出される)、得られたプロテオグリカン画分をAmicon Ultra(Millipore社、以下同じ)を用いて限外ろ過することにより脱塩することでプロテオグリカンの水溶液を得て、−20℃において保存し、以下の性状分析に用いた。
本発明の方法で得られるプロテオグリカンの性状(その1)
実施例1で溶出溶媒として4Mの塩化マグネシウム水溶液を用いて得たプロテオグリカンからグリコサミノグリカンを調製し、セルロースアセテート膜電気泳動に供した(サンプルアプライ量:100ng(ウロン酸量として))。プロテオグリカンからのグリコサミノグリカンの調製は、プロテオグリカンをプロテアーゼ処理することでコアタンパクを分解することにより行った。具体的には、まず、プロテアーゼとしてアクチナーゼE(Kaken Pharmaceutical社)を用い、10mMの塩化カルシウムを含む0.1MのTris−HCl緩衝液(pH8.0)中、50℃で24時間、プロテアーゼ反応を行った。得られた反応液を1%のトリクロロ酢酸水溶液にして、タンパク質を酸沈殿させ、上清を回収し、回収した上清に対してエタノール沈殿を行ってプロテオグリカンのプロテアーゼ反応物を得た。次に、Aspergillus niger由来のセルラーゼが持つendo−β−xylosidase活性を利用してグリコサミノグリカンとセリン残基との間のxyroside結合の加水分解を行うため、0.1Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)中、50℃で16時間、プロテオグリカンのプロテアーゼ反応物に対してセルラーゼ反応を行った。得られた反応液を0.1MのTris−HCl緩衝液(pH7.3)で平衡化した陰イオン交換カラム(DEAE Sepharose,10×100mm,GE Healthcare Japan社)に供し、0〜2Mの塩化ナトリウムの直線濃度勾配によりグリコサミノグリカン画分を溶出させ、得られたグリコサミノグリカン画分をAmicon Ultraを用いて限外ろ過することより脱塩することでグリコサミノグリカンの水溶液を得た(−20℃において保存)。標準物質としては、ヘパリン、コンドロイチン硫酸(おもにコンドロイチン6−硫酸を含む)、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸を用いた。その結果、コンドロイチン硫酸のみが検出された。ヒアルロン酸が検出されなかったことは、溶出溶媒として4Mの塩化マグネシウム水溶液を用いて得たプロテオグリカンにはヒアルロン酸が混入していないか、混入していてもその量はわずかであることを反映していると推察された。なお、この結果は、実施例1で溶出溶媒として、緩衝液、4%の酢酸水溶液、4Mのグアニジン塩酸水溶液のそれぞれを用いて得たプロテオグリカンでも同じであった。
本発明の方法で得られるプロテオグリカンの性状(その2)
実施例1で溶出溶媒として4Mの塩化マグネシウム水溶液を用いて得たプロテオグリカンの平均分子量を、ゲル濾過HPLCを行うことによって推定した。結果をヒアルロン酸の分子量マーカーに対する相対分子量として図2に示す。また、図2には、実施例1で溶出溶媒として、緩衝液、4%の酢酸水溶液、4Mのグアニジン塩酸水溶液のそれぞれを用いて得たプロテオグリカンの平均分子量を、ヒアルロン酸の分子量マーカーに対する相対分子量としてあわせて示す。図2から明らかなように、溶出溶媒として4Mの塩化マグネシウム水溶液を用いて得たプロテオグリカンの平均分子量は、溶出溶媒として4Mのグアニジン塩酸水溶液を用いて得たプロテオグリカンの平均分子量と同じ24万6千であったが、溶出溶媒として4Mの塩化マグネシウム水溶液を用いて得たプロテオグリカンには、溶出溶媒として4Mのグアニジン塩酸水溶液を用いて得たプロテオグリカンに認められる、プロテオグリカンの凝集体と推定される存在は認められなかった。溶出溶媒として4%の酢酸水溶液を用いて得たプロテオグリカンの平均分子量は17万5千であったことから、溶出溶媒として4%の酢酸水溶液を用いて軟骨破砕物からプロテオグリカンを溶出させた場合にはプロテオグリカンの分解が起こることがわかった。溶出溶媒として緩衝液を用いて軟骨破砕物からプロテオグリカンを溶出させた場合にもプロテオグリカンの分解が起こり、主たるプロテオグリカンの平均分子量は17万6千と3万3千であった。
本発明の方法で得られるプロテオグリカンの性状(その3)
実施例1で溶出溶媒として4Mの塩化マグネシウム水溶液を用いて得たプロテオグリカンを標準的な方法で還元アルキル化した後、ウロン酸量とタンパク質量を測定し、ウロン酸7μg分を用いて、プロテオグリカンに含まれるアグリカンのコアタンパクのG1ドメインとG3ドメインに対する抗体反応を行った(用いた抗体は次の通り。Anti G1 antibody:recognizes HA binding region of aggrecan,mouse monoclonal 12/21/1−C−6,Developmental Studies Hybridoma Bank(Iowa,IA,USA)、Anti G3 antibody:anti rabbit polyclonal antibody against aggrecan G3,Affinity BioReagents(Golden,Co,USA))。結果はドットブロット法により解析し、溶出溶媒として4Mのグアニジン塩酸水溶液を用いて得たプロテオグリカンを用いて同じ条件で行った抗体反応の結果に対する相対値で評価した。結果を図3に示す。また、図3には、実施例1で溶出溶媒として緩衝液と4%の酢酸水溶液のそれぞれを用いて得たプロテオグリカンを用いて同じ条件で行った抗体反応の結果をあわせて示す。図3から明らかなように、溶出溶媒として緩衝液と4%の酢酸水溶液を用いて得たプロテオグリカンは、コアタンパクのG1ドメインとG3ドメインの欠失が認められ、とりわけG3ドメインの欠失が顕著であった。これに対し、溶出溶媒として4Mの塩化マグネシウム水溶液を用いて得たプロテオグリカンは、コアタンパクのG1ドメインの欠失はほぼ認められず、G3ドメインの欠失は認められるものの、欠失の程度は、溶出溶媒として緩衝液と4%の酢酸水溶液を用いて得たプロテオグリカンのコアタンパクのG3ドメインの欠失の程度と比較すると抑制されていた。
参考例1:
実施例1の工程(1)で得たサケの鼻軟骨の乾燥破砕物300mgを、溶出溶媒としての各種の濃度の塩化マグネシウム水溶液(0.1M Tris−HCl緩衝液(pH7.3)に溶解)20mLに投入し、37℃で振盪撹拌することで軟骨破砕物からプロテオグリカンを溶出させた。24時間後に遠心分離によって回収した上清(溶出液)について、ウロン酸量とタンパク質量を測定し、0Mの塩化マグネシウム水溶液、即ち、緩衝液(0.1M Tris−HCl緩衝液(pH7.3))を溶出溶媒として用いて同じ条件でプロテオグリカンを溶出させて回収した上清について測定したウロン酸量とタンパク質量に対する相対量で評価した。結果を図4に示す。図4から明らかなように、0.5M以上の塩化マグネシウム水溶液において、塩化マグネシウムの濃度が高くなるにつれてプロテオグリカンの溶出量が増加する一方、夾雑タンパク質の混入量が減少する現象が認められた。この現象は、中性付近のpH(6.5〜8.0)の塩化マグネシウム水溶液において一様に認められるものであった。
まとめ:
以上の結果は、溶出溶媒として用いた塩化マグネシウム水溶液のイオン強度によって、軟骨破砕物中でコラーゲンやヒアルロン酸と相互作用し合っているプロテオグリカンが、こうした相互作用から開放されて塩化マグネシウム水溶液に効率的に溶出されるとともに、塩化マグネシウム水溶液の塩析作用によって夾雑タンパク質が沈殿し、その混入が抑制されたことによる効果と推察され、他のいずれの溶出溶媒を用いた場合よりも総合的に優れるものであった。
本発明は、調製の途中でのプロテオグリカンの分解や変性を抑制するとともに、夾雑タンパク質の混入を抑制して、動物の軟骨からプロテオグリカンを効率的に調製する方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。

Claims (2)

  1. エタノール中で動物の軟骨を破砕した後、溶出溶媒として濃度が0.5M以上の塩化マグネシウム水溶液を用いて軟骨破砕物からプロテオグリカンを溶出させることによるプロテオグリカンの調製方法。
  2. エタノール中で動物の軟骨を破砕することで得られる軟骨破砕物。
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